説明

散水装置及び太陽光発電システム

【課題】 コンパクト且つシンプルな構造で、太陽電池パネルに散水する冷却水の散水位置を反復的に変化させる自動往復動作散水装置を提供する。
【解決手段】 駆動部と散水部とを備え、前記駆動部は、内部に空間を有するハウジングと、前記空間内を移動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、第1の入水口と、第2の入水口と、前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、第2の導入口と、前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、前記中子の移動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、を有し、前記散水部は、前記吐水筒体に連結され前記第1の方向に沿って前記中子に連動する散水筒体を有し、前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記散水筒体に設けられた散水口から放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水装置及び太陽光発電システムに関し、特に、太陽電池パネルに散水する冷却水の散水位置や散水方向を反復的に変化させる自動往復動作を可能とした散水装置及びこれを備えた太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を用いて発電する太陽光発電システムは、クリーンなエネルギー源として期待されている。しかし、太陽光を電力に変換する太陽電池は、太陽光を受けて温度が上昇すると発電効率が低下するという問題を有する。これに対して、太陽電池パネルの上部に水噴射装置を取り付けた太陽光発電システム(特許文献1)や、太陽電池表面にイオン水を霧状にして散水する散水手段を備えた太陽電池冷却システム(特許文献2)が提案されている。これらいずれも、太陽電池パネルの表面に水を流すことによって、温度上昇による発電効率低下を抑制することを目的としている。
【特許文献1】特開平7−038131号公報
【特許文献2】特開2004−079900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、太陽電池パネルの表面に水を流して冷却するに際しては、水資源やエネルギー資源の節約のために、できるだけ少量の水で効率よくパネル全面に散水することが望ましい。この観点からは、従来のシステムには改善の余地があった。
【0004】
すなわち、冷却水を散水する際の散水方向や散水位置が固定されている場合、パネル全面を均一に濡らすためには、数多くの散水口が必要とされ、結局、水の消費量が増えてしまう。
一方、固定された散水口から広角に噴霧するためには、水の勢いが必要であり、ある程度の水量が必要とされ、あるいは散水孔径を小さくする必要がある。前者の場合には、水の消費量が増加し、後者の場合は、散水孔が詰まるなどの新たな問題が発生することもありうる。
【0005】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、新規な発想に基づき、コンパクト且つシンプルな構造で、太陽電池パネルに散水する冷却水の散水位置や散水方向を反復的に変化させる自動往復動作を可能とした散水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に空間を有するハウジングと、
前記空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な第1の方向に前記空間内を移動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の移動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され前記第1の方向に沿って前記中子に連動する散水筒体を有し、
前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記散水筒体に設けられた散水口から放出することを特徴とする散水装置が提供される。
【0007】
上記構成によれば、中子の移動に伴い散水筒体を移動させることができ、散水位置を水力により変化させる散水装置を提供できる。また、第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させることにより、コンパクトでシンプルな構成で往復直線運動を生じさせることができる。
そして、散水筒体を往復運動させることで、少ない水量で太陽電池パネルの広範囲に均一に散水することができる。パネル表面を少ない水量で均一に濡らすことにより、水膜の厚みを薄くして気化熱を奪いやすくし、冷却効果が向上する。
【0008】
またここで、前記散水筒体は、前記第1の方向に沿って設けられた複数の前記散水口を有し、前記複数の散水口のピッチは、前記第1の方向に沿った前記中子の移動のストローク以下であるものとすれば、最小限の水量でむらなく散水することができる。従って、太陽電池パネルの上方の一辺全体にむらなく散水し、散水した水がパネルの勾配に従って流れるようにすれば、最小限の水量で太陽電池パネルの全面をむらなく濡らすことができる。
【0009】
またここで、前記第1の導入口を閉じ前記第2の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第2の圧力室に向けて移動し、前記第2の導入口を閉じ前記第1の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第1の圧力室に向けて移動するものとすれば、第1及び第2の圧力室の圧力差をより確実且つ安定して形成し、中子をより確実且つ安定して移動させ散水筒体を連動させることができる。
【0010】
またここで、前記中子の移動方向と前記弁体の可動方向とが略同一であるものとすれば、中子の移動運動を利用して弁体を移動させることができ、中子に連動させて散水筒体の円滑な反転動作を実現できる。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略垂直な第1の軸を中心として前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の回動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され、前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な方向に延在し、前記第1の軸を中心として前記中子の前記回動に連動する散水筒体を有し、
前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記散水筒体に設けられた散水口から放出することを特徴とする散水装置が提供される。
【0012】
上記構成によれば、中子の回動に伴い散水筒体を太陽電池パネルの上でスイングさせることができ、散水位置を水力により変化させる散水装置を提供できる。また、第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させることにより、コンパクトでシンプルな構成で往復回動運動を生じさせることができる。
そして、散水筒体を往復スイングさせることで、少ない水量で太陽電池パネルの広範囲に均一に散水することができる。パネル表面を少ない水量で均一に濡らすことにより、水膜の厚みを薄くして気化熱を奪いやすくし、冷却効果が向上する。
【0013】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な第2の軸を中心として前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の回動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され、前記第2の軸に対して略平行方向に延在し、前記第2の軸を中心としたスパイラル状の散水口が設けられ、前記第2の軸を中心として前記中子の前記回動に連動する散水筒体と、
前記吐水筒体を覆うようにその外側に設けられ、前記第2の軸に対して略平行方向に延在する散水スリットを有する散水カバーと、
を有し、
前記散水筒体が前記中子と連動すると、前記散水口と前記散水スリットとの重複部が移動しつつ、前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記重複部から放出することを特徴とする散水装置が提供される。
【0014】
上記構成によれば、中子の回動に伴い散水筒体を回動させて散水口と散水スリットとの重複部を移動させつつ太陽電池パネルの上に散水でき、散水位置を水力により変化させる散水装置を提供できる。また、第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させることにより、コンパクトでシンプルな構成で往復回動運動を生じさせることができる。
そして、散水位置を移動させることで、少ない水量で太陽電池パネルの広範囲に均一に散水することができる。パネル表面を少ない水量で均一に濡らすことにより、水膜の厚みを薄くして気化熱を奪いやすくし、冷却効果が向上する。
【0015】
ここで、前記第1の導入口を閉じ前記第2の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第2の圧力室に向けて回動し、前記第2の導入口を閉じ前記第1の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第1の圧力室に向けて回動するものとすれば、第1及び第2の圧力室の圧力差をより確実且つ安定して形成し、中子をより確実且つ安定して回動させることができる。
