説明

新形成細胞の細胞消滅死を誘導する方法

【課題】新形成細胞の細胞消滅死を誘導するための方法を提供する。
【解決手段】アポトーシスを誘導する量のメチロール含有化合物に新形成細胞を接触させる、新形成細胞の細胞消滅死を誘導する方法。この方法は、原発性癌および転移性癌の両者を治療するのに有用である。好ましい実施例は、約2gから約60gの1日の全用量で、哺乳動物にメチロール移動剤を投与する工程を含み、この投与は少なくとも2つの投薬サイクルを含み、各投薬サイクルは、約1から8日間の注入期と、約1から14日間の非投与期とを含む。別の実施例は、肝脈管を介して肝臓にメチロール移動剤溶液を直接投与することによって肝癌を治療するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、癌の治療のためのタウロリジン(taurolidine)およびタウルルタム(taurultam)等のメチロール含有化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性および抗毒素薬タウロリジン、および関連の製品であるタウルルタム等のメチロール移動剤は、特に腫瘍の治療で用いられる腫瘍壊死因子(TNF)の毒性に対する効果を改善することが示された。さらに、メチロール移動剤の作用は、通常の細胞株の成長を著しく抑制しない点において、選択的であることが示された。
【0003】
タウロリジンは、作用の部位で3つのメチロール基を移動させることによって作用し、タウルルタムは、非常に高い耐性の化合物であるタウリナミド(taurinamide)を遊離させることによってそれ自身で単一のメチロール基を移動させる、中間代謝産物である。したがって、2つの化合物は本質的に同じメカニズムで作用する。メチロール移動は、多くの高毒性の抗腫瘍薬に特有であるメチル移動と対比されることに注目されたい。タウロリジンおよびタウルルタムは低毒性であり、通常の細胞に対しての毒性がない。
【0004】
プログラムされた細胞死は、細胞の数の調整のために進化的に保存された生物学的原理である。感受性の細胞(sensitive cells)は、近隣の細胞から適切なリガンドが分泌されたときに活性化される死レセプタを含む。プログラムされた細胞死の顕著なシステムは、Fasリガンド媒介アポトーシスである。CD 95/APO−1としても知られるFasは、Fasリガンド(FasL)によるオリゴマー化時に感受性の細胞内でのアポトーシスを媒介する腫瘍壊死因子レセプタスーパーファミリーのメンバーおよび細胞表面レセプタである。
【発明の概要】
【0005】
この発明に従って、アポトーシスを誘導する量のメチロール含有化合物に新形成細胞を接触させることによって新形成細胞の細胞消滅死を誘導する、癌を治療する方法が提供される。
【0006】
ある実施例は、少なくとも2投薬サイクルでのメチロール移動剤の投与を含み、各サイクルは投与期と非投与(静止)期とを含む。投与期は、メチロール移動剤の1日の用量を約1から8日間毎日、好ましくは注入によって投与することを含み、メチロール移動剤が投与されない約1から14日間の非投与(静止)期がその後に続く。
【0007】
別の実施例では、肝臓の動脈、門脈等の肝脈管、または胃十二指腸動脈内へと取付けられたカテーテルを通しての直接投与によってメチロール移動剤含有溶液を静脈内注入することによって、肝臓癌が治療される。
【0008】
別の実施例では、神経膠腫/神経膠芽腫等の中枢神経系の腫瘍が治療される。
好ましいメチロール移動剤は、タウロリジン、タウルルタム、およびそれらの混合物である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明は、細胞毒性を誘導し、かつ併用療法においてFasリガンド媒介アポトーシスを増強する、タウロリジン等のメチロール移動剤の能力に関する。タウロリジンおよびその同種であるタウルルタムの両者は、それ自体では細胞生存度に事実上影響を与えない
薬物濃度で癌細胞内のFasリガンドのアポトーシス効果を増強する。ヒトの悪性細胞膠腫細胞株LN−229では、タウロリジンまたはタウルルタム単独によるインキュベーションの直後に細胞生存度が減じられた。この効果は、FasリガンドによるLN−229細胞の破壊性を増強した。したがって、アポトーシス性細胞死(apoptotic cell death)を誘導するための、メチロール移動剤の使用によって、癌を治療するための手段が提供される。
【0010】
2つの細胞株LN−18およびLN−229は、Fasリガンドに対する異なった感受性によるアポトーシス性細胞死の有効なモデルシステムを示す。したがって、これらの細胞株を用いて、このような化合物の、アポトーシス経路との潜在的な相互作用がテストされた。ヒトの悪性神経膠腫細胞LN−18およびLN−229の生存度は、タウルルタムおよびタウロリジンによって異なった影響を受ける。Fasリガンド誘導アポトーシスに対する感受性が非常に高いLN−18細胞は、テストされたすべての濃度(5、20、100μg/ml)においてタウルルタムによる影響を受けなかった(例6)。タウロリジンは、テストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)においてLN−18細胞の生存度をわずかにのみ減じることができた。したがって、LN−18細胞を破壊するためのしきい値は0.01%のタウロリジンである。対照的に、LN−229細胞はこれらの薬物に対してずっと高い感受性を示した。LN−18細胞とは対照的に、タウルルタムおよびタウロリジンの両者それ自体(100μg/ml)によって、LN−229細胞の生存度が大きく減じられた。タウロリジン(100μg/ml)はLN−229細胞を非常に効果的に死滅させ(70%)、タウルルタム(100μg/ml)はLN−229細胞の生存度を30%減じることができた。テストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)では、タウロリジン単独でも細胞死の誘導に関してFasリガンドとほぼ同じぐらい効果的であった。したがって、タウロリジンおよびタウルルタムはヒトの悪性細胞を破壊する能力を有する。
【0011】
