断熱材用取付具及び断熱材取付方法
【課題】建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けを可能とする断熱材用取付具及び断熱材取付方法の提供。
【解決手段】上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具。この断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に係止し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【解決手段】上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具。この断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に係止し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関し、特に、建物の下階から上階床下への断熱材取付を可能とする断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材を床下に取り付けるための断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関して、例えば、特許文献1及び2に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、垂下片の上部に、根太等の建築基材への係止片が略水平状に連設され、他方下部には、断熱材に対する支承片が上記係止片と反対方向に延設されてなり、さらに上記垂下片は、その一部又は全部が、支承片の延設方向側へ膨出した弾力的な湾曲部として形成されてなる断熱材用取付具が開示されている。
特許文献2には、弾性的に下方に屈曲可能な支持片1を有する受け具2を根太に取り付けて、この支持片を下方に屈曲させながら根太間に断熱材を嵌め込んで、その上に床材を施工する断熱材の施工方法が開示されている。
【特許文献1】実公昭61−39763号公報
【特許文献2】特開平6−57932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、住宅等の建築分野において、施工作業の更なる効率化を進める上で、種々の作業工程の検討が行われている。その一つとして、建物の下階から上階床下への断熱材取付が考えられる。建物の下階から上階床下へを取り付けることができれば、上下階の断熱材取付工程を簡略化することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された断熱材用取付具は、根太に上部から取り付けて使用するものであり、水平方向に支承片12があるので、建物の下階から上階床下への断熱材取付は不可能である。
また、特許文献2に開示された受け具も、根太に上部から取り付けて使用するものであり、水平方向に支持片1があるので、建物の下階から上階床下への断熱材取付は不可能である。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされ、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けを可能とする断熱材用取付具及び断熱材取付方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具を提供する。
【0007】
本発明の断熱材用取付具において、2枚の平板部は、棒状支持部の長手方向に対し、平板部の平面が直交するとともに、平板部のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部の端部に固定されたことが好ましい。
【0008】
本発明の断熱材用取付具において、棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部が設けられた構成としてもよい。
【0009】
前記断熱材用取付具において、前記回動端部が、平板部をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することが好ましい。
【0010】
また本発明は、前述した本発明に係る断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に載置し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法を提供する。
【0011】
また本発明は、前述した本発明に係る断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の回動端部を下に向け、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱材用取付具は、上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなるものなので、棒状支持部を断熱材の端面に当接させた状態で平板部を回動させることができ、上側の平板部を根太等の建築基材に当たらないような向きとして、下方から断熱材を取付位置にセットした後、上側の平板部が建築基材の上面に載置されるとともに、下側の平板部上に断熱材が載置されるように断熱材用取付具を回動させることで、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【0013】
また、棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部を設けた構成とすることによって、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることで、より効率よく建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【0014】
本発明の断熱材取付方法は、前述した本発明の断熱材用取付具を用いて、根太等の建築基材に断熱材を取り付けるものなので、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となり、上下階の断熱材取付工程を簡略化することができ、建設コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す図であり、図1は断熱材用取付具の斜視図、図2は平面図である。
