説明

断熱コーティング

【課題】1種またはそれ以上のコレステリックIR反射層を含む断熱コーティングならびにその製造方法およびその使用を提供する。
【解決手段】赤外線波長範囲内、有利には750nm以上、殊には751nm〜約2000nmの波長範囲内で、入射光の少なくとも40%、殊には少なくとも45%を反射する1種またはそれ以上のコレステリック層を含む断熱コーティングである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種またはそれ以上のコレステリック赤外線反射層を含む断熱コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
熱放射の遮蔽の問題は、殊に住居、事務用建築物または産業建築物の断熱の際に起きる。大型の窓面を有する建物は、殊に夏期、なかでも南方地域では、著しく多量のエネルギー消費を用いてエアコンディショナーにより冷却しなければならないほど暑くなる。
【0003】
断熱のため、殊には800nm〜2000nmの間の波長範囲内の熱放射の遮蔽のための慣用の方法は、適当な染料または顔料による放射の吸収に基づいている。しかし、捕捉されたエネルギーは、熱伝導のために大部分が断熱すべき対象物または室内に放出される。
【0004】
熱放射を大幅に反射する材料を使用することも公知である。
【0005】
このために、広いバンドの吸収材または反射材として、各種の特殊な染料または顔料、あるいはグラファイトまたは金も使用されている。
【0006】
染料として、この場合、例えば広いバンドの赤外線(IR)を吸収するナフタロシアニンまたはレーキ化したポリメチン染料が使用されている。しかし、IR吸収性染料は、重大な欠点として、可視波長範囲でも著しい吸収を有し、著しい透過率の低下が観察される。吸収された放射エネルギーは、熱エネルギーに変換され、これは熱伝導により放散する。
【0007】
赤外線放射に対する吸収材ならびに反射材としても使用されるグラファイト、金、銀またはインジウム−スズ−酸化物(ITO)も、同様の欠点を有する。またこの場合にも、殊にスペクトルの可視範囲内において、著しく低い透明性を有する。著しく正確で、従ってコストがかかるきわめて薄い層の製造によってのみ、可視波長範囲内での十分に均等で高い透過率が確保される。このような金属層は、通常、蒸着法、例えば化学蒸着法または物理蒸着法によりコーティングされるが、しかし著しくコスト高である。
【0008】
コレステリック液晶物質も電磁スペクトルのIR範囲内で光を反射できることも公知である。コレステリック(キラル−ネマチック)液晶は、すでに以前から公知である。このような材料の最初の例は、オーストリアの植物学者F.ライニツェル(F. Reinitzer, Monatshefte Chemie, 9 (1888), 421) により発見さた。コレステリック相が発現する前提条件は、キラリティーにある。キラル分子部分は、液晶分子自体内に存在していてもよく、またドーパントとしてネマティック相に加えてこれによりキラル−ネマティック相を誘発してもよい。キラル−ネマティック相は、特別の光学的性質を有する:高い旋光性ならびに円偏光の選択的反射によりネマティック相内で生成する優れた円二色性である。これにより、反射波長と一緒に入射する光の最高50%が反射される結果となる。残りは、媒体と相互作用をすることなく通過する。反射する光の旋光方向は、その際、らせんの回転方向により決定される:右らせんは右円偏光を反射し、左らせんは左円偏光を反射する。キラルドーパントの濃度の変化により、ピッチ、従って選択的にキラル−ネマティック相の反射光の波長範囲を変化できる。その際、観察したピッチpの逆数とキラル化合物の濃度(xch)とは直接的な関係にある:
1/p=HTP xch
HTPは、らせんねじり力を表し、キラルドーパントのねじり能力を示す。
【0009】
米国特許出願公開(US−A)第4637896号明細書からは、コレステリン誘導体に基づくコレステリック液晶化合物ならびにこれを一緒に重合して含む光重合したコレステリックコーティングが公知となっている。記載されているコレステリックフィルムは、可視波長範囲内に多数の反射極大を有している、しかし、無色フィルムの実施例2例も記載されており、その反射極大は950nmならびに1260nmにある。しかし、その狭い反射範囲のために、このフィルムは断熱コーティングとしては適しない。
【0010】
米国特許出願公開(US−A)第5629055号明細書からは、セルロースを基とする固体状コレステリックフィルムが公知となっている。このフィルムは、セルロースクリスタリットのコロイド懸濁液から得られ、その際、コロイド懸濁液は、結晶性セルロースの酸性加水分解により製造される。この固体状フィルムは、コレステリック性を有し、その反射波長は、赤外線から紫外線の全スペクトル範囲で調節できるとのことである。記載されている材料は、殊には光学的認証手段として提案されており、それというのも、印刷技術および複写技術はコレステリック作用を再現できないからである。
【0011】
米国特許出願公開(US−A)第5352312号明細書は、熱および腐食性物質に対するロケットエンジンのアイソレーションのための方法を記載している。この方法は、熱可塑性液晶ポリマーを含むアブレーション遮断材料の使用を含んでいる。しかし、この液晶材料はコレステリックではなく、また遮断作用はアブレーション作用に基づき、熱放射の反射に基づくものではない。
【0012】
米国特許出願公開(US−A)第5016985号明細書からは、広いバンドの赤外線フィルター要素ならびにコレステリック液晶フィルター要素を含む赤外線フィルターが公知である。コレステリックフィルター要素の意義は、殊には赤外線波長を正確な狭いバンド内で阻止するようなその能力にある。赤外線フィルターは、例えば夜間透視装置に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開(US−A)第4637896号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開(US−A)第5629055号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開(US−A)第5352312号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開(US−A)第5016985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明は、電磁スペクトルの可視範囲内でほとんど完全に透明であり、かつ電磁スペクトルの近赤外線ならびに可視波長範囲内でごく僅かの吸収を有するに過ぎない、容易に製造できる断熱材料を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外にも、少なくとも1層のコレステリックIR反射層を含むコーティングがこの要求を満足することを発見した。
【0016】
従って、本発明の対象は、赤外線波長範囲内、有利には750nm以上、殊には751nm〜約2000nmの波長範囲内で、入射光の少なくとも40%、殊には少なくとも45%を反射する1種またはそれ以上のコレステリック層を含む断熱コーティングである。
【0017】
本発明による断熱コーティングは、下記の一連の意外な長所を有している。
a)入射する放射は、可視波長範囲内ではほとんど完全に透過され、コーティングは透明に見える。
b)電磁スペクトルの赤外範囲内の入射光は、相当程度反射され、かつ吸収されないで、断熱しようとする対象物は熱伝導により加熱されない。
c)入射する熱放射は、広いバンドで反射され、これは対象物の効果的な断熱を可能とさせる。
d)コーティングの厚さおよび均等性は、その断熱性に対して著しい影響を及ぼすことなく広い範囲で変化でき、その製造は、例えば金属含有反射コーティングよりも著しくコストが低い。
e)生態学的および毒性学的に問題があり得る金属の使用を避けている。
f)コーティング製造のための出発化合物は、経済的に十分入手可能である;従って、その使用は、通常、例えば反射コーティング内の金または銀のものよりも価格的に有利である。
【0018】
有利には、本発明による断熱コーティングは、可視光の波長範囲、すなわちほぼ390nm〜750nmの範囲内において、入射光の少なくとも80%、殊には少なくとも90%の透過率を有する。
【0019】
殊に有利には、複数、有利には約2〜20層、殊には約2〜10層のコレステリックIR反射層を含む本発明による断熱コーティングである。殊に有利には、層は、波長範囲750nm以上において異なる反射極大を有する。特に殊に有利には、本発明による断熱コーティングは、複数のコレステリック層、有利には2で割り切れる数のコレステリック層、例えば2、4、6、8または10層を含み、その際、それぞれ2相、有利には隣接する層のヘリカル超格子構造のピッチは同じであるが、その左右像は異なっている。同様に、特に殊に有利には、同じピッチかつ同じ左右像を有するヘリカル超格子構造を有する層の間に、透過円偏光の旋光方向を逆転させる媒体、殊にはいわゆるλ/2−フィルムまたはλ/2−板を有する本発明による断熱コーティングである。
【0020】
異なる左右像または透過円偏光の旋光方向を逆転させる媒体の層を同じ左右像の層の間に使用すると、本発明による断熱コーティングの反射を著しく高めることができる。有利には、このようにして波長範囲750nm以上、殊には波長範囲751nm〜約2000nm内において、入射する放射に対して少なくとも75%、殊には少なくとも85%の反射率に到達する。
【0021】
本発明による断熱コーティングは、その組成に関して、化合物単独またはこれを介して一緒に作用するコレステリックIR反射性を与える化合物を含まなければならないことにより制約されるだけである。基本的には、ほとんどすべての公知のコレステリックモノマーならびにモノマー混合物またはポリマーならびにポリマー混合物は、キラル成分の変化により、反射極大がIRにあるようなヘリカル超格子構造のピッチに調節できる。
【0022】
有利な本発明による断熱コーティングは、例えば、
a)少なくとも1種のコレステリックに重合可能なモノマー;
b)少なくとも1種のアキラル、ネマティック、重合可能なモノマーおよびキラル化合物;
c)少なくとも1種のコレステリックで架橋可能なポリマー;
d)重合可能な希釈剤または重合可能な希釈剤混合物中の少なくとも1種のコレステリックポリマー;
e)コレステリック相がガラス転移温度以下への急速な冷却により凍結できる少なくとも1種のコレステリックポリマー:または
f)少なくとも1種のアキラル、液晶性で架橋可能なポリマーおよびキラル化合物;
から選択されるコレステリック化合物または化合物の混合物を硬化した状態で含むことができる。
【0023】
本発明の範囲内で、架橋とは、ポリマー状化合物の共有結合であり、また重合とは、モノマー状化合物のポリマーへの共有結合と考える。硬化とは、コレステリック相の架橋、重合または凍結と考える。
【0024】
硬化により、コレステリック層内でのコレステリック分子の均等な配向を固定する。
【0025】
群a)の有利なモノマーは、ドイツ特許出願公開(DE−A)第19602848号明細書ならびにドイツ特許出願公開(DE−A)第4342280号明細書中に記載されており、ここにすべてを引用する。殊には、モノマーa)は、式I
〔Z−Y−A−Y−M−Y−〕X (I)
〔式中、変数は下記のものを表す:
:重合可能な基または重合可能な基を有する基、
、Y、Y:たがいに独立した化学結合、酸素、硫黄、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−S−、−S−CO−
−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、CHOまたはOCH
:スペーサー、
:メソゲン(mesogen)基、
X:n価のキラル基
R:水素またはC〜C−アルキル、
n:1〜6
その際、nが1を越える場合には、基Z、Y、Y、Y、AおよびMは同じかまたは異なっていてもよい〕
の少なくとも1種のキラル、液晶性、重合可能なモノマーを含む。
【0026】
有利な基Zは下記である:
【化1】