方法は、アポトーシスによって新形成細胞の死滅を誘導するのに十分な用量で、活性メチロール含有化合物を含む組成物を癌に罹患している哺乳動物に投与することによって、行なわれる。「メチロール含有化合物」または「メチロール移動剤」とは、生理学的条件下でメチロール分子を含む、またはそれを生成することのできる化合物を意味する。メチロール含有化合物は、Rがアルキル基、アリール基、またはヘテロ基であるR−CH2−OH基を有することによって特徴付けられる。この発明はまた、R−CH2−OH構造を含む化合物を生成することのできる、またはそれへと変換可能な化合物の使用を含む。
【0012】
メチロール移動剤は、タウロリジンおよびタウルルタム等のメチロール含有化合物と、それらの誘導体とを含む。化合物タウロリジンおよびタウルルタムは、米国特許第5,210,083号で開示されている。他の好適なメチロール含有化合物としてはタウリナミド誘導体および尿素誘導体が挙げられる。この発明において有用なタウロリジン、タウルルタム、タウリナミド、および尿素の誘導体の例は、WO 01/39763A2に見い出され得る。この発明に従った使用で特に好ましいメチロール移動剤は、タウロリジン、タウルルタム、それらの生物学的に活性な誘導体、およびそれらの混合物である。
【0013】
代替的には、化合物は、タウリナミド誘導体または尿素誘導体である。この発明において有用なタウロリジン、タウルルタム、タウリナミド、および尿素の誘導体の例は、WO
01/39763A2に見い出され得る。
【0014】
癌細胞の細胞消滅死を誘導するのに好適な他のメチロール含有化合物としては、1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヘキサメチレンテトラミン、またはノキシチオリンが挙げられるが、それらに限定されない。タウロリジン誘導体またはタウルルタム誘導体とは、タウロリジンまたはタウルルタムの新形成活性の少なくとも10%を
それぞれ有するスルホンアミド化合物を意味する。スルホンアミド化合物はR2N−SO2R′式を有するものである。本明細書中で説明される化合物の誘導体は、たとえばタウロリジンまたはタウルルタムという参照化合物とは構造的に異なり得るが、好ましくは参照化合物の生物学的活性、たとえばアポトーシス性細胞死の誘導の少なくとも50%を保持する。好ましくは、誘導体は参照化合物の生物学的活性の少なくとも75%、85%、95%、99%、または100%を有する。いくつかの事例では、誘導体の生物学的活性が参照化合物の活性レベルを超える場合もある。誘導体はまた、参照化合物が有さない特性または活性を有する場合もある。たとえば、誘導体は、減じられた毒性、延長された臨床的半減期、または血液脳関門を越えるという改善された能力を有する場合もある。
【0015】
自己腫瘍、たとえば中枢神経系(CNS)の腫瘍の治療は、哺乳動物、たとえばヒト患者にメチロール含有化合物を投与することによって行なわれる。化合物は全身に、たとえば経口的にまたは静脈内に投与されるか、あるいは腫瘍部位、たとえば脳または脳脊髄液に直接注入される。オブラートまたはスポンジ等の、侵食性または再吸収性の固体マトリックスが脳組織に直接インプラントされ得る。
【0016】
この発明が適用可能であり得る癌としては、神経膠腫、神経芽腫、星状細胞腫、癌性髄膜炎、卵巣癌、前立腺癌、中枢神経系(CNS)癌、肺癌、胃癌、食道癌、膀胱癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌およびそれらの転移が挙げられる。この発明の方法が効果的である他の癌としては、他の癌腫、肉腫またはリンパ腫、頭部および頸部の癌、肝臓癌、乳癌、および膵臓癌が挙げられる。
【0017】
特に好ましい実施例は、神経膠腫、神経芽腫、星状細胞腫、中枢神経系(CNS)癌、および肝臓癌からなる群から選択される癌の治療と、それらの腫瘍転移の抑制とを含む。
【0018】
癌細胞内でアポトーシスを誘導するのに十分な濃度でタウロリジンおよび/またはタウルルタムを使用して、特に腫瘍の外科的除去後の転移の広がりを予防することが特に有益である。哺乳動物の被験体は典型的にはヒトである。
【0019】
この発明はまた、哺乳動物被験体の腫瘍の治療または予防のために、癌細胞内でアポトーシスを誘導するのに十分な濃度でのタウロリジンおよび/またはタウルルタムの使用を含む。
【0020】
この発明はさらに、アポトーシスの誘導によって哺乳動物被験体の腫瘍を治療または予防するための薬学的組成物を調製するための、癌細胞内でアポトーシスを誘導するのに十分な濃度でのタウロリジンおよび/またはタウルルタムの使用を含む。
【0021】
この発明に従ったメチロール移動剤の有効投薬量は、1日当り約0.1−1,000mg/kg、好ましくは1日当り150−450mg/kg、最も好ましくは1日当り300−450mg/kgの範囲内の薬学的投薬単位を含み得る。代替的には、1日当りグラム単位での投薬が行なわれてもよく、約2−60g/日から投与され得る。好ましい用量は、タウロリジンで約2.5−30g/日、タウルルタムで4−60g/日の範囲であり得るか、またはそれらの混合であり得る。最も好ましい用量は、タウロリジンで約10−20g/日、タウルルタムで20−40g/日の範囲であるか、またはそれらの混合である。
【0022】
注射または注入のための好ましい処方物は、タウロリジンまたはタウルルタム濃度が高い溶液を提供するために、1つまたはそれ以上の可溶化剤、たとえばグルコース等のポリオール含有の等張液を含み得る。このような溶液はEP 253662B1に記載されている。このような溶液中のタウロリジンまたはタウルルタム濃度は、1−60g/リット
ルの範囲内にあり得る。メチロール移動剤は一般に水に溶解しにくい。したがって、タウロリジンまたはタウルルタム含有の、たとえば10gから30gのタウロリジンおよび/またはタウルルタム含有の、比較的大量の水溶液を投与することがしばしば必要となる。この発明に従った投与に好ましい溶液は、約0.5−2%のタウロリジンおよび/またはタウルルタムを含む。比較的大量であることを考慮に入れて、これらの化合物を注入によって、便宜的には1日を通して間隔をあけて投与することが便宜的であり得る。
【0023】
好ましくは注入によって1日の全用量を投与することは、以下のように行われ得る。すなわち、24時間にわたって一貫した速度で行われ得るか、または部分用量によるより速い注入スケジュールに従って、部分用量の各々を投与する合間に投薬中断時間をいくつか設けて行われ得る。たとえば、2%のタウロリジン溶液250ml(5g用量)を2時間かけて注入した後、4時間の短い投薬中断時間を設け、これを24時間の注入期間クールにわたって繰返して1日の全用量である20gを達成する。代替的には、2%のタウロリジン溶液250mlを1時間かけて注入し、部分用量の各々を投与する間に1時間の投薬中断時間を設けて、これを1日の用量が達成されるまで繰返すこともでき、これによって、1日の全用量が24時間よりも短いクール(つまり、約半日)で提供されてその日の残りの時間は注入が行なわれないこととなる。
