説明

新規な有機染料およびその製造方法

【課題】新規な有機染料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電子供与体として特定の脂肪族化合物を、中間連結部分(スペーサ(spacer))にチオフェン系またはジヒドロチオフェン系ユニットを有する本発明の染料化合物は、染料感応太陽電池(dye−sensitized solar cell、DSSC)に使用されて、従来の染料より向上したモル吸光係数、Jsc(短絡光電流密度)および光電気変換効率を示して太陽電池の効率を大きく向上させることができ、高価のカラムを使用しなくても精製が可能で、染料合成単価を画期的に低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料感応太陽電池(dye−sensitized solar cell、DSSC)に使用される染料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1991年度スイス国立ローザンヌ高等技術院(EPFL)のマイケルグレッツェル(Michael Gratzel)研究チームによって染料感応ナノ粒子酸化チタン太陽電池が開発された以後、この分野に関する多くの研究が進められている。染料感応太陽電池は既存のシリコン系太陽電池に比べて効率が高く製造単価が顕著に低いため、既存の非晶質シリコン太陽電池を代替できる可能性を有しており、シリコン太陽電池とは異なり、染料感応太陽電池は可視光線を吸収して電子−ホール(hole)対を生成することができる染料分子と、生成された電子を伝達する遷移金属酸化物とを主構成材料とする光電気化学的太陽電池である。
【0003】
染料感応太陽電池に使用される染料として、高い光電気転換効率を示すルテニウム金属錯体が幅広く使用されてきたが、このルテニウム金属錯体は価格が高すぎるという短所があった。
【0004】
最近、吸光効率、酸化還元反応安定性および分子内電荷−伝達(charge−transfer、CT)系吸収の側面で優れた物性を示す、金属を含有しない有機染料が、高価のルテニウム金属錯体を代替できる染料感応太陽電池用染料として使用されることが発見され、金属を含有しない有機染料に関する研究が重点的に行われている。
【0005】
有機染料は一般に、π−結合ユニットによって連結される電子供与体(electron donor)−電子受容体(electron acceptor)残基の構造を有する。大部分の有機染料で、アミン誘導体が電子供与体の役割を果たし、2−シアノアクリル酸またはロダニン残基が電子受容体の役割を果たし、この両部位はメチン(methyne)ユニットまたはチオフェンチェーンのようなπ−結合システムによって連結される。
【0006】
一般に、電子供与体であるアミンユニットの構造的変化は電子特性の変化、例えば青色側にシフト(shift)された吸光スペクトルを持ってきて、π−結合の長さを変化させて、吸光スペクトルと酸化還元電位(redox potential)を調節することができる。
【0007】
しかし、今まで知られている大部分の有機染料はルテニウム金属錯体染料に比べて低い変換効率および低い駆動安定性を示すので、このような電子供与体および受容体の種類またはπ−結合の長さを変化させることによって、既存の有機染料化合物に比べて向上したモル吸光係数を有し、高い光電気変換効率を示す新たな染料を開発しようとする努力が持続されているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、従来の染料より向上したモル吸光係数および光電気変換効率を示して太陽電池の効率を大きく向上させることができる有機染料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記染料を含んで顕著に向上した光電気変換効率を示し、Jsc(短絡光電流密度、short circuit photocurrent density)とモル吸光係数が優れた染料増減光電変換素子、および効率が顕著に向上した太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は下記の化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される有機染料を提供する。
[化1]
[化学式1]


[化学式2]


[化学式3]


[化学式4]



【0011】
前記化学式1−4で、 供与体(Donor group)は下記の化学式D−1乃至D−4のうちの一つであり、
[化2]
[化学式D−1]


[化学式D−2]


[化学式D−3]


[化学式D−4]



【0012】
上記式で、Ar、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立的に置換されたり非置換されたC6−12アリールであり、*は連結部分であり、
【0013】

【0014】
乃至Rはそれぞれ独立的に水素、C1−12アルキルまたは置換されたり非置換されたC6−12アリールであり;nは1乃至5の整数である。
【0015】
また、本発明は下記の化学式D−5または化学式D−6で示される化合物と前記化学式1乃至4で定義したA、B、AとB、またはBとAの前駆体化合物を順次反応させて得られた化合物の末端にCを結合して製造される化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される染料の製造方法を提供する。
[化3]
[化学式D−5]