〔式中、基Rは、同じかまたは異なっていてもよく、かつ水素またはC〜C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルを表す〕。反応性で重合可能な基の中で、シアン酸塩は自発的にシアヌル酸塩に三量体化でき、従って有利である。その他の上記の基は、重合のために別の相補的反応性基を有する化合物を必要とする。すなわち、例えばイソシアナートはアルコールと一緒になってウレタンに、またアミンと一緒になって尿素誘導体に重合できる。同様のことはチイランおよびアジリジンにも該当する。カルボキシル基は、ポリエステルおよびポリアミドに縮合できる。マレインイミド基は、殊にはオレフィン性化合物、例えばスチレンとのラジカル共重合に好適である。相補的反応性基は、その際、第一の化合物と混合する第二の本発明による化合物内に存在しても、またはこれらの相補的基2個またはそれ以上を有する補助化合物によりポリマー網構造内に組み込まれてもよい。
【0027】
殊に有利な基Z−Yは、アクリレートおよびメタクリレートである。
【0028】
〜Yは、上記のものを表すことができ、その際、化学結合としては、共有単結合を考えるものとする。
【0029】
スペーサーAとして、この目的に対して公知のすべての基が該当する。スペーサーは、通常、炭素原子2〜30、有利には2〜12個を有し、線状脂肪族基から成る。これらは、鎖内で例えばO、S、NHまたはNCHで中断されていてもよく、その際、これらの基は隣接している必要はない。スペーサー鎖の置換基として、その際さらにフッ素、塩素、臭素、シアン、メチルまたはエチルが該当する。
【0030】
代表的なスペーサーは、例えば
【化2】

