説明

新しい物理的形態のクレイ連結ポリマーゲル、それらを形成するための方法、及びそれらの使用

本発明は、可塑剤と荷電したクレイ連結ゲル(A)とを含む繊維、フィルム、又は発泡体を提供し、前記の荷電したクレイ連結ゲル(A)は、荷電したポリマー(A’)によって架橋されたクレイナノ粒子(C)を含み、いずれか特定のクレイナノ粒子が少なくとも1つの別のクレイナノ粒子に、前記の荷電したポリマー(A’)によって結合されている。繊維、フィルム、及び発泡体の製造法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい物理的形態にある新しいクレイ連結ゲルとともに、それらの形成法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収体技術の進展は、所望の特性、例えば、高吸収、高ゲル強度、及びそれを身につける者に対する低い健康リスク、をもつ吸収(しばしば超吸収)物質に対する探索を刺激してきた。クレイナノ粒子とポリマーを含むゲルは、そのような用途に適した新しい群の吸収材料として認められてきている。クレイナノ粒子はポリマー構造と結合し、強く且つ弾性の物質をもたらし、従ってこれはそのゲルを脆くする有機バルク架橋剤をより少なくしか含まない(あるいは有機バルク架橋剤を全く含まない)ことを可能にする。
【0003】
クレイナノ粒子をポリマーゲル中に組み込む1つの方法は、開始剤、高濃度のバルク架橋剤及びモノマー(1又は複数種)を含む従来の重合反応中にクレイナノ粒子を添加することによるものである。そのような物質においては、ナノ粒子は化学結合によってポリマーに意図的に結合されているのではなく、むしろその三次元網目構造中に物理的に捕らえられている。そのような物質は、本発明の意味において「クレイ連結」とは考えられない。
【0004】
このタイプの物質の例は、国際公開WO00/72958号パンフレットに提供されており、これには、モノマー、クレイ粒子、架橋剤、及び混合液体を含む「MCX」混合物が記載されている。このMCX混合物は重合開始剤に曝されて重合され、網目構造のポリマー/クレイアロイが形成される。クレイ粒子は、そのような物質中ではポリマー鎖に強く結合されてはおらず、むしろそのポリマーマトリクス中に埋め込まれている。すなわち、それらは架橋剤としては機能していない。不十分な有機架橋しか存在しない場合には、したがって、クレイはポリマーから分離するおそれがあり、これはその物質の完全な状態及び特性に対しての問題、及びクレイナノ粒子の望ましくない放出を引き起こすおそれがある。
【0005】
同様に、CA2381901号明細書は、侵入化合物を有する水吸収性ポリマーを記載している。クレイ(ゼオライト)は、架橋剤としてその構造の一部とはなっていない。このゼオライトは臭気を吸収する作用をしている。
【0006】
ポリマーゲル中にクレイナノ粒子を組み込む別の方法は、ポリマーによって架橋されたナノ粒子を含む架橋物質、いわゆる「クレイ連結ゲル」、の形成によるものである。クレイナノ粒子の剥離された分散物に好適なモノマーを添加し、次に適切な開始剤システムを用いて重合し、ナノ粒子間に連結を形成させる。クレイナノ粒子とポリマーの三次元網目(三次元ネットワーク)が形成され、そこでは任意の特定のクレイナノ粒子は、ポリマーによって少なくとも1つの別のクレイナノ粒子と連結される。そのような物質は、クレイナノ粒子がポリマーネットワーク中に単に埋め込まれているものよりも強く、なぜならクレイナノ粒子はポリマーに化学的に結合されているからである。このため、そのような物質からのクレイナノ粒子の漏出も最小化される。
【0007】
例えば、EP1160286号明細書は、ポリアクリルアミドに基づく有機/無機複合ハイドロゲルを開示している。
【0008】
別な例は、Zhuら, Macromol. Rapid Communications, 2006, 27, 1023-1028にみられ、これには、クレイ連結ポリアクリルアミドに基づくナノ複合体(ナノコンポジット、NC)ゲルが記載されている。強い引張強度が得られている。
【0009】
今までに、ポリアクリルアミドなどの中性(uncharged、非荷電)ポリマーが、クレイ連結ポリマーの形成に用いられてきた(EP1160286及び上で引用したその他の文献を参照されたい)。この理由は、以下に説明するように、クレイナノ粒子の剥離された分散物に荷電種(charged species)を導入する場合に遭遇する困難のためである。
【0010】
ナノスケールでは、ナノ粒子間の力、例えば、静電価又はファンデルワールス力が顕著になり、これはナノ粒子の挙動が、より大きな粒子の挙動とはしばしばかなり異なることを意味する。ナノ粒子状クレイは、小さな距離にわたって大きく変動する表面電荷分布をしばしば有する。例えば、剥離されたラポナイトは、約1nmの厚さ及び25nmの直径をもつディスク形状のシリケートである。水性分散物中では、ラポナイトは、その表面に強い負電荷と、その端部の弱い局在化した正電荷とを有する。そのようなナノ粒子上の表面電荷は、水溶液中で例えばNaイオンの電気二重層の形成を引き起こす。各クレイナノ粒子の周り(又は各ナノ粒子の特定領域)に形成されるこの電気二重層は、ナノ粒子が水溶液中で互いに反発することを引き起こし、そのため、一般に透明又は半透明であり且つ低粘度を有する、相互作用していない粒子の分散液をもたらす。
【0011】
クレイナノ粒子の分散液への荷電した水溶性化合物の添加は、ナノ粒子の表面からNaイオンを遠ざけている浸透圧を低下させ、そのため電気二重層が薄くなる。ナノ粒子はそのため互いに近づき、これがそれらの凝集をもたらす。凝集は肉眼で明瞭に観察可能であり、なぜならクレイナノ粒子の低濃度分散物は最初は透明であるが、荷電した化合物の添加によって曇るようになり且つ沈殿物を形成するからである。クレイナノ粒子の高濃度分散液は、荷電した水溶性化合物の添加によってゲル状の凝集物を形成する。
【0012】
Weianら, Materials Letters, 2005, 59, 2876-2880には、反応性インターカレーション剤を用い、次にアクリル酸の添加とその重合によってどのようにモンモリロナイトを安定化できるかが記載されている。
【0013】
Haraguchiら, Macromolecules, 2005, 38, 3482-3490では、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)に基づくナノ複合物ゲルを形成する機構について論じられている。Silberberg-Bouhnikら, J. Polym. Sci. B, Polym. Phys. 1995, 33, 2269-2279では、イオン化の程度による(クレー粒子なしの)ポリアクリル酸ゲルの膨潤比の依存性が論じられている。V. Can及びO. Okay, Designed monomers and polymers, vol.8, no.5, 453-462 (2005)には、ポリエチレンオキシド(PEO)鎖とラポナイト粒子との間の物理的ゲルの形成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO00/72958号パンフレット
【特許文献2】CA2381901号明細書
【特許文献3】EP1160286号明細書
【特許文献4】米国特許第6,534,239号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Zhuら, Macromol. Rapid Communications, 2006, 27, 1023-1028
【非特許文献2】Weianら, Materials Letters, 2005, 59, 2876-2880
【非特許文献3】Haraguchiら, Macromolecules, 2005, 38, 3482-3490
【非特許文献4】Silberberg-Bouhnikら, J. Polym. Sci. B, Polym. Phys. 1995, 33, 2269-2279
【非特許文献5】V. Can及びO. Okay Designed monomers and polymers, vol.8, no.5, 453-462 (2005)
【非特許文献6】Colloid and Polymer Science, Vol. 272, no. 4 (1994)
【非特許文献7】Polymer, 2005, 50, nr.2
【非特許文献8】Polymer Bulletin 32, 169-172, 1994
【非特許文献9】Macromolecules, vol. 31, no.13, 1998
【非特許文献10】G. Smets, A. M. Hesbain, J. Polymer Science, Vol. 11, p.217-226 (1959)
【非特許文献11】Zhangら, Journal of Polymer Science; Part A: Polymer Chemistry, Vol. 44 (2006), 6640-6645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
中性ポリマー、例えば、ポリアクリルアミド、を含むクレイ連結ゲルは、上で論じたように公知である。荷電したポリマー(例えば、ポリアクリレートポリマー)は、より大きな水吸収能を有する。これは、ポリマー内で近くにある荷電基の間の反発によるものであり、これがより大きな膨張を可能にしているのかもしれない。さらに、水に曝されたときに、荷電したゲルの内側と外側の間で浸透圧が生じ、これが吸収過程を推し進める。したがって、荷電したポリマーを含むクレイ連結ゲルが合成されることが望ましい。
【0017】
しかし、クレイナノ粒子の分散物への荷電モノマーの添加は、上で論じたように、ナノ粒子の凝集を引き起こし、そのため、荷電したポリマーを含むクレイ連結ゲルは、中性ポリマー、例えばポリアクリルアミドについて記載された方法を用いて合成することはできない。
【0018】
本発明は、荷電したポリマーを含むクレイ連結ゲルの特定の形態のもの、及び公知の合成経路に伴う問題を克服するそれらの製造法を提供する。このようにして、荷電したポリマーを含むクレイ連結ゲルを得ることができ、それはこれ以前には作ることができなかった。
【0019】
