説明

断熱材の製造方法

【課題】樹脂シート間に十分な厚みの空気層を確実に形成することができ、しかも耐熱性及び耐候性に優れた断熱材を得る方法を提供する。
【解決手段】樹脂シート2上に、複数本のガイドバー11aをそれぞれ有するガイドプレート11を載置し、ガイドバー11a間に挟まれた領域において、ガイドバー11aの厚みよりも厚くなるようにスペーサ形成用後硬化性樹脂組成物を塗工し、次に樹脂シート3を積層する各工程を繰り返し、スペーサ形成用後硬化性樹脂組成物体4Aを硬化させ、スペーサを形成するとともに、樹脂シート2,3をスペーサにより接合し、硬化後にガイドプレート11を除去する、断熱材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の樹脂シートが空気層を隔てて配置されている構造を有する断熱材の製造方法に関し、特に、隣り合う樹脂シートが樹脂からなるスペーサにより結合されている断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の窓ガラスなどに装着する採光断熱材が種々提案されている。例えば下記の特許文献1には、複数枚の合成樹脂シートを積層してなる採光断熱材が開示されている。ここでは、複数枚の合成樹脂シートが樹脂からなるスペーサを介して接合されている。それによって、隣り合う樹脂シート間に空気層が設けられている。この採光断熱材の製造に際しては、樹脂シートの片面にスペーサ形成用樹脂を塗工する。しかる後、次の樹脂シートを積層し、樹脂シート同士をスペーサ形成用樹脂を介して接合する。この工程を繰り返すことにより、複数枚の樹脂シートが空気層を介して積層されている採光断熱材を得ることができる。
【0003】
また、下記の特許文献2には、上記スペーサ形成用樹脂として熱可塑性樹脂を用いた採光断熱材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4546870号公報
【特許文献2】特許第4608595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物に装着される採光断熱材の日本国内本州使用想定の実使用温度の上限は、40℃〜60℃程度である。気温の、より高い気候の土地で使用するには、より高い耐熱性が求められる。従って、上記採光断熱材に用いられているスペーサ形成用樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、耐熱性(軟化温度)を高める必要がある。
【0006】
他方、樹脂を吐出するためのギアポンプの送り圧力には、限界がある。従って、採光断熱材の製造に際してスペーサ形成用樹脂を塗工する際には、樹脂の流動性が高くなければならない。軟化温度の高い樹脂の流動性を高めるために、さらに塗工時の樹脂温度を高めた場合には、そのような高い温度に耐え得る製造設備を用いなければならないが、この種の設備の耐熱性には限界がある。例えば、樹脂塗工用のノズルのシール用オーリングの耐熱温度は、通常、200℃以下である。
【0007】
加えて、高温で塗工することにより形成した熱可塑性樹脂からなるスペーサは、熱劣化によって、より早期に黄変が生じたり、物性が低下したりするという問題もある。
【0008】
さらに、高温で樹脂を塗工する場合、その温度分布や樹脂の圧力分布が大きくなりがちである。そのため、得られたスペーサの形状(厚み)がばらつきがちであり、外観欠損が生じるおそれもある。
【0009】
従って、熱可塑性樹脂を用いて上記スペーサを形成する場合、採光断熱材の耐熱性を高めるには限界があった。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、スペーサが後硬化性樹脂組成物からなり、耐熱性に優れた断熱材を得ることを可能とする断熱材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数枚の樹脂シートが間に空気層を隔てて配置されており、対向し合っている樹脂シート同士が複数本のスペーサを介して接合されている断熱材の製造方法である。本発明に係る製造方法は、以下の各工程を備える。
【0012】
A)上記樹脂シートの複数本のスペーサのそれぞれが設けられる部分の両側に載置される複数本のガイドバーを備えるガイドプレートを用意する工程、
B)前記ガイドプレートの複数本のガイドバーが、樹脂シート上にスペーサ形成用樹脂組成物が塗工される部分を挟む領域に位置するように、前記樹脂シート上に前記ガイドプレートを載置する工程、