[化学式D−6]

【0016】
前記で、 供与体)(Donor group)は前記で定義したとおりである。
【0017】
また、本発明は前記化学式1乃至4のうちのいずれか1つで示される化合物を担持させた酸化物半導体微粒子を含むことを特徴とする染料増減光電変換素子を提供する。
【0018】
また、本発明は前記染料増減光電変換素子を含むことを特徴とする染料感応太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の染料化合物は、染料感応太陽電池(DSSC)に使用されて従来の染料より向上したモル吸光係数、Jsc(短絡光電流密度)および光電気変換効率を示して、太陽電池の効率を大きく向上させることができ、高価のカラムを使用しなくても精製が可能で、染料合成単価を画期的に低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、特定の脂肪族化合物を電子供与体として使用し、中間連結部分(スペーサ(spacer))にはモル吸光係数を増加させ素子の安定性を増加させるためのチオフェン系またはジヒドロチオフェン系ユニットを導入し、単一方向に存在していたスペーサおよび固定体(アンカー基)(anchoring group)を両方向に導入するなど新たな有機染料構造を有する化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される化合物を酸化物半導体微粒子に担持させて染料感応太陽電池を製造する場合、光電気変換効率、Jsc(短絡光電流密度)およびモル吸光係数が高くて、従来の染料感応太陽電池より優れた効率を示すことを確認し本発明を完成するようになった。
【0021】
本発明の有機染料は下記の化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示されることを特徴とする。
[化4]
[化学式1]


[化学式2]


[化学式3]


[化学式4]

【0022】
前記化学式1−4で、 供与体(Donor group)、Ar、Ar、Ar、Ar、A、B、C、R乃至R、およびnは前記で定義したとおりである。
【0023】
本発明の化学式1の染料化合物は、好ましくは下記構造式のうちのいずれか一つで示すことができる:
[化5−1]

[化5−2]

[化5−3]

[化5−4]

[化5−5]

[化5−6]

[化5−7]

[化5−8]

[化5−9]

[化5−10]

[化5−11]

[化5−12]

[化5−13]

[化5−14]

[化5−15]

【0024】
また、本発明は下記の化学式D−5または化学式D−6で示される化合物と前記化学式1乃至4で定義したA、B、AとB、またはBとAの前駆体化合物を順次反応させて得られた化合物の末端にCを結合して製造される化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される染料を製造することができる。
[化6]
[化学式D−5]


[化学式D−6]

【0025】
上記で、 供与体(Donor group)は前記で定義したとおりである。
【0026】
具体的に、本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−1の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式7−1の化合物を製造し、(2)化学式7−1の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式1で示すことができる。
[化7]
[化学式5−1]


[化学式6]


[化学式7−1]


[反応式1]



【0027】
上記の式で、Bは前記で定義したとおりである。
【0028】
また、本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−1の化合物と下記の化学式8の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式9−1の化合物を製造し、(2)化学式9−1の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でトリフルオロアセト酸と反応させて、下記の化学式10−1の化合物を製造し、(3)化学式10−1の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式2で示すことができる。
[化8]
[化学式5−1]


[化学式8]


[化学式9−1]


[化学式10−1]

【0029】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化9]
[反応式2]



【0030】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−1の化合物と下記の化学式11の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式12−1の化合物を製造し、(2)化学式12−1の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式13−1の化合物を製造し、(3)化学式13−1の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式14−1の化合物を製造し、(4)化学式14−1の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式3で示すことができる。
[化10]
[化学式5−1]


[化学式11]
(HO)B − A
[化学式12−1]


[化学式13−1]


[化学式6]


[化学式14−1]

【0031】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化11]
[反応式3]



【0032】
本発明による化学式4の化合物は例えば、(1)下記の化学式15−1の化合物と下記の化学式16の化合物とをテトラヒドロフラン(THF)中でカリウムt−ブトキシド存在下に反応させて、下記の化学式17の化合物を製造し、(2)化学式17−1の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式18の化合物を製造し、(3)化学式18−1の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式19−1の化合物を製造し、(4)化学式19−1の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造されることができる。その具体的な一例は下記反応式4で示すことができる。
[化12]
[化学式15−1]


