説明

新規な切断特異性を有するI−CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型及びその使用

±8位〜±10位に多様性を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製する方法。該方法により得ることができるI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物。遺伝子操作、ゲノム療法及び抗ウイルス療法のための、上記のI-CreIエンドヌクレアーゼ変異型及び誘導される生成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、±8位〜±10位に多様性を有する変異I-CreI部位を切断できるI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製する(engineering)ための方法に関する。本発明は、また、上記の方法により得ることができるI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型、該変異型をコードするベクター、該ベクターにより改変された細胞、動物又は植物、並びに上記のI-CreIエンドヌクレアーゼ変異型及び誘導生成物の、遺伝子操作(genetic engineering)、ゲノム療法及び抗ウイルス療法のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メガヌクレアーゼは、定義によると、生細胞の特定の遺伝子座にDNA二本鎖切断(DSB)をもたらし得る大きい(>14 bp)切断部位を有する配列特異的エンドヌクレアーゼである(Thierry及びDujon, Nucleic Acids Res., 1992, 20, 5625〜5631)。メガヌクレアーゼは、培養細胞及び植物中のそれらの標的配列の近傍で相同組換えを刺激するために用いられており(Rouetら, Mol. Cell. Biol., 1994, 14, 8096〜106; Choulikaら, Mol. Cell. Biol., 1995, 15, 1968〜73; Donohoら, Mol. Cell. Biol, 1998, 18, 4070〜8; Elliottら, Mol. Cell. Biol., 1998, 18, 93〜101; Sargentら, Mol. Cell. Biol., 1997, 17, 267〜77; Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 5055〜60; Chiurazziら, Plant Cell, 1996, 8, 2057〜2066)、これにより、メガヌクレアーゼにより誘導される組換えが、ゲノム操作のための効率的で確固とした方法になる。メガヌクレアーゼ誘導組換えの使用は、天然メガヌクレアーゼのレパートリーにより制限されており、現在の技術の主要な制限は、興味のある遺伝子座にメガヌクレアーゼ切断部位を予め導入する必要があることである。
【0003】
つまり、仕立てた基質特異性を有する人工メガヌクレアーゼの作製について、多くの研究が行われている。このようなタンパク質は、真の染色体配列を切断するために用いることができ、広い応用範囲のゲノム操作についての新しい展望を開き得る。例えば、メガヌクレアーゼは、単遺伝子性遺伝性疾患と連結する変異の修正を誘導し、現在の遺伝子治療アプローチにおいて用いられる無作為に挿入される導入遺伝子による危険性を回避するために用いることができる(Hacein-Bey-Abinaら, Science, 2003, 302, 415〜419)。
【0004】
最近、Cys2-His2型ジンクフィンガータンパク質(ZFP)のジンクフィンガーDNA結合ドメインを、FokIエンドヌクレアーゼの触媒ドメインと融合させて、ヒトリンパ様細胞を含む種々の細胞種において組換えを誘導できた(Smithら, Nucleic Acids Res, 1999, 27, 674〜81; Paboら, Annu. Rev. Biochem, 2001, 70, 313〜40; Porteus及びBaltimore, Science, 2003, 300, 763; Urnovら, Nature, 2005, 435, 646〜651; Bibikovaら, Science, 2003, 300, 764)。ZFPの結合特異性は、比較的容易に操作され、多くの(g/a)nn(g/a)nn(g/a)nn配列に結合可能な新規な人工ZFPのレパートリーが、現在、利用可能である(Paboら, 上記; Segal及びBarbas, Curr. Opin. Biotechnol., 2001, 12, 632〜7; Isalanら, Nat.
Biotechnol., 2001, 19, 656〜60)。しかし、非常に狭い基質特異性を維持することがゲノム工学的応用についての主要な課題の1つであり、現在のところ、ZFPが、治療用途についての非常に厳密な要件を充足するかどうか明確でない。さらに、これらの融合タンパク質は、おそらく特異性のレベルが低いために、細胞内で非常に毒性が高いことが示されている(Porteus及びBaltimore, 上記; Bibikovaら, Genetics, 2002, 161, 1169〜1175))。
【0005】
本質的に、メガヌクレアーゼは、可動性の遺伝的要素によりコードされるエンドヌクレアーゼのファミリーであるホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)により本質的に代表され、
その機能は、ホーミングと呼ばれるプロセスにおけるDNA二本鎖切断(DSB)誘導組換え事象を開始することである(Chevalier及びStoddard, Nucleic Acids Res., 2001, 29, 3757〜74; Kostrikenら, Cell; 1983, 35, 167〜74; Jacquier及びDujon, Cell, 1985, 41, 383〜94)。数百のHESが、細菌、真核生物及び古細菌で同定されている(Chevalier及びStoddard, 上記)。しかし、選択した遺伝子でHE切断部位を見出す可能性は、非常に低い。
【0006】
生物学的機能並びに有効性及び特異性の点でのそれらの例外的な切断特性に鑑みて、HEは、理想的な骨格を提供して、ゲノム操作のための新規なエンドヌクレアーゼを導く。最近10年間で、4つのHEファミリーのうち最大のLAGLIDADGファミリーを特徴付けるデータが蓄積されている(Chevalier及びStoddard, 上記)。LAGLIDADGは、ファミリー内で実際に保存されている唯一の配列のことであり、タンパク質中に1又は(多くの場合)2コピーが見出される。I-CreIのような単一モチーフのタンパク質は、ホモダイマーを形成し、パリンドローム又は偽パリンドロームDNA配列を切断するが、I-SceIのようなより大きい二重モチーフタンパク質はモノマーであり、非パリンドローム標的を切断する。7つの異なるLAGLIDADGタンパク質が結晶化されており、これらはコア構造の非常に著しい保存を示し、このことは、一次配列レベルでの類似性の欠如と対照的である(Juricaら, Mol. Cell., 1998,
2, 469〜76; Chevalierら, Nat. Struct. Biol., 2001, 8, 312〜6 ; Chevalierら J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜69; Moureら, J. Mol. Biol, 2003, 334, 685〜95; Moureら, Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 764〜70; Ichiyanagiら, J. Mol. Biol., 2000, 300, 889〜901; Duanら, Cell, 1997, 89, 555〜64; Bolducら, Genes Dev., 2003, 17, 2875〜88; Silvaら, J. Mol. Biol., 1999, 286, 1123〜36)。このコア構造において、2つのモノマー又は二重LAGLIDAGタンパク質の2つのドメインが寄与するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインともよばれる2つの特徴的なαββαββα折り畳みは、2回回転対称で互いに面している。DNA結合は、逆平行βシートに折り畳まれ、かつDNAらせん主溝上に鞍部を形成する各ドメインからの4つのβ鎖に依存する。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析は、各モノマーにおいて8つの残基(Y33、Q38、N30、K28、Q26、Q44、R68及びR70)が、±3、4、5、6、7、9及び10位にて7つの残基と直接の相互作用を確立していることを示す(Juricaら, 1998, 上記)。さらに、いくつかの残基は、いくつかの塩基との水が媒介する接触を確立する。例えば、S40、K28及びN30と+8位及び-8位の塩基対とである(Chevalierら, 2003, 上記)。触媒コアは、対称のモノマー/ドメインの寄与により中央にある。このコア構造に加えて、他のドメインを見出すことができる。例えば、インテインであるPI-SceIは、タンパク質スプライシングドメインと、追加のDNA結合ドメインを有する(Moureら, 2002, 上記; Grindlら, Nucleic Acids Res., 1998, 26, 1857〜62)。
【0007】
ホーミングエンドヌクレアーゼからの新規なメガヌクレアーゼを導くための2つのアプローチが、研究されている。
- ハイブリッド又はキメラの単鎖タンパク質
新しいメガヌクレアーゼは、異なるモノマー同士のLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインを交換することにより得ることができた(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。異なるメガヌクレアーゼからの2つのLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインがスペーサーにより連結されているこれらの単鎖キメラメガヌクレアーゼは、2つの半分(half)の親DNA標的配列の融合に相当するハイブリッド標的を切断できる。これらの結果は、I-CreIダイマーの2つのDNA結合ドメインが独立して挙動することを意味する。各DNA結合ドメインはDNA標的部位の異なる半分に結合する。キメラ及び単鎖人工HEの構築は、新規な(非パリンドローム)標的配列を切断する新規なメガヌクレアーゼを得るために、コンビナトリアルアプローチを用い得る:異なるモノマー又はコアドメインを単一タンパク質に融合させて、新規な特異性を達成し得ることを示唆した。
【0008】
しかし、このアプローチにより、ホーミングエンドヌクレアーゼが標的にし得るDNA配列の数は、著しくは増加しなかった。なぜなら、作製される新規な標的は、2つの異なるDNA標的半部位(half-sites)の組み合わせに起因するからである。