C)前記樹脂シート上において、前記複数本のガイドバーにおいて挟まれた領域において、前記ガイドバーの厚みよりも厚くなるように後硬化性樹脂組成物からなるスペーサ形成用樹脂組成物を塗工する工程、
D)前記樹脂組成物塗工後に、前記樹脂シートに対向するように前記樹脂シートに積層される次の樹脂シートを積層する工程、
前記B)〜D)の工程を少なくとも1回さらに繰り返す工程、
前記スペーサ形成用樹脂組成物を硬化させ、スペーサを形成するとともに、スペーサによりスペーサを挟んでいる両側の樹脂シートを接合する工程、
前記スペーサ形成用樹脂組成物を硬化させた後に、前記ガイドプレートを除去する工程。
【0013】
本発明に係る断熱材の製造方法では、好ましくは、スペーサ形成用樹脂組成物として、後硬化性樹脂組成物を用いる。それによって、より一層耐熱性に優れた断熱材を得ることができる。
【0014】
本発明に係る断熱材の製造方法の他の特定の局面では、前記ガイドプレートが、複数本のガイドバーの一端側において連結している連結部をさらに有し、前記樹脂シート上にガイドプレートを載置するにあたり、前記連結部を樹脂シートの上面の外側に位置させる。この場合には、連結部を利用して、ガイドプレートを容易に配置し、かつ除去することができる。
【0015】
本発明に係る断熱材の製造方法の他の特定の局面では、前記複数本のスペーサが並設されており、隣り合うスペーサ間の間隔よりも、隣り合う前記ガイドバー間の間隔が短くされている。この場合には、塗工後のスペーサが樹脂シート積層及び接合時の圧力のように変形したとしても、ガイドを容易に樹脂シート板から抜き出すことができる。
【0016】
本発明に係る断熱材の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記樹脂シートが対向し合う第1,第2の辺を有する矩形の平面形状を有し、前記複数本のスペーサが第1の辺と第2の辺とを結ぶ方向に延びるように配置され、前記複数本のガイドバーが第1の辺と第2の辺とを結ぶ方向に延びている。この場合には、ガイドプレートを樹脂シート間から容易に抜き出すことができる。
【0017】
本発明に係る断熱材の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記ガイドプレートとして、複数本の第1のガイドバーを有する第1のガイドプレートと、複数本の第2のガイドバーを有する第2のガイドプレートとを用い、前記第1の辺から前記第2の辺に向かって第1のガイドバーが延びるように第1のガイドプレートを前記樹脂シート上に載置し、前記複数本の第2のガイドバーが前記第2の辺から前記第1の辺に向かって延びるように前記第2のガイドプレートを前記樹脂シート上に載置する。この場合には、第1,第2のガイドプレートを、樹脂シートの第1の辺側及び第2の辺側から容易に取り出すことができる。ガイドプレートが長手方向に分割されてない場合と比較すると、硬化後にガイドプレートを引き抜く距離が短くなるため、ガイドの直線性や振動等によって、フィルム面やスペーサ樹脂そのものを傷つける確率が低下する。
【0018】
本発明に係る断熱材の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記樹脂シートとして透光性樹脂シートを用い、前記スペーサとして、透光性樹脂からなるスペーサを用い、採光断熱材を製造する。この場合には、採光性に優れた採光断熱材を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る断熱材の製造方法によれば、複数枚の樹脂シートが複数本のスペーサを介して接合されている構造が繰り返されている断熱材を容易に得ることができる。特に、上記スペーサが、後硬化性樹脂組成物を硬化することにより形成されているため、断熱材の耐熱性を高めることができる。加えて、後硬化性樹脂組成物によりスペーサを形成しているが、上記ガイドプレートを樹脂シート間に配置しているため、硬化前のスペーサ形成用樹脂組成物が潰れ難い。従って、樹脂シート間に十分な厚みの空気層を確実に形成することができる。また、スペーサ形成用後後硬化性樹脂組成物の硬化後に樹脂シート間から上記ガイドプレートを容易に抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態により得られる採光断熱材を示す横断面図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の製造方法において、樹脂シート上に第1,第2のガイドプレートを載置した状態を示す斜視図であり、(b)は(a)中のA−A線に沿う部分の断面図である。
