説明

文書等証明方法

【課題】文書の存在証明、さらに詳しくはタイムスタンプ、電子証明書を用いた、証明書ファイルを作成して前記文書を電子的に証明する方法に関し、証明元文書データに証明書ファイルを添付した場合に、その内容を汎用リーダーにて確認することができる、証明方法を提供する。
【解決手段】証明元文書データ1をPDF文書4に変換し、証明書ファイル51とともに一つのPDF形式ファイル52として一体化させた後に、タイムスタンプ7及び電子証明書6を添付する。
【効果】これにより、証明する文書の内容確認が容易となり、副本を容易に作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、文書の存在証明、さらに詳しくはタイムスタンプ、電子証明書を用いた、証明書ファイルを作成して前記文書を電子的に存在時と非改竄性を証明する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より例えば、特許文献1の技術では、顧客のデジタルデータ(以下元データと称す)の内容を証明するために、先ず所定の事項を記した証明書ファイルを作成して、これに前記原本である元データを添付させ、更にこの証明書ファイルに日時保証情報(タイムスタンプ)を付与することによって最終的な内容証明とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4558099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示した技術による実施の形態では、元データは、アドビ社の開発したPDFフォーマット形式((Portable Document Format)以下PDF文書と称する)の添付ファイルとしてのみ保存されることになる。
【0005】
この場合に、後で元データを参照したり、取り出したりする際、すなわち添付ファイルを表示させるためには特定ソフトウエア(例えば「Adobe Acrobat」(登録商標)のバージョン7以降)が必要になる。
【0006】
このため、バージョンの古い「Acrobat Reader」(登録商標)や、他のメーカーによるPDF文書再生ソフトウエア(PDFの形式で記録された電子ファイルの内容を表示させるソフトウエア)では、証明書ページを表示させることはできるものの、必要な情報である添付ファイル(すなわち元データ)を取り出せないばかりか、添付ファイルの存在を表示させることすらできない場合がある。
【0007】
また、近年普及が進むコンビニエントストア等に設置される多用途プリンタ(印刷装置)では、インターネット上の一時的なフォルダや、市販のメモリーカード上に置いたPDF文書等を店頭において印刷出力する機能を提供しているが、この際にもPDF文書における添付ファイルを印刷もしくは表示させることはできない。
実例として、インターネットのサイトhttp://www.printing.ne.jp/を指定する。
【0008】
さらに、PDF文書に添付ファイルが存在していることを認識することができたとしても、この添付ファイルを開く際、すなわち内容を確認したい場合には、添付ファイルを作成する際に使用したソフトウエア等が必要になる。
【0009】
このため、たとえば甲において、乙の文書より先に甲によって文書を作成した証拠として、特許文献1の技術で作成した証明書ファイル(元データ添付)を乙に提示しても、これを受けた乙及び、第三者にはその内容を確認できない事態もありうることになる。
【0010】
また、添付ファイルを作成したソフトウエアを乙や第三者が用意できたとしても、必要な機器やソフトウエアを購入または使用するには代金が必要であり、かつ添付ファイルの確認には相応の操作知識が必要となる。
【0011】
このように、添付ファイル(すなわち証明したい証拠データ)を確認するだけであっても、料金と、知識と、時間とを要し、したがって、証拠としての添付ファイルの普遍的な再現性において問題無しとは言えないものである。
【0012】
また、甲であっても、添付した内容が所望のものであったかどうかを、機器や専用ソフトエウエアが無い状態にあっては、当然その内容を確認できないわけであり、簡易な確認のためには書面として副本を作成することが便利であるが、元データの添付状態ではPDF文書(証明書ページ)と元データ(添付ファイル)とを印刷させた場合に、その連関性(関連性)が薄弱となり、副本としての有効性に乏しい。
【0013】
また、証拠物件として、第三者に開示しようとすれば、少なくとも内容を示す書面が必要となることは容易に予想され、完全に書面無しとすることは困難である。この面からも副本の作成容易性は重要な課題である。
【0014】
本発明は、上述の問題を解消させる為に、PDF文書の添付機能を使用せずに、元データを表示させることで、添付ファイル再生機能を持たないPDF読取ソフトウエアにおいても元データを表示させる文書等証明方法を提供することを第一の目的としている。