【0009】
- タンパク質変異型
突然変異誘発及びスクリーニング/選択によりDNA結合タンパク質の基質特異性を変更することは、しばしば、困難であることが示されており(Lanioら, Protein Eng., 2000, 13, 275〜281; Voziyanovら, J. Mol. Biol., 2003, 326, 65〜76; Santoroら, P.N.A.S., 2002, 99, 4185〜4190; Buchholz及びStewart, Nat. Biotechnol., 2001, 19, 1047〜1052)、より具体的には、HEのDNA結合ドメインを改変することは、長い間、その実行を思いとどまらせる課題であると考えられていた(Ashworthら, Nature 2006, 441, 656〜659;
Gimbleら, J. Mol. Biol., 2003, 334, 993〜1008 ; Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006,
355, 443〜458; Doyonら, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 2477〜2484; Steuerら, 上記; Seligmanら, Nucleic Acids Res., 2002, 30, 3870〜3879)。
【0010】
I-CreI / DNA結晶構造の分析は、9つのアミノ酸がホーミング部位と直接接触することを示し(Chevalierら, 2003; Juricaら, 上記)、その無作為化は209の組み合わせとなり、今日のいずれのスクリーニング能力も超える数である。
【0011】
よって、いくつかの実験室は、半合理的(semi-rational)アプローチ(Chicaら, Curr. Opin. Biotechnol., 2005, 16, 378〜384)に基づいて、取り扱うべき変異ライブラリーの多様性を限定している。構造のデータに従って、適切な残基の小さい組を選択する。それにもかかわらず、これは、選択された配列を切断する再設計されたエンドヌクレアーゼを創出するのにはまだ充分でない。
【0012】
- Seligmanらは、I-CreIのαββαββα折り畳みの特定の個別の残基を置換する合理的アプローチを用いた(Sussmanら, J. Mol. Biol., 2004, 342, 31〜41; Seligmanら, Nucleic Acids Res., 2002, 上記; Seligmanら, Genetics, 1997, 147, 1653〜64)。しかし、実質的な切断は、わずかなI-CreI変異型(Y33C、Y33H、Y33R、Y33L、Y33S、Y33T、S32K、S32R)を用いて、±10位で改変された標的についてのみ観察された。
【0013】
- 同様にして、Gimbleら(上記)は、PI-SceIの追加のDNA結合ドメインを改変した。彼らは、結合特異性が変化しているが基質特異性は変化していない変異型タンパク質を得たが、ほとんどのタンパク質は、野生型標的配列についての親和性の多くを維持していた。
【0014】
より多数の配列に到達するために、新規な基質特異性を有する、すなわち親のホーミングエンドヌクレアーゼ又は現在までに単離されているいくつかの変異型により切断されないDNA標的を切断できる他のホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製し得ることは、非常に価値があるだろう。
特に、野生型メガヌクレアーゼDNA標的のいくつかのヌクレオチドが同時に変異されている新規なDNA標的を切断し得るホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製することは、非常に価値があるだろう。
【0015】
しかし、このアプローチは容易ではない。なぜなら、HEのDNA結合界面は非常に緻密であり、実質的に全ての塩基特異的相互作用の原因である2つの異なるββヘアピンは、単一の折り畳みの一部分であるからである。つまり、いくつかの位置で変異された標的に結合するために必要な、かなり近傍に位置するいくつかのアミノ酸の変異は、結合界面の構造を破壊し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者は、合計で、±10、±9及び±8位で異なる64個の可能な変異I-CreI部位の全てを標的にする、数百の新規なI-CreI変異型を作製した。ヌクレオチド±8、±9及び/又は±10に対して新規な基質特性を有するこれらの変異型は、メガヌクレアーゼが標的にし得るDNA配列の数を増大させる。可能な応用は、遺伝子操作、ゲノム操作、遺伝子治療及び抗ウイルス療法である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
よって、本発明は、少なくとも:
(a) I-CreIのβ1β2ヘアピンからのアミノ酸K28、N30、Y33、Q38及び/又はS40の少なくとも1つを、A、C、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、L、V、W及びYからなる群より選択されるアミノ酸で置換し、
(b) 少なくとも-9位〜-8位のaaヌクレオチドダブレット及び/又は+8位〜+9位のttヌクレオチドダブレットが、異なるヌクレオチドダブレットで置換されている変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断できる、工程(a)からのI-CreI変異型を選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む、改変された切断特異性を有するI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
定義
- ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、本明細書において、1文字コードに従って表し、ここで、例えばKはLys又はリジン残基を意味し、NはAsn又はアスパラギン残基を意味し、YはTyr又はチロシン残基を意味する。
【0019】
- ヌクレオチドは、次のように表される。1文字コードは、ヌクレオシドの塩基を表すために用いられる。aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa (プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc (ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0020】
- 「I-CreI」により、配列SWISSPROT P05725又はpdbアクセッションコード1g9yを有する野生型I-CreIを意図する。
- 「I-CreI変異型」又は「変異型」により、I-CreIの少なくとも1つのアミノ酸の、異なるアミノ酸での置換により得られるタンパク質を意図する。
- 「機能的I-CreI変異型」により、DNA標的、好ましくはI-CreIにより切断されないDNA標的を切断できるI-CreI変異型を意図する。例えば、このような変異型は、DNA標的配列に接触するか又は該DNA標的に直接若しくは間接的に相互作用する位置でアミノ酸の変動を有する。
【0021】
- 「ホーミングエンドヌクレアーゼドメイン」又は「ドメイン」により、ホーミングエンドヌクレアーゼのDNA標的の1つの半分と相互作用し、かつDNA標的の別の半分と相互作用する同じホーミングエンドヌクレアーゼの別のドメインを伴って、該DNA標的を切断できる機能的エンドヌクレアーゼを形成し得る領域を意図する。
【0022】
- 「コアドメイン」により、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼに特徴的なα1β1β2α2β3β4α3折り畳みであり、約100アミノ酸残基の配列に相当する「LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメイン」を意図する。上記のドメインは、D
NA標的の1つの半分と相互作用する逆平行ベータシートに折り畳まれた4つのベータ鎖(β1、β2、β3、β4)を含む。例えば、ダイマーのホーミングエンドヌクレアーゼI-CreI (163アミノ酸)の場合、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインは、残基6〜94に相当する。モノマーのホーミングエンドヌクレアーゼの場合、2つのこのようなドメインが、エンドヌクレアーゼの配列中に見出される。例えば、I-DmoI (194アミノ酸)において、第1ドメイン(残基7〜99)及び第2ドメイン(残基104〜194)は、短いリンカー(残基100〜103)により分けられている。
【0023】
- 「I-CreI部位」により、I-CreIにより切断される22〜24 bpの二本鎖DNA配列を意図する。I-CreI部位は、野生型(天然)非パリンドロームI-CreIホーミング部位、及び図1Aに示すような誘導されたパリンドローム配列、例えばC1221ともよばれる5'- t-12c-11a-10a-9a-8a-7c-6g-5t-4c-3g-2t-1a+1c+2g+3a+4c+5g+6t+7t+8t+9t+10g+11a+12 (配列番号3)を含む。
【0024】
- 「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的配列」、「標的」、「認識配列」、「ホーミング認識部位」、「ホーミング部位」、「切断部位」により、メガヌクレアーゼ、例えばI-CreIのようなLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ、又は変異型又は該メガヌクレアーゼに由来する単鎖キメラメガヌクレアーゼにより認識され切断される22〜24 bpの二本鎖パリンドローム、部分的パリンドローム(偽パリンドローム)又は非パリンドロームのポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、エンドヌクレアーゼにより二本鎖切断(切断)が導入されるべき明確なDNA位置、好ましくはゲノムの位置のことを表す。DNA標的は、二本鎖ポリヌクレオチドの1つの鎖の5'から3'配列により定義される。
【0025】
- 「DNA標的半部位」により、各LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼコアドメインが結合するDNA標的の一部分を意図する。
【0026】
- 「キメラDNA標的」又は「ハイブリッドDNA標的」により、それぞれの親のメガヌクレアーゼDNA標的配列の異なる半分の融合体を意図する。
【0027】
- 「新規な特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼ変異型」により、親のホーミングエンドヌクレアーゼのものとは異なる切断される標的のパターンを有する変異型を意図する。互いに等価であり、同様に用いられる用語「新規な特異性」、「改変された特異性」、「新規な切断特異性」、「新規な基質特異性」は、DNA標的配列のヌクレオチドに対する変異型の特異性のことをいう。