[化学式16]
OHC − A
[化学式17−1]


[化学式18−1]


[化学式6]


[化学式19−1]

【0033】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化13]
[反応式4]





【0034】
また、本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−2の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式7−2の化合物を製造し、(2)化学式7−2の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式5で示すことができる。
[化14]
[化学式5−2]


[化学式6]


[化学式7−2]

【0035】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化15]
[反応式5]



【0036】
また、本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−2の化合物と下記の化学式8の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式9−2の化合物を製造し、(2)化学式9−2の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でトリフルオロアセト酸と反応させて、下記の化学式10−2の化合物を製造し、(3)化学式10−2の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式6で示すことができる。
[化16]
[化学式5−2]


[化学式8]


[化学式9−2]


[化学式10−2]

【0037】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化17]
[反応式6]



【0038】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−2の化合物と下記の化学式11の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式12−1の化合物を製造し、(2)化学式12−2の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式13−2の化合物を製造し、(3)化学式13−2の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式14−2の化合物を製造し、(4)化学式14−2の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式7で示すことができる。
[化18]
[化学式5−2]


[化学式11]
(HO)B − A

[化学式12−2]


[化学式13−2]


[化学式6]


[化学式14−2]

【0039】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化19]
[反応式7]





【0040】
本発明による化学式4の化合物は例えば、(1)下記の化学式15−2の化合物と下記の化学式16の化合物とをテトラヒドロフラン(THF)中でカリウムt−ブトキシド存在下に反応させて、下記の化学式17−2の化合物を製造し、(2)化学式17−2の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式18−2の化合物を製造し、(3)化学式18−2の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式19−2の化合物を製造し、(4)化学式19−2の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造されることができる。その具体的な一例は下記反応式8で示すことができる。
[化20]
[化学式15−2]


[化学式16]
OHC − A

[化学式17−2]


[化学式18−2]


[化学式6]


[化学式19−2]

【0041】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化21]
[反応式8]



【0042】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−3の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式7−3の化合物を製造し、(2)化学式7−3の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式9で示すことができる。
[化22]
[化学式5−3]


[化学式6]


[化学式7−3]

【0043】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化23]
[反応式9]



【0044】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−3の化合物と下記の化学式8の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式9−3の化合物を製造し、(2)化学式9−3の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でトリフルオロアセト酸と反応させて、下記の化学式10−3の化合物を製造し、(3)化学式10−3の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式10で示すことができる。
[化24]
[化学式5−3]


[化学式8]


[化学式9−3]


[化学式10−3]

【0045】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化25]

[反応式10]
【0046】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−3の化合物と下記の化学式11の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式12−3の化合物を製造し、(2)化学式12−3の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式13−3の化合物を製造し、(3)化学式13−3の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式14−3の化合物を製造し、(4)化学式14−3の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式11で示すことができる。
[化26]
[化学式5−3]


[化学式11]
(HO)B − A
[化学式12−3]


[化学式13−3]


[化学式6]


[化学式14−3]

【0047】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化27]
[反応式11]



【0048】
本発明による化学式4の化合物は例えば、(1)下記の化学式15−3の化合物と下記の化学式16の化合物とをテトラヒドロフラン(THF)中でカリウムt−ブトキシド存在下に反応させて、下記の化学式17−3の化合物を製造し、(2)化学式17−3の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式18−3の化合物を製造し、(3)化学式18−3の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式19−3の化合物を製造し、(4)化学式19−3の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造されることができる。その具体的な一例は下記反応式12で示すことができる。
[化28]
[化学式15−3]


[化学式16]
OHC − A
[化学式17−3]


[化学式18−3]


[化学式6]


[化学式19−3]

【0049】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化29]
[反応式12]



【0050】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−4の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式7−4の化合物を製造し、(2)化学式7−4の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式13で示すことができる。
[化30]
[化学式5−4]


[化学式6]


[化学式7−4]

【0051】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化31]
[反応式13]



