説明

新規な黄色顔料及び非水性顔料分散体

顔料の全重量に基づいて少なくとも70重量%の式(I)による第一化合物COPを含み、かつ顔料の全重量に基づいて2.0〜30.0重量%の式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を有するカラー顔料:


式中、R及びRの一方は水素であり、R及びRの他方は−COORを表わし;
及びRはメチルを表わし;
は以下のものからなる群から選択される:


但し、Cは式(I)中の窒素に対するRの結合部分を表わし、第二化合物SECにおいてR,R,R,R及びRはR及びRの少なくとも一方が水素を表わすことを除いて上記と同じ意味を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面変性されたアゾ顔料、及びこれらの顔料を含む非水性顔料分散体及び着色インクジェットインクに関する。本発明はまた、顔料及びその非水性顔料分散体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料分散体は分散剤を使用して作られる。分散剤は分散媒体中の顔料粒子の分散の形成及び安定化を促進するための物質である。分散剤は一般に、アニオン、カチオン又はノニオンの構造を有する界面活性剤である。分散剤の存在は必要な分散エネルギーを実質的に低下させる。分散された顔料粒子は分散操作後、相互の引力によって再凝集する傾向を持ちうる。分散剤の使用はまた、顔料粒子のこの再凝集傾向を妨げる。
【0003】
分散剤はインクジェットインクのために使用されるときに特に高い条件に合致しなければならない。不適切な分散はそれ自体、液体系の粘度の増大、光沢の損失及び/又は色相のシフトとして出現する。さらに、顔料粒子の特に良好な分散はインクジェットプリンターにおける印刷ヘッドのノズル中の顔料粒子の通過を妨げないことを確実にすることが要求される。顔料粒子は通常、直径数マイクロメートルにすぎない。さらに、顔料粒子の凝集及びプリンターノズルの関連する閉塞はプリンターの待機時間で避けなければならない。
【0004】
多くのポリマー分散剤は分子の一部にいわゆるアンカー基を含み、それが分散される顔料上に吸着する。分子の空間的に別の部分において、ポリマー分散剤は突出するポリマー鎖を持ち、それによって顔料粒子は分散媒体と適合可能にされる(即ち、安定化される)。
【0005】
水性インクジェットインクでは、ポリマー分散剤は一般に、顔料表面に対して高い親和性を示す疎水性アンカー基、及び水性分散媒体において顔料を分散するための親水性ポリマー鎖を含む。
【0006】
サブミクロン粒子を有する良好な熱安定性の分散体の製造は溶剤系、油系及び放射線硬化性インクジェットインクの如き非水性インクジェットインクについて難しい。顔料は、それらが非極性表面を持つときに分散することが特に難しい。
【0007】
これらの問題は、アンカー基が顔料誘導体である極めて特殊なポリマー分散剤の設計に導く。EP 0763378 A(TOYO INK)は、顔料と高い親和性を持ちかつ線状ウレタンポリマー及び線状アクリルポリマーから選択される少なくとも一つのポリマーの一つの末端だけ又はその両末端に有機色素、アントラキノン及びアクリドンからなる群から選択された少なくとも一つのタイプを有する部分を持つ非水性タイプの顔料分散剤、及び顔料を含む顔料組成物を開示する。
【0008】
非水性分散媒体における非極性表面を有する顔料を分散するための別のアプローチは分散相乗剤として知られる化合物の添加によって表面をより極性に変化することである。分散相乗剤は顔料の表面上のポリマー分散剤の吸着を促進する化合物である。相乗剤は一つ以上のスルホン酸基又はそのアンモニウム塩によって置換された顔料構造を持つべきであることが提案される。
【0009】
US 4461647(ICI)は、二つの一価末端基にアゾ基を通して結合された酸性又は他のイオン性置換基を持たない中央の二価基を含む水不溶性非対称ジアゾ化合物を含有する有機液体における顔料の分散体であって、第一に、一方の末端基が酸性又は他のイオン性置換基を持たないこと、第二に、他方の末端基が単一置換されたアンモニウム酸塩基を担持することを特徴とするものを開示する。
【0010】
US 4057436(ICI)は、置換されたアンモニウムイオンのN原子に結合された少なくとも三つの鎖に含まれる16〜60個の炭素原子がある色素酸の置換されたアンモニウム塩の存在下でポリマー又は樹脂分散剤を使用する有機液体における顔料分散体を開示する。
【0011】
US 6641655(AVECIA)は、流動化剤としてジ四級アンモニウム塩の色素酸の使用を開示し、そこではジ四級アンモニウムカチオンは二つ以上の窒素原子を含有する。
【0012】
これらの分散相乗剤は幾つかの顔料に対して良好に作用するが、多くの他の顔料は非水性媒体において許容可能な品質で分散されることができない。これはC.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213の如き黄色アゾ顔料に対して当てはまり、それらに対して安定した非水性顔料分散体、特に安定した非水性インクジェットインクを得ることは難しい。
【0013】
カラー顔料の表面変性の様々な技術が調査されている。GB 1080115(KOEGE KEMISK VAERK)は凝集に対して高い抵抗性を有する容易に分散可能な顔料を開示し、それは自由塩基として全体的に又は部分的に存在する長鎖脂肪族アミンの8〜25%との接触に水の存在下で顔料をもたらし、その後顔料を乾燥することによって生成される。
【0014】
US 4220473(SUN CHEMICAL)では、アゾアクリルアミド顔料の特性はそれらをダイマー酸ベースのアミンで処理することによって改良される。
【0015】
合成後の粗顔料は通常、顔料を精製するためにさらなる処理を必要とする。US 4370269(HOECHST)では、モノアゾ顔料は単に水で洗浄することによって精製される。
【0016】
US 4124582(HOECHST)は、アゾ顔料の精製のための方法を開示し、粗顔料は9〜12、好ましくは11〜12のpHで20〜80℃の温度で水性アルカリ性溶液で一定時間攪拌され、続いて粗顔料は濾別され、中性で洗浄される。この方法によって処理された顔料はクリアで光り輝く色相を示し、熱可塑材料中に含有されるときに未処理顔料よりブリードが速い。
【0017】
顔料を洗浄及び乾燥するこの最後の工程は通常、顔料の「最終」工程として顔料製造業者によって言及されている。US 2006167236(CLARIANT)は、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属アルコキシドからなる群から選択される塩基の存在下で少なくとも一つの有機溶媒における仕上げ又はpH≧9のアルカリでの少なくとも一つの有機溶媒を含有する水溶液における仕上げにアゾカップリング化合物を供することによって、C.I.Pigment Yellow 155に対して幾らかの類似度を持つジアゾ顔料を製造するための方法を開示する。
【0018】
一貫した像品質について、インクジェットインクは、顧客へのインクの輸送時の高温(60℃以上)、高温での噴射、及び使用時のインクジェットインクの分散媒体の変化、例えば溶媒の蒸発及び保湿剤、浸透剤及び他の添加剤の濃度の増大に対処できる分散安定性を要求する。
【0019】
それゆえ、高い分散品質及び安定性を示す非水性媒体において顔料としてC.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175又はC.I.Pigment Yellow 213を含む顔料インクジェットインクを製造することができることが極めて望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、高い分散品質及び安定性を示す黄色非水性顔料分散体を製造するための新規な黄色顔料を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は以下の記載から明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
高い分散品質及び安定性の非水性顔料分散体が実在する黄色顔料の特別な変性によって得られることが見出された。
【0023】
本発明の目的は、顔料の全重量に基づいて少なくとも70重量%の式(I)による第一化合物COPを含み、かつ顔料の全重量に基づいて2.0〜30.0重量%の式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を有するカラー顔料で実現される:

式中、R及びRの一方は水素であり、R及びRの他方は−COORを表わし;
及びRはメチルを表わし;
は以下のものからなる群から選択される:

但し、Cは式(I)中の窒素に対するRの結合部分を表わし、第二化合物SECにおいてR,R,R,R及びRはR及びRの少なくとも一方が水素を表わすことを除いて上記と同じ意味を有する。
【0024】
本発明の目的はまた、以下の工程を含むカラー顔料の製造方法で実現される:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む液体媒体を準備する;
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COOR
の一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する;及び
c)液体媒体を除去して乾燥カラー顔料を得る。
【0025】
本発明の目的はまた、以下の工程を含む非水性顔料分散体の製造方法で実現される:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む非水性液体媒体を準備する;及び
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COORの一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
定義
本発明の開示に使用される用語「着色剤」は染料(色素)及び顔料を意味する。
【0027】
本発明の開示に使用される用語「染料(色素)」はそれが関係する周囲条件下で適用される媒体において10mg/L以上の溶解性を有する着色剤を意味する。
【0028】
用語「顔料」はDIN55943(ここに参考として組み入れられる)において関係する周囲条件下で適用媒体において実際に不溶解性である(即ち、その媒体において10mg/Lより小さい溶解性を有する)着色剤として規定される。
【0029】
本発明の開示に使用される「固溶体」と同義語である用語「混合結晶」は、二つ以上の成分の固体の均一混合物を意味し、それは特定の制限内で組成を変化したり均一のままでもよい。混合結晶はまた、固溶体としても言及される。固溶体では、成分の分子は同じ結晶格子(通常、成分の一つの格子であるが、必ずしもそうではない)中に入る。
【0030】
用語「C.I.」はカラーインデックスの略語として本願の開示に使用される。
【0031】
本発明の開示に使用される用語「化学線」は光化学反応を開始することができる電磁線を意味する。
【0032】
本発明の開示に使用される用語「スペクトル分離率(spectral separation factor)」は最大吸光度Amax(波長λmaxで測定)のより高い波長λrefで測定された参照吸光度Arefに対する比率を計算することによって得られた値を意味する。
【0033】
本発明の開示に使用される「SSF」はスペクトル分離率の略語である。
【0034】
用語「アルキル」はアルキル基における炭素原子の各数に対して可能な全ての変形を意味し、例えば三つの炭素原子に対してはn−プロピル及びイソプロピルであり、四つの炭素原子に対してはn−ブチル、イソブチル及びターシャリブチルであり、五つの炭素原子に対してはn−ペンチル、1−1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどである。
【0035】
本発明の開示に使用される用語「カルボキシル基」はカルボン酸(即ち、−COOH)の官能基を意味する。それはまた、カルボキシ基として知られる。
【0036】
本発明の開示に使用される用語「加水分解」はカルボキシル基へのエステル基の変換を意味する。
【0037】
カラー顔料
C.I.Pigment Yellow 120の如きカラー顔料は通常、二つのメチルエステル基を含む芳香族アミンのジアゾ化、及びそれに続く5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンとのカップリングによって製造される。少なくとも一つのカルボキシル基を含む少量の芳香族アミンと二つのメチルエステル基を含む芳香族アミンの混合物のジアゾ化、及びそれに続く5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンとのカップリングは混合結晶に導き、そこでは少なくとも一つのカルボキシル基を含む化合物のほとんどは結晶の塊中に位置されるだろう。顔料表面上に少なくとも一つのカルボキシル基を含む化合物の量の実質的な増大を得るためには、少なくとも一つのカルボキシル基を含む多量の芳香族アミンを含む混合物を使用することが必要であるだろう。しかしながら、これはカラー顔料の特性の変化、例えば天候堅牢度、溶剤堅牢度及びアルカリ環境に対する堅牢度の低下に導くだろう。
【0038】
混合結晶の塊中にある少なくとも一つのカルボキシル基を含む化合物は分散品質及び安定性を改良することができない。これらの化合物は特定の量で顔料表面上に存在することが必須である。良好な分散品質及び安定性は顔料の全重量に基づいて少なくとも70重量%の式(I)による第一化合物COPを含み、かつ顔料の全重量に基づいて2.0〜30.0重量%の式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を有するカラー顔料に対して観察された:

式中、R及びRの一方は水素であり、R及びRの他方は−COORを表わし;
及びRはメチルを表わし;
は以下のものからなる群から選択される:

但し、Cは式(I)中の窒素に対するRの結合部分を表わし、第二化合物SECにおいてR,R,R,R及びRはR及びRの少なくとも一つが水素を表わすことを除いて上記と同じ意味を有する。
【0039】
好ましい実施態様では、式(I)による第二化合物SECはカラー顔料の全重量に基づいて好ましくは少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%、最も好ましくは少なくとも5.0重量%を表わす。式(I)による第二化合物SECの上限はカラー顔料の全重量に基づいて好ましくは最大25.0重量%、より好ましくは最大20.0重量%、最も好ましくは最大15.0重量%を表わす。
【0040】
カラー顔料における式(I)による第一化合物COPはC.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料の化学構造と一致することが好ましい。
【0041】
最も好ましい実施態様では、式(I)による第二化合物SECは、R及びRの少なくとも一方が水素を表わすことを除いて式(I)による第一化合物COPと同一である。
【0042】
好ましい実施態様では、カラー顔料は式(I−a)によって表される式(I)による第二化合物SECを有する:

式中、R及びRは独立して水素及びメチルからなる群から選択され、但しR及びRの少なくとも一方は水素を表わすか又はR及びRはともに水素を表わす。最も好ましくは、式(I−a)による第二化合物SECとともに使用される式(I)による第一化合物COPはC.I.Pigment Yellow 120の化学構造を有する。
【0043】
別の好ましい実施態様では、カラー顔料は式(I−b)によって表される式(I)による第二化合物SECを有する:

式中、R及びRは独立して水素及びメチルからなる群から選択され、但しR及びRの少なくとも一方は水素を表わすか又はR及びRはともに水素を表わす。最も好ましくは、式(I−b)による第二化合物SECとともに使用される式(I)による第一化合物COPはC.I.Pigment Yellow 175の化学構造を有する。
【0044】
別の好ましい実施態様では、カラー顔料は式(I−c)によって表される式(I)による第二化合物SECを有する:

式中、R及びRは独立して水素及びメチルからなる群から選択され、但しR及びRの少なくとも一方は水素を表わすか又はR及びRはともに水素を表わす。最も好ましくは、式(I−c)による第二化合物SECとともに使用される式(I)による第一化合物COPはC.I.Pigment Yellow 155の化学構造を有する。
【0045】
別の好ましい実施態様では、カラー顔料は式(I−d)によって表される式(I)による第二化合物SECを有する:

式中、R及びRは独立して水素及びメチルからなる群から選択され、但しR及びRの少なくとも一方は水素を表わすか又はR及びRはともに水素を表わす。最も好ましくは、式(I−d)による第二化合物SECとともに使用される式(I)による第一化合物COPはC.I.Pigment Yellow 213の化学構造を有する。
【0046】
また、例えば一つ及び二つのカルボキシル基を含む式(I−a)による化合物の混合物の如き式(I)による二つ以上の第二化合物の混合物を使用することもできる。また、化学構造がさらに異なる式(I)による二つ以上の第二化合物の混合物、例えば式(I−a)及び(I−d)による第二化合物の混合物を使用することができる。
【0047】
カラー顔料の製造
本発明によるカラー顔料は多数の方法で製造されることができ、例えば顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COORの一つ又は二つを加水分解すること、カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加すること又は両方の組み合わせである。一般に、顔料表面上に位置される式(I)による第一化合物COPの一つのメチルエステル基がHSO又はHClの如き強酸を使用することによって加水分解されることが観察された。他方、NaOHの如き強塩基の使用は一般に、顔料表面上の式(I)による第一化合物COPの二つのメチルエステル基の加水分解を含む。NaOHの加水分解に続いて酢酸の如き弱酸が添加され、式(I)による第二化合物SECにおいてカルボキシル基が得られる。式(I)による第二化合物SECは非水性溶液で添加されることができる。
【0048】
別の方法は合成によって式(I)による第二化合物SECを製造することである。例えば、式(I−d)による第二化合物SECは、少なくとも一つのカルボキシル基を含む芳香族アミンのジアゾ化の後にN−(アセトアセチル)−7−アミノ−6−メトキシ−2,3−キノキサリンジオンとのカップリング反応を行なうことによって製造されることができる。式(I−d)によるこの第二化合物SECは単にそのまま、より好ましくは溶液の形で、式(I)による第一化合物COPによる構造を有するカラー顔料を含む液体媒体に、又は(部分的な)加水分解処理を既に受けたカラー顔料を含む液体媒体に添加されることができる。
【0049】
好ましい実施態様では、カラー顔料の製造方法は以下の工程を含む:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む液体媒体を準備する;
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COOR
の一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する;及び
c)液体媒体を除去して乾燥カラー顔料を得る。
【0050】
好ましい実施態様では、カラー顔料を含む液体媒体に添加された式(I)による第二化合物SECはカラー顔料より小さい分子量を有する。
【0051】
カラー顔料を製造するための方法の工程a)に使用されるカラー顔料はプレスケーキ、好ましくは適当に湿ったプレスケーキの形で、又は乾燥状態で、例えば顆粒又は粉末の形で使用されることができる。好ましい実施態様では、工程a)に使用されるカラー顔料は合成直後に得られたカラー顔料であり、それはまだ乾燥されていない。
【0052】
カラー顔料を製造するための方法に使用される液体媒体は水であることができる。好ましい実施態様では、液体媒体は水性媒体である。カラー顔料を製造するために水性液体媒体を使用する代わりに、非水性液体媒体を使用することも可能である。これは、非水性顔料分散体又は非水性インクジェットインクが後で製造されなければならず、従って顔料の乾燥を避けるとき、有利に使用されることができる。
【0053】
本発明の方法は懸濁液の全重量に基づいて1〜50重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは3〜17.5重量%のカラー顔料を含有する懸濁液で実施されることが好ましい。多量の溶媒を使用することができるが、これは不経済になりうる。少量の溶媒の場合では、混合物の攪拌性が損なわれうる。
【0054】
仕上げのための好適な有機溶媒は1〜20個、特に1〜10個の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール(例えばn−ブタノール、イソブタノール及びターシャリブタノール)、ペンタノール(例えばn−ペンタノール及び2−メチル−2−ブタノール)、ヘキサノール(例えば2−メチル−2−ペンタノール及び3−メチル−3−ペンタノール)、ヘプタノール(例えば2−メチル−2−ヘキサノール及び3−エチル−3−ペンタノール)、オクタノール(例えば2,4,4−トリメチル−2−ペンタノール)、シクロヘキサノール;又はグリコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール)、又はグリセロール;ポリグリコール(例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール);エーテル(例えばメチルイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はジオキサン);グリコールエーテル(例えばエチレングリコール又はプロピレングリコールのモノアルキルエーテル又はジエチレングリコールモノアルキルエーテル(アルキルはメチル、エチル、プロピル、及びブチルであってもよい))、ブチルグリコール又はメトキシブタノール;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、特に350〜550g/molの平均モル質量を有するもの、及びポリエチレングリコールジメチルエーテル、特に250〜500g/molの平均モル質量を有するもの;ケトン(例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン);脂肪酸アミド(例えばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド);ウレア誘導体(例えばテトラメチルウレア);又は環状カルボキシアミド(例えばN−メチルピロリドン、バレロラクタム又はカプロラクタム);エステル(例えばカルボン酸C−Cアルキルエステル、例えばブチルホルメート、エチルアセテート又はプロピルプロピオネート);又はカルボン酸C−Cグリコールエステル;又はグリコールエーテルアセテート(例えば1−メトキシ−2−プロピルアセテート);又はフタル酸又は安息香酸C−Cアルキルエステル(例えばエチルベンゾエート);環状エステル(例えばカプロラクトン);ニトリル(例えばアセトニトリル又はベンゾニトリル);脂肪族又は芳香族炭化水素(例えばシクロヘキサン又はベンゼン);又はアルキル、アルコキシ、ニトロ又はハロ置換ベンゼン(例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン又はブロモベンゼン);又は他の置換芳香族(例えば安息香酸又はフェノール);芳香族複素環式(例えばピリジン、モルフォリン、ピコリン、キノリン);及びヘキサメチル燐アミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;スルホン及びスルホキシド(例えばジメチルスルホキシド及びスルホン);及びこれらの溶媒の混合物を含む。選択するとき、溶媒は選択された条件下で安定であることを確実にするべきである。
【0055】
水性液体媒体の場合には、液体媒体の少なくとも2.5重量%、好ましくは少なくとも5重量%、特に少なくとも7.5重量%が有機溶媒であることが有利である。特に好ましい溶媒はC−Cアルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール及びターシャリブタノール、ターシャリアミルアルコール、ブチルグリコール、ジメチルホルムアミド、N−N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。
【0056】
液体媒体の全重量に基づいて2.5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%、特に7.5〜75重量%の有機溶媒を含有する水性液体媒体が好ましい。
【0057】
好ましい実施態様では、加水分解は塩基を使用することによって達成される。好適な塩基はアルカリ金属水酸化物、好適にはそれらの水溶液の形のもの、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、又はアルカリ金属アルコキシドを含み、そこではアルカリは特にナトリウム又はカリウムであり、アルコキシドは好ましくはC−Cアルコールから誘導され、例えばナトリウム又はカリウムメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ターシャリブトキシド及びターシャリペントキシドである。アルカリ金属アルコキシドはまた、対応するアルコールとアルカリ金属、アルカリ金属ハイドライド又はアルカリ金属アミドとの反応によってその場で製造されてもよい。
【0058】
使用される塩基の量は、生じる顔料表面が顔料の全重量に基づいて式(I)による第二化合物SECの2.0重量%より多く、好ましくはカラー顔料の全重量に基づいて少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも3.0重量%、より好ましくは少なくとも4.0重量%、最も好ましくは少なくとも5.0重量%を含む限り、広い範囲内で変化してもよい。温度が高いほど加水分解を促進し、必要な量の塩基又は酸を減少しうる。加水分解工程は好適には高圧下で、5分〜96時間、特に5分〜48時間、特に5分〜24時間、好ましくは0〜250℃、特に15〜200℃、特に50〜190℃の温度で実施される。
【0059】
好ましい実施態様では、加水分解工程における温度は好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは50℃、70℃、80℃又はそれより高い。
【0060】
もし、加水分解がアルカリ性のpHで実施されるなら、pHは酸を添加することによって顔料が単離される前に再び低下される。好適な酸は有機酸、例えば脂肪族又は芳香族カルボン、ホスホン又はスルホン酸(例として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、フェニル酢酸、ベンゼンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸がある)、及び無機酸、例えば塩酸、硫酸、燐酸を含む。強酸を使用するとき、当業者はさらなる加水分解が起こりうることがわかるだろう。式(I)による第二化合物SECはカラー顔料の全重量に基づいて30.0重量%より高い濃度で存在しないこと、より好ましくは最大25.0重量%、さらにより好ましくは最大20.0重量%、最も好ましくは最大15.0重量%の濃度であることが必須である。それゆえ、強酸の添加は希釈溶液の形でなされることが好ましい。
【0061】
水性液体媒体における加水分解のための好ましい酸は無機酸、例えば塩酸、硫酸及び燐酸である。
【0062】
また、好適な有機塩基、例えば水酸化リチウム、テトラブチルアンモニウム水酸化物及び他の有機水酸化物生成体を使用することによって非水性液体媒体において加水分解を実施することができる。
【0063】
非水性液体媒体における加水分解の別の方法は、トリアルキルシリルハロゲナイドの添加及びそれに続くアルコール又は好ましさに劣るが微少量の水の添加を含む。これは、メタノール及びトリメチルシリルクロライド又はトリメチルシリルブロマイドの如き揮発性反応生成物を使用することによって非水性顔料分散体を製造する際に有利に活用されることができ、それは非水性顔料分散体から塩を除去するための濾過を排除する。加水分解法は以下のように例示される:

【0064】
非水性顔料分散体
非水性顔料分散体は非水性液体媒体において本発明によるカラー顔料を含む。用語「非水性液体媒体」は水を全く含有するべきでない液体キャリアに関する。しかしながら、ときには少量、一般には顔料分散体の全重量に基づいて5重量%未満の水が存在しうる。この水は意図的に添加されないが、例えば極性有機溶媒のように混入物として他の成分を介して配合中に入る。5重量%より多い量の水は非水性顔料分散体を不安定にする傾向があり、従って好ましくは水含有量は分散媒体の全重量に基づいて1重量%未満であり、最も好ましくは水が全く存在しない。
【0065】
本発明による非水性顔料分散体はさらに、少なくとも一種の界面活性剤を含有してもよい。
【0066】
好ましい実施態様では、非水性顔料分散体は非水性インクジェットインクである。非水性インクジェットインクはそのインクの蒸発速度を低下する性質によるノズルの詰まりを防止するために少なくとも一種の保湿剤を含有してもよい。
【0067】
非水性インクジェットインクは有機溶剤系、油系及び硬化性インクジェットインクからなる群から選択されるインクジェットインクであることが好ましい。硬化性インクジェットインクは放射線硬化性であることが好ましい。
【0068】
インクジェットインクの粘度は100S−1の剪断速度及び10〜70℃の噴射温度で好ましくは30mPa.s未満、より好ましくは15mPa.s未満、最も好ましくは2〜10mPa.sである。
【0069】
硬化性インクジェットインクは分散媒体として異なる官能価を持つモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを含んでもよい。モノ、ジ、トリ及び/又はそれより大きい官能価のモノマー、オリゴマー又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用してもよい。重合反応を開始するための開始剤と称される触媒は硬化性インクジェットインクに含まれてもよい。開始剤は感熱開始剤であってもよいが、光開始剤であることが好ましい。光開始剤はポリマーを形成するためにモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーを活性化するのに要求するエネルギーが少ない。硬化性顔料分散体に使用するために好適な光開始剤はNorrish type I開始剤、Norrish type II開始剤又は光酸発生剤であってもよい。
【0070】
非水性インクジェットインクは好ましくは非水性CMYKインクジェットインクセットの一部を形成する。非水性CMYKインクジェットインクセットはまた、像の色域をさらに拡大するために赤、緑、青、及び/又はオレンジの如き余分のインクで広げられてもよい。CMYKインクジェットインクセットはまた、粒状性の低下による像品質を改良するためにカラーインク及び/又は黒インクの高い濃度と低い濃度のインクの組み合わせによって広げられてもよい。
【0071】
インクジェットインクにおける顔料粒子はインクジェット印刷装置を通して、特に噴射ノズルでインクの自由な流れを可能とするために十分に小さくすべきである。また、最大カラー濃度のために小さい粒子を使用して沈降を遅くすることが望ましい。
【0072】
平均顔料粒子サイズは好ましくは0.050〜1μm、より好ましくは0.070〜0.300μm、特に好ましくは0.080〜0.200μmである。最も好ましくは、平均顔料粒子サイズは0.150μm以下である。
【0073】
好ましい実施態様では、非水性顔料分散体は本発明による顔料粒子を含み、そこでは希釈された試料について4mW HeNeレーザで633nmの波長で光子相関分光法によって決定される平均粒子サイズは175nm未満である。
【0074】
顔料はインクジェットインクの全重量に基づいて0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の量でインクジェットインクに使用されることが好ましい。
【0075】
特に好ましい実施態様では、非水性顔料分散体は放射線硬化性インクジェットインクである。
【0076】
顔料分散体及びインクの製造
本発明による非水性顔料分散体及びインクジェットインクは幾つかの方法で製造されることができる。
【0077】
第一実施態様では、非水性顔料分散体及びインクジェットインクは分散剤の存在下で分散媒体において乾燥顔料を微粉砕することによって製造されてもよい。
【0078】
混合装置はプレスニーダ、オープンニーダ、遊星形ミキサー、溶解機、及びダルトンユニバーサルミキサーを含んでもよい。好適な微粉砕及び分散装置はボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラ、ビーズミル、ペイントコンディショナー、及びトリプルローラを含んでもよい。分散体はまた、超音波エネルギーを使用して作られてもよい。
【0079】
多くの様々なタイプの材料、例えばガラス、セラミックス、金属、及びプラスチックスが微粉砕媒体として使用されてもよい。好ましい実施態様では、粉砕媒体は粒子、好ましくは実質的に球状形状のもの、例えば本質的にポリマー樹脂からなるビーズ又はイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズを含むことができる。
【0080】
混合、微粉砕及び分散の工程では、各工程は熱の蓄積を防止するために冷却して行なわれ、放射線硬化性インクジェットインクに対して化学線が実質的に除外されている光条件下でできるだけ行なわれる。
【0081】
インクジェットインクは一種より多い顔料を含有してもよく、インクジェットインクは各顔料に対して別個の分散体を使用して製造されてもよく、又は幾つかの顔料は分散体の製造の際に混合又は共微粉砕されてもよい。
【0082】
分散工程は連続式、バッチ式又は半バッチ式で実施されることができる。
【0083】
ミル微粉砕物の成分の好ましい量及び比率は特定の材料及び意図した用途に依存して幅広く変化するだろう。微粉砕混合物の中身はミル微粉砕物及び微粉砕媒体を含む。ミル微粉砕物は顔料、ポリマー分散剤及び液体キャリアを含む。インクジェットインクに対して、顔料は通常、微粉砕媒体を除くと1〜50重量%でミル微粉砕物中に存在する。顔料のポリマー分散剤に対する重量比は20:1〜1:2である。
【0084】
微粉砕時間は、幅広く変化することができ、顔料、機械的手段及び選択される滞留条件、初期及び所望の最終粒子サイズなどに依存する。本発明では、100nm未満の平均粒子サイズを有する顔料分散体を調製してもよい。
【0085】
微粉砕が完了した後、微粉砕媒体は濾過、メッシュスクリーンを通した篩分けなどの通常の分離技術を使用して微粉砕された粒状化合物(乾燥又は液体分散形態のいずれか)から分離される。しばしば篩分けはミル、例えばビーズミル中に組み入れられる。微粉砕された顔料濃縮物は濾過によって微粉砕媒体から分離されることが好ましい。
【0086】
一般に、インクジェットインクを濃縮されたミル微粉砕物の形で作ることが望ましく、それは次いでインクジェット印刷システムに使用するために適切な濃度に希釈される。この技術は装置から多量の顔料インクの製造を可能にする。希釈によって、インクジェットインクは個々の用途に対して、所望の粘度、表面張力、色、色相、飽和濃度、及び印刷領域被覆率に調整される。
【0087】
別の実施態様では、非水性顔料分散体及びインクジェットインクは以下の工程を含む方法によって製造される:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む非水性液体媒体を準備する;及び
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COORの一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する。
非水性液体媒体の一部を溶媒、油、モノマー及びオリゴマー又はそれらの組み合わせの如き他の液体媒体によって置換又は除去することができる。
【0088】
好ましい実施態様では、カラー顔料を含む液体媒体に添加される式(I)による第二化合物SECはカラー顔料より小さい分子量を有する。
【0089】
その場での加水分解及び/又は式(I)による第二化合物SECの添加を含む方法は通常、微粉砕及び/又は超音波エネルギーの如き分散処理も伴う。第一実施態様について上で記載されたのと同じ分散技術がここで適用されることができる。
【0090】
分散剤
典型的なポリマー分散剤は二つのモノマーのコポリマーであるが、三つ、四つ、五つ又はそれより多くのモノマーを含有してもよい。ポリマー分散剤の特性はモノマーの性質とそれらのポリマー中の分布の両方に依存する。好適なコポリマー分散剤は以下のポリマー組成を持つ:
・ランダム重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをABBAABABに重合);
・交互重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをABABABABに重合);
・勾配(漸減)重合されたモノマー(例えばモノマーA及びBをAAABAABBABBBに重合);
・ブロックコポリマー(例えばモノマーA及びBをAAAAABBBBBBに重合)、そこではブロックの各々のブロック長は(2個、3個、4個、5個又はそれより多い)はポリマー分散剤の分散能力に対して重要である;
・グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは主鎖に結合された側鎖を有するポリマー主鎖からなる);及び
・これらのポリマーの混合形態、例えばブロック状の勾配コポリマー。
【0091】
ポリマー分散剤は線状、くし形/枝分かれ、星状、樹状(デンドリマー及び超分岐ポリマーを含む)を含む様々なポリマー構成を持ってもよい。ポリマーの構造についての一般的な概括はODIAN,George,Principles Of Polymerization,4th edition,Wiley−Interscience,2004,p.1−18によって与えられる。
【0092】
くし形/枝分かれポリマーは主ポリマー鎖に沿って様々な中央枝分かれ点(少なくとも三つの枝分かれ点)から突出する結合モノマー分子の側部の枝を持つ。
【0093】
星状ポリマーは、三つ又はそれより多い、同様の又は異なる線状ホモポリマー又はコポリマーが単一の芯に一緒に結合される枝分かれしたポリマーである。
【0094】
樹状ポリマーはデンドリマー及び超分岐ポリマーの種類を含む。良く規定された単分散構造を有するデンドリマーでは、全ての枝分かれ点が使用されるが(多段階合成)、超分岐ポリマーは複数の枝分かれ点、及びポリマー成長(一段階重合工程)とともにさらなる枝分かれに導く多官能枝分かれを持つ。
【0095】
好適なポリマー分散剤は付加又は縮合型重合によって製造されてもよい。重合方法はODIAN,George,Principles Of Polymerization,4th edition,Wiley−Interscience,2004,p.39−606に記載されたものを含む。
【0096】
付加重合法はフリーラジカル重合(FRP)及び制御された重合技術を含む。好適な制御されたラジカル重合は以下のものを含む:
・RAFT:可逆的付加解裂型連鎖移動;
・ATRP:原子移動ラジカル重合;
・MADIX:移動活性キサンテートを使用する可逆的付加解裂型連鎖移動法;
・触媒連鎖移動(例えばコバルト錯体使用);
・ニトロキシド(例えばTEMPO)媒介重合。
【0097】
他の好適な制御された重合方法は以下のものを含む:
・GTP:基移動重合;
・リビングカチオン(開環)重合;
・アニオン配位挿入開環重合;及び
・リビングアニオン(開環)重合。
【0098】
可逆的不可解裂型移動:制御された重合は、成長するポリマーラジカルと休眠ポリマー鎖の間の迅速な連鎖移動を介して起こる。様々なポリマー幾何学形状を有する分散剤のRAFT合成についての調査論文はQUINN J.F.et al.,Facile Synthesis of comb,star,and graft polymers via reversible addition−fragmentation chain transfer(RAFT)polymerization,Journal of Polymer Science,Part A:Polymer Chemistry,Vol.40,2956−2966,2002に与えられている。
【0099】
基移動重合(GTP):ABブロックコポリマーの合成のために使用されるGTPの方法はSPINELLI,Harry J,GTP and its use in water based pigment dispersants and emulsion stabilisers,Proc.of 20th Int..Conf.Org.Coat.Sci.Technol.,New Platz,N.Y.,State Univ.N.Y.,Inst.Mater.Sci.p.511−518に記載されている。
【0100】
樹状ポリマーの合成は文献:The synthesis of dendrimers in NEWCOME,G.R.,et al.Dendritic Molecules:Concepts,Synthesis,Perspectives.VCH:WEINHEIM,2001に記載されている。超分岐重合はBURCHARD,W..Solution properties of branched macromolecules.Advances in Polymer Science.1999,vol.143,no.II,p.113−194に記載されている。超分岐材料はFLORY,P.J..Molecular size distribution in three−dimensional polymers.VI.Branched polymer containing A−R−Bf−1−type units.Journal of the American Chemical Society.1952,vol.74,p.2718−1723に記載されるように多官能重縮合によって得られることができる。
【0101】
リビングカチオン重合は例えばWO 2005/012444(CANON),US 20050197424(CANON)及びUS 20050176846(CANON)に開示されるようにポリビニルエーテルの合成のために使用される。アニオン配位開環重合は例えばラクトンに基づいたポリエステルの合成のために使用される。リビングアニオン開環重合は例えばポリエチレンオキサイドマクロモノマーの合成のために使用される。
【0102】
フリーラジカル重合(FRP)は連鎖機構を介して行なわれ、それは基本的にフリーラジカルを含む反応の四つの様々なタイプからなる:(1)非ラジカル種からのラジカル生成(開始)、(2)置換アルケンへのラジカル付加(増殖)、(3)原子移動及び原子引き抜き反応(連鎖移動及び不均化による停止)、及び(4)ラジカル−ラジカル再結合反応(結合による停止)。
【0103】
上記ポリマー組成物の幾つかを有するポリマー分散剤はUS 6022908(HP),US 5302197(DU PONT)及びUS 6528557(XEROX)に開示されている。
【0104】
好適なランダムコポリマー分散剤はUS 5648405(DU PONT),US 6245832(FUJI XEROX),US 6262207(3M),US 20050004262(KAO)及びUS 6852777(KAO)に開示されている。
【0105】
好適な交互コポリマー分散剤はUS 20030017271(AKZO NOBEL)に開示されている。
【0106】
好適なブロックコポリマー分散剤、特に疎水性及び親水性ブロックを含有するブロックコポリマー分散剤は多数の特許に記載されている。例えば、US 5859113(DU PONT)はABブロックコポリマーを開示し、US 6413306(DU PONT)はABCブロックコポリマーを開示する。
【0107】
好適なグラフトコポリマー分散剤はCA 2157361(DU PONT)(疎水性ポリマー主鎖及び親水性側鎖)に開示され、他のグラフトコポリマー分散剤はUS 6652634(LEXMARK),US 6521715(DU PONT)に開示されている。
【0108】
好適な枝分かれコポリマー分散剤はUS 6005023(DU PONT),US 6031019(KAO),US 6127453(KODAK)に記載されている。
【0109】