発泡体又は繊維状網目の形態の超吸収材料は、それがその材料自体の中(その微細孔の壁又はその繊維構造)だけでなく、その発泡体の微細孔中、あるいは繊維間のすき間にも液体を吸収するという利点を有する。しかし、従来の超吸収性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸/ポリアクリレートポリマー)から作られた発泡体(フォーム)及び繊維質材料は、乾燥しているときには硬く且つゴワゴワしており、湿ったときには充分な弾性がなく且つ脆く、それらは圧力下で崩れる傾向がある。これらの理由によって、超吸収材料は、通常、吸収性物品中に粒子形態で含まれている。
【0020】
したがって、柔らかく且つ柔軟な形状で存在でき、且つ乾燥及び湿潤状態の両方でその弾性を保つ超吸収材料を設計することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[本発明のまとめ]
したがって、本発明は、
a.可塑剤と
b.荷電したクレイ連結ゲル(A)とを含む、繊維、フィルム、又は発泡体であって、
前記荷電したクレイ連結ゲル(A)が、荷電したポリマー(A’)によって架橋されたクレイナノ粒子(C)を含み、
任意の特定のクレイナノ粒子が、前記荷電したポリマー(A’)によって少なくとも1つの別のクレイナノ粒子と結合されている、繊維、フィルム、又は発泡体を提供する。
【0022】
クレイ連結超吸収体の発泡体、フィルム、及び繊維を用いることは、従来の架橋した超吸収体の発泡体、繊維、及びフィルムよりも優れた材料を提供し、なぜなら、それらは湿潤条件で弾性があり且つ強く、それらを可塑剤と組み合わせることによって、それらは乾燥条件でも強く且つ弾性があるからである。
【0023】
荷電したポリマー(A’)はポリアクリレート又はポリアクリルスルホネートであることが適している。ポリアクリレートは、ペンダント(ぶら下がり)のカルボキシレート-(CO)及び/又はペンダントのカルボン酸基-(COH)を含むことが適しており、ポリアクリルスルホネートは、ペンダントのスルホネート-(SO)及び/又はペンダントのスルホン酸基-(SOH)を含むことが適している。
【0024】
クレイナノ粒子(C)は、モンモリロナイト、サポナイト、ノントロナイト、ラポナイト、バイデライト、鉄-サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サウコナイト、スティブンサイト、マグダイト、バーミキュライト、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト、ナクライトが含まれる)、マイカ鉱物(イライトが含まれる)、クロライト鉱物、パリゴルスカイト、及びこれらの組み合わせ、好ましくは、モンモリロナイト、ラポナイト、及びヘクトライトからなる群から選択してよい。クレイナノ粒子(C)は5〜500nm、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜50nmの平均粒径を有していてよい。荷電したポリマー(A’)は、少量の有機バルク架橋剤しか含まないことが適している(例えば、モノマー量を基準にして1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満)。
【0025】
本発明は、本明細書に記載するように発泡体(フォーム)に特に関連する。この発泡体は、1つの領域から別の領域へと気孔サイズの傾斜を有していてもよい。本発明による発泡体は、粘度調節剤をさらに含んでいてもよい。
【0026】
発泡体材料の製造法も提供し、その方法は以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.任意選択により、粘度調節剤及び/又は界面活性剤を添加してもよい工程;
e.重合開始剤を添加する工程;
f.クレイナノ粒子(C)、可塑剤、及び中性モノマー(B1)の混合物を発泡させる工程;
g.上記の中性モノマー(B1)を重合させて、中性のクレイ連結発泡体を形成させる工程;
h.上記の中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.d.及びe.は任意の順に行うことができる。
【0027】
上記の発泡工程は発泡剤を用いて行うことが好ましいが、以下に記載する方法のいずれかによって行うこともできる。
【0028】
本発明は、本明細書に記載したように繊維にも関する。繊維を製造する方法も提供し、その方法は以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.上記モノマーを重合させて、中性のクレイ連結ゲル(B)を形成させる工程;
f.荷電したクレイ連結ゲル(A)を繊維に紡糸する工程;
g.中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解し、それによって荷電したクレイ連結ゲル(A)を形成させる工程;
を含み、工程a.、b.c.及びd.、並びに工程f.及びg.は、独立に任意の順に行うことができる。
【0029】
本発明は、本明細書に記載したようにフィルム、及びそれを製造する方法にも関する。フィルムを製造する方法は、以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.上記中性モノマー(B1)を重合させて、中性のクレイ連結ゲルを形成させる工程;
f.上記の中性のクレイ連結ゲルをフィルムに成形する工程;
g.上記の中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.及びd.、並びに工程f.及びg.は、独立に任意の順に行うことができる。
【0030】
本発明は、吸収性物品における、本明細書に記載した発泡体、フィルム、又は繊維の使用、及びその発泡体、フィルム、又は繊維を含む吸収性物品にも関する。
【0031】
[定義]
本発明の「荷電した」ポリマーは、1つ以上の荷電した官能基(A1)、例えば、少なくとも2モル%、少なくとも10モル%、又は少なくとも20モル%の荷電した官能基を含むものであり、荷電した官能基はこのポリマーの全体として正又は負の電荷をもたらす。このポリマーは負に荷電していてもよく、その場合ポリマーは、負に荷電した官能基(A1)、例えば-CO、-SO、-O、-S、-PO、及びそれらの誘導基を組み込んでいてよい。このポリマーはあるいは正に荷電されていることもでき、その場合は、ポリマーは、正に荷電した官能基(A1)を含んでいてもよく、例えば、荷電したアミン官能基及びその誘導基を含むポリマーであってもよい。その荷電した官能基の対イオンは、当技術分野で一般に公知の任意の対イオンであってよい。
【0032】
本発明の「中性」ポリマーは、荷電した官能基(A1)を含まず、中性官能基(B1)のみを含むものである。
【0033】
本明細書で用いるように、「ポリアクリレート」の用語は、少なくともその一部領域において、ペンダント(ぶら下がり、pendant)のカルボキシル基及び/又はカルボキシレート基をもつ炭化水素骨格を有するポリマーをいうために用いられる。
【0034】
本明細書で用いるように、「ポリアクリルアミド」の用語は、少なくともその一部領域において、ペンダントアミド基をもつ炭化水素骨格を有するポリマーをいうために用いられる。
【0035】
「架橋(架橋した)」の用語は、本明細書では、その物質の第一の成分の複数領域が第二の成分によって連結されている物質を記述するために用いられる。一般に、共有結合がその第一と第二の成分との間に形成される。物質中での増加した架橋は、その物質に増大した強度と増大した剛性(より低い柔軟性)をもたらす。
【0036】
「クレイ連結ゲル」の用語は、クレイ粒子がポリマーによって連結されている物質を記述するために用いられる。化学結合(例えば、イオン結合、共有結合又は水素結合、あるいは錯体形成)が、クレイ粒子とポリマー又は開始剤分子との間に形成され、それによって物質は互いにただ一緒にされているのではなく分子レベルで連結されている。これは、ポリマー中に単に分散又は埋め込まれているクレイ粒子とは対照的である。したがって、クレイ粒子とポリマーとの三次元網目(ネットワーク)がもたらされ、そこでは任意の特定のクレイナノ粒子は、ポリマーによって少なくとも1つの別のクレイナノ粒子と連結されている。クレイ連結物質の構造は、ポリマーがクレイ粒子によって連結されているとしても考えることができる。
【0037】
「ナノ粒子」は、ナノスケールの寸法をもつ粒子である。たとえば、本発明にしたがうナノ粒子の平均直径は1〜500nmの間である。ナノ粒子はしばしば100nmの最大直径を有する。そのような小さな寸法においては、粒子間の力、例えば静電気力又はファンデルワールス力などが顕著になり、これはナノ粒子の挙動がしばしばより大きな粒子の挙動とはかなり異なることを意味する。
【0038】
「剥離された」(exfoliated)の用語は、ナノ粒子が、溶媒又はポリマーヒドロゲルでありうる担体物質にわたって主に個別の状態で分散されていることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、カルボン酸官能基を作るための合成経路の説明図である。
【図2】図2は、スルホン酸官能基を作るための合成経路の説明図である。
【図3】図3は、クレイ連結ゲルのFTIRスペクトルを示す。
【図4】図4は、クレイ連結ゲルの自由膨潤(g/g)を示す。
【図5】図5は、クレイ連結ポリアクリルアミドゲルに基づく凍結乾燥発泡体のE−ESM画像である。
【図6】図6は、引張強度試験機中のクレイ連結ゲルの繊維を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[好ましい態様の詳細な説明]
本発明は、特定の物質の繊維、フィルム、又は発泡体(フォーム)を提供する。この繊維、フィルム、又は発泡体は、主成分に、可塑剤及び荷電したクレイ連結ゲル(A)を含む。本発明の繊維、フィルム、又は発泡体は、これらの2つの成分のみからなっていてもよく、あるいはさらなる成分を含んでいてもよい。
【0041】
発泡体(フォーム)は、液体又は固体中に気泡を閉じ込めることによって形成された物質である。固体発泡体は、軽量の気泡材料(セルラーマテリアル)の重要な一群を形成している。発泡体は、それらの気泡構造に基づいて2種の気泡材料に分類できる。第一のタイプの発泡体は「オープンセルフォーム」といわれ、これは互いに連結された気泡を含んでいる。第二のタイプの発泡体は「クローズドセルフォーム」といわれ、相互連続した気泡構造を持たない。クレイ連結発泡体は良好な弾性特性を有する。これらの弾性発泡体は、良好な液体保持能力と良好な液体分配をもたらす。発泡体が、弾性セル壁から作られたオープンセルを含むという事実によってその発泡体の機械特性はさらに向上され、これは、その構造が機械的ストレスを受けた場合に変形可能であり、したがってそれは、非弾性セル壁をもつ発泡体又はより小さな弾性のセル壁をもつ発泡体と比較して、荷重が取り除かれたときにはその当初の形状に回復することを意味している。発泡体の弾性セル壁は、液体がそのセルに入った場合には膨張し、液体が流出した場合には縮むことを可能にすることができる。弾性発泡体はまた、引張り及び引き裂き応力の両方に抵抗するのにもより良い。吸収性物品中の吸収性コアを構成するクレイ連結発泡体は、したがって、セルロース繊維及びSAP粒子に主に基づく構造よりも、さらに柔軟かつしなやかである。加えて、弾性発泡体はより容易に圧縮され、すなわち、それらはより高密度に圧縮されることができ、湿った場合には膨張することができる。したがって、製品の脆さのために損傷を与えられることなく、製品をその包装された状態に圧縮することができる。
