説明

新規なヘクサペプチドおよび活性化酸素阻害剤

【課題】活性化酸素阻害作用を有する新規なヘクサペプチド及びそのヘクサペプチドを有効成分として含有し、毒性がきわめて低く、安全性がきわめて高い、新規な活性化酸素阻害剤を提供することを課題とする。
【解決手段】次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸配列によるペプチド構造を有する新規なヘクサペプチド、及びそのヘクサペプチドを有効成分として含有する活性化酸素阻害剤。このヘクサペプチドは鰻骨のタンパク質分解酵素の分解液から精製分離するか又は合成法によって製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品としての有用性を有し、新規なアミノ酸配列によるペプチド構造を有するヘクサペプチドを有効成分とする活性化酸素阻害剤に関する。本発明に係るヘクサペプチドは、鰻骨のタンパク質分解酵素の分解液から分離精製することができ、又、合成法によって製することも可能である。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品由来のペプチドは、活性化酸素阻害剤としての利点を有する。すなわち、従来、天然物又は天然物由来の活性化酸素阻害剤に関しては、以下の文献に開示されている。
【特許文献1】 特開平06−128168号公報
【特許文献2】 特開平08−009892号公報
【特許文献3】 特開平09−059297号公報
【特許文献4】 特開平09−157291号公報
【特許文献5】 特開平09−157292号公報
【特許文献6】 特開平11−035598号公報
【特許文献7】 特開平11−035599号公報
【特許文献8】 特開平11−292897号公報
【非特許文献1】McCord,J.M.&Fridovich,I.:J.Biol.Chem.,244,6049(1969)
【非特許文献2】山口等、ニューフードインダストリー、31巻、18−22頁(1989年)
【非特許文献3】拓殖等、日本農芸化学会誌,65巻,1635頁(1991年)
【非特許文献4】陳等、J.Agric.Food Chem.,46卷,49頁(1998年)
【非特許文献5】工藤等、日本食品科学工学会誌,48巻,44頁(2001年)
【非特許文献6】受田等、日本農芸化学会誌,72巻,1181頁(1998年)
【0003】
活性化酸素が関与する疾病は、火傷、関節炎などの炎症、再環流障害、抗癌剤の副作用、放射線障害、消化性潰瘍、細菌性ショック、悪液質、自己免疫疾患など幅広く存在する。好中球やマクロファージなどの活性化によって、発生する大量の活性化酸素が引き起こす疾患は、すべて対象となる。一般に、酸素には動物に必須の酸素(三重項酸素分子:)と、特定の条件あるいは体の不調時に生じるラジカル(活性化酸素)とが存在する。ラジカルは直接又は間接的(過酸化反応という形で)に細胞膜、細胞内顆粒膜、あるいはDNAをはじめ種々の細胞成分を変質、損傷させたりする。このラジカルは体内で生産され、その種類はスーパーオキシドアニオン(・)、一重項酸素(・)、水酸化ラジカル(・OH)等が存在する。このうちスーパーオキシドアニオン(・)は細胞膜の不飽和脂肪酸等に作用して過酸化反応を引き起こし、脂質に対する酸化力は動物に必須な酸素の数千倍も高いといわれている。活性化酸素阻害剤としてのスーパーオキシドジムスターゼ(SOD、酵素番号EC1.15.1.1)は、1969年マクコルドら[非特許文献1]によってその作用が発見された酵素であり、酸素分子が一電子還元されて生じるスーパーオキシドアニオン(・)を不均化する
・+2H→ H+O
を触媒する。人体が正常なときにはSODが働いてスーパーオキシドアニオンの発生を抑えている。このSOD活性は加齢と共に低下し、即ち壮年期から老年期になると活性が低下し、SOD活性の増減は生体の老化、癌化のバロメーターともいわれている。このようなSOD活性が低下するとラジカルの発生は抑えにくくなりSODを摂取補強するか、又はラジカルを捕捉除去する活性化酸素阻害剤の摂取が必要となってくる。
【0004】
一方、水溶性の抗酸化剤としてのアミノ酸から蛋白質にいたるポリペプチドの活性化酸素阻害作用は、油脂をペプチド類が包み込むことにより酸素分子と不飽和脂肪酸の接触を阻害し、脂質ペルオキシラジカル(LOO・)の発生を抑制すると考えられており、BHA(ブチルヒドロキシルアニソール)及びBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)の抗酸化作用のように、油脂(L)の酸化の際に生じるラジカル(LOO・)に作用して、酸化の連鎖反応を停止させるラジカル捕捉作用とは区別している。
LOO・+AH →LOOH+AH・
2AH・→2AH+A 又は LOO・+AH・→LOOH+A
(AH;抗酸化剤)
【0005】
