説明

新規な化合物および診断におけるその使用

式(I)の化合物[式中、XおよびYはTSPOと独立に結合し、XとYとは同じであるか異なっており、Lは、XをYと連結させるリンカーである]またはその塩もしくは溶媒和物。好ましくは、XおよびYは(II)または(III)であってもよい。この化合物は、放射性同位体で放射性の標識がされていてもよい。さらに、神経変性障害、炎症または不安などのTSPO関連の障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患を診断または治療する方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、その調製方法およびその使用に関する。より詳細には、本発明は、輸送体タンパク質(18kDa)(TSPO)と結合する化合物、および、対象におけるTSPO発現を画像化する方法に関する。本発明は、さらに、例えば、神経変性障害、炎症または不安などの障害の治療の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書を通して先行技術について論じられる場合、そのような先行技術が、広く知られたものである、または、当技術分野における一般常識の一部を形成するものであると認めたものとは決して考えられるべきではない。
【0003】
TSPO(以前は末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)として知られていた)は、アデニンヌクレオチド輸送体(ANC)(30kDa)および電圧依存性陰イオンチャネル(VDAC)(32kDa)と共に三量体複合体を形成して、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)を構成できる。TSPOは、構造の違い、生理機能およびミトコンドリアの外膜上の細胞内の位置から、中枢型ベンゾジアゼピン受容体(CBR)と区別される。TSPOは多数の生物学的過程に関与しているが、その生理的役割のいくつかの側面は不明なままである。研究によれば、TSPOは、ステロイド生合成の律速段階、免疫調節、ポルフィリン輸送、カルシウムホメオスタシスおよびプログラム細胞死に関与している。
【0004】
TSPOは、以下を含めさまざまな疾患に関与している:神経膠芽腫(Pappataら、1991、J Nucl Med、32、1608〜10頁; Veenmanら、2004、Biochem Pharmacol.、68(4)、689〜98頁; Levin、2005、Biochemistry、44(29)、9924〜35頁)、多発性硬化症(Vowinckelら、1997、J Neurosci Res、50、345〜53頁; Banatiら、2000、Brain、123(パート11)、2321〜37頁; Debruyneら、2003、Eur J Neurol、10、257〜64頁; Versijptら、2005、Mult Scler、11、127〜34頁; ChenおよびGuilarte、2006、Toxicol Sci.、91(2)、532〜9頁)、虚血性脳卒中(Gerhardら、2000、Neuroreport、11、2957〜60頁; Gerhardら、2005、Neuroimage、24、591〜5頁; Priceら、2006、Stroke、37、1749〜53頁)、ヘルペス脳炎(Cagninら、2001、Brain、124、2014〜27頁)、パーキンソン病(Cummingら、2001、Acta Neurol Scand、103、309〜15頁; Cicchettiら、2002、Eur J Neurosci、15、991〜8頁; Ouchiら、2005、57、168〜75頁; Gerhardら、2006、Neurobiol Dis、21、404〜12頁; Cummingら、2006、Synapse、59、418〜26頁)、HIV(Vennetiら、2004、J Clin Invest、113、981〜9頁; Hammoudら、2005、J Neurovirol、11、346〜55頁; Wileyら、2006、J Neurovirol、12、262〜71頁)、筋萎縮性側索硬化症(Turnerら、2004、Neurobiol Dis、15、601〜9頁)、大脳皮質基底核変性症(Henkelら、2004、Mov Disord、19、817〜21頁; Gerhardら、2004、Mov Disord、19、1221〜6頁)、ハンチントン病(Paveseら、2006、Neur
ology、66、1638〜43頁)、癌(Hardwickら、2002、Cancer Genet Cytogenet.、139(1)、48〜51頁; Papadopoulo V.、2003、Ann Pharm Fr.、61(1)、30〜50頁; Han Z.、2003、J Recept Signal Transduct Res.、23(2〜3)、225〜38頁)、アルツハイマー病(Papadopoulo V.、2003、Ann Pharm Fr.、61(1)、30〜50頁; Liら、2007、Biochem Pharmaco.、73(4)、491〜503頁)、うつ病(Gavioli EC.、2003、Eur J Pharmacol.、13、471(1)、21〜6頁; Kita A.、2004、Br J Pharmacol.、142(7)、1059〜72頁)および癌、自己免疫疾患、感染性疾患および神経変性疾患(Galiegueら、2003、Curr Med Chem、10、1563〜72頁)。TSPOのリガンドはそのような疾患の治療において有益である可能性があることが広く認められている。
【0005】
TSPOは、肺、心臓および腎臓など大部分の末梢器官において高密度に分布しているが、正常な脳実質においてはわずかに発現するのみである。神経傷害または感染症の後、脳実質におけるTSPO発現は劇的に増加する。in vitroでのオートラジオグラフィーおよび免疫組織化学により、この領域において結合しているTSPOの上昇は、活性化したミクログリアの出現と直接関連があることが明らかになっている。最近では、アルツハイマー病(AD)患者および多発性硬化症(MS)患者におけるin vivoでのポジトロン放出断層撮影法(PET)による画像化により、脳実質において結合しているTSPOは、活性化したミクログリア細胞に限局していることが確認された。
【0006】
ミクログリアは、中枢神経系(CNS)の主要な免疫エフェクター細胞である。このマクロファージ様の免疫細胞は単球系から派生したもので、その主要な役割は、宿主防御および免疫監視にあると考えられている。この細胞は、自体の微小環境における変化に高度に敏感であり、病理的事象に応答して速やかに活性化状態になる。このことから、TSPOは、いくつかの神経変性障害の初期段階における最初の炎症過程と密接に関連していると考えられる。
【0007】
過去数10年にわたり、ベンゾジアゼピン(ジアゼパムおよびRo5-4864)、イソキノリンカルボキサミド(PK11195)、インドールアセトアミド(FGIN-1-27)、フェノキシフェニルアセトアミド(DAA1106)、ピラゾロピリミド(DPA-713)、ベンゾジアゼピンおよびイミダゾピリジンなど、いくつかのクラスのTSPOリガンドが報告されている。いくつか他のクラスも開発されている。しかし、TSPOの生理的および治療的役割、その正確な局在化およびTSPOサブタイプの存在予測をよりよく特徴付けるには、さまざまな結合特性および生物活性を有する、より広範なリガンドが必要である。
【0008】
イソキノリンカルボキサミド[11C](R)-PK11195は、TSPOの機能および発現を試験するための薬理学的プローブとして使用されている。AD患者、MS患者および多系統委縮症(MSA)患者において実施されたいくつかのPET試験から、[11C](R)-PK11195を用いたin vivoでのTSPOの測定は生体脳において実行可能であることが示されている。[11C](R)-PK11195は、最も広く使用されるPET TSPOリガンドとみなされてはいるものの、この物質は、乏しいシグナル/ノイズ比を示し、最終的にミクログリア活性化マーカーとしての感度が低下する脳関門透過性(brain permeability)の低さを示している。
【0009】
1998年、高度に選択的かつ強力なTSPO用リガンドとして、フェノキシフェニルアセトアミド誘導体DAA1106が報告された(Chaki, S.、Funakoshi, T.、Yoshikawa, R.、Okuyama, S.、Okubo, T.、Nakazato, A.、Nagamine, M.、Tomisawa, K.、European Journal of Pharmacology、1999、371、197〜204頁)。最近では、DAA1106を炭素-11(11C)で標識してPET試験において使用して、齧歯動物および霊長動物両方の脳においてそのin vivo動態が評価された(Zhang MR、Kida T、Noguchi Jら、[11C]DAA1106、radiosynthesis and in vivo binding to peripheral benzodiazepine receptors in mouse brain.、Nucl Med Biol、2003、30、513〜519頁; Maeda J、Suhara T、Zhang MRら、Novel peripheral benzodiazepine receptor ligand [11C]DAA1106 for PET: An imaging tool for glial cells in the brain.、Synapse、2004、52、283〜291頁)。[11C]DAA1106の結合は、サルの後頭皮質における[11C](R)-PK11195の4倍大きいことが示され、このことから、その優れた脳関門透過性が示唆された。この化合物のフッ素-18(18F)類似体も合成されており(すなわち[18F]FEDAA1106)、この類似体も、in vivoにおいて[11C]DAA1106に対し同様の結合特性を示す(Zhang MR、Maeda J、Ogawa Mら、J Med Chem.、2004、47、2228〜2235頁)。しかし、[11C]DAA1106および[18F]FEDAA1106の結合は両方とも不可逆的であるようであり、事実、これらの物質は脳からの排出が遅いことから、定量分析にとって適切な動態を有していない可能性があることが示唆される。
【0010】
Ryu JKら、Neurobiology of Disease、20、(2005)、550〜561頁では、TSPOリガンドPK11195は、キノリン酸を注射されたラットの層においてミクログリア活性化および神経細胞死を減少させると報告されている。この論文において報告された結果から、活性化したミクログリアからの炎症応答は線条体ニューロンに損傷を与えており、したがって、ミクログリアにおけるTSPOの薬理標的化は神経障害におけるニューロンの保護に有望であることが示唆される。
【0011】
公開国際出願第WO2008/022396号では、18Fで標識されている一定のイミダゾピリダジンは、PBRに富む組織中での放射能の取込みを示すことも全般に開示された。
【0012】
in vivoでのTSPO発現の画像化に使用できる、脳動態が向上しているTSPOリガンドを同定することは有利と考えられるが、その理由は、そのようなリガンドであれば、いくつかの神経変性障害の初期段階に関与している生化学事象のカスケードをさらに試験するために利用できると考えられるからである。脳動態が向上しているTSPOリガンドを同定することは、そのようなリガンドは神経変性障害のための診断的および治療的両方の手段として役立つ可能性があることからも有利と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】公開国際出願第WO2008/022396号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Pappataら、1991、J Nucl Med、32、1608〜10頁
【非特許文献2】Veenmanら、2004、Biochem Pharmacol.、68(4)、689〜98頁
【非特許文献3】Levin、2005、Biochemistry、44(29)、9924〜35頁
【非特許文献4】Vowinckelら、1997、J Neurosci Res、50、345〜53頁
【非特許文献5】Banatiら、2000、Brain、123(パート11)、2321〜37頁
【非特許文献6】Debruyneら、2003、Eur J Neurol、10、257〜64頁
【非特許文献7】Versijptら、2005、Mult Scler、11、127〜34頁
【非特許文献8】ChenおよびGuilarte、2006、Toxicol Sci.、91(2)、532〜9頁
【非特許文献9】Gerhardら、2000、Neuroreport、11、2957〜60頁
【非特許文献10】Gerhardら、2005、Neuroimage、24、591〜5頁
【非特許文献11】Priceら、2006、Stroke、37、1749〜53頁
【非特許文献12】Cagninら、2001、Brain、124、2014〜27頁
【非特許文献13】Cummingら、2001、Acta Neurol Scand、103、309〜15頁
【非特許文献14】Cicchettiら、2002、Eur J Neurosci、15、991〜8頁
【非特許文献15】Ouchiら、2005、57、168〜75頁
【非特許文献16】Gerhardら、2006、Neurobiol Dis、21、404〜12頁
【非特許文献17】Cummingら、2006、Synapse、59、418〜26頁
【非特許文献18】Vennetiら、2004、J Clin Invest、113、981〜9頁
【非特許文献19】Hammoudら、2005、J Neurovirol、11、346〜55頁
【非特許文献20】Wileyら、2006、J Neurovirol、12、262〜71頁
【非特許文献21】Turnerら、2004、Neurobiol Dis、15、601〜9頁
【非特許文献22】Henkelら、2004、Mov Disord、19、817〜21頁
【非特許文献23】Gerhardら、2004、Mov Disord、19、1221〜6頁
【非特許文献24】Paveseら、2006、Neurology、66、1638〜43頁
【非特許文献25】Hardwickら、2002、Cancer Genet Cytogenet.、139(1)、48〜51頁
【非特許文献26】Papadopoulo V.、2003、Ann Pharm Fr.、61(1)、30〜50頁
【非特許文献27】Han Z.、2003、J Recept Signal Transduct Res.、23(2〜3)、225〜38頁
【非特許文献28】Liら、2007、Biochem Pharmaco.、73(4)、491〜503頁
【非特許文献29】Gavioli EC.、2003、Eur J Pharmacol.、13、471(1)、21〜6頁
【非特許文献30】Kita A.、2004、Br J Pharmacol.、142(7)、1059〜72頁
【非特許文献31】Galiegueら、2003、Curr Med Chem、10、1563〜72頁
【非特許文献32】Chaki, S.、Funakoshi, T.、Yoshikawa, R.、Okuyama, S.、Okubo, T.、Nakazato, A.、Nagamine, M.、Tomisawa, K.、European Journal of Pharmacology、1999、371、197〜204頁
【非特許文献33】Zhang MR、Kida T、Noguchi Jら、[11C]DAA1106、radiosynthesis and in vivo binding to peripheral benzodiazepine receptors in mouse brain.、Nucl Med Biol、2003、30、513〜519頁
【非特許文献34】Maeda J、Suhara T、Zhang MRら、Novel peripheral benzodiazepine receptor ligand [11C]DAA1106 for PET: An imaging tool for glial cells in the brain.、Synapse、2004、52、283〜291頁
【非特許文献35】Zhang MR、Maeda J、Ogawa Mら、J Med Chem.、2004、47、2228〜2235頁
【非特許文献36】Ryu JKら、Neurobiology of Disease、20、(2005)、550〜561頁
【非特許文献37】Handbook of Radiopharmaceuticals、Radiochemistry Applications、Michael WelschおよびCarol S. Redvanly編、John Wiley & Sons Ltd、2003
【非特許文献38】PET Chemistry, The Driving Force for Molecular Imaging.、P.A. Schubiger、L. Lehmann、M. Friebe編、Springer、2007
【非特許文献39】VICTOR WILLIAM PIKE、THE STATUS OF PET RADIOCHEMISTRY FOR DRUG DEVELOPMENT AND EVALUATION、Drug Information Journal、Vol. 31、997〜1013頁、1997
【非特許文献40】RJ Hargreaves、The Role of Molecular Imaging in Drug Discovery and Development、Clinical pharmacology & Therapeutics、2008、83巻、2号、349〜352頁
【非特許文献41】Riond, J.、Mattei, M.G.、Kaghad, M.、Dumont, X.、Guillemot, J.C.、Le Fur, G.、Caput, D.、Ferrara, P.、(1991)、Molecular cloning and chromosomal localization of a human peripheral-type benzodiazepine receptor.、Eur. J. Biochem.、195、305〜311頁
【非特許文献42】Vin, V.、Leducq, N.、Bono, F.、Herbert, J.M.、(2003)、Binding characteristics of SSR180575, a potent and selective peripheral benzodiazepine receptor ligand.、Biochem. Biophys. Res. Comm.、310、785〜790頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、先行技術の不利点の少なくとも1つを克服もしくは改善し、または、有用な代替物を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、好ましい一形態では、TSPOと結合する化合物、その調製の方法およびその使用の方法を提供することである。具体的には、本発明の目的は、好ましい一形態では、対象における輸送体タンパク質TSPOの発現を画像化するための化合物および方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、好ましい一形態では、障害、とりわけ神経変性障害、炎症または不安の治療のための化合物および方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、式(I)
X-L-Y
(I)
[式中、
XおよびYはTSPOと独立に結合し、XとYとは同じであるか異なっており、
Lは、XをYと連結させるリンカーである]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0018】
好ましくは、XおよびYは、
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、
AおよびKは独立にCH、CもしくはNであり、JはCHもしくはNであり、BおよびGは独立にCもしくはNであるが、但し、BおよびGのうち少なくとも一方はCであり、このとき、A、B、G、JおよびKのうち少なくとも2つはNであり;DはO、NH、(CH2)mもしくはSであり;Eは、アリール基もしくはヘテロアリール基であって、それぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されている以下の置換基:ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルまたはTC2〜C10アルキニル(TはNH、OもしくはSである)のうち1つもしくは複数で場合により置換されているアリール基もしくはヘテロアリール基であり;R1およびR2は独立に、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールであり、それぞれが1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されているか、
または、R1およびR2は、これらが結合している窒素と一緒になって、1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されている3〜7個の間の環員を有する複素環を形成し;R3は独立に、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルもしくはTC2〜C10アルキニルであり、そのそれぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されており(TはNH、OもしくはSである)、
mは1〜6の間の数であり、
nは0〜3の間の数である]
から独立に選択される。
【0021】
一実施形態では、A、GおよびJはNであり、KはCHもしくはCであり、BはCであるか;または、A、BおよびJはNであり、KはCHもしくはCであり、GはCである。好ましくは、R3はC1〜C6アルキルであり、nは1または2である。より好ましくは、nは2であり、各それぞれのR3はメチルである。好ましい一実施形態では、それぞれのメチル基は互いにメタ位に位置する。
【0022】
好ましくは、Dは(CH2)mであり、このときmは1である。さらなる実施形態では、R1およびR2は独立にC1〜C6アルキルである。代替的な実施形態では、R1およびR2は独立にエチルである。さらなる実施形態では、Eは、以下の置換基:ハロゲン、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルのうち1つまたは複数で場合により置換されている5または6員のアリール基またはヘテロアリール基である。好ましい一実施形態では、Eはフェニルである。
【0023】
とりわけ好ましい一実施形態では、XおよびYは独立に
【0024】
【化2】

