説明

放電灯点灯装置

【課題】放電ランプの寿命末期だけでなくフィラメントの断線やルーズコンタクト状態を検出し、保護動作を行なう放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】インバータ回路2と放電ランプLaとの間に出力トランスTを設け、出力トランスTの検出用巻線nの出力によりランプ寿命検出回路4が放電ランプLaの寿命末期を検出する。また、放電ランプLaのフィラメントに直流電流を流しておき、第1のフィラメント検出回路5では直流電源の有無によりフィラメントの段線の有無を検出する。さらに、放電ランプLaの点灯時にフィラメントに流れる電流の平衡・不平衡に基づいて第2のフィラメント検出回路6がルーズコンタクトを検出する。ランプ寿命検出回路4と第1のフィラメント検出回路5と第2のフィラメント検出回路6とのいずれかが異常を検出すると、インバータ回路2を予熱時のスイッチング周波数で動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、細径かつ高出力の放電ランプが開発され、この種の放電ランプは従来より普及している蛍光ランプに比較すると高い電圧を印加する必要がある。したがって、この種の放電ランプを点灯させる放電灯点灯装置としては、図10に示すように、商用電源のような交流電源を整流した脈流電圧をチョッパ回路1を用いて昇圧し、チョッパ回路1より出力される直流電圧をインバータ回路2を用いて高周波交番電圧に変換するだけでなく、インバータ回路2の出力電圧を出力トランスTにより昇圧して放電ランプLaに印加することが考えられる。また、放電ランプLaのフィラメントに十分な予熱電流を流すために出力トランスTとは別に予熱トランスTを設けている。予熱トランスTに2次巻線として設けた一対の予熱巻線nにはそれぞれ直流カット用のコンデンサC,Cを介して放電ランプLaのフィラメントが接続される。なお、予熱トランスを備えた放電灯点灯装置はたとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
このインバータ回路2は、インダクタLとコンデンサCとからなる共振回路を通して出力トランスTの1次巻線に電圧を印加するように構成され、スイッチング素子Q,Qをオンオフさせる動作周波数を変化させることにより放電ランプLaの両端電圧を調節するように構成されている。したがって、放電ランプLaの両端に電圧を印加する出力トランスTと、放電ランプLaのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスTとを別に設け、インバータ回路2の動作周波数を予熱用、始動用、定常点灯用などに変化させたときに、それぞれ望ましい条件が得られるようにしているのである。ここにおいて、インバータ回路2の動作周波数は負荷回路の共振周波数よりも高い領域に設定される。
【0004】
インダクタLとコンデンサCとからなる共振回路は一種のローパスフィルタを構成するから、インバータ回路2の動作周波数が高いほど放電ランプLaの両端の印加電圧は低くなる。また、インバータ回路2における上記共振回路との接続端間にはコンデンサCを介して予熱トランスTの1次巻線が接続されるから、インバータ回路2の動作周波数が高いほど予熱トランスTの1次巻線に流れる電流が増加することになる。そこで、予熱時には動作周波数を高く設定して放電ランプLaの両端への印加電圧を低くするとともに、予熱トランスTの1次巻線への供給電流を増加させ、予熱トランスTへの供給電力を出力トランスTへの供給電力よりも相対的に大きくするのである。
【特許文献1】特開平8−17585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、放電ランプLaの両端間には放電ランプLaの両端電圧の異常上昇を検出するランプ寿命検出回路3が設けられ、ランプ寿命検出回路3が放電ランプLaの両端電圧の異常上昇を検出すると、インバータ回路2のスイッチング素子Q,Qのスイッチング動作を制御しているインバータ制御回路CNに対してスイッチング素子Q,Qのオンオフの停止を指示する。つまり、放電ランプLaの寿命末期時にはインバータ回路2の動作を停止させる。この動作により放電ランプLaの寿命末期時における回路構成部品へのストレスを防止することができる。
【0006】
一方、放電ランプLaの点灯中にフィラメントが断線しても、放電ランプLaは点灯状態を維持するから、放電ランプLaの両端電圧は上昇せず、ランプ寿命検出回路3は動作しない。ここで、フィラメントが断線していなければ、予熱トランスTの予熱巻線nとコンデンサC,Cとの直列回路の両端間がフィラメントを介して接続されていることにより、出力トランスTの2次側から予熱トランスTの予熱巻線nとコンデンサC,Cとの直列回路に流れる電流は少ないが、フィラメントが断線すると、予熱巻線nとコンデンサC,Cとに流れる電流が増加するから、コンデンサC,Cや予熱巻線nの発熱量が増加する。つまり、このような場合の発熱量を見込んで、予熱トランスT2やコンデンサC,Cに大型のものを用いなければならず、放電灯点灯装置が大型化するという問題がある。