今日、抗癌、老化防止に対する特効薬がない状況で、環境中からDNA損傷因子、突然変異因子、発癌因子、老化因子等を取り除き不活性化し、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を示す活性化酸素阻害剤に関する研究や検討が進められている。一方、水溶性の抗酸化剤として、アミノ酸から蛋白質に至るポリペプチドのアミノ酸配列と抗酸化力に関する知見は極めて少なく、山口ら[非特許文献2]は、ジペプチドがアミノ酸や蛋白質よりも抗酸化力が強いことを示しており、又、最近、拓殖ら[非特許文献3]がAla−His−Lys,val−His−His,Val−His−His−Ala−Asn−Glu−Asnを、陳ら[非特許文献4]がLeu−Leu−Pro−His−His他5種類の抗酸化ペプチドを,工藤ら[非特許文献5]がAla−Arg−His−Pro−His−Pro−His−Leu−Ser−Phe−Metを報告している。これに対し、発明者らはカテキン類[特許文献1]及び活性化酸素消去ペプチド(抗酸化ペプチド)[特許文献2〜8]等を数多く報告してきているが、これら活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用等を有する活性化酸素阻害剤が、未だ医薬品として開発が進んでいるとの報告はない。
【0006】
これまで、活性化酸素阻害剤としてのSODはその製造が困難であり又原料の入手に制限があり、ビタミンE、ビタミンC、カテキン・フラボノイド及びペプチド類等は、生体を用いた実験では活性化酸素阻害作用が十分でない等の難点があり、又、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を示す活性化酸素阻害剤の多くは、その殆どが化学合成で製造されたものであり、たとえ植物や動物からの材料を用いた天然物由来のものであっても、その製造過程で人体に害を及ぼす化学物質を用い、生成物の一部を化学物質と反応させて作られたものが多い。このような背景のもと、更に強力な作用を有する活性化酸素阻害剤が要望されている。
【0007】
上記の状況に鑑み、本発明者は、活性化酸素阻害作用を有すると共に、安全で、実用に供し得る新規ペプチドについて鋭意研究した結果、鰻骨のタンパク質分解酵素の分解液から得られた特定アミノ酸配列構造のヘクサペプチドが活性化酸素阻害作用を奏することを見いだした。又、この鰻骨由来のヘクサペプチドと同じアミノ酸配列のヘクサペプチドを合成法によって製したところ、鰻骨由来のヘクサペプチドと同様、活性化酸素阻害作用を有することが解明されたので、これを有効成分とする活性化酸素阻害剤を開発することができ、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、活性化酸素阻害剤を有する新規なヘクサペプチド及びそのヘクサペプチドを有効成分として含有し、毒性がきわめて低く、安全性がきわめて高い、新規な活性化酸素阻害剤を提供することを課題とする。
【問題が解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明のうち、請求項1に記載する発明は、
次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を有する新規なヘクサペプチドである。(式中、アミノ酸残基を表す各記号は、アミノ酸化学において慣用の表示法によるものである。)
又、本発明のうち、請求項2に記載する発明は、
次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を有するヘクサペプチドを有効成分として含有することを特徴とする活性化酸素阻害剤である。である。(式中、アミノ酸残基を表す各記号は、アミノ酸化学において慣用の表示法によるものである。)
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1に記載のヘクサペプチド(以下「本発明のヘクサペプチド」という。)は、優れた活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を有し、活性化酸素阻害作用を示す。従って、本発明に係る請求項2に記載の活性化酸素阻害剤(以下「本発明の活性化酸素阻害剤」という。)は、これら組織障害を引き起こす過剰な活性酸素を分解して組織を守る作用を持つことから、例えば抗炎症剤として、関節炎やリュウマチなどに有効であるほか、ベーチュット病、心筋梗塞等に対しても有用である。
尚、この新規なヘクサペプチドは、構造的にそのアミノ酸配列を部分構造とするペプチドにおいて、構造中に採用することもできる。
【0011】
又、本発明のヘクサペプチドは、静脈内への繰り返し投与を行った場合、抗体産生を惹起せず、アナフィラキシーショックを起こさない。更に、本発明のヘクサペプチドは、L−アミノ酸のみの配列構造からなり、投与後、生体内のプロテアーゼにより徐々に分解される為、毒性は極めて低く、安全性は極めて高い(LD50>5000mg/kg:ラット経口投与)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のヘクサペプチドは、次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Glnで示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を有する新規なヘクサペプチドであり、常温における性状は、白色の粉末である。
