説明

新規エポキシ化合物とその製造方法

【課題】新規エポキシ化合物とその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式


(上式中、RおよびRは水素原子、炭素数1から6までのアルキル基または炭素数1から4までのトリアルキルシリル基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはフルオロアルキル基を表し、そしてnは0または正の整数を表す)でもって代表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、粉体塗料等の原料用途に有用である新規エポキシ化合物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物は、種々の硬化剤で硬化させることにより機械的性質、耐湿性、電気的性質等に優れた硬化物を与えるので、電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、粉体塗料等の幅広い分野に利用されている。また、エポキシ化合物には、技術の進歩に伴って、耐熱性等に対する高い性能が求められてきた。
【0003】
これまでにも、耐熱性を向上させる目的で、イミド構造を有するN−(2,3−エポキシプロピル)パーヒドロ−4,5−エポキシフタルイミドが提案されている(R. Antoni et al., Makromol. Chem., 194, 411 (1993)参照)が、この方法は、中間体の製造工程でエピクロルヒドリンを使用するために、最終製品にハロゲン残渣が混入することを避けることができず、ハロゲン残渣を極限まで少なくすることが望まれる電子材料用途の製品の製造方法としては好ましくない。
【0004】
一方、エポキシ基含有有機基を有するオルガノポリシロキサンとして、分子鎖末端または分子鎖側鎖に3−グリシドキシプロピル基または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基を有するオルガノポリシロキサンまたは環状シロキサンが提案されている(特開平3−255130号公報参照)。
【非特許文献1】R. Antoni et al., Makromol. Chem., 194, 411 (1993)
【特許文献1】特開平3−255130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、粉体塗料等の原料用途に有用である新規エポキシ化合物を提供する必要性が未だ存在する。
本発明者らは、前記の必要性を満たすために鋭意検討を行った結果、以下の一般式
【0006】
【化1】

【0007】
(上式中、RおよびRは水素原子、炭素数1から6までのアルキル基または炭素数1から4までのトリアルキルシリル基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはフルオロアルキル基を表し、そしてnは0または正の整数を表す)、および以下の一般式
【0008】
【化2】

【0009】
(上式中、Rは前記規定に同一のものを表し、Rは水素原子、炭素数1から6までのアルキル基または炭素数1から4までのトリアルキルシリル基を表し、そしてnは0または正の整数を表す)で表される新規エポキシ化合物を見出すに至った。
具体的には、本願発明は、以下の[1]〜[11]に記載する通りのものである。
[1]以下の一般式(I)
【0010】
【化3】

【0011】
(上式中、Yは以下の式
【0012】
【化4】

【0013】
で表され、ここでR、R、R、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるエポキシ化合物。
【0014】
[2]RおよびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[1]に記載のエポキシ化合物。
【0015】
[3]Rが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[1]に記載のエポキシ化合物。
【0016】
[4]以下の一般式(II)
【0017】
【化5】

【0018】
(上式中、R、R、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるオレフィン化合物を、過酸化物と反応させることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【0019】
[5]一般式(II)中、RおよびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[4]に記載の製造方法。
【0020】
[6]以下の一般式(III)
【0021】
【化6】

【0022】
(上式中、RおよびRは前記規定に同一のものを表す)で表されるエポキシ化合物を、以下の一般式(IV)
【0023】
【化7】

【0024】
(上式中、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるケイ素化合物と反応させることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【0025】
[7]一般式(III)中、RおよびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[6]に記載の製造方法。
【0026】
[8]以下の一般式(V)
【0027】
【化8】

【0028】
(上式中、R、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるオレフィン化合物を、過酸化物と反応させることを特徴とする、前記[1]または[3]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【0029】
[9]一般式(V)中、Rが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[8]に記載の製造方法。
【0030】
[10]以下の一般式(VI)
【0031】
【化9】

