説明

新規な融合タンパク質及びC型肝炎ワクチンの製造のためのその使用

本発明は、C末端側に、B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質から構成される第1のペプチドを、N末端側に、C型肝炎ウイルス(HCV)単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインから構成される第2のペプチドを少なくとも含んでなる免疫原性融合タンパク質に関する。本発明の主題はまた、前記融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子、ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター、前記融合タンパク質を含んでなるサブウイルス粒子、前記融合タンパク質又は前記ハイブリッド核酸分子又は前記サブウイルス粒子を少なくとも含んでなる免疫原性組成物及び前記融合タンパク質又は前記ハイブリッド核酸分子又は前記サブウイルス粒子の産生のための細胞株である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、新規な融合タンパク質、及び特にC型肝炎の防止及び/又は予防的及び/又は治療的処置或いはC型肝炎及びB型肝炎の防止及び/又は予防的及び/又は治療的処置に意図されるワクチンの製造のための、その使用である。本発明はまた、B型肝炎ウイルス(HBV、B型肝炎ウイルスの略号)のエンベロープタンパク質とC型肝炎ウイルス(HCV、C型肝炎ウイルスの略号)のエンベロープタンパク質との間のキメラサブウイルス(sous-virales)エンベロープ粒子の取得に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、1989年に同定され、その後クローンニングされて配列決定されたが、世界中での広範な分布及び疾患の慢性化への頻繁な進行のために、現在でも依然として公衆衛生上の大きな問題である。2000年に、WHOは、世界人口の3%程度、すなわち170百万人程度がHCVに感染していると推定した。
HCVは、肝硬変及び肝細胞ガンに進行し得る慢性肝炎を引き起こす。インターフェロン及びリバビリンは、HCVにより引き起こされた慢性肝炎の基本的処置を構成するが、これら処置は、十分に有効ではなく、重要な副次作用を有する。この利用可能な処置は高価で比較的毒性のままであり、感染症例の半数でのみ効果的である。
【0003】
ゲノム全体及びウイルスタンパク質は何年も前に公知になっているにもかかわらず、その構造及び形態発生は仮説のままである。C型肝炎に対するワクチンは未だ存在せず、そのようなワクチンの候補に関する検索は、現在非常に活発である[Houghton, M.及びAbrignani, S. (2005). Prospects for a vaccine against the hepatitis C virus. Nature 436 (7053), 961-6]。
予防ワクチンの場合、可能性のある候補のほとんど全てが、一般にタンパク質E1及びE2として知られ、細胞性免疫応答及び中和化体液性応答の両方を引き起こし得る、HCVの2つのエンベロープタンパク質の一方又は両方の使用に基づく。
【0004】
しかし、HCVのタンパク質E1及びE2は、他のウイルスに関してもそうであるかもしれないが、サブウイルス粒子に自己組織化(auto-assemblent)しない。更に、その膜貫通領域の小胞体中への高い貯留率のために、精製には界面活性剤による可溶化が必要である。結果として収量は期待はずれであり、得られる画分の純度は良くも悪くもない[Forns, X., Bukh, J.及びPurcell, R. H. (2002). The challenge of developing a vaccine against hepatitis C virus. J Hepatol 37(5), 684-95]。
膜貫通ドメインを欠失するエンベロープタンパク質を用いることから本質的になる代替手段により、細胞外部へのE1及びE2の分泌を容易にすることが可能になるが、結果として生じる三次元コンホメーションの変化は、野生型タンパク質に対して減少した抗原性能力のために、望ましくないことが判明するかもしれない。
【0005】
HBVウイルスは2つの形態で存在する:感染性ビリオンの形態及びウイルス自体より遥かに高量で感染対象の血液中に見出される過剰のエンベロープ粒子の形態。この現象は、HBVのSタンパク質が自己組織化し、(カプシドタンパク質も核酸も含有しない)サブウイルス粒子(又は過剰のエンベロープ)になる能力に起因する[Moriarty, A. M., Hoyer, B. H., Shih, J. W., Gerin, J. L.及びHamer, D. H. (1981). Expression of the hepatitis B virus surface antigen gene in cell culture by using a simian virus 40 vector. Proc Natl Acad Sci U S A 78(4), 2606-10]。HBVの野生型Sタンパク質は、4つの膜貫通ドメインを含んでなる。野生型Sタンパク質の自己組織化から生じるサブウイルス粒子は、非感染性であるが、非常に免疫原性である:これらは、1970年代半ば以来、B型肝炎に対する良好なワクチン候補としてみなされている。これらは、事実、HBVによる感染の保護免疫応答を誘導するに効果的であることが証明されているワクチンを作製するための土台として役立っている。
【0006】
HBVのサブウイルスエンベロープ粒子をB型肝炎ウイルスに対して外来性であるタンパク質用のベクターとして使用することは、既に、先行研究の目的となっている。よって、「HBV /HCV virus like particle」と題する特許出願US2004/0146529は、一方でHBVウイルスのSタンパク質全体を体系的に含み、他方で、実施例によれば、HBVウイルスのSタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのE1又はE2エンベロープタンパク質の1つのエクトドメインのフラグメントを含んでなるHBV-HCVエンベロープキメラを開示している[Mark Selby, Edward Glazer及びMichael Houghton 「HBV /HCV virus like particle」米国特許2004/01465529]。
しかし、これら構築物が十分に構造化されたサブウイルス粒子の形成を誘導し得ること及びそれらが良質な抗原応答を引き起こし得ることは、証明されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術の欠点に対して、本発明の目的は、非感染性で、十分に構造化され、効率的に分泌されるサブウイルス粒子を形成することができ、E1及び/又はE2のほぼ全てを含有するHCV-HBV融合タンパク質を提供することである。
本発明の目的の1つはまた、C型肝炎及び/又はB型肝炎に対するワクチンを提供することである。
本発明の更なる関心は、現在市販されているB型肝炎に対するワクチン用の既存の商業的生産ラインに容易に適合させることができるという事実から生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、少なくとも以下の2つのペプチドを含んでなる免疫原性融合タンパク質である:
a)C末端側に、以下から構成される第1のペプチド:
− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株のSタンパク質であって、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質のアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列が非感染性サブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、N末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列が非感染性サブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの別の単離株に由来する天然変異体又はN末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
【0009】
及び
b)N末端側に、以下から構成される第2のペプチド:
− C型肝炎ウイルス(HCV)単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、C型肝炎ウイルス単離株のタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E1又はE2の1つのアミノ酸に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
ここで、第2のペプチドは、タンパク質E1、タンパク質E2又はタンパク質E1とタンパク質E2とを含んでなる融合ペプチドから選択される。
【0010】
本発明はまた、N末端膜貫通ドメインを欠失するSタンパク質(Sd)とC型肝炎ウイルス単離株のタンパク質(E1又はE2)の膜貫通ドメイン及びエクトドメインとから構成されるアミノ酸配列と、少なくとも83%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列を有する免疫原性融合タンパク質に関する。
【0011】
「融合タンパク質」は、HBV単離株の、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質(Sd)とHCV単離株のほぼ完全なエンベロープタンパク質E1及び/又はE2(その膜貫通ドメインはHBVのSのN末端で欠失している膜貫通ドメインと置き換わっている)とを少なくとも含んでなる任意のタンパク質を意味する(図3B、3C、4D及び4E)。
【0012】
「免疫原性タンパク質」は、本発明に従う任意のタンパク質、特に任意の融合タンパク質及び本明細書に開示された任意の融合タンパク質の、抗原性を備え、免疫反応又は応答を引き起こし得る任意のフラグメントを意味する。より詳細には、タンパク質は、免疫後に、例えば下記のプロトコールに従って検出される抗-E1、抗-E2及び/又は抗-S体液性応答を引き起こせば、それぞれHCV及び/又はHBVに対して免疫原性であるとみなされる:
− Huzlyら(2008)によるHBVに関するプロトコール[Huzly D, Schenk T, Jilg W, Neumann-Haefelin D. Comparison of nine commercially available assays for quantification of antibody response to hepatitis B virus surface antigen. J Clin Microbiol. 2008 Apr, 46(4):1298-306]、又は
- Hamedら(2008)によるHCVに関するプロトコール[Hamed MR, Tarr AW, McClure CP, Ball JK, Hickling TP, Irving WL. Association of antibodies to hepatitis C virus glycoproteins 1 and 2 (anti-E1E2) with HCV disease. J Viral Hepat. 2008 May, 15(5):339-45]。
【0013】
「サブウイルス粒子を形成する能力」は、任意のタンパク質、特にHBVのSタンパク質、具体的にはN末端膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質、より具体的にはN末端欠失Sタンパク質を含んでなる本発明の融合タンパク質が、フィラメント状又は球状のサブウイルス粒子に、野生型Sタンパク質の存在下で組織化するか又は該当する場合には自己組織化する能力を意味する;サブウイルス粒子を形成する能力は、少なくとも、特に電子顕微鏡分析による観察、特に本明細書の実施例1及び2(§I-5及び§II-7)に記載の試験、特に図7D、7G、11B〜11Dで説明される試験により証明することができる。
【0014】
「非感染性サブウイルス粒子」は、HBVの野生型Sタンパク質(図2B)及び/又はN末端膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質の組織化から生じる任意のフィラメント状又は球状の粒子であって、ウイルスゲノムを欠き、特に大過剰に合成、分泌され、HBV又はHCVの特異的ヌクレオチドフラグメントの不在を証明することができる任意のプロトコール、特に以前に開示されたPCRによる増幅、例えば:
− HCVに関しては、[Halfon P, Bourliere M, Ouzan D, Sene D, Saadoun D, Khiri H, Penaranda G, Martineau A, Oules V, Cacoub P.Occult HCV infection revisited with ultra-sensitive real-time PCR assay. J. Clin. Microbiol. 2008 Apr 30]
− HCVに関しては、[Thibault V, Pichoud C, Mullen C, Rhoads J, Smith JB, Bitbol A, Thamm S, Zoulim F. Characterization of a new sensitive PCR assay for quantification of viral DNA isolated from patients with hepatitis B virus infections. J. Clin. Microbiol. 2007 Dec. 45(12):3948-53]
により分析し得、その結果がネガティブである粒子を意味する。
【0015】
「HCVウイルスの単離株」は、フラビウイルス科のメンバーでヘパシウイルス属に属し、図1に概説されるHCVウイルスの3000アミノ酸以上のポリタンパク質から構成される任意の単離株メンバー[Choo, Q. L., Kuo, G., Weiner, A. J., Overby, L. R., Bradley, D. W.及びHoughton, M (1989). Isolation of a cDNA clone derived from a blood-borne non-A, non-B viral hepatitis genome. Science 244(4902), 359-362;Chooら Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) v88: 2451-2455;Hanら Characterization of the terminal regions of hepatitis C viral RNA: identification of conserved sequences in the 5' untranslated region and poly(A) tails at the 3' end. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:1711-1715];又はInternational Committee for the Taxonomy of Viruses (ICTV)によりHCVに関連していると分類された任意の単離株を意味する。
【0016】
「HBVウイルスの単離株」は、ヘパドナウイルス科のメンバーでオルトヘパドナウイルス属に属する任意の単離株メンバー又はInternational Committee for the Taxonomy of Viruses (ICTV)によりHBVに関連していると分類された任意の単離株を意味する[Schaefer S. Hepatitis B virus taxonomy and hepatitis B virus genotypes. World J Gastroenterol. 2007 Jan 7: 13(1):14-21]。
【0017】
「Sタンパク質」又は「野生型Sタンパク質」(S)は以下を意味する:
− 特に226アミノ酸を含み、4つの膜貫通ドメイン(図2A)、特にHBVadw単離株のエンベロープタンパク質を含んでなるHBVウイルスの単離株のエンベロープタンパク質、又は
− HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体、又は前記Sタンパク質の合成変異体。
【0018】
「組織化」は、野生型Sタンパク質との組合わせによりサブウイルス粒子を形成するタンパク質の能力を意味する。「自己組織化」は、自身によりサブウイルス粒子を形成するタンパク質の能力を意味する。
【0019】
「N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質」又は「N末端欠失Sタンパク質」又は「欠失Sタンパク質」(Sd)は、以下を意味する:
− HBVウイルスの単離株のSタンパク質の1位のアミノ酸から19位のアミノ酸まで、又は1位のアミノ酸から20位のアミノ酸まで、又は1位のアミノ酸から21位のアミノ酸まで、優先的には1位のアミノ酸から22位のアミノ酸までの領域を欠失している、Sタンパク質、又は
− 欠失Sタンパク質の前記領域と、少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するSタンパク質、又は
− HBVウイルスの単離株に由来する「天然変異体」又は前記欠失Sタンパク質の「合成変異体」。
【0020】
「C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質」は、2つのタンパク質E1及びE2の1つのほぼ全体を意味し、これはエクトドメイン及び膜貫通ドメイン(図4B及び4C)から構成され、以下のフラグメント:
* 以下の領域に位置する、HCVウイルス、特にHCVウイルスのHCV-1a単離株のポリタンパク質のペプチドフラグメントペプチドフラグメント:
− タンパク質E1に関して、192位のアミノ酸から383位のアミノ酸まで、又は特に192位のアミノ酸から380位のアミノ酸まで伸びる領域、及び
− タンパク質E2に関して、384位のアミノ酸から746位のアミノ酸まで、又は特に384位のアミノ酸から743位のアミノ酸まで伸びる領域;又は
* 前記領域E1と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* 前記領域E2と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* HCVウイルスの単離株のポリタンパク質の天然変異体又は合成変異体
に対応する。
【0021】
「C型肝炎ウイルスのエンベロープタンパク質のエクトドメイン」は、
* HCVウイルス、特にHCVウイルスのHCV-1a単離株のポリタンパク質に由来し、以下の領域に位置するE1又はE2のペプチドフラグメントの部分:
− タンパク質E1のエクトドメインに関係する、192位のアミノ酸から352位のアミノ酸まで、又は特に192位のアミノ酸から352位のアミノ酸まで伸びる領域、及び
− タンパク質E2のエクトドメインに関係する、384位のアミノ酸から717位のアミノ酸まで、又は特に384位のアミノ酸から717位のアミノ酸まで伸びる領域;又は
* 前記領域E1と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* 前記領域E2と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* HCVウイルスの単離株のポリタンパク質の天然変異体又は合成変異体
を意味する。
【0022】
「C型肝炎ウイルスのエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン」は、
* HCVウイルス、特にHCVウイルスのHCV-1a単離株のポリタンパク質に由来し、以下の領域に位置する、E1又はE2のペプチドフラグメントの部分:
− タンパク質E1の膜貫通ドメインに関して、353位のアミノ酸から383位のアミノ酸まで、有利には353位のアミノ酸から380位のアミノ酸まで伸びる領域、及び
− タンパク質E2の膜貫通ドメインに関して、718位のアミノ酸から746位のアミノ酸まで、有利には718位のアミノ酸から743位のアミノ酸まで伸びる領域;又は
* 前記領域E1と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* 前記領域E2と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するフラグメント、又は
* HCVウイルスの単離株のポリタンパク質の天然変異体又は合成変異体
を意味する。
【0023】
「同一性パーセンテージ」は、ポリペプチド分子の2つの配列の直接比較により決定され、該2つの配列でアミノ酸残基数を決定し、次いでそれを2つのうち長い配列のアミノ酸残基数で除し、得られた結果に100を乗じて決定されるパーセンテージを意味する。