【0024】
ある実施例に従うと、癌に罹患している患者の静脈内に、1分当り40滴、6時間ごとに1ボトルの速度で、2%のタウロリジン溶液の4ボトル(各々は250ml)が投与される。療法サイクルは、1週間にわたって毎日注入が行なわれる投与期と、それに続く2週間の静止期とからなる。治療全体は、少なくとも2つのこのようなサイクルからなる。静脈内に投与される2%のタウロリジン溶液の有効性は、1サイクル当り25−28ボトルの2%のタウロリジン溶液250mlが点滴注入されるときに特に優れているということが認められた。
【0025】
この発明の第2の実施例に従うと、投与期は、2%のタウロリジン溶液250mlが2時間クールで投与され、その後4時間の投薬中断時間が設けられ、これが24時間繰返されて1日の全用量が達成される、1日のレジメンを含む。
【0026】
この発明の第3の実施例に従うと、投与期は、2%のタウロリジン溶液250mlが1時間かけて注入され、その後1時間の投薬中断時間が設けられ、1日の用量が達成されるまでそれが繰り返される、1日のレジメンを含む。(たとえば)全用量が20gである場合、このレジメンは、7時間スパンにわたって4ボトルの2%のタウロリジン250mlが注入される1日の用量を提供する。その日の残りの時間には注入は行なわれない。患者の肝計数が上昇した場合、注入速度を(たとえば、90分または120分間にわたって250mlを注入するものへと)延ばすこともできる。
【0027】
さらなる実施例では、鎮痙薬の付随投与および/または抗水腫(anti-oedema)療法および/または抗生物質療法および/または、流体および電解質置換が行なわれる。
【0028】
1.鎮痙薬
好ましくは、治療中の合併症を避けるために、治療前に鎮痙薬薬物療法で患者を安定させる。不所望な薬物療法の際に緊急安定化(emergency stabilization)のいずれをも予防するために、これを便宜的にアウトペーシェントベーシスで(on an out-patient basis)一部分は投与することもできる。バルプロ酸(valproinic acid)が第1に選択される薬剤であり、その用量は血中濃度検査に従って決定されて2回投与で投与される。通常、1200mgから1500mgの用量が必要とされる。バルプロ酸による治療が十分でない場合、ラモトリジン(lamotrigin)との併用治療が可能である。アレルギーの場合、またはバルプロ酸の作用に耐えることができない場合には、ラモトリジンとともに主な安定
化(stabilization)が行なわれる。フェニトインおよびカルバマゼピン(carbamazepin)は配合禁忌である。
【0029】
2.抗水腫療法
抗水腫療法も行われ得るが、これは絶対的に必要な場合にのみ行なわれ得る。なぜならば、それ以外の場合に行なうと病巣の(focal)神経学的症状が起こるかまたは強くなるおそれがあり、または大脳内の圧力が症状を引き起こすおそれがあるためである。デキサメタゾンがタウロリジン投与の前またはその後に与えられるべきである。抗水腫療法は、可能な限り低い用量で、デキサメタゾンを用いて行なわれるべきである。胃を保護するために、1x150mg/日のラニチジンとの付随療法も行われ得る。この療法によって胃に異常がでた場合には、1−2x20mg/日のアントラ(antra)を用いての代替的な治療が行なわれるべきである。
【0030】
大脳内の圧力が非常に高くなりかつデキサメタゾンの有効性が十分でない場合には、特に4x250ml/日までの投薬で、マニトールを用いての療法が可能である。
【0031】
3.抗生物質療法
感受性テストが行なわれるまで、以下に列挙される抗生物質のうちの1つを用いての計算された抗生物質治療が行なわれ得る。
*尿路感染:
主な抗生物質:コトリモキサゾール
代替の抗生物質:ドキシサイクリン(Doxycyclin)
*肺炎:
主な抗生物質:エリスロマイシン
代替の抗生物質:ドキシサイクリン
以下の抗生物質は、絶対的に必要な場合(症状が最も重く、致命的になり得る感染の場合)かつ感受性の状態がそれを必要とする場合にのみ、用いられるべきである:チノロン(Chino lone)、ペニシリン、セファロスポリン。
【0032】
4.静脈内での2%のタウロリジン療法を伴っての流体および電解質置換
250mlの量の完全に電解質の溶液(full electrolyte solution)が好ましくは、2%のタウロリジン250mlを用いた注入と同時で、かつそれと同じ注入速度で与えられ得る。電解質および血球計数は1日に2回モニタされるべきであり、中心静脈圧力は毎日1回検査されるべきである。
【0033】
高ナトリウム血症(hypernatraemia)が見られた場合には、まず、脱水症がその原因であるか否かを判断するべきである。流体が同時に置換される場合で、かつその理由として脱水症が除外された後にのみ、利尿剤が用いられるべきである。
【0034】
メチロール含有化合物は単独で投与されるか、または1つまたはそれ以上の付加的な抗腫瘍薬(antineoplastic agents)と組み合わせて投与される。ある好ましい実施例では、補助的な薬剤はアポトーシス以外のメカニズムによって腫瘍細胞を死滅させる。たとえば、代謝拮抗物質、プリンまたはピリミジンアナログ、アルキル化剤、架橋剤(たとえば、白金化合物)、挿入剤、および/または抗生物質が併用療法レジメンで投与される。補助的な薬物は、メチロール含有薬剤の前に、その後に、またはそれと同時に、与えられる。たとえば、メチロール移動剤は、5−フルオロ−ウラシル(5−FU)等のフルオロ−ピリミジンと共投与され得る。フルオロ−ピリミジンの有効的な1日の投薬量は、薬学的投薬単位当り約0.1−1,000mgの範囲内にあり得る。5−FUの有効投薬量はまた、約100−5,000mg/身体表面積1m2、好ましくは約200−1,000mg/身体表面積1m2、より好ましくは約500−600mg/身体表面積1m2の範囲内にあ
り得る。5−FUは典型的に、注射のための250mgまたは500mgアンプル剤であるか、または経口投与のための250mgカプセル剤で、提供される。
【0035】