【0007】
また、出力トランスTの2次側と放電ランプLaとの接続に不良部分(たとえば、ランプソケットへの放電ランプLaの差込み状態が緩い部分)があると、出力トランスTの2次巻線から放電ランプLaに至る経路における接続不良部分が高抵抗になる。以下では、このような状態をルーズコンタクト状態という。上述したように、この種の放電ランプLaは印加電圧が高いものであるから、高抵抗の接続不良部分ではアークが発生しやすくなり、その結果、インバータ回路2のスイッチング素子Q,Qに過大なストレスがかかってスイッチング素子Q,Qが破損したり、ランプソケットなどの構造部品の安全性が低下したりすることもある。
【0008】
さらに、上述のようにランプ寿命検出回路3が作動してインバータ回路2の動作が停止したときに、放電ランプLaを交換した後に電源を一旦遮断して制御回路CNをリセットする必要があるから、電源リセットを行なうための回路部品が必要となり、回路部品の部品点数が増加し、これも放電灯点灯装置の大型化につながるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであって、その目的は、放電ランプの寿命末期だけではなく、フィラメントの断線やルーズコンタクト状態も検出可能として大型化を防止するとともに破損や安全性の低下を防止し、さらに、放電ランプの交換時における電源リセットを不要にして一層の小型化を可能とした放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものである。この構成によれば、放電ランプの寿命末期をランプ寿命検出回路により検出することができ、フィラメントの断線を第1のフィラメント検出回路で検出することができ、ルーズコンタクト状態を第2のフィラメント検出回路で検出することができる。また、ランプ寿命検出回路はルーズコンタクト状態を検出することが可能であり、第2のフィラメント検出回路は一方のフィラメントの断線を検出することが可能である。したがって、これらの異常を総合的に検出してインバータ回路の出力を抑制することができて、インバータ回路の回路構成素子へのストレスが低減でき、安全性、信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができる。さらに、異常と判断したときに、インバータ回路の動作周波数を放電ランプの点灯時よりも高い周波数に設定するのであって、異常時にもインバータ回路の動作を停止させないから、放電ランプを交換して正常であることが検出されたときに自動的に放電ランプを点灯状態に復帰させることが可能であり、従来構成のような電源リセット回路が不要である。このことにより、構成回路部品の部品点数が少なくなり、一層の小型化につながる。ここで、異常と判断されるとインバータ回路の動作周波数を高くすることで、共振回路を通して放電ランプに供給される電力を低減することができ、結果的に放電ランプの両端電圧を低減することができる。したがって、放電ランプの交換時に感電することも防止される。
【0011】
請求項2の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないと異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものである。この構成では、第2のフィラメント検出回路が設けられていないが、ランプ寿命検出回路における判断を適宜に行なうことによりルーズコンタクト状態の検出が可能になり、請求項1の発明とほぼ同様の機能を持ちながらも回路構成が簡単になる。つまり、一層の小型化、軽量化、低コスト化につながる。
【0012】
請求項3の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものである。この構成によれば、第1のフィラメント検出回路が設けられていないが、第2のフィラメント検出回路では一方のフィラメントの断線が検出可能であるから、請求項1の発明の構成とほぼ同様の機能を持ちながらも回路構成が簡単になり、一層の小形化、軽量化、低コスト化につながる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明において、ランプ異常保護回路が、異常と判断すると出力を異常側に保持し、正常な放電ランプに交換した後に第1のフィラメント検出回路によりフィラメントに流れる電流が検知されると異常側の保持を解除するものである。この構成は請求項1または請求項2の発明の望ましい実施態様であり、放電ランプに異常が生じたときに正常なランプに交換するまでは異常側に保持されるから放電ランプの交換を安全に行なうことができ、しかも正常な放電ランプに交換したことを第1のフィラメント検出回路により検出して正常な点灯状態に復帰させるから電源リセット回路が不要になる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、放電ランプとして、各フィラメントにそれぞれ温度ヒューズが直列接続されているものを用いている。