説明

新規な6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン、その製造方法および特に癌に対する医薬品としてのその使用

【課題】抗増殖活性を有する新規の化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、下記一般式(I)


(式中、基 R1 から R6 は、特許請求の範囲および明細書において与えられる意味を有する)の新規6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン、その異性体、これらの6−ホルミル−テトラヒドロプテリジンの製造方法および医薬組成物としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記一般式(I)
【化1】

(式中、基 R1 から R6 は、特許請求の範囲および明細書において与えられる意味を有する)の新規6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン、その異性体、これらの6−ホルミル−テトラヒドロプテリジンの製造方法および医薬組成物としてのそれらの使用に関する。
【0002】
発明の背景
プテリジノン誘導体は、抗増殖活性を有する活性物質として従来技術より知られる。WO 01/019825 および WO 03/020722 は、腫瘍性疾患の治療のためのプテリジノン誘導体の使用を説明する。
腫瘍細胞は体による調節および制御を完全または部分的に逃れ、増殖が制御されないことを特徴とする。これは、一方では制御タンパク質(例えばRb、p16、p21 および p53など)の欠失、更にはいわゆる細胞周期の促進因子、サイクリン−依存キナーゼ(CDK)の活性化に基づくものである。
加えて、タンパク質キナーゼのオーロラ B が、有糸分裂への進入の際に必須の機能を有することが説明されている。オーロラ B はヒストン H3 を Ser10 においてリン酸化し、それにより染色体凝集を開始させる(Hsu et al. 2000, Cell 102:279−91)。しかしながら、G2/M 期 における特異的な細胞周期停止は、例えば特定のホスファターゼ(例えばCdc25Cなど)の阻害によっても引き起こすことが可能である(Russell and Nurse 1986, Cell 45:145−53)。欠陥のある Cdc25 遺伝子を有する酵母はG2 期で停止する一方で、Cdc25 の過剰発現は有糸分裂期への時期尚早な進入を引き起こす(Russell and Nurse 1987, Cell 49:559−67)。さらには、G2/M 期の停止は、特定のモータータンパク質、例えばEg5などのいわゆるキネシンの阻害(Mayer et al. 1999, Science 286:971−4)、または、微小管を安定化または不安定化する薬剤(例えばコルヒチン、タキソール、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン)によっても開始することができる(Schiff and Horwitz 1980, Proc Natl Acad Sci USA 77:1561−5)。
【0003】
サイクリン−依存およびオーロラキナーゼに加えて、セリン/スレオニンキナーゼの小さなファミリーであるいわゆるポロ様キナーゼが、真核細胞周期の調節に重要な役割を果たす。これまでに、ポロ様キナーゼ PLK−1、PLK−2、PLK−3 および PLK−4 が文献に説明されている。特にPLK−1 が有糸分裂期の調節において重要な役割を果たすことが示されている。PLK−1 は、中心体の成熟、ホスファターゼ Cdc25Cの活性化、および後期促進複合体の活性化を担う(Glover et al. 1998, Genes Dev. 12:3777−87; Qian et al. 2001, Mol Biol Cell. 12:1791−9)。PLK−1 抗体のインジェクションは、非形質転換細胞における G2 停止につながる一方で、腫瘍細胞は有糸分裂期に停止する(Lane and Nigg 1996, J Cell Biol. 135:1701−13)。PLK−1 の過剰発現が、様々な種類の腫瘍(例えば非小細胞肺癌、プレート上皮癌腫、乳癌および結腸直腸癌など)について示されている(Wolf et al. 1997, Oncogene 14 :543 −549; Knecht et al. 1999, Cancer Res. 59:2794 −2797; Wolf et al. 2000, Pathol. Res. Pract. 196:753 −759; Takahashi et al. 2003, Cancer Sci. 94:148−52)。したがって、このカテゴリーのタンパク質もまた、増殖性疾患における治療的介入への興味深いアプローチを構成する(Liu and Erikson 2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:5789−5794)。
多くの種類の腫瘍細胞の耐性は、腫瘍に有効な新規の医薬組成物の開発を要求する。本発明の目的は、抗増殖活性を有する新規の化合物を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の詳細な説明
驚いたことに、一般式(I)の化合物(式中、基 R1 から R6 は後述の意味を有する)が、特定の細胞周期キナーゼ、特にポロ様キナーゼの阻害剤として作用することが発見された。名前を挙げた化合物は、プログラム細胞死が開始される前に細胞を細胞周期の有糸分裂期に停止させるという点において、抗増殖活性を有する。したがって、本発明の化合物は、例えば、特定の細胞周期キナーゼの活性と関連し、かつ、過剰もしくは異常な細胞増殖を特徴とする疾患を治療するために使用することができる。
【0005】
従って、本発明は、下記一般式(1)
【化2】

【0006】
(式中、
R1、R2 は、同一でも異なっていてもよく、置換されていてもよい C1−C10−アルキル、C2−C10−アルケニル、C2−C10−アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−ヘテロシクロアルキル、−X−アリール、−X−ヘテロアリール、−X−シクロアルキル、−X−ヘテロシクロアルキル、−NR7−アリール、−NR7−ヘテロアリール、−NR7−シクロアルキルおよび −NR7−ヘテロシクロアルキルより選択される基、
または、
水素、ハロゲン、COXR7、CON(R72、COR7 および XR7 より選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になって、1〜2個のヘテロ原子を有し得る2〜5−員アルキル架橋を表し、R3 は、水素または置換されていてもよい C1−C12−アルキル、C2−C12−アルケニル、C2−C12−アルキニル、アリール、ヘテロアリール、−C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルケニル、C7−C12−ポリシクロアルキル、C7−C12−ポリシクロアルケニルおよび C5−C12−スピロシクロアルキルより選択される基を表し、あるいは、
R1 と R3 または R2 と R3 は一緒になって、1〜2個のヘテロ原子を有し得る飽和もしくは不飽和の C3−C4−アルキル架橋を表し、
R4 は、置換されていてもよいアリール、ベンジルまたはヘテロアリールを表し、
R5 は、水素、−CO−NH−C1−C4−アルキル、−CO−C1−C4−アルキルまたは −CO−X−C1−C4−アルキルを表し、
R6 は、水素、NH2、XH、ハロゲンおよび1または2以上のハロゲン原子で置換されていてもよい C1−C3−アルキル基より選択される基を表し、
R7 は、それぞれ互いに独立に、水素または置換されていてもよい C1−C4−アルキル、C2−C4−アルケニル、C2−C4−アルキニル、ベンジルおよびフェニルより選択される基を表し、
かつ、
X は、O または S を表す)
の化合物に関し、ここで、前記化合物はその互変異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物の形体にあってもよく、また、その薬理学的に許容される酸付加塩、溶媒和物または水和物の形体にあってもよい。
【0007】
好ましいのは、式中、
R1 から R4 および R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R5 と R6 は水素を表す、
式(I)の化合物である。
同じく好ましいのは、式中、
R3 から R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R1、R2 同一でも異なっていてもよく、水素または置換されていてもよい C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニルおよび C2−C6−アルキニルより選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になって 2〜5−員アルキル架橋を表す、
式(I)の化合物である。
同じく好ましいのは、式中、
R1、R2 および R4 から R7 は先に定義した通りであり、
かつ、
R3 は、水素または置換されていてもよい C1−C12−アルキル、C2−C12−アルケニル、C2−C12−アルキニルおよび C6−C14−アリールより選択される基であり、あるいは、
置換されていてもよい C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルケニル、C7−C12−ポリシクロアルキル、C7−C12−ポリシクロアルケニル および C5−C12−スピロシクロアルキルより選択される基である、
式(I)の化合物である。
【0008】
特に好ましいのは、式中、
R1 から R3 および R5 から R7 は先に定義した通りであり、
かつ、
R4 は、下記一般式の基を表し、
【0009】
【化3】