本発明の目的は、本明細書中で開示された具体的配列に関する配列の同一性パーセンテージに関わらず、HCVウイルス及び/又はHBVウイルスの任意の単離株の任意のヌクレオチド及び/又はペプチド配列を含んでなる融合タンパク質に関する。
【0024】
用語「天然変異体」とは、同じ種又は同じ集団の単離株間での、DNA配列、対立遺伝子又はタンパク質配列の何らかの変動性、多形性、多様性をいう。「天然変動性パーセンテージ」は、野生型参照分子に由来し、かつ目的とする生物学的性質、例えば免疫原性及び/又はサブウイルス粒子を形成する能力を備える、2つのポリペプチド又はポリヌクレオチド分子の直接比較により決定される。これは、2つの配列間で同一のアミノ酸残基又は核酸残基の正確な数を決定し、次いでその数を2つのうち短い方の配列のアミノ酸残基数又は核酸残基数で除し、得られる結果に100を乗じて定量化される。
【0025】
2つの配列間の変動性パーセンテージは、具体的には、様々である。なぜなら、それは、特に考慮するウイルス、考慮する遺伝子型、考慮する配列フラグメント−例えばHCVのエクトドメインの領域は膜貫通ドメインの領域より変化に富む−などに依存するからである。よって、HCVのタンパク質E1及びE2の変動性パーセンテージは、同じ遺伝子型の株間で、ヌクレオチドについて88%、アミノ酸について90%である。しかし、それは、異なる遺伝子型の株間では、ヌクレオチドについては55%、アミノ酸については59%に低下する。HBVはDNAウイルスであるので、変動性パーセンテージは、HCVより遥かに変化が小さい[Zhang M, Gaschen B, Blay W, Foley B, Haigwood N, Kuiken C, Korber B. Tracking global patterns of N-linked glycosylation site variation in highly variable viral glycoproteins: HIV, SIV, and HCV envelopes and influenza hemagglutinin. Glycobiology. 2004 Dec. 14(12):1229-46]。
【0026】
本発明の目的は、本明細書中で開示された具体的配列に関する配列の天然及び/又は合成の変動性パーセンテージに関わらず、任意のHCVウイルス及び/又はHBVウイルスの単離株に由来するペプチド及び/又はヌクレオチド配列を備える任意の天然変異体又は天然変異体の任意のフラグメントを含んでなる融合タンパク質及び/又はハイブリッド核酸分子に関する。
【0027】
用語「合成変異体」とは、目的とする生物学的性質、例えば免疫原性及び/又はサブウイルス粒子を形成する能力を保存しているという条件で、参照の野生型分子への付加、欠失又は置換による該参照野生型分子の組換えによって誘導される、本発明に従う任意のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド分子又は本明細書中に開示されたポリペプチド若しくはポリヌクレオチド分子の任意のフラグメントをいう。「合成変動性パーセンテージ」は、誘導された分子と参照野生型分子との直接比較により決定され、2つの配列間で位置及び性質に関して同一のアミノ酸残基又は核酸残基の正確な数を決定し、次いでその数を2つのうち短い方の配列のアミノ酸残基数又は核酸残基数で除し、得られる結果に100を乗じて決定される。
【0028】
本発明の目的は、HCVウイルス及び/又はHBVウイルスの任意の単離株に由来するヌクレオチド及び/又はペプチド配列を備える、任意の合成変異体又は合成変異体の任意のフラグメントを含んでなる融合タンパク質に関する。
本発明の特に有利な観点によれば、融合タンパク質の一部を構成するE1及び/又はE2の膜貫通ドメインは、C末端位に位置する最後の3アミノ酸の少なくとも1つ、特に該最後の3アミノ酸を欠失し、その結果、E1及び/又はE2を欠失している膜貫通ドメインは、野生型E1及び/又はE2の膜貫通ドメインと、E1に関して少なくとも91%、E2に関して少なくとも90%の同一性パーセンテージを有する。
【0029】
C末端位での3アミノ酸のうちの少なくとも1つの欠失、特に最後の3アミノ酸の欠失は、図1中記号

で表され、HCVのポリタンパク質の成熟に必要であるが本発明のキメラ構築物の枠内では望ましくないペプチダーゼの切断部位を不活化するという利点を有する。
【0030】
[1].本発明の目的は、少なくとも以下の2つのペプチド:
a)C末端側の、
− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株のSタンパク質であって、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質のアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、前記N末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの別の単離株に由来する天然変異体又は欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
から構成される第1のペプチド、及び
【0031】
b)N末端側の、
− C型肝炎ウイルス(HCV)単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、C型肝炎ウイルス単離株のタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1若しくはE2のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される第2のペプチド
を含んでなり、第2のペプチドがタンパク質E1、タンパク質E2又はタンパク質E1とタンパク質E2とを含んでなる融合ペプチドから選択される、免疫原性融合タンパク質である。
【0032】
本発明の目的は、特に、少なくとも以下:
− 一方で、本質的にはC末端に位置する3つの膜貫通ドメイン(図2A及び3A)から構成されるHBVの欠失Sタンパク質(Sd)であって、サブウイルス粒子へ組織化する能力及びHBVウイルスに対する免疫原性を保存する欠失Sタンパク質、及び
− 他方で、HCVウイルスに対する免疫原性を保存する、タンパク質E1及びE2の1つの配列のほぼ全体
を含んでなる融合タンパク質であって、(特に図3B又は3Cで表されるものが)野生型Sタンパク質の存在下で、サブウイルス粒子に自己組織化することができ、HBV及び/又はHCVウイルスに対する免疫、特にHBV及びHCVウイルスに対する二重免疫を誘導することができる、融合タンパク質に関する。
【0033】
[1a].有利には、本発明の目的は、前記第2のペプチド(E1又はE2)のN末端に、C型肝炎ウイルス単離株の転移開始ペプチド(PIT)のアミノ酸配列から構成される第3のペプチドを含んでなる免疫原性融合タンパク質である。
【0034】
本発明に従う融合タンパク質又はタンパク質E1若しくはE2の「転移開始ペプチド」(それぞれPIT1及びPIT2)は、
下記ペプチドフラグメントが、本発明の融合タンパク質の一部を構成する場合には、翻訳後に該融合タンパク質を小胞体に向かわせる能力を維持し、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーション及び/又は抗原性特性が野生型Sタンパク質に関して最良に保持される条件で、
* 以下の領域に位置する、HCVウイルス、特にHCV-1a単離株のポリタンパク質のペプチドフラグメント:
− タンパク質E1に関しては、166位のアミノ酸から191位のアミノ酸まで伸びる領域、及び
− タンパク質E2に関しては、366位のアミノ酸から383位のアミノ酸まで伸びる領域、又は
* HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記ペプチドフラグメントの合成変異体、又は
* 第2のペプチドのN末端にグラフトされた任意のペプチドフラグメント
を意味する。
【0035】
[2].別の特に有利な観点によれば、本発明の目的は、N末端側に位置する第2のペプチドが以下:
− エンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、エンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質である。
【0036】
本発明の1つの具体的目的は、その概説図が図3Bに示された、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E1のほぼ全体を含んでなる融合タンパク質E1-Sdである。
【0037】
[3].有利には、本発明の目的は、具体的には、N末端側に位置する第2のペプチドが以下:
− エンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、エンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E2に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質である。
【0038】
本発明の1つの具体的目的は、その概説図が図3Cに示された、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E2のほぼ全体を含んでなる融合タンパク質E2-Sdである。
【0039】
[3b].この観点において、本発明は、より具体的には、以下の3ペプチド:
a)C末端側の、
− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の、N末端の膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質のアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、N末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はN末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される第1のペプチド;
【0040】
b)以下:
− C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、前記エンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸は列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株の天然変異体又はタンパク質E2のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される配列の第2のペプチド、及び
【0041】
c)N末端側の、以下:
− C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、前記エンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E1のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される配列の第3のペプチド
を含んでなり、
第2のペプチドは第1のペプチドと第3のペプチドとの間に位置し、第1、第2及び第3のペプチドは好ましくは連続している、免疫原性融合タンパク質に関する。
【0042】
本発明の1つの具体的目的は、それ自体HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E2のほぼ全体のN末端にグラフトされたE1のエクトドメインを含んでなる融合タンパク質E1-E2-Sdである。
本発明の1つの具体的目的はまた、それ自体HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E1のほぼ全体のN末端にグラフトされたE2のエクトドメインを含んでなる融合タンパク質E2-E1-Sdである。
【0043】
[4].本発明の特に有利な観点によれば、免疫原性融合タンパク質を構成する第1及び第2のペプチドは連続しており、第2のペプチドのC末端は、第1のペプチドのN末端に共有結合している。
有利には、本発明によれば、HCVウイルスのタンパク質E1若しくはE2又は本発明の融合タンパク質のフラグメントPIT1-E1、PIT2-E2、E1-E2若しくはPIT1-E1-E2は、HBVウイルスの欠失Sタンパク質と連続様式で共有結合している。
本発明の別の有利な観点によれば、免疫原性融合タンパク質が野生型Sタンパク質の存在下でサブウイルス粒子に自己組織化する能力並びにHCVウイルス若しくはHBVウイルス又はHCV及びHBVウイルスに対する免疫原性を維持する条件で、結合性ペプチドが、前記融合タンパク質を構成する第1及び第2のペプチドを連結しており、該結合性ペプチドは1アミノ酸又は2アミノ酸又は3アミノ酸又は4アミノ酸又は5アミノ酸から構成される。
【0044】
[5].本発明の別の具体的目的は、C末端位の第1のペプチドが以下:
− HBVウイルス、具体的にはHBVadw単離株のN末端欠失Sタンパク質の23位のアミノ酸から226位のアミノ酸まで伸びる領域に位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号2で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、N末端欠失Sタンパク質の連続アミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はN末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される、免疫原性融合タンパク質である。
【0045】
本発明のより具体的な目的は、欠失Sタンパク質がHBVadw単離株のものであり、配列番号2の配列を有する融合タンパク質E1-Sd又はE2-Sd又はE1-E2-Sdである(表1参照)。
【0046】
[6].本発明の別の具体的目的は、N末端の第2のペプチドが以下:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E1の192位のアミノ酸から380位のアミノ酸まで伸びる領域に位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号4で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、タンパク質E1の前記連続アミノ酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E1の前記連続アミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質である。
【0047】
本発明の別の具体的目的は、タンパク質E1の配列がHCV-1a単離株に由来し、前記領域に具体的に対応する、融合タンパク質、例えば特に配列番号4の融合タンパク質E1-Sd又はE1-E2-Sd、PIT1-E1-E2-Sdである(表1参照)。
【0048】
[7].本発明は、具体的には、第1及び第2のペプチドが連続している免疫原性融合タンパク質に関し、該融合タンパク質は、以下:
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される。
【0049】
本発明の別の目的は、タンパク質E1の配列がHCV-1a単離株に由来し、配列番号8の配列を有する融合タンパク質E1-Sdであり、その配列はE1の配列番号4の前にグラフトされた配列番号2に対応する。
【0050】
[7b].この観点では、本発明の目的は、より具体的には、第2のペプチドのN末端側に位置する第3の転移開始ペプチドを含んでなる免疫原性融合タンパク質であり、該融合タンパク質は以下:
− 配列番号12、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、、配列番号12と少なくとも83%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性の相同性を有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号12に由来する合成変異体のアミノ酸配列
で表される。
【0051】
本発明の別の目的は、タンパク質E1の配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、配列番号12の配列を有する融合タンパク質PIT1-E1-Sdであり、その配列は、それ自体タンパク質E1の転移開始ペプチド(PIT1)のアミノ酸配列(HCVの166位のアミノ酸から191位のアミノ酸まで伸びる領域に含まれる)のN末端にグラフトされているE1の配列番号4のN末端にグラフトされたSdの配列番号2に対応する。
融合タンパク質E1-SdのN末端への転移開始ペプチドの挿入は、翻訳された該融合タンパク質を小胞体に向かわせ、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーション及び/又は抗原性特性が野生型タンパク質に関して実質的に何ら変更を示さないという特別な利点を有する。
【0052】
[8].本発明の別の目的は、N末端位の第2のペプチドが以下:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E2の384位のアミノ酸から743位のアミノ酸までに位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号6で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、前記タンパク質E2の連続アミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E2の前記連続アミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質である。
【0053】
本発明の別の目的は、タンパク質E2の配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、タンパク質E2の配列の前記領域に特異的に対応する、融合タンパク質E2-Sd又はE1-E2-Sdである。
【0054】
[9].本発明は、具体的には、第1及び第2のペプチドが連続する融合タンパク質に関し、該融合タンパク質は
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される。
【0055】
本発明の別の目的は、タンパク質E2の配列がHCV-1a単離株に由来し、配列番号10の配列を有する融合タンパク質E2-Sdであり、その配列は、E2の配列番号6の前にグラフトされたSdの配列番号2に対応する。
【0056】
[9b].この観点において、本発明の目的は、より具体的には、第2のペプチドのN末端側に位置する第3の転移開始ペプチドを含んでなる免疫原性融合タンパク質(PIT2-E2-Sd)であり、該融合タンパク質は、以下:
− 配列番号14、又は
− 配列番号14と少なくとも82%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性の相同性を有するアミノ酸配列、又は
− 配列番号14がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号14に由来する合成変異体のアミノ酸配列
で表される。
【0057】
本発明の別の目的は、タンパク質E2の配列がHCV-1a単離株に由来し、配列番号14の配列を有する融合タンパク質PIT2-E2-Sdであり、この配列は、それ自体タンパク質E2の転移開始ペプチド(PIT2)のアミノ酸配列(HCVの366位のアミノ酸〜383位のアミノ酸から構成される領域に含まれる)のN末端にグラフトされているE2の配列番号6のN末端にグラフトされたSdの配列番号2に対応する。
本発明の別の目的は、融合タンパク質E1-E2-Sd又はPIT1-E1-E2-Sdである。本発明の別の目的は精製形態の融合タンパク質である。
【0058】
本発明はまた、前記融合タンパク質のいずれかをコードするハイブリッド核酸分子に関する。
【0059】
「ハイブリッド核酸分子」は、B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質をコードする少なくとも1つの配列と、C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質のほぼ全体をコードする少なくとも1つの配列とを含んでなる任意の核酸分子、又は該分子に由来し、遺伝子コードの天然の縮重に従って改変された任意の分子を意味する。
【0060】
有利には、本発明は、上記融合タンパク質をコードし、以下の3つの核酸配列を含んでなるハイブリッド核酸分子に関する:
a)− 3'側の、B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質をコードする第1の核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、N末端欠失Sタンパク質の核酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの別の単離株に由来する天然変異体又は前記N末端欠失Sタンパク質の核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列、及び