別の実施例では、メチロール移動剤のアポトーシス効果はFasリガンドとの共投与によって増強され得る。Fasリガンドポリペプチドは、米国特許第5,858,990号に開示されている。Fasリガンドの治療有効量は一般に、約0.01−1,000mg/患者の体重1kg、好ましくは約0.1−200mg/患者の体重1kg、最も好ましくは約0.2−20mg/患者の体重1kgの範囲内にある。治療有効量は、1日に1回の投薬で、または1日に複数回、すなわち1日に2回、3回、4回、またはそれ以上の回数で、投与され得る。
【0036】
LN−18細胞では、タウルルタム(100μg/ml)によって、0.4または2.0vol.%のFasリガンドが誘導するアポトーシスが明らかに増強された(例1)。タウルルタムそれ自体はこの濃度では細胞生存度を損なわなかったため、これは注目に値することである。したがって、タウルルタムは、Fasリガンド誘導アポトーシス経路の有効性を増強することができる。同じことがタウロリジン(100μg/ml)にも当てはまるが、タウロリジン単独でもこの濃度で細胞生存度を実際には減じることができた(例1)。これらの結果によって、タウルルタムおよびタウロリジンのアポトーシス効果はFasリガンドによって増強されるという考えが支持される。濃度100μg/mlのタウルルタムまたはタウロリジンがFasリガンドと組合わせられる場合、細胞消失(cell loss)のトータルは、Fasリガンドのそれと、タウロリジンまたはタウルルタム単独のそれとの和として示される。したがって、この濃度でのタウルルタムおよびタウロリジンの細胞毒性はFas媒介アポトーシスに対して付加的なものであると考えられる。より低い濃度では、タウロリジンおよびタウルルタムのアポトーシス効果は、Fasリガンドとの共投与によって、付加的な効果を越えて大きく増強される。
【0037】
この発明はまた、哺乳動物にメチロール含有化合物を投与することによって、哺乳動物における薬物耐性腫瘍、たとえば多剤耐性(multiple drug resistant)(MDR)腫瘍を治療することを含む。治療されるべき腫瘍は癌腫または肉腫である。薬物耐性腫瘍は、充実性腫瘍、非充実性腫瘍(non-solid tumor)、およびリンパ腫からなる群より選択される。たとえば、薬物耐性腫瘍は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、膵臓癌、CNS癌、肝臓癌、肺癌、膀胱癌、リンパ腫、白血病、または肉腫である。
【0038】
別の実施例に従うと、タウロリジンおよび/またはタウルルタム含有溶液はさらに、約1−20g/l、好ましくは約5g/lの範囲内の量でタウリンを含む。
【0039】
さらなる実施例は、メチロール移動剤含有溶液を肝脈管内に取付けられたカテーテルを通して肝臓に直接投与することによって、原発性肝臓腫瘍およびその転移の両者を治療するための方法を提供する。肝機能および非虚血性状態を維持する手助けをするメチロール移動剤を溶液で投与することによって、臓器を過剰なストレスに過度にさらすことなしに冒された臓器に療法が施される。
【0040】
原発性肝臓腫瘍の治療のために、治療薬剤が最も効果的に臓器へと運ばれるように、メチロール移動剤溶液は肝動脈を通して投与され得る。代替的には、溶液は、肝動脈を通して肝臓に送られる代わりに胃十二指腸動脈を介して供給され得る。この実施例で用いられる好ましい溶液は、肝機能を維持する手助けをし、かつ大量のメチロール移動剤溶液の注入に関連した臓器へのストレスを最小にする手助けをするものである。この発明で用いられ得る溶液が例で示される。
【0041】
例1:2%のタウロリジン含有等張液
静脈内への点滴注入のためのある好ましい組成が以下で示される。
等張無菌溶液、100ml:
2.0g タウロリジン
5.0g PVP 16 PF UP蒸留水(aqua dest.) 100mlの溶液にする(ad solut. 100ml)
PH7.2−7.3
無菌フィルタリングおよび蒸気滅菌。
【0042】
例2:タウリンおよび電解質を有する2%のタウロリジン含有等張タウロリン(Taurolin)(R)溶液
静脈内への点滴注入のための別の好ましい組成が以下で示される。
等張無菌溶液、100ml:
2.0g タウロリジン
5.0g PVP 17 PF UP
0.5g タウリン
0.3g 塩化ナトリウム
無菌フィルタリングおよび蒸気滅菌。
【0043】
例3:タウリンおよび電解質を有する2%のタウロリジン含有等張タウロリン(R)リンゲル液
静脈内への点滴注入のための別の好ましい組成が以下で示される。
等張無菌溶液、100ml:
2.0g タウロリジン
5.0g PVP 17 PF UP
0.5g タウリン
0.26g 塩化ナトリウム
0.0033g 塩化カリウム
0.004g 塩化カルシウム 2H2
0.003g 炭酸水素ナトリウム
無菌フィルタリングおよび蒸気滅菌。
【0044】
例4:タウリンおよび電解質を有する2%のタウロリジン含有タウロリン(R)リンゲル−乳酸塩
静脈内への点滴注入のための別の好ましい組成が以下で示される。
等張無菌溶液、100ml:
2.0g タウロリジン
5.0g PVP 17 PF UP
0.5g タウリン
0.20g 塩化ナトリウム
0.013g 塩化カリウム
0.009g 塩化カルシウム 2H2
0.0033g 乳酸ナトリウム50%溶液(ファーマコピア ヨーロピア(Pharmacopeia Europea))
無菌フィルタリングおよび蒸気滅菌。
【0045】
例5:タウルルタム溶液
ある好ましい溶液は以下を含む:
ラクトビオン酸 35.830g
アデノシン 1.340g
ラフィノース五水和水 17.830g
ヒドロキシエチルデンプン(HES)PL40/0.5 50.000g
グルタチオン 0.929g
アロプリノール 0.136g
タウルルタム 10.000g
Kcl 5.200g
MgSO4 7H2O 1.230g
pH7.8までの25%のNaOHのGV
NaOHペレットメルク(Merck)6482
蒸留水 900ml
溶液は121℃で16分間無菌処理された。無菌処理後のpHは7.2で、用いられる準備が整った溶液のpHは7.47であった。
【0046】
例6:アポトーシスの誘導
ヒトの悪性神経膠腫細胞株において単独で、Fasリガンドとともに、アポトーシスを増強するかまたは細胞死を誘導するという能力についてタウロリジンおよびタウルルタムがテストされた。2つの細胞株LN−18およびLN−229は、Fasリガンドに対する異なった感受性でアポトーシス性細胞死の有効なモデルシステムを示す(シュラップバッハ(Schlappbach)とフォンタナ(Fontana)、1997年)。したがって、これらの細胞株を用いてアポトーシス経路とのタウルルタムまたはタウロリジンの潜在的な相互作用がテストされた。