【0010】
R8 は、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されていてもよい C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−O−C1−C6−アルキル、−O−C2−C6−アルケニル、−O−C2−C6−アルキニル、ヘテロシクロアルキル、C3−C6−シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−O−シクロアルキル、および −O−ヘテロシクロアルキルより選択される基、または、
水素、−CONH2、−COOR7、−OCON(R72、−N(R72、−NHCOR7、−NHCON(R72、−NO2、CF3、ハロゲン、−O−C1−C6−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルケニル−Q1、−CONR7−Q2、ハロゲン、OH、−SO2R7、−SO2N(R72、−COR7、−COOR7、−N(R72、−NHCOR7、−CONR7OC1−C10 −アルキル−Q1 および CONR7O−Q2 より選択される基を表し、
あるいは、
隣接した R8 基は一緒になって、下記一般式 a)、b)、c) または d) の架橋を表し、
【0011】
【化4】

【0012】
Y は、O、S または NR11 を表し、
m は、0、1 または 2 を表し、
R9 は、C1−C6−アルキルを表し、
R10 は、水素または置換されていてもよいフェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、−C1−C3−アルキル−フェニル、−C1−C3−アルキル−ピリジル、−C1−C3−アルキル−ピラジニル、−C1−C3−アルキル−ピリミジニルおよび −C1−C3−アルキル−ピリダジニル、ピペリジニル、ピペラジニルより選択される基を表し、
R11 は、水素または C1−C4−アルキルを表し、
Q1 は、水素、−NHCOR7 または置換されていてもよい−NH−アリール、−NH−ヘテロアリール、アリール、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基より選択される基を表し、
Q2 は、水素または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、C3−C8−ヘテロシクロアルキル− 、C3−C8−シクロアルキル− および C1−C4−アルキル−C3−C8−シクロアルキル基より選択される基を表し、
かつ、
n は、0、1、2、3、4 または 5 を表す、
式(I)の化合物である。
【0013】
特に好ましいのは、式中、
Q1、Q2、n、R4 から R8 は先に定義した通りであり、
R1、R2 は、同一でも異なっていてもよく、水素またはメチル、エチル、プロピル、アリルおよびプロパルギルより選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になってシクロプロピルを表し、
R3 は 水素であるか、あるいは、置換されていてもよい C1−C6−アルキルまたは置換されていてもよい C3−C12−シクロアルキルを表す、
式(I)の化合物である。
最も好ましいのは、式中、
Q1、Q2、n、R1 から R4、R6 から R7 は、先に特定した意味を有し、
かつ、
R8 は、同一でも異なっていてもよく、水素またはハロゲン、(C1−C2−アルキル)2N、CF3、NH2SO2、−CONH−C6−C14−アリール、−CONH− C1−C4−アルキル−C6−C14−アリールおよび −O−C1−C4−アルキル、CONH−C3−C8−シクロアルキル−ヘテロシクロアルキルより選択される基を表す、
式(I)の化合物である。
【0014】
本発明はさらに、医薬組成物としての一般式(1)の化合物の使用に関する。
本発明において特に重要なのは、抗増殖活性を有する医薬組成物としての、一般式(1)の化合物の使用である。
本発明はさらに、癌、細菌およびウィルス感染症、炎症性および自己免疫性疾患、化学療法による脱毛症および粘膜炎、心臓血管疾患、腎臓疾患、並びに慢性および急性の神経変性疾患より選択される疾患の治療および/または予防、好ましくは癌、炎症性および自己免疫性疾患の治療、特に好ましくは癌および炎症性疾患の治療のための医薬組成物を調製するための、一般式(1)の化合物の使用に関する。
本発明はさらに、ポロ様キナーゼ、特にポロ様キナーゼPLK−1を阻害するための医薬組成物を調製するための、一般式(1)の化合物に関する。
本発明はさらに、ポロ様キナーゼ、特にポロ様キナーゼPLK−1の過剰発現に基づく腫瘍性疾患の治療および/または予防のための医薬組成物を調製するための、一般式(1)の化合物の使用に関する。
本発明はさらに、癌、細菌およびウィルス感染症、炎症性および自己免疫性疾患、化学療法による脱毛症および粘膜炎、心臓血管疾患、腎臓疾患、並びに慢性および急性の神経変性疾患より選択される疾患の治療および/または予防、好ましくは癌、炎症性および自己免疫性疾患の治療、特に好ましくは癌および炎症性疾患の治療の方法に関し、ここで前記方法では、効果的な量の式(I)の化合物が患者に投与される。
本発明はまた、活性物質として1または2以上の一般式(I)の化合物を含む医薬製剤に関し、前記化合物は従来型の賦形剤および/または担体と混合されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語アルキル基は、他の基の一部であるアルキル基を包含し、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有する分岐及び不分岐アルキル基を表し、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。別に言及しない限り、上記用語プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルは、すべての可能な異性形体を包含する。例えば、用語プロピルは2個の異性基n−プロピルとイソ−プロピルを含み、用語ブチルはn−ブチル、イソ−ブチル、sec.ブチル及びtert.−ブチルを含み、用語ペンチルはイソ−ペンチル、ネオペンチル等を包含する。
上記アルキル基では、1個以上の水素原子は、任意に他の基で置換されていてもよい。例えば、これらアルキル基は、メチル、塩素又はフッ素、好ましくはフッ素で置換されていてもよい。場合によってアルキル基のすべての水素原子が置換されていてもよい。
用語アルキル架橋は、別に言及しない限り、2〜5個の炭素原子を有する分岐及び不分岐アルキル基、例えばエチレン、プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソ−ブチル、sec.ブチル及びtert.−ブチル等の架橋を表す。エチレン、プロピレン及びブチレン架橋が特に好ましい。1〜2個のC−原子と言及したアルキル架橋は、任意に、酸素、窒素又はイオウの中から選択される1個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0016】
用語アルケニル基(他の基の一部であるアルケニル基を含む)は、少なくとも1個の二重結合を有するという条件で、2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、最も好ましくは2〜3個の炭素原子を有する分岐及び不分岐アルキレン基を表す。例として、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル等が挙げられる。別に言及しない限り、上記用語プロペニル、ブテニル等は、すべての可能な異性形体をも包含する。例えば、用語ブテニルは1−ブテニル、2−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル及び1−エチル−1−エテニルを包含する。
上記アルケニル基では、別に言及しない限り、1個以上の水素原子は任意に他の基で置換されていてもよい。例えば、これらアルキル基は、メチル、塩素又はフッ素、好ましくはフッ素で置換されていてもよい。場合によってはアルケニル基のすべての水素原子が置換されていてもよい。
用語アルキニル基(他の基の一部であるアルケニル基を含む)は、少なくとも1個の三重結合を有するという条件で、2〜10個の炭素原子を有する分岐及び不分岐アルキニル基を表す。例えば、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられ、好ましくはエチニル又はプロピニルである。
上記アルキニル基では、別に言及しない限り、1個以上の水素原子は任意に他の基で置換されていてもよい。例えば、これらアルキル基は、メチル、塩素又はフッ素、好ましくはフッ素で置換されていてもよい。場合によってはアルキニル基のすべての水素原子が置換されていてもよい。
【0017】
用語アリールは、6〜14個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する芳香環系、好ましくはフェニルを表し、別に言及しない限り、1個以上の例えば以下の置換基:OH、NO2、CN、OMe、−OCHF2、−OCF3、−NH2、ハロゲン、好ましくはフッ素又は塩素、C1−C10−アルキル、好ましくはC1−C5−アルキル、好ましくはC1−C3−アルキル、特に好ましくはメチル又はエチル、−O−C1−C3−アルキル、好ましくは−O−メチル又は−O−エチル、−COOH、−COO−C1−C4−アルキル、好ましくは−O−メチル又は−O−エチル、又は−CONH2を持っていてよい。
2個までの炭素原子が1又は2個の窒素原子で置換されているヘテロアリール基の例として、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリゾール、ピリジン、ピリミジンが挙げられ、上記ヘテロアリール環はそれぞれ任意にベンゼン環に環付加していてもよく、好ましくはベンゾイミダゾールであり、かつ別に言及しない限り、これらヘテロ環は例えば任意に1個以上の例えば以下の基:F、Cl、Br、OH、OMe、メチル、エチル、CN、CONH2、NH2、任意に置換されていてもよいフェニル、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、好ましくは任意に置換されていてもよいピリジルを持っていてよい。
【0018】
シクロアルキル基の例は、3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであり、上記シクロアルキル基は、それぞれ任意に架橋され、及び/又は、1個以上の置換基、例えばOH、NO2、CN、OMe、−OCHF2、−OCF3、−NH2又はハロゲン、好ましくはフッ素若しくは塩素、C1−C10−アルキル、好ましくはC1−C5−アルキル、好ましくはC1−C3−アルキル、さらに好ましくはメチル若しくはエチル、−O−C1−C3−アルキル、好ましくは−O−メチル若しくは−O−エチル、−COOH、−COO−C1−C4−アルキル、好ましくは−COO−メチル若しくは−COO−エチル又は−CONH2を持ちうる。シクロアルキル基の特に好ましい置換基は、=O、OH、NH2、メチル又はFである。
シクロアルケニル基の例は、1個の二重結合を有する3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル又はシクロヘプテニル、好ましくはシクロプロペニル、シクロペンテンチル又はシクロヘキセニルであり、上記シクロアルケニル基は、それぞれ任意に1個以上の置換基を持っていてもよい。
【0019】
“=O”は、二重結合によって連結している酸素原子を表す。
ヘテロシクロアルキル基の例は、その定義で別に記載されていない限り、ヘテロ原子として窒素、酸素又はイオウを含有しうる3−〜12−員、好ましくは5−、6−又は7−員、飽和若しくは不飽和ヘテロ環、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラノン、γ−ブチロラクトン、α−ピラン、γ−ピラン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジヒドロチオフェン、チオラン、ジチオラン、ピロリン、ピロリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、テトラゾール、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、テトラジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジアゼパン、オキサジン、テトラヒドロ−オキサジニル、イソチアゾール、ピラゾリジン、好ましくはモルフォリン、ピロリジン、ピペリジン又はピペラジンが挙げられ、該ヘテロ環式基は、任意に架橋され、及び/又は、置換基、例えばC1−C4−アルキル、好ましくはメチル、エチル又はプロピルを持っていてよい。
ポリシクロアルキル基の例は、任意に置換されていてもよい二−、三−、四−又は五環式シクロアルキル基、例えばピナン、2,2,2−オクタン、2,2,1−ヘプタン又はアダマンタンである。ポリシクロアルケニル基の例は、任意に架橋され、及び/又は置換されていてもよい8−員二−、三−、四−又は五環式シクロアルケニル基、好ましくはビシクロアルケニル又はトリシクロアルケニル基であり、それらが少なくとも1個の二重結合を有する場合、例えばノルボルネンである。
スピロアルキル基の例は、任意に置換されていてもよいスピロ環式C5−C12アルキル基である。
一般的に、用語ハロゲンはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、最も好ましくは塩素を表す。
【0020】
本発明の化合物は、個々の光学異性体、個々のエナンチオマーの混合物、ジアステレオマー又はラセミ化合物の形体、互変異性体の形体、溶媒和物の形体、好ましくはその水和物の形体で存在していてよく、かつ遊離塩基又は対応する酸付加塩の形体、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩化水素酸若しくは臭化水素酸、又は例えばシュウ酸、フマル酸、ジグリコール酸若しくはメタンスルホン酸のような有機酸との酸付加塩の形体でも存在しうる。
【0021】
置換基 R1 は、置換されていてもよい C1−C10−アルキル、好ましくは C1−C4−アルキル、特に好ましくはメチル、エチルまたはプロピル、C2−C10−アルケニル、好ましくはアリル、C2−C10−アルキニル、好ましくはプロパルギル、アリール、好ましくはフェニル、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−ヘテロシクロアルキル、−X−アリール、−X−ヘテロアリール、−X−シクロアルキル、−X−ヘテロシクロアルキル、−NR7−アリール、−NR7−ヘテロアリール、−NR7−シクロアルキルおよび −NR7−ヘテロシクロアルキルより選択される基、
または、
水素、ハロゲン、COXR7、CON(R72、COR7 および XR7 より選択される基を表し得る。
好ましくは、置換基 R1 はエチルまたは水素、特に好ましくは水素を表す。
置換基 R2 は、置換されていてもよい C1−C10−アルキル、好ましくは C1−C4−アルキル、特に好ましくは メチル、エチルまたはプロピル、C2−C10−アルケニル、好ましくはアリル、C2−C10−アルキニル、好ましくはプロパルギル、アリール、好ましくはフェニル、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−ヘテロシクロアルキル、−X−アリール、−X−ヘテロアリール、−X−シクロアルキル、−X−ヘテロシクロアルキル、−NR7−アリール、−NR7−ヘテロアリール、−NR7−シクロアルキル および −NR7−ヘテロシクロアルキルより選択される基、
または、
水素、ハロゲン、COXR7、CON(R72、COR7 および XR7 より選択される基を表し得る。
好ましくは、置換基 R2 は、メチル、エチル、アリル、プロパルギルまたは水素、特に好ましくはメチルまたはエチルを表す。
【0022】
置換基 R1 と R2 は一緒になって、2〜5−員アルキル架橋、好ましくは 2−員アルキル架橋(1〜2 個のヘテロ原子(例えば酸素、硫黄または窒素、好ましくは酸素または窒素)を有し得る)を表し得る。
置換基 R3 は、水素または置換されていてもよい C1−C12−アルキル、好ましくは C2−C6−アルキル、特に好ましくはペンチル、C2−C12−アルケニル、C2−C12−アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルケニル、C7−C12−ポリシクロアルキル、C7−C12−ポリシクロアルケニルおよび C5−C12−スピロシクロアルキルより選択される基を表し得、あるいは、
R1 と R3 または R2 と R3 は一緒になって、飽和もしくは不飽和の C3−C4−アルキル架橋(1〜2 個のヘテロ原子を有し得る)を表す。
好ましくは、置換基 R3 は、C1−C6−アルキルまたは −C3−C12−シクロアルキル、特に好ましくはペンチルまたはシクロペンチルを表す。
【0023】
置換基 R4 は、置換されたアリール、ベンジルまたはヘテロアリール、好ましくは下記一般式の基を表してもよい。
【化5】

