新規な複合タンパク質及びペプチド
【課題】新規な複合タンパク質及びペプチドの提供。
【解決手段】本発明は、ポリマー、特にPEGをタンパク質又はペプチドに複合させる新規な方法であって、該方法はポリヒスチジンタグにより複合が起きるような条件下、ポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドとポリマー複合試薬を反応させることを含む。得られる複合体は新規である。本発明は更に一般式(I)で表される新規な複合体に関する。
【化1】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、又、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zはそれぞれヒスチジン残基によってA及びBを連結するタンパク質又はペプチドを
表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
【解決手段】本発明は、ポリマー、特にPEGをタンパク質又はペプチドに複合させる新規な方法であって、該方法はポリヒスチジンタグにより複合が起きるような条件下、ポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドとポリマー複合試薬を反応させることを含む。得られる複合体は新規である。本発明は更に一般式(I)で表される新規な複合体に関する。
【化1】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、又、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zはそれぞれヒスチジン残基によってA及びBを連結するタンパク質又はペプチドを
表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合タンパク質及びペプチド、並びにそれらの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療効果のある分子、例えばタンパク質は、臨床医学的用途において、効力を発揮するために必要とされる特性を有していない。例えば、多くの天然タンパク質は、良い薬にはならない。その理由は、患者への投与時に、(1)タンパク質が血液又は組織中に存在する多くのエンド−及びエキソ−ペプチターゼによって消化される;(2)多くのタンパク質はある程度免疫原性である;並びに(3)タンパク質は腎臓限外ろ過及びエンドサイトーシスにより迅速に排出され得る等を含んだいくつかの固有の欠点があるからである。医学の分野で有効な治療薬としての有用性を発見するかもしれない、いくつかの分子は組織的に有毒であるか又は最適な生物学的利用態及び薬物動態を欠いている。タンパク質がすぐに血液循環から消えてなくなる場合は、タンパク質は一般的に頻繁に患者に投与されなければならない。頻繁な投与はさらに、毒性の危険性、特に免疫学的に生成された毒性を増加する。
【0003】
水溶性、合成ポリマー、特にポリアルキレングルコースは、例えばタンパク質など、治療効果のある分子を複合させるのに幅広く使用される。これらの治療的な複合体は、循環時間を引き延ばすこと及び除去率を減少させること、組織的毒性を減少させること、並びにいくつかの場合では、さらなる臨床的有用性を発揮することにより、薬物動態を優位に変えることが示されている。ポリエチレングリコール、PEGをタンパク質に共有複合する方法は、“PEG化(PEGylation)”として一般的に知られている。
【0004】
最適な効力にとってタンパク質ごとに複合ポリマー分子の数は各分子に対して同じである用量一貫性のための投与量を確保すること、及び各タンパク質分子において各タンパク質分子は同じアミノ酸残基と特に共有複合することは重要である。タンパク質分子に沿った部分での非特異的複合は、精製するのに難しく且つ費用がかかる複雑な混合物を生み出すために複合生成物の配分及び頻繁に、非複合タンパク質をもたらす。
【0005】
国際公開2005/007197号は、一連の新規な複合試薬を開示する。タンパク質−ポリマー複合体を製造するために、これらは生体分子、例えばタンパク質中、求核基と反応するために使用され得る。新規なチオエーテル複合体をもたらすため、これらの試薬にはタンパク質中、ジスルフィド結合から誘導される両硫黄原子と複合する能力に対する特有の有用性を思い出せる。
【0006】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、タンパク質及びペプチドの精製に対し標準的な技術である。この技術では、多くの場合、“his−タグ(his−tag)”(隣接するヒスチジン残基の短鎖、一般的には5又は6個の残基、天然タンパク質中には存在しない)と呼ばれる、ポリヒスチジンタグは、タンパク質、一般的にはアミノ酸鎖の末端の1つへの合成方法により付着される。得られたタンパク質又はペプチドは“ヒスチジンタグ(histidine tagged)”と言われている。ポリヒスチジンタグは少なくとも2つのヒスチジン残基によって、例えばニッケル及びコバルトなど、金属と強く結合する。IMACでは、ポリヒスチジンタグタンパク質は、ニッケル−又はコバルト−を含有するカラムを通り過ぎる。このポリヒスチジンタグは、カラムと強く結合し、それ故タグタンパク質が混合物から分離することを可能にする。ポリヒスチジンタグは幅広く使用され、広範囲のタンパク質及びペプチド又はそれらから誘導される生成物が、将来、混合物から分離されるようにするために広範囲のタンパク質及びペプ
チドに付着される。
【0007】
普通、ポリヒスチジンタグタンパク質より強くないが、いくつかのタグなしタンパク質は、互いにごく接近してヒスチジン残基を含有し、またそのようなタンパク質もまたニッケル及びコバルトIMACカラムと結合してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2005/007197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
我々は、ポリマー、特にPEGをタンパク質及びペプチドに複合する改良された方法を見出した。この方法では、ポリマーはポリヒスチジンタグに複合される。驚くべきことに、ヒスチジン残基と結合可能な試薬は、天然タンパク質中に存在するたった一つのヒスチジン残基よりはむしろ、選択的にポリヒスチジンタグで反応すると考えられている。得られた複合体は新規である。ポリヒスチジンタグを含有するタンパク質及びペプチド、並びに新規な複合体を製造するために天然タンパク質中に類似したヒスチジン構造を含有するタンパク質及びペプチドに対し、国際公開2005/007197号に記載の試薬は、極めて効果的かつ安定した複合試薬として作用する。
【0010】
したがって、本発明はポリマーをポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドに複合する方法を提供し、該方法は前記ポリヒスチジンタグによって、複合が起きるような条件下、ポリマー複合試薬を前記タンパク質又はペプチドと反応させることを含む。本発明はさらに、ポリマーをタンパク質又はペプチドに複合する方法を提供し、該方法は前記タンパク質又はペプチドにヒスチジンタグを導入し、そしてその後に前記ポリヒスチジンタグによって、複合が起きるような条件下、前記タンパク質又はペプチドをポリマー複合試薬と反応させることを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリマー複合体は新規であり、それ故に本発明はタンパク質又はペプチドに複合させたポリマーを含む化合物を提供し、前記複合はヒスチジンタグ自体による。そのような化合物は、一般式によって表される:
【化1】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Q’は連結基を表し、
(his)uはu個のヒスチジン単位を含有するポリヒスチジンタグを表し、そして
Zは前記ヒスチジンタグを介して結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
【0012】
ヒスチジンタグと結合可能なあらゆるポリマー複合試薬は、本発明の方法で使用されてもよい。そのような試薬は、ポリヒスチジンタグと結合するのと同様に、国際公開2005/007197号に記載の二官能性試薬を含み、天然タンパク質又はペプチド(例えば、ヒスチジンタグには存在しない)中に存在する2つのヒスチジン残基と結合可能であることもまた見出され、天然タンパク質又はペプチドにおいては、そのような残基は両ヒスチジン残基に官能性試薬の複合を可能にするために天然構造中で十分に互いのすぐ近くに配置される。
【0013】
したがって、本発明はさらに、一般式
【化2】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zは各ヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチドを表
し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物を提供する。
【0014】
本発明に従う新規化合物のさらなる群は、一般式
【化3】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Qは連結基を表し、
Wは電子求引性基又は電子求引性部位の還元により調整される部位を表し、
vは0又は1乃至4の整数を表し、
v’は1乃至8の整数を表し、そして
Zはポリヒスチジンタグによって結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
によって表される。
【0015】
これらの化合物では、v’は好ましくは1乃至6の整数、好ましくは1乃至4、例えば1を表す。好ましくは、vは0である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は特定の試薬を使用した複合体の製法を表す図である。
【図2】図2は図1の方法によって調製される別の複合体を表す図である。
【図3】図3は本発明に従う新規な複合体を表す図である。
【図4】図4は実施例1の結果を示す図である。
【図5】図5は実施例1におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図6】図6は実施例2の結果を示す図である。
【図7】図7は実施例2におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図8】図8は実施例3の結果を示す図である。
【図9】図9は実施例3におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図10】図10は実施例3における比較反応の結果を示す図である。
【図11】図11は実施例4の結果を示す図である。
【図12】図12は実施例4におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図13】図13は実施例5の結果を示す図である。
【図14】図14は実施例6の結果を示す図である。
【図15】図15は実施例7の結果を示す図である。
【図16】図16は実施例8の結果を示す図である。
【図17】図17は実施例9の結果を示す図である。
【図18】図18は実施例10の結果を示す図である。
【図19】図19は実施例11の結果を示す図である。
【図20】図20は実施例13の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法で使用される他の試薬は、アシル化又はアルキル化可能な試薬を含む。そのような試薬は単又は多官能性であってもよく、また例えばPEG炭酸塩類(例を挙げると、PEG−p−ニトロフェニル炭酸塩、PEG−スクシンイミジル炭酸塩、PEG−ベンゾトリアゾリル炭酸塩)、PEGカルボン酸塩類及びPEGエステル類(例を挙げると、PEG−スクシンイミジルエステル及びPEG−p−ニトロフェニルエステル並びにそれらの誘導体)、PEGアルデヒド、PEG−トレシル基又はトシル基、PEG−ジクロロトリアジン又は−クロロトリアジン、PEGビニルスルホン、PEGマレイミド及びPEG−ヨードアセトアミド、そしてPEG以外のポリマーを含有する対応する試薬を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の新規な複合体において、Zはタンパク質又はペプチドから誘導され得る。本明細書中、用語“タンパク質”は便宜上使用され、そして文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“タンパク質”への言及は“タンパク質又はペプチド”への言及を意味していると理解すべきである。
【0019】
上記式Iaで表される新規な複合体部分を形成するタンパク質は、少なくとも2個のヒスチジン残基を含有しなければならない。これら2個の残基は天然タンパク質中に存在していてもよいが、もしそうだとしたら、2個の残基は群A及びBを複合可能にするために天然構造中で十分にすぐ近くに配置されなければならない。2個のヒスチジン残基がタンパク質鎖中でお互いに隣接している場合、又はタンパク質の折り畳みの結果として、それらはすぐ近くにある可能性がある場合に、これは起きる可能性がある。そのようなタンパク質は一般的にIMACカラムと結合する。例えば、原核生物大腸菌はヨダ(YODA)として知られている1つのタンパク質を有し、IMACカラムとの結合は起こり得る。しかしながら、好ましくは、2個のヒスチジン残基はポリヒスチジンタグの部分を形成し、例えば天然タンパク質又はペプチドには見られない、ヒスチジン鎖、該ポリヒスチジンタグは適当な手段、例えば化学的手段、ポリヒスチジンタグ又はポリヒスチジンタグを含有する部位と共に翻訳後の標識化、又は標的タンパク質との融合においてヒスチジン配列を挿入することによるタンパク質工学、例えば、所望の長さのポリヒスチジンタグをコードする短コード配列を有する遺伝子の使用、によってタンパク質又はペプチドに付着される。
【0020】
ポリヒスチジンタグはどんな所望の数のヒスチジン残基、例えば約12個までの残基を含有していてもよい。それらは少なくとも2個の残基を含有しなければならず、好ましくは少なくとも3個の残基、特に4乃至10個、特に5乃至8個、例えば5又は6個の残基
を含有する。それらはヒスチジン残基のみを含有してもよく、またはヒスチジン残基に加えて、1個以上のスペーサー残基又は配列も含んでいても良い。
【0021】
本発明の複合体中に存在する結合の正確な性質は、現在のところ正確に知られていない。1つの考えられる複合体の製法は、特定の試薬(各SO2Rは脱離基を表し、そしてR
は好ましくは、アルキル基、アリール基、アルカリル基又はアラルキル基、特にトリル基を表す。)を使用して説明され、添付図面の図1に示される。図2(a)及び2(b)は図1の方法によって調製される別の複合体を示す。図1及び2において結合は隣接したヒスチジン残基にあるが、もし間隔が複合体の形成を妨げるほど大きくない場合は、間隙を介したヒスチジン残基への結合は不可能ではないと考えられる。
【0022】
ポリヒスチジンタグを保持するのに加えて、タンパク質は、必要に応じて、誘導体化又は官能化されてもよい。特に、複合前に、感応性基表面を保護するため、天然タンパク質を様々な保護基と反応させてもよく、または本発明の方法かそれとも代わりの方法を使用して、1個以上のポリマー又は他の分子を前もって複合させてもよい。さらに、本発明の複合体は本発明に従う複合後、タンパク質に複合される1個以上の追加のポリマー(タンパク質を含む)又は他の分子を有していてもよい。本発明に従う新規な複合体、タンパク質は1又は2個の追加のポリマーに複合される、は添付図面のそれぞれ図3(a)、3(b)及び3(c)に示される。これらの図では、連結基と一緒にポリマーはA、B及びCとして概略的に示される、一方、x、y及びzはヒスチジン残基によってタンパク質に結合して複合されたポリマーA、B及びCの総数を表す。もちろん、ヒスチジン以外の残基によって1個以上のポリマーの複合もまた可能である。1個以上の追加のポリマー(タンパク質を含む)に複合されるのと同様に、タンパク質は、例えば、小分子、例えば治療学又は診断法、シアル酸、糖類、及び澱粉から選ばれる1個以上の分子と複合されてもよい。図3におけるB及びCは、それ故、そのような分子を表してもよい。さらに、図3はお互いに近傍に配置されたA、B及びCを示すが、これはただ単に概略に過ぎず、そしてそれらはお互いに離れて配置されていてもよい。
【0023】
タンパク質はIMAC法により前もって精製されるか、それともタンパク質自体又はタンパク質から誘導された生成物の精製を補助しなければならないので、商業的に提供されている多くのタンパク質は、ヒスチジンタグを含む。タンパク質をポリマーに複合することが望ましいならば、ポリヒスチジンタグへの複合は、以前は想像がつかなかった、とても便利な手段を提供する。複合された生成物、具体的にはPEG化生成物は、高度の一貫性で得られうる。2つのヒスチジン残基に複合をもたらす、国際公開2005/007197号に記載された複合試薬の使用は、一般的に高収率で得られる、特に安定的かつ選択的な複合体を導きながら、結果として大員環をもたらす。
【0024】
ポリヒスチジンタグはタンパク質表面、通常タンパク質鎖の一方の端に一般的に付着し、タンパク質の所望の部位に位置づけられ得るので、タンパク質の生物活性は、ポリヒスチジンタグの導入法の後に、及びポリマーへのポリヒスチジンタグでの部位特異的複合の次の処理後にも大いに維持される。これら理由に対し、本発明は扱いにくい従来の複合方法ということを前もって証明したタンパク質の複合体を形成するために使用され得る。
【0025】
ポリヒスチジンタグは十分な数のヒスチジン残基を含有するという条件で、本発明の複合体はIMACを使用して精製され得る。これが効率的であるように、ポリヒスチジンタグにおいて、少なくとも2個、好ましくはより多くのヒスチジン残基が非複合体のままであり、IMACカラム中ニッケルとの結合に利用可能である必要がある。遊離ヒスチジン残基ポスト複合の数の低下は、非複合ペプチド又はタンパク質と複合誘導体の間のIMACカラムとの結合において選択性を可能にする。多数の複合が同じ生体分子で起きる場合、IMACは多数複合された誘導体の分離を可能にする。
【0026】
本発明(例えばX又はX’)の複合体におけるポリマーは、例えばポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、例えばポリアクリロイルモルホリン、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド、例えば2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、又はHPMAのような、ホスファチジルコリンペンダント基と共に、ポリカルボキシメタクリルアミド又はポリアクリレート又はポリメタクリレートでもよい。さらに、ポリマーは酵素又は加水分解を受けやすくてもよい。そのようなポリマーは、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカルボネート、ポリ(イミノカルボネート)、及びポリ(アミノ酸)のような、ポリアミドを含む。前記ポリマーはホモポリマー、ランダムコポリマー又は例えばブロックポリマーのような構造的に定義されたコポリマーでもよい。例えば、それは2つ以上のアルキレンオキシド、又はポリ(アルキレンオキシド)から及びポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)のいずれかから誘導されるブロックコポリマーでよい。使用され得る多官能性ポリマーはジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸の共重合体を含む。
【0027】
天然高分子、例えばキチン、デキストラン、デキストリン、キトサン、澱粉、セルロース、グリコーゲン、ポリ(シアル酸(sialylic acid))のような多糖類及びそれらの誘導体なども使用され得る。タンパク質はポリマーとして使用され得る。これは1つのタンパク質、例えば抗体又は抗体フラグメントを、第2のタンパク質、例えば酵素又は別の活性タンパク質への複合を許す。また、触媒配列を含有するペプチド、例えばグリコシルトランスフェラーゼに対するO−グリカン受容体部位が使用される場合、基質又はその後の酵素反応に対する標的の取り込みを許す。例えばポリグルタミン酸のようなポリマーもまた使用してもよく、例えばサッカリド又はアミノ酸のような天然モノマー及び例えばエチレンオキサイド又はメタクリル酸のような合成モノマーから誘導される水素化物ポリマーのように使用してもよい。
【0028】
ポリマーがポリアルキレングリコールの場合は、これは好ましくはC2及び/又はC3単位を含有し、特にポリエチレングリコールである。ポリマー、特にポリエチレングリコールは、単一線状鎖を含有してもよく、または分岐した形態を有していてもよく、そして小なり大なりの何れか多くの鎖からなり得る。いわゆる、プルロニックはPEGブロックコポリマーの重要な類である。これらはエチレンオキサイド及びポリプロピレンオキサイドブロックから誘導される。置換ポリアルキレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコールは使用され得る。本発明の好ましい実施例では、単一鎖のポリエチレングリ
コールは適当な基、例えばアルコキシ基、具体的にはメトキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基又はヒドロキシ基により開始され、そして以下に述べるように鎖の反対側の端で連結基Q又はQ’に結合される。
【0029】
ポリマーは所望の方法で、随意に誘導体化又は官能化されてもよい。反応基はポリマー末端、又は末端基、ペンダントリンカーに設けられたポリマー鎖に沿って、連結されても良い。その場合、ポリマーは、例えばポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は無水マレイン酸コポリマーである。1個以上の生体分子を含有する多量複合体は、相乗的かつ付加的な利益をもたらすことができる。必要なら、従来の方法を使用して、ポリマーは担体と共役されてもよい。
【0030】
ポリマーの最適な分子量は、当然対象とする用途によって決まる。好ましくは、数平均分子量は250g/mol、例えば、500g/mol、から約75,000g/molの範囲内である。一般式Iで表される化合物が血液循環に残り、組織に浸透することを目的としている場合、例えば悪性腫瘍、感染症又は自己免疫疾患に、または外傷に起因する
炎症治療用のために、2000乃至30,000g/molの範囲でより低分子量のモノマーを使用するのが有利である。有用性のために、一般式Iで表される化合物が血液循環中にある場合には、より高分子量のモノマー、例えば20,000乃至75,000g/molの範囲内で使用するのが有利である。
【0031】
複合体が目的用途のために溶剤に溶解するように、使用されるポリマーは選択されるべきである。生物学的応用、特に診断的適用及び哺乳類への臨床治療的な投与に対する治療への応用のために、複合体は水媒体に可溶となる。酵素のような多くのタンパク質は、例えば化学反応を触媒するために、工業での有用性がある。そのような用途で使用するための複合体に対し、複合体が水及び有機媒体のいずれか又は両方に可溶である必要があるかもしれない。ポリマーは当然、タンパク質の対象とする機能をひどく低下させるべきではない。