【0042】
固体発泡体は様々な方法によって調製することができるが、その方法は2つの主な工程、1.気泡の発生と成長、及び2.固化する工程に分けられ、それぞれ以下のとおりである。
1.気泡の発生と成長
いくつかの利用可能な方法がある。例えば、
a.気体を液体中に泡立てる
b.液体中に気体を吹き込む
c.気体の蒸気圧が周囲の圧力よりも高くなる場合に、気泡が液体中で自発的に形成されることもできる
d.化学的方法又は物理的方法による気泡の核形成
e.2相システムも、固体/液体システム中で達成されうる。次にこの固相は固化工程の後に除去される。
【0043】
化学的方法はしばしば発泡剤又はポロゲン(porogen)の使用と組み合わされる。発泡剤は、明確な化学反応を通して気体を発生し、ポリマー物質中にフォーム構造を作りだすことができる添加剤である。発泡剤には、圧力が開放された場合に膨張する圧縮気体、浸出した場合に気孔を残す可溶性固体、気体に変化した場合に気泡(セル)を作り出す液体、及び熱の影響下で分解又は反応して気体を形成する化学薬品が含まれる。化学発泡剤は、重炭酸アンモニウム又は重炭酸ナトリウムなどの単純な塩から、複雑な窒素放出剤までに及ぶ。「発泡剤」及び「ポロゲン」の用語はしばしば同じものを意味するために用いられるが、ポロゲンはときどき、明確な化学反応を通しては分解しないが、非常に高温では不規則に全ての種類の分子断片へとばらばらになる発泡剤として定義される。発泡剤/ポロゲンの例は、重炭酸ナトリウム及び重炭酸アンモニウムであり、これらは酸性条件にされた場合に二酸化炭素ガスを発生する。その他の例は、水によって二酸化炭素を発生するイソシアネート基、又は熱によって窒素ガスを発生するアゾ基である。
【0044】
気泡は、セル構造を確実に作るための物理的条件の変化を含むエマルション及びマイクロエマルションによっても生み出される。例は、低い揮発温度をもつ炭化水素(例えば、ヘプタン又はアセトン)を用いてのエマルション又はマイクロエマルションの作成である。別の例は、水を用い、その水を凍結乾燥工程を用いて気化させてフォーム構造を作ることである。超臨界液体(超臨界二酸化炭素など)も、気泡構造(セル構造)を作り出すために用いることができる。
【0045】
気泡の発生と成長の段階においては、この過程を促進するために用いることができるいくつかの成分がある。例は界面活性成分、いわゆる界面活性剤である。いくつかの粒子又は繊維も用いることができる。また、いくつかのタンパク質も表面活性物質として用いることができる。このセル構造は、液相中で又は気液界面において粘度調節剤を用いて安定化することもできる。
【0046】
2.固化工程
固体の発泡体は固化工程において作られ、この工程はしばしば液相中でのモノマーの重合である。重合はラジカル機構によるものであることができる。段階的成長重合もありえる。重合温度は常温か、あるいは室温より上もしくは下であることができる。氷点より低い温度にて2相系で行われ、そこで水が相の1つである重合は、いわゆる冷却ゲル(cryogel)を作り出す。水を除去したときに、発泡体が作りだされる。
【0047】
固化工程は液相の物理的変化、例えば、ゲル化及び/又は乾燥によって起こることもありうる。
【0048】
気泡発生及び成長の過程の性質を制御することによって、様々な気孔サイズ、様々な気孔構造、及び/又は様々な気孔傾斜をもつセル構造を作り出すことができる。したがって、1つの態様では、発泡体はその1つの領域から別の領域へと気孔サイズの傾斜を有する。したがってこの発泡体はその様々な領域において様々な気孔サイズと様々な気孔の傾斜を含むことができる。気孔傾斜はz方向(吸収構造体の上部から吸収構造体の低い部分へと至るまで)に、上の部分における最も大きな気孔をもち、それがより低い部分に達するにつれてしだいに小さくなっていくことができる。そのような構造の一つの利点は、装着者に最も近くに位置する吸収体構造の上部に、その吸収性構造体のより下部の液体貯蔵部よりも大きな液体分配能が備わっていることである。
【0049】
さらに、その発泡体のより下部は、より大きな毛細管圧を有し、それによって上部が空になってさらに濡れることが可能になり、乾燥した上部表面をもたらす。
【0050】
そのような傾斜を得るためには、様々な発泡体層が製造され、それぞれの上に配置される。様々な層が乾燥する前にそれぞれの上に異なる層を適用することによって一体化された構造が得られ、ここではその複数層が互いの中に部分的に侵入している。そのような一体化された構造の一つの利点は、別個の複数層からなる吸収構造体と比較して、続いて結合させる工程が取り除かれることである。したがってそのような構造は作るのにより安価であり、なぜなら複数層を結合させるための接着剤及び/又はエネルギー供給の必要がなくなるからである。一体化された構造に伴う別の利点は、複数層間の不十分な密着によって第一の層から第二の層への移り変わりにおいて、液体輸送が低下させられるリスクがないように、構造体の機能が改善されることである。
【0051】
好適には、液体受容部の発泡体の気孔壁は、より多くのクレイが結合していることができ、すなわち、液体貯蔵部の気孔壁よりもより多くのナノ粒子を含むことができる。非常に高度にクレイが連結している物質は、より低い程度のクレイとの連結を有する物質ほどには多くの液体を吸収することができない。高度のクレイとの連結をもつ、すなわちより多くのナノ粒子を含む物質は、ゲルブロッキングの危険がより少ない。この態様による吸収体構造は、2つ以上の発泡体層を調製することによって形成でき、ここではより多くのナノ粒子が、液体受容部を形成しようとしているポリマー溶液に添加され、より少ない量のナノ粒子が液体貯蔵部を形成しようとしているポリマー溶液に添加される。発泡及び固化の後、しかし乾燥の前に、様々な層がそれぞれの上に配置され、そこでは複数層は互いに部分的に一体化し、連続的な構造が達成される。上にしたがって様々な部分をもつ発泡体、すなわち、その一つの領域から別の領域へと段階的に又は連続的に増加する粒子濃度をもつ発泡体を作ることによって、吸収特性を制御することができ、それによって迅速な液体捕捉、良好な液体配分並びに貯蔵能力を有する一体化構造体が得られる。
【0052】
したがって、本発明は本明細書に記載した発泡体物質を製造する方法を提供し、その方法は以下の工程:
a.部分的に又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.任意選択により、粘度調節剤及び/又は界面活性剤を添加してもよい工程;
e.重合開始剤を添加する工程;
f.クレイナノ粒子(C)、可塑剤、及び中性モノマー(B1)の混合物を発泡させる工程;
g.上記の中性モノマー(B1)を重合させて、中性のクレイ連結発泡体を形成させる工程;
h.上記の中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.、d.及びe.は任意の順に行うことができる。
【0053】
発泡工程は、発泡剤を用いて行うことが好ましいが、上述した方法のいずれを用いて行ってもよい。
【0054】
本発明は、本明細書に記載したクレイ連結ゲルを含む繊維にも関する。吸収性物品中にクレイ連結繊維を用いる一つの具体的利点には、セルロースを含まない製品を製造する可能性が含まれる。加えて、柔らかく、柔軟で、薄く、弾性且つ下着のような製品を作ることが容易であり、これは向上したフィッティング及び快適性を製品にもたらす。本発明の繊維からなる弾性コアは、より良好なドライ及び特に湿潤での完全性をもたらすだろう。弾性のクレイ連結物質は、コアの弾性及び完全性を向上させる潜在能力をもっている。さらに、より少ないコア材料しか、従来の吸収性コアと比較して必要とされないであろう。本発明はまた、吸収性物質をそれが必要とされるところに配置することを容易にする(従来用いられている粒状超吸収性材料はより自由に動く)。
【0055】
上記繊維は、繊維網目(ファイバーネットワーク)(例えば、吸収性物品の吸収性部材に通常用いられるもの)の中に存在できる。繊維の製造方法は紡糸といわれる。3種の主なタイプの紡糸、すなわち、溶融、乾式、及び湿式がある。溶融紡糸は容易に溶融されるポリマーに用いられる。乾式紡糸は、蒸発可能な溶媒中にポリマーを溶かすことを含む。湿式紡糸は、溶媒を蒸発できず、化学的手段によって除去しなければならない場合に用いられる。全てのタイプの紡糸は同じ原理を用いている。溶融紡糸においては、ポリマーの塊をそれが流動するまで加熱する。溶融したポリマーを、紡糸口金といわれる多くの小さな孔を含む金属板の表面までポンプで圧送する。これらの孔から出てくるポリマーの小さな流れ(モノフィラメントとよばれる)は、それらが冷却したときに固化する。このフィラメントはまたそれらが固化するときに一緒に撚りあわされて長繊維を形成する。湿式紡糸は、溶媒に溶かされた繊維形成性物質に用いられる。紡糸口金を化学浴中に沈め、フィラメントが出てくるときにそれらは溶液から沈殿して固化する。乾式紡糸も溶液の繊維形成性物質に用いられる。しかし、溶液又は化学反応によってポリマーを沈殿させる代わりに、固化は、溶媒を空気又は不活性ガスの流れの中で蒸発させることによって達成される。
【0056】
ゲル紡糸法は、高強度又はその他の特殊な繊維特性を得るために用いられる湿式及び乾式紡糸の特別な方法である。ポリマーは押出しのときに真の液体状態にはない。それらは真の溶液ではないときに完全には分離してはおらず、ポリマー鎖は様々なところで液晶形態で、あるいはその他の物理的相互作用によって一緒に結合されている。このことが、得られるフィラメントに強い鎖間力を生みだし、これが繊維の引張強度を大きく増大させることができる。さらには、この液晶又はその他の物理的相互作用は、押出時の剪断力によって繊維の軸に沿って配列される。この複数のフィラメントは、互いに対して普通ではない高度の配向性をもって現れ、さらには強度を増大させる。