【0025】
である。
【0026】
一定の実施形態では、Lは、好ましくは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、T(C1〜C20アルキル)T、T(C2〜C20アルケニル)T、T(C2〜C20アルキニル)T、TCH2(CH2OCH2)pCH2T、TCH2(CH2NHCH2)pCH2T、グリシンオリゴマーを非限定的に含むアミノ酸からなる群から選択され、このとき、TはNH、OまたはSであり、pは1〜10の間の数である。
【0027】
好ましい実施形態では、Lは、O(C1〜C20アルキル)O、O(C2〜C20アルケニル)O、O(C2〜C20アルキニル)OおよびOCH2(CH2OCH2)pCH2Oからなる群から選択され、このときpは1〜10の間の数である。
【0028】
式(I)の化合物は、好ましくは、
【0029】
【化3】

【0030】
からなる群から選択される。
【0031】
好ましくは、式(I)の化合物は、
【0032】
【化4】

【0033】
からなる群から選択される。
【0034】
好ましい一実施形態では、第1の態様による式(I)の化合物は、放射性同位体で放射標識されている。好ましくは、放射性同位体は、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brからなる群から選択される。好ましくは、放射性同位体は18Fである。
【0035】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様による化合物または薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0036】
第3の態様によれば、本発明は、対象の障害を診断する方法であって、第1の態様による式(I)の化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、この方法は、対象における輸送体タンパク質(18kDa)(TSPO)を画像化することを含む。一実施形態では、この化合物が放射性同位体で放射標識されているとき、放射性同位体は、18F、123I、124I、75Brおよび76Brからなる群から選択される。好ましい一実施形態では、この方法は、該タンパク質の位置を示す画像を得ることを含む。より好ましい一実施形態では、画像は、ポジトロン放出断層撮影法(PET)による画像化により得られる。好ましくは、式(I)の化合物は123Iで放射標識されており、画像はSPECT画像化により得られる。一実施形態では、画像は、対象の脳実質における該化合物またはその塩のTSPO結合の程度を評価するために得られる。好ましくは、この障害は、神経変性障害、炎症または不安である。好ましくは、この障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患からなる群から選択される。好ましくは、対象はヒトである。
【0037】
第4の態様によれば、本発明は、対象の障害を診断するための薬剤の製造における第1の態様による化合物の使用を提供する。好ましくは、障害を診断することは、対象における輸送体タンパク質(18kDa)を画像化することを含む。より好ましくは、式(I)の化合物は123Iで放射標識されており、輸送体タンパク質の画像はSPECT画像化により得られる。一実施形態では、この障害は、神経変性障害、炎症または不安である。好ましい一実施形態では、この障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患。
【0038】
第5の態様によれば、本発明は、対象の障害を治療するための医薬の製造における第1の態様の化合物の使用を提供する。好ましくは、この障害は、哺乳動物におけるTSPO受容体の異常な密度を特徴とする。一実施形態では、この障害は、神経変性障害、炎症または不安である。好ましい一実施形態では、この障害は、以下からなる群から選択される:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患。
【0039】
第6の態様によれば、本発明は、対象の障害を治療する方法であって、第1の態様による化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。好ましい一実施形態では、この障害は、哺乳動物におけるTSPO受容体の異常な密度を特徴とする。より好ましくは、この障害は、対象における神経変性障害、炎症または不安である。最も好ましい一実施形態では、この障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患である。第3の態様によれば、本発明は、対象の障害を診断する方法であって、第1の態様において定義したとおりの式(I)の化合物を対象に投与することを含む方法を提供する。好ましくは、この方法は、対象における輸送体タンパク質(18kDa)(TSPO)を画像化することを含む。
【0040】
第7の態様によれば、本発明は、塩基の存在下で式(II)の化合物をV-L-Vと反応させることを含む、式(I)の化合物を調製する方法
【0041】
【化5】

【0042】
[式中、
AおよびKは独立にCH、CもしくはNであり、JはCHもしくはNであり、BおよびGは独立にCもしくはNであるが、但し、BおよびGのうち少なくとも一方はCであり、このとき、A、B、G、JおよびKのうち少なくとも2つはNであり、
DはO、NH、(CH2)mもしくはSであり、
Eは、アリール基もしくはヘテロアリール基であって、それぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されている以下の置換基:ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルまたはTC2〜C10アルキニル(TはNH、OもしくはSである)のうち1つもしくは複数で場合により置換されているアリール基もしくはヘテロアリール基であり、
R1およびR2は独立に、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールであり、それぞれが1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されているか、
または、R1およびR2は、これらが結合している窒素と一緒になって、1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されている3〜7個の間の環員を有する複素環を形成し
R3は独立に、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルもしくはTC2〜C10アルキニルであり、そのそれぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されており(TはNH、OもしくはSである)、
mは1〜6の間の数であり、
nは0〜3の間の数であり、
Lは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、T(C1〜C20アルキル)T、T(C2〜C20アルケニル)T、T(C2〜C20アルキニル)T、TCH2(CH2OCH2)pCH2T、TCH2(CH2NHCH2)pCH2T、グリシンオリゴマーを非限定的に含むアミノ酸からなる群から選択され(TはNH、OもしくはSである)、
pは1〜10の間の数であり、
Vは塩基と反応する脱離基であり、
塩基はNaHもしくはK2CO3である]
を提供する。
【0043】
第8の態様によれば、本発明は、TSPO受容体と結合した際に応答を誘導することが可能な第1の態様による式(I)の化合物を提供する。
【0044】
理論に拘束されることを望むものではないが、XおよびYは、同じタンパク質中の2つの部位との相互作用によるか、または、2つの別々のタンパク質にわたって結合することにより、TSPOと独立に結合する。好ましくは、XおよびYの1つずつがTSPOと独立に結合するが、選択される条件下では、常にXまたはYの一方のみがTSPO受容体と結合できることは理解されよう。式(I)の化合物のTSPOへの結合の性質および種類は、XおよびY、ならびに、リンカーLの長さに依存することになることも理解されよう。
【0045】
リンカーLは、XをYと結び付けることが可能な任意の適当なリンカーであってもよい。適当なリンカーとしては、限定するものではないが、共有結合、有機鎖、無機鎖、有機金属鎖、ポリマーなどが挙げられる。リンカーは、単一原子または単純な官能基であってもよい。リンカーとしては、グリシンオリゴマーを非限定的に含むアミノ酸を挙げることもできる。適当なグリシンオリゴマーとしては、メチレンジアシルコアに結合するオリゴグリコール単位、例えば、
【0046】
【化6】

【0047】
[式中、
gは1〜4の間の数であり、
fは1〜4の間の数である]
が挙げられる。
【0048】
各gは独立に1、2、3または4であり、fは1、2、3または4であることは理解されよう。
【0049】
好ましくは、XおよびYは、リンカーL不在の独立の単位としての、TSPOと結合した際に応答を誘導する化合物に由来する。
【0050】
構造:
【0051】
【化7】

【0052】
中、記号:
【0053】
【化8】

【0054】
は、この記号が結合している5員環周囲の不飽和の程度を表す。JがCHであり、BおよびGが、CおよびNからなる群から独立に選択されるが、但し、BおよびGの少なくとも一方がCであり、Jが結合している5員環は、
【0055】
【化9】

【0056】
により表されるように、Jが結合している5員環は非芳香族となることは理解されるであろうし、JがNであるときは、
【0057】
【化10】

【0058】
により表されるように、この環が芳香族であることは理解されるであろう。
【0059】
Aおよび/またはKがCであるとき、R3はCと結合することは理解されよう。
【0060】
XおよびYが、
【0061】
【化11】