【0032】
好ましくはポリマーは合成ポリマーであり、そして好ましくは水溶性ポリマーである。水溶性ポリエチレングリコールの使用は特に多くの用途にとって好ましい。
【0033】
連結基によってポリマーはポリヒスチジンタグと適切に共有連結している。式I中の連結基Q’は基W(例えば、Q’は式Iaで表される−Q−Wと同等であってもよい)を含んでいてもよい。連結基Q’又はQは例えば直接結合、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1乃至10のアルキレン基)、又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基、そしてそれらのいずれかは1個以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(式中、Rは下記の意味である。)、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基により終端又は中断されてもよい。適切なアリール基はフェニル基及びナフチル基を含み、一方、適切なヘテロアリール基はピリジン、ピロール、フラン、ピラン、イミダゾール、ピ
ラゾール、オキサゾール、ピリダジン、ピリミジン及びプリンを含む。ポリマーへの連結は、加水分解に不安定な結合法により、又は非不安定な結合によりされてもよい。
【0034】
随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基に存在してもよい置換基は−CN、−NO2、―CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OC
O2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、
−NR’CO2R、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=
N−NR’COR、―N+R3、−N+H3、―N+HR2、―N+H2R、ハロゲン原子、例えばフッ素原子又は塩素原子、―C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR{式中、各R又
はR’は独立して水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素原子数1乃至6のアルキル基)又はアリール基(好ましくはフェニル基)を表す。}から選ばれる同一又は異なった置換基を例えば1個以上含む。電子求引置換基の存在は特に好ましい。
【0035】
好ましくは、式Iaで表される化合物において、水素原子と連結する基Qはアルキレン基又は直接結合である。最も好ましくは、式IaにおいてXはポリマーであり、またX’−QはH−である。
【0036】
Wは例えば、ケト基又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−、又は例えばCH.OH基、エーテル基CH.OR、エステル基CH.O.C(
O)R、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2、又はアミド基CH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2、のような基を還元して得られる基を表す。X
−Q−W−が一緒に電子求引基を表す場合、この基は例えばシアノ基でもよい。
【0037】
本発明の複合方法に用いられる正確な条件は、当然用いられる複合試薬、及び複合されるタンパク質又はペプチドによって決まる。そのような条件は、当業者にとって周知の事実の範囲内である。例えば、反応に対するpHは一般的に4乃至10の間であり、通常は
約6乃至約8.5の間であり、例えば約6.5乃至8.0であり、好ましくは約7.0乃至約7.5である。反応混合物中、タンパク質又はペプチドの濃度は一般的に0.20mg/mL以上であり、通常は0.4mg/mL以上であり、例えば0.5mg/mL乃至1.5mg/mLである。前記方法が国際公開2005/007197号に記載の二官能性試薬を使用する場合、該方法は(i)一般式
【化4】
(式中、
X及びX’の一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し、
Qは連結基を表し、
W’は電子求引基、例えばケト基、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2
−、又は、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W’と一緒に電子求引基を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
各Lは独立して脱離基を表す。)
で表される化合物
又は
(ii)一般式
【化5】
(式中、
少なくとも2個のヒスチジン残基を含有するタンパク質又はペプチドと共に、
X、X’、Q、W’、A及びLは一般式IIと同義であり、さらにXがポリマーを表
す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引性基Wは環を形成してもよく、
そして
mは請求1乃至4を表す。)
で表される化合物
のいずれかとの反応を含む。
【0038】
複合試薬II及びIIIはお互いに化学的に同等であり、国際公開2005/007197号に記載されている。それらは、2つの求核試薬に対して選択的である、橋かけ官能化された、潜伏的橋かけ複合化された、ビス−アルキル化された部位を有することを特徴とする。複合されるタンパク質において前記試薬が2つのヒスチジン残基と結合するような条件下で反応は行われる。2つのヒスチジン残基への高選択性が得られたことは驚くべきことである。他の複合方法は生成物の混合物を製造する傾向があり、例えば、リジン残基よりもむしろヒスチジン残基との選択的結合は難しいことが前もって知られていた。
【0039】
この又は各脱離基Lは、例えば−SR、−SO2R、−OSO2R、−N+R3、−N+H
R2、−N+H2R、ハロゲン原子、又は−OΦ[式中、Rは上記と同義で有り、そしてΦは置換されたアリール基、特に少なくとも1個の電子求引基、例えば−CN、−NO2、−
CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−S
R、−SOR、−SO2R、―NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR’CO2R、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’C
OR、−N+R3、−N+HR2、ハロゲン原子、特に塩素原子、特にフッ素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(式中、R及びR’は上記と同義である。)]を含有するフェニル基を表す。
【0040】
X’及びW’が一緒に環を形成する典型的な構造は、
【化6】
(式中、nは整数1乃至4を表す。)
、及び
【化7】
を含む。
【0041】
1つの好ましい実施形態では、本発明に従う方法は、一般式:
【化8】
で表される新規な複合体を製造するために、一般式:
【化9】
で表される試薬を使用する。
【0042】
本発明の方法のこの実施形態の重要な特徴は、α−メチレン脱離基及び二重結合がマイケル活性化部位として機能する電子求引基と橋かけ複合されることである。橋かけ官能化試薬において、脱離基が直接置換よりもむしろ脱離する傾向にあり、また電子求引基がマイケル反応に対し最適な活性部位である場合、その結果、一連の分子内ビスアルキル化は連続的なマイケル反応及びレトロ−マイケル反応により起こり得る。脱離部位は、最初のアルキル化が起こった後まで、曝露されなかった潜在的な複合二重結合を覆う働きをし、ビス−アルキル化はJ.Am.Chem.Soc.1979,101,3098−3110及びJ.Am.Chem.Soc.1988,110,5211−5212に記載されているような一連の相互作用的マイケル反応及びレトロ−マイケル反応に由来する。ビス−アルキル化が一連のマイケル反応及びレトロ−マイケル反応により起こりうるように、電子求引基及び脱離基は適切に選ばれる。二重結合に複合される追加の多重結合と又はJ.Am.Chem.Soc.1988,110,5211−5212に記載されているような脱離基と電子求引基の間で橋かけ官能アルキル化試薬を調製することも可能である。
【0043】
本発明に従う新規な複合体のいくつかの例は、以下の
【化10】
を含む。
【0044】
本発明に従う方法で使用され得る試薬のいくつかの例は、以下の、
【化11】
を含む。
【0045】
タンパク質に対して、ヒスチジン残基は天然タンパク質又はポリヒスチジンタグのいずれかにおいて、互いにごく接近して位置しており、好ましくは互いに隣接している。もちろん、ポリエチレングリコール以外のポリマーは、上記式でPEGを取り替えてもよい。理論に束縛されることを望むことなく、ヒスチジン残基への結合は以下の式:
【化12】
に示されるが、ヒスチジン中の他の窒素原子との結合もまた可能である。
【0046】
上記方法の即時生成物は一般式Ia(式中、Wは電子求引基を表す。)で表される化合物である。そのような化合物はそれら自身に有用性がある。なぜなら、本発明の方法は適切な条件下、可逆的であり、さらに式Iaで表される化合物(式中、Wは電子求引部位を表す。)は遊離タンパク質の放出に必要とされる適用における有用性(例えば直接の臨床的応用)を有するからである。しかしながら、電子求引基Wはたんぱく質の放出を妨げる部位を生み出すために還元されてもよく、またそのような化合物は多くの臨床的、産業上及び診断用用途にもまた有用性を有する。さらに、いったんWを還元させた場合、可逆反応はもはや起こらないという事実は、より強い求核試薬が加えられたとしても、交換が一
切見られないことを意味する。それ故に、例えばポリヒスチジンタグによるPEG化、Wの還元、それからタンパク質中のジスルフィド結合の還元、そして還元されたジスルフィド結合の至る所での一連のPEG化を行うことが可能である。いくつかのタンパク質に対し、基Wの還元をしないで、そのような方法を実行することは可能である。
【0047】
このように、例えば、ケト基を含有する部位Wは、CH(OH)基を含有する部位Wを還元されてもよく、エーテル基CH.ORはエーテル化剤とヒドロキシ基の反応により得られてもよく、エステル基CH.O.C(O)Rはアシル化剤とヒドロキシ基の反応により得られてもよく、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2は還元性アミノ化によりケトン又はアルデヒドから調製されてもよく;またアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2はアミンのアシル化により形成されてもよい。シアノ基で
ある基X−Q−W−はアミノ基に還元してもよい。
【0048】
前記方法は、全ての反応物質が溶解できる溶媒又は溶媒の混合物中で行われ得る。タンパク質は水性反応媒体中、一般式II又IIIで表される化合物と直接反応させてもよい。求核試薬のpH要件によって、この反応媒体は緩衝されてもよい。この反応に対する最適なpHは一般的に少なくとも6.0であり、通常、約6.8から約8.5の間であり、例えば6.5又は7.0乃至8.0であり、例えば約7.5−8.0であるが、好ましくは約7.0乃至7.5である。PEG化の方法が記載された文献は、リシン残基へのPEG化を含めて、塩基性条件は非選択的PEG化を引き起こすこと、及びヒスチジンへのPEG化はpH6.0乃至6.5が最適であることを提案するけれども、本発明に従う方法は、塩基性のpHでのヒスチジン残基(特にポリヒスチジンタグにおいて)との結合に選択的であることは驚くべきことである。その場合にも、文献に記載の方法は、リシンへのPEG化を含めて、非選択的なPEG化を提案する。最適な反応条件は当然、使用される具体的な反応物質によって決まるが、一般的に、上記範囲の下端の方でのpHの使用は、ヒスチジン結合に関する選択性を増加させる傾向がある、一方、上記範囲の上端の方でのpHの使用は収率を増加させる傾向がある。
【0049】
3乃至37℃間での反応温度は一般的に最適であり、これらの方法が起きるかもしれない温度で複合反応が行われるなら、タンパク質は障害機能を分解する又は変性するかもしれない。有機媒体(例えば、THF、酢酸エチル、アセトン)中で行われる反応は、通常室温以下の温度で行われる。
【0050】
多くの他の試薬と違って、タンパク質は試薬の化学量当量又は僅かな過剰を用いて所望の試薬と効率的に複合され得る。しかしながら、試薬は溶媒和タンパク質に用いられる水性媒体と競合反応を受けないので、過剰な化学量の試薬と複合反応を行うことは可能である。過剰の試薬及び生成物は、タンパク質の通常の精製の間、イオン交換クロマトグラフィーにより、又はニッケルを使用した分離により、容易に分離され得る。
【0051】
ポリヒスチジンタグとの複合に対し有用である化合物の別の類は、一般式:
【化13】
(式中、
X、Q、V及びV’は上記と同義であり、
W’は電子求引基を表し、そして
Lは脱離基を表す。)
で表される化合物によって表される。
そのような複合方法に由来する直接的な生成物は、式Ib(Wは電子求引基を表す。)
で表される化合物である。必要に応じて、この結果として生じる式Ibで表される化合物は、他の所望の生成物に変換され得る。具体的には、上述のように、電子求引基は還元されてもよい。
【0052】
一般式:
【化14】
で表される新規な複合体を製造するために、
一般式IVで表される特に好ましい試薬は、一般式IVa:
【化15】
(式中、
Arは未置換の又は置換されたアリール基、特にフェニル基を表し、ここで
は任意の置換基は連結基Qに含有されるアリール基に対し、上述で言及された
ものから選ばれ、そして
R、W’、v及びv’は上記と同義である。)
を有する。
【0053】
これらの好ましい化合物において、好ましくはvは0であり、そして好ましくはv’は1乃至4の整数、特に1を表す。好ましくはW’はCO基を表し、そしてWはCO基又はCH.OH基を表す。好ましくはRは炭素原子数1乃至4のアルキル−アリール基、特にp−トリル基を表す。好ましくはArは未置換のフェニル基を表す。好ましくはXはポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールを表す。
【0054】
一般式IVで表される試薬を扱うとき、その使用に対する最適な反応条件は、試薬II及びIIIとの関連において上記と同じである。
【0055】
一般式
【化16】
(式中、X、Q、W’、V及びV’は上記と同義である。)
で表される中間化合物の形成により、上記式IVで表される試薬を用いた複合方法が進行すると考えられる。複合させるための分子の存在下、式Vで表される化合物を発生させることが好ましい場合、相対的に高いpHは最適に完全に使用される。あるいは、単離段階で上記式Vで表される化合物を発生させ、そして複合させるために頻繁に分子を加えることが好ましい場合、初期段階は相対的に高いpH(例えば、7.5乃至8.0)で最適に行われ、一方、次の段階はより低いpH(例えば、6.0乃至6.5)で最適に行われる。
【0056】
上述の通り、存在するヒスチジン残基の数によって決まるので、2つ以上のポリマーは最適なタンパク質と複合されてもよい、そしてこれは図3に概略的に示される。例えば、2つのポリマーは6個の残基ヒスチジンタグと複合され得る。これは多数のポリマー残基をタンパク質に付着させる有用な方法を提供する。低分子量PEGを用いて高分子量生成物を得たいとき、例えば3つの20kDのPEG鎖を用いて60kDの分子量生成物を得たいとき、または複数の効果を得るため又は例えば単一段階でグリコシル化及びPEG化
を達成するために、2つの相違するポリマー、例えばタンパク質とPEG、を別のタンパク質に加えることを望むとき、これは望ましい。そのような多量複合は従来の複合技術で実現するのは多くの場合、困難である。
【0057】
多くのタンパク質は遊離システイン残基及び/又はジスルフィド架橋を含有し、本発明の新規な複合体を調整するのに使用される複合試薬は曝露されたシステイン残基及び還元されたジスルフィド架橋ともまた反応し得る。反応条件及びタンパク質の構造によって決まるので、それらはポリヒスチジンタグにおいてヒスチジン残基と反応するよりもむしろそのような部位と反応し得る。それ故、そのような部位及びポリヒスチジンタグを含有するタンパク質を複合することを望む場合、必要ならば最適なブロッキング手段を使用してもよい。例えば、そのような部位は、ポリマーは相対的に低分子量部位である、上述した一般式II、III又はIVに相当する試薬との複合によりブロックされてもよい。ヒスチジン残基との複合はその後、望ましい試薬を用いて行ってもよい。
【0058】
一般式Iで表される化合物は、多くの有用性がある。それらは、例えば患者への直接的な臨床的応用に使用され、そしてその結果、本発明はさらに薬学的に受容可能なキャリヤーと共に本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。本発明はさらに治療での使用、及び患者への本発明に従う薬学的有効量の化合物又は薬学的組成物の投与を含む患者を処置する方法に本発明の化合物を提供する。望ましい薬学的効果、例えば心的外傷処置、酵素補充、タンパク製剤の補充、創傷管理、毒素除去、抗炎症薬、抗感染薬、免疫調整予防接種、又は制癌は、適切なタンパク質の選択により得られる。
【0059】
本発明の化合物は非臨床的応用でもまた使用してもよい。例えば、酵素のような多くの生理的に活性な化合物は、有機溶媒中反応に触媒作用を及ぼすことができ、そして本発明の化合物はそのような用途に使用してもよい。さらに、本発明の化合物は診断用ツールとして使用されてもよい。本発明の化合物は、生体内で化合物の追跡を可能にするため、造影剤、例えばラジオヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0060】
タンパク質は、例えばペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質でもよい。
【0061】
望ましい用途により決まるので、本発明における有用性を有する、下記のいくつかの具体的なタンパク質が挙げられる。酵素は糖質−特異的酵素、タンパク質分解酵素などを含む。一般的及び治療への応用において、産業上(有機型反応)及び生物学的応用に対する、興味のある酵素は、特にUS4,179,337号に開示されているオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ及びリガーゼを含む。興味ある具体的な酵素は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アデノシン、デアミナーゼ、スーパーオキシド、ジスムターゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、ビリルビン、オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタミナーゼを含む。
【0062】
本発明の化合物で使用されるタンパク質は、例えば因子VII、VIII又はIX及び他の血液因子、インスリン、ACTH、グルカゴン(glucagon)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、サイモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、黄体形成ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ヘモグロビン、サイトカイン、抗体、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び組織プラスミノゲン活性化因子を含む。
【0063】
前記インターロイキン、インターフェロン及びコロニー刺激因子もまた非グルコシル化形態で存在し、普通、組み換えタンパク質技術による調整の結果である。非グルコシル化型は本発明で使用されてもよい。
【0064】
他の興味あるタンパク質は、ポリ(アルキレンオキサイド)のようなポリマーと複合され、そしてその結果として寛容誘導物質としての使用に適しているとき、還元されたアレルギー誘発性を有するとしてDreborg et al Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Syst.(1990)6 315 365に開示されているアレルゲンタンパク質である。開示されているアレルギー誘発物質はブタクサ抗原性薬剤E、ミツバチ毒、ダニ・アレルゲンなどである。
【0065】
免疫グロブリン、オボアルブミン、リパーゼ、グルコセレブロシダーゼ、レクチン、組織プラスミノゲン活性化因子及びグルコシル化(glycosilated)インターロイキン、インターフェロン及びコロニー刺激因子のようなグリコポリペプチドは、IgG、IgE、IgM、IgA,IgD及びそれらのフラグメントのような免疫グロブリンとして興味ある。
【0066】
特に興味あるのは、診断及び治療目的に対する臨床医学において使用されるレセプター及びリガンド結合タンパク質及び抗体及び抗体フラグメントである。抗体は単独で使用されてもよいし又はラジオアイソトープ又は細胞毒性/抗感染症薬のような別の原子又は分子と共有複合(“充填される”)されてもよい。免疫原性のポリマー−タンパク質複合体を製造するために、エピトープはワクチン接種に用いられてもよい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明を説明する。実施例の結果は添付の図面4乃至20に示されている。実施例では、6個のヒスチジン残基のポリヒスチジンタグを含有するタンパク質pro−BNP、及び8個のヒスチジン残基のポリヒスチジンタグを含有するベータシヌクレインを使用した。心臓組織では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を134個のアミノ酸前駆物質(prepro−BNP)として合成し、そして108個のアミノ酸pro−BNPを形成するため、プロテアーゼにより開裂した。ベータシヌクレインは小さく、可溶性タンパク質は、主として心臓組織で見つかり、そしてシャペロン様活性を有する。使用された他のタンパク質は、インターフェロン α−2b、エンドスタチン、抗THF−アルファ―ドメイン抗体フラグメントである。
【0068】
実施例1:His6−proBNPの12kDa PEG化
【化17】