【0061】
b)− 第1の配列の5'側の、C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質E1又はE2の少なくとも一方の膜貫通ドメイン及びエクトドメインをコードする第2の核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、C型肝炎ウイルス単離株の前記タンパク質E1又はE2の1つをコードする核酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性の相同性を有する核酸配列、
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1若しくはE2の1つの核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列
(ここで、第2の配列は、タンパク質E1、タンパク質E2又はタンパク質E1とタンパク質E2とを含んでなる融合ペプチドをコードする配列から選択される)、及び
【0062】
c)− 第2の配列の5'側の、C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質E1又はE2の転移開始ペプチド(PIT)をコードする第3の核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされる転移開始ペプチドが、翻訳後に融合タンパク質を小胞体に向かわせる能力を維持し、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーションが野生型Sタンパク質に対して最小限の可能な変更を有し及び/又は抗原性特性が野生型Sタンパク質に対して最良に保持される条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は転移開始ペプチド(PIT)をコードするタンパク質の前記核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列、又は
− 翻訳後に融合タンパク質を小胞体に向かわせ、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーションが野生型Sタンパク質に対して最小限の可能な変更を示し及び/又は抗原性特性が野生型Sタンパク質に対して最良に保持することができるペプチドをコードする任意の核酸配列。
【0063】
有利には、本発明の目的は、5'末端から3'末端へ、C型肝炎ウイルスの単離株の転移開始ペプチド(PIT)をコードする核酸配列、HCVウイルスの単離株のタンパク質E1又はE2をコードする核酸配列、HBVウイルスの単離株の欠失Sタンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、前記融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd、又はE1-E2-Sd、PIT1-E1-Sd又はPIT2-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、下記表1に規定される、分子e1-sd又はe2-sd、又はe1-e2-sd、pit1-e1-sd又はpit2-e2-sd)である。
【0064】
前記融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd、又はE1-E2-Sd)のN末端にグラフトされた転移開始ペプチドをコードする核酸配列の挿入は、翻訳された融合タンパク質を小胞体に向かわせ、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーション及び/又は抗原性特性が野生型タンパク質に関して実質的に何ら変更を示さないという特別な利点を有する。
本発明の別の目的は、最初の2つの核酸配列のみを含んでなり、転移開始ペプチドをコードする核酸配列を欠いているハイブリッド核酸分子である。
【0065】
本発明の目的は、特に、本発明の融合タンパク質をコードし、少なくとも以下:
− C末端に位置する3つの膜貫通ドメインから本質的に構成されるHBVの欠失Sタンパク質(Sd)をコードする核酸配列(図2A及び3A)であって、該欠失Sタンパク質がサブウイルス粒子に自己組織化する能力及びHBVウイルスに対する免疫原性を保存する、核酸配列、及び
− タンパク質E1及びE2の1つの配列のほぼ全体をコードし、HCVウイルスに対する免疫原性を保存する核酸配列(図3B及び3C)、
− 翻訳後に融合タンパク質を小胞体に向かわせる能力を保存し、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーションが野生型Sタンパク質に対して最小の可能な変更を有し及び/又は抗原性特性が野生型Sタンパク質に対して最良に保持される、本発明の転移開始ペプチドをコードする核酸配列
を含んでなるハイブリッド核酸分子であり、該ハイブリッド核酸分子によりコードされる融合タンパク質が、サブウイルス粒子を形成する能力及びHBV及び/又はHCVウイルスに対する免疫原性(特に、HBV及びHCVウイルスに対して二重免疫を誘導する性質)を維持するハイブリッド核酸分子に関する。
【0066】
「相同性パーセンテージ」は、ポリヌクレオチド分子の2つの配列の直接比較により決定され、該2つの配列の核酸残基数を決定し、次いでそれを2つのうち長い配列の核酸残基数で除し、得られた結果に100を乗じて決定されるパーセンテージを意味する。
【0067】
本発明の特に有利な観点に従えば、E1及び/又はE2の膜貫通ドメインをコードする核酸配列は、3'位に位置する最後の9つの核酸の少なくとも1つ、優先的には最後の9つの核酸を欠失しており、その結果、E1及び/又はE2の膜貫通ドメインをコードする核酸配列は、以下のものに相当する:
− 以下の領域に位置するHCV単離株のゲノムのヌクレオチドフラグメント:
* E1の膜貫通ドメインをコードする核酸配列に関して、1398位の核酸から1490位の核酸まで、有利には1398位の核酸から1481位の核酸まで伸びる領域、又は
* E2の膜貫通ドメインをコードする核酸配列に関して、2493位の核酸から2579位の核酸まで、有利には2493位の核酸から2570位の核酸まで伸びる領域、又は
− HCVのゲノムの野生型ヌクレオチドフラグメントと、E1に関して少なくとも91%、E2に関して少なくとも90%の相同性パーセンテージを有するHCV単離株のゲノムのヌクレオチドフラグメント、又は
− HCVウイルスの天然変異体及び/又は野生型HCV単離株のゲノムのヌクレオチドフラグメントの合成変異体に由来するヌクレオチドフラグメント。
【0068】
表現「3'位に位置する最後の9つの核酸の少なくとも1つを欠失しているE1及び/又はE2の膜貫通ドメイン」とは、膜貫通ドメインの1つの、3'位に位置する3核酸又は6核酸又は9核酸の欠失をいう。
【0069】
有利には、免疫原性融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子の第1及び第2の核酸配列は連続しており、第1の核酸配列の5'末端が第2の核酸配列の3'末端に共有結合している。
特に有利な観点によれば、ハイブリッド核酸分子は、例えば、以下の融合タンパク質:E1-Sd、E2-Sd、PIT1-E1-Sd又はPIT2-E2-Sd)をそれぞれコードする以下の分子:e1-sd、e2-sd、又はpit1-e1-sd若しくはpit 2-e2-sdに相当する。
【0070】
本発明の別の有利な観点によれば、結合性ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、第1及び第2のヌクレオチド配列を連結し、そのヌクレオチド配列は以下のものから構成される:
− 3核酸若しくは6核酸、若しくは9核酸、若しくは12核酸、若しくは15核酸、又は
− ハイブリッド核酸分子によりコードされる免疫原性融合タンパク質であって、(それ自体は後記ヌクレオチド配列によりコードされる)後記結合性ペプチドを含んでなる免疫原性融合タンパク質が、野生型Sタンパク質の存在下で非感染性サブウイルス粒子に自己組織化する能力を維持し、HCVウイルス及び/又はHBVウイルスに対する免疫原性を保存する条件で、任意の結合性ペプチドをコードする任意のヌクレオチド配列。
【0071】
この観点において、本発明の目的は、具体的には、HBV、特にHBVadw単離株のN末端欠失Sタンパク質をコードする第1の核酸配列が、ハイブリッド核酸分子の3'側に位置し、以下のもの:
− HBVのゲノムの1630位〜2241位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に、
− 配列番号1で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、前記N末端欠失Sタンパク質をコードする核酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記N末端欠失Sタンパク質をコードする核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるハイブリッド核酸分子である。
【0072】
本発明のより具体的目的は、HCVの欠失Sタンパク質をコードする核酸配列がHBVadw単離株のものであり、配列番号1の配列を有する、前記融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd、又はE1-E2-Sd、PIT1-E1-Sd又はPIT2-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd又はe2-sd、又はe1-e2-sd、pit1-e1-sd又はpit2-e2-sd、又はpit1-e1-e2-sd)に関する。
【0073】
またこの点に関して、本発明は、より具体的には、HCV、特にHCV-1a単離株の膜貫通ドメイン及びタンパク質E1のエクトドメインをコードする第2の核酸配列がハイブリッド核酸分子の5'側に位置し、以下のもの:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のゲノムの915位〜1490位、具体的には915位〜1481位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に配列番号3で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、タンパク質E1の前記核酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E1の前記核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるハイブリッド核酸分子に関する。
【0074】
本発明のより具体的な目的は、タンパク質E1をコードする核酸配列がHCV-1a単離株のものであり、配列番号3の配列である、融合タンパク質(特に、E1-Sd又はPIT1-E1-Sd、又はE1-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd又はpit1-e1-sd、又はe1-e2-sd、又はpit1-e1-e2-sd)に関する。
【0075】
本発明は、具体的には、N末端側に位置する転移開始ペプチドを含んでなる融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子に関し、該ハイブリッド核酸分子は、以下:
− 配列番号11、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号11と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号11に由来する合成変異体の核酸配列
で表される。
【0076】
配列番号11の核酸配列は、pit1-e1-sdとも呼ばれ、配列番号12の融合タンパク質PIT1-E1-Sdをコードする(表1を参照)。
【0077】
本発明の別の目的は、以下:
− タンパク質E1をコードする核酸配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、配列番号3の配列であり、
− Sタンパク質をコードする核酸配列がHBV、具体的にはHBVadw単離株に由来し、配列番号1の配列であり、配列番号1は、それ自体がタンパク質E1の転移開始ペプチド(PIT1)をコードする核酸配列(HCVの837位〜914位の核酸から構成される領域に含まれる)の5'側にグラフトされたE1の配列番号3の5'側にグラフトされている、
ハイブリッド核酸分子(特に、配列番号11のpit1-e1-sd)である。
【0078】
この観点において、本発明の目的は、より具体的には、HCV、特にHCV-1a単離株のタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインをコードする第2の核酸配列がハイブリッド核酸分子の5'側に位置し、以下のもの:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のゲノムの1491位〜2579位、具体的には1491位〜2570位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に配列番号5で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、タンパク質E2の前記核酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は配列番号5に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるハイブリッド核酸分子に関する。
【0079】
本発明のより具体的目的は、融合タンパク質(特に、E2-Sd又はPIT2-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e2-sd又はpit2-e2-sd)に関する。
【0080】
本発明は、具体的には、N末端側に位置する転移開始ペプチドを含んでなる本発明の融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子に関し、該ハイブリッド核酸分子は以下:
− 配列番号13、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号13と少なくとも80%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号13に由来する合成変異体に由来する核酸配列
で表される。
【0081】
配列番号13の核酸配列は、pit2-e2-sdとも呼ばれ、配列番号14の融合タンパク質PIT2-E2-Sdをコードする(表1を参照)。
【0082】
本発明の別の目的は、
− タンパク質E2をコードする核酸配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、配列番号5の配列であり
− Sタンパク質をコードする核酸配列がHBV、具体的にはHBVadw単離株に由来し、配列番号1の配列であり、配列番号1は、それ自体がタンパク質E2の転移開始ペプチド(PIT2)をコードする核酸配列(HCVの1437位の核酸〜1490位の核酸から構成される領域に含まれる)の5'側にグラフトされたE2の配列番号5の5'側にグラフトされている、
ハイブリッド核酸分子(特に、配列番号13のpit2-e2-sd)である。
【0083】
本発明の別の目的は、前記融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子及び該ハイブリッド核酸分子に作動可能な様式で連結され該核酸分子の発現に必要な手段を含んでなるベクターである。
本発明の目的に適切な発現ベクターに関し、例えば、プラスミド、レンチウイルス型のウイルスベクター、セムリキ、アデノウイルス、ポックスウイルス、ワクチンウイルス、バキュロウイルス、サルモネラ型の細菌ベクター及びBCGを挙げることができる。
【0084】
タンパク質(用語タンパク質は、アミノ酸の任意の分子、例えばタンパク質、融合タンパク質、タンパク質のフラグメント、ペプチド、ポリタンパク質、ポリペプチドなどに使用される)の「発現に必要な手段」は、該タンパク質を得ることを可能にする任意の手段、例えば特にプロモーター、転写ターミネーター、複製起点、好ましくは選択マーカーを意味する。ペプチドの発現に必要な手段は、目的のペプチドをコードする核酸配列に作動可能な様式で連結される。
【0085】
「作動可能な様式で連結」は、前記発現に必要な成分及び目的のペプチドをコードする遺伝子が期待される様式で機能することを可能にするように近接していることを意味する。例えば、機能的関係が保持される限り、プロモーターと目的の遺伝子との間に補充の塩基が存在してもよい。
【0086】
ペプチドの発現に必要な手段は、同種手段であってもよいし(換言すれば、使用するベクターのゲノムに含まれていてもよく)、代わりに異種であってもよい。後者の場合、手段は、発現させるべき目的のペプチドと共にクローニングされる。
好ましくは、発現ベクターとして使用されるセムリキベクター及びレンチウイルスベクター中で使用されるプロモーターは、同種プロモーター及びサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。
【0087】
異種プロモーターの非限定的な例には、特に、(i)ウイルスプロモーター、例えばSV40(シミアンウイルス40)プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター(TK-HSV-1)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTR、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーター(MLP)、並びに(ii)高等真核生物でペプチドをコードする遺伝子の転写を制御する任意の細胞プロモーター、例えばホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)の構成性遺伝子のプロモーター(Adraら, 1987, Gene, 60: 65-74)、肝臓α1-抗トリプシン及びFIXの特異遺伝子のプロモーター及び平滑筋細胞の特異プロモーターSM22(Moesslerら, 1996, Development, 122: 2415-2425)が含まれる。
【0088】
本発明は、具体的には、レンチウイルスベクターを更に含んでなるベクターに関する。
本発明の目的は、より具体的には、レンチウイルスベクターがベクターpLentiであるベクターである。
ベクターpLentiは、以前に開示されており、特にNaldini, L., Blomer, U., Gallay, P., Ory, D., Mulligan, R., Gage, F. H., Verma, I. M.及びTrono, D. (1996) In vivo gene delivery and stable transduction of nondividing cells by a lentiviral vector. Science 272(5259), 263-7により開示されている。
【0089】
本発明の別の目的は、セムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクターを更に含んでなるベクターである。
この欠損ウイルスベクターは、以前に開示されており、特にSchlesinger, S.及びT. M. Dubensky, Jr. 1999. Alphavirus vectors for gene expression and vaccines. Curr. Opin. Biotechnol. 10:434-439に開示されている。
本発明の目的は、特に、セムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクターがベクターpSFV1であるベクターである。このベクターは、特に、Invitrogenから市販されている。
【0090】
この観点において、本発明の目的は、より具体的には、ハイブリッド核酸分子が以下から構成されるベクターである:
− 配列番号11で表される核酸配列、又は
− 融合タンパク質をコードする後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得る条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列(このベクターは、特に、配列番号15で表される)、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得る融合タンパク質をコードする条件で、配列番号11で表される核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列。
【0091】