【0028】
- 「ベクター」により、連結された別の核酸を移動させ得る核酸分子を意図する。
【0029】
- 「相同な」により、配列間の相同組換えを導くのに充分な同一性を別の配列に対して有する、より好ましくは少なくとも95%の同一性、好ましくは97%の同一性、より好ましくは99%の同一性を有する配列を意図する。
- 「同一性」は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性のことをいう。同一性は、比較の目的のために整列させ得る各配列中の位置を比較することにより決定できる。比較される配列中の位置が同じ塩基で占められている場合、これらの分子はその位置で同一である。核酸又はアミノ酸配列同士の類似性又は同一性の度合は、これらの核酸配列により共有される位置での同一又はマッチするヌクレオチドの数の関数である。GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であり、例えばデフォルト設定で用い得るFASTA又はBLASTを含む種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを用いて、2つの配列間の同一性を算出できる。
【0030】
- 「個体」は、哺乳類とともに他の脊椎動物(例えば鳥類、魚類及び爬虫類)を含む。用語
「哺乳類」及び「哺乳動物」は、本明細書で用いる場合、その子に授乳し、生存する子を出産する(真獣類(eutharian)又は胎盤哺乳類(placental mammals))又は産卵する(後獣類(metatharian)又は無胎盤哺乳類(nonplacental mammals))単孔類、有袋類及び有胎盤類(placental)を含むいずれの脊椎動物のことをいう。哺乳動物の種の例は、ヒト、及びその他の霊長類(例えばサル、チンパンジー)、げっ歯類(例えばラット、マウス、モルモット)及び反芻類(例えばウシ、ブタ、ウマ)を含む。
【0031】
- 「遺伝性疾患」は、1又はいくつかの遺伝子の異常が部分的又は完全に、直接又は間接的に原因であるいずれの疾患のことをいう。該異常は、突然変異、挿入又は欠失であり得る。該突然変異は、点突然変異(punctual mutation)であり得る。該異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響し得る。該異常は、ゲノム配列の構造又はコードされるmRNAの構造若しくは安定性に影響し得る。該遺伝性疾患は、劣性又は優性であり得る。このような遺伝性疾患は、限定されないが、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、家族性高コレステロール血症(LDL受容体欠損)、肝芽腫、ウィルソン病、先天性肝性ポルフィリン症、肝臓代謝の遺伝性障害、レッシュ-ナイハン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコニ貧血、色素性網膜炎、毛細管拡張性運動失調、ブルーム症候群、網膜芽腫、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及びテイ-サックス病であり得る。
【0032】
本発明の方法によると、工程a)におけるアミノ酸変異は、野生型I-CreI又はその機能的変異型のいずれかに導入される。工程a)は、特に、DNA標的配列に接触するか又は該DNA標的と直接又は間接的に相互作用する他の位置でのさらなる変異の導入を含み得る。機能的変異型は、タンパク質構造に影響しない変異を含む。例えば、工程(a)におけるアミノ酸変異は、以下からなる群より選択される1又は複数の変異を含むI-CreI変異型に導入し得る:
- 24位のイソロイシンのバリンへの変異(I24V)、
- 70位のアルギニンのセリンへの変異(R70S)、及び
- 75位のアスパラギン酸の非荷電アミノ酸、好ましくはアスパラギン(D75N)又はバリン(D75V)への変異。
【0033】
工程a)は、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるような変異型のライブラリーを作製することにより行い得る。
【0034】
工程(b)における選択及び/又はスクリーニングは、国際PCT出願WO 2004/067736に記載されるようなインビトロ又はインビボでの切断アッセイを用いて行い得る。
【0035】
上記の方法の有利な実施形態によると、工程b)のDNA標的は、C1234、C4334及びC1221 (配列番号1〜3、図1A)から選択されるI-CreI部位に由来する。
【0036】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程b)のDNA標的は、式:
c-11n-10n-9n-8m-7y-6n-5n-4n-3k-2y-1 r+1m+2n+3n+4n+5r+6k+7n+8n+9n+10g+11 (I)
(式中、nはa、t、c又はgであり、mはa又はcであり、yはc又はtであり、kはg又はtであり、rはa又はgである(配列番号75)が、但し、n-9n-8がaaである場合、n+8n+9はttではなく、n+8n+9がttである場合、n-9n-8はaaではない)
を有する配列を含む。
【0037】
上記の方法の好ましい実施形態によると、n-5n-4n-3はgtcであり、及び/又はn+3n+4n+5はgacである。
【0038】
工程b)のDNA標的は、パリンドローム、非パリンドローム又は偽パリンドロームであり得る。好ましくは、-11位〜-8位及び+8位〜+11位のヌクレオチド配列、及び/又は-5位〜
-3位及び/又は+3位〜+5位のヌクレオチド配列がパリンドロームである。
【0039】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程b)のDNA標的は、-9位〜-8位にag、at、ac、ga、gg、gt、gc、ta、tg、tt、cg、ct、又はccからなる群より選択されるヌクレオチドダブレット、及び/又は+8位〜+9位に-9位〜-8位の上記のヌクレオチドダブレットの逆相補配列(reverse complementary sequence)、すなわちct、ta、gt、tc、cc、ac、gc、at、ca、aa、cg、ag又はggであるヌクレオチドダブレットを含む。
【0040】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程b)のDNA標的は、I-CreI部位の-10位のaヌクレオチド及び/又は+10位のtヌクレオチドの、異なるヌクレオチドでの置換をさらに含む。
好ましくは、上記のDNA標的は、-10位〜-8位にaac、aag、aat、acc、acg、act、aga、agc、agg、agt、ata、atg、cag、cga、cgg、ctg、gac、gag、gat、gcc、gga、ggc、ggg、ggt、gta、gtg、gtt、tac、tag、tat、tcc、tga、tgc、tgg、tgt若しくはttgからなる群より選択されるヌクレオチドトリプレット、及び/又は+8位〜+10位に-10位〜-8位の上記のヌクレオチドトリプレットの逆相補配列であるヌクレオチドトリプレットを含む。
【0041】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、工程(b)は、上記の変異型により作製された変異DNA標的配列中の二本鎖切断が、正の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は負の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を導く条件下で、該DNA二本鎖切断の組換えにより媒介される修復によりインビボで行われる。
例えば、本発明のI-CreI変異型の切断活性は、PCT出願WO 2004/067736に記載されるようにして、レポーターベクターを用いて、酵母又は哺乳動物細胞において、直列反復組換えアッセイにより測定できる。レポーターベクターは、酵母又は哺乳動物発現ベクターにクローニングされた、レポーター遺伝子の2つの短縮された非機能的コピー(直列反復配列)と、DNA標的配列とを、介在配列内に含む(図2)。DNA標的配列は、±8〜10位の1〜3ヌクレオチドの置換により、C1221のようなI-CreI部位から導かれる(図1B)。DNA標的配列を切断し得る機能的I-CreI変異型の発現は、直列反復配列間の相同組換えを誘発し、機能的レポーター遺伝子をもたらし、その発現を適切なアッセイにより監視し得る。
【0042】
上記の方法の別の有利な実施形態によると、これは、工程b)で得られた1つの変異型を発現させて、ホモダイマーの形成を可能にするさらなる工程c1)を含む。
上記の方法の別の有利な実施形態によると、これは、工程b)で得られた1つの変異型とI-CreI又はその機能的変異型とを同時発現させて、ヘテロダイマーの形成を可能にするさらなる工程c2)を含む。好ましくは、工程b)で得られる2つの異なる変異型を同時発現させる。
【0043】
例えば、宿主細胞は、上記の変異型をコードする1又は2つの組換え発現ベクターにより改変され得る。細胞は、次いで、変異型の発現を可能にする条件下で培養され、形成されるホモダイマー/ヘテロダイマーは、細胞培養物から回収される。
【0044】
本発明の方法によると、単鎖キメラエンドヌクレアーゼは、工程b)で得られる1つの変異型と、ホーミングエンドヌクレアーゼドメイン/モノマーとの融合により構築され得る。該ドメイン/モノマーは、野生型ホーミングエンドヌクレアーゼ又はその機能的変異型からであり得る。
ホーミングエンドヌクレアーゼに由来する単鎖キメラ分子を構築する方法は、当該技術において公知である(Epinatら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 2952〜62; Chevalierら, Mol. Cell., 2002, 10, 895〜905; Steuerら, Chembiochem., 2004, 5, 206〜13; 国際PCT出願WO 03/078619及びWO 2004/031346)。このような方法のいずれも、本発明で定義される変異型に由来する単鎖キメラ分子を構築するために用い得る。
【0045】
本発明の主題は、-9位及び-8位のaヌクレオチドの少なくとも1つ又は+8位及び+9位のtヌクレオチドの少なくとも1つが異なるヌクレオチドで置換された変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断できる、上記で定義される方法により得ることができるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型でもある。
【0046】
上記のI-CreI変異型の有利な実施形態によると、これは、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有する。38位にR又はKを有する変異型は、-9位のグアニン又は+9位のシトシンを含むDNA標的を切断できる。
【0047】
上記の変異型は、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、
【0048】
【表1】