【0032】
(上式中、Rは前記規定に同一のものを表す)で表されるエポキシ化合物を、以下の一般式(IV)
【0033】
【化10】

【0034】
(上式中、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるケイ素化合物と反応させることを特徴とする、前記[1]または[3]に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【0035】
[11]一般式(VI)中、Rが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、前記[10]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明の新規エポキシ化合物は、電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、粉体塗料等の幅広い分野に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい形態について説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲内において様々な変形が可能であることを理解されたい。
【0038】
本発明において、前述のRとしては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基等が例示されるが、これらに限定されるものではない。Rは、より好ましくは、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基である。
【0039】
としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基等が例示されるが、これらに限定されるものではない。Rは、より好ましくは、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基である。
としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基等が例示されるが、これらに限定されるものではない。Rは、より好ましくは、水素原子、メチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基である。
【0040】
nは、好ましくは1〜500の整数である。
としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基等が例示されるが、これらに限定されるものではない。Rは、より好ましくは、水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基である。
【0041】
本発明の一般式(I)で表される新規エポキシ化合物は、一般式(II)または一般式(V)で表されるオレフィン化合物を過酸化物と反応させることによって製造することができる。
【0042】
過酸化物としては、工業的に使用可能なものであれば例外なく用いることができ、例えば、過酸化水素、過蟻酸、過酢酸、3−クロロパーオキシベンゾイックアシッド、クメンペルオキシド、ジメチルジオキシランなどのアルキルペルオキシドを用いることができる。好ましい過酸化物は、過酸化水素、過酢酸、3−クロロパーオキシベンゾイックアシッドであり、さらに好ましくは過酸化水素、過酢酸である。
過酸化物として過酸化水素を用いる場合、用いる過酸化水素水の濃度に制限はなく、濃度に応じてオレフィン化合物への反応は生起するが、一般には1〜80%、好ましくは20〜60%の範囲から選ばれる。
【0043】
過酸化水素水溶液の使用量は、特に制限はなく、使用量に応じてオレフィン化合物への反応は生起するが、一般にはオレフィン化合物に対して0.8〜10.0当量、好ましくは1.0〜3.0当量の範囲から選ばれる。
過酸化水素による酸化反応では、硫酸水素第4級アンモニウムおよび触媒量の6族金属化合物、例えば、モリブデンまたはタングステンの存在下で反応を行うことができる。
【0044】
硫酸水素第4級アンモニウムとしては、例えば、硫酸水素テトラへキシルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素エチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素セチルピリジニウム等が挙げられるが、なかでも硫酸水素テトラへキシルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム等が好ましい。これらの硫酸水素第4級アンモニウムは、単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は、基質のオレフィン化合物に対して好ましくは0.0001〜10モル%、より好ましくは0.01〜5モル%の範囲から選ばれる。
【0045】
6族金属化合物としては、モリブデンの場合、水中でモリブデン酸アニオンを生成する化合物が挙げられ、例えば、モリブデン酸、三酸化モリブデン、三硫化モリブデン、六塩化モリブデン、リンモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム二水和物、モリブデン酸ナトリウム二水和物等があるが、なかでもモリブデン酸、三酸化モリブデン、リンモリブデン酸が好ましい。タングステンの場合、水中でタングステン酸アニオンを生成する化合物が挙げられ、例えば、タングステン酸、三酸化タングステン、三硫化タングステン、六塩化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム二水和物、タングステン酸ナトリウム二水和物等があるが、なかでもタングステン酸、三酸化タングステン、リンタングステン酸、タングステン酸ナトリウム二水和物等が好ましい。これらの6族金属化合物類は、単独で使用しても、2種以上を混合使用してもよい。その使用量は、基質のオレフィン化合物に対して好ましくは0.0001〜20モル%、より好ましくは0.01〜10モル%の範囲から選ばれる。
【0046】
なお、リン酸、ポリリン酸、アミノメチルホスホン酸、リン酸ナトリウムのごとき添加剤を使用することによってこの種の触媒を改質してもよい。
過酸化水素による酸化反応による製造法においては、反応は、通常、30〜100℃の範囲で、好ましくは50〜90℃の範囲で行われる。
【0047】
過酸化物として過酢酸を用いる場合、用いる過酢酸の酢酸溶液濃度に制限はなく、一般には1〜80%、好ましくは9〜40%の範囲から選ばれる。また、過酢酸の酢酸溶液の使用量に制限はなく、オレフィン化合物に対して、一般には0.8〜10.0当量、好ましくは1.0〜2.0当量の範囲から選ばれる。
過酢酸の酢酸溶液による酸化反応は、無溶媒で行ってもよいが、溶媒を用いて行うこともできる。選ばれる溶媒としては溶解するものであればよいが、具体的にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタンおよびそれらの任意の混合物を必要に応じて用いることができ、また反応は大気下で、もしくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0048】
本発明の新規エポキシ化合物の前駆体となる一般式(II)および一般式(V)で表されるオレフィン化合物は、対応する酸無水物とジアミンからのイミド化反応により得ることができる。この反応においては、溶媒としてキシレンのほか、トルエン、メタキシレン、オルトキシレン、パラキシレン、メシチレンおよびそれらの任意の混合物を必要に応じて用いることができ、また反応は大気下で、もしくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことができる。さらに、この反応は、重合禁止剤のような添加剤を加えて実施することもできる。
【0049】
また、本発明の一般式(I)で表される新規エポキシ化合物は、一般式(III)または一般式(VI)で表されるエポキシ化合物を一般式(IV)で表されるケイ素化合物と反応させることによって製造することができる。
このヒドロシリル化反応は、触媒の存在で行うことができるが、これに用いる触媒としては公知の付加反応触媒、例えば、塩化白金酸のような白金系触媒があり、かかる触媒の存在下に加熱することにより行うことができる。一般式(III)または一般式(VI)で表されるエポキシ化合物と、一般式(IV)で表されるケイ素化合物とを反応させる際の両化合物の比率は、通常、エポキシ化合物のアリル基1個に対してケイ素化合物の−SiH基が0.001〜1.5個になる範囲内であるのがよく、好ましくは0.005〜1個の範囲内である。
【0050】
このヒドロシリル化反応においては、ベンゼン、トルエン、メチルイソブチルケトンのような不活性溶剤中で60〜140℃に加熱することが好ましい。これらの溶剤の使用量は、通常、一般式(III)または一般式(VI)のエポキシ化合物と一般式(IV)で表されるケイ素化合物の総重量に対して30〜400質量%であるのがよく、好ましくは50〜300質量%である。反応時間は通常1〜24時間であり、好ましくは2〜10時間である。反応終了後水洗を行い、加熱減圧下で溶剤を留去することにより、本発明の新規エポキシ化合物を得ることができる。
【0051】
上記した方法により得られる生成物の精製には、一般的な方法のいずれをも用いることができる。例えば、吸着分離、具体的には活性炭、酸性白土、活性白土等の吸着剤を用いる不純物や着色物質の吸着除去、あるいはカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、具体的にはシリカゲル、含水シリカゲル、アルミナ、活性炭、チタニア、ジルコニア、さらに具体的にはシリカゲル、含水シリカゲル、アルミナを充填剤としたカラムクロマトグラフィーである。また、蒸留、具体的には減圧蒸留、分子蒸留によって精製することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
参考例1
還流冷却器、温度計、ディーンスターク型水分セパレーター、攪拌装置、滴下ロートおよび油浴を備えた300ml三ツ口フラスコに、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物16.75gとキシレン146.0gを仕込んだ。窒素雰囲気下で撹拌しながら70℃に加熱して均一溶液とした後、下記式(VII)
【0053】
【化11】