【0016】
また、前記中子の回動方向と前記弁体の可動方向とが略同一であるものとすれば、中子の回動運動を利用して弁体を移動させることができ、円滑な反転動作を実現できる。
【0017】
また、前記中子の回動方向の反転時に、前記弁体あるいは前記制御手段の少なくともいずれかが前記ハウジングの内壁に当接し、前記当接している部分における内壁と、前記弁体の可動方向と、が略垂直な関係を維持するものとして構成されているものとすれば、中子の回動に応じて、弁体の移動を円滑に進行させることができる。これにより、反転動作を円滑にし、より確実なものとすることができる。
【0018】
前記制御手段は、前記第1の導入口の開度よりも前記第2の導入口の開度が大なる第1の状態と、前記第2の導入口の開度よりも前記第1の導入口の開度が大なる第2の状態と、を択一的に保持可能とすることができる。このようにすれば、第1の導入口と第2の導入口の開度が略同一の状態に放置されることを防ぎ、中子が停止したままになることを防止できる。
【0019】
また、上記いずれの態様においても、前記制御手段は、前記弁体の移動ストロークよりも長いストロークで動作可能であり前記弁体を移動させるスライドバーと、前記スライドバーをそのストロークの一端または他端に付勢する板ばねと、を有するものとすることができる。すなわち、板ばねとスライドバーとによって信頼性の高いコンパクトな制御手段を構成でき、第1の導入口と第2の導入口の開度が略同一の状態に放置されることを防ぎ、中子が停止してしまうことを確実に防止できる。
【0020】
一方、本発明のさらに他の一態様によれば、
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの一端に設けられる上記のいずれかの散水装置と、
を備えたことを特徴とする太陽光発電システムが提供される。
上記構成によれば、コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用した反復的な直線動作あるいは回動動作により太陽電池パネルを効率的に冷却・洗浄可能とした高効率かつ高安定出力の太陽光発電システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用した反復的な直線動作あるいは回動動作を可能とした散水装置及びこれを備えた太陽光発電システムを提供することができ、産業上のメリットは多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【0023】
本実施形態にかかる太陽光発電システムは、太陽電池パネル950と、その上方に設けられた散水装置10と、を備える。散水装置10は、駆動部100と、散水部830と、支持部910と、を有する。この太陽光発電システムは、建物の屋根960の上などに設置され、太陽光を太陽電池パネル950に受けて電力を発生する。そして、散水装置10に水を供給すると、散水部830が矢印Mの方向に往復直線運動しながら、太陽電池パネル950の表面に散水する。
【0024】
図2は、本実施形態の散水装置10の断面構造を例示する模式図である。
駆動部100は、外部から供給される水の圧力によって、散水部830を矢印Mの方向に往復直線運動させつつ、散水部830に水を供給する。すなわち、駆動部100には、2つの入水口112、114が設けられている。これら入水口112、114を並列に接続し、水をこれら入水口112、114にほぼ同圧に供給すると、吐水筒体180が矢印Mで表したように、左右に往復運動をしながら、水を散水部830に送出する。
【0025】
散水部830は、散水筒体832と、その中空空間としての散水流路834と、を有する。散水筒体832には、ひとつあるいは複数の散水口838が設けられている。
駆動部100から供給された水は、散水流路834に流入し、散水口838から太陽電池パネル950に向けて散水される。散水された水は、太陽電池パネル950の勾配に従って下方に流れ、パネル950の全面に行き渡る。
【0026】
支持部910は、散水部830の他端に結合された支持軸912と、支持軸912を回動自在に支持する軸受914と、軸受914を保持する支持台912と、を有する。支持部910は、必ずしも設けなくてもよい。ただし、現行の太陽電池パネル950は、例えば、1メートル×1メートルのサイズでおよそ100ワット程度の電力を発生するものであるので、散水部830の長さも1メートル以上となる場合も多い。このような時には、「たわみ」を防ぐために支持部910を設けることが望ましい。
【0027】
また一方、散水部830の両側に駆動部100を設けて、これら駆動部100を同期させながら動作させてもよい。
【0028】
前述したように、太陽電池パネル950に収容されている太陽電池の温度が上昇すると光電変換効率が低下する。したがって、効率のよい発電を行うためには、太陽電池パネルを冷却することが望ましい。従って、太陽電池パネル950をできるだけ均一に冷却する必要がある。また一方、冷却水の気化熱を効果的に利用する観点や、省資源の観点からは、できるだけ少量の水で均一に広範囲に散水することが望ましい。
【0029】
またさらに、太陽電池パネル950は、その取り出し電力の低下を防ぐために、その表面を常に清浄に保つ必要がある。すなわち、埃や雨水による「しみ」あるいは鳥の糞などが付着すると、太陽光が遮られるために出力電力が低下する。この観点からも、できるだけ少量の水で均一に散水洗浄することが望ましい。
【0030】
これらの要求に対して、本実施形態によれば、ひとつあるいは複数の散水口838が設けられた散水部830を矢印Mの方向に往復直線運動させながら散水することにより、少ない水量で、太陽電池パネル950の表面に均一に散水することができる。その結果として、均一な冷却効果と優れた洗浄効果が得られ、太陽電池パネルの出力を常にベストの状態に維持できる。
なお、本具体例においては、往復直線運動のストロークを、散水部830の散水口838のピッチと同程度以上とすると、太陽電池パネル950の表面に均一に散水できる。また、散水口838のそれぞれに水を拡散吐水させるようなノズルを設けると、より均一に散水することが可能となる。
【0031】
以下、本実施形態の散水装置10の構造および動作についてさらに詳細に説明する。
図3は、本実施形態の散水装置の全体構成を例示する模式図である。
すなわち、駆動部100は、ハウジング102と、ハウジング102から突出した吐水筒体180と、を有する。図3には、吐水筒体180がハウジング102の片側から突出した駆動部を表したが、本発明はこれには限定されず、後に具体例を挙げて説明するように、吐水筒体180はハウジング102の両側に設けてもよい。そして、吐水筒体180の中には吐水流路182が設けられ、その先端に散水部830を接続することにより、散水W2が得られる。
【0032】
ハウジング102には、2つの入水口112、114が設けられている。これら入水口112、114を並列に接続し、水W1をこれら入水口112、114にほぼ同圧に供給すると、吐水筒体180が矢印Mで表したように、左右に往復運動をしながら、散水部830から水W2を散水する。従って、ハウジング102を固定すれば、散水位置が反復的に変化する散水装置として利用できる。
【0033】
なお、本発明においては、往復直線運動のみならず、往復回動運動も可能である。この点については、後に具体例を挙げて詳述する。
【0034】
図4乃至図7は、本実施形態の散水装置の動作メカニズムを説明するための模式図である。すなわち、駆動部100は、ハウジング102の中に移動可能に設けられた中子(なかご)120を有する。ハウジング102の内部は、中子120によって2つの圧力室116、118に分割されている。中子120は中空構造を有し、その中空空間は、吐水筒体180に設けられた吐水流路182と連通した中子内流路124を構成している。また、中子内流路124は、導入口132、134を介してそれぞれ圧力室116、118と連通する。
【0035】
中子120には、導入口132、134の開度を変化させる弁体142、144が設けられている。また、中子120には、これら弁体142、144を制御する制御手段が設けられている。制御手段によって導入口132、134の開度に差を設けることにより、入水口から中子内流路124に至る左右の流路の流路抵抗を異ならせ、これにより左右の圧力室116、118に生ずる圧力差を利用して中子120を移動させることができる。図4に表した状態においては、制御手段は弁体142、144をそれぞれ右端に付勢された状態とし、中子120の右側に水の導入口134が開かれている。従って、入水口114から供給された水は、圧力室118から矢印Cで表した経路で中子120の中子内流路124に流入し、吐水筒体180に設けられた吐水流路182を通って矢印Dで表したように流出する。一方、ハウジングの入水口112から供給された水は流出経路がないため、圧力室116の圧力は圧力室118の圧力よりも上昇する。その結果として、中子120は矢印Mの方向に動く。
【0036】
図8は、導入口132、134の開度に差を設けることの作用効果を説明するための模式図である。
すなわち、図8(a)に例示したように、弁体142、144が中立的な状態にあり、導入口132、134の開度がほぼ同一の状態においては、これら導入口132、134を介した流路の流路抵抗もほぼ同一となるので、中子120の左右で圧力差は生じない。従って、何らかの外力が作用しないと中子120は動かない。
【0037】
これに対して、図8(b)に例示したように、弁体142、144が中立的な状態から外れて導入口132、134の開度に差が生ずると、流路抵抗にも差が生ずるために、中子120の左右で圧力差が生ずる。
