説明

新規の脂肪酸伸長成分およびその使用

本発明は、新規の脂肪酸nECRをコードする、単離された核酸分子を提供する。また、本発明は、nECR核酸分子を含有する組換え発現ベクター、該発現ベクターが導入された宿主細胞、ならびに長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばARA、EPA、およびDHAの大規模生産のための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原則として、脂肪酸の組換え製造の分野に関連する。本発明は、新規の脂肪酸デヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ(nECR)ファミリーのメンバーをコードする核酸分子を提供する。また、本発明は、nECR核酸分子を含有する組換え発現ベクター、該発現ベクターが導入された宿主細胞、ならびに長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、例えばARA、EPA、およびDHAの大規模生産のための方法も提供する。
【0002】
脂肪酸は、長鎖炭化水素側鎖基を有するカルボン酸であり、これは多くの生物学的プロセスにおいて重要な役目を果たす。脂肪酸は、本来は遊離していることはまれであり、脂質の主要成分として、エステル化された形態で存在する。したがって、脂質/脂肪酸はエネルギー(例えば、b−酸化)の源である。さらに、脂質/脂肪酸は、細胞膜の必須部分であり、したがってこれらは生体情報または生化学的情報を処理するためには不可欠である。
【0003】
脂肪酸は、2つの群、炭素単結合からなる飽和脂肪酸の群と、シス配置の1つ以上複数の炭素二重結合を含有する不飽和脂肪酸の群とに分けることができる。不飽和脂肪酸は、非ヘム鉄酵素群に属する末端デサチュラーゼによって産生される。これらの酵素のそれぞれは、別の2つのタンパク質、すなわちシトクロムb5およびNADH−シトクロムb5レダクターゼを含有する電子伝達系の一部である。具体的には、そのような酵素は、例えば、脂肪酸の酸素依存性脱水素を触媒することにより、脂肪酸分子の炭素原子間の二重結合形成を触媒する(Sperling et al., 2003)。ヒトおよびその他の哺乳動物は、不飽和脂肪酸における特定の二重結合の形成に必要とされるデサチュラーゼを限られた範囲で有し、したがって必須脂肪酸、例えば長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を合成する能力が限定されている。したがって、ヒトは、食事を介して一部の脂肪酸を摂取しなければならない。そのような必須脂肪酸には、例えばリノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)が含まれる。対照的に、昆虫、微生物、および植物は、はるかに多くの種類の不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体を合成することができる。実際、脂肪酸の生合成は、植物および微生物の主要な活性である。
【0004】
ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6(4,7,10,13,16,19))などの長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は、哺乳動物における種々の組織の細胞膜および細胞小器官(神経、網膜、脳、および免疫細胞)の必須成分である。例えば、脳リン脂質中の30%を超える脂肪酸は、22:6(n−3)および20:4(n−6)である(Crawford, M.A., et al., (1997) Am. J. Clin. Nutr. 66:1032S−1041 S)。網膜において、DHAは、光受容細胞の感光部分である桿体外節の全脂肪酸の60%を超える(Giusto, N. M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315−391)。臨床研究は、乳児における脳の成長および発達、ならびに成人における正常な脳機能の維持に、DHAが必須であることを示している(Martinetz, M. (1992) J. Pediatr. 120:S129−S138)。また、DHAは、シグナル伝達過程、ロドプシン活性化、ならびに桿体および錐体の発達に関与する光受容体機能にも著しい影響を及ぼす(Giusto, N. M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315−391)。さらに、DHAのいくつかの好ましい効果が、高血圧、関節炎、アテローム性動脈硬化症、うつ病、血栓症、および癌などの疾患に対しても認められた(Horrocks, L. A. and Yeo, Y. K. (1999) Pharmacol. Res. 40:211−215)。したがって、脂肪酸を食事で適切に供給することは、ヒトの健康にとって重要である。幼児、小児、および高齢者は、そのような脂肪酸を効率的に合成することができないため、このような個人にとって、これらの脂肪酸を食事から十分に摂取することは特に重要である(Spector, A.A. (1999) Lipids 34:S1−S3)。
【0005】
現在、DHAの主要源は、魚および藻類由来の油である。魚油は、この脂肪酸の主要かつ伝統的な供給源であるが、これらは通常は、販売される頃には酸化されている。さらに、魚油の供給は、特に魚の数が減少していることを考えると、極めて変動しやすい。その上、藻類油源は、生産高が低く、抽出のコストが高いため高価である。
【0006】
EPAおよびARAは、どちらも必須脂肪酸である。これらはヒトおよび動物の食物および飼料の成分の独自の群をなす。EPAは、アシル鎖内に5個の二重結合を有するn−3系列に属する。EPAは、海産物中に見られ、北大西洋産の脂肪の多い魚に豊富に含まれる。ARAは、4個の二重結合を有するn−6系列に属する。ω−3位の二重結合の欠如は、ARAに、EPAに見られるものとは異なる特性を与える。AAから産生されるエイコサノイドは、強い炎症特性および血小板凝集特性を有し、一方EPA由来のエイコサノイドは、抗炎症特性および抗血小板凝集特性を有する。ARAは、肉、魚、卵などの一部の食物から得られるが、その濃度は低い。
【0007】
ガンマリノレン酸(GLA)は、哺乳動物に見られるまた別の必須脂肪酸である。GLAは、極めて長い鎖のn−6脂肪酸および種々の活性分子の代謝中間体である。哺乳動物において、長鎖多価不飽和脂肪酸の形成はΔ6不飽和化により律速される。多くの生理学的状態および病的状態、例えば老化、ストレス、糖尿病、湿疹、および一部の感染症は、Δ6不飽和化の段階を抑制することが示されている。さらに、GLAは、特定の障害、例えば癌または炎症に関連する酸化および急速な細胞分裂により、容易に異化される。したがって、GLAの食事補給は、これらの障害のリスクを低下させうる。臨床研究は、GLAの食事補給が、一部の病的状態、例えばアトピー性湿疹、月経前症候群、糖尿病、高コレステロール血症、ならびに炎症性障害および心血管障害の処置に有効であることを示している。
【0008】
バイオ技術は特殊脂肪酸の製造のための魅力的な経路を提示しているが、現在の技法は、不飽和脂肪酸の大規模製造のための効率的な手段を提供することができない。したがって、不飽和脂肪酸、例えばDHA、EPA、およびARAを製造するための、改良された効率的な方法が必要とされている。
【0009】
したがって、本発明は、
a) 配列番号1または3に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列、
b) 配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
c) a)またはb)の核酸配列と少なくとも50%が同一である核酸配列であって、デヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ(nECR)活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
d) nECR活性を有し、かつa)〜c)のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%が同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、および
e) a)〜d)のいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列であって、nECR活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
からなる群から選択された核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。
【0010】
本発明に従って使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、デヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ(nECR)活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましくは、植物における発現時にnECR活性を有する本発明のポリヌクレオチドにコードされたポリペプチドは、例えば、種子油、または植物全体もしくはその一部におけるPUFA、とりわけLCPUFAの量を増加させることができるであろう。そのような増加は、好ましくは、LCPUFA合成に必要とされる最小限のデサチュラーゼとエロンガーゼの組み合わせは発現するが、本発明のポリヌクレオチドは発現しないLCPUFA産生トランスジェニック対照植物と比較して、統計的に有意である。増加が有意であるかどうかは、当該技術分野で周知の統計的検定、例えばスチューデントのt検定によって決定することができる。より好ましくは、この増加は、前記対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも30%のLCPUFAを含有するトリグリセリドの量の増加である。好ましくは、前述のLCPUFAは、C−20、C−22、またはC24脂肪酸本体を有する多価不飽和脂肪酸、より好ましくはARA、EPA、またはDHAである。前述の活性の測定に適したアッセイは、添付の実施例に記載する。
【0011】
「nECR活性」または「デヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ活性」という用語は、本明細書において、エノイル−CoAレダクターゼとデヒドラターゼとの複合活性を指す。すなわち、この複合活性を有する酵素は、脂肪酸の伸長過程の一環として、3−ヒドロキシ−アシル−CoAからヒドロキシル基を除去し、形成された二重結合を還元することができるであろう。脂肪酸伸長は、KCS(ケトアシル−CoA−シンターゼ)、KCR(ケトアシル−CoA−レダクターゼ)、DH(デヒドラターゼ)、およびECR(エノイル−CoAレダクターゼ)の4つの酵素に代表される、4つの段階で触媒される。第1段階では、脂肪酸−CoAエステルがマロニル−CoAに縮合して、2個の炭素原子で伸長されるケトアシル−CoA中間体とCO2とを産生する。次いで、この中間体のケト基をKCRによってヒドロキシル基に還元する。次の段階では、DHがそのヒドロキシル基を切断し(H2Oが生成される)、アシル−2−エン−CoAエステル(Δ−2−エノイル−CoA)が形成する。最終段階では、2、3位の二重結合がECRにより還元されて、伸長されたアシル−CoAエステルを形成する(Buchanan, Gruissem, Jones (2000) Biochemistry & Molecular biology of plants, American Society of Plant Physiologists)。本発明の基礎となる研究において、優れた触媒活性およびLCPUFAに対する特異性を有する、DHおよびECRの自然融合がもたらされた。
【0012】
より好ましくは、配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、配列番号1または3に示す核酸配列を有するポリヌクレオチド、またはその変異体は、好ましくはnECR活性を示す。
【0013】
上記のようなnECR活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、好ましくはThalassiosira pseudonanaまたはPhaeodactylum tricornutumから、本発明に従って得られたものである。しかしながら、オルソログ、パラログ、またはその他のホモログを他の種から同定することもできる。
【0014】
好ましくは、これらは植物、例えば藻類、例えばIsochrysis、Mantoniella、Ostreococcus、またはCrypthecodinium、藻類/珪藻、例えばPhaeodactylum、Thalassiosira、またはThraustochytrium、蘚類、例えばPhyscomitrellaまたはCeratodon、あるいは高等植物、例えばPrimulaceae、例えばAleuritia、Calendula stellata、Osteospermum spinescens、またはOsteospermum hyoseroides、微生物、例えば菌類、例えばAspergillus、Phytophthora、Entomophthora、Mucor、またはMortierella、細菌、例えばShewanella、酵母、または動物から得られる。好適な動物は、線虫、例えばCaenorhabditis、昆虫、または脊椎動物である。脊椎動物の中でも、核酸分子は、好ましくは、Euteleostomi、Actinopterygii;Neopterygii;Teleostei;Euteleostei、Protacanthopterygii、Salmoniformes;Salmonidae、またはOncorhynchusに、より好ましくはSalmoniformes目、最も好ましくはSalmonidae科、例えばSalmo属に、例えばOncorhynchus mykiss、Trutta truttaまたはSalmo trutta fario(属・種)に由来していてよい。さらに、核酸分子は、珪藻、例えばThallasiosira属またはPhaeodactylum属から得ることもできる。
【0015】
したがって、本発明に従って使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、本発明のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ、またはその他のホモログに相当する、前述の特定のポリヌクレオチドの変異体をさらに包含する。さらに、本発明のポリヌクレオチドの変異体は、人工的に作り出した突然変異タンパク質も含む。前記突然変異タンパク質は、例えば、突然変異誘発技法によって作り出された、改善もしくは改変された基質特異性を示す酵素、あるいはコドン最適化されたポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチド変異体は、好ましくは、その配列が、配列番号1または3のいずれか1つに示す前述の特定の核酸配列から、または配列番号2または4のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加、および/または欠失によって誘導することができる配列を特徴とする核酸配列を含み、それにより変異体核酸配列は、上記のようなnECR活性を有するポリペプチドを依然としてコードするであろう。また、変異体は、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定の核酸配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含する。このようなストリンジェントな条件は、当業者に周知であり、またCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1−6.3.6に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好適な例は、およそ45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)のあと、50〜65℃において0.2×SSC、0.1% SDSで1回以上の洗浄ステップを実施するハイブリダイゼーション条件である。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が、核酸の種類によって異なり、また例えば有機溶媒が存在する場合には、緩衝液の温度および濃度に関して異なることを承知している。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下で、濃度0.1〜5×SSC(pH7.2)の水性緩衝液において、温度は核酸の種類によって42℃から58℃の間で異なる。上述の緩衝液中に有機溶媒、例えば50%ホルムアミドが含まれる場合、標準的な条件下での温度はおよそ42℃である。DNA:DNAハイブリッドの場合のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSCおよび20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドの場合のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1×SSCおよび30℃〜55℃、好ましくは450℃〜55℃である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、ホルムアミド不在下での長さおよそ100bp(=塩基対)およびG+C含有量50%の核酸に対して決定される。