本実施形態の断熱材用取付具1は、上下2枚の平板部2,3と、上側の平板部2の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部3の縁部に他端を設けた棒状支持部4とからなり、2枚の平板部2,3は、棒状支持部4を垂直に向けて上側の平板部2を根太6に載置した状態で、下側の平板部3上に断熱材5の周縁部を載置可能となるように棒状支持部4の両端に取り付けられたことを特徴としている。
【0016】
本実施形態の断熱材用取付具1は、2枚の平板部2,3が、棒状支持部4の長手方向に対し、各平板部2,3の平面が直交するとともに、平板部2,3のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部4の端部に固定されている。2枚の平板部2,3は、平滑な平板の他、円形の多数の穴を設けた板や適所に切欠を有する板であっても良い。平板部の形状は限定されないが、長方形などの四辺形が好ましい。また棒状支持部4は、丸棒や角棒を使用し得るが、丸棒が好ましい。
【0017】
本実施形態の断熱材用取付具1は、金属や合成樹脂などで作製することができる。金属としては、炭素鋼、表面塗装炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金などが挙げられる。また合成樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂とガラス繊維などのフィラーとを組み合わせた複合樹脂材料などが挙げられる。金属製の断熱材用取付具1は、単位面積当たりの強度が高く、剛性があり、小型化することができる利点がある。また合成樹脂製の断熱材用取付具1は、量産性に優れ、安価に提供できると共に、腐食の心配が無い、などの利点がある。
【0018】
本実施形態の断熱材用取付具1において、平板部2,3には、断熱材5又は根太6等の建築基材と連結するための、楔状の突起等の係止部やネジや釘等を挿し込む孔を設けることもできる。例えば、平板部2,3を金属板で形成した場合、成形時に平板部の適所にV字状の切れ込みを設けておき、これを起立させることで楔状の突起を形成できる。また、平板部2,3に設けた孔にネジや釘を挿通することによって該平板部2,3を断熱材5又は根太6等の建築基材に固定することもできる。以上のような構成とすることで、断熱材5又は根太6等の建築基材と断熱材用取付具1とがより密接に固定される。
【0019】
図3〜図7は、本実施形態の断熱材用取付具1を用いた断熱材取付方法の一例を示す図であり、図3は、断熱材取付時の平面図、図4は、断熱材取付時の底面図である。図5は、根太部分の取付状態を示し、(a)は要部断面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。図6は、本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動する前の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。図7は、本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動させた後の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。これらの図中、符号1は断熱材用取付具、2は上側の平板部、3は下側の平板部、4は棒状支持部、5は断熱材、6は根太である。
【0020】
本実施形態の断熱材用取付具1は、図3〜図5に示すように、上側の平板部2を根太6の上面に載置して懸垂状態とし、下側の平板部3上に断熱材5の周縁部を載置可能とすることができる。この断熱材用取付具1は、2枚の平板部2,3をつなぐ部分を板状ではなく、棒状としたことで、この棒状支持部4を断熱材の端面に当接させた状態で回動させることを可能としている。これにより、建物の下階から上階床下への断熱材5の取り付けが可能となる。
【0021】
本例の断熱材取付方法では、この断熱材用取付具1を用い、次の(1)〜(4)の工程で板状の断熱材5を根太6に取り付ける。
(1)まず、断熱材用取付具1の棒状支持部4を垂直とし、上側の平板部2を断熱材5の上面に載置する。
(2)次いで、下側の平板部3を根太6下面に受ける(図6(a)〜(d)参照。)。
(3)次いで、断熱材用取付具1をほぼ90度回転させる。
(4)上側の平板部2を建築基材の上面に、下側の平板部3を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付ける(図7(a)〜(d)参照。)。
【0022】
この断熱材取付方法において、各部の寸法は、概略次の通りであるが、これらの寸法は例示に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
根太6は、グレードにより異なるが、一般的に使用するのは幅36mm×厚さ45mm程度である。
根太間隔は、一般的に、洋室303mm、和室450mm程度である。
断熱材5は、幅は根太間隔に合わせ、長さは荷運び・施工性から一般に900mm程度とされる。
断熱材用取付具1は、断熱材900mm長さに対し、2箇所程度(間隔は800mm程度)用いる。
【0023】
断熱材用取付具1の寸法は、上側の平板部2が、長さ36mm以下×幅25mm程度×厚さ0.5mm程度であり、下側の平板部3が、長さ20mm程度×幅25mm程度×厚さ0.5mm程度である。
棒状支持部4は、丸棒形状が好ましい。この棒状支持部4の長さは、使用する断熱材の厚さに応じて、5〜275mmの範囲とされ、また直径は、断熱材を保持できる強度を持つ径とされ、5mmφ以上とすることが好ましい。
【0024】
なお、断熱材5の厚さは、材質及び地域によって異なっており、例えば、温暖地方では5mm程度、北海道では275mm程度とされる。