【0057】
新しい紡糸技術には電気紡糸(エレクトロスピニング)が含まれる。電気紡糸は、液体から非常に細い繊維(典型的にはミクロ又はナノスケール)を引くために電荷を用いる。電気紡糸は、エレクトロスプレーと、繊維の従来の湿式紡糸の両方の特性を共に有している。好ましい紡糸法は、湿式及び乾式紡糸並びに電気紡糸である。
【0058】
紡糸工程に続いて、押出した繊維が固化する。いくつかの場合には、繊維が固化した後でさえ、繊維は実質的に引っ張られることができ、それは向上した強度を得るために増大した鎖配向性を作り出すためである。
【0059】
したがって本発明は本明細書に記載した繊維の製造法を提供し、その方法は以下の工程:
a.部分的に又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.上記のモノマーを重合して、中性のクレイ連結ゲル(B)を形成させる工程;
f.その帯電したクレイ連結ゲル(A)を繊維に紡糸する工程;
g.上記の中性官能基(B1)を荷電した官能基(A1)へと加水分解して、それによって、帯電したクレイ連結ゲル(A)を形成する工程、
を含み、工程a.、b.、c.及びd.、並びにf.及びg.は独立に任意の順に行うことができる。
【0060】
本発明は、本明細書に記載したクレイ連結ゲルを含むフィルムにも関する。繊維について上で列挙した利点に加えて、本発明によるフィルムは超吸収性ラミネートを設計する可能性を許容する。超吸収性粒子はフィルムに組み込まれることができ、あるいは超吸収性粒子は2枚のフィルムの間に配置されることもできる(サンドイッチ構造)。さらに、フィルムは、解剖学的な形状にしたコアを設計することを容易にする。加えて、おむつの新しい場所、例えば、吸収性のスタンディングギャザーに、あるいは漏れ防止のためにウエスト領域に、吸収性能を導入する機会も存在する。
【0061】
ポリマーフィルムは、フィルム吹込成形(ブローイング)、フィルム押出、フィルム流込み(キャスティング)、フィルムカレンダー加工のようないくつかの商業上公知の手法によって製造することができる。クレイ連結ゲルに基づくフィルムに対しては、カレンダー加工と押出が好ましい方法である。
【0062】
フィルムのカレンダー加工においては、カレンダーニップを通る一つ又は複数の経路内のカレンダー加工トレインを通して厚い半固体のゲルを供給できる。ロール又はニップは、溶媒を含むポリマーゲルに対して適切な温度に保たれ、ロール又はニップの温度は溶媒(例えば水)を蒸発させるように調節できる。
【0063】
フィルム押出においては、厚い半固体のゲルを押出機中に供給し、スクリューと接触させる。回転するスクリューはゲルをバレルの方へと推し進め、バレルは適切な温度に加熱することができる。ほとんどの方法では、加熱プロファイルがバレルに対して予定されており、バレルは出口であるダイで終わる。このダイは最終生成物にその形状を付与し、ダイの後では温度は溶媒(例えば水)を蒸発させるように調節することができる。
【0064】
したがって、本発明は本明細書に記載したフィルムを製造する方法を提供し、その方法は以下の工程:
a.部分的に又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.上記の中性モノマー(B1)を重合して、中性のクレイ連結ゲルを形成させる工程;
f.その中性のクレイ連結ゲルをフィルムに成形する工程;
g.上記の中性官能基(B1)を荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.及びd.、並びに工程f.及びg.は任意の順に行うことができる。
【0065】
本発明の発泡体、フィルム、及び繊維は、可塑剤を含む。可塑化剤/可塑剤は、ポリマー物質と共に用いられて、その機械特性を硬く且つゴワゴワしたものから柔らかく且つ柔軟なものへと変化させる化学物質を意味する。可塑化剤/可塑剤は、ポリマー鎖の間にそれ自体を埋込み、ポリマー鎖の間に空間を空けて自由空間を増大させ、それによってポリマーのガラス転移温度を顕著に低下させ且つポリマーを柔軟にする。
【0066】
水は、クレイ連結ゲルと一緒になった場合、可塑化剤/可塑剤として作用する。しかし、水は本出願においては可塑化剤/可塑剤とは考えられておらず、なぜなら吸収性製品の機能は水溶液を吸収することだからである。可塑化剤/可塑剤として水に頼ることは、本製品の機能に悪影響を及ぼす。可塑化剤/可塑剤としての水の使用を妨げるその他の因子は、可能性のある微生物増殖を悪化させる可能性があること及び一定の水含有量を確実にすることの困難性である。
【0067】
本発明において用いるために選択される可塑剤はある範囲の特性を有する。通常、可塑剤は液体又は固体であって、ある範囲の分子量及び構造を有することができ、且つ荷電したクレイ連結ゲルと相容性である。それらは低分子量物質又はポリマーであることができ、不揮発性且つ非反応性である。
【0068】
通常、液状可塑剤は、重合に用いられるモノマーと混和性となるように選択される。加えて、可塑剤はある範囲の分子量と構造を有することができる。すなわち、可塑剤は低分子量物質又はポリマーのいずれかであることができる。典型的には、低分子量可塑剤は、低分子量の酸又はアルコールから誘導され、例はグリセロールとクエン酸である。この低分子量の酸又はアルコールは、それぞれ一官能アルコール又は一官能酸でエステル化されていることもできる。そのような可塑剤の例は、一及び多塩基酸のエステル、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジブチルなどである。典型的には、ポリマー可塑剤(高分子可塑剤)には、約150〜約1500の質量平均分子量を有するポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、及びそれらのコポリマーが含まれる。
【0069】
有用な可塑剤は、その可塑剤を反応混合物に混ぜた場合にその可塑剤が相分離しないように、荷電したクレイ連結ゲルとは相容性である。荷電したクレイ連結ゲルからの又はゲルを通しての可塑剤のいくらかの移動は許容でき、それはたとえば組成物の平衡又は温度の影響による軽微な分離などであるが、荷電したクレイ連結ゲルと可塑剤との間での相分離ほどまでには可塑剤は移動しない。ポリマー可塑剤(高分子可塑剤)を用いる場合、高分子可塑剤は低分子量可塑剤よりもその用途にわずか多く限りがあり、通常、高分子可塑剤の分子量が低いほど、荷電したクレイ連結ゲルとの相容性が高くなる。
【0070】
本発明に用いる可塑剤は不揮発性でもある。可塑剤が重合工程で用いられ、そこではクレイ連結ゲルが可塑剤の存在下で形成される場合、可塑剤はモノマーを溶媒和するだけでなく、重合中に存在し且つ安定なまま残る。さらに、有用な可塑剤は非反応性であり、したがって、重合工程で存在するその他のモノマーとの共重合が防がれる。
【0071】
さらに、発泡体の安定性を高めるために、本発明の発泡体は、反応混合物の粘度を高めるのに役立つ1種以上の粘度調節剤を含むこともできる。粘度調節剤の例は、合成の親水性ポリマー、例えば、ポリビニルアルコールもしくはポリアクリル酸などのポリマー、あるいは様々なセルロース誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、又は疎水性に変性されたエチルヒドロキシエチルセルロース(Bermocoll)である。
【0072】
製造時に混合物の発泡性及び発泡安定性を高めるために、本発明の発泡体(フォーム)は1種以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0073】
界面活性剤又は表面活性剤は、表面及び界面で吸収する傾向によって特徴づけられる。「界面」の用語はいずれか2つの非相容性の相の間の境界を意味し、一方で「表面」の用語はその相のうちの一つが気体であることを意味する。界面活性剤は、液体の表面張力を低下させ、あるいは2つの液体の間の界面張力を低下させる湿潤化剤である。界面活性剤は通常は両性(amphiphilic)を意味し、疎水性基と親水性基の両方を含む有機化合物である。界面活性剤は、発泡体の形成を容易にし、及び/又は気泡の合体を防止することによってそのコロイド安定性を高める。
【0074】
本発明の発泡体(フォーム)、フィルム、及び繊維はまた、荷電したクレイ連結ゲル(A)を含む。この荷電したクレイ連結ゲル(A)は、荷電したポリマー(A’)によって架橋されたクレイナノ粒子(C)を含み、それにより任意の特定のクレイナノ粒子は少なくとも1つの別のクレイナノ粒子に、前記の荷電したポリマー(A’)によって連結されている。あるいは、この荷電したクレイ連結ゲル(A)は、クレイナノ粒子(C)によって架橋された荷電したポリマー(A’)と考えることもできる。
【0075】
好適には、荷電したポリマー(A’)は、ポリアクリレート又はポリアクリルスルホネートである。好ましい荷電したポリマー(A’)はポリアクリレートである。上述したように、「ポリアクリレート」の用語は、少なくともそのポリマーの領域中に、ペンダント(ぶら下がり)カルボン酸及び/又はペンダント(ぶら下がり)カルボキシレート基をもつ炭化水素骨格を有するポリマーをいうために用いられる。それらの基が「ペンダント(ぶら下がり)」であるということにおいて、このカルボン酸/カルボキシレート基はポリマー骨格の一部ではない。ポリアクリレートの対イオンは、任意の好適な正電荷イオン、例えば、Na、K、又はNHなどであることができる。その他のモノマーもポリアクリレート中に存在してもよいが、液体吸収特性のために、ポリアクリレートの主要部(例えば50〜100質量%)がアクリレート/アクリル酸モノマーを含んでいることが好ましい。
【0076】
クレイ連結ゲル中のクレイナノ粒子(C)は、モンモリロナイト、サポナイト、ノントロナイト、ラポナイト、バイデライト、鉄-サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サウコナイト、スティブンサイト、マグダイト、バーミキュライト、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト、ナクライトが含まれる)、マイカ鉱物(イライトが含まれる)、クロライト鉱物、パリゴルスカイト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択してよい。好ましいクレイナノ粒子は、モンモリロナイト、ラポナイト、及びヘクトライトである。
【0077】
