説明

断熱形材

【課題】 形材を構成する部材間の空間を通気孔や電装品の通路として利用可能な断熱形材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【解決手段】 形材3の断熱が要求される部分3bにシート状の断熱樹脂発泡体2が貼着されている断熱形材1であり、その断熱樹脂発泡体2は、架橋ポリエチレン発泡体、若しくは、制振性を有する変成アスファルト系樹脂であることが望ましいものである。又、本発明の断熱形材1の製造方法は、形材3がアルミである場合、アルミ形材3の断熱が要求される部分3bに、発泡剤の混練されたシート状断熱樹脂2を乗せてアルミ形材3の全体を昇温し、断熱樹脂2を発泡させて溶解させ、アルミ形材3に貼着させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車・鉄道車両・船舶・航空機等の輸送体用構造体、並びに、断熱の要求される建築構造物の床や天井、壁材として使用される形材に係わり、特に断熱効果を有する断熱形材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の輸送体における構造体の従来の断熱構造は、外壁材と内壁材との空間にグラスウール、フェルト繊維マット、ウレタンフォーム等の断熱材を詰めて断熱層を形成して、鉄道車両等の輸送体内と外界とを断熱するものであった。このような断熱構造は、断熱層を保持するための構造が別に必要であり、そのため重量やコストが増大するという問題を有していた。
【0003】
そこで、二枚の平板と、この二枚の平板の間に挟まれたW字形状の連続折板のリブとからなるトラス構造のアルミ形材に、前記二枚の平板間の空間で断熱層を形成するようウレタンを発泡させた断熱形材が考えられた。このような従来の断熱形材は、二枚の平板の間に断熱層を保持するために別の構造を必要とせず、重量やコストが増大するという問題がない。
【0004】
ところで、鉄道車両等の輸送体は、輸送体内の使用スペースを出来るかぎり大きく確保したいとの要求がある。そのため、前記トラス構造のアルミ形材の二枚の平板間の空間を通気孔や電装品の通路として利用できることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の断熱形材は、トラス構造のアルミ形材の二枚の平板間にウレタンを発泡させたものであるので、アルミ形材の空間全体にウレタンが充満しており、アルミ形材の二枚の平板間の空間を通気孔や電装品の通路として利用できないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、形材を構成する部材間の空間を通気孔や電装品の通路として利用可能な断熱形材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の断熱形材は、形材の断熱が要求される部分にシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されているものである。そして、その断熱樹脂発泡体は、架橋ポリエチレン発泡体、若しくは、制振性を有する変成アスファルト系樹脂であることが望ましい。
【0008】
又、本発明の断熱形材の製造方法は、形材がアルミである場合、アルミ形材の断熱が要求される部分に、発泡剤の混練されたシート状断熱樹脂を乗せてアルミ形材の全体を昇温し、断熱樹脂を発泡させて溶解させ、アルミ形材に貼着させるものである。
【0009】
(作用)
シート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていると、形材の内側と外側とを断熱すると共に、形材を構成する部材間にウレタンが発泡して充満している従来の断熱形材と異なり、形材を構成する部材間に隙間ができるので、形材内を通気孔や電装品の通路として利用することが可能になる。そして、断熱樹脂発泡体が、架橋ポリエチレン発泡体、若しくは、制振性を有する変成アスファルト系樹脂であると、ウレタン発泡体に比べ断熱効果が大きいので、省スペースで同様の断熱性の付与が可能になる。
【0010】
又、本発明の製造方法によれば、アルミ形材のテンパー処理と断熱樹脂の発泡、溶解のための昇温とを兼ねさせると、断熱樹脂をアルミ形材に貼着させる貼着工程を省略することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の断熱形材の一実施例を示す断面図である。図1に基づいて本発明実施の断熱形材1の構成と、その製造方法について説明する。図1において、本発明実施の断熱形材1は、紙面手前から向こうに延びる二枚の平板3a、3bと、この二枚の平板3a、3bの間に挟まれたW字形状の連続折板のリブ3cとからなるトラス構造のアルミ形材3に、断熱が要求される部分、即ち、輸送体等の外側となる平板3bの裏面に発泡したシート状の断熱樹脂2が貼着されているものである。
【0012】
尚、シート状の断熱樹脂2を貼着する面は、断熱が要求される部分、即ち、輸送体等の外側となる平板3bの表面、全面に貼着するのが効果的である。しかし、本実施例では、外側からの見栄えをよくするために、平板3bの裏面に貼着する。また、連続折板のリブ3c部分の断熱樹脂2は、断熱樹脂が変成アスファルト系樹脂等の制振性を有するものである場合に、より効果的な制振作用を得るために貼着されている。