また、根太6に対する取付強度についても、断熱材によって異なっており、断熱材用取付具1の幅で調節する。一般には上側の平板部2が、長さ36mm×幅25mm×厚さ0.5mm程度であり、北海道等では長さ36mm×幅50mm×厚さ0.5mm程度とする。北海道等では、断熱材が厚いため、平板部2の幅を大きくすることで、平板部2の根太6に対する取付強度を大きくしている。
【0025】
図8及び図9は、本発明の断熱材用取付具の第2実施形態を示す図であり、図8は断熱材用取付具の斜視図、図9(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。これらの図中、符号11は断熱材用取付具、12は上側の平板部、13は下側の平板部、14は棒状支持部、15は回動端部である。
【0026】
本実施形態の断熱材用取付具11は、前述した第1実施形態の断熱材用取付具1と同じく、2枚の平板部12,13と、上側の平板部12の縁部に一端を取り付けるとともに、下側の平板部13の縁部に他端を取り付けた棒状支持部14とからなっており、棒状支持部14の下端側に、下側の平板部13を回動可能に取り付ける回動端部15を設けたことを特徴としている。
【0027】
本実施形態において、棒状支持部14の回動端部15は、下側の平板部13をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することが好ましい。この角度規制手段は、例えば、回動端部15と下側の平板部13とのいずれかに溝を設け、他方にこの溝に嵌合する突起を設けることなどによって実施可能である。
【0028】
図10は、本実施形態における回動端部15の第1例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。この例による回動端部15は、棒状支持部14の下端にフランジを設け、下側の平板部13にT字状の挿入孔16を設けておき、挿入孔16に棒状支持部14の下端部を嵌合する構造になっている。
【0029】
図11は、本実施形態における回動端部15の第2例の製造工程を順に示す図である。この回動端部15は、熱可塑性樹脂や加工が容易な金属などからなる棒状支持部14と、この棒状支持部14が挿入可能な丸穴状の挿入孔17を設けた下側の平板部13とを用意し(図11(a)及び(b)参照)、次いで、この挿入孔17に棒状支持部14の下端部を挿入し(図11(c)参照。)、次いで、挿入孔17から突出した棒状支持部14の下端部を、加熱により又は加圧により塑性変形させて潰すことによって、図11(d)に示す回動端部15を形成する。
【0030】
次に、本実施形態の断熱材用取付具11を用いた断熱材取付方法の一例を説明する。
この取付方法では、次の(A)〜(C)の工程で断熱材の取付を行う。
(A)まず、上側の平板部12を根太6の上面に載置し、
(B)次いで、断熱材5を根太6間に挟み込み、
(C)次いで、下側の平板部13をほぼ90度回転させて、下側の平板部13を断熱材5の下面に位置させる。
【0031】
本実施形態の断熱材用取付具11を用いた断熱材取付方法では、下側の平板部13を回動可能に取り付ける回動端部15を設けたことによって、より効率よく建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の平面図である。
【図4】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の底面図である。
【図5】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の図であり、(a)は要部断面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図6】本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動する前の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
【図7】本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動させた後の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
【図8】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。
【図10】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態における回動端部の第1例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態における回動端部の第2例の製造工程を順に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1,11…断熱材用取付具、2,3,12,13…平板部、4,14…棒状支持部、5…断熱材、6…根太、15…回動端部、16,17…挿入孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関し、特に、建物の下階から上階床下への断熱材取付を可能とする断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱材を床下に取り付けるための断熱材用取付具及び断熱材取付方法に関して、例えば、特許文献1及び2に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、垂下片の上部に、根太等の建築基材への係止片が略水平状に連設され、他方下部には、断熱材に対する支承片が上記係止片と反対方向に延設されてなり、さらに上記垂下片は、その一部又は全部が、支承片の延設方向側へ膨出した弾力的な湾曲部として形成されてなる断熱材用取付具が開示されている。
特許文献2には、弾性的に下方に屈曲可能な支持片1を有する受け具2を根太に取り付けて、この支持片を下方に屈曲させながら根太間に断熱材を嵌め込んで、その上に床材を施工する断熱材の施工方法が開示されている。
【特許文献1】実公昭61−39763号公報
