説明

新規な星型ポリマー及びアニオン重合用カップリング剤

【課題】高感度・高解像性に優れるレジスト材料として有用である新規な星型ポリマー及び該ポリマーの合成に用いられる新規なアニオン重合用カップリング剤の提供。
【解決手段】ハロゲン化物由来の有機基を含み且つ酸分解性である化合物からなるアニオン重合用カップリング剤から誘導されるコア部に、アニオン重合法によって得られる酸分解性のポリマー鎖からなるアーム部を付加した構造を有する星型ポリマー及び該アニオン重合用カップリング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な星型ポリマー、詳細には、ハロゲン化物由来の有機基をコア部とし、該コア部にアルケニルフェノールから誘導される繰り返し単位をアーム部として付加した構造を有する星型ポリマーに関する。
本発明の星型ポリマーは、エキシマレーザーおよび電子線用レジスト材料としての利用が期待される化合物である。
また本発明は、新規な星型ポリマーの合成に用いるアニオン重合用カップリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年レジスト材料においては、年々微細となるレジストパターンの形成性に優れる点が重要な特性として求められている。このような要求を満たす材料の一つとして星型ポリマーが提案されている。このうち代表的なものであるアルケニルフェノール系星型ポリマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン重合体をコア部とし、p−ヒドロキシスチレン−スチレン共重合体、又は、p−ヒドロキシスチレン−ブタジエン共重合体などをアーム部とする星型ポリマーが既に開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、ジビニルベンゼン重合体以外のコア部を有するアルケニルフェノール系星型ポリマーとして、ジ(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位を含むポリマー鎖をコア部とし、アルケニルフェノールから誘導される繰り返し単位および脂環式炭化水素基のアクリル酸エステル誘導体から誘導される繰り返し単位とを含む(さらにアルケニルフェニルから誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい)ポリマー鎖をアーム部とする(メタ)アクリル酸系星型ポリマーが提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これまでに提案された星型ポリマーを用いたレジストパターンの形成技術では、感度及び解像度等の点で改善の余地を大いに残すものであった。例えば、特許文献2のスターポリマーは、コア部がポリ(メタ)アクリレート誘導体から形成されていることから酸分解性となり、このためレジスト材料として用いた際に感度に優れる材料が得られるとして期待されているが、解像度等の観点からは課題を残すものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、新規なポリマーの提供を目的とし、詳細には、高感度・高解像性に優れるレジスト材料として有用である新規な星型ポリマー及び該ポリマーの合成に用いられる新規なアニオン重合用カップリング剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、星型ポリマーのアーム部だけでなくコア部も酸分解性とすることによって、且つ、ハロゲン化物由来の有機基を含む化合物をコア部として採用することにより酸分解させたときに分子量分布が単分散となるようにすることによって、そのポリマーを化学増幅型レジスト材料として用いた場合、光酸発生剤(PAG)由来の酸によって分子量を著しく変化させることができ、高感度・高解像レジスト材料として有用なポリマーが提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Pはa価の有機基を表し、aは2乃至20を表し、Xは酸の作用により解裂され得る下記式(2)乃至(5)
【0010】
【化2】

【0011】
(上記式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基若しくはアルコキシ基、又はアリール基、又はヒドロキシ基を表す。R5は直接結合又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若
しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基、又はアリーレン基を表す。)
で表される結合基を表し、Yは炭素原子数1乃至12のアルキレン基又はアリーレン基を表し、Zはハロゲン原子又は式(6)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。)で表されるエポキシ基を表す。)
で表されるアニオン重合用カップリング剤から誘導されるコア部に、アニオン重合法によって得られるポリマー鎖からなるアーム部を付加した構造を有する星型ポリマーに関する。
【0014】
前記式(1)中、Zが臭素原子である場合、それに結合するYは炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表すことが望ましい。
【0015】
また、前記アニオン重合法により得られるポリマー鎖からなるアーム部が、ヒドロキシスチレン又はその誘導体からなる繰り返し単位を含むことが望ましい。
【0016】
さらに前記アニオン重合法により得られるポリマー鎖からなるアーム部が、酸解離性基、好ましくは下記一般式(p1)で表されるアセタール型酸解離性基
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R1',R2'はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、nは0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。)を含む繰り返し単位を含むことが望ましい。
【0019】
さらに本発明は、前記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の星型ポリマーは分子量分布が狭く、コア部において酸分解性であり且つ分解個所を制御できることから、酸分解後にも分子量分布が単分散となる。
また本発明の新規なアニオン重合用カップリング剤は、アーム部となるポリマー鎖との反応も良好であり、本発明の星型ポリマーを容易に得ることができる。
【0021】
そして、本発明の星型ポリマーを化学増幅型レジスト材料(ベース樹脂)として用いた場合、露光工程後、レジスト中に配合された光酸発生剤(PAG)から発生した酸によって、本発明の星型ポリマーのコア部に存在する上記式(2)乃至(5)で表される基が解裂することとなる。この解裂に伴い、ポリマー(ベース樹脂)の分子量が大きく変化することとなり、それによって現像液への溶解性も大きく変化することとなる。このため、本発明の星型ポリマーは、高感度、高解像度を実現する優れたレジスト材料となることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤から誘導されるコア部に、アニオン重合法によって得られるポリマー鎖からなるアーム部を付加した構造を有する星型ポリマーである。
また、本発明は上記アニオン重合用カップリング剤にも関する。
以下、本発明の星型ポリマーにおけるコア部(アニオン重合用カップリング剤)及びアーム部について夫々説明する。
【0023】
本発明の星型ポリマーにおけるコア部は、下記式(1)表されるアニオン重合用カップリング剤より誘導される。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、Pはa価の有機基を表し、aは2乃至20を表し、Xは酸の作用により解裂され得る結合基を表し、Yは炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基又はアリーレン基を表し、Zはハロゲン原子又は下記式(6)で表されるエポキシ基を表す。
【0026】
【化6】

【0027】
式中、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。
【0028】
上記式(1)において、Pで表される有機基としては炭素原子数は1乃至20の有機基が好ましく、2乃至15の有機基がより好ましく、3乃至12の有機基が特に好ましい。
該有機基としては、たとえば脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が挙げられ、また有機基中にケイ素原子を含んでいてもよい。
脂肪族炭化水素基としては、鎖状、環状又はこれらの組合せであってもよく、また、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。
芳香族炭化水素基としては、芳香族炭化水素環を有する炭化水素基が挙げられ、たとえば芳香族炭化水素環からなるもの、又は芳香族炭化水素環と脂肪族炭化水素基との組合せからなるもの等であってよい。
【0029】
該有機基は、その基中に、エーテル基、ポリエーテル基、エステル基[−C(=O)−O−]、カルボニル基[−C(=O)−];−NH−、−N=、−NH−C(=O)−、−NR9(R9はアルキル基)−等の連結基を有していてもよい。
9のアルキル基としては、炭素原子数1乃至5の低級アルキル基が挙げられる。
【0030】
また、該有機基は、その水素原子の一部又は全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。
該有機基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素原子数1乃至5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが好ましい。
該有機基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基であることがより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
該有機基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0031】
Pの有機基として具体的には、たとえば、下記式に示す構造の基を例示することができる。
【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤において、酸の作用により解裂され得る結合基を表すXは、下記式(2)乃至(5)で表される基である。
なお、下記式で表される解裂され得る結合基のうち、好ましくは式(2)及び(4)で表される結合基であり、最も好ましくは式(2)で表される結合基である。
【0037】
【化11】

