説明

新規の医療用使用

本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態の治療または予防における使用のための、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物またはその薬学上許容可能な塩に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物またはその薬学上許容可能な塩による、肺胞充填(alveolar filling)と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、ならびに肺移植後の一次移植片の機能不全の治療または予防に関する。
【背景技術】
【0002】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、低酸素性呼吸不全および非心原性肺水腫によって特徴づけられる、重症の急性肺傷害(ALI)の形態である[Bernard GR, Artigas A, Brigham KL, Carlet J, Falke K, Hudson L, Lamy M, Legall JR, Morris A and Spragg R; The American−European Consensus Conference on ARDS. Definitions, mechanisms, relevant outcomes, and clinical trial coordination; Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1994 Mar; 149(3 Pt 1): 818−824]。この症候群は、重症の外傷、複数の輸血、敗血症、肺炎、熱傷、膵臓炎、または虚血再潅流傷害を含む肺の直接的または間接的な損傷によって引き起こされ得る。この症候群は多くのタイプの傷害からの最終的な共通経路として内科患者および外科患者の両方で観察され、40〜50%近くの死亡率に結び付く[The Acute Respiratory Distress Syndrome Network, N. Engl. J. Med. 2000, 342: 1301−1308; and Rubenfeld GD, Caldwell E, Peabody E, et al., N. Engl. J. Med. 2005, 353: 1685−1693]。死亡率は、高齢ならびに臓器機能不全および肺傷害スコアの高い患者において最も高いようである。患者は、多くの場合複数の臓器機能不全症候群(MODS)の発生がもとで死亡する。この重篤な症候群について確立された薬理療法はないと考えられる。傷害の原因に関係なく、ALIおよびARDSは、びまん性肺胞障害(DAD)によって病理学的に特徴づけられる。肺生検により、炎症および肺水腫、硝子膜形成およびII型肺細胞過形成が明らかになる。肺内皮に対する傷害は、毛細血管透過性の増加、および肺の肺胞腔へのタンパク質に富んだ液体の移動を引き起こす。
【0003】
肺における肺胞液クリアランスの推進に関与する一次機構は、肺胞上皮を横切るナトリウムおよびクロライドの能動輸送である。因子[Factor P、Mutlu GM, Chen L, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2007, 104: 4083−4088;Kreindler JL and Shapiro SD, Nature Medicine, 2007, 13: 406−408]は、肺胞液クリアランスの調節においてA2a受容体が極めて重要な役割を果たし得ることをインビボおよびインビトロのマウス実験によって示唆した。したがって、アデノシン類似体(肺胞水腫の減少を支援することが示された)は肺水腫と関連した病理学的状態において有用だろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
急性肺傷害について承認された薬理学的治療は現在ない。したがって急性肺傷害に罹患した患者を治療する治療用薬剤に対する満たされていない必要性が認識される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態の治療または予防における使用のための、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物:
【化1】

【0006】

またはその薬学上許容可能な塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】使用される急性肺傷害の2つのモデル(すなわちエンドトキシン(LPS)および酸吸引(HCl))についての時間スキームを示した図である。
【図2】急性肺傷害の大腸菌(DH5α)モデルについての時間スキームを示した図である。
【図3】10−4Mの化合物Aの存在および非存在下で、気管内HCl(pH1.5)点滴(化学的傷害)2時間後、気管内LPS(大腸菌血清型O111:B5(5mg/kg体重))点滴(生化学的傷害)16時間後、および気管内大腸菌DH5α点滴(生物学的傷害)3時間後のラットにおいて、血管外肺水分として測定された浮腫の形成を示した図である。*対照と比較して、P<0.05;†HClと比較して、P<0.05;‡LPSと比較して、P<0.05;#大腸菌と比較して、P<0.05;事後テューキー検定による一元配置分散分析。
【図4】10−4Mの化合物Aの存在および非存在下で、気管内HCl(pH1.5)点滴(化学的傷害)2時間後、気管内LPS(大腸菌血清型O111:B5(5mg/kg体重))点滴(生化学的傷害)16時間後、および気管内大腸菌DH5α点滴(生物学的傷害)3時間後のラットにおいて、過剰肺水として測定された浮腫の形成を示した図である。*対照と比較して、P<0.05;†それぞれの図におけるHCl、LPSまたは大腸菌と比較して、P<0.05;‡化合物Aと比較して、P<0.05;事後テューキー検定による一元配置分散分析。
【図5】10−4Mの化合物Aの存在および非存在下で、気管内HCl(pH1.5)点滴(化学的傷害)2時間後、気管内LPS(大腸菌血清型O111:B5(5mg/kg体重))点滴(生化学的傷害)16時間後、および気管内大腸菌DH5α点滴(生物学的傷害)3時間後のラットにおいて、肺胞液クリアランスを示した図である。*対照と比較して、P<0.05;†それぞれの図におけるHCl、LPSまたは大腸菌と比較して、P<0.05;‡化合物Aと比較して、P<0.05;事後テューキー検定による一元配置分散分析。
【0008】