この構成によれば、放電灯の異常によりフィラメントの一端に内蔵された温度ヒューズが断線すると同時に第1のフィラメント検出回路が異常を検出してインバータ回路を保護するから、より一層安全で信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの発明において、ランプ異常保護回路が、異常と判断するとインバータ回路の動作周波数を放電ランプの予熱時の周波数付近に設定するものである。したがって、異常の生じた放電ランプを正常な放電ランプに交換したときにただちに予熱状態になり、点灯状態に復帰させるのが一層容易になる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの発明において、インバータ回路の動作周波数として、放電ランプの点灯時の動作周波数が10〜100kHzの範囲内で設定され、ランプ異常保護回路が異常と判断するとインバータ回路の動作周波数が100kHz以上に設定されるものである。この構成は望ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものであり、放電ランプの寿命末期をランプ寿命検出回路により検出することができ、フィラメントの断線を第1のフィラメント検出回路で検出することができ、ルーズコンタクト状態を第2のフィラメント検出回路で検出することができるから、これらの異常を総合的に検出してインバータ回路の出力を抑制することができて、インバータ回路の回路構成素子へのストレスが低減でき、安全性、信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができるという利点がある。さらに、異常と判断したときに、インバータ回路の動作周波数を放電ランプの点灯時よりも高い周波数に設定するのであって、異常時にもインバータ回路の動作を停止させないから、放電ランプを交換して正常であることが検出されたときに自動的に放電ランプを点灯状態に復帰させることが可能であって、従来構成のような電源リセット回路が不要であるという利点がある。すなわち、構成回路部品の部品点数が少なくなり、一層の小型化につながるという利点がある。しかも、異常と判断されるとインバータ回路の動作周波数を高くすることで、共振回路を通して放電ランプに供給される電力を低減することができ、結果的に放電ランプの両端電圧を低減することができるから、放電ランプの交換時に感電することも防止されるという利点がある。
【0018】
請求項2の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないと異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものであり、第2のフィラメント検出回路が設けられていないが、ランプ寿命検出回路における判断を適宜に行なうことによりルーズコンタクト状態の検出が可能であるから、請求項1の発明とほぼ同様の機能を持ちながらも回路構成が簡単になるのであって、一層の小型化、軽量化、低コスト化につながるという利点がある。
【0019】
請求項3の発明は、直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備するものであり、第1のフィラメント検出回路が設けられていないが、第2のフィラメント検出回路では一方のフィラメントの断線が検出可能であるから、請求項1の発明の構成とほぼ同様の機能を持ちながらも回路構成が簡単になり、一層の小形化、軽量化、低コスト化につながるという利点がある。
【0020】
請求項4の発明のように、ランプ異常保護回路が、異常と判断すると出力を異常側に保持し、正常な放電ランプに交換した後に第1のフィラメント検出回路によりフィラメントに流れる電流が検知されると異常側の保持を解除するものでは、放電ランプに異常が生じたときに正常なランプに交換するまでは異常側に保持されるから放電ランプの交換を安全に行なうことができ、しかも正常な放電ランプに交換したことを第1のフィラメント検出回路により検出して正常な点灯状態に復帰させるから電源リセット回路が不要になるという利点がある。
【0021】
請求項5の発明のように、放電ランプとして、各フィラメントにそれぞれ温度ヒューズが直列接続されているものを用いると、放電灯の異常によりフィラメントの一端に内蔵された温度ヒューズが断線すると同時に第1のフィラメント検出回路が異常を検出してインバータ回路を保護するから、より一層安全で信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができるという利点がある。
【0022】
請求項6の発明のように、ランプ異常保護回路が、異常と判断するとインバータ回路の動作周波数を放電ランプの予熱時の周波数付近に設定するものでは、異常の生じた放電ランプを正常な放電ランプに交換したときにただちに予熱状態になり、点灯状態に復帰させるのが一層容易になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