好適な樹状コポリマー分散剤は例えばUS 6518370(3M),US 2004102541(LEXMARK),WO 00/063305(GEM GRAVURE),US 6649138(QUANTUM DOT),US 2002256230(BASF),EP 1351759 A(EFKA ADDITIVES)及びEP 1295919 A(KODAK)に記載されている。
【0110】
インクジェットインクのためのポリマー分散剤の好適な設計はSPINELLI,Harry J.,Polymeric Dispersants in Inkjet technology,Advanced Materials,1998,Vol.10,no.15,p.1215−1218に開示されている。
【0111】
ポリマー分散剤を製造するために使用されるモノマー及び/又はオリゴマーはPolymer Handbook Vol.1+2,4th edition,edited by J.BRANDRUP et al.,Wiley−Interscience,1999に見出されるモノマー及び/又はオリゴマーであることができる。
【0112】
顔料分散剤として有用なポリマーは自然に存在するポリマーを含み、その特別な例は、グルー、ゼラチン、カゼイン、及びアルブミンの如き蛋白質;アラビアゴム及びトラガカントの如き自然に存在するゴム;サポニンの如きグルコシド;プロピレングリコールアルギネートの如きアルギン酸及びアルギン酸誘導体;及びメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びエチルヒドロキシセルロースの如きセルロース誘導体;羊毛及び絹、及び合成ポリマーを含む。
【0113】
ポリマー分散剤を合成するためのモノマーの好適な例はアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(又はそれらの塩)、無水マレイン酸;アルキル(メタ)アクリレート(線状、枝分かれした及びシクロアルキル)、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート及びフェニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;他のタイプの官能基(例えばオキシラン、アミノ、フルオロ、ポリエチレンオキサイド、ホスフェート置換)を有する(メタ)アクリレート、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート;アリル誘導体、例えばアリルグリシジルエーテル;スチレン類、例えばスチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトスチレン及びスチレンスルホン酸;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド(N−モノ及びN,N−二置換を含む)、例えばN−ベンジル(メタ)アクリルアミド;マレイミド、例えばN−フェニルマレイミド;ビニル誘導体、例えばビニルアルコール、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルナフタレン及びビニルハライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル;及びカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート及びビニルベンゾエートを含む。典型的な縮合型ポリマーはポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミン、ポリイミド、ポリケトン、ポリエステル、ポリシロキサン、フェノール−ホルムアルデヒド、ウレア−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、ポリサルファイド、ポリアセタール又はそれらの組み合わせを含む。
【0114】
好適なコポリマー分散剤はアクリル酸/アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル/アクリルエステルコポリマー、アクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/メタアクリル酸コポリマー、スチレン/メタアクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/マレイン酸コポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレン/アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン/マレイン酸コポリマー、酢酸ビニル/エチレンコポリマー、酢酸ビニル/脂肪酸/エチレンコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、酢酸ビニル/アクリル酸コポリマーである。
【0115】
コポリマー分散剤の好適な化学はまた、以下のものを含む:
・(付加重合によって作られた)カルボン酸終端ポリエステルとポリ(エチレンイミン)の縮合法の生成物であるコポリマー;及び
・以下のものと多官能イソシアネートの反応の生成物であるコポリマー
− イソシアネートと反応できる基で単置換された化合物、例えばポリエステル;
− イソシアネートと反応できる二つの基を含有する化合物(架橋剤);又は
− イソシアネート基と反応できる基及び少なくとも一つの塩基性環窒素を有する化合物。
【0116】
好適なポリマー分散剤の詳細なリストはMC CUTCHEON,Functional Materials,North American Edition,Glen Rock,N.J.:Manufacturing Confectioner Publishing Co.,1990,p.110−129に開示されている。
【0117】
好適な顔料安定剤はまた、DE 19636382(BAYER),US 5720802(XEROX),WO 96/12772(XAAR)に開示されている。
【0118】
一つのポリマー分散剤又は二つ以上のポリマー分散剤の混合物は分散安定性をさらに改良するために存在させてもよい。ときには界面活性剤も顔料分散剤として使用することもでき、従ってポリマー分散剤と界面活性剤の組み合わせもまた可能である。
【0119】
ポリマー分散剤はノニオン、アニオン又はカチオンの性質であることができ、イオン分散剤の塩もまた使用することができる。
【0120】
ポリマー分散剤は好ましくは5〜1000、より好ましくは10〜500、最も好ましくは10〜100の重合度DPを有する。
【0121】
ポリマー分散剤は好ましくは500〜30000、より好ましくは1500〜10000の数平均分子量Mnを有する。
【0122】
ポリマー分散剤は好ましくは100000より小さい、より好ましくは50000より小さい、最も好ましくは30000より小さい平均分子量Mwを有する。
【0123】
ポリマー分散剤は好ましくは2より小さい、より好ましくは1.75より小さい、最も好ましくは1.5より小さいポリマー分散度PDを有する。
【0124】
ポリマー分散剤の市販例は以下のものである:
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(登録商標)分散剤;
・NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(登録商標)分散剤;
・DEGUSSAから入手可能なTEGO(登録商標)DISPERS(登録商標)分散剤;
・MUENZING CHEMIEから入手可能なEDAPLAN(登録商標)分散剤;
・LYONDELLから入手可能なETHACRYL(登録商標)分散剤;
・ISPから入手可能なGANEX(登録商標)分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCから入手可能なDISPEX(登録商標)及びEFKA(登録商標)分散剤;
・DEUCHEMから入手可能なDISPONER(登録商標)分散剤;及び
・JOHNSON POLYMERから入手可能なJONCRYL(登録商標)分散剤。
【0125】
特に好ましいポリマー分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)分散剤、CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのEfka(登録商標)分散剤及びBYK CHEMIE GMBHからのDisperbyk(登録商標)分散剤を含む。
【0126】
溶媒系顔料分散体のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)32000及び39000である。
【0127】
油系顔料分散体のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)11000,11200,13940,16000,17000及び19000である。
【0128】
UV硬化性顔料分散体のための特に好ましい分散剤はNOVEONからのSolsperse(登録商標)32000及び39000分散剤である。
【0129】
ポリマー分散剤は顔料の重量に基づいて好ましくは2〜600重量%、より好ましくは5〜200重量%の量で使用される。
【0130】
結合剤
非水性インクジェットインク組成物は結合剤樹脂を含むことが好ましい。結合剤は粘度制御剤として機能し、また、ポリマー樹脂基材、例えばポリ塩化ビニル基材(ビニル基材とも称される)に対する定着性を与える。結合剤は溶媒における良好な溶解性を持つように選択されなければならない。
【0131】
結合剤樹脂の好適な例はアクリル樹脂、変性アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリルコポリマー、アクリレート樹脂、アルデヒド樹脂ロジン、ロジンエステル、変性ロジン及び変性ロジン樹脂、アセチルポリマー、ポリビニルブチラールの如きアセタール樹脂、ケトン樹脂、フェノール樹脂及び変性フェノール樹脂、マレイン樹脂及び変性マレイン樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセトプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートの如きセルロース型樹脂、及びビニルトルエン−α−メチルスチレンコポリマー樹脂を含む。これらの結合剤は単独で又はそれらの混合物で使用されてもよい。結合剤はフィルム形成熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0132】
インクジェットインクにおける結合剤の量はインクジェットインクの全重量に基づいて好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは2〜10重量%の範囲である。
【0133】
分散媒体
一つの実施態様では、分散媒体は有機溶媒からなる。好適な有機溶媒はアルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール及びポリグリコール及びその誘導体、ラクトン、アミドの如きN含有溶媒を含む。好ましくは、これらの溶媒の一つ以上の混合物が使用される。
【0134】
好適なアルコールの例はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニスアルコール及びフルオロアルコールを含む。
【0135】
好適なケトンの例はアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルn−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びイソホロン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンを含む。
【0136】
好適なエステルの例はメチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、フェノキシエチルアセテート、エチルフェニルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、プロピルラクテート、ブチルラクテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アミルアセテート、エチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、ブチルラウレ−ト、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミレート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルマロネート、ジプロピルマロネート、ジエチルスクシネート、ジブチルスクシネート、ジエチルグルタレート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート及びジエチルセバケートを含む。
【0137】
好適なエーテルの例はブチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ヘキシルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサンを含む。
【0138】
好適なグリコール及びポリグリコールの例はエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールを含む。
【0139】
好適なグリコール及びポリグリコール誘導体の例はアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの如きエーテル、及びアセテート及びプロピオネートエステルの如き前述のグリコールエーテルのエステルを含み、ジアルキルエーテルの場合、一つだけのエーテル官能(混合されたエーテル/エステルを生じる)又は両エーテル官能(ジアルキルエステルを生じる)がエステル化されることができる。
【0140】
好適なアルキレングリコールモノアルキルエーテルの例はエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチル−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル及びプロピレングリコールモノフェニルエーテルを含む。
【0141】
好適なアルキレングリコールジアルキルエーテルの例はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテルを含む。
【0142】
好適なポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの例はジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレンモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレンモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレンモノt−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル及びトリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルを含む。
【0143】
好適なポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの例はジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレンジn−プロピルエーテル、ジプロピレンジt−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル及びトリプロピレングリコールジエチルエーテルを含む。
【0144】
好適なグリコールエステルの例はエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネートを含む。
【0145】
本発明による顔料分散体及びインクジェットインクに使用するために好ましい溶媒は以下の式(PAG)によって表される一つ以上のポリアルキレングリコールジアルキルエーテルである:

式中、R及びRは各々独立して1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から選択され;
Yはエチレン基及び/又はプロピレン基を表わし;
nは第一ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルに対しては4〜20から選択される整数であり、nは第二ポリアルキレングリコールに対しては5〜20から選択される整数である。
【0146】
式(PAG)によるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルのアルキル基R及びRはメチル及び/又はエチルを表わすことが好ましい。最も好ましくは、アルキル基R及びRはともにメチル基である。
【0147】
好ましい実施態様では、式(PAG)によるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルはポリエチレングリコールジアルキルエーテルである。
【0148】
別の好ましい実施態様では、二つ、三つ、四つ又はそれより多いポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、より好ましくはポリエチレングリコールジアルキルエーテルの混合物を顔料分散体又はインクジェットインクに存在させる。
【0149】
顔料分散体のためのポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの好適な混合物はCLARIANTからのPolyglycol DME 200(登録商標),Polyglycol DME 250(登録商標)及びPolyglycol DME 500(登録商標)の如き少なくとも200の分子量を有するポリエチレングリコールジメチルエーテルの混合物を含む。非水性インクジェットインクに使用されるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルは好ましくは200〜800の平均分子量を有し、より好ましくは800より多い分子量を有するポリアルキレングリコールジアルキルエーテルを存在させない。ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルの混合物は室温で均一な液体混合物であることが好ましい。
【0150】
好適な市販のグリコールエーテル溶媒はUNION CARBIDEからのCellosolve(登録商標)溶媒及びCarbitol(登録商標)溶媒、EASTMANからのEktasolve(登録商標)溶媒、DOWからのDowanol(登録商標)溶媒、SHELL CHEMICALからのOxitoll(登録商標)溶媒、Dioxitoll(登録商標)溶媒、Proxitoll(登録商標)溶媒及びDiproxitoll(登録商標)溶媒、及びLYONDELLからのArcosolv(登録商標)溶媒を含む。
【0151】
ラクトンはエステル結合によって形成された環構造を有する化合物であり、γ−ラクトン(5員環構造)、δ−ラクトン(6員環構造)又はε−ラクトン(7員環構造)型のものであることができる。ラクトンの好適な例はγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン及びε−カプロラクトンを含む。
【0152】
N含有有機溶媒の好適な例は2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びN,N−ジメチルドデカンアミドを含む。
【0153】
別の実施態様では、分散媒体は油タイプの液体を単独で又は有機溶媒と組み合わせて含む。好適な有機溶媒はアルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール及びポリグリコール及びその誘導体、ラクトン、アミドの如きN含有溶媒、高級脂肪酸エステル及び溶媒系分散媒体のための上記のような溶媒の一種以上の混合物を含む。
【0154】
極性溶媒の量は油の量より少ないことが好ましい。有機溶媒は好ましくは高い沸点、好ましくは200℃以上の沸点を持つ。好適な組み合わせの例は特にオレイルアルコールの使用に対してGB 2303376(FUJITSU ISOTEC)に、そして油及び揮発性有機溶媒の組み合わせに対してUS 5085689(BASF)に記載されている。
【0155】
好適な油は飽和炭化水素及び不飽和炭化水素、芳香族油、パラフィン油、抽出パラフィン油、ナフテン油、抽出ナフテン油、水素処理された軽又は重油、植物油、ホワイトオイル、石油ナフサ油、水素置換炭化水素、シリコーン及びそれらの誘導体及び混合物を含む。
【0156】
炭化水素は直鎖又は枝分かれ鎖脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素から選択されてもよい。炭化水素の例はn−ヘキサン、イソヘキサン、n−ノナン、イソノナン、ドデカン及びイソドデカンの如き飽和炭化水素;1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンの如き不飽和炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン及びデカリンの如き環式飽和炭化水素;シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、及びシクロドデセンの如き環式不飽和炭化水素;及びベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン及びそれらの誘導体の如き芳香族炭化水素である。文献では、用語パラフィン油が使用されることが多い。好適なパラフィン油は通常のパラフィン型(オクタン及びそれより高級のアルカン)、イソパラフィン(イソオクタン及びそれより高級のシクロアルカン)及びシクロパラフィン(シクロオクタン及びそれより高級のシクロアルカン)及びパラフィン油の混合物であることができる。用語「液体パラフィン」は通常のパラフィン、イソパラフィン及び単環式パラフィンの三成分から主になる混合物を言及するために使用されることが多く、それはUS 6730153(SAKATA INX)に記載されているように硫酸洗浄などを通して相対的に揮発性の潤滑油画分を高度に精製することによって得られる。好適な炭化水素はまた、脱芳香族化石油製品として記載されている。
【0157】
水素化炭化水素の好適な例はメチレンジクロライド、クロロホルム、テトラクロロメタン及びメチルクロロホルムを含む。水素置換炭化水素の他の好適な例はパーフルオロアルカン、フッ素系不活性液及びフルオロカーボンイオダイドを含む。
【0158】
シリコーンオイルの好適な例はジアルキルポリシロキサン(例えばヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、トリフルオロプロピルヘプタメチルトリシロキサン、ジエチルテトラメチルジシロキサン)、環状ジアルキルポリシロキサン(例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラ(トリフルオロプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン)、及びメチルフェニルシリコーン油を含む。
【0159】
ホワイトオイルは白色の鉱物油のために使用される用語であり、それは飽和脂肪族及び脂環式非極性炭化水素からなる高度に精製された鉱物油である。ホワイトオイルは疎水性、無色、無味、無臭であり、経時的に色を変化しない。
【0160】
植物油は大豆油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、カラシ油、ゴマ油及びトウモロコシ油の如き半乾性油;オリーブ油、ピーナッツ油及び椿油の如き不乾性油;及び亜麻仁油及び紅花油の如き乾性油を含み、これらの植物油は単独で又はそれらの混合物として使用されることができる。
【0161】
他の好適な油の例は石油、不乾性油及び半乾性油を含む。
【0162】
商業的に入手可能な好適な油はEXXON CHEMICALからのIsopar(登録商標)系列(イソパラフィン)及びVarsol/Naphtha系列、CHEVRON PHILLIPS CHEMICALからの炭化水素、及びSHELL CHEMICALSからのShellsol(登録商標)系列の如き脂肪族炭化水素のタイプを含む。
【0163】
好適な市販の通常パラフィンはEXXON MOBIL CHEMICALからのNorpar(登録商標)系列を含む。
【0164】
好適な市販のナフテン系炭化水素はEXXON MOBIL CHEMICALからのNappar(登録商標)系列を含む。
【0165】
好適な市販の脱芳香族化石油製品はEXXON MOBIL CHEMICALからのExxsol(登録商標)系列を含む。
【0166】
好適な市販のフッ素置換炭化水素はDAIKIN INDUSTRIES LTD,Chemical Divisionからのフッ化炭素を含む。
【0167】
好適な市販のシリコーン油はSHIN−ETSU CHEMICAL,Silicone Divisionからのシリコーン液系列を含む。
【0168】
好適な市販のホワイトオイルはCROMPTON CORPORATIONからのWitco(登録商標)ホワイトオイルを含む。
【0169】
もし非水性顔料分散体が硬化可能な顔料分散体であるなら、分散媒体は液体分散媒体を得るために一つ以上のモノマー及び/又はオリゴマーを含む。ときには、分散体の溶解性を改良するために少量の有機溶媒を添加することが有利でありうる。有機溶媒の含有量はインクジェットインクの全重量に基づくと20重量%未満にすべきである。他の場合において、例えば親水性表面上のインクジェットインクの分散を改良するために少量の水を添加することが有利でありうるが、インクジェットインクは水を全く含有しないことが好ましい。
【0170】
好ましい有機溶媒はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルを含む。好適なアルコールはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールを含む。好適な芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンを含む。好適なケトンはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンを含む。また、グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを使用してもよい。
【0171】
硬化性インクジェットインクの場合において、分散媒体はモノマー及び/又はオリゴマーからなることが好ましい。
【0172】
モノマー及びオリゴマー
硬化可能なインクジェットインクのための硬化可能な化合物としていかなるモノマー又はオリゴマーを使用してもよい。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを使用してもよい。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは異なる官能価を有してもよく、モノ、ジ、トリ及びそれより高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用してもよい。インクジェットインクの粘度はモノマーとオリゴマーの間の比率を変更することによって調整されることができる。
【0173】
通常のラジカル重合、光酸もしくは光塩基生成剤を使用する光硬化システム、又は光誘導交互共重合のうちのいかなる方法を使用してもよい。一般に、ラジカル重合及びカチオン重合が好ましく、開始剤を必要としない光誘導交互共重合を使用してもよい。さらに、これらのシステムの組み合わせの混成系も有効である。
【0174】
カチオン重合は酸素による重合の抑制の不足のために有効性に優れるが、高価で、特に高い相対湿度の条件下では遅い。もしカチオン重合が使用されるなら、重合の速度を増大するようにオキセタン化合物とともにエポキシ化合物を使用することが好ましい。ラジカル重合は好ましい重合法である。
【0175】
一般に業界で知られているいかなる重合可能な化合物を使用してもよい。放射線硬化性インクジェットインクにおける放射線硬化性化合物として使用するために特に好ましいものは単官能及び/又は多官能アクリレートモノマー、オリゴマー又はプレポリマー、例えばイソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソアミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビニルエーテルアクリレート、ビニルエーテルエトキシ(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルスクシン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可撓性アクリレート、及びt−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)アダクトジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)アダクトジアクリレート、ヒドロキシピバレートネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、アルコシキル化ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート及びポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;又はN−ビニルアミド、例えばN−ビニルカプロラクタム又はN−ビニルホルムアミド;又はアクリルアミドもしくは置換アクリルアミド、例えばアクリロイルモルフォリンである。
【0176】
他の好適な単官能アクリレートはカプロラクトンアクリレート、環式トリメチロールプロパンホルマルアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、トリデシルアクリレート及びアルコキシル化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレートを含む。
【0177】
他の好適な二官能アクリレートはアルコキシル化シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、アルコシキル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサノンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びネオペンチルグリコールジアクリレートを含む。
【0178】
他の好適な三官能アクリレートはプロポキシル化グリセリントリアクリレート及びプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。
【0179】
他のそれより高い官能のアクリレートはジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、メトキシル化グリコールアクリレート及びアクリレートエステルを含む。
【0180】
さらに、上述のアクリレートに対応するメタアクリレートはこれらのアクリレートで使用されてもよい。メタクリレートのうち、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートがそれらの相対的に高い感度及びインク受容表面に対する高い接着性のために好ましい。
【0181】
さらに、インクジェットインクはまた、重合可能なオリゴマーを含有してもよい。これらの重合可能なオリゴマーの例はエポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び直鎖アクリルオリゴマーを含む。
【0182】
スチレン化合物の好ましい例はスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン及びp−メトキシ−β−メチルスチレンである。
【0183】
ビニルナフタレン化合物の好適な例は1−ビニルナフタレン、α−メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン及び4−メトキシ−1−ビニルナフタレンである。
【0184】
N−ビニル複素環式化合物の好適な例はN−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニリンドール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルアセトアニリド、N−ビニルエチルアセトアミド、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルイミダゾールである。
【0185】
インクジェットインクのカチオン重合可能な化合物は一つ以上のモノマー、一つ以上のオリゴマー又はそれらの組み合わせであることができる。
【0186】
カチオン硬化可能な化合物の好適な例はAdvances in Polymer Science,62,pages 1 to 47(1984)by J.V.Crivelloに見出すことができる。
【0187】
カチオン硬化可能な化合物は少なくとも一つのオレフィン、チオエーテル、アセタール、チオキサン、チエタン、アジリジン、N,O,SもしくはP−複素環式、アルデヒド、ラクタム又は環式エステル基を含んでもよい。
【0188】
カチオン重合可能な化合物の例はモノマー及び/又はオリゴマーエポキシド、ビニルエーテル、スチレン、オキセタン、オキサゾリン、ビニルナフタレン、N−ビニル複素環式化合物、テトラヒドロフルフリル化合物を含む。
【0189】
カチオン重合可能なモノマーは単、二又は多官能又はそれらの混合物であることができる。
【0190】
少なくとも一つのエポキシ基を有する好適なカチオン硬化可能な化合物は“Handbook of Epoxy Resins”by Lee and Neville,McGraw Hill Book Company,New York(1967)及び“Epoxy Resin Technology”by P.F.Bruins,John Wiley and Sons New York(1968)に掲載されている。
【0191】
少なくとも一つのエポキシ基を有するカチオン硬化可能な化合物の例は1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、3−(ビス(グリシジルオキシメチル)メトキシ)−1,2−プロパンジオール、リモネンオキシド、2−ビフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エピクロロヒドリン−ビスフェノールSベースのエポキシド、エポキシ化スチレン及びエピクロロヒドリン−ビスフェノールF及びAベースのエポキシド及びエポキシ化ノボラックを含む。
【0192】
分子中に少なくとも二つのエポキシ基を含む好適なエポキシ化合物は脂環式ポリエポキシド、多塩基酸のポリグリシジルエステル、ポリオールのポリグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエステル、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル、ウレタンポリエポキシ化合物、及びポリエポキシポリブタジエンである。
【0193】
脂環式ビスエポキシドの例はグリコール、ポリオール又はビニルエーテルの如きヒドロキシル成分とエポキシドのコポリマー、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′、4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、リモネンビスエポキシド、ヘキサヒドロフタル酸のジクリシジルエステルを含む。
【0194】
少なくとも一つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルの例はエチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヒドロキシルブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、α−メチルフェニルビニルエーテル、β−メチルイソブチルビニルエーテル及びβ−クロロイソブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4−(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、トリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、4−(ビニルオキシ)ブチルステアタイト、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]ヘキサンジイルビスカルバメート、ビス[4−(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシルメチルテレフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシルメチルイソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル](4−メチル−1,3−フェニレン)−ビスカルバメート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル](メチレンジ−4,1−フェニレン)−ビスカルバメート及び3−アミノ−1−プロパノールビニルエーテルを含む。
【0195】
少なくとも一つのオキセタン基を有するオキセタン化合物の好適な例は3−エチル−3−ヒドロキシメチル−1−オキセタン、オリゴマー混合物1,4−ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ]メチル]ベンセン、3−エチル−3−フェノキシメチル−オキセタン、ビス([1−エチル(3−オキセタニル)]メチル)エーテル、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−[(トリ−エトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン及び3,3−ジメチル−2(p−メトキシ−フェニル)−オキセタンを含む。
【0196】
放射線とカチオンの両方で硬化可能な組成物に使用されることができるモノマー及びオリゴマーの好ましい種類はここに参照として組み入れられるUS 6310115(AGFA)に記載されたものの如きビニルエーテルアクリレートである。特に好ましい化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートであり、最も好ましくは化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0197】
開始剤
硬化可能なインクジェットインクはまた、開始剤を含むことが好ましい。開始剤は典型的には重合反応を開始する。開始剤は熱的開始剤であることができるが、光開始剤であることが好ましい。光開始剤はポリマーを形成するためにモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーより活性化するために必要なエネルギーが少ない。硬化可能なインクジェットインクに使用するために好適な光開始剤はNorrish type I開始剤、Norrish type II開始剤又は光酸発生剤であってもよい。
【0198】
硬化可能なインクジェットインクに使用するために好適な熱的開始剤はターシャリ−アミルパーオキシベンゾエート、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキシド、2,2−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(ターシャリブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,5−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(ターシャリブチルパーオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、ビス(1−(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,1−ビス(ターシャリ−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ターシャリ−ブチルヒドロパーオキシド、ターシャリ−ブチルパーアセテート、ターシャリ−ブチルパーオキシド、ターシャリ−ブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリ−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,4−ペンタンジオンパーオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムを含む。
【0199】
光開始剤又は光開始剤系は光を吸収し、フリーラジカル及びカチオンの如き開始種の生成のために関与する。フリーラジカル及びカチオンはモノマー、オリゴマー及びポリマーの重合、及び架橋を誘発する多官能モノマー及びオリゴマーとの重合を誘発する高エネルギー種である。
【0200】
化学線での照射は波長又は強度を変えることによって二段階で実現されてもよい。かかる場合には、2タイプの光開始剤を一緒に使用することが好ましい。
【0201】
異なるタイプの開始剤、例えば光開始剤と熱的開始剤の組み合わせを使用することができる。
【0202】
好ましいNorrish type I開始剤はベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルファイド、α−ハロケトン、α−ハロスルホン及びα−ハロフェニルグリオキサレートからなる群から選択される。
【0203】
好ましいNorrish type II開始剤はベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトン及びアントラキノンからなる群から選択される。好ましい共開始剤は脂肪族アミン、芳香族アミン及びチオールからなる群から選択される。ターシャリアミン、複素環式チオール及び4−ジアルキルアミノ安息香酸が共開始剤として特に好ましい。
【0204】
好適な光開始剤はCRIVELLO,J.V.,et al.VOLUME III:Photoinitiators for Free Radical Cationic.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.287−294に開示されている。
【0205】
光開始剤の特別な例は限定されないが、次の化合物又はその組み合わせを含んでもよい:ベンゾフェノン及び置換されたベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン又は5,7−ジイオド−3−ブトキシ−6−フルオロン、ジフェニルイオドニウムフルオリド及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオホスフェート。
【0206】
好適な市販の光開始剤はCIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacure(登録商標)184,Irgacure(登録商標)500,Irgacure(登録商標)907,Irgacure(登録商標)369,Irgacure(登録商標)1700,Irgacure(登録商標)651,Irgacure(登録商標)819,Irgacure(登録商標)1000,Irgacure(登録商標)1300,Irgacure(登録商標)1870,Darocur(登録商標)1173,Darocur(登録商標)2959,Darocur(登録商標)4265及びDarocur(登録商標)ITX、BASF AGから入手可能なLucerin TPO、LAMBERTIから入手可能なEsacure(登録商標)KT046,Esacure(登録商標)KIP150,Esacure(登録商標)KT37及びEsacure(登録商標)EDB、SPECTRA GROUP Ltdから入手可能なH−Nu(登録商標)470及びH−Nu(登録商標)470Xを含む。
【0207】
好適なカチオン光開始剤は紫外及び/又は可視光への露光で重合を開始するために十分な非プロトン酸又はブレンステッド酸を形成する化合物を含む。使用される光開始剤は単一化合物、二種以上の活性化合物の混合物、又は二種以上の異なる化合物の組み合わせ、即ち共開始剤であってもよい。好適なカチオン光開始剤の限定されない例はアリールジアゾニウム塩、ジアリールイオドニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩などである。
【0208】
硬化可能なインクジェットインクは一種以上の光開始剤、及びエネルギーを光開始剤に移動する一種以上の増感剤を含有する光開始剤系を含有してもよい。好適な増感剤は光還元性キサンテン、フルオレン、ベンゾキサンテン、ベンゾチオキサンテン、チアジン、オキサジン、クマリン、ピロニン、ポルフィリン、アクリジン、アゾ、ジアゾ、シアニン、メロシアニン、ジアリールメチル、トリアリールメチル、アントラキノン、フェニレンジアミン、ベンズイミダゾール、フルオロクロム、キノリン、テトラゾール、ナフトール、ベンジジン、ローダミン、インジゴ及び/又はインダントレン色素を含む。増感剤の量は硬化可能なインクジェットインクの全重量に基づいて一般に0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0209】
感光性をさらに増大するために、硬化可能なインクジェットインクはさらに、共開始剤を含有してもよい。例えば、チタノセンとトリクロロメチル−s−トリアジン、チタノセンとケトキシムエーテル、アクリジンとトリクロロメチル−s−トリアジンの組み合わせが知られている。感度のさらなる増加はジベンザルアセトン又はアミノ酸誘導体を添加することによって達成されることができる。共開始剤の量は硬化可能なインクジェットインクの全重量に基づいて一般に0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜10重量%である。
【0210】
好ましい開始剤系は2−メルカプトベンゾオキサゾールの如き共開始剤の存在下の以下の化学式に相当する2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−(7Cl,8Cl)4,4′−ビ−4H−イミダゾールである:

【0211】
別の好ましいタイプの開始剤はオキシムエステルである。好適な例は以下の化学式を有する:

【0212】
開始剤の好ましい量は硬化可能な液体の全重量の0.3〜50重量%、より好ましくは硬化可能なインクジェットインクの全重量の1〜15重量%である。
【0213】
化学線での照射は波長又は強度を変えることによって二段階で実現されてもよい。かかる場合には2タイプの光開始剤を一緒に使用することが好ましい。
【0214】
開始剤
放射線硬化可能なインクジェットインクは重合開始剤を含有してもよい。好適な重合開始剤はフェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、燐光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーに一般に使用されるヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロールを使用してもよい。
【0215】
好適な市販の開始剤は例えばSumitomo Chemical Co.Ltdによって製造されるSumilizer(登録商標)GA−80,Sumilizer(登録商標)GM及びSumilizer(登録商標)GS;Rahn AGからのGenorad(登録商標)16,Genorad(登録商標)18及びGenorad(登録商標)20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(登録商標)UV10及びIrgastab(登録商標)UV22,Tinuvin(登録商標)460及びCGS20;Kromachem LtdからのFloorstab(登録商標)UV系列(UV−1,UV−2,UV−5及びUV−8);Cytec Surface SpecialtiesからのAdditol(登録商標)S系列(S100,S110,S120及びS130)である。
【0216】
これらの重合開始剤の過剰な添加は硬化に対するインク感受性を低下するので、ブレンド前に重合を防止することができる量を決定することが好ましい。重合開始剤の量は全インクの2重量%未満であることが好ましい。
【0217】
界面活性剤
インクジェットインクは少なくとも一種の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性イオン性であることができ、通常インクジェットインクの全重量に基づいて20重量%未満の全量で、特にインクジェットインクの全重量に基づいて10重量%未満の全量で添加される。
【0218】
好適な界面活性剤はフッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、アルキルベンゼンスルホネート塩、スルホンスクシネートエステル塩及び高級アルコールの燐酸エステル塩(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスクシネート)、高級アルコールのエチレンオキサイドアダクト、アルキルフェノールのエチレンオキサイドアダクト、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイドアダクト、及びアセチレングリコール及びそのエチレンオキサイドアダクト(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びAIR PRODUCTS&CHEMICALS INCから入手可能なSURFYNOL(登録商標)104,104H,440,465及びTG)を含む。
【0219】
非水性インクジェットインクに対して好ましい界面活性剤はフルオロ界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)及びシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーンは典型的にはシロキサンであり、アルコキシル化、ポリエステル変性、ポリエーテル変性ヒドロキシ官能、アミン変性、エポキシ変性及び他の変性体又はそれらの組み合わせであることができる。好ましいシロキサンはポリマー、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0220】
硬化可能なインクジェットインクに対してフッ素化又はシリコーン化合物が界面活性剤として使用されてもよく、好ましくは架橋可能な界面活性剤が使用される。界面活性効果を有する重合可能なモノマーはシリコーン変性アクリレート、シリコーン変性メタアクリレート、アクリル化シロキサン、ポリエーテル変性アクリル変性シロキサン、フッ素化アクリレート、及びフッ素化メタアクリレートを含む。界面活性効果を有する重合可能なモノマーはモノ、ジ、トリ又はそれより高い官能の(メタ)アクリレート又はそれらの混合物であることができる。
【0221】
保湿剤/浸透剤
好適な保湿剤はトリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、ジオール(エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含む);グリコール(プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含む)、及びそれらの混合物及び誘導体を含む。好ましい保湿剤はトリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセロール及び1,2−ヘキサンジオールである。保湿剤はインクジェットインク配合物に配合物の0.1〜40重量%、より好ましくは配合物の0.1〜10重量%、最も好ましくは約4.0〜6.0重量%の量で添加されることが好ましい。
【0222】
スペクトル分離率
スペクトル分離率SSFは着色されたインクジェットインクを特徴づけるために優れた測度であることが見出された。なぜならば、それは光吸収に関する特性(例えば最大吸光度の波長λmax、吸収スペクトルの形状及びλmaxにおける吸光度値)並びに分散品質及び安定性に関する特性を考慮に入れているからである。
【0223】
高い波長における吸光度の測定は吸収スペクトルの形状についての表示を与える。分散品質は溶液中の固体粒子によって誘導された光散乱の現象に基づいて評価されることができる。透過で測定すると、顔料インクにおける光散乱は実際の顔料の吸光度ピークより高い波長の増大した吸光度として検出されることがある。分散安定性は例えば80℃で一週間の熱処理の前後のSSFを比較することによって評価されることができる。
【0224】
インクのスペクトル分離率SSFは、支持体上に噴出された像又はインク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度をより高い参照波長λrefにおける吸光度と比較することによって計算される。スペクトル分離率は最大吸光度Amaxの参照波長における吸光度Arefに対する比率として計算される。

【0225】
SSFは大きな色域を有するインクジェットセットを設計するための優れたツールである。しばしばインクジェットインクセットは現在商業化され、そこでは異なるインクは互いに十分に適合しない。例えば、全てのインクの組み合わされた吸収性は可視スペクトル全体に対して完全な吸収を与えない。例えば着色剤の吸収スペクトル間に「間隙」が存在する。別の問題はあるインクが別のインクの範囲で吸収しうることである。これらのインクジェットインクセットの生じた色域は低いか又は月並みである。
【実施例】
【0226】
材料
以下の実施例で使用された全ての材料は特記しない限り、Aldrich Chemical Co.(ベルギー)及びAcros(ベルギー)のような標準的な販売源から容易に入手可能であった。実施例に使用された水は脱イオン水であった。
DEGDEEはACROSからのジエチレングリコールジエチルエーテルである。
SOLSPERSE(登録商標)32000はNOVEONからの高分散剤である。
PY120はC.I.Pigment Yellow 120の略語であり、それに対してClariantからのNovoperm(登録商標)Yellow H2Gが使用された。
PY155はC.I.Pigment Yellow 155の略語であり、それに対してCLARIANTからのNovoperm(登録商標)Yellow 4Gが使用された。
PY213はC.I.Pigment Yellow 213の略語であり、それに対してCLARIANTからのインクジェットYellow H5Gが使用された。
BACはALDRICH CHEMICAL Coからのベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロライドの略語である。
ALDRICHからのジメチル−5−アミノ−イソフタレート。
UBICHEMからの5−アミノベンズイミダゾロン。
ALDRICHからのジケテン。
ACROSからの5−アミノ−イソフタル酸。
【0227】
測定方法
1.LC−MSによる顔料組成
まず、試料は、超音波処理を使用して20mLのジメチルスルホキシドにおいて0.5mgの顔料を溶解した後に濾過することによって作られた。5μLの試料は次いで、BRUKERからのEsquire−LC及びAGILENTからのAGILENT 1100に装着された3μm粒子を含有する2mm直径及び50mm長さのYMC IncからのYMC AQ分析カラムに注入された。勾配溶離は、溶離液A(10mmolの酢酸アンモニウムを含有する水:メタノールの9:1混合物)で開始し、表1に従ってそれを溶離液B(10mmolの酢酸アンモニウムを含有するメタノール)によって徐々に置換することによって0.2mL/min及び40℃で実施された。