〔式中、
mは1〜3、かつ
pは1〜12を表す〕
である。
【0031】
メソゲン基Mは、有利には構造
(T−Y−T
〔式中、YはYのいずれかの定義に適合する架橋要素であり、sは1〜3の数、かつTは同じかまたは異なる2価の同素(iso-)脂環式、複素脂環式、同素芳香族または複素芳香族基を表す〕を有する。sが1を越える数を表す場合には、架橋要素Yは同じかまたは異なっていてもよい。
【0032】
基Tは、またC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、フッ素、塩素、臭素、シアン、ヒドロキシまたはニトロで置換されている環系であってもよい。
【0033】
有利な基Tは、
【化3】

である。殊に有利には、下記のメソゲン基M
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

である。
【0036】
式Iの化合物のキラル基Xのなかで、なかでも入手の容易さから、糖類、ビナフチル誘導体またはビフェニル誘導体ならびに光学活性のグリコール、ジアルコールまたはアミノ酸から誘導されるものが殊に有利である。糖類としては、殊にはペントースおよびヘキソースおよびこれらから誘導される誘導体が挙げられる。
【0037】
基Xの例は下記の構造であり、その際、末端にある線は、いずれも遊離の原子価を表す。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
殊に有利には
【化11】

である。さらに、また下記の構造を有するキラル基も好適である。
【0043】
【化12】

これ以外の例は、ドイツ特許出願P4342280.2号明細書中に記載してある。
【0044】
nは有利には2である。
【0045】
群a)の有利なモノマーは、さらにキラル重合可能なコレステリン誘導体、例えばドイツ特許出願公開(DE−A)第3535547号明細書および米国特許(US−A)第4637896号明細書に記載のものであり、ここでそのすべてを引用する。
【0046】
群b)の有利なモノマーは、例えばH.ジョンソンの学位論文(H. Jonsson, Department of Polymer Technology, Royal Institute of Technology, S-10044 Stockholm, Schweden, 1991 年1 月25日付け) 、ドイツ特許出願公開(DE−A)第4408171号、ドイツ特許出願公開(DE−A)第4408170号ならびにドイツ特許出願公開(DE−A)第4405316号の各明細書に記載されており、ここにすべてを引用する。有利には、コレステリック混合物は、式II
−Y−A−Y−M−Y−A−(−Y−Z (II)
〔式中、変数は下記のものを表す:
、Z:同じかまたは異なる重合可能な基、または重合可能な基を有する基、
n:0または1
、Y、Y、Y:たがいに独立した化学結合、酸素、硫黄、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−S−、−S−CO−
−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、CHOまたはOCH
、A:同じかまたは異なるスペーサー、および
:メソゲン基〕
の少なくとも1種のアキラル液晶性で重合可能なモノマーを含む。
【0047】
その際、重合可能な基、架橋要素Y〜Y、スペーサーおよびメソゲン基に対して、式Iの相当する変数に対するものと同じ有利な基が該当する。
【0048】
さらに、群b)の混合物は、キラル化合物を含む。キラル化合物は、アキラル液晶相をコレステリック相とするねじりに作用する。その際、ねじりの程度は、キラルドーパントのねじり能力およびその濃度に依存する。これにはらせんのピッチも依存し、あらためて反射波長はキラルドーパントの濃度にも依存する。従って、ドーパントに対して一般に該当する濃度範囲を与えることはできない。ドーパントは、希望する反射が起きるような量で加える。
【0049】
有利なキラル化合物は、式Ia
〔Z−Y−A−Y−M−Y−〕X (Ia)
〔式中、Z、Y、Y、Y、A、Xおよびnは、上記のものを表し、かつMは少なくとも1個の複素環系または同素環系を有する二価基である〕
のものである。
【0050】
その際、分子の部分Mは上記のメソゲン基に似ており、それというのもこの方法により液晶化合物との殊に優れた相容性が得られるからである。しかし、化合物Iaがそのキラル構造によってのみ相当する液晶相のねじりに作用するので、Mはメソゲンでなくてもよい。M中に含まれる有利な環系は、上記の構造Tであり、有利な構造のMは上記の式(T−Y−T のものである。
【0051】
群b)のこれ以外のモノマーおよびキラル化合物は、WO97/00600号明細書およびその基となるドイツ特許出願公開(DE−A)第19532408号明細書中に記載されており、ここにすべてを引用する。
【0052】
有利な群c)のポリマーは、コレステリックセルロース誘導体、例えばドイツ特許出願公開(DE−A)第19713638号明細書中に記載されているものであり、殊には
(VI)セルロースのヒドロキシアルキルエーテルと
(VII)飽和、脂肪族または芳香族カルボン酸および
(VIII)不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸
のコレステリック混合エステルである。
【0053】
殊に有利には、エーテル官能基を介して結合している成分VIのヒドロキシアルキル基が、直鎖または分枝状C〜C10−ヒドロキシアルキル基、殊にはヒドロキシプロピル基および/またはヒドロキシエチル基を含む混合エステルである。使用可能な混合エステルの成分VIは、有利には分子量約500〜約1000000を有する。有利には、セルロースのアンヒドログルコース単位が、ヒドロキシアルキル基を用いて平均モルあたり置換度2〜4個によりエーテル化されている。セルロース内のヒドロキシアルキル基は、同じでも異なっていてもよい。その50%までは、アルキル基(殊にはC〜C10−アルキル基)により置換されていてもよい。その一つの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0054】
使用可能な混合エステルの成分VIIとして、直鎖脂肪族C〜C10−カルボン酸、殊にはC〜C−カルボン酸、分枝状脂肪族C〜C10−カルボン酸、殊にはC〜C−カルボン酸または直鎖または分枝状ハロゲンカルボン酸が使用できる。成分VIIは、また安息香酸または芳香族置換脂肪族カルボン酸、殊にはフェニル酢酸であってもよい。殊に有利には、成分VIIは、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸またはn−吉草酸から、殊にはプロピオン酸、3−Cl−プロピオン酸、n−酪酸またはイソ酪酸から選ばれる。
【0055】
有利には、成分VIIIは、不飽和C〜C12−モノカルボン酸またはジカルボン酸またはこれらのカルボン酸の半エステル、殊にはα、β−エチレン性不飽和C〜C−モノカルボン酸またはジカルボン酸またはジカルボン酸の半エステルから選ばれる。
【0056】
使用可能な混合エステルの成分VIIIは、殊に有利には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、フマル酸またはウンデセン酸から、殊にはアクリル酸またはメタクリル酸から選ばれる。
【0057】
有利には、平均モル置換度1.5〜3、有利には1.6〜2.7、殊に有利には2.3〜2.6を有する成分VIと成分VIIおよび成分VIIIとをエステル化する。有利には、成分VIのOH基約1〜30%、殊には1〜20%または1〜10%、殊に有利には約5〜7%を成分VIIIでエステル化する。
【0058】
成分VIIと成分VIIIとの量比率は、ポリマーの反射波長を決定する。
【0059】
群c)の好適なポリマーは、この外にもドイツ特許出願公開(DE−A)第19717371号明細書中に記載されているプロパルギル末端、コレステリックポリエステルまたはポリカーボネートである。
【0060】
有利にはこれらの化合物の中で、式RC≡C−CH−〔式中、Rは、直接または結合要素を介してポリエステルまたはポリカーボネートに結合しているH、C〜C−アルキル、アリールまたはAr−C〜C−アルキル(例えばベンジルまたはフェネチル)を表す〕の少なくとも1個のプロパルギル末端基を有するポリエステルまたはポリカーボネートである。結合要素は、有利には
【化13】