図3、4および5の各々において、化合物Aは(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールは、強力なA2aアゴニストおよびA3アンタゴニストとして、急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫および肺移植後の一次移植片の機能不全の発症と関連した、細胞(すなわち好中球)に対する抗炎症作用を有すると考えられる。抗炎症作用に加えて肺水腫の減少における有用性の組合せは、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールが、肺水腫および炎症と関連した疾患および病態の治療および予防に有用であり得ることを意味する。
【0010】
肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態は、以下のものを含むが、これらに限定されない。
【0011】
心肺バイパス後のALI
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を含む肺保護溶液を、バイパス後の肺傷害のリスクが高い患者に対して最初に投薬して、ALIを予防することができる。それは、心肺バイパス(すなわちバイパスによるCABG)を行ったすべての患者において、この高リスク集団における急性肺傷害の発症を減少させるために、有用である可能性がある。
【0012】
虚血再潅流傷害
摘出した肺は、肺虚血再潅流傷害のリスクを減少させるために、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を含む溶液中で保存することができる。
【0013】
ドナー肺の肺胞水腫
可能性のある脳死臓器ドナーにおける肺胞水腫の減少および酸素飽和指数の改善によって使用可能な確実な臓器ドナー肺の数を増加させるために、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を、臓器保存溶液へ添加することができる。
【0014】
非心原性肺水腫
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は、薬物反応によって引き起こされた非心原性肺水腫、輸血関連急性肺傷害(TRALI)、ALI、ARDS、急性間質性肺炎(AIP)および/または過敏性肺炎の治療または予防にも有用であり得る。
【0015】
一次移植片の機能不全(PGF)
移植の時に脳死ドナーまたは臓器レシピエントへ投与された(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は、通常移植の72時間以内に見られる一次移植片の機能不全(同種移植の急性肺傷害)の発症のリスクを減少させることができる。
【0016】
加えて、A2aアゴニスト/A3アンタゴニストが肺胞のクリアランスを増大するので、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は、利尿の間にも有用であり得る。したがって、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は腎臓保護的であり得る。腎保護溶液へ添加された化合物により、与えられる利尿剤(腎毒性の可能性がある)を少なくすることを可能にし、腎機能の保持をもたらし得る。
【0017】
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は結晶性形態または非晶性形態であり得る。さらに、この化合物またはその薬学上許容可能な塩は1つまたは複数の多形形態で存在することができる。したがって、本発明は、その範囲内で、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩のすべての多形形態の使用を含んでなる。
【0018】
多くの有機化合物は、それらが反応する溶媒、またはそれらが沈殿もしくは結晶化される溶媒と溶媒和物を形成できることが認識されるだろう。例えば、水との溶媒和物は「水和物」として公知である。高沸点の溶媒、ならびに/または水、キシレン、N−メチルピロリジノンおよびメタノール等の水素結合を形成する傾向が高い溶媒を使用して、溶媒和物を形成することができる。したがって、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールの溶媒和物またはその薬学上許容可能な塩の使用は、本発明の範囲内である。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールは薬学上許容可能な塩の形態であり得、薬学上許容可能な塩として投与することができる。好適な塩に関する総説については、Berge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1−19を参照されたい。好適な薬学上許容可能な塩は酸付加塩および塩基付加塩を含む。
【0019】
薬学上許容可能な酸付加塩は、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールを、好適な無機酸または有機酸(臭化水素酸、塩酸、ギ酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸(例えば1,5−ナフタレンジスルホン酸)またはナフタレンスルホン酸等)と、任意で有機溶媒等の好適な溶媒中で、反応させることによって形成して、例えば結晶および濾過によって通常単離される塩を生ずることができる。したがって、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールの薬学上許容可能な酸付加塩は、例えば臭化水素酸塩、塩酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンジスルホン酸塩(例えば1,5−ナフタレンジスルホン酸塩)またはナフタレンスルホン酸塩であり得る。
【0020】
一実施形態において、本発明は、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールのマレイン酸塩の使用を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールのモノ塩酸塩の使用を提供する。
【0021】
肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患の治療または予防における、任意のおよびすべての溶媒和物、例えば(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩の水和物および多形体の使用は、本発明の範囲内に含まれる。一実施形態において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患の治療または予防における、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールのマレイン酸塩の溶媒和物の使用を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患の治療または予防における、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールのマレイン酸塩の水和物の使用を提供する。