12kDa PEGモノ−スルホン(構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグProBNP(アブカム(Abcam)、ab41402、13kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後12kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.6μL又は4.8μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルーステイン(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図4に示す。図4では、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、供給されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abc
am)、1mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンドを示す。標識A及びBが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する。レーン3は、3当量の12kDa P
EG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンドを示す。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−pr
oBNP及び不純物にそれぞれ相当する。
その後、ゲルもまた図5に示される結果と共にPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色した。レーン1におけるバンドは標識Cが付された未反応のPEG試薬、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンドに相当する。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、それぞれ未反応のHis6−proBNP及び不純物に
相当する。12kDa PEG反応混合物の3当量から得られたレーン3は、未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンドとモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンドを示す。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する。
【0069】
実施例2:His6−proBNPの30kDa PEG化
30kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグProBNP(アブカム(Abcam)、ab51402)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後30kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々2.0μL又は6.0μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルーステイン(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図6に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、供給されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abcam)、1
mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の30kDa PE
G
反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物に相当する標識Cが付されたバンド並びに、提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそ
れぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。レーン3は、3当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C及びD及が付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物に相当する標識A及びBが付された下
側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図7に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、提供されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abcam)、1m
g/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そして未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、P
EG不純物に相当する標識Fが付されたバンド、モノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びEが付されたバンド、そして提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが
付された下側のバンドを示す。レーン3は3当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、PEG不純物に相当する標識Fが付されたバンド、モノ−PEG化及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びEが付されたバンド、提供されたサンプルにおいて未反応のHis6−p
roBNP及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。
【0070】
実施例3:His8−ベータシヌクレインの12kDa PEG化及び非ヒスチジンタグ
ベータシヌクレインとの比較反応
12kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.39mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、ab40545、15kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後12kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.6μL又は4.8μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図8に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質
マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、アブカム(Abcam)により、提供されたHis8−ベータシヌクレインのサンプル
(0.8mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C及びDが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれぞれ相当する標識A及びBが付
された下側のバンドを示す。レーン3は、3当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物、トリ−PEG化生成物及びテトラ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D、E及びFが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれ
ぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図9に示す。図9において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen)を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)により提供されたHis8−ベータシヌクレインから得られる。レーン2は
、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン
及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。レーン3は3当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物、トリ−PEG化生成物、及びテトラ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側の
バンドを示す。バンドCはPEG不純物である。
比較の12kDa PEG化の研究は、pH7.0において1当量のPEG試薬(2)を使用してHis8−ベータシヌクレインと非ヒスチジンタグベータシヌクレイン(アブ
カム(Abcam)、cat.no.ab48853)との間で行い、SDS−PAGEの結果を図10に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(NovexSharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。His8−ベータシヌクレインの結果を
標識レーン1に示す。レーン1において、標識Bが付されたバンドは未反応のHis8−
ベータシヌクレインであり、標識Cが付されたバンドはモノ−PEG化His8−ベータ
シヌクレインである。標識2が付されたレーンは非ヒスチジンタグベータシヌクレイン反応を示し、そして可視バンドのみ標識Aが付され、非ヒスチジンタグベータシヌクレインである。レーン2にはPEG化タンパク質バンドはなかった。
【0071】
実施例4:His8−ベータシヌクレインの30kDa PEG化
30kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.39mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab40545、15kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後30kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量加えた(1.6μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図11に示す。図11において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)より提供されたHis8−ベータシヌクレインのサンプル(0.8mg/m
L)から得られ、標識Bが付されたバンドはポリヒスチジンタグタンパク質である、しかし一方、標識Aが付されたバンドは不純物である。レーン2は1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、モノ−PEG化生成物に相当する標識Cが付されたバンド及び提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれ
ぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図12に示す。図12において、レーンMは校正として用いられるノヴェック
ス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)より提供されたHis8−ベータシヌクレインから得られる。レーン
2は、1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そして未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、PEG不純物に相当する標識E及びGが付されたバンド、モノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びFが付されたバンド、提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及
び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。
【0072】
実施例5:10kDa及び20kDa PEG試薬3とC末端上の8個のヒスチジン配列とインターフェロン(IFN) α−2bにおけるヒスチジン上のPEG化
【化18】
【0073】
第1段階:p−カルボキシ−3−ピペリジノプロプリオフェノンヒドロクロライド 3(2)の合成
【化19】
250mLの丸底フラスコをp−アセチル安息香酸(15.0g、3(1))、塩酸ピペリジン 11.11g及びp−ホルムアルデヒド 8.23gで充填した。その後、無水エタノール(90mL)及び濃塩酸(1mL)を加え、アルゴン下で撹拌させがら、得られた懸濁液を10時間加熱還流した。還流を止めた後、アセトン(150mL)を加え、この反応混合物を室温まで冷却した。得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で単離し、冷やしたアセトンで2回洗浄した。その後、固形物を真空下で乾燥し、白色の結晶粉末(3(2)、9.72g)を得た。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 1.79,2.96,3.45(br m,ピペリジン部位のCH2),3.36(
t,2H,COCH2),3.74(t,2H,NCH2),8.09(m,4H,ArH)
【0074】
第2段階:4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸 3(5)の合成
p−カルボキシ−3−ピペリジノプロプリオフェノンヒドロクロライド 3(2)(1.0g)及び4−メチルベンゼンチオール(417mg、3(3))を無水エタノール(7.5mL)及びメタノール(5mL)の混合物中で懸濁した。その後、ピペリジン(50μL)を加え、この懸濁液をアルゴン雰囲気下6時間撹拌させながら加熱還流した。室温まで冷却後、得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で濾過し、冷やしたアセトンで注意い深く洗浄し、固形物を真空下で乾燥し、3(3)(614mg)を得た。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 2.27(s,3H,フェニル−CH3),3.24,3.39(t,2H×2,C
H2),7.14,7.26(d,2H×2,トリル基部位のArH),8.03(m,
4H,カルボン酸部位のArH)
【0075】
第3段階:4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸 3(4)の合成
4−(3―(p−トシルチオ)プロパノイル)安息香酸 3(4)(160mg)を水(10mL)及びエタノール(10mL)の混合物中で懸濁した。氷浴で冷却後、オキソン(720mg、アルドリッチ社製)を加え、一晩中(15時間)撹拌させながら、この反応混合物を室温まで温めた。得られた懸濁液がほぼ均一になり、その後混合物をクロロホルム(合計100mL)で3回抽出できるように、得られた懸濁液を追加の水で希釈した。溜まったクロロホルム抽出物を食塩水で洗浄し、その後硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させた。30℃での真空下、揮発性物質の蒸発により、白色の固形物を得た3
(4)(149mg)。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 2.41(s,3H,フェニル−CH3),3.42(t,2H,CO−CH2),3.64(t,2H,SO2−CH2),7.46,7.82(d,2H×2,トリル基部位のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部位のArH)
【0076】
第4段階:PEG化4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸、PEG試薬3の合成
4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸3(4)(133mg)及びo−2−アミノエチル)−o’−メチル−PEG(MW 10kDa、502mg、バイオ べクトラ社製(BioVectra))を乾燥したトルエン(5mL)に溶解させた。加熱しないで真空下で溶媒を除去し、乾燥した固形残渣をアルゴン下で乾燥したジクロロメタン(15mL)に再溶解させた。得られた溶液を氷浴で冷やし、アルゴン下でジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、60mg)をゆっくりと加えた。その後、この反応混合物を一晩(15時間)室温で撹拌させた。それから、揮発性物質を真空下(30℃、水浴)で除去し、アセトン中(20mL)微温(35℃)で再溶解させた固形残渣を得た。不溶性物質を除去するため、溶液を非吸収性コットンウールで濾過した。その後、溶液をドライアイス浴で冷却し、遠心分離(4600rpm、30分間)により分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後、得られた純白でない固体を真空下で乾燥し、PEG試薬 3(437mg)を得た。
1H NMR(400 MHz、CDCl3)
δ 2.46(s,3H,フェニル−CH3),3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG),7.38,7.83(d,2H×2,トリル基部位のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部位のArH)
【0077】
第5段階:C末端のhis8タグIFN α―2bのヒスチジン上のPEG化
IFN α―2b(pH7.5、2mM EDTA及び150mM NaClを含有する10mM リン酸ナトリウム緩衝液において1.13mg/mL)の20μL溶液に1モル当量の10kDa PEG試薬3(脱イオン水中6mg/mL溶液の1.8μL)を加え、得られた溶液を室温で一晩、インキュベートした。1モル当量の20kDa PEG試薬でも繰り返し行い、再び前述した(脱イオン水中6.6mg/mL溶液の3.3μL)ような類似の方法により調製した。その後、両サンプルをSDS−PAGE(ニューページ ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MES ランニングバッファー(NuPAGE(登録商標) Novex 4−12% Bis−Trisgels、MES running buffer)、全てインビトロジェン(Invitrogen
)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L))により分析した。その結果を図13に示す。レーン1はタンパク質マーカーである。レーン2は出発IFNのみである。レーン3は10kDa PEG試薬反応の結果を示す。複合された1乃至5個のPEG鎖と共にIFNに相当する30と160kDa タンパク質マーカーとの間に5つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン4は20kDa PEG試薬反応の結果を示す。複合された1乃至3つのPEG鎖と共にIFNに相当する60と110kDa タンパク質マーカーとの間に3つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン5は染色していない20kDa PEG試薬であり、そのためバンドは可視的ではない。レーン6は染色していない10kDa PEG試薬であり、そのためバンドは可視的ではない。
【0078】
実施例6:His8−ベータシヌクレインの5kDa PEG化
【化20】
5kDa PEGモノ−スルホン(構造(5))を3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)において、PEGビス−スルホン(構造(4))のインキュベーションにより調整した。pH7.4、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.38mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンタグベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab40545、15.4kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後5kDa PEGモノ−スルホン(5)を(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々0.25μL又は0.74μL)。対照として、ベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab48853、14.3kDa)の2つのアリコートを同じように扱い、5kDa
PEGモノ−スルホンの1モル当量(0.18μL)又は3モル当量(0.52μL)のいずれかを加えた。その後反応は室温で6時間インキュベートした。得られた反応溶液をSDS−PAGEを用いて分析し、図14に示すようにインスタントブルー(エクスペデオン(expedeon))で染色した。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1及び2はそれぞれ1当量の5kDa PEG反応混合物及び3当量のPEG反応混合物から得られる。標識Aが付されたバンドはHis8−ベータシヌクレインである。標識Aより下のか
すかなバンドはアブカム(Abcam)より提供されたタンパク質からの不純物である。B、C、D及びEを標識化したバンドは、モノ−PEG化、ジ−PEG化、トリ−PEG化、及びテトラ−PEG化タンパク質生成物にそれぞれ相当する。
【0079】
実施例7:異なったpHでのHis6−抗TNF−α ドメイン抗体フラグメントの10
kDa PEG化
10kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)において、PEGビス−スルホ
ン(実施例1における構造(1)、10mg/mL)のインキュベーションにより調整した。50mMリン酸ナトリウム、150mM塩酸ナトリウム及び2mM EDTAにおいて、C末端の6個のヒスチジンタグ抗TNFアルファドメイン抗体フラグメント(12.7kDa)溶液(0.6mg/mL)を4つの異なるpH(pH6.2、pH6.7、pH7.0及びpH7.4)で調製した。3モル当量の10kDa PEGモノ−スルホン(構造(2)、1.41μL)を4つの異なったpHそれぞれにおいてHis6−ドメイ
ン溶液に加えた(10μL、0.6mg/mL)。その後、反応を室温で3時間インキュベーションした。
得られた反応溶液をSDS−PAGEを用いて分析し、図15に示すようにインスタントブルー(エクスペデオン(expedeon))で染色した。レーンMはノヴェックス
シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1乃至4はそれぞれpH6.2、pH6.7、pH7.0及びpH7.4において、3当量の10kDa PEGを用いて反応混合物から得られる。標識Aが付されたバンドは未反応のHis6−抗TNFアルファドメイン抗体フラグメントである。標識Bが付されたバンドは、モ
ノ−PEG化ドメイン生成物である。標識C及びDが付されたバンドは、ジ−PEG化及びトリ−PEG化ドメインフラグメントにそれぞれ相当する。PEG化は4つのpHごとに見られ、pHが増加するにつれてPEG化の大きさも増加する。
【0080】
実施例8:10kDa、20kDa、30kDa及び40kDaを用いたHis6−抗T
NF−α ドメイン抗体フラグメントのPEG化
10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))を室温において3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)で、別々にインキュベーションし、対応するPEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を得た。PEGの濃度は10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGそれぞれに対して、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL及び40mg/mLである。50mMリン酸ナトリウム、150mM塩酸ナトリウム及び2mM EDTAにおいて、C末端の6個のヒスチジンタグ抗TNFドメイン抗体(12.7kDa)溶液(1.25mg/mL、5μL)の4つのアリコートに、その後10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGモノ−スルホン(0.74μL、1.5モル当量)を加えた。それから、反応を4℃で8時間インキュベーションした。その後、反応溶液を図16に示すようにSDS−PAGEにより分析した。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharpprotein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は参照用にHis6−抗TNFドメイン抗体フラグメン
トである。レーン2乃至5は10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGの反応からそれぞれ得られる。標識Aが付されたバンドは未反応のHis6−抗TNF
ドメインである。標識B(B10、B20、B30及びB40)が付されたバンドは、10、20、30及び40kDa PEGに対するモノ−PEG化ドメインフラグメントにそれぞれ相当する。標識C10が付されたバンドは10kDa PEG反応に対するジ−PEG化生成物に相当し、C20バンドは20kDa PEG反応に対するジ−PEG化生成物に相当する。
【0081】
実施例9:His6−エンドスタチンの2kDa PEG化及びポリヒスチジンタグを有
さないエンドスタチンとの比較反応
2kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を4時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(1mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH6.2、5
0mMリン酸ナトリウム(30μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグエンドスタチン(カルバイオケム(Calbiochem)cat.no.324743)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後2kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.4μL又は4.2μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
pH6.2、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10μL、0.2mg/mL)において、非タグエンドスタチン(カルバイオケム(Calbiochem)cat.no.324769)の2つのアリコートもまた氷上で冷やし、その後2kDa PEGモノ−スルホン(0.1mg/mL)を(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々2.0μL又は6.0μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(エクスペデオン(Expedeon))で染色後得られたゲルを図17に示す。図17では、標識Mが付されたスポットの左側のカラムはノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein
markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1はHis6−エンドスタチン反応と共に1当量の2kDa PEGのサンプルから得られ、
未反応のタンパク質及びモノ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識B及びCが付されたバンドを示す。レーン2はHis6−エンドスタチン反応と共に3当量の2kDa P
EGのサンプルから得られ、未反応のタンパク質及びモノ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識B及びCが付されたバンドを示す。レーン3及び4はそれぞれ、エンドスタチン反応と共に1当量の2kDa PEG及びエンドスタチン反応と共に3当量の2kDa
PEGから得られる。未反応のタンパク質に相当する標識A及びBがそれぞれ付された1個のバンドにのみ、2kDa PEGだけがHis6−エンドスタチンと反応すること
を示す両反応に存在する。
【0082】
実施例10:His8−インターフェロン アルファの10、20kDa及び30kDa
PEG化及び非ヒスチジンタグインターフェロン アルファとの比較反応
N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン α−2bの溶液(2.63mL/、1.14mg/mL)を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有する、pH7.4、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製し、その後(タンパク質濃度に対して)1.7モル当量の20kDa PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))を加えた(脱イオン水において11.5mg/mL 20kDa PEGビス−スルホン溶液の420μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、18時間放置した。得られた反応混合物をSDS−PAGEにより分析し、その結果を図18に示す。図18において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、標識Aが付されたバンドが未反応のIFNに、標識Bが付されたバンドがモノ−PEG化IFNに、標識Cが付されたバンドがジ−PEG化IFNに及び標識Dが付されたバンドがトリ−PEG化IFNに相当する反応溶液を示す。
0.5mg/mLにおける1当量の30kDa PEGとの二次反応及びN末端の8個のヒスチジン溶液は、pH7.5においてインターフェロン α−2b(3.2mL、0.793mg/mL)をタグ付けした。その結果は、60と80kDa タンパク質マーカー間の可視的なモノ−PEG化IFNバンドとの20kDa反応、ジ−PEG化IFNに相当する110と160kDa間のバンド及びトリ−PEG化IFNに相当する160と260kDa タンパク質マーカー間の第三のバンドと似ている。非ヒスチジンタグIFN α−2bとの対比は、図18のレーン2に示される結果と共に、18時間後及び同じ条件下、1当量のPEG試薬(1)との反応を示さなかった。
【0083】
実施例11:N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファへの複合に対するポリ(ビニルピロリジン)(PVP ビス−スルホン)の使用
<末端アミノ基を有するPVPの調製>
圧力管にシステアミン(0.042g)、ジオキサン(8mL)及びマグネチックスターバーを充填した。溶液を形成するために穏やかな加熱後、溶液を室温で5分間アルゴンでパージした。パージしながら、1−ビニル−2−ピロリドン(2.0g)をその後加え、さらに5分後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(0.089g)を加えた。さらに2分後、アルゴン下で圧力管をねじぶたで封し、撹拌しながら23時間オイルバスの中に置いた。チューブと内容物を室温まで冷ました後、ポリマー生成物の沈殿物を得るため、ジエチルエーテル(15mL)を加えた。液相をデカントし固体残渣をアセトン(3mL)に再溶解した。その後、得られたアセトン溶液を迅速に撹拌されているジエチルエーテル(25mL)に一滴ずつ加え、沈殿物を真空のほんの僅かなバーストと共にno.2 焼結ガラス漏斗で単離した。固形物を未乾燥のジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、その後室温で真空下乾燥させた(質量=1.24g、白色の固体)。
<PVP−アミンへのタンパク質反応末端基の複合>
PVP−アミン(500mg)、4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]−安息香酸(125mg)、及び4−ジメチルアミノピリジン(6mg)をアルゴン下、無水ジクロロメタン(10ml)で混合し、その後撹拌しながら、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(80μL)を加えた。得られた混合物を室温で20時間撹拌し、その後非吸収性コットン−ウールを通して濾過した。それから濾液にジエチルエーテル(20mL)を加え、得られた沈殿物を遠心分離(2,000rpm、2分間、2℃)により単離した。液相をデカントし、残りの残渣を数分間、酢酸エチル(5mL)でボルテックス(vortex)した。酢酸エチル層をデカント後、固形残渣をジクロロメタン(5mL)に再溶解し、その後酢酸エチル(15mL)を加えた。溶液を15分間ドライアイス内に置き、その後遠心分離(2,000rpm、2分間、2℃)により単離された固形物の沈殿物を得た。得られた粘着性の残渣を未乾燥の酢酸エチル(5mL)でボルテックスし、その後室温で真空下乾燥した(質量=0.118g)。
<PVP ビス−スルホンの分別>
上述の段階で得られた固形物をpH 4.0、水性の20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM NaClで混合し、その後澄明な液が可視的になるまで13,000rpmで遠心分離機にかけた。液相を固形残渣から除去し、その後溶出ピークの間1分ごとに留分を集めることにより1mL/minにおいて20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM、pH4.0を稼動させながら、HiLoad 16/60 Superdex(登録商標) 200 prep grade size exclusion column(GEヘルスケア(GE Healthcare))で分別した。72〜80分の間で溶出した留分はタンパク質複合に使用される。
<N末端の8個のヒスチジンタグIFN アルファへのPVP複合化>
IFN(0.025mg、0.5mg/mL)を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製した。IFN(25μg、0.5mg/mL)の50μLに分別PVP ビス−スルホン(留分72分、74分、78分及び80分)を50μL加えた。得られた溶液を静かに混合し、4℃で一晩放置した。結果として得られた反応溶液をSDS−PAGEにより分析し、その結果を図19に示す。図19において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン2乃至5は使用された異なった
サイズのPVP試薬留分からの反応溶液を示す(2〜5それぞれからの72〜80分のPVP留分)。標識Bが付されたバンドは得られたモノ−及び多量PVP化IFNを示す。
【0084】
実施例12:N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファを用いてインターフェロン アルファとインターフェロン アルファの多量複合
【化21】
N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン α−2b(50μL、1.14mg/mL)の溶液を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製し、その後(タンパク質濃度に対して)0.125モル当量の10kDa PEG二官能性のPEG試薬(6)を加えた(水において(6)の8mg/mL溶液の0.47μL)。反応を室温で18時間放置した。得られた反応混合物をSDS−PAGEにより分析した。IFN−PEG−IFN融合複合体に相当するインスタントブルー(エクスペデオン(Expedeon))で撹拌後、得られたゲルは50kDaと60kDa ノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))の間のバンドを示した。
【0085】
実施例13:遊離システインを含有するヒト血清アルブミン(HSA)とN末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファの多量複合
150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製したN末端の8つのヒスチジンタグインターフェロン α−2b(1mL、1.14mg/mL)の溶液にヒト血清アルブミン(IFNに対して3モル当量、10.77mg)を加え、溶解させた。この溶液に10kDa PEGビス(ビス−スルホン)(実施例12における構造(6))(IFNに対して1モル当量、水において8mg/mL 10kDa PEGビス(ビス−スルホン)(6)溶液の75μL)を加えた。この反応混合物を室温で18時間放置した。得られた反応混合物をイオン交換クロマトグラフィー、続いて金属イオンアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、その後SDS−PAGEにより分析し、その結果を図20に示す。図20において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、標識Aが付されたバンドは未反応のIFNであり、標識Bが付されたバンドはモノ−PEG化IFNであり、標識Cが付されたバンドはIFN−PEG−IFNであり、そして標識Dが付されたバンドはIFN−PEG−アルブミンである精製された反応溶液を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合タンパク質及びペプチド、並びにそれらの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの治療効果のある分子、例えばタンパク質は、臨床医学的用途において、効力を発揮するために必要とされる特性を有していない。例えば、多くの天然タンパク質は、良い薬にはならない。その理由は、患者への投与時に、(1)タンパク質が血液又は組織中に存在する多くのエンド−及びエキソ−ペプチターゼによって消化される;(2)多くのタンパク質はある程度免疫原性である;並びに(3)タンパク質は腎臓限外ろ過及びエンドサイトーシスにより迅速に排出され得る等を含んだいくつかの固有の欠点があるからである。医学の分野で有効な治療薬としての有用性を発見するかもしれない、いくつかの分子は組織的に有毒であるか又は最適な生物学的利用態及び薬物動態を欠いている。タンパク質がすぐに血液循環から消えてなくなる場合は、タンパク質は一般的に頻繁に患者に投与されなければならない。頻繁な投与はさらに、毒性の危険性、特に免疫学的に生成された毒性を増加する。
【0003】
水溶性、合成ポリマー、特にポリアルキレングルコースは、例えばタンパク質など、治療効果のある分子を複合させるのに幅広く使用される。これらの治療的な複合体は、循環時間を引き延ばすこと及び除去率を減少させること、組織的毒性を減少させること、並びにいくつかの場合では、さらなる臨床的有用性を発揮することにより、薬物動態を優位に変えることが示されている。ポリエチレングリコール、PEGをタンパク質に共有複合する方法は、“PEG化(PEGylation)”として一般的に知られている。
【0004】
最適な効力にとってタンパク質ごとに複合ポリマー分子の数は各分子に対して同じである用量一貫性のための投与量を確保すること、及び各タンパク質分子において各タンパク質分子は同じアミノ酸残基と特に共有複合することは重要である。タンパク質分子に沿った部分での非特異的複合は、精製するのに難しく且つ費用がかかる複雑な混合物を生み出すために複合生成物の配分及び頻繁に、非複合タンパク質をもたらす。
【0005】
国際公開2005/007197号は、一連の新規な複合試薬を開示する。タンパク質−ポリマー複合体を製造するために、これらは生体分子、例えばタンパク質中、求核基と反応するために使用され得る。新規なチオエーテル複合体をもたらすため、これらの試薬にはタンパク質中、ジスルフィド結合から誘導される両硫黄原子と複合する能力に対する特有の有用性を思い出せる。
【0006】
固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)は、タンパク質及びペプチドの精製に対し標準的な技術である。この技術では、多くの場合、“his−タグ(his−tag)”(隣接するヒスチジン残基の短鎖、一般的には5又は6個の残基、天然タンパク質中には存在しない)と呼ばれる、ポリヒスチジンタグは、タンパク質、一般的にはアミノ酸鎖の末端の1つへの合成方法により付着される。得られたタンパク質又はペプチドは“ヒスチジンタグ(histidine tagged)”と言われている。ポリヒスチジンタグは少なくとも2つのヒスチジン残基によって、例えばニッケル及びコバルトなど、金属と強く結合する。IMACでは、ポリヒスチジンタグタンパク質は、ニッケル−又はコバルト−を含有するカラムを通り過ぎる。このポリヒスチジンタグは、カラムと強く結合し、それ故タグタンパク質が混合物から分離することを可能にする。ポリヒスチジンタグは幅広く使用され、広範囲のタンパク質及びペプチド又はそれらから誘導される生成物が、将来、混合物から分離されるようにするために広範囲のタンパク質及びペプ
チドに付着される。
【0007】
普通、ポリヒスチジンタグタンパク質より強くないが、いくつかのタグなしタンパク質は、互いにごく接近してヒスチジン残基を含有し、またそのようなタンパク質もまたニッケル及びコバルトIMACカラムと結合してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2005/007197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
我々は、ポリマー、特にPEGをタンパク質及びペプチドに複合する改良された方法を見出した。この方法では、ポリマーはポリヒスチジンタグに複合される。驚くべきことに、ヒスチジン残基と結合可能な試薬は、天然タンパク質中に存在するたった一つのヒスチジン残基よりはむしろ、選択的にポリヒスチジンタグで反応すると考えられている。得られた複合体は新規である。ポリヒスチジンタグを含有するタンパク質及びペプチド、並びに新規な複合体を製造するために天然タンパク質中に類似したヒスチジン構造を含有するタンパク質及びペプチドに対し、国際公開2005/007197号に記載の試薬は、極めて効果的かつ安定した複合試薬として作用する。
【0010】
したがって、本発明はポリマーをポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドに複合する方法を提供し、該方法は前記ポリヒスチジンタグによって、複合が起きるような条件下、ポリマー複合試薬を前記タンパク質又はペプチドと反応させることを含む。本発明はさらに、ポリマーをタンパク質又はペプチドに複合する方法を提供し、該方法は前記タンパク質又はペプチドにヒスチジンタグを導入し、そしてその後に前記ポリヒスチジンタグによって、複合が起きるような条件下、前記タンパク質又はペプチドをポリマー複合試薬と反応させることを含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリマー複合体は新規であり、それ故に本発明はタンパク質又はペプチドに複合させたポリマーを含む化合物を提供し、前記複合はヒスチジンタグ自体による。そのような化合物は、一般式によって表される:
【化1】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Q’は連結基を表し、
(his)uはu個のヒスチジン単位を含有するポリヒスチジンタグを表し、そして
Zは前記ヒスチジンタグを介して結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
【0012】
ヒスチジンタグと結合可能なあらゆるポリマー複合試薬は、本発明の方法で使用されてもよい。そのような試薬は、ポリヒスチジンタグと結合するのと同様に、国際公開2005/007197号に記載の二官能性試薬を含み、天然タンパク質又はペプチド(例えば、ヒスチジンタグには存在しない)中に存在する2つのヒスチジン残基と結合可能であることもまた見出され、天然タンパク質又はペプチドにおいては、そのような残基は両ヒスチジン残基に官能性試薬の複合を可能にするために天然構造中で十分に互いのすぐ近くに配置される。
【0013】
したがって、本発明はさらに、一般式
【化2】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zは各ヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチドを表
し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物を提供する。
【0014】
本発明に従う新規化合物のさらなる群は、一般式
【化3】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Qは連結基を表し、
Wは電子求引性基又は電子求引性部位の還元により調整される部位を表し、
vは0又は1乃至4の整数を表し、
v’は1乃至8の整数を表し、そして
Zはポリヒスチジンタグによって結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
によって表される。