【0038】
上記式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又はエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基、ヒドロキシ基を表す。R5は直接結合又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ
基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基、又はアリーレン基を表す。
【0039】
上記R1乃至R5におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基としては、直鎖状又は分枝状のアルキル基であることが好ましく、特にエチル基又はメチル基がより好ましい。炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルコキシ基としては、直鎖状又は分枝状のアルコキシ基であることが好ましく、特にエトキシ基又はメトキシ基がより好ましい。また炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基としては、直鎖状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特にエチレン基又はメチレン基がより好ましい。さらにアリール基としては、炭素原子数6乃至20のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基又はナフチル基等が挙げられる。またアリーレン基としては炭素原子数6乃至20のアリーレン基が好ましく、たとえばフェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
なかでも、R1、R2、R3及びR4は、水素原子であることが好ましい。
【0040】
前記一般式(1)中、Yは炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基又はアリーレン基を表す。
ここで、Yで表されるアルキレン基は、直鎖状又は分枝状であることが好ましい。
また該アルキレン基の炭素原子数は1乃至12であり、1乃至10が好ましく、1乃至5がより好ましく、1又は2(メチレン基又はエチレン基)が特に好ましく、a個のYがいずれもメチレン基又はエチレン基であることが最も好ましい。
該アルキレン基は、当該アルキレン基における水素原子の一部又は全部が置換基(水素原子以外の基又は原子)で置換されていてもよい。当該アルキレン基の水素原子が置換されていてもよい置換基としては、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素数原子数1乃至4のアルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0041】
またYで表されるアリーレン基としては、特に制限はなく、例えば、炭素原子数6乃至20のアリーレン基が挙げられ、安価に合成可能なことから、炭素原子数6乃至10のアリーレン基が望ましい。
このようなアリーレン基として具体的には、たとえばフェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基(ナフタレニレン基)、アントラセニレン基、フェナントレニレン基又はピレニレン基が挙げられ、特に好ましいものとしてはフェニレン基又は
ナフチレン基である。
該アリーレン基は、その芳香族炭化水素環における水素原子の一部又は全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基等の置換基(水素原子以外の基又は原子)で置換されていてもよい。
前記アリーレン基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素原子数1乃至5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記アリーレン基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素原子数1乃至5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基であることがさらに好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
前記アリーレン基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
前記アリーレン基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン化アルキル基としては、前記アリーレン基の置換基として挙げたアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、前記アリーレン基の置換基として挙げたハロゲン原子と同様のものが挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が特に好ましい。
【0042】
上記のなかでも、Yは炭素原子数1乃至12のアルキレン基であることがより好ましく、直鎖状のアルキレン基であることが特に好ましく、1又は2(メチレン基又はエチレン基)であることが最も好ましい。
【0043】
また前記式(1)中、Zで表されるハロゲン原子とは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子をさす。
なお、Zが塩素原子を表す場合には、それに結合するYはメチレン基を表すことが望ましく、Zが臭素原子を表す場合には、それに結合するYは炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表すことが望ましい。
【0044】
上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤としては、例えば以下の式(1−1)で表される化合物を挙げることができ、具体的には(1−1−1)ないし(1−1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化12】

【0046】
(上記式中、Y、Zは上述に定義したとおりである。)
【0047】
【化13】

【化14】

【0048】
【化15】

【化16】

【0049】
上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤の製造方法としては特に限定はされない。
例えば多価アルコールとクロロメチルハロゲン置換アルキルエーテルとの反応によって上記式(2)の結合を有するアニオン重合用カップリング剤を製造することができる。
【0050】
また本発明の星型ポリマーは、前述の式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤(コア部)とともに、アニオン重合法によって得られるポリマー鎖からなるアーム部によって構成される。
【0051】
前記アーム部は、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位を含む。
【0052】
【化17】

【0053】
(式中、Raは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Rbは水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至12の炭化水素基を表し、Rcは水素原子又は保護基を
表す。mは0乃至4の整数であり、mが2以上の時は、Rbは同一又は異なっていても良
く、m+o=1乃至5の整数であり、またその置換位置は特に制限されない。)
【0054】
上記式(I)において、Rcは水素原子又は保護基を表す。
ここで保護基とは、当技術分野において、フェノール性ヒドロキシ基の保護基として使用されることが周知である基であれば特に限定されない。
例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、t−
ブチル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、2−メチル−2−t−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられ、さらに、下記に示す置換基を挙げることができる。
【0055】
【化18】

【0056】
(式中、kは0又は1を表す。)。さらに、次式
【0057】
【化19】

【0058】
(式中、Rkは炭素原子数1乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、炭素原
子数5乃至10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアリール基を表し、Rlは、水素又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Rmは水素、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基をあらわす。)で表される基を例示することができる。
このような置換基として、具体的には1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基等を例示することができる。
【0059】
上記式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体の具体例としては、下記に示すヒドロキシスチレン誘導体を挙げることができる。
【0060】
【化20】

【0061】
なお、上記式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位は、以下の式(I−1)で表される繰り返し単位を意味する。
【0062】
【化21】

【0063】
(式中、Ra、Rb、Rc、m、o、は前述に定義したものと同義である。)。
【0064】
また、前記アーム部は、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位に加え、下記式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位、下記式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される繰り返し単位、及び/又は下記式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0065】
【化22】

【0066】
(式中、Rdは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Reはハロゲン原子
又は水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、xは0乃至5の整数を表し、xが2以上の場合、Reは同一又は異なっていてもよく、その置換位置は特に制限されな
い。)
【0067】
【化23】

【0068】
(式中、Rfは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Rgはハロゲン原子又は炭素原子数1乃至12の炭化水素基を表し、Rhは水素原子又は保護基を表す。yは
0乃至4の整数であり、yが2以上の時は、Rgは同一又は異なっていても良く、y+z
=1乃至5の整数であり、またそれらの置換位置は特に制限されない。)
【0069】
上記式中、Rhで表される保護基とは、当技術分野において、カルボキシル基の保護基
として使用されることが周知である基であれば特に限定されない。
例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、t−ブチル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、2−メチル−2−t−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられ、さらに、下記に示す置換基を挙げることができる。
【0070】
【化24】