【0047】
1) 試薬
タウロリジン(Batch Nr.41692/7)およびタウルルタム(Batch
E/39024/4)は、スイス、ウォルフーゼン(Wolhusen)のガイストリッヒ ファーマAG(Geistlich Pharma AG)によって提供された。DME培養培地およびウシ胎仔血清(FBS)は、スイス、バーゼル(Basel)のギブコBRL(Gibco BRL)から購入された。細胞増殖アッセイWST−1は、スイス、ロトクライツ(Rotkreuz)のロッシュ
ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)から購入された。Fasリガンド(過剰発現系(overexpression system)からの上清)およびヒトの神経膠腫細胞株LN−18およびLN−229は、スイス、チューリッヒの大学病院、臨床免疫学研究所(Institute of Clinical Immunology)のA.フォンタナ(A. Fontana)教授によって快く提供された。
【0048】
2) 細胞株
細胞株LN−18およびLN−229は、5%FBSおよび2mMグルタミンを含むDMEM中で37℃、5%CO2で培養された(10cmプレート NUNCLON 15035)。Fasリガンドがそれ自身によってテストされた実験(図1)では、1ウェルにつき約1x104の細胞が96ウェルプレート(NUNCLON 16700B)で平板培養(plate)され(17時間インキュベーション)、結果として次の日に約60%のコンフルエンシーが得られた。他のすべての実験(図2−5)では、約1.5x104の細胞が平板培養されて(17時間インキュベーション)、結果として次の日に約90%のコンフルエンシーが得られた。培養容量全体の容量%(vol%)として示される上清として、Fasリガンドが加えられた。
【0049】
3) 細胞生存度テスト
Fasリガンド、タウルルタム、タウロリジンのいずれかの存在下またはそれらの不在下で、あるいはそれらをそれぞれ組合せた状況下で、LN−18およびLN−229細胞を50μl培地内でインキュベートした。17時間のインキュベーションの後、二重に濃縮されたWST−1試薬を含む50μl培地を加えることによって、細胞生存度が判断された。ミトコンドリアコハク酸レダクターゼの活性により生じた着色が、ELISAリー
ダ内でリファレンス波長690nmを使用して450nmで測定された。
【0050】
ヒトの悪性神経膠腫細胞株LN−18およびLN−229を用いて、細胞生存度に影響を及ぼし、かつ/またはFasリガンド誘導アポトーシスを増強させるようなタウロリジンおよびタウルルタムの能力がテストされた。ヒトの2つの悪性神経膠腫細胞株の、LN−18およびLN−229は、Fasリガンドのアポトーシス効果に対して異なった感受性を示すと以前に報告されていた(シュラップバッハとフォンタナ、1997年)。
【0051】
1) Fasリガンドに対するLN−18およびLN−229の感受性
第1の組の実験では、Fasリガンドに対するLN−18およびLN−229の異なった感受性がこの実験条件下で再び現れるか否かが調べられた。徐々に増加するFasリガンド濃度(3.1、6.25、12.5、25.0、および50vol.%)とともに1ウェル当り1x104の細胞を含む96ウェルプレート内で2つの細胞株を一晩中(17時間)インキュベートした。Fasリガンドの不在下では、細胞は一晩のインキュベーションの後、約60%のコンフルエンシーに達した。Fasリガンドの存在下ではLN−18は極めて感受性が高く、わずか6.25vol.%のFasリガンドの存在下でも90%を超える細胞生存度の減少が見られた。3.1%でも、細胞生存度の約85%の減少が認められた。対照的に、LN−229細胞の生存度は6.25vol.%のFasリガンドによっては大きな影響を受けず(約10%の減少)、その生存度はより高い濃度でのみ減じられ、テストされた中で最も高いFasリガンドの濃度(50vol.%)で最大40%の細胞消失が見られた。
【0052】
2) LN−18細胞内のFasリガンド誘導アポトーシスへのタウルルタムの影響
2つの濃度のFasリガンド(0.4vol.%と2.0vol.%)の存在下または不在下で、タウルルタムの徐々に増加する濃度(5、20、100μg/ml)とともにLN−18細胞を17時間インキュベートした。タウルルタムそれ自体は、テストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)でも細胞生存度に影響を与えなかった(5μg/mlおよび20μg/mlで約5%の減少が認められ、100μg/mlでは生存度は実際には増加するように思われた)。0.4vol.%のFasリガンド単独の存在下では、細胞生存度は約10%のみ減じられ、その効果は5μg/mlまたは20μg/mlのタウルルタムの存在下でも変化しないままであった。しかし、0.4vol.%のFasリガンドが100μg/mlのタウルルタムとともに共インキュベートされると、細胞生存度が大きく減少した。Fasリガンドがより高い濃度(2.0vol.%)で加えられると、Fasリガンド単独によってアポトーシスが細胞の60%において誘導された。この効果はさらに100μg/mlのタウルルタムによって増大されたが、5μg/mlまたは20μg/mlのタウルルタムでは増大されなかった。したがって、タウルルタムは、それ自体では細胞生存度に影響を及ぼさなかった濃度(100μg/ml)でLN−18細胞内でのFasリガンドのアポトーシス効果を増強することができる。
【0053】
3) LN−18細胞内のFasリガンド誘導アポトーシスに対するタウロリジンの影響
タウロリジンの徐々に増加する濃度(5、20、100μg/ml)の存在下または不在下で、0.4vol.%のFasリガンドまたは2.0vol.%のFasリガンドのいずれかとともにLN−18細胞を17時間インキュベートした。タウロリジンそれ自体は、はっきりと認められるほどの影響を細胞生存度に及ぼさず、テストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)でわずか10%の減少を生じさせた。Fasリガンド単独(0.4%または2.0%)の存在下では、細胞生存度は上述のものと同じ影響を受けた。細胞生存度はタウロリジンによってさらに減じられたが、それはテストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)においてのみ減じられた。したがって、タウロリジンは、それ自体では細胞生存度にはっきりと認められるほどの影響を及ぼさなかった濃度(100