(プロパルギル基はXに結合している)
〔式中、Rは、H、C〜C−アルキルまたはフェニルを表し、Xは、O、SまたはNRを表し、かつRは、H、C〜C−アルキル、またはフェニルを表す〕。
から選ばれている。
【0061】
有利には、ポリエステル中で、プロパルギル末端基は、
【化14】

を介して結合している。
【0062】
ポリエステルは、有利には
(IX)少なくとも1個の芳香族または芳香脂肪族ジカルボン酸単位および/または少なくとも1個の芳香族または芳香脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位および
(X)少なくとも1個のジオール単位
を有する。
【0063】
有利なジカルボン酸単位は、式
【化15】

のものであり、殊には式
【化16】

のものであり、その際、それぞれのフェニル基ならびにナフチル基は、たがいに独立してC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルから選ばれている置換基1、2または3個を有していてもよく、
その際、上記の式中、
Wは、NR、S、O、(CHO(CH、(CHまたは単結合を表し、
Rは、アルルまたは水素を表し、
mは、1〜15の整数を表し、かつ
pおよびqは、たがいに独立して0〜10の整数を表す。
【0064】
有利なヒドロキシカルボン酸単位は、式
【化17】

のものであり、その際、それぞれのフェニル基ならびにナフチル基は、たがいに独立してC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルから選ばれている置換基1、2または3個を有していてもよい。
【0065】
有利なジオール単位は、式
【化18】

【0066】
【化19】

のものであり、殊には
【化20】

〔上記の式中、
Lは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、COOR、OCOR、CONHRまたはNHCORを表し、
Xは、S、O、N、CHまたは単結合を表し、
Aは、単結合、(CH、O(CH、S(CH、NR(CH
【化21】

を表し、
Rは、アルキルまたは水素を表し、
は、水素、ハロゲン、アルキルまたはフェニルを表し、かつ
nは、1〜15の整数を表す〕
のものである。
【0067】
有利には、少なくとも1個の式
【化22】

のジカルボン酸単位および少なくとも1個の式
【化23】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、C〜C−アルキル、殊にはCHまたはC(CH、またはフェニルを表す〕
のジオール単位を有するポリエステルである。
【0068】
別の有利な化合物は、式P−Y−B−CO−O−A−O−CO−B−Y−P〔式中、Pは、上記に定義した式のプロパルギル末端基を表し、Yは、O、SまたはNR(R=C〜C−アルキル)のジエステルを表し、Bは、
【化24】

を表す〕であり、その際、それぞれのフェニル基ならびにナフチル基は、たがいに独立してC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ハロゲンまたはフェニルから選ばれている置換基1、2または3個を有していてもよく、かつAは(隣接する酸素原子と一緒に)上記のジオール単位のためのものを表す。
【0069】
殊に有利なジエステルは、Bが
【化25】

を表す上記の式のものであり、かつ殊には、式
HC≡CCHO−B−CO−O−A−O−CO−B−OCH−C≡CH
〔式中、
(XI)Bが
【化26】

、かつAが
【化27】

【0070】
【化28】

を表すか、または
(XII)Bが
【化29】

を表し、かつ
AがXIに記載のものを表す〕
のジエステルである。
【0071】
別の有利な化合物は、少なくとも1個の上記の式、殊には式
【化30】

のジオール単位を組み込んで有するポリカーボネートである。
【0072】
その際、有利なポリカーボネートは、ジオール単位として、式
【化31】

の少なくとも1個のメソゲン単位および式
【化32】

の少なくとも1個のキラル単位および場合により式
【化33】

〔式中、Rは上記に記載のものを表し、かつ殊にはHまたはCHを表す〕
の非キラル単位を有するものである。
【0073】
殊に有利なポリカーボネートは、式HC≡CCHO−R−CO
〔式中、R
【化34】

を表す〕
のプロパルギル末端基を有するものである。
【0074】
群c)のポリマーとして、なかでも非末端位置にも光反応性基を有するコレステリックポリカーボネートが好適である。このようなポリカーボネートは、ドイツ特許出願公開(DE−A)第19631658号明細書中に記載されている。これらは、有利には、式XIII
【化35】