【0062】
から独立に選択され、nがOより大きいとき、R3は、a、b、cまたはdの位置のうち任意の1つに位置できることは理解されよう。例えば、nが1であるとき、R3はa、b、cまたはdの位置で結合し;nが2であるとき、R3は、aおよびb、aおよびc、aおよびd、bおよびc、bおよびd、またはcおよびdの位置で結合し;nが3であるとき、R3は、a、bおよびc、a、bおよびd、a、cおよびd、またはb、cおよびdの位置で結合し;nが4であるとき、R3はa、b、cおよびdの位置で結合する。好ましくは、R3はbおよびdの位置で結合する。より好ましくは、nは2であり、R3は、aおよびc、またはbおよびdの位置で結合する。すなわち、各R3は、互いにメタ位でこの環と結合する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】0.01nM〜1μMの範囲の濃度の多様な二座リガンド(bidentate ligand)の存在下での、ヒトTSPOを形質移入したHEK293細胞中で結合する[3H]PK11195の用量依存性置換を表す用量応答曲線を示すグラフである。結合データを、2本の曲線、すなわち1部位競合(one-site competition)または2部位競合(two-site competition)のうち一方に当てはめる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
文脈によりそうではないことが明らかに求められる場合を除き、この説明および特許請求の範囲を通じ、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的または徹底的な意味とは対照的に包含的な意味で、すなわち、「非限定的に含む」の意味で解釈されたい。
【0065】
本明細書において使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖または単環式または多環式のアルキルを指す。典型的には、アルキルはC1〜C20アルキル、例えば、1〜20個の炭素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基は、1〜2個、1〜4個、1〜6個、1〜8個、1〜10個、1〜12個、1〜14個、1〜16個、1〜18個または1〜20個の炭素原子を有してもよい。
【0066】
直鎖および分枝鎖アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルおよびイコシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
環状アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0068】
本明細書において使用する場合、用語「アルケニル」は、直鎖、分枝鎖または環状のアルケニルを指す。典型的には、アルケニルはC2〜C20アルケニル、例えば、2〜20個の炭素原子、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の炭素原子を有するアルケニル基である。アルケニル基は、2〜4個、2〜6個、2〜8個、2〜10個、2〜12個、2〜14個、2〜16個、2〜18個または2〜20個の炭素原子を有してもよい。好ましくは、アルケニル基はC2〜C8アルケニルである。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチルシクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニルおよび1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
【0069】
C2〜C20アルケニルが、1〜10個の間のアルケン結合、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアルケン結合を有することができることは理解されよう。各アルケン結合は、直鎖、分枝鎖または環状鎖中の任意の位置に位置することができる。
【0070】
本明細書において使用する場合、用語「アルキニル」は、直鎖、分枝鎖または環状のアルキニルを指す。典型的には、アルキニルは、C2〜C20アルキニル、例えば、2〜20個の炭素原子、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の炭素原子を有するアルキニル基である。アルキニル基は、2〜4個、2〜6個、2〜8個、2〜10個、2〜12個、2〜14個、2〜16個、2〜18個または2〜20個の炭素原子を有してもよい。好ましくは、アルキニル基はC2〜C6アルキニルである。
【0071】
C2〜C20アルキニルが、1〜10個の間のアルキン結合、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアルキン結合を有することができることは理解されよう。各アルキン結合は、直鎖、分枝鎖または環状鎖中の任意の位置に位置することができる。
【0072】
本明細書において使用する場合、用語「アリール」は、単一、多核、複合式または融合式の芳香族炭化水素または芳香族複素環の環系の基を指す。好ましくは、アリール基は、4〜20個の炭素原子、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個の炭素原子を有する。アリール基は、4〜6個、4〜8個、4〜10個、4〜12個、4〜14個、4〜16個または4〜18個の炭素原子を有してもよい。好ましくは、アリール基は、6〜8個、6〜10個、6〜12個、6〜14個、6〜16個または6〜18個の炭素原子を有する。より好ましくは、アリール基は5個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、アリールは6個の炭素原子を有する。アリールの例としては、限定するものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、アズレニル、フェナントリル、ピレニルなどが挙げられる。式(I)の分子の残部への結合には、芳香族残基の任意の利用可能な位置が使用できる。
【0073】
本明細書において使用する場合、用語「ヘテロアリール」は、好ましくは5〜20個の間の環原子を有する、単一、多核、複合式および融合式の芳香族基を指し、このとき、これらの環原子のうち1〜6個または1〜5個または1〜4個または1〜3個または1もしくは2個は、独立に可変で、N、NH、OおよびSからなる群から独立に選択されるヘテロ原子である。ヘテロアリール基は、4〜10個、4〜12個、4〜14個、4〜16個、4〜18個、4〜19個、6〜10個、6〜12個、6〜14個、6〜16個、6〜18個または6〜19個の炭素原子を有してもよい。ヘテロアリール基は、1〜2個、1〜3個、1〜4個、1〜5個または1〜6個のヘテロ原子を有してもよい。ヘテロ原子は、以下からなる群から独立に選択されてもよい:NおよびNH、NおよびO、NHおよびO、NおよびS、NHおよびS、ならびにSおよびO。そのようなヘテロアリール基の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:ピリジル、チエニル、フリル、ピリル、インドリル、ピリダジニル、ピラゾリル、ピラジニル、チアゾリル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、プリニル、キナゾリニル、フェナジニル、アクリジニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリルなど。式(I)の分子の残部への結合には、ヘテロ芳香族残基の任意の利用可能な位置を使用できる。窒素含有ヘテロアリール基は、窒素の位置において酸素原子で置換してN-酸化物を形成してもよい。イオウ含有ヘテロアリール基は、イオウの位置において1または2個の酸素原子で置換して、それぞれスルホキシドまたはスルホンを形成してもよい。
【0074】
本明細書において使用する場合、用語「ハロ」および「ハロゲン」は、ハロゲン基、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基を指す。
【0075】
本明細書において使用する場合、ある基が「場合により置換されている」と言えば、その基が1つまたは複数の置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、特定の実施形態では、ある基は、1つまたは複数のハロゲン基で場合により置換されていてもよい。
【0076】
本明細書を通じて使用する頭字語は、以下の意味を有する:
AD=アルツハイマー病
ANC=アデニンヌクレオチド輸送体
CBR=中枢型ベンゾジアゼピン受容体
CNS=中枢神経系
MPTP=ミトコンドリア膜透過性遷移孔
MS=多発性硬化症
PBR=末梢型ベンゾジアゼピン受容体
PET=ポジトロン放出断層撮影法
SPECT=単光子放出コンピューター断層撮影法
TSPO=輸送体タンパク質(18kDa)
VDAC=電圧依存性陰イオンチャネル
【0077】
式(I)の化合物は、TSPOと結合させるために使用できる。とりわけ、放射性同位体で放射標識されている場合、この化合物は、TSPOの、ひいてはミクログリア活性化の正確なin vivoマーカーとして使用できる。したがって、この化合物は、いくつかの障害、とりわけ神経変性障害における神経病理学的事象を試験するために使用できる。この化合物は、そのような障害の診断用および障害の進行のモニタリング用の手段として使用できる。
【0078】
放射性同位体は、当業者に公知の任意の適当な放射性同位体から選択でき、例えば、Handbook of Radiopharmaceuticals、Radiochemistry Applications、Michael WelschおよびCarol S. Redvanly編、John Wiley & Sons Ltd、2003;ならびにPET Chemistry, The Driving Force for Molecular Imaging.、P.A. Schubiger、L. Lehmann、M. Friebe編、Springer、2007に列挙されている放射性同位体が挙げられ得る。有用な放射性同位体としては、限定するものではないが、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brならびに11Cが挙げられる。
【0079】
本明細書において使用する場合、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brで「放射標識されている」式(I)の化合物とは、該化合物上の少なくとも1つの置換基に、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brの放射標識同位体が存在することを意味する。
【0080】
例えば、式(I)の化合物においては、以下の置換基:X、YまたはLのうち任意の1つまたは複数が18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されていてもよい。
放射標識同位体で放射標識されている
X-L-Y
(I)
[式中、
XおよびYはTSPOと独立に結合し、このときXとYとは同じであるか異なっており、
Lは、XをYと連結させるリンカーである]
またはその塩または溶媒和物。
【0081】
典型的には、式(I)の化合物が18F、76Br、124Iおよび/または75Brで放射標識されているとき、画像は、ポジトロン放出断層撮影法(PET)による画像化により得られる。典型的には、式(I)の化合物が123Iで放射標識されているとき、画像は、単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)による画像化により得られる。
【0082】
いくつかのクラスのTSPOリガンドが文献に記載されている。治療薬として有効な化合物が、放射標識して画像化に使用できる化合物であるとは限らない。事実、治療的に使用される多くの薬物は、特異的な標的に選択的ではなく、いくつかの標的と相互作用して治療効果を生みだすことがある。さらに、多くの治療薬は、画像化に通常使用されるnM範囲内の親和性を有さず、μM範囲の親和性を有する。また、治療薬を、とりわけ、画像化用にトレーサーレベルで投与する場合、その代謝および親油性ゆえに当該薬物が画像化のための使用に適さなくなることがある。18F、123I、76Br、124Iおよび75Brから選択される放射性同位体で放射標識されている式(I)の化合物は、対象におけるTSPO、ひいてはミクログリア活性化を画像化するために使用できる。
【0083】
18F、123I、76Br、124Iおよび75Brから選択される放射性同位体で放射標識されている式(I)の化合物は塩を形成し、そのような化合物の塩は、本発明に包含される。こうした塩は、好ましくは薬学的に許容されるものであるが、薬学的に許容されない塩も本発明の範囲内にあることは理解されよう。薬学的に許容される塩の例としては以下が挙げられる:ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容される陽イオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩;または、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩。
【0084】
式(I)の化合物は、有機化合物を修飾して化合物中の水素またはハロ基を18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで置換するための、有機化学において公知の標準的な手法により、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識できる。(VICTOR WILLIAM PIKE、THE STATUS OF PET RADIOCHEMISTRY FOR DRUG DEVELOPMENT AND EVALUATION、Drug Information Journal、Vol. 31、997〜1013頁、1997)。
【0085】
あるいは、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brから選択される放射性同位体で放射標識されている式(I)の化合物は、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brを、式(I)の化合物の合成において使用される出発物質の1つまたは中間体の中に置換基として組み込むことにより調製してもよい。
【0086】
18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物は、例えば、上に定義したとおりの式(I)を有するがトシレート、メシレート、BrまたはIなどの脱離基を有し、脱離基において脂肪族求核置換反応を生じさせる化合物を調製し、次いで、この化合物を、脂肪族求核置換反応が生じて当該脱離基を18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで置換する条件に供することにより、調製してもよい。例えば、脱離基がBrまたはトシレートであるとき、この化合物を約80℃で10分間、アセトニトリル中で[18F]-クリプトフィックス-K222複合体と反応させて、18Fで放射標識されている式(I)の化合物を形成してもよい。123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物は、上に定義したとおりの式(I)を有するが、スタンニル、シリルまたはハロゲン(ハロゲン置換基は、放射性同位体とは通常異なる)を有する化合物を形成し、この化合物を、クロラミン-Tなどの酸化剤を用いて酢酸媒体中での求電子性置換反応に供して、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物を形成することにより、形成することもできる。いくつかの実施形態では、この反応は室温で実施でき、他の実施形態では、反応混合物を約80℃〜100℃に加熱する。脱離基で置換された、上に定義したとおりの式(I)の化合物を、有機化学において公知の反応により修飾して、脱離基を化合物上の任意の位置に置換基として導入してもよい。