【0038】
なお、本願明細書において、導入口の「開度」とは、導入口と弁体との間を流れる水の流路抵抗を決定するパラメータであるものとする。例えば、図8(b)に表した状態においては、導入口132と弁体142との間に形成される流路の流路抵抗は、導入口134と弁体144との間に形成される流路の流路抵抗よりも高い。この場合、導入口132の開度は、導入口134の開度よりも小さいものとする。
図8(b)に表した具体例の場合には、導入口134の開度が導入口132の開度よりも大きいので、導入口132を介した流路のほうが流路抵抗が高くなる。その結果として、中子120の左側のほうが右側よりも圧力が高くなる。その結果として、中子120及び弁体142に圧力差による力がそれぞれ作用する。
【0039】
従って、中子120にかかる力が摺動抵抗を上回る時には、中子120は右側に動くこととなる。また一方、弁体142も中子120に対して移動可動であるので、弁体142にかかる力が弁体142の摺動抵抗を上回る時には、弁体142が中子120に対して相対的に右側に移動する。弁体142が右側に移動すると導入口132を介する流路抵抗がますます高くなるために圧力差が拡大する。つまり、中子120及び弁142にかかるそれぞれの力は増加することとなり、中子120と弁体142の移動が促進される。
そして遂には、図8(c)に表したように、導入口132が全閉状態となる。この時、左右の流路抵抗の差が最も大きい状態となり、中子120及び弁体142には、最大の圧力差に対応した力がそれぞれ作用する。
【0040】
以上説明したように、本発明の散水装置において中子120を動かすためには、導入口132、134の開度に差を設けて移動に必要な圧力差を生じさせればよい。このとき、導入口の一方を開状態、他方を閉状態とすることで最大の圧力差が得られ、最も確実且つ安定的な移動力が得られる。
【0041】
再び図5に戻って説明を続けると、同図に表したように中子120がハウジング102内をその移動ストロークの右端または右端近傍まで動くと、制御手段の制御によって、弁体142、144が左側に移動する。すると、中子120の右側の導入口134は閉じられ、左側の導入口132が開かれる。この状態においては、入水口112から供給された水は矢印Cで表したように圧力室116から導入口132を介して中子120の中子内流路124に流入し、矢印Dで表したように吐水筒体180から流出する。一方、入水口114から供給された水は流出経路がないために圧力室118の圧力が上昇する。その結果として、中子120は、図5及び図6に矢印Mで表したように左方向に動く。
【0042】
中子120が左側に動き続け、図7に表したように、ハウジング102の左端または左端近傍に至ると、制御手段の制御によって、弁体142、144が右側に移動する。すると、図4に関して前述したように、中子120の左側の導入口132が閉じて右側の導入口134が開く。その結果として、圧力室118の圧力が低下し、圧力室116の圧力が上昇して中子120は矢印Mで表したように右側に動く。この後、図4乃至図7に関して前述した動作を繰り返すことにより、中子120は、ハウジング102の中を左右に反復して動き続ける。
【0043】
以下、本実施形態の散水装置の駆動部100の構造について、具体例を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0044】
図9乃至図12は、本実施形態の駆動部100の要部を表す模式図である。すなわち、図9は、本具体例の駆動部の斜視図であり、図10は、その斜視切断図、図11は、断面図、図12は、図11のA−A線断面図である。
本具体例の駆動部100は、ハウジング本体103とハウジング蓋104により形成されるハウジング102から吐水筒体180が突出した例を有する。吐水筒体180は、内部に吐水流路182を有する中空構造となっており、先端にて開口している。なお、吐水筒体180は、必ずしも円柱状である必要はなく、角柱状や偏平形状など、各種の形状を与えることができる。
【0045】
ハウジング本体103に設けられた入水口112、114に水などの流体を導入すると、左右に突出した吐水筒体180が矢印Mの方向に往復直線運動をする。従って、吐水筒体180の先端に散水部830を設ければ、散水位置が反復的に移動する散水装置を構成できる。
【0046】
その内部構造について説明すると、図10乃至図12に表したように、ハウジング本体103及びハウジング蓋104により形成されるハウジング102のシリンダ空間に、中子本体121と中子蓋122とからなる中子120が移動可能に収容されている。中子120は、ハウジング102から突出する吐水筒体180に連結され、ハウジング内を第1の圧力室116と第2の圧力室118とに分割してピストンのように動く。これら圧力室116、118のそれぞれには、入水口112、114からそれぞれ水などの流体が導入される。中子120とハウジング102の内壁との摺動部には、液密を維持しつつ摺動を円滑にするためのシール126が設けられている。また、吐水筒体180とハウジング102との摺動部にも、同様の目的でシール184が設けられている。これらシール126、184の材料は、液密を維持しつつ摺動を円滑にするものであり、例えば、テフロン(登録商標)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPOM(ポリアセタール)などを用いることができる。なお、ここでいう「液密」とは、左右の圧力室に圧力差を生じさせるに足る状態を確保できればよい。
【0047】
次に、中子120の構造について説明する。
中子本体121に中子蓋122を組合せることにより中子内流路124が形成され、この中子内流路124は、吐水筒体180に設けられた吐水流路182に連通している。中子本体121及び中子蓋122には、中子内流路124と圧力室116、118とを連通させる導入口132、134が設けられている。
【0048】
そして、本具体例においては、制御手段として板ばねとスライドバーとが中子120に設けられている。
すなわち、中子本体121に中子蓋122を組合せることにより中子内流路124が形成され、この中子内流路124は、左右の吐水筒体180に設けられた吐水流路182に連通している。中子本体121及び中子蓋122には、中子内流路124と圧力室116、118とを連通させる導入口132、134が設けられている。そして、この中子内流路124を横断するように、主弁142、144、スライドバー146、148が設けられている。
【0049】
図13は、これら主弁及びスライドバーを表す斜視図である。
左右の主弁142、144は連結棒149により連結され、中子本体121及び中子蓋122に設けられた導入口132、134を貫通して左右に移動可能に設置されている。つまり、弁体としての主弁142、144は、中子本体121に対して、所定のストロークで左右に移動可能に設置されている。主弁142、144にはリブ143が形成されており、主弁142、144が導入口132、134に対して同軸に移動するように構成されている。主弁142、144がそれぞれ中子120から離れる方向に移動すると、これらリブ143の間に設けられている溝部145が導入口132、134の開口部となり流体の流路を形成する。そして、これら主弁142、144を同軸状に貫通するスライドバー146、148が、やはり左右に移動可能に設置されている。つまり、スライドバー146、148は、主弁142、144の動作ストロークよりも長いストロークで左右に移動可能に設置されている。
【0050】
図10乃至図12に例示したように、主弁144が中子本体121から離れる方向に移動すると導入口134が開かれる。一方、これとは逆に、主弁142が中子蓋122から離れる方向に移動すると導入口132が開かれる。
これら導入口132、134は、いずれも中子内流路124に連通している。つまり、導入口132は、ハウジング内の圧力室116と中子内流路124とを連通させ、導入口134は、圧力室118と中子内流路124とを連通させる。
【0051】
そして、これら導入口132、134の開度を変化させる主弁142、144の動作は、同軸に設置されたスライドバー146、148により決定される。すなわち、図12に表したように、左右のスライドバー146、148は圧縮された板ばね160をはさんで連結され、板ばね160の湾曲方向に応じて右端あるいは左端に向けた付勢力を受ける。なお、板ばね160は、その両端が中子本体121に支持されており、スライドバー146、148は、板ばね160を介して中子本体121に対して相対的に移動する。主弁142、144は、スライドバー146、148からこの付勢力を受けて、導入口132、134を全開状態あるいは全閉状態の択一的な状態にする。すなわち、スライドバー146、148と板ばね160が制御手段として作用し、弁体である主弁142、144を制御する。
【0052】
以下、本具体例の駆動部の動作について説明する。
図14は、本具体例の駆動部の往復動作を表す模式図である。
すなわち、同図(a)は、スライドバー146、148が板ばね160の作用により向かって右側に向けて付勢された状態を表す。この時、主弁142、144もスライドバー146により右側に向けて付勢されるので、導入口132は閉じ、導入口134が開いた状態が形成される。
【0053】
この状態で入水口112、114にほぼ同圧に水などの流体を供給すると、矢印Bで表したように入水口114から圧力室118に導入された水は、矢印Cで表したように導入口134から中子内流路124に流入し、左右に連通する吐水流路182を介して矢印Dで表したように流出する。
これに対して、矢印Aで表したように入水口112から圧力室116に導入された水は、導入口132が閉じているために流出経路がなく、圧力室116の圧力を上昇させる。