に相当し、ここで、モル比w/x/y/zは、約1〜20/約1〜5/約0〜10/約0〜10である。殊に有利には、モル比w/x/y/zが約1〜5/約1〜2/約0〜5/約0〜5である。
【0075】
式XIII中で、
Aは、式
【化36】

のメソゲン基、
Bは、式
【化37】

のキラル基、
Dは、式
【化38】

の光反応性基、かつ
Eは、式
【化39】

の別の非キラル基を表す。
〔上記の各式中、
Lは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、COOR、OCOR、CONHRまたはNHCORを表し、
Xは、S、O、N、CHまたは単結合を表し、
Rは、アルキルまたは水素を表し、
Aは、単結合、(CH、O(CH、S(CH、NR(CH
【化40】

を表し、
は、水素、ハロゲン、アルキルまたはフェニルを表し、かつ
nは、1〜15の整数を表す〕。
【0076】
がアルキル、ハロゲン、かつAが単結合を表す場合、またはRがHまたはアルキル、かつAが
【化41】

を表す場合には、これは溶解度改善性基である。その例は、
【化42】

である。
【0077】
イソソルビド(Isosorbid)、イソマンニド(Isomannid)および/またはイソイディド(Isoidid)は、有利なキラル成分である。
【0078】
キラルなジオール構造単位の割合は、希望する反射挙動に応じて、ジオール構造単位の全含有量に対して有利には1〜80モル%、殊に有利には2〜20モル%の範囲内である。
【0079】
群d)の有利なポリマーは、例えば架橋可能なコレステリックコポリシアナート、例えば米国特許(US−A)第08834745号明細書に記載のものであり、このすべてをここに引用する。このようなコポリイソシアナートは、式
【化43】

および場合により式
【化44】

〔式中、
は、キラルな脂肪族または芳香族基を表し、
は、架橋可能な基を表し、かつ
は、アキラルな基を表す〕
の反復単位を有する。
【0080】
特に断らない限り、本明細書中で「アルキル」(アルコキシ、ジアルキル、アルキルチオなどにおける場合も同様)としては、分枝状および非分枝状C〜C12−アルキル、有利にはC〜C12−アルキル、殊に有利にはC〜C10−アルキル、特にはC〜C10−アルキルと考える。
【0081】
有利には、Rは、(キラルな)分枝または非分枝アルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、シクロアルキル基、アルキルフェニル基またはC〜C−エポキシアルキル基またはC〜C−脂肪酸とC〜C−アルカノールまたはC〜C−ジアルキルケトンとのエステルの基から選ばれる。エステル基は、脂肪酸部分を介してでもまたアルカノール基を介してでもN−原子と結合していてもよい。基Rは、置換基1、2または3個を有していてもよく、これらは、同じかまたは異なっており、かつアルコキシ基、ジ−C〜C−アルキルアミノ基、CN、ハロゲン原子またはC〜C−アルキルチオ基から選ばれている。
【0082】
有利には、Rは、アルキル、アルコキシアルキル、C〜C−脂肪酸とC〜C−アルカノール、C〜C−ジアルキルケトンとのエステルの基およびエポキシ化したC〜C−エポキシアルキル基から選ばれており、その際、Rは、1または2個の基により置換されていてもよく、これらは、同じかまたは異なっており、かつアルコキシ、ハロゲン、CNまたはCFから選ばれている。分枝状または非分枝状アルキル基またはアルコキシ基のための有利な置換基は、アルコキシ基、ハロゲン原子またはCNから選ばれている。C〜C−脂肪酸とC〜C−アルカノールとのエステルは、アルコキシ基、ハロゲン原子、CNまたはCFから、またC〜C−ジアルキルケトンはアルコキシ基、ハロゲン原子またはCNから選ばれている。
【0083】
殊には、基Rの主鎖は、3〜12、殊には6〜10、有利には6〜8個の員数(C原子、O原子および/またはS原子)の長さを有する。殊に有利には、
【化45】

【0084】
【化46】

【0085】
【化47】

から選ばれている基Rである。
【0086】
特に有利には、使用可能なコポリイソシアナートの成分IIIは、2,6−ジメチルヘプチルイソシアナートから誘導される。
【0087】
使用可能なコポリイソシアナートの基Rは、有利にはC〜C11−アルケニル基、C〜C11−ビニルエーテル基(=ビニル−C〜C−アルキルエーテル)、エチレン性不飽和C〜C11−カルボン酸基およびエチレン性不飽和C〜C−モノカルボン酸とC〜C−アルカノールとのエステルから選ばれ、その際、N原子への結合は、エステルのアルカノール基を介して行われる。殊に有利には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートから、殊にはエチルアクリレートまたはエチルメタクリレートから選ばれている基である。
【0088】
基Rは、有利には基Rと同じものを表す。しかし、これはアキラル、すなわちキラル中心を有していないか、またはラセミ混合物として存在する。
【0089】
殊に有利には、基Rの主鎖は、4〜12、殊には6〜10、有利には6〜8個の員数(C原子、O原子および/またはS原子)の長さを有する。特に有利には、本発明によるコポリイソシアナートの成分Vは、n−ヘキシルイソシアナート、n−ヘプチルイソシアナートまたはn−オクチルイソシアナートから誘導される。
【0090】
成分III、IVおよびVは、有利にはモル比III:IV:Vが約1〜20:1〜20:50〜98、殊には約5〜15:5〜15:65〜90、殊に有利には約15:10:75で存在する。
【0091】
単位III、IVおよびVは、使用可能なコポリイソシアナート内でランダムに分布していてもよい。
【0092】
群e)の好適なポリマーは、イソソルビド単位、イソマンニド単位および/またはイソイディド単位、有利にはイソソルビド単位を含む可とう性の鎖を有するキラル−ネマティックポリエステルであり、かつ鎖の可とう化のために
(a)脂肪族ジカルボン酸、
(b)可とう性スペーサーを有する芳香族ジカルボン酸、
(c)α、ω−アルカノイド、
(d)可とう性スペーサーを有するジフェノールおよび
(e)ポリアルキレンテレフタレートまたはポリアルキレンナフタレートとアシル化ジフェノールおよびアシル化イソソルビドとからの縮合生成物
から選択(かつ誘導)される少なくとも1個の単位を有し、これらは、例えばドイツ特許出願公開(DE−A)第19704506号明細書中に記載されている。
【0093】
ポリエステルは、非結晶性であり、安定なコレステリック相を形成し、これはガラス転移温度以下に冷却すると凍結できる。ポリエステルのガラス転移温度は、同様に可とう化を行っても、80℃以上、有利には90℃以上、殊には100℃以上にある。
【0094】
使用可能なポリエステルは、単位(a)として有利には式
−OC−(CH−CO−
〔式中、nは3〜15、殊には4〜12の範囲内の数を表し、殊に有利にはアジピン酸である〕
のもの;
単位(b)としては、有利には式
【化48】