μg/ml)でLN−18細胞に対するFasリガンドの効果を増強することができた。
【0054】
4) LN−229細胞内のFasリガンド誘導アポトーシスに対するタウルルタムの影響
タウルルタム単独を用いてLN−229細胞を17時間インキュベートすることは、5μg/mlおよび20μg/mlでは効果をあげなかったが、100μg/mlでは細胞生存度を35%減じた。Fasリガンド単独(10%または50%)を用いてLN−229細胞をインキュベートすると、細胞生存度は、高濃度のFasリガンド(50vol.%)の存在下で約20%だけ減じられた。それ自体では不活性であった濃度(5μg/mlおよび20μg/ml)でタウルルタムを加えても、Fasリガンド(10vol.%または50vol.%)の効果に変化は認められなかった。Fasリガンド誘導細胞消失がさらに増強されたのは、タウルルタムの最高濃度(100μg/ml)においてでのみであった。したがって、LN−229に関してのこれらの結果によって、Fasリガンドの存在下で細胞の破壊性を増強するというタウルルタムの能力が示される。
【0055】
5) LN−229細胞内のFasリガンド誘導アポトーシスに対するタウロリジンの影響
タウロリジン単独にLN−229細胞を17時間曝すことによって、テストされた中で最も高い濃度(100μg/ml)で細胞生存度が約70%、大きく減じられた。このように、LN−229細胞は、タウロリジンに対してLN−18細胞よりもずっと感受性が高かった。Fasリガンド(10vol.%)とともに共インキュベートすると、細胞破壊は100μg/mlのタウロリジンによって増強された。50vol.%のFasリガンドを用いた時には、その効果は20μg/mlのタウロリジンでもより顕著でより明らかであった。
【0056】
例7:中枢神経系腫瘍の処置および/または予防のためのタウロリジンおよび/またはタウルルタムの使用および適用
1.実験に用いられた腫瘍細胞
実験のために、C6グリア腫瘍(glial tumor)細胞、HT22神経腫瘍細胞、U373ヒト神経膠腫/神経膠芽腫腫瘍細胞、および神経膠芽腫に罹患した患者由来の細胞が用いられた。
【0057】
2.患者由来の腫瘍細胞の調製
神経膠芽腫に罹患している患者由来の腫瘍細胞を手術中に得た。FCSを有さないRPMI1640培地に腫瘍組織を貯蔵した。次に、15mlファルコン(Falcon)フラスコ内で組織を継代培養し、PBSとともに0.025%のトリプシンを加え、続いて37℃でインキュベートした。このあと、FCSを有するRPMI1640が加えられ、遠心分離が行なわれた。次のステップは、DNAseを用いてのインキュベーション、再懸濁(resuspension)、および解離であり、その後に培地内での洗浄ステップが続いてDNAseが除去された。次に、ファルコンフラスコ内で細胞を培養した。
【0058】
3.タウロリジンおよび/または代謝産物の抗腫瘍作用(anti-neoplastic action)の方法
超微細構造上では、細胞質の収縮と、染色質の縮合および辺縁化(marginalization)とが認められ得る。これらの変化は、0.1μg/mlのタウリンを用いたインキュベーションの30分で既に明らかとなり、時間が経つにつれて、かつタウロリジンの濃度とともに著しく大きくなった。ミトコンドリアは超微細構造上では影響を及ぼされなかった。フローサイトメトリによって、30分で始まるS期およびG0/G1ピーク値の最初の上昇が示された。これらの最初の変化に続いて、前方光および側方散乱光(side scatter)が減少した。加えて、DNAの濃度依存性断片化が60分で始まった。24時間後、DN
Aの断片化はほぼ完了した。2.0μg/ml以上のタウロリジン濃度では、細胞の大きさの変化はほんのわずかであった。
【0059】
ある特定の死滅法(ルーコスタット調製法(Leucostat preparation))の結果とあわせた上述の結果によって、腫瘍細胞死のアポトーシスメカニズムが示される。通常の脳細胞は、5日間まで、4μg/mlまでの濃度のタウロリジンまたはタウルルタムを用いたインキュベーションによって影響を及ぼされることはなかった。
【0060】
例8:静脈内への2%のタウロリジンを用いて癌に罹患している患者を治療するための2サイクル投薬スケジュール
癌に罹患している患者の静脈内に1分当り40滴、6時間ごとに1ボトルの速度で、2%のタウロリジン溶液の4ボトル(各々は250ml)が投与される。投薬サイクルは1週間にわたって毎日注入が行なわれる投与期からなり、その後2週間の非投与期が続き、さらに、上述のような1日当り4ボトルという別の投与期が続く。静脈内に投与される2%のタウロリジン溶液の有効性は、1サイクル当り2%のタウロリジン溶液250mlの25−28ボトルが点滴注入されるとき、特に優れていることが認められた。
【0061】
例9:静脈内への2%のタウロリジンを用いて悪性神経膠腫に罹患している患者を治療するための4サイクル投薬スケジュール
治療は最低で4サイクルを含む。各サイクルは7日間であり、以下のように構成される。
【0062】
1.第1のサイクル
a.中心静脈カテーテルを介して60分の注入時間で2%のタウロリジン250mlと完全に電解質の溶液250mlとを静脈内注入する。
【0063】
b.この療法によって肝計数が高くなった場合には、注入時間を90分または120分に延ばす必要がある。
【0064】
c.60分の投薬中断時間
d.1日当り合計6回、aまたはbと、cとによる療法を繰返す。
【0065】
e.タウロリジン250ml当り60分の注入時間では1日の注入プログラムの持続時間は11時間であり、90分の注入時間では14時間であり、120分の注入時間では17時間である。残りの時間には薬物は投与されない。
【0066】
f.静止期
2.後続のサイクル
a.中心静脈カテーテルを介して60分の注入時間で2%のタウロリジン250mlと完全に電解質の溶液250mlとを静脈内注入する。
【0067】
b.この治療によって肝計数が上昇した場合には、注入時間を90分または120分に延ばす必要がある。
【0068】
c.60分の投薬中断時間
d.1日当り合計4回、aまたはbと、cとによる療法を繰返す。
