説明

断続するパルスエッジの相関

【課題】直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号におけるマルチパスを軽減するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】a)送信された信号をサンプルする位置受信機へ、送信デバイスから急速パルスパターンを送信し、b)受信されたサンプルを分割し、サンプルベース相関累積値を、受信されたパルスパターンと同期する独立したバイナリ内に蓄積し、c)受信されたパルスのリーディングエッジに関連する累積バイナリを決定するために論理決定プロセスを適用し、d)受信されたパルスのリーディングエッジに関連する相関累積バイナリから距離推定を生成することによって、直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号におけるマルチパスを軽減するためのシステム及び方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、直接シーケンス拡散スペクトル方式(DSSS)コード分割多重アクセス(CDMA)距離測定システムにおけるマルチパス軽減に関するが、他の様式の距離信号及び通信システムにも同様に適用される。
【背景技術】
【0002】
無線ナビゲーション信号は、送信機アンテナと受信機アンテナとの間の距離を測定するために使用される。多くの環境において、送信された無線ナビゲーション信号は、送信機及び/又は受信機アンテナの周囲、及び/又は、送信経路沿革の物体から反射される。この様な環境において、結果として生じる受信された無線ナビゲーション距離信号は、反射信号と所望の直接信号とを含む、全ての無線ナビゲーション距離信号の組み合わせである。この複数の無線ナビゲーション距離信号の組み合わせは、マルチパスと呼ばれ、この無線ナビゲーション距離信号を汚染し、それゆえ、距離測定値の正確性を低下させることとなる。マルチパスは、無線ナビゲーションシステムにおける重大なエラー源である。
【0003】
一般的な無線ナビゲーション信号構造である直接シーケンス拡散スペクトル方式コード分割多重アクセスは、直接シーケンス拡散スペクトル方式(DSSS)コード分割多重アクセス(CDMA)のことである。広域位置測定システム(GPS)、提案されたガリレオシステム、そしてロシア製のGLONASSシステムといった無線ナビゲーションシステムは、全て直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号を使用している。直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA信号によって、送信信号はパルスではなく連続的なものとなり、無線ナビゲーション信号の生成中に送信機内においてデジタル拡散シーケンスによって拡散される。そして、デジタル拡散シーケンスを認識している受信機は、もし同じデジタル拡散シーケンスが、時間調整において送信された無線ナビゲーション信号とともに入力の信号に適用された場合には、その無線ナビゲーション信号を縮小(despread)することができる。つまり、受信機内で無線ナビゲーション信号に適用されたこのデジタル拡散シーケンスは、送信機においてその信号に適用されたように受信信号における同じ位置で適用される必要がある。これは、時間に関して、フライト時間に対して修正された送信機内で適用されるのと同様に、デジタル拡散シーケンスが受信機内で同じ時間に適用されるということを意味する。
【0004】
無線ナビゲーション信号のデジタル表現は、このデジタル拡散シーケンスによって変調される。この無線ナビゲーション信号は受信アンテナによって受信され、そして、デジタル信号に変換される。典型的な無線ナビゲーション受信機は、この信号を無線周波数(RF)から中間周波数(IF)へ変換する。そして、この信号はアナログ−デジタルコンバータ(ADC)によってサンプルされて、無線ナビゲーション信号のデジタル表現又はデジタルサンプルを与える。相関、畳み込み、マッチフィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)といった、受信信号へのデジタル拡散シーケンスの適用のための、非常に多くの数学的処理が存在する。本発明を記述する目的のために、相関という用語は、受信された無線ナビゲーション信号へのデジタル拡散シーケンスの適用の、全ての数学的処理に対する一般概念として使用される。
【0005】
このデジタル拡散シーケンスは、送信機によって生成された無線ナビゲーション信号を適正に回復させるように、フライト時間に対して修正された送信時間に、受信された無線ナビゲーション信号に適用されなければならない。しかしながら、距離測定システムにおいては、このフライト時間は、一般的に未知である。それゆえ、受信機は、送信機内で生成された元の無線ナビゲーション信号の正確な回復を提供する精確な時間オフセットを見出すために、デジタル拡散シーケンスの可能な時間オフセットの中を探索しなければならない。この探索処理の間、回復された無線ナビゲーション信号は、デジタル拡散シーケンスが、このデジタル拡散シーケンスのプラス又はマイナス1要素若しくは1チップ内に時間調整されたときにのみ、利用可能となる。この受信時間調整プラスマイナス1チップの外側では、結果として回復された信号は、送信機によって生成された元の無線ナビゲーション信号ではなく、むしろ雑音(ノイズ)である。受信時間整調プラスマイナス1チップ内であるときには、受信された無線ナビゲーション信号のパワーは、既知のパターンを伴って、2チップの有効性距離の間で変化する。相関の数学的処理により、この2チップの範囲にまたがる受信された無線ナビゲーション信号のパワーは、自己相関反応関数若しくは単に相関反応関数と呼ばれる。
【0006】
汚染のない、全帯域幅のCMDA信号を相関させるとき、時間領域における相関反応関数は、実質的に三角形である。その三角形のピーク、又はその相関反応関数の最大値は、受信機が無線ナビゲーション距離信号を取得した時間のダイレクト測定値として、受信機によって解釈される。この相関反応関数の形状は、受信機のフィルタリング及びサンプリング能力とノイズ層とによって制御される。フィルタリングの増加は、三角形の頂点を丸め、ベースの横幅を減少させる。受信機における制限されたサンプリング能力及び全てのノイズ層は、その相関反応関数の形状をノイズに押し下げてしまう。これらの影響の何れによっても、最大相関反応関数パワーの位置は変わらない。