【0071】
(式中、kは0又は1を表す。)さらに、次式
【0072】
【化25】

【0073】
(式中、Rkは炭素原子数1乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、炭素原
子数5乃至10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6乃至20の無置換又はアルコキシ
置換のアリール基を表し、Rlは、水素又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Rmは水素、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基をあらわす。)で表される基を例示することができる。
このような置換基として、具体的には1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基等を例示することができる。
【0074】
【化26】

【0075】
(式中、Riは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、Rjは水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3以上の脂環式骨格を有する炭化水素基(但し、炭素数に置換基の炭素は含まない。)、該脂環式骨格を有する炭化水素基を有するアルキル基又はヘテロ基を表す。)。
【0076】
なお、式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位は、以下の式(II−1)で表される繰り返し単位を意味し、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される繰り返し単位は、下記式(III−1)で表される繰り返し単位を意味し、式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位は、以下の式(IV−1)で表される繰り返し単位を意味する。
【0077】
【化27】

【0078】
(式中、Rd乃至Rjは及びx乃至zは前述に定義したものと同義である。)。
【0079】
上記式(II)及び(II−1)中、Rdは好ましくは水素原子又はメチル基である。
また、式中、Reで表される基は具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t
−ブチル基等を例示することができる。
xは好ましくは0である。
【0080】
上記式(III)及び(III−1)中、Rfは好ましくは水素原子又はメチル基であ
る。
また式中、Rgで表される基は具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−
ブチル基等を例示することができる。
【0081】
上記式(IV)及び(IV−1)中、Riは好ましくは水素原子又はメチル基である。
また式中、Rjで表される基は、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル機、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられる。
【0082】
また、上記脂環式骨格としては、下記に示す骨格を具体的に例示することができる。
【0083】
【化28】

【0084】
jとしては、特に、下記式(V)で表される2−置換アダマンチル基を最も好ましい
例として挙げることができる。
【0085】
【化29】

【0086】
(式中、Rnは水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Ro乃至Rq
夫々独立してヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至8のシクロアルキル基、炭素原子数2乃至7のアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、およびアシル基から選択される基を表す。p、q、rはそれぞれ独立して0及び1乃至3の整数から選択され、p、q又はrが2以上の場合、Ro同士、Rp同士及びRq同士は夫々同一又は異なっていてもよい。)
【0087】
本発明の星型ポリマーのアーム部には、上述の式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位以外にも、必要に応じて下記に示すその他のアクリレート類から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
[アクリル酸エステル類]
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルアクリレート、5−エトキシペンチルアクリレート、1−メトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−メトキシプロピルアクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルアクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど;
[メタクリル酸エステル類]
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、4−メトキシブチルメタクリレート、5−メトキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルメタクリレート、1−メトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−メトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルメタクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど;
[クロトン酸エステル類]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸アミル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸エチルヘキシル、クロトン酸オクチル、クロトン酸−t−オクチル、クロルエチルクロトネート、2−エトキシエチルクロトネート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルクロトネート、5−エトキシペンチルクロトネート、1−メトキシエチルクロトネート、1−エトキシエチルクロトネート、1−メトキシプロピルクロトネート、1−メチル−1−メトキシエチルクロトネート、1−(イソプロポキシ)エチルクロトネート、ベンジルクロトネート、メトキシベンジルクロトネート、フルフリルクロトネート、テトラヒドロフルフリルクロトネートなど;および
[イタコン酸エステル類]
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジアミル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸ビス(エチルヘキシル)、イタコン酸ジオクチル、イタコン酸−ジ−t−オクチル、ビス(クロルエチル)イタコネート、ビス(2−エトキシエチル)イタコネート、ビス(2,2−ジメチル−3−エトキシプロピル)イタコネート、ビス(5−エトキシペンチル)イタコネート、ビス(1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−エトキシエチル)イタコネート、ビス(1−メトキシプロピル)イタコネート、ビス(1−メチル−1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−(イソプロポキシ)エチル)イタコネート、ジベンジルイタコネート、ビス(メトキシベンジル)イタコネート、ジフルフリルイタコネート、ジテトラヒドロフルフリルイタコネートなど。
【0088】
上記その他のアクリレート類の中でも、特にt−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、1,1−ジメチルプロピルアクリレート、1,1−ジメチルメタクリレート等のエステル酸素α位に3級炭素を有するアルキル基であるアクリレート、又はメタクリレートを好ましいものとして例示することができる。
【0089】
本発明の星型ポリマーのアーム部は、前述したとおり、式(1)表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位を含み、さらに、式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される繰り返し単位、式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位及び/又はその他のアクリレート類から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
そして本発明の星型ポリマーのアーム部において、好ましくは上述のこれら繰り返し単位が酸解離性基を含むことが望ましい。
【0090】
ここで「酸解離性」とは、酸の作用によって本発明の星型ポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖から解離可能であることを意味する。そして酸解離性基は、解離前にはポリマー全体をアルカリ不溶性としてその溶解を抑制するという性質も有する基である。すなわち、酸が作用する前にはポリマー全体はアルカリ不溶性となっているが、酸の作用によって酸解離性基がポリマー鎖から解離することにより、ポリマー全体はアルカリ可溶性となる。
このような「酸解離性基」としては、一般に、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基(以下、第3級アルキルエステル型酸解離性基と称する);アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
【0091】
[第3級アルキルエステル型酸解離性基]
ここで「第3級アルキルエステル(基)」とは、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基の水素原子が、鎖状又は環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成している構造、すなわち、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状又は環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を意味する。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、脂肪族分枝状酸解離性基、脂肪族環式基を含有する酸解離性基が挙げられる。
脂肪族分枝状酸解離性基としては、好ましくは、(メタ)アクリル酸等のカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に結合した、炭素原子数4乃至8の第3級アルキル基が挙げられ、例えばtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
脂肪族環式基を含有する酸解離性基としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に結合した、環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができる。
ここで環状のアルキル基としては例えば、低級アルキル基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、テトラシクロアルキル基などのポリシクロアルキル基等が挙げられ、より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
従って、脂肪族環式基を含有する酸解離性基の具体例としては、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、
テトラシクロドデカニル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分枝状アルキレン基とを有する基等が挙げられる。
【0092】
第3級アルキルエステル型酸解離性基として好ましいものとしては、下記式(p0)で表されるものであり、より好ましくは、下記式(p0−1)で表されるものである。
【化30】

[式中、sは0または1であり、R13は水素原子またはメチル基であり、R14はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基)であり、Rrは当該Rrが結合している炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。]
rとしては、上記<環状のアルキル基>として挙げた基と同様のものが挙げられ、好
ましくは多環式の脂肪族環式基である。
【化31】

[式中、sは0または1であり、R13は水素原子またはメチル基であり、R14はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基)である。]
14としては、炭素数1〜3がより好ましく、メチル基またはエチル基がさらに好ましい。
【0093】
[アセタール型酸解離性基]
「アセタール型酸解離性基」は、一般に、カルボキシ基、ヒドロキシ基等のアルカリ可溶性基の末端の水素原子を置換し、酸素原子と結合している基である。そして、酸が作用すると、アセタール型酸解離性基と、当該アセタール型酸解離性基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0094】
【化32】