【0052】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−4の化合物と下記の化学式8の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式9−4の化合物を製造し、(2)化学式9−4の化合物をテトラヒドロフラン(THF)中でトリフルオロアセト酸と反応させて、下記の化学式10−4の化合物を製造し、(3)化学式10−4の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式14で示すことができる。
[化32]
[化学式5−4]


[化学式8]


[化学式9−4]


[化学式10−4]

【0053】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化33]
[反応式14]



【0054】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式5−4の化合物と下記の化学式11の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式12−4の化合物を製造し、(2)化学式12−4の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式13−4の化合物を製造し、(3)化学式13−4の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式14−4の化合物を製造し、(4)化学式14−4の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造することができる。その具体的な一例は下記反応式15で示すことができる。
[化34]
[化学式5−4]


[化学式11]
(HO)B − A
[化学式12−4]


[化学式13−4]


[化学式6]


[化学式14−4]

【0055】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化35]
[反応式15]



【0056】
本発明による化合物は例えば、(1)下記の化学式15−4の化合物と下記の化学式16の化合物とをテトラヒドロフラン(THF)中でカリウムt−ブトキシド存在下に反応させて、下記の化学式17−4の化合物を製造し、(2)化学式17−4の化合物とN−ブロモコハク酸イミドとを反応させて、下記の化学式18−4の化合物を製造し、(3)化学式18−4の化合物と下記の化学式6の化合物とを鈴木カップリング反応させて、下記の化学式19−4の化合物を製造し、(4)化学式19−4の化合物をCHCN中でピペリジン存在下にシアノアセト酸と反応させることによって製造されることができる。その具体的な一例は下記反応式16で示すことができる。
[化36]
[化学式15−4]


[化学式16]
OHC − A
[化学式17−4]


[化学式18−4]


[化学式6]


[化学式19−4]

【0057】
上記の式で、AおよびBは前記で定義したとおりである。
[化37]
[反応式16]



【0058】
また、本発明は染料増減光電変換素子を提供し、前記染料増減光電変換素子は酸化物半導体微粒子に前記化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される染料を担持させたことを特徴とする。本発明による染料増減光電変換素子は、前記化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される染料を使用すること以外に、従来の染料を利用して太陽電池用染料増減光電変換素子を製造する方法を適用することができるのはもちろんであり、具体的な一例として大韓民国公開特許公報第10−2009−38377号(出願人:東進セミケム(株))に記載された方法を適用することができ、好ましくは本発明の染料増減光電変換素子は酸化物半導体微粒子を利用して基板上に酸化物半導体の薄膜を製造し、その次に前記薄膜に本発明の染料を担持させたものが良い。
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。但し、これら実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明がこれらのみに限定されるのではない。
【0060】
実施例1
1−1)中間体(1a)の合成
2,7−ジブロモ−9−フェニルアクリジンと(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸、Pd(PPhおよび2M KCO水溶液をジメチルホルムアミド(DMF)中で混合した後、12時間還流させた。結果として得られた反応溶液を冷却させ、水(30ml)と塩水を添加した後、有機層を分離および精製して、下記化学構造式を有する中間体を得た。
[化38]
[中間体1a]



【0061】
1−2)化合物1の合成
前記実施例1−1)で製造された中間体(1a)とシアノ酢酸を混合して製造した混合物を真空乾燥した後、MeCNおよびピペリジンと混合し、6時間還流させた。結果として得られた反応溶液を冷却させた後、有機層を真空下で除去した。結果として得られた固形物をシリカゲルクロマトグラフィー精製して下記化合物1を得た。得られた化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3519=610に対してm/z(測定値)=610であることを確認した。
[化39]
[化合物1]

【0062】
実施例2:
前記実施例1で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(5−オキソチエノ[3,2−b]チオフェン−2(5H)−イリデン)メチル−ボロン酸を使用することを除いては、実施例1と同様な方法を順次に実施して下記化合物2を得た。前記化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3919=722に対してm/z(測定値)=721であることを確認した。
[化40]
[化合物2]



【0063】
実施例3
前記実施例1で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(7−オキソ−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5(7H)−イリデン)メチルボロン酸を使用することを除いては、実施例1と同様な方法を順次に実施して下記化合物3を得た。前記化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3923=726に対してm/z(測定値)=725であることを確認した。
[化41]
[化合物3]



