説明

放電灯点灯装置。

【課題】始動時の特別な点灯回路を必要とすることなく、誘電体バリア放電灯に高い始動電圧を供給するとともに、始動後は所定の定電圧を与えて安定した点灯を継続させることを可能とする。
【解決手段】誘電体バリア放電灯6に点灯電圧を昇圧トランス23の2次側コイルL3から供給する。昇圧トランス23の1次側には電圧制御回路21から電圧を供給する。電圧制御回路21の出力をプッシュプル回路22で正相または逆相をトランスの1次側に供給して点灯電圧を発生させる。24は発振周波数が可変可能な信号を発生させる発振回路で、放電灯6の点灯電流に基づき、放電灯6の始動時と点灯時とにより発振回路24の周波数を切換えることで始動時と点灯時により、放電灯6に必要な所望の点灯電圧を供給することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、スキャナー等の読み取り用光源として用いる外面電極蛍光ランプ等のような容量性を有する放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバルブの内外面に電極を構成した内外面電極放電灯やバルブの対向する内面に電極を構成した内内面電極放電灯は、誘電体バリア放電灯と呼ばれ、正弦波形や近年発光効率を向上させるためにパルス波形や矩形波形の点灯電圧波形で点灯させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2001−283783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の誘電体バリア放電灯の放電灯点灯装置は、始動時に高電圧を印加する必要がある。ところが、ランプ点灯電圧として、矩形波形またはパルス波形を用いた場合には、点灯時に昇圧する点灯回路を設けない場合十分な点灯電圧が得られず、点灯開始時間のばらつきや正常な点灯が行われない、という問題があった。
【0004】
この発明は、誘電体バリア放電灯を確実に始動させることが可能な放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明に係る放電灯点灯装置は、2次側に接続された誘電体バリア放電灯に点灯電圧を供給するトランスと、前記トランスの1次側に電圧を供給するための電圧制御回路と、前記電圧制御回路の出力を前記トランスの1次側に正相または逆相で供給するプッシュプル回路と、発振周波数が可変可能な信号を発生させる発振回路と、前記誘電体バリア放電灯の点灯電流に基づき、前記電体バリア放電灯の始動時か点灯時かを検出し、前記始動時か点灯時かにより前記発振回路の発振周波数を切換える始動制御回路とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、始動時の特別な点灯回路を必要とすることなく、誘電体バリア放電灯に高い始動電圧を供給するとともに、始動後は所定の定電圧を与えて安定した点灯を継続させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は、この発明の一実施形態に係る放電灯点灯装置を示す回路図である。図2は誘電体バリア放電灯である外面電極放電灯の一部を切欠して示す断面図、図3はその縦断面図である。図4は透光性樹脂シート15の展開図、図5は放電灯6の等価回路図である。図6は点灯装置の始動時の動作を示すタイミングチャート、図7は点灯装置の点灯時の動作を示すタイミングチャートである。
【0009】
この実施形態においては、図1の放電灯6として誘電バリア放電灯である外面電極放電灯を採用して説明するが、ここで用いる放電灯6としては、内外面電極放電灯や内内面電極放電灯を採用してもよい。
【0010】
先ず、図2〜図5を参照して外面電極放電灯の構造について説明する。
【0011】
放電灯6は、透光性バルブであるガラスバルブ11a内に放電を生起させるための1対の電極13,13を有している。誘電体バリア放電灯では、電極13,13の少なくとも一方をガラスバルブ11aの外面または内面に設けている。ガラスバルブ11aの内面には発光層を設け、ガラスバルブ11aの内部に希ガスを封入する。