【0069】
e.タウロリジン250mlあたり60分の注入時間では1日の注入プログラムの持続時間は7時間であり、90分の注入時間では9時間であり、120分の注入時間では11時間である。残りの時間には薬物は投与されない。
【0070】
例10:タウロリジンによる神経膠芽腫の治療(単一症例観察)
以下は、単一の治療サイクルを用いての1個人の治療を含む事例である。
【0071】
患者:「F.D.」、男性、59歳
診断:脳梁の疾患を伴う、両前頭部(bifrontal)の大きな(8x8x8cm)悪性神経膠腫(「バタフライ神経膠腫」)。
【0072】
タウロリジンによる治療の前の処置:患者はハイデルベルク(Heidelberg)およびビュルツブルグ(Wurzburg)の脳神経外科に差し向けられたが、手術は拒否され、放射線および化学療法は患者によって拒否された。
【0073】
以前の治療:経口コルチコステロイド
計画された治療:静脈内タウロリジン
入院時の主訴:広汎性の頭痛(diffuse headache)、尿失禁、視力障害、運動性失語症、歩行障害、記憶障害
入院時の神経学的検査:覚醒傾眠(awake-somnolent)、警戒(alert)、視覚障害、ほぼ完全な運動性失語症、失行、歩行障害、尿失禁、重症の記憶力(mnesic)および集中力欠如(concentration deficits)
入院時のカルノフスキー(Karnofsky)指標:20−30
治療第1日目のMRI(前治療):両前頭部空間を占有する病巣(約8x8x8cm)であって、不規則な形状を伴い、輪のようなコントラスト増強および脳梁の破壊的疾患が見られる。この示された空間を占有することが影響して、ほぼすべての残りの空間が消える。
【0074】
治療
第1日目:インフォームドコンセント;血液標本;MRI
第2日目:中心静脈ラインの挿入;胸部X線
第3日目から第8日目:2時間以内での2%のタウロリジン250mlの静脈内投与を1日に4回行い、それに続いて4時間の休止期が設けられる;毎日2回の血液標本;電解質置換
第9日目:2時間以内での2%のタウロリジン250mlの静脈内投与を1回;退院
治療の概略:
トータルで、25回の2%のタウロリジン250ml(125gのタウロリジン)が副作用なしに投与された。血液標本の結果に従って、電解質および流体が置換された。
【0075】
退院時の主訴:頭痛の改善、尿失禁なし、視力改善、歩行障害の改善、運動性失語症のわずかな改善、記憶障害
退院時の神経学的検査:覚醒、警戒、視力改善、運動性失語症のわずかな改善、歩行障害の改善、失行のわずかな改善、尿失禁なし、重症の記憶力および集中力欠如
退院時のカルノフスキー指標:40−50
単一治療サイクル後の患者の状態に認められる著しい改善を考慮に入れると、少なくとも2サイクルの注入レジメンによって所望の治療効果が提供されると考えられる。
【0076】
例11:重症の多形性神経膠芽腫グレードIVの治療
治療の前、患者は重症の多形性神経膠芽腫グレードIVを示し、左側頭葉が罹患していた。腫瘍は、治療の前、患者の頭蓋骨のコンピュータ断層撮影写真にはっきりと示されていた。患者の頭蓋骨は、造影剤の適用およびMR分光線検査(spectroscopy)の後、軸方向の、矢状および冠状層配向においてはT2強調像シーケンス(T2-weighted picture sequence)によって画像処理され、同様にもともとの軸方向の層の配向および軸方向の、冠状お
よび矢状層配向においてはT1強調像シーケンスによって画像処理された。
【0077】
患者は4治療サイクルで治療され、その各々は、1日の用量が20gのタウロリジン(2%のタウロリジン溶液250mlを4回)である7日間の注入期と、2日間の静止期とからなる。4サイクルの後、患者はさらなる2日間の注入期を経験した。治療の間には、患者の頭蓋骨の通常のコンピュータ断層撮影画像がとられた。
【0078】
第2の治療サイクル(200gタウロリジン投与)の終了までに、認識できるほどまでに脳水腫が減じられた。第3の治療サイクル(300gタウロリジン投与)の終了までに、腫瘍の成長が停止した。全治療クールの完了後(600gタウロリジン投与)、腫瘍はコンピュータ断層撮影によってほぼ完全に崩壊した状態で示された。治療クール中、壊死はほとんど観察されないかまたは全く観察されず、腫瘍の減少はアポトーシスの結果であることが示された。
【0079】
例12:タウロリジン/タウルルタムの直接適用による脳腫瘍の治療
半透膜を備えるいくつかのセグメントからなるタウロリジン/タウルルタム含有チューブを用いて、メチロール移動剤を腫瘍腔(tumor cavity)に直接適用する。
【0080】
腫瘍のすべてまたは一部を除去した後、特別なチューブの末端が帽状腱膜下に位置するように、このチューブを腫瘍腔にインプラントする。チューブは半透性材料の種々のセグメントを含み、これはタウロリジン/タウルルタムを含み、帽状腱膜下ポートを介して補充され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新形成細胞の細胞消滅死を誘導する方法であって、前記細胞をアポトーシスを誘導する量のメチロール含有化合物に接触させる工程を含む、新形成細胞の細胞消滅死を誘導する方法。
【請求項2】
メチロール含有化合物は、タウロリジン、タウルルタム、タウロリジン誘導体、タウルルタム誘導体、タウリナミド誘導体、および尿素誘導体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチロール含有化合物は、タウロリジン、タウルルタム、タウロリジン誘導体、およびタウルルタム誘導体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メチロール含有化合物は、タウロリジン、タウルルタム、またはそれらの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
メチロール移動剤はタウロリジンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
タウロリジンは約2gから約30gの1日の用量で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
メチロール移動剤はタウルルタムである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