【0022】
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は、国際公開第WO1998/28319号(米国特許第6426337号および第6528494号)中で提供される、一般的方法および実験のセクションに従って調製することができる(具体的には実施例11、特に(2R,3R,4S,5R)−2−[6−アミノ−2−(1S−ヒドロキシメチル−2−フェニル−エチルアミノ)−プリン−9−イル]−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオールに言及する実施例11aおよび11eを参照されたい)。
【0023】
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は、有益な抗炎症作用を有すると予想され、それゆえ、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全の治療または予防において有用であり得る。
【0024】
治療または治療法への本明細書における参照が、既存の病態の治療に加えて、予防処置にまで拡張され得ることは当業者によって認識されるだろう。疾患が進行した後、治療は治療法の設定として定義されるだろう。予防または予防処置は、ALIまたはARDSの発症についてのリスクにある患者における疾患の重症度を予防または軽減するために、この患者における化合物の投与として定義されるだろう。一実施形態において、本発明は、既存の病態の治療を提供する。
【0025】
本発明の第1の態様によれば、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含んで)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全の治療または予防における使用のための、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)が提供される。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全を治療または予防するための薬剤の製造における、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)の使用が提供される。
【0027】
本発明の第3の態様において、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全を治療または予防する方法であって、有効量の(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)を、それを必要とするヒトに投与することを含んでなる方法が提供される。
【0028】
治療法において使用する場合、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)は、好適な医薬組成物中で製剤化することができる。かかる医薬組成物は標準的な手技を使用して調製することができる。
【0029】
したがって、第4の態様において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全の治療または予防における使用のための、任意で1つまたは複数の薬学上許容可能な担体および/または賦形剤と共に、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物またはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0030】
第5の態様において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全を治療または予防するための薬剤の製造のための、任意で1つまたは複数の薬学上許容可能な担体および/または賦形剤と共に、化合物(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)を含んでなる医薬組成物の使用を提供する。
【0031】
第6の態様において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全を治療または予防する方法であって、1つまたは複数の薬学上許容可能な担体および/または賦形剤と共に、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)を含んでなる有効量の医薬組成物を、それを必要とするヒトに投与することを含んでなる方法を提供する。
【0032】
第7の態様において、本発明は、肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態、特に急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全の治療または予防における使用のための医薬組成物であって、任意で1つまたは複数の薬学上許容可能な担体および/または賦形剤と共に、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物またはその薬学上許容可能な塩(例えばマレイン酸塩またはモノ塩酸塩)を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0033】
(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を含んでなる医薬組成物は、経口、非経口、直腸または吸入の投与に適合させることができる。それゆえ、錠剤、カプセル、液体調製物(例えば経口液体調製物)、粉末、粒剤、ロゼンジ、再構成可能粉末、注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは懸濁物、または坐剤の形態であり得る。好適な組成物は、各々の特定のタイプの組成物についての当該技術分野において周知の方法に従って調製することができる。
【0034】
本発明の別の態様において、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は非経口投与(すなわち静脈内投与)に適合する。本発明の別の態様において、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は吸入による患者への投与に適合する。
【0035】