式(p1)中、R1',R2'はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、nは0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5の
アルキル基を表す。
【0095】
上記式中のR1',R2'及びWにおける炭素原子数1乃至5のアルキル基として、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
またWの脂肪族環式基としては、先に「環状のアルキル基」として挙げた基を例示することができる。
【0096】
上記式(p1)で表されるアセタール型酸解離性基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0097】
【化33】

【0098】
また、アセタール型酸解離性基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0099】
【化34】

【0100】
式(p2)中、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、R12は直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。あるいは、R10とR12が結合して環を形成していてもよい。
【0101】
上記R10及びR11における直鎖状又は分枝状のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1乃至15の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特に、R10又はR11のいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
上記R12における直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1乃至15の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分枝状アルキル基の場合には、炭素原子数1乃至5の直鎖状又は分枝状アルキル基であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。また、環状アルキル基の場合には、炭素原子数4乃至15の、好ましくは炭素原子数4乃至12の、より好ましくは炭素原子数5乃至10の環状アルキル基が望ましい。具体的にはフッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、テトラシクロアルキル基などのポリシクロアルキル基等が挙げられ、より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられ、中でもアダマンチル基が最も望ましい。
また、上記式においてはR10とR12が結合して環を形成している場合、4乃至7員環、好ましくは4乃至6員環であることが望ましく、具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等を形成していることが好ましい。
【0102】
本発明の星型ポリマーのアーム部中、各繰り返し単位の比率は、反応に用いる各単量体の使用割合によって任意に選択することができる。
例えば、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量は、アーム部全繰り返し単位中1乃至100モル%であり、好ましくは10乃至100モル、さらに好ましくは30乃至100モル%である。
また、式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量、又は式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量は、アーム部全繰り返し単位中0乃至99モル%であり、好ましくは0乃至90モル%、更に好ましくは0乃至70モル%である。
【0103】
本発明の星型ポリマーのアーム部を構成するポリマー(アームポリマー)鎖の数平均分子量Mnは、GPC法(ポリスチレン換算)により、好ましくは500乃至300,000、より好ましくは500乃至100,000、更に好ましくは1,000乃至20,000の範囲である。
またこのとき、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.01乃至3.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.01乃至2.00、更に好ましくは1.01乃至1.50の範囲にあることが望ましい。
【0104】
本発明の星型ポリマーの製造方法としては特に限定はされないが、例えば、アニオン重合開始剤の存在下、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体化合物をアニオン重合し、所望によりさらにアニオン重合可能なモノマー(例えば式(IV)で表されるアクリレート誘導体など)を反応させてアーム部を形成し、次に、コア部となる上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤と反応させて星型ポリマーを形成し、得られた共重合体からフェノール性ヒドロキシ基等の保護基を全部又は一部脱離させる方法が、反応の制御が容易であり、構造を制御した星型ポリマーを製造することができるため望ましい。
【0105】
上記アニオン重合法に用いられるアニオン重合開始剤としては、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を例示することができ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等を例示することができる。
有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等を例示することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
【0106】
上述の方法において、アーム部のポリマーを合成する重合反応としては、モノマー(混合)溶液中にアニオン重合開始剤を滴下する方法や、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法のいずれの方法でも行うことができるが、分子量及び分子量分布を制御することができることから、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法が好ましい。
上記アーム部のポリマーの重合反応は、通常、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、−100乃至50℃、好ましくは−100乃至40℃の範囲の温度下で行われる。
【0107】
上記アームポリマーの合成反応に用いられる有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類の他、アニソール、ヘキサメチルホスホルアミド等のアニオン重合において通常使用される有機溶媒を挙げることができ、これらは一種単独溶媒又は二種以上の混合溶媒として使用することができる。これらのうち、トルエン、n−ヘキサン、THFを好ましい溶媒として例示することができる。
【0108】
アーム部のポリマーが共重合体である場合、ランダム共重合体、部分ブロック共重合体、完全ブロック共重合体のいずれの重合形態も可能である。これらは、重合に用いるモノマーの添加方法を選択することにより、適宜合成することができる。
【0109】
このようにして得られたアーム部をコア部に連結させることにより星型ポリマーを生成させる反応は、アーム部の重合反応終了後、反応液中ヘさらに上記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤を添加することにより行うことができる。
この反応は通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、有機溶媒中において−100℃乃至50℃、好ましくは−80℃乃至40℃の温度で反応を行うことにより構造が制御され、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることができる。
また、かかるポリマーの生成反応は、アーム部を形成させるのに用いた溶媒中で連続して行うこともできる他、溶媒を添加して組成を変更して、又は溶媒を別の溶媒に置換して行うこともできる。ここで使用され得る溶媒としては、アーム部の合成反応に用いられる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0110】
上述の方法にて生成するポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.01乃至3.00の範囲にあることが好ましく、1.01乃至2.00、さらには1.01乃至1.50の範囲が好ましい。生成するポリマーの数平均分子量は1,000乃至1,000,000であるのが好ましく、より好ましくは1,500乃至500,000、更に好ましくは1,500乃至50,000、特に好ましくは2,000乃至20,000の範囲である。
【0111】