【0015】
これらの化合物では、v’は好ましくは1乃至6の整数、好ましくは1乃至4、例えば1を表す。好ましくは、vは0である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は特定の試薬を使用した複合体の製法を表す図である。
【図2】図2は図1の方法によって調製される別の複合体を表す図である。
【図3】図3は本発明に従う新規な複合体を表す図である。
【図4】図4は実施例1の結果を示す図である。
【図5】図5は実施例1におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図6】図6は実施例2の結果を示す図である。
【図7】図7は実施例2におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図8】図8は実施例3の結果を示す図である。
【図9】図9は実施例3におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図10】図10は実施例3における比較反応の結果を示す図である。
【図11】図11は実施例4の結果を示す図である。
【図12】図12は実施例4におけるゲルをヨウ化バリウムで染色した結果を示す図である。
【図13】図13は実施例5の結果を示す図である。
【図14】図14は実施例6の結果を示す図である。
【図15】図15は実施例7の結果を示す図である。
【図16】図16は実施例8の結果を示す図である。
【図17】図17は実施例9の結果を示す図である。
【図18】図18は実施例10の結果を示す図である。
【図19】図19は実施例11の結果を示す図である。
【図20】図20は実施例13の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法で使用される他の試薬は、アシル化又はアルキル化可能な試薬を含む。そのような試薬は単又は多官能性であってもよく、また例えばPEG炭酸塩類(例を挙げると、PEG−p−ニトロフェニル炭酸塩、PEG−スクシンイミジル炭酸塩、PEG−ベンゾトリアゾリル炭酸塩)、PEGカルボン酸塩類及びPEGエステル類(例を挙げると、PEG−スクシンイミジルエステル及びPEG−p−ニトロフェニルエステル並びにそれらの誘導体)、PEGアルデヒド、PEG−トレシル基又はトシル基、PEG−ジクロロトリアジン又は−クロロトリアジン、PEGビニルスルホン、PEGマレイミド及びPEG−ヨードアセトアミド、そしてPEG以外のポリマーを含有する対応する試薬を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の新規な複合体において、Zはタンパク質又はペプチドから誘導され得る。本明細書中、用語“タンパク質”は便宜上使用され、そして文脈上他の意味に解すべき場合を除き、“タンパク質”への言及は“タンパク質又はペプチド”への言及を意味していると理解すべきである。
【0019】
上記式Iaで表される新規な複合体部分を形成するタンパク質は、少なくとも2個のヒスチジン残基を含有しなければならない。これら2個の残基は天然タンパク質中に存在していてもよいが、もしそうだとしたら、2個の残基は群A及びBを複合可能にするために天然構造中で十分にすぐ近くに配置されなければならない。2個のヒスチジン残基がタンパク質鎖中でお互いに隣接している場合、又はタンパク質の折り畳みの結果として、それらはすぐ近くにある可能性がある場合に、これは起きる可能性がある。そのようなタンパク質は一般的にIMACカラムと結合する。例えば、原核生物大腸菌はヨダ(YODA)として知られている1つのタンパク質を有し、IMACカラムとの結合は起こり得る。しかしながら、好ましくは、2個のヒスチジン残基はポリヒスチジンタグの部分を形成し、例えば天然タンパク質又はペプチドには見られない、ヒスチジン鎖、該ポリヒスチジンタグは適当な手段、例えば化学的手段、ポリヒスチジンタグ又はポリヒスチジンタグを含有する部位と共に翻訳後の標識化、又は標的タンパク質との融合においてヒスチジン配列を挿入することによるタンパク質工学、例えば、所望の長さのポリヒスチジンタグをコードする短コード配列を有する遺伝子の使用、によってタンパク質又はペプチドに付着される。
【0020】
ポリヒスチジンタグはどんな所望の数のヒスチジン残基、例えば約12個までの残基を含有していてもよい。それらは少なくとも2個の残基を含有しなければならず、好ましくは少なくとも3個の残基、特に4乃至10個、特に5乃至8個、例えば5又は6個の残基
を含有する。それらはヒスチジン残基のみを含有してもよく、またはヒスチジン残基に加えて、1個以上のスペーサー残基又は配列も含んでいても良い。
【0021】
本発明の複合体中に存在する結合の正確な性質は、現在のところ正確に知られていない。1つの考えられる複合体の製法は、特定の試薬(各SO2Rは脱離基を表し、そしてR
は好ましくは、アルキル基、アリール基、アルカリル基又はアラルキル基、特にトリル基を表す。)を使用して説明され、添付図面の図1に示される。図2(a)及び2(b)は図1の方法によって調製される別の複合体を示す。図1及び2において結合は隣接したヒスチジン残基にあるが、もし間隔が複合体の形成を妨げるほど大きくない場合は、間隙を介したヒスチジン残基への結合は不可能ではないと考えられる。
【0022】
ポリヒスチジンタグを保持するのに加えて、タンパク質は、必要に応じて、誘導体化又は官能化されてもよい。特に、複合前に、感応性基表面を保護するため、天然タンパク質を様々な保護基と反応させてもよく、または本発明の方法かそれとも代わりの方法を使用して、1個以上のポリマー又は他の分子を前もって複合させてもよい。さらに、本発明の複合体は本発明に従う複合後、タンパク質に複合される1個以上の追加のポリマー(タンパク質を含む)又は他の分子を有していてもよい。本発明に従う新規な複合体、タンパク質は1又は2個の追加のポリマーに複合される、は添付図面のそれぞれ図3(a)、3(b)及び3(c)に示される。これらの図では、連結基と一緒にポリマーはA、B及びCとして概略的に示される、一方、x、y及びzはヒスチジン残基によってタンパク質に結合して複合されたポリマーA、B及びCの総数を表す。もちろん、ヒスチジン以外の残基によって1個以上のポリマーの複合もまた可能である。1個以上の追加のポリマー(タンパク質を含む)に複合されるのと同様に、タンパク質は、例えば、小分子、例えば治療学又は診断法、シアル酸、糖類、及び澱粉から選ばれる1個以上の分子と複合されてもよい。図3におけるB及びCは、それ故、そのような分子を表してもよい。さらに、図3はお互いに近傍に配置されたA、B及びCを示すが、これはただ単に概略に過ぎず、そしてそれらはお互いに離れて配置されていてもよい。
【0023】
タンパク質はIMAC法により前もって精製されるか、それともタンパク質自体又はタンパク質から誘導された生成物の精製を補助しなければならないので、商業的に提供されている多くのタンパク質は、ヒスチジンタグを含む。タンパク質をポリマーに複合することが望ましいならば、ポリヒスチジンタグへの複合は、以前は想像がつかなかった、とても便利な手段を提供する。複合された生成物、具体的にはPEG化生成物は、高度の一貫性で得られうる。2つのヒスチジン残基に複合をもたらす、国際公開2005/007197号に記載された複合試薬の使用は、一般的に高収率で得られる、特に安定的かつ選択的な複合体を導きながら、結果として大員環をもたらす。
【0024】
ポリヒスチジンタグはタンパク質表面、通常タンパク質鎖の一方の端に一般的に付着し、タンパク質の所望の部位に位置づけられ得るので、タンパク質の生物活性は、ポリヒスチジンタグの導入法の後に、及びポリマーへのポリヒスチジンタグでの部位特異的複合の次の処理後にも大いに維持される。これら理由に対し、本発明は扱いにくい従来の複合方法ということを前もって証明したタンパク質の複合体を形成するために使用され得る。
【0025】
ポリヒスチジンタグは十分な数のヒスチジン残基を含有するという条件で、本発明の複合体はIMACを使用して精製され得る。これが効率的であるように、ポリヒスチジンタグにおいて、少なくとも2個、好ましくはより多くのヒスチジン残基が非複合体のままであり、IMACカラム中ニッケルとの結合に利用可能である必要がある。遊離ヒスチジン残基ポスト複合の数の低下は、非複合ペプチド又はタンパク質と複合誘導体の間のIMACカラムとの結合において選択性を可能にする。多数の複合が同じ生体分子で起きる場合、IMACは多数複合された誘導体の分離を可能にする。
【0026】
本発明(例えばX又はX’)の複合体におけるポリマーは、例えばポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、例えばポリアクリロイルモルホリン、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド、例えば2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、又はHPMAのような、ホスファチジルコリンペンダント基と共に、ポリカルボキシメタクリルアミド又はポリアクリレート又はポリメタクリレートでもよい。さらに、ポリマーは酵素又は加水分解を受けやすくてもよい。そのようなポリマーは、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカルボネート、ポリ(イミノカルボネート)、及びポリ(アミノ酸)のような、ポリアミドを含む。前記ポリマーはホモポリマー、ランダムコポリマー又は例えばブロックポリマーのような構造的に定義されたコポリマーでもよい。例えば、それは2つ以上のアルキレンオキシド、又はポリ(アルキレンオキシド)から及びポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)のいずれかから誘導されるブロックコポリマーでよい。使用され得る多官能性ポリマーはジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸の共重合体を含む。
【0027】
天然高分子、例えばキチン、デキストラン、デキストリン、キトサン、澱粉、セルロース、グリコーゲン、ポリ(シアル酸(sialylic acid))のような多糖類及びそれらの誘導体なども使用され得る。タンパク質はポリマーとして使用され得る。これは1つのタンパク質、例えば抗体又は抗体フラグメントを、第2のタンパク質、例えば酵素又は別の活性タンパク質への複合を許す。また、触媒配列を含有するペプチド、例えばグリコシルトランスフェラーゼに対するO−グリカン受容体部位が使用される場合、基質又はその後の酵素反応に対する標的の取り込みを許す。例えばポリグルタミン酸のようなポリマーもまた使用してもよく、例えばサッカリド又はアミノ酸のような天然モノマー及び例えばエチレンオキサイド又はメタクリル酸のような合成モノマーから誘導される水素化物ポリマーのように使用してもよい。
【0028】
ポリマーがポリアルキレングリコールの場合は、これは好ましくはC2及び/又はC3単位を含有し、特にポリエチレングリコールである。ポリマー、特にポリエチレングリコールは、単一線状鎖を含有してもよく、または分岐した形態を有していてもよく、そして小なり大なりの何れか多くの鎖からなり得る。いわゆる、プルロニックはPEGブロックコポリマーの重要な類である。これらはエチレンオキサイド及びポリプロピレンオキサイドブロックから誘導される。置換ポリアルキレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコールは使用され得る。本発明の好ましい実施例では、単一鎖のポリエチレングリ
コールは適当な基、例えばアルコキシ基、具体的にはメトキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基又はヒドロキシ基により開始され、そして以下に述べるように鎖の反対側の端で連結基Q又はQ’に結合される。
【0029】
ポリマーは所望の方法で、随意に誘導体化又は官能化されてもよい。反応基はポリマー末端、又は末端基、ペンダントリンカーに設けられたポリマー鎖に沿って、連結されても良い。その場合、ポリマーは、例えばポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、又は無水マレイン酸コポリマーである。1個以上の生体分子を含有する多量複合体は、相乗的かつ付加的な利益をもたらすことができる。必要なら、従来の方法を使用して、ポリマーは担体と共役されてもよい。
【0030】
ポリマーの最適な分子量は、当然対象とする用途によって決まる。好ましくは、数平均分子量は250g/mol、例えば、500g/mol、から約75,000g/molの範囲内である。一般式Iで表される化合物が血液循環に残り、組織に浸透することを目的としている場合、例えば悪性腫瘍、感染症又は自己免疫疾患に、または外傷に起因する
炎症治療用のために、2000乃至30,000g/molの範囲でより低分子量のモノマーを使用するのが有利である。有用性のために、一般式Iで表される化合物が血液循環中にある場合には、より高分子量のモノマー、例えば20,000乃至75,000g/molの範囲内で使用するのが有利である。
【0031】
複合体が目的用途のために溶剤に溶解するように、使用されるポリマーは選択されるべきである。生物学的応用、特に診断的適用及び哺乳類への臨床治療的な投与に対する治療への応用のために、複合体は水媒体に可溶となる。酵素のような多くのタンパク質は、例えば化学反応を触媒するために、工業での有用性がある。そのような用途で使用するための複合体に対し、複合体が水及び有機媒体のいずれか又は両方に可溶である必要があるかもしれない。ポリマーは当然、タンパク質の対象とする機能をひどく低下させるべきではない。
【0032】
好ましくはポリマーは合成ポリマーであり、そして好ましくは水溶性ポリマーである。水溶性ポリエチレングリコールの使用は特に多くの用途にとって好ましい。
【0033】
連結基によってポリマーはポリヒスチジンタグと適切に共有連結している。式I中の連結基Q’は基W(例えば、Q’は式Iaで表される−Q−Wと同等であってもよい)を含んでいてもよい。連結基Q’又はQは例えば直接結合、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1乃至10のアルキレン基)、又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基、そしてそれらのいずれかは1個以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(式中、Rは下記の意味である。)、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基により終端又は中断されてもよい。適切なアリール基はフェニル基及びナフチル基を含み、一方、適切なヘテロアリール基はピリジン、ピロール、フラン、ピラン、イミダゾール、ピ
ラゾール、オキサゾール、ピリダジン、ピリミジン及びプリンを含む。ポリマーへの連結は、加水分解に不安定な結合法により、又は非不安定な結合によりされてもよい。
【0034】
随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基に存在してもよい置換基は−CN、−NO2、―CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OC
O2R、−SR、−SOR、−SO2R、−NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、
−NR’CO2R、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=
N−NR’COR、―N+R3、−N+H3、―N+HR2、―N+H2R、ハロゲン原子、例えばフッ素原子又は塩素原子、―C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR{式中、各R又
はR’は独立して水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素原子数1乃至6のアルキル基)又はアリール基(好ましくはフェニル基)を表す。}から選ばれる同一又は異なった置換基を例えば1個以上含む。電子求引置換基の存在は特に好ましい。
【0035】
好ましくは、式Iaで表される化合物において、水素原子と連結する基Qはアルキレン基又は直接結合である。最も好ましくは、式IaにおいてXはポリマーであり、またX’−QはH−である。
【0036】
Wは例えば、ケト基又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−、又は例えばCH.OH基、エーテル基CH.OR、エステル基CH.O.C(
O)R、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2、又はアミド基CH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2、のような基を還元して得られる基を表す。X
−Q−W−が一緒に電子求引基を表す場合、この基は例えばシアノ基でもよい。
【0037】
本発明の複合方法に用いられる正確な条件は、当然用いられる複合試薬、及び複合されるタンパク質又はペプチドによって決まる。そのような条件は、当業者にとって周知の事実の範囲内である。例えば、反応に対するpHは一般的に4乃至10の間であり、通常は
約6乃至約8.5の間であり、例えば約6.5乃至8.0であり、好ましくは約7.0乃至約7.5である。反応混合物中、タンパク質又はペプチドの濃度は一般的に0.20mg/mL以上であり、通常は0.4mg/mL以上であり、例えば0.5mg/mL乃至1.5mg/mLである。前記方法が国際公開2005/007197号に記載の二官能性試薬を使用する場合、該方法は(i)一般式
【化4】
(式中、
X及びX’の一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し、
Qは連結基を表し、
W’は電子求引基、例えばケト基、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2
−、又は、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W’と一緒に電子求引基を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
各Lは独立して脱離基を表す。)
で表される化合物
又は
(ii)一般式
【化5】
(式中、
少なくとも2個のヒスチジン残基を含有するタンパク質又はペプチドと共に、
X、X’、Q、W’、A及びLは一般式IIと同義であり、さらにXがポリマーを表
す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引性基Wは環を形成してもよく、
そして
mは請求1乃至4を表す。)
で表される化合物
のいずれかとの反応を含む。
【0038】
複合試薬II及びIIIはお互いに化学的に同等であり、国際公開2005/007197号に記載されている。それらは、2つの求核試薬に対して選択的である、橋かけ官能化された、潜伏的橋かけ複合化された、ビス−アルキル化された部位を有することを特徴とする。複合されるタンパク質において前記試薬が2つのヒスチジン残基と結合するような条件下で反応は行われる。2つのヒスチジン残基への高選択性が得られたことは驚くべきことである。他の複合方法は生成物の混合物を製造する傾向があり、例えば、リジン残基よりもむしろヒスチジン残基との選択的結合は難しいことが前もって知られていた。
【0039】
この又は各脱離基Lは、例えば−SR、−SO2R、−OSO2R、−N+R3、−N+H
R2、−N+H2R、ハロゲン原子、又は−OΦ[式中、Rは上記と同義で有り、そしてΦは置換されたアリール基、特に少なくとも1個の電子求引基、例えば−CN、−NO2、−
CO2R、−COH、−CH2OH、−COR、−OR、−OCOR、−OCO2R、−S
R、−SOR、−SO2R、―NHCOR、−NRCOR、−NHCO2R、−NR’CO2R、−NO、−NHOH、−NR’OH、−C=N−NHCOR、−C=N−NR’C
OR、−N+R3、−N+HR2、ハロゲン原子、特に塩素原子、特にフッ素原子、−C≡CR、−C=CR2及び−C=CHR(式中、R及びR’は上記と同義である。)]を含有するフェニル基を表す。
【0040】
X’及びW’が一緒に環を形成する典型的な構造は、
【化6】
(式中、nは整数1乃至4を表す。)
、及び
【化7】
を含む。
【0041】
1つの好ましい実施形態では、本発明に従う方法は、一般式:
【化8】
で表される新規な複合体を製造するために、一般式:
【化9】
で表される試薬を使用する。
【0042】
本発明の方法のこの実施形態の重要な特徴は、α−メチレン脱離基及び二重結合がマイケル活性化部位として機能する電子求引基と橋かけ複合されることである。橋かけ官能化試薬において、脱離基が直接置換よりもむしろ脱離する傾向にあり、また電子求引基がマイケル反応に対し最適な活性部位である場合、その結果、一連の分子内ビスアルキル化は連続的なマイケル反応及びレトロ−マイケル反応により起こり得る。脱離部位は、最初のアルキル化が起こった後まで、曝露されなかった潜在的な複合二重結合を覆う働きをし、ビス−アルキル化はJ.Am.Chem.Soc.1979,101,3098−3110及びJ.Am.Chem.Soc.1988,110,5211−5212に記載されているような一連の相互作用的マイケル反応及びレトロ−マイケル反応に由来する。ビス−アルキル化が一連のマイケル反応及びレトロ−マイケル反応により起こりうるように、電子求引基及び脱離基は適切に選ばれる。二重結合に複合される追加の多重結合と又はJ.Am.Chem.Soc.1988,110,5211−5212に記載されているような脱離基と電子求引基の間で橋かけ官能アルキル化試薬を調製することも可能である。
【0043】
本発明に従う新規な複合体のいくつかの例は、以下の
【化10】
を含む。
【0044】
本発明に従う方法で使用され得る試薬のいくつかの例は、以下の、
【化11】
を含む。
【0045】
タンパク質に対して、ヒスチジン残基は天然タンパク質又はポリヒスチジンタグのいずれかにおいて、互いにごく接近して位置しており、好ましくは互いに隣接している。もちろん、ポリエチレングリコール以外のポリマーは、上記式でPEGを取り替えてもよい。理論に束縛されることを望むことなく、ヒスチジン残基への結合は以下の式:
【化12】
に示されるが、ヒスチジン中の他の窒素原子との結合もまた可能である。
【0046】
上記方法の即時生成物は一般式Ia(式中、Wは電子求引基を表す。)で表される化合物である。そのような化合物はそれら自身に有用性がある。なぜなら、本発明の方法は適切な条件下、可逆的であり、さらに式Iaで表される化合物(式中、Wは電子求引部位を表す。)は遊離タンパク質の放出に必要とされる適用における有用性(例えば直接の臨床的応用)を有するからである。しかしながら、電子求引基Wはたんぱく質の放出を妨げる部位を生み出すために還元されてもよく、またそのような化合物は多くの臨床的、産業上及び診断用用途にもまた有用性を有する。さらに、いったんWを還元させた場合、可逆反応はもはや起こらないという事実は、より強い求核試薬が加えられたとしても、交換が一
