説明

新規なドーパミンD3受容体リガンド、その調製及び使用

本発明は、ドーパミンD3受容体を調節する活性を有する、式Iで表される新規ピペラジン誘導体、この立体異性体、医薬用塩、溶媒和物、及びそのような化合物を含有する医薬組成物、これらの調製を開示し、パーキンソン病、統合失調症、薬物嗜癖及び薬物回帰などの中枢神経系障害に関係する疾患の予防又は治療のためのそのような化合物の使用、並びに腎保護及び免疫調節のため、又はD3Rの機能及びD3R機能の障害に関係する疾患を研究するための助けとなる薬物としてのそのような化合物の使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミンD3受容体(D3R)の調節活性を有する式Iの新規のピペラジン誘導体、この立体異性体、薬学的に許容される塩及び溶媒和物、それを調製する方法、パーキンソン病、統合失調症、薬物嗜癖及び薬物回帰などの中枢神経系障害に関係する疾患の予防又は治療におけるその使用、並びに腎保護及び免疫調節のためのその使用、又はD3Rの機能及びD3Rの機能障害に関係する疾患を研究するためのツールとしての使用、及びそのような化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーパミン(DA)は、中枢神経系において重要な神経媒介物質である。脳内のDA神経の不均衡は、統合失調症、パーキンソン病、薬物嗜癖及び薬物回帰、注意欠陥又は性機能障害をもたらす可能性がある。
【0003】
1990年に、SokoloffらはドーパミンD3受容体(D3R)を発見し、これが、D2Rと比較して50%のアミノ酸配列相同性を有することを見出し、さらにドーパミン受容体の具体的な類別を特定した。D3Rは、側坐核、カエハ島、嗅結節などの脳辺縁領域に選択的に分布する。最近のいくつかの研究報告は、D3Rが、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)、ストレスの任意の形態、不安及び睡眠障害などの多くの神経症に密接に関係していることを示している。加えて、D3Rは、腎機能及び免疫調節などの生理機能に関係している。
【0004】
D3Rの生理機能、並びにその中枢疾患、腎機能障害及び免疫学的疾患との相関性の究明において、D3Rリガンドの研究もまた、薬物研究の活発な分野である。D3Rリガンドは、この選択性に従ってD3R優先的リガンド(preferential ligand)及びD3R選択的リガンド、又はD3Rアゴニスト、D3R部分アゴニスト及びD3Rアンタゴニストに分類できる。
【0005】
現在、比較的高い親和性と選択性を有するD3Rリガンドは、多くの技術報告書に開示されている。これらの化学構造により、現在のD3Rリガンドとしては、主に、2−アミノインダン(WO95/04713)、2−アミノテトラヒドロナフタレン(EP−A286516)、テトラヒドロイソキノリン(WO97/43262、WO98/06699、US6465485B1)、ベンゾアゼピン(CN01821985.3)、ジヒドロインドリン(US6521638B1)、アリールピペラジン誘導体(FR2878524)、複素環アミド(EP1749529)、スルホンアミド(US2007054918)、ベンゾチオフェン(WO95/10513)、イソオキサゾール誘導体(US6673800B2)、置換イミダゾール(US6358955B1)、トリアゾール(US6602867B1、WO2007022936)、ピリミジニルピペラジン誘導体(CA2574827)などが挙げられる。概して、アリールホルムアミド、アリールホルムアミド基を有するバイオイソスター(bioisostere)、並びに1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−アミン及びこれらの類似体の群があり、この中ではアリールホルムアミドの群が最大の群であり、アリールは、様々な種類のものとすることができ、アミノ部分は、主に、ピペラジン又はテトラヒドロイソキノリンとすることができ、アミノは、4つのメチレン基又は同等な結合鎖を介してアリールホルムアミドと結合することができる(YANG Rifang、YUN Liuhong、「ドーパミンD3受容体の選択性リガンド研究の進歩(Advance in research of dopamine D3 receptor selective ligands)」、Progesses Medicinal Chemistry5、PENG Sixun編、Chemical Industry Press、Beijing、2007年、90〜108頁)。
【0006】
いくつかのD3R選択性リガンドは、対応する動物モデル及び臨床試験におけるターゲットとして、D3Rを用いて新規の薬物を開発するための潜在的価値を示す。例えば、プラミペキソール(A Lieberman.Acta Neurol Scand、2006年、113:1)、FAUC329(F Boecklerら、Biochem Phamacol、2003年、66(6):1025)及びBP897(US5872119)では、パーキンソン病のマカクモデルにおいて優れた神経防護作用が開示され、D3R優先的リガンドである、S33138、A437203(T Dubufferら、Bioorg Med Chem Lett、1999年、9(14):2059;JF Joyce、MJ Millan.Drug Disc ToDay、2005年、10:917)は、統合失調症の治療のための第二相臨床試験に入り、BP897(CA Heidbreder.Curr Psychiatry Rev、2005年、1:45)、SB277011A(CA Heidbrederら、Brain Res Rev、2005年、49(1):77)及びNGB2904(P Grundtら、J Med Chem、2005年、48(13):917)は、薬物嗜癖のメカニズムの研究、並びに薬物嗜癖及び薬物回帰の治療に対する薬物の開発において多くの注目を引き付けており、その中で、BP897が喫煙抑制物質として現在第二相臨床試験中である。他の報告では、D3Rアゴニストが男性性機能障害の予防に使用できることに言及している(WO2003/051370、J Braggら、Bioorg Med Chem Lett、2007年、17:6691)。
【0007】
最近の研究は、D3R優先的リガンドは、D2Rリガンドが有する中毒作用及び副作用を示さず、薬物乱用及び薬物回帰の予防により効果的であることを示している(Z−X Xiら、Neuropharmacology、2007年、53:771)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在のところ、臨床用途に向けたドーパミンD3受容体リガンドとしての新規化合物を研究する必要が、引き続きある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、研究によって、D3Rの調節機能を有する式Iの化合物を発見し、この化合物が、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、種々の心的緊張、不安、睡眠障害及び男性性機能障害の予防又は治療、並びに腎保護及び免疫調節に使用することができることを見出した。何人かの研究者らは、式Iの化合物がD3Rを調節する機能を有していることを示している。さらなる合成及び研究は、適切な無機酸若しくは有機酸又は無機塩基若しくは有機塩基により形成した本発明の誘導体の薬学的に許容される塩もまた、D3Rの調節機能を有することを示している。本発明は、上記の知見に基づいて完成される。
【0010】
本発明の第1の態様は、D3Rの調節機能を有する式I
【化1】


の化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物に関し、
式中、
Lは、CHCHCHCH、又はcis−若しくはtrans−CHCH=CHCH、又はtrans−シクロヘキサニル−4−エチルであり、
、R及びRはそれぞれ、独立してH、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルキルオキシ、C〜C10アリールオキシ、置換アリールオキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜C10アリールアミノ、置換アリールアミノ、ジ−(C〜Cアルキル)アミノ、ジ−(C〜C10アリール)アミノ、ジ−(置換アリール)アミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C6〜10アリールアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアミド、カルボキシル、C1〜10ヒドロカルボニルオキシホルミル、C6〜10アリールオキシホルミル、カルバモイル、C1〜10ヒドロカルボニルカルバモイル、又はC6〜10アリールカルバモイルであり、式中、ヘテロアリール環は、N、O又はSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ若しくはトリハロゲン置換C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ又はC6〜10アリールアミドから独立して選択され、又はR及びRは、一緒に結合して5、6若しくは7員環を形成し、
XはO又はSであり、Y及びZは同一である又は異なり、各々はCH又はNであり、
ホルミルは、オキサゾリン−2−オン又はチアゾリン−2−オンの4、5、6又は7位にあり得る。
【0011】
具体的には、本発明の第1の態様により、式I
【化2】