【0049】
からなる群より選択されるアミノ酸残基を有する変異型から選択され得る。
上記のI-CreI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、
【0050】
【表2−1】

【0051】
【表2−2】

【0052】
からなる群より選択されるアミノ酸残基を有する。
より好ましい実施形態によると、上記のI-CreI変異型は、少なくとも、親のホーミングエンドヌクレアーゼ(I-CreI D75N)により切断されないDNA標的配列を切断できる変異型であり、該変異型は、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、
【0053】
【表3−1】

【0054】
【表3−2】

【0055】
からなる群より選択されるアミノ酸残基を有する。
別のより好ましい実施形態によると、上記のI-CreI変異型は、少なくとも-8位のa及び/又は+8位のtが異なるヌクレオチドで置換されている変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断し得る変異型であり、該変異型は、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、
【0056】
【表4−1】

【0057】
【表4−2】

からなる群より選択されるアミノ酸残基を有する。
さらに別のより好ましい実施形態によると、上記のI-CreI変異型は、少なくとも-9位のa及び/又は+9位のtが別のヌクレオチドで置換されている変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断できる変異型であり、該変異型は、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、
【0058】
【表5】

【0059】
からなる群より選択されるアミノ酸残基を有する。
上記のI-CreI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、1又は複数のさらなる変
異を含む。
【0060】
変異される残基は、DNA標的配列と接触するか、又は該DNA標的と直接若しくは間接的に相互作用する位置にあるのが有利であり得る。好ましくは、上記の変異は、I24、Q26、S32、Q44、R68、R70、D75、I77及びT140からなる群より選択される位置にある。好ましくは、上記のI-CreI変異型は、以下からなる群より選択される1又は複数の変異を含む:
- 24位のイソロイシンのバリンへの変異(I24V)、
- 70位のアルギニンのセリンへの変異(R70S)、及び
- 75位のアスパラギン酸の非荷電アミノ酸、好ましくはアスパラギン(D75N)又はバリン(D75V)への変異。
【0061】
さらに、他の残基は、I-CreI配列全体で、特にI-CreIのC末端の半分(80位〜163位)において変異され得る。I-CreIのC末端の半分での置換は、好ましくは、I-CreIの80位、82位、85位、86位、87位、94位、96位、100位、103位、114位、115位、117位、125位、129位、131位、132位、147位、151位、153位、154位、155位、157位、159位及び160位である。
【0062】
さらに、上記の変異型は、NH2末端及び/又はCOOH末端に挿入された1又は複数の残基を含み得る。例えば、メチオニン残基をNH2末端に導入し、タグ(エピトープ又はポリヒスチジン配列)をNH2末端及び/又はCOOH末端に導入する。該タグは、該変異型の検出及び/又は精製に有用である。
【0063】
本発明のI-CreI変異型は、ホモダイマー又はヘテロダイマーであり得る。
上記のI-CreI変異型の別の有利な実施形態によると、これは、2つの異なる変異型からのモノマーを含むヘテロダイマーである。
【0064】
本発明は、上記で定義されるI-CreI変異型からのモノマーを含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼも包含する。
【0065】
本発明の主題は、上記で定義されるI-CreI変異型又は該変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメントでもある。
【0066】
本発明の主題は、上記で定義される変異型又は該変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む組換えベクターでもある。該ベクターは、ホモダイマー変異型の1つのモノマー、単鎖分子の2つのモノマー又は1つのモノマー及び1つのドメインをコードするポリヌクレオチドフラグメントを含み得る。あるいは、上記のベクターは、それぞれがヘテロダイマー変異型のモノマーの1つをコードする2つの異なるポリヌクレオチドフラグメントを含み得る。
【0067】
好ましいベクターのある種類は、エピソーム、すなわち染色体外複製が可能な核酸である。好ましいベクターは、それらが連結する核酸の自律複製及び/又は発現が可能なものである。それらが機能的に連結する遺伝子の発現を駆動し得るベクターは、本明細書において「発現ベクター」という。
【0068】
本発明によるベクターは、限定されないが、YAC (酵母人工染色体)、BAC (細菌人工)、バキュロウイルスベクター、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は染色体、非染色体、半合成若しくは合成のDNAで構成され得る直鎖状若しくは環状のDNA又はRNA分子を含む。一般に、組換えDNA技術において用いられる発現ベクターは、しばしば「プラスミド」の形であり、これは、通常、それらのベクターの形では染色体に結合しない環状二本鎖DNAループのことをいう。多数の適切なベクターが、当該技術において知られている。
【0069】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えばオルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば麻疹及びセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えばピコルナウイルス及びアルファウイルス、並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス1及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)及びポックスウイルス(例えばワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスを含む。その他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。
【0070】
ベクターは、選択マーカー、例えば真核細胞培養についてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミンシンセターゼ及びヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ;S. cerevisiaeについてTRP1;E. coliにおいてリファンピシン又はアンピシリン耐性を含み得る。
【0071】
好ましくは、上記のベクターは、本発明の変異型をコードする配列が、適切な転写及び翻訳制御要素の制御下に位置して、該変異型の産生又は合成を許容する発現ベクターである。よって、上記のポリヌクレオチドは、発現カセットに含まれる。より具体的には、該ベクターは、複製起点、該コードポリヌクレオチドに機能可能に連結するプロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位(ゲノムDNAを用いる場合)、ポリアデニル化部位、及び転写終結部位を含む。これは、エンハンサーも含み得る。プロモーターの選択は、ポリペプチドが発現される細胞に依存する。好ましくは、上記の変異型がヘテロダイマーである場合、各モノマーをコードする2つのポリヌクレオチドは、両方のポリヌクレオチドの発現を同時に駆動し得る1つのベクターに含まれる。
【0072】
上記のベクターの別の有利な実施形態によると、これは、上記で定義されるようなDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を共有する配列を含む標的化構築物(targeting construct)を含む。
より好ましくは、上記の標的化DNA構築物は:
a) 上記で定義されるようなDNA標的配列を取り囲む領域と相同性を共有する配列と、
b) a)で定義される配列に接する、導入されるべき配列と
を含む。
【0073】
本発明は、上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクター、好ましくは発現ベクターで改変された原核又は真核の宿主細胞にも関する。
【0074】
本発明は、それらの細胞の全て又は一部分が上記で定義されるポリヌクレオチド又はベクターで改変されていることを特徴とする非ヒトトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物にも関する。
本明細書で用いる場合、細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞、又は真核細胞、例えば動物、植物若しくは酵母細胞のことをいう。
【0075】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのI-CreI変異型、該変異型に由来する少なくとも1つの単鎖キメラエンドヌクレアーゼ、1つ又は2つの好ましくは発現ベクターに含まれるポリヌクレオチドを含む組成物でもある。
【0076】
上記の組成物の好ましい実施形態において、これは、標的にされる遺伝子座と相同性を共有する配列で挟まれている興味のある部位を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含有する。
【0077】
本発明において定義される変異型又は該変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、当業者に知られるいずれの方法により調製できる。例えば、これらは、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により、cDNA鋳型から増幅される。好ましくは、該cDNAのコドンは、所望の発現系での該タンパク質の発現に好ましいように選択される。
【0078】
上記のポリヌクレオチドを含む組換えベクターは、公知の組換えDNA及び遺伝子工学技術により得て、宿主細胞に導入できる。
【0079】
本発明の変異型は、上記で定義されるポリペプチドを発現させることにより産生される。好ましくは、該ポリペプチドは、1つ又は2つの発現ベクターにより改変された宿主細胞において、ポリペプチドの発現又は同時発現に適切な条件下で発現又は同時発現され、変異型は宿主細胞培養物から回収される。
【0080】
本発明の主題は、上記で定義されるDNA標的を含むベクターを、上記で定義されるI-CreI変異型又は該変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させて、該ベクター上に位置する興味のある部位で二本鎖核酸を切断することにより、該変異型の切断部位を取り囲む配列と相同性を示す別のベクターとの相同組換えを誘導する工程を含む、遺伝子操作の方法でもある。
【0081】
本発明の主題は、1) 上記で定義される少なくとも1つの標的配列を含むゲノム遺伝子座を、該標的を上記で定義されるI-CreI変異型又は該変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させることにより二本鎖切断する工程と、2) 上記の切断されたゲノム遺伝子座を、標的遺伝子座と相同性を共有する配列で挟まれている該遺伝子座に導入される配列を含む標的化DNA構築物との相同組換えに適する条件下に保持する工程とを含む、ゲノム操作の方法でもある。
【0082】
本発明の主題は、以下の:1) 上記で定義される少なくとも1つのDNA標的配列を含むゲノム遺伝子座を、該切断部位を上記で定義されるI-CreI変異型又は該変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させることにより、二本鎖切断する工程、2) 上記の切断されたゲノム遺伝子座を、上記の切断部位を取り囲む領域と相同性を共有する染色体DNAとの相同組換えに適する条件下に保持する工程を含むことを特徴とするゲノム操作の方法でもある。
【0083】
本発明の主題は、上記の方法により得ることができるI-CreIエンドヌクレアーゼ変異型の、治療目的でない分子生物学、インビボ又はインビトロでの遺伝子操作、及びインビボ又はインビトロでのゲノム操作のため、上記で定義されるようなDNA標的配列の切断のための使用でもある。
【0084】
分子生物学は、限定されないが、DNA制限及びDNAマッピングを含む。治療目的でない遺伝子操作及びゲノム操作は、例えば(i) タンパク質産生のための細胞パッケージング系統における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(ii) 株の改良及び代謝工学のための農作物における特定の遺伝子座の遺伝子ターゲティング、(iii) 遺伝子改変農作物におけるマーカーの除去のための標的された組換え、(iv) 遺伝子改変微生物株(例えば抗生物質製造のため)におけるマーカーの除去のための標的された組換えを含む。
【0085】
上記の使用の有利な実施形態によると、これは、上記で定義される変異型により切断されるDNA標的配列を含む興味のある部位に二本鎖切断を誘導することにより、DNA組換え事象、DNA欠失又は細胞死を誘発するためである。
【0086】
ある具体的な実施形態において、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有するI-CreI変異型が、-9位にグアニン又は+9位にシトシンを含むDNA標的を切断するために用いられる。