【特許文献2】特開平6−57932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、住宅等の建築分野において、施工作業の更なる効率化を進める上で、種々の作業工程の検討が行われている。その一つとして、建物の下階から上階床下への断熱材取付が考えられる。建物の下階から上階床下へを取り付けることができれば、上下階の断熱材取付工程を簡略化することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された断熱材用取付具は、根太に上部から取り付けて使用するものであり、水平方向に支承片12があるので、建物の下階から上階床下への断熱材取付は不可能である。
また、特許文献2に開示された受け具も、根太に上部から取り付けて使用するものであり、水平方向に支持片1があるので、建物の下階から上階床下への断熱材取付は不可能である。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされ、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けを可能とする断熱材用取付具及び断熱材取付方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具を提供する。
【0007】
本発明の断熱材用取付具において、2枚の平板部は、棒状支持部の長手方向に対し、平板部の平面が直交するとともに、平板部のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部の端部に固定されたことが好ましい。
【0008】
本発明の断熱材用取付具において、棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部が設けられた構成としてもよい。
【0009】
前記断熱材用取付具において、前記回動端部が、平板部をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することが好ましい。
【0010】
また本発明は、前述した本発明に係る断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に載置し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法を提供する。
【0011】
また本発明は、前述した本発明に係る断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の回動端部を下に向け、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱材用取付具は、上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなるものなので、棒状支持部を断熱材の端面に当接させた状態で平板部を回動させることができ、上側の平板部を根太等の建築基材に当たらないような向きとして、下方から断熱材を取付位置にセットした後、上側の平板部が建築基材の上面に載置されるとともに、下側の平板部上に断熱材が載置されるように断熱材用取付具を回動させることで、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【0013】
また、棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部を設けた構成とすることによって、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることで、より効率よく建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【0014】
本発明の断熱材取付方法は、前述した本発明の断熱材用取付具を用いて、根太等の建築基材に断熱材を取り付けるものなので、建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となり、上下階の断熱材取付工程を簡略化することができ、建設コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す図であり、図1は断熱材用取付具の斜視図、図2は平面図である。
本実施形態の断熱材用取付具1は、上下2枚の平板部2,3と、上側の平板部2の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部3の縁部に他端を設けた棒状支持部4とからなり、2枚の平板部2,3は、棒状支持部4を垂直に向けて上側の平板部2を根太6に載置した状態で、下側の平板部3上に断熱材5の周縁部を載置可能となるように棒状支持部4の両端に取り付けられたことを特徴としている。
【0016】
本実施形態の断熱材用取付具1は、2枚の平板部2,3が、棒状支持部4の長手方向に対し、各平板部2,3の平面が直交するとともに、平板部2,3のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部4の端部に固定されている。2枚の平板部2,3は、平滑な平板の他、円形の多数の穴を設けた板や適所に切欠を有する板であっても良い。平板部の形状は限定されないが、長方形などの四辺形が好ましい。また棒状支持部4は、丸棒や角棒を使用し得るが、丸棒が好ましい。
【0017】
本実施形態の断熱材用取付具1は、金属や合成樹脂などで作製することができる。金属としては、炭素鋼、表面塗装炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金などが挙げられる。また合成樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂とガラス繊維などのフィラーとを組み合わせた複合樹脂材料などが挙げられる。金属製の断熱材用取付具1は、単位面積当たりの強度が高く、剛性があり、小型化することができる利点がある。また合成樹脂製の断熱材用取付具1は、量産性に優れ、安価に提供できると共に、腐食の心配が無い、などの利点がある。
【0018】