本実施形態は、図1に示すように、図10に示した従来の放電灯点灯装置と同様に、チョッパ回路1とインバータ回路2と出力トランスTと予熱トランスTとを備える。
【0024】
チョッパ回路1は、商用電源のような交流電源を全波整流して得た脈流電圧を入力とするものであり、入力電圧をインダクタLとMOSFETよりなるスイッチング素子Qとの直列回路に印加する。また、スイッチング素子QにはダイオードDと平滑用のコンデンサCとの直列回路が並列接続される。スイッチング素子Qはチョッパ制御回路CNにより、交流電源の周波数(電源周波数)よりも十分に高い周波数でスイッチングされる。
【0025】
周知のように、このチョッパ回路1は昇圧型であって、スイッチング素子Qのオン時にインダクタLに蓄積されたエネルギをスイッチング素子Qのオフ時にダイオードDを通してコンデンサCに放出する。したがって、入力電圧とインダクタLの両端電圧との加算電圧がコンデンサCに印加されることにより、コンデンサCを入力電圧よりも昇圧することができるものである。スイッチング素子Qのゲート−ソース間にはツェナーダイオードZDが接続されてスイッチング素子Qのドレイン−ゲート間の短絡に対するチョッパ制御回路CNの保護を行なっている。
【0026】
インバータ回路2は、コンデンサCの両端間に接続されたスイッチング素子Q,Qの直列回路を備え、両スイッチング素子Q,Qはインバータ制御回路CNにより高周波で交互にスイッチングされる。スイッチング素子Q,QはMOSFETであって、スイッチング素子Qと同様に、保護用のツェナーダイオードZD,ZDがゲート−ソース間に接続されている。一方のスイッチング素子Qには直流カット用のコンデンサCを介して負荷回路が接続される。
【0027】
上述のインバータ回路2は、ハーフブリッジ型と称するものであって、周知のようにスイッチング素子Qのオン期間にコンデンサC→スイッチング素子Q→コンデンサC→負荷回路→コンデンサCの経路で電流が流れ、スイッチング素子Qのオン期間にコンデンサC→スイッチング素子Q→負荷回路→コンデンサCの経路で電流が流れるものである。このように、スイッチング素子Q,Qのオンオフにより負荷回路には交番した電流が流れる。また、スイッチング素子Q,Qは交互にオンオフされるが、同時にオンにならないようにインバータ制御回路CNにより制御される。
【0028】
負荷回路は、インダクタLおよびコンデンサCよりなる共振回路を介して出力トランスTを接続し、出力トランスTの2次側に放電ランプLaを接続した部分と、フィルタとしてのコンデンサCを介して予熱トランスTを接続し、予熱トランスTの2次側である予熱巻線nに放電灯Laのフィラメントを接続した部分とからなる。インダクタLは出力トランスTの1次巻線に直列接続され、コンデンサCは出力トランスTの1次巻線に並列接続される。したがって、インダクタLとコンデンサCとからなる共振回路はローパスフィルタを構成し、インバータ回路2の動作周波数が高いほど出力トランスTの1次側への供給電力は少なくなる。逆に、インバータ回路2の動作周波数が高いほどコンデンサCを通過する電流が多くなり予熱トランスTの1次巻線への供給電力は多くなる。
【0029】
すなわち、インダクタLとコンデンサCとからなる共振回路の共振周波数よりもインバータ回路2の動作周波数を高い領域に設定し、予熱時にはインバータ回路2の動作周波数をさらに高い周波数に設定することにより、共振回路を通して出力トランスTの1次巻線に印加される電圧を低くし、予熱トランスT2の1次巻線に流れる電流を多くする。したがって、予熱トランスTの2次側の予熱巻線nから放電ランプLaのフィラメントに供給される電流を多くして十分に予熱することができる。
【0030】
一方、始動時にはインバータ回路2の動作周波数を予熱時よりも引き下げることにより、共振回路を通して出力トランスTの1次側に印加される電圧が高くなり、またコンデンサCのインピーダンスの増加により予熱トランスTの1次巻線に流れる電流が低減される。したがって、放電ランプLaの両端間に高電圧を印加して始動することができる。また、始動後には動作周波数を適宜に設定することで放電ランプLaを定格点灯させたり、調光点灯させたりすることが可能になる。ここにおいて、出力トランスTの2次巻線にはコンデンサCが接続され、予熱トランスTの2次巻線には直流カット用のコンデンサC,C7を介して放電灯のフィラメントが接続される。
【0031】
ところで、本実施形態では、放電ランプLaの状態を3種類の情報により検出している。放電ランプLaの寿命末期は、出力トランスTに設けた検出用巻線nの両端電圧に基づいて検出している。フィラメント表面の電子放出物質が飛散した寿命末期時(いわゆるエミレス時)には、放電ランプLaに印加される電圧の一方の極性でのみ点灯する半波点灯状態、あるいは非点灯状態になるから、放電ランプLaの両端電圧が上昇し、その結果、出力トランスTの検出用巻線nの両端電圧も上昇する。したがって、ランプ寿命検出回路4では、検出用巻線nの両端電圧を適宜の基準電圧と比較することにより、放電ランプLaの寿命末期を検出することができる。ここに、ランプ寿命検出回路4では放電ランプLaの寿命末期を検出したときに出力をHレベルとし、常時は出力をLレベルにしている。