このクレイナノ粒子は、典型的には、5〜500nm、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜50nmの平均粒径を有する。
【0078】
クレイ連結ゲルが荷電していること、すなわち、それらが荷電したポリマー(A’)を含む点で、中性ポリマー(B’)を含む中性のクレイ連結ゲル(B)と比較してそれらはより良い吸収特性(より大きな吸収速度とより大きな吸収能)を示す。このことは実施例の部及び、特に図4で証明されている。
【0079】
荷電したクレイ連結ゲル(A)を製造するための方法も提供する。荷電したクレイ連結ゲル(A)は、荷電した官能基(A1)を含む荷電したポリマー(A’)によって架橋されたクレイナノ粒子を含む。
【0080】
この方法は、中性官能基(B1)を含む中性ポリマー(B’)によって架橋されている部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子を含む中性のクレイ連結ゲル(B)を加水分解にかけて、その中性ポリマー(B’)中の中性官能基(B1)の少なくとも一部を荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程を含む。その中性ポリマー(B’)中の中性官能基(B1)のうち少なくとも10モル%、例えば少なくとも30モル%、あるいは少なくとも40モル%が、荷電した官能基(A1)へと加水分解される。
【0081】
クレイナノ粒子は剥離されているべきであり、なぜなら、このことが安定な分散物及びより均一なゲルをもたらすからである。このことは、弾性且つ強いクレイ連結ゲルを作りだす上で重要な因子であることが示されている。
【0082】
中性クレイ連結ゲル(B)(それから荷電したクレイ連結ゲルを作り出す)は、例えば、欧州特許出願公開EP1160286号でポリアクリルアミドについて記載された方法、すなわち、適切なpH及び温度においてクレイナノ粒子の水性分散物を準備する工程、中性ポリマー(B’)のモノマー及び開始剤システムを添加する工程、そのモノマーを重合させ且つ中性のクレイ連結ゲル(B)を精製/単離する工程、によって製造できる。中性ポリマー(B’)のモノマーは、所望の中性ポリマー(B’)にしたがって選択されるが、アクリルアミド及びアクリル酸エステルモノマーが最も適している。
【0083】
中性のクレイ連結ゲル(B)を製造するために用いられる重合反応には、重合開始剤及び/又は重合触媒が含まれる。当分野で公知の開始剤の例は、パーオキシド(例えば、ベンゾイルパーオキシド)及びアゾ化合物である。触媒の例には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)及びβ-ジメチルアミノプロピオニトリルが含まれる。UV光の照射も重合反応を開始させる。好ましい重合開始剤及び触媒は、発泡体物質を作る場合にはレドックス開始剤であり、これは一電子移動ステップが起こってフリーラジカル中間体を形成することを通じて重合を開始し、例えば、過硫酸カリウム及びTEMEDである。前記のレドックス開始剤を用いる場合、第一の開始剤は本発明の発泡体を作るための方法において添加され、第二の開始剤/触媒は、工程fとgの間、すなわち、中性モノマー(B1)を重合させて中性発泡体を形成させるすぐ前に添加される。
【0084】
重合反応のために好ましい溶媒は水である。しかし、その他の溶媒、例えば、アルコール、エーテル、又はアミド溶媒(例えば、DMF)を単独又は水と組み合わせて用いることもできる。重合反応は−40℃〜100℃の温度で行うことができ、反応温度を用いて反応速度を制御することができる(重合反応は一般には発熱性である)。
【0085】
クレイナノ粒子(C)に対する中性ポリマー(B’)の好ましい質量比は、0.01〜10、好ましくは0.03〜4、最も好ましくは0.1〜4の範囲内である。
【0086】
中性クレイ連結ゲル(B)中での有機バルク架橋剤の使用は低減でき、なぜなら良好な架橋がクレイナノ粒子によって得られるからである。しかし、有機バルク架橋剤を重合反応に含めて、中性クレイ連結ゲル(B)において所望のゲル強度及び液体吸収特性を得てもよい。有機バルク架橋剤は1つより多い(例えば2つの)重合性官能基を有する化合物であり、この重合性官能基は重合反応において成長する中性ポリマー中に組み込まれることができる。それらはポリマー鎖を橋かけするように作用し、得られるゲルに強度を付与する。公知の架橋剤は、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、N,N’-ビスアクリルイルシスタミン、N,N’-ジアリル酒石酸ジアミド(diallyltartardiamide)、1,3-ジアクリロイルエチレン尿素、エチレンジアクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-プロピレンビスアクリルアミド、ジ(アクリルアミドメチル)エーテル、1,2-ジアクリルアミドエチレングリコール、及び1,3-ジアクリロイルエチレン尿素である。
【0087】
このゲルは有機バルク架橋剤を排除してもよいが、任意選択で表面架橋剤を含んでもよく、これはクレイが連結した発泡体、繊維、及びフィルムの表面を連結する。
【0088】
中性のクレイ連結ゲル(B)が形成されたら、中性官能基(B1)を荷電した官能基(A1)へと変換し、これによって荷電したクレイ連結ゲル(A)をもたらす。
【0089】
図1は、様々な中性官能基(B1)から荷電した(カルボン酸)官能基(A1)を作るための可能な合成経路を図示している。図1は、カルボン酸基が、ニトリル(-CN)、酸ハロゲン化物(-COX、式中、X=I、Br、Cl、又はFである)、エステル(-COR、式中、Rは炭化水素である)、ラクトン(環状エステル)、酸無水物(-CO-O-CO-)、及びアミド(-CONH)基から加水分解によって合成できることを示している。図1に示した全ての中性官能基(B1)は、加水分解によってカルボン酸官能基へと変換できる。
【0090】
図1に列挙した中性官能基(B1)を含むモノマーは公知である。中性のクレイ連結ゲル(B)は、EP1160286号明細書にしたがって、そのようなモノマーから形成される。本発明の方法にしたがって、そのような中性のクレイ連結ゲル(B)の加水分解は、荷電したクレイ連結ゲルをもたらす。
【0091】
例えば、アクリロニトリル(CAS107−13−1)はクレイナノ粒子の存在下で重合されてポリ(アクリロニトリル)クレイ連結ゲルをもたらしうる。このポリ(アクリロニトリル)ポリマーのニトリル基の加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。
【0092】
同様に、アクリロイルクロライド(CAS814−68−6)は標準の重合法を用いて、クレイナノ粒子の存在下で重合されて、ポリ(アクリロイルクロライド)クレイ連結ゲルをもたしうる。このポリマーの酸クロライドの加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。
【0093】
アクリル酸エステル(例えば、tert-ブチル-又はメチルアクリル酸エステル)は、クレイナノ粒子の存在下で重合されてポリ(アクリルエステル)クレイ連結ゲルをもたらすことができる。このポリマーのエステル基の加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。Colloid and Polymer Science, Vol. 272, no. 4 (1994)には、非クレイ連結ポリアクリル酸エステルゲルのポリアクリル酸ゲルへの加水分解が記載されている。t-ブチル及びメチルアクリル酸エステルは最も好ましく、なぜなら加水分解を比較的温和な条件下で行うことができるからである。
【0094】
ラクトンは環状エステルであり、不飽和ラクトンはクレイナノ粒子の存在下で重合されて、ペンダントラクトン基をもつポリマーを含むクレイ連結ゲルをもたらすことができる(例えば、米国特許第6,534,239号明細書を参照されたい)。このポリマーのラクトン基の加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。
【0095】
酸無水物は中性の官能基(-CO-O-CO-)を含む。不飽和基を有する酸無水物はクレイナノ粒子の存在下で重合されて、ペンダント酸無水物基をもつポリマーとのクレイ連結ゲルをもたらすことができる(例えば、イタコン酸無水物の重合。Polymer, 2005, 50, nr.2又はPolymer Bulletin 32, 169-172, 1994を参照されたい)。加えて、ペンダント酸無水物基をもつポリマーは、無水マレイン酸の照射によって作ることができる(Macromolecules, vol. 31, no.13, 1998を参照されたい)。このポリマーの酸無水物基の加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。
【0096】
アミド基(-CONH)を有するポリマーは公知であり、それらのクレイ連結ゲルも同様である(例えば、EP1160286号明細書のポリアクリルアミドとポリアクリルアミドクレイ連結ゲル)。そのようなゲル中のアミド基の加水分解は、ポリアクリレートクレイ連結ゲルを与える。上の中性官能基(B1)のうち、アミド基が好ましい。
【0097】
上述したとおり、「ポリアクリルアミド」の用語は、少なくともその領域中に、ペンダントアミド基をもつ炭化水素骨格を有するポリマーをいうために用いられる。それらが「ペンダント」であるので、このアミド基はポリマー骨格の一部ではない。その骨格中のアミド結合の存在は望ましくなく、なぜなら加水分解条件がポリマー鎖自身の開裂を引き起こしうるからである。好ましくは、ポリアクリルアミドは、少なくとも1つの重合可能なアルケン基と少なくとも1つのアミド基を有するモノマーを含むか又はこれのみからなる。ポリアクリルアミドに含まれるモノマーは、ただ一つの重合可能なアルケン基を有し、ポリアクリルアミド鎖の間での過剰な架橋を避けることが適している。より好ましくは、ポリアクリルアミドはアクリルアミドモノマー(CH=CHCONH)から誘導される。その他のモノマーを用いることもでき、例えば、二級(CH=CHCONHR)又は三級(CH=CHCONR’R’’)アクリルアミド類、又はその他のアルケン類であるが、液体吸収特性のためには、ポリアクリルアミドの主要部(例えば、50〜100質量%)がアクリルアミドモノマーから誘導されることが好ましい。
【0098】