本発明の別の目的は、前記融合タンパク質(特に、配列番号12のPIT1-E1-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、配列番号11のpit1-e1-sd)を含んでなり、
− タンパク質E1をコードする核酸配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、配列番号3の配列であり、
− Sタンパク質をコードする核酸配列がHBV、具体的にはHBVadw単離株に由来し、配列番号1の配列であり、配列番号1は、それ自体がタンパク質E1の転移開始ペプチド(PIT1)をコードする核酸配列(HCVの837位〜914位の核酸から構成される領域に含まれる)の5'側にグラフトされたE1の配列番号3の5'側にグラフトされている、
配列番号15の配列のpSFV1に由来するベクターである。
【0092】
この観点において、本発明の目的は、より具体的には、ハイブリッド核酸分子が以下から構成される前記ベクターの1つである:
− 配列番号13で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列がHBV及び/又はHCVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、配列番号13の配列と少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%、更により具体的には少なくとも95%相同性を有する核酸配列(このベクターは特に配列番号16で表される)、
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHBV及び/又はHCVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、配列番号13に由来する合成変異体の核酸配列。
【0093】
本発明の別の目的は、前記融合タンパク質(特に、配列番号14のPIT1-E1-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、配列番号13のpit1-e1-sd)を含んでなり、
− タンパク質E2をコードする核酸配列がHCV、具体的にはHCV-1a単離株に由来し、配列番号5の配列であり、
− Sタンパク質をコードする核酸配列がHBV、具体的にはHBVadw単離株に由来し、配列番号1の配列であり、
− 配列番号1が、それ自体がタンパク質E2の転移開始ペプチド(PIT2)をコードする核酸配列(HCVの1437位〜1490位の核酸から構成される領域に含まれる)の5'側にグラフトされたE2の配列番号5の5'側にグラフトされている、
配列番号16のベクターである。
【0094】
本発明はまた、以下の3つの核酸配列から構成されるハイブリッド核酸分子を含んでなるベクターに関する:
a)− 3'側の、B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の、N末端に位置する膜貫通ドメインを欠失しているSタンパク質(Sd)をコードする第1の核酸配列、又は
− 後記核酸配列がHBVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、N末端欠失Sタンパク質の核酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHBVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は欠失Sタンパク質(Sd)をコードする核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列、及び
【0095】
b)− 第1の核酸配列の5'末端の、C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質E1又はE2の少なくとも1つの膜貫通ドメイン及びエクトドメインをコードする第2の核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性のペプチドをコードする条件で、C型肝炎ウイルス単離株のタンパク質E1又はE2の1つをコードする核酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性のペプチドをコードする条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はエンベロープタンパク質E1若しくはE2をコードする第2の核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列
(ここで、第2の配列は、タンパク質E1をコードする配列、タンパク質E2をコードする配列又はタンパク質E1とタンパク質E2とを含んでなる融合ペプチドをコードする配列から選択される)、及び
【0096】
c)− 第2の核酸配列の5'末端の、C型肝炎ウイルス単離株の転移開始ペプチド(PIT)をコードする第3の核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされる転移開始ペプチドが翻訳後に融合タンパク質を小胞体に向かわせる能力を維持し、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーションが野生型タンパク質に対し最小の可能な変更を有し及び/又は抗原性特性が野生型タンパク質に対して最良に保持される条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は転移開始ペプチド(PIT)をコードするタンパク質の前記核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列、又は
− 翻訳後融合タンパク質を小胞体に向かわせ、その結果、該融合タンパク質が正確にグリコシル化され、三次元コンホメーションが野生型タンパク質に対し最小の可能な変更を有し及び/又は抗原性特性が野生型タンパク質に対し最良に保持されることができるペプチドをコードする任意の核酸配列。
【0097】
有利には、本発明の別の目的は、前記免疫原性融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd又はe1-e2-sd)の第1及び第2の核酸配列が連続し、第1の核酸配列の5'末端が第2の核酸配列の3'末端に共有結合しているベクターである。
【0098】
別の有利な観点によれば、本発明は、結合性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が前記免疫原性融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd)をコードする第1及び第2のヌクレオチド配列を連結する、ベクターであって、
結合性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が、前記免疫原性融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd)の、野生型Sタンパク質の存在下でサブウイルス粒子に自己組織化する能力を変更せず、該融合タンパク質がHCVウイルス及び/又はHBVウイルスに対する免疫原性を保存する条件で、結合性ペプチドをコードするヌクレオチド配列が3核酸又は6核酸又は9核酸又は12核酸又は15核酸から構成される、
ベクター(特に、レンチウイルスベクター、例えばベクターpLenti、又はセムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクター、例えばベクターpSFV1)に関する。
【0099】
有利には、前記ベクターは、HBV、具体的にはB型肝炎ウイルスのHBVadw単離株のN末端欠失Sタンパク質をコードする第1の核酸配列を含んでなり、その配列は:
− HBV、具体的にはHBVadw単離株の1630〜2241位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に配列番号1で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号1と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は配列番号1に由来する合成変異体の核酸配列
である。
【0100】
本発明のより具体的な目的は、前記融合タンパク質(特に、E1-Sd又はE2-Sd、又はE1-E2-Sd、PIT1-E1-Sd又はPIT2-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd又はe2-sd、又はe1-e2-sd、pit1-e1-sd又はpit2-e2-sd)を含んでなるベクターであって、HBVの欠失Sタンパク質をコードする核酸配列がHBVadw単離株のものであり、配列番号1の配列を有する、ベクター(特に、レンチウイルスベクター、例えばベクターpLenti、又はセムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクター、例えばベクターpSFV1)である。
【0101】
本発明の1つの具体的な観点によれば、前記ベクターは、HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインをコードする第2の核酸配列を含んでなり、第2の核酸配列は、分子の5'側に位置し、以下のものから構成される:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のゲノムの915位〜1490位、具体的には915位〜1481位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に配列番号3で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、タンパク質E1をコードする核酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1をコードする核酸に由来する合成変異体の核酸配列。
【0102】
本発明のより具体的な目的は、HCVのタンパク質E1をコードする核酸配列がHCV-1a単離株のものであり、配列番号3の配列を有する、融合タンパク質(特に、E1-Sd、又はE1-E2-Sd、PIT1-E1-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd、又はe1-e2-sd、pit1-e1-sd)を含んでなるベクター(特に、レンチウイルスベクター、例えばベクターpLenti、又はセムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクター、例えばベクターpSFV1)である。
【0103】
本発明の有利な観点によれば、前記ベクターは、HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインをコードする第2の核酸配列を含んでなり、第2の核酸配列は、分子の5'側に位置し、以下のものから構成される:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のゲノムの1491位〜2579位、具体的には1491位〜2570位に位置する連続核酸により画定される核酸配列、特に配列番号5で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、タンパク質E2をコードする核酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E2をコードする核酸に由来する合成変異体の核酸配列。
【0104】
本発明のより具体的な目的は、HCVのタンパク質E2をコードする核酸配列がHCV-1a単離株のものであり、配列番号5の配列を有する、融合タンパク質(特に、E2-Sd、又はE1-E2-Sd、PIT2-E2-Sd)をコードするハイブリッド核酸分子(特に、e2-sd、又はe1-e2-sd、pit2-e2-sd)を含んでなるベクター(特に、レンチウイルスベクター、例えばベクターpLenti、又はセムリキ森林ウイルスのゲノムから誘導された欠損ウイルスベクター、例えばベクターpSFV1)である。
【0105】
本発明の別の目的は、以下のタンパク質を含んでなる非感染性で免疫原性のキメラサブウイルスエンベロープ粒子である:
− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の表面抗原の野生型Sタンパク質から構成されるタンパク質、及び
− 前記免疫原性融合タンパク質の少なくとも1つ。
用語「キメラサブウイルス粒子」は、HBVの野生型Sタンパク質と、野生型Sタンパク質の自己組織化又は野生型Sタンパク質の存在下での融合タンパク質の組織化から生じる免疫原性融合タンパク質とを少なくとも含んでなる任意のサブウイルス粒子を意味する。
【0106】
有利には、免疫原性キメラサブウイルス粒子の免疫原性融合タンパク質は:
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HCVウイルス及び/若しくはHBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
である。
【0107】
本発明の別の目的は、タンパク質E1の配列が特に配列番号4であり、特にC末端に配列番号2の配列の欠失Sタンパク質(Sd)のアミノ酸配列がグラフトされている融合タンパク質、特に配列番号8の融合タンパク質E1-Sd又はE1-E2-Sdを含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0108】
本発明の1つの特別な観点によれば、免疫原性キメラサブウイルス粒子の免疫原性融合タンパク質は、以下のものから構成される:
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0109】
本発明の別の目的は、タンパク質E1の配列が特に配列番号6であり、特にC末端に配列番号2の配列の欠失Sタンパク質(Sd)のアミノ酸配列がグラフトされている融合タンパク質、特に配列番号10の融合タンパク質E1-Sd又はE1-E2-Sdを含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0110】
本発明の有利な観点によれば、免疫原性キメラサブウイルス粒子は、以下の2つの融合タンパク質を含んでなる:
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 配列番号8がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持するタンパク質をコードする条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 配列番号8がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持するタンパク質をコードする条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、及び
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0111】
本発明の別の目的は、前記融合タンパク質の2つ(特に、配列番号8のE1-Sd又はE1-E2-Sd;及び配列番号10のE2-Sd)を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0112】
本発明はまた、免疫原性融合タンパク質がC型肝炎ウイルス単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質(E1)を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子に関し、前記タンパク質が以下のものから構成される:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株の野生型Sタンパク質の192位〜380位のアミノ酸から構成される領域に位置するアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCV単離株の野生型タンパク質E1と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0113】
本発明の別の目的は、タンパク質E1の配列がHCV-1a単離株に由来する、融合タンパク質(特に、E1-Sd、又はE1-E2-Sd又はPIT1-E1-E2-Sd、又はPIT2-E2-E1-Sd)を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0114】
本発明の別の目的は、免疫原性融合タンパク質がC型肝炎ウイルス単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質を含んでなり、該タンパク質が以下のものから選択されるアミノ酸配列から構成される、免疫原性キメラサブウイルス粒子である:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株の野生型Sタンパク質E2の384位〜743位のアミノ酸から構成される領域に位置するアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCV単離株の野生型タンパク質E2の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E2に由来する合成変異体アミノ酸配列。
【0115】
本発明の別の目的は、タンパク質E2の配列がHCV-1a単離株に由来する融合タンパク質(特に、E2-Sd、又はE1-E2-Sd又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0116】
1つの特定の観点によれば、本発明はまた、以下の2つの融合タンパク質を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子に関する:
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株の野生型タンパク質E1の192位〜383位のアミノ酸、具体的には192位〜380位のアミノ酸から構成されるアミノ酸配列を含んでなる融合タンパク質;又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCV単離株の野生型タンパク質E1の配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1に由来する合成変異体のアミノ酸配列、及び
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株の野生型タンパク質E2の384位〜746位のアミノ酸、具体的には384位〜743位のアミノ酸から構成されるアミノ酸配列を含んでなる融合タンパク質、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCV単離株の野生型タンパク質E2の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がC型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E2に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0117】
本発明の別の目的は、前記融合タンパク質の2つ(特に、E1-Sd、又はPIT1-E1-Sd又はE2-Sd又はPIT1-E1-Sd又はE1-E2-Sd又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなる免疫原性キメラサブウイルス粒子である。
【0118】
本発明の別の目的は、活性成分として以下:
− 前記融合タンパク質、
− 前記ハイブリッド核酸分子、
− 前記ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター、
− 前記キメラサブウイルス粒子
から選択される少なくとも1つの化合物及び医薬的に許容され得るビヒクルを含んでなる免疫原性組成物である。
【0119】
本発明の1つの具体的な実施形態によれば、医薬組成物はまた、医薬的に許容され得るビヒクルを含有する。当業者は、通常のパラメータ並びに所望の医薬組成物の構成要素、医薬形態及び投与様式に応じて、その性質及び使用する量を容易に決定できる。
本発明の医薬組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所、局在性、気管内、鼻内、経皮、直腸内、眼内、耳介内投与に適切であり、活性成分は単位投与形態で投与することができる。
【0120】
単位投与形態は、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、散剤、注射剤又は経口懸濁液、経皮パッチ、舌下、バッカル(buccal)、気管内、眼内、鼻内、耳介内投与形態、吸入による、局所投与形態、経皮、皮下、筋肉内又は静脈内、直腸投与形態、移植物であり得る。局所投与用には、クリーム、ゲル、軟膏、ローション又は点眼剤が考えられる。