【0087】
式(I)の化合物は、18F(半減期110分)、123I(半減期13.2時間)、76Br(半減期16.2時間)、124I(半減期4.2日)または75Br(半減期1.6時間)で放射標識できる。典型的には、式(I)の化合物は、18Fで放射標識する。18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物の方が、それより顕著に短い半減期を有する放射性同位体で放射標識されている化合物より、画像化にとって臨床的意味において実用性が高いが、その理由は、複数のスキャンを1日で実施できるからである。加えて、この放射性リガンドは、別の場所で調製して、輸送中にそれほど活性を失うことなく病院/機関へ輸送できることから、サイクロトロンを現場に持たない病院/機関でもそのような放射性リガンドを使用できる。加えて、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで標識されている化合物を用いて比較的長いスキャン(例えば180分)を行うことで、この化合物を大部分の生物学的過程の試験にとってより適切なものとすることができる。
【0088】
18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物は、TSPOへの高い親和性および選択性を有することができ、対象におけるTSPOの画像可に使用できる。
【0089】
したがって、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物は、対象におけるTSPOを試験するために使用できる。
【0090】
神経変性障害を有する対象において、脳実質におけるTSPO発現は、神経変性障害を持たない対象と比較して劇的に増加している。したがって、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物は、神経変性障害を試験するために使用でき、神経変性障害の進行を診断およびモニターするために使用できる。この化合物を用いて試験、診断またはモニターできる神経変性障害としては、以下が挙げられる:アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中および脳腫瘍。こうした障害のそれぞれは、神経傷害または感染症と関連がある。この化合物を用いて試験、診断またはモニターできる他の障害としては、以下が挙げられる:不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、多発性硬化症、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、パーキンソン病、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患。
【0091】
本発明によれば、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brから選択される放射性同位体で放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を対象に投与する。式(I)の化合物が18F、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されているとき、対象における放射性同位体の位置、ひいては対象におけるTSPOの位置の画像は、当技術分野で公知の従来の手法を用いたポジトロン放出断層撮影法(PET)による画像化により得ることができる。(RJ Hargreaves、The Role of Molecular Imaging in Drug Discovery and Development、Clinical pharmacology & Therapeutics、2008、83巻、2号、349〜352頁)。
【0092】
この化合物が123Iで放射標識されているとき、対象における放射性同位体の位置の画像は、当技術分野で公知の従来の手法を用いたSPECT画像化により得ることができる。典型的には、PETおよびSPECTによる画像化の場合は両方とも、データは、18F、123I、76Br、124Iまたは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩の投与後速やかに開始し約40分間以上継続する従来の動力学的またはリスト様式の取得法を用いて取得する。データ取得の終了時点で、データは典型的には処理されて、それぞれが特定の時点での体内における放射性同位体の分布を示す、時系列の三次元再構成が得られる。
【0093】
典型的には、18F、123I、76Br、124Iもしくは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、非経口投与される。典型的には、18F、123I、76Br、124Iもしくは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、静脈内への注射または注入により非経口投与される。典型的には、18F、76Br、124Iもしくは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、約5〜20mCi(185〜740MBq)の範囲の用量で投与される。
【0094】
典型的には、18F、123I、76Br、124Iもしくは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、18F、123I、76Br、124Iもしくは75Brで放射標識されている式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を投与することにより投与される。
【0095】
非経口投与用の調製物は、典型的には、滅菌済の、水性もしくは非水性液剤、懸濁剤または乳剤の形態である。適当な非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、および、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。適当な水性担体としては、水およびアルコール溶液/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝化媒体が包含される。適当な非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液が挙げられる。
【0096】
式(I)の化合物の塩は、好ましくは薬学的に許容されるものであるが、薬学的に許容されない塩も本発明の範囲内にあることは理解されよう。式(I)の化合物の薬学的に許容されない塩は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩の調製における中間体として使用できる。薬学的に許容される塩の例としては、以下が挙げられる:ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容される陽イオンの塩;塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の酸付加塩;または、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩。
【0097】
式(I)の化合物は、TSPOに選択的であってもよく、TSPOを活性化してもよい。TSPOの活性化は、神経ステロイドの合成の増加と関連がある。したがって、TSPOを活性化させると、脳内の神経ステロイドの濃度を増加させることができる。こうした神経ステロイド(プロゲステロンおよびデヒドロエピアンドロステロンならびにそれらの代謝産物を含む)は、γ-アミノ酪酸(GABA)神経伝達を好ましい方向に調節して、記憶およびストレスに関連する障害において治療的利益のある非鎮静性の抗不安効果をもたらす。式(I)の化合物は、神経変性障害の治療用の神経保護剤として、抗炎症剤として、また、抗不安剤としても使用できる。
【0098】
したがって、別の態様では、本発明は、対象における神経変性障害、炎症または不安を治療する方法であって、治療上有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を対象に投与することを含む方法を提供する。この方法により治療できる障害としては、以下が挙げられる:アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患。
【0099】
式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、典型的には、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を投与することにより投与される。
【0100】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0101】
本発明の組成物は、少なくとも1つの式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と、また、場合により他の治療剤と一緒に含む。本発明の組成物としては、経口、経直腸、経鼻、局所(口腔内および舌下を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)による投与に適したものが挙げられる。肺または鼻腔、くも膜下腔内または脳内への注射または注入法による投与も可能である。この組成物は、便利に単位剤形で提示してもよく、薬学技術分野で周知の方法により調製してもよい。そのような方法としては、活性成分を、1つまたは複数の副成分を構成する担体と結合させるステップが挙げられる。一般に、この組成物は、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を、液体担体、希釈剤、佐剤および/または賦形剤または細かく割った固体担体またはその両方と均一および密接に結合させてから、必要に応じてその製品を成形することにより調製する。
【0102】
用語「対象」は、本明細書において使用する場合、任意の動物を指す。対象は、哺乳動物、例えばヒトであってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、イヌもしくはネコなどの伴侶動物、ウマ、ポニー、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシもしくはヒツジなどの家畜、または、霊長動物、ネコ科、イヌ科、ウシ科の動物もしくは有蹄動物などの動物園動物である。
【0103】
本明細書において使用する場合、用語「治療上有効量」は、所望の治療応答を得るために有効な化合物の量を指す。具体的な「治療上有効量」は、治療する特定の状態、対象の身体状態、治療する対象の種類、治療の継続期間、併用療法(あれば)の性質、および採用される具体的な製剤といった要因で異なると考えられ、担当の臨床家が適切な治療上有効量を決定できると考えられる。例えば、担当の臨床家は、神経学的に活性を有する他の化合物の従来の用量または動物実験の結果を考慮しながら式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩の適切な治療上有効量を決定できる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、体重1kg当たり約1〜約20mg/日の用量で投与できる。
【0104】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、対象に化合物を送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤またはビヒクルである。この担体は、固体、液体または気体を含め任意の形態であってもよく、想定している投与様式計画を用いて選択される。この担体は、生物学的にまたは他の点で望ましくなくはないという意味で「薬学的に許容され」、すなわち、この担体は、一切のまたは実質的な有害反応を生じることなく活性成分と共に対象に投与できる。
【0105】
式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、錠剤、水性または油性懸濁剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤またはエリキシル剤として経口投与できる。薬学上洗練され嗜好性の高い調製物を作製するために、経口使用向けの組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤、崩壊剤、滑沢剤、時間遅延剤(time delay agent)および保存剤の群から選択される1つまたは複数の薬剤を含有していてもよい。適当な甘味料としては、ショ糖、乳糖、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンが挙げられる。適当な崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンゴム、ベントナイト、アルギン酸または寒天が挙げられる。適当な香味剤としては、ペパーミント油、ヒメコウジ油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの香味料が挙げられる。適当な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適当な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクが挙げられる。適当な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが挙げられる。
【0106】
非経口投与用の調製物は、典型的には、滅菌済の、水性または非水性液剤、懸濁剤または乳剤の形態である。適当な非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。適当な水性担体としては、水およびアルコール溶液/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝化媒体が包含される。適当な非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液が挙げられる。例えば、抗微生物剤、酸化防止剤、キレート化剤、成長因子、不活性ガスなど、保存剤および他の添加剤も存在していてもよい。
【0107】
一般に、用語「治療する(こと)」、「治療」などは、本明細書においては、所望の薬理学的および/または生理学的な効果を得るために対象に影響を及ぼすことを意味するために使用される。こうした効果は、疾患もしくは障害またはその兆候もしくは症状を完全または部分的に予防するという意味で予防的なものであってもよく、および/または、疾患または障害の部分的または完全な治癒という意味で治療的なものであってもよい。「治療する(こと)」は、本明細書において使用する場合、脊椎動物、哺乳動物、とりわけヒトにおける疾患もしくは障害の任意の治療もしくは予防を網羅し、(a)疾患もしくは障害に罹りやすい可能性があるが未だ当該疾患もしくは障害を有するとは診断されていない対象において当該疾患もしくは障害が生じないようにすること、(b)当該疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち、当該疾患もしくは障害の発症を阻止すること、または(c)当該疾患もしくは障害の影響を軽減もしくは改善すること、すなわち、当該疾患もしくは障害の影響を後退させることが含まれる。
【実施例】
【0108】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な実施例を参照することにより、下に記載する。
【0109】
[1.一般的な合成]
(12個の炭素が連結したピラゾロピリミジンサブユニット)
【0110】
【化12】