【0007】
相関反応関数上のマルチパスの影響は、反応関数を歪ませ、しばしば、時間内の相関反応の最大限を動かすことを含み、それゆえ、結果としての距離測定値においてエラーを生じさせる。マルチパス歪みは、また、相関反応関数の増幅を増加又は減少させ、相関反応関数の時間範囲を増加又は減少させ、及び/又は、相関反応関数の形状を変化させることもある。
【0008】
無線ナビゲーション距離信号の最適な時間遅延測定値は、相関反応関数のピーク又は最大値である。正確なピークパワーの決定は、正確な最大時間遅延位置における相関反応関数パワー探知器の配置を可能とするための、入力の無線ナビゲーション距離信号の受信時間についての正確な知識を要求する。この問題を回避するために、典型的なGPS受信機は、このピークに関して半チップ前及び半チップ後のタイミングでのパワー測定値を取得する。コード追跡ループは、相関反応関数上の、これら2つの時間遅延位置間のパワーを調和させ、それによって、相関反応関数において早期及び遅延の調和がなされたパワー測定値間の中間として、そのピークの推定を与える。これら相関反応関数パワー測定値の間隔は、上述した+/−半チップの間隔の範囲から変更可能である。いくつかの受信機は、より狭い間隔、例えば、+/−0.1チップを使用する。しかしながら、早期及び遅延の相関反応関数パワー間の、調和パワーの基本関数は同じである。事実上、この技術は、相関反応関数の重心を探し出し、これを最大相関パワーの推定として使用し、したがって、距離推定の基準が形成されるのである。
【0009】
相関反応がマルチパスによって歪んだとき、この相関反応関数に沿ったパワー測定値における歪みが原因となり、この相関反応の推定ピーク値はエラーとなる。パワー測定値が歪んだとき、コード追跡ループは、2つの不正確なパワー推定の間のパワーを調和させようと試み、それゆえ、マルチパスフリー相関ピークを不正確に識別することとなる。
【0010】
例示の目的のために、図1に、a)理論的な、非フィルタの相関反応ナビゲーション関数101、及び、b)典型的なナビゲーション受信機の、実用的な、フィルタされた相関反応関数102、を組み込んだ先行技術の理想的なCDMA無線ナビゲーション信号に対する2つの相関反応関数を示す。受信された相関反応関数の中心104は、非フィルタの理論的な相関反応関数の中心103と、同一の時間遅延位置にある。図2に、図1の同じ2つの相関反応を示すが、しかし、この場合における受信された信号は、ダイレクト信号に関する−6dBにおいて0.5チップ遅延マルチパス信号を加えた、同一のダイレクト信号を有する。図1及び2の描画の両方について、理論的曲線は、データノイズを一切含まず、完全なコード調整がなされ、受信された信号は非フィルタである。観察される実質的な曲線は、データノイズを含み、20MHzの両側面のフィルタ帯域幅を有する。図2から明らかなように、相関反応関数の調和されたパワー測定値から導かれた、結果としての距離測定値は、受信された信号のマルチパスコンポーネントによって汚染されることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線、及び、GPSといった無線ナビゲーションシステムは、連続的にブロードキャスト信号を使用する。それゆえ、ダイレクト及びマルチパス信号の両方は、相関処理において使用されるサンプルの中に連続的に与えられる。連続信号があれば、直接コンポーネントからのブロードキャスト無線ナビゲーション信号のマルチパスコンポーネント分離のための供給は存在しない。直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーションシステムにおけるマルチパス軽減のための、多種多様な技術が提案されてきた。このような従来技術システムの1つは、相関反応関数パワー測定値の相対的位置を変更する(「早期及び遅延相関の間の時間遅延間隔を動的に調整することによって、マルチパス歪みに対する補償を行う擬似雑音距離測定受信機」、Fentonら、米国特許第5,390,207号、1995年2月14日)。しかしながら、この技術は、正しく作動するために大きな受信機帯域幅を必要とし、図2に示したような相関反応関数上のパワー測定値の位置に基づいて所望のダイレクト信号からマルチパスを分離することはできない。別の一般的なマルチパス軽減技術は、ポスト相関信号対雑音比(Axelrad, P., C.J. Comp, and P.F. MacDoran, “SNR Based Multipath Error Correction for GPS Differential Phase,” IEEE Transactions on Aerospace & Electronic Systems, in press)を使用し、これもまた、図2に示したような相関反応関数上のパワー測定値の位置に基づいて所望のダイレクト信号からマルチパスを分離する能力がないという難点がある。別の方法は、レーキ(rake)復調器に実装されているような、最適な時間遅延測定値を洗練するための反応関数パワー推定のポスト相関均一化加重を利用する(Proakis, Digital Communications, Fourth edition, McGraw-Hill, 2001)。しかしながら、この技術は、正しく作動するために複雑な受信機回路を必要とし、さらに、図2に示したような相関反応関数上のパワー測定値の位置に基づいて所望のダイレクト信号からマルチパスを分離する能力がないという難点がある。これら先行技術における全てのマルチパス軽減技術は、信号が相関処理の中に既に吸収された後に、マルチパス信号の影響を最小化することによるものである。図2の描画によって示したように、ポスト相関パワー反応に依存する技術は、連続するマルチパスのために汚染されることとなる。ポスト相関パワー反応測定値の相対位置を変更することによって、図2のマルチパス汚染信号を図1のダイレクトのみの信号から区別することは、明らかに不可能である。
【0012】
[パルス状信号を利用する無線ナビゲーションシステム]
パルスは、制限された持続時間を有する電磁エネルギーのバーストとして定義される。パルス状の無線ナビゲーション信号は、信号が与えられている期間と、送信機が実質的に出力パワーを放出しておらず、従って、信号が存在しない期間とからなる。
【0013】