の化合物若しくはその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩又は溶媒和物が提供され、
式中、
Lは、−CHCHCHCH−、cis−若しくはtrans−CHCH=CHCH、又はtrans−シクロヘキシル−4−エチルであり、
、R及びRはそれぞれ独立してH、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルキルオキシ、C〜C10アリールオキシ、置換C〜C10アリールオキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜C10アリールアミノ、置換アリールアミノ、ジ−(C〜Cアルキル)アミノ、ジ−(C〜C10アリール)アミノ、ジ−(置換C〜C10アリール)アミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C6〜10アリールアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアミド、カルボキシル、C1〜10ヒドロカルボニルオキシホルミル、C6〜10アリールオキシホルミル、カルバモイル、C1〜10ヒドロカルボニルカルバモイル、又はC6〜10アリールカルバモイルであり、式中、ヘテロアリール環は、N、O又はSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ若しくはトリハロゲン置換C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ又はC6〜10アリールアミドから独立して選択され、又はR及びRは、一緒に結合して5、6又は7員環を形成し、
XはO又はSであり、
Y及びZは同一である又は異なり、各々はC又はNであり、
ホルミルは、オキサゾリン−2−オン又はチアゾリン−2−オンの4、5、6又は7位にあり得る。
【0012】
Lは、−CHCHCHCH−、cis−若しくはtrans−CHCH=CHCH−、又はtrans−シクロヘキシル−4−エチルである、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、Lは、−CHCHCHCH−、又はcis−若しくはtrans−CHCH=CHCH−である。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、Lは、−CHCHCHCH−である。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、Lは、cis−又はtrans−CHCH=CHCH−である。
【0013】
、R及びRはそれぞれ、独立してH、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルキルオキシ、C〜C10アリールオキシ、置換C〜C10アリールオキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜C10アリールアミノ、置換アリールアミノ、ジ−(C〜Cアルキル)アミノ、ジ−(C〜C10アリール)アミノ、ジ−(置換C〜C10アリール)アミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C6〜10アリールアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアミド、カルボキシル、C1〜10ヒドロカルボニルオキシホルミル、C6〜10アリールオキシホルミル、カルバモイル、C1〜10ヒドロカルボニルカルバモイル、又はC6〜10アリールカルバモイルであり、ヘテロアリール環は、N、O若しくはSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ若しくはトリハロゲン置換C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ、又はC6〜10アリールアミドから独立して選択される、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン(F、Cl、Br若しくはI)、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、又はC〜Cアルキルオキシであり、ヘテロアリール環は、N、O若しくはSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ又はトリハロゲン置換C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ又はC6〜10アリールアミドから独立して選択される。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜Cアルキル又はC〜Cアルキルオキシである。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、C〜Cアルキル又はC〜Cアルキルオキシである。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、R、R及びRはそれぞれ独立して、H、F、Cl、メチル、エチル、メチルオキシ又はエチルオキシである。
【0014】
XはO又はSである、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、XはOである。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、XはSである。
【0015】
Y及びZはそれぞれ独立してC又はNである、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、YはCである。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、ZはCである。本発明の第1の態様の1つの実施形態において、Y及びZの両方がCである。
【0016】
本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物は、
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−cis−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;又は
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド、
又はこれらの互変異性体、これらのラセミ体若しくは光学異性体、これらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物から選択される。
【0017】
本発明の第2の態様は、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害及び男性性機能障害の予防又は治療のため、並びに腎保護及び免疫調節のため、又はD3Rの機能の研究若しくはD3Rの機能障害に関係する疾患を研究するツールとしての医薬品の製造における、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用に関する。
【0018】
本発明の第3の態様により、ドーパミンD3受容体の調節活性を有する医薬品の製造における、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様により、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される担体又は添加剤を含む、医薬組成物が提供される。この態様により、本発明により、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害及び男性性機能障害の予防又は治療のため、並びに腎保護及び免疫調節のため、又はD3Rの機能若しくはD3Rの機能障害に関係する疾患の研究のためのツールとしての医薬品の製造における、医薬組成物の使用がさらに提供される。
【0020】
本発明の第5の態様により、第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは立体異性体、その薬学的に許容される塩の予防及び/又は治療有効量を、これを必要とする対象に投与することを含む、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害及び男性性機能障害、並びに腎機能障害及び免疫不全などの、D3Rの機能障害に関係する疾患の予防又は治療方法が提供される。
【0021】
本発明の第6の態様により、以下のステップ
a)式II
【化3】


のカルボン酸化合物を、式IIa
【化4】


の塩化アシル化合物に変換するステップと、
b)適当な塩基の存在下で、ステップa)で得られた式IIaの塩化アシル化合物を式III
【化5】


のアミン化合物と反応させ、式I
【化6】


の化合物を得るステップと
を含む、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を調製する方法が提供される(式中、記号の定義は、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物に与えたものと同じである)。
【0022】
本発明の第6の態様の方法により、式IIのカルボン酸化合物が、式IV
【化7】


のカルボン酸化合物を、ClCORによって表される化合物と反応させることにより得られる(式中、記号の定義は、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物に与えたものと同じである)。
【0023】
本発明の第6の態様の方法により、(ヒドラジン水和物などの)適当な作用剤の存在下で、式V
【化8】


の化合物を反応させることにより、式IIIのアミン化合物が得られる(式中、記号の定義は、本発明の第1の態様の任意の1項目による式Iの化合物に与えたものと同じである)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において引用された全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれ、これらの文書で表現された意味が本発明と異なる場合、本発明における語句が優先されるものとする。
【0025】
加えて、本発明で使用された用語及び語句は、当業者によく知られた一般的な意味を有している。それにもかかわらず、言及した用語及び語句が、これらの一般的な意味とは異なる場合、本発明において、これらの用語及び語句をより詳細な方法でさらに説明し、表現することが望ましく、本発明で表現された意味が優先されるものとする。
【0026】
本発明において、使用される用語「ハロゲン」、「ハロ」、「Hal」又は「ハロゲノ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。
【0027】
本発明において、使用される用語「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は、当技術分野でよく知られた一般的な意味を有しており、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アリル、プロペニル、プロピニルなどの直鎖又は分枝のヒドロカルボニル基であり、「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」はまた、集合的に「ヒドロカルボニル」又は「脂肪族ヒドロカルボニル」と呼ぶこともできる。
【0028】
本文で使用される用語「置換又は非置換C〜Cアルキル」は、指定された炭素原子数を有する置換又は非置換アルキルを示し、この例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシルが挙げられる。
【0029】
式Iの化合物におけるY及びZの場合、これらを独立してC又はNとすることができる。当業者は、本明細書におけるY及びZは、6員環の原子価必要条件を満たすべきであることを理解するはずである。例えば、R、R及びRが全て水素の場合、Y及びZが炭素であるなら、この6員環は、ベンゼン環を形成し、その結果Y又はZは−CH−原子団であり、Yが窒素で、Zが炭素の場合、この6員環はピリジン環を形成し、その結果Yは−N−原子団、Zは−CH−原子団である。別の例では、Yが窒素で、Zが炭素の場合、Rがハロゲンであるなら、R及びRは水素であり、ハロゲンはZに結合して−CCl−原子団を形成することができる。
【0030】
本発明の第1の態様によると、式Iの化合物において、R、R及びRは、それぞれ好ましくはH、F、Cl、Br、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、カルバモイル又はフェニルオキシであり、
Lは、好ましくは−CHCHCHCH−又はtrans−CHCH=CHCH−であり、
Xは好ましくはO又はSであり、Y及びZはそれぞれ好ましくはCH又はNである。
【0031】
本発明の別の態様によると、式Iの化合物において、R、R及びRは、それぞれ好ましくは、5−クロロ−2−メチル、2,3−ジクロロ又は2−メチルオキシであり、
Lは、好ましくは−CHCHCHCH−、又はtrans−CHCH=CHCH−であり、
Xは好ましくはOであり、Y及びZはそれぞれ好ましくはNである。
【0032】
本発明による式Iの化合物は、好ましくは以下の例の化合物である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、化合物は、N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド及びN−{4−[4−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミドである。
【0034】
本発明の教示により、本発明の式Iの化合物を、当技術分野で既知の方法及び技術によって合成することができる。
【0035】
式Iの化合物を調製する方法の1つの実施形態では、化合物は、対応するカルボン酸IIを塩化アシルに変換し、次に、脱酸剤の存在下で対応するアミンIIIと反応させることにより、又は1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールの存在下で、対応するカルボン酸IIと対応するアミンIIIの混合物を、カルボジイミド(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの縮合剤を用いて直接脱水素することにより調製され、カルボン酸IIは、脱酸剤の存在下での、アミノ及びヒドロキシル又はメルカプトが隣接して置換したカルボン酸IVと、クロロギ酸エステルとの間の熱環化反応により得られ、アミンIIIは、対応するフタルイミドVとヒドラジン水和物を反応させることにより調製され、
【化9】