【図3】(a)は、樹脂シート上にスペーサ用樹脂組成物を塗工する工程を説明するための斜視図であり、(b)は(a)中のB−B線に沿う部分を示す断面図である。
【図4】(a)は、本発明の実施形態の製造方法において用いられる塗工用ノズルを示す正面図であり、(b)はそのノズル先端部分を拡大して示す正面図であり、(c)はノズル先端部分の側面図であり、(d)は(b)中の矢印Bから見たノズルの先端開口部を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の製造方法において、塗工ノズル先端からスペーサ形成用樹脂組成物を塗出し、樹脂シート上に塗工する工程を説明するための部分切欠正面図である。
【図6】本発明の一実施形態の製造方法において、樹脂シート上にスペーサ用樹脂組成物を塗工し、次の樹脂シートを積層する工程を繰り返して得られた構造の横断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の製造方法において、積層体から第1,第2のガイドプレートを除去する工程を説明するための平面図である。
【図8】本発明の一実施形態の製造方法に用いられる製造装置の概略構成図である。
【図9】(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の製造方法で用いられるノズル先端の形状の変形例を示す各正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態により得られる採光断熱材の横断面図である。採光断熱材1は、複数枚の樹脂シートとして、複数枚の第1の樹脂シート2と、複数枚の第2の樹脂シート3とを有する。なお、第1の樹脂シート2及び第2の樹脂シート3は、同一の樹脂シートであるが、製造工程の説明をわかりやすくするために、第1の樹脂シート2と第2の樹脂シート3とを区別することとする。
【0023】
上記第1の樹脂シート2及び第2の樹脂シート3は、可撓性を有し、かつ透光性を有する適宜の樹脂からなる。このような樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。なお、本実施形態では、採光性を確保するために、透光性を有する樹脂を用いたが、採光断熱材ではなく、採光性が求められない断熱材においては、第1,第2の樹脂シート2,3は、透光性を有しない樹脂により形成されてもよい。
【0024】
第1の樹脂シート2と第2の樹脂シート3との間に、それぞれ、空気層Dが形成されている。空気層Dにより、断熱性が高められている。この空気層Dの厚みを確保するために、第1の樹脂シート2と、第2の樹脂シート3との間に複数本のスペーサ4が配置されている。スペーサ4は、後硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。スペーサ4は、空気層Dの厚みを確保するとともに、第1の樹脂シート2と、第2の樹脂シート3とを接合する機能を果たしている。すなわち、第1の樹脂シート2と第2の樹脂シート3とを、スペーサ4を介して接合することにより、空気層Dが形成されている。
【0025】
上記スペーサ4を形成するための後硬化性樹脂組成物としては、適宜の後硬化性樹脂組成物を用いることができるが、湿気、光または熱等により硬化する後硬化性樹脂組成物が好適に用いられる。このような後硬化性樹脂組成物としては、湿気硬化型シリコーン樹脂組成物、二液型ウレタン樹脂系接着剤、二液型エポキシ樹脂系接着剤、光硬化型エポキシ樹脂などを挙げることができる。後硬化性樹脂組成物は、湿気により硬化するものであってもよく、熱や光により硬化するものであってもよい。好ましくは、採光性に優れているため、硬化物が透光性に優れている後硬化性樹脂組成物を用いることが望ましい。また、耐候性と難燃性を高めることができるので、シリコーン系樹脂組成物用いることが望ましい。
【0026】
上記のような後硬化性樹脂組成物は、硬化前の状態では常温で液状または固形である。従って、後述する製造方法から明らかなように、第1の樹脂シート2上に、スペーサ4を形成するための後硬化性樹脂組成物を塗工ノズル等を用いて塗工する。この場合、硬化前の後硬化性樹脂組成物は所望の位置から外側に流れ出ないことが望ましい。従って、後硬化性樹脂組成物は、硬化前の段階で、一定以上のチキソ性を有することが好ましい。このチキソ性の程度は、好ましくは、B型粘度計による回転数5rpmで測定した粘度と10rpmで測定した粘度との比によるチキソ係数で1.2以上であることが望ましく、より望ましくは1.3以上、さらに望ましくは1.5以上である。