【0111】
無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)中の水素化ナトリウム(油中の60%w/w分散系14.2mg、0.356mmol、1.25当量)の撹拌懸濁液に、無水ジメチルホルムアミド(2.0mL)中のフェノール(99.5mg、0.284mmol、2.0当量)の溶液をアルゴン雰囲気下で加えた。ナトリウムフェノキシドが形成されると、明るい黄色がすぐに現れた。周囲温度での撹拌の30分後、この反応混合物を、無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)中の1,12-ジブロモドデカン(46.7mg、0.142mmol、1.0当量)の溶液で処理した。この反応混合物を100℃でさらに36時間撹拌し、その時間の後、薄層クロマトグラフィーにより、フェノール出発物質が完全に変換したことが明らかになった。この反応混合物を水と酢酸エチルとの間で分配し、有機相を単離し、水相をジクロロメタンでさらに抽出した。有機抽出物を合わせたものを水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。このようにして得られた粗生成物を、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン-メタノール、98:2)により精製するとオフホワイトの固形物が得られ、これをヘキサンで粉末化すると、白色の固形物としての所望の二座リガンドが得られた。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 7.75 (d, J = 8.7 Hz, 4H, Ar-H)、6.97 (d, J = 8.8 Hz, 4H, Ar-H)、6.49 (s, 2H, Ar-H)、3.99 (t, J = 6.5 Hz, 4H)、3.91 (s, 4H)、3.55〜3.35 (m, 8H, N(CH2CH3)2)、2.73 (s, 6H, Ar-CH3)、2.53 (s, 6H, Ar-CH3)、1.83〜1.73 (br m, 4H)、1.45〜1.16 (br m, 16H)、1.22〜1.07 (m, 12H, N(CH2CH3)2); HRMS (ESI) 計算値C52H70N8O4 (M+H+) 871.5593、実測値871.5586、(M+Na+) 893.5412、実測値893.5405。
【0112】
(8個の炭素が連結したピラゾロピリミジンサブユニット)
【0113】
【化13】