【0024】
指数 n は、0、1、2、3、4 または 5、好ましくは 1 または 2、特に好ましくは 1 を表し得る。
置換基 R5 は、水素、−CO−NH−C1−C4−アルキル、−CO−C1−C4−アルキルまたは −CO−X−C1−C4−アルキルより選択される基を表し得る。好ましくは、置換基 R5 は水素を表す。
置換基 R6 は、水素、NH2、XH、ハロゲンおよび C1−C3−アルキル基(1または2以上のハロゲン原子で置換されていてもよい)より選択される基を表し得る。
好ましくは、置換基 R6 は水素を表す。
置換基 R7 は、それぞれ互いに独立に、水素または置換されていてもよい C1−C4−アルキル、好ましくはメチルまたはエチル、C2−C4−アルケニル、C2−C4−アルキニル、ベンジルおよびフェニルより選択される基を表し得る。好ましくは、置換基 R7 は水素を表す。
X は、各ケースにおいて互いに独立に、酸素または硫黄、好ましくは酸素を表し得る。
置換基 R8 は、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されていてもよい C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−O−C1−C6−アルキル、−O−C2−C6−アルケニル、−O−C2−C6−アルキニル、ヘテロシクロアルキル、C3−C6−シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−O−シクロアルキル、−O−ヘテロシクロアルキルより選択される基、または
水素、−CONH2、−COOR7、−OCON(R72、−N(R72、−NHCOR7、−NHCON(R72、−NO2、CF3、ハロゲン、−O−C1−C6−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルケニル−Q1、−CONR7−Q2、ハロゲン、OH、−SO2R7、−SO2N(R72、−COR7、−COOR7、−N(R72、−NHCOR7、−CONR7OC1−C10 アルキル−Q1 および CONR7O−Q2 より選択される基を表し得、
あるいは、
隣接した基 R8 は一緒になって、一般式 a)、b)、c) または d) の架橋を表す。
【0025】
【化6】