擬似衛星(GPS衛星信号に類似の構造の信号を生成する地上ベースの送信機)上でのこれまでの作業は、相関時間に比例した長時間スケールのパルススキームを使用するものであった。例えば、擬似衛星に対する一般的なパルススキームは、1986年の海上無線技術協会(RTCM)提案によって定義されたものである(Parkinson et al., Global Positioning System: Theory and Application, Vol II, AIAA Press, 1996)。このパルススキームにおいて、それぞれの完全なコードの周期は、11のスロットに分割される。GPS C/Aコードのために設計された、このパルススキームは、結果として、1023チップシーケンスのうちの93チップを連続的に送信し、残りのコード期間中は、休止を維持する。次の1023チップ周期の間は、異なる93チップシーケンスがブロードキャストされる。この93のブロードキャストチップの位置は、既知の擬似ランダムパターンとは異なっていた。このパルススキームは、いわゆる遠近問題の影響を最小にするために利用された。このパルススキームは、この遠近問題の影響を減少させたが、マルチパス軽減を与えるためには何もなさなかった。
【0014】
超広帯域無線(UWB)といった、パルスベースの無線ナビゲーション信号は、マルチパスを軽減するためにパルススキームを利用する(「全二重超広帯域通信システム及び方法」、Fullerton、米国特許第5,687,169号、1997年11月11日、又は、「フライト時間無線位置システム」、McEwan、米国特許第5,661,490号、1997年8月26日)。UWBシステムは、短いパルスをブロードキャストし、通信及び距離測定の両方に対する能力を提供する。しかしながら、その名の通り、UWBシステムは、そのパルスにおけるブロードキャストエネルギーを、無線周波スペクトルの大きなセクション(又は、大きな複数のセクション)上に拡散する。UWBのための距離測定アルゴリズムの中核に、無線ナビゲーション信号のRFコンポーネントにおける受信エネルギーの測定による、送信パルスのリーディングエッジ探知が存在する。
【0015】
正確なパルスのリーディングエッジ探知は、非常に広い帯域幅を必要とする。典型的なUWBシステムは、1GHzの帯域幅を利用する。これは、典型的には2〜20MHzの間しか利用しないGPSといった、直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMAと比べると非常に幅広い。パルス状信号に関して、そのパルスのリーディングエッジの立ち上がり時間は、帯域幅に比例する。広帯域幅信号に関しては、受けたパワーが所定の閾値を越えたときの正確なタイミングを考慮すると、そのパルスの立ち上がり時間は短い。それゆえ、正確な距離判定が可能となる。帯域幅制限パルス信号に関しては、立ち上がり時間は比較的長く、結果として、パルスのリーディングエッジにおいて観察されるパワーにおいて緩やかな増加となる。この緩やかなパワー増加を使ってパルスの厳密な始まりを正確に決定することは、実際的でない。
【0016】
アイーサーワイヤー(Aetherwire)社によって開発された代替のUWB技術(「スペクトラム拡散ローカライザー」、Flemingら、米国特許第6,400,754号、2002年6月4日)は、CDMA処理から処理利得を与えるダイレクトシーケンスCDMA(DS−CDMA)を利用する。Flemingによって記載されたこのCDMA処理は、GPSに対する上述のものと同様の方法で、DS−CDMAのフライト時間から距離測定値を計算する能力を伴ったナビゲーション受信機を提供する。この方法は、さらに、パルスのリーディングエッジ探知の制約を取り除く。しかしながら、UWBの基本的に大きな帯域幅要求は、多くの距離測定用途においてこの技術を実用的でないものにしている。加えて、Flemingの好適な実施形態のパルスパターンは、10ナノ秒チップ長及び1024チップのコードシーケンスを利用するので、結果的に、合計で概ね10マイクロ秒の受理時間となるのである。パルスパターンのこの形式では、後続チップの送信開始前に、マルチパスを放散させるための十分な時間がない。
【0017】
CDMA無線ナビゲーションにおける先行技術のマルチパス軽減技術は、連続又はパルス状のいずれかの信号の連続的な相関に依存しており、それゆえ、相関反応関数において信号のマルチパスコンポーネントを含んでいる。これらの先行技術は、所望のダイレクト信号と所望でないマルチパス信号とが相関処理中に結合されてしまうので、本質的に制限されており、それゆえ、ポスト相関処理内での分離が困難となる。距離を求めるためにパルスのリーディングエッジ探知を利用する先行技術無線ナビゲーションシステムは、正確な距離測定値のための大きな信号帯域幅を必要とする。これは、受信パルスにおいて要求される急速な立ち上がり時間によるものである。
【0018】
ここに、距離測定用信号上のマルチパスの有害な影響を軽減することができ、しかしながら、(a)大きな無線周波スペクトル領域、(b)大きな受信機帯域幅、又は、(c)ポスト相関パワー反応解釈、を要求しない無線ナビゲーションシステムへの要求が明らかに存在する。本発明は、相関処理に先立って、所望でないマルチパス信号から所望のダイレクト信号をデジタル的に分離することによって、これら要望された目標に到達するものである。これは、特別なアンテナ、又は、直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーションシステムによって典型的に利用されているものを越える追加の帯域幅を要求することなしに実現される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、相関に先立って距離推定のマルチパスコンポーネントが軽減されるよう、CDMA直接シーケンス拡散スペクトル方式無線ナビゲーションシステム受信機において距離推定を行うシステム及び方法を提供することである。
【0020】
また、本発明のさらなる目的は、無線ナビゲーション信号の部分が、実質的にマルチパスから自由となるよう、パルスCDMA直接シーケンス拡散スペクトル方式無線ナビゲーション信号をブロードキャストするためのシステム及び方法を提供することである。
【0021】
また、本発明のさらなる目的は、パルス無線ナビゲーション信号が連続的な信号として処理されるよう、パルス無線ナビゲーション信号をブロードキャストするためのシステム及び方法を提供することである。
【0022】
また、本発明のさらなる目的は、実質的にマルチパスに汚染されるサンプルが実質的にマルチパスフリーである信号から切り離して処理されるよう、受信された無線ナビゲーション信号のデジタルサンプルを分離するためのシステム及び方法を提供することである。