【0087】
本発明によると、上記の二本鎖切断は、特定の配列を修復するため、特定の配列を改変するため、変異遺伝子の場所に機能的遺伝子を回復させるため、興味のある内因性遺伝子を減弱化又は活性化させるため、興味のある部位に変異を導入するため、外因性遺伝子又はその一部分を導入するため、内因性遺伝子又はその一部分を不活性化又は検出するため、染色体腕を転座させるため、又はDNAを修復されないまま放置して分解させるためである。
【0088】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのI-CreI変異型の、必要とする個体における遺伝性疾患を予防、改善又は治癒するための医薬の製造のための使用でもあり、該医薬は、該個体にいずれの手段により投与される。
【0089】
本発明の主題は、いずれの手段により、個体に上記で定義される組成物を投与する工程を少なくとも含む、必要とする個体における遺伝性疾患を予防、改善又は治癒する方法でもある。
【0090】
具体的な実施形態において、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有するI-CreI変異形が、-9位にグアニン又は+9位にシトシンを含むゲノムDNA標的を切断するために用いられる。
【0091】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのI-CreI変異型の、必要とする個体において、DNA中間体(intermediate)を提示する感染因子により引き起こされる疾患を予防、改善又は治癒するための医薬の製造のための使用でもあり、該医薬は、個体にいずれの手段により投与される。
【0092】
本発明の主題は、必要とする個体においてDNA中間体を提示する感染因子により引き起こされる疾患を予防、改善又は治癒する方法でもあり、該方法は、該個体に、上記で定義される組成物をいずれの手段により投与する工程を少なくとも含む。
【0093】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのI-CreI変異型の、生物学的に誘導された生成物、又は生物学的使用を意図する生成物においてDNA中間体を提示する感染因子の増殖の阻害、不活性化又は消去のため、或いは物体の消毒のためのインビトロでの使用でもある。
【0094】
本発明の主題は、生成物又は物質を、DNA中間体を提示する感染因子から除染する方法でもあり、該方法は、生物学的に誘導された生成物、生物学的使用を意図する生成物又は物体を、上記で定義される組成物と、該感染因子の増殖の阻害、不活性化又は消去に充分な時間接触させる工程を少なくとも含む。
【0095】
ある具体的な実施形態において、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有するI-CreI変異型を、-9位にグアニン又は+9位にシトシンを含む上記の感染因子からのDNA標的を切断するために用いる。
【0096】
別の具体的な実施形態において、上記の感染因子はウイルスである。例えば、該ウイルスは、アデノウイルス(Ad11、Ad21)、ヘルペスウイルス(HSV、VZV、EBV、CMV、ヘルペスウイルス6、7又は8)、ヘパドナウイルス(HBV)、パポバウイルス(HPV)、ポックスウイルス、又はレトロウイルス(HTLV、HIV)である。
【0097】
本発明の主題は、上記で定義される少なくとも1つのI-CreI変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための骨格としての使用でもある。例えば、新規な第二世代のホーミングエンドヌクレアーゼの作製の目的のために、2回目の突然変異誘発と選択/スクリーニングとを該I-CreI変異型に対して行うことができる。
【0098】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記のI-CreI変異型は、上記で定義される標的化DNA構築物と会合する(are associated with)。
【0099】
上記の使用の別の有利な実施形態によると、上記のI-CreI変異型は、28位、30位、33位、38位及び40位にそれぞれ、KNSQS、KNRQS、KNTQS、KNHQSからなる群より選択されるアミノ酸残基を有する。
【0100】
本発明によるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型の使用及び該I-CreIメガヌクレアーゼ変異型の使用方法は、該変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼ、該変異型又は単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクター、細胞、トランスジェニック植物又は非ヒトトランスジェニック哺乳類の使用も含む。
【0101】
上記の特徴に加えて、本発明は、本発明によるI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型及びそれらの使用を示す実施例、並びに添付の図面に言及する以下の記載から明らかになるその他の特徴も含む。該図面において:
- 図1は、DNA標的を表す。A. 天然のI-CreIホーミング部位に由来する2つのパリンドロームI-CreI標的。I-CreIの天然の標的は、灰色で囲った2つのパリンドロームを含む:一方は-8〜-12及び+8〜+12ヌクレオチド、他方は-5〜-3及び+3〜+5ヌクレオチドである。ここではC1234 (配列番号1)と称する天然の標的から、パリンドローム配列であるC1221及びC4334 (配列番号2、3)を導き得る。これらはともに、インビトロ及び酵母においてI-CreIにより切断される。B. 64個のDNA標的。64個の標的は、C1221に由来する(配列番号4〜67)。これらは全て、-10位、-9位、-8位、+8位、+9位及び+10位での置換により得られる24 bpの完全パリンドロームに相当する。
【0102】
- 図2は、酵母スクリーニングアッセイの原理を示す。LEU2遺伝子をマーカーとして有するアッセイされるメガヌクレアーゼを発現する株(MEGA)を、TRP1遺伝子をマーカーとして有する、選択された標的を含むレポータープラスミドを有する株と交配させる。標的は、オーバーラップ短縮LacZ遺伝子(LAC及びACZ)で挟まれる。二倍体(LEU2 TRP1)において、メガヌクレアーゼによる標的部位の切断は、2つのlacZ反復間の相同組換えを誘発し、機能的ベータ-ガラクトシダーゼ遺伝子をもたらし、これはX-Gal染色により監視できる。
【0103】
- 図3は、I-CreI N75骨格タンパク質の配列と、Ulib4及びUlib5ライブラリーの構築に用いられた縮重プライマーを表す。A. 骨格(配列番号68)は、D75Nコドン置換と3'末端に3つの付加コドン(AAD)を含むI-CreI ORFである。B. プライマー(配列番号69、70、71)。
【0104】
- 図4は、pCLS0542メガヌクレアーゼ発現ベクターを表す。pCLS0542は、2ミクロンに基づく複製可能なベクターであり、LEU2栄養要求性遺伝子と、I-CreI変異型の発現を駆動するための誘導性Gal10プロモーターとをマーカーとして有する。
【0105】
- 図5は、pCLS0042レポーターベクターを表す。該レポーターベクターは、TRP1及びURA3
をマーカーとして有する。LacZタンデム反復同士は800 bpの相同性を共有し、1.3 kbのDNAにより分けられている。これらは、ADHプロモーター及びターミネーター配列に取り囲まれている。標的部位は、SmaI部位にクローニングされる。
【0106】
- 図6は、I-CreI変異型ライブラリーの基本原理を示す。A. Chevalierら, J. Mol. Biol., 2003, 329, 253〜269による、そのDNA標的に結合したI-CreIの構造、及び本研究において無作為化のために選択した結合界面の領域の位置推定。残基28、30、33、38及び40を、左のモノマー上で黒色に標識する。B. 無作為化のために選択した残基28、30、33、38及び40を示すズーム。C. I-CreI DNA標的の外部領域でのI-CreI/DNA相互作用のまとめ(図6Aで黒色)。記載した標的C1221 (配列番号3)は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的である(Chevalierら, 2003, 上記)。塩基特異的接触のみを示す。標的の10NNN領域(±8、±9、±10ヌクレオチド、図6Aで黒色)を囲む。D. Ulib4で無作為化された残基の位置(30、33、38)。E. Ulib5で無作為化された残基の位置(28、30、38)。F. Lib4で無作為化された残基の位置(28、33、38、40)。
【0107】
- 図7は、37個の新規なDNA標的を切断する141個のI-CreI変異型の切断パターンを表す。スクリーニングの後に得られ、28位、30位、33位、38位、40位、70位及び75位の残基により規定されるI-CreI変異型のそれぞれについて、図1Bに記載する64個の標的を用いて酵母において切断を監視した。標的は、-10位、-9位及び-8位のヌクレオチドに相当する3文字で表記する。例えば、GGGは、tcgggacgtcgtacgacgtcccga標的(配列番号4; 図1を参照)に相当する。値は、フィルタのスキャンの後に適切なソフトウェアにより評価した切断強度に対応する。
【0108】
- 図8は、各標的を切断するパターンの例及び変異体の数を示す。A. プロファイリングの例。新規なエンドヌクレアーゼのそれぞれを、図1Aに示す配列からは±8位、±9位及び±10位で異なる図1Bに記載する一連の64個のパリンドローム標的に対して、酵母においてプロファイリングした。これらの標的は、図8Bのようにして配列する。各標的配列を、-10,-9,-8トリプレット(10NNN)にちなんで命名する。例えば、GGGは、tcgggacgtcgtacgacgtcccga標的(配列番号4; 図1Bを参照)に対応する。メガヌクレアーゼは、64個の標的に対して4回試験する。I-CreI (D75)、I-CreI N75又は10個の導かれた変異型により切断される標的を、黒色又は灰色のスポットにより可視化する。B. 各標的を切断する変異体の数、及び切断の平均強度。各配列は、-10,-9,-8トリプレット(10NNN)にちなんで命名する。各標的を切断するタンパク質の数を下に示し、灰色の着色のレベルは、酵母においてこれらの切断者(cutter)を用いて得られた平均シグナル強度に比例する。
【実施例】
【0109】
実施例1:ヌクレオチド±8、±9及び±10 (10NNN)に対する新規な特異性を有する機能的エンドヌクレアーゼ
メガヌクレアーゼ変異型を作製する方法、及び特異性が変更された変異型をスクリーニングするために用いる酵母細胞における切断誘発組換えに基づくアッセイは、国際PCT出願WO 2004/067736及びEpinatら, N.A.R., 2003, 31, 2952〜2962に記載される。これらのアッセイは、標準的な方法により監視できる機能的LacZレポーター遺伝子をもたらす(図2)。
【0110】
A) 材料及び方法
a) 変異体ライブラリーの構築
I-CreI wt (I-CreI D75)、I-CreI D75N (I-CreI N75)及びI-CreI S70 N75のオープンリーディングフレームを、以前に記載されるようにして合成した(Epinatら, N.A.R., 2003,
31, 2952〜2962)。コンビナトリアルライブラリーは、1つのDNA標的半部位の±8〜10位の塩基との相互作用に含まれる可能性がある残基の2又は3の異なる組み合わせを置換する
ことにより、I-CreI N75、I-CreI D75又はI-CreI S70 N75骨格から誘導した。メガヌクレアーゼライブラリーの多様性は、選択された位置のそれぞれでユニーク縮重コドンを有する縮重プライマーを用いるPCRにより作製した。
【0111】
変異D75Nは、コドン75をaacで置換することにより導入した。次いで、N30位、Y33位及びQ38位(Ulib4ライブラリー)又はK28位、N30位及びQ38位(Ulib5ライブラリー)での3つのコドンを、12の異なるアミノ酸A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,Tをコードする縮重コドンVVK (18コドン)により置換した。その結果、これらのタンパク質ライブラリーの最大(理論的)多様性は、123、すなわち1728であった。しかし、核酸の点では、多様性は183、すなわち5832であった。
【0112】
BIOMETHODESに注文したLib4において、I-CreI N75骨格の70位のアルギニンを、まず、セリンで置換した(R70S)。次いで、28位、33位、38位及び40位を無作為化した。正規のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を、10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)の1つで置換した。得られるライブラリーは、タンパク質の点で10000の理論的複雑さを有する。
【0113】
さらに、2つの位置のみの無作為化に起因する225 (152)の複雑さの小さいライブラリーを、I-CreI N75又はI-CreI D75骨格において、NVK縮重コドン(24コドン、アミノ酸ACDEGHKNPQRSTWY)を用いて構築した。
【0114】
所望の変異の組み合わせを有するフラグメントを、10、12又は15の異なるアミノ酸をコードする縮重プライマーの対と、DNA鋳型としてI-CreI N75 (図3A)、I-CreI D75又はI-CreI S70 N75のオープンリーディングフレーム(ORF)とを用いてPCRにより得た。例えば、図3Bは、それぞれUlib4及びUlib5ライブラリーを作製するために用いたプライマーの2対(Ulib456for及びUlib4rev; Ulib456for及びUlib5rev)を示す。対応するPCR産物を、LEU2栄養要求性マーカー遺伝子を有する酵母複製発現ベクターpCLS0542 (Epinatら, 上記; 図4)中のI-CreI N75又はI-CreI D75 ORFにクローニングしなおした。この2ミクロンに基づく複製ベクターにおいて、I-CreI変異型はガラクトース誘導性プロモーターの制御下にある。