【0114】
無水ジメチルホルムアミド(1.0ml)中の水素化ナトリウム(油中の60%w/w分散系14.2mg、0.356mmol、1.25当量)の撹拌懸濁液に、無水ジメチルホルムアミド(2.0mL)中のフェノール(101.2mg、0.284mmol、2.0当量)の溶液をアルゴン雰囲気下で加えた。ナトリウムフェノキシドが形成されると、明るい黄色がすぐに現れた。周囲温度での撹拌の30分後、この反応混合物を、無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)中の1,8-オクタンジオール(64.5mg、0.142mmol、1.0当量)由来のジトシレート溶液で処理した。この反応混合物を100℃でさらに36時間撹拌し、その時間の後、これを水と酢酸エチルとの間で分配し、有機相を単離し、水相をジクロロメタンでさらに抽出した。有機抽出物を合わせたものを水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮すると、オフホワイトの固形物が得られた。1H NMRスペクトルから、無変化のフェノールと所望の二座リガンドとが混合していることが明らかになった。粗混合物をジクロロメタンに再溶解し、水酸化ナトリウムの1M水溶液で洗浄した。有機相を単離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ真空中で濃縮するとオフホワイトの固形物が得られ、これをヘキサンで粉末化すると、白色の固形物としての所望の二座リガンドが得られた。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 7.75 (d, J = 8.7 Hz, 4H, Ar-H)、6.97 (d, J = 8.8 Hz, 4H, Ar-H)、6.49 (s, 2H, Ar-H)、4.00 (t, J = 6.3 Hz, 4H)、3.91 (s, 4H)、3.51〜3.39 (m, 8H, N(CH2CH3)2)、2.73 (s, 6H, Ar-CH3)、2.53 (s, 6H, Ar-CH3)、1.81〜1.22 (br m, 6H)、1.22〜1.07 (m, 12H, N(CH2CH3)2); HRMS (ESI) 計算値C48H62N8O4 (M+H+) 815.4967、実測値815.4963、(M+Na+) 837.4786、実測値837.4780。
【0115】
(6個の炭素が連結したピラゾロピリミジンサブユニット)
【0116】
【化14】

【0117】
無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)中の水素化ナトリウム(油中の60%w/w分散系14.2mg、0.356mmol、1.25当量)の撹拌懸濁液に、無水ジメチルホルムアミド(2.0mL)中のフェノール(100mg、0.284mmol、2.0当量)の溶液をアルゴン雰囲気下で加えた。ナトリウムフェノキシドが形成されると、明るい黄色がすぐに現れた。周囲温度での撹拌の30分後、この反応混合物を、1,6-ジブロモヘキサン(21.6μl、0.142mmol、1.0当量)で処理した。この反応混合物を100℃でさらに36時間撹拌し、その時間の後、これを水と酢酸エチルとの間で分配し、有機相を単離し、水相をジクロロメタンでさらに抽出した。有機抽出物を合わせたものを水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮すると、オフホワイトの固形物が得られた。1H NMRスペクトルから、無変化のフェノールと所望の二座リガンドとが混合していることが明らかになった。粗混合物をジクロロメタンに再溶解し、水酸化ナトリウムの1M水溶液で洗浄した。有機相を単離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ真空中で濃縮するとオフホワイトの固形物が得られ、これをヘキサンで粉末化すると、白色の固形物としての所望の二座リガンドが得られた。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 7.75 (d, J = 8.6 Hz, 4H, Ar-H)、6.97 (d, J = 8.7 Hz, 4H, Ar-H)、6.49 (s, 2H, Ar-H)、4.06 (br m, 4H)、3.91 (s, 4H)、3.54〜3.35 (m, 8H, N(CH2CH3)2)、2.73 (s, 6H, Ar-CH3)、2.53 (s, 6H, Ar-CH3)、1.81 (br m, 4H)、1.51 (br m, 4H)、1.29〜1.08 (m, 12H, N(CH2CH3)2); HRMS (ESI) 計算値C46H58N8O4 (M+H+) 787.4654、実測値787.4669、(M+Na+) 809.4473、実測値809.4464。
【0118】
(4個の炭素が連結したピラゾロピリミジンサブユニット)
【0119】
【化15】