また、容易に副本を作成できることを第二の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成させるために、本発明に係る文書等証明方法では、元データをPDFの添付とするのではなくPDF文書に変換し、証明書ファイルとともに一体化(結合)させた後にタイムスタンプ及び電子証明書を添付することを特徴とした。
【0016】
要約すれば、証明元データと証明書ファイルとを一体化したPDFファイルを、汎用PDFリーダーにて内容確認ができるように、証明元データをPDF文書に変換し、証明書ファイルとともに一つのPDFファイルとして一体結合化させた後に、タイムスタンプ及び電子証明書を押印(記録)する。
【0017】
尚、請求項に用いた語句は、少なくとも以下の意味を有する。
【0018】
「証明書ファイル」とは、証明行為を行う者等(証明主体)を示す文書であり、元データの概略説明、元データの作成者、証明日時、証明書ファイルの作成者、本人確認書類等、証明書としての客観的な説明を記した文書であり、元データとは別のページとして作成可能な文書をいう。
【0019】
「PDF文書」とは、証明する客体(証明される文書等)であり、各種ソフトウエアにより作成、出力された電子データ(テキスト形式、各種ワードプロセッサ、表計算ソフト、画像作成ソフト、CAD(図面作成ソフトウエア)、音符作成ソフトなど)、デジタルカメラ画像などを、PDFフォーマット(PDF形式)で保存した電子データである。
【0020】
なお、ビデオ機器からの映像データは直接PDFフォーマットで出力することはできないが、Adobe Acrobat(登録商標)バージョン9を使うことでPDF文書上にFLASH形式に変換して再生可能に貼り付けることができる。 このような形式のPDF文書、および現在は再生可能に変換できない形式の電子データであっても、将来的にPDF埋め込み可能となった場合のPDF文書、前記変換できない形式のデータをテキストやコードなどに可視化した電子データ、元データを添付したPDF文書を含む。
【0021】
また、PDFの規格が名称変更した場合には、その変更後の名称の形式を当然に含み、他の同様な書式も含むものである。
【0022】
同様な書式には、例えば富士ゼロックス社が提供するソフトウエア、DocuWorks(登録商標)で作成されるXDW形式の文書がある。
【0023】
「元データ」とは、証明する客体であり、各種ソフトウエアにより作成、出力された電子データ(テキスト形式、各種ワードプロセッサ、表計算ソフト、画像作成ソフト、CAD(図面作成ソフトウエア))、デジタルカメラ画像、映像、音声など、各種ソフトウエアまたは機器の固有の形式で保存された電子ファイルであり、PDF形式になっていないデータを含み、また、これらを変換、結合、分割、圧縮など、およそコンピュータ等の電子機器上で扱える形式、還元すればPDF文書に添付可能な電子データであり、当然、前記「PDF文書」、および元データを添付したPDF文書を含む。
【0024】
「タイムスタンプ」とは、文書の持つハッシュ値を日時とともに記録する等、少なくともPDF文書に正確な年月時刻を記録できる電子式時刻記録方式を言い、文書に改竄があったことを示す方式、示さない方式を含み、前記「証明書ファイル」上で押印場所の表示可能、表示不可能な方式を含む。
【0025】
「電子証明書」とは、民間機関、公的機関によって発行された自然人(本人、他人)、法人を電子式に識別するための証明書であり、文書に改竄があったことを示す方式、示さない方式を含み、前記「証明書ファイル」上で押印場所の表示可能、表示不可能な方式を含む。
【0026】
「結合」とは、一つのPDF文書として存在し、PDF表示ソフトウエアの基本機能である表示機能のみで「証明書ファイル」と「PDF文書」とが読みとれる、あるいは印刷できる状態を含み、ページ数が多い場合などに、複数のPDF文書に分割された場合を含む。
【発明の効果】
【0027】
証明書ファイルおよび元データは一つのPDFファイルと成し得るので、汎用PDFリーダー等のPDF表示ソフトウエアの標準的機能のみで証明書データおよび元データを一体で確認することができ、証明元データの確認のために専用の機器や、特殊なソフトウエアを不要とすることができる。
【0028】
またパソコンの取扱が不確かな者であっても、コンビニエンスストアに設置されたプリンタで、その内容を印刷させることができる等、内容確認の容易性が高い。
【0029】
さらに、証明書ファイルの副本を定形用紙上にすべて印刷することができるため、証拠を容易に確認することができ、電子ファイルでありながら、証明書書類として従来の書面による証拠能力を加味、担保させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる、PDF文書の作成過程を示す説明図。
【図2】本発明にかかる、作成されたPDF文書を示す説明図。
【図3】本発明にかかる、作成されたPDF文書の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に図面を参照しながら、本発明に係るPDF文書の作成方法を説明する。