このようにして得られた共重合体からフェノール性ヒドロキシル基等の保護基を除去する反応は、前記重合反応で例示した溶媒の他、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどの多価アルコール誘導体類、又は水などの一種単独又は二種以上の混合溶媒の存在下、塩酸、硫酸、シュウ酸、塩化水素ガス、臭化水素酸、p−トルエンスルホン酸、1,1,1−トリフルオロ酢酸、LiHSO4、NaHSO4又はKHSO4で示される重硫酸
塩などの酸性試剤を触媒として、室温乃至150℃の温度で行われる。この反応において、溶媒の種類と濃度、触媒の種類と添加量、および反応温度と反応時間を適当に組み合わせることにより、フェノール性ヒドロキシ基の保護基を全部又は一部除去することができる。
【0112】
また、本発明の星型ポリマーのアーム部に式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位が含まれる場合、当該繰り返し単位のエステル基を加水分解することによりカルボキシル基に誘導することができる。加水分解は、当該技術分野において知られた方法で行うことができ、例えば、上述の保護基を除去するための条件と同様の条件による酸加水分解により行うことができる。好ましくは、当該エステル基の加水分解は、フェノール性ヒドロキシ基の除去と同時に行われる。このようにして得られるアクリル酸系の繰り返し単位を分子内に有する星型ポリマーは、高いアルカリ溶解性を有するためレジスト材料として特に好ましい。
【0113】
以上の製造方法により得られる本発明の星型ポリマーは、特に精製することなく利用することもできるが、必要であれば精製してもよい。当該精製は、当該技術分野において通常用いられる方法により行うことができるが、例えば、分別再沈法により行うことができる。分別再沈法においては、ポリマー溶解性の高い溶媒と低い溶媒の混合溶媒を用いて再沈を行うのが好ましく、例えば、混合溶媒中で本発明の星型ポリマーを加熱溶解し冷却する方法や、ポリマー溶解性の高い溶媒に本発明の星型ポリマーを溶解した後にポリマー溶解性の低い溶媒を添加して該星型ポリマーを析出させることにより、生成物の精製を行うことができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によりなんら制限を受けるものではない。
【0115】
<製造例1:星型ポリマー(ポリマー(A)−1)の製造>
[製造例1−1:アニオン重合用カップリング剤の合成]
窒素雰囲気下にて、ペンタエリスリトール13.0gにアセトン247.0gとジイソプロピルエチルアミン80.2gと2−クロロエチルクロロメチルエーテル80.1gを加え、攪拌下30℃にて4時間保持した。その後、反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層をシュウ酸水溶液とイオン交換水で4回洗浄を行なった。得られた有機層を減圧下、濃縮をおこなうことでペンタエリスリトール−テトラ(2−クロロエトキシメチル)エーテルを47.4g(収率98%)を得た。
【0116】
窒素雰囲気下にて、前述のペンタエリスリトール−テトラ(2−クロロエトキシメチル)エーテル11.2gにヘキサメチルりん酸トリアミド560.0gとブロモエタン144.7gと臭化ナトリウム1.8gを加え、攪拌下80℃にて24時間保持した。その後、反応混合物を室温に冷却し、反応混合物を減圧下にて濃縮した。得られた濃縮混合物にメチル−t−ブチルエーテルを加え、有機層をイオン交換水で4回洗浄した。その後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。ろ過を行なった後、減圧下にて濃縮を行ない、アニオン重合用カップリング剤であるペンタエリスリトール−テトラ(2−ブロモエトキシメチル)エーテルを12.3g(収率81%)を得た。
【0117】
[製造例1−2:アーム部(ポリマー鎖)の合成及び酸分解性ポリマーの合成]
窒素雰囲気下にてテトラヒドロフラン(以下THFと称する)119.5gを−60℃に冷却した。攪拌下、−60℃を保持しながらs−ブチルリチウムを15ミリモル加え、続いてp−エトキシエトキシスチレン(以下PEESと称する)24.5gを50分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。
この段階で反応液を少量採取し、メタノールにより反応を停止させた後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと称する)測定を行ったところ、得られたPEESポリマーはポリスチレン換算でMn=1450、Mw/Mn=1.20の単分散ポリマーであるとする結果が得られた。
次いで、反応系を−60℃に保持したまま、製造例1−1にて得たペンタエリスリトール−テトラ(2−ブロモエトキシメチル)エーテル3.2gを10分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。
次いで反応系にメタノールを加えて反応を停止させた後、GPC測定を行ったところ、得られた酸分解性ポリマーはポリスチレン換算でMn=3670、Mw/Mn=1.24の単分散ポリマーであるとする結果が得られた。
すなわち、ポリマーは、反応前の単分散ポリマーの状態を保持したまま、ペンタエリスリトール−テトラ(2−ブロモエトキシメチル)エーテルの反応後には分子量の増加が観測されており、該ポリマーは星型形状を有するポリマーとなったことを確認した。
【0118】
[製造例1−3:PEESの加水分解(保護基の除去)]
製造例1−2より得られた重合液にメチルイソブチルケトン(以下、MIBKと称する)を加え、有機層をイオン交換水で2回洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮操作によりポリマー分40質量%のMIBK溶液にし、さらにイソプロピルアルコール(以下、IPAと称する)を加えてポリマー分20質量%の溶液にした。
この溶液の100質量部に対して、1質量部のシュウ酸2水和物と2質量部のイオン交換水を加え50℃に加熱した。攪拌下、50℃を保ちながら、さらに反応を6時間継続した。
この反応において、反応前後のポリマーの13C−NMRを測定し、結果を比較した。反応後、117ppm付近に観測されたPEESポリマー由来の吸収は消失し、新たに115ppm付近にp−ヒドロキシスチレンポリマー由来の吸収が観測された。そしてアセタール結合(−O−CH2−O−)に由来する96ppm付近に観測されるピークは加水分
解前後のいずれにおいても保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPCを測定したところ、ポリスチレン換算でMn=2560であり、反応前後においてGPCのピーク形状に大きな変化は見られなかった。
以上の結果より、加水分解反応がPEESのエトキシエトキシ基において進行し、p−ヒドロキシスチレン(以下PHSと称する)セグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系ポリマーが得られ、またポリマーのコア部に導入された−O−CH2
O−結合は保持され、反応後のポリマーが星型形状を保持していることを確認した。
【0119】
[製造例1−4:メトキシアダマンチル基の導入]
製造例1−3で得られたポリマー溶液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回
洗浄した。その後、有機層を減圧下で濃縮し、ポリマー分50質量%の溶液にした後、THFによりポリマー分10質量%の溶液にした。
得られたポリマー溶液130.5gに60%水素化ナトリウムを2.2g加え、撹拌下、室温で30分保持した。その後、2−クロロメトキシアダマンタン4.8gを5分かけて滴下し、さらに室温で反応を12時間継続した。
反応系にシュウ酸水溶液を加え反応を停止させた後、MIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する)溶液で置換した。
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHSにメトキシアダマンチル基が導入されたユニット(以下、PHS−MOAdと称する)に由来する吸収が新たに82ppm付近、93ppm付近、並びに116ppm付近に観測された。
またPHSユニットとPHS−MOAdの割合は75/25であった。
さらにポリマーのコア部に導入された−O−CH2−O−結合に由来する96ppm付
近のピークは保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMn=2790、Mw/Mn=1.30の単分散ポリマーであるとする結果が得られ、アダマンチル基導入前後においてGPCのピーク形状に変化は見られなかった。
以上の結果より、PHS/PHS−MOAdセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系ポリマーが得られ、ポリマーのコア部に導入されているアセタール結合は保持されており、本ポリマーが星型形状を保持していることを確認した。
【0120】
上記製造例1−5で得られたポリマー(以降、ポリマー(A)−1と称する)の構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は、当該ポリマー(A)−1のアーム部であるポリマー鎖を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRによりそれぞれ算出した。
【0121】
【化35】