タウルルタムは約4gから約60gの1日の用量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の抗腫瘍薬の共投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第2の抗腫瘍薬は5−フルオロ−ウラシルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Fasリガンドの共投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
メチロール含有化合物は1日当り約150から450mg/kgの投薬量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
メチロール含有化合物は1日当り約300から450mg/kgの投薬量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
5−フルオロ−ウラシルは1日当り約100から5,000mg/身体表面積1m2の量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
5−フルオロ−ウラシルは1日当り約200から1,000mg/身体表面積1m2の量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Fasリガンドは1日当り約0.01−1,000mg/身体表面積1m2の範囲内の量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
溶液はさらにタウリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記タウリンは前記溶液中に約1−10g/lの範囲内の濃度で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
癌は肝癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
メチロール移動剤は肝脈管を介して肝臓に直接投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
癌は原発性腫瘍であり、投与は肝動脈または胃十二指腸動脈を介して行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
癌は転移性癌であり、投与は門脈を介して行なわれる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
メチロール移動剤は少なくとも2つの投薬サイクル中に投与され、各投薬サイクルは1から約8日間の投与期を含み、その投与期の間、前記メチロール移動剤は1日の全用量の約2gから60gの前記メチロール移動剤でもって毎日投与され、各投薬サイクルはさらに、約1から14日間の非投与期を含み、その間、前記メチロール移動剤は哺乳動物に投与されない、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
投与期は、24時間にわたってメチロール移動剤の1日投薬量の、連続注入としての注入を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
投与期は部分用量で連続してメチロール移動剤の1日投薬量を注入することを含み、部分用量の1回分を注入した後に、注入が行なわれない投薬中断時間が
設けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
部分用量は24時間クールにわたって注入される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
部分用量は24時間より短いクールにわたって注入される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
部分用量の1回分は2時間クールにわたって注入され、それに続いて4時間の投薬中断時間が設けられる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
部分用量の1回分は1時間クールにわたって注入され、それに続いて1時間の投薬中断時間が設けられる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
鎮痙薬、抗水腫薬、抗生物質薬、および電解質溶液からなる群より選択される少なくとも1つの補助的な薬剤の共投与をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
補助的な薬剤は電解質溶液である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
2投薬サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
各投薬サイクルは、24時間にわたる連続的な注入として2%のタウロリジン250ml用量を1日4回注入する7日間の注入期と、7日間の非投与期とを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
4投薬サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
各投薬サイクルは、2%のタウロリジン250ml用量を1日4回注入する7日間の注入期を含み、投薬量の1回分は約1から2時間クールで注入され、それに続いて約1時間の非投与投薬中断時間が設けられる、請求項34に記載の方法。

【公開番号】特開2009−138003(P2009−138003A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22892(P2009−22892)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【分割の表示】特願2002−100404(P2002−100404)の分割
【原出願日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【出願人】(501257174)エー・デー・ガイストリヒ・ゾーネ・アクチェンゲゼルシャフト・フュール・ヒェーミシェ・インダストリー (4)
【氏名又は名称原語表記】ED. GEISTLICH SOEHNE AG FUER CHEMISCHE INDUSTRIE
【Fターム(参考)】