本発明のヘクサペプチドは、化学的に合成する方法または魚介類の骨、特に鰻骨のタンパク質分解酵素の分解液から分離精製する方法によって得ることができる。
【0013】
本発明のヘクサペプチドを化学的に合成する場合には、液相法又は固相法等の通常のペプチド合成法によって行なうことができるが、好ましくは、固相法によってポリマー性の固相支持体へ前記ヘクサペプチドのカルボキシル末端側(グルタミン)からそのアミノ酸残基に対応したL体のアミノ酸を、順次ペプチド結合によって結合していくのがよい。そして、そのようにして得られた合成ヘクサペプチドは、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素等を用いてポリマー性の固相支持体から切断した後、アミノ酸側鎖の保護基を除去し、逆相系のカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」と略記する。)等を用いた通常の方法で精製することができる。
【0014】
又、本発明のヘクサペプチドは、上記のとおり、鰻骨のタンパク質分解酵素の分解液から分離精製することができるが、その場合には、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、鰻骨を用いて加水分解する。加水分解は常法に従って行うことでよい。例えば、ペプシン等のタンパク質分解酵素で加水分解する場合は、鰻骨のホモジネイトを必要に応じて更に加水分解した後、酵素の至適温度まで加温し、pHを至摘値に調整し、酵素を加えてインキュベートする。次いで必要に応じて中和した後、酵素を失活させて加水分解液を得る。その加水分解液を濾紙及び/又はセライト等を用いて濾過することによって不溶性成分を除去し、得られた濾液をセロファン等の半透膜を用いて適当な溶媒(例えば、水、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液の中性の緩衝液等)中で充分に透析し、その濾液中の成分で半透膜を通過した成分を含む溶液を強酸性陽イオン交換樹脂(例えば、ダウケミカル社製のDowex 50W、アンバーライト社製のAmberlite IR−120等)にかけ、その吸着溶出画分から活性化酸素阻害活性を有する成分を含有する画分を得、その得られた活性化酸素阻害活性画分をゲルろ過(例えば、ファルマシア社製のSephadex G−25、バイオラッド社製のBio−Gel P−6等)によって分画し、その得られた活性化酸素阻害活性画分を陽イオン交換ゲル濾過(例えば、ファルマシア社製のSP−Sephadex C−25等)によって分画し、最終的に得られた活性化酸素阻害活性画分を更に逆相HPLCによって分画することによって単離精製を行うことができる。
【0015】
本発明のヘクサペプチドの製法においては、魚介類骨としては、本発明の課題を達成できる限り、いかなる魚介類の骨を用いてもよいが、好ましくは鰻骨を用いるのがよい。
【0016】
本発明の活性化酸素阻害剤は、通常用いられる賦形剤等の添加物を用いて注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤等に調製することができる。これらの各種製剤において用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤又は潤沢剤の種類は、特に限定されず、通常の注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤又は散剤に用いられるものを使用することができる。賦形剤としては、結晶セルロース等の糖類、マンニトール等の糖アルコール類、でんぷん類、無水リン酸カルシウム等、結合剤としては、でんぷん類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を、崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース及びそのカリウム塩類を、潤沢剤としては、ステアリン酸及びその塩類、タルク、ワックス類をあげることができる。又、製剤の調整にあたっては、必要に応じ、メントール、クエン酸及びその塩類、香料等の矯臭剤を用いることができる。注射用の無菌組成物は、常法により、本発明のヘクサペプチドを、注射用水、生理食塩水及びキシリトールやマンニトール等の糖アルコール注射液、プロピレングリコールやポリエチレングリコール等のグリコールに溶解又は懸濁させて注射剤とすることができる。この際、緩衝液、防腐剤、酸化防止剤等を必要に応じて添加することができる。本発明のヘクサペプチドを含有する製剤は、凍結乾燥品又は乾燥粉末の形とし、用時、通常の溶解剤、例えば水又は生理食塩水に溶解して用いることもできる。