当業者であれば、教本、例えば前述の教本、または以下の教本:Sambrook et al., "Molecular Cloning", Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, "Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach", IRL Press at Oxford University Press, Oxfordを参照することにより、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を理解している。あるいは、ポリヌクレオチド変異体は、PCRに基づく技法、例えば混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅によって、すなわち本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対する変性プライマーを用いることによって得られる。本発明のポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列またはポリペプチドのアミノ酸配列の配列比較によって同定することができる。PCRプライマーとして適切なオリゴヌクレオチド、ならびに適切なPCR条件は、添付の実施例に記載する。テンプレートとして、細菌、菌類、植物、または動物に由来するDNAまたはcDNAを使用することができる。さらに、変異体には、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、配列番号1または3のいずれか1つに示す核酸配列と同一である核酸配列であって、好ましくは上記のようなnECR活性を保有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。さらに、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が、配列番号2または4のいずれか1つに示すアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、好ましくは上記のようなnECR活性を保有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも包含する。同一性パーセント値を、好ましくは、アミノ酸配列領域または核酸配列領域の全体にわたって計算する。異なる配列を比較するために、当業者は、種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムを利用することができる。好適な実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、EMBOSSソフトウェアパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice.P., Longden,I., and Bleasby,A Trends in Genetics 16(6), 276−277, 2000)のneedleプログラムに組み込まれたNeedleman−Wunschアルゴリズム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. (48):444−453)を用いて、遠縁のタンパク質の場合はBLOSUM45スコア行列またはPAM250スコア行列のいずれか、あるいはより近縁のタンパク質の場合はBLOSUM62スコア行列またはPAM160スコア行列のいずれか、またギャップ開始ペナルティ16、14、12、10、8、6、または4、およびギャップ伸長ペナルティ0.5、1、2、3、4、5、または6を使用して決定される。EMBOSSパッケージのローカルインストールの案内、ならびにWEB−Servicesへのリンクは、http://emboss.sourceforge.netに示されている。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインするために使用するパラメータの好適かつ非限定的な例は、EBLOSUM62スコア行列、ギャップ開始ペナルティ10、およびギャップ伸長ペナルティ0.5を含むデフォルトパラメータである。さらに別の好適な実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、EMBOSSソフトウェアパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Rice, P., LongdenI., and BleasbyA Trends in Genetics 16(6), 276−277, 2000)のneedleプログラムを用いて、EDNAFULLスコア行列、ならびにギャップ開始ペナルティ16、14、12、10、8、6、または4、およびギャップ伸長ペナルティ0.5、1、2、3、4、5、または6を使用して決定される。needleプログラムを用いて2つの配列をアラインするために併せて使用するパラメータの好適かつ非限定的な例は、EDNAFULLスコア行列、ギャップ開始ペナルティ10、およびギャップ伸長ペナルティ0.5を含むデフォルトパラメータである。本発明の核酸配列およびタンパク質配列は、さらに「クエリ配列」として使用して、公共データベースに対する検索を実行し、例えば他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。そのような検索は、Altschul et al.(Altschul 1990, J. Mol. Biol. 215:403−10)の一連のBLASTプログラム(version 2.2)を用いて実行することができる。クエリ配列として本発明のnECR核酸配列を用いたBLASTは、BLASTn、BLASTx、またはtBLASTxプログラムを用い、デフォルトパラメータを使用して実行し、本発明のnECR配列と相同なヌクレオチド配列(BLASTn、tBLASTx)またはアミノ酸配列(BLASTx)のいずれかを得ることができる。クエリ配列として本発明のnECRタンパク質配列を用いたBLASTは、BLASTpまたはtBLASTnプログラムを用い、デフォルトパラメータを使用して実行し、本発明のnECR配列と相同なアミノ酸配列(BLASTp)または核酸配列(tBLASTn)のいずれかを得ることができる。比較の目的でギャップアラインメントを得るためには、Altschul et al.(Altschul 1997, Nucleic Acids Res. 25(17):3389−3402)に記載されているように、デフォルトパラメータを用いたGapped BLASTを使用することができる。
【0016】
第1表:種々のBLASTプログラムにおける、クエリ配列およびヒット配列の配列タイプの関係
【表1】

【0017】
また、前述の核酸配列のうちのいずれかのフラグメントを含むポリヌクレオチドも、本発明のポリヌクレオチドとして包含される。このフラグメントは、上記のようなnECR活性を依然として有するポリペプチドをコードすることとなる。したがって、このポリペプチドは、前記生物学的活性を与える本発明のポリペプチドのドメインを含んでも、あるいは前記ドメインからなってもよい。本明細書で言うフラグメントは、好ましくは、前述の核酸配列のいずれか1つの少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも250個、または少なくとも500個の連続するヌクレオチドを含む、あるいは前述のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、少なくとも80個、少なくとも100個、または少なくとも150個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。
【0018】
変異体ポリヌクレオチドまたは前記のフラグメントは、好ましくは、有意な程度、好ましくは、配列番号2または4のいずれか1つに示す任意のポリペプチドが示すnECR活性の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のnECR活性を保有するポリペプチドをコードする。この活性は、添付の実施例に記載するようにテストすることができる。
【0019】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列から本質的になる、あるいは前述の核酸配列を含む。したがって、これらはさらなる核酸配列を含んでいてもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレームに加え、コード遺伝子領域の3′末端および5′末端に、さらなる非翻訳配列を含んでもよく、これはコード領域5′末端の上流の少なくとも500個、好ましくは200個、より好ましくは100個のヌクレオチドの配列、およびコード遺伝子領域3′末端の下流の少なくとも100個、好ましくは50個、より好ましくは20個のヌクレオチドの配列である。さらに、本発明のポリヌクレオチドは融合タンパク質をコードしていてもよく、このとき融合タンパク質の1つのパートナーは、上記の核酸配列によってコードされたポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、付加部分として、脂肪酸もしくはPUFA生合成経路の別の酵素、発現をモニターするためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色、または赤色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼなど)、あるいは検出可能なマーカーとして、または精製のための補助手段として機能しうる、いわゆる「タグ」を含んでいてもよい。さまざまな目的のタグが当該技術分野では周知であり、これにはFLAG−タグ、6−ヒスチジン−タグ、MYC−タグなどが含まれる。
【0020】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(すなわち、精製されているか、または少なくともその天然のコンテクスト、例えばその天然の遺伝子座から単離されている)として、あるいは遺伝子を組換えられた形態、または外部から(すなわち、人工的に)操作した形態で提供されるであろう。単離されたポリヌクレオチドは、例えば、その核酸が由来する細胞のゲノムDNA中に、その核酸分子に天然に隣接するおよそ5kb未満、4kb未満、3kb未満、2kb未満、1kb未満、0.5kb未満、または0.1kb未満のヌクレオチド配列を含んでもよい。このポリヌクレオチドは、好ましくは、二本鎖分子または一本鎖分子の形で提供される。前述の本発明のポリヌクレオチドのいずれかを参照することによって、本発明が、上述の特定の配列またはその変異体の相補鎖または逆相補鎖にも関することは理解されるであろう。ポリヌクレオチドは、cDNAおよびゲノムDNAを含むDNA、またはRNAのポリヌクレオチドを包含する。
【0021】
しかしながら、本発明は、本発明のポリヌクレオチドに由来し、本発明のポリヌクレオチドの転写または翻訳に干渉しうるポリヌクレオチド変異体にも関連する。そのような変異体ポリヌクレオチドには、アンチセンス核酸、リボザイム、siRNA分子、モルホリノ核酸(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴ)、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、阻害オリゴヌクレオチド、またはマイクロRNA分子が含まれ、これらすべては、相補的または実質的に相補的な配列の存在により、本発明のポリヌクレオチドを特異的に認識するであろう。そのような技法は、当業者には周知である。適切な前述の種類の変異体ポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの構造に基づいて、容易に設計することができる。
【0022】
さらに、化学修飾されたポリヌクレオチドも含まれ、これには天然の修飾ポリヌクレオチド、例えばグリコシル化またはメチル化されたポリヌクレオチド、あるいは人工的な修飾ポリヌクレオチド、例えばビオチン化されたポリヌクレオチドを含む。
【0023】
本発明の基礎となる研究において、有利には、Thalassiosira pseudonanaおよびPhaeodactylum tricornumtumに由来するデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドが同定された。具体的には、Thalassiosira pseudonanaおよびPhaeodactylumのデヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼnECRが同定された[nECR(Tp)およびnECR(Pt)]。これらのnECRのそれぞれは、脂肪酸の伸長過程の一環として、3−ヒドロキシ−アシル−CoAからヒドロキシル基を除去し、形成された二重結合を還元することができる。例えば、脂肪酸を伸長することができなかったSaccharomyces cerevisae突然変異体におけるnECR(Tp)およびnECR(Pt)の発現は、伸長過程を回復することが発見された。本発明のポリヌクレオチドは、特にLCPUFA、とりわけARA、EPA、および/またはDHAの組換え製造に適している。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドの好適な実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、前記核酸配列に作用可能に連結された発現制御配列をさらに含む。
【0025】
本明細書で使用する「発現制御配列」という用語は、対象核酸配列(この場合には上記の核酸配列)の転写を支配することができる、すなわち開始および制御することができる核酸配列を指す。このような配列は、通常は、プロモーターまたはプロモーターとエンハンサ配列との組み合わせを含む、あるいはプロモーターまたはプロモーターとエンハンサ配列との組み合わせからなる。ポリヌクレオチドの発現は、核酸分子の転写、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。付加的な調節要素には、転写エンハンサならびに翻訳エンハンサを含みうる。以下のプロモーターおよび発現制御配列は、好ましくは、本発明による発現ベクターにおいて使用することができる。cos、tac、trp、tet、trp−tet、Ipp、lac、Ipp−lac、laclq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−PR、またはλ−PLプロモーターは、好ましくは、グラム陰性細菌において使用される。グラム陽性細菌の場合、プロモーターamyおよびSPO2を使用することができる。酵母プロモーターまたは真菌プロモーターからは、ADC1、AOX1r、GAL1、MFα、AC、P−60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHが、好ましく使用される。動物細胞発現または生物発現の場合、プロモーターのCMV−、SV40−、RSV−プロモーター(Rous sarcomaウイルス)、CMV−エンハンサ、SV40−エンハンサが、好ましく使用される。植物からは、プロモーターCaMV/35S(Franck 1980, Cell 21 : 285−294)、PRP1(Ward 1993, Plant. Mol. Biol. 22)、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nos、またはユビキチンプロモーター、もしくはファゼオリンプロモーター。また、これに関連して、誘導性プロモーター、例えば、欧州特許第0 388 186(A1)号(すなわち、ベンジルスルホンアミド誘導性プロモーター)、Gatz 1992, Plant J. 2:397−404 (すなわち、テトラサイクリン−誘導性プロモーター)、欧州特許第0 335 528(A1)号(すなわち、アブシジン酸誘導性プロモーター)、または国際出願第93/21334号(すなわち、エタノール誘導性プロモーターまたはシクロヘキセノール誘導性プロモーター)に記載されているプロモーターも好適である。さらなる好適な植物プロモーターは、ジャガイモ由来の細胞質FBPaseのプロモーターまたはST−LSIプロモーター(Stockhaus 1989, EMBO J. 8, 2445)、Glycine max由来のホスホリボシル−ピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(GenBankアクセッション番号U87999)、または欧州特許第0 249 676(A1)号に記載の節特異的プロモーターである。特に好適なものは、脂肪酸の生合成に関与する組織における発現を可能にするプロモーターである。さらに、特に好適なものには、慣例によると、種子特異的プロモーター、例えばUSPプロモーターがあるが、LeB4、DC3、ファゼオリン、またはナピンプロモーターなどの別のプロモーターもある。さらなる特に好適なプロモーターは、単子葉植物または双子葉植物に使用することができる、米国特許第5,608,152号(アブラナ由来のナピンプロモーター)、国際出願第98/45461号(アラビドプシス由来のオレオシンプロモーター、米国特許第5,504,200号(Phaseoius vulgaris由来のファゼオリンプロモーター)、国際出願第91/13980号(Brassica由来のBce4プロモーター)、Baeumlein et al., Plant J., 2, 2, 1992:233−239(マメ科植物由来のLeB4プロモーター)に記載されている種子特異的プロモーターであり、これらのプロモーターは双子葉類に適している。以下のプロモーターは、単子葉類に適している:オオムギ由来のlpt−2もしくはlpt−1プロモーター(国際出願第95/15389号および国際出願第95/23230号)、オオムギ由来のホルデインプロモーター、および適切であり国際出願第99/16890号に記載されている他のプロモーター。原則として、全ての天然プロモーターは、それらの調節配列、例えば上記のものなどと一緒に、本新規方法に使用することが可能である。同様に、合成プロモーターは、特に、例えば国際出願第99/16890号などに記載されているように、それらが種子特異的発現を媒介する場合に、付加的にあるいは単独で使用することが可能かつ有利である。特定の実施形態において、種子特異的プロモーターを使用して、所望のPUFAまたはLCPUFAの産生を促進する。