【0026】
好ましくは、置換基 R8 は、アリール、好ましくはフェニル、ヘテロアリール、特に好ましくはピリジルまたはピリミジニルを表し、あるいは、−CONR7−Q2、好ましくは −CONH−Q2、−CONR7−C1−C10−アルキル−Q1、好ましくは −CONH−C1−2−Q、または −CONH−C2−Q1、CONR7−C3−C8−シクロアルキル−Q1、好ましくは −CONH−シクロヘキシル−Q1 または −CONH−シクロペンチル−Q1 より選択される基を表し、
Y は、O、S または NR11、好ましくは NR11 を表し得、
m は、0、1 または 2、好ましくは 1 を表す。
【0027】
置換基 R9 は、C1−C6−アルキル、好ましくはメチルを表し得る。
置換基 R10 は、水素または置換されていてもよいフェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、−C1−C3−アルキル−フェニル、−C1−C3−アルキル−ピリジル、−C1−C3−アルキル−ピラジニル、−C1−C3−アルキル−ピリミジニルおよび −C1−C3−アルキル−ピリダジニルより選択される基を表し得る。
特に好ましくは、R10 は、ピリジル、ピリミジニル、ピペリジニル、ピペラジニルを表す。
置換基 R11 は、水素または C1−C4−アルキル、好ましくは水素またはメチルを表し得る。
Q1 は、水素、−NHCOR7、あるいは、置換されていてもよい−NH−アリール、−NH−ヘテロアリール、アリール、好ましくは フェニル、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキルおよび ヘテロシクロアルキル基より選択される基を表し得る。
特に好ましくは、Q1 は、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキル、特に好ましくはピリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニルまたはピペリジニルを表し、Q2 は、水素または置換されていてもよいアリール、好ましくはフェニル、ヘテロアリール、C3−C8−ヘテロシクロアルキル− 、C3−C8−シクロアルキルおよび C1−C4−アルキル−C3−C8−シクロアルキル基より選択される基を表す。
m は 0、1、2、3、4 または 5、好ましくは 1 を表し得る。
【実施例】
【0028】
一般式(I)の化合物は、以下の合成方法により調製することが可能であり、ここで、一般式(A1)〜(A4)および(I)の置換基は前述の意味を有する。
この方法は、その対象に限定することなく本発明を説明するものであると理解されるべきである。
式(A1)の化合物を式(A2)の化合物に還元し、その後それはギ酸と共に2−クロロ−6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン(A3)を生じる。次いで、一般式(A3)の化合物を置換アミンと反応させて一般式(I)を生成し、それは必要によりさらなる変換に供してもよい。式(A1)の化合物は WO 2003020722 に従って得ることができる。4−アミノ−N−シクロプロピルベンズアミドは、例えば以下の文献に従って調製し得る: B.W. Horrem and T.E. Lynes, J. Med. Chem. 1963, 6, 528−532。トランス−4−モルホリノ−シクロヘキシルアミン 10 は以下の方法により調製された:
【0029】
【化7】

【0030】
ジベンジル−4−モルホリノ−シクロヘキシルアミン
3.9g(30mmol)の4−ジベンジルシクロヘキサノンを100mLのCH2Cl2に溶かし、3.9g(45mmol)のモルフォリン及び9.5g(45mmol)のNaBH(OAc)3と25℃で12時間撹拌した。次に、混合物に水と炭酸カリウムを加え、有機相を分離し、乾燥させ、エバポレートした。残留物をシリカゲルカラム(溶出液:酢酸エチル90/メタノール10+1%濃アンモニア)を通して精製した。適切なフラクションを真空中エバポレートした。収量:6.6g(60%)のシス−異性体と2g(18%)のトランス−異性体。
代わりに、トランス−ジベンジル−4−モルホリノ−シクロヘキシルアミンは以下の方法で調製することができる。
33g(112mmol)の4−ジベンジルシクロヘキサノンを300mLのメタノールに溶かし、17.4g(250mmol)のヒドロキシアミン塩酸塩と混ぜ、60℃で4時間撹拌した。真空中溶媒を除去し、500mLの水及び50gの炭酸カリウムと混ぜ合わせ、300mLのジクロロメタンで2回抽出した。有機相を乾燥させ、真空中エバポレートし、残留物を石油エーテルから結晶させ、1.5Lのエタノールに溶かして70℃に加熱した。166gのナトリウムをバッチ式で加え、ナトリウムが溶けるまで還流させた。溶媒を除去し、残留物を100 mLの水と混ぜ、400mLのエーテルで2回抽出した。有機相を水洗し、乾燥させ、真空中エバポレートし、カラム(溶出液:酢酸エチル80/メタノール20+2%濃アンモニア)を用いてトランス異性体を単離した。収量:12.6g(41.2%)。
6.8g(23mmol)のトランス−1−アミノ−4−ジベンジルアミノシクロヘキサンを90mLのDMFに溶かし、5mL(42mmol)の2,2'−ジクロロエチルエーテル及び5gの炭酸カリウムと100℃で8時間撹拌した。冷却後、30mLの水を加え、沈殿した結晶を吸引ろ過し、短カラム(溶出液:酢酸エチル)を通して精製した。メタノールと濃塩酸から二塩酸塩とし残留物を結晶させた。収量:7.3g(72.4%)。
【0031】
一般的手順:
ダイアグラム 1
【化8】

【0032】
ステップ 1
ステップ 1 では、1当量の化合物(A1) と1〜5当量、好ましくは3〜4当量の水素化ホウ素ナトリウムを三フッ化ホウ素エーテラートと共に、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルまたはジオキサン、好ましくはテトラヒドロフランなどの希釈剤中で、15〜40℃で12〜24時間撹拌した。
生成物を単離するため、その後反応混合物に水と塩酸を加え、そして真空中で有機溶媒を除いた。その後、水相をアンモニアまたは炭酸ナトリウムなどの塩基で塩基性化し、そして例えば、ジエチルエーテルまたは酢酸エチル、好ましくは酢酸エチルなどの有機溶媒で2回から3回抽出した。混合した有機抽出物を乾燥させ、そして溶媒を蒸留除去した。
残渣(化合物A2)は、予め精製することなくステップ 2 において使用し得る。
【0033】
ステップ 2
ステップ 1 で得られた化合物(A2)をギ酸に溶解し、5分間から1時間、好ましくは15分間還流して化合物(A3)を形成した。次いで、蒸留によりギ酸を除き、そして、1または2以上の有機溶媒(例えば酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、アセトン、石油エーテル)を加えることにより残渣を再結晶化させた。
【0034】
ステップ 3
ダイアグラム 2
【化9】

【0035】
a) ステップ 3 では、1当量の 2−クロロ−6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン(A3)を1〜3当量のアミンと混合し、120〜180℃、好ましくは160℃で30分間〜4時間加熱した(ダイアグラム 2 を参照されたい)。冷ました後、混合物を適当な溶媒に回収し、そして生成物を結晶化させるか、クロマトグラフィー精製に供した。
b) あるいは、ステップ 3 では、1当量の 2−クロロ−6−ホルミル−テトラヒドロプテリジン(A3)を、1〜3当量のアミンと、有機溶媒(例えばジオキサンまたはテトラヒドロフランなど)中で、1当量の酸(例えば p−トルエンスルホン酸)と共に還流温度で8時間〜48時間撹拌することもできる。冷ました後、混合物を適当な溶媒に回収し、そして生成物を結晶化させるか、クロマトグラフィー精製に供した。
【0036】
実施例 1 および 5 の合成:
実施例 1 および 5 を合成するために、まず、中間体化合物2を以下に説明するように調製した。
【化10】