図2は、ポリスルホン酸への可能な合成経路を図示している。ポリスルホン酸は、少なくともその領域中に、ペンダントのスルホン酸又はスルホネート基をもつ炭化水素骨格を有するポリマーをいう。それらが「ペンダント」であるので、スルホネート/スルホン酸基はポリマー骨格の一部ではない。このポリスルホン酸は、少なくとも1つの重合可能なアルケン(オレフィン)基と少なくとも1つのスルホネートもしくはスルホン酸基を有するモノマーを含むか又はそれのみからなることが好ましい。ポリスルホン酸に含まれるモノマーは、ただ一つの重合性アルケン基を有し、ポリスルホン酸鎖の間の過剰な架橋を避けることが適している。ポリスルホン酸は、ペンダントのスルホネート(-SO)及び/又はスルホン酸(-SOH)基を含むか又はこれのみからなることがさらに好ましい。その他の官能基、例えば、その他のアルケン、が存在してもよいが、液体吸収特性のためには、ポリスルホン酸の主要部(例えば、50〜100質量%)がペンダントのスルホネート又はスルホン酸基を含むことが好ましい。
【0099】
ポリスルホン酸を含む荷電したクレイ連結ゲルは、最初に、クレイナノ粒子の分散物中でエチレンスルホネートアミドを重合して、対応する中性のクレイ連結ゲルを得ることによって合成することができる。このゲルを次に加水分解して、ポリスルホン酸クレイ連結ゲルをもたらすことができる。
【0100】
同様に、エチレンスルホネートエステル、エチレンスルホン酸ハライド、及びスルホンアミド連結鎖を含むヘテロ環式モノマーを、クレイナノ粒子の分散物の存在下で重合させて、中性のクレイ連結ゲルをもたらすことができる。これらのゲルを加水分解して、ポリスルホン酸クレイ連結ゲルをもたらすことができる。
【0101】
このゲルは一定の範囲の中性モノマーに関連して説明される。これらのモノマー類の互いの組み合わせ、及びその他のモノマーとの組み合わせは、本発明の中性ポリマーを形成する場合に可能である。
【0102】
好適には、荷電したクレイ連結ゲル(A)を製造するために本明細書に記載した方法では、荷電したクレイ連結ゲル(A)はポリアクリレートクレイ連結ゲルである。荷電したポリマー(A’)はポリアクリレートである。荷電した官能基(A1)はカルボン酸基であり、中性官能基(B1)は、アミド、ニトリル、酸無水物、ラクトン、酸ハロゲン化物、及びエステルを含む群から選択され、好ましくはアミドである。
【0103】
ポリアクリルアミドゲルのポリアクリル酸ゲルへの加水分解は、水性の酸溶液を用いて行うことができる(G. Smets, A. M. Hesbain, J. Polymer Science, Vol. 11, p.217-226 (1959)を参照されたい)。
【0104】
あるいは、中性のクレイ連結ゲル(B)の荷電したクレイ連結ゲル(A)への加水分解は、その中性のクレイ連結ゲル(B)を高いpH、すなわち、pH8より上に曝露させることによって行なわれる。これは、周期律表の第I及びII族の金属の塩を含む水性塩基性溶液を用いることによって行なってもよい。好適な塩基性溶液の例は、酢酸ナトリウムである。塩基性水溶液は好ましくは8より大きなpHを有する。
【0105】
加水分解は水による官能基の開裂であるから、水は加水分解反応の必須成分である。しかし、それが唯一の溶媒である必要はなく、上首尾の加水分解反応を、共溶媒、例えば、反応混合物中での有機成分の溶解性を向上させるアルコール、DMF、及びエーテル類などの存在下で行うことができる。
【0106】
加水分解反応は、45〜95℃、好ましくは60〜80℃の温度で好適に行うことができる。反応温度は、反応速度を制御するために使うことができる。
【0107】
本明細書に記載した方法を通じて、クレイナノ粒子の分散物に荷電した成分を添加することによる困難さを避けることができ、なぜなら架橋は中性ポリマー(B’)を用いて行われるからである。クレイナノ粒子が中性ポリマー(B)によって架橋されたら、クレイナノ粒子は加水分解条件下で安定である(例えば、凝集しない)。
【0108】
Journal of Polymer Science; Part A: Polymer Chemistry, Vol. 44 (2006), 6640-6645におけるZhangらの論文には、40℃におけるナノ複合体(すなわち、クレイ連結した)ポリアクリルアミドヒドロゲルの後処理が、いかにヒドロゲルに高い機械強度と高い膨潤比をもたらすかを記載している。それは、ゲルの化学成分(すなわち、ポリアクリルアミド)は40℃での20日の後処理の下で変化しないと結論している。
【0109】
荷電したクレイ連結ゲル(A)、特にポリアクリレートクレイ連結ゲルは、本明細書に記載した方法で得ることができる。
【0110】
本発明はさらに、吸収性物品における、本発明の発泡体、フィルム、又は繊維の使用、並びに本発明による発泡体、フィルム、又は繊維を含む吸収性物品に関する。吸収性物品には、おむつ、失禁ガード、衛生ナプキン、パンティーライナー、ベッドプロテクターなどが含まれる。それらは使い捨て可能なことが好ましく、すなわち一回の使用(使い捨て)を意図している。典型的には、吸収性物品は、液体浸透性の表面シート、液体非浸透性の背面シート、及び吸収性コアを含む。表面シート(トップシート)及び背面シート(バックシート)は通常その物品の平面で類似した広がりを有する一方、吸収性コアはいくらか小さな広がりを有している。表面シートと背面シートは、吸収性コアの外周の周りで互いに結合され、それによってコアは表面シートと背面シートによって形成された包み(エンベロープ)の中に閉じ込められる。吸収性コアはその物品の股部に少なくも配置され、前部及び後部の中にいくらか広がっていてもよい。表面シートと背面シートは、当技術分野で一般的な任意の手段、例えば、超音波溶着、熱溶着、又は接着によって互いに結合されうる。
【0111】
この物品の吸収性コアは、液体及びその他の体からの浸出物を受容し含むように作用する。そのようなものとして、吸収性コアは、本発明の発泡体、フィルム、又は繊維を含むことができ、かつ追加の吸収性物質を含んでいてもよい。普通に存在する吸収性物質の例は、セルロース綿状パルプ(フラッフパルプ)、ティッシュ層、高吸収性ポリマー(いわゆる超吸収材)、吸収性発泡体物質、吸収性不織布材料などである。吸収体中でセルロース綿状パルプを超吸収材と組み合わせることは一般的である。液体受容能、液体の分配能及び貯蔵能に関して様々な特性をもつ様々な物質の層を含む吸収性コアを有することも一般的である。薄い吸収性コア(これは例えば乳児用おむつ及び失禁ガードにおいて一般的である)は、しばしばセルロース綿状パルプと超吸収材の圧縮混合又は層状にした構造を含む。吸収性コアの大きさ及び吸収能は、様々な用途、例えば、乳児又は尿失禁の成人に対して適合させるように変えることができる。
【0112】
吸収性コアは、排泄物の取り扱いを改善させるために設計されている1つ以上の層を含んでいてもよい。そのような層は、短時間に大量の液体を受容し、且つそれを吸収性コアの方へむらなく分配するために設計される。それらには、いわゆる移送層(トランスファー層)、分配層(ディストリビューション層)、サージ(surge)層、又は捕捉層を含むことができ、これらの層は吸収性コアに含まれるものとしてここでは理解される。本発明の発泡体、フィルム、又は繊維は、1つ以上のそのような層に、また全ての層にさえ存在することができる。吸収性コアは、本発明の発泡体、フィルム、又は繊維のみからなっていてもよく、すなわち、セルロースを含まない吸収性コアが提供される。
【0113】
荷電したクレイ連結ゲル(A)は、制御された方法で、発泡体、フィルム、又は繊維(特に発泡体)の形成を可能にし、これはまた制御された方法でゲルの膨潤にも影響を及ぼす。それはその他の材料、特にその他の吸収性材料と組み合わせてもよい。特に、それは繊維材料、例えば、セルロースファイバーと組み合わせてもよい。それは繊維と混合しても、及び/又は繊維層の間の層として適用してもよい。それは単一の超吸収性物質として用いても、あるいはその他の超吸収性物質と組み合わせて用いることもできる。発泡体、フィルム、又は繊維は、吸収性コアの局部的な領域、例えば、取込領域、液体分配領域、及び/又は液体保持領域に適用してもよい。
【0114】
発泡体、フィルム、又は繊維は、その発泡体、フィルム、又は繊維の弾性を利用して、それによって弾性吸収性物品を提供するために、吸収性物品の1つ以上の部材に固定してもよい。その部材は、表面シート、背面シート、トランスファー層、分配層、サージ層、又は捕捉層、あるいは吸収性コアのその他の部材であってよい。
【0115】
吸収性コア中の荷電したクレイ連結ゲル(A)の濃度は、従来の超吸収性物質のものと同じ、例えば、吸収性コアの全質量の2〜100%(両端を含む)、10〜70%(両端を含む)、たとえば、20〜60%(両端を含む)、又は30〜50%(両端を含む)(質量/質量)であってよい。当業者は、吸収性物品中の荷電したクレイ結合ゲルの濃度をどのように、製造しようとする吸収性物品の吸収特性及びタイプに応じて調節されうるかを理解するであろうし、たとえば、多い量の超吸収性物質が、薄い吸収性物品を達成するため又は材料を節約するために用いられる一方、少ない量がいくつかの女性用衛生物品に用いられてよい。
【0116】
本発明はさらに、弾性吸収性物品における本発明の発泡体、フィルム、又は繊維の使用に関する。弾性吸収性物品に用いる場合は、前記の発泡体、フィルム、又は繊維は、発泡体、フィルム、又は繊維の弾性を利用し且つ弾性吸収性物品を達成するために、特定の部位に固定される。
【0117】
本発明の繊維、フィルム、及び発泡体を製造する詳細な方法は、以下の実施例で提供する。
【0118】
本発明は上述した態様及び図面によって限定されるものとは考えられるべきではなく、むしろ、保護の範囲は添付した特許請求の範囲によって定められるべきである。上で様々な態様に対して説明した特徴及び要素の組み合わせも、本発明の範囲に入るべきである。
【実施例】
【0119】
[実施例1]クレイ連結ゲル
〔材料〕
アクリルアミド、ラポナイトXLS、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、過硫酸カリウム(KPS)、及び酢酸ナトリウム・三水和物は、入手したまま用いた。脱イオン水も、試験において用いた。
【0120】
〔方法〕
ラポナイトXLS(13.5g)をエーレンマイヤーフラスコ中で、約30分間磁気式撹拌を用いて、脱イオン水(150g)中で剥離させた。アクリルアミド(15g)を不活性雰囲気下、室温で、その透明な剥離された分散液中に溶かした。TEMED(120μl)と最後にKPSの水溶液(7.5ml、2w/w(質量/質量)%)をその分散液に添加し、次にそれをガラス管に移し、30℃で24時間、重合させた。