カルボン酸IVは、対応するヒドロキシ安息香酸をニトロ化し、分離して、ニトロ及びヒドロキシが隣接して置換した安息香酸を得、次に還元して、ヒドロキシ及びアミノが隣接して置換した安息香酸(IV)を得ることにより調製するか、又は対応するクロロ安息香酸をニトロ化し、分離して、クロロ及びニトロが隣接して置換した安息香酸を得、次に還元し、硫化ナトリウムで置換して、アミノ及びメルカプトが隣接して置換した安息香酸(IV)を形成することにより調製するか(Tadayuki Suzukiら、J.Pharmacy、1974年、94:891〜897頁)、又はアミノベンゾニトリル若しくはアミノ安息香酸を、チオシアノ安息香酸に変換し、環化して2−アミノベンゾチアゾールを形成し、次に塩基の存在下で加水分解して、アミノ及びメルカプトが隣接して置換した安息香酸(IV)を形成することにより調製し、一方、フタルイミドVは、対応するハロゲン化物又は活性エステルVIを対応するアリールピペラジンと反応させることにより調製し、ハロゲン化物又は活性エステルVIは、フタルイミドのカリウム塩を、対応する二塩化物又は活性エステルと反応させて合成することができる。
【化10】

【0036】
本発明の式Iの化合物を合成する方法において、使用される全ての原料は、従来技術に従って、又は従来技術における文書内にある既知の方法により調製できるか、又は商業的に入手可能である。上記の反応図式で使用する中間生成物、原料、試薬及び反応条件は、全て当業者によって変更することができる。加えて、当業者はまた、本発明の第2の態様の方法に従って、本発明で列挙しない式Iの他の化合物も合成することができる。
【0037】
本発明によると、用語「D3Rの機能障害に関係する疾患」は、統合失調症、パーキンソン病、薬物乱用(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害及び男性性機能障害、並びにこれによって惹起される腎機能又は免疫機能の障害などの、ドーパミンD3受容体の機能障害が直接的又は間接的な原因となる疾患を表す。
【0038】
本発明によると、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、酸付加塩又は塩基により形成された塩とすることができる。酸付加塩の例は、これらだけに限定されないが、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機塩、又はこれらだけに限定されないが、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、グリコン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル塩、メシル酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩などの有機塩とすることができ、式Iの化合物と塩基で形成される塩の例は、これらだけに限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、これらだけに限定されないが、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、これらだけに限定されないが、ジエタノールアミン塩及びコリン塩などの有機アルカリ塩、又はこれらだけに限定されないが、アルキルフェニルアミンの塩などのキラルなアルカリ塩とすることができる。
【0039】
本発明の化合物の溶媒和物は、水和物とすることができ、又はエタノールなどのアルコールのような他の結晶溶媒を含むことができる。
【0040】
本発明によると、式Iの化合物はcis/trans異性体を有することができる。本発明は、これらのcis/trans異性体及びこれらの混合物に関する。所望する場合、単一の立体異性体を、混合物の従来の分割により、又は立体選択的な合成により調製することができる。可動水素原子がある場合、本発明の式Iの化合物を、その互変異性体とすることもできる。
【0041】
本発明によると、式Iの化合物又は立体異性体は、統合失調症、パーキンソン病、薬物乱用(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害及び男性性機能障害などのD3の機能障害が関係する疾患、並びにこれによって惹起される腎機能及び免疫機能の障害の予防又は治療のための医薬品の製造に使用することができる。医薬品は、動物、好ましくは哺乳類、特にヒトに対して適用できる。
【0042】
本発明は、また、活性成分として、式Iの少なくとも1つの化合物又は薬学的に許容される塩及び/又はこの立体異性体の有効量と、従来の薬学的に許容される添加剤又は補助剤とを含む医薬組成物にも関する。通常、本発明の医薬組成物は、式Iの化合物及び/又は生理学的に許容されるその塩を、0.1〜90wt%含む。医薬組成物は、当技術分野で既知の方法により調製できる。所望する場合、ヒト用途に適する投与形態又は剤形を、式Iの化合物及び/又はその立体異性体を、1つ又は複数の固体若しくは液体の薬学的に許容される添加剤及び/又は補助剤と組み合わせて、調製することができる。
【0043】
本発明による式Iの化合物又はそれを含む医薬組成物は、腸管投与、又は経口投与、筋肉注射、皮下注射、経鼻投与、口腔粘膜投与、経皮投与、腹腔内投与若しくは直腸投与などの腸管外投与を介して、単位剤形で投与することができる。剤形は、錠剤、カプセル剤、ドロップ剤(drop pill)、エーロゾル剤、丸薬、粉剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、リポソーム剤、経皮剤、バッカル錠、坐薬、注射用凍結乾燥粉末の通常の製剤とすることができ、持続放出製剤、制御放出製剤及び種々の超微細粉の投与システムとすることができる。錠剤を単位剤形として得るために、当技術分野で既知の種々の担体を使用することができる。担体の例は、デンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの希釈剤及び吸収剤、水、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、でんぷん糊、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アラビアゴム粘液、ゼラチン糊、カルボキシメチルセルロースナトリウム、シェラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤、乾燥デンプン、アルジネート、カンテン末、ラミナリン、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤、スクロース、トリステアリン、ココアバター、水素化油などの粉末化抑制剤(disintegration inhibitor)、第4級アンモニウム塩、ドデシル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、タルク粉末、シリカ、コーンスターチ、ステアレート、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤である。錠剤は、さらに、糖衣錠、フィルムコート錠、腸溶性錠剤などのコーティング錠、又は二層錠若しくは多層錠を形成できる。丸剤を単位剤形として得るために、当技術分野で既知の種々の担体を使用できる。これらの担体の例は、グルコース、ラクトース、デンプン、ココアバター、水素化植物油、ポリビニルピロリドン、Gelucire、カオリン、タルク粉末などの希釈剤及び吸収剤、アラビアゴム、トラガカントゴム、ゼラチン、エタノール、ハチミツ、液糖、ライスペースト又は練った小麦粉などの結合剤、カンテン末、乾燥デンプン、アルジネート、ドデシル硫酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤とすることができる。坐剤を剤形として得るために、当技術分野で既知の種々の担体を使用できる。これらの担体の例は、ポリエチレングリコール、レシチン、ココアバター、脂肪アルコール、脂肪アルコールのエステル、ゼラチン、半合成グリセリドとすることができる。カプセル剤を剤形として得るためには、式Iの化合物又はこの立体異性体の有効量を上記の種々の担体と混合し、得られた混合物を、硬ゼラチンカプセル又は軟カプセルに充填する。式Iの化合物又はこの立体異性体の有効量を水媒体に懸濁して懸濁液を形成し、硬カプセルに充填して、マイクロカプセルを形成する又は注射剤を形成することもできる。液剤、乳剤、注射用凍結乾燥粉末及び懸濁剤などの注射製剤を単位剤形として得るために、水、エタノール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、エトキシ化イソオクタデカノール、多酸化(multi−oxidized)イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの当技術分野における従来の希釈剤を使用することができる。加えて、等張性注射液を得るために、塩化ナトリウム、グルコース又はグリセロールの適当な量を注射製剤に加えることができる。さらに、他の従来の溶媒、バッファー、pH調整剤もまた加えることができる。