【0026】
本明細書において使用する「作用可能に連結された」という用語は、発現制御配列と対象核酸とが連結されて、それにより前記対象核酸の発現を前記発現制御配列によって支配することができることを意味する。すなわち、この発現制御配列は、発現される前記核酸配列に機能的に連結されることになる。したがって、発現制御配列と発現される核酸配列とは、例えば発現される核酸配列の5′端に発現制御配列を挿入することによって、互いに物理的に連結されてよい。あるいは、発現制御配列と発現される核酸配列とは、発現制御配列が少なくとも1つの対象核酸配列の発現を支配することができるように、単に物理的に近接しているだけであってもよい。発現制御配列と発現される核酸とは、好ましくは、500bp、300bp、100bp、80bp、60bp、40bp、20bp、10bp、または5bp以上は離れていない。
【0027】
本発明のポリヌクレオチドのさらなる好適な実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、核酸配列に作用可能に連結されたターミネーター配列をさらに含む。
【0028】
本明細書において使用する「ターミネーター」という用語は、転写を終結させることができる核酸配列を指す。これらの配列は、転写される核酸配列からの転写機構の解離をもたらす。好ましくは、ターミネーターは、植物において、とりわけ植物種子において活性を有するであろう。適切なターミネーターは、当該技術分野で既知であり、好ましくはポリアデニル化シグナル、例えばSV40−ポリ−A部位またはtk−ポリ−A部位、あるいはLoke et al.(Loke 2005, Plant Physiol 138, pp. 1457−1468)において示される植物特異的シグナルのうちの1つを発現される核酸配列の下流に含む。
【0029】
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターにも関する。
【0030】
「ベクター」という用語は、好ましくは、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、ならびに人工染色体、例えば細菌人工染色体もしくは酵母人工染色体を包含する。さらに、この用語は、標的化構築物のゲノムDNAへのランダム組込みまたは部位特異的組込みを可能にする、標的化構築物にも関する。そのような標的構築物は、好ましくは、下記に詳述するような相同組換えまたは異種組換えのいずれかに十分な長さを有するDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、好ましくは、宿主における増殖および/または選択のための選択可能なマーカーをさらに含む。ベクターは、当該技術分野で周知の種々の技法によって、宿主細胞内に組み込むことができる。宿主細胞に導入される場合、ベクターは細胞質に滞留してもよく、あるいはゲノムに組込まれてもよい。後者の場合、ベクターが、相同組換えまたは異種挿入を可能にする核酸配列をさらに含んでもよいことを理解すべきである。ベクターは、従来の形質転換技法またはトランスフェクション技法によって、原核細胞または真核細胞に導入することができる。この文脈で使用する「形質転換」および「トランスフェクション」、接合および形質導入という用語は、リン酸カルシウム、塩化ルビジウム、または塩化カルシウムの共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、自然応答能、炭素ベースのクラスター、化学物質媒介転移、またはエレクトロポレーション、または粒子衝撃を含む、宿主細胞中に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための多数の従来技術の方法を含むものとする。植物細胞を含む宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションに適した方法は、Sambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、およびその他の実験マニュアル、例えばMethods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, Ed.: Gartland and Davey, Humana Press, Totowa, New Jerseyなどに記載されている。あるいは、プラスミドベクターは、熱ショックまたはエレクトロポレーション技法で導入してもよい。ベクターがウイルスである場合、宿主細胞への適用前に、適当なパッケージング細胞株を用いてin vitroでパッケージングすることができる。
【0031】
好ましくは、本明細書におけるベクターはクローニングベクターとして適しており、すなわち微生物系において複製可能である。そのようなベクターは、細菌、および好ましくは酵母または菌類における効率的なクローニングを確実にし、植物の安定な形質転換を可能にする。とりわけ挙げるべきものは、T−DNA媒介形質転換に適した、種々のバイナリーベクター系および共組込み型ベクター系である。そのようなベクター系は、通例、Agrobacterium媒介形質転換に必要とされるvir遺伝子と、T−DNAの範囲を定める配列(T−DNAボーダー)とを少なくとも含有することを特徴とする。また、これらのベクター系は、好ましくは、さらなるシス調節領域、例えばプロモーターおよびターミネーター、および/または適切な形質転換された宿主細胞または生物を同定することができる選択マーカーも含む。共組込み型ベクター系は、同じベクター上に配置されたvir遺伝子とT−DNA配列とを有するが、バイナリー系は、少なくとも2つのベクターに基づき、そのうち一方はvir遺伝子を担持するがT−DNAを有さず、2番目のベクターはT−DNAを担持するがvir遺伝子は有さない。結果として、最後に挙げたベクターは、比較的小さく、容易に操作でき、大腸菌およびAgrobacteriumの双方において複製が可能である。このようなバイナリーベクターには、pBIB−HYG、pPZP、pBecks、pGreen系列由来のベクターが含まれる。本発明により好ましく使用されるのは、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTV、およびpCAMBIAである。バイナリーベクターとそれらの使用の概要は、Hellens et al, Trends in Plant Science (2000) 5, 446−451に記載されている。さらに、適当なクローニングベクターを使用することにより、ポリヌクレオチドを宿主細胞および宿主生物、例えば植物および動物に導入することができ、それにより植物、例えば公開されている、以下に引用する植物の形質転換に使用することができる:Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), chapter 6/7, pp. 71−119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants、Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, 15−38; B. Jenes et al., Techniques for Gene Transfer、Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128−143; Potrykus 1991 , Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42, 205−225。
【0032】
より好ましくは、本発明のベクターは発現ベクターである。そのような発現ベクター、すなわち発現制御配列と作用可能に連結された核酸配列を有する本発明のポリヌクレオチドを含むベクター(「発現カセット」とも称される)では、原核細胞または真核細胞における発現、あるいはそれらの単離した断片が可能になる。適切な発現ベクターは、当該技術分野で既知であり、例えばOkayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogene社)、またはpSPORTI(GIBCO BRL社)である。典型的な融合発現ベクターのさらなる例は、pGEX(Pharmacia Biotech Inc社; Smith 1988, Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs社、米国マサチューセッツ州ビバリー)、およびpRIT5(Pharmacia社、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)であり、このときグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合性タンパク質、およびプロテインAをそれぞれ組換え標的タンパク質と融合させる。適切な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例は、とりわけ、pTrc(Amann 1988, Gene 69:301−315)およびpET 11d(Studier 1990, Methods in Enzymology 185, 60−89)である。pTrcベクターの標的遺伝子発現は、宿主RNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの転写に基づく。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、共発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介される、T7−gn10−lac融合プロモーターの転写に基づく。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子を含有する常在λプロファージから、宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により提供される。当業者は、原核生物において適切なその他のベクターを熟知しており、これらのベクターには、例えば、大腸菌においては、pLG338、pACYC184、pBR系列、例えばpBR322、pUC系列、例えばpUC18またはpUC19、M113mp系列、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN−III113−B1、λgt11、またはpBdCl、ストレプトマイセスにおいては、plJ101、plJ364、plJ702、またはplJ361、バチルスにおいては、pUB110、pC194、またはpBD214、コリネバクテリウムにおいては、pSA77またはpAJ667がある。酵母S.cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例には、pYep Sec1(Baldari 1987, Embo J. 6:229−234)、pMFa(Kurjan 1982, Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz 1987, Gene 54:113−123)、およびpYES2(Invitrogen社、米国カリフォルニア州サンディエゴ)が含まれる。その他の菌類、例えば糸状菌における使用に適したベクターおよびベクターの構築のための方法は、van den Hondel, C.A.M.J.J., & Punt, P.J. (1991) "Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi、Applied Molecular Genetics of fungi, J. F. Peberdy et al., Ed., pp. 1−28, Cambridge University Press: Cambridge、またはMore Gene Manipulations in Fungi (J.W. Bennett & L. L. Lasure, Ed., pp. 396−428: Academic Press: San Diego)に詳細に記載されているものを含む。さらなる適切な酵母ベクターは、例えば、pAG−1、YEp6、YEp13、またはpEMBLYe23である。代替的に、本発明のポリヌクレオチドは、バキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞において発現させることもできる。昆虫培養細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターは、pAc系列(Smith 1983, Mol. Cell Biol. 3:2156−2165)およびpVL系列(Lucklow 1989, Virology 170:31−39)を含む。
【0033】
本発明のポリヌクレオチドは、単細胞植物細胞(例えば、藻類)(Falciatore 1999, Marine Biotechnology 1 (3):239−251とその中に引用されている参考文献を参照)、および高等植物(例えば、耕地作物などの種子植物)由来の植物細胞において、植物発現ベクターを用いて発現させることができる。植物発現ベクターの例には、Becker 1992, Plant Mol. Biol. 20:1195−1197; Bevan 1984, Nucl. Acids Res. 12:8711−8721 ; Vectors for Gene Transfer in Higher Plants、Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, p. 15−38に詳細に記載されているものを含む。植物発現カセットは、好ましくは、植物細胞における遺伝子発現を制御することができ、それぞれの配列がその機能、例えば転写終結などを果たせるように機能的に連結した調節配列、例えばポリアデニル化シグナルを含む。好適なポリアデニル化シグナルは、Agrobacterium tumefaciensT−DNAに由来するもの、例えばオクトピンシンターゼとして知られているTiプラスミドpTiACH5の遺伝子3(Gielen 1984, EMBO J. 3, 835)、またはその機能的同等物であるが、植物において機能的に活性であるすべての他のターミネーターも適している。植物遺伝子発現は、転写レベルに限定されないことが極めて多いことから、植物発現カセットは、好ましくは、別の機能的に連結した配列、例えば翻訳エンハンサ、例えば5′−非翻訳タバコモザイクウイルスリーダー配列を含むオーバードライブ配列を含み、これはタンパク質/RNA比を増加させる(Gallie 1987, Nucl. Acids Research 15:8693−8711)。上述のように、植物遺伝子発現は、遺伝子の発現を適時に細胞特異的または組織特異的に行なう適切なプロモーターに、機能的に連結されていなければならない。使用可能なプロモーターは、構成的プロモーター(Benfey 1989, EMBO J. 8:2195−2202)、例えば植物ウイルスに由来するもの、例えば35S CAMV(Franck 1980, Cell 21 :285−294)、19S CaMV(米国特許第5,352,605号および国際出願第84/02913号を参照)、または植物プロモーター、例えば米国特許第4,962,028号に記載されているRubisco小サブユニットのプロモーターである。植物遺伝子発現カセットにおいて機能的連結として使用するためのその他の好適な配列は、その遺伝子産物をその関連する細胞コンパートメント、例えば液胞、核、全ての種類の色素体、例えばアミロプラスト、葉緑体、有色体、細胞外空間、ミトコンドリア、小胞体、油体、ペルオキシソーム、および植物細胞のその他のコンパートメント内に導くために必要な標的化配列である(概要は、Kermode 1996, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4: 285−423およびその中で引用される参考文献を参照)。上述のように、植物遺伝子発現は、化学的誘導性プロモーターによって促進することもできる(概要は、Gatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89−108を参照)。化学的に誘導可能なプロモーターは、遺伝子を時間特異的に発現させたい場合に特に適している。そのようなプロモーターの例は、サリチル酸誘導性プロモーター(国際出願第95/19443号)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatz 1992, Plant J. 2, 397−404)、およびエタノール誘導性プロモーターである。また、生物的もしくは非生物的ストレス条件に応答するプロモーターも適切なプロモーターであり、これには例えば、病原体誘導性PRP1遺伝子プロモーター(Ward 1993, Plant Mol. Biol. 22:361−366)、トマト由来の熱誘導性hsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号)、ジャガイモ由来の低温誘導性αアミラーゼプロモーター(国際出願第96/12814号)、または創傷誘導性pinIIプロモーター(欧州特許第0 375 091(A)号)がある。特に好適なプロモーターは、脂肪酸、脂質、および油の生合成が行なわれる組織および器官において、種子細胞、例えば内胚乳の細胞および発生中の胚の細胞において、遺伝子の発現をもたらすプロモーターである。適切なプロモーターは、アブラナ由来のナピン遺伝子プロモーター(米国特許第5,608,152号)、Vicia faba由来のUSPプロモーター(Baeumlein 1991, Mol. Gen. Genet. 225 (3):459−67)、Arabidopsis由来のオレオシンプロモーター(国際出願第98/45461号)、Phaseolus vulgaris由来のファゼオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号)、Brassica由来のBce4プロモーター(国際出願第91/13980号)、またはレグミンB4プロモーター(LeB4; Baeumlein 1992, Plant Journal, 2 (2):233−9)、および単子葉植物、例えばトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、イネなどにおいて、種子特異的発現をもたらすプロモーターである。考慮すべき適切なプロモーターは、オオムギ由来のlpt2またはlpt1遺伝子プロモーター(国際出願第95/15389号および国際出願第95/23230号)、または国際出願第99/16890号に記載されているもの(オオムギホルデイン遺伝子、イネグルテリン遺伝子、イネオリジン遺伝子、イネプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝子、トウモロコシゼイン遺伝子、エンバクグルテリン遺伝子、モロコシカシリン遺伝子、ライムギセカリン遺伝子由来のプロモーター)である。同様に、特に適しているものは、色素体特異的発現をもたらすプロモーターであるが、これは色素体が、脂質生合成の前駆体および一部の最終産物が合成されるコンパートメントであるためである。適切なプロモーター、例えばウイルスRNA−ポリメラーゼプロモーターは、国際出願第95/16783号および国際出願第97/06250号に記載されており、Arabidopsis由来のclpPプロモーターは、国際出願第99/46394号に記載されている。