【0027】
チキソ係数が高すぎると、塗工に際して用いられる塗出ポンプの塗出能力を高める必要があり、従って設備コストが高くつくおそれがある。
【0028】
もっとも、チキソ係数が高いほど、後述する塗工工程において、十分な高さを有するスペーサを高精度に形成することができる。従って、断熱性をより一層高めることができる。
【0029】
本実施形態では、上記複数本のスペーサ4は、図1の紙面−紙背方向に延びている。すなわち、スペーサ4は、長さ方向を有するロッド状の形状を有している。もっとも、スペーサ4の形状は特に限定されるものではない。
【0030】
また、第1,第2の樹脂シート2,3は、本実施形態では、図1の紙面−紙背方向に向いている矩形のシートである。ここでは、紙面−紙背方向に延びる方向を長さ方向とする。従って、図1は、採光断熱材1の横断面を示している。
【0031】
上記採光断熱材1では、複数の空気層Dが設けられているため、断熱性に優れている。また、上記第1,第2の樹脂シート2,3及びスペーサ4が透光性を有するため、十分な耐候性も確保されている。
【0032】
上記採光断熱材1の製造方法の一実施形態を図2〜図8を参照して説明する。
【0033】
まず、図2(a)及び(b)に示すように、平面形状が矩形の第1の樹脂シート2を用意する。第1の樹脂シート2は、長さ方向において対向する第1,第2の辺2a,2bを有する。第1の樹脂シート2上に、第1,第2のガイドプレート11,12を配置する。
【0034】
第1のガイドプレート11は、合成樹脂または金属などの適宜の剛性材料により形成することができる。ガイドプレート自体が、後硬化性樹脂組成物の硬化温度において、熱収縮や熱膨張がないよう、耐熱性、特に寸法安定性が高いものが望ましい。好ましくは、安価であり、使い捨てに適しているため、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が望ましい。
【0035】
第1のガイドプレート11は、複数本のガイドバー11aを有する。ガイドバー11aは、細長いストリップ状の形状を有する。このストリップ状の形状とは、細長い矩形の平面形状である。また、隣り合うガイドバー11a,11a間の間隔W1は全て等しくされている。もっとも、複数本のスペーサ4を均一に配置する必要がない場合には、隣り合うガイドバー11a,11a間の間隔は異なっていてもよい。また、スペーサ4の配置状態に応じて、ガイドバー11aの平面形状は適宜変形してもよい。
【0036】
複数本のガイドバー11aの一端が連結部11bにより連結されている。連結部11bは、第1の樹脂シート2の第1,第2の辺2a,2bの延びる方向、すなわち短辺方向に延ばされている。
【0037】
他方、第2のガイドプレート12は、第1のガイドプレート11と同様に、複数本のガイドバー12aと、連結部12bとを有する。
【0038】
図2(a)に示すように、複数本のガイドバー11a及び複数本のガイドバー12aが、先端同士が突き合わされる形で、第1の樹脂シート2上に載置されている。連結部11b,12bは、第1の樹脂シート2の上方には存在せず、第1の樹脂シート2外に位置している。このように、複数本のガイドバー11a,12aの一部または全部を、第1の樹脂シート2上に載置し、連結部11b,12bは第1の樹脂シート2外に位置させる。
【0039】
次に、図3(a)及び(b)に示すように、塗工機13を用いて、スペーサ形成用樹脂組成物を塗工する。前述したように、スペーサ形成用樹脂組成物は後硬化性樹脂組成物からなり、硬化前の状態では常温で液状であり、流動性を有する。従って、液状の樹脂材料を塗工する適宜の塗工装置により塗工機13を形成することができる。
【0040】
本実施形態では、塗工機13の下面において、第1の樹脂シート2の短辺方向に沿って複数の塗工ノズルが設けられている。
【0041】
図4(a)は、塗工機13の図3(a)中のW方向、すなわち第1の樹脂シート2の幅方向から見た図である。塗工機13の下面に、塗工ノズル14が設けられている。
【0042】
この塗工ノズル14が、上記W方向に沿って複数設けられている。この塗工ノズル14を図4(b)に拡大して示す。また、塗工ノズル14の上記図3(a)中のW方向と直交するL方向から見た形状を図4(c)に示す。また、図4(d)は、図4(b)中のB方向、すなわち上記L方向とは逆方向から見た塗工ノズル14の先端の開口部14aを示す図である。
【0043】