つまり、導入口132、134の開度に差を設けることにより流路抵抗に差が生じ圧力差が生ずる。その結果として、圧力室118よりも圧力室116の圧力のほうが高くなり、中子120は矢印Mの方向に押されて移動する。
【0054】
なお、中子120が矢印Mの方向に移動すると、圧力室116の容積が増大し、その分だけ圧力室118の容積が縮小する。このため、矢印Aの経路による圧力室116への流体の流入量の分、圧力室118内の流体も押し出され、流路182から流出する流体の吐水量に含まれることとなる。
【0055】
図14(a)に表した状態から中子120が矢印Mの方向にさらに移動を続け、スライドバー148がハウジング本体103の内壁に当接し、中子に対して押されると、板ばね160の湾曲方向が反転し、図14(b)に表したように、スライドバー146、148は、向かって左側に向けて付勢される。すると、スライドバー148が主弁144を押すことにより、主弁142、144も左側に移動する。すなわち、導入口132が開き、導入口134が閉じる。
図14(b)に表した状態においては、矢印Aで表したように入水口112から圧力室116に導入された流体は、矢印Cで表したように、導入口132から中子内流路124に流入し、吐水流路182を介して矢印Dで表したように流出する。これに対して、矢印Bで表したように、入水口114から圧力室118に導入された流体は、導入口134が閉じているために流出経路がなく、圧力室118の圧力を上昇させる。その結果として、圧力室116、118に圧力差が生じ、中子120は矢印Mで表したように左側に向けて移動を開始する。
【0056】
中子120が移動を続けると、図14(c)に表したように、スライドバー146がハウジング蓋104の内壁に当接する位置まで移動する。この状態からさらに中子120が移動し、スライドバー146が中子120に対して押されることにより、板ばね160の湾曲方向が反転して、右側に付勢される。すると、図14(a)に表した状態と同様に、導入口132が閉じて導入口134が開いた状態となり、中子120は右側に向けて移動を開始する。
【0057】
以上説明したように、本具体例によれば、中子120に弁体としての主弁142、144と、スライドバー146、148及び板ばね160からなる制御手段を設けることにより、中子120の移動に応じて導入口132、134の開度差の大小関係を適宜逆転させ、中子120を左右に反復的に動作させることができる。本具体例における中子120の往復運動のストロークは、ハウジング本体103の長さと、中子120の厚み(幅)と、により適宜設定できる。
【0058】
次に、本具体例における制御手段の作用についてさらに詳しく説明する。
図15は、本実施例における制御手段の動作を説明するための模式図である。
すなわち、同図(a)は、板ばね160が向かって右側に湾曲してスライドバー146、148をこの方向に付勢している状態を表す。この時、主弁142により導入口132は閉じ、主弁144により導入口134は開いた状態とされる。
さて、この状態で中子120が向かって右側に移動していくと、同図(a)に表したようにハウジングの内壁にスライドバー148が当接する。中子120には圧力差が働いているため、スライドバー148をハウジング内壁に当接した状態で、中子120はさらに右に移動し、図15(b)に表した状態になる。すなわち、板ばね160の付勢力に打ち勝って中子120とスライドバー148との相対位置を変化させ、中子120に対してスライドバー148が押される。この結果、板ばね160も左側に押されて変形し、同図に例示したような略S字状の状態となる。このとき、主弁142、144には中子120と同様に圧力差が働いており、導入口132、134の開閉状態を変化させない。
【0059】
この後、中子120がさらに移動することにより、中子120に対してスライドバー148がさらに押されると、図15(c)に表したように、板ばね160の湾曲方向が左側に反転を開始し、スライドバー146、148を左側に付勢する。
【0060】
すると、図15(d)に表したように、板ばね160の付勢力によって主弁142、144が左側に移動し、導入口132が全開となり導入口134が全閉の状態となる。
【0061】
以上説明したように、本具体例においては、圧縮した板ばね160の湾曲方向をスライドバー146、148により適宜反転させ、その付勢力を利用して主弁142、144を動作させることにより導入口132、134を全開及び全閉のいずれかの状態に択一的に制御する。つまり、板ばね160の付勢力を利用することで、中子120の反転のために左右の導入口132、134の開度差を確実に形成している。
【0062】
スライドバー146、148を介して主弁142、144を制御する本具体例の機構は、本実施例の吐水装置の円滑な動作に対して極めて重要な役割を有する。すなわち、圧縮された板ばね160は、右側あるいは左側に湾曲した状態が安定状態であるが、図15(b)に表したようにこれら安定状態の中間付近において、準安定な中立状態となる場合がある。つまり、この状態において、板ばね160には、左あるいは右への付勢力があまり発生しない。従って、この状態において、仮に導入口132、134の開度がほぼ同一の状態となると、中子の両側の導入口132、134から流体が流入するために圧力差が無くなり、中子120の移動が停止してしまう。つまり、主弁142、144の動作開始のタイミングが板ばね160の反転のタイミングよりも早いと、中子120の動作が停止してしまうことがある。
【0063】
これに対して、本具体例によれば、スライドバー146、148を設け、そのストロークを適宜調整することにより、図15(b)のような準安定な中立状態においては、主弁142、144がまだ移動せず、中子120に圧力がかかって動き続ける状態を維持できる。そして、この中立状態を越えて板ばね160が反転を開始した時に主弁142、144が移動を始めるようにすることができる。つまり、主弁142、142の動作開始のタイミングを、板ばね160の反転のタイミングに同期させることができる。
【0064】
言い換えれば、中子120を移動させるに足る開度差がなくなる前に板ばね160を反転させ、その反転力(付勢力)によりスライドバー146、148を介して主弁142、144を移動させ、導入口132、134の開度差を、中子120を逆方向に移動させるに足る開度差に逆転させることができる。
【0065】
このようにすれば、板ばね160が中立状態の時に導入口132、134の開度がほぼ等しい状態となり中子120が停止してしまう、という問題を解消して、円滑な反復運動を実現できる。
【0066】
また、このようにすると、中子120がその移動ストロークの中間付近などに停止している状態から散水を開始させるような場合においても、散水開始時に板ばね160により主弁142、144を制御して導入口132、134のいずれかが択一的に開かれた状態にあり、中子120の両側に圧力差を形成させて安定した初期動作を開始させることができる。つまり、導入口132の開度よりも導入口134の開度が大なる状態と、導入口134の開度よりも導入口132の開度が大なる状態と、を択一的に保持可能とすることができる。
【0067】
以上説明したように、本具体例においては、中子120の移動方向と、主弁142、144の可動方向、スライドバー146、148の可動方向、板ばね160の付勢方向を略同一とすることにより、力の働き方に無駄がなく、受圧面積の大きな中子の移動力を有効に活用でき、円滑かつ安定した動作が可能となる。つまり、中子120の移動動作と開度制御動作とを連動させることにより、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させる制御動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0068】
なお、図9乃至図15に表した具体例の場合、中子120の反転に際して、スライドバー146、148をハウジングの内壁に当接させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スライドバー146、148に磁石を設け、一方、ハウジングの内壁にも磁石を設け、これらの間に作用する反発力を利用してスライドバー146、148をハウジングに対して相対的に停止させることも可能である。つまりこの場合には、図15(a)乃至(c)に対応する状態において、スライドバー146、148がハウジング102の内壁に当接せず、磁石(図示せず)の反発力によりハウジング102の内壁から所定の距離だけ離れた状態にあることとなる。このようにすれば、非接触で中子120の反転が可能となる。
【0069】
また一方、本実施例においては、往復直線動作において得られる推力は、中子120に負荷される流体の圧力と中子の受圧面積との積により決定される。従って、中子120の受圧面積を増加させれば、それに応じた大きな推力を得ることが可能となる。
【0070】
また、図1乃至図15においては、ハウジング内に設けられた略円筒状の空間に円形の中子120を収容した具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。例えば、ハウジング本体103の内部空間は、角柱状でも偏平柱状でもよく、中子120もこれら形状に合わせて各種の形状とすることができる。
【0071】
また、吐水筒体180の外周形状も円形である必要はなく、多角形状や偏平形状であってもよい。またさらに、吐水筒体180は中子120の中心に設ける必要はなく、中子120の中心から偏心させて設けてもよい。このようにすれば、中子120の小型化が容易であり、駆動部100を小型化できる。
【0072】