組成物は、投与の方法に依存して、重量で約0.1%〜99%の(重量で約10〜60%等)の活性材料を含み得る。前記の障害の治療において使用される化合物の用量は、障害の性質および重篤度、罹患者の体重、ならびに他の類似の因子により通常の方法で変動するだろう。しかしながら、一般的には、好適な単位用量は約0.05〜1000mg、より好適には約1.0〜200mg(例えば20〜100mg)であり得、かかる単位用量は、1日1回を超えて(例えば1日に2または3回)投与することができる。かかる治療法は、数日、数週間または数か月間延長することができる。一実施形態において、本発明に記載の化合物および医薬組成物は吸入投与もしくは非経口投与に好適であり、および/または例えば20〜200mg(例えば約20〜100mg、約10〜50mg等)の範囲の用量で1日1回の投与が可能である。
【0036】
一般的に、吸入投与に好適な組成物は、任意で水性または非水性の媒質、増粘剤、等張性調節剤、抗酸化剤および/または防腐剤等の1つまたは複数の薬学上許容可能な担体および/または賦形剤と共に、エアロゾル、溶液、懸濁物、ドロップ、ゲルまたは乾燥粉末として都合よく製剤化することができる。
【0037】
行動不能の患者については、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を含む懸濁物および溶液は、噴霧器を介しても都合よく投与することができる。したがって、一実施形態において、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩は噴霧器を介する投与に適合する。
【0038】
噴霧化のために利用される溶媒または懸濁剤は、水、水性食塩水、アルコールもしくはグリコール(例えばエタノール、イソプロピルアルコール、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、またはその混合物等の任意の薬学上許容可能な液体であり得る。塩類溶液は、投与後に薬理学的活性をほとんどまたは全く示さない塩を利用する。アルカリ金属ハロゲン塩またはアンモニウムハロゲン塩(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム)等の無機塩、または有機酸(例えばアスコルビン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸など)等のカリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩等の有機塩の両方を、この目的に使用することができる。
【0039】
他の薬学上許容可能な賦形剤を懸濁物または溶液へ添加することができる。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオール)またはその薬学上許容可能な塩は、無機酸(例えば塩酸、硝酸、硫酸および/またはリン酸);有機酸(例えばアスコルビン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸など)、EDTAまたはクエン酸およびその塩等の錯化剤;またはビタミンEまたはアスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により安定化することができる。これらを単独でまたはともに使用して、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールまたはその薬学上許容可能な塩を安定化させることができる。塩化ベンザルコニウムまたは安息香酸およびその塩等の防腐剤を添加することができる。界面活性剤を添加して特に懸濁物の物理的安定性を改善することができる。これらはレシチン、ジオクチルスルホコハク酸ジナトリウム、オレイン酸およびソルビタンエステルを含む。
【0040】
非経口投与に適合した医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および対象のレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含み得る水性および非水性の滅菌注射溶液;および懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁物を含む。組成物は、単位用量または多重用量容器(例えば密封したアンプル、バイアル)中で提供され、使用の直前に滅菌液体担体(例えば注射用の水)の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射用の溶液および懸濁物を滅菌粉末、粒剤および錠剤から調製することができる。
【実施例】
【0041】
生物学的データ
方法
麻酔し人工呼吸をしたラットの動物標本を使用して、以下に記載される実施例を行った。以下に記載された実施例の技法は出版されている(Frank JA, Gutierrez JA, Jones KD, et al.: Low tidal volume reduces epithelial and endothelial injury in acid−injured rat lungs. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 165:242−249, 2002; Folkesson HG, Nitenberg G, Oliver BL, et al.: Upregulation of alveolar epithelial fluid transport after subacute lung injury in rats from bleomycin. Am. J. Physiol. 275:L478−490, 1998; Folkesson HG, Norlin A, Wang Y, et al. Dexamethasone and thyroid hormone pretreatment upregulate alveolar epithelial fluid clearance in adult rats. J. Appl. Physiol. 88: 416−424, 2000; and Norlin A, Lu LN, Guggino SE, et al. Contribution of amiloride−insensitive pathways to alveolar fluid clearance in adult rats. J. Appl. Physiol. 90: 1489−1496, 2001)。
【0042】
病理学的実施例:使用する方法は、上記の参照文献において公開されている。0.9% NaCl中に溶解した10−4Mの(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を含有するおよび含有しない5%アルブミンの試験溶液を使用して、ラットの気腔の中へ点滴し、傷害誘導剤(HCl、LPSまたは大腸菌、詳細については以下を参照されたい)の存在および非存在下で、肺胞液クリアランスを測定した。試験溶液点滴前に、FITC標識アルブミンを注射して、肺の内皮および上皮の肺関門を横切る双方向性タンパク質移動を測定した(図1および2)。試験を1〜2時間にわたって実行して、アデノシンA2アゴニストの(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩の、これらの2つの病理学的状態の最中の肺液バランスに対する効果を評価した。