図4(b)に示すように、塗工ノズル14は、先端側において図3(a)のL方向に曲げられている。従って、先端面14bは、第1の樹脂シート2のシート面に対して平行ではなく、傾斜されている。そして、この先端面14bに、開口部14aが形成されている。
【0044】
上記塗工ノズル14を用いた場合、図5に示すように、塗工ノズル14をL方向に移動させつつ、後硬化性樹脂組成物体4Aを十分な高さを有するように形成することができる。すなわち、先端面14bが上記のように傾斜しているので、開口部14aの開口面も、第1の樹脂シート2に対して傾斜している。そのため、開口部14aから塗出される後硬化性樹脂組成物を、十分な高さを有するように塗工することができる。
【0045】
図3(a)では、第2の辺2bから第1の辺2aに向かって塗工機13を移動させつつ、後硬化性樹脂組成物を塗工する状態が示されている。
【0046】
上記後硬化性樹脂組成物の塗工に際しては、高さH(図5参照)をガイドプレート11,12の厚みよりも大きくなるように塗工する。
【0047】
上記のようにして、第1の樹脂シート2上に、複数本のスペーサ4を形成するためのロッド状の後硬化性樹脂組成物体4Aを形成することができる。
【0048】
次に、第1の樹脂シート2上に、第2の樹脂シート3を積層する。この場合、後硬化性樹脂組成物体4Aは未硬化の状態である。従って、上記のようにして塗工された後硬化性樹脂組成物体4Aの上面に第2の樹脂シート3が付着される。
【0049】
上記工程を繰り返すことにより、図6に示すように、第1の樹脂シート2と第2の樹脂シート3とが交互に積層されている構造が得られる。ここで、隣り合う第1の樹脂シート2と第2の樹脂シート3とが、上記後硬化性樹脂組成物体4Aにより接続されている。また、各後硬化性樹脂組成物体4Aは、隣り合うガイドバー12a,12a間に配置されている。
【0050】
上記第1,第2の樹脂シート2,3の積層数は、最終的に得られる採光断熱材1における積層構造を実現するように選択する。なお、第1,第2の樹脂シートの数は同一でなくともよい。
【0051】
なお、上記後硬化性樹脂組成物体4Aの塗工に際しては、塗工性樹脂組成物体4Aの塗工幅W2を、隣り合うガイドバー12a,12a間の幅W1よりも狭くすることが望ましい。これは、以下の理由による。複数枚の第1,第2の樹脂シート2,3を後硬化性樹脂組成物体4Aを介して積層すると、後硬化性樹脂組成物体4Aが積層体の厚み方向に加わる力により潰される。従って、後硬化性樹脂組成物体4Aの幅W2が、大きくなるように、後硬化性樹脂組成物体4Aが変形する。それによって、後硬化性樹脂組成物体4Aが、隣り合うガイドバー12a,12aの側面に付着するおそれがある。このような付着が生じると、後述する第1,第2のガイドプレート11,12の除去を容易に行うことができないことがある。従って、上記のように、隣り合うガイドバー11a,11a間及びガイドバー12a,12a間の距離W1は、後硬化性樹脂組成物体4Aの幅W2よりも大きいことが好ましい。
【0052】
他方、図6に示すスペーサ形成用後硬化性樹脂組成物体4A,4A間の間隔W3よりも、隣り合うガイドバー11a,11a間の間隔W1が狭いことが望ましい。それによって、後硬化性樹脂組成物体4A硬化後に、ガイドバー11a,11aを容易に抜き出すことができる。
【0053】
また、上記のように、積層に際して加わる外力により、後硬化性樹脂組成物体4Aは、その高さが低くなるように潰される。その場合であっても、本実施形態では、第1,第2のガイドプレート11,12が第1,第2の樹脂シート2,3間に配置されている。従って、十分な厚みの空気層D(図1参照)を確実に形成することができる。すなわち、後硬化性樹脂組成物体4Aが潰されたとしても、例えば図6において、第2の樹脂シート3の下面が下方の第2のガイドプレート12の上面に接触すると、後硬化性樹脂組成物体4Aの高さはそれ以上低くならない。従って、少なくともガイドプレート11,12の高さに相当する厚みの空気層Dを確実に形成することができる。
【0054】
上記のようにして、図6に模式的に示す積層体15を得る。なお、図6では、第1,第2の樹脂シート2,3の積層数は4層であるが、図1に示した採光断熱材1を得るのに応じた積層数の積層体を用意する。
【0055】