切見られないことを意味する。それ故に、例えばポリヒスチジンタグによるPEG化、Wの還元、それからタンパク質中のジスルフィド結合の還元、そして還元されたジスルフィド結合の至る所での一連のPEG化を行うことが可能である。いくつかのタンパク質に対し、基Wの還元をしないで、そのような方法を実行することは可能である。
【0047】
このように、例えば、ケト基を含有する部位Wは、CH(OH)基を含有する部位Wを還元されてもよく、エーテル基CH.ORはエーテル化剤とヒドロキシ基の反応により得られてもよく、エステル基CH.O.C(O)Rはアシル化剤とヒドロキシ基の反応により得られてもよく、アミン基CH.NH2、CH.NHR又はCH.NR2は還元性アミノ化によりケトン又はアルデヒドから調製されてもよく;またアミドCH.NHC(O)R又はCH.N(C(O)R)2はアミンのアシル化により形成されてもよい。シアノ基で
ある基X−Q−W−はアミノ基に還元してもよい。
【0048】
前記方法は、全ての反応物質が溶解できる溶媒又は溶媒の混合物中で行われ得る。タンパク質は水性反応媒体中、一般式II又IIIで表される化合物と直接反応させてもよい。求核試薬のpH要件によって、この反応媒体は緩衝されてもよい。この反応に対する最適なpHは一般的に少なくとも6.0であり、通常、約6.8から約8.5の間であり、例えば6.5又は7.0乃至8.0であり、例えば約7.5−8.0であるが、好ましくは約7.0乃至7.5である。PEG化の方法が記載された文献は、リシン残基へのPEG化を含めて、塩基性条件は非選択的PEG化を引き起こすこと、及びヒスチジンへのPEG化はpH6.0乃至6.5が最適であることを提案するけれども、本発明に従う方法は、塩基性のpHでのヒスチジン残基(特にポリヒスチジンタグにおいて)との結合に選択的であることは驚くべきことである。その場合にも、文献に記載の方法は、リシンへのPEG化を含めて、非選択的なPEG化を提案する。最適な反応条件は当然、使用される具体的な反応物質によって決まるが、一般的に、上記範囲の下端の方でのpHの使用は、ヒスチジン結合に関する選択性を増加させる傾向がある、一方、上記範囲の上端の方でのpHの使用は収率を増加させる傾向がある。
【0049】
3乃至37℃間での反応温度は一般的に最適であり、これらの方法が起きるかもしれない温度で複合反応が行われるなら、タンパク質は障害機能を分解する又は変性するかもしれない。有機媒体(例えば、THF、酢酸エチル、アセトン)中で行われる反応は、通常室温以下の温度で行われる。
【0050】
多くの他の試薬と違って、タンパク質は試薬の化学量当量又は僅かな過剰を用いて所望の試薬と効率的に複合され得る。しかしながら、試薬は溶媒和タンパク質に用いられる水性媒体と競合反応を受けないので、過剰な化学量の試薬と複合反応を行うことは可能である。過剰の試薬及び生成物は、タンパク質の通常の精製の間、イオン交換クロマトグラフィーにより、又はニッケルを使用した分離により、容易に分離され得る。
【0051】
ポリヒスチジンタグとの複合に対し有用である化合物の別の類は、一般式:
【化13】
(式中、
X、Q、V及びV’は上記と同義であり、
W’は電子求引基を表し、そして
Lは脱離基を表す。)
で表される化合物によって表される。
そのような複合方法に由来する直接的な生成物は、式Ib(Wは電子求引基を表す。)
で表される化合物である。必要に応じて、この結果として生じる式Ibで表される化合物は、他の所望の生成物に変換され得る。具体的には、上述のように、電子求引基は還元されてもよい。
【0052】
一般式:
【化14】
で表される新規な複合体を製造するために、
一般式IVで表される特に好ましい試薬は、一般式IVa:
【化15】
(式中、
Arは未置換の又は置換されたアリール基、特にフェニル基を表し、ここで
は任意の置換基は連結基Qに含有されるアリール基に対し、上述で言及された
ものから選ばれ、そして
R、W’、v及びv’は上記と同義である。)
を有する。
【0053】
これらの好ましい化合物において、好ましくはvは0であり、そして好ましくはv’は1乃至4の整数、特に1を表す。好ましくはW’はCO基を表し、そしてWはCO基又はCH.OH基を表す。好ましくはRは炭素原子数1乃至4のアルキル−アリール基、特にp−トリル基を表す。好ましくはArは未置換のフェニル基を表す。好ましくはXはポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールを表す。
【0054】
一般式IVで表される試薬を扱うとき、その使用に対する最適な反応条件は、試薬II及びIIIとの関連において上記と同じである。
【0055】
一般式
【化16】
(式中、X、Q、W’、V及びV’は上記と同義である。)
で表される中間化合物の形成により、上記式IVで表される試薬を用いた複合方法が進行すると考えられる。複合させるための分子の存在下、式Vで表される化合物を発生させることが好ましい場合、相対的に高いpHは最適に完全に使用される。あるいは、単離段階で上記式Vで表される化合物を発生させ、そして複合させるために頻繁に分子を加えることが好ましい場合、初期段階は相対的に高いpH(例えば、7.5乃至8.0)で最適に行われ、一方、次の段階はより低いpH(例えば、6.0乃至6.5)で最適に行われる。
【0056】
上述の通り、存在するヒスチジン残基の数によって決まるので、2つ以上のポリマーは最適なタンパク質と複合されてもよい、そしてこれは図3に概略的に示される。例えば、2つのポリマーは6個の残基ヒスチジンタグと複合され得る。これは多数のポリマー残基をタンパク質に付着させる有用な方法を提供する。低分子量PEGを用いて高分子量生成物を得たいとき、例えば3つの20kDのPEG鎖を用いて60kDの分子量生成物を得たいとき、または複数の効果を得るため又は例えば単一段階でグリコシル化及びPEG化
を達成するために、2つの相違するポリマー、例えばタンパク質とPEG、を別のタンパク質に加えることを望むとき、これは望ましい。そのような多量複合は従来の複合技術で実現するのは多くの場合、困難である。
【0057】
多くのタンパク質は遊離システイン残基及び/又はジスルフィド架橋を含有し、本発明の新規な複合体を調整するのに使用される複合試薬は曝露されたシステイン残基及び還元されたジスルフィド架橋ともまた反応し得る。反応条件及びタンパク質の構造によって決まるので、それらはポリヒスチジンタグにおいてヒスチジン残基と反応するよりもむしろそのような部位と反応し得る。それ故、そのような部位及びポリヒスチジンタグを含有するタンパク質を複合することを望む場合、必要ならば最適なブロッキング手段を使用してもよい。例えば、そのような部位は、ポリマーは相対的に低分子量部位である、上述した一般式II、III又はIVに相当する試薬との複合によりブロックされてもよい。ヒスチジン残基との複合はその後、望ましい試薬を用いて行ってもよい。
【0058】
一般式Iで表される化合物は、多くの有用性がある。それらは、例えば患者への直接的な臨床的応用に使用され、そしてその結果、本発明はさらに薬学的に受容可能なキャリヤーと共に本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。本発明はさらに治療での使用、及び患者への本発明に従う薬学的有効量の化合物又は薬学的組成物の投与を含む患者を処置する方法に本発明の化合物を提供する。望ましい薬学的効果、例えば心的外傷処置、酵素補充、タンパク製剤の補充、創傷管理、毒素除去、抗炎症薬、抗感染薬、免疫調整予防接種、又は制癌は、適切なタンパク質の選択により得られる。
【0059】
本発明の化合物は非臨床的応用でもまた使用してもよい。例えば、酵素のような多くの生理的に活性な化合物は、有機溶媒中反応に触媒作用を及ぼすことができ、そして本発明の化合物はそのような用途に使用してもよい。さらに、本発明の化合物は診断用ツールとして使用されてもよい。本発明の化合物は、生体内で化合物の追跡を可能にするため、造影剤、例えばラジオヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0060】
タンパク質は、例えばペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質でもよい。
【0061】
望ましい用途により決まるので、本発明における有用性を有する、下記のいくつかの具体的なタンパク質が挙げられる。酵素は糖質−特異的酵素、タンパク質分解酵素などを含む。一般的及び治療への応用において、産業上(有機型反応)及び生物学的応用に対する、興味のある酵素は、特にUS4,179,337号に開示されているオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ及びリガーゼを含む。興味ある具体的な酵素は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アデノシン、デアミナーゼ、スーパーオキシド、ジスムターゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、ビリルビン、オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、グルタミナーゼを含む。
【0062】
本発明の化合物で使用されるタンパク質は、例えば因子VII、VIII又はIX及び他の血液因子、インスリン、ACTH、グルカゴン(glucagon)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、サイモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、黄体形成ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、ヘモグロビン、サイトカイン、抗体、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び組織プラスミノゲン活性化因子を含む。
【0063】
前記インターロイキン、インターフェロン及びコロニー刺激因子もまた非グルコシル化形態で存在し、普通、組み換えタンパク質技術による調整の結果である。非グルコシル化型は本発明で使用されてもよい。
【0064】
他の興味あるタンパク質は、ポリ(アルキレンオキサイド)のようなポリマーと複合され、そしてその結果として寛容誘導物質としての使用に適しているとき、還元されたアレルギー誘発性を有するとしてDreborg et al Crit.Rev.Therap.Drug Carrier Syst.(1990)6 315 365に開示されているアレルゲンタンパク質である。開示されているアレルギー誘発物質はブタクサ抗原性薬剤E、ミツバチ毒、ダニ・アレルゲンなどである。
【0065】
免疫グロブリン、オボアルブミン、リパーゼ、グルコセレブロシダーゼ、レクチン、組織プラスミノゲン活性化因子及びグルコシル化(glycosilated)インターロイキン、インターフェロン及びコロニー刺激因子のようなグリコポリペプチドは、IgG、IgE、IgM、IgA,IgD及びそれらのフラグメントのような免疫グロブリンとして興味ある。
【0066】
特に興味あるのは、診断及び治療目的に対する臨床医学において使用されるレセプター及びリガンド結合タンパク質及び抗体及び抗体フラグメントである。抗体は単独で使用されてもよいし又はラジオアイソトープ又は細胞毒性/抗感染症薬のような別の原子又は分子と共有複合(“充填される”)されてもよい。免疫原性のポリマー−タンパク質複合体を製造するために、エピトープはワクチン接種に用いられてもよい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明を説明する。実施例の結果は添付の図面4乃至20に示されている。実施例では、6個のヒスチジン残基のポリヒスチジンタグを含有するタンパク質pro−BNP、及び8個のヒスチジン残基のポリヒスチジンタグを含有するベータシヌクレインを使用した。心臓組織では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を134個のアミノ酸前駆物質(prepro−BNP)として合成し、そして108個のアミノ酸pro−BNPを形成するため、プロテアーゼにより開裂した。ベータシヌクレインは小さく、可溶性タンパク質は、主として心臓組織で見つかり、そしてシャペロン様活性を有する。使用された他のタンパク質は、インターフェロン α−2b、エンドスタチン、抗THF−アルファ―ドメイン抗体フラグメントである。
【0068】
実施例1:His6−proBNPの12kDa PEG化
【化17】
12kDa PEGモノ−スルホン(構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグProBNP(アブカム(Abcam)、ab41402、13kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後12kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.6μL又は4.8μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルーステイン(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図4に示す。図4では、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、供給されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abc
am)、1mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンドを示す。標識A及びBが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する。レーン3は、3当量の12kDa P
EG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンドを示す。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−pr
oBNP及び不純物にそれぞれ相当する。
その後、ゲルもまた図5に示される結果と共にPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色した。レーン1におけるバンドは標識Cが付された未反応のPEG試薬、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンドに相当する。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、それぞれ未反応のHis6−proBNP及び不純物に
相当する。12kDa PEG反応混合物の3当量から得られたレーン3は、未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンドとモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンドを示す。標識B及びAが付された下側のバンドは提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する。
【0069】
実施例2:His6−proBNPの30kDa PEG化
30kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグProBNP(アブカム(Abcam)、ab51402)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後30kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々2.0μL又は6.0μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルーステイン(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図6に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、供給されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abcam)、1
mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の30kDa PE
G
反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物に相当する標識Cが付されたバンド並びに、提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそ
れぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。レーン3は、3当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C及びD及が付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物に相当する標識A及びBが付された下
側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図7に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、提供されたHis6−proBNPのサンプル(アブカム(Abcam)、1m
g/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そして未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、P
EG不純物に相当する標識Fが付されたバンド、モノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びEが付されたバンド、そして提供されたサンプルにおいて、未反応のHis6−proBNP及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが
付された下側のバンドを示す。レーン3は3当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、PEG不純物に相当する標識Fが付されたバンド、モノ−PEG化及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びEが付されたバンド、提供されたサンプルにおいて未反応のHis6−p
roBNP及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。
【0070】
実施例3:His8−ベータシヌクレインの12kDa PEG化及び非ヒスチジンタグ
ベータシヌクレインとの比較反応
12kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.39mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、ab40545、15kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後12kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.6μL又は4.8μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図8に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質
マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1において標識Bが付されたバンドは、アブカム(Abcam)により、提供されたHis8−ベータシヌクレインのサンプル
(0.8mg/mL)である。バンドAは不純物である。レーン2は、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C及びDが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれぞれ相当する標識A及びBが付
された下側のバンドを示す。レーン3は、3当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物、トリ−PEG化生成物及びテトラ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D、E及びFが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれ
ぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図9に示す。図9において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen)を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)により提供されたHis8−ベータシヌクレインから得られる。レーン2は
、1当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物及びトリ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識C、D及びEが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン
及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。レーン3は3当量の12kDa PEG反応混合物から得られ、そしてモノ−PEG化生成物、ジ−PEG化生成物、トリ−PEG化生成物、及びテトラ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D、E及びFが付されたバンド並びに提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側の
バンドを示す。バンドCはPEG不純物である。
比較の12kDa PEG化の研究は、pH7.0において1当量のPEG試薬(2)を使用してHis8−ベータシヌクレインと非ヒスチジンタグベータシヌクレイン(アブ
カム(Abcam)、cat.no.ab48853)との間で行い、SDS−PAGEの結果を図10に示す。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(NovexSharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。His8−ベータシヌクレインの結果を
標識レーン1に示す。レーン1において、標識Bが付されたバンドは未反応のHis8−
ベータシヌクレインであり、標識Cが付されたバンドはモノ−PEG化His8−ベータ