【0120】
無水ジメチルホルムアミド(2.0mL)中の無水の炭酸カリウム(40.9mg、0.284mmol、4.0当量)およびフェノール(100mg、0.284mmol、2.0当量)の撹拌溶液に、無水ジメチルホルムアミド(1.0mL)中の1,4-ブタンジオール(56.6mg、0.142mmol、1.0当量)由来のジトシレート溶液をアルゴン雰囲気下で加えた。この反応混合物を100℃で36時間撹拌し、その時間の後、これを水と酢酸エチルとの間で分配し、有機相を単離し、水相をジクロロメタンでさらに抽出した。有機抽出物を合わせたものを水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮すると、オフホワイトの固形物が得られた。1H NMRスペクトルから、無変化のフェノールと所望の二座リガンドとが混合していることが明らかになった。粗混合物をジクロロメタンに再溶解し、水酸化ナトリウムの1M水溶液で洗浄した。有機相を単離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ真空中で濃縮するとオフホワイトの固形物が得られ、これをヘキサンで粉末化すると、白色の固形物としての所望の二座リガンドが得られた。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 7.76 (d, J = 8.6 Hz, 4H, Ar-H)、6.99 (d, J = 8.7 Hz, 4H, Ar-H)、6.50 (s, 2H, Ar-H)、4.06 (br m, 4H)、3.91 (s, 4H)、3.55〜3.35 (m, 8H, N(CH2CH3)2)、2.74 (s, 6H, Ar-CH3)、2.53 (s, 6H, Ar-CH3)、2.03 (br s, 4H)、1.29〜1.08 (m, 12H, N(CH2CH3)2); HRMS (ESI) 計算値C44H54N8O4 (M+H+) 759.4341、実測値759.4347、(M+Na+) 781.4160、実測値781.4152。
【0121】
【化16】

【0122】
ヘテロマーの二座リガンド、すなわち、リガンドXとリガンドYとが異なる当該化合物の合成の一般的な手順。この実施例のスキームは、ピリダジンリガンドに連結するピラゾロピリミジンリガンドを示すものである。「n」は任意の適切なリンカー(例えば0〜18)であることが可能である。
【0123】
無水DMF中のフェノール(リガンドX、1当量)の撹拌溶液に水素化ナトリウムを加えてフェノキシドを生じさせる。この溶液に、選択された長さのジブロミドまたはジトシレートで置換したリンカーの溶液(1当量)を加える。出発物質のフェノールが残っていない時点まで、この反応を薄層クロマトグラフィーによりモニターする。この一置換生成物を標準的な様式で単離および精製し、この物質が第2ステップの出発物質となる。無水DMF中のフェノール(リガンドY、1当量)の撹拌溶液に水素化ナトリウムを加えてフェノキシドを生じさせる。この溶液に、無水DMF中のステップ1で得た一置換化合物の溶液(1当量)を加える。フェノール(リガンドY)が残っていない時点まで、この反応を薄層クロマトグラフィーによりモニターし、生成物を通常の様式で単離および精製すると、ヘテロマーの二座化合物が得られる。
【0124】
[2.[18F]での放射標識]
スキーム1:18Fで2を放射標識する。
【0125】
【化17】

【0126】
放射性同位体の生成。水性[18F]フッ化物イオンは、[18O(p,n)18F]核反応による95%濃縮[18O]-H2Oに16.5MeV陽子線を使用して水標的0.8mLを照射することにより、PETトレースサイクロトロン(GE Healthcare、スウェーデン)を用いて生成できる。
【0127】
[18F]-クリプトフィックス-K222の調製。典型的な放射線フッ素化(radiofluorination)反応においては、[18O]濃縮-H2O中の[18F]フッ化物をGE TRACERlab MXFDO合成機に移し、真空下で、陰イオン交換樹脂(炭酸形態のSep-Pak Waters Accell(商標)Light QMAカートリッジ、0.5M K2CO3 10mLでの洗浄に次ぎ水10mLですすぐことにより作製)に通す。次に、捕捉された[18F]フッ化物イオンをSep-Pakカートリッジから溶出させ、K2CO3(純水300μL中7mg)、アセトニトリル300μLおよびクリプトフィックス222(K222: 4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン)22mgを含有する溶出剤溶液を用いて反応器の容器に移す。一定分量のアセトニトリルを加え、各添加後に反応混合物を蒸発により乾燥させる。(3回:各回80μL)。蒸発は、95℃、窒素流および真空下で実施する。
【0128】
[18F]-3の調製および製剤化。化合物2をアセトニトリル3mLに溶解し、乾燥[18F]-クリプトフィックス-K222複合体に加える。この混合物を85℃で5分間反応させる。反応終了時点で、この反応混合物をWaters for Injections BP(WFI BP)で希釈し、tC-18 Sep-Pakカートリッジに通す。反応器の容器をWFIですすぎ、再度tC18 Sep-Pakカートリッジに通す。tC18が捕捉された放射標識生成物を、WFI(合計40mL)でさらに3回すすぐ。次に、この生成物をtC18 Sep-Pakカートリッジから溶出させる。その結果得られる溶液を0.22μmのMillipore CATHIVEX非発熱性滅菌済フィルターに通して微粒子物質を除去してからHPLC精製を行う。次に、粗混合物をHPLC Waters XTerra RP C-18 10μm(7.8×300mm)半分取逆相カラム上に注入して溶出させる。[18F]-3に対応する放射性画分を回収して真空下で蒸発させる。残留物をWFI BP(4mL)中で再構成し、滅菌済の13mm Millipore GV 0.22μmフィルターを通して、発熱物質不含の滅菌済の真空バイアル中に濾過する。
【0129】
[[3H]PK11195を用いた放射性リガンド結合実験]
(細胞培養および膜調製)
ヒト胚腎細胞(HEK293)を、先に記載したようにヒトTSPOに形質移入した(Riond, J.、Mattei, M.G.、Kaghad, M.、Dumont, X.、Guillemot, J.C.、Le Fur, G.、Caput, D.、Ferrara, P.、(1991)、Molecular cloning and chromosomal localization of a human peripheral-type benzodiazepine receptor.、Eur. J. Biochem.、195、305〜311頁; Vin, V.、Leducq, N.、Bono, F.、Herbert, J.M.、(2003)、Binding characteristics of SSR180575, a potent and selective peripheral benzodiazepine receptor ligand.、Biochem. Biophys. Res. Comm.、310、785〜790頁)。細胞は、10%ウシ胎仔血清、4500mg/L D-グルコース、4mM L-グルタミンおよび100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。細胞培養物は、5%CO2下での加湿したインキュベーター中で37℃にて維持した。放射性リガンド結合実験用の細胞を回収するために、予め温めておいたPBSで細胞をまず洗浄し、0.5%PBS-EDTAで回収してから、1000rpmで4分間遠心分離した。
【0130】
0.33Mショ糖、1mM MgCl2および25mM KClを含有する3容量の50mM Tris-HCl(pH7.5)(溶液1)中で細胞ペレットをホモジナイズすることにより、細胞のミトコンドリア画分を得た。このホモジネートを、700×g、4℃で10分間遠心分離した。次に、ペレットを捨て、10,000×g、4℃で10分間上澄みを遠心分離して、未加工のミトコンドリアを得た。上澄みを捨て、3容量の溶液1にペレットを再懸濁させ、20,000×g、4℃で10分間遠心分離することによりこれを精製して、純粋なミトコンドリアからなるペレットを得た。次に、この結果得られたペレットを、適切な量の反応緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5)に再懸濁させ、Bio-Rad Lowry Ptotein Assay Kitを用いてタンパク質濃度を決定した。試料は、結合アッセイで使用するまで一定分量で-20℃にて保管した。
【0131】
([3H]PK11195の競合結合アッセイ)
実験当日、膜を50mM Tris-HCL緩衝液(pH7.5)に再懸濁させた。最終濃度がおよそ40μg/mlのタンパク質を含有する膜を、最終反応体積が200μlの6nM[3H]PK11195で4℃にて90分間インキュベートした。インキュベーションを一定範囲のリガンド濃度(0.1〜1000nM)の存在下で行うと、試験化合物による[3H]PK11195の用量依存性置換を表す用量応答曲線が得られた。化合物を、ビヒクルのみ、すなわち、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)中の2%DMSOからなる対照試料と比較した。非特異的な結合は、1μMの冷PK11195の存在下で定め、総結合の5〜15%の量になった。
【0132】
インキュベーション後、氷冷のインキュベーション緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5)中の96ウェルフィルタープレートを通した急速濾過によりアッセイを終了し、Brandelの96試料真空回収器を用いて、氷冷のインキュベーション緩衝液200μlで10回洗浄した。次に、フィルタープレートの底部を密封し、シンチレーションカクテルおよそ20μlを各ウェルに加えた。プレートの上部を密封し、フィルターをシンチレーションカクテルに室温で一晩浸漬した。結合放射能は、TriLux MicroBetaシンチレーションカウンター(PerkinElmer)を用い、1ウェル当たり1分のカウント時間で測定することで、カウント毎分(CPM)として得た。各化合物につき少なくとも3つの独立した実験を2回実施した。結果は、特異的に結合した対照の比率(%)として最終的に表した(特異的結合=総結合−非特異的結合)。データを分析し、GraphPad Prism 5.0を用いて曲線に当てはめた。
【0133】
(放射性リガンドの結合結果)
【0134】
【表1】