【0115】
b) 標的クローンの構築
C1221の24 bpパリンドローム(tcaaaacgtcgtacgacgttttga, 配列番号3)は、ほぼパリンドロームの天然I-CreI標的(tcaaaacgtcgtgagacagtttgg, 配列番号1)の半部位の反復である。C1221は、酵母及び哺乳動物細胞の両方におけるインビトロ及びエクスビボでI-CreI天然標的と同様に効率的に切断される。64個のパリンドローム標的は、次のようにして導いた。オリゴヌクレオチドの64対(ggcatacaagtttcnnnacgtcgtacgacgtnnngacaatcgtctgtca
(配列番号72)及び逆相補配列)を、Sigmaに注文し、アニールし、pGEM-T Easy (PROMEGA)に同じ方向でクローニングした。次いで、400 bpのPvuII断片を切り出し、以前に記載されたpCLS0042ともよばれる酵母ベクターpFL39-ADH-LACURAZにクローニングして(Epinatら, 上記, 図5)、64個の酵母レポーターベクター(標的プラスミド)を得た。
【0116】
c) 酵母株
メガヌクレアーゼ発現変異型の3つのライブラリーを、leu2変異一倍体酵母株FYC2-6A: MATalpha, trp1Δ63, leu2Δ1, his3Δ200に形質転換した。従来の化学/熱ショックプロトコールを形質転換に用いたが、これは、通常、元になるDNAのμg当たり106個の独立した形質転換体を与える(Gietz及びWoods, Methods Enzymol., 2002, 350, 87〜96)。個別の形質転換体(Leu+)クローンを、96ウェルのマイクロプレートに別々に採取した。
【0117】
64個の標的プラスミドは、同じプロトコルを用いて、一倍体酵母株FYBL2-7B: MATa, ura3Δ851, trp1Δ63, leu2Δ1, lys2Δ202に形質転換し、64個の試験株を得た。
【0118】
d) メガヌクレアーゼ発現クローンの交配及び酵母でのスクリーニング
メガヌクレアーゼ発現クローンは、64個の標的株のそれぞれと交配させ、図2に示すスクリーニングアッセイを用いることにより二倍体をベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。
【0119】
I-CreI変異型クローン、及び酵母レポーター株をグリセロール(20%)中に仕込み、新しいマイクロプレートで複製させた。交配は、コロニーグリッダー(QpixII, GENETIX)を用いて行った。変異体を、YPDプレートを覆うナイロンフィルタ上に高密度で(約20スポット/cm2)スポットした。第2のスポットプロセスは、同じフィルタ上に、各変異体についての64個の異なるレポーター含有酵母株からなる第2の層をスポットして行った。メンブレンを固形アガロースYEPDリッチ培地上に置き、30℃にて一晩インキュベートして交配させた。次いで、フィルタを、ロイシン及びトリプトファンを欠き、ガラクトース(2 %)を炭素源として含む(及び同時発現実験についてG418を含む)合成培地に移し、37℃にて5日間インキュベートし、メガヌクレアーゼ発現、レポータープラスミド切断及び組換え、並びにベータ-ガラクトシダーゼ発現を可能にする二倍体を選択した。5日後に、フィルタを、0.5 Mリン酸ナトリウムバッファー、pH 7.0、0.1 % SDS、6 %ジメチルホルムアミド(DMF)、7 mM β-メルカプトエタノール、1%アガロース中に0.02 % X-Galを含む固形アガロース培地上に置き、37℃にてインキュベートして、β-ガラクトシダーゼ活性を監視した。2日間のインキュベーションの後に、陽性のクローンをスキャンにより同定した。クローンのβ-ガラクトシダーゼ活性を、適切なソフトウェアを用いて定量した。
【0120】
少なくとも1つの標的に対して活性を示すクローンを単離した(1次スクリーニング)。スポットする密度を、次いで、4スポット/cm2まで減らし、各陽性クローンを、4重で64個のレポーター株に対して試験して、完全なプロファイルを作製した(2次スクリーニング)。
【0121】
e) 配列
酵母での1次及び/又は2次スクリーニングの間に同定された陽性のクローンのオープンリーディングフレーム(ORF)を、PROLIGOからのプライマー:PCR-Gal10-F (gcaactttagtgctgacacatacagg、配列番号73)及びPCR-Gal10-R (acaaccttgattgcagacttgacc、配列番号74)を用いて、酵母コロニー上でPCRにより増幅した。簡単に、酵母コロニーを採取し、100μlのLGlu液体培地中に再懸濁し、一晩培養した。遠心分離の後に、酵母ペレットを10μlの滅菌水に再懸濁し、1.5μlの各特異的プライマー(100 pmol/μl)を含む50μlの最終容量でPCR反応を行うのに用いた。PCR条件は、94℃にて10分間の変性を1サイクル、94℃にて30秒の変性、55℃にて1分のアニーリング、72℃にて1.5分の伸長を35サイクル、及び最終伸長の5分であった。得られたPCR生成物を、次いで、配列決定した。
【0122】
f) 構造分析
タンパク質構造の全ての分析は、Pymolを用いて行った。I-CreIからの構造は、pdbエントリー1g9yに相当する。本文の残基の番号付けは、常にこれらの構造について記載するが、残基の番号が第1ドメインについて設定されたとおりであるホモダイマーの第2 I-CreIタンパク質ドメインでの残基は例外である。
【0123】
B) 結果
I-CreIは、22 bpの偽パリンドローム標的を切断するダイマーホーミングエンドヌクレアーゼである。その天然の標的に結合したI-CreI構造の分析は、各モノマーにおいて、8残基が7塩基と直接的な相互作用を確立していることを示している(Juricaら, 1998, 上記)。これらの構造的データによると、±8〜10位のヌクレオチドの塩基は、I-CreIアミノ酸N30、Y33、Q38との直接の接触、及びI-CreIアミノ酸K28及びS40と間接的な接触を確立する(図6A、6B、6C)。つまり、30位、33位及び38位の変異を有する新規なタンパク質は、I-CreIにより切断されるパリンドローム標的(10NNN標的)の±8位、±9位及び±10位での置
換に起因する64個の標的の新規な切断プロファイルを示し得る。さらに、変異は、DNA塩基との直接接触に参加する残基の数及び位置を変化させるだろう。より具体的には、30、33、38以外であるが、折り畳まれたタンパク質のかなり近傍にある位置は、同じ塩基対との相互作用に参加し得る。
【0124】
網羅的なタンパク質ライブラリーに対する標的ライブラリーのアプローチは、DNA結合界面のこの部分を局所的に改変するために行われた。5アミノ酸の位置の無作為化は、205
= 3.2×106の理論的多様性を導く。しかし、より低い多様性のライブラリーは、一度に2、3又は4残基を無作為化することにより作製され、225 (152)、1728 (123)又は10,000 (104)の多様性をもたらす。このストラテジは、以前に記載され(Epinatら, 2003, 上記、及び国際PCT出願WO 2004/067736)、かつその原理が図2に記載される酵母に基づくアッセイを用いる64個のパリンドローム10NNN DNA標的に対するこれらのライブラリーのそれぞれを、広範囲にわたってスクリーニングすることを可能にする。
【0125】
まず、I-CreI骨格を、D75からNに変異させた。D75N変異は、タンパク質構造に影響を与えなかったが、過剰発現実験におけるI-CreIの毒性を減少させた。
次に、Ulib4ライブラリーを構築した。残基30、33及び38 (図6A〜C及び6D)を無作為化し、通常のアミノ酸(N30、Y33及びQ38)を、12アミノ酸(A,D,E,G,H,K,N,P,Q,R,S,T)のうちの1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。
【0126】
次いで、2つのその他のライブラリー:Ulib5及びLib4を構築した。Ulib5において、残基28、30及び38 (図6A〜C及び6E)を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、N30及びQ38)を、12アミノ酸(ADEGHKNPQRST)のうちの1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で1728の複雑さを有する(核酸の点で5832)。Lib4において、70位のアルギニンを、まず、セリンに置き換えた。次いで、28位、33位、38位及び40位(図6A〜C及び6F)を無作為化し、通常のアミノ酸(K28、Y33、Q38及びS40)を、10アミノ酸(A,D,E,K,N,Q,R,S,T,Y)のうちの1つで置き換えた。得られたライブラリーは、タンパク質の点で10000の複雑さを有する。
【0127】
1次スクリーニング実験において、Ulib4からの20000クローン、Ulib5からの10000クローン、及びLib4からの20000クローンを、64個の試験株のそれぞれと交配させ、二倍体を、ベータ-ガラクトシダーゼ活性について試験した。64個の標的の少なくとも1つとの切断活性を示す全てのクローンを、4重で、64個の標的に対する2回目のスクリーニングで試験し、各切断プロファイルを、図8に示すようにして確立した。次いで、メガヌクレアーゼORFを、PCRにより各株から増幅させ、配列決定した。
【0128】
2次スクリーニング及びコード領域全体にわたる陽性の配列決定の後に、少なくとも1つの標的に対する切断活性を示す、合計で1484のユニーク変異体を単離した。異なるパターンが観察できた。図7は、得られた141個の変異型により切断される37個の新規な標的を示し、これらはI-CreIにより切断されない34個の標的と、I-CreIにより切断される3個の標的(aag、aat及びaac)を含む。I-CreI N75及びI-CreI D75を含むプロファイルの12個の例を、図8Aに示す。これらの新しいプロファイルのいくつかは、野生型骨格といくらかの類似性を共有したが、多くの他のものは全く異なっていた。ホーミングエンドヌクレアーゼは、通常、それらの標的配列における縮重をいくらか適応させることができ、I-CreI及びI-CreI N75タンパク質は、それぞれ一連の16及び3つの標的を切断する。切断縮重は、新規なエンドヌクレアーゼの多くについて見出され、変異体当たり9.9個の切断される標的が平均である(標準偏差:11)。しかし、同定された1484個の変異体のうち、219個(15%)は、1つのDNA標的のみを切断することが見出され、179個(12%)が2つを切断し、169個(11%)及び120個(8%)がそれぞれ3及び4つの標的を切断可能であった。つまり、それらの好まし
い標的に関わらず、I-CreI誘導体の著しい数が、I-CreI N75変異体(切断された3つの10NNN標的配列)、又はI-CreI (切断された16個の10NNN標的配列)のものよりも、高くなければ同様の特異性レベルを示す。また、10NNN配列に対する変更された特異性について単離された変異体の大多数が、図6Cに記載される元のC1221標的配列をもはや切断しない(それぞれ61%及び59%)。
【0129】
全体的に、この得られた変異体の大きい集団は、±10、±9及び±8位で異なる64個の可能なDNA配列の全てを標的にすることを可能にした(図8B)。しかし、各標的を切断する変異体の数における大きい多様性が存在し(図8B)、これらの数は3〜936の範囲で、平均228.5である(標準偏差:201.5)。切断は、しばしば、±8にグアニン、又は±9にアデニンを有する標的について観察されたが、±10又は±8のシトシンは、切断者(cleavers)の数が低いことに関連した。さらに、全ての標的が同じ効率で切断されたわけではなかった。変異体に応じて(例えば図8Bにおける野生型10AAA標的についての切断効率を比較されたい)、同じ標的についてシグナルの著しい多様性が観察できたので、平均切断効率を、以前に報告されたようにして各標的について測定した(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)。これらの平均効率は、図8Bで灰色のレベルで表す。結果の分析は、この平均効率と切断者の数との間の明確な相関関係を示し、最も頻繁に切断される標的は、最も効率的に切断される(例えば図8Bの10TCN、10CTN及び10CCN標的を、10GAN、10AAN及び10TAN標的と比較されたい)。
【0130】
つまり、新規な基質特異性を有する変異体を含む数百の新規な変異型を得た。これらの変異型は、高いレベルの活性を維持でき、新規なタンパク質の特異性は、その標的について野生型タンパク質のものよりもさらに狭くし得る。
【0131】
実施例2:I-CreI変異型とそれらの標的の間の相互作用の統計的分析
A) 材料及び方法
以前に記載されたようにして(Arnouldら, J. Mol. Biol., 2006, 355, 443〜458)、階層的クラスタリングを用いて、特定のタンパク質残基と標的塩基との間の可能性のある相関関係を確立した。クラスタリングは、2次スクリーニングからの定量的データに対して、R packageからのhclustを用いて行った。変異型は、ユークリッド距離及びウォード法(Ward, J.H., American Statist. Assoc., 1963, 58, 236〜244)を用いる標準的な階層的クラスタリングを用いてクラスタにした。変異体のデンドログラムは、17の高さで切ってクラスタを規定した。分析のために、クラスタ内での標的の切断の累積強度(cumulated intensity)は、この標的を用いるクラスタの全ての変異体の切断強度の合計として算出し、全ての標的を用いるクラスタの全ての変異体の切断強度の合計に対して標準化した。
【0132】
B) 結果
10個の異なる変異体クラスタを同定した(表I)。
【0133】
【表6】