【0121】
有利には、免疫原性組成物は、以下の3つの化合物の少なくとも1つから選択される活性成分を含んでなる:
a)以下のものから構成される融合タンパク質:
* 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
【0122】
b)以下のものから構成されるハイブリッド核酸分子、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター:
* 配列番号11で表される核酸配列、又は
* 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
* 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11に由来する合成変異体の核酸配列、
【0123】
c)以下のものから構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなるキメラサブウイルス粒子:
* 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がHBV及びHCVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がHBV及びHCVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0124】
本発明の具体的な目的は、以下の3つの化合物の1つに関する:
a)タンパク質E1を含んでなる融合タンパク質(特に、E1-Sd、PIT1-E1-Sd、E1-E2-Sd、PIT1-E1-E2-Sd)であって、その概略図が図3Bに示され、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E1のほぼ全体を含んでなる融合タンパク質、又は
b)タンパク質E1をコードする核酸配列を含んでなるハイブリッド核酸分子(特に、e1-sd、pit1-e1-Sd、e1-e2-sd、pit1-e1-e2-sd)であって、HBVの欠失Sタンパク質をコードする核酸配列の5'側にグラフトされているHCVのタンパク質E1をコードする核酸配列のほぼ全体を含んでなるハイブリッド核酸分子、又は
c)タンパク質E1(特に、E1-Sd、PIT1-E1-Sd、E1-E2-Sd、PIT1-E1-E2-Sd)を含んでなるサブウイルス粒子であって、その概略図が図3Bに示され、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E1のほぼ全体を含んでなるサブウイルス粒子。
【0125】
本発明の1つの特別な観点によれば、免疫原性組成物は、以下の化合物の少なくとも1つから選択される活性成分を含んでなる:
a)以下のものから構成される融合タンパク質:
* 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
【0126】
b)以下のものから構成されるハイブリッド核酸分子、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター:
* 配列番号13で表される核酸配列、又は
* 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13と少なくとも80%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の相同性を有する核酸配列、又は
* 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13に由来する合成変異体の核酸配列、
【0127】
c)以下のものから構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなるキメラサブウイルス粒子:
* 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0128】
本発明の具体的な目的は以下の3つの化合物の1つに関する:
a)タンパク質E2を含んでなる融合タンパク質(特に、E2-Sd、PIT2-E2-Sd、E1-E2-Sd、PIT1-E1-E2-Sd)であって、その概略図が図3Cに示され、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E2のほぼ全体を含んでなる融合タンパク質、又は
b)タンパク質E2をコードする核酸配列を含んでなるハイブリッド核酸分子(特に、e2-sd、pit2-e2-Sd、e1-e2-sd、pit1-e1-e2-sd)であって、HBVの欠失Sタンパク質をコードする核酸配列の5'側にグラフトされているHCVのタンパク質E1をコードする核酸配列のほぼ全体を含んでなるハイブリッド核酸分子、又は
c)タンパク質E1(特に、E1-Sd、PIT-E1-Sd、E1-E2-Sd、PIT-E1-E2-Sd)を含んでなるサブウイルス粒子であって、HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされているHCVのタンパク質E2のほぼ全体を含んでなるサブウイルス粒子。
【0129】
本発明の有利な観点によれば、免疫原性組成物は、活性成分として、以下のものから構成される2つの免疫原性融合タンパク質を少なくとも含んでなるキメラサブウイルス粒子を含んでなる:
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、及び
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、E2-Sdの配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列。
【0130】
本発明の具体的な目的は、2つの融合タンパク質を含んでなるサブウイルス粒子に関し、その一方は、
− HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E1(特に、E1-Sd、PIT1-E1-Sd、E1-E2-Sd、PIT-E1-E2-Sd)及びHCVのタンパク質E2を含んでなり、
他方は、
− HBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E2(特に、E2-Sd、PIT2-E2-Sd、E1-E2-Sd、PIT-E1-E2-Sd)を含んでなる。
【0131】
[27].本発明の特に有利な観点に従えば、免疫原性組成物の活性成分は以下のものを含んでなる混合物から構成される:
− 少なくとも下記の2つの融合タンパク質:
* 一方が
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成され、
* 他方が
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される;
【0132】
− 少なくとも下記の2つのハイブリッド核酸分子:
* 一方が
− 配列番号11で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるか、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクターから構成され;
* 他方が
− 配列番号13で表される核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13の配列と少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%、更により具体的には少なくとも95%相同性を有する核酸配列、又は
− 後記核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13の配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるか、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクターから構成される;
【0133】
− 少なくとも下記の2つのキメラサブウイルス粒子:
* 1つが
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなり、
* 1つが
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 後記アミノ酸配列がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなる。
【0134】
本発明の具体的な目的は、以下の化合物を含んでなる混合物に関する:
a)一方がHCVのタンパク質E1(特に、配列番号8の配列のE1-Sd、又はPIT1-E1-Sd、又はE1-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなり、他方がHBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E2(特に、配列番号10の配列のE2-Sd、又はPIT2-E2-Sd、又はE1-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなる少なくとも2つの融合タンパク質、又は
b)一方がタンパク質E1をコードする核酸配列(特に、配列番号11の配列のpit1-e1-sd、又はe1-sd、又はe1-e2-Sd、又はpit1-e1-e2-sd)を含んでなり、他方がHBVの欠失Sタンパク質をコードする核酸配列の5'側にグラフトされたタンパク質E1をコードする核酸配列(特に、配列番号13の配列のpit2-e2-sd、又はe2-sd、又はe1-e2-Sd、又はpit1-e1-e2-sd)を含んでなる少なくとも2つのハイブリッド核酸分子、又は
c)一方がHCVのタンパク質E1(特に、配列番号8の配列のE1-Sd、又はPIT1-E1-Sd、又はE1-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなり、他方がHBVの欠失Sタンパク質のN末端にグラフトされたHCVのタンパク質E2(特に、配列番号10の配列のE2-Sd、又はPIT2-E2-Sd、又はE1-E2-Sd、又はPIT1-E1-E2-Sd)を含んでなる少なくとも2つのサブウイルス粒子。
【0135】
本発明の別の目的は、C型肝炎の予防的及び/若しくは治療的処置用並びに/又は防止用の医薬の製造のための免疫原性組成物の使用に関する。
本発明はまた、B型肝炎の予防的及び/若しくは治療的処置用並びに/又は防止用の医薬の製造のための免疫原性組成物の使用に関する。
有利には、本発明の目的は、B型肝炎及びC型肝炎の予防的及び/若しくは治療的処置用並びに/又は防止用の医薬の製造のための免疫原性組成物の使用に関する。
【0136】
本発明の別の目的は、上記の非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を発現する細胞株である。
本発明の目的に適切である微生物の例として、酵母、例えば以下の科の酵母:Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Pichia、Hanseluna、Yarowia、Schwaniomyces、Zygosaccharomyces (Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Kluveromyces lactisが好ましい);及び細菌、例えばE. coli及び以下の科の細菌:Lactobacillus、Lactococcus、Salmonella、Streptococcus、Bacillus及びStreptomycesを挙げることができる。
【0137】
真核生物細胞としては、動物、例えば哺乳動物、爬虫類、昆虫の細胞及び等価物を挙げることができる。好ましい真核生物細胞は、チャイニーズハムスター由来細胞(CHO細胞)、サル由来細胞(COS及びVero細胞)、ドワーフ(dwarf)ハムスター腎臓由来細胞(BHK細胞)、ブタ腎臓由来細胞(PK15細胞)及びウサギ腎臓由来細胞(RK13細胞)、ヒト骨肉腫細胞株(143 B細胞)、ヒトHeLa細胞株及び肝細胞腫のヒト細胞株(Hep G2型細胞)並びに昆虫細胞株(例えばSpodoptera frugiperda)である。
【0138】
有利には、本発明の目的は、CHOとして知られるチャイニーズハムスター卵巣細胞株に関する。
これらは、以前に開示されており、特にMichel ML, Pontisso P, Sobczak E, Malpiece Y, Streeck RE, Tiollais P. Synthesis in animal cells of hepatitis B surface antigen particles carrying a receptor for polymerized human serum albumin. Proc Natl Acad Sci U S A. 1984 Dec; 81(24):7708-12により開示されている。
【0139】
本発明はまた酵母の細胞株に関し該酵母は特にSaccharomyces cerevisaeであり得る。
本発明の別の目的は、新生仔ハムスター腎臓細胞株(BHK)の細胞株であり、具体的には新生仔ハムスター腎臓細胞株(BHK-21)である。
後者は、以前に記載されており、特にGoldman RD, Follett EA. Birefringent filamentous organelle in BHK-21 cells and its possible role in cell spreading and motility. Science. 1970 Jul 17; 169(942):286-8により開示されている。
【0140】
1つの特定の観点によれば、本発明はまた、以下の工程を含んでなる、細胞株から非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を製造する方法に関する:
1− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の野生型Sタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるレンチウイルスベクターで細胞株の細胞を形質導入する工程、
2− B型肝炎ウイルスの野生型サブウイルスエンベロープ粒子を発現することができる細胞株を産生するために前記細胞を培養する工程、
3− B型肝炎ウイルスの野生型サブウイルスエンベロープ粒子を最適に分泌するクローンを選択する工程、
4− 前記ベクターで前記クローンを過剰形質導入(over-transduction)する工程、
【0141】
5− 非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を発現することができる細胞株を産生するために前記細胞を培養する工程、
6− 非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を最適様式で分泌することができる細胞を選択する工程、
7− 非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を製造するために前記クローンを培養する工程、及び
8− 採集した培養培地からサブウイルス粒子を精製する工程(遠心分離、グラジエントでの超遠心分離、キメラサブウイルス粒子についてポジティブ画分の採集、透析)。
【0142】
表1は、本発明で開示される核酸及びアミノ酸配列の一覧を提供する。慣例により、核酸配列には小文字を使用し、アミノ酸配列には大文字を使用する。
【表1】

【0143】
簡単で解説的、非制限的な例示として提供され、添付の図面に言及する下記の優先的な実施形態の説明を読めば、本発明の他の特徴および利点がより明確になる。
添付図面において、
図1は、HCVウイルスの3000アミノ酸以上からなるポリタンパク質のフラグメントのトポロジーを図示する。細胞のペプチダーゼ

による切断によって、ポリタンパク質の成熟、特に構造タンパク質(カプシド、エンベロープE1及びE2)への成熟が生じる。数字は、ポリタンパク質の異なる構造タンパク質のドメインを画定するアミノ酸残基の位置を示す。
【0144】
図2A及び2Bは、HBVウイルスの野生型Sタンパク質の膜貫通トポロジーを図示する。
−図2Aは、HBVウイルスの野生型Sタンパク質の226アミノ酸残基を図示する。これは、特に、(灰色の縦長四角で表される)4つの膜貫通ドメインを含んでなり、そのN-及びC-末端部は、REの内腔(lumiere)に向かって配向している。HBVadw単離株の場合、約25kDのこのタンパク質は226残基のアミノ酸を含んでなる。
−図2Bは、野生型Sタンパク質の自己組織化後に得られるサブウイルス粒子を表す。
【0145】
図3A〜3Cは、野生型Sタンパク質(図3B)の存在下で、本発明のキメラサブウイルス粒子に組織化する融合タンパク質E1-Sd(図3B)又はE2-Sd(図3C)の同時発現を表す。
−図3Aは、サブウイルス粒子に自己組織化するHBVの野生型Sタンパク質を表す。
−図3Bは、(黒縦長四角で表される)HCVウイルスのエンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及び(点線で表される)E1のエクトドメインによる、野生型Sタンパク質のN末端に位置する膜貫通ドメインの置換で得られた融合タンパク質E1-Sdを表し;併せて、融合タンパク質E1-Sdの、野生型Sタンパク質の存在下でのサブウイルス粒子S+E1-Sdへの組織化を図示する。
【0146】
本発明の特定の非制限的実施形態によれば、約50kDの融合タンパク質E1-Sdは、タンパク質E1及びSドメインに由来する393残基のアミノ酸を含んでなる。完全なタンパク質E1の残基192〜380が、野生型Sタンパク質の残基23〜226から構成される欠失Sタンパク質のN末端に連結している。
【0147】
−図3Cは、(白縦長四角で表される)HCVウイルスのエンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及び(点線で表される)E2のエクトドメインによる、野生型Sタンパク質のN末端に位置する膜貫通ドメインの置換で得られた融合タンパク質E2-Sdを表し;併せて、融合タンパク質E2-Sdの、野生型Sタンパク質の存在下でのサブウイルス粒子S+E2-Sdへの組織化を図示する。
【0148】
本発明の特定の非制限的実施形態によれば、約85kDの融合タンパク質E2-Sdは、タンパク質E2及びドメインSに由来する564残基のアミノ酸を含んでなる。完全なタンパク質E2の残基384〜743は、野生型Sタンパク質の残基23〜226から構成される欠失Sタンパク質のN末端に連結している。
【0149】
図4A〜4Eは、HBVの野生型エンベロープSタンパク質、HCVのE1及びE2並びに融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdのトポロジーを図示する。
−図4Aは、独特な膜貫通ドメイン(黒縦長四角)及びREの内腔に向かって配向した大きなエクトドメインから構成される、HCVの野生型エンベロープタンパク質E1のトポロジーを表す。HCV1a単離株の場合、約35kDのこのタンパク質は192アミノ酸残基を含んでなる。
【0150】
−図4Bは、独特な膜貫通ドメイン(白縦長四角)及びREの内腔に向かって配向した大きなエクトドメインから構成される、HCVの野生型エンベロープタンパク質E2のトポロジーを表す。HCV1a単離株の場合、約70kDのこのタンパク質は363アミノ酸残基を含んでなる。
−図4Cは、HBVの野生型エンベロープSタンパク質のトポロジーを表す。Sタンパク質は、特に、4つの膜貫通ドメイン(灰色縦長四角)を含んでなる。
【0151】
−図4Dは、以下(5'末端から3'末端へ)から構成されるハイブリッド核酸分子pit1-e1-sdのDNA配列、及び本発明の融合タンパク質E1-Sdの産生のためのその使用を表す:
− HCVウイルスの転移開始ペプチドPIT1をコードする配列、
− HCVウイルスのタンパク質E1のエクトドメイン全体をコードする配列及び3'末端の最後の少なくとも3コドンを欠失したタンパク質E1の膜貫通ドメインをコードする配列、
− HBVウイルスの欠失Sタンパク質をコードする配列。
【0152】
−図4Eは、以下(5'末端から3'末端)から構成されるハイブリッド核酸分子pit2-e2-sdのcDNA配列、及び本発明の融合タンパク質E2-Sdの産生のためのその使用を表す:
− HCVウイルスの転移開始ペプチドPIT2をコードする配列、
− HCVウイルスのタンパク質E2のエクトドメイン全体をコードする配列及び3'末端の最後の少なくとも3コドンを欠失したタンパク質E2の膜貫通ドメインをコードする配列、
− HBVウイルスの欠失Sタンパク質をコードする配列。
【0153】
図5は、本発明の融合タンパク質をコードするcDNAを得るために使用されるプロトコールを図示する。タンパク質E1及びE2をコードする配列は、黒線で表される(配列A)。欠失Sタンパク質をコードする配列は、灰色線で表される(配列B)。BamHI制限部位は、黒色菱形で表される。核酸配列e1-sd A、e1-sd B、e2-sd A及びe2-sd Bの増幅に使用されるフォワード及びリバースプライマーは、表xに列挙される。