【0034】
上述のベクターは、本発明に従って使用すべきベクターの単なる概要に過ぎずない。さらなるベクターは、当業者には既知であり、例えば、Cloning Vectors(Ed., Pouwels, P. H., et al., Elsevier, Amsterdam−New York−Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に記載されている。原核細胞および真核細胞のためのさらなる適切な発現系については、上記に引用したSambrookの第16章および第17章を参照されたい。
【0035】
上記のことから、好ましくは、前記ベクターは発現ベクターである。より好ましくは、本発明の前記ポリヌクレオチドは、本発明のベクター中の種子特異的プロモーターの制御下にある。本明細書で言う好適な種子特異的プロモーターは、Conlinin 1、Conlinin 2、ナピン、LuFad3、USP、LeB4、Arc、Fae、ACP、LuPXR、およびSBPからなる群から選択される。詳細については、例えば、米国特許第2003−0159174号を参照されたい。
【0036】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0037】
好ましくは、前記宿主細胞は植物細胞、より好ましくは、油料種子作物から得られた植物細胞である。より好ましくは、前記油料種子作物は、亜麻(Linum sp.)、菜種(Brassica sp.)、大豆(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、綿(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、ココア(Theobroma cacoa)、ピーナッツ(Arachis sp.)、麻、アマナズナ、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ種子、トウゴマ、レスケレーラ、ハゼノキ、シアナッツ、アブラギリの実、カポックの実、ケシの実、ホホバ種子、およびシソからなる群から選択される。
【0038】
また、好ましくは、前記宿主細胞は微生物である。より好ましくは、前記微生物は、細菌、真菌、または藻類である。より好ましくは、これはCandida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、およびSchizochytriumからなる群から選択される。
【0039】
さらに、本発明による宿主細胞は、動物細胞であってもよい。好ましくは、前記動物宿主細胞は、魚の宿主細胞、またはそれらから得られる細胞株である。より好ましくは、魚宿主細胞は、ニシン、サケ、イワシ、アカウオ、ウナギ、コイ、マス、オヒョウ、サバ、ザンダー、またはマグロに由来する。
【0040】
一般に、LCPUFAの産生、すなわち長鎖不飽和脂肪酸生合成経路生合成経路における制御段階は、膜結合脂肪酸エロンガーゼ複合体に触媒される。植物およびその他のほとんどの真核生物は、C18原子を超える脂肪酸の伸長に特化したエロンガーゼ系を有する。これらのエロンガーゼ反応は、脂肪酸シンターゼ複合体(FAS)と共通するいくつかの重要な特長を有する。しかしながら、エロンガーゼ複合体は、FAS複合体とは異なる。これはエロンガーゼ複合体が、細胞質ゾルに局在し、膜結合性であり、ACPが関与せず、エロンガーゼ3−ケトアシル−CoA−シンターゼがマロニル−CoAとアシルプライマーの縮合を触媒するためである。エロンガーゼ複合体は、異なる触媒機能を有する4つの成分、ケトアシル−CoA−シンターゼ(KCS、マロニル−CoAとアシル−CoAとの縮合反応、2C原子長いケトアシル−CoA脂肪酸を作成)、ケトアシル−CoA−レダクターゼ(KCR、3−ケト基の3−ヒドロキシ基への還元)、デヒドラターゼ(DH、脱水がデルタ−2−エノイル−アシル−CoA脂肪酸をもたらす)、およびエノイル−CoA−レダクターゼ(ECR、2位の二重結合の還元、複合体からの解離)からなる。ARA、EPA、および/またはDHAを含むLCPUFAの産生のためには、伸長反応は必須となりうる。高等植物は、LCPUFA(4個以上の二重結合、20個以上のC原子)を産生するために必要な酵素一式を有さない。したがって、これらの触媒活性を、植物または植物細胞に付与しなければならない。伸長過程における1つの不可欠な段階は、脱水・還元反応である。本発明のポリヌクレオチドは、驚くべきことに、1つの酵素によってこの脱水・還元活性を触媒する。このnECRを送達することによって、より高いレベルのPUFAおよびLCPUFAが産生される。
【0041】
しかしながら、宿主細胞によっては、さらなる酵素活性を例えば組換え技術によって宿主細胞に付与してもよいことが理解されるであろう。したがって、本発明は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドに加えて、選択する宿主細胞に応じて必要とされるデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を想定している。宿主細胞に存在するであろう好適なデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼは、Δ−4−デサチュラーゼ、Δ−5−デサチュラーゼ、Δ−5−エロンガーゼ、Δ−6−デサチュラーゼ、Δ12−デサチュラーゼ、Δ15−デサチュラーゼ、ω3−デサチュラーゼ、およびΔ−6−エロンガーゼからなる群から選択された少なくとも1つの酵素である。特に好適なものは、二機能性d12d15−デサチュラーゼである、Acanthamoeba castellanii由来のd12d15Des(Ac)(国際出願第2007042510号)、Claviceps purpurea由来のd12d15Des(Cp)(国際出願第2008006202号)、およびLottia gigantea由来のd12d15Des(Lg)1(国際出願第2009016202号)、d12−デサチュラーゼである、Calendula officinalis由来のd12Des(Co)(国際出願第200185968号)、Laccaria bicolor由来のd12Des(Lb)(国際出願第2009016202号)、Monosiga brevicollis由来のd12Des(Mb)(国際出願第2009016202号)、Mycosphaerella graminicola由来のd12Des(Mg)(国際出願第2009016202号)、Nectria haematococca由来のd12Des(Nh)(国際出願第2009016202号)、Ostreococcus lucimarinus由来のd12Des(Ol)(国際出願第2008040787号)、Phycomyces blakesleeanus由来のd12Des(Pb)(国際出願第2009016202号)、Phytophthora sojae由来のd12Des(Ps)(国際出願第2006100241号)、およびThalassiosira pseudonana由来のd12Des(Tp)(国際出願第2006069710号)、d15−デサチュラーゼである、Helobdella robusta由来のd15Des(Hr)(国際出願第2009016202号)、Microcoleus chthonoplastes由来のd15Des(Mc)(国際出願第2009016202号)、Mycosphaerella fijiensis由来のd15Des(Mf)国際出願第2009016202号)、Mycosphaerella graminicola由来のd15Des(Mg)(国際出願第2009016202号)、およびNectria haematococca由来のd15Des(Nh)2(国際出願第2009016202号)、d4−デサチュラーゼである、Euglena gracilis由来のd4Des(Eg)(国際出願第2004090123号)、Thraustochytrium sp.由来のd4Des(Tc)(国際出願第2002026946号)、およびThalassiosira pseudonana由来のd4Des(Tp)(国際出願第2006069710号)、d5−デサチュラーゼである、Ostreococcus lucimarinus由来のd5Des(Ol)2(国際出願第2008040787号)、Physcomitrella patens由来のd5Des(Pp)(国際出願第2004057001号)、Phaeodactylum tricornutum由来のd5Des(Pt)(国際出願第2002057465号)、Thraustochytrium sp.由来のd5Des(Tc)(国際出願第2002026946号)、Thalassiosira pseudonana由来のd5Des(Tp)(国際出願第2006069710号)、ならびにd6−デサチュラーゼである、Ceratodon purpureus由来のd6Des(Cp)(国際出願第2000075341号)、Ostreococcus lucimarinus由来のd6Des(Ol)(国際出願第2008040787号)、Ostreococcus tauri由来のd6Des(Ot)(国際出願第2006069710号)、Primula farinosa由来のd6Des(Pf)(国際出願第2003072784号)、Pythium irregulare由来のd6Des(Pir)_BO(国際出願第2002026946号)、Pythium irregulare由来のd6Des(Pir)(国際出願第2002026946号)、Primula luteola由来のd6Des(Plu)(国際出願第2003072784号)、Physcomitrella patens由来のd6Des(Pp)(国際出願第200102591号)、Phaeodactylum tricornutum由来のd6Des(Pt)(国際出願第2002057465号)、Primula vialii由来のd6Des(Pv)(国際出願第2003072784号)、およびThalassiosira pseudonana由来のd6Des(Tp)(国際出願第2006069710号)、d8−デサチュラーゼである、Acanthamoeba castellanii由来のd8Des(Ac)(欧州特許第1790731号)、Euglena gracilis由来のd8Des(Eg)(国際出願第200034439号)、およびPerkinsus marinus由来のd8Des(Pm)(国際出願第2007093776号)、o3−デサチュラーゼである、Phytophthora infestans由来のo3Des(Pi)(国際出願第2005083053号)、Pythium irregulare由来のo3Des(Pir)(国際出願第2008022963号)、Pythium irregulare由来のo3Des(Pir)2(国際出願第2008022963号)、およびPhytophthora sojae由来のo3Des(Ps)(国際出願第2006100241号)、二機能性d5d6−エロンガーゼである、Oncorhynchus mykiss由来のd5d6Elo(Om)2(国際出願第2005012316号)、Thraustochytrium aureu由来のd5d6Elo(Ta)(国際出願第2005012316号)、およびThraustochytrium sp.由来のd5d6Elo(Tc)(国際出願第2005012316号)、d5−エロンガーゼである、Arabidopsis thaliana由来のd5Elo(At)(国際出願第2005012316号)、Arabidopsis thaliana由来のd5Elo(At)2(国際出願第2005012316号)、Ciona intestinalis由来のd5Elo(Ci)(国際出願第2005012316号)、Ostreococcus lucimarinus由来のd5EIo(Ol)(国際出願第2008040787号)、Ostreococcus tauri由来のd5Elo(Ot)(国際出願第2005012316号)、Thalassiosira pseudonana由来のd5Elo(Tp)(国際出願第2005012316号)、およびXenopus laevis由来のd5Elo(XI)(国際出願第2005012316号)、d6−エロンガーゼである、Ostreococcus lucimarinus由来のd6Elo(Ol)(国際出願第2008040787号)、Ostreococcus tauri由来のd6Elo(Ot)(国際出願第2005012316号)、Phytophthora infestans由来のd6Elo(Pi)(国際出願第2003064638号)、Pythium irregulare由来のd6Elo(Pir)(国際出願第2009016208号)、Physcomitrella patens由来のd6Elo(Pp)(国際出願第2001059128号)、Phytophthora sojae由来のd6Elo(Ps)(国際出願第2006100241号)、Phytophthora sojae由来のd6Elo(Ps)2(国際出願第2006100241号)、Phytophthora sojae由来のd6Elo(Ps)3(国際出願第2006100241号)、Phaeodactylum tricomutum由来のd6Elo(Pt)(国際出願第2005012316号)、Thraustochytrium sp.由来のd6Elo(Tc)(国際出願第2005012316号)、およびThalassiosira pseudonana由来のd6Elo(Tp)(国際出願第2005012316号)、d9−エロンガーゼである、Isochrysis galbana由来のd9Elo(Ig)(国際出願第2002077213号)、Perkinsus marinus由来のd9Elo(Pm)(国際出願第2007093776号)、およびRhizopus oryzae由来のd9Elo(Ro)(国際出願第2009016208号)である。特に、高等植物におけるARAの製造を想定している場合、下記の第3表に記載する酵素(すなわち、追加として、d6−デサチュラーゼ、d6−エロンガーゼ、d5−エロンガーゼ、d5−デサチュラーゼ、d12−デサチュラーゼ、およびd6−エロンガーゼ)、または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞に組み込んでもよい。高等植物におけるEPAの製造を想定している場合、下記の第4表に記載する酵素(すなわち、追加として、d6−デサチュラーゼ、d6−エロンガーゼ、d5−デサチュラーゼ、d12−デサチュラーゼ、d6−エロンガーゼ、オメガ3−デサチュラーゼ、およびd15−デサチュラーゼ)、または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞に組み込んでもよい。高等植物におけるDHAの製造を想定している場合、下記の第5表に記載する酵素(すなわち、追加として、d6−デサチュラーゼ、d6−エロンガーゼ、d5−デサチュラーゼ、d12−デサチュラーゼ、d6−エロンガーゼ、オメガ3−デサチュラーゼ、d15−デサチュラーゼ、d5−エロンガーゼ、およびd4−デサチュラーゼ)、または本質的に同じ活性を有する酵素を宿主細胞に組み込んでもよい。
【0042】