なお、本具体例の如くハウジング内空間を円柱状とし、吐水筒体180を円筒状の中子120の中心に設けた場合には、吐水筒体180を回転できる。つまり、吐水筒体180の先端に散水部830を設けた場合に、中子120の往復直線運動によってその散水位置を反復的に変化させることができると同時に、散水部830を回転させることにより、その散水方向を変化させることも可能である。
【0073】
例えば、屋根の傾斜角度によって、太陽電池パネル950の設置角度が現場毎に異なる場合がある。このような場合でも、吐水筒体180を回転できれば、散水口838の散水方向を現場で最適な方向に調整でき、使い勝手や施工性に優れる。
【0074】
ところで、本発明においては、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させる制御手段として、板バネとスライドバーとを利用する方法の他にも、例えば、磁石を利用する方法もある。
【0075】
図16は、磁石によって中子120の反転動作を制御するメカニズムを説明するための模式図である。
すなわち、図16(a)は、中子120が向かって左側から右側に向けて移動し、ハウジング本体103の内壁に弁体144が当接した状態を表す。なお、この具体例の場合、中子120には磁石170が設けられ、ハウジング102には磁石(または強磁性体)174が設けられている。図16(a)の状態においては、中子120に対して圧力差による力が働くので、中子120はさらに右側に移動する。すなわち、弁体144をハウジング102に当接させ移動方向に対して固定した状態で、中子120はさらに右側に移動する。
【0076】
すると遂には図16(b)に表した状態になる。この状態においては、導入口132、134の開度はほぼ同一であるので、流路抵抗の差による圧力差は生じない。しかしこの時、磁石170と磁石(または強磁性体)174との間に作用する引力によって中子120をさらに右側に引き寄せることが可能である。
【0077】
なおこの場合、中子120の摺動抵抗の値によっては、図16(b)に表した状態になる前に中子120が停止することもあり得る。このような場合には、図16(a)と図16(b)の間の状態において磁石170と磁石(または強磁性体)174との間に作用する引力により中子120を引き寄せることが望ましい。
【0078】
さて、図16(b)に表した状態から中子120が磁石の引力によって右側に引き寄せられると、図16(c)に表したように導入口132の開度が導入口134の開度よりも大きい状態が形成される。すると、これら導入口132、134の流路抵抗に差が生じ、圧力差が生ずる。すなわち、中子120の右側の圧力のほうが高くなり、中子120は向かって左側に動き始める。つまり、導入口132、134の開度差の大小関係を逆転させることにより、中子120を反転させることが可能となる。
【0079】
またこの時、図8に関して前述したように、圧力差は弁体144にも作用し、弁体144を閉じる方向の力が働く。その結果として、図16(d)に表したように、弁体144が完全に閉じられ、中子120の右側の圧力は最大値に上昇する。つまり、中子120を反転させた後、左側への最大の駆動力が得られる。
【0080】
以上説明したように、磁石170と磁石(または強磁性体)174との間に作用する引力によって、中子120を図16(c)に表した状態まで引き寄せることができれば、導入口132、134の開度差の大小関係を逆転させることができ、中子120を反転させることができる。つまり、中子120をハウジング102の中で往復直線運動させることができる。
【0081】
なお、この場合、反転後に中子120が磁石の引力に打ち勝って移動する必要がある。つまり、圧力差により中子120に作用する力と、磁石により得られる引力とのバランスを適宜設定することが望ましい。
【0082】
また、図16に表した具体例の場合、弁体142、144の表面(ハウジング102との当接面)は曲面状に突出し、ハウジング102に当接した状態でも隙間が生ずるようにしている。このように、ハウジング102への当接面積を小さくすることによって、弁体が受ける圧力差を有効に活用でき、開度の大小を逆転させるという弁体の反転動作を円滑に行うことができる。
【0083】
また、図16に表した具体例の場合、中子120の反転に際して、弁体142、144をハウジング102の内壁に当接させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、弁体142、144に磁石を設け、一方、ハウジング102の内壁にも磁石を設け、これらの間に作用する反発力を利用して弁体142、144をハウジング2に対して相対的に停止させることも可能である。つまりこの場合には、図16(a)乃至(c)に対応する状態において、弁体142、144がハウジング102の内壁に当接せず、磁石(図示せず)の反発力によりハウジング102の内壁から所定の距離だけ離れた状態にあることとなる。このようにすれば、非接触で中子を反転させることができる。
【0084】
以上説明したように、中子120を動かすためには、導入口132、134の開度に差を設けて移動に必要な圧力差を生じさせればよい。また同様に、中子120の移動方向を反転させる際にも、制御手段によって、導入口132、134の開度の大小関係を逆転させればよい。例えば、導入口132及び134の開度の比率を制御手段によって、70:30から30:70に変化させることにより、反転動作が可能である。またさらに、制御手段によって、開度を100:0から0:100に変化させれば、最も確実且つ安定的反転動作が可能となる。
【0085】
本実施形態によれば、ハウジング102に収容した中子に弁体142、144と制御手段を設け、両側の圧力室に水を供給することにより、中子120を往復運動させることができる。このとき、中子120の移動方向と弁体142、144の可動方向とを略同一とすることにより、中子120の移動動作と開度制御動作とを連動させ、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させるという弁体の反転動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0086】
本発明によれば、電気などの機械動力を必要とせず、水等の供給圧力のみで円滑な往復反転運動が可能となり、電源の設置や感電あるいは漏電など対する対策が不要となる。また、電磁ノイズなどの外乱にも影響されず円滑な動作が可能である。その結果、建物の屋根や外壁、あるいは地表面などの屋外環境に設置される太陽電池パネルに付設して安定した動作をさせることができる。
【0087】
またさらに、本発明の散水装置は、弁体142、144や制御手段が中子120に付属して設けられているので、例えば外付けの4方弁などが不要となり、シンプルな構成で円滑な往復反転運動を実現できる。その結果として、小型化が容易となり、また流路がシンプルになるため、圧力損失を抑えることができ、吐水量や吐水圧を確保できる点でも有利である。また、弁体142、144や制御手段がハウジング102の中に内蔵されている構造であるため、外乱に強く円滑な動作を実現できる。その結果として、屋外環境に設置される太陽電池パネルに付設して安定した冷却・洗浄動作をさせることができる。
【0088】
また、給水に関しても、同一の給水源から分岐して2つの入水口に接続するだけでよく、施工性に優れる。
さらに、移動する中子と吐水筒体の内部に水の流路が形成されているため、吐水筒体の先端に様々な散水筒体を接続するだけで散水位置を往復運動させることが可能であり、特別な接続部材が不要である点でも、施工性に優れる。
特に、太陽光発電システムは、建物の屋根などの既存の設備の上に「後付け」で取り付ける場合も多い。このように、様々な条件のもとに太陽光発電システムを後付けする場合にもおいても、本発明の散水装置は施工性に優れる点で有利である。
【0089】
図17は、本具体例の駆動部の変型例を表す模式断面図である。
同図については、図1乃至図16に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変型例においては、吐水筒体180が中子120の両側に設けられている。すなわち、吐水筒体180は、ハウジング102の両側から突出している。これら一対の吐水筒体180は、それぞれ吐水しながら同一方向に同期して往復運動をする。本変型例は、両端から散水を得たい場合に特に便利である。例えば、隣接する2枚の太陽電池パネルの間にこの駆動部を配置し、その両側に散水部830を設けてこれら2枚の太陽電池パネルに同時に散水することが可能となる。
【0090】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図18は、本発明の第2の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【0091】
本実施形態にかかる太陽光発電システムは、太陽電池パネル950と、その上方に設けられた散水装置20と、を備える。散水装置20は、駆動部200と、散水部830と、を有する。この太陽光発電システムも、建物の屋根960の上などに設置され、太陽光を太陽電池パネル950に受けて電力を発生する。そして、散水装置20に水を供給すると、散水部830が矢印Mの方向に往復回動運動(スイング)しながら、太陽電池パネル950の表面に散水する。
【0092】
図19は、本実施形態の散水装置20の断面構造を例示する模式図である。
駆動部200は、外部から供給される水の圧力によって、散水部830を矢印Mの方向に往復回動運動させつつ、散水部830に水を供給する。以下、この駆動部200の構造と動作について、詳細に説明する。
図20乃至図24は、本実施形態の駆動部200の要部を表す模式図である。すなわち、図20は、本実施例の駆動部200の斜視図であり、図21は、その斜視切断図、図22は、底面側から眺めた斜視図及び切断図、図23は、縦断面図、図24は、図23のB−B線断面図である。