【0037】
中間体化合物2の合成:
2 g の化合物1を50 mL テトラヒドロフランに溶解し、1 g 水素化ホウ素ナトリウムおよび3 mL 三フッ化ホウ素エーテラートと共に25℃で18時間撹拌した。次いで、2 mL 水および 20 mL 2N 塩酸を滴下し、混合物を10 分間還流した。次いで、蒸留によりテトラヒドロフランを分離除去し、残渣をアンモニア溶液に混合し、水相を50 mL 酢酸エチルで2回抽出した。有機相を水で洗浄し、乾燥させ、そして真空中でエバポレートさせた。沈殿したあらゆる結晶をろ過し、エーテルで洗浄した。1.5 g の化合物3が得られ、それはさらに精製することなく次の反応のために使用した。
1.4 g の化合物3 を10 mL ギ酸に溶解し、15分間還流した。次いで、溶液を真空でエバポレートし、残渣をエーテルに混合し、沈殿をろ過し、エーテルで洗浄した。これにより 1.2 g の生成物4が得られ、それはさらに精製することなく次のステップに使用した。
1.2 g の化合物4を、2.78 g 4−アミノ安息香酸エチルと溶媒なしで150℃で2時間撹拌した。冷ました後、反応混合物を50 mL 酢酸エチルと混合し、生成した沈殿をろ過してエーテルで洗浄した。これにより 1.1 g の生成物5が得られ、それはさらに精製することなく次のステップに使用した。
1.1 g の化合物5を10 mL メタノールおよび 1 mL 水に溶解し、0.4 g 水酸化ナトリウムを加え、そして混合物を30℃で24時間撹拌した。その後、それを真空中でエバポレートし、20 mL 水および0.8 mL 酢酸を加え、そして50 mL 塩化メチレンで2回抽出した。有機相を乾燥させ、真空中でエバポレートし、そしてアセトンから結晶化させた。0.7 g の固形物2が得られ、それは続く反応に使用された。
【0038】
実施例 1: 0.1 g の 2 を、0.5 g シクロプロピルアミン、0.1 g の o−ベンゾトリアゾリル,N,N,N´,N´−テトラフルオロウロニウム テトラフルオロボラート (TBTU)、0.5 mL N−エチルジイソプロピルアミンと共に2 mL ジメチルホルムアミド中で30分間撹拌した。次いで、50 mL 水および1 g 炭酸カリウムを加え、そして混合物を50 mL ジクロロメタンで2回抽出した。有機相を乾燥させ、真空中でエバポレートした。その後、混合物をシリカゲル上のクロマトグラフィーで分画し、得られた粗生成物をアセトン中に溶解し、その溶液をエーテル含有 HClと混合し、エバポレートし、エーテルから結晶化させた。25 mg の黄色粉末が得られた。
実施例 5: 0.1g の 2 を、0.15g の 3−アミノピリジン、0.1g TBTU、0.5g N−エチルジイソプロピルアミンと共に2 mL ジメチルホルムアミド中で、120℃で2時間撹拌した。次いで、50 mL 水および1 g 炭酸カリウムを加え、50 mL 塩化メチレンで2回抽出した。有機相を乾燥させ、混合物をシリカゲル上のクロマトグラフィーで分画し、適切な画分を真空中でエバポレートし、そして残渣をアセトンから結晶化した。10 mg の黄色固形物が得られた。
【0039】
実施例 6 および 8 の合成:
実施例 6 および 8 を合成するために、まず、中間体化合物7を以下に説明するように調製した。
【化11】