【0135】
用量応答曲線を図1に示すが、この図は、0.01nM〜1μMの範囲の濃度の多様な二座リガンドの存在下での、ヒトTSPOを形質移入したHEK293細胞中で結合する[3H]PK11195の用量依存性置換を表すものである。結合データを、2本の曲線、すなわち1部位競合または2部位競合のうち1本に当てはめる。
【0136】
具体例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明を多くの他の形態で具体化できることは、当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
X-L-Y
(I)
[式中、
XおよびYはTSPOと独立に結合し、XとYとは同じであるか異なっており、
Lは、XをYと連結させるリンカーである]
の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
XおよびYが、
【化1】

[式中、
AおよびKは独立にCH、CもしくはNであり、JはCHもしくはNであり、BおよびGは独立にCもしくはNであるが、但し、BおよびGのうち少なくとも一方はCであり、このとき、A、B、G、JおよびKのうち少なくとも2つはNであり、
DはO、NH、(CH2)mもしくはSであり、
Eは、アリール基もしくはヘテロアリール基であって、それぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されている以下の置換基:ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルまたはTC2〜C10アルキニル(TはNH、OもしくはSである)のうち1つもしくは複数で場合により置換されているアリール基もしくはヘテロアリール基であり、
R1およびR2は独立に、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールであり、それぞれが1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されているか、
または、R1およびR2は、これらが結合している窒素と一緒になって、1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されている3〜7個の間の環員を有する複素環を形成し、
R3は独立に、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルもしくはTC2〜C10アルキニルであり、そのそれぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されており(TはNH、OもしくはSである)、
mは1〜6の間の数であり、
nは0〜3の間の数である]
から独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A、GおよびJがNであり、KがCHもしくはCであり、BがCであるか、または、
A、BおよびJがNであり、KがCHもしくはCであり、GがCである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R3がC1〜C6アルキルであり、nが1または2である、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
nが2であり、各それぞれのR3がメチルである、請求項2から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記それぞれのメチル基が互いにメタ位に位置する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Dが(CH2)mであり、このときmが1である、請求項2から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R1およびR2が独立にC1〜C6アルキルである、請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R1およびR2が独立にエチルである、請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Eが、以下の置換基:ハロゲン、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニルおよびC2〜C6アルキニルのうち1つまたは複数で場合により置換されている5または6員のアリール基またはヘテロアリール基である、請求項2から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Eがフェニルである、請求項2から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
XおよびYが独立に、
【化2】

である、請求項2から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Lが、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、T(C1〜C20アルキル)T、T(C2〜C20アルケニル)T、T(C2〜C20アルキニル)T、TCH2(CH2OCH2)pCH2T、TCH2(CH2NHCH2)pCH2T、グリシンオリゴマーを非限定的に含むアミノ酸からなる群から選択される(TはNH、OまたはSであり、pは1〜10の間の数である)、
請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Lが、O(C1〜C20アルキル)O、O(C2〜C20アルケニル)O、O(C2〜C20アルキニル)OおよびOCH2(CH2OCH2)pCH2Oからなる群から選択される(pは1〜10の間の数である)、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
【化3】

からなる群から選択される式(I)の化合物。
【請求項16】
【化4】

からなる群から選択される式(I)の化合物。
【請求項17】
放射性同位体で放射性の標識がされている、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項18】
前記放射性同位体が、18F、123I、76Br、124Iおよび75Brからなる群から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記放射性同位体が18Fである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項21】
対象の障害を診断する方法であって、請求項1から19のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項22】
前記対象における輸送体タンパク質(18kDa)(TSPO)を画像化するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物が放射性同位体で放射性の標識がされているとき、前記放射性同位体が18F、123I、124I、75Brおよび76Brからなる群から選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質の位置を示す画像を得るステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記画像がポジトロン放出断層撮影法(PET)による画像化により得られる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記式(I)の化合物が123Iで放射性の標識がされており、前記画像がSPECT画像化により得られる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記画像が、前記対象の脳実質における前記化合物またはその塩のTSPO結合の程度を評価するために得られる、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記障害が、神経変性障害、炎症または不安である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記対象がヒトである、請求項21から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
対象の障害を診断するための薬剤の製造における、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項32】
前記障害を診断するステップが、前記対象における輸送体タンパク質(18kDa)を画像化するステップを含む、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記式(I)の化合物が123Iで放射性の標識がされており、輸送体タンパク質の画像がSPECT画像化により得られる、請求項31に記載の化合物の使用。
【請求項34】
前記障害が、神経変性障害、炎症または不安である、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
前記障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患からなる群から選択される、請求項31に記載の使用。
【請求項36】
対象の障害を治療するための医薬の製造における、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項37】
前記障害が、哺乳動物におけるTSPO受容体の異常な密度を特徴とする、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記障害が、神経変性障害、炎症または不安である、請求項36に記載の使用。
【請求項39】
前記障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患からなる群から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項40】
対象の障害を治療する方法であって、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項41】
前記障害が、哺乳動物におけるTSPO受容体の異常な密度を特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記障害が、対象における神経変性障害、炎症または不安である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、多系統委縮症、てんかん、脳症、脳卒中、脳腫瘍、不安、ストレス、情緒障害または認知障害、神経膠芽腫、虚血性脳卒中、ヘルペス脳炎、HIV、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、癌、うつ病、自己免疫疾患および感染性疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
塩基の存在下で式(II)の化合物をV-L-Vと反応させるステップを含む、式(I)の化合物を調製する方法
【化5】

[式中、
AおよびKは独立にCH、CもしくはNであり、JはCHもしくはNであり、BおよびGは独立にCもしくはNであるが、但し、BおよびGのうち少なくとも一方はCであり、このとき、A、B、G、JおよびKのうち少なくとも2つはNであり、
DはO、NH、(CH2)mもしくはSであり、
Eは、アリール基もしくはヘテロアリール基であって、それぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されている以下の置換基:ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルまたはTC2〜C10アルキニル(TはNH、OもしくはSである)のうち1つもしくは複数で場合により置換されているアリール基もしくはヘテロアリール基であり、
R1およびR2は独立に、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールであり、それぞれが1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されているか、
または、R1およびR2は、これらが結合している窒素と一緒になって、1つもしくは複数のハロゲンで場合により置換されている3〜7個の間の環員を有する複素環を形成し
R3は独立に、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、TC1〜C6アルキル、TC2〜C10アルケニルもしくはTC2〜C10アルキニルであり、そのそれぞれが1つもしくは複数のハロゲン置換基で場合により置換されており(TはNH、OもしくはSである)、
mは1〜6の間の数であり、
nは0〜3の間の数であり、
Lは、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C2〜C20アルキニル、T(C1〜C20アルキル)T、T(C2〜C20アルケニル)T、T(C2〜C20アルキニル)T、TCH2(CH2OCH2)pCH2T、TCH2(CH2NHCH2)pCH2T、グリシンオリゴマーを非限定的に含むアミノ酸からなる群から選択され(TはNH、OもしくはSであり、pは1〜10の間の数である)、
Vは塩基と反応する脱離基であり、
塩基はNaHもしくはK2CO3である]。
【請求項45】
TSPO受容体と結合した際に応答を誘導することが可能な、請求項1から16のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−500225(P2012−500225A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523266(P2011−523266)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001063
【国際公開番号】WO2010/020000
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504233801)ザ ユニバーシティ オブ シドニー (4)
【Fターム(参考)】