〔式中、
Aは、(CH、O(CHOまたは(CH−O−(CHを表し、
nは、3〜15、殊には4〜12、殊に有利には4〜10の範囲内の数を表し、かつ
oおよびpは、たがいに独立して1〜7の範囲内の数を表す〕
のもの;
単位(c)としては、有利には式
−O−(CH−O− または
−O−(CH−CH−O)
〔式中、
nは、3〜15、殊には4〜12、殊に有利には4〜10の範囲内の数を表し、かつ
mは、1〜10の範囲内の数を表す〕
のもの;かつ
単位(d)として有利には式
【化49】

〔式中、
Aは、(CH、O(CHOまたは(CH−O−(CHを表し、
nは、3〜15、殊には4〜12、殊に有利には4〜10の範囲内の数を表し、かつ
oおよびpは、たがいに独立して1〜7の範囲内の数を表す〕
のものを有する。
【0095】
使用可能なポリエステルは、非可とう性酸成分の他に、有利には式
【化50】

のジカルボン酸単位、および非可とう性アルコール成分として、式
【化51】

【0096】
【化52】

〔上記の式中、
Lは、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、COOR、OCOR、CONHRまたはNHCORを表し、
Xは、S、O、N、CHまたは単結合を表し、
Aは、単結合、
【化53】

を表し、かつ式中、
は、水素、ハロゲン、アルキルまたはフェニルを表し、かつ
Rは、アルキルまたは水素を表す〕
のジオール単位を有する。
【0097】
場合により、使用可能なポリエステルは、追加的に、式
【化54】

〔式中、
は、水素、ハロゲン、アルキルまたはフェニルを表し、
Aは、(CH、O(CH、S(CHまたはNR(CHを表し、かつ
nは、1〜15の数を表す〕
の可とう性ジオール単位を有する。
【0098】
群f)の有利なポリマーは、例えば架橋可能な液晶ポリオルガノシロキサン、例えば欧州特許出願公開(EP−A)第066137号明細書および欧州特許出願公開(EP−A)第358208号明細書中に記載されているものである。その外にも、群f)の混合物は、キラル化合物を含んでいる。好適なキラル化合物は、殊には群b)の混合物のために記載した式Iaのキラルドーパントである。
【0099】
特に殊に有利には、本発明による断熱コーティングは、群b)によるキラル化合物およびネマティックモノマー、殊には式2
【化55】