本実施形態の断熱材用取付具1において、平板部2,3には、断熱材5又は根太6等の建築基材と連結するための、楔状の突起等の係止部やネジや釘等を挿し込む孔を設けることもできる。例えば、平板部2,3を金属板で形成した場合、成形時に平板部の適所にV字状の切れ込みを設けておき、これを起立させることで楔状の突起を形成できる。また、平板部2,3に設けた孔にネジや釘を挿通することによって該平板部2,3を断熱材5又は根太6等の建築基材に固定することもできる。以上のような構成とすることで、断熱材5又は根太6等の建築基材と断熱材用取付具1とがより密接に固定される。
【0019】
図3〜図7は、本実施形態の断熱材用取付具1を用いた断熱材取付方法の一例を示す図であり、図3は、断熱材取付時の平面図、図4は、断熱材取付時の底面図である。図5は、根太部分の取付状態を示し、(a)は要部断面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。図6は、本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動する前の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。図7は、本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動させた後の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。これらの図中、符号1は断熱材用取付具、2は上側の平板部、3は下側の平板部、4は棒状支持部、5は断熱材、6は根太である。
【0020】
本実施形態の断熱材用取付具1は、図3〜図5に示すように、上側の平板部2を根太6の上面に載置して懸垂状態とし、下側の平板部3上に断熱材5の周縁部を載置可能とすることができる。この断熱材用取付具1は、2枚の平板部2,3をつなぐ部分を板状ではなく、棒状としたことで、この棒状支持部4を断熱材の端面に当接させた状態で回動させることを可能としている。これにより、建物の下階から上階床下への断熱材5の取り付けが可能となる。
【0021】
本例の断熱材取付方法では、この断熱材用取付具1を用い、次の(1)〜(4)の工程で板状の断熱材5を根太6に取り付ける。
(1)まず、断熱材用取付具1の棒状支持部4を垂直とし、上側の平板部2を断熱材5の上面に載置する。
(2)次いで、下側の平板部3を根太6下面に受ける(図6(a)〜(d)参照。)。
(3)次いで、断熱材用取付具1をほぼ90度回転させる。
(4)上側の平板部2を建築基材の上面に、下側の平板部3を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付ける(図7(a)〜(d)参照。)。
【0022】
この断熱材取付方法において、各部の寸法は、概略次の通りであるが、これらの寸法は例示に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
根太6は、グレードにより異なるが、一般的に使用するのは幅36mm×厚さ45mm程度である。
根太間隔は、一般的に、洋室303mm、和室450mm程度である。
断熱材5は、幅は根太間隔に合わせ、長さは荷運び・施工性から一般に900mm程度とされる。
断熱材用取付具1は、断熱材900mm長さに対し、2箇所程度(間隔は800mm程度)用いる。
【0023】
断熱材用取付具1の寸法は、上側の平板部2が、長さ36mm以下×幅25mm程度×厚さ0.5mm程度であり、下側の平板部3が、長さ20mm程度×幅25mm程度×厚さ0.5mm程度である。
棒状支持部4は、丸棒形状が好ましい。この棒状支持部4の長さは、使用する断熱材の厚さに応じて、5〜275mmの範囲とされ、また直径は、断熱材を保持できる強度を持つ径とされ、5mmφ以上とすることが好ましい。
【0024】
なお、断熱材5の厚さは、材質及び地域によって異なっており、例えば、温暖地方では5mm程度、北海道では275mm程度とされる。
また、根太6に対する取付強度についても、断熱材によって異なっており、断熱材用取付具1の幅で調節する。一般には上側の平板部2が、長さ36mm×幅25mm×厚さ0.5mm程度であり、北海道等では長さ36mm×幅50mm×厚さ0.5mm程度とする。北海道等では、断熱材が厚いため、平板部2の幅を大きくすることで、平板部2の根太6に対する取付強度を大きくしている。
【0025】
図8及び図9は、本発明の断熱材用取付具の第2実施形態を示す図であり、図8は断熱材用取付具の斜視図、図9(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。これらの図中、符号11は断熱材用取付具、12は上側の平板部、13は下側の平板部、14は棒状支持部、15は回動端部である。
【0026】
本実施形態の断熱材用取付具11は、前述した第1実施形態の断熱材用取付具1と同じく、2枚の平板部12,13と、上側の平板部12の縁部に一端を取り付けるとともに、下側の平板部13の縁部に他端を取り付けた棒状支持部14とからなっており、棒状支持部14の下端側に、下側の平板部13を回動可能に取り付ける回動端部15を設けたことを特徴としている。
【0027】
本実施形態において、棒状支持部14の回動端部15は、下側の平板部13をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することが好ましい。この角度規制手段は、例えば、回動端部15と下側の平板部13とのいずれかに溝を設け、他方にこの溝に嵌合する突起を設けることなどによって実施可能である。
【0028】
図10は、本実施形態における回動端部15の第1例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。この例による回動端部15は、棒状支持部14の下端にフランジを設け、下側の平板部13にT字状の挿入孔16を設けておき、挿入孔16に棒状支持部14の下端部を嵌合する構造になっている。
【0029】
図11は、本実施形態における回動端部15の第2例の製造工程を順に示す図である。この回動端部15は、熱可塑性樹脂や加工が容易な金属などからなる棒状支持部14と、この棒状支持部14が挿入可能な丸穴状の挿入孔17を設けた下側の平板部13とを用意し(図11(a)及び(b)参照)、次いで、この挿入孔17に棒状支持部14の下端部を挿入し(図11(c)参照。)、次いで、挿入孔17から突出した棒状支持部14の下端部を、加熱により又は加圧により塑性変形させて潰すことによって、図11(d)に示す回動端部15を形成する。