【0093】
本具体例の駆動部200は、ハウジング本体203とハウジング蓋204、205により形成されるハウジング202から一方に吐水筒体280が突出した例を有する。吐水筒体280は、内部に吐水流路282を有する中空構造となっており、先端にて開口している。ハウジング202に設けられた入水口212、214に水など流体を導入すると、吐水筒体280が矢印Mの方向に往復回動運動をする。従って、吐水筒体280の先端に散水部830を設ければ、散水位置が反復的に変化する散水装置を形成できる。
【0094】
その内部構造について説明すると、図21乃至図24に表したように、ハウジング本体203及びハウジング蓋204、205により形成される扇状のハウジング空間に、中子本体221と中子蓋222とからなる中子220が吐水筒体280を中心軸として回動可能に収容されている。すなわち、中子220は、ハウジング202内を貫通する吐水筒体280と連結され、扇状のハウジング内を第1の圧力室216と第2の圧力室218に分割して回動する。これら圧力室216、218のそれぞれには、入水口212、214からそれぞれ水などの流体が導入される。中子220とハウジング202の内壁との摺動部には、液密を維持しつつ摺動を円滑にするためのシール227が設けられている。また、吐水筒体280とハウジング202との摺動部にも、同様の目的でシール226が設けられている。これらシール227、226の材料も、液密を維持しつつ摺動を円滑にするものであり、例えば、テフロン(登録商標)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPOM(ポリアセタール)などを用いることができる。なお、ここでいう「液密」とは、左右の圧力室に圧力差を生じさせるに足る状態を確保できればよい。
【0095】
次に、中子220の構造について説明する。
本実施形態においても、中子220は、前述した第1実施形態と同様の弁体と制御手段とを備える。すなわち、中子220の中には中子内流路224が形成され、この中子内流路224は、吐水筒体280に設けられた吐水流路282に連通している。中子220には、中子内流路224と圧力室216、218とを連通させる導入口232、234が設けられている。そして、この中子内流路224を横断するように、主弁242、244、スライドバー246、248が設けられている。これら主弁及びスライドバーの形状は、図13に関して前述した如くである。また、これら要素からなる弁体と制御手段の動作についても、第1実施形態に関して前述したものと同様である。
すなわち、図24に例示したように、主弁244が中子本体220から離れる方向に移動すると、導入口234が開かれる。一方、これとは逆に、主弁242が中子本体220から離れる方向に移動すると、導入口232が開かれる。
これら導入口232、234は、いずれも中子内流路に連通している。つまり、導入口232は、ハウジング内の圧力室216と中子内流路224とを連通させ、導入口234は、圧力室218と中子内流路224とを連通させる。
【0096】
そして、これら導入口232、234の開度を変化させる主弁242、244の動作は、同軸に設置されたスライドバー246、248により決定される。すなわち、図21及び図23に表したように、左右のスライドバー246、248は圧縮された板ばね260をはさんで連結され、板ばね260の湾曲方向に応じて右端あるいは左端に向けた付勢力を受ける。なお、板ばね260は、その両端が中子本体220に支持されており、スライドバー246、248は、板ばね260を介して中子本体220に対して相対的に移動する。主弁242、244は、スライドバー246、248からこの付勢力を受けて、導入口232、234を全開状態あるいは全閉状態の択一的な状態に制御する。
【0097】
以下、本具体例の駆動部200の動作について説明する。
図25は、本具体例の駆動部の動作を説明するための模式図である。
【0098】
まず、同図(a)は、スライドバー246、248が板ばね260の作用により向かって左側に向けて付勢された状態を表す。この時、主弁242、244もスライドバー246により左側に向けて付勢されるので、導入口232は閉じ、導入口234が開いた状態が形成される。
【0099】
この状態で入水口212、214にほぼ同圧に水などの流体を供給すると、矢印Aで表したように入水口214から圧力室218に導入された水は、矢印Cで表したように導入口234から中子内流路224に流入し、矢印Dで表したように吐水流路282を介して流出する。
これに対して、矢印Bで表したように入水口212から圧力室216に導入された水は、導入口232が閉じているために流出経路がなく、圧力室216の圧力を上昇させる。
つまり、導入口232、234の開度に差を設けることにより流路抵抗に差が生じ圧力差が生ずる。その結果として、圧力室218よりも圧力室216の圧力のほうが高くなり、中子220は矢印Mの方向に押されて回動する。
【0100】
なお、中子220が矢印Mの方向に移動すると、圧力室216の容積が増大し、その分だけ圧力室218の容積が縮小する。このため、矢印Bの経路による圧力室216への流体の流入量の分、圧力室218内の流体も押し出され、流路282から流出する流体の吐水量に含まれることとなる。
【0101】
そしてさらに中子220が回動を続け、スライドバー248がハウジング202の内壁に当接し、中子220に対して押されると、板ばね260の湾曲方向が反転し、図25(b)に表したように、スライドバー246、248は、反対側に向けて付勢される。すると、スライドバー248が主弁244を押すことにより、主弁242、244も右側(向かって時計回り方向)に移動する。すなわち、導入口232が開き、導入口234が閉じる。図25(b)に表した状態においては、矢印Bで表したように入水口212から圧力室216に導入された流体は、矢印Cで表したように、導入口232から中子内流路224に流入し、矢印Dで表したように吐水流路282を介して流出する。これに対して、矢印Aで表したように、入水口214から圧力室218に導入された流体は、導入口234が閉じているために流出経路がなく、圧力室218の圧力を上昇させる。その結果として、圧力室216、218に圧力差が生じ、中子220は矢印Mで表したように右側に向けて回動を開始する。
【0102】
中子220がさらに回動すると、図25(c)に表したように、スライドバー246がハウジング本体202の内壁に当接する位置まで移動する。この状態からさらに中子220が移動し、スライドバー246が中子220に対して押されることにより、板ばね260の湾曲方向が反転して、反対側に付勢される。すると、図25(a)に表した状態と同様に、導入口232が閉じて導入口234が開いた状態となり、中子220は左側に向けて回動を開始する。
【0103】
以上説明したように、本実施例においても、中子220に主弁242、244からなる弁体と、制御手段とを設けることにより、中子220の移動に応じて導入口の開度差の大小関係を適宜逆転させ、中子220を左右に反復的に動作させることができる。なお、本具体例においても、図15に関して前述したように、主弁242、242の反転動作開始のタイミングを、板ばね260の反転のタイミングに同期させることができる。このようにすれば、板ばね260が中立状態の時に主弁242、244の開度がほぼ等しい状態となり中子220が停止してしまう、という問題を解消して、円滑な反復運動を実現できる。
【0104】
言い換えれば、中子220を移動させるに足る開度差がなくなる前に板ばね260を反転させ、その反転力(付勢力)によりスライドバー246、248を介して主弁242、244を移動させ、導入口232、234の開度差を、中子220を逆方向に移動させるに足る開度差に逆転させることができる。
【0105】
本具体例においても、中子220の回動方向と、主弁242、244の可動方向、スライドバー246、248の可動方向、板ばね260の付勢方向を略同一とすることにより、力の働き方に無駄がなく、受圧面積の大きな中子の移動力を有効に活用でき、円滑かつ安定した動作が可能となる。つまり、中子220がハウジング202に内壁に接近した時、中子220の動く方向と、主弁242、244の可動方向、板ばね260の付勢方向、スライドバー246、248の可動方向とを略同一とすることにより、中子220の回動動作と開度制御動作とを連動させる、中子220の反転のための導入口232、234の開度の大小関係の反転動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0106】
また、このようにすると、中子220がその回動ストロークの中間付近などに停止している状態から散水を開始させるような場合においても、散水開始時に板ばね260により主弁242、244を制御して導入口232、234のいずれかが択一的に開かれた状態にあり、中子220の両側に圧力差を形成させて安定した初期動作を開始させることができる。つまり、導入口232の開度よりも導入口234の開度が大なる状態と、導入口234の開度よりも導入口232の開度が大なる状態と、を択一的に保持可能とすることができる。
【0107】
なお、本具体例における中子220の回動運動のストローク(回動角度)は、ハウジング202の扇状空間の開き角度により適宜設定できる。広範囲を効率的に散水するためには、中子220の回動運動のストロークは略180度以上とすることが有利である。ただし、中子220の回動軸を太陽電池パネルから離間させて設置した場合には、中子220の回動ストロークを必ずしも180度以上とする必要はなく、回動ストロークの両端において散水部830が太陽電池パネル950の端部あるいはそれよりも外側にあるようにすればよい。
【0108】