【0044】
さらに、所望する場合、着色剤、保存剤、香味剤、修正剤(correctant)、甘味剤などの他の原料を、またこれらの医薬製剤に加えることもできる。
【0045】
本発明による式Iの化合物又は立体異性体の用量は、予防又は治療される疾患の性質及び重症度、患者若しくは動物の性別、年齢、体重、及び個々の反応、使用される特定の化合物、投与経路及び頻度などの多くの因子に依存する。用量は、単回投与量形態又は2、3若しくは4回形態などの複数回投与量形態とすることができる。
【0046】
本発明において、用語「組成物」は、指定成分の指定量を含む生成物、及び指定量の様々な指定成分を組み合わせて直接的又は間接的に得られる任意の生成物を表す。
【0047】
本発明の医薬組成物中の様々な活性成分の実際の投与レベルは、結果として得られる活性成分の量が、特定の患者、剤形及び投与様式において所望の治療反応につながり得るように変更することができる。投与レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、治療される疾患の重症度、並びに患者の容態及び過去の病歴により決定しなければならない。しかし、当技術分野における従来の方法は、化合物の用量を、所望の治療効果を達成するレベルよりも低いレベルから、所望の治療効果を達成するための十分なレベルに、徐々に増加させることである。
【0048】
前述の又は他の治療及び/又は予防において、治療及び/又は予防有効量にある本発明の化合物は、純粋化合物の形態で、又は薬学的に許容されるエステル若しくはこのプレドラッグ(predrug)(これらが存在する場合)の形態で使用することができる。或いは、化合物は、化合物及び1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を介して投与することができる。用語「治療及び/又は予防有効量」にある本発明の化合物は、化合物が、予防上及び/又は治療上の有効性/危険性の合理的な比を達成するために、十分な量にあることを意味する。当然のことながら、本発明の化合物又は組成物の1日当たりの総量は、信頼できる医療上の決定の範囲内で医師により決定されなければならない。任意の特定の患者に関して、特定の治療量を、治療される疾患及びこの重症度、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別及び食事、投与時間及び経路、及び使用される特定の化合物の排出率、特定の化合物と組み合わせて又は同時に投与される薬物(単数又は複数)、並びに医学分野でよく知られた同様な因子を含む、様々な因子に基づいて決定されなければならない。例えば、化合物の用量を、所望の治療効果を達成するレベルよりも低いレベルから、所望の治療効果を達成するための十分なレベルに徐々に増加させることは、当技術分野では一般的な方法である。一般に、哺乳類、特にヒトに対する式Iの化合物の用量は、1日当たり0.01〜100mg/kg体重、1日当たり0.01〜10mg/kg体重などの、1日当たり0.001〜1000mg/kg体重とすることができる。
【0049】
本発明による化合物は、本発明で言及した様々な疾患及び障害の有効的な予防及び/又は治療に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例の化合物1のD3R放射性リガンドに対する競合−共同曲線を示す図である。
【図2】実施例の化合物1のD2R放射性リガンドに対する競合−共同曲線を示す図である。
【図3】実施例の化合物1の、35S−GTPγS結合D3Rの活性に対する作用を示す図であり、ここで「basal」は基準を表す。
【図4】実施例の化合物1の、キンピロールで活性化された35S−GTPγS結合D3Rの活性に対する作用を示す図であり、ここで「basal」は基準を表す。
【図5】実施例の化合物1(Y−QA14)の、ラットにおけるモルヒネによって引き起こされた条件付け場所嗜好性に対する作用を示す図である(生理食塩水群と比較したもの、**P<0.005;モルヒネ群と比較したもの、#P<0.02;相加平均±SD;n=10;及び縦軸の「試験区画における浪費時間(sec)」は、試験のインターバルゾーンにおける浪費時間(s)を表す)。
【実施例】
【0051】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例は本発明を制限することを意図するものではない。
【0052】
(例1)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物1、又はY−QA14とも言及される)の調製
(1)ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボン酸:7.8g(0.05mol)の3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸を計量し、撹拌下で8.5g(0.08mol)の無水炭酸ナトリウムが溶解した45mLの水溶液に加えた。混合物を45℃の油浴中で加熱し、7.1gのクロロギ酸メチルを滴下した。添加後、0.5時間撹拌下で反応を行わせ、次に、温度を80℃に上昇させ反応を一晩中維持させた。翌日、氷水浴中で冷却しながら、pH2〜3に酸性化し、固形物をろ過して除去し、少量の冷水で洗浄し乾燥すると、mpが329〜331℃の薄茶色の粉末状固形物7.5g(83.3%)が得られた。
【化11】

【0053】
(2)ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−ホルミルクロライド:0.5g(2.80mmol)のベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボン酸を計量し、30mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、室温で0.67g(5.6mmol)の塩化チオニルを滴下した。添加後、10滴のN,N−ジメチルホルムアミドを触媒として加え、反応を、約100℃に加熱し撹拌しながら3時間還流下で行い、溶媒を回収し、直ぐに使用するために15mlの無水アセトン中に移し溶解した。
【0054】
(3)N−(4−ブロモブチル)フタルイミド:93.6g(0.43mol)の1,4−ジブロモブタンを計量し、380mLのアセトンに加えた。混合物に、72.5g(0.39mol)のフタルイミドカリウム塩及び2.1gのヨウ化テトラブチルアンモニウムを撹拌下で加え、18時間還流させ、冷却し、ろ過して固形物を除去し、アセトンで洗浄した。全アセトン溶液を合わせて、減圧下で、溶媒を回収し、反応混合物が熱い間に、結晶化のために石油エーテルを加えた。固形物をろ過して除去し、石油エーテルで洗浄し乾燥すると、mpが75〜78℃の生成物48.0g(43.6%)が得られた。母液を濃縮して結晶を沈殿させ氷浴中で冷却すると、mpが73〜76℃の固形物5.5g(5.0%)が得られた。
【0055】
(4)N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}フタルイミド:7.0g(0.025mol)のN−(4−ブロモブチル)フタルイミドを計量し、30mlのアセトニトリルに溶解した。混合物に、撹拌下で4.2g(0.02mol)の5−クロロ−2−メチルフェニル−ピペラジンを加え、添加後に5.05g(0.05mol)のトリエチルアミンを滴下し、加熱して還流し16時間反応させた。反応が終了した後に、減圧下で反応を溶媒の回収に付し、水で洗浄し、酢酸エチルで3回抽出した。全ての有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥し溶媒を回収すると、白色の粘性の生成物が得られ、塩酸−エーテルで塩化すると、mpが280〜282℃の白色の固形生成物7.55g(78.0%)が得られた。
【化12】