【0023】
また、本発明のさらなる目的は、パルス無線ナビゲーション信号と同期的に、無線ナビゲーション受信機における無線ナビゲーション信号のデジタルサンプルを処理するためのシステム及び方法を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、デジタルサンプルが、受信されたパルス無線ナビゲーション信号と同期的に処理されたときに、無線ナビゲーション受信内で、デジタルサンプルの分離処理から個々のコード遅延を見積もるためのシステム及び方法を提供することである。
【0024】
また、本発明のさらなる目的は、制限された帯域幅受信機におけるマルチパス軽減を与えるためのシステム及び方法を提供することである。
【0025】
また、本発明のさらなる目的は、パルスCDMA直接シーケンス拡散スペクトル方式無線ナビゲーション信号のリーディングエッジからのみ導かれた相関から、距離推定を生成するためのシステム及び方法を提供することである。
【0026】
また、本発明のさらなる目的は、特別なアンテナの要求なしに、制限された帯域幅受信機におけるマルチパス軽減を与えるためのシステム及び方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(本発明の概要)
本発明は、a)送信デバイスから、送信された信号をサンプルする位置受信機へ、急速なパルスパターンを送信し、b)受信されたサンプルを分離し、サンプルベースの相関累積値を、受信したパルスパターンと同期する独立したバイナリの中に蓄積し、c)受信されたパルスのリーディングエッジに関連する累積バイナリを決定するための論理的決定プロセスを適用し、d)受信したパルスのリーディングエッジに関連する相関累積バイナリから距離推定を生成することによって、直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号におけるマルチパスを軽減するためのシステム及び方法を開示する。
【0028】
(図面の概要説明)
図1に、理想的な無限帯域幅受信機を通して処理される理想的な直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号と、制限された帯域幅受信機を通して処理される同じく理想的な直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号とに対するコード遅延タイミングの関数としての先行技術の自己相関反応を示す。
【0029】
図2に、2分の1のコードチップ遅延し、ダイレクト信号を6dB下回る単一のマルチパス信号に汚染された理想的な直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA無線ナビゲーション信号に対するコード遅延タイミングの関数としての先行技術の自己相関反応を示す。このマルチパス汚染信号に対する相関反応関数は、制限された帯域幅受信機を通して処理される。
【0030】
図3は、本発明の無線ナビゲーション受信機内で取得されたデジタルサンプルのタイミング間の関係を示し、ここでは、サンプリング間隔は受信されたパルス無線ナビゲーション信号のパルスレートに同期している。受信されたパルス無線ナビゲーション信号パルスパターン、相関処理、そして、このパルスパターンに同期するバイナリ中にデジタルサンプルを分離するために使用される複数の相関累積バイナリも示している。
【0031】
図4は、本発明の無線ナビゲーション受信機内で取得されたデジタルサンプルのタイミング間の関係を示し、ここでは、サンプリング間隔は受信されたパルス無線ナビゲーション信号のパルスレートに同期していない。受信されたパルス無線ナビゲーション信号パルスパターン、相関処理、受信機パルスタイマーマーク、そして、このパルスパターンに同期するバイナリ中にデジタルサンプルを分離するために使用される複数の相関累積バイナリも示している。
【0032】
図5に、帯域幅制限直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMAパルス無線ナビゲーション信号を使用する、本発明のサブサンプル自己相関反応関数を示す。
【0033】
(システム及び方法)
本発明は、後続のパルスの開始に先立って放散させるために、マルチパス信号に対するパルス間に時間を与えるための、直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA信号の短く急速なパルスの送信について開示する。短く急速なパルスにより、無線ナビゲーション受信機は、連続的な直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA信号として短いパルスの繋がりを受信及び解釈することができ、さらに、マルチパスコンポーネントが放散可能なところにおけるパルス間に休止期間を与えることも可能になる。さらに、本発明は、各パルスのリーディングエッジに関連するサンプルが、各パルス期間の後に生じる、それゆえマルチパス汚染をより受けやすいサンプルから直ちに処理されるよう、相関処理に供給される受信サンプルを分離する。この短いパルスは、連続的なブロードキャスト直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMAシステムにおいて与えられる直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMA信号と同じ利点を与えるサンプルの連続的なストリームとして処理される。
【0034】
[パルススキーム]
好適な実施形態において、1チップオン及び2チップオフのパルススキームが、本発明を説明するために使用される。このパルススキームの解説のために、10Mチップ/秒のチップレートが選択される。その結果、パルス期間は、200ナノ秒の休止期間が続く、略100ナノ秒(略30メートル)となる。この2つのチップ休止時間の間、1つのチップパルスの何れかの影響から生成されたマルチパス信号は、沈静する。この相関処理の性質は、1.5チップよりも長いマルチパス信号を拒絶する。それゆえ、2つのチップ休止期間は、短いマルチパス(つまり、1.5チップより短い)が放散するための十分な時間を与える。この相関処理は、2つのチップよりも長い遅延を伴って、このマルチパス信号を拒絶することになる。代替の実施形態では、固定された1チップオン、2チップオフパターンから生成される何れの変調影響をも軽減するために、擬似ランダムパルススキームを使用する。この擬似ランダムパルスパターンは、後続パルスが開始する前に、短いマルチパス信号コンポーネントを放散できるよう、パルス間に十分な休止時間を保有している。例えば、チップパターンと同期しないような、他のパルス及びチップスキームも用いることもでき、本発明の広範な範囲及び境界内にある。