【0054】
で表されるケイ素化合物41.05gを滴下ロートにより20分間かけて全量滴下し、30分間熟成させた後に、160℃まで油浴を加熱して、ディーンスターク型水分セパレーターを用いて捕集される水を取り除きながら、24時間加熱還流させた後に、室温まで冷却した。
フラスコ内の内容物からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、下記式(VIII)
【0055】
【化12】

【0056】
で示されるオレフィン化合物52.14gを微黄色透明の液体として得た。
参考例2
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下ロートおよび油浴を備えた1L四ツ口フラスコに、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物304.3gとトルエン280gを仕込んだ。これに窒素雰囲気でアリルアミン116.5gを滴下ロートにより90分間かけて全量滴下し、30分間熟成させた後に、ディーンスターク型水分セパレーターをセパラブルフラスコに装着し、140℃に保った油浴を用いて、捕集される水を取り除きながら、5時間加熱還流させた後に、室温まで冷却した。
フラスコ内の内容物からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、N−アリル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシ粗生成物344.3gを得た。減圧蒸留により精製して、N-アリル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド273.5gを無色透明の液体として得た。
【0057】
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下ロートおよび油浴を備えた50ml三つ口フラスコに、N−アリル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド100.0g、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム2.44g、タングステン酸ナトリウム二水和物3.45g、アミノメチルホスホン酸0.58gを仕込んだ。90℃に保った油浴を用いて加熱し、滴下ロートを通じて30%過酸化水素水80mlを180分間かけて滴下し、そのまま4時間熟成させた。氷浴で冷却し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液300mlで余剰の過酸化水素を除去した後に、酢酸エチル200mlで2回抽出した。得られた酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させ、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒の酢酸エチルを除去した後、25%含水シリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィーにより精製して、4,5−エポキシ−N−アリルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド78.9gを得た。
【0058】
実施例1
還流冷却器、温度計、攪拌装置、滴下ロートおよび油浴を備えた200ml三ツ口フラスコに、参考例1で得られた式(VIII)で表されるオレフィン化合物17.5gと酢酸エチル10mlを仕込んだ。
60℃に保った油浴を用いて加熱し、滴下ロートにより40%過酢酸12.0gを1時間かけて滴下し、そのまま1時間熟成させた。次いで、油浴の温度を70℃とし、さらに1時間熟成させた。氷浴で冷却し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液15mlで余剰の過酢酸を除去した後に、酢酸エチル25mlで3回抽出した。得られた酢酸エチル溶液を無水硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させ、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒の酢酸エチルを除去しカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記式(IX)
【0059】
【化13】