【0012】
即ち、図3の断面図に示すように、放電灯6は、放電容器11、蛍光体層12、1対の外部電極13,13、アパーチャ14、透光性樹脂シート15および透光性絶縁チューブ16を有している。
【0013】
放電容器11は、細長く、両端が気密に封止された直径10mm、実効長さ370mmのガラスバルブ11aからなり、一端に排気チップオフ部11bを有する。放電容器11の内部には、放電媒体としてキセノンを封入している。蛍光体層12は、放電容器11の内面に長手方向に沿ったスリット状の部分以外の部分に形成する。
【0014】
1対の外部電極13,13は、夫々アルミ箔からなり、図2に示すように、平行に離間対向させて放電容器11の外面に貼着する。外部電極13は、予め後述する透光性樹脂シート15の一面に粘着し、透光性樹脂シート15を放電容器11の外周に巻き付けることによって放電容器11の外面の所定位置に配設するようになっている。
【0015】
また、外部電極13は、図4に示すように、波形状の電極主部13a、端子接続部13bおよび端子13cを有する。電極主部13aは、波形状をなして放電容器11の長手方向の大部分にわたり延在するように構成している。端子接続部13bは、電極主部13aの一端に接続して配設し、端子13cとの接触面積が大きくなるように方形状に形成している。端子13cは、端子接続部13bに導電性接着剤により接着する。端子13cは、透光性樹脂シート15および透光性熱収縮チューブである透光性絶縁チューブ16から外部に突出している。
【0016】
アパーチャ14は、放電容器11の長手方向に沿って、蛍光体層12が形成されていないスリット状部分である。従って、放電容器11のアパーチャ14の部分は、ガラスバルブ11aを介して放電容器11の内部が素通しになって見える。
【0017】
透光性樹脂シート15は、例えば透明なPET(Polyethylene Terephthalate)からなり、放電容器11の実質的全長にわたる長さで、かつ放電容器11の周囲方向に対してアパーチャ14の上から被覆するような幅を有している。上述したように、一面に1対の外部電極13,13を所定間隔で貼着している。更に、その上にアクリル系粘着材を塗布して、放電容器11の外面に貼着している。これにより1対の外部電極13,13は、アパーチャ14を挟んでその両側の位置に配設され、アパーチャ14の上に透光性樹脂シート15が貼着される。
【0018】
透光性絶縁チューブ16は、透明フッ素系樹脂からなり、外部電極13,13およびアパーチャ14の上から放電容器11の全周を被覆している。
【0019】
放電灯6の等価回路は、図5に示すように、コンデンサCin1と負荷抵抗RLおよびコンデンサCin2の直列回路と、コンデンサCout1とコンデンサCout2の並列回路によって構成している。コンデンサCin1,Cin2は、外部電極13と放電容器11の内面との間に形成される静電容量である。従って、コンデンサCin1,Cin2の静電容量は、外部電極13の面積、放電容器11の構成材料であるガラスの比誘電率および厚さにより決定する。このように、放電灯6は、少なくとも容量性を有する。
【0020】
次に、図1を参照して、この発明の点灯装置について説明する。点灯装置は、昇圧/降圧回路28、抵抗R1,R2、コンデンサC2から構成される電圧制御回路21と、この電圧制御回路21に接続された直流電源DPと、点灯スイッチSWと、1次側コイルL1,L2と2次側コイルL3からなる昇圧トランス23と、プッシュプル回路22と、このプッシュプル回路22に接続された抵抗R4〜R7、コンデンサC4、トランジスタQ1から構成される発振回路24と、抵抗R8〜R11、ダイオードD、コンデンサC5〜C6、トランジスタQ2〜Q4から構成される始動回路25および電界効果トランジスタFET1,2とによって構成する。
【0021】