【0040】
中間体化合物7の合成:
4 g の化合物6を100 mL テトラヒドロフランに溶解し、2 g 水素化ホウ素ナトリウムおよび 6 mL 三フッ化ホウ素エーテラートと共に25℃で18時間撹拌した。その後、まず4 mL 水、次いで 40 mL 2N 塩酸を懸濁物にゆっくりと滴下し、混合物を10分間還流した。次いで、蒸留によりテトラヒドロフランを分離除去し、残渣をアンモニア溶液に混合し、水相を各回100 mL 酢酸エチルで2回抽出した。有機相を水で洗浄し、乾燥させ、そして真空中でエバポレートした。沈殿したあらゆる結晶をろ過し、エーテルで洗浄した。3 g の化合物8が得られ、それはさらに精製することなく次の反応のために使用した。
0.6 g の化合物8を5 mL ギ酸に溶解し、15分間還流した。次いで、溶液を真空でエバポレートし、残渣を酢酸エチルおよび石油エーテルに混合し、沈殿をろ過し、そして母液をエバポレートした。これにより、0.58 g の黄色油状生成物7が得られ、それはさらに精製することなくその後の反応のために使用した。
【0041】
実施例 6: 0.1 g の 7 を、0.14g 4−アミノ−N−シクロプロピルベンズアミドと、溶媒なしで160℃で45分間加熱した。冷ました後、反応混合物をジクロロメタンおよびメタノールに溶解し、シリカゲル上で分画した。適切な画分を真空中で乾燥させた。残渣を酢酸エチルに溶解し、イソプロパノール、ジエチルエーテルおよび石油エーテルからのオキサラート溶液と混合し、そして生成した沈殿をろ過して乾燥させた。30 mg の白色固形物が得られた。
実施例 8: 0.46 g の 7 を、0.32 g 4−アミノ−3−メトキシ安息香酸および 0.32 g p−トルエンスルホン酸と共に、10 mL ジオキサン中で、還流温度で48時間撹拌した。反応混合物をエバポレートし、シリカゲル上で分画した。適切な画分を混合し、真空中でエバポレートした。残渣を少量の酢酸エチルおよび石油エーテルに混合し、得られた沈殿をろ過して乾燥させた。0.3 g の酸 9 が、ベージュの固形物として得られ、それはさらに精製することなく続く反応のために使用された。
2 mL ジクロロメタン中で0.047 g TBTU、0.2 mL エチルジイソプロピルアミンと共に存在する0.065g の 9 をトランス−4−モルホリノ−シクロヘキシルアミン10と混合し、25℃で14時間撹拌した。次いで、混合物をさらなるジクロロメタンで希釈し、そして有機相を水および炭酸カリウム溶液で抽出した。その後、有機相をエバポレートし、残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィーで分画した。適切な画分をエバポレートし、そして酢酸エチルおよび石油エーテルを加えることにより残渣を結晶化した。50 mg の白色固形物が得られた。
特に、表1に列挙される一般式(I)の化合物が上述の手順と同様にして得られた。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
明らかになったように、一般式(I)の化合物は、治療分野のその広範な用途を特徴とする。特に、特定の細胞周期キナーゼの阻害(特に培養ヒト腫瘍細胞の増殖、さらには内皮細胞などの他の細胞の増殖に対する阻害効果)が役割を果たす用途に言及すべきである。
DNA染色およびその後のFACS分析で実証しうるように、本発明の化合物によって引き起こされる増殖の阻害は、特に細胞周期のG2/M期の細胞の停止によって媒介される。この細胞は、プログラム細胞死の開始する前に、細胞周期のこの期で特定の長さの時間(使用する細胞に依存する)停止する。細胞周期のG2/M期における停止は、例えば、特定の細胞周期キナーゼの阻害によって開始される。本発明の一般式Iの化合物、その異性体及びその生理学的に許容しうる塩は、その生物学的特性に基づき、過剰又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療に好適である。
【0049】
このような病気として、例えば:ウィルス感染症(例えばHIV及びカポジ肉腫);炎症性及び自己免疫疾患(例えば大腸炎、関節炎、アルツハイマー病、糸球体腎炎及び創傷治癒);細菌、真菌及び/又は寄生虫感染症;白血病、リンパ腫及び固体腫瘍;皮膚病(例えば乾癬);骨疾患;心臓血管疾患(例えば再狭窄及び肥大)が挙げられる。それらは、放射線、UV治療及び/又は細胞停止治療によって引き起こされるDNAへの損傷から増殖性細胞(例えば毛髪、腸、血液及び前駆細胞)を保護することにも適する(Davis et al., 2001)。これら新規化合物は、同一効能のために用いられる他の活性物質(例えば細胞増殖抑止剤、ホルモン、抗体)と組み合わせて上記疾患の予防、短期又は長期治療のため使用することもできる。
本発明の化合物の活性は、PLK1阻害アッセイ、培養ヒト腫瘍細胞についての細胞毒性試験及び/又は例えばHeLaS3細胞についてのFACS分析で決定した。両試験法で、本化合物は非常に良い活性、すなわち例えばHeLaS3細胞毒性試験で5μmol、通常1μmol未満のEC50値を、そしてPLK1阻害アッセイで1μmol未満のIC50値を示した。
【0050】
PLK−1 キナーゼアッセイ
酵素調製:
N−末端でGSTに連結した組み換えヒトPLK1 酵素を、バキュロウィルス(Sf21)に感染させた昆虫細胞から単離した。精製は、グルタチオンセファロース上でのアフィニティークロマトグラフィーにより行った。
Sf−900 II 血清非含有昆虫細胞用培地(Life Technologies)中の4x107 個のSf21 細胞(ヨウトガ(Spodoptera frugiperda))をスピナーフラスコ中に接種した。27℃、70 rpmで72時間インキュベートした後、1x108 個のSf21 細胞を、新しいスピナーフラスコ中の計180 ml 培地に接種した。さらなる24時間後、20 ml の組み換えバキュロウィルスストック懸濁液を加え、そして細胞を27℃、70 rpmで72時間培養した。回収の3時間前に、オカダ酸を加え(Calbiochem, 最終濃度0.1μM)、懸濁液をさらにインキュベートした。細胞数を計測し、遠心(5 分, 4℃, 800 rpm)により細胞を除き、1 x PBS (8 g NaCl/l, 0.2 g KCl/l, 1.44 g Na2HPO4/l, 0.24 g KH2PO4/l)で洗浄した。再び遠心した後、液体窒素でペレットを瞬間凍結した。その後、ペレットを素早く融解し、氷冷溶解バッファー(50 mM HEPES pH 7.5, 10 mM MgCl2, 1 mM DTT, 5μg/ml ロイペプチン, 5μg/ml アプロチニン, 100μM NaF, 100μM PMSF, 10 mM β−グリセロールホスフェート, 0.1 mM Na3VO4, 30 mM 4−ニトロフェニルホスフェート)に再懸濁して 1x108 個/ 17.5 mlとした。細胞を氷上で30分間溶解させた。細胞デブリスを遠心(4000 rpm, 5 分)で除去した後、透明な上清をグルタチオンセファロースビーズと混合し(上清50 ml当たり1 ml の再懸濁/洗浄したビーズ)、混合物を回転板上で4℃で30分間インキュベートした。その後、ビーズを溶解バッファーで洗浄し、組み換えタンパク質を、再懸濁ビーズ1ml当たり1 mlの溶出バッファーを使用してビーズから溶出させた(溶出バッファー: 100 mM Tris/HCl pH=8.0, 120 mM NaCl, 20 mM 還元型グルタチオン(Sigma G−4251), 10 mM MgCl2, 1 mM DTT)。タンパク質濃度はブラッドフォード法で測定した。
【0051】
アッセイ
以下の成分を、96−ウェル丸底ディッシュ(グライナーバイオワン, PS マイクロタイタープレート No.650101)のウェルに混合した:
− 10μl の、6% DMSO, 0.5 mg/ml カゼイン (Sigma C−5890), 60 mM β−グリセロホスフェート, 25 mM MOPS pH=7.0, 5 mM EGTA, 15 mM MgCl2, 1 mM DTTの中にある様々な濃度(例えば、300μMから開始し、1:3への希釈)でのテスト化合物
− 20μl 基質溶液 (25 mM MOPS pH=7.0, 15 mM MgCl2, 1 mM DTT, 2.5 mM EGTA, 30 mM β−グリセロホスフェート, 0.25 mg/ml カゼイン)
− 20μl 酵素希釈液 (25 mM MOPS pH=7.0, 15 mM MgCl2, 1 mM DTTの中における、酵素ストックの1:100希釈物)
− 10μl ATP 溶液 (45μM ATP、1.11x106 Bq/ml ガンマ−P33−ATPを含む)。
ATP 溶液を加えることにより反応を開始し、穏やかに振とう(IKA Schuttler MTS2上で650 rpm)しながら30℃で45分間継続させた。ウェル当たり125μl の氷冷 5% TCA を加えることにより反応を停止させ、少なくとも30分間氷上でインキュベートした。フィルタープレート (96−ウェルマイクロタイターフィルタープレート: ユニフィルター−96, GF/B; パッカード; No.6005177)上に回収することにより沈殿を移し、次いで1% TCA で4回洗浄し、60℃で乾燥させた。ウェル当たり35μlのシンチレーション溶液(Ready−Safe; ベックマン)を加えた後、シーリングテープでプレートをシール密封し、沈殿したP33 の量をワラック・ベータカウンターで測定した。測定データは標準の グラフパッドソフトウェア(レーベンバーグ・マルカート・アルゴリズム)を使用して評価した。
【0052】
培養ヒト腫瘍細胞についての細胞毒性の測定
培養ヒト腫瘍細胞についての細胞毒性を測定するため、子宮頚癌腫瘍細胞系HeLaS3の細胞(American Type Culture Collection(ATCC)から得た)を、Ham's F12培地(Life Technologies)及び10%ウシ胎児血清(Life Technologies)の中で培養し、対数増殖期に収集した。
次に、HeLaS3細胞を96−ウェルプレート(Costar)内に1000細胞/ウェルの密度で置き、インキュベーター(37℃かつ5%のCO2)内で一晩中インキュベートするが、各プレートについて6ウェル(3ウェルは培養液の対照として、3ウェルは還元型AlamarBlueとのインキュベーション用)は培養液だけで満たした。種々の濃度(DMSOに溶解;最終濃度:1%)の細胞に活性物質を添加した(各場合3回分の測定として)。72時間のインキュベーション後、各ウェルに20μlのAlamarBlue(AccuMed International)を加え、細胞をさらに7時間インキュベートした。対照として20μlの還元型Alamar Blue(30分間オートクレーブ処理したAlamarBlue試薬)を3ウェルに加えた。7時間のインキュベーション後、個々ウェル内のAlamarBlue試薬の色の変化をPerkin Elmer蛍光分光光度計(励起530nm、発光590nm、スリット15、積分時間0.1)で決定した。反応したAlamarBlue試薬の量は細胞の代謝活性を表す。対照(インヒビターのないHeLa S3細胞)のパーセンテージとして相対細胞活性を計算し、50%まで細胞活性を阻害する活性物質濃度(IC50)を導いた。値は、ダミー値(培養液対照)について補正する3つの個々データの平均から計算した。
【0053】
FACS分析
ヨウ化プロピジウム(PI)は化学量論的に二重鎖DNAに結合するので、細胞DNA含量に基づいて細胞周期のG1、S及びG2/M期における細胞の割合を決定するのに好適である。G0及びG1期の細胞は二倍体DNA含量(2N)を有するが、G2又は有糸分裂期の細胞では4N DNA含量を有する。PI染色のため、例えば75cm2の細胞培養フレーク上に40万個のHeLaS3細胞を接種し、24時間後、対照として1% DMSOを加え、或いは種々の濃度(1% DMSO中)で本物質を加えた。24時間本物質又はDMSOと共に細胞をインキュベート後、細胞を2×PBSで洗浄し、トリプシン/EDTAで引き離した。細胞を遠心分離し(1000rpm,5分,4℃)、この細胞ペレットを2×PBSで洗浄後、細胞を0.1mlのPBS中で再懸濁させた。次に、4℃で16時間、或いは−20℃で2時間80%エタノールによって細胞を固定化した。固定化した細胞(106細胞)を遠心分離し(1000rpm,5分,4℃)、PBSで洗浄してから再び遠心分離した。細胞ペレットを2mlの PBS中の0.25%Triton X−100中で再懸濁させ、氷上で5分間インキュベートした後、5mlのPBSを加え、混合物を再び遠心分離した。細胞ペレットを350μlのPI染色液(0.1mg/mlのRNase A(Sigma, No. R−4875),10μg/mlのヨウ化プロピジウム(Sigma, No. P−4864)1×PBS中)内で再懸濁させた。暗所で20分間染色緩衝液と共に細胞をインキュベートした後、FACS走査用試料測定容器内に移した。DNA測定は、アルゴンレーザー(500mW,発光488nm)とDNA Cell Quest Program(BD)を備えたBecton Dickinson FACS Analyzerで行った。対数的PI蛍光をバンド−パスフィルター(BP 585/42)で測定した。細胞周期の個々の期における細胞集団をBecton DickinsonのModFit LTプログラムで数量化した。