また、本発明は、細胞、好ましくは上記の宿主細胞、または本明細書の他の部分に記載の非ヒト生物の細胞であって、本発明のポリヌクレオチドから、点突然変異、トランケーション、逆位、欠失、付加、置換、および相同組換えによって得られるポリヌクレオチドを含む細胞に関する。ポリヌクレオチドにそのような修飾を実施する方法は、当業者には周知であり、本明細書の他の部分に詳細に記載した。
【0043】
本発明は、さらに、本発明のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの製造のための方法であって、
a)前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で、本発明の宿主細胞を培養するステップと、
b)ステップa)の宿主細胞からポリペプチドを得るステップと、
を含む方法にも関連する。
【0044】
宿主細胞に含まれる本発明のポリヌクレオチドの発現を可能にする適切な条件は、宿主細胞、ならびに前記ポリヌクレオチドの発現を支配するために使用する発現制御配列に依存する。これらの条件およびそれらの選択方法は、当業者に周知である。発現ポリペプチドは、例えば、全ての従来の精製技法によって得られるが、これには親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、および抗体沈降を含む沈降技法が含まれる。本方法は、好適ではあるが、本質的に純粋なポリペプチド製剤を必ずしも生じなくてもよいことは理解されるべきである。前述の方法に使用する宿主細胞によって、それにより産生されるポリペプチドが、翻訳後に修飾されても、あるいは別の方法でプロセスされてもよいことは理解されるべきである。
【0045】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドにコードされたポリペプチド、あるいは前述の方法で得られるポリペプチドを包含する。
【0046】
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、本質的に精製されたポリペプチド、またはさらに別のタンパク質を含むポリペプチド製剤を包含する。さらに、この用語は、上記の本発明のポリヌクレオチドによって少なくとも部分的にコードされた、融合タンパク質またはポリペプチドフラグメントにも関する。さらに、これは化学修飾されたポリペプチドを含む。そのような修飾は、人工的修飾または天然修飾、例えばリン酸化反応、グリコシル化、ミリスチル化などであってよい(概要は、Mann 2003, Nat. Biotechnol. 21, 255−261に、植物に焦点を当てた概要は、Huber 2004, Curr. Opin. Plant Biol. 7, 318−322に記載されている)。現在、300を越える翻訳後修飾が知られている(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.homeの完全なABFRC Delta massリストを参照)。本発明のポリペプチドは、上記のnECR活性を示すであろう。
【0047】
さらに本発明に包含されるのは、本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体である。
【0048】
本発明のポリペプチドに対する抗体は、本発明による精製ポリペプチドまたはそれに由来する適切なフラグメントを抗原として使用する周知の方法によって製造することができる。抗原として適切なフラグメントは、当該技術分野で周知の抗原性決定アルゴリズムによって同定することができる。そのようなフラグメントは、本発明のポリペプチドからタンパク分解によって得てもよく、あるいは合成ペプチドであってもよい。好ましくは、本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、キメラ化抗体、またはそれらいずれかの抗体のフラグメント、例えばFab、Fv、もしくはscFvフラグメントなどである。また、本発明により抗体として含まれるものは、二重特異性抗体、合成抗体、または前述の抗体のいずれかの化学修飾された誘導体である。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドに特異的に結合することになる(すなわち、別のポリペプチドまたはペプチドと有意には交差反応しない)。特異結合は、種々の周知の技法によってテストすることができる。抗体またはそれらのフラグメントは、例えば、Harlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988に記載されている方法を用いて得ることができる。モノクローナル抗体は、最初にKoehler 1975, Nature 256, 495、およびGalfre 1981 , Meth. Enzymol. 73, 3に記載された技法によって製造することができ、この技法は、マウス骨髄腫細胞と免疫した哺乳動物由来の脾臓細胞との融合を含む。抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫沈降、免疫局在性、または精製(例えば、親和性クロマトグラフィーによる)に、また例えば組換え生物において、前記変異体ポリペプチドの存在をモニターするために、および本発明によるタンパク質と相互作用するタンパク質または化合物を同定するために使用することができる。
【0049】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む非ヒトトランスジェニック生物を意図している。
【0050】
好ましくは、非ヒトトランスジェニック生物は、植物、植物部位、または植物種子である。本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを導入するために使用する好適な植物は、脂肪酸を合成することができる植物、例えば全ての双子葉植物または単子葉植物、藻類、または蘚類である。また、植物由来の宿主細胞を本発明による植物の産生に使用してもよいことは理解されるべきである。好適な植物は、植物の科の群、Adelotheciaceae、Anacardiaceae、Asteraceae、Apiaceae、Betulaceae、Boraginaceae、Brassicaceae、Bromeliaceae、Caricaceae、Cannabaceae、Convolvulaceae、Chenopodiaceae、Crypthecodiniaceae、Cucurbitaceae、Ditrichaceae、Elaeagnaceae、Ericaceae、Euphorbiaceae、Fabaceae、Geraniaceae、Gramineae、Juglandaceae、Lauraceae、Leguminosae、Linaceae、Prasinophyceae、あるいは野菜植物、または観賞植物、例えばTagetesから選択される。挙げることができる例には、以下からなる群から選択された植物がある:Adelotheciaceae、例えばPhyscomitrella属、例えばPhyscomitrella patens(属・種)、Anacardiaceae、例えばPistacia属、Mangifera属、Anacardium属、例えばPistacia vera[ピスタチオ]、Mangifer indica[マンゴー]、またはAnacardium occidentale[カシュー](属・種)、Asteraceae、例えばCalendula属、Carthamus属、Centaurea属、Cichorium属、Cynara属、Helianthus属、Lactuca属、Locusta属、Tagetes属、Valeriana属、例えばCalendula officinalis[コモンマリーゴールド]、Carthamus tinctorius[ベニバナ]、Centaurea cyanus[ヤグルマソウ]、Cichorium intybus[チコリー]、Cynara scolymus[チョウセンアザミ]、Helianthus annus[ヒマワリ]、Lactuca sativa、Lactuca crispa、Lactuca esculenta、Lactuca scariola L. ssp. sativa、Lactuca scariola L. var. integrata、Lactuca scariola L. var. integrifolia、Lactuca sativa subsp. romana、Locusta communis、Valeriana locusta[サラダ野菜]、Tagetes lucida、Tagetes erecta、またはTagetes tenuifolia[アフリカンマリーゴールドまたはフレンチマリーゴールド](属・種)、Apiaceae、例えばDaucus属、例えばDaucus carota[ニンジン](属・種)、Betulaceae、例えばCorylus属、例えばCorylus avellanaまたはCorylus colurna[ヘーゼルナッツ](属・種)、Boraginaceae、例えばBorago属、例えばBorago officinalis[ルリヂサ](属・種)、Brassicaceae、例えばBrassica属、Melanosinapis属、Sinapis属、Arabadopsis属、例えばBrassica napus、Brassica rapa ssp.[アブラナ]、Sinapis arvensis Brassica juncea、Brassica juncea var. juncea、Brassica juncea var. crispifolia、Brassica juncea var. foliosa、Brassica nigra、Brassica sinapioides、Melanosinapis communis[カラシ]、Brassica oleracea[飼料ビート]、またはArabidopsis thaliana(属・種)、Bromeliaceae、例えばAnana属、Bromelia(パイナップル)属、例えばAnana comosus、Ananas ananas、またはBromelia comosa[パイナップル](属・種)、Caricaceae、例えばCarica属、例えばCarica papaya[パパイヤ](属・種)、Cannabaceae、例えばCannabis属、例えばCannabis sativa[麻](属・種)、Convoivulaceae、例えばIpomea属、Convolvulus属、例えばIpomoea batatus、Ipomoea pandurata、Convolvulus batatas、Convolvulus tiliaceus、Ipomoea fastigiata、Ipomoea tiliacea、Ipomoea triloba、またはConvolvulus panduratus[サツマイモ(sweet potato、batate)](属・種)、Chenopodiaceae、Beta属、例えばBeta vulgaris、Beta vulgaris var. altissima、Beta vulgaris var. Vulgaris、Beta maritima、Beta vulgaris var. perennis、Beta vulgaris var. conditiva、またはBeta vulgaris var. esculenta[テンサイ](属・種)、Crypthecodiniaceae、例えばCrypthecodinium属、例えばCryptecodinium cohnii(属・種)、Cucurbitaceae、例えばCucurbita属、例えばCucurbita maxima、Cucurbita mixta、Cucurbita pepo、またはCucurbita moschata[カボチャ(pumpkin/squash)](属・種)、Cymbellaceae、例えばAmphora属、Cymbella属、Okedenia属、Phaeodactylum属、Reimeria属、例えばPhaeodactylum tricornutum(属・種)、Ditrichaceae、例えばDitrichaceae属、Astomiopsis属、Ceratodon属、Chrysoblastella属、Ditrichum属、Distichium属、Eccremidium属、Lophidion属、Philibertiella属、Pleuridium属、Saelania属、Trichodon属、Skottsbergia属、例えばCeratodon antarcticus、Ceratodon columbiae、Ceratodon heterophyllus、Ceratodon purpureus、Ceratodon purpureus、Ceratodon purpureus ssp. convolutus、Ceratodon、purpureus spp. stenocarpus、Ceratodon purpureus var. rotundifolius、Ceratodon ratodon、Ceratodon stenocarpus、Chrysoblastella chilensis、Ditrichum ambiguum、Ditrichum brevisetum、Ditrichum crispatissimum、Ditrichum difficile、Ditrichum falcifolium、Ditrichum flexicaule、Ditrichum giganteum、Ditrichum heteromallum、Ditrichum lineare、Ditrichum lineare、Ditrichum montanum、Ditrichum montanum、Ditrichum pallidum、Ditrichum punctulatum、Ditrichum pusillum、Ditrichum pusillum var. tortile、Ditrichum rhynchostegium、Ditrichum schimperi、Ditrichum tortile、Distichium capillaceum、Distichium hagenii、Distichium inclinatum、Distichium macounii、Eccremidium floridanum、Eccremidium whiteleggei、Lophidion strictus、Pleuridium acuminatum、Pleuridium alternifolium、Pleuridium holdridgei、Pleuridium mexicanum、Pleuridium ravenelii、Pleuridium subulatum、Saelania glaucescens、Trichodon borealis、Trichodon cylindricus、またはTrichodon cylindricus var. oblongus(属・種)、Elaeagnaceae、例えばElaeagnus属、例えばOlea europaea[オリーブ](属・種)、Ericaceae、例えばKalmia属、例えばKalmia latifolia、Kalmia angustifolia、Kalmia microphylla、Kalmia polifolia、Kalmia occidentalis、Cistus chamaerhodendros、またはKalmia lucida[アメリカシャクナゲ](属・種)、Euphorbiaceae、例えばManihot属、Janipha属、Jatropha属、Ricinus属、例えばManihot utilissima、Janipha manihot、Jatropha manihot、Manihot aipil、Manihot dulcis、Manihot manihot、Manihot melanobasis、Manihot esculenta[キャッサバ]、