【0032】
放電ランプLaの状態を検出する第2の情報は、放電ランプLaの2つのフィラメントを通る経路に微小な直流電流を流すことによって得られるフィラメントの断線の有無である。つまり、インバータ回路2の電源であるコンデンサCの両端から、抵抗R−フィラメント−抵抗R−フィラメント−抵抗Rの直列回路を含む回路に電流を流し、第1のフィラメント検出回路5では上記電流が流れていればフィラメントは正常であり、電流が流れなければフィラメントが断線していると判断するのである。第1のフィラメント検出回路5は、フィラメントが正常であるときに出力をLレベルにし、フィラメントの断線などにより電流経路がなくなったことを検出すると出力をHレベルにする。
【0033】
ここに、直流電流を流す経路として、フィラメント−抵抗R−フィラメントの経路が存在し、この経路内に第2のフィラメント検出回路6が挿入されているが、第2のフィラメント検出回路6は後述するように上記直流電流を通過させるように構成されている。また、第2のフィラメント検出回路6は出力トランスTの2次巻線と放電ランプLaとの間に挿入されているが、出力トランスTの2次側から放電ランプLaへの電力供給も妨げないにように構成されている。
【0034】
放電ランプLaの状態を検出する第3の情報は、放電ランプLaの2つのフィラメントに流れる電流の大小関係である。つまり、第2のフィラメント検出回路6は、放電ランプLaの各フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出するものであって、不平衡になると(つまり、各フィラメントに流れる電流の大きさが異なると)出力をHレベルにし、平衡であれば出力をLレベルに保つ。各フィラメントに流れる電流が不平衡になるのは、一方のフィラメントのみが断線した場合や放電ランプLaの一端側でランプソケットとの接続状態が緩い場合(つまり、ルーズコンタクト状態の場合)などである。
【0035】
ランプ寿命検出回路4の出力と第2のフィラメント検出回路6の出力とはOR回路7を通してランプ異常保護回路8に入力され、第1のフィラメント検出回路5の出力はランプ異常保護回路8に直接入力される。したがって、放電ランプLaの寿命末期時、ルーズコンタクト時に対するランプ異常保護回路8の動作を同じ動作にし、フィラメントの断線時に対するランプ異常保護回路8の動作をこれらとは別にすることが可能である。
【0036】
ランプ異常保護回路8は、入力される信号のいずれかがHレベルになると、点灯時よりも動作周波数を高くするようにインバータ制御回路CNを制御する。したがって、出力トランスTへの供給電力が減少して放電ランプLaへの印加電圧が低下し、スイッチング素子Q,Qへの電圧ストレスの増加が防止される。つまり、インバータ回路2が保護される。ここにおいて、インバータ制御回路CNは外部信号に応じて動作周波数を変化させるように制御され、予熱、始動、点灯に対応する動作周波数は外部信号により指示される。
【0037】
また、第1のフィラメント検出回路5ないし第2のフィラメント検出回路6によりフィラメントの断線を検出してインバータ回路2の出力を低減するから、フィラメントの断線時に、コンデンサC,Cや予熱巻線nに大きな電流が流れて発熱するということがなく、予熱トランスTやコンデンサC,Cに大型のものを用いる必要がないのである。
【0038】
さらに、ルーズコンタクト状態を第2のフィラメント検出回路6が検出したときにもインバータ回路2の出力を低減するから、ルーズコンタクト状態において放電ランプLaへの電力供給経路に高電圧が印加されることがなく、アークの発生によるスイッチング素子Q,Qの破損や構成部品の損傷を防止することができる。
【0039】
ところで、ランプ寿命検出回路4はたとえば図2のように構成される。図示例では出力トランスTの検出用巻線nの両端電圧を直流カット用のコンデンサCを通して抵抗R,Rにより分圧した後、ダイオードDにより整流し、さらにコンデンサCにより平滑している。したがって、コンデンサCの両端電圧は検出用巻線nの両端電圧の平均値に比例する。そこで、コンデンサC8の両端電圧をコンパレータCPで基準電圧Vref1と比較し、コンデンサCの両端電圧が基準電圧Vref1以上であれば、異常(寿命末期)があると判断して出力をHレベルにするのである。コンデンサCの両端間に接続されたツェナーダイオードZDはブレークオーバ電圧が基準電圧Vref1よりも高いものであり、コンパレータCPへの入力電圧を制限してコンパレータCPを保護するものである。
【0040】