電圧制御回路21は、昇圧/降圧回路28と抵抗R1と抵抗R2とコンデンサC2によって構成する。昇圧/降圧回路28に直流電源DPおよび点灯スイッチSWを接続している。直流電源DPは例えば電圧24Vであるが、この電圧は±数%程度変動することもあるので、電圧制御回路21により電圧の安定化を図っている。即ち、直流電源DPの出力は昇圧/降圧回路28に供給する。昇圧/降圧回路28は入力電圧を昇圧または降圧する。昇圧/降圧回路28の出力電圧は、コンデンサC2によって平滑され、抵抗R1と抵抗R2とで分圧し、抵抗R1,R2の接続点の電圧を昇圧/降圧回路28に制御電圧として供給する。
【0022】
プッシュプル回路22は、電界効果トランジスタFET1,2に接続され、プッシュプル回路22から出力される駆動信号により電界効果トランジスタFET1,FET2を交互にスイッチングさせて、昇圧トランス23の2次側に高圧を発生させる。
【0023】
発振回路24は、コンデンサC4、抵抗R4,5にて決定する発振周期を制御端子31に外部からの調光同期信号SをトランジスタQ1に供給してオン/オフ制御させ、トランジスタQ1がオンしたときに発振をリセットかけることで、この調光同期信号Sに同期した周波数にて発振させることができる。
【0024】
始動回路25は、放電灯6に流れる電流を抵抗R8にて検出し、ダイオードDにて整流し、コンデンサC5にて平滑した電圧にてトランジスタQ2をオン/オフさせて始動時と始動時以外との周波数切り替えを行っている。始動時は、誘電体バリア放電灯に電流が流れない為、トランジスタQ2はオフ状態となりトランジスタQ3,4がオンし、トランジスタQ1がオフする。したがって、調光同期信号Sが発振回路24に入力されない状態となり、また、トランジスタQ3がオン状態となる為、プッシュプル回路22の発振周波数は、コンデンサC4、抵抗R5にて決定される。始動時以外(誘電体バリア放電灯点灯時)は、誘電体バリア放電灯に電流が流れ、抵抗R8にて電流を検出し、トランジスタQ2がオン状態となり、トランジスタQ3,Q4がオフ状態となり、外部からの調光同期信号Sに同期した周波数にて、プッシュプル回路22は発振することになる。
【0025】
次に、図6および図7を用いて図1の点灯装置の動作について説明する。図6は始動時の、図7は点灯時のそれぞれのタイミングチャートである。
【0026】
先ず、始動時について図6とともに説明する。スイッチSWをオンすると、昇圧/降圧回路28とプッシュプル回路22にそれぞれ直流電源DPから電源が供給されて昇圧/降圧回路28とプッシュプル回路22がオン状態となる。昇圧/降圧回路28では、出力OUT1から出力電圧を出力しコンデンサC2に徐々に電荷が蓄積されて電圧が上昇する。これに伴い、抵抗R1,R2の分圧電圧が昇圧/降圧回路28にフィードバックされ昇圧/降圧回路28の出力OUT1を定電圧に保持する。
【0027】
このとき、放電灯6は非点灯状態にあり、抵抗R8には電流が流れないことからトランジスタQ2はオフ、トランジスタQ3,Q4はオン、トランジスタQ1はオフ状態である。従って、制御端子31から発振回路24には図6(a)に示すように信号が供給されない状態にある。トランジスタQ3はオン状態にあるため、プッシュプル回路22の発振周波数は、コンデンサC4、抵抗R5により決定され、図6(b)に示す信号となる。
【0028】
昇圧/降圧回路28と同時にオンされたプッシュプル回路22は、その出力OUT2,OUT3から逆相の図6(c),(d)に示す信号を出力し、電界効果トランジスタFET1,FET2をオン/オフ制御する。電界効果トランジスタFET1がオンすると、出力OUT1から昇圧トランス23のコイルL1と電界効果トランジスタFET1を介して電流が流れ、昇圧トランス23の2次側のコイルL3にはコイルL1の巻線比に応じた図6(e)に示す正の高出力電圧+Vhが得られる。また、電界効果トランジスタFET2がオンすると、出力OUT1から昇圧トランス23のコイルL2と電界効果トランジスタFET2を介して電流が流れる。この場合、コイルの巻き方向がL1,L2と同じで電流の流れが逆向きであるため、昇圧トランス23の2次側のコイルL3にはコイルL2との巻線比に応じた図6(e)に示す負の高出力電圧−Vhが得られる。以降、電界効果トランジスタFET1,FET2をオン/オフに応じて図6(e)に示す正負の高出力電圧の出力を放電灯6に供給して放電灯6を点灯させることができる。