またはRicinus communis[トウゴマ](属・種)、Fabaceae、例えばPisum属、Albizia属、Cathormion属、Feuillea属、Inga属、Pithecolobium属、Acacia属、Mimosa属、Medicajo属、Glycine属、Dolichos属、Phaseolus属、Soja属、例えばPisum sativum、Pisum arvense、Pisum humile[エンドウマメ]、Albizia berteriana、Albizia julibrissin、Albizia lebbeck、Acacia berteriana、Acacia littoralis、Aibizia berteriana、Albizzia berteriana、Cathormion berteriana、Feuillea berteriana、Inga fragrans、Pithecellobium berterianum、Pithecellobium fragrans、Pithecolobium berterianum、Pseudalbizzia berteriana、Acacia julibrissin、Acacia nemu、Albizia nemu、Feuilleea julibrissin、Mimosa julibrissin、Mimosa speciosa、Sericanrda julibrissin、Acacia lebbeck、Acacia macrophylla、Albizia lebbek、Feuilleea lebbeck、Mimosa lebbeck、Mimosa speciosa[ネムノキ]、Medicago sativa、Medicago falcata、Medicago varia[ムラサキウマゴヤシ]、Glycine max Dolichos soja、Glycine gracilis、Glycine hispida、Phaseolus max、Soja hispida、またはSoja max[大豆](属・種)、Funariaceae、例えばAphanorrhegma属、Entosthodon属、Funaria属、Physcomitrella属、Physcomitrium属、例えばAphanorrhegma serratum、Entosthodon attenuatus、Entosthodon bolanderi、Entosthodon bonplandii、Entosthodon californicus、Entosthodon drummondii、Entosthodon jamesonii、Entosthodon leibergii、Entosthodon neoscoticus、Entosthodon rubrisetus、Entosthodon spathulifolius、Entosthodon tucsoni、Funaria americana、Funaria bolanderi、Funaria calcarea、Funaria californica、Funaria calvescens、Funaria convoluta、Funaria flavicans、Funaria groutiana、Funaria hygrometrica、Funaria hygrometrica var. arctica、Funaria hygrometrica var. calvescens、Funaria hygrometrica var. convoluta、Funaria hygrometrica var. muralis、Funaria hygrometrica var. utahensis、Funaria microstoma、Funaria microstoma var. obtusifolia、Funaria muhlenbergii、Funaria orcuttii、Funaria plano−convexa、Funaria polaris、Funaria ravenelii、Funaria rubriseta、Funaria serrata、Funaria sonorae、Funaria sublimbatus、Funaria tucsoni、Physcomitrella californica、Physcomitrella patens、Physcomitrella readeri、Physcomitrium australe、Physcomitrium californicum、Physcomitrium collenchymatum、Physcomitrium coloradense、Physcomitrium cupuliferum、Physcomitrium drummondii、Physcomitrium eurystomum、Physcomitrium flexifolium、Physcomitrium hookeri、Physcomitrium hookeri var. serratum、Physcomitrium immersum、Physcomitrium kellermanii、Physcomitrium megalocarpum、Physcomitrium pyriforme、Physcomitrium pyriforme var. serratum、Physcomitrium rufipes、Physcomitrium sandbergii、Physcomitrium subsphaericum、Physcomitrium washingtoniense(属・種)、Geraniaceae、例えばPelargonium属、Cocos属、Oleum属、例えばCocos nucifera、Pelargonium grossularioides、またはOleum cocois[ココヤシ](属・種)、Gramineae、例えばSaccharum属、例えばSaccharum officinarum(属・種)、Juglandaceae、例えばJuglans属、Wallia属、例えばJuglans regia、Juglans ailanthifolia、Juglans sieboldiana、Juglans cinerea、Wallia cinerea、Juglans bixbyi、Juglans californica、Juglans hindsii、Juglans intermedia、Juglans jamaicensis、Juglans major、Juglans microcarpa、Juglans nigra、またはWallia nigra[クルミ](属・種)、Lauraceae、例えばPersea属、Laurus属、例えばLaurus nobilis[月桂樹]、Persea americana、Persea gratissima、またはPersea persea[アボカド](属・種)、Leguminosae、例えばArachis属、例えばArachis hypogaea[ピーナッツ](属・種)、Linaceae、例えばLinum属、Adenolinum属、例えばLinum usitatissimum、Linum humile、Linum austriacum、Linum bienne、Linum angustifolium、Linum catharticum、Linum flavum、Linum grandiflorum、Adenolinum grandiflorum、Linum lewisii、Linum narbonense、Linum perenne、Linum perenne var. lewisii、Linum pratense、またはLinum trigynum[亜麻仁](属・種)、Lythrarieae、例えばPunica属、例えばPunica granatum[ザクロ](属・種)、Malvaceae、例えばGossypium属、例えばGossypium hirsutum、Gossypium arboreum、Gossypium barbadense、Gossypium herbaceum、またはGossypium thurberi[綿](属・種)、Marchantiaceae、例えばMarchantia属、例えばMarchantia berteroana、Marchantia foliacea、Marchantia macropora(属・種)、Musaceae、例えばMusa属、例えばMusa nana、Musa acuminata、Musa paradisiaca、Musa spp.[バナナ](属・種)、Onagraceae、例えばCamissonia属、Oenothera属、例えば Oenothera biennis、またはCamissonia brevipes[マツヨイグサ](属・種)、Palmae、例えばElacis属、例えばElaeis guineensis[アブラヤシ](属・種)、Papaveraceae、例えばPapaver属、例えばPapaver orientale、Papaver rhoeas、Papaver dublum[ケシ](属・種)、Pedaliaceae、例えばSesamum属、例えばSesamum indicum[ゴマ](属・種)、Piperaceae、例えばPiper属、Artanthe属、Peperomia属、Steffensia属、例えばPiper aduncum、Piper amalago、Piper angustifolium、Piper auritum、Piper betel、Piper cubeba、Piper longum、Piper nigrum、Piper retrofractum、Artanthe adunca、Artanthe elongata、Peperomia elongata、Piper elongatum、Steffensia elongata[トウガラシ](属・種)、Poaceae、例えばHordeum属、Secale属、Avena属、Sorghum属、Andropogon属、Holcus属、Panicum属、Oryza属、Zea(トウモロコシ)属、
Triticum属、例えばHordeum vulgare、Hordeum jubatum、Hordeum murinum、Hordeum secalinum、Hordeum distichon、Hordeum aegiceras、Hordeum hexastichon、Hordeum hexastichum、Hordeum irregulare、Hordeum sativum、Hordeum secalinum[オオムギ]、Secale cereale[ライムギ]、Avena sativa、Avena fatua、Avena byzantina、Avena fatua var. sativa、Avena hybrida[カラスムギ]、Sorghum bicolor、Sorghum halepense、Sorghum saccharatum、Sorghum vulgare、Andropogon drummondii、Holcus bicolor、Holcus sorghum、Sorghum aethiopicum、Sorghum arundinaceum、Sorghum caffrorum、Sorghum cernuum、Sorghum dochna、Sorghum drummondii、Sorghum durra、Sorghum guineense、Sorghum lanceolatum、Sorghum nervosum、Sorghum saccharatum、Sorghum subglabrescens、Sorghum verticilliflorum、Sorghum vulgare、Holcus halepensis、Sorghum miliaceum、Panicum militaceum[キビ]、Oryza sativa、Oryza latifolia[イネ]、Zea mays[トウモロコシ]、Triticum aestivum、Triticum durum、Triticum turgidum、Triticum hybernum、Triticum macha、Triticum sativum、またはTriticum vulgare[コムギ](属・種)、Porphyridiaceae、例えばChroothece属、Flintiella属、Petrovanella属、Porphyridium属、Rhodella属、Rhodosorus属、Vanhoeffenia属、例えばPorphyridium cruentum(属・種)、Proteaceae、例えばMacadamia属、例えばMacadamia intergrifolia[マカダミア](属・種)、Prasinophyceae、例えばNephroselmis属、Prasinococcus属、Scherffelia属、Tetraselmis属、Mantoniella属、Ostreococcus属、例えばNephroselmis olivacea、Prasinococcus capsulatus、Scherffelia dubia、Tetraselmis chui、Tetraselmis suecica、Mantoniella squamata、Ostreococcus tauri(属・種)、Rubiaceae、例えばCofea属、例えばCofea spp.、Coffea arabica、Coffea canephora、またはCoffea liberica[コーヒー](属・種)、Scrophulariaceae、例えばVerbascum属、例えばVerbascum blattaria、Verbascum chaixii、Verbascum densiflorum、Verbascum lagurus、Verbascum longifolium、Verbascum lychnitis、Verbascum nigrum、Verbascum olympicum、Verbascum phlomoides、Verbascum phoenicum、Verbascum pulverulentum、またはVerbascum thapsus[モウズイカ](属・種)、Solanaceae、例えばCapsicum属、Nicotiana属、Solanum属、Lycopersicon属、例えばCapsicum annuum、Capsicum annuum var. glabriusculum、Capsicum frutescens[コショウ]、Capsicum annuum[パプリカ]、Nicotiana tabacum、Nicotiana alata、Nicotiana attenuata、Nicotiana glauca、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana rustica、Nicotiana sylvestris[タバコ]、Solanum tuberosum[ジャガイモ]、Solanum melongena[ナス]、Lycopersicon esculentum、Lycopersicon lycopersicum、Lycopersicon pyriforme、Solanum integrifoiium、またはSolanum lycopersicum[トマト](属・種)、Sterculiaceae、例えばTheobroma属、例えばTheobroma cacao [カカオ]、あるいはTheaceae、例えばCamellia属、例えばCamellia sinensis[チャ](属・種)。とりわけ、本発明に従ってトランスジェニック植物として使用すべき好適な植物は、多量の脂質化合物を含む油料果実作物、例えばピーナッツ、アブラナ、カノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、カラシ、麻、トウゴマ、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、モウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、月桂樹、カボチャ(pumpkin/squash)、亜麻仁、大豆、ピスタチオ、ルリヂサ、木(アブラヤシ、ココヤシ、クルミ)、または作物、例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、綿、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ナス科植物、例えばジャガイモ、タバコ、ナス、およびトマト、Vicia属の種、エンドウマメ、ムラサキウマゴヤシ、または低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、Salix属の種、ならびに多年生草および飼料作物である。本発明による好適な植物は、油料作物植物、例えばピーナッツ、アブラナ、カノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、カラシ、麻、トウゴマ、オリーブ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、カボチャ(pumpkin/squash)、亜麻仁、大豆、ルリヂサ、木(アブラヤシ、ココヤシ)である。特に好適なものは、ヒマワリ、ベニバナ、タバコ、モウズイカ、ゴマ、綿、カボチャ(pumpkin/squash)、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、麻、アザミ、またはベニバナである。極めて好適な植物は、ベニバナ、ヒマワリ、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、または麻などの植物である。
【0051】
好適な蘚類は、PhyscomitrellaまたはCeratodonである。好適な藻類は、Isochrysis、Mantoniella、Ostreococcus、またはCrypthecodinium、藻類/珪藻、例えばPhaeodactylumまたはThraustochytriumである。より好ましくは、前記の藻類または蘚類は、Shewanella、Physcomitrella、Thraustochytrium、Fusarium、Phytophthora、Ceratodon、Isochrysis、Aleurita、Muscarioides、Mortierella、Phaeodactylum、Cryphthecodiniumからなる群から、特にThailasiosira pseudonona、Euglena gracilis、Physcomitrella patens、Phytophtora infestans、Fusarium graminaeum、Cryptocodinium cohnii、Ceratodon purpureus、Isochrysis galbana、Aleurita farinosa、Thraustochytrium sp.、Muscarioides viallii、Mortierella alpina、Phaeodactylum tricomutum、またはCaenorhabditis elegans、あるいは特に有利にはPhytophtora infestans、Thailasiosira pseudonona、およびCryptocodinium cohnii(属・種)から選択される。
【0052】
トランスジェニック植物は、本明細書の他の部分と同様に、形質転換技法によって得られる。好ましくは、トランスジェニック植物は、T−DNA媒介形質転換によって得られる。そのようなベクター系は、通例、Agrobacterium媒介形質転換に必要とされるvir遺伝子と、T−DNAの範囲を定める配列(T−DNAボーダー)とを含有することを特徴とする。適切なベクターは、明細書の他の部分に詳細に記載する。
【0053】
また、本発明のベクターまたはポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物も包含される。本発明に想定される好適な非ヒトトランスジェニック動物は、魚、例えばニシン、サケ、イワシ、アカウオ、ウナギ、コイ、マス、オヒョウ、サバ、ザンダー、またはマグロである。
【0054】