第1のフィラメント検出回路5は図3に示すように構成される。この構成例では、抵抗R−フィラメント−抵抗R→フィラメント−抵抗Rという直列回路にコンデンサCから流した直流電流を、ダイオードDにより整流してコンデンサCで平滑し、コンデンサCの両端電圧を抵抗R10,R11で分圧した電圧をコンパレータCPにより基準電圧Vref2と比較している。ツェナーダイオードZDはコンパレータCPへの入力電圧を制限し、コンパレータCPを保護する機能を有する。第1のフィラメント検出回路5は、フィラメントの断線時にコンデンサCの両端電圧が基準電圧Vref2よりも低下すると、コンパレータCPの出力をHレベルにする。基準電圧Vref2は別途に構成されている直流電源を抵抗R12,R13により分圧することで得ている。なお、抵抗R,Rを放電ランプLaの非電源側に接続し、抵抗Rを放電ランプLaの電源側(昇圧トランス側)に接続しているから、各抵抗R,Rと抵抗Rとの間にそれぞれフィラメントが介装され、この直列回路に微小な電流を流すだけでフィラメントの断線を容易に検出することができる。ここに、抵抗R〜Rの放電ランプLaに対する電源側と非電源側との接続関係は逆でもよい。
【0041】
ところで、本実施形態では、フィラメントの断線時にインバータ回路2の動作周波数を予熱時と同じ周波数になるように構成してある。つまり、本実施形態においては、電源投入から一定時間の予熱を行なうように構成してあり、予熱時間はコンデンサC11への充電時間により時限されている(コンデンサC11を用いて構成されるタイマ回路は省略してある)。また、コンデンサC11の両端電圧を引き下げると、タイマ回路が動作して予熱動作(つまり、動作周波数を高く設定する動作)を行なう。そこで、第1のフィラメント検出回路5は、コンパレータCPの出力がHレベルになると、タイマ用のコンデンサC11を短絡するように構成されている。つまり、コンパレータCPの出力によりトランジスタよりなる3個のスイッチング素子Q10〜Q12をオンオフさせるのであって、コンデンサC11の両端間にコレクタ−エミッタ間が接続されたスイッチング素子Q12はコンパレータCPの出力がHレベルになるとオンになるから、コンパレータCPの出力がHレベルになるとコンデンサC11の両端間が短絡される。この構成により、インバータ回路2から放電ランプLaへの供給電力の抑制と予熱制御との回路部分を共用することができ、回路構成が簡素化される。
【0042】
第2のフィラメント検出回路6は、たとえば図4に示すように構成されるものであって、出力トランスTの2次巻線の各一端と各フィラメントとの間に挿入される2つの巻線を有したカレントトランスTにより構成される。このカレントトランスTの2次巻線出力をOR回路7を通してランプ異常保護回路8に入力するのである。カレントトランスTは放電ランプLaの点灯時に両フィラメントに流れる電流によって2次巻線出力が打ち消される極性に接続される。つまり、放電ランプLaの各フィラメントの電源側端が、カレントトランスTの2つの巻線の同方向の巻端に接続されるから、図4において黒丸印で示した巻端に対して一方の巻線で電流が流れ込む向きのときには他方の巻線では電流が流れ出す向きになり、両巻線に流れる電流が等しいときには2次巻線出力は完全に打ち消されることになる。一方、フィラメントの一方が断線したり、ルーズコンタクト状態になると、フィラメントに接続された2つの巻線に流れる電流の大きさが等しくなくなり、カレントトランスTの2次巻線に出力が発生する。
【0043】
そこで、ダイオードD,DによりワイヤードORとして構成されたOR回路7を通してランプ異常保護回路8に第2のフィラメント検出回路6の出力を与え、上述のようにカレントトランスTの2次巻線出力が発生したときに、ランプ異常保護回路8の出力をHレベルにする。ここで、ランプ異常保護回路8は、図2に示したランプ寿命検出回路4の一部と共用される。すなわち、図2に示したランプ寿命検出回路4のコンデンサCと抵抗Rとの直列回路にダイオードDを介して抵抗Rを接続し、カレントトランスTの2次巻線出力にダイオードDおよび抵抗Rを介して抵抗Rを接続するのである。つまり、検出用巻線nの両端電圧は抵抗R,Rにより分圧され、カレントトランスTの2次出力電圧は抵抗R,Rにより分圧されることになる。
【0044】
この構成により、フィラメントの断線またはルーズコンタクト状態が生じたときには、放電ランプLaの寿命末期時と同様に、コンパレータCPの出力がHレベルになるのである。このように、ランプ異常検出回路8がランプ寿命保護回路4と第2のフィラメント検出回路6とに共用されることにより、回路構成が簡素化されることになる。
【0045】
ところで、上述したように、第1のフィラメント検出回路5はフィラメントの断線時に予熱時間を時限するためのコンデンサC11を短絡する機能を有するものであり、この機能をランプ寿命保護回路4および第2のフィラメント検出回路6と結び付けるために、図5に示すように、第1のフィラメント検出回路5におけるトランジスタQ10のベースにコンパレータCPの出力端を接続してある。また、第1のフィラメント検出回路5により異常(フィラメントの断線)が検出されると、その状態を保持するために、ランプ寿命検出回路4におけるコンパレータCPへの基準電圧Vref1を引き下げてコンパレータCPの出力がHレベルに保たれるようにしてある。つまり、抵抗R14,R15,R16の直列回路に直流電源Vccを印加し、抵抗R14,R15の接続点から基準電圧Vref1をコンパレータCPに与えるのであって、抵抗R16にはトランジスタよりなるスイッチング素子Q13を並列接続し、スイッチング素子Q13のベースをスイッチング素子Q10のべースに共通に接続している。