【0029】
放電灯6が点灯されると、放電灯6に流れる電流を抵抗R8にて検出し、ダイオードDにて整流し、コンデンサC5にて平滑した電圧でトランジスタQ2をオン、トランジスタQ3,Q4をオフ、トランジスタQ1をオンする。トランジスタQ3はオフ状態にあるため、プッシュプル回路22の発振周波数は、コンデンサC4、抵抗R5、R4により決定され、図6(g)に示す信号となる。発振回路24の制御端子31には、図7(f)に示す調光同期信号Sが供給され、この信号に同期した周波数にてプッシュプル回路22は、図6(h),(i)に示す信号を出力する。
【0030】
電界効果トランジスタFET1,FET2は、それぞれ図6(h),(i)によりオン/オフ制御される。電界効果トランジスタFET1がオンすると、出力OUT1から昇圧トランス23のコイルL1と電界効果トランジスタFET1を介して電流が流れ、昇圧トランス23の2次側のコイルL3にはコイルL1の巻線比に応じた図6(j)に示す正の低出力電圧+Vlが得られる。また、電界効果トランジスタFET2がオンすると、出力OUT1から昇圧トランス23のコイルL2と電界効果トランジスタFET2を介して電流が流れる。この場合、コイルの巻き方向がL1,L2と同じで電流の流れが逆向きであるため、昇圧トランス23の2次側のコイルL3にはコイルL2との巻線比に応じた図6(j)に示す負の低出力電圧−Vlが得られる。以降、電界効果トランジスタFET1,FET2のオン/オフに応じて図6(j)に示す正負の高出力電圧の出力を放電灯6に供給し、放電灯6を確実に点灯させることができる。
【0031】
このように、簡単な始動回路25を付加し、始動時にプッシュプル回路22の周波数を上げたことにより、始動時において十分に大きいレベルの電圧が供給される。これにより、誘電体バリア放電灯である放電灯6を確実に点灯されることが可能となる。
【0032】
この実施形態では、始動時に高電圧回路など特別の回路を必要とせずに、外面電極放電灯等の誘電体バリア放電灯に高い始動電圧を供給するとともに、始動後は所定の定電圧を加えて安定した点灯を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施形態に係る点灯装置について説明するための回路図。
【図2】誘電体バリア放電灯である外面電極放電灯を一部切欠して示す断面図。
【図3】誘電体バリア放電灯の縦断面図。
【図4】図2中の透光性樹脂シート15の展開図。
【図5】図2〜図4に示す放電灯の等価回路図。
【図6】この発明の始動時の動作について説明するためのタイミングチャート。
【図7】この発明の点灯時の動作について説明するためのタイミングチャート。
【符号の説明】
【0034】
6 放電灯
21 電圧制御回路
22 プッシュプル回路
23 昇圧トランス
24 発振回路
25 始動回路
28 昇圧/降圧回路
31 制御端子
R1〜R11 抵抗
C2〜C6 コンデンサ
D ダイオード
Q1〜Q4 トランジスタ
FET1,FET2 電界効果トランジスタ
DP 直流電源
SW 点灯スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次側に接続された誘電体バリア放電灯に点灯電圧を供給するトランスと、
前記トランスの1次側に電圧を供給するための電圧制御回路と、
前記電圧制御回路の出力を前記トランスの1次側に正相または逆相で供給するプッシュプル回路と、
発振周波数が可変可能な信号を発生させる発振回路と、
前記誘電体バリア放電灯の点灯電流に基づき、前記電体バリア放電灯の始動時か点灯時かを検出し、前記始動時か点灯時かにより前記発振回路の発振周波数を切換える始動制御回路とを具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−156225(P2006−156225A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347155(P2004−347155)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】