:および/または式5
【化56】

のキラル化合物:および式1
【化57】

:式3
【化58】

:または式4
【化59】

のネマティックモノマーを硬化した状態で含み、その際、式1および3中において、nおよびnは、たがいに独立して2、4または6を表し、かつ式1または3のモノマーは、有利にはn/n=2/4、2/6、4/2、6/2、4/4、4/6、6/4または6/6を有する化合物の混合物として使用され、かつ式4中のRは、H、ClまたはCHを表す。
【0100】
別の本発明の対象は、断熱コーティングの製造のための方法であり、これは透明な基体上に少なくとも1層のコレステリックIR反射層を積層し、これを硬化し、場合により1層またはそれ以上の別のコレステリックIR反射層ならびに場合により透過した円偏光の旋光方向を逆転する媒体を積層し、硬化し、かつこれにより断熱コーティングを完成することを特徴とする。
【0101】
その上にIR反射層を積層する透明な基体は、例えばガラス建材(Glausbaustein)、窓ガラス板または断熱の目的で窓ガラス板の上に張り付けるフィルムであってもよい。
【0102】
コレステリックIR反射層の基体上への積層は、慣用の方法、例えば空気ブレードコーティング、ドクターブレードコーティング、エアナイフコーティング、スクイズコーティング、含浸コーティング、リバースロールコーティング、トランスファーロールコーティング、グラビアコーティング、「キスコーティング」、注型コーティング、噴射コーティング、紡糸コーティングまたは印刷法、例えば凸版印刷、凹版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷またはシルクスクリーン印刷から選ばれる方法で行うことができる。
【0103】
IR反射層は、低粘度または高粘度、しかし有利には低粘度で基体上に積層できる。この目的で、コレステリック混合物を薄めるか、または高い温度で低希釈度かまたは低温で高希釈度で積層できる。
【0104】
コレステリック混合物ならびに吸収顔料を含む配合物は、あらゆる好適な希釈剤を用いて基体上への積層の前に薄めることができる。
【0105】
本発明による方法中に例えば使用可能な希釈剤は、群a)またはb)の化合物に対しては線状または分枝状のエステル、殊には酢酸エステル、環状エーテルおよびエステル、アルコール、ラクトン、脂肪族および芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンおよびシクロヘキサン、ならびにケトン、アミド、N−アルキルピロリドン、殊にはN−メチルピロリドン、および特にはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンおよびメチルエチルケトン(MEK)である。
【0106】
群c)のポリマーに対する好適な希釈剤は、例えばエーテルおよび環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサン、塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1−クロロナフタレン、クロロベンゼンまたは1,2−ジクロロベンゼンである。これらの希釈剤は、ポリエステルおよびポリカーボネートに適している。セルロース誘導体に対する好適な希釈剤は、例えばエーテル、例えばジオキサン、またはケトン、例えばアセトンである。コポリイソシアナートを群d)のポリマーとして使用する場合には、重合可能な希釈剤、例えば米国特許(US−A)第08834745号明細書に記載のものを使用することは有効である。このような重合可能な希釈剤は、例えば、
−α、β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、殊にはC〜C−モノカルボン酸またはC〜C−ジカルボン酸とC〜C12−アルカノール、C〜C12−アルカンジオールまたはこれらのC〜C−アルキルエーテルおよびフェニルエーテルとのエステル、例えばアクリレートおよびメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレートならびに2−エトキシエチルアクリレートまたは2−エトキシエチルメタクリレート;
−ビニル−C〜C12−アルキルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ビニルヘキシルエーテルまたはビニルオクチルエーテル;
−C〜C12−カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル;
−C〜C−エポキシド、例えば1,2−ブチレンオキシド、スチレンオキシド;
−N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド;
−ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、および
−2個またはそれ以上の架橋可能な基を有する化合物、例えばジオール(ポリエチレングリコールを含む)とアクリル酸またはメタクリル酸とのジエステルまたはジビニルベンゼン
である。
【0107】
有利な重合可能な希釈剤の例は、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートおよびテトラエチレングリコールジメタクリレートである。殊に有利な重合可能な希釈剤は、スチレンである。
【0108】
群a)、b)またはc)の混合物も、少量の重合可能な希釈剤を含むことができる。有利にa)、b)またはc)に添加できる重合可能な溶剤は、アクリレート、殊には高官能性アクリレート、例えばビスアクリレート、トリスアクリレートまたはテトラアクリレート、殊に有利には高沸点オリゴアクリレートである。有利な添加量は、混合物の全質量に対して約5質量%である。
【0109】
コレステリック混合物は、光化学的重合のために通常の市販の光重合開始剤を含むことができる。電子線照射による硬化に対しては、これらは必要ない。好適な光重合開始剤は、例えばイソブチル−ベンゾインエーテル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−フラン−1−オン、ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンとの混合物、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ペルフルオロ化ジフェニルチタノセン、2−メチル−1−(4−〔メチルチオ〕フェニル)−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニル−スルフィド、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾアート、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピル−チオキサントンとの混合物、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、d,l−カンファーキノン、エチル−d,l−カンファーキノン、ベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの混合物、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミン−ベンゾフェノン、(η−シクロペンタジエニル)(η−イソプロピルフェニル)−鉄(II)−ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム−ヘキサフルオロホスファート、またはトリフェニルスルホニウム塩類の混合物、ならびにブタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートである。
【0110】
コレステリック混合物は、粘度およびレベリング性の調整のために追加的な成分と混合できる。
【0111】
使用可能なものは、例えばポリマー結合剤および/または重合によりポリマー結合剤に誘導できるモノマー化合物である。このような薬剤として、例えば有機溶剤中に可溶性のポリエステル、セルロースエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーンが好適である。殊に有利には、セルロースエステル、例えば酢酸酪酸セルロースが使用される。
【0112】
少量の適切なレベリング剤の添加も有利なことがある。使用するコレステル(Cholester)の量に対して、約0.005〜1質量%、殊には0.01〜0.5質量%を使用できる。好適なレベリング剤は、例えばグリコール、シリコーン油および殊にはアクリレートポリマー、例えばビックヘミー社(Firma Byk Chemie)の商標ビック(Byk) 361ならびにビック358として入手できるアクリレートコポリマーおよびテゴ社(Firma Tego)のテゴ・フロー(Tego flow) ZFS460として入手できる変性したシリコーンを含まないアクリレートポリマーである。
【0113】
場合により、コレステリック混合物は、また紫外線および大気曝露の影響に対する安定剤も含む。このためには、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの誘導体、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートの誘導体、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの誘導体、オルトヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールの誘導体、サリチル酸エステル、オルトヒドロキシフェニル−S−トリアジンまたは立体障害アミンが好適である。これらの物質は、単独または有利には混合物の形で使用できる。
【0114】
積層したIR反射層の硬化は、熱的、光化学的または電子線照射により行うことができる。
【0115】
当然ながら、硬化は、コレステリック層内において、かつコレステリック層を生成して行わなければならない。
【0116】
複数の層を積層する場合には、これらはいずれも個別に積層し、場合により乾燥および硬化することができる。しかし、複数あるいはすべての積層する層を一回の積層工程でウエット・オン・ウエット法でコーティングしようとする対象に積層し、場合により一緒に乾燥およびその後一緒に硬化させることも可能である。しかし、コレステリック層の同時積層の前提条件は、異なる反射挙動を有する異なる層の間に内部拡散がないことである。
【0117】
コレステリック層の同時積層のために、注型法、殊にはナイフ注型ならびにドクターブレード注型法、キャストフィルム押出ならびにストリッピング注型法ならびにカスケード注型法が好適である。上記の注型法は、例えばドイツ特許出願公開(DE−A)第19504930号、欧州特許出願公開(EP−A)第431630号、ドイツ特許出願公開(DE−A)第3733031号ならびに欧州特許出願公開(EP−A)第452959号の各明細書中に記載されており、これらをここに引用する。
【0118】
本発明の別の対象は、波長範囲750nm以上において互いに異なる反射極大を有するコレステリック層形成の能力を有する成分を含む多成分コーティング系である。成分が例えば塗料配合物として使用可能なこのような本発明によるコーティング系を用いて、任意の基体に本発明による断熱コーティングを施工できる。
【0119】
本発明による断熱コーティングは、殊には断熱窓または断熱性透明建材の製造のために、または熱放射に対する住居、事務用建築物または産業建築物の断熱のために好適である。さらに、本発明による断熱コーティングは、自動車分野、殊には断熱性複合ガラス板の製造のために特に好適である。従って、これらの目的へのその使用は、本発明の別の目的でもある。
【実施例】
【0120】
下記の実施例は、本発明を説明するものであるが、これに限定されるものではない。
【0121】
実施例1〜3に対して、これは5℃まではスメクチック、68℃まではネマチック、かつ68℃以上では等方性相として存在する式1のネマチック液晶混合物を使用した(S5N68I)。
【0122】
キラルドーパントとして、実施例1および2では式2の化合物、実施例3では式5の化合物を使用した。
【0123】
実施例1〜3で使用した混合物に、層形成の改善のために、酢酸酪酸セルロースをコレステリック混合物に対して濃度0.8質量%で加え、混合物全体を酢酸ブチル中に溶かした。
【0124】
光重合開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドをコレステリック混合物に対する濃度1.5質量%で加えた。この混合物をドクターブレードを用いて含溶剤厚さ30μmでガラス板上に積層した。3例すべての実施例において、いずれも溶剤の蒸発の後に、均質な透明相が形成した。これを紫外線源を用いて光化学的に架橋させた。
【0125】
実施例1:
5層のコレステリック層をいずれも個別に積層し、上記のようにして硬化させた。コレステリック層の組成は、含有物の濃度が異なり、これは表1から分かる。
【0126】
【表1】