また、本実施例においても、回動動作により得られる推力は、中子220に付加される流体の圧力と中子の受圧面積との積により決定される。従って、中子220の受圧面積を増加させれば、それに応じた大きな推力を得ることが可能となる。
【0109】
本実施形態においても、第1実施形態に関して前述したものと同様に、ひとつあるいは複数の散水口838が設けられた散水部830を矢印Mの方向に往復回動運動させながら散水することにより、少ない水量で、太陽電池パネル950の表面に均一に散水することができる。その結果として、均一な冷却効果と優れた洗浄効果が得られ、太陽電池パネルの出力を常にベストの状態に維持できる。
なお、本実施形態においては、散水部830により太陽電池パネル950の全面に亘って直接散水する必要は必ずしもない。すなわち、散水部830は、太陽電池パネル950の上部のみに直接散水し、その水が下方に流れることによって太陽電池パネル950の下部が冷却・洗浄されるようにしてもよい。この場合、太陽電池パネル950の下部において水ができるだけ均一に流れるように、散水部830の寸法や回動範囲を設定すればよい。また、散水口838のそれぞれに水を拡散吐水させるようなノズルを設けると、より均一に散水することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態においては、散水部830は太陽電池パネル950に「影」を落とす場合があり得る。このため、散水しない状態においては、中子220の回動ストローク範囲の端に散水部830を停止させることが望ましく、また、日射の方向も考慮した上で、散水部830を太陽電池パネル950の端部あるいはそれよりも外側にあるように中子220の回動ストロークを決定すればよい。従って、中子220の回動ストロークは、180度よりも小さい場合も、大きい場合もあり得る。
【0111】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図26は、本発明の第3の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【0112】
本実施形態にかかる太陽光発電システムも、太陽電池パネル950と、その上方に設けられた散水装置30と、を備える。散水装置30は、駆動部200と、散水部830と、支持部910と、を有する。この太陽光発電システムも、建物の屋根960の上などに設置され、太陽光を太陽電池パネル950に受けて電力を発生する。そして、散水装置30に水を供給すると、散水部830から放出される散水位置が周期的に変化しながら、太陽電池パネル950の表面に散水する。
【0113】
図27は、本実施形態の散水装置30の断面構造を例示する模式図である。
本実施形態の散水装置30も、第2実施形態に関して前述した駆動部200を有する。すなわち、駆動部200は、外部から供給される水の圧力によって、吐水筒体280を矢印Mの方向に往復回動運動させつつ、散水部830に水を供給する。
一方、散水部830は、散水カバー836と、その内側に収容された散水筒体832と、を有する。
図28は、散水カバー836を表す斜視図であり、図29は、その内側に収容される散水筒体832を表す斜視図である。
散水カバー836には、横方向に細長く形成された開口である散水スリット837が設けられている。一方、散水筒体832には、その中空空間としての散水流路834が設けられ、この散水流路834に連通するスパイラル状の開口である散水口839が設けられている。散水口839の数は、ひとつでも複数でもよい。散水カバー836は、支持部910などにより固定され、一方、散水筒体832は駆動部200の吐水筒体280に連結されている。
【0114】
第2実施形態に関して前述したように、駆動部200に水を供給すると、吐水筒体280が往復回動運動をしつつ散水筒体の散水流路834に水を送出する。散水流路834に送出された水は、スパイラル状の散水口839と、散水カバー836の散水スリット837と、の重複部分から太陽電池パネル950に向けて散水される。そして、散水筒体832が矢印Mの方向に往復回動運動すると、散水口839と、散水カバー836の散水スリット837と、の重複部分が周期的に移動する。つまり、散水位置を周期的に移動させつつ、太陽電池パネル950に散水できる。
【0115】
ここで、本具体例においても、散水位置の移動ストロークを、散水口839と散水スリット837との重複部分のピッチと同程度以上とすると、太陽電池パネル950の表面に均一に散水できる。
【0116】
本実施形態においても、第1実施形態に関して前述したものと同様に、散水位置を周期的に移動させながら散水することにより、少ない水量で、太陽電池パネル950の表面に均一に散水することができる。その結果として、均一な冷却効果と優れた洗浄効果が得られ、太陽電池パネルの出力を常にベストの状態に維持できる。
【0117】
次に、本発明の太陽光発電システムについて説明する。
図30は、本発明の太陽光発電システムのブロック図である。
すなわち、本発明の太陽光発電システムは、太陽電池パネル950と、その上方に設けられた第1乃至第3実施形態のいずれかの散水装置10(20、30)と、を備える。散水装置10(20、30)には、電磁弁1102と配管700とを介して水W1が供給される。電磁弁1102の開閉動作は、制御部1104により制御される。そして、太陽電池パネル950には温度センサ1106が付設され、制御部1104は、この温度センサ1106の検出結果に基づいて、電磁弁1102の開閉を制御する。すなわち、温度センサ1106による検出温度が所定値を超えたときには、電磁弁1102を開いて散水装置10(20、30)に水を供給し、太陽電池パネル950に散水する(W2)。このようにすれば、太陽電池パネル950の温度が高くなった時に散水して冷却し、発電効率を確実に高めることが可能となる。
【0118】
図31は、本発明の太陽光発電システムの第1の変型例のブロック図である。同図については、図30に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変型例においては、照度センサ1108が設けられている。制御部1104は、照度センサ1108による照度の検出値が所定値を超えた時に、電磁弁1102を開いて散水装置10(20、30)に水を供給し、太陽電池パネル950に散水する(W2)。このようにすれば、太陽光の照度が大きい時に、散水して太陽電池パネル950を冷却・洗浄し、発電効率を確実に高めることが可能となる。
【0119】
図32は、本発明の太陽光発電システムの第2の変型例のブロック図である。同図についても、図30に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変型例においては、時間あるいは時刻を計測するタイマ手段1110が設けられている。制御部1104は、タイマ手段1110による計測値に基づいて、電磁弁1102の開閉を制御する。例えば、一日のうちで、所定の時刻に所定の時間だけ散水(W2)させることができる。散水の頻度や量は、太陽電池パネル950が設置される環境に応じて適宜決定することができる。例えば、温度が高くなりやすい夏場は高い頻度で散水し、逆に冬場は散水の頻度を下げることもできる。このようにすれば、水資源を効率的に利用しつつ、太陽電池パネル950を冷却・洗浄し、発電効率を確実に高めることが可能となる。
【0120】
図33は、本発明の太陽光発電システムの第3の変型例のブロック図である。同図についても、図30乃至図32に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本変型例においては、太陽電池パネル950の出力が制御部1104にフィードバックされる。例えば、制御部1104は、太陽電池パネル950の発電出力が所定値を超えた時に、電磁弁1102を開いて散水装置10(20、30)に水を供給し、太陽電池パネル950に散水する(W2)。このようにすれば、大きな出力が得られ、太陽電池パネル950の温度も高くなりやすい時に、散水して太陽電池パネル950を冷却・洗浄し、発電効率を確実に高めることが可能となる。
【0121】
またさらに、図30乃至図33に関して前述したそれぞれの例示を適宜組み合わせてもよい。例えば、図32の具体例と図33の具体例とを組み合わせると、太陽電池パネル950の表面が埃などで汚れた結果として、発電出力が得られなくなるような場合でも、タイマ手段1110の設定により散水して太陽電池パネル950の表面を洗浄し、発電出力を回復させることができる。
【0122】
以上具体例を参照しつつ本発明の実施例について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
すなわち、本発明の太陽光発電システム及び散水装置を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
【0123】
例えば、太陽電池パネル、駆動部、散水部及び支持部の外形や、構成部品の形状あるいは配置、ストロークや回動角度、などについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【図2】第1実施形態の散水装置10の断面構造を例示する模式図である。
【図3】第1実施形態の散水装置の全体構成を例示する模式図である。
【図4】第1実施形態の散水装置の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図5】第1実施形態の散水装置の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図6】第1実施形態の散水装置の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図7】第1実施形態の散水装置の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図8】導入口132、134の開度に差を設けることの作用効果を説明するための模式図である。