【0013】
このアルミ形材3は、時効硬化させるために全体が150℃〜250℃まで昇温されて熱処理される。シート状の断熱樹脂2は、この時効硬化のための熱処理温度よりも低い温度で発泡して溶解する樹脂で、ウレタンの発泡体よりも断熱性の良い制振性を有する変成アスファルト系樹脂が好ましい。具体的には、変成アスファルトを2.5倍に発泡させたもので断熱性、0.13kcal/mh℃、比重0.6g/cm3のものを使用した。尚、本発明の製造方法によらず、接着剤を使用して貼着する場合は、ウレタンの発泡体よりも断熱性の良い架橋ポリエチレン発泡体が好ましい。
【0014】
本発明実施の断熱形材1の製造方法を説明する。最初にアルミを平板3a、3bとリブ3cとでトラス構造を形成するように押出し成形するか、又は、溶接接合してアルミ形材3を製造する。次に、形材3をそのまま、あるいは複数個を溶接接合して、平板3b上のリブ3c間、及び、V字側面のリブ3c上に発泡剤の混練されたシート状断熱樹脂2を挿入し、150℃〜250℃でテンパー処理を行う。そして、最後に冷却する。
【0015】
このようにテンパー処理前に、発泡剤の混練されたシート状断熱樹脂2をアルミ形材の平板3b、及び、V字側面のリブ3c上に乗せた後にテンパー処理を行うと、樹脂の溶解温度はテンパー温度よりも低いので平板3b上、及び、V字側面のリブ3c間で発泡して溶解する。そして、冷却されると、平板3b上、及び、V字側面のリブ3c間で貼着する。尚、テンパー処理を行うことが必要でない場合には、接着剤を使用して発泡したシート状の樹脂2を平板3b、及び、V字側面のリブ3cに接着させる。
【0016】
このようにして製造された本発明の断熱形材1が、自動車・鉄道車両・船舶・航空機等の輸送体用構造体、並びに、断熱の要求される建築構造物の床や天井、壁材として使用された場合、形材を構成する平板3bに貼着された発泡したシート状の樹脂2が輸送体や建築物等の内側を外界から断熱すると共に、形材を構成する部材3a、3b、3c間に隙間を残しているので、この空間を通気孔や電装品の通路として利用することを可能にする。その結果、輸送体等の内側の使用スペースが増大し、利用客等に窮屈な思いをさせずに、輸送体等を小型化することができる。
【0017】
また、制振性を有する変成アスファルト系樹脂である場合、制振効果もあるので、制振のための別部材を付ける必要が無くなり、形材全体の低価格化、軽量化が図れる。形材全体の軽量化が図られると、輸送体の構造体として使用する場合、輸送時の省エネルギー、低騒音化に寄与することが期待できる。
【0018】
更に、本発明の断熱形材製造方法は、形材がアルミである場合、形材3のテンパー処理とシート状断熱樹脂2の発泡、溶解のための昇温とを兼ねさせると、発泡したシート状の樹脂2を平板3b、及び、V字側面のリブ3cに貼着させるための特別な工程を行う必要が無いという利点があり、製造コストの低減化が図れる。又、シート状断熱樹脂2の発泡の程度Hを調節することにより、二枚の平板3a、3b間に所望の使用可能な空間が確保できる。
【0019】
尚、本発明の断熱形材は、アルミ形材に限られるものではなく、他の材質の形材でもよく、又、制振性を付与するために制振性及び断熱性を有する変成アスファルト系樹脂を使用する他に、変成アスファルトにフィラーを充填したような制振性だけを有する制振性樹脂と架橋ポリエチレン発泡体のような断熱性だけを有する断熱性樹脂とを併用して必要箇所に貼着してもよい。更に、形材の形状はトラス構造に限られものではなく、図2から図6に示すような断熱性が要求される形材すべてに適用が可能である。
【0020】
図2は紙面手前から紙面向こうに延びる一枚の平板4a上に紙面手前から紙面向こうに延びる複数のリブ4bを垂直に設けた車両の壁材や天井に使用される形材4に本発明を実施した例で、シート状の断熱樹脂発泡体2が断熱が要求される部分、即ち、平板4a上の複数のリブ4b間に貼着されている。この場合、断熱が要求される部分が、制振性も要求される部分でもある場合は、制振性のある変成アスファルト系樹脂の発泡体がシート状の断熱樹脂発泡体2として使用されるのが好ましい。
【0021】
図3は、車両の屋根の長ケタに使用される形材5に、本発明を実施した例で、断熱が要求される部分にシート状の断熱樹脂発泡体2が貼着されている。この場合も、制振性も向上させる必要がある場合は、制振性のある変成アスファルト系樹脂の発泡体がシート状の断熱樹脂発泡体2として使用すればよい。
【0022】
図4乃至図6は、それぞれ車両の長土台に使用される形材6、車両の屋根に使用される形材8、車両用腰帯に使用される形材9に本発明を実施した例で、断熱が要求される部分にはシート状の断熱樹脂発泡体2を、制振のみが要求される部分には制振性の樹脂7が貼着されている。この場合も、断熱が要求される部分が、制振性も要求される部分である場合は、制振性のある変成アスファルト系樹脂の発泡体がシート状の断熱樹脂発泡体2として使用されるのが好ましい。
【0023】
(発明の効果)