シヌクレインである。標識2が付されたレーンは非ヒスチジンタグベータシヌクレイン反応を示し、そして可視バンドのみ標識Aが付され、非ヒスチジンタグベータシヌクレインである。レーン2にはPEG化タンパク質バンドはなかった。
【0071】
実施例4:His8−ベータシヌクレインの30kDa PEG化
30kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を5時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH7.8、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.39mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab40545、15kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後30kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量加えた(1.6μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(ノベクサン(Novexin))で染色後得られたゲルを図11に示す。図11において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)より提供されたHis8−ベータシヌクレインのサンプル(0.8mg/m
L)から得られ、標識Bが付されたバンドはポリヒスチジンタグタンパク質である、しかし一方、標識Aが付されたバンドは不純物である。レーン2は1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、モノ−PEG化生成物に相当する標識Cが付されたバンド及び提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及び不純物にそれ
ぞれ相当する標識A及びBが付された下側のバンドを示す。
その後、ゲルもまたPEGを可視化するためにヨウ化バリウムで染色し、結果として生じたゲルを図12に示す。図12において、レーンMは校正として用いられるノヴェック
ス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、アブカム(Abcam)より提供されたHis8−ベータシヌクレインから得られる。レーン
2は、1当量の30kDa PEG反応混合物から得られ、そして未反応のPEG試薬に相当する標識Cが付されたバンド、PEG不純物に相当する標識E及びGが付されたバンド、モノ−PEG化生成物及びジ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識D及びFが付されたバンド、提供されたサンプルにおいて、未反応のHis8−ベータシヌクレイン及
び不純物にそれぞれ相当する標識B及びAが付された下側のバンドを示す。
【0072】
実施例5:10kDa及び20kDa PEG試薬3とC末端上の8個のヒスチジン配列とインターフェロン(IFN) α−2bにおけるヒスチジン上のPEG化
【化18】
【0073】
第1段階:p−カルボキシ−3−ピペリジノプロプリオフェノンヒドロクロライド 3(2)の合成
【化19】
250mLの丸底フラスコをp−アセチル安息香酸(15.0g、3(1))、塩酸ピペリジン 11.11g及びp−ホルムアルデヒド 8.23gで充填した。その後、無水エタノール(90mL)及び濃塩酸(1mL)を加え、アルゴン下で撹拌させがら、得られた懸濁液を10時間加熱還流した。還流を止めた後、アセトン(150mL)を加え、この反応混合物を室温まで冷却した。得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で単離し、冷やしたアセトンで2回洗浄した。その後、固形物を真空下で乾燥し、白色の結晶粉末(3(2)、9.72g)を得た。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 1.79,2.96,3.45(br m,ピペリジン部位のCH2),3.36(
t,2H,COCH2),3.74(t,2H,NCH2),8.09(m,4H,ArH)
【0074】
第2段階:4−(3−(p−トリルチオ)プロパノイル)安息香酸 3(5)の合成
p−カルボキシ−3−ピペリジノプロプリオフェノンヒドロクロライド 3(2)(1.0g)及び4−メチルベンゼンチオール(417mg、3(3))を無水エタノール(7.5mL)及びメタノール(5mL)の混合物中で懸濁した。その後、ピペリジン(50μL)を加え、この懸濁液をアルゴン雰囲気下6時間撹拌させながら加熱還流した。室温まで冷却後、得られた白色の沈殿物をガラスフィルター(G3)で濾過し、冷やしたアセトンで注意い深く洗浄し、固形物を真空下で乾燥し、3(3)(614mg)を得た。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 2.27(s,3H,フェニル−CH3),3.24,3.39(t,2H×2,C
H2),7.14,7.26(d,2H×2,トリル基部位のArH),8.03(m,
4H,カルボン酸部位のArH)
【0075】
第3段階:4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸 3(4)の合成
4−(3―(p−トシルチオ)プロパノイル)安息香酸 3(4)(160mg)を水(10mL)及びエタノール(10mL)の混合物中で懸濁した。氷浴で冷却後、オキソン(720mg、アルドリッチ社製)を加え、一晩中(15時間)撹拌させながら、この反応混合物を室温まで温めた。得られた懸濁液がほぼ均一になり、その後混合物をクロロホルム(合計100mL)で3回抽出できるように、得られた懸濁液を追加の水で希釈した。溜まったクロロホルム抽出物を食塩水で洗浄し、その後硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させた。30℃での真空下、揮発性物質の蒸発により、白色の固形物を得た3
(4)(149mg)。
1H NMR(400 MHz、DMSO−d6)
δ 2.41(s,3H,フェニル−CH3),3.42(t,2H,CO−CH2),3.64(t,2H,SO2−CH2),7.46,7.82(d,2H×2,トリル基部位のArH),8.03(m,4H,カルボン酸部位のArH)
【0076】
第4段階:PEG化4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸、PEG試薬3の合成
4−(3―トシルプロパノイル)安息香酸3(4)(133mg)及びo−2−アミノエチル)−o’−メチル−PEG(MW 10kDa、502mg、バイオ べクトラ社製(BioVectra))を乾燥したトルエン(5mL)に溶解させた。加熱しないで真空下で溶媒を除去し、乾燥した固形残渣をアルゴン下で乾燥したジクロロメタン(15mL)に再溶解させた。得られた溶液を氷浴で冷やし、アルゴン下でジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、60mg)をゆっくりと加えた。その後、この反応混合物を一晩(15時間)室温で撹拌させた。それから、揮発性物質を真空下(30℃、水浴)で除去し、アセトン中(20mL)微温(35℃)で再溶解させた固形残渣を得た。不溶性物質を除去するため、溶液を非吸収性コットンウールで濾過した。その後、溶液をドライアイス浴で冷却し、遠心分離(4600rpm、30分間)により分離された白色の沈殿物を得た。液相をデカントし、この沈殿操作を3回繰り返した。その後、得られた純白でない固体を真空下で乾燥し、PEG試薬 3(437mg)を得た。
1H NMR(400 MHz、CDCl3)
δ 2.46(s,3H,フェニル−CH3),3.38(s,3H,PEG−OCH3),3.44−3.82(br m,PEG),7.38,7.83(d,2H×2,トリル基部位のArH),7.95(m,4H,カルボン酸部位のArH)
【0077】
第5段階:C末端のhis8タグIFN α―2bのヒスチジン上のPEG化
IFN α―2b(pH7.5、2mM EDTA及び150mM NaClを含有する10mM リン酸ナトリウム緩衝液において1.13mg/mL)の20μL溶液に1モル当量の10kDa PEG試薬3(脱イオン水中6mg/mL溶液の1.8μL)を加え、得られた溶液を室温で一晩、インキュベートした。1モル当量の20kDa PEG試薬でも繰り返し行い、再び前述した(脱イオン水中6.6mg/mL溶液の3.3μL)ような類似の方法により調製した。その後、両サンプルをSDS−PAGE(ニューページ ノーべックス 4−12% ビス−トリスゲル、MES ランニングバッファー(NuPAGE(登録商標) Novex 4−12% Bis−Trisgels、MES running buffer)、全てインビトロジェン(Invitrogen
)、及びインスタントブルーステイン(イクスペデオン(Expedeon) cat.No.ISB1L))により分析した。その結果を図13に示す。レーン1はタンパク質マーカーである。レーン2は出発IFNのみである。レーン3は10kDa PEG試薬反応の結果を示す。複合された1乃至5個のPEG鎖と共にIFNに相当する30と160kDa タンパク質マーカーとの間に5つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン4は20kDa PEG試薬反応の結果を示す。複合された1乃至3つのPEG鎖と共にIFNに相当する60と110kDa タンパク質マーカーとの間に3つのはっきりと区別できるバンドがある。レーン5は染色していない20kDa PEG試薬であり、そのためバンドは可視的ではない。レーン6は染色していない10kDa PEG試薬であり、そのためバンドは可視的ではない。
【0078】
実施例6:His8−ベータシヌクレインの5kDa PEG化
【化20】
5kDa PEGモノ−スルホン(構造(5))を3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)において、PEGビス−スルホン(構造(4))のインキュベーションにより調整した。pH7.4、50mMリン酸ナトリウム(10μL、0.38mg/mL)において、N末端の8個のヒスチジンタグベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab40545、15.4kDa)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後5kDa PEGモノ−スルホン(5)を(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々0.25μL又は0.74μL)。対照として、ベータシヌクレイン(アブカム(Abcam)、cat.no.ab48853、14.3kDa)の2つのアリコートを同じように扱い、5kDa
PEGモノ−スルホンの1モル当量(0.18μL)又は3モル当量(0.52μL)のいずれかを加えた。その後反応は室温で6時間インキュベートした。得られた反応溶液をSDS−PAGEを用いて分析し、図14に示すようにインスタントブルー(エクスペデオン(expedeon))で染色した。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1及び2はそれぞれ1当量の5kDa PEG反応混合物及び3当量のPEG反応混合物から得られる。標識Aが付されたバンドはHis8−ベータシヌクレインである。標識Aより下のか
すかなバンドはアブカム(Abcam)より提供されたタンパク質からの不純物である。B、C、D及びEを標識化したバンドは、モノ−PEG化、ジ−PEG化、トリ−PEG化、及びテトラ−PEG化タンパク質生成物にそれぞれ相当する。
【0079】
実施例7:異なったpHでのHis6−抗TNF−α ドメイン抗体フラグメントの10
kDa PEG化
10kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)において、PEGビス−スルホ
ン(実施例1における構造(1)、10mg/mL)のインキュベーションにより調整した。50mMリン酸ナトリウム、150mM塩酸ナトリウム及び2mM EDTAにおいて、C末端の6個のヒスチジンタグ抗TNFアルファドメイン抗体フラグメント(12.7kDa)溶液(0.6mg/mL)を4つの異なるpH(pH6.2、pH6.7、pH7.0及びpH7.4)で調製した。3モル当量の10kDa PEGモノ−スルホン(構造(2)、1.41μL)を4つの異なったpHそれぞれにおいてHis6−ドメイ
ン溶液に加えた(10μL、0.6mg/mL)。その後、反応を室温で3時間インキュベーションした。
得られた反応溶液をSDS−PAGEを用いて分析し、図15に示すようにインスタントブルー(エクスペデオン(expedeon))で染色した。レーンMはノヴェックス
シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1乃至4はそれぞれpH6.2、pH6.7、pH7.0及びpH7.4において、3当量の10kDa PEGを用いて反応混合物から得られる。標識Aが付されたバンドは未反応のHis6−抗TNFアルファドメイン抗体フラグメントである。標識Bが付されたバンドは、モ
ノ−PEG化ドメイン生成物である。標識C及びDが付されたバンドは、ジ−PEG化及びトリ−PEG化ドメインフラグメントにそれぞれ相当する。PEG化は4つのpHごとに見られ、pHが増加するにつれてPEG化の大きさも増加する。
【0080】
実施例8:10kDa、20kDa、30kDa及び40kDaを用いたHis6−抗T
NF−α ドメイン抗体フラグメントのPEG化
10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))を室温において3時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mg/mL)で、別々にインキュベーションし、対応するPEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を得た。PEGの濃度は10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGそれぞれに対して、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL及び40mg/mLである。50mMリン酸ナトリウム、150mM塩酸ナトリウム及び2mM EDTAにおいて、C末端の6個のヒスチジンタグ抗TNFドメイン抗体(12.7kDa)溶液(1.25mg/mL、5μL)の4つのアリコートに、その後10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGモノ−スルホン(0.74μL、1.5モル当量)を加えた。それから、反応を4℃で8時間インキュベーションした。その後、反応溶液を図16に示すようにSDS−PAGEにより分析した。レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharpprotein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は参照用にHis6−抗TNFドメイン抗体フラグメン
トである。レーン2乃至5は10kDa、20kDa、30kDa及び40kDa PEGの反応からそれぞれ得られる。標識Aが付されたバンドは未反応のHis6−抗TNF
ドメインである。標識B(B10、B20、B30及びB40)が付されたバンドは、10、20、30及び40kDa PEGに対するモノ−PEG化ドメインフラグメントにそれぞれ相当する。標識C10が付されたバンドは10kDa PEG反応に対するジ−PEG化生成物に相当し、C20バンドは20kDa PEG反応に対するジ−PEG化生成物に相当する。
【0081】
実施例9:His6−エンドスタチンの2kDa PEG化及びポリヒスチジンタグを有
さないエンドスタチンとの比較反応
2kDa PEGモノ−スルホン(実施例1における構造(2))を4時間、pH7.8、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(1mg/mL)において、PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))のインキュベーションにより調整した。pH6.2、5
0mMリン酸ナトリウム(30μL、0.5mg/mL)において、C末端の6個のヒスチジンタグエンドスタチン(カルバイオケム(Calbiochem)cat.no.324743)の2つのアリコートを氷上で冷やし、その後2kDa PEGモノ−スルホンを(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々1.4μL又は4.2μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
pH6.2、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(10μL、0.2mg/mL)において、非タグエンドスタチン(カルバイオケム(Calbiochem)cat.no.324769)の2つのアリコートもまた氷上で冷やし、その後2kDa PEGモノ−スルホン(0.1mg/mL)を(タンパク質濃度に対して)1モル当量又は3モル当量のいずれかを加えた(各々2.0μL又は6.0μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、16時間放置した。
得られた反応混合物を構成物質のサイズ依存分離のためにSDS−PAGEを用いて分析し、そしてインスタントブルー(エクスペデオン(Expedeon))で染色後得られたゲルを図17に示す。図17では、標識Mが付されたスポットの左側のカラムはノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein
markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1はHis6−エンドスタチン反応と共に1当量の2kDa PEGのサンプルから得られ、
未反応のタンパク質及びモノ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識B及びCが付されたバンドを示す。レーン2はHis6−エンドスタチン反応と共に3当量の2kDa P
EGのサンプルから得られ、未反応のタンパク質及びモノ−PEG化生成物にそれぞれ相当する標識B及びCが付されたバンドを示す。レーン3及び4はそれぞれ、エンドスタチン反応と共に1当量の2kDa PEG及びエンドスタチン反応と共に3当量の2kDa
PEGから得られる。未反応のタンパク質に相当する標識A及びBがそれぞれ付された1個のバンドにのみ、2kDa PEGだけがHis6−エンドスタチンと反応すること
を示す両反応に存在する。
【0082】
実施例10:His8−インターフェロン アルファの10、20kDa及び30kDa
PEG化及び非ヒスチジンタグインターフェロン アルファとの比較反応
N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン α−2bの溶液(2.63mL/、1.14mg/mL)を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有する、pH7.4、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製し、その後(タンパク質濃度に対して)1.7モル当量の20kDa PEGビス−スルホン(実施例1における構造(1))を加えた(脱イオン水において11.5mg/mL 20kDa PEGビス−スルホン溶液の420μL)。その後、この反応混合物を冷蔵庫に入れ、18時間放置した。得られた反応混合物をSDS−PAGEにより分析し、その結果を図18に示す。図18において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、標識Aが付されたバンドが未反応のIFNに、標識Bが付されたバンドがモノ−PEG化IFNに、標識Cが付されたバンドがジ−PEG化IFNに及び標識Dが付されたバンドがトリ−PEG化IFNに相当する反応溶液を示す。
0.5mg/mLにおける1当量の30kDa PEGとの二次反応及びN末端の8個のヒスチジン溶液は、pH7.5においてインターフェロン α−2b(3.2mL、0.793mg/mL)をタグ付けした。その結果は、60と80kDa タンパク質マーカー間の可視的なモノ−PEG化IFNバンドとの20kDa反応、ジ−PEG化IFNに相当する110と160kDa間のバンド及びトリ−PEG化IFNに相当する160と260kDa タンパク質マーカー間の第三のバンドと似ている。非ヒスチジンタグIFN α−2bとの対比は、図18のレーン2に示される結果と共に、18時間後及び同じ条件下、1当量のPEG試薬(1)との反応を示さなかった。
【0083】
実施例11:N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファへの複合に対するポリ(ビニルピロリジン)(PVP ビス−スルホン)の使用
<末端アミノ基を有するPVPの調製>
圧力管にシステアミン(0.042g)、ジオキサン(8mL)及びマグネチックスターバーを充填した。溶液を形成するために穏やかな加熱後、溶液を室温で5分間アルゴンでパージした。パージしながら、1−ビニル−2−ピロリドン(2.0g)をその後加え、さらに5分後、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(0.089g)を加えた。さらに2分後、アルゴン下で圧力管をねじぶたで封し、撹拌しながら23時間オイルバスの中に置いた。チューブと内容物を室温まで冷ました後、ポリマー生成物の沈殿物を得るため、ジエチルエーテル(15mL)を加えた。液相をデカントし固体残渣をアセトン(3mL)に再溶解した。その後、得られたアセトン溶液を迅速に撹拌されているジエチルエーテル(25mL)に一滴ずつ加え、沈殿物を真空のほんの僅かなバーストと共にno.2 焼結ガラス漏斗で単離した。固形物を未乾燥のジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、その後室温で真空下乾燥させた(質量=1.24g、白色の固体)。
<PVP−アミンへのタンパク質反応末端基の複合>
PVP−アミン(500mg)、4−[2,2−ビス[(p−トリルスルホニル)メチル]アセチル]−安息香酸(125mg)、及び4−ジメチルアミノピリジン(6mg)をアルゴン下、無水ジクロロメタン(10ml)で混合し、その後撹拌しながら、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(80μL)を加えた。得られた混合物を室温で20時間撹拌し、その後非吸収性コットン−ウールを通して濾過した。それから濾液にジエチルエーテル(20mL)を加え、得られた沈殿物を遠心分離(2,000rpm、2分間、2℃)により単離した。液相をデカントし、残りの残渣を数分間、酢酸エチル(5mL)でボルテックス(vortex)した。酢酸エチル層をデカント後、固形残渣をジクロロメタン(5mL)に再溶解し、その後酢酸エチル(15mL)を加えた。溶液を15分間ドライアイス内に置き、その後遠心分離(2,000rpm、2分間、2℃)により単離された固形物の沈殿物を得た。得られた粘着性の残渣を未乾燥の酢酸エチル(5mL)でボルテックスし、その後室温で真空下乾燥した(質量=0.118g)。