次に、図7に示すように、積層体15から、第1のガイドプレート11及び第2のガイドプレート12を除去する。この場合、複数本のガイドバー11a及び12aが前述したL方向に延びており、複数本の後硬化性樹脂組成物体4A(図3参照)もまた同じ方向に延びている。従って、第1,第2のガイドプレート11,12を積層体15から容易に抜き出すことができる。特に、前述した連結部11b,12bが、第1の樹脂シート2外に位置しているため、連結部11b,12bをクランプなどの把持手段により掴んで第1,第2のガイドプレート11,12を容易に取り出すことができる。しかる後、上記後硬化性樹脂組成物体4Aを硬化させる。この硬化は、後硬化性樹脂組成物が湿気硬化型シリコーン樹脂組成物の場合には、湿度を有する空気中に放置することにより進行させることができる。あるいは、加湿により硬化を促進してもよい。
【0056】
さらに、後硬化性樹脂組成物体4Aが、熱硬化型もしくは光硬化型の後硬化性樹脂組成物からなる場合には、熱や光等を付与し、硬化させればよい。
【0057】
このようにして、図1に示した採光断熱材1を得ることができる。上記製造工程は、例えば図8に概略構成を示す製造装置21を用いて連続的に行うことができる。図8に示すように、製造装置21では、二液型の熱硬化性接着剤組成物を用いた場合の例が示されている。すなわち、第1の液槽22aに収納されている第1液と、第2の液槽22bに貯留されている第2液とを、混合ポンプ23により混合する。混合ポンプ23から、混合により得られた後硬化性樹脂組成物液を、塗工機13に供給する。
【0058】
他方、ポンプ24とロール25との間に搬送ベルト26が掛け渡されている。ロール25をモーターなどの回転駆動源に接続することにより、搬送ベルト26は、図8の矢印E方向に移動する。この搬送ベルト26上に、第1の樹脂シート2を載置する。好ましくは、搬送ベルト26に吸引孔を形成することが望ましい。そして、この吸引孔の下面に、吸引ポンプなどを接続し、真空吸引により第1の樹脂シート2の位置を固定することが望ましい。それによって、以下の塗工及び積層工程をより確実に行うことができる。
【0059】
塗工機13の下方において搬送ベルト26の移動を停止する。この状態で、前述した第1,第2のガイドプレート11,12を載置する。次に、塗工機13により、後硬化性樹脂組成物を第1の樹脂シート2上に塗工する。しかる後、第2の樹脂シート3を載置し、さらに塗工機13により後硬化性樹脂組成物を塗工する工程を繰り返し、前述した積層体15を得る。
【0060】
しかる後、搬送ベルト26を矢印E方向に移動させ、硬化装置27内において、後硬化性樹脂組成物を硬化する。硬化装置27は、本実施形態では、熱硬化であるため、加熱路が用いられる。もっとも、後硬化性樹脂組成物の種類に応じて、硬化装置27を適宜構成すればよい。
【0061】
このようにして、後硬化性樹脂組成物が硬化され、前述した複数本のスペーサ4(図1参照)が形成される。次に、搬送ベルト26を矢印E方向に移動させ、矢印Fで示す位置で、ガイドプレート11,12(図2参照)を除去する。このようにして、採光断熱材1が得られ、ロール25側に向かった得られた採光断熱材1が搬送される。
【0062】
好ましくは、破線で示すようにガイド除去位置Fにおいて第1,第2のガイドプレート11,12を除去した後、再度、使用したガイドプレート11,12を塗工機13による後硬化性樹脂組成物塗工位置において再使用してもよい。
【0063】
なお、上記実施形態では、図4(a)〜(d)に示した塗工ノズル14を用いたが、本発明において、塗工ノズル14の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図9(a)に示す塗工ノズル31のように、先端面31aが水平方向に延びる面であり、該先端面31aに開口部が開いている形状であってもよい。また、図9(b)に示すように、塗工ノズル32の先端が、曲面状であってもよい。
【0064】
上記のように、本発明において用いる塗工ノズルの形状は特に限定されるものではない。もっとも、前述した塗工ノズル14では、先端面14bが傾斜面とされていたため、前述したように、後硬化性樹脂組成物を十分な高さを有するように容易に形成することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、第1の第2のガイドプレート11,12を用いたが、1枚のガイドプレートを用いてもよく、また3枚以上のガイドプレートを用いてもよい。形成されるスペーサの形状及び位置に応じて、適宜の枚数のガイドプレートを用いることができる。
【0066】
上記のようにして本実施形態の製造方法により得られた採光断熱材1では、スペーサ4が、後硬化性樹脂組成物体4Aの硬化物からなる。そのため、塗工時には、温度を高めずとも、流動性を高めることができる。従って、高精度に後硬化性樹脂組成物を、しかも安価な塗工装置を用いて塗工することができる。そして、後硬化性樹脂組成物を硬化した後の硬化物は、十分な強度を有する。よって、十分な厚みの空気層Dを確実に形成することができる。