【0134】
各クラスタで見出された残基の分析は、全ての無作為化された位置について強い偏りを示した。この研究において用いた全てのライブラリーにおいて残基は変異されず、I-CreI
骨格で見出された残基は、大きな比率を占めると予測された。実際に、K28、N30及びS40は、10クラスタの全てで最も頻度が高い残基であり、DNA/タンパク質相互作用についての結論は、実際には推断できない。しかし、Y33は、クラスタ7、8及び10においてのみ最も代表的な残基であったが、その他の7つのクラスタでは、H、R、G、T、C、P又はSのようなその他の残基の強い発生が観察された。野生型Q38残基は、1つ以外の全てのクラスタにおいて大きな比率を占めたが、R及びKがクラスタ4では最も頻度が高かった。
【0135】
一方、残基33及び38の性質と、標的の±10位及び±9位での基質の識別との間に強い相関関係が観察された。
【0136】
Y33の普及は、アデニンの高い頻度に関連し(クラスタ7及び10においてそれぞれ74.9%及び64.3%)、この相関関係は、より低い程度ではあるが、クラスタ4、5及び8でも観察された。H33又はR33は、グアニンと関連し(クラスタ1、4及び5においてそれぞれ63.0%、56.3%及び58.5%)、T33及びC33又はS33はチミンと関連した(クラスタ3及び9においてそれぞれ45.6%及び56.3%)。G33は、±10での塩基の代表が最も平均的なクラスタであるクラスタ2において、比較的頻度が高かった。これらの結果は、Seligmanら(Nucleic Acids Res., 2002, 30, 3870〜3879)の観察と矛盾せず、彼らは、Y33R又はY33Hの変異がI-CreIの特異性をグアニンの方にシフトさせ、Y33C、Y33T、Y33S (及びY33Lも)は、±10位のチミンの方にシフトさせたことを以前に示している。
【0137】
さらに、R38及びK38は、クラスタ4におけるグアニンの例外的に高い頻度に関連したが、他のクラスタの全てでは、野生型Q38残基、及び標的の±9におけるアデニンが大きい比率を占めた。
【0138】
その標的に結合しているI-CreIの構造(Chevalierら, 2003, 上記; Juricaら, 1998, 上記)は、Y33及びQ38が-10及び-9の2つのアデニンに接触することを示し(図6C)、結果は、これらの相互作用が多くの変異体でおそらく維持されていることを示唆する。同様の結果は、残基44及び±4位について以前に記載されている(Arnouldら, 上記)。しかし、33/±10、38/±9及び44/±4の対について得られた結果の比較は、所定の塩基が、位置に応じて、異なるアミノ酸残基と関連し得ることを示す。最も見出される残基は、グアニンについて33位のR及びH、38位のR又はK、並びに44位のK、アデニンについて33位のY並びに38位及び44位のQ、チミンについて33位のS、C又はT、並びに44位のAである。3つの場合について、シトシンについて明確なパターンは観察されない。つまり、普遍的な「コード」は存在しないが、各塩基に接触するための一連の解決策(solutions)があり、最良の解決策は、より一般的な関係に依存し、ジンクフィンガータンパク質について観察されたことと非常に類似する(Paboら, 上記)。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1A】DNA標的を表す。天然のI-CreIホーミング部位に由来する2つのパリンドロームI-CreI標的。
【図1B】DNA標的を表す。64個のDNA標的。
【図2】酵母スクリーニングアッセイの原理を示す。
【図3】I-CreI N75骨格タンパク質の配列と、Ulib4及びUlib5ライブラリーの構築に用いられた縮重プライマーを表す。
【図4】pCLS0542メガヌクレアーゼ発現ベクターを表す。
【図5】pCLS0042レポーターベクターを表す。
【図6】I-CreI変異型ライブラリーの基本原理を示す。
【図7】37個の新規なDNA標的を切断する141個のI-CreI変異型の切断パターンを表す。
【図8】各標的を切断するパターンの例及び変異体の数を示す。
【図6−2】