【0056】
(5)4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−ブチルアミン:7.50g(0.015mol)のN−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}フタルイミド塩酸塩を、60mlの無水エタノールに溶解した。混合物に、1.82g(0.030mol)のヒドラジン水和物溶液(含有量:85%)を加え、約70℃に加熱し、4時間撹拌しながら還流下で反応させた。反応が完了した後、減圧下でエタノールを回収し、残留した固形生成物に15ml(40%)の水酸化カリウム溶液を撹拌下で加えて溶解した。溶液を30mLの水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。全ての有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥し溶媒を回収すると、淡黄色の油性生成物3.83g(88.2%)が得られた。
【化13】

【0057】
(6)N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド:0.73g(2.60mmol)の4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−ブチルアミンを計量し、1.1g(7.8mmol)の無水炭酸カリウムを溶解させた30mLのアセトン溶液に撹拌下で加えた。混合物に、ステップ(2)においてアセトン中で新たに調製したベンゾオキサゾリン−2−オン−5−ホルミルクロライド(2.80mmolと表示される)の溶液を加え、室温で一晩撹拌し、翌日減圧下でろ過し、アセトンで十分に洗浄した。ろ液を集め、アセトンを回収し、水で洗浄し、ジクロロメタンで3回抽出した。全ての有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンを回収し、カラムクロマトグラフィーで精製し、塩酸エチル−エーテルで塩化すると、mpが329〜331℃の白色の固形生成物0.89g(78.1%)が得られた。
【化14】

【0058】
(例2)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物2)の調製
(1)ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボン酸:例1の方法に従って、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸及びクロロギ酸メチルを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下で環化のために加熱した。収率は84.6%で、mpは312〜316℃であった。
【化15】

【0059】
(2)N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)−ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミドの調製:例1の方法に従って、ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボン酸を使用してベンゾオキサゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドを調製し、次にこれを4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンと反応させ、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は81.2%で、mpは205〜209℃であった。
【化16】

【0060】
(例3)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物3)の調製
(1)4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミン:請求項1の方法に従って、N−(4−ブロモブチル)フタルイミド及び2−メチルオキシフェニル−ピペラジンを反応に使用して、N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}フタルイミドを生成し、次にこれをヒドラジン水和物と反応させた。収率は、84.3%であった。塩酸塩のmpは、173〜175℃であった。
【0061】
(2)N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−べンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド:例1の方法に従って、ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−ホルミルクロライド及び4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は79.2%で、mpは208〜212℃であった。
【化17】

【0062】
(例4)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物4)の調製
例3の方法に従って、4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミン及びベンゾオキサゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は71.2%で、mpは175〜177℃であった。
【化18】

【0063】
(例5)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物5)の調製
(1)trans−4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−アミン:例1の方法に従って、フタルイミドカリウム塩を、trans−1−4−ジヒドロ−2−ブテンと反応させると、mpが108〜110℃のN−(trans−4−クロロ−2−ブテン−1−イル)フタルイミドが得られ、次にこれを5−クロロ−2−メチルフェニルピペラジンと反応させると、N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}フタルイミドが得られ、次にこれをヒドラジン水和物と反応させると生成物が得られた。収率は89.3%で、塩酸塩のmpは140〜142℃であった。
【化19】

【0064】
(2)N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド:例2の方法に従って、ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライド及びtrans−4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−アミンを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は88.6%で、mpは250〜252℃であった。
【化20】

【0065】
(例6)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−cis−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物6)の調製
(1)Cis−4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−アミン:例5の方法に従って、フタルイミドカリウム塩を、cis−1,4−ジヒドロ−2−ブテンと反応させると、N−(cis−4−クロロ−2−ブテン−1−イル)フタルイミドが得られ、次にこれを5−クロロ−2−メチルフェニルピペラジンと反応させると、N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−cis−2−ブテン−1−イル}フタルイミドが得られ、次にこれをヒドラジン水和物と反応させた。収率は85.7%で、塩酸塩のmpは127〜129℃であった。
【化21】

【0066】
(2)N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−cis−2−ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド:例5の方法に従って、ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−ホルミルクロライド及びcis−4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−2−ブテニル−1−アミンを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は86.3%で、mpは251〜253℃であった。
【化22】

【0067】
(例7)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物7)の調製
(1)Trans−4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−イル−アミン:例5の方法に従って、N−(trans−4−クロロ−2−ブテン−1−イル)フタルイミドを1−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジンと反応させると、N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}フタルイミドが得られ、次にこれをヒドラジン水和物と反応させた。収率は85.6%で、塩酸塩のmpは178〜180℃であった。
【0068】
(2)N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド:例1の方法に従って、ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−ホルミルクロライド及びtrans−4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−アミンを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は85.6%で、mpは208〜212℃であった。
【化23】

【0069】
(例8)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物8)の調製
例7の方法に従って、trans−4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−2−ブテン−1−イル−アミン及びベンゾオキサゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドを炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は87.5%で、mpは200〜202℃であった。
【化24】

【0070】
(例9)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物9)の調製
(1)4−アミノ−3−チオシアノ−ベンゾニトリル:10.0g(0.08mol)のp−アミノベンゾニトリル、13.0g(0.17mol)のチオシアン酸アンモニウムを、100mlの氷酢酸に溶解し、氷酢酸溶液を滴下し、氷水浴中で冷却しながら4mLを溶解した。添加後、反応を撹拌下で3時間行わせ、室温で30分間継続させた。反応が終了した後、反応混合物に水を加え、沈殿を促進させ、一晩静置し、ろ過し沈殿物を集め少量の水で洗浄し、完全に乾燥すると、mpが168〜170℃の橙黄色の固形生成物が13.2g(89.7%)得られた。
【化25】

【0071】
(2)2−アミノ−ベンゾ[d]チアゾール−6−カルボン酸:13.0g(0.07mol)の4−アミノ−3−チオシアノ−ベンゾニトリルを計量し、120mlの水に溶解し、均一に撹拌し、60mlの濃塩酸を加え、約100℃で6時間、還流及び撹拌下で反応させた。反応後、反応混合物を静置し、ろ過すると沈殿固形物が得られ、乾燥するとmpが280〜282℃の淡黄色の固形生成物が8.5g(59.0%)得られた。
【化26】

【0072】
(3)4−アミノ−3−チオ−安息香酸:25.0gの水酸化カリウムを計量し、50mlの水に溶解し、僅かに冷却し、窒素ガス保護下で8.3g(0.04mol)の2−アミノ−ベンゾ[d]チアゾール−6−ギ酸を加え、24時間還流及び撹拌下で反応させ、反応が終了した後、氷浴で冷却し、酸性化のために塩酸を加え、静置し、ろ過するとmpが280〜284℃の白色の固形生成物が5.2g(67.9%)得られた。
【化27】