本発明の化合物は、他の腫瘍細胞に対しても同様にテストされた。例えば、これらの化合物は、あらゆる種類の組織の癌腫(例えば乳房(MCF7); 結腸(HCT116)、頭および首(FaDu)、肺(NCI−H460)、膵臓(BxPC−3)、前立腺(DU145))、肉腫(例えばSK−UT−1B、Saos−2)、白血病およびリンパ腫(例えばHL−60; Jurkat, THP−1)並びに他の腫瘍(例えば黒色腫(BRO)、神経膠腫(U−87MG))に対して有効であり、そのような症例に対して使用することが可能である。これは、あらゆる種類の腫瘍タイプの治療に対する本発明の化合物の幅広い用途を証明するものである。
【0054】
一般式(I)の化合物は、それ単独又は本発明の他の活性物質と組み合わせて使用することができ、場合によっては他の薬理学的に活性な物質と共に使用することもできる。
好適な製剤として、例えば錠剤、カプセル剤、座剤、液剤、特に注射(皮下、静脈内、筋肉内)及び注入用液剤、エリキシル剤、乳剤又は散剤が挙げられる。医薬的に活性な化合物の量は、全組成物の0.1〜90重量%、好ましくは0.5〜50重量%の範囲内、すなわち後に特定する薬用量範囲を達成するために十分な量でなければならない。必要な場合、指定用量を1日数回与えてよい。
例えば、活性物質を既知の賦形剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはラクトースのような不活性希釈剤、コーンスターチ若しくはアルギニン酸のような崩壊剤、スターチ若しくはゼラチンのような結合剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルクのような潤沢剤及び/又はカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、若しくはポリビニルアセテートのような遅延放出用薬剤と混合することによって適切な錠剤を得ることができる。錠剤は、数層含んでもよい。
同様に、錠剤と同じ様に製造されたコアを、錠剤コーティングに常用される物質(例えばコリドン若しくはセラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は糖)でコーティングすることにより、コーティング錠を調製しうる。遅延放出を達成するため或いは不適合性を阻止するため、コアがいくつかの層から成ることもある。同様に、錠剤コーティングは、遅延放出を達成するため、おそらく錠剤について上述した賦形剤を用いていくつかの層から成りうる。
【0055】
本発明の活性物質又はその組合せを含有するシロップ剤又はエリキシル剤は、さらにサッカリン、シクラメイト、グリセロール若しくは糖類のような甘味剤及び風味向上剤、例えばバニリン若しくはオレンジエキスのような香料を含むことができる。それらは、ナトリウムカルボキシメチルセルロースのような懸濁補助剤又は増粘剤、例えば脂肪アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物のような湿潤剤、又はp−ヒドロキシベンゾエートのような保存剤を含むこともできる。
注射及び注入用液剤は、常法、例えばp−ヒドロキシベンゾエートのような保存剤、又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩のような安定剤を添加して、任意に乳化剤及び/又は分散剤を用いて調製し、例えば水を希釈剤として使用する場合は、任意に可溶化剤又は溶解助剤として有機溶剤を用いて調製し、注射用バイアル若しくはアンプル又は注入ボトル中に移す。
【0056】
1種以上の活性物質又は活性物質の組合せを含有するカプセル剤は、例えば活性物質をラクトース又はソルビトールのような不活性担体と混合し、ゼラチンカプセル中に詰めることによって調製することができる。
好適な座剤は、例えば中性脂肪若しくはポリエチレングリコール又はその誘導体のようなこの目的のために与えられる担体と混合することによって製造することができる。
使用し得る賦形剤は、例えば水、医薬的に許容しうる有機溶媒、例えばパラフィン(例えば石油留分)、野菜の油(例えば落花生又はゴマ油)、単−若しくは多官能性アルコール(例えばエタノール又はグリセロール)、担体、例えば天然鉱物粉(例えばカオリン、クレー、タルク、チョーク)、合成鉱物粉(例えば高分散性ケイ酸及びシリケート)、糖(例えばショ糖、ラクトース及びグルコース)、乳化剤(例えばリグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプン及びポリビニルピロリドン)及び潤沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸及びドデシル硫酸ナトリウム)でよい。
【0057】
製剤は、常法、好ましくは経口又は経皮経路、特に好ましくは経口経路で投与される。経口投与する場合、錠剤は当然、上記担体以外に、例えばクエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びリン酸二カルシウムのような添加剤を、デンプン好ましくはジャガイモデンプン、ゼラチン等のような種々の添加剤と共に含む。さらには、同時にステアリン酸マグネシウム、ドデシル硫酸ナトリウム及びタルクのような潤沢剤を打錠プロセスのために使用することができる。水性懸濁液の場合、上記賦形剤に加え、種々の風味向上剤又は着色剤と活性物質を併用することができる。
非経口用途では適切な液状担体材料との活性物質の溶液を使用することができる。
静脈内用途の薬用量は、1〜1000mg/時間、好ましくは5〜500mg/時間である。
しかし、体重又は投与経路、その薬物に対する個体反応、使用製剤の性質及びそれを投与する時間と間隔によっては、指定量から外すことが必要な場合もある。従って、ある場合には、上で指定した最少投与量未満の使用で十分であり、他の場合は、上限を超えなければならない。大量を投与する場合、その日全体でより少ない単用量数回に分散することが賢明かもしれない。
【0058】
以下の製剤例は、本発明の範囲を限定することなく本発明を例示する。
医薬製剤の例
A) 錠剤 1錠剤当たり
活性物質 100mg
ラクトース 140mg
コーンスターチ 240mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
500mg
微細に粉砕した活性物質、ラクトース及びいくらかのコーンスターチを一緒に混合する。混合物を篩過してからポリビニルピロリドンの水溶液で湿らせ、混練し、湿式造粒して乾燥させる。この顆粒、残りのコーンスターチ及びステアリン酸マグネシウムを篩過し、一緒に混合する。混合物を圧縮して適切な形状と大きさの錠剤を製造する。
【0059】
B) 錠剤 1錠剤当たり
活性物質 80mg
ラクトース 55mg
コーンスターチ 190mg
微結晶性セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン 15mg
ナトリウムカルボキシメチルスターチ 23mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
400mg
微細に粉砕した活性物質、いくらかのコーンスターチ、ラクトース、微結晶性セルロース及びポリビニルピロリドンを一緒に混合し、混合物を篩過し、残りのコーンスターチ及び水と加工して造粒し、乾燥させて篩過する。ナトリウムカルボキシメチルスターチとステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、混合物を圧縮して適切な大きさに製錠する。
【0060】
C) アンプル液剤
活性物質 50mg
塩化ナトリウム 50mg
注射用水 5ml
活性物質をそれ自体のpH、又は任意にpH5.5〜6.5で水に溶かし、塩化ナトリウムを加えて等張性にする。得られた溶液を発熱物質なしでろ過し、ろ液を無菌条件下でアンプル中内に移してから滅菌かつ溶融封止する。アンプルは、5mg、25mg及び50mgの活性物質を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、
R1、R2 は、同一でも異なっていてもよく、置換されていてもよい C1−C10−アルキル、C2−C10−アルケニル、C2−C10−アルキニル、アリール、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキル、C3−C8−ヘテロシクロアルキル、−X−アリール、−X−ヘテロアリール、−X−シクロアルキル、−X−ヘテロシクロアルキル、−NR7−アリール、−NR7−ヘテロアリール、−NR7−シクロアルキルおよび −NR7−ヘテロシクロアルキルより選択される基、
または、
水素、ハロゲン、COXR7、CON(R72、COR7 および XR7 より選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になって、1〜2個のヘテロ原子を有し得る2〜5−員アルキル架橋を表し、R3 は、水素または置換されていてもよい C1−C12−アルキル、C2−C12−アルケニル、C2−C12−アルキニル、アリール、ヘテロアリール、−C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルケニル、C7−C12−ポリシクロアルキル、C7−C12−ポリシクロアルケニルおよび C5−C12−スピロシクロアルキルより選択される基を表し、あるいは、
R1 と R3 または R2 と R3 は一緒になって、1〜2個のヘテロ原子を有し得る飽和もしくは不飽和の C3−C4−アルキル架橋を表し、
R4 は、置換されていてもよいアリール、ベンジルまたはヘテロアリールを表し、
R5 は、水素、−CO−NH−C1−C4−アルキル、−CO−C1−C4−アルキルまたは −CO−X−C1−C4−アルキルを表し、
R6 は、水素、NH2、XH、ハロゲンおよび1または2以上のハロゲン原子で置換されていてもよい C1−C3−アルキル基より選択される基を表し、かつ、
R7 は、それぞれ互いに独立に、水素または置換されていてもよい C1−C4−アルキル、C2−C4−アルケニル、C2−C4−アルキニル、ベンジルおよびフェニルより選択される基を表し、かつ、
X は、O または S を表す)
の化合物であって、その互変異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびその混合物の形体にあってもよく、また、その薬理学的に許容される酸付加塩、溶媒和物または水和物の形体にあってもよい、前記化合物。
【請求項2】
式中、R1 から R4 および R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R5 と R6 は水素を表す、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式中、R3 から R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R1、R2 同一でも異なっていてもよく、水素または置換されていてもよい C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニルおよび C2−C6−アルキニルより選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になって 2〜5−員アルキル架橋を表す、
請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
式中、R1、R2 および R4 から R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R3 は、水素または置換されていてもよい C1−C12−アルキル、C2−C12−アルケニル、C2−C12−アルキニルおよび C6−C14−アリールより選択される基であり、あるいは、
置換されていてもよい C3−C12−シクロアルキル、C3−C12−シクロアルケニル、C7−C12−ポリシクロアルキル、C7−C12−ポリシクロアルケニル および C5−C12−スピロシクロアルキルより選択される基である、
請求項1から3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
式中、R1 から R3 および R5 から R7 は先に定義した通りであり、かつ、
R4 は、下記一般式の基を表し、
【化2】