<PVP ビス−スルホンの分別>
上述の段階で得られた固形物をpH 4.0、水性の20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM NaClで混合し、その後澄明な液が可視的になるまで13,000rpmで遠心分離機にかけた。液相を固形残渣から除去し、その後溶出ピークの間1分ごとに留分を集めることにより1mL/minにおいて20mM酢酸ナトリウム緩衝液、150mM、pH4.0を稼動させながら、HiLoad 16/60 Superdex(登録商標) 200 prep grade size exclusion column(GEヘルスケア(GE Healthcare))で分別した。72〜80分の間で溶出した留分はタンパク質複合に使用される。
<N末端の8個のヒスチジンタグIFN アルファへのPVP複合化>
IFN(0.025mg、0.5mg/mL)を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製した。IFN(25μg、0.5mg/mL)の50μLに分別PVP ビス−スルホン(留分72分、74分、78分及び80分)を50μL加えた。得られた溶液を静かに混合し、4℃で一晩放置した。結果として得られた反応溶液をSDS−PAGEにより分析し、その結果を図19に示す。図19において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン2乃至5は使用された異なった
サイズのPVP試薬留分からの反応溶液を示す(2〜5それぞれからの72〜80分のPVP留分)。標識Bが付されたバンドは得られたモノ−及び多量PVP化IFNを示す。
【0084】
実施例12:N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファを用いてインターフェロン アルファとインターフェロン アルファの多量複合
【化21】
N末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン α−2b(50μL、1.14mg/mL)の溶液を150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製し、その後(タンパク質濃度に対して)0.125モル当量の10kDa PEG二官能性のPEG試薬(6)を加えた(水において(6)の8mg/mL溶液の0.47μL)。反応を室温で18時間放置した。得られた反応混合物をSDS−PAGEにより分析した。IFN−PEG−IFN融合複合体に相当するインスタントブルー(エクスペデオン(Expedeon))で撹拌後、得られたゲルは50kDaと60kDa ノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))の間のバンドを示した。
【0085】
実施例13:遊離システインを含有するヒト血清アルブミン(HSA)とN末端の8個のヒスチジンタグインターフェロン アルファの多量複合
150mM塩酸ナトリウム(PBS)を含有するpH7.5、50mMリン酸ナトリウム緩衝液で調製したN末端の8つのヒスチジンタグインターフェロン α−2b(1mL、1.14mg/mL)の溶液にヒト血清アルブミン(IFNに対して3モル当量、10.77mg)を加え、溶解させた。この溶液に10kDa PEGビス(ビス−スルホン)(実施例12における構造(6))(IFNに対して1モル当量、水において8mg/mL 10kDa PEGビス(ビス−スルホン)(6)溶液の75μL)を加えた。この反応混合物を室温で18時間放置した。得られた反応混合物をイオン交換クロマトグラフィー、続いて金属イオンアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、その後SDS−PAGEにより分析し、その結果を図20に示す。図20において、レーンMは校正として用いられるノヴェックス シャープ タンパク質 マーカー(Novex Sharp protein markers)(インビトロジェン(Invitrogen))を示す。レーン1は、標識Aが付されたバンドは未反応のIFNであり、標識Bが付されたバンドはモノ−PEG化IFNであり、標識Cが付されたバンドはIFN−PEG−IFNであり、そして標識Dが付されたバンドはIFN−PEG−アルブミンである精製された反応溶液を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はペプチドに複合されたポリマーを含む化合物であって、前記複合はポリヒスチジンタグを介している化合物。
【請求項2】
前記ポリヒスチジンタグは2乃至12個のヒスチジン残基を含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリヒスチジンタグは4乃至10個のヒスチジン残基を含有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリマーがポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、アルキレンオキシドとポリエステルのコポリマー、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)、ポリサッカリド、タンパク質、ポリグルタミン酸、サッカリド又はアミノ酸及び合成モノマーのコポリマー、又はジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマーである、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリマーがポリアルキレングリコールである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリマーがC2及び/又はC3単位を含有する、ポリアルキレングリコールである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記ポリマーがタンパク質である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記複合タンパク質又はペプチドがペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記複合タンパク質又はペプチドが抗体又は抗体フラグメントである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記複合タンパク質又はペプチドが感応性基表面を保護するため、1つ以上の保護基と反応する天然タンパク質、又は1個以上のポリマー、治療学又は診断法、シアル酸、糖類、及び/又は澱粉である小分子と付加的に複合するタンパク質である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
一般式
【化1】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zは各ヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチドを表
し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
各Qは独立して直接結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基、そしてそれらのいずれかは1個以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(式中、Rは水素原子又はアルキル基又はアリール基、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基を表す。)により終端又は中断されてもよい、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記Qがアルキレン基又は直接結合である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記Wがケト基又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−、又はそのような基の還元により得られる基、又はX−Q−W−が一緒に電子求引基
を表す、請求項13又は請求項14のいずれか一項に記載された化合物。
【請求項16】
前記Xがポリマー、及びX’−Q−がH−である、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
一般式
【化2】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Qは連結基を表し、
Wは電子求引性基又は電子求引性部位の還元により調整される部位を表し、
vは0又は1乃至4の整数を表し、
v’は1乃至8の整数を表し、そして
Zはポリヒスチジンタグによって結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
によって表される化合物である、請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記vが0である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記ポリヒスチジンタグにより複合が起こるような条件下、ポリマー複合試薬をポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドと反応させることを含む、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項20】
一般式
【化3】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zはそれぞれヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチド
を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物。
【請求項21】
前記各ヒスチジン残基は天然タンパク質又はペプチド中に存在する、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
(i)一般式
【化4】
(式中、
X及びX’の一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し、
Qは連結基を表し、
W’は電子求引基を表し、又は、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W’と一緒
に電子求引基を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、
Bは結合又は炭素原子数1ないし4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
各Lは独立して脱離基を表す。)
で表される化合物
又は
(ii)一般式
【化5】
(式中、
少なくとも2個のヒスチジン残基を含有するタンパク質又はペプチド、及び必要に応
じて、電子求引性基Wを還元すると共に、
X、X’、Q、W’、A及びLは一般式IIと同義であり、さらにもしくは、Xがポ
リマーを表す場合、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引性基Wは環を形成しても
よく、そして
mは請求1乃至4を表す。)
で表される化合物
のいずれかとの反応を含む、請求項12乃至16、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項23】
約6.8乃至約8.5の範囲のpHで行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
約7.0乃至約8.0の範囲のpHで行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
約7.5乃至約8.0の範囲のpHで行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
薬学的に受容可能なキャリヤーと共に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
治療用に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物、又は請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
患者に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物、又は請求項26に記載の薬学的組成物の薬学的有効量を投与することを含む、患者の治療方法。
【請求項1】
タンパク質又はペプチドに複合されたポリマーを含む化合物であって、前記複合はポリヒスチジンタグを介している化合物。
【請求項2】
前記ポリヒスチジンタグは2乃至12個のヒスチジン残基を含有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリヒスチジンタグは4乃至10個のヒスチジン残基を含有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリマーがポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、HPMAコポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアミド、アルキレンオキシドとポリエステルのコポリマー、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、又はポリ(アミノ酸)、ポリサッカリド、タンパク質、ポリグルタミン酸、サッカリド又はアミノ酸及び合成モノマーのコポリマー、又はジビニルエーテル−無水マレイン酸及びスチレン−無水マレイン酸のコポリマーである、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリマーがポリアルキレングリコールである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記ポリマーがC2及び/又はC3単位を含有する、ポリアルキレングリコールである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記ポリマーがタンパク質である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記複合タンパク質又はペプチドがペプチド、ポリペプチド、抗体、抗体フラグメント、酵素、サイトカイン、ケモカイン、レセプター、血液因子、ペプチド・ホルモン、毒素、転写タンパク質、又は多量体タンパク質である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
前記複合タンパク質又はペプチドが抗体又は抗体フラグメントである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記複合タンパク質又はペプチドが感応性基表面を保護するため、1つ以上の保護基と反応する天然タンパク質、又は1個以上のポリマー、治療学又は診断法、シアル酸、糖類、及び/又は澱粉である小分子と付加的に複合するタンパク質である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
一般式
【化1】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zは各ヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチドを表
し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物である、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
各Qは独立して直接結合、炭素原子数1乃至10のアルキレン基、又は随意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基、そしてそれらのいずれかは1個以上の酸素原子、硫黄原子、−NR基(式中、Rは水素原子又はアルキル基又はアリール基、ケト基、−O−CO−基及び/又は−CO−O−基を表す。)により終端又は中断されてもよい、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記Qがアルキレン基又は直接結合である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記Wがケト基又はアルデヒド基CO、エステル基−O−CO−又はスルホン基−SO2−、又はそのような基の還元により得られる基、又はX−Q−W−が一緒に電子求引基
を表す、請求項13又は請求項14のいずれか一項に記載された化合物。
【請求項16】
前記Xがポリマー、及びX’−Q−がH−である、請求項13乃至15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
一般式
【化2】
(式中、
Xはポリマーを表し、
Qは連結基を表し、
Wは電子求引性基又は電子求引性部位の還元により調整される部位を表し、
vは0又は1乃至4の整数を表し、
v’は1乃至8の整数を表し、そして
Zはポリヒスチジンタグによって結合したタンパク質又はペプチドを表す。)
によって表される化合物である、請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記vが0である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記ポリヒスチジンタグにより複合が起こるような条件下、ポリマー複合試薬をポリヒスチジンタグを含有するタンパク質又はペプチドと反応させることを含む、前記請求項のうちのいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項20】
一般式
【化3】
(式中、
X及びX’の1つはポリマーを表し、そして他方は水素原子を表し、
各Qは独立して連結基を表し、
Wは電子求引性部位又は電子求引性部位の還元により調製される部位を表し、
もしくは、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W−は一緒に電子求引性基を表
してもよく、そして更に、
もしくは、Xがポリマーを表す場合は、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引
性基Wは環を形成してもよく、
Zはそれぞれヒスチジン残基によってA及びBに連結されたタンパク質又はペプチド
を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
Bは結合又は炭素原子数1乃至4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表す。)
で表される化合物。
【請求項21】
前記各ヒスチジン残基は天然タンパク質又はペプチド中に存在する、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
(i)一般式
【化4】
(式中、
X及びX’の一方はポリマーを表し、他方は水素原子を表し、
Qは連結基を表し、
W’は電子求引基を表し、又は、X’がポリマーを表す場合は、X−Q−W’と一緒
に電子求引基を表し、
Aは炭素原子数1乃至5のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、
Bは結合又は炭素原子数1ないし4のアルキレン又はアルケニレン鎖を表し、そして
各Lは独立して脱離基を表す。)
で表される化合物
又は
(ii)一般式
【化5】
(式中、
少なくとも2個のヒスチジン残基を含有するタンパク質又はペプチド、及び必要に応
じて、電子求引性基Wを還元すると共に、
X、X’、Q、W’、A及びLは一般式IIと同義であり、さらにもしくは、Xがポ
リマーを表す場合、中間にある原子と一緒にX’及び電子求引性基Wは環を形成しても
よく、そして
mは請求1乃至4を表す。)
で表される化合物
のいずれかとの反応を含む、請求項12乃至16、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項23】
約6.8乃至約8.5の範囲のpHで行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
約7.0乃至約8.0の範囲のpHで行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
約7.5乃至約8.0の範囲のpHで行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
薬学的に受容可能なキャリヤーと共に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
治療用に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物、又は請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
患者に、請求項1乃至18、20及び21のうちのいずれか一項に記載の化合物、又は請求項26に記載の薬学的組成物の薬学的有効量を投与することを含む、患者の治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−540677(P2010−540677A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528477(P2010−528477)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003409
【国際公開番号】WO2009/047500
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510099774)ポリテリクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003409
【国際公開番号】WO2009/047500
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510099774)ポリテリクス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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