【0073】
(4)ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボン酸:5.0g(0.03mol)の4−アミノ−3−メルカプト−安息香酸を計量し、撹拌しながら5.3g(0.05mol)の無水炭酸ナトリウムが溶解した40mLの水溶液に加え、窒素ガス保護下で45℃の油浴中で加熱し、4.3g(0.04mol)のクロロギ酸メチルを滴下し、添加後、0.5時間撹拌下で反応させ、次に一晩反応させるために80℃に加熱した。翌日、氷水浴下でpH2〜3に酸性化し、ろ過によって固形物を得て、少量の冷水で洗浄し、乾燥すると、mpが322〜328℃の白色の粉末状固形物が4.8g(82.2%)得られた。
【化28】

【0074】
(5)N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド:例3の方法に従って、ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボン酸を使用してベンゾチアゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドを調製し、次にこれを4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンと反応させ、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させた。収率は81.0%で、mpは154〜159℃であった。
【化29】

【0075】
(例10)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物10)の調製
例1の方法に従って、4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチルアミン及びベンゾチアゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドを、脱酸剤としての炭酸ナトリウムの存在下でアシル化させると生成物が得られた。収率は79.6%で、mpは216〜220℃であった。
【化30】

【0076】
(例11)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド(化合物11)の調製
例7の方法に従って、trans−4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−2−ブテニルアミンを、炭酸ナトリウムの存在下で、アシル化のためにベンゾチアゾリン−2−オン−6−ホルミルクロライドと反応させると生成物が得られた。収率は80.7%で、mpは160〜164℃であった。
【化31】

【0077】
(例12)
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物12)の調製
(1)3−アミノ−4−メルカプト安息香酸:100g(0.53mol)の4−クロロ−3−ニトロ安息香酸を400mLの水に懸濁させ、1バッチとして、300g(1.25mol)の硫酸ナトリウムを溶解させた300mLの水溶液に加え、反応液を7時間撹拌及び還流下で反応させ、冷却し、酢酸でpH7.5に中和し、活性炭素で脱色し、ろ過し、再び酢酸でpH4.5に酸性化し、ろ過によって固形物を得て、水で洗浄し、メタノール−水で結晶化させるとmpが185℃(dec.)の黄色の固形物が62.5g(62.5%)得られた。
【0078】
(2)ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボン酸:ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボン酸を調製する方法を参照して合成した。収率は78.5%で、mpは>320℃であった。
【0079】
(3)N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド:2.70g(0.010mol)の4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンを、60mLのジクロロメタンに溶解し、撹拌下で2.00g(0.010mol)のベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボン酸を加え、追加の15mLのアセトンを加え、次に1.38g(0.010mol)の1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール及び2.25g(0.011mol)のN,N’−ジクロロヘキシルカルボジイミドを加え、追加の3mLの無水メタノールを加え、一晩撹拌下で反応させた。翌日、反応混合物をろ過して固形物を除去し、ジクロロメタンで洗浄し、有機層を合わせ、追加の4mLのエタノールを加え、水を加え、層別化し、乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけると、最大極性を有する画分が得られ、これを濃縮すると粘性の生成物が得られ、これを塩酸−エチルエーテルで塩化すると、mpが135〜138℃の目標生成物が3.50g(73.4%)得られた。
【化32】

【0080】
(例13)
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド(化合物13)の調製
例12の方法に従って、合成における4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンに替えて、4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチルアミンを使用した。収率は78.5%で、mpは130〜133℃であった。
【化33】

【0081】
本発明を、さらに、以下の生物活性試験によって説明する。
【0082】
生物学的作用実験1:目標化合物の、ドーパミンD3及びD2受容体(D2R)の放射性リガンドに対する結合の実験
実験材料:安定的に形質移入されたCHO−D3R細胞系及びCHO−D2R細胞系、H−スピペロンは、GE Companyから購入し、ハロペリドール、キンピロールは、Sigma Companyから購入し、35S−GTPγSは、PE Companyから購入し、GTP−γS、GDP、トリス、EDTA−Na、EGTA、HEPES、PMSF、PPO及びPOPOPは、Sigma Companyから購入し、NaCl、KCl、KHPO、CaCl、グルコース、MgSO、MgCl及びCaClは、分析的に純粋なものをBeijing Chemical Reagent Companyから購入し、ジオキサン、ナフタレン及びエチレングリコールは、Beijing Chemical Reagent Companyから購入し、GF/Cのろ紙は、Whatman Companyから購入し、化合物は、上記の方法により得られた。
【0083】
実験ステップ:化合物を別々に計量し、細胞が90%の融合度に達したとき、細胞を消化し、4℃において2000rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、5mMのトリス、5mMのEDTA.2Na及び5mMのEGTA溶解物(pH7.4)中で沈殿を行わせ、30分間氷上に静置し、4℃の氷浴下で5〜10回注射針(4#針、0.45×13mmの使い捨て注射器)に通過させ、40000gで20分間遠心分離した。上清を廃棄し、沈殿物を再び氷冷した50mMのトリス−HCl(pH7.4)バッファー溶液に懸濁させ、5〜10回注射針に通過させ、4℃において40000gで20分間遠心分離した。タンパク質濃度は、クマシーブリリアントブルーG−250の方法で測定した。反応系への添加のために氷浴を用いた。使用した反応バッファー溶液は、1.5mMのCaCl、4mMのMgCl、1mMのEDTA、5mMのKCl及び120mMのNaClを含む、50mMのトリス−HCI(pH7.4)バッファー溶液であった。0.15〜4.8nM濃度の放射性リガンド、H−スピペロン、25〜30μg/チューブの膜タンパク質を使用し、非特異的結合用のチューブには、さらに10μMのハロペリドールを含め、種々の他の化合物の最終濃度は、1μM又は50nMとし、全反応容量は、0.2mLで、反応は、25℃の水浴中で60分間行い、減圧下でろ過し、1mLのシンチレーション液を充填し、cpmは、翌日に測定した。結果を、表1及び表2に示した。
【表1】