【0035】
[リーディングエッジ及びサンプル処理]
本発明は、受信されたパルス信号のタイミングとの同期において、無線ナビゲーション受信機内の受信されたデータサンプル及び相関累積値を分離する。データサンプル及び相関累積値が、受信パルスパターンと同期して分離されると、その受信パルスのリーディングエッジは、残りの受信信号から独立して処理することができる。この受信されたパルスのリーディングエッジは、残りの受信パルス、或いはパルスの受理の終了後に発生する純粋なマルチパス信号よりも、マルチパスによる汚染を受けにくい。それゆえ、このリーディングエッジサンプルから導かれた距離推定は、このパルス周期中に後で発生するサンプルよりも、マルチパスによる汚染を受けにくくなるのである。
【0036】
本発明の相関処理は、複数の相関処理累積バイナリにおける相関パワー反応値を累積及び蓄積する。各相関処理累積バイナリは、受信パルスパターンとの間で特定のタイミング関係を有している。これは、単一バイナリにおける全ての相関結果を累積及び蓄積する従来の相関処理と対照的である。従来の相関処理と本発明との両方において、受信された無線ナビゲーション信号は、デジタルサンプルのストリームに変換され、このデジタルサンプルは、デジタル拡散シーケンスによって変調される。従来の相関処理においては、デジタルサンプル及びデジタル拡散シーケンスの結果的な変調は互いに合計されて、その結果は相関処理累積バイナリに蓄積される。この変調及び累積は、各デジタルサンプルが収集されるように発生するか、或いは、デジタルサンプルの収集後に発生する。従来の相関処理における一般的な要素は、デジタル拡張シーケンスを伴ったデジタルサンプル変調の結果は、全て単一の相関処理累積バイナリの中に累積され、受信されたデジタルサンプルの関連タイミングから独立している、ということである。本発明のパルス送信によって、各デジタルサンプルは、異なるダイレクト及びマルチパス信号コンテンツを有することになる。それゆえ、パルスパターンの関連位置に従った相関処理においてデジタルサンプルを分離することは、これら異なるコンテンツを分析するための方法を与える。
【0037】
ここで、図3を参照すると、これは本発明の相関処理について表現された説明例であり、ここでは、2つのパルス300及び313が時間の関数として表現されている。パルス300及び313は、送信されたパルスオン/オフタイミングであり、デジタル拡散シーケンスによって生成されたチップパターンではない。この表現は、好適な実施形態の、1チップオン及び2チップオフパターンを説明している。さらに、好適な実施形態の受信機は、受信した無線ナビゲーション信号を、10.023Mチップ/秒の直接シーケンス拡散スペクトル方式CDMAコードチッピングレート及び10Mパルス/秒のパルスレートで処理するために、70Mサンプル/秒のサンプルレートを与えるよう構成されている。それゆえ、図3に示した完全な1チップオンパルス300、313のそれぞれに対して、受信機は7つのデータサンプルを生成する。これらは、パルスパターンに関する受信時間シーケンスにおいて示され、パルス300に対する301、302、303、304、305、306及び307として番号付けされている。この受信信号から取得されたすべてのサンプルは、描かれた信号線に沿った点として表現され、図3上に「ADCからのデータサンプル」として索引されている。図3に説明された例において、サンプルのストリームを通して、サンプル301、308及び314はパルスの開始に対応し、サンプル302、309及び315はパルスの2番目のサンプルに対応し、サンプル303、310及び316はパルスの3番目のサンプルに対応する等の対応となっている。サンプル307は、パルス300の最後のサンプルに対応する。さらに、サンプル317、320、318、327、312、319及び321を含む例示されたタイムライン上の全てのサンプルは、パルス間の休止時間に対応する。
【0038】
サンプル317は、任意の開始時間であり、パルスパターンと同期した相関処理累積バイナリの中へ入ってくるサンプルを分離するためのデータサンプルである。このように、サンプル317は、サブサンプル1相関処理累積バイナリ322の中に累積し、サンプル320は、サブサンプル2相関処理累積バイナリ323の中に累積してこのシーケンスの5番目のサンプルであるところのシーケンスへと継続し、サンプル302はサブサンプル5相関処理累積バイナリ324の中に累積し、このシーケンスの6番目のサンプルへ続き、サンプル303はサブサンプル6相関処理累積バイナリ325の中に累積し、このシーケンスの7番目のサンプルへ続き、サンプル304はサブサンプル7相関処理累積バイナリ326の中に累積する。パルスパターンと同期した、このシーケンスにおける次のサンプルであるサンプル318は、7サンプルある次のシーケンスの最初である。これは、パルスパターンに関してサンプル317と同じタイミングを持っており、それゆえ、サブサンプル1相関処理累積バイナリ322の中に累積する。パルスパターンに関してサンプル317と同じタイミングを伴うサンプルは全て(この例では、サンプル318及び319が説明のために示されている)、サブサンプル1相関処理累積バイナリ322の中に累積する。
同様にして、
・サブサンプル2相関処理累積バイナリ323は、パルスパターンに関してサンプル320と同じタイミングを伴う全てのサンプルを累積する(この例では、サンプル327及び321が説明のために示されている)。
・サブサンプル5相関処理累積バイナリ324は、パルスパターンに関してサンプル302と同じタイミングを伴う全てのサンプルを累積する(この例では、サンプル309及び315が説明のために示されている)。
・サブサンプル6相関処理累積バイナリ325は、パルスパターンに関してサンプル303と同じタイミングを伴う全てのサンプルを累積する(この例では、サンプル310及び316が説明のために示されている)。
・サブサンプル7相関処理累積バイナリ326は、パルスパターンに関してサンプル304と同じタイミングを伴う全てのサンプルを累積する(この例では、サンプル311が説明のために示されている)。