【0064】
実施例4
3,6−ジブロモ−N、N−ビス(4−メトキシフェニル)−10−フェニルアントラセン−9−アミンと(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸、Pd(PPhおよび2M KCO水溶液をジメチルホルムアミド(DMF)中で混合した後、12時間還流した。結果として得られた反応溶液を冷却させ、水(30ml)と塩水を添加した後、有機層を分離および精製して中間体を得た。
【0065】
前記で製造された中間体とシアノ酢酸を混合して製造した混合物を真空乾燥した後、MeCNおよびピペリジンと混合し、6時間還流した。結果として得られた反応溶液を冷却させた後、有機層を真空下で除去した。結果として得られた固形物をシリカゲルクロマトグラフィー精製して下記化合物4を得た。得られた化合物4に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C5033=836に対してm/z(測定値)=835であることを確認した。
[化42]
[化合物4]



【0066】
実施例5:
前記実施例4で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(5−オキソチエノ[3,2−b]チオフェン−2(5H)−イリデン)メチル−ボロン酸を使用することを除いては、実施例4と同様な方法を順次に実施して下記化合物5を得た。前記化合物5に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C5433=948に対してm/z(測定値)=947であることを確認した。
[化43]
[化合物5]



【0067】
実施例6
前記実施例4で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(7−オキソ−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5(7H)−イリデン)メチルボロン酸を使用することを除いては、実施例4と同様な方法を順次に実施して下記化合物6を得た。前記化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C543710=952に対してm/z(測定値)=951であることを確認した。
[化44]
[化合物6]

【0068】
実施例7
3,6−ジブロモ−9−(4−メトキシフェニル)−9H−カルバゾールと(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸、Pd(PPhおよび2M KCO水溶液をジメチルホルムアミド(DMF)中で混合した後、12時間還流した。結果に得られた反応溶液を冷却させて、水(30ml)と塩水を添加した後、有機層を分離および精製して、中間体を得た。
前記で製造された中間体とシアノ酢酸を混合して、製造した混合物を真空乾燥した後、MeCNおよびピペリジンと混合して、6時間還流した。結果として得られた反応溶液を冷却させた後、有機層を真空下で除去した。結果として得られた固形物をシリカゲルクロマトグラフィー精製して下記化合物7を得た。得られた化合物7に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3521=628に対してm/z(測定値)=627であることを確認した。
[化45]
[化合物7]

【0069】
実施例8:
前記実施例7で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(5−オキソチエノ[3,2−b]チオフェン−2(5H)−イリデン)メチル−ボロン酸を使用することを除いては、実施例7と同様な方法を順次に実施して下記化合物8を得た。前記化合物8に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3921=740に対してm/z(測定値)=739であることを確認した。
[化46]
[化合物8]

【0070】
実施例9
前記実施例7で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(7−オキソ−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5(7H)−イリデン)メチルボロン酸を使用することを除いては、実施例7と同様な方法を順次に実施して下記化合物9を得た。前記化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3925=744に対してm/z(測定値)=743であることを確認した。
[化47]
[化合物9]

【0071】
実施例10
3,7−ジブロモ−10−(4−メトキシフェニル)−10H−フェノチアジンと(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸、Pd(PPhおよび2M KCO水溶液をジメチルホルムアミド(DMF)中で混合した後、12時間還流した。結果として得られた反応溶液を冷却させ、水(30ml)と塩水を添加した後、有機層を分離および精製して中間体を得た。
【0072】
前記で製造された中間体とシアノ酢酸を混合して製造した混合物を真空乾燥した後、MeCNおよびピペリジンと混合して6時間還流した。結果として得られた反応溶液を冷却させた後、有機層を真空下で除去した。結果として得られた固形物をシリカゲルクロマトグラフィー精製して下記化合物10を得た。得られた化合物10に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3521=660に対してm/z(測定値)=659であることを確認した。
[化48]
[化合物10]

【0073】
実施例11
前記実施例10で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(5−オキソチエノ[3,2−b]チオフェン−2(5H)−イリデン)メチル−ボロン酸を使用することを除いては、実施例10と同様な方法を順次に実施して下記化合物2を得た。前記化合物11に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3921=772に対してm/z(測定値)=771であることを確認した。
[化49]
[化合物11]