【図9】第1実施形態の駆動部100の斜視図である。
【図10】駆動部100の斜視切断図である。
【図11】駆動部100の断面図である。
【図12】図11のA−A線断面図である。
【図13】主弁及びスライドバーを表す斜視図である。
【図14】駆動部の往復動作を表す模式図である。
【図15】制御手段の動作を説明するための模式図である。
【図16】磁石によって中子120の反転動作を制御するメカニズムを説明するための模式図である。
【図17】駆動部の変型例を表す模式断面図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【図19】散水装置20の断面構造を例示する模式図である。
【図20】駆動部200の斜視図である。
【図21】駆動部200の斜視切断図である。
【図22】駆動部200を底面側から眺めた斜視図及び切断図である。
【図23】駆動部200の縦断面図である。
【図24】図23のB−B線断面図である。
【図25】駆動部の動作を説明するための模式図である。
【図26】本発明の第3の実施の形態にかかる太陽光発電システムを例示する模式斜視図である。
【図27】散水装置30の断面構造を例示する模式図である。
【図28】散水カバー836を表す斜視図である。
【図29】内側に収容される散水筒体832を表す斜視図である。
【図30】本発明の太陽光発電システムのブロック図である。
【図31】本発明の太陽光発電システムの第1の変型例のブロック図である。
【図32】本発明の太陽光発電システムの第2の変型例のブロック図である。
【図33】本発明の太陽光発電システムの第3の変型例のブロック図である。
【符号の説明】
【0125】
10、20、30 散水装置
100、200 駆動部
102、202、 ハウジング
103、203、 ハウジング本体
104、204、205、 ハウジング蓋
112、114、212、214 入水口
116、118、216、218 圧力室
120、220 中子
121、221 中子本体
122、222 中子蓋
124、224 中子内流路
126、226、227 シール
132、134、232、234 導入口
142、144、242、244 主弁
146、148、246、248 スライドバー
149 連結棒
160、260 板ばね
180、280 吐水筒体
182、282 吐水流路
184 シール
700 給水配管
830 散水部
832 散水筒体
834 散水流路
836 散水カバー
837 散水スリット
838、839 散水口
910 支持部
950 太陽電池パネル
960 屋根
1102 電磁弁
1104 制御部
1106 温度センサ
1108 照度センサ
1110 タイマ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に空間を有するハウジングと、
前記空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な第1の方向に前記空間内を移動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の移動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され前記第1の方向に沿って前記中子に連動する散水筒体を有し、
前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記散水筒体に設けられた散水口から放出することを特徴とする散水装置。
【請求項2】
前記散水筒体は、前記第1の方向に沿って設けられた複数の前記散水口を有し、
前記複数の散水口のピッチは、前記第1の方向に沿った前記中子の移動のストローク以下であることを特徴とする請求項1記載の散水装置。
【請求項3】
前記第1の導入口を閉じ前記第2の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第2の圧力室に向けて移動し、
前記第2の導入口を閉じ前記第1の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第1の圧力室に向けて移動することを特徴とする請求項1または2に記載の散水装置。
【請求項4】
前記中子の移動方向と前記弁体の可動方向とが略同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の散水装置。
【請求項5】
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略垂直な第1の軸を中心として前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の回動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され、前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な方向に延在し、前記第1の軸を中心として前記中子の前記回動に連動する散水筒体を有し、
前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記散水筒体に設けられた散水口から放出することを特徴とする散水装置。
【請求項6】
太陽電池パネルに散水する散水装置であって、
駆動部と、
散水部と、
を備え、
前記駆動部は、
内部に扇状の空間を有するハウジングと、
前記扇状の空間を第1及び第2の圧力室に分割しつつ前記太陽電池パネルの表面に対して略平行な第2の軸を中心として前記空間内を回動可能とされ、内部に中子内流路を有する中子と、
前記中子内流路に連通し前記ハウジングの外側に至る吐水流路を有する吐水筒体と、
前記第1の圧力室に水を導入する第1の入水口と、
前記第2の圧力室に水を導入する第2の入水口と、
前記第1の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第1の導入口と、
前記第2の圧力室から前記中子内流路に水を導入する第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口の開度を変化させる弁体と、
前記中子の回動方向の反転時に前記第1及び第2の導入口の開度の大小関係を逆転させる制御手段と、
を有し、
前記散水部は、
前記吐水筒体に連結され、前記第2の軸に対して略平行方向に延在し、前記第2の軸を中心としたスパイラル状の散水口が設けられ、前記第2の軸を中心として前記中子の前記回動に連動する散水筒体と、
前記吐水筒体を覆うようにその外側に設けられ、前記第2の軸に対して略平行方向に延在する散水スリットを有する散水カバーと、
を有し、
前記散水筒体が前記中子と連動すると、前記散水口と前記散水スリットとの重複部が移動しつつ、前記中子内流路から前記散水流路の内部に形成された散水流路に供給された水を前記重複部から放出することを特徴とする散水装置。
【請求項7】
前記第1の導入口を閉じ前記第2の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第2の圧力室に向けて回動し、
前記第2の導入口を閉じ前記第1の導入口を開けた状態で前記第1及び第2の入水口に水を供給すると、前記中子は、前記第1の圧力室に向けて回動することを特徴とする請求項5または6に記載の散水装置。
【請求項8】
前記中子の回動方向と前記弁体の可動方向とが略同一であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の散水装置。
【請求項9】
前記中子の回動方向の反転時に、前記弁体あるいは前記制御手段の少なくともいずれかが前記ハウジングの内壁に当接し、前記当接している部分における内壁と、前記弁体の可動方向と、が略垂直な関係を維持するものとして構成されていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つに記載の散水装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第1の導入口の開度よりも前記第2の導入口の開度が大なる第1の状態と、前記第2の導入口の開度よりも前記第1の導入口の開度が大なる第2の状態と、を択一的に保持可能としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の散水装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
前記弁体の移動ストロークよりも長いストロークで動作可能であり前記弁体を移動させるスライドバーと、
前記スライドバーをそのストロークの一端または他端に付勢する板ばねと、
を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の散水装置。
【請求項12】
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの一端に設けられる請求項1〜11のいずれか1つに記載の散水装置と、
を備えたことを特徴とする太陽光発電システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−198468(P2006−198468A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10249(P2005−10249)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】