【0122】
<比較製造例1:ポリマー(A)−2の製造>
10gのポリ−4−ヒドロキシスチレン(Mw=4000,Mw/Mn=1.1)を100mlのTHFに溶解し、0.92gの60%水素化ナトリウムを添加した。この溶液に4.37gの2−クロロメトキシアダマンタンを添加し、室温にて20時間、撹拌した。撹拌後、イオン交換水を添加して反応を止め、濃縮した。その後、400mlのイオン交換水で希釈し、100mlの酢酸エチルで3回抽出し、塩酸、飽和NaHCO3水溶液
、飽和NaCl水溶液の順に洗浄した。得られた溶液を濃縮し、酢酸エチル−n−ヘプタン系にて再沈殿精製を行い、乾燥させ、白色固体を得た。
GPC測定を行ったところ、得られたポリマー(A)−2は、ポリスチレン換算でMw=4200、Mw/Mn=1.1であるとする結果が得られた。また、13C−NMR、1
H−NMRにより組成比(モル比)を算出した。
比較製造例1より得られたポリマー(A)−2の構造は以下の通りである。
【0123】
【化36】

【0124】
<ポジ型レジスト組成物の調製−1:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表1に示す組成に従い、上記製造例1、比較製造例1で得られたポリマー(A)−1及び(A)−2成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例1及び比較例1のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0125】
【表1】

【0126】
<レジストパターンの形成−1>
[感度・解像性]
得られたポジ型レジスト組成物を用いて解像性の評価を行った。
各例のポジ型レジスト組成物を、90℃にて36秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、表2に示す温度にて60秒間のベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚80nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70kVにて描画(露光)を行い、表2に示す温度にて60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(T
MAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて30秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
このとき、100nmのL/Sパターンが1:1に形成される最適露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。結果を表2に示す。
上記Eopにおける限界解像度(nm)を、走査型電子顕微鏡S−9220(Hitachi社製)を用いて求めた。その結果を「解像性(nm)」として表2に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
表2の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例1のポジ型レジスト組成物は、比較例1のポジ型レジスト組成物に比べて、解像性に優れるとする結果が得られた。
また、実施例1のポジ型レジスト組成物を用いて形成されたレジストパターンは、ラフネスの低減された良好な形状であった。
【0129】
<製造例2:星型ポリマー(ポリマー(A)−3〜(A)−11)の製造>
[製造例2−1〜2−2:アーム部(ポリマー鎖)の合成及び酸分解性ポリマーの合成]
PEESの滴下量を表3に示したとおりに変更した以外は製造例1−2と同様にして、表3に示すポリマー鎖(PEESポリマー)の分子量を変化させた酸分解性ポリマーを得た。
【0130】
【表3】

【0131】
[製造例2−3〜2−4:PEESの加水分解(保護基の除去)]
製造例1−2で得られた重合液に替えて、製造例2−1または製造例2−2で得られた重合液を用いたこと以外は、製造例1−3と同じ手法により、表4に示すPHSセグメントをアーム部の主骨格とする星型ポリマーを得た。
【0132】
【表4】

【0133】
[製造例2−5〜2−13:酢酸メチルアダマンチル基の導入]
製造例1−3、製造例2−3および製造例2−4で得られたポリマー溶液にそれぞれMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄した。その後、有機層を減圧下で濃縮し、ポリマー分50質量%の溶液にした後、アセトンによりポリマー分10質量%の溶液にした。
得られたポリマー溶液50.0gに炭酸カリウム3.5gを加え、撹拌下、室温で30分保持した。その後、表5に示す添加量でヨード酢酸メチルアダマンチルを加え、さらに35℃で反応を8時間継続した。
【0134】
【表5】

【0135】
反応系にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液で1回洗浄した後、さらにイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
【0136】
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHSに酢酸メチルアダマンチル基が導入されたユニット(以下、PHS−OAdEと称する)に由来する吸収が新たに89ppm付近、114ppm付近、並びに169ppm付近に観測された。
またPHSユニットとPHS−OAdEの割合は表6の通りであった。
さらにポリマーのコア部に導入された−O−CH2−O−結合に由来する96ppm付
近のピークは保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPC測定を行ったところ、表6に示すMnとMw/Mnを有する単分散ポリマーであるとする結果が得られ、酢酸メチルアダマンチル基導入前後においてGPCのピーク形状に変化は見られなかった。
【0137】
【表6】

【0138】
以上の結果より、PHS/PHS−OAdEセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系ポリマーが得られ、ポリマーのコア部に導入されているアセタール結合は保持されており、本ポリマーが星型形状を保持していることを確認した。
【0139】
ポリマー(A)−3〜ポリマー(A)−11の構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は、当該ポリマー(A)−3〜ポリマー(A)−11のアーム部であるポリマー鎖を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRによりそれぞれ表6に示す通りに算出した。
【0140】
【化37】

【0141】
<比較製造例2:ポリマー(A)−12の製造>
5gのポリ−4−ヒドロキシスチレン(Mn=2900,Mw/Mn=1.06)を45gのアセトンに溶解し、炭酸カリウム3.5gを加え、攪拌下、室温で30分保持した。その後ヨード酢酸メチルアダマンチル3.5gを加え、さらに35℃で反応を8時間継続した。
反応系にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液で1回洗浄した後、さらにイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
GPC測定を行ったところ、得られたポリマー(A)−12は、ポリスチレン換算でMn=4300、Mw/Mn=1.05であるとする結果が得られた。また、13C−NMRにより組成比(モル比)を算出した。
比較製造例2より得られたポリマー(A)−12の構造は以下の通りである。
【0142】
【化38】

【0143】
<ポジ型レジスト組成物の調製−2:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表7に示す組成に従い、上記製造例2、比較製造例2で得られたポリマー(A)−3〜(A)−11及び(A)−12成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例2〜10及び比較例2のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0144】
【表7】

【0145】
<レジストパターンの形成−2>
[感度の評価]
各例のポジ型レジスト組成物を、90℃にて36秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、100℃60秒間のベーク処理(PAB)(ただし、実施例10のみPAB80℃60秒間)を行い、レジスト膜(膜厚80nm)を成膜した。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70kVにて描画(露光)を行い、80℃60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて30秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。各実施例、比較例において100nmのL/Sパターンが1:1に形成されたときの最適露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。結果を表8に示す。
【0146】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
前記Eopで形成された100nmの1:1L/Sパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)により、ライン幅を、ラインの長手方向に5箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を、LWRを示す尺度として算出した。この3sの値が小さいほど線幅のラフネスが小さく、より均一幅のL/Sパターンが得られたことを意味する。結果を表8に示す。
【0147】
【表8】

【0148】
表8の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例2乃至10のポジ型レジスト組成物は、比較例2のポジ型レジスト組成物に比べて、いずれもLWR値が低く、均一幅のL/Sパターンが得られているとする結果が得られた。
【0149】
<ポジ型レジスト組成物の調製−3:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表9に示す組成に従い、上記製造例2、比較製造例2で得られたポリマー(A)−6〜(A)−8及び(A)−12成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例11〜13及び比較例3のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0150】
【表9】

【0151】
<レジストパターンの形成−3>
各例のポジ型レジスト組成物を用いて、<レジストパターンの形成−2>と同様にレジストパターンの形成をおこなった。各実施例、比較例において100nmのL/Sパターンが1:1に形成されたときの最適露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。また、前
記EopにおけるLWRについても上記と同様の方法で評価した。
さらに前記Eopにおける限界解像度(nm)走査型電子顕微鏡S−9220(Hitachi社製)を用いて求めた。得られた結果を表10に示す。
【0152】
【表10】