図1は作成までの概念をあらわし、証明したい元データ1は、スキャナ3により、電子化される。
この電子化されたデータは、たとえばTIF、BMP、PDFなどの形式にできることは周知である。
すでに電子化された元データ2は、同様にJPG、DXF、ai、psd、doc、xls、html、EXE等、様々なソフトウエアに応じた形式があることも周知である。
これらの電子データ4は、証明書を付す作業を行うコンピュータ装置(以下パソコンと称す)であるパソコン5に取り込まれる。
操作者は最初に電子データ4をPDF形式ファイル52に変換する。
この際に、印刷サイズをA4規格などに統一しておくことが望ましい。
また、元データ2がホームページであれば、リンクごと、またはサイトごと取り込んで変換させても良い。
次に、証明書ファイル51に必要な情報を記入し、身分証明書、運転免許証などの本人確認書類41をイメージとして取り込み、PDF文書42に変換し、これを証明書ファイル51に挿入(結合)させる。
その後に、PDF形式ファイル52を同様に証明書ファイル51に挿入(結合)させる。
この後に、証明書ファイル51(すなわちPDF文書42とPDF形式ファイル52が取り込まれたPDFファイル)に対し、電子証明書6とタイムスタンプ7とを付し(電子的押印行為)、PDF文書8が作成される。
【0032】
ここで、パソコン5を扱う操作者に、国家資格者である行政書士等が関与し、電子証明書6には、日本商工会議所等が発行する行政書士電子印鑑を使用することで、守秘義務を持つ第三者が関与することができ、より証拠としての信頼性が高いPDF文書8となる。 この場合には、アイデアが公知になってしまい、後に特許権を取得できないなどの弊害を生ずることが無いPDF文書8となることは当然である。
【0033】
図2は、PDF文書8の構造をあらわし、証明書ファイル51には本人確認書類41をを変換したPDF文書42、被証明文書であるPDF形式ファイル52が連なって(別頁として)結合していることをあらわしている。
なお、タイムスタンプ21と電子印鑑22とは、別々押されても、一体に押されても、あるいは印影がなくともその証明効果は同様である。
ただ、印影があった方が副本として紙面に印刷した場合に押印行為が明確になる。
【0034】
図3は、PDF文書8の他の例をあらわし、図2に示すPDF文書8に、PDF形式ファイル52の電子データ4(PDFにされていないデータ)を添付文書31、32として取り込んだものである。
これは、PDF形式ファイル52として全体をあらわすことが難しいデータ(例えば映像、音声など)の原本として取り込む際に有効である。
なおこの添付は、本発明の目的とするところではない。
【0035】
ここに記した例以外にも種々の変形例があり、本発明の趣旨を脱せぬ範囲において法がされるものである。
例えば、PDF形式ファイル52で表示させる文書を音符としたり、メール送受信で使われるテキスト形式の暗号としたり、QRコードとしたりすることができる。
元データ1が実行ソフトウエアやスクリプトであれば、プログラムの内容をテキスト出力したりダンプ出力させPDF文書とすることができる。
また、タイムスタンプ、電子印鑑の押印表示をPDF文書42、PDF形式ファイル52上にしたり、証明書ファイル51、PDF文書42をPDF形式ファイル52の後ろや中間にしたり、PDF形式ファイル52を分割させて、各々に証明書ファイル51を付す等である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
あらゆるアイデア、著作物等に創作の証拠をわかりやすく残すことで、特許権、著作権などに係る紛争を未然に防止し、紛争に係る時間的損失等を、新製品開発などに向けることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 元データ
2 元データ
4 電子データ
6 電子証明書
7 タイムスタンプ
8 PDF文書
42 PDF文書
51 証明書ファイル
52 PDF形式ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
証明書ファイルと、元データとを包含させた後にタイムスタンプ及び電子証明書を付与することで、元データの存在時および証明者を記録し、かつ非改竄性を証明する方法において、前記元データはPDF文書として、証明書ファイルに結合させたことを特徴とする文書等証明方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−100100(P2012−100100A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246472(P2010−246472)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
2.QRコード
【出願人】(390011888)
【Fターム(参考)】