【0154】
図6A及び6Bは、セムリキ/BHK-21細胞系における本発明の融合タンパク質E1-Sd又はE2-Sdの一方の一過性産生のための実験プロトコールの概説図を提案する。
−図6Aは、キメラサブウイルスエンベロープ粒子E1-Sdを産生するために、プラスミドpSFV1-E1-Sdに由来するRNAを、BHK-21細胞中にトランスフェクトすることを示す。
−図6Bは、キメラサブウイルスエンベロープ粒子E2-Sdを産生するために、プラスミドpSFV1-E2-Sdに由来するRNAを、BHK-21細胞中にトランスフェクトすることを示す。
【0155】
図6C及び6Dは、プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-E2-Sdに由来するRNAでトランスフェクトした細胞の溶解物について、抗-S抗体(6C)又は抗-E1及び抗-E2抗体(6D)を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。
−図6Cは、融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sd(枠で囲ったバンド)が理論上のサイズに対応するそれぞれ50kD及び85kDのサイズで検出されることを示す。M:分子量マーカー(kD)。
−図6Dは、融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sd(枠で囲ったバンド)が、それぞれ抗-E1及び抗-E2抗体によって、理論上のサイズに対応するそれぞれ50kD及び85kDのサイズで検出されることを示す。M:分子量マーカー(kD)。
【0156】
図7A〜7Bは、セムリキ/BHK-21細胞系におけるHBVの野生型Sタンパク質並びに2つの融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdの同時産生を示す。
説明:M:分子量マーカー(kD);β-gal、E1E2又はE1E2及びSレーンは、対応するSFV RNAによるBHK-21細胞のトランスフェクションに由来するコントロールの細胞溶解物を表す。
【0157】
−図7Aは、実験プロトコールの概説図を提案する。第1のものが野生型Sタンパク質及び融合タンパク質E1-Sdを含んでなり、第2のものが野生型Sタンパク質及び融合タンパク質E2-Sdを含んでなる2つのタイプのキメラサブウイルスエンベロープ粒子S+E1-Sd及びS+E2-Sdの産生のために、プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-E2-Sdに由来するRNAを個別に、プラスミドpSFV1-Sに由来するRNAとBHK-21細胞に同時トランスフェクトする。
【0158】
−図7Bは、ベクターpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、抗-E1抗体を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。結果は、融合タンパク質E1-Sd(枠で囲ったバンド)が理論上のサイズに対応する50kDのサイズで検出されることを示す。
【0159】
−図7Cは、ベクターpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、抗-S抗体を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。結果は、融合タンパク質E1-Sd(枠で囲ったバンド)が理論上のサイズに対応する50kDのサイズで検出されることを示す。
【0160】
−図7Dは、プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、ネガティブ染色(coloration negtive)よる透過型電子顕微鏡写真を示す。バー:100nm。
【0161】
−図7Eは、プラスミドpSFV1-E2-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、抗-E2抗体を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。結果は、融合タンパク質E2-Sd(枠で囲ったバンド)が理論上のサイズに対応する85kDのサイズで検出されることを示す。
【0162】
−図7Fは、プラスミドpSFV1-E2-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、抗-S抗体を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。結果は、キメラタンパク質E2-Sd(枠で囲ったバンド)が理論上のサイズに対応する85kDのサイズで検出されることを示す。
【0163】
−図7Gは、プラスミドpSFV1-E2-Sd及びpSFV1-Sに由来するRNAでトランスフェクトした細胞から精製された細胞内粒子について、ネガティブ染色よる透過型電子顕微鏡写真を示す。バー:100nm。
【0164】
図8は、野生型Sタンパク質及び本発明の融合タンパク質を産生するCHOクローン株の取得プロトコールを表す。この図は、CHO細胞株から、如何にして、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子(hph)及びHBVの野生型Sタンパク質をコードする遺伝子を含有するレンチウイルス(LV)による形質導入によって、CHO-Sと呼ぶ一次細胞クローン及び野生型Sタンパク質の産生体の開発が可能になるかを図示する。次いで、このクローンを、GFP遺伝子(gfp)及び2つの融合タンパク質E1-Sd又はE2-Sdの一方をコードする遺伝子を含有するレンチウイルス(LV)で過剰形質導入した。この第2の形質導入によって、CHO-S/E1-Sd及び-S/E2-Sdと呼ぶ2つの細胞クローンの開発が可能になった。
【0165】
図9は、異なる安定CHOクローンにおける、野生型Sタンパク質及び本発明の融合タンパク質の細胞内産生のウェスタンブロットによる分析を示す。この図は、クローンCHO-S、CHO-S/E1-Sd及びCHO-S/E2-Sdの細胞内タンパク質が、抗-E1、抗-E2及び抗-S抗体で顕色されることを示している。検索対象の融合タンパク質は黒囲みで示されている。M:分子量マーカー(kD);β-gal、E1E2及びSレーン:対応するSFV RNAでのBHK-21細胞のトランスフェクションに由来するコントロールの細胞溶解物。
【0166】
図10は、CsClグラジエントから採集した画分におけるELISAによる野生型Sタンパク質の定量ヒストグラムを表す。横軸は採集した異なる画分を示し、縦軸は各々の290nmでの光学密度を示す。クローンCHO-S、CHO-S/E1-Sd及びCHO-S/E2-Sdの培養上清から、CsCl中での超遠心分離によりキメラサブウイルスS粒子を精製する。グラジエントの頂部から画分を採集し(画分1)、野生型Sタンパク質の量をELISAにより評価した。黒ヒストグラムは、クローンCHO-Sの画分の野生型Sタンパク質の分布を表し、淡灰色ヒストグラムは、クローンCHO-S/E1-Sdの画分中の野生型Sタンパク質の分布を表し、濃灰色ヒストグラムは、クローンCHO-S/E2-Sdの画分中の野生型Sタンパク質の分布を表す。
【0167】
図11Aは、CsClで精製された粒子のタンパク質含量を、抗-E1、抗-E2及び抗-S抗体を用いるウェスタンブロットで分析しことを示す。野生型Sタンパク質は、3つのタイプのサブウイルス粒子中、2つのグリコシル化状態(24及び27kD)で検出される。融合タンパク質E1-Sd又はE2-Sdは、それぞれの粒子中で、理論上のサイズに対応するそれぞれ50及び85kDのサイズで検出される。M:分子量マーカー(kD)。
【0168】
図11Bは、約20nm直径の球状タイプの野生型Sタンパク質の自己組織化から生じるサブウイルス粒子の、クローンCHO-Sの上清からの精製の透過型電子顕微鏡観察によるネガティブ染色での分析を示す。バー:20nm。
図11Cは、野生型Sタンパク質の存在下での融合タンパク質E1-Sdの組織化から生じるサブウイルス粒子の、クローンCHO-S/E1-Sdの上清からの精製の透過型電子顕微鏡観察によるネガティブ染色での分析を示す。球状タイプのこれら粒子は直径約20nmである。バー:20nm。
図11Dは、野生型Sタンパク質の存在下での融合タンパク質E1-Sdの組織化から生じるサブウイルス粒子の、クローンCHO-S/E2-Sdの上清からの精製の透過型電子顕微鏡観察によるネガティブ染色での分析を示す。球状タイプのこれら粒子は直径約20nmである。バー:20nm。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】HCVウイルスの3000アミノ酸以上からなるポリタンパク質のフラグメントのトポロジーを示す。
【図2】HBVウイルスの野生型Sタンパク質の膜貫通トポロジーを示す。
【図3】野生型Sタンパク質(図3B)の存在下で、本発明のキメラサブウイルス粒子に組織化する融合タンパク質E1-Sd(図3B)又はE2-Sd(図3C)の同時発現を表す。
【図4】HBVの野生型エンベロープSタンパク質、HCVのE1及びE2並びに融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdのトポロジーを示す。
【図5】本発明の融合タンパク質をコードするcDNAを得るために使用されるプロトコールを示す。
【図6−1】セムリキ/BHK-21細胞系における本発明の融合タンパク質E1-Sd又はe2-Sdの一方の一過性産生のための実験プロトコールの概説図を示す。
【図6−2】プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-E2-Sdに由来するRNAでトランスフェクトした細胞の溶解物について、抗-S抗体(6C)又は抗-E1及び抗-E2抗体(6D)を用いて顕色させたウェスタンブロットを示す。
【図7−1】実験プロトコールの概説図を示す。
【図7−2】セムリキ/BHK-21細胞系におけるHBVの野生型Sタンパク質並びに2つの融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdの同時産生を示す。
【図8】野生型Sタンパク質及び本発明の融合タンパク質を産生するCHOクローン株の取得プロトコールを表す。
【図9】異なる安定CHOクローンにおける、野生型Sタンパク質及び本発明の融合タンパク質の細胞内産生のウェスタンブロットによる分析を示す。
【図10】CsClグラジエントから採集した画分におけるELISAによる野生型Sタンパク質の定量ヒストグラムを表す。
【図11】精製粒子のタンパク質含量の抗-E1、抗-E2及び抗-S抗体を用いるウェスタンブロットでの分析を示す。
【実施例】
【0170】
非制限的な実施例として、以下に、セムリキ系においてC型肝炎ウイルス(HCV)のサブウイルスエンベロープ粒子を得るための本発明の1つの特定の実施形態を記載する(図4〜7を参照)。
この実施形態は、本発明の免疫原性融合タンパク質、具体的には一方でB型肝炎ウイルス(HBV)の、N末端でその膜貫通ドメインを欠失しているSエンベロープタンパク質(Sd)を含んでなり、他方でHCVのエンベロープタンパク質E1又はE2の1つのほぼ全体を含んでなる融合タンパク質E1-Sd又はE2-Sdの取得に基づく。この実施形態は、野生型Sタンパク質の存在下での欠失Sタンパク質(Sd)の組織化能力により、キメラサブウイルス粒子を取得することが可能になり、これは、特に、レンチウイルスベクターによる前記粒子の産生体たる安定クローンの取得に先立つ、セムリキ森林ウイルスの複製特性に基づくベクター(pSFVベクター)の高レベル発現の結果であることを証明する。
【0171】
実施例I:セムリキ系(pSFV)におけるC型肝炎ウイルスのキメラサブウイルスエンベロープ粒子の取得
I.1)プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-E2-Sdの構築
11033pbの二シストロン構造を有するpSFV1ベクター(Invitrogen)を以下の構築に使用する。このベクターは、インビトロ転写により陽極性の完全RNA(42S(+)と呼ぶRNA)の合成を開始することができるように、第1のシストロンの5'側に挿入されたSP6-RNA-ポリメラーゼのプロモーター配列を備えて提供される。哺乳動物細胞へのトランスフェクション後、インビトロでキャップされたこれら組換えRNAは、SFVのnsP1-4レプリカーゼの存在下で自己複製し、26S(+)と呼ぶmRNAを介して目的のタンパク質の産生に役立つ。
【0172】
野生型相補性DNA(cDNA)又は本発明の融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による数シリーズの増幅を行うことによって得ることができる。プラスミドpSFV1-E1E2(HCVの2つのタンパク質E1及びE2をコードする配列を含有するSFVベクターから本質的になる)から始めて、第1のPCR(PCR Aと呼ぶ)により、膜貫通ドメインを有し、小胞体に向かわせるそれぞれの転移開始ペプチドをコードする配列が先行する、HCVのエンベロープタンパク質E1又はE2をコードする配列を増幅することができた。以前に開示されたプラスミドpHBV1.5 [Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]から始めて、第2のPCR(PCR Bと呼ぶ)により、HBVの欠失Sタンパク質をコードする配列を増幅することができた。本発明に従う融合タンパク質をコードする配列の「HCV」部分を「A」とし、「HBV」部分を「B」とした(図5)。PCR A及びBの産物をゲル上で定量、精製した後、最終PCRに等量部で含ませた。二重HCV-HBVプライマーの使用により、端部でオーバーラップするドメインを有するPCR A及びBの産物を合成することができた。これにより、最終的に、本発明の融合タンパク質をコードするcDNAの完全配列を得ることができた。
【0173】
I.1.1)本発明の融合タンパク質(特に、E1-Sd及びE2-Sd)をコードするcDNA配列の増幅:
PCRによる増幅は、50ngのDNA、15pmolの各プライマー対(Proligo)、200μMの各デオキシリボヌクレオチドdNTP(Invitrogen)及び連続増幅に関係するエラーが最小になるように補正活性を含んでなる10単位のTaq-DNA-ポリメラーゼ(Takara)を含有する50μLの反応媒体中で行う(図5)。「Vector NTI Advance 10」(Invitrogen)及び「Primer premier」(Biosoft International)ソフトウェアにより、増幅したDNAフラグメントの5'末端及び3'末端にBamHI部位を創出するように、A配列の「フォワード」プライマー及びB配列の「リバース」プライマーを規定した。
【0174】
下記の表2「キメラ配列を構成する配列A及びBの遺伝子増幅に使用したオリゴヌクレオチド」は、使用したプライマーの配列を示す。
表2中、HCVに対応する配列は黒字で表し、HBVに対応する配列は下線を付した黒字で表し、BamHI制限部位に対応する配列は下線を付したイタリック体で表し、ATG翻訳開始コドンに対応する配列は太字で表し、ATT翻訳終止コドンに対応する配列は太字で表す。
【0175】
【表2】

【0176】
これら増幅反応は、「iCycler」サーマルサイクラー(Biorad)で行い、95℃で5分間の最初の変性、続いて95℃で1分間の変性、60℃で1分間のハイブリダイゼーション及び69℃で1分間の伸長を含んでなる25サイクルから本質的になる。25サイクルの後に69℃で10分間の最終伸長を行う。PCR A及びBにより増幅したフラグメントを、1%アガロースゲル上で、「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System」システム(Promega)を製造業者の推奨に従って用いて精製する。次いで、PCR A及びBの精製フラグメントを、PCRHYBと呼ばれるPCRにより、プライマーの不在下で10サイクルの間ハイブリダイズさせた後、PCRFINと呼ばれる最終のPCRにより、配列Aの「フォワード」プライマー及び配列Bの「リバース」プライマーの存在下で、25サイクルの間増幅させる。後者の2つのPCRのサイクルのプログラムは、PCR A及びBに使用したものと同様である。得られた本発明のハイブリッド核酸分子の増幅フラグメントを、上記のようにゲル上で精製する。
【0177】
I.1.2)pSFV1ベクターにおけるcDNAのハイブリッド配列のクローニング
精製PCRFIN産物を、pGEM-T(登録商標)ベクター(「pGEM-T Easy Vector System」, Promega)中で、製造業者の推奨に従ってクローニングする。本発明のハイブリッド核酸分子のフラグメントは、酵素BamHI (Biolabs)での制限によりpGEM-T(登録商標)が除去された後、プラスミドpSFV1のBamHI部位にクローニングされる。本発明の融合タンパク質を含んでなる異なるプラスミド(特に、プラスミドpSFV1-E1-Sd及びpSFV1-E2-Sd)を、細菌形質転換により増幅させた後、フェノール/クロロホルム中でのDNAのmaxipreparationにより精製する。挿入物の方向は酵素制限により検証し、全ての構築物を配列決定により検証する。
【0178】
I-2)異なるSFV構築のRNAにより一過性にトランスフェクトされた細胞株の取得
新生仔ハムスター腎臓細胞(BHK-21)の培養手順並びにSFVマトリクスプラスミドのインビトロ転写及び自己複製性組換えRNAのトランスフェクションのプロトコールは、以前に記載されたものと同一であった[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]。HBVの野生型Sタンパク質を発現し、前記論文で以前に開示されているpSFV-S構築物を、コントロールとして使用した。
【0179】
I-3)野生型キメラエンベロープタンパク質の細胞内産生の分析
免疫蛍光共焦点顕微鏡観察及びウェスタンブロットによる目的のタンパク質(特に、S、Sd、E1、E2、E1-Sd、E2-Sdなど)を分析する生化学的手順、透過型電子顕微鏡観察におけるトランスフェクト細胞の超微細構造分析手順並びにHCV-HBVキメラサブウイルスエンベロープ粒子の定量手順(ELISA)/精製手順(スクロースグラジエント後のアフィニティークロマトグラフィー)は、以前に開示されたものである[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]。
【0180】
野生型SHCVのタンパク質E1及びE2並びに本発明の融合タンパク質の検出は、モノクローナルマウス抗-E1抗体(A4、Harry Greenberg博士(University of Stanford, California)による提供)[Dubuisson, J., Hsu, H. H., Cheung, R. C., Greenberg, H. B., Russell, D. G.及びRice, C. M. (1994). Formation and intracellular localization of hepatitis C virus envelope glycoprotein complexes expressed by recombinant vaccinia and Sindbis viruses. J Virol 68(10), 6147-60)]又は抗-E2抗体(H52、Jean Dubuisson博士(Institut Pasteur de Lille)による提供)[Deleersnyder, V., Pillez, A., Wychowski, C., Blight, K., Xu, J., Hahn, Y. S., Rice, C. M.及びDubuisson, J. (1997). Formation of native hepatitis C virus glycoprotein complexes. J Virol 71(1), 697-704]で行う。
【0181】
I-4)培養上清の分析
トランスフェクション後、約107のトランスフェクト細胞の培養上清を、1500gで10分間の遠心分離により明澄化した後、SW41ローター(L70 Ultracentrifuge, Beckman)により35,000rpmで16時間4℃にて超遠心分離する。沈澱物を50μLの溶解緩衝液中に採集し、ウェスタンブロットで分析する。
【0182】
I.5)本発明の融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdの産生
本発明のハイブリッド核酸分子pit1-e1-sd、pit2-e2-sdを含んでなるプラスミドpSFV1によるトランスフェクションの16時間後、BHK-21細胞を溶解した後、モノクローナル抗-E1及び抗-E2抗体を用いるウェスタンブロットによって分析した。BHK-21細胞における一過性の産生後、融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdのサイズは、タンパク質E1-Sdについて約50kDであり、タンパク質E2-Sdについて約85kDである。これら結果は、抗-E1、抗-E2及び抗-S抗体を用いる本発明の融合タンパク質の検出により得られた強い免疫蛍光と相関し、該融合タンパク質が正確に産生され、正確にグリコシル化され、よって所望の膜貫通トポロジーに従ってレイアウトされることを示す(図6A〜6D)。