【表2】

【0084】
本発明の他の例の化合物もまた、表1及び表2の本発明の例の化合物と同様な実験結果であった。
【0085】
生物学的作用実験2:化合物1(Y−QA14)のD3R及びD2Rに対する、競合的阻害定数Kiの実験
実験方法及びステップは、生物学的作用実験1のものと同一であり、試験化合物Y−QA14の濃度は、10−16から10倍ずつ増大させ10−16〜10−5Mとし、実験には12の濃度を含め、得られたデータは、OriginPro7.0ソフトウェアの競合的阻害の曲線解析で処理し、Ki値を計算した。
【0086】
結果を図1及び図2に示した。これらの結果は、化合物1(Y−QA14)がD3Rにおいて2つの結合部位を有しており、このKi値は、別々に、Ki=0.052±0.003pM、Ki=2.03±0.4nMであり、一方、化合物1は、D2Rにおいては結合部位が1つだけであり、Kiは134.5±10.2nMであることを示している。比較により、化合物1は、D3R及びD2Rに対してそれぞれ10倍と66倍の選択性があることが見てとれ、高親和性の結合部位に対するこの値は、当技術分野における高選択性のD3R化合物よりも約1000倍高い。
【0087】
生物学的作用実験3:化合物1(Y−QA14)の内因活性に関する試験
実験方法:膜タンパク質を、氷水浴の下で反応系に加えた。反応バッファーは、3mMのMgCl、100mMのNaCl及び10μMのGDPを含む、50mMのトリス−HCl(pH7.4)バッファーとした。放射性リガンド35S−GTPγSは0.17nMのものとし、膜タンパク質は40〜45μg/チューブであり、刺激薬は、タンパク質と共に30℃で30分間(35S−GTPγSを加えず)プレインキュベートし、次に、35S−GTPγSを加え、30℃で30分間インキュベートした。非特異的結合のチューブには、さらに40μMのGTPγSを含めた。総反応容量は0.5mLであり、反応は氷水浴を用いて停止させた。反応液は、減圧下でWhatman−GF/Cのろ紙でろ過し、5mMのMgCl及び50mMのNaClを含有する冷バッファー溶液、50mMトリス−HCl(pH7.4)で5回洗浄した。ろ紙を乾燥し、1.5mLのEpチューブに設置し、1mLのシンチレーション液を加え、シンチレーション板に設置し、β液体シンチレーションカウンターを用いて放射線の強度を記録した(cpm)。特異的結合量=総結合量−非特異的結合量とし、各結合部位に対して複数のチューブを使用した。データは、OriginPro7.0ソフトウェアのLogistic formlaで分析した。結果を図3及び図4に示す。結果は、35S−GTPγS結合試験において、Y−QA14単独では、D3R結合Gタンパク質を活性化することができないが、D3Rアゴニストの興奮活性(agitation activity)を濃度依存式に阻害することができることを示している。
【0088】
生物学的作用実験4:ラットにおけるモルヒネによって引き起こされた条件付け場所嗜好性に対する化合物1(Y−QA14)の影響
実験メカニズム:条件付け場所嗜好性(CPP)試験は、薬物の精神的依存性を評価するために、現在当技術分野で用いられている古典的な試験モデルであり、試験動物(ラット、マウス)を条件付け場所嗜好性試験箱の白の表示エリアに置き、精神的依存性のある薬物としてモルヒネを投与し、次に、黒のエリア、白のエリア及びグレーエリア間の小さな扉を通って自由に移動する、条件付け場所嗜好性試験箱の黒と白の表示エリア内の動物の行動を観察する。動物が投与エリアに居るときはいつでも、黒又は白のエリアに対する場所嗜好性を形成するために動物に薬物を報酬として与え、この度合いは、薬物の精神的依存性に関係する。
【0089】
実験材料:動物:ウィスター系ラット、雄、体重180〜220g;試薬:モルヒネ塩酸塩(Qinghai Pharmaceutical Factory);化合物Y−QA14は、発明者が合成した。
計器:ラット用の条件付け場所嗜好性計器
薬物の調製:
モルヒネ:10mg/kg、1mgのモルヒネをlmLの再蒸留水に溶解する;
Y−QA14:1.0mg/kgは、DMSOに0.1mgのY−QA14を溶解し、次に、再蒸留水に加えて1mLにする;5.0mg/kgは、DMSOに0.5mgのY−QA14を溶解し、次に、再蒸留水に加えて1mLにする;10.0mg/kgは、DMSOに1mgのY−QA14を溶解し、次に、再蒸留水に加えて1mLにする。
実験ステップ:試験前の段階、訓練段階及び試験段階の3段階を含み、完了に向けて連続13日間施行する。
【0090】
1)試験前のセッション
1日目から3日目には、2つの箱の間にある羽目板を引き抜き、ラットを中央の箱に置き、ラットを3つの箱内で15分間自由に走らせ、黒い箱及び白い箱に対する自然な選好性を決定するために、2つの箱の各々内の動物の滞留時間を測定した。動物にはより短い滞留時間であった箱を薬物箱として用いたが、白い箱がいつも薬物箱であり、一方、長い滞留時間であった箱は、嗜好性のある箱であり非薬物箱として用いた。
【0091】
2)訓練のセッション
4日目から12日目には、動物達が箱間を自由に移動できないように、羽目板をはめ込んだ。試験は、8:30amから14:30amの間、毎日実施した。動物らを、1日1回、連続7日間生理食塩水と薬物を用いて別々に訓練した。3つのY−QA14投与群の動物らは、様々な用量のY−QA14を腹部に投与し、20分後モルヒネ10mg/kgを皮下に注射し、次に直ちに白い箱(薬物箱)に45分間置くか、又は生理食塩水を皮下注射し、次に直ちに黒い箱(非薬物箱)に45分間置き、これを1日1回循環させた。溶媒群の動物らは、生理食塩水を腹部に投与し、30分後溶媒を皮下注射し、次に直ちに白い箱に置き、生理食塩水を皮下注射し、次に直ちに黒い箱(非薬物箱)に45分間置き、これを1日1回循環させた。
【0092】
3)試験セッション
13日目に、2つの箱の間の羽目板を引き抜き、マウスを真ん中の箱に置き、15分間3つの箱内を自由に走らせ、白い箱(薬物箱)内のマウスの滞留時間をコンピュータ−によって記録した。
【0093】
5つの群を実験に用いた:(1)溶媒+生理食塩水;(2)モルヒネ+溶媒;(3)モルヒネ+Y−QA14の1.0mg/kg;(4)モルヒネ+Y−QA14の5.0mg/kg;(5)モルヒネ+Y−QA14の10.0mg/kg。
【0094】
実験結果:様々な群のマウスの薬物箱内の滞留時間を比較した。データは、単一因子の多重分散分析によって統計的に解析した。結果を図5に示した。結果は、マウスにおけるモルヒネによって引き起こされた条件付け場所嗜好性の試験では、Y−QA14の2つの用量レベル、5mg/kg及び10mg/kgは、モルヒネによって引き起こされた条件付け場所嗜好性の発生を有意に抑制できることを示している。
【0095】
生物学的作用実験5:精神疾患に対する化合物1(Y−QA14)の観察
実験目的:中心的なドーパミンの機能及び挙動を表す、2つの薬理学的試験法を用い、典型的な抗精神病薬のハロペリドールを対照として使用し、抗精神病薬としてのY−QA14の潜在的な使用可能性を事前に検討した。
【0096】
実験材料:動物:昆明マウス、雄、体重20〜30g;試薬:アンフェタミン(SIGMA);アポモルヒネ(SIGMA);ハロペリドール(the Institute of Toxicology and Pharmacology、the Academy of Military Medical Sciences);化合物Y−QA14は、本発明者が合成した。
薬物の調製:アンフェタミンは、蒸留水で調製した;アポモルヒネ及びハロペリドールは、0.5N塩酸に溶解し5%DMSO水溶液を加えて調製した;Y−QA14は、DMSOに溶解し、水で希釈した。
【0097】
実験方法:
1)アポモルヒネのマウスよじのぼり試験
マウスに、ドーパミンアゴニストとしてアポモルヒネ2mg/kgを皮下注射し、金網製の金属ケージ内に置くと、5分後マウスに明らかなよじのぼり行動が起こり、ケージの壁をよじのぼり、連続して20秒間以上の間地面に肢を接触させずにぶらさがった動物らを陽性動物とし、この行動は、注射したモデル動物で15〜30分後にピークに達した。抗精神病薬、ハロペリドール及びY−QA14を、アポモルヒネ投与の30分前に腹腔内に投与した。各群においてアポモルヒネ投与の15分後及び30分後に測定した陽性動物のよじのぼり率を記録し、比較して、最も高い群を計算に用いた(参照:Moore NAら、J Clin Psychiatry 1997年、58(Suppl 10):37〜44頁)。
【0098】
2)アンフェタミンマウスにおける活動亢進試験
6mg/kgでアンフェタミンを皮下注射したマウスは、15分後に自発活動の増大を示し、各々を1つの箱にして赤外線型の自発活動測定器(Institute of Materia Medica、Chinese Academy of Medical Sciences)に置き、10分間の活動数を記録した。抗精神病薬及びY−QA14を、アンフェタミン投与の15分前に腹腔内注射した。これらの群の平均自発活動数を記録し、比較した(参照:Moore NAら、J Clin Psychiatry 1997年、58(Suppl 10):37〜44頁)。
【0099】
実験結果
1)アポモルヒネマウスのよじのぼり試験
アポモルヒネの2mg/kg、scでは、87%の動物によじのぼり行動の出現を引き起こし、ハロペリドール0.1mg/kgで抑制された後は、25%の動物だけによじのぼり行動が現われ、ハロペリドール0.2mg/kgで抑制された後は、よじのぼり行動を見せた動物は、さらに12.5%に減少した。表3に示すように、Y−QA14の20mg/kgでの腹腔内注射では有意な抑制効果が示されず、30mg/kgでは一部の抑制が示され、他方、40mg/kgでは有意な抑制が示され、よじのぼり行動を見せた動物はいなかった。
【表3】