【0153】
表10の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例11乃至14のポジ型レジスト組成物は、比較例3のポジ型レジスト組成物に比べて、いずれもLWR値が低く、均一幅のL/Sパターンが得られており、且つ、解像性に優れるとするとする結果が得られた。
【0154】
<製造例3:星型ポリマー(ポリマー(A)−13)の製造>
[製造例3−1:アニオン重合用カップリング剤の合成]
窒素雰囲気下にて、ジペンタエリスリトール12.3gにアセトン234.1gとジイソプロピルエチルアミン50.1gと2−クロロエチルクロロメチルエーテル50.0gを加え、攪拌下50℃にて4時間保持した。その後、反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層をシュウ酸水溶液とイオン交換水で4回洗浄を行なった。得られた有機層を減圧下、濃縮を行なうことでジペンタエリスリトール−ヘキサ(2−クロロエトキシメチル)エーテルを39.0g(収率99%)を得た。
【0155】
窒素雰囲気下にて、前述のジペンタエリスリトール−ヘキサ(2−クロロエトキシメチル)エーテル20.0gにヘキサメチルりん酸トリアミド480.0gとブロモエタン161.6gと臭化ナトリウム3.1g加え、攪拌下80℃にて3時間保持した。その後、反応混合物を減圧下にて濃縮した。得られた濃縮混合物に新たにブロモエタン107.7gを加え、攪拌下80℃にて3時間保持した。その後、反応混合物を減圧下にて濃縮し、得られた濃縮混合物にメチル−t−ブチルエーテルを加え、有機層をイオン交換水で4回洗浄した。その後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。ろ過を行なった後、減圧下にて濃縮を行い、アニオン重合用カップリング剤であるジペンタエリスリトール−ヘキサ(2−ブロモエトキシメチル)エーテルを10.5g(収率39%)を得た。
【0156】
[製造例3−2:アーム部(ポリマー鎖)の合成及び酸分解性ポリマーの合成]
窒素雰囲気下にてTHF263.5gを−60℃に冷却した。攪拌下、−60℃を保持しながらs−ブチルリチウムを30ミリモル加え、続いてPEES42.4gを50分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。
この段階で反応液を少量採取し、メタノールにより反応を停止させた後、GPC測定を行ったところ、得られたPEESポリマーはポリスチレン換算でMn=1430、Mw/Mn=1.13の単分散ポリマーであるとする結果が得られた。
次いで、反応系を−60℃に保持したまま、製造例3−1にて得たジペンタエリスリトール−ヘキサ(2−ブロモエトキシメチル)エーテル6.6gを10分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。
次いで反応系にメタノールを加えて反応を停止させた後、GPC測定を行ったところ、得られた酸分解性ポリマーはポリスチレン換算でMn=3620、Mw/Mn=1.42の単分散ポリマーであるとする結果が得られた。
すなわち、ポリマーは、反応前の単分散ポリマーの状態を保持したまま、ジペンタエリスリトール−ヘキサ(2−ブロモエトキシメチル)エーテルの反応後には分子量の増加が観測されており、該ポリマーは星型形状を有するポリマーとなったことを確認した。
【0157】
[製造例3−3:PEESの加水分解(保護基の除去)]
製造例3−2より得られた重合液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で2回洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮操作によりポリマー分40質量%のMIBK溶液にし、さらにIPAを加えてポリマー分20質量%の溶液にした。
この溶液の100質量部に対して、1質量部のシュウ酸2水和物と2質量部のイオン交換水を加え50℃に加熱した。攪拌下、50℃を保ちながら、さらに反応を8時間継続した。
この反応において、反応前後のポリマーの13C−NMRを測定し、結果を比較した。反応後、117ppm付近に観測されたPEESポリマー由来の吸収は消失し、新たに11
5ppm付近にPHSポリマー由来の吸収が観測された。そしてアセタール結合(−O−CH2−O−)に由来する96ppm付近に観測されるピークは加水分解前後のいずれに
おいても保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPCを測定したところ、ポリスチレン換算でMn=2000であり、反応前後においてGPCのピーク形状に大きな変化は見られなかった。
以上の結果より、加水分解反応がPEESのエトキシエトキシ基において進行し、PHSセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系ポリマーが得られ、またポリマーのコア部に導入された−O−CH2−O−結合は保持され、反応後のポリマーが
星型形状を保持していることを確認した。
【0158】
[製造例3−4:酢酸メチルアダマンチル基の導入]
製造例3−3で得られたポリマー溶液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄した。その後、有機層を減圧下で濃縮し、ポリマー分50質量%の溶液にした後、アセトンによりポリマー分10質量%の溶液にした。
【0159】
得られたポリマー溶液50.0gに炭酸カリウム3.5gを加え、撹拌下、室温で30分保持した。その後、ヨード酢酸メチルアダマンチル11.7gを加え、さらに35℃で反応を8時間継続した。
反応系にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液で1回洗浄した後、さらにイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
【0160】
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHSに酢酸メチルアダマンチル基が導入されたユニット(以下、PHS−OAdEと称する)に由来する吸収が新たに89ppm付近、114ppm付近、並びに169ppm付近に観測された。
またPHSユニットとPHS−OAdEの割合は80/20であった。
さらにポリマーのコア部に導入された−O−CH2−O−結合に由来する96ppm付
近のピークは保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPC測定を行ったところ、Mn=4200とMw/Mn=1.34の単分散ポリマーであるとする結果が得られ、酢酸メチルアダマンチル基導入前後においてGPCのピーク形状に変化は見られなかった。
以上の結果より、PHS/PHS−OAdEセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系ポリマーが得られ、ポリマーのコア部に導入されているアセタール結合は保持されており、本ポリマーが星型形状を保持していることを確認した。
【0161】
上記製造例3−4で得られたポリマー(以降、ポリマー(A)−13と称する)の構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は、当該ポリマー(A)−13のアーム部であるポリマー鎖を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRによりそれぞれ算出した。
【0162】
【化39】

【0163】
<ポジ型レジスト組成物の調製−4:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表11に示す組成に従い、上記製造例2及び製造例3で得られたポリマー(A)−7及び(A)−13成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例14〜16のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0164】
【表11】

【0165】
<レジストパターンの形成−4>
各例のポジ型レジスト組成物を用いて、PAB温度を80℃に変更した他は、<レジストパターンの形成−2>と同様にして、レジストパターンの形成をおこなった。各実施例において100nmのL/Sパターンが1:1に形成されたときの最適露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。また、前記EopにおけるLWR、限界解像度(nm)につい
ても上記と同様の方法で評価した。
得られた結果を表12に示す。
【0166】
【表12】