【0067】
加えて、高温で塗工する必要がないため、樹脂劣化による黄変や経時による物性の低下も生じ難い。従って、長期間使用した場合においても、耐候性に優れた採光断熱材を得ることができる。さらに、採光断熱材の耐熱性も大幅に高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1…採光断熱材
2…第1の樹脂シート
2a,2b…第1,第2の辺
3…第2の樹脂シート
4…スペーサ
4A…後硬化性樹脂組成物体
11,12…第1,第2のガイドプレート
11a,12a…ガイドバー
11b,12b…連結部
13…塗工機
14…塗工ノズル
14a…開口部
14b…先端面
15…積層体
21…製造装置
22a,22b…第1,第2の液槽
23…混合ポンプ
24…ポンプ
25…ロール
26…搬送ベルト
27…硬化装置
31…塗工ノズル
31a…先端面
32…塗工ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の樹脂シートが間に空気層を隔てて配置されており、対向し合っている樹脂シート同士が複数本のスペーサを介して接合されている断熱材の製造方法であって、
A)上記樹脂シートの複数本のスペーサのそれぞれが設けられる部分の両側に載置される複数本のガイドバーを備えるガイドプレートを用意する工程と、
B)前記ガイドプレートの複数本のガイドバーが、樹脂シート上にスペーサ形成用樹脂組成物が塗工される部分を挟む領域に位置するように、前記樹脂シート上に前記ガイドプレートを載置する工程と、
C)前記樹脂シート上において、前記複数本のガイドバーにおいて挟まれた領域において、前記ガイドバーの厚みよりも厚くなるように後硬化性樹脂組成物からなるスペーサ形成用樹脂組成物を塗工する工程と、
D)前記樹脂組成物塗工後に、前記樹脂シートに対向するように前記樹脂シートに積層される次の樹脂シートを積層する工程とを備え、
前記B)〜D)の工程を少なくとも1回さらに繰り返す工程と、
前記スペーサ形成用樹脂組成物を硬化させ、スペーサを形成するとともに、スペーサによりスペーサを挟んでいる両側の樹脂シートを接合する工程と、
前記スペーサ形成用樹脂組成物を硬化させた後に、前記ガイドプレートを除去する工程とを備える、断熱材の製造方法。
【請求項2】
前記スペーサ形成用樹脂組成物として、後硬化性樹脂組成物を用いる、請求項1に記載の断熱材の製造方法。
【請求項3】
前記ガイドプレートが、複数本のガイドバーの一端側において連結している連結部をさらに有し、前記樹脂シート上にガイドプレートを載置するにあたり、前記連結部を樹脂シートの上面の外側に位置させる、請求項1または2に記載の断熱材の製造方法。
【請求項4】
前記複数本のスペーサが並設されており、隣り合うスペーサ間の間隔よりも、隣り合う前記ガイドバー間の間隔が短くされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂シートが対向し合う第1,第2の辺を有する矩形の平面形状を有し、前記複数本のスペーサが第1の辺と第2の辺とを結ぶ方向に延びるように配置され、前記複数本のガイドバーが第1の辺と第2の辺とを結ぶ方向に延びている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。
【請求項6】
前記ガイドプレートとして、複数本の第1のガイドバーを有する第1のガイドプレートと、複数本の第2のガイドバーを有する第2のガイドプレートとを用い、前記第1の辺から前記第2の辺に向かって第1のガイドバーが延びるように第1のガイドプレートを前記樹脂シート上に載置し、前記複数本の第2のガイドバーが前記第2の辺から前記第1の辺に向かって延びるように前記第2のガイドプレートを前記樹脂シート上に載置する、請求項5に記載の断熱材の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂シートとして透光性樹脂シートを用い、前記スペーサとして、透光性樹脂からなるスペーサを用い、採光断熱材を製造する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219454(P2012−219454A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83581(P2011−83581)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】