したがって、いずれか一方のコンパレータCP1,CPの出力がHレベルになると、コンデンサC11の両端間が短絡され、インバータ回路2の動作周波数が予熱時と同じ周波数になるのである。なお、図5においては第2のフィラメント検出回路6は省略してある。また、スイッチング素子Q13がオンになると抵抗R16の両端間が短絡され、コンパレータCPの基準電圧Vref1が引き下げられる。つまり、コンパレータCPの出力がHレベルになると、スイッチング素子Q13がオンになり、コンパレータCPの出力がHレベルになる状態を維持することになる。図6に放電ランプLaに異常が生じたときの各部の動作を示す。図6(a)はコンパレータCPへの入力電圧(実線)と基準電圧(一点鎖線)Vref1との関係、図6(b)はコンパレータCPへの入力電圧(実線)と基準電圧(一点鎖線)Vref2との関係をそれぞれ示す。図6は放電ランプLaの寿命末期を異常として検出した場合を示している。まず、期間t〜tの予熱時、期間t〜tの始動時、期間t〜tの定常点灯時にはコンパレータCPへの入力電圧は基準電圧Vref1よりも低く、コンパレータCPへの入力電圧は基準電圧Vref2よりも高いから、両コンパレータCP,CPの出力はともにLレベルであって、コンデンサC11は短絡されない。
【0046】
次に、時刻tにおいて点灯中にランプ寿命検出回路4により寿命末期であることが検出されると、コンデンサCの両端電圧が上昇するのに要する一定時間が経過した後に、時刻tにおいてコンパレータCPの出力がHレベルになり、このとき基準電圧Vref1が引き下げられる。したがって、以後は予熱時と同じ動作周波数になり、放電ランプLaの両端電圧は引き下げられ、インバータ回路2の回路構成素子にストレスがかかるのが防止される。
【0047】
時刻tにおいて放電ランプLaを外すとコンパレータCPへの入力電圧が基準電圧Vref2よりも下がるから、コンパレータCPの出力がHレベルになる。このときには無負荷状態であるから、コンパレータCPの出力はHレベルを保つ。
【0048】
次に、時刻tにおいて正常な放電ランプLaを取り付けると、フィラメントに通電されるから第1のフィラメント検出回路5に設けたコンパレータCPの出力がLレベルになる。このとき、放電ランプLaが正常であることにより、コンパレータCPの出力もLレベルになってスイッチング素子Q13がオフになり、さらに、スイッチング素子Q12がオフになってコンデンサC11への充電が開始される。つまり、正常な放電ランプLaを装着して電源を投入したときと同様に、予熱、始動の過程を経て定常点灯状態に至るのである。このように、放電ランプLaに異常があるとインバータ回路2の動作周波数を予熱時と同じ周波数にして放電ランプLaの両端間に高電圧が印加されるのを防止する保護動作を行ない、正常な放電ランプLaを装着するとコンデンサC11の両端間の短絡状態を解除するだけで予熱、始動、定常点灯を自動的に行なうのである。つまり、電源リセットが不要であり、簡単な構成になる。なお、上述の構成ではランプ異常保護回路8が異常と判断したときに、インバータ回路2の動作周波数を放電ランプLaの予熱時の周波数と等しくしているが、必ずしも予熱時の周波数と完全に一致させる必要はなく、予熱時の周波数付近に設定しておけばよい。また、通常は放電ランプLaの定常点灯時にはインバータ回路2の動作周波数を10〜100kHzの範囲内で設定し、予熱時ないし異常時(保護動作時)には100kHz以上に設定する。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態は、図7に示すように、実施形態1の構成から第2のフィラメント検出回路6を省略し、それに伴いOR回路7も省略したものである。第2のフィラメント検出回路6ではフィラメントの断線のほかルーズコンタクト状態も検出するものであるが、ルーズコンタクト状態では出力トランスTの2次側電圧が上昇するから、本実施形態ではランプ寿命検出回路4の基準電圧Vref1を調節することによりランプ寿命検出回路4でのルーズコンタクト状態の検出が可能である。したがって、本実施形態の構成により実施形態1の構成よりも部品点数を少なくして小形化、軽量化、低コスト化を実現できる可能性がある。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態は、図8に示すように、実施形態1の構成から第1のフィラメント検出回路5を省略し、それに伴って抵抗R〜Rを省略したものである。第1のフィラメント検出回路5はフィラメントの断線を検出するために設けられたものであり、第2のフィラメント検出回路6においてもいずれか一方のフィラメントが断線したことを検出することができるから、第1のフィラメント検出回路5を省略しても実施形態1とほぼ同様の保護が可能である。したがって、本実施形態の構成により実施形態1の構成よりも部品点数を少なくして小形化、軽量化、低コスト化を実現できる可能性がある。