【0043】
HCl実施例:HClの効果を評価するために(化学的傷害;吸引誘導性急性肺傷害のモデル)、pH1.5のHClを使用した(図1、下部パネルはHCl処理に使用した時間スキームを図示する)。ラットを外科的に準備した(麻酔し、気管切開し、頚動脈カテーテルを装備し、人工呼吸器へ接続した)。安定した血液ガスのベースラインのためにラットに30分人工呼吸を行い、血管トレーサー(FITC標識アルブミン)を15分の安定化後に与え、次いで30分のベースラインが経過した後、HCl(pH1.5)を肺の末梢肺気腔の中へ点滴した。次いで1時間傷害を発生させた。実験の全体にわたって蛍光および動脈血ガスの測定のために、30分ごとに血液をサンプリングした。1時間後に、試験溶液((2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を含有するおよび含有しない5%アルブミン)を点滴して、酸と同一の肺の領域を覆い、さらに1時間ラットを経過観察した。次いでラットを安楽死させ、サンプル(血液、肺胞水腫液、肺組織)を得た。肺胞液クリアランス、血管外肺水分、および内皮−上皮関門の漏れを決定した。
【0044】
LPS実施例:エンドトキシンの効果を評価するために(生化学的傷害;敗血症誘導性急性肺傷害のモデル)、大腸菌LPSを5mg/kg体重の濃度で気管内に与えた(図1、上部パネルはLPS処理に使用した時間スキームを図示する)。ラットは、1ml/kg体重の0.9%のNaCl中の5mg/kg体重のLPS(大腸菌血清型O111:B5から)と共に、イソフルオランを短時間気管内点滴して麻酔した。16時間後に、ラットを外科的に準備した(麻酔し、気管切開し、頚動脈カテーテルを装備し、人工呼吸器へ接続した)。安定した血液ガスのベースラインのためにラットに30分人工呼吸を行い、血管トレーサー(FITC標識アルブミン)を15分の安定化後に与え、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を含有するおよび含有しない5%アルブミン溶液を肺の末梢肺気腔の中へ点滴した。実験の全体にわたって蛍光および動脈血ガスの測定のために、30分ごとに血液をサンプリングした。1時間後にラットを安楽死させ、サンプル(血液、肺胞水腫液、肺組織)を得た。肺胞液クリアランス、血管外肺水分、および内皮−上皮関門の漏れを決定した。
【0045】
大腸菌実施例:生存大腸菌の効果を評価するために(生物学的傷害;敗血症誘導性急性肺傷害のモデル)、大腸菌(10cfu/mlの濃度で血清型DH5α)を気管内に与えた(図2)。ラットを外科的に準備した(麻酔し、気管切開し、頚動脈カテーテルを装備し、人工呼吸器へ接続した)。安定した血液ガスのベースラインのためにラットに30分人工呼吸を行い、点滴カテーテルを通過させて気管竜骨のちょうど上で留め、10cfu/mlの大腸菌DH5αを含む溶液を1ml/kg体重で肺の中へ迅速に点滴した。血管トレーサー(FITC標識アルブミン)を15分の安定化時間後に与え、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を含有するおよび含有しない5%アルブミン溶液を2時間後に肺の末梢肺気腔の中へ点滴した。実験の全体にわたって蛍光および動脈血ガスの測定のために、30分ごとに血液をサンプリングした。生存大腸菌点滴後の合計で3時間後に、ラットを安楽死させ、サンプル(血液、肺胞水腫液、肺組織)を得た。肺胞液クリアランス、血管外肺水分、および内皮−上皮関門の漏れを決定した。
【0046】
肺水腫の形成
HCl点滴(HCl:N=8;HCl+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=8)の2時間後にEVLWの増加があり、肺水腫が示唆された(図3、左)。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩は、単独では、どの実験群においてもEVLWの増加として測定される水腫の形成をもたらさないと考えられた。しかしながら、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩が、HClを2時間前に投与されたラットに対して投与された場合、それらのラットにおいてEVLWが上昇したままとはいえ、EVLWの低下が観察された(図3、左)。
【0047】
LPS点滴ラットにおいて、LPS点滴(LPS:N=7;LPS+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=6)の16時間後に、EVLWの増加が同様に観察された(図3、中央)。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩が、LPSを16時間前に投与されたラットに対して投与された場合、EVLWの低下が観察された(図3、中央)。
【0048】
生存大腸菌点滴ラットにおいて、生存大腸菌点滴(大腸菌:N=6;大腸菌+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=6)の3時間後にEVLWの増加が同様に観察された(図3、右)。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩が、生存大腸菌を3時間前に投与されたラットに対して投与された場合、EVLWの低下が観察された(図3、右)。
【0049】
HCl点滴(HCl:N=8;HCl+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=8)の2時間後にELWの増加が観察され(図4、左)、これは以前に測定されたEVLWの増加を支持する(図3、左)。これとは対照的に、HClを2時間前に与えられたラットに、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を点滴した場合、ELWは約20%低下した(図4、左)。しかしながら、ELWは、対照および(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩の両方と比較して、上昇したままであった。
【0050】
LPSが点滴された16時間後のラット肺においてもELWを決定した。LPS点滴(LPS:N=7;LPS+も決定した:N=6)の16時間後にELWの増加が同様に観察され(図4、中央)、これは以前に測定されたEVLWの増加を支持する(図3、中央)。これとは対照的に、LPSを16時間前に与えられたラットに、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を点滴した場合、ELWは約40%低下した(図4、中央)。