【0074】
実施例12
前記実施例10で(E)−(5−オキソチオフェン−2(5H)−イリデン)メチルボロン酸の代わりに(E)−(7−オキソ−2,3−ジヒドロチエノ[3,4−b][1,4]ダイオキシン−5(7H)−イリデン)メチルボロン酸を使用することを除いては、実施例10と同様な方法を順次に実施して下記化合物12を得た。前記化合物に対してFD−MS(Field desorption mass spectrum)を行った結果、C3925=776に対してm/z(測定値)=775であることを確認した。
[化50]
[化合物12]

【0075】
染料感応太陽電池の製造
本発明による染料の電流−電圧特性を評価するために、13+10μmTiO透明層を利用して染料感応太陽電池を製造した。
詳しくは、洗浄されたFTO(Pilkington、8Ωsq−1)ガラス基板を40mM TiCl水溶液中に含浸させた。TiOペースト(Solaronix、13nmアナターゼ)をスクリーンプリンティングして、13μm厚さの第1TiO層を製造し、光散乱のために他のペースト(CCIC、HWP−400)で10μm厚さの第2TiO散乱層を製造した。製造されたTiO電極を本発明による染料の溶液(10mMの3a、7a−ジヒドロキシ−5b−コール酸含有エタノール中に前記実施例1−12で製造された化合物1−12をそれぞれ0.3mMに溶解する)に含浸させた後、室温で18時間放置した。FTO基板上にHPtCl溶液(エタノール1mL中にPt2mg含有)をコーティングして、対電極を製造した。その次に、アセトニトリル中に0.6M 3−ヘキシル−1,2−ジメチルイミダゾリウムヨード、0.04M I、0.025M LiI、0.05M グアニジウムチオシアネートおよび0.28M tert−ブチルピリジンを溶解した電解質を電池に注入して、染料感応太陽電池を製造した。染料感応太陽電池の光電池性能は1000Wキセノン光源を用いて測定し、その結果を下記表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
前記表1に示されているように、本発明の新規染料は優れた光電気変換効率を示した。従って、本発明の新規な染料化合物は太陽電池の効率を大きく向上させることができ、高価のカラムを使用しなくても精製が可能で、染料合成単価を画期的に低くすることができる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される有機染料:
[化1]
[化学式1]


[化学式2]


[化学式3]


[化学式4]


前記化学式1−4で、 供与体(Donor group)は下記の化学式D−1乃至D−4のうちの一つであり、
[化2]
[化学式D−1]


[化学式D−2]


[化学式D−3]


[化学式D−4]


上記式で、Ar、Ar、Ar、Arはそれぞれ独立的に置換されたり非置換されたC6−12アリールであり、*は連結部分であり、


乃至Rはそれぞれ独立的に水素、C1−12アルキルまたは置換されたり非置換されたC6−12アリールであり;nは1乃至5の整数である。
【請求項2】
前記染料が下記構造式のうちのいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の有機染料:
[化3−1]

[化3−2]

[化3−3]

[化3−4]

[化3−5]

[化3−6]

[化3−7]

[化3−8]

[化3−9]

[化3−10]

[化3−11]

[化3−12]

[化3−13]

[化3−14]

[化3−15]

【請求項3】
下記の化学式D−5または化学式D−6で示される化合物と請求項1で定義したA、B、AとB、またはBとAの前駆体化合物を順次反応させて得られた化合物の末端にCを結合して製造される化学式1乃至4のうちのいずれか一つで示される染料の製造方法:
[化4]
[化学式D−5]


[化学式D−6]


前記で、 供与体(Donor group)は前記で定義したとおりである。
【請求項4】
請求項1の有機染料を担持させた酸化物半導体微粒子を含むことを特徴とする染料増減光電変換素子。
【請求項5】
請求項4の染料増減光電変換素子を含むことを特徴とする染料感応太陽電池。

【公表番号】特表2013−516510(P2013−516510A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547000(P2012−547000)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009271
【国際公開番号】WO2011/081357
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(502081871)ドンジン セミケム カンパニー リミテッド (62)
【Fターム(参考)】