R8 は、同一でも異なっていてもよく、水素または置換されていてもよい C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル、−O−C1−C6−アルキル、−O−C2−C6−アルケニル、−O−C2−C6−アルキニル、ヘテロシクロアルキル、C3−C6−シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−O−シクロアルキル、および −O−ヘテロシクロアルキルより選択される基、または、
水素、−CONH2、−COOR7、−OCON(R72、−N(R72、−NHCOR7、−NHCON(R72、−NO2、CF3、ハロゲン、−O−C1−C6−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルキル−Q1、−CONR7−C1−C10−アルケニル−Q1、−CONR7−Q2、ハロゲン、OH、−SO2R7、−SO2N(R72、−COR7、−COOR7、−N(R72、−NHCOR7、−CONR7OC1−C10 −アルキル−Q1 および CONR7O−Q2 より選択される基を表し、
あるいは、
隣接した R8 基は一緒になって、下記一般式 a)、b)、c) または d) の架橋を表し、
【化3】

Y は、O、S または NR11 を表し、
m は、0、1 または 2 を表し、
R9 は、C1−C6−アルキルを表し、
R10 は、水素または置換されていてもよいフェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、−C1−C3−アルキル−フェニル、−C1−C3−アルキル−ピリジル、−C1−C3−アルキル−ピラジニル、−C1−C3−アルキル−ピリミジニルおよび −C1−C3−アルキル−ピリダジニルより選択される基を表し、
R11 は、水素または C1−C4−アルキルを表し、
Q1 は、水素、−NHCOR7 または置換されていてもよい−NH−アリール、−NH−ヘテロアリール、アリール、ヘテロアリール、C3−C8−シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基より選択される基を表し、
Q2 は、水素または置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、C3−C8−ヘテロシクロアルキル− 、C3−C8−シクロアルキル− および C1−C4−アルキル−C3−C8−シクロアルキル基より選択される基を表し、かつ、
n は、0、1、2、3、4 または 5 を表す、
請求項1から4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
式中、Q1、Q2、n、R4 から R8 は先に定義した通りであり、
R1、R2 は、同一でも異なっていてもよく、水素またはメチル、エチル、プロピル、アリルおよびプロパルギルより選択される基を表し、
あるいは、
R1 と R2 は一緒になってシクロプロピルを表し、
R3 は 水素であるか、あるいは、置換されていてもよい C1−C6−アルキルまたは置換されていてもよい C3−C12−シクロアルキルを表す、
請求項1から5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
式中、Q1、Q2、n、R1 から R4、R6 から R7 は、先に特定した意味を有し、かつ、
R8 は、同一でも異なっていてもよく、水素またはハロゲン、(C1−C2−アルキル)2N、CF3、NH2SO2、−CONH−C6−C14−アリール、−CONH−C1−C4−アルキル−C6−C14−アリール、−CONH−C1−C4−アルキル−C6−C14−ヘテロアリール、−CONH−C3−C8−シクロアルキル−ヘテロシクロアルキルおよび −O−C1−C4−アルキルより選択される基を表す、
請求項5または6記載の化合物。
【請求項8】
医薬組成物としての、請求項1から7のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
抗増殖活性を有する医薬組成物としての、請求項1から7のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
癌、細菌およびウィルス感染症、炎症性および自己免疫性疾患、化学療法による脱毛症および粘膜炎、心臓血管疾患、腎臓疾患、並びに慢性および急性の神経変性疾患より選択される疾患の治療および/または予防のための医薬組成物を調製するための、請求項1から7のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
ポロ様キナーゼを阻害するための医薬組成物を調製するための、請求項1から7のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項12】
ポロ様キナーゼがPLK1である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
ポロ様キナーゼの過剰発現に基づく腫瘍性疾患の治療および/または予防のための医薬組成物を調製するための、式(1)の化合物の使用。
【請求項14】
癌、細菌およびウィルス感染症、炎症性および自己免疫性疾患、化学療法による脱毛症および粘膜炎、心臓血管疾患、腎臓疾患、並びに慢性および急性の神経変性疾患より選択される疾患の治療および/または予防の方法であって、効果的な量の請求項1から7のいずれか1項記載の式(I)の化合物が患者に投与される、前記方法。
【請求項15】
活性物質として1または2以上の請求項1から7のいずれか1項記載の一般式(I)の化合物を含む医薬製剤であって、前記化合物は従来型の賦形剤および/または担体と混合されていてもよい、前記医薬製剤。

【公開番号】特開2012−140455(P2012−140455A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86290(P2012−86290)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【分割の表示】特願2007−520734(P2007−520734)の分割
【原出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】