しかしながら、上記の非ヒトトランスジェニック生物によっては、さらに、酵素活性を例えば組換え技術によって前記生物に付与してもよいことは理解されるであろう。したがって、本発明は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドに加えて、選択する宿主細胞に応じて必要とされるデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、上記の非ヒトトランスジェニック生物を想定している。その生物中に存在するであろう好適なデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼは、本明細書の他の部分に具体的に記載したデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ、あるいは組み合わせの群から選択された少なくとも1つの酵素である(上記、ならびに第3表、第4表、および第5表を参照)。
【0055】
さらに、本発明は、多価不飽和脂肪酸の製造ための方法であって、
a)本発明の宿主細胞を、前記宿主細胞における多価不飽和脂肪酸の産生を可能にする条件下で培養するステップと、
b)前記宿主細胞から前記多価不飽和脂肪酸を得るステップと、
を含む方法を包含する。
【0056】
本発明において使用する「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」という用語は、少なくとも2個、好ましくは、3個、4個、5個、または6個の二重結合を含む脂肪酸を指す。さらに、そのような脂肪酸が、脂肪酸鎖中に好ましくは18〜24個の炭素原子を含むことは理解されるべきである。より好ましくは、この用語は、脂肪酸鎖中に20〜24個の炭素原子を有する長鎖PUFA(LCPUFA)に関する。本発明の意味における好適な不飽和脂肪酸は、DGLA 20:3(8,11,14)、ARA 20:4(5,8,11,14)、iARA 20:4(8,11,14,17)、EPA 20:5(5,8,11,14,17)、DPA 22:5(4,7,10,13,16)、DHA 22:6(4,7,10,13,16,19)、20:4(8,11,14,17)からなる群から選択され、より好ましくはアラキドン酸(ARA) 20:4(5,8,11,14)、エイコサペンタエン酸(EPA) 20:5(5,8,11,14,17)、およびドコサヘキサエン酸(DHA) 22:6(4,7,10,13,16,19)である。したがって、最も好ましくは、本発明によって提供される方法が、ARA、EPA、またはDHAの製造に関連することが理解されるであろう。さらに、合成中に生じるLCPUFAの中間体も包含される。そのような中間体は、好ましくは、本発明のポリペプチドのnECR活性によって基質から形成される。好ましくは、基質は、LA 18:2(9,12)、GLA 18:3(6,9,12)、DGLA 20:3(8,11,14)、ARA 20:4(5,8,11,14)、エイコサジエン酸 20:2(11,14)、エイコサテトラエン酸 20:4(8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸 20:5(5,8,11,14,17)を包含する。
【0057】
本明細書において使用する「培養する」という用語は、宿主細胞をそれらの細胞が前記多価不飽和脂肪酸、すなわち上記のPUFAおよび/またはLCPUFAを産生することを可能にする培養条件下に維持し、成長させることを指す。このことは、本発明のポリヌクレオチドが、nECR活性が存在するように、宿主細胞において発現されることを示唆している。宿主細胞を培養するための適切な培養条件は、下記により詳細に記載する。
【0058】
本発明において使用する「得る」という用語は、宿主細胞と培地とを含む細胞培養物の供給、ならびに膜リン脂質として、またはトリアシルグリセリドエステルとして、多価不飽和脂肪酸、好ましくは、ARA、EPA、DHAを遊離形態または−CoA結合形態で含む、その精製または部分精製された製剤の供給を包含する。より好ましくは、PUFAおよびLCPUFAは、トリグリセリドエステルとして、例えば油の形態で得られる。精製技法のさらなる詳細は、以下の他の部分に記載する。
【0059】
本発明の方法において使用する宿主細胞は、宿主生物に応じて、当業者が精通している方法で成長または培養される。通常、宿主細胞は、通常は糖類の形態の炭素源と、通常は有機窒素源の形態、例えば酵母エキスまたは硫酸アンモニウム塩などの塩の形態の窒素源と、微量元素、例えば鉄、マンガン、およびマグネシウムの塩、および適切な場合にはビタミンを含む液体培地中で、生物の種類に応じて、酸素雰囲気または嫌気性雰囲気下、温度0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃で成長させる。液体培地のpHは、一定に維持(すなわち、培養期間中に調整)しても、またはしなくてもよい。培養物は、回分式、半回分式、連続式で成長させることができる。栄養素は、発酵の開始時に供給しても、あるいは半連続的にまたは連続的に与えてもよい。産生されたPUFAまたはLCPUFAは、当業者に既知の方法によって、例えば抽出、蒸留、結晶化、適切な場合には塩による沈殿、および/またはクロマトグラフィーによって、上述のような宿主細胞から単離することができる。精製前に、宿主細胞を破壊する必要があるかもしれない。そのために、宿主細胞を事前に破壊しておいてもよい。使用する培地は、問題の宿主細胞の要件を適切に満たさなければならない。本発明による宿主細胞として使用することができる種々の微生物のための培地の説明は、American Society for Bacteriology(米国ワシントンD.C.、1981年)の教本「Manual of Methods for General Bacteriology」に記載されている。また、培地は、さまざまな市販業者から入手することもできる。全ての培地成分は、熱またはフィルタ殺菌のいずれかによって殺菌する。全ての培地成分は、培養の開始時に存在しても、あるいは必要に応じて連続式または回分式で添加してもよい。宿主細胞に導入された本発明のポリヌクレオチドまたはベクターが、発現可能な選択マーカー、例えば抗生物質抵抗性遺伝子をさらに含む場合、培養物に選択剤、例えば導入ポリヌクレオチドの安定性を維持するための抗生物質を添加することが必要かもしれない。培養は、所望の産物の形成が最大限になるまで継続する。これは普通10〜160時間以内に達成される。発酵ブロスは、そのまま使用してもよく、あるいはさらに処理してもよい。バイオマスは、要件に応じて、分離法、例えば、遠心、濾過、傾瀉、またはこれらの方法の組み合わせによって、発酵ブロスから完全または部分的に除去してもよく、あるいは前記ブロス中に完全に残してもよい。トリグリセリドエステルとして所望のPUFAまたはLCPUFAを含む、本発明の方法によって得られる脂肪酸製剤、例えば油は、さらなる対象産物の化学合成のための出発物質としても適切である。例えば、これらを互いとの組み合わせまたは単独で使用して、医薬組成物もしくは化粧用組成物、食品、または動物飼料を製造することができる。また、所望のPUFAまたはLCPUFAを含む化学的に純粋なトリグリセリドを、上記に記載の方法によっても製造することができる。この目的で、抽出、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー、またはこれらの方法の組み合わせによって、脂肪酸製剤をさらに精製する。トリグリセリドから脂肪酸部分を分離するために、加水分解も必要となりうる。前記の化学的に純粋なトリグリセリドまたは遊離脂肪酸は、とりわけ、食品産業における応用、または化粧用組成物および薬理組成物用に適している。
【0060】
さらに、本発明は、多価不飽和脂肪酸の製造のための方法であって、
a)本発明の非ヒトトランスジェニック生物を、前記宿主細胞における多価不飽和脂肪酸の産生を可能にする条件下で培養するステップと、
b)前記非ヒトトランスジェニック生物から前記多価不飽和脂肪酸を得るステップと、
を含む方法に関する。
【0061】
さらに、上記から、前述の方法のいずれか1つのステップと、PUFAまたはLCPUFAを油、脂質、または脂肪酸組成物として配合するさらなるステップを含む、油、脂質、または脂肪酸組成物の製造のための方法も本発明に想定されることになる。好ましくは、前記油、脂質、または脂肪酸組成物は、飼料、食品、化粧品、または薬剤に使用される。したがって、PUFAまたはLCPUFAの配合は、想定される個々の製品のGMP基準に従って実施することになる。例えば、油は、植物種子から搾油機によって得られる。しかしながら、製品安全性の理由から、適用されるGMP基準によって、殺菌が要求されるであろう。同様の基準は、化粧用組成物または医薬組成物において使用される脂質または脂肪酸組成物にも適用されるであろう。製品として油、脂質、または脂肪酸組成物を配合するためのこれら全ての手段は、前述の製造に含まれる。
【0062】
また、本発明は、前述の方法によって得られる、多価不飽和脂肪酸を含む油に関する。
【0063】
「油」という用語は、トリグリセリドにエステル化された不飽和および/または飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物を指す。好ましくは、本発明のオイル中のトリグリセリドは、上述に記載したようなPUFAまたはLCPUFAを含む。エステル化PUFAおよび/またはLCPUFAの量は、好ましくはおよそ30%であり、含有量50%はより好適であり、含有量60%、70%、80%、またはそれ以上はさらに好適である。この油は、遊離脂肪酸、好ましくは、上述のPUFAおよびLCPUFAをさらに含みうる。分析の目的で、脂肪酸含有量を、例えば、エステル交換によって脂肪酸をメチルエステルに変換したあと、GC分析によって測定することができる。油または脂肪中の種々の脂肪酸の含有量は、とりわけ供給源によって異なる。しかしながら、この油は、PUFAおよび/またはLCPUFAの組成および含有量に関して、非天然組成を有するであろう。この油のトリグリセリドにおけるPUFAおよびLCPUFAのそのような独特な油組成、および独特なエステル化パターンが、上記の本発明の方法を使用することによってのみ得られるであろうことが理解されるであろう。さらに、本発明の油は、他の分子種も含んでいてよい。特に、これは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターの少量の不純物を含んでいてもよい。しかしながら、そのような不純物は、PCRなどの感度の高い技法によってのみ検出することができる。
【0064】
本申請を通して引用する全ての参考文献の内容は、全般的に、および上記に記載のそれらの具体的な開示内容に関して、参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、Thalassiosira pseudonana由来のnECRのヌクレオチド(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を示している。
【図2】図2は、Phaeodactylum tricornutum由来のnECRのヌクレオチドおよびアミノ酸配列:A)mRNAのcDNA配列(配列番号3);B)翻訳されたアミノ酸配列(配列番号4)を示している。
【図3】図3は、T. pseudonanaおよびP. tricornutum由来のnECRからのアミノ酸配列と、Saccharomyces cerevisae由来のデヒドラターゼ(YJL097W)およびエノイル−CoAレダクターゼ(YDL015C)とのアラインメントを示している。
【図4】図4は、図3からのアラインメントの相同性の表を示している。同一性表は、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen社)のAlignプログラムを用いたClustalWアラインメントによって作成した。異なる生物に由来する2つのnECRは、65%の同一性を共有するが、これら両方のnECRは、酵母由来の既知のデヒドラターゼ(YJL097w)またはエノイル−CoAレダクターゼ(YDL015C)との同一性が30%未満である。
【図5】図5は、酵母相補性アッセイによるnECR(Tp)およびnECR(Pt)の機能性評価を示している。相補性アッセイは、機能性エノイル−CoAレダクターゼを有さない、酵母Δydl015c中のnECR(Tp)およびnECR(Pt)を用いて実施した。凡例:YPD=完全培地、SD−Ura=ウラシルを含まない培地、SD−Leu=ロイシンを含まない培地、FOA=ロイシンおよび5−FOAを含有する培地;(1)tsc13ΔTrp pTSC13 URA:機能性YDL015C遺伝子を含有するベクターpTSC13で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体ΔydlO15C;(2)phs1ΔKan pPHS1 URA:機能性YJL097W遺伝子を含有するベクターpPHS1で形質転換した、デヒドラターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δyjl097w;(3)tsc13ΔTrp pESC−nECR(Tp):ベクターpESC−nECR(Tp)で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δydl015C;(4)sc13ΔTrp pESC−nECR(Pt):ベクターpESC−nECR(Pt)で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δydl015C。
【図6】図6は、nECR(Tp)を用いた長鎖PUFAの産生の向上を示している。nECR(Tp)を用いた長鎖PUFAの産生の向上。pYES−d9Elo(Ig)で形質転換した酵母(A)、またはpYES−d9ELo(Ig)+pESC−nECR(Tp)で形質転換した酵母(B)を25μMのリノレン酸(18:3Δ9,12,15)とともに、SD(−Ura−Leu)培地に供給した。48時間のインキュベーション後、酵母細胞を遠心分離し、ペレットをガスクロマトグラフ分析した。このガスクロマトグラフは、2つの異なる酵母菌株中の異なる脂肪酸であり、nECR(Tp)を含まないもの(A)とこれを含むもの(B)を示している。変換率は、以下のように計算する:(産物/基質−産物)100。
【図7】図7は、T. pseudonana細胞成分分画のWestern Blot分析を示している。M=タンパク質サイズマーカー、1=全抽出物、2=可溶性分画、3=膜分画。矢印は、2つの型のnECR(Tp)を示す。
【図8】図8は、nECR(Tp)発現酵母由来の細胞成分分画のWestern Blot分析を示している。M=タンパク質サイズマーカー、1=全抽出物、2=可溶性分画、3=膜分画。矢印は、nECR(Tp)融合タンパク質を示す。
【図9】図9は、nECR(Tp)発現酵母由来の細胞成分分画のWestern Blot分析を示している。M=タンパク質サイズマーカー、1=全抽出物、2=可溶性分画、3=膜分画。矢印は、nECR(Tp)融合タンパク質を示す。
【0066】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これは制限と解釈すべきものではない。本申請を通して引用する全ての参考文献、特許、および公開特許出願、ならびに図は、参考として本明細書で援用される。
【0067】
実施例
実施例1:生物および培養条件
半数体を再生させるために、Pan et al 2004(Molecular Cell 16:487−496)に概説されている方法を使用した。簡潔に言うと、培養物をDOB−ウラシル中で一晩成長させ、その後OD500がおよそ25の各培養物を洗浄し、新鮮培地に再懸濁させ、3時間成長させた。次いで、細胞を胞子形成培地(1%酢酸カリウム、0.005%酢酸亜鉛)に懸濁させ、5日間胞子形成し、200mg/LのG418および60mg/Lのカナバニンを含有する半数体選択MagicMediaプレート(2%ガラクトース、アミノ酸混合物−ウラシル−ロイシン−ヒスチジン−アルギニン、アミノ酸または硫酸アンモニウムを含まない0.17%窒素塩基、0.1%グルタミン酸ナトリウム)に塗布した。
【0068】
実施例2:新規のデヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ配列
PUFA産生藻類をスクリーニングして、非PUFA産生株との差を明らかにした。これらのPUFA産生株に対して特異的な、ThalassiosiraおよびPhaeodactylumに由来する配列を得た(図1および2)。酵母(YJL097WおよびYDLO15C)由来の既知のデヒドラターゼ配列およびエノイル−CoAレダクターゼ配列とのアラインメントは、低い相同性を示した(図3および4)。したがって、この新しく生成されたnECRは、新規の酵素群に相当する。相補性アッセイ(実施例3)によって、これらの配列は、デヒドラターゼおよびエノイル−CoA−レダクターゼ活性を示し、したがってnECRと命名した。
【0069】
同定された全長コード配列の一覧を第1a表および第1b表に示す。
【0070】
第1a表:全長コード配列一覧
【表2】

【0071】
第1b表:第1表に記載の配列からの推定アミノ酸の一覧
【表3】

【0072】
第1表に示すオープンリーディングフレームをStratagene社製のpESC(Leu)ベクターに、製品の反応条件に従ってクローニングした。反応物を大腸菌DH5αに形質転換し、プラスミドDNAを単離した。次にこのプラスミドpESC−nECR(Tp)、pESC−nECR(Pt)を酵母形質転換に使用した。突然変異酵母菌株Δydl015C(Δtsc13)およびΔyjl097w(Δphs1)はともに致死性であるため、これらの株をプラスミドで形質転換して、これらの突然変異体をウラシル栄養要求性マーカーURAで相補しておいた(pTSC13およびpPHS1)。URAマーカーを含有するベクターを、5−FOA(5−フルオロオロチン酸;Sadowski et al. Yeast. 2008 Aug;25(8):595−9)を用いて、酵母として除去することができる。