【0030】
次に、本実施形態の断熱材用取付具11を用いた断熱材取付方法の一例を説明する。
この取付方法では、次の(A)〜(C)の工程で断熱材の取付を行う。
(A)まず、上側の平板部12を根太6の上面に載置し、
(B)次いで、断熱材5を根太6間に挟み込み、
(C)次いで、下側の平板部13をほぼ90度回転させて、下側の平板部13を断熱材5の下面に位置させる。
【0031】
本実施形態の断熱材用取付具11を用いた断熱材取付方法では、下側の平板部13を回動可能に取り付ける回動端部15を設けたことによって、より効率よく建物の下階から上階床下への断熱材の取り付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の平面図である。
【図4】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の底面図である。
【図5】本発明の断熱材取付方法の一例を示す断熱材取付時の図であり、(a)は要部断面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図6】本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動する前の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
【図7】本発明の断熱材取付方法の一例において、断熱材用取付具を回動させた後の状態を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は正面図である。
【図8】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明の断熱材用取付具の第1実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は断面図である。
【図10】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態における回動端部の第1例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図11】本発明の断熱材用取付具の第2実施形態における回動端部の第2例の製造工程を順に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1,11…断熱材用取付具、2,3,12,13…平板部、4,14…棒状支持部、5…断熱材、6…根太、15…回動端部、16,17…挿入孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具。
【請求項2】
2枚の平板部は、棒状支持部の長手方向に対し、平板部の平面が直交するとともに、平板部のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部の端部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の断熱材用取付具。
【請求項3】
棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の断熱材用取付具。
【請求項4】
前記回動端部が、平板部をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することを特徴とする請求項3に記載の断熱材用取付具。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に載置し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の回動端部を下に向け、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【請求項1】
上下2枚の平板部と、上側の平板部の縁部に一端を設けるとともに、下側の平板部の縁部に他端を設けた棒状支持部とからなることを特徴とする断熱材用取付具。
【請求項2】
2枚の平板部は、棒状支持部の長手方向に対し、平板部の平面が直交するとともに、平板部のそれぞれの先端側が反対側を向くように棒状支持部の端部に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の断熱材用取付具。
【請求項3】
棒状支持部の一端側に、平板部を回動可能に取り付ける回動端部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の断熱材用取付具。
【請求項4】
前記回動端部が、平板部をほぼ90度の角度範囲で回動させる角度規制手段を有することを特徴とする請求項3に記載の断熱材用取付具。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の棒状支持部を垂直とし、その上側の平板部を断熱材の上面に載置し、次いで、下側の平板部を建築基材の下面に受け、次いで、断熱材用取付具をほぼ90度回転させ、上側の平板部を建築基材の上面に、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の断熱材用取付具を用い、板状の断熱材を根太等の建築基材に取り付ける断熱材取付方法であって、
断熱材用取付具の回動端部を下に向け、上側の平板部を建築基材の上面に載置し、次いで、断熱材を建築基材間に挟み込み、次いで、下側の平板部をほぼ90度回転させて、下側の平板部を断熱材の下面に位置させて断熱材を取り付けることを特徴とする断熱材取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−240263(P2008−240263A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78742(P2007−78742)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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