などが挙げられる。
【0039】
本発明の相関処理は、多種多様な方法を使用して、サブサンプルされた相関累積バイナリに、累積値を累積及び蓄積することができる。例えば、上述の例のように、パルスの位置がもし既知であれば、受信されたパルスのリーディングエッジの後にサンプルを処理する必要はない。さらなる実施形態において、この相関処理は、第1の相関累積時間の間に第1のサンプルタイミング301を累積し、第2の相関累積時間の間に第2のサンプルタイミング302を累積し、そして、所定の数のバイナリに対するサンプルの取得を継続する。好適な実施形態では、実質的にチップ当り7つのサンプルでのサンプルを伴った、7つの累積バイナリの利用を詳述している。この好適なパルススキームにおいては、パルスオンチップ間に2チップの休止期間を伴った、1チップのパルス信号が存在する。この好適な7つのバイナリを累積する代わりに、受信機は代替的に、この好適な実施形態において詳述された7つのバイナリを越える累積パターンを継続することによって、何れの数のバイナリをも累積できる。代替的な実施形態において、受信機は、パルスパターン全体についての相関反応関数の完全サンプリングを与えるために、21バイナリを累積可能である。また、さらなる実施形態において、受信機は、好適な実施形態において詳述される7つのバイナリより少ない累積をすることも可能である。他の相関及び累積方法も、本発明の広範な範囲及び境界内にある。
【0040】
[パルスパターンに関するサンプルタイミング]
本発明の好適な実施形態において、ナビゲーション受信機のサンプルレートは、図3において説明された場合のような、送信されたパルスレートの整数倍とはならない。好適なサンプルレートは、パルスレートの整数倍に、受信パルスに関してサンプリングをスライドさせる端数要素を加えたものである。受信されたパルスについてのサンプルのスライドは、もし全てのサンプルが受信パルスに関して同時に発生した場合に表われる、何れのエイリアシング効果をも減少させる。それゆえ、サンプルレート対パルスレート比は、パルス長に依存する。パルスレートに関連するサンプルレートオフセットは、パルスレートに沿ってサンプル位置を変える原因となる。例えば、図3に示した10Mパルス/秒のシステムにおいては、サンプルレート対パルスレートの端数要素は、10000パルス毎の追加の1サンプルとなる。他の試験的なサンプルレート対パルスレート比を利用することもできる。例えば、1000パルス毎の1つの追加的サンプルもまた、1000から10000チップのコード長に対する関連オフセットを生成する。それゆえ、好適な実施形態においては、もし、名目上のサンプルレートが7サンプル/パルスであったならば、好適なサンプルレートは、7.0001から7.001サンプル/パルスの間のレートに調整される。積分期間の間にパルスに沿ってサンプル位置を修正するために、より遅いパルスレートに対しては、サンプルレートとパルスレートとの間のより高い端数オフセットが要求される。
【0041】
好適な実施形態において、サンプルレートはパルスレートに同期せず、それゆえ、このサンプルはパルスパターンに同期しない。しかしながら、相関累積値はパルスパターンとの同期を維持する。この同期は、既知の送信パルスレートにプログラムされた受信内部のタイマーによって実現される。このタイマーが切れると、受信機は、既知の送信機パルスレートと受信機クロックとの間の参照を与えるパルス時間マークを出す。この受信機パルス時間マークは、未知であるが一定の受信パルスパターンに関連するオフセットを伴って、相関及び累積バイナリを割り当てるために使用される。
【0042】
ここで、図4を参照すると、デジタルサンプルは、もはや、図3の場合のようにはパルスパターンに同期しない。1番目のパルス位置401、データサンプルに関する変化402及び403、次のパルス位置での404、そして、そのパルス周囲のデータサンプル405及び406となっている。データサンプル407と408との間のパルス位置には、さらなる変化が存在する。最初の受信機パルス時間マークは、409として表示されている。この受信機パルス時間マーク409の絶対位置は、1番目のパルス位置401に関して未知であるが、2つのイベント409及び401の関連タイミングは一定である。この例として、受信機パルス時間マーク409は、それぞれパルス401、404及び414の、おおよそ3データサンプル前にセットされる。この受信機パルス時間マーク409とパルス位置401との両方に関連するデータサンプル調整は変化するにも関わらず、この受信機パルス時間マーク409とパルス位置401との間の調整は一定である。この例に関しては、受信機パルス時間マーク409を通り越えた最初のデータサンプルは、サブサンプル1累積バイナリ412の中に累積される。各後続のサンプルは処理され、相関累積値は、内部の時間マークに関する後続の相関及び相関バイナリの中に配置される。
【0043】
[論理的なタイミング推定]
好適な実施形態においては、従来の相関処理は、おおよそのコード遅延タイミングと、パルスパターンのおおよその知識とを獲得するために使用される。コード遅延タイミング及びパルスパターンのこれらの推定はマルチパスに汚染されるが、このコード遅延タイミングは、パルスパターンの±1.5チップ以内での粗い推定が可能である。このコード遅延タイミングの粗い推定は、実質的に、コード遅延タイミングの初期値を設定するためのサブサンプル相関処理への入力として使用される。コード遅延タイミング推定とパルスパターン知識とを獲得するためのサブサンプル相関探索又は未加工パルス探索といった他の方法も、本発明の広範な範囲及び境界内にある。
【0044】
一般的には、受信機時間マークパルスを受信されたパルスパターンに正確に同期させることは不可能である。受信されたパルスパターンとの同期は、送信機への距離推定と同程度の正確さを有するに過ぎない。このパルスパターンの正確な知識は、送信機への距離の正確な知識を要求する。一般的に、送信機への距離は、正確な位置計算の前の位置デバイスにおいては未知である。それゆえ、このパルスのリーディングエッジに対する検索が要求される。この探索は、無線ナビゲーション受信機パルス時間マークに関する別の累積バイナリにおけるサンプルタイミング数を計算する、サブサンプル相関プロセッサを含む。すなわち、各累積バイナリは、潜在的な受信パルスリーディングエッジを表す。再び、図3を参照すると、この実例サンプルのサンプルタイミングは、パルスの開始の前に、最初のいくつかのサンプルが発生するように選択される。従来の相関技術を使用して、受信パルスパターンのリーディングエッジに対するおおよそのタイミングが最初に決定され、そして、この受信パルスパターンに関連する無線ナビゲーション受信機時間マークに対する粗い位置を与えることができる。図3の例において、無線ナビゲーション受信機時間マークタイマーは、この時間マークが、受信パルスのおおよそ3サンプル前に初期設定されるよう設定される。一組の時間マーク相関累積バイナリ結果から、論理決定プロセスが、誤りのない、或いは、最も確実な、パルスリーディングエッジサンプルセットを決定する。一般に、この受信機時間マークの配置は、コード遅延タイミングの粗い推定における不確実性に基づいて配置されるべきである。