【0051】
次いで生存大腸菌の点滴3時間後にラット肺におけるELWを評価した。生存大腸菌点滴(大腸菌:N=6;大腸菌+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=6)の3時間後にELWの増加が観察され(図4、右)、これは以前に測定されたEVLWの増加を支持する(図3、右)。これとは対照的に、生存大腸菌を3時間前に与えられたラットに、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩を点滴した場合、ELWは約40%低下した(図4、右)。
【0052】
肺胞液クリアランス
2時間前のHClの点滴は、液クリアランスを完全に低下させ気腔への液の分泌を誘導すると思われた(負の肺胞液クリアランス)(図5、左)。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩は、肺傷害にもかかわらず、HCl点滴ラットにおける肺胞液分泌率(漏れ)を減少させると思われた(図5、左)。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩は、水腫の形成、血管の漏れ、および上皮関門の漏れに対するその保護的効果に起因して、肺胞液分泌率(漏れ)を減少できる可能性がある。
【0053】
肺胞液クリアランスに対するLPSの効果を検討するために、LPS点滴ラットを、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩の添加の存在または非存在下で(LPS:N=7;LPS+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=7)、評価した。16時間前のLPSの点滴は肺胞液クリアランスに影響を与えないと思われた(図5、中央)。しかしながら、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩が、LPS点滴ラットの肺胞液クリアランス率を増加させる能力は肺傷害にもかかわらず保たれると思われた(図5、中央)。
【0054】
肺胞液クリアランスに対する生存大腸菌の効果を検討するために、生存大腸菌点滴ラットを、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩の添加の存在または非存在下で(大腸菌:N=6;大腸菌+(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩:N=6)、評価した。3時間前の生存大腸菌の点滴は肺胞液クリアランスを刺激すると思われ(図5、右)、これは以前の実験的研究(Matthay, Physiol Rev 2002)において観察された現象である。(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールマレイン酸塩が、生存大腸菌点滴ラットの肺胞液クリアランス率を増加させる能力も、肺傷害にもかかわらず保たれると考えられた(図5、右)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態の治療または予防における使用のための、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物:
【化1】

またはその薬学上許容可能な塩。
【請求項2】
前記化合物がマレイン酸塩の形態である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記化合物がモノ塩酸塩の形態である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記炎症性および非炎症性の疾患が、急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物が非経口投与または吸入による患者への投与に適合する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態の治療または予防のための薬剤の製造における、(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオールである化合物:
【化2】

またはその薬学上許容可能な塩の使用。
【請求項7】
前記化合物がマレイン酸塩の形態である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物がモノ塩酸塩の形態である、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記炎症性および非炎症性の疾患が、急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記化合物が非経口投与または吸入による患者への投与に適合する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
肺胞充填と関連した炎症性および非炎症性の疾患および病態を治療または予防する方法であって、有効量の(2R,3R,4S,5R)−2−(6−アミノ−2−{[(1S)−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)エチル]アミノ}−9H−プリン−9−イル)−5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオール:
【化3】

またはその薬学上許容可能な塩を、それを必要とするヒトに投与することを含んでなる、方法。
【請求項12】
前記化合物がマレイン酸塩の形態である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物がモノ塩酸塩の形態である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の、急性肺傷害(心肺バイパス後のALIを含む)、急性呼吸窮迫症候群、虚血再潅流傷害、ドナー肺の肺胞水腫、非心原性肺水腫、および肺移植後の一次移植片の機能不全を治療または予防する方法。
【請求項15】
前記化合物が非経口投与または吸入による患者への投与に適合する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513562(P2013−513562A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542473(P2012−542473)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068864
【国際公開番号】WO2011/069918
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】