【0073】
実施例3:酵母形質転換および成長条件
S. C. EasyComp Transformation Kit(Invitrogen社、米国カリフォルニア州カールズバッド)を用いて、S. cerevisiae株YSC1021−674054(Open Biosystems社)を構築物pESC−nECR(Tp)、pESC−nECR(Pt)、およびpESCで形質転換し、ロイシン欠乏培地で選択した。デヒドラターゼ/エノイル−CoAレダクターゼ活性を評価するために、相補性試験を実施した。その目的で、ヘテロ接合体Magic Marker株YSC1021−674054(Open Biosystems社)を使用した。この株は、エノイル−CoAレダクターゼ活性を示さない。エノイル−CoAレダクターゼ活性は伸長脂肪酸を生じ、これらの脂肪酸は細胞の成長および分裂に必要とされるため、これらそれぞれの酵母菌株は、前記伸長脂肪酸を含有しない培地では成長しないことになる。
【0074】
以下の形質転換体が生成された:
1.tsc13ΔTrp pTSC13 URA:機能性YDL015C遺伝子を含有するベクターpTSC13で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δydt015C。
2.phsiΔKan pPHS1 URA:機能性YJL097W遺伝子を含有するベクターpPHS1で形質転換した、デヒドラターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δyjl097w。
3.tsc13ΔTrp pESC−nECR(Tp):ベクターpESC−nECR(Tp)で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δydl015C。
4.sc13ΔTrp pESC−nECR(Pt):ベクターpESC−nECR(Pt)で形質転換した、エノイル−CoAレダクターゼの機能を有さない酵母突然変異体Δydl015C。
【0075】
酵母を全てのアミノ酸およびヌクレオチドを含有する完全培地中での形質転換後に成長させる。次に、酵母を完全培地(SD)、ウラシルを含まない完全培地(SD−Ura)、ロイシンを含まない完全培地(SD−Leu)、またはロイシンを含まず、5−FOAを含有する完全培地のいずれかを含有する異なる培地に蒔く(図5)。プラスミド1および2は、SDおよびSD−Uraでは成長することができるが、SD−Leuでは、これらがLEUマーカーを有さないため成長することができない。プラスミド3および4は、SDおよびSD−Leuでは成長することができるが、SD−Uraでは、これらがURAマーカーを含まないため成長することができない。URAマーカーを有するプラスミドを除去するFOAを含有するプレートで、相補性が示された(1および2)。しかしながら、プラスミド1または2の不在下でも、プラスミド3および4を含むコロニーの成長が認められる(図5、FOA)。
【0076】
したがって、nECR(Tp)およびnECR(Pt)の両配列は、酵母3−ヒドロキシアシル−CoAデヒドラターゼ遺伝子Δydl015Cにおける致死ヌル突然変異を相補することができる。
【0077】
要約すると、欠損酵母突然変異体の相補により、配列nECR(Tp)およびnECR(Pt)が生物学的機能性を有し、エノイル−CoAレダクターゼ活性を示すことを明らかにすることができた。
【0078】
実施例4:Isochrysis galbana由来のd9−エロンガーゼと組み合わせたnECR(Tp)の発現
植物における多価不飽和脂肪酸の産生において、例えば栄養補給食品用途でのnECR(Tp)の有用性を検討するために、PUFA−エロンガーゼ成分である、Isochrysis galbana由来のd9−エロンガーゼと組み合わせて遺伝子を発現させた(国際出願第2002/077213号)。この酵素は、リノール酸またはリノレン酸(18:2Δ9,12または18:3Δ9,12,15)の伸長を触媒する。実験の目的は、nECR(Tp)の付加が、I. gatbana由来のd9−エロンガーゼの生産性を向上させるかどうかを分析することであった。その目的で、pESC−nECR(Tp)で形質転換し、DOB(−ロイシン)プレートで成長させた酵母細胞(INVSC、Invitrogen社)を実施例1に記載のように、プラスミドpYES(Ura)−d9Elo(Ig)でさらに形質転換し、DOB(−ウラシル、−ロイシン)で成長させた。ベクターpYES(Ura)はInvitrogene社から取得したものであり、ウラシルの栄養要求性を媒介する。国際出願第2002/077213に記載されるd9Elo(Ig)のオープンリーディングフレームを、製品の条件に従ってpYES2にクローニングした。対照実験として、pYESベクターのみを含有する対照酵母菌株に、pYES−d9Elo(Ig)を形質転換した。
【0079】
驚くべきことに、対照(pESC−d9Elo(Ig)と、伸長複合体(pESC−d9Elo(Ig)+pYES−nECR(Tp)の2つの成分を含有する酵母との間に、伸長産物20:3の量の差が認められた。
【0080】
図6において、nECR(Tp)遺伝子の付加が、長鎖PUFAの生産性に多大な影響を与えることが示されている。生産性は、対照実験と比較して8倍向上した。この生産性は、基質18:3(酵母培地に外部から添加)から伸長PUFA脂肪酸20:3への変換率で測定する。
【0081】
要約すると、nECRは、伸長脂肪酸、例えばヒトの健康に有益な長鎖PUFAの生産を大きく改善する。
【0082】
実施例5:酵母発現nECR(Tp)とT. pseudonana由来の天然タンパク質との比較
nECR(Tp)に対する抗体を製品の操作に従って産生しておいた(Eurogentec社、ベルギー;ペプチド抗体)。これらの抗体は、T. pseudonanaおよび酵母での異種発現におけるnECR(Tp)に対して極めて特異的である(図7および図8)。抗体を使用することにより、天然生物と異種発現との構造的な差を観察することができた(図7および図8)。
【0083】
標準プロトコルを用いて、Western Blot実験を実施した:
Biorad社製プレキャストゲルを用いて、Laemmli(1970)に従って、SDS−PAGEを実施した。ローディングバッファーとして、0.05M トリス/HCl(pH6.8)、0.1M DTT、2%(w/v) SDS、0.1% ブロモフェノールブルー、および10% グリセロールを使用した。次いで、Protean BA85 ニトロセルロース膜(Schleicher&Schuell社)を用いて、SDS−PAGEゲルをニトロセルロースにブロットした。膜への転写は、15mM Na2HPO4(pH7.2)、0.05%(w/v) SDS、20%(v/v) メタノールを含有する緩衝液を用いて、200mA、40Vで2時間実施した(Protean II、Biorad社)。免疫学的検査の目的で、5%(w/v)粉乳を含むPBS(0.14M NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4(pH7.4))中で、この膜を1時間ブロッキングした。nECR(Tp)に対する抗体を含有する血清を濃度1:2000で添加し、4℃で一晩インキュベートした。抗体を検出するために、この膜をPBSで3回洗浄し、5%(w/v)粉乳を含むPBSで、30分間再びブロッキングした。1単位の二次抗体(Biorad社の抗ウサギセイヨウワサビペルオキシダーゼ)を添加し、さらに30分間インキュベートした。PBSで3回洗浄したあと、この膜をECL溶液に浸漬し、1分間インキュベートした。次いで、この溶液をティッシュペーパーで拭き取り、膜をサランラップで包んだ。BioIlluminator(LKB社)で化学発光の検出を行なった。
【0084】
T. pseudonanaからタンパク質を単離するために、F2培地で培養物500mLを20℃で14日間インキュベートした(T. pseudonanaの成長条件および培地は、Tonon et al.(Tono 2005, FEBS J. 272:3401−3412)に記載されているとおりに使用した)。藻類を遠心分離(10分、5000×g)で回収し、ペレットを乳鉢に入れた。乳棒を用いて、微粉を作成した。この粉末を50mM トリス/HCl(pH8.0)、2mM EDTAで懸濁させ、2層のMiracloth(Merck社)または他の任意の濾過膜で濾過した。次に、この濾過生成物を分取し、アリコート50μLをSDS−PAGEローディングバッファー(上記参照)と混合した。
【0085】
T. pseudonanaにおけるWestern Blotによって検出されたnECR(Tp)の分析は(図7)、nECR(Tp)のタンパク質が、細胞残屑、可溶性分画、および膜分画でも認められることを明らかにした。驚くべきことに、T. pseudonanaにおいて、主な形態は、エノイル−CoAレダクターゼ活性(ECR)のみを含有する切断型である。ECRドメインの証拠は、ECRドメイン中の抗体の結合部位の位置から推定される。nECR(Tp)のより大きい融合タンパク質は、可溶性分画において少量認められるのみである。膜分画においては、より長い曝露時間を経てもnECR(Tp)は認められなかった。
【0086】
したがって、T. pseudonanaにおいて、cDNA(配列番号1)から推定されるタンパク質と、ECRドメインのみを含有する、翻訳後修飾されたより短い型との2つの型のnECR(Tp)があるという結論を出すことができる。ECRドメインのみが膜結合性であり、したがって正確に局在化される(エロンガーゼ複合体におけるECRの機能性は、ミクロゾーム膜で生じる(Napier 2007, Annu Rev Plant Biol 58:295−319))。
【0087】
酵母におけるnECR(Tp)の異種発現では、異なる状態を観察することができる。実施例4に記載したように、pESC−nECR(Tp)を含む酵母をタンパク質抽出に使用した。酵母を50mlの培養物として28℃で3日間成長させ、遠心分離(10分、5000×g)によってペレットを回収した。ペレットを分取し、液体窒素で凍結させ、Qiagen/Treschミルシステムと適合するスチールビーズを加えた。細胞破壊するために、ペレットを5分間Treschミルにかけた。30分間の100000×g遠心分離ステップにより、全細胞抽出物を可溶性分画と膜分画とに分離した。ペレットは膜分画を、上澄みは可溶性分画を構成する。3つの分画全てに、上述のようにSDS−PAGEおよびWestern分析を行ない、分析した(図8)。酵母において、nECR(Tp)の切断は観察することができなかった。分子量から、この酵母は、およそ86kDaに達する融合タンパク質を発現していたが、これはT. pseudonana中のnECR(Tp)に匹敵する。59kDaのECR切断型は存在しない。したがって、nECR(Tp)は、酵母KO突然変異体を相補することから(実施例3)、その非切断形態で完全に機能し、それにより新しいタンパク質群に相当すると結論することができる。さらに、可溶性分画およびミクロソーム分画を詳細に分析して、nECR(Tp)の可溶性分画があるかどうかを確認した(図9)。再び、上澄みとミクロソーム分画とをゲルにロードし、より長い時間曝露した。nECR(Tp)は可溶性分画において認められず、ここでもT. pseudonana由来の天然型との構造的な差を示している。
【0088】
結論として、驚くべきことに伸長複合体(ECRおよびDH)の2つの酵素活性を含有する新しい融合タンパク質が発見された。配列番号1は、T. pseudonana中の天然タンパク質とは異なる構造的特性を有する機能性融合タンパク質としての異種系における発現をもたらす。
【0089】
実施例6:植物におけるnECR(Tp)およびnECR(Pt)の発現
T. pseudonanaおよびP. tricornutumに由来する新規のnECRを、国際出願第2003/093482号、国際出願第2005/083093号、または国際出願第2007/093776号に記載されているように、植物形質転換ベクターにクローニングする。例となる遺伝子の適切な組み合わせは、第3表、第4表、および第5表に記載する。
【0090】
第3表:ARA産生のための遺伝子の組み合わせ
【表4】

【0091】
第4表:EPA産生のための遺伝子の組み合わせ
【表5】

【0092】
第5表:DHA産生のための遺伝子の組み合わせ
【表6】

【0093】
トランスジェニック菜種系統をDeblaere et al, 1984, Nucl. Acids. Res. 13, 4777−4788に記載されているように生成し、トランスジェニック菜種植物の種子をQiu et al. 2001, J. Biol. Chem. 276, 31561−31566に記載されているように分析する。
【0094】
参考文献一覧
【表7】

【0095】
本明細書において引用する全ての参考文献は、開示内容全体および本明細書において具体的に言及する開示内容に関して、参考として本明細書で援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1または3に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列、
b)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、
c)a)またはb)の核酸配列と少なくとも50%が同一である核酸配列であって、nECR活性を有するポリペプチドをコードする前記核酸配列、
d)nECR活性を有し、かつa)〜c)のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも50%が同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、および
e)a)〜d)のいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列であって、nECR活性を有するポリペプチドをコードする前記核酸配列、
からなる群から選択された核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、前記核酸配列に作用可能に連結された発現制御配列をさらに含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが、前記核酸配列に作用可能に連結されたターミネーター配列をさらに含む、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドの製造のための方法であって、
a)前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で、請求項5に記載の宿主細胞を培養するステップと、
b)ステップa)の宿主細胞からポリペプチドを得るステップと、
を含む方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチド、あるいは請求項6に記載の方法によって得られるポリペプチド。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載のベクターを含む、非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項9】
植物、植物部位、または植物種子である、請求項8に記載の非ヒトトランスジェニック生物。
【請求項10】
多価不飽和脂肪酸を製造するための方法であって、
a)請求項5に記載の宿主細胞を、前記宿主細胞における多価不飽和脂肪酸の産生を可能にする条件下で培養するステップと、
b)前記宿主細胞から前記多価不飽和脂肪酸を得るステップと、
を含む方法。
【請求項11】
多価不飽和脂肪酸を製造するための方法であって、
a)請求項8または9に記載の非ヒトトランスジェニック生物を、前記宿主細胞における多価不飽和脂肪酸の産生を可能にする条件下で培養するステップと、
b)前記非ヒトトランスジェニック生物から、前記多価不飽和脂肪酸を得るステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記多価不飽和脂肪酸が、アラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、またはドコサヘキサエン酸(DHA)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1つに記載の方法のステップと、前記多価不飽和脂肪酸を油、脂質、または脂肪酸組成物として配合するさらなるステップを含む、油、脂質、または脂肪酸組成物を製造するための方法。
【請求項14】
前記油、脂質、または脂肪酸組成物が、飼料、食品、化粧品、または薬剤に使用される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項10から12のいずれか1つに記載の方法によって得られる多価不飽和脂肪酸を含む油。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−529277(P2012−529277A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514410(P2012−514410)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056936
【国際公開番号】WO2010/142522
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(510197771)ロザムステッド リサーチ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ROTHAMSTED RESEARCH LIMITED
【Fターム(参考)】