【0100】
2)アンフェタミンマウスの活動亢進試験
アンフェタミンの6mg/kg、scでは、自発活動をする動物の数を2倍以上増加させ、ハロペリドール0.1mg/kgでは、有意な抑制作用が示され、自発活動をする動物の数が12%まで減少し、ハロペリドール0.2mg/kgでは、より有意な抑制作用が示され、自発活動をする動物の数は僅かに6%であり、これは、健常動物の自発活動数より少なかった。20及び30mg/kg Y−QA14では、自発活動をする動物の数はモデル動物の約75%であり、40mg/kg群ではその数はモデル動物の60%であり、全て有意な抑制を示した(表4参照)。
【表4】

【0101】
これらの実験結果により、Y−QA14は、マウスにおいて、アポモルヒネによって引き起こされたよじのぼり行動を有意に抑制できることが分かり、マウスにおいて、アンフェタミンによって引き起こされた活動亢進を有意に抑制できることが分かり、これらは、Y−QA14は、精神疾患に対して潜在的な治療効果があることを示している。
【0102】
上記の生物学的実験2〜5において、本発明の他の実施例の化合物もまた、化合物Y−QA14の結果と本質的に同様な実験結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


[式中、
Lは、CHCHCHCH、cis−若しくはtrans−CHCH=CHCH又はtrans−シクロヘキシル−4−エチルであり、
、R及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルキルオキシ、C〜C10アリールオキシ、置換アリールオキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜C10アリールアミノ、置換アリールアミノ、ジ−(C〜Cアルキル)アミノ、ジ−(C〜C10アリール)アミノ、ジ−(置換アリール)アミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C6〜10アリールアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアミド、カルボキシル、C1〜10ヒドロカルボニルオキシホルミル、C6〜10アリールオキシホルミル、カルバモイル、C1〜10ヒドロカルボニルカルバモイル、又はC6〜10アリールカルバモイルであり、式中、ヘテロアリール環は、N、O又はSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ又はトリハロゲン化C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ又はC6〜10アリールアミドから選択される、又はR及びRは、一緒に結合して5、6若しくは7員環を形成し、
XはO又はSであり、同一である又は異なるY及びZは、それぞれCH又はNであり、
ホルミルは、オキサゾリン−2−オン又はチアゾリン−2−オン環の4、5、6又は7位にあり得る]
の化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
式I
【化2】


[式中、Lは、−CHCHCHCH−、cis−若しくはtrans−CHCH=CHCH−又はtrans−シクロヘキシル−4−エチルであり、
、R及びRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン(F、Cl、Br、又はI)、C〜Cアルキル、置換C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、置換C〜Cアルケニル、フェニル、置換フェニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C〜Cアルキルオキシ、C〜C10アリールオキシ、置換C〜C10アリールオキシ、C〜Cアルキルアミノ、C〜C10アリールアミノ、置換アリールアミノ、ジ−(C〜Cアルキル)アミノ、ジ−(C〜C10アリール)アミノ、ジ−(置換C〜C10アリール)アミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C6〜10アリールアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアミド、カルボキシル、C1〜10ヒドロカルボニルオキシホルミル、C6〜10アリールオキシホルミル、カルバモイル、C1〜10ヒドロカルボニルカルバモイル、又はC6〜10アリールカルバモイルであり、式中、ヘテロアリール環は、N、O又はSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する単環式又は縮合芳香環であり、置換基を有する各基の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルオキシ、C1〜6アルキルチオ、モノ、ジ又はトリハロゲン化C1〜6アルキル、アミノ、C1〜6アルキルアミノ、C1〜10ヒドロカルボニルアシルオキシ、C1〜10ヒドロカルボニルアミド、C6〜10アリールアシルオキシ又はC6〜10アリールアミドから独立して選択される、又は
及びRは、一緒に結合して5、6若しくは7員環を形成し、
XはO又はSであり、
同一である又は異なるY及びZは、それぞれC又はNであり、
ホルミルは、オキサゾリン−2−オン又はチアゾリン−2−オン環の4、5、6又は7位にあり得る]
の化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項3】
Lが−CHCHCHCH−、又はcis−若しくはtrans−CHCH=CHCH−である、請求項1又は2に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
、R及びRがそれぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜Cアルキル又はC〜Cアルキルオキシであり、好ましくは、R、R及びRがそれぞれ独立して、H、F、Cl、メチル、エチル、メチルオキシ又はエチルオキシである、請求項1又は2に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項5】
XがOである、請求項1又は2に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項6】
Y及びZの両方がCである、請求項1又は2に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項7】
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]−cis−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾオキサゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]−trans−2−ブテン−1−イル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−6−カルボキサミド;
N−{4−[4−(2−メチルオキシフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド;又は
N−{4−[4−(5−クロロ−2−メチルフェニル)ピペラジニル]ブチル}−ベンゾチアゾリン−2−オン−5−カルボキサミド、
から選択される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)、任意の形態のストレス、不安、睡眠障害及び男性性機能障害などのD3Rの機能障害に関係する疾患の予防又は治療のため、並びに腎保護及び免疫調節のため、又はD3Rの機能障害に関係するD3Rの機能若しくは疾患の研究のためのツールとしての医薬品の製造における、請求項1から7までのいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項9】
ドーパミンD3受容体を調節する活性を有する医薬品の製造における、請求項1から7までのいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは光学異性体、又は薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体若しくは添加剤とを含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の、式Iの化合物、又はその互変異性体、そのラセミ体若しくは立体異性体、又はその薬学的に許容される塩の予防及び/又は治療有効量を、これを必要とする対象に投与することを含む、統合失調症、パーキンソン病、薬物依存(又は薬物嗜癖)及び薬物回帰、ストレスの任意の形態、不安、睡眠障害、男性性機能障害、腎機能障害及び免疫不全などのD3Rの機能障害に関係する疾患の予防又は治療方法。
【請求項12】
次のステップ、
a)式II
【化3】


のカルボン酸化合物を、式IIa
【化4】


の塩化アシル化合物に変換するステップと、
b)適当な塩基の存在下で、ステップa)で得られた式IIaの塩化アシル化合物を、式III
【化5】


のアミン化合物を反応させて、式I
【化6】


の化合物を得るステップと
を含み、式中、それぞれの記号の定義は、請求項1から7までのいずれか一項に記載のものと同じである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の式Iの化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、光学異性体、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−505165(P2012−505165A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530350(P2011−530350)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001096
【国際公開番号】WO2010/040274
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511089516)インスティチュート オブ ファーマコロジー アンド トキシコロジー アカデミー オブ ミリタリー メディカル サイエンシズ ピー.エル.エー.チャイナ (1)
【Fターム(参考)】