【0228】
検出は、イオン化源としてESI、350℃の乾燥温度で10L/minの乾燥ガスで20psiの噴霧器セット、0.8の自動MS/MS断片増幅及びポストカラム変性剤としてのアンモニウムホルミエート/アンモニウムクロライドを使用するMS及び300nmのUV/VISダイオードアレイを使用して実施された。LC−MS情報に基づいて、オリジナル顔料の組成はUV/VIS−area%で表わされた。
【0229】
2.MSフローを使用する顔料組成
まず試料は20mLのジメチルスルホキシド及び200μLの1,8−ジアザビシクロ5,4−o−ウンデカ−7−エン(DBU)に1.0mgの顔料を溶解することによって作られた。試料は次いで、BRUKERからのEsquire−LCに注入された。
【0230】
検出は、イオン化源としてESI、350℃の乾燥温度で10L/minの乾燥ガスで20psiの噴霧器セット、0.8の自動MS/MS断片増幅及びポストカラム変性剤としてのアンモニウムホルミエート/アンモニウムクロライドを使用するMSによって実施された。
【0231】
バックグラウンド控除後の顔料化合物の分子イオンの強度の内部正規化を使用して顔料中の顔料化合物の比率を計算した。
【0232】
3.滴定
滴定において、式(I)による第二化合物SECの量はあたかも全ての化合物が一つだけのカルボキシル基を有するかのように計算される。これは顔料表面上に存在する式(I)による第二化合物SECの量の誇張に導く。
【0233】
3(a).顔料表面の滴定
1.5gの顔料を150mLのMeOHに添加し、室温で15分間攪拌した。顔料懸濁液を次いで、室温でトルエン:MeOHの8:2混合物における0.1Nテトラブチルアンモニウムヒドロキシドで滴定した。滴定に使用された電極は内部及び外部電解質として塩化リチウムの3モル溶液を有するAg/AgCl及びガラスであった。
【0234】
3(b).顔料表面のゼータ電位滴定
425gの水を、MERCKからの25mLのKOH/硼酸緩衝液pH10の添加によって8.0〜8.5のpHにもたらした。顔料懸濁液は50gの顔料を緩衝溶液に添加することによって作られた。この懸濁液のゼータ電位は測定されたゼータ電位が一定値になるまで30分間、Dispersion Technology,Inc(米国)からのDT1200装置で室温で攪拌しながら測定された。次いで、滴定は電荷のゼロ点に達するまで0.2mLのステップでBAC(34.0g BAC/L水)の溶液を添加することによって開始された。
【0235】
4.粒子サイズ
顔料分散体及びインクジェットインクにおける顔料粒子の平均粒子サイズは0.002%顔料に希釈された試料について4mW HeNeレーザで633nmの波長で光子相関分光法によって決定された。使用した粒子サイズ分析器はGoffin−Meyvisから入手可能なMalvern(登録商標)nano−Sであった。ISO13321法に従って得られたZ平均値は平均粒子サイズ値として使用された。
【0236】
試料は、分散体又はインクを酢酸エチルで0.002%の顔料に希釈することによって作られた。測定された粒子サイズは20秒の6回からなる三つの連続した測定の平均値である。良好なインクジェット特性(噴射特性及び印刷品質)に対して、分散された粒子の平均粒子サイズは200nm以下、好ましくは約100〜175nmにすべきである。着色されたインクジェットインクはもし粒子サイズが80℃で7日間の熱処理後に200nm以下のままであるなら安定した顔料分散体であると考えられる。
【0237】
5.粘度
顔料分散体の粘度は20℃で剪断応力制御モードでTA InstrumentsからのAR−G2レオメータによって測定された。10Paでの値が顔料分散体の粘度のために使用された。
【0238】
6.SSFの測定
インクのスペクトル分離率SSFは、インク溶液の記録されたスペクトルのデータを使用し、最大吸光度と参照波長の吸光度を比較することによって計算された。参照波長は使用された顔料に依存する:
・もしカラーインクが400〜500nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは600nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが500〜600nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは650nmの参照波長で決定されなければならない。
・もしカラーインクが600〜700nmの最大吸光度Amaxを持つなら、そのとき吸光度Arefは830nmの参照波長で決定されなければならない。
【0239】
吸光度はShimadzu UV−2101 PC複光束−分光光度計を用いて透過で測定された。インクは0.002%の顔料濃度を持つように酢酸エチルで希釈された。希釈されたインクのUV−VIS−NIR吸収スペクトルの分光光度測定は表2の設定を使用して複光束分光光度計を用いて透過モードで行なわれた。10mmの路長を持つ石英セルが使用され、酢酸エチルがブランクとして選択された。

【0240】
狭い吸収スペクトル及び高い最大吸光度を示す効果的な着色されたインクジェットインクは30より多いSSFの値を有する。
【0241】
実施例1
この実施例は、C.I.Pigment Yellow 120の加水分解によって本発明による顔料を製造するための方法を説明する。
【0242】
加水分解
顔料C.I.Pigment Yellow 120は二つの化合物A及びB(それぞれ1個及び2個のカルボキシル基を有する)に加水分解されることができる:

【0243】
C.I.Pigment Yellow 120は単一の販売源から容易に入手可能であり、通常、既に少量の化合物A及び/又はBを含有する。化合物A及びBは顔料合成の最終工程における制御されない加水分解又はジアゾ化反応に使用される芳香族アミンにおける不純物の如き多数の理由のために存在する。
【0244】
典型的なPY−120バッチは、BACで滴定されるときに顔料表面上に0.8重量%の化合物A及びBを有することが見出された。顔料の全重量に基づいて1.5重量%及び1.7重量%のそれぞれの顔料表面上の化合物A及びBの量を有する二つのアウトライナーがあるにすぎない。これらの顔料はずっと良好に分散されることができるが、分散品質はなお不十分であった。
【0245】
SOでの加水分解
顔料の全重量に基づいて2.9重量%の化合物A及びBの全含有量を有するPY120バッチを使用して顔料試料1を作った。
【0246】
20mLの水において、1.00グラムのPY120及び2.00mLの濃HSOを添加し、閉じられた容器で90℃で4時間攪拌した。その後、それを20℃に冷却した。内容物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥して顔料試料1を与えた。
【0247】
NaOHでの加水分解
同じバッチが顔料試料1の製造と同様に使用された。20mLの水に1.00グラムのPY120及び0.0275gの濃NaOHを添加し、閉じられた容器において90℃で4時間攪拌した。その後、それを20℃に冷却し、0.5mLの酢酸を添加して化合物A及びBのナトリウム塩を酸形態に変換した。内容物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥し、顔料試料2を与えた。
【0248】
PY120及び顔料試料1及び2の顔料組成はLC−MSによって決定され、表3に示される。LC−MSにおけるUV/VIS−area%検出は顔料の全重量に基づいて顔料における化合物の重量%に極めて良く対応することが見い出された。

【0249】
表3から、化合物A及び/又はBが加水分解によって増加されることがわかる。しかし、化合物Bへの加水分解は濃NaOHを使用する方法によって達成されるにすぎない。試料2についての化合物Aの減少は顔料表面上に存在する少なくとも一部の化合物Aの化合物Bへの変換による。アルカリ性媒体において、非プロトン化化合物Aが顔料表面から少なくとも部分的に脱着されることができ、通常顔料表面に「粘着」する第二メチルエステル基の加水分解を可能にすることが予想される。酸性媒体において、化合物Aの脱着はプロトン化されているのでほとんど可能ではなく、従って化合物Bは実際には形成されない。
【0250】
実施例2
この実施例は、表4に示されたC.I.Pigment Yellow 155及びC.I.Pigment Yellow 213の加水分解を説明する。C.I.Pigment Yellow 155は加水分解されることができる四つのメチルエステル基を含有するが、一つだけのメチルエステル基が加水分解されることが観察された。他方、C.I.Pigment Yellow 213では、一つ及び/又は二つのカルボキシル基を有する化合物への加水分解が観察された。C.I.Pigment Yellow 155及びC.I.Pigment Yellow 213の同じバッチが試料の製造に使用された。

【0251】
SOでの加水分解
SOでの加水分解は、顔料PY120が顔料試料3についてPY155によって、そして顔料試料4についてPY213によって置換された以外、実施例1と正確に同じ方法で実施された。
【0252】
HClでの加水分解
20mLの水に1.00グラムのPY155及び5.00mLの濃HClを添加し、閉じられた容器において90℃で4時間攪拌した。その後、それを20℃に冷却した。内容物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥し、顔料試料5を与えた。
【0253】
HClでの加水分解はPY213と同じ方法で繰り返され、顔料試料6を与えた。
【0254】
NaOHでの加水分解
NaOHでの加水分解は、顔料PY120が顔料試料7についてPY155によって、そして顔料試料8についてPY213によって置換された以外、実施例1と正確に同じ方法で実施された。
【0255】
20℃のNaOHでの加水分解
加水分解の温度の影響が下記の方法によって示される。
【0256】
20mLの水に1.00グラムのPY155及び0.0275gの濃NaOHを添加し、閉じられた容器において20℃で16時間攪拌した。その後、それを20℃に冷却し、0.5mLの酢酸を添加した。内容物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥し、顔料試料9を与えた。
【0257】
加水分解はPY213と同じ方法で繰り返され、顔料試料10を与えた。
【0258】
顔料組成はジメチルスルホキシドにおける顔料試料の劣った溶解性のためにLC−MSによって決定されることができなかった。それゆえ、顔料組成はMS−フローによって決定された。この方法は正確さに劣るが、加水分解を証明する目的のためには十分である。さらに、結果はNMRを使用する検証によって確認された。

【0259】
表5から、ほとんどの場合において加水分解が達成されたことは明らかであるはずである。加水分解は4時間の代わりに16時間行なわれたが、50℃の代わりに20℃で処理された試料9及び10において一つ又は二つのカルボキシル基を有する化合物の有意な増加は観察されなかった。これは高温で加水分解工程を実施する重要性を示す。
【0260】
実施例3
この実施例は、顔料表面上に存在する式(I)による第二化合物SECの十分な量の添加が改良された分散品質及び安定性をもたらすことを示す。
【0261】
式(I)による第二化合物SEC−1の合成
まず反応体1を以下の合成式に従って作った:

【0262】
200mLのアセトニトリルにおける14.9g(0.1mol)の5−アミノベンズイミダゾロンの懸濁液を約100℃に加熱し、8.4g(0.1mol)のジケテンを添加した。ジケテンの添加後、温度を100℃で2時間維持した後、充填物を冷却した。生じた生成物、反応体1を濾過し、アセトニトリルで洗浄した。収率は87%であった。
【0263】
次いで、反応体2を以下の合成式に従って作った:

1000mLのメタノールにおける104.5g(0.5mol)のジメチル−5−アミノ−イソフタレートを約60℃に加熱し、69.0g(0.55mol)のNaOHを添加した。溶液を60℃で1時間攪拌した後、0.3mLの酢酸を添加した。メタノールは300mLの溶液が残るまで蒸発され、それは次いで20℃に冷却された。次いで、300mLの酢酸メチルを添加し、溶液を濾過し、酢酸メチルで洗浄し、再び濾過した。濾液を乾燥して全ての溶媒を蒸発した。次いで、300mLの酢酸メチル及び10mLのメタノールを添加し、混合物を濾過し、酢酸メチルで洗浄し、再び濾過し、50℃で最終的に乾燥した。47gの反応体2が得られた。
【0264】
式(I)による第二化合物SEC−1の形成は、以下の合成式に従って反応体2のジアゾ化及び続く反応体1とのカップリングによって達成された:

【0265】
300mLの水における21.7g(0.1mol)の反応体2に0.9g亜硝酸ナトリウムを添加した。溶液を500mLのメタノールに注ぎ、0℃に冷却した。36.0gの濃塩酸を徐々に添加した。ジアゾニウム塩を0〜5℃の温度に維持した。15分後、過剰の亜硝酸塩を、3.0g(0.03mol)のスルファミド酸を添加し、続いて25.0g(0.3mol)の炭酸ナトリウムを添加することによって中和した。ジアゾニウム塩が作られている間、23.3g(0.1mol)の反応体1を、200mLのメタノールと100.0mL及び12.5gのNaOHとの混合物に溶解した。この溶液は攪拌下でジアゾニウム塩溶液中に滴下され、その間、温度は20℃で約2時間維持された。500mLの水及び30mLの酢酸を混合物に添加し、それを20℃で16時間攪拌した。黄色の生成物を濾過し、水で洗浄し、次いで50℃で乾燥した。35gのSEC−1が得られた。
【0266】
式(I)による第二化合物SEC−2の合成
式(I)による第二化合物SEC−2の形成は、以下の合成式に従って反応体3のジアゾ化及び続く反応体1とのカップリングによって達成された:

300mLの水における18.1g(0.1mol)の反応体3を、10mL(0.1mol)の29%水酸化ナトリウム溶液を添加することによって溶解した。8.97g(0.13mol)の亜硝酸ナトリウムを添加し、無色の溶液を、冷却された濃塩酸(29.98mL;0.36mol)に液滴状に添加した。ジアゾニウム塩を0〜5℃の温度で維持した。15分後、過剰の亜硝酸塩を、3.0g(0.03mol)のスルファミド酸を添加することによって中和し、7のpHを、25.2g(0.3mol)の炭酸ナトリウムを添加することによって得た。ジアゾニウム塩を作っている間、23.3g(0.1mol)の反応体1を500mLのメタノールと10.0mL(0.1mol)の29%水酸化ナトリウム溶液の混合物に溶解した。この溶液をジアゾニウム塩溶液中に滴下すると、黄色の懸濁液がすぐに形成された。温度は0〜5℃で約3時間維持され、黄色の生成物SEC−2が濾過され、メタノールで洗浄された。収率は70%であった。
【0267】
顔料分散体の製造及び評価
化合物SEC−1(1個のカルボキシル基を有する化合物Aに相当する)の増大する量の添加によって非水性顔料分散体2〜6を作るために、そして化合物SEC−2(2個のカルボキシル基を有する化合物Bに相当する)の増大する量の添加によって非水性顔料分散体7〜10を作るためにPY120の典型的なバッチを使用した。全ての顔料分散体1〜10は、化合物SEC−1又はSEC−2の量を補償するために微粉砕混合物における分散媒体DEGDEEの部分を使用したこと以外、表6及び表7に記載されたような組成を得るために同じ方法で作られた。

【0268】

【0269】
15重量%顔料及び15重量%分散剤を有する微粉砕混合物は、顔料PY120、ポリマー分散剤Solsperse(登録商標)32000及び所望により化合物SEC−1又はSEC−2を分散媒体DEGDEEに添加することによって作られた。次いで微粉砕混合物は0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Co.からの「高耐磨耗性ジルコニア粉砕媒体」)の50%容量充填及び45分の滞留時間でNETZSCH(登録商標)LABSTAR1によって冷却下に微粉砕された。
【0270】
顔料表面上の化合物A及びBの量(表8中の「表面A+B」)を決定するためにPY120の顔料バッチをBACで滴定した。顔料分散体2〜10について、顔料分散体に存在するSEC−1及びSEC−2の量を「表面A+B」に添加した。非水性顔料分散体の平均粒子サイズ及び粘度が決定され、表8に示される。

【0271】
表8は、顔料分散体1が劣った分散品質を有しているが、顔料分散体2が必要な分散品質をほとんど達成していることを示す。顔料分散体3〜10は全て、良好な分散品質を示した。
【0272】
実施例4
この実施例は、加水分解を通して得られた十分な量の第二化合物SECを含む顔料表面を有するC.I.Pigment Yellow 120顔料の改良された分散品質を示す。
【0273】
SOでの加水分解
実施例1に記載されたようなHSOでの加水分解工程が繰り返されたが、100℃の温度であった。
【0274】
実施例3の同じPY120バッチが使用された。2000mLの水に200グラムのPY120及び400グラムの濃HSOを添加し、次いで閉じられた容器において100℃で4時間攪拌した。その後、それを20℃に冷却した。内容物を濾過し、水で洗浄し、50℃で乾燥し、顔料試料11を与えた。
【0275】
PY120及び顔料試料11の顔料組成はLC−MSによって決定された。結果は表9に示される。LC−MSにおけるUV/VIS−area%は顔料の全重量に基づいた顔料中の化合物の重量%に極めて良く一致することが見い出された。

【0276】
表9から、化合物A及びBの量が加水分解によって増加されたことがわかる。
【0277】
顔料試料11はまた、BACで滴定された。顔料表面上の化合物A及びBの量(表面A+B)は顔料中の化合物A+Bの全含有量(全含有量A+B)とともに表10に示される。
【0278】
顔料分散体の製造及び評価
未処理のPY120バッチを含む実施例3の顔料分散体1を顔料試料11の顔料分散体と比較した。顔料試料11のこの顔料分散体11は、滞留時間を45分の代わりに35分だけにしたこと以外、同じ方法で作られた。
【0279】
非水性顔料分散体1及び7の平均粒子サイズ及び粘度は表10に示される。

【0280】
表10は、顔料分散体1が劣った分散品質を示すが、顔料分散体11が良好な分散品質を示すことを表わす。
【0281】
実施例5
この実施例は、式(I)による第二化合物SECの添加によって改良されたPY213の分散品質を示す。
【0282】
顔料分散体の製造及び評価
顔料表面上の表11の化合物C,D及び/又はEの量を決定するためにPY213のバッチを滴定した。
【0283】

【0284】
全ての顔料分散体12〜17は、微粉砕混合物中の溶媒DEGDEEの部分が化合物SEC−2の増大する量を補償するために使用された以外、表12に記載されたような組成を得るために同じ方法で作られた。

【0285】
15重量%顔料及び15重量%分散剤を有する微粉砕混合物は、顔料PY213、ポリマー分散剤Solsperse(登録商標)32000及び所望により化合物SEC−2を分散媒体DEGDEEに添加することによって作られた。次いで微粉砕混合物は0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Coからの「高耐磨耗性ジルコニア粉砕媒体」)の50%容量充填及び45分の滞留時間でNETZSCH(登録商標)LABSTAR1によって冷却下に微粉砕された。
【0286】
非水性顔料分散体の平均粒子サイズ及び粘度が決定された。PY213バッチの顔料表面上のカルボキシル基を有する化合物の量(表13の「顔料表面上のSEC−化合物の重量%」を参照)がテトラブチルアンモニウムヒドロキシドでの滴定によって決定された。結果は表13に示される。

【0287】
表13は、顔料分散体12が劣った分散品質を有するが、少なくとも2.0重量%を有する顔料分散体13〜17が全て良好な分散品質を示すことを表わす。
【0288】
実施例6
この実施例は、SEC−1より大きいC.I.Pigment Yellow 213との類似性を有する式(I)による第二化合物SEC−3の添加によって改良されたPY213の分散安定性を示す。

【0289】
SEC−3の合成
化合物SEC−3は以下の合成式に従ってPY213から出発して合成された:

【0290】
30.0gのPY213をとり、それに2000mLの水を添加し、続いて80gの濃NaOHを添加した。この混合物を75℃で20分間攪拌した。混合物を60℃に冷却し、100mLのCHCOOHを添加した。次いで、混合物をさらに冷却し、20℃で16時間維持した。生じた生成物を濾過し、水で洗浄し、最後に50℃で乾燥した。これは28gのSEC−3を生じた。
【0291】
インクジェットインクの製造及び評価
二つのインクジェットインクINK−1及びINK−2は、化合物SEC−3が存在するか又はしないかを除いて、表14に記載されたような組成を得るために同じ方法で作られた。化合物SEC−3が存在しない場合、4.50重量%の代わりに5.00重量%の顔料濃度を使用した。

【0292】
インク組成物は、顔料、ポリマー分散剤Solsperse(登録商標)32000、所望により化合物SEC−3及び有機溶媒DEGDEEを溶解機で混合し、続いて0.4mm直径のイットリウム安定化酸化ジルコニウムビーズ(TOSOH Co.からの「高耐磨耗性粉砕媒体」)を使用するローラミル法でこの混合物を処理することによって作られた。60mLのポリエチレンフラスコを粉砕媒体と20mLの混合物でその容量の半分まで充填した。フラスコは蓋で閉じられ、3日間ローラミル上に置かれた。スピードは150rpmで設定された。微粉砕後、分散体は濾布を使用してビーズから分離された。
【0293】
インクジェットインクの評価
平均粒子サイズ及びスペクトル分離率SSFは両インクに対して80℃で7日間の熱処理後に決定された。結果は表15に掲載される。

【0294】
表15は、INK−2が良好な安定性を示すことを表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料の全重量に基づいて少なくとも70重量%の式(I)による第一化合物COPを含み、かつ顔料の全重量に基づいて2.0〜30.0重量%の式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を有するカラー顔料:

式中、R及びRの一方は水素であり、R及びRの他方は−COORを表わし;
及びRはメチルを表わし;
は以下のものからなる群から選択される:

但し、Cは式(I)中の窒素に対するRの結合部分を表わし、第二化合物SECにおいてR,R,R,R及びRはR及びRの少なくとも一方が水素を表わすことを除いて上記と同じ意味を有する。
【請求項2】
式(I)による第二化合物SECがカラー顔料の全重量に基づいて2.5〜15.0重量%存在する請求項1に記載のカラー顔料。
【請求項3】
式(I)による第一化合物COPがC.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料の化学構造と一致する請求項1又は2に記載のカラー顔料。
【請求項4】
式(I)による第二化合物SECが以下のものによって表される請求項1〜3のいずれかに記載のカラー顔料:

式中、R及びRは独立して水素及びメチルからなる群から選択され、R及びRの少なくとも一方は水素を表わす。
【請求項5】
及びRはともに水素を表わす請求項4に記載のカラー顔料。
【請求項6】
以下の工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載のカラー顔料の製造方法:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む液体媒体を準備する;
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COOR
の一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する;及び
c)液体媒体を除去して乾燥カラー顔料を得る。
【請求項7】
液体媒体が水性媒体である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む非水性顔料分散体の製造方法:
a)C.I.Pigment Yellow 120,C.I.Pigment Yellow 155,C.I.Pigment Yellow 175及びC.I.Pigment Yellow 213からなる群から選択されるカラー顔料を含む非水性液体媒体を準備する;及び
b)以下の工程b1)及び/又はb2)を実施することによって式(I)による第二化合物SECを含む顔料表面を形成する;
b1)顔料表面上のカラー顔料分子のメチルエステル基−COOR及び−COORの一つ又は二つを加水分解する;
b2)カラー顔料を含む液体媒体に式(I)による第二化合物SECを添加する。
【請求項9】
非水性液体媒体の一部が除去される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顔料が微粉砕及び/又は超音波エネルギーによって非水性分散媒体に分散される請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
カラー顔料を含む液体媒体に添加される式(I)による第二化合物SECがカラー顔料より小さい分子量を有する請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程b1)が少なくとも40℃の温度で実施される請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のカラー顔料を含む非水性顔料分散体。
【請求項14】
酢酸エチルで0.002%顔料の濃度に希釈された試料について4mW HeNeレーザで633nmの波長で光子相関分光法によって決定された平均粒子サイズが200nm未満である請求項13に記載の非水性顔料分散体。
【請求項15】
非水性顔料分散体が放射線硬化可能なインクジェットである請求項13又は14に記載の非水性顔料分散体。

【公表番号】特表2009−517492(P2009−517492A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541764(P2008−541764)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069021
【国際公開番号】WO2008/034472
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(507381008)アグファ・グラフィクス・エヌヴィ (14)
【Fターム(参考)】