【図6−3】

【図6−4】

【図7−1】

【図7−2】

【図8−1】

【図8−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも:
(a) I-CreIのβ1β2ヘアピンからのアミノ酸K28、N30、Y33、Q38及び/又はS40の少なくとも1つを、A、C、D、E、G、H、K、N、P、Q、R、S、T、L、V、W及びYからなる群より選択されるアミノ酸で置換し、
(b) 少なくとも-9位〜-8位のaaヌクレオチドダブレット及び/又は+8位〜+9位のttヌクレオチドダブレットが異なるヌクレオチドダブレットで置換されている変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断できる、工程(a)からのI-CreI変異型を選択及び/又はスクリーニングする
工程を含む、改変された切断特異性を有するI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ変異型を作製する方法。
【請求項2】
工程b)のDNA標的が、配列番号1〜3から選択されるI-CreI部位に由来する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)のDNA標的が、式:
c-11n-10n-9n-8m-7y-6n-5n-4n-3k-2y-1 r+1m+2n+3n+4n+5r+6k+7n+8n+9n+10g+11 (I)
(式中、nはa、t、c又はgであり、mはa又はcであり、yはc又はtであり、kはg又はtであり、rはa又はgである(配列番号75)が、但し、n-9n-8がaaであるときにn+8n+9はttではなく、n+8n+9がttであるときにn-9n-8はaaではない)
を有する配列を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
n-5n-4n-3がgtcであり、及び/又はn+3n+4n+5がgacである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程b)のDNA標的の-11位〜-8位及び+8位〜+11位のヌクレオチド配列、及び/又は-5位〜-3位及び/又は+3位〜+5位のヌクレオチド配列が、パリンドロームである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)のDNA標的が、-9位〜-8位にag、at、ac、ga、gg、gt、gc、ta、tg、tt、cg、ct若しくはccからなる群より選択されるヌクレオチドダブレットを含み、及び/又は+8位〜+9位に-9位〜-8位の前記ヌクレオチドダブレットの逆相補配列であるヌクレオチドダブレットを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)のDNA標的が、I-CreI部位の-10位のaヌクレオチド、及び/又は+10位のtヌクレオチドの、異なるヌクレオチドでの置換をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
DNA標的が、-10位〜-8位にaac、aag、aat、acc、acg、act、aga、agc、agg、agt、ata、atg、cag、cga、cgg、ctg、gac、gag、gat、gcc、gga、ggc、ggg、ggt、gta、gtg、gtt、tac、tag、tat、tcc、tga、tgc、tgg、tgt若しくはttgからなる群より選択されるヌクレオチドトリプレットを含み、及び/又は+8位〜+10位に-10位〜-8位の前記ヌクレオチドトリプレットの逆相補配列であるヌクレオチドトリプレットを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、前記変異型により生じる変異DNA標的配列中の二本鎖切断が正の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の活性化、又は負の選択マーカー若しくはレポーター遺伝子の不活性化を導く条件下で、前記DNA二本鎖切断の組換え媒介修復によりインビボで行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)で得られた1つの変異型を発現させてホモダイマーの形成を可能にする工程c1)をさらに含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)で得られた1つの変異型と、I-CreI又はその機能的変異型とを同時発現させてヘテロダイマーの形成を可能にする工程c2)をさらに含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)で得られた2つの異なる変異型を同時発現させる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができ、少なくとも-9位及び/又は-8位のaヌクレオチド、及び/又は+8位及び/又は+9位のtヌクレオチドが異なるヌクレオチドで置換されている変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断可能であり、28位、30位、33位、38及び40位にそれぞれ:
【表1−1】

【表1−2】

からなる群より選択されるアミノ酸残基を有するI-CreIメガヌクレアーゼ変異型。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができ、38位にアルギニン(R)又はリジン(K)を有し、-9位にグアニン及び/又は+9位にシトシンを含む変異I-CreI部位からなるDNA標的配列を切断可能であるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型。
【請求項15】
DNA標的配列に接触する位置又は該DNA標的と直接的若しくは間接的に相互作用する位置で1又は複数のさらなる変異を含む請求項13又は14に記載のI-CreI変異型。
【請求項16】
前記変異が、I24、Q26、S32、Q44、R68、R70、D75、I77及びT140からなる群より選択される位置である請求項15に記載のI-CreI変異型。
【請求項17】
75位のアスパラギン酸の、非荷電アミノ酸での置換を含む請求項16に記載のI-CreI変異型。
【請求項18】
D75N又はD75V変異を含む請求項17に記載のI-CreI変異型。
【請求項19】
R70S変異を含む請求項16に記載のI-CreI変異型。
【請求項20】
I-CreIの80位〜163位に、好ましくはI-CreIの80位、82位、85位、86位、87位、94位、96位、100位、103位、114位、115位、117位、125位、129位、131位、132位、147位、151位、153位、154位、155位、157位、159位及び160位に1又は複数のさらなる変異を含む請求項13〜19のいずれか1項に記載のI-CreI変異型。
【請求項21】
ホモダイマーである請求項13〜20のいずれか1項に記載のI-CreI変異型。
【請求項22】
2つの異なる変異型からのモノマーを含むヘテロダイマーである請求項13〜20のいずれか1項に記載のI-CreI変異型。
【請求項23】
請求項13〜20のいずれか1項で定義される変異型からのモノマーと、LAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼ又はその機能的変異型からのモノマー又はドメインとの融合体を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼ。
【請求項24】
請求項13〜22のいずれか1項に記載のI-CreI変異型、又は請求項23に記載の変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドフラグメント。
【請求項25】
請求項24に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドフラグメントを含む組換えベクター。
【請求項26】
DNA標的配列を取り囲む領域と相同性を共有する配列を含む標的化構築物を含む請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
標的化DNA構築物が、a) DNA標的配列を取り囲む領域と相同性を共有する配列と、b) a)で定義される配列に接する、導入される配列とを含む請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
請求項23に記載のポリヌクレオチド、又は請求項25〜27のいずれか1項に記載のベクターにより改変された宿主細胞。
【請求項29】
請求項24に記載のポリヌクレオチド、又は請求項25〜27のいずれか1項に記載のベクターにより改変された非ヒトトランスジェニック動物。
【請求項30】
請求項23に記載のポリヌクレオチド、又は請求項25〜27のいずれか1項に記載のベクターにより改変されたトランスジェニック植物。
【請求項31】
請求項13〜22のいずれか1項に記載の少なくとも1つのI-CreI変異型、請求項23に記載の少なくとも1つの変異型に由来する単鎖キメラエンドヌクレアーゼ、又は請求項25〜27のいずれか1項に記載の組換えベクターを含む組成物。
【請求項32】
標的遺伝子座と相同性を共有する配列により挟まれている興味のある部位を修復する配列を含む標的化DNA構築物を含む請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
DNA標的配列を含むベクターを請求項13〜22のいずれか1項に記載のI-CreI変異型又は請求項23に記載の前記変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させることにより、該ベクター上に位置する興味のある部位で二本鎖核酸を切断し、それにより前記変異型の切断部位を取り囲む配列と相同性を示す別のベクターとの相同組換えを誘導する工程を含む、遺伝子操作の方法。
【請求項34】
1) 少なくとも1つのDNA標的配列を、請求項13〜22のいずれか1項に記載のI-CreI変異型又は請求項23に記載の前記変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させることにより、前記少なくとも1つのDNA標的配列を含むゲノム遺伝子座を二本鎖切断し、2) 前記切断されたゲノム遺伝子座を、該標的遺伝子座と相同性を共有する配列に挟まれている、該遺伝子座に導入される配列を含む標的化DNA構築物との相同組換えに適する条件下で維持する工程を含む、ゲノム操作の方法。
【請求項35】
1) 切断部位を、請求項13〜22のいずれか1項に記載のI-CreI変異型又は請求項23に記載の前記変異型を含む単鎖キメラエンドヌクレアーゼと接触させることにより、少なくとも1つのDNA標的配列を含むゲノム遺伝子座を二本鎖切断し、2) 前記切断されたゲノム遺伝子座を、前記切断部位を取り囲む領域と相同性を共有する染色体DNAとの相同組換えに適する条件下で維持する工程を含む、ゲノム操作の方法。
【請求項36】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができるI-CreIメガヌクレアーゼ変異型の、治療目的でない分子生物学、インビボ又はインビトロの遺伝子操作、及びインビボ又はインビトロのゲノム操作のため、請求項1〜8のいずれか1項で定義されるようなDNA標的配列の切断のための使用。
【請求項37】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができる少なくとも1つのI-CreI変異型の、個体にいずれの手段により投与される、必要とする個体における遺伝性疾患を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項38】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができる少なくとも1つのI-CreI変異型の、個体にいずれの手段により投与される、必要とする個体において、DNA中間体を提示する感染因子を原因とする疾患を予防、改善又は治癒するための医薬品の製造のための使用。
【請求項39】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができる少なくとも1つのI-CreI変異型の、生物学的に誘導された生成物、又は生物学的使用を意図する生成物におけるDNA中間体を提示する感染因子の増殖の阻害、不活性化又は消去のため、或いは物体の消毒のための、インビトロでの使用。
【請求項40】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により得ることができる少なくとも1つのI-CreI変異型の、他のメガヌクレアーゼを作製するための骨格としての使用。
【請求項41】
I-CreIの変異型が、KNSQS、KNRQS、KNTQS、KNHQSからなる群より選択されるアミノ酸残基を、それぞれ28位、30位、33位及び40位に有する請求項37〜39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記I-Cre I変異型が、請求項13〜23のいずれか1項に定義されるものである請求項36〜40のいずれか1項に記載の使用。

【図1A】
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【図1B−1】
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【図1B−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【公表番号】特表2009−513129(P2009−513129A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537234(P2008−537234)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003883
【国際公開番号】WO2007/049156
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(504100846)
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【Fターム(参考)】