【0017】
本発明の活性化酸素阻害剤の投与方法としては、通常は、SODが欠乏している哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ラット等)に注射すること、あるいは経口投与することがあげられる。投与量は、例えば、動物体重1kg当たり 本発明の活性化酸素阻害剤0.01〜10mgの量が適当である。投与回数は、通常、1日1〜4回程度であるが、投与経路によって、適宜調整することができる。
【0018】
以下、実施例及び試験例をもって本発明を更に説明する。
【実施例1】
【0019】
<本発明のヘクサペプチドの鰻骨からの製造例>
鰻骨500gに2規定の酢酸水5Lを加え、ホモジナイズ後、室温で1週間撹拌しながら、鰻骨由来のタンパク質、所謂、鰻骨コラーゲンの抽出を行った。1週間後、ホモジネイト液を濾過助剤;ラジオライト♯100による珪藻土濾過を行い、得られた清澄濾液を透柝チューブ(36inch、和光純薬工業製)に詰め、流水に対して3日間透析を行い、透析内液を得た。この透析内液を凍結乾燥して、93gの鰻骨コラーゲンを得た。この鰻骨コラーゲン粉末に脱イオン水600mLを加えて溶解し、1規定の塩酸にてpHを2.0に調整した後、ペプシン(メルク社製、酵素番号EC3.4.23.1)2.79gを添加し、37℃で24時間撹拌しながら酵素分解を行った。反応後、分解液を直ちに限外濾過膜(アミコン社製、YM10型、¢76mm)に通過させ、通過液をDowex 50W X4[H]カラム(¢4.5×20cm)に負荷した。そのカラムを脱イオン水で十分洗浄した後、2規定のアンモニア水800mLを用いて溶出した。減圧濃縮操作によりアンモニアを除去して濃縮液60mLを得た。この濃縮液4mLを予め脱イオン水で緩衝化したSephadex G−25(¢2.3×140cm)に負荷し、流速20mL/hr、各分画量10mLでゲル濾過を行った。ゲル濾過を繰り返し、大量分取した活性化酸素阻害活性の高いペプチド画分を集めて凍結乾燥し、鰻骨コラーゲン由来のペプチド粉末(以下「鰻骨ペプチド」と略記する。)とした。この鰻骨ペプチド粉末4gを脱イオン水30mLに溶解後、予め脱イオン水で緩衝化したSP−Sephadex C−25〔H〕カラム(¢1.5×47.2cm)に負荷し、脱イオン水1000mLから3%塩化ナトリウム水1000mLの濃度勾配を行い、溶出した。流速80mL/hr、各分画量10mLでカラムクロマトグラフィーを行った。SP−Sephadex C−25クロマトグラフ中の活性化酸素阻害活性画分を集めて凍結乾燥し、精製鰻骨ペプチド粉末を得た。この精製鰻骨ペプチド粉末20mgを60μLの脱イオン水に溶解した後、逆相HPLCを行った。カラムとしては野村化学社製Develosil ODS−5(4.5mmID X 25cmL)を使用し、移動相としては0.05%トリフルオロ酢酸(以下「TFA」と略記する。)から25%アセトニトリル/0.05%TFAの濃度勾配法を行い、流速1.0mL/分、波長220nmでHPLCを行った結果、溶出時間;47分に活性化酸素阻害活性の高いペプチドフラグメントのピークを得た。
この逆相HPLC分析の結果は図1に示す。
【0020】
再度、逆相HPLCリクロマトグラフィーして得たペプチドフラグメントのアミン酸分析を行ったところ、Lys;0.92、Gly;1.04、Thr;0.89、Pro;095、Ala;1.07及びGln;0.87であった。このようにして得られた活性化酸素阻害作用を有するペプチドフラグメントのアミノ酸配列は、アプライドバイオシステム(ABI)社製のプロティンシークエンサー477A型を用いて決定された。その結果、本実施例に係る新規なペプチドは、次式、
Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸配列で表されるヘクサペプチドであることが確認された。
この新規なヘクサペプチドの常温における性状は、白色の粉末である。
【0021】
本実施例に係る新規なヘクサペプチドを活性化酸素阻害剤として、例えば錠剤に製剤する場合には、常法にしたがって、例えば次のように処理すればよい。(1)ペプチド13g、(2)乳糖95g、(3)コーンスターチ33g、(4)ステアリン酸マグネシウム1.1gを原料とし、まず(1)、(2)及び13gのコーンスターチを混和し、7gのコーンスターチから作ったペーストと共に顆粒化し、この顆粒に4.2gのコーンスターチと(4)とを加え、得られた混合物を圧縮錠剤機で打錠し、錠剤1000個を製造する。
【実施例2】
【0022】
<本発明のヘクサペプチドの合成法による製造例>