【0051】
(実施形態4)
本実施形態は、図9に示すように、実施形態1の構成において、放電ランプLaとして温度ヒューズFを内蔵したものを用いた例である。すなわち、温度ヒューズFはフィラメントを通る電路内に挿入されフィラメントの近傍に配置されているものであって、フィラメント付近の温度が異常に上昇したり、フィラメントに流れる電流が過大になるような異常が生じると、温度ヒューズFが断線し、第1のフィラメント検出回路5の動作によりインバータ回路2が保護動作の状態になるのである。この構成では、温度ヒューズFを備えた放電ランプLaを用いることにより、より安全かつ信頼性の高い放電灯点灯装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態1を示す回路図である。
【図2】同上の要部回路図である。
【図3】同上の要部回路図である。
【図4】同上の要部回路図である。
【図5】同上の要部回路図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】本発明の実施形態2を示す回路図である。
【図8】本発明の実施形態3を示す回路図である。
【図9】本発明の実施形態4を示す回路図である。
【図10】従来例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0053】
2 インバータ回路
4 ランプ寿命検出回路
5 第1のフィラメント検出回路
6 第2のフィラメント検出回路
8 ランプ異常保護回路
コンデンサ
コンデンサ
F 温度ヒューズ
インダクタ
La 放電ランプ
検出用巻線
予熱トランス
出力トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの両フィラメント間にインピーダンス要素を挿入した直列回路に電流を流すとともにこの電流の有無を検出する第1のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第1のフィラメント検出回路によりフィラメントを通る電流が検出されないと異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項3】
直流電源を高周波電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路の出力を昇圧して放電ランプに印加する出力トランスと、インバータ回路と出力トランスとの間に挿入された共振回路と、インバータ回路の出力を受けて放電ランプのフィラメントに予熱電流を流す予熱トランスと、インバータ回路から放電ランプのフィラメントへの予熱電流経路に挿入されインバータ回路の動作周波数が高いほど予熱電流を増加させるフィルタと、出力トランスに設けた検出用巻線の両端電圧の上昇時に放電ランプの寿命末期と判断するランプ寿命検出回路と、放電ランプの点灯時に両フィラメントに流れる電流の平衡・不平衡を検出する第2のフィラメント検出回路と、ランプ寿命検出回路により放電ランプの寿命末期が検出されるか第2のフィラメント検出回路により両フィラメントを流れる電流の不平衡が検出されると異常と判断して、インバータ回路の動作周波数を共振回路の共振周波数よりも高く設定されている放電ランプの点灯時の周波数よりもさらに高く設定するランプ異常保護回路とを具備することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項4】
ランプ異常保護回路は、異常と判断すると出力を異常側に保持し、正常な放電ランプに交換した後に第1のフィラメント検出回路によりフィラメントに流れる電流が検知されると異常側の保持を解除することを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
放電ランプは、各フィラメントにそれぞれ温度ヒューズが直列接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
ランプ異常保護回路は、異常と判断するとインバータ回路の動作周波数を放電ランプの予熱時の周波数付近に設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
インバータ回路の動作周波数は、放電ランプの点灯時の動作周波数を10〜100kHzの範囲内で設定し、ランプ異常保護回路が異常と判断するとインバータ回路の動作周波数を100kHz以上に設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−159599(P2008−159599A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75325(P2008−75325)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願平9−84175の分割
【原出願日】平成9年4月2日(1997.4.2)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】