【0183】
本発明の異なる融合タンパク質の分泌能力を回復させるために、本発明の融合タンパク質の各々に、HBVの野生型形態のSタンパク質をトランスで導入することによって、同時トランスフェクションを行う(図7A)。トランスフェクションの16時間後に、同時トランスフェクト細胞を破砕し、細胞内サブウイルス粒子を、以前に開示されたスクロースグラジエント後のアフィニティークロマトグラフィーにより精製する[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C., and Roingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]。全ての場合で、透過型電子顕微鏡観察及び実施例I.3に記載した抗-S、抗-E1又は抗-E2抗体を用いるウェスタンブロットによりサブウイルス粒子を調べる(図7B〜7G)。
【0184】
透過型電子顕微鏡観察画像は、野生型Sタンパク質と本発明の融合タンパク質の1つとの同時産生実験のすべてで、有意な量の球状及びフィラメント状のサブウイルス粒子の産生が可能であることを示す。ウェスタンブロット分析により、多かれ少なかれフィラメント状サブウイルス粒子が本発明の融合タンパク質に富むことが示される。
【0185】
「セムリキ」系における本発明の実施例1に従う実施は、HCVのタンパク質E1又はE2のほぼ全体(その膜貫通ドメインは、HBVのSタンパク質のN末端に位置する膜ドメインと置き換わっている)を含有する本発明の融合タンパク質が、B型肝炎に対するワクチンの産生に使用されるサブウイルス粒子と同じ性質のキメラサブウイルス粒子に組織化することを示している。このことによって、本発明のキメラサブウイルス粒子の精製及びおそらく(HBVに対するワクチンの産業的適用を再現する)HCVに対するワクチンの産業的適用の開発が容易になる。
【0186】
本発明の実施例1に従う実施はまた、HCVの非短縮化タンパク質E1及び/又はE2を含んでなる融合タンパク質の産生を示す。この特徴は、最適な中和化及び細胞性免疫応答を誘導するために極めて重要であり得る。
しかし、「セムリキ」系では、キメラサブウイルス粒子は、細胞の一過性トランスフェクションにより産生される。事実、これらベクターの高い細胞傷害性のため、キメラサブウイルス粒子の長期の効率的分泌を得ることができない。更に、同時トランスフェクト細胞のホモジネートからのこの粒子の精製は、産業的産生に不適切な比較的厄介な実施を必要とする。
【0187】
非制限的例として、HBVの野生型Sタンパク質及び融合タンパク質E1-Sd又は融合タンパク質E2-Sdを安定な様式で発現するCHOタイプの株からC型肝炎ウイルスのサブウイルスエンベロープ粒子を得るための実施形態が、図8〜11に言及しながら開示されている。CHOのこれら安定なクローンを得ることは、レンチウイルスタイプの組込みベクターの使用によって可能になる。この系の価値の1つは、組換えタンパク質(例えば、本発明の融合タンパク質)の産生が、際立った短期毒性効果(例えば、SFV系で遭遇するようなもの)を有さないことである。
本実施形態の目的の1つは、B型肝炎に対するワクチンの産業的製造に使用されるものに類似する本発明のキメラサブウイルス粒子を産生する細胞系を得ることでもある。
【0188】
実施例II:レンチウイルス系におけるC型肝炎ウイルスのサブウイルスエンベロープ粒子の取得
レンチウイルスベクターの使用により、融合タンパク質E1-Sd及び/又はE2-Sdの1つと結合したHBVの野生型Sタンパク質を安定な様式で産生する細胞クローンの開発が可能になった。
【0189】
II-1)pLENTIプラスミドレンチウイルスベクター
選択マーカーとしてのハイグロマイシン抵抗性タンパク質をコードする選択遺伝子hphを含む9955bpのpLENTIhphプラスミドを下記の構築に使用した[Naldini, L., Blomer, U., Gallay, P., Ory, D., Mulligan, R., Gage, F. H., Verma, I. M., and Trono, D. (1996). In vivo gene delivery and stable transduction of non-dividing cells by a lentiviral vector. Science 272(5259), 263-7]。
【0190】
最初に、野生型Sタンパク質をコードする核酸配列を、以前に記載されるように[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]、酵素BamHI (Biolabs)での制限によりpSFV1-Sから遊離させた後、1%アガロースゲル上で「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System」システム(Promega)を製造業者の推奨に従って用いて精製する。次いで、この精製フラグメントを、pLENTIhphプラスミドの多クローニング部位に含まれるBamHI部位に、T4-DNA-リガーゼ(Biolabs)を製造業者の推奨に従って用いてクローニングした。最後に、pLENTIhph-Sプラスミドを細菌形質転換により増幅した後、「Nucleobond PC 500 Kit」システム(Qiagen)を製造業者の推奨に従って用いるDNAのmaxipreparationによって精製した。その後、挿入物の配向を酵素制限により検証した。
【0191】
同様に、本発明の融合タンパク質(特に、E1-Sd及びE2-Sd)をコードするcDNAの異なる本発明のハイブリッド核酸分子を、pLENTIgfpプラスミドのBamHI部位にクローニングする。次いで、こうして得られたプラスミド(特に、pLENTIgfp-E1-Sd及びE2-Sd)を増幅し、精製し、配列決定する(II-1参照)。
【0192】
II-2)組換えレンチウイルスの産生
レンチウイルスプラスミドのトランスフェクションの24時間前に、10%の補体除去胎仔ウシ血清(ATGC)、100UI/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したDMEM-glutamax培地(Invitrogen)中、75cm2フラスコ(Falcon)当たり3.106細胞の割合で、HEK 293T細胞を播種した。これら細胞を5% CO2下で培養し、トランスフェクションの4時間前に培養培地を交換した。1pmoleの各プラスミドp8.74、pVSV-G及びpLENTI(pLENTIhph-S、pLENTIgfp-E1-Sd、E2-Sd)を、HEK 293T細胞に、「Calcium Phosphate Transfection Kit」システム(Invitrogen)を製造業者の推奨に従って用い、同時にトランスフェクトした。培養培地を、トランスフェクションの24時間後に交換し、トランスフェクションの48時間及び72時間後に採集する。採集した培地を0.45μmで濾過した後、20%スクロースクッション上で、100.000gで4℃にて90分間の超遠心分離により濃縮する。組換えレンチウイルスを含有する沈澱物を500μLのリン酸緩衝液(PBS)中に採り、-80℃で保存する。本発明の組換えレンチウイルスベクター、特にレンチウイルスベクターLVhph-S、LVgfp-E1-Sd、LVgfp-E2-Sdのバッチが作製された。各バッチのレンチウイルスの力価 形質導入単位(TU)は、「Innotest HIV Kit」(Innogenetics)システムを製造業者の推奨に従って用いるp24タンパク質アッセイから決定される。
【0193】
II-3)細胞培養及び形質導入
HCV-HBVキメラサブウイルス粒子の安定で構成的な産生のために使用される細胞株は、CHOと呼ばれるチャイニーズハムスター卵巣株である。この株は、医用目的の組換えタンパク質の産生、特にB型肝炎に対するワクチン「GenHevac B Pasteur(登録商標)」(Sanofi Pasteur MSD)に関して、完全に妥当性が証明されている。これらCHO細胞を、10%補体除去胎仔ウシ血清(ATGC)、100UI/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したDMEM-F12培地(Invitrogen)中5% CO2下で培養する。形質導入の24時間前に、CHO細胞を6-ウェルプレート(Falcon)にウェル当たり105細胞の割合で培養する。次いで、これらを、新たな培地中、4μg/mLのポリブレン(Sigma-Aldrich)の存在下、2.5の感染多重度(すなわち、細胞当たりの2.5の形質導入単位(TU)の割合)で形質導入した後、24時間培養する。翌日、形質導入培地を除去し、本発明の実施により得られる細胞をPBS緩衝液中でリンスした後、更に2日間正常に培養状態で維持する。
【0194】
II-3.1)野生型Sタンパク質の安定CHOクローン産生体の創出
使用したCHO細胞株を、図8にも図示される上記プロトコールに従ってレンチウイルスLVhph-Sを用いて形質導入する。形質導入効率は、以前に開示されたプロトコール[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]に従い、野生型Sタンパク質に対する抗体を用いる免疫蛍光により検証する。形質導入の3日後、細胞をトリプシン処理し、10cm直径の培養ボックス(Falcon)において、1mg/mLのハイグロマイシン(Euromedex)の存在下に再培養し、培養状態で3週間維持する。生じた細胞クローンをクローニングシリンダー(Invitrogen)により回収した後、24-ウェルプレート(Falcon)中で増幅させる。続いて、培養上清中の野生型Sタンパク質をELISAにより定量した後、使用するCHOクローンを選択する[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]。この細胞クローンをCHO-Sとした。
【0195】
II-3.2)HBVウイルスの野生型Sタンパク質並びに本発明の融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdの安定なCHOクローン産生体の創出
選択マーカーとしてGFPタンパク質をコードし、本発明のハイブリッド核酸分子を含んでなる組換えレンチウイルスLVgfp、特にベクターレンチウイルスLVgfp-PIT1-E1-Sd又はLVgfp-PIT2-E2-Sdを用いて、上記§II-3.1に記載のプロトコール(図8)に従り、CHO-S細胞クローンを過剰形質導入する。GFPタンパク質が存在するので、FACScalibur cytometer in flux (Becton-Dickinson)を用いて形質導入効率を検証する。形質導入の3日後、細胞をトリプシン処理し、96-ウェルプレート(Falcon)中ウェル当たり1細胞の割合の限界希釈で再培養し、培養中に3週間維持する。生じるGFP+の細胞クローンを回収した後、大量に増幅させる。こうして得られた細胞クローンを特にCHO-E1-Sd又はCHO-E2-Sdとした。
【0196】
II-4)HBV及びHCVのキメラ及び野生型のエンベロープタンパク質の細胞内産生の分析
免疫蛍光及びウェスタンブロットによる各細胞クローンの目的タンパク質S、E1-Sd又はE2-Sdの生化学分析の手順は、実施例Iに§I-4で既に開示した。
【0197】
II-5)培養上清に由来するキメラサブウイルス粒子の精製及び分析
選択した各クローンについて約200mLの培養上清を、1500gで4℃にて10分間の遠心分離により明澄化する。(NH4)2SO4溶液(pH7.5;45%最終)の添加、次いで10.000gで4℃にて15分間の遠心分離により、タンパク質を沈澱させる。沈殿物を最小容量のTNE緩衝液(10mM Tris/HCl pH7.5/100mM NaCl/1mM EDTA)中に取る。TNE緩衝液中での一連の透析後、約1.22g/cm3の比重が得られるまでCsClを加え、次いで45Tiローター(L70 Ultracentrifuge, Beckman)を用いて2回の連続する等密度超遠心分離を40.000rpmで15℃にて48時間行う。グラジエントの頂部から画分を採集し、野生型Sタンパク質をELISAによって定量する[Patient, R., Hourioux, C., Sizaret, P.Y., Trassard, S., Sureau, C.及びRoingeard, P., (2007) Hepatitis B Virus Subviral Envelope Particle Morphogenesis and Intracellular Trafficking J Virol, 81(8), 3842-51]。ポジティブ画分を合わせ、TNE緩衝液中で4℃にて透析した。
この精製調製物を、最終的にウェスタンブロット及び透過型電子顕微鏡観察により実施例Iに§I-4で既に開示したように分析した。
【0198】
II-6)Sタンパク質及び融合タンパク質の細胞内産生
拡大後、CHO-S、CHO-E1-Sd及びCH0-E2-Sd細胞クローンを、タンパク質Sd、E1又はE2に対する抗体を用いる免疫蛍光により、次いでウェスタンブロットにより分析した(§I-4の実施例I及び図9)。期待されるように、全てのクローンが、2つのグリコシル化状態(p24及びgp27)のHBVの野生型Sタンパク質を強力に産生することができる。同様に、CHO-E1-Sd及びCHO-E2-Sdクローンは、予想されたサイズの本発明の融合タンパク質を細胞質で強力に産生することができる。よって、これら結果は、CHO株で、全ての本発明の融合タンパク質が正確に産生されることを示す。
【0199】
II-7)粒子の精製
CHO-S、CHO-E1-Sd又はCHO-E2-Sdクローンの200mLの培養上清からの第1の精製試験を行った。これら上清(この上清中の野生型Sタンパク質の濃度は、ELISAにより、3クローンについて約100ng/mLと評価された)を、CsClの等密度グラジエントで超遠心分離した。次いで、形成したグラジエントの各画分を野生型Sタンパク質の定量により分析する(図10)。精製した3つのタイプのキメラサブウイルス粒子(S、E1-Sd及びE2-Sd)について、野生型Sタンパク質の濃度ピークは、1.17〜1.18の密度に対応する第9画分で観察された。次いで、各調製物の第8、第9及び第10の画分を再構成して透析した後、野生型タンパク質S、E1又はE2に対する抗体を用いるウェスタンブロット(§I-4の実施例I及び図11Aを参照)及びネガティブ染色で透過型電子顕微鏡観察(図11B〜11D)により分析する。
【0200】
アクリルアミドゲルでの分析のために、各精製について1μgの野生型Sタンパク質に対応する堆積を行う。これにより、本発明の融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdが、それぞれの調製物において、抗-E1又は抗-E2抗体により、予想されたサイズで、相当な量で検出されることを示すことができる。同様に、2つの予想されるグリコシル化形態の野生型Sタンパク質が各調製物において検出される。透過型電子顕微鏡観察におけるネガティブ染色による分析によって、調べた3つの調製物中に約20nm直径の球状サブウイルスエンベロープ粒子が存在することを確証することができる。
【0201】
実施例III:2つの融合タンパク質E1-Sd及びE2-Sdを含んでなるサブウイルスエンベロープ粒子の取得
遺伝子gfpに代えてGaussia princepsの選択遺伝子glucを含んでなる新たなpLENTIglucプラスミドを生成する。このプラスミドは選択マーカーとして分泌されるルシフェラーゼ(GLuc)をコードする。融合タンパク質E1-SdをコードするcDNAフラグメントを、pLENTIglucプラスミドのBamHI部位にクローニングする。こうして得られるpLENTIgluc-E1-Sdプラスミドを増幅させ、精製し、配列決定する(II-1を参照)。
【0202】
III.1.組換えレンチウイルスの産生
レンチウイルスプラスミドのトランスフェクションの24時間前に、10%の補体除去胎仔ウシ血清(ATGC)、100UI/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したDMEM-glutamax培地(Invitrogen)中、75cm2フラスコ(Falcon)当たり3.106細胞の割合で、HEK 293T細胞を培養した。これら細胞を5% CO2下で培養し、トランスフェクションの4時間前に培養培地を交換する。1pmoleの各p8.74、pVSV-G及びpLENTIgluc-E1-Sdプラスミドを、HEK 293T細胞中に、「Calcium Phosphate Transfection Kit」システム(Invitrogen)を製造業者の推奨に従い用いて同時にトランスフェクトする。培養培地を、トランスフェクションの24時間後に交換し、トランスフェクションの48時間及び72時間後に採集する。採集した培地を0.45μmで濾過した後、20%スクロースクッション上で、100.000gで4℃にて90分間の超遠心分離により濃縮する。組換えレンチウイルスを含有する沈澱物を500μLのリン酸緩衝液(PBS)中に取り、-80℃で保存する。こうして組換えレンチウイルスベクターの新たなバッチが作製された:LVgluc-E1-Sd。このバッチのレンチウイルスの力価 形質導入単位(TU)は、「Innotest HIV Kit」(Innogenetics)システムを製造業者の推奨に従って用いるp24タンパク質アッセイから決定される。
【0203】
III.2.HBVウイルスの野生型Sタンパク質、本発明の融合タンパク質E2-Sd及びE1-Sdの安定なCHOクローン産生体の創出
実施例IIについて開示され使用されたCHO細胞の培養及び形質導入の方法が、本実施例に適合される。CHO-S細胞クローンが得られるレンチウイルスLVhph-Sでの第1の形質導入後、CHO-E2-Sd細胞クローンが得られるレンチウイルスLVgfp-E2-Sdでの第2の形質導入を実施例IIについて開示されたプロトコールに従って行う。
【0204】
後者を再度レンチウイルスLVgluc-E1-Sdで上記のプロトコールに従って形質導入する。形質導入の3日後、細胞をトリプシン処理し、96-ウェルプレート(Falcon)中ウェル当たり1細胞の割合の限界希釈で再培養する。この細胞を培養下に3週間維持する。維持の終了後に、生じる細胞クローンの上清を回収する。これら上清中で、ルシフェラーゼの存在を、「Gaussia Luciferase Assay Kit」システム(Biolabs)を製造業者の推奨に従って用いて酵素活性を測定することにより検出する。Centro LB 960 luminometer (Berthold Technologies)を用いて、酵素反応によって射出される光を測定する。GLuc+上清に対応する細胞クローンを回収した後、大量に増幅させる。こうして得られたクローンをCHO-S/E2-Sd/E1-Sdとした。
【0205】
実施例IV:キメラサブウイルス粒子の免疫学的活性のインビボ分析
各タイプの粒子(S+E1-Sd、S+E2-Sd、HBVのSのみ)について5〜10ミリグラムのキメラサブウイルス粒子を、細胞培養物の上清から上記の方法に従って精製する。
4群のマウス及びウサギを免疫化シリーズに使用する。
古典的方法に従って10マイクログラムの免疫原の3回の注射により免疫化を行う。
第1の群は粒子S+E1-Sdで免疫する。
第2の群は粒子S+E2-Sdで免疫する。
第3の群は粒子HBV S単独で免疫する。
第4の群はキメラサブウイルス粒子S+E1-Sd及びキメラサブウイルス粒子S+E2-Sdの混合物で免疫する。
【0206】
これら動物において生じる全体の体液性応答を、ELISA及びウェスタンブロット分析により検出する。抗-S抗体に関しては、市販のELISA(Abbott, Roche)により、HBVに対する中和特性を有することが知られている抗-S抗体の国際単位(UI)数を決定することができる。少なくとも10UIに等しい濃度がHBVに対して保護的であると考えられる(Jilg Wら、Hepatitis B-vaccination: Strategy for booster doses in high risk population groups. Progress in Hepatitis B Immunization. P. Coursagetら編、Colloque Inserm. 1990; 190: 419-427)。抗-E1及び抗-E2抗体に関しては、ウェスタンブロットを使用して、抗-E1及び抗-E2抗体応答が生じるか否かを評価する。その場合には、この分析は、ウイルスを中和化する抗-E1及び抗-E2抗体の存在の分析によって終了する。これら抗体によるHCVの中和の分析は、インビトロで遺伝子型2のHCV株を増殖させることができるJFH-1システム(Wakitaら, Nat Med 2005)において、又は遺伝子型1若しくは3のHCVの構造タンパク質を含んでなるキメラウイルス株を使用することよって行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の2つのペプチド:
a)C末端側の、
− ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)の単離株のSタンパク質であって、N末端に位置する膜貫通ドメインが欠失しているSタンパク質のアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、前記N末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの別の単離株に由来する天然変異体又は前記欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される第1のペプチド、及び
b)N末端側の、
− C型肝炎ウイルス(HCV)単離株の少なくとも1つのエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1若しくはE2のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される第2のペプチド
を含んでなり、前記C型肝炎ウイルス単離株のエンベロープタンパク質がタンパク質E1、タンパク質E2又はタンパク質E1及びタンパク質E2を含んでなる融合ペプチドから選択される、免疫原性融合タンパク質。
【請求項2】
N末端側に位置する第2のペプチドが
− エンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、エンベロープタンパク質E1の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項1に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項3】
N末端側に位置する第2のペプチドが、
− エンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列の全体、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、エンベロープタンパク質E2の膜貫通ドメイン及びエクトドメインのアミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E2に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項1に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項4】
免疫原性融合タンパク質を構成する第1及び第2のペプチドが連続し、第2のペプチドのC末端が第1のペプチドのN末端に共有結合している請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項5】
C末端位の第1のペプチドが
− HBV、具体的にはHBVadw単離株のN末端欠失Sタンパク質の23位から226位までのアミノ酸から構成される領域に位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号2で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、前記N末端欠失Sタンパク質の連続アミノ酸配列と少なくとも91%、特に少なくとも93%、具体的には少なくとも95%、より具体的には少なくとも97%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記N末端欠失Sタンパク質のアミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項6】
N末端位の第2のペプチドが
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E1の192位から380位までのアミノ酸から構成される領域に位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号4で表されるアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、前記タンパク質E1の連続アミノ酸配列と少なくとも75%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は前記タンパク質E1の連続アミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項7】
第1及び第2のペプチドが連続し、融合タンパク質が
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも89%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項5又は6に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項8】
N末端位の第2のペプチドが
− HCV、具体的にはHCV-1a単離株のタンパク質E2の384位のアミノ酸から743位のアミノ酸までに位置する連続アミノ酸により画定されるアミノ酸配列、特に配列番号6で表されるアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、前記タンパク質E2の連続アミノ酸配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− C型肝炎ウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、HCVウイルスの単離株に由来する天然変異体又はタンパク質E2の連続アミノ酸配列に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項1〜5のいずれか1項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項9】
第1及び第2のペプチドが連続し、融合タンパク質が
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも89%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項7又は8に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするハイブリッド核酸分子。
【請求項11】
第1及び第2の核酸配列が連続し、第1の核酸配列の5'末端が第2の核酸配列の3'末端に共有結合している請求項10に記載のハイブリッド核酸分子。
【請求項12】
N末端側に位置する転移開始ペプチドを含んでなる前記融合タンパク質をコードし、
− 配列番号11、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号11と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の同一性の相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号11に由来する合成変異体の核酸配列
で表される請求項10又は11に記載のハイブリッド核酸分子。
【請求項13】
N末端側に位置する転移開始ペプチドを含んでなる前記融合タンパク質をコードし、
− 配列番号13、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号13と少なくとも80%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性の相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVウイルスに対して免疫原性を保存する条件で、配列番号13に由来する合成変異体の核酸配列
で表される請求項10又は11に記載のハイブリッド核酸分子。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載のハイブリッド核酸分子及びその発現に必要な手段を含んでなるベクター。
【請求項15】
レンチウイルスベクターを更に含んでなる請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
レンチウイルスベクターがpLentiベクターである請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
ハイブリッド核酸分子が
− 配列番号11で表される核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得る融合タンパク質をコードする条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得る融合タンパク質をコードする条件で、配列番号11で表される核酸配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成される、特に配列番号15で表される請求項14〜16のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項18】
ハイブリッド核酸分子が
− 配列番号13で表される核酸配列、又は
− 核酸配列がHBV及び/又はHCVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、配列番号13の配列と少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%、更により具体的には少なくとも95%の相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHBV及び/又はHCVウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成し得るペプチドをコードする条件で、配列番号13に由来する合成変異体の核酸配列
から構成される、特に配列番号16で表される請求項14〜16のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項19】
以下のタンパク質:
− B型肝炎ウイルス(HBV)単離株の表面抗原の野生型Sタンパク質から構成されるタンパク質、及び
− 請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの免疫原性融合タンパク質
を含んでなる非感染性で免疫原性のキメラサブウイルスエンベロープ粒子。
【請求項20】
免疫原性融合タンパク質が
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、HCVウイルス及び/若しくはHBVウイルスの単離株に由来する天然変異体又は配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項19に記載の免疫原性キメラサブウイルス粒子。
【請求項21】
免疫原性融合タンパク質が
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される請求項19に記載の免疫原性キメラサブウイルス粒子。
【請求項22】
以下の2つの融合タンパク質:
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− 配列番号8がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持するタンパク質をコードする条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− 配列番号8がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持するタンパク質をコードする条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、及び
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
を含んでなる請求項19に記載の免疫原性キメラサブウイルス粒子。
【請求項23】
活性成分として、
− 請求項1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質、
− 請求項10〜13のいずれか1項に記載のハイブリッド核酸分子、
− 前記ハイブリッド核酸分子を含んでなる請求項14〜18のいずれか1項に記載のベクター、
− 請求項19〜22のいずれか1項に記載のキメラサブウイルス粒子
から選択される少なくとも1つの構成要素
及び医薬的に許容され得るビヒクルを含んでなる免疫原性組成物。
【請求項24】
活性成分が以下の3つの化合物:
a)* 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
から構成される融合タンパク質
b)* 配列番号11で表される核酸配列、又は
* 核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
* 核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11に由来する合成変異体の核酸配列、
から構成されるハイブリッド核酸分子又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター
c)* 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
* HBV及びHCVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* HBV及びHCVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなるキメラサブウイルス粒子
の少なくとも1つから選択される請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
活性成分が以下の化合物:
a)* 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列10、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
から構成される融合タンパク質
b)* 配列番号13で表される核酸配列、又は
* 核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13と少なくとも80%、特に少なくとも85%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の相同性を有する核酸配列、又は
* 核酸配列によりコードされるタンパク質がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるハイブリッド核酸分子又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクター
c)* 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
* B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなるキメラサブウイルス粒子
の少なくとも1つから選択される請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
活性成分が、
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列、及び
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される2つの免疫原性融合タンパク質を少なくとも含んでなるキメラサブウイルス粒子である請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
活性成分が混合物から構成され、該混合物が
− 少なくとも以下の2つの融合タンパク質:
* 一方が
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成され、
* 他方が
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも90%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− B型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成され;
− 少なくとも以下の2つのハイブリッド核酸分子:
* 一方が
− 配列番号11で表される核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列と少なくとも78%、特に少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%の相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号11の配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるか、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクターから構成され、
* 他方が
− 配列番号13で表される核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13の配列と少なくとも80%、具体的には少なくとも85%、より具体的には少なくとも90%、更により具体的には少なくとも95%相同性を有する核酸配列、又は
− 核酸配列によりコードされるタンパク質がHCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号13の配列に由来する合成変異体の核酸配列
から構成されるか、又は該ハイブリッド核酸分子を含んでなるベクターから構成され;
− 少なくとも以下の2つのキメラサブウイルス粒子:
* 一方が
− 配列番号8で表されるアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8と少なくとも88%、特に少なくとも90%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号8に由来する合成変異体のアミノ酸配列
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなり、
* 一方が
− 配列番号10で表されるアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10と少なくとも86%、特に少なくとも88%、具体的には少なくとも92%、より具体的には少なくとも95%の同一性パーセンテージを有するアミノ酸配列、又は
− HCV及び/又はHBVに対して非感染性で免疫原性のサブウイルス粒子を形成する能力を維持する条件で、配列番号10に由来する合成変異体のアミノ酸配列、
から構成される免疫原性融合タンパク質を含んでなる
を含んでなる請求項23に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
C型肝炎の予防的及び/又は治療的処置及び/又は防止のための医薬の製造についての請求項23〜27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項29】
B型肝炎の予防的及び/又は治療的処置及び/又は防止のための医薬の製造についての請求項23〜27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項30】
B型肝炎及びC型肝炎の予防的及び/又は治療的処置及び/又は防止のための医薬の製造についての請求項23〜27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物の使用。
【請求項31】
請求項19〜22のいずれか1項に記載の非感染性で免疫原性のキメラサブウイルス粒子を発現する細胞株。
【請求項32】
CHOと呼ばれるチャイニーズハムスター卵巣株である請求項31に記載の細胞株。
【請求項33】
特にSaccharomyces cerevisaeであることができる酵母である請求項31に記載の細胞株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−524178(P2011−524178A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514100(P2011−514100)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051142
【国際公開番号】WO2009/153518
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331928)ユニヴェルシテ フランソワ ラブレー ド トゥール (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE FRANCOIS RABELAIS DE TOURS
【住所又は居所原語表記】3, rue Tanneurs, BP 4103, F−37041 Tours Cedex 01, France
【Fターム(参考)】