【0127】
すべての層は、この他に酢酸酪酸セルロースおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを上記の量で含んでいた。
【0128】
キラル成分の濃度はxchと省略し、モル分率で表す。ネマチック成分の濃度はxと省略し、同様にモル分率で表す。λは反射極大の波長をnmで表したものである。
【0129】
重ねて積層した層は、波長範囲752〜1500nmにおいて、入射光量の47%の反射を有する。可視光波長範囲内(400〜700nm)の透明性は、95%以上であった。
【0130】
実施例2:
実施例2のために実施例1からの層1中に含まれた混合物を用いた。この混合物は、上記のように、ドクターブレードを用いて含溶剤厚さ30μmにガラス板2枚の上に塗布し、溶剤を除去し、得られた透明なフィルムを紫外線源(ニトラフォトランプ、オスラム社(Nitraphotlampe, Fa. OSRAM))を用いて光化学的に硬化させた。その後、λ/2−フィルム(ニットー社(Fa. Nitto) )を液晶層がλ/2−フィルムと接触するようにして被覆したガラス板の間に置いた。この配置の光学的挙動を分光分析により試験した。λ/2−フィルムを含むコーティングは、波長範囲752〜880nm内の反射率89%、可視波長範囲内の透過率93%以上を有していることが分かった。
【0131】
実施例3:
ドクターブレードを用いて、含溶剤厚さそれぞれ30μmの2層を個別に順次に積層し、溶剤を除去し、得られた厚さ約16μmの可視光で透明なフィルムを光化学的に上記の光源を用いて硬化させた。たがいに重なっている層は、その物質的な組成に関しては同じであった;これらは両方ともネマチック化合物87モル部の上にコレステル13モル部、ならびに酢酸酪酸セルロースおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを上記の量で含んでいた。反射極大の波長は、どちらの層も820nmであった。しかし、層は、その左右像において異なっていた;一方の層のヘリカル超格子構造体は右旋光性、他の層は左旋光性であった。スペクトル分析による試験から、波長820nmにおいて選択的反射94%であった。反射の半値幅121nmであった。可視光波長範囲の透過率は、93%以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線波長範囲内、有利には750nmを上回り、殊には751nm〜約2000nmの波長範囲内において、入射する放射の少なくとも40%、殊には少なくとも45%を反射する1種またはそれ以上のコレステリック層を含む断熱コーティング。
【請求項2】
約390nm〜750nmの波長範囲内において、入射する放射の透過率少なくとも80%、殊には少なくとも90%を有する、請求項1記載の断熱コーティング。
【請求項3】
複数、有利には約2〜20層、殊には約2〜10層のコレステリック赤外線反射層を含む、請求項1または2記載の断熱コーティング。
【請求項4】
コレステリック層が、波長範囲750nmより大においてたがいに異なる反射極大を有する、請求項3記載の断熱コーティング。
【請求項5】
複数のコレステリック層、有利には2で割り切れる数のコレステリック層を含み、その際、それぞれ2層のヘリカル超格子構造のピッチは同一であるが、しかしその左右像が異なる、請求項1から4までのいずれか1項記載の断熱コーティング。
【請求項6】
同じピッチおよび同じ左右像のヘリカル超格子構造を有する層の間に、透過する円偏光の旋光方向を逆転する媒体、殊にはいわゆるλ/2−フィルムまたはλ/2−板を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の断熱コーティング。
【請求項7】
750nmを上回る波長範囲、殊には波長範囲751nm〜約2000nm内において、入射する放射の少なくとも75%、殊には少なくとも85%を反射する、請求項6記載の断熱コーティング。
【請求項8】
a)少なくとも1種のコレステリックに重合可能なモノマー;
b)少なくとも1種のアキラル、ネマティック、重合可能なモノマーおよびキラル化合物;
c)少なくとも1種のコレステリックで架橋可能なポリマー;
d)重合可能な希釈剤または重合可能な希釈剤混合物中の少なくとも1種のコレステリックポリマー;
e)そのコレステリック相がガラス転移温度以下への急速な冷却により凍結できる少なくとも1種のコレステリックポリマー:または
f)少なくとも1種のアキラル、液晶性で架橋可能なポリマーおよびキラル化合物;
から選択されているコレステリック化合物または化合物の混合物を硬化した状態で含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の断熱コーティング。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の断熱コーティングの製造方法において、透明な基体の上に少なくとも1層のコレステリック赤外線反射層を積層し、これを硬化させ、場合により1種またはそれ以上の別のコレステリック赤外線反射層ならびに場合により透過した円偏光の旋光方向を逆転させる媒体を積層し、硬化させ、かつこれにより断熱コーティングを完成することを特徴とする、断熱コーティングの製造方法。
【請求項10】
請求項4から8までのいずれか1項に記載の定義に適合するコレステリック層を形成する能力を有する成分を含む、多成分コーティング系。
【請求項11】
断熱窓または断熱性透明建材の製造のためまたは住居、事務用建築物または産業建築物の断熱のための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の断熱コーティングの使用。
【請求項12】
自動車分野、殊には断熱性複合ガラス板の製造のための、請求項1から8までのいずれか1項に記載の断熱コーティングの使用。
【請求項13】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の断熱コーティングを含むフィルム、殊には接着性フィルム。

【公開番号】特開2011−138147(P2011−138147A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23193(P2011−23193)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【分割の表示】特願2000−515844(P2000−515844)の分割
【原出願日】平成10年10月14日(1998.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】