【0121】
2つのゲルを缶に移し、酢酸ナトリウムの水溶液(1w/w%)で覆い、次にその缶に蓋をし、それぞれ約24時間及び96時間、80℃でオーブン中においた。三番目のゲルを室温で16時間貯蔵しておいた。全てのゲルを大過剰の脱イオン水中で少なくとも3日間洗浄し、この間に水を3回交換した。このゲルを40℃でオーブン中にて乾燥させ、次にそれらを粉にした。
【0122】
製造したゲルは、FTIRを用いてそれらの化学組成について、且つエダナ(Edana)試験法440.1−99(吸収力I)を用いて膨潤能力に関して特性評価を行った。FTIR分析は0.01gの試料と0.20gのKBrからなるKBr錠剤の透過率分析として行い、各ゲルのIRスペクトルを合わせたものを図3に示している。
【0123】
[結果]
〔化学組成〕
ポリアクリルアミド中のアミド基は、カルボキシレートアニオン基に部分的に加水分解されている。これは、FTIRスペクトルのカルボニル領域に見ることができる。
【0124】
実線(クレイ14)は参照(加水分解を受けていないポリアクリルアミドクレイ連結ゲル)である。破線のグラフ(クレイ13)は、24時間、酢酸ナトリウムと加熱を受けたポリアクリルアミドクレイ連結ゲルである。点線のグラフ(Hvecka)は、96時間、酢酸ナトリウムと加熱を受けたポリアクリルアミドクレイ連結ゲルである。
【0125】
参照スペクトル中、2つのピークがカルボニル領域にある(それぞれ、1666cm−1及び1603cm−1)。1553cm−1のカルボニル領域の第三のピークは、加水分解されたゲルについて見られる。それは24時間加水分解された試料については肩(ショルダー)として最初に見られ、96時間加水分解された試料に対しては明確なピークとして見られる。1553cm−1のこのピークの成長は、カルボキシレートアニオン基の増加に関連している。
【0126】
化学組成の変化には、図4によれば膨潤能力の増大が伴い、図4は、未処理のポリアクリルアミドクレイ連結ゲル、上述したように酢酸ナトリウムで24時間処理したポリアクリルアミドクレイ連結ゲル、及び上述したように酢酸ナトリウムで96時間処理したポリアクリルアミドクレイ連結ゲルの吸収能力(吸収容量)(Absorption Capacity(g/g))を示している。値は、0.9%w/wのNaCl溶液と蒸留水(HO)の両方に対する吸収容量について示している。アミド基がフリーのカルボン酸/カルボキシレート基に加水分解するに従い、酢酸ナトリウム溶液で処理したポリアクリルアミドクレイ連結ゲルの吸収容量が大幅に増大していることが分かる。
【0127】
[実施例2]クレイ連結ポリアクリルアミドゲルに基づく凍結乾燥させた発泡体
(調製)
〔処方〕
102.6gの超純水(Elga Maxima HPLCで作ったもの)
7.5gのラポナイトXLS(Rockwood Clay Additives社から供給を受けたもの)
10.0gのグリセロール(98%、VWR International AB社からのもの)
7.5gのアクリルアミド(>99%、Merck社から)
7.5mlの過硫酸カリウム溶液(超純水中の2%(w/w)の過硫酸カリウムからなる。過硫酸カリウムはMerck社から)
140μlのTEMED(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)(>99%、Fluka社から)
1.2gのDermocoll EHM100(EHEC)(Akzo Nobel社から)
【0128】
Dermocollを粘度調節剤として用い、これは85℃の超純水に溶ける。Dermocollを30mlの熱い(85℃)の超純水に分散させ、磁気式攪拌機を使用して15分間撹拌する。10mlの冷たい超純水を添加し、さらに10分間撹拌する。
【0129】
ラポナイト粉末は、250mlのビーカーと磁気式攪拌機を使用して、102.6gの超純水中に、撹拌下で30分間、注意深く剥離させた。ビーカーを、氷水浴を用いて冷却した。アクリルアミドを添加し、アクリルアミドが溶けたとき、グリセロールを添加し、次にDermocollの溶液を添加し、混合物を15分間撹拌した。最後に、過硫酸カリウム溶液を添加した。得られた混合物を、蓋をもつ500mlのビーカーとガスの入口及び出口からなる反応容器に移した。バルーン撹拌機を、混合物を泡立てるために使用した。反応容器に窒素フローをして不活性雰囲気とし、次に上記混合物を添加した。
【0130】
撹拌を開始し(1800〜1900rpm)、混合物を通して窒素を15分間バブリングした。次に窒素を止め、撹拌を400rpmまで遅くし、TEMEDを添加した。得られた混合物をさらに30秒撹拌し、次に得られた泡状物を平らな容器に移し、オーブン中で50℃にて24時間固化させ、次に−80℃の冷凍庫に24時間移した。凍結した発泡体をHeto Lab Equipment社のマニュアル操作のHetosicc凍結乾燥器タイプFD3(ID 872154)に48時間入れた。
【0131】
得られた発泡体(フォーム)を、E−SEMを用いて解析した。これを図5に示す。
【0132】
[実施例3]クレイ連結ポリアクリルアミドゲルに基づく弾性発泡体
〔処方〕
102.6gの超純水(Elga Maxima HPLCで作ったもの)
それぞれ3g、12g、又は15gのラポナイトXLS(Rockwood Clay Additives社から供給を受けたもの)。試料はそれぞれ2、8、及び10%(w/w)ラポナイトと記す。
20.0gのグリセロール(98%、VWR International AB社からのもの)
15.0gのアクリルアミド(>99%、Merck社から)
7.5mlの過硫酸カリウム溶液(超純水中の2%(w/w)の過硫酸カリウムからなる。過硫酸カリウムはMerck社から)
140μlのTEMED(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)(>99%、Fluka社から)
1.2gのDermocoll EHM100(EHEC)(Akzo Nobel社から)
【0133】
Dermocollを粘度調節剤として用い、これは85℃の超純水に溶ける。Dermocollを30mlの熱い(85℃)の超純水に分散させ、磁気式攪拌機を使用して15分間撹拌する。10mlの冷たい超純水を添加し、さらに10分間撹拌する。
【0134】
ラポナイト粉末は、250mlのビーカーと磁気式攪拌機を使用して、102.6gの超純水中に、撹拌下で30分間、注意深く剥離させた。ビーカーを、氷水浴を用いて冷却した。アクリルアミドを添加し、アクリルアミドが溶けたとき、グリセロールを添加した
次に、Dermocollに基づく溶液を添加し、混合物を15分間撹拌した。最後に、過硫酸カリウム溶液を添加した。得られた混合物を、蓋をもつ500mlのビーカーとガスの入口及び出口からなる反応容器に移した。バルーン撹拌機を、混合物を泡立てるために使用した。反応容器に窒素フローをして不活性雰囲気とし、次に上記混合物を添加した。
【0135】
撹拌を開始し(1800〜1900rpm)、混合物を通して窒素を15分間バブリングした。次に窒素を止め、撹拌を400rpmまで遅くし、TEMEDを添加した。得られた混合物をさらに30秒撹拌し、次に得られた泡状物を平らな容器に移し、50℃でオーブン中に48時間入れた。
【0136】
[機械的解析]
乾燥した試料を23℃及び50%RHで3日間貯蔵し、次に機械的解析を行った。
【0137】
機械的解析は、引張試験機(Lloyd LRX)を使用して行った。測定は、500Nのロードセルを使用して100mm/分の一定のクロスヘッド速度と0.02Nの予荷重(プレロード)にて行った。
【0138】
発泡体を80mmの長さの切片に切断した。幅は15mm±1mmであり、厚さは0.2〜0.5mmの範囲であった。スライディングキャリパーを使用して非圧縮状態の厚さを測定した。各試料を個々に解析した。
【0139】
50mmの距離(これはクランプ間の基準長さに対応する)を、試料上に印をつけた。試料がクランプから滑り落ちないことを確実にするために、テープを試料上のその印の上に付けた。試料を次にクランプに取り付けた。
【0140】
【表1】

【0141】
表1からわかるように、外部可塑剤を用いることによって、乾燥状態で弾性の発泡体材料を作ることができる。
【0142】
[実施例4]クレイ連結ポリアクリルアミドゲルに基づく弾性繊維
(クレイ連結ポリアクリルアミドゲルの調製)
112.4gの超純水(Elga Maxima HPLCで作ったもの)
15gのラポナイトXLS(Rockwood Clay Additives社から供給を受けたもの)
30.0gのグリセロール(98%、VWR International AB社からのもの)
15.0gのアクリルアミド(>99%、Merck社から)
7.5mlの過硫酸カリウム溶液(超純水中の2%(w/w)の過硫酸カリウムからなる。過硫酸カリウムはMerck社から)
120μlのTEMED(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)(>99%、Fluka社から)
【0143】
ラポナイトは112.4gの超純水中に、撹拌下で1時間、注意深く剥離させた。グリセロールを添加し、次にアクリルアミドを添加した。アクリルアミドが溶けたとき、溶液を超音波浴(Branson 5200)に1時間入れた。次に、氷水浴を用いて溶液を10℃まで冷却し、過硫酸カリウム溶液とTEMEDを添加した。この溶液を、15mmの長さに切断した注射針を備えた10mlのシリンジ中に入れ、このシリンジを30℃の水浴に24時間入れて重合を行った。
【0144】
(繊維の作製)
繊維の作製を始める前に、少量のゲルをシリンジから押出して捨てた。
【0145】
少量のゲルを押出し、繊維の長さが垂直且つ力をかけない状態で9cmとなるまで金属の丸棒の周りに巻き付けた。得られたゲル繊維を23.5cmに引張り、エタノール(99.5%)に1時間30分浸漬した。この繊維を室温で少なくとも11時間乾燥させ、次に機械的試験を行った。
【0146】
(機械的試験)
破断伸びを、引張試験機(Lloyd LRX)を使用して測定した。測定は、10Nのロードセルを使用して500mm/分の一定のクロスヘッド速度と0.02Nの予荷重(プレロード)にて行った。装置を図6に示し、矢印はこの繊維の位置を示す。
【0147】
繊維を80mmの長さの切片に切断した。50mmの距離(これはクランプ間の基準長さに対応する)を、試料上に印をつけた。ガラス繊維強化テープをその糸の正確に印のところに付け、そのテープを固定する前にその糸の留められていない端を引っ張った。糸はクランプの中で又はテープの中で滑らせてはならない。繊維を伸ばすことを避けるために、繊維を非常に注意深くクランプに取り付けた。