【0045】
[論理決定プロセス]
論理決定プロセスは、受信パルスリーディングエッジに対応する相関累積バイナリを決定する。好適な実施形態において、この決定プロセスは、各相関累積タイミングバイナリからの累積パワー値を利用する。しかしながら、信号対雑音比、同相及び直角位相(I&Q)追跡ループキャリア追跡ループ累積値、擬似ランダムコード追跡ループ測定値、そして、受信機内部で利用可能な同様のデータ、といった他の測定パラメータも使用可能であり、本発明の広範な範囲及び境界内にある。
【0046】
図5を参照すると、本発明による7つのサブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508についての説明例が、従来の相関反応関数501とともに表されている。相関反応関数501は、フィルタリング又はデータノイズを伴わない、理論的な従来の相関反応である。サブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508は、この好適な実施形態において述べるように20MHz帯域幅フィルタでフィルタされ、その信号は、雑音とマルチパスとの両方に汚染されている。理論的な反応関数501と、サブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508とは、全てが同じプロット上に明瞭に見えるように調整されている。サブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508は、これらが、最大相関値でピークパワーを伴った三角形状ではなく、時間範囲において一定のパワーを伴った平坦状である、という点で、従来の相関反応関数501とは異なっている。サブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508は、従来の相関反応関数501の分解である。従来の相関反応501のリーディングエッジを参照すると、サブサンプル相関反応関数502、503、504、505、506、507及び508の合計が従来の相関反応関数になることは、直ちに明白である。もし、さらなるサブサンプル相関反応関数が、従来の相関反応関数の後縁に表されていたとすると、これらもまた、合計して従来の相関反応関数に達することとなる。
【0047】
図5の例において、論理決定プロセスは、受信パルスリーディングエッジに対応するサブサンプル相関反応関数を選択するために、7つのサブサンプル相関と、累積反応関数502、503、504、505、506、507及び508とを比較する。従来の相関処理からの受信パルスの「論理的な」推定を使用して、名目上の3つの相関累積バイナリが受信パルスリーディングエッジの推定より前に発生し、残りの4つの相関累積バイナリが受信パルスリーディングエッジの後に発生するように、受信機パルス時間マークが調整される。好適な実施形態において、受信されたパルスリーディングエッジ周辺の7つのサンプルは、それらの対応する相関累積バイナリの中に処理される。代替的な実施形態では、受信パルスリーディングエッジが、特定の適用、環境、そして、受信機測定値及びクロック品質に基づいて観察されることを保証するよう要求される、相関及び累積バイナリの数を変更する。例えば、コード遅延タイミングの粗い推定が4分の1チップ以内であることが分かっている低いマルチパス環境においては、完全な7つのサブサンプル相関累積バイナリは要求されない。代わって、3又は4バイナリだけが要求されることとなる。さらに、もし、この受信機クロックの不確実性が、コード遅延タイミングの粗い推定に比べて大きい場合には、この好適な実施形態について記載されている7つのサブサンプル相関累積バイナリの範囲を越えて、追加のサンプルが要求される。
【0048】
好適な実施形態において、一組の比較基準は、累積バイナリ関連パワーと無線ナビゲーション受信機パルス時間マークに関する位置とに基づいて確立される。例えば、リーディングエッジ相関累積バイナリのパワー値は、ある比率による、先行の相関累積バイナリパワー値よりも高いことが期待される。なぜなら、その先行の相関累積バイナリは、ノイズしか含まないサンプルから累積されているからである。図5に示された結果において、サブサンプル相関パワー反応曲線505は、そのリーディングエッジのサンプルタイミングに対応する。パルスのリーディングエッジ510でのサブサンプル相関パワー反応は、先行の、ノイズのみのサブサンプル相関パワー反応曲線504よりも、概ね3.5dB高くなる。加えて、図5において示したように、後続のサブサンプル相関パワー反応曲線506は、リーディングエッジサンプル相関パワー反応曲線505よりも高いことが期待される。この相関パワーの増加は、帯域制限信号の受理によって引き起こされるフィルタリング効果に依存し、従って、そのパルスの傾斜アップ(ramp-up)を生成する。パルスが最初に送信されると、結果として信号パワーが増大するのである。
【0049】
他の論理プロセス及び決定基準は、例えば、特定の信号対雑音(SNR)比閾値の設定、キャリア追跡ループ同相及び直角位相(I&Q)データの処理、擬似ランダムコード追跡ループ測定値の処理、或いは、受信機内で利用可能な同様のデータの処理といったパルスエッジ上に、最初のサブサンプルを確立することが可能である。これらの決定基準は、異なる受信機構成を伴って受信された、異なるタイプの送信機からの実データ信号に対して較正されたときに変更することもできる。さらに、リーディングエッジ相関及び累積バイナリの選択処理は、特定の環境及び信号が一般的又は特定のマルチパスコンテンツに対して観察されるので、その受信機内部で動的に調整することができる。そして、その受信パルスパターンのリーディングエッジの最善推定に対応する相関累積バイナリは、その距離測定値を見積もるために使用される。