アプライドバイオシステム(ABI)社製のペプチド自動合成装置430A型を用いた固相法によって、本発明のペプチドを合成した。固相担体としては、スチレンジビニルベンゼン共重合体(ポリスチレン樹脂)をクロロメチル化した樹脂を使用した。まず、本発明のヘクサペプチドのアミノ酸配列にしたがって、常法どおり、そのC末端側のグルタミンからクロロメチル樹脂に反応させ、ペプチド結合樹脂を得た。このときのアミノ酸は、t−ブトキシカルボニル(以下「t−Boc」と略記する。)基で保護されたt−Bocアミノ酸を使用した。次に、このペプチド結合樹脂をエタンジチオールとチオアニソールからなる混合液に懸濁し、室温で10分間撹拌後、水冷下でトリフルオロ酢酸を加え、さらに10分間撹拌した。この混合液にトリフルオロメタンスルホン酸を滴下し、室温で30分間撹拌した後、無水エーテルを加えてその生成物を沈殿させて分離し、その沈殿物を無水エーテルで数回洗浄した後、減圧下で乾燥した。このようにして得られた未精製の合成ペプチドは蒸留水に溶解した後、逆相系のカラムC18(5μm)を用いたHPLCにより精製した。移動相として(A)0.1%TFA含有蒸留水、(B)0.1%TFA含有アセトニトリル溶液を使用し、(A)液が86分間で71%→22%の濃度勾配により流速1.5mL/minでクロマトグラフィーを行った。紫外部波長218nmで検出し、最大の吸収を示した溶出画分を分取し、これを凍結乾燥することによって目的とする合成ヘクサペプチドを得た。
【0023】
この合成ヘクサペプチドをマススペクトル分析により分析した結果、アミノ酸配列が前記で示したアミノ酸配列構造を有するヘクサペプチドであることが確認された。このマススペクトル分析の結果は、図2に示す。
上記の合成によって得られた本発明のヘクサペプチドは、以下に示す試験によって、抗酸化作用並びに活性化酸素フリーラジカル消去作用等の活性化酸素阻害作用が確認された。
【試験例1】
【0024】
<抗酸化作用の測定>
抗酸化作用の測定として、反応液はリノール酸51.1mg、エタノール4.052mL、0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)4.0mL、脱イオン水1.948mLの混合液に、抗酸化作用を有するペプチド1〜3mg添加し、全量が10mLとなるように調製した。この溶液をネジ付き試験管で密封し50℃の恒温器中に放置し、24時間毎にリノール酸の過酸化物価をロダン鉄法で測定した。即ち反応液0.1mL、75%エタノール液9.7mL、30%ロダンアンモニウム液0.1mL、0.02M塩化第二鉄を含む3.5%塩酸溶液0.1mLを添加し、3分間反応させた後、吸光度500nmを測定した。その際、500nmの吸光値が0.300に達するまでの日数を誘導期間(日)とした。本発明のヘクサペプチド0.1mgの抗酸化活性(誘導日数)は、0.1mg:23日、0.2mg:25日、0.3mg:28日であった。
【試験例2】
【0025】
<活性化酸素フリーラジカル消去作用の測定>
受田らの方法[農化誌,72巻,1181頁(1998年)]に従って測定した。即ち、2.5mLの緩衝液(50mM)が入った試験管に3mMキサンチン、3mM EDTA、1mM XTT及び試料溶液をそれぞれ0.1mL加え、直ちにトリガーとして57mU/mL XODを0.1mL加えた。25℃で正確に20分間反応させた後,470nmにおける吸光度を測定した。活性化酸素フリーラジカル(スーパーオキシドアニオン)によるXTTの還元を50%阻害する濃度をIC50値とした。本発明のヘクサペプチドの活性化酸素フリーラジカル消去活性すなわち活性化酸素阻害活性(IC50値)は、2.73μMであった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のヘクサペプチド及びそれを有効成分とする活性化酸素阻害剤は、抗酸化作用並びに活性化酸素フリーラジカル消去作用等の活性化酸素阻害作用を有することが確認された。従って、本発明のヘクサペプチドは活性化酸素阻害剤の対象となる虚血性心疾患者、慢性関節リュウマチ及び重症火傷患者の治療又は予防薬として大いに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のヘクサペプチドの逆相HPLCによる分離精製の結果を示すグラフ(実施例1)
【図2】本発明のヘクサペプチドのマススペクトルを示すグラフ(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸配列で表わされる新規なヘクサペプチド。
【請求項2】
次式;Lys−Gly−Thr−Pro−Ala−Gln
で示されるL体のアミノ酸配列で表わされる新規なヘクサペプチドを有効成分として含有することを特徴とする活性化酸素阻害剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−199671(P2006−199671A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41267(P2005−41267)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(591167119)
【Fターム(参考)】