【0148】
繊維を破断するまで引っ張った。荷重と破断伸びを表2に記録する。
【0149】
【表2】

【0150】
可塑剤を用いることによって、乾燥状態で非常に弾性がある繊維を作ることができたことがわかる。
【0151】
繊維を脱イオン水中で30分間湿らせた。次に繊維を手で引っ張った。繊維は1cmの初期長さをもっており、それは破断することなく8cmの長さまで容易に伸びた。したがって、その弾性は初期長さの少なくとも700%であることを示していた。したがって、クレイ連結繊維は湿潤状態で弾性を保持する。この試験は表2に示した試験と比較して手で行い、そのため完全な破断伸度は記録することができなかったがいくらか低い値である。
【0152】
[実施例5]クレイ連結ポリアクリルアミドに基づく弾性フィルム
(クレイ連結ポリアクリルアミドゲルの調製)
112.4gの超純水(Elga Maxima HPLCで作ったもの)
15gのラポナイトXLS(Rockwood Clay Additives社から供給を受けたもの)
20.0gのグリセロール(98%、VWR International AB社からのもの)
15.0gのアクリルアミド(>99%、Merck社から)
7.5mlの過硫酸カリウム溶液(超純水中の2%(w/w)の過硫酸カリウムからなる。過硫酸カリウムはMerck社から)
120μlのTEMED(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)(>99%、Fluka社から)
【0153】
ラポナイトは112.4gの超純水中に、撹拌下で1時間、注意深く剥離させた。グリセロールを添加し、次にアクリルアミドを添加した。アクリルアミドが溶けたとき、溶液を超音波浴(Branson 5200)に1時間入れた。次に、氷水浴を用いて溶液を10℃まで冷却し、過硫酸カリウム溶液とTEMEDを添加した。
【0154】
(フィルムの作製)
ゲルをシリコーン被覆紙上に押し広げた。別のシリコーン被覆紙をそのゲルの上に置き、ゲルの長手方向にのし棒を使って薄い試料を得た。ゲルの付いた紙を2枚のガラス板の間に置き、その板を互いに対して押しつけ、四隅をクランプで固定した。48時間後、ガラス板を取り除き、試料を30℃の加熱オーブン中で3時間乾燥させた。このフィルムを試験までシリコーン被覆紙の間に貯蔵した。
【0155】
(機械的試験)
破断伸びを、引張試験機(Lloyd LRX)を使用して測定した。測定は、10Nのロードセルを使用して500mm/分の一定のクロスヘッド速度と0.02Nの予荷重(プレロード)にて行った。
【0156】
上記フィルムを80mmの長さ及び4mmの幅の片に切断した。50mmの距離(これはクランプ間の基準長さに対応する)を、フィルム上に印をつけた。ガラス繊維強化テープ(Tessla 25mm×50m、Westpack AB社 Sweden)をちょうどその印のところに付け、そのテープを固定する前にそのフィルムの留められていない端を引っ張った。フィルムはクランプの中で又はテープの中で滑らせてはならない。次にこのフィルムを、フィルムを伸ばさないように非常に注意深くクランプに取り付けた。フィルムの厚さは68μm±3μmだった。フィルムの厚さは厚さ測定計(Erichsen model 497、測定端部直径=7mm、測定圧0.4バール)を使用して測定した。
【0157】
フィルムを破断するまで引っ張った。荷重と破断伸びを表3に記録している。
【0158】
【表3】

【0159】
表に見られるように、クレイ結合ゲルに基づく大きな弾性のフィルムを作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.可塑剤と
b.荷電したクレイ連結ゲル(A)とを含む、繊維、フィルム、又は発泡体であって、
前記荷電したクレイ連結ゲル(A)が、荷電したポリマー(A’)によって架橋されたクレイナノ粒子(C)を含み、
任意の特定のクレイナノ粒子が、前記荷電したポリマー(A’)によって少なくとも1つの別のクレイナノ粒子と結合されている、繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項2】
前記荷電したポリマー(A’)が、ポリアクリレート又はポリアクリルスルホネートである、請求項1に記載の繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項3】
前記ポリアクリレートが、ペンダントのカルボキシレート-(CO)及び/又はペンダントのカルボン酸基-(COH)を含み、前記ポリアクリルスルホネートが、ペンダントのスルホネート-(SO)及び/又はペンダントのスルホン酸基-(SOH)を含む、請求項2に記載の繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項4】
前記クレイナノ粒子(C)が、モンモリロナイト、サポナイト、ノントロナイト、ラポナイト、バイデライト、鉄-サポナイト、ヘクトライト、フルオロヘクトライト、サウコナイト、スティブンサイト、マグダイト、バーミキュライト、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト、ナクライトが含まれる)、マイカ鉱物(イライトが含まれる)、クロライト鉱物、パリゴルスカイト、及びこれらの組み合わせ、好ましくは、モンモリロナイト、ラポナイト、及びヘクトライトからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項5】
前記クレイナノ粒子(C)が5〜500nm、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜50nmの平均粒径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項6】
前記荷電したポリマー(A’)が、荷電したモノマーの量を基準にして、1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満の有機バルク架橋剤しか含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維、フィルム、又は発泡体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項8】
1つの領域から別の領域へと気孔サイズの傾斜を有する、請求項7に記載の発泡体。
【請求項9】
1つの領域から別の領域へと増加するナノ粒子濃度を有する、請求項7に記載の発泡体。
【請求項10】
少なくとも1種の粘度調節剤をさらに含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の発泡体。
【請求項11】
以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.任意選択により、粘度調節剤及び/又は界面活性剤を添加してもよい工程;
e.重合開始剤を添加する工程;
f.クレイナノ粒子(C)、可塑剤、及び中性モノマー(B1)の混合物を発泡させる工程;
g.前記中性モノマー(B1)を重合させて、中性のクレイ連結発泡体を形成させる工程;
h.前記中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.、d.及びe.は任意の順に行うことができる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の発泡体材料の製造方法。
【請求項12】
前記発泡工程を、発泡剤を用いて行う、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項14】
以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.前記モノマーを重合させて、中性のクレイ連結ゲル(B)を形成させる工程;
f.前記の荷電したクレイ連結ゲル(A)を繊維に紡糸する工程;
g.中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解し、それによって荷電したクレイ連結ゲル(A)を形成させる工程;
を含み、工程a.、b.、c.及びd.、並びに工程f.及びg.は、任意の順に行うことができる、請求項1〜6及び13のいずれか一項に記載の繊維の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
以下の工程:
a.部分的又は完全に剥離されたクレイナノ粒子(C)の水中分散物を準備する工程;
b.中性官能基(B1)を有する1種以上のモノマーを添加する工程;
c.可塑剤を添加する工程;
d.重合開始剤を添加する工程;
e.前記中性モノマー(B1)を重合させて、中性のクレイ連結ゲルを形成させる工程;
f.前記の中性のクレイ連結ゲルをフィルムに成形する工程;
g.前記の中性官能基(B1)を、荷電した官能基(A1)へと加水分解する工程、
を含み、工程a.、b.、c.及びd.、並びに工程f.及びg.は、任意の順に行うことができる、請求項1〜6及び15のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項17】
吸収性物品における、請求項1〜9、13、及び15のいずれか一項に記載の発泡体、フィルム、又は繊維の使用。
【請求項18】
請求項1〜9、13、及び15のいずれか一項に記載の発泡体、フィルム、又は繊維を含む吸収性物品。
【請求項19】
前記発泡体、フィルム、又は繊維が、その発泡体、フィルム、又は繊維の弾性を利用するために、前記吸収性物品の1つ以上の部材に固定されている、請求項18に記載の吸収性物品。
【請求項20】
吸収性コアを含み、前記吸収性コアが請求項1〜9、12、及び14のいずれか一項に記載された発泡体、フィルム、又は繊維のみからなる、請求項17に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−504518(P2011−504518A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526850(P2010−526850)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051074
【国際公開番号】WO2009/041903
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】