本発明の断熱形材は、形材を構成する部材に貼着されたシート状断熱樹脂発泡体が輸送体や建築物等の内側を外界から断熱すると共に、形材を構成する部材間に隙間を残しているので、形材を構成する部材間の空間を通気孔や電装品の通路として利用することを可能にする。その結果、輸送体等の内側の使用スペースが増大し、利用客等に窮屈な思いをさせずに、輸送体等を小型化することができる。
【0024】
又、本発明の断熱形材製造方法は、形材がアルミである場合、アルミ形材のテンパー処理と断熱樹脂の発泡、溶解のための昇温とを兼ねさせると、断熱樹脂をアルミ形材に貼着させる貼着工程を省略することが可能であるので、製造コストの低減化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明実施の断熱形材の断面図である。
【図2】本発明実施の他の断熱形材の断面図である。
【図3】本発明実施の他の断熱形材の断面図である。
【図4】本発明実施の他の断熱形材の断面図である。
【図5】本発明実施の他の断熱形材の断面図である。
【図6】本発明実施の他の断熱形材の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 断熱形材
2 シート状断熱樹脂発泡体
3 形材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用され、二枚の平板と、前記平板に挟まれたリブとからなるトラス構造の形材であって、
断熱が要求される部分に、架橋ポリエチレン発泡体であるシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項2】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用され、二枚の平板と、前記平板に挟まれたリブとからなるトラス構造の形材であって、
断熱が要求される部分に、制振性を有するシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項3】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、一枚の平板と、前記平板に垂直に設けた複数のリブとから構成されており、
断熱が要求される部分に、架橋ポリエチレン発泡体であるシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項4】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、一枚の平板と、前記平板に垂直に設けた複数のリブとから構成されており、
断熱が要求される部分に、制振性を有するシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項5】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、部材間に空間を有するように構成されており、
断熱が要求される部分に、架橋ポリエチレン発泡体であるシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項6】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、部材間に空間を有するように構成されており、
断熱が要求される部分に、制振性を有するシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項7】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、前記形材の少なくとも一部分に空洞を形成するように構成されており、
断熱が要求される部分に、架橋ポリエチレン発泡体であるシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項8】
鉄道車両等の輸送体用構造体、並びに、建築構造物の床等に使用される形材であって、
前記形材が、前記形材の少なくとも一部分に空洞を形成するように構成されており、
断熱が要求される部分に、制振性を有するシート状の断熱樹脂発泡体が貼着されていることを特徴とする断熱形材。
【請求項9】
請求項2、4、6、8の何れか1項に記載の断熱形材において、
前記制振性を有する断熱樹脂発泡体が変成アスファルト系樹脂の発泡体であることを特徴とする断熱形材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−36205(P2006−36205A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231777(P2005−231777)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【分割の表示】特願平6−159582の分割
【原出願日】平成6年6月16日(1994.6.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1994年5月16日発行の日経産業新聞に掲載
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】