【0167】
表12の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例14乃至16のポジ型レジスト組成物は、いずれもLWR値が低く、均一幅のL/Sパターンが得られているとする結果が得られており、且つ、解像性に優れるとするとする結果が得られた。
【0168】
<製造例4:星型ポリマー(ポリマー(A)−14)の製造>
[製造例4−1:アダマンチルオキシエチル基の導入]
前記製造例1−3で得られたポリマー溶液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄した。その後、有機層を減圧下で濃縮し、その後PGMEAによりポリマー分30質量%の溶液にした。
【0169】
得られたポリマー溶液50.0gにトリフルオロ酢酸0.7gを加え、撹拌下、30℃にした。その後、アダマンチルビニルエーテル9.4gを加え、さらに30℃で反応を3時間継続した。
反応系にトリエチルアミンを加え反応を停止した後、MIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
【0170】
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHSにアダマンチルオキシエチル基が導入されたユニット(以下、PHS−AdVEと称する)に由来する吸収が新たに94ppm付近、118ppm付近、並びに156ppm付近に観測された。
またPHSユニットとPHS−AdVEの割合は80/20であった。
さらにポリマーのコア部に導入された−O−CH2−O−結合に由来する96ppm付
近のピークは保持されていることを確認した。
また反応後のポリマーについてGPC測定を行ったところ、Mn=3400とMw/Mn=1.22の単分散ポリマーであるとする結果が得られ、アダマンチルオキシエチル基導入前後においてGPCのピーク形状に大きな変化は見られなかった。
以上の結果より、PHS/PHS−AdVEセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール形ポリマーが得られ、ポリマーのコア部に導入されているアセタール結合は保持されており、本ポリマーが星型形状を保持していることを確認した。
【0171】
上記製造例4−1で得られたポリマー(以降、ポリマー(A)−14と称する)の構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は、当該ポリマー(A)−14のアーム部であるポリマー鎖を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRによりそれぞれ算出した。
【0172】
【化40】

【0173】
<ポジ型レジスト組成物の調製−5:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表13に示す組成に従い、製造例4で得られたポリマー(A)−14成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例17及び18のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0174】
【表13】

【0175】
<レジストパターンの形成−5>
各例のポジ型レジスト組成物を用いて、PAB温度を80℃に変更した他は、<レジストパターンの形成−2>と同様にして、レジストパターンの形成をおこなった。各実施例において100nmのL/Sパターンが1:1に形成されたときの最適露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。また、前記EopにおけるLWR、限界解像度(nm)につい
ても上記と同様の方法で評価した。
得られた結果を表14に示す。
【0176】
【表14】

【0177】
表14の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例17及び18のポジ型レジスト組成物は、いずれもLWR値が低く、均一幅のL/Sパターンが得られているとする結果が得られており、且つ、解像性に優れるとするとする結果が得られた。
【0178】
<製造例5:星型ポリマー(ポリマー(A)−15〜(A)−20)の製造>
[製造例5−1〜5−2:アーム部(ポリマー鎖)の合成及び酸分解性ポリマーの合成]
PEESの滴下量を表15に示したとおりに変更し、グローブボックス等の使用により反応中に混入する水分を低減させた以外は製造例3−2と同様にして、表15に示すポリマー鎖(PEESポリマー)の分子量を変化させた酸分解性ポリマーを得た。
【0179】
【表15】

【0180】
[製造例5−3〜5−4:PEESの加水分解(保護基の除去)]
製造例3−2で得られた重合液に替えて、製造例5−1又は製造例5−2で得られた重合液を用いたこと以外は、製造例3−3と同じ手法により、表16に示すPHSセグメントをアーム部の主骨格とする星型ポリマーを得た。
【0181】
【表16】

【0182】
[製造例5−5〜5−10:酢酸メチルアダマンチル基の導入]
製造例3−3で得られた重合液に替えて、製造例5−3又は製造例5−4で得られた重合液を用い、ヨード酢酸メチルアダマンチルの添加量を表17に示すとおりに変更した以外は、製造例3−4と同じ手法により、表18に示すPHS/PHS−OAdEセグメントをアーム部の主骨格とするアルケニルフェノール系星型ポリマーを得た。
【0183】
【表17】

【0184】
【表18】

【0185】
<ポジ型レジスト組成物の調製−6:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表19に示す組成に従い、上記製造例5で得られたポリマー(A)−15〜(A)−20成分、(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例19〜24のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0186】
【表19】

【0187】
<レジストパターンの形成−6>
[感度・LWR・限界解像性]
各例のポジ型レジスト組成物を用いて、PAB温度を90℃に、レジスト膜の膜厚を50nmにて成膜した他は、<レジストパターンの形成−2>と同様にして、レジストパターンの形成を行った。
該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70kVにて描画(露光)を行い、80℃60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて60秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
各実施例において100nmのL/Sパターンが1:1に形成されたときの最適露光量(Eop;μC/cm2)を前記に示す方法にて求めた。また、前記EopにおけるLW
R、限界解像度(nm)についても前記と同様の方法で評価した。
得られた結果を表20に示す。
【0188】
【表20】

【0189】
表20の結果から、本発明のアニオン重合用カップリング剤より得られたポリマーをベース樹脂として含有する実施例19乃至実施例24のポジ型レジスト組成物は、いずれもLWR値が低く、均一幅のL/Sパターンが得られているとする結果が得られており、且つ、解像性に優れるとするとする結果が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0190】
【特許文献1】特開2002−226513号公報
【特許文献2】特開2006−225605号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

(式中、Pはa価の有機基を表し、aは2乃至20を表し、Xは酸の作用により解裂され得る下記式(2)乃至(5)
【化2】

(上記式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキル基若しくはアルコキシ基、又はアリール基、又はヒドロキシ基を表す。R5は直接結合又はアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若
しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基、又はアリーレン基を表す。)
で表される結合基を表し、Yは炭素原子数1乃至12のアルキレン基又はアリーレン基を表し、Zはハロゲン原子又は式(6)
【化3】

(式中、R6、R7、R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。)で表されるエポキシ基を表す。)、
で表されるアニオン重合用カップリング剤から誘導されるコア部に、アニオン重合法によって得られるポリマー鎖からなるアーム部を付加した構造を有する星型ポリマー。
【請求項2】
前記式(1)中、Zが臭素原子である場合、それに結合するYは炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表すことを特徴とする、請求項1記載の星型ポリマー。
【請求項3】
前記アニオン重合法により得られるポリマー鎖からなるアーム部が、ヒドロキシスチレン又はその誘導体からなる繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の星型ポリマー。
【請求項4】
前記アニオン重合法により得られるポリマー鎖からなるアーム部が、酸解離性基を含む繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の星型ポリマー。
【請求項5】
前記酸解離性基が、下記一般式(p1)で表されるアセタール型酸解離性基であることを特徴とする、請求項4に記載の星型ポリマー
【化4】

(式中、R1',R2'はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、nは0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。)。
【請求項6】
請求項1記載の前記式(1)で表されるアニオン重合用カップリング剤。

【公開番号】特開2010−215890(P2010−215890A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185711(P2009−185711)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】