【0050】
[リーディングエッジサンプル相関累積結果からの擬似距離測定]
いったんリーディングエッジサブサンプル相関及び累積バイナリが決定されると、その相関累積バイナリに基づいた距離推定が求められる。好適な実施形態においては、距離測定値を決定するために、データフィッティングアルゴリズムが、図5における要素510の平坦部のエッジを見積もる。この平坦部のエッジは、サブサンプル相関パワー反応505から導かれた距離測定値の基礎である。好適な実施形態において、このデータフィルタリングアルゴリズムは、サブサンプル相関反応の立ち上がりエッジ上の点と、その相関反応の最大値とを使用する。好適な実施形態においては、従来の0.5チップ早期及び0.5チップ遅延の追跡アームが、この2つの要求サンプルポイントを取得するために使用される。さらなる実施形態においては、早期、遅延の組み合わせ、及び、機敏な追跡アームは、要求されたサンプルポイントに使用することができる。また、さらなる実施形態においては、例えば、0.1チップといった間隔の狭い追跡アーム、又は、非対称の追跡アーム間隔が使用される。好適な実施形態においては、サブサンプル相関反応のリーディングエッジの傾斜は、多種多様な信号状態が与えられた、多くのサブサンプル相関反応曲線のモンテカルロシミュレーションから較正される。研究所試験、フィールド適性、そして数学モデリングといった、サブサンプル相関反応関数から距離を確立するための他の技術は、本発明の広範な範囲及び境界内にある。
【0051】
図5を再び参照すると、規則的なバイアス509が、パルスのリーディングエッジ510から導かれた距離推定と、これまで距離推定の基礎として使用された、従来の相関反応の最大反応511との間に存在する。好適な実施形態においては、このバイアスは較正されて、受信機内で一定に維持される。選択的に、このバイアスは、連続的なバイアス上でモデル化される場合がある。
【0052】
図5に、7.001サンプル/チップの好適なサンプルレートとサブサンプル反応関数とを伴った、本技術の相関累積バイナリ値を示す。この説明例におけるマルチパスは、0.5チップ遅延で−6dBmである図2に描画されたものと同一である。この距離の推定における誤差は、従来のタップ間隔相関方法の2〜3mに比べて、本発明のサブサンプル相関累積バイナリ技術を使用するこのマルチパスシナリオに対しては、略2cmであり、それゆえ、先行技術方法よりも著しい改善を与える。
【0053】
上記が本発明の説明例として与えられたと同時に、この点に関する全ての同様の及び他の修正ならびに変形が、ここに記述された本発明の広範な範囲及び境界内にあるものと見なされるということは、当業者にとって明らかであるように、当然に理解されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】先行技術の自己相関反応を示す図である。
【図2】先行技術の自己相関反応を示す図である。
【図3】本発明の無線ナビゲーション受信機内で取得されたデジタルサンプルのタイミング間の関係を示す図である。
【図4】本発明の無線ナビゲーション受信機内で取得されたデジタルサンプルのタイミング間の関係を示す図である。
【図5】本発明のサブサンプル自己相関反応関数を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
300 パルス
313 パルス
322 サブサンプル1
323 サブサンプル2
324 サブサンプル5
325 サブサンプル6
326 サブサンプル7
412 サブサンプル1
413 サブサンプル4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ナビゲーション受信機におけるマルチパスを軽減する方法であって、
a)送信デバイスから位置受信機に急速パルスパターンを送信し、該位置受信器によりこの送信された信号をサンプルし、
b)受信されたサンプルを分割し、サンプルをベースにした相関累積値を前記受信されたパルスパターンと同期した独立のバイナリとして蓄積し、
c)前記受信されたパルスのリーディングエッジに関連する累積バイナリを求めるために判断処理を適用し、
d)前記受信されたパルスのリーディングエッジに関連する相関累積バイナリから距離推定を生成する
ことによって、前記距離推定におけるマルチパスが軽減されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記急速パルスパターンは、前記マルチパス信号が放散することを可能にするために、パルス間に十分な休止時間を与えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記急速パルスパターンを利用する前記無線ナビゲーション信号は、前記受信されたサンプルを独立の相関累積バイナリとして分離することなしに、連続信号として処理されることを特徴とする方法。
【請求項4】
a)前記受信された信号が連続的に処理可能であり、かつ、
b)前記マルチパス信号を放散させることを可能にするための時間がパルス間に存在する
ように、無線ナビゲーション信号を急速パルス状にすることによって、受信された信号のマルチパスコンポーネントが時間的に変化するものとすることを特徴とする、無線ナビゲーション信号を形成する方法。
【請求項5】
無線ナビゲーション受信機におけるマルチパスを軽減する方法であって、
a)送信デバイスから無線ナビゲーション受信機へパルス無線ナビゲーション信号を送信し、
b)前記無線ナビゲーション受信機によって、前記パルス無線ナビゲーション信号における各パルスのリーディングエッジを相関させ、
c)この相関から距離推定を生成する
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−532866(P2007−532866A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506613(P2007−506613)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000493
【国際公開番号】WO2005/098469
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506339408)ロケイタ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】