【0060】
で表されるエポキシ化合物18.3gを得た。
日本電子(株)製核磁気共鳴装置AL−400を用い、重クロロホルム溶媒中で、このエポキシ化合物のH−NMR,13C−NMRおよび29Si−NMRを測定して、上記の構造を確認することができた。この式(IX)で表されるエポキシ化合物のH−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRスペクトルを、それぞれ、図1、図2および図3に示す。
【0061】
実施例2
還流冷却器、ディーンスターク型水分セパレーター、温度計、攪拌装置、滴下ロートおよび油浴を備えた300ml四ツ口フラスコに、参考例2で得られた4,5−エポキシ−N−アリルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド22.8g、トルエン180g、2質量%の塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液0.05gを仕込み、140℃に保った油浴を用いて1時間還流させながら共沸脱水を行い、水が留去しないことを確認後、下記式(X)
【0062】
【化14】

【0063】
で表されるケイ素化合物36.3gを滴下ロートにより30分間かけて全量滴下した。さらに、4時間加熱還流させた後に、室温まで冷却した。3回水洗して触媒を除去後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーによって精製し、式(IX)で表されるエポキシ化合物40.2gを得た。
日本電子(株)製核磁気共鳴装置AL−400を用い、重クロロホルム溶媒中で、このエポキシ化合物のH−NMR、13C−NMRおよび29Si−NMRを測定したところ、実施例1と同様のスペクトルが得られ、これによりこのエポキシ化合物の式(IX)の構造を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の新規エポキシ化合物は、電気・電子・光学部品の封止材料、成形材料、注型材料、積層材料、複合材料、接着剤、粉体塗料などの幅広い分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1で得られた式(IX)で表されるエポキシ化合物のH−NMRスペクトルを示すチャート。
【図2】実施例1で得られた式(IX)で表されるエポキシ化合物の13C−NMRスペクトルを示すチャート。
【図3】実施例1で得られた式(IX)で表されるエポキシ化合物の29Si−NMRを示すチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)
【化1】

(上式中、Yは以下の式
【化2】

で表され、ここでRおよびRは水素原子、炭素数1から6までのアルキル基または炭素数1から4までのトリアルキルシリル基を表し、Rは同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基またはフルオロアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素数1から6までのアルキル基または炭素数1から4までのトリアルキルシリル基を表し、そしてnは0または正の整数を表す)で表されるエポキシ化合物。
【請求項2】
およびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項1に記載のエポキシ化合物。
【請求項3】
が水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項1に記載のエポキシ化合物。
【請求項4】
以下の一般式(II)
【化3】

(上式中、R、R、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるオレフィン化合物を、過酸化物と反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(II)中、RおよびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
以下の一般式(III)
【化4】

(上式中、RおよびRは前記規定に同一のものを表す)で表されるエポキシ化合物を、以下の一般式(IV)
【化5】

(上式中、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるケイ素化合物と反応させることを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
一般式(III)中、RおよびRが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかであり、かつ、Rが水素原子であるか、またはRが水素原子であり、かつ、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の一般式(V)
【化6】

(上式中、R、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるオレフィン化合物を、過酸化物と反応させることを特徴とする、請求項1または3に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(V)中、Rが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
以下の一般式(VI)
【化7】

(上式中、Rは前記規定に同一のものを表す)で表されるエポキシ化合物を、以下の一般式(IV)
【化8】

(上式中、Rおよびnは前記規定に同一のものを表す)で表されるケイ素化合物と反応させることを特徴とする、請求項1または3に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項11】
一般式(VI)中、Rが水素原子であるか、またはRがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基のいずれかである、請求項10に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−13544(P2008−13544A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140834(P2007−140834)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】