説明

新規クロメン−2−オン誘導体及びモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としてのそれらの使用

本発明は、モノアミン神経伝達物質の再取り込み阻害薬として有用な式(I)の新規クロメン−2−オン誘導体に関する。他の態様において、本発明は、治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含有する医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬として有用な新規クロメン−2−オン誘導体に関する。
【0002】
他の態様において、本発明は、治療方法におけるこれらの化合物の使用、及び本発明の化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、現在、鬱病及びパニック障害を含むいくつかのCNS障害の治療で効力を提供している。SSRIは、精神科医及び家庭医によって、一般に、有効であり、耐容性が良好で、且つ投与が簡単であると認められている。しかし、それらには、いくつかの望ましくない特徴が付随している。
【0004】
従って、ノルアドレナリン及びドーパミン再取り込み活性に対するセロトニン再取り込みの比率など、モノアミン神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン及びノルアドレナリンの再取り込みの活性に関して最適化された薬理学的プロフィールを有する化合物に対する大きな必要性が、なお存在する。
【0005】
国際公開第2006/035034号及び国際公開第2007/093604号(どちらもNeuroSearch A/S)には、クロメン−2−オン誘導体、及びモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としてのそれらの使用が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害薬としての活性を示す新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その第1態様において、本発明は、式I
【化1】


(式中、R及びQは、後に定義する通りである)の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を提供する。
【0008】
その第2の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を、少なくとも1種の薬学上許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含有する医薬組成物を提供する。
【0009】
さらなる態様において、本発明は、ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態を治療、予防又は軽減するための医薬組成物を製造するための、本発明の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0010】
よりさらなる態様において、本発明は、ヒトを含む動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減方法に関するものであり、該方法は、必要とするこのような動物の生体に、治療有効量の本発明の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を投与するステップを含む。
【0011】
当業者にとって、本発明の他の目的も以下の詳細な説明及び実施例から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
クロメン−2−オン誘導体
その第1態様において、本発明は、式I
【化2】


の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を提供し、式中、
Qは、クロメン−2−オン−イル基を表し;
該クロメン−2−オン−イル基は、1つのヘテロアリール基で置換されており;
該ヘテロアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよく;
且つ該クロメン−2−オン−イル基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基でさらに置換されていてもよく;
は、水素又はアルキルを表し;
該アルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい。
【0013】
式Iの化合物の一実施形態において、Rは、水素又はアルキルを表す。特定の実施形態において、Rは水素を表す。
【0014】
式Iの化合物のさらなる実施形態において、Qは、置換されたクロメン−2−オン−7−イル基を表す。
【0015】
式Iの化合物のよりさらなる実施形態において、Qは、3−(置換されていてもよいヘテロアリール)−クロメン−2−オン−イル基を表す。
【0016】
式Iの化合物のさらなる実施形態において、Qは、フラニル又はベンゾフラニル基で置換されたクロメン−2−オン−7−イルを表す。特定の実施形態において、Qは、フラン−2−イル又はフラン−3−イルなどのフラニルで置換されたクロメン−2−オン−7−イルを表す。さらなる特定の実施形態において、Qは、ベンゾフラン−2−イルなどのベンゾフラニルで置換されたクロメン−2−オン−7−イルを表す。
【0017】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン;
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−3−イル−クロメン−2−オン;
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−ベンゾフラン−2−イル−クロメン−2−オン;
又はそれらの薬学上許容される塩である。
【0018】
上記のような実施形態の2つ又はそれ以上の任意の組合せも、本発明の範囲に包含されると考えられる。
【0019】
置換基の定義
本発明の文脈で、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0020】
本発明の文脈で、アルキル基は、1価で飽和の直鎖又は分枝炭化水素鎖を意味する。該炭化水素鎖は、好ましくは1〜6個の炭素原子を含み(C1〜6アルキル)、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルなどが含まれる。好ましい実施形態において、アルキルは、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルなどのC1〜4アルキル基を表す。本発明の別の好ましい実施態様におい、アルキルは、C1〜3アルキル基を表し、詳細にはメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルでよい。
【0021】
本発明の文脈において、アルケニル基は、ジ−エン、トリ−エン及びポリ−エンなどの、1つ又は複数の二重結合を含む炭素鎖を意味する。好ましい実施形態において、本発明のアルケニル基は、少なくとも1つの二重結合を含めて、2〜6個の炭素原子を含む(C2〜6アルケニル)。最も好ましい実施形態において、本発明のアルケニル基は、エテニル;1−又は2−プロペニル;1−、2−又は3−ブテニル、又は1,3−ブタジエニル;1−、2−、3−、4−又は5−ヘキセニル、又は1,3−ヘキサジエニル、又は1,3,5−ヘキサトリエニルである。
【0022】
本発明の文脈において、アルキニル基は、ジ−イン、トリ−イン及びポリ−インなどの、1つ又は複数の三重結合を含む炭素鎖を意味する。好ましい実施形態において、本発明のアルキニル基は、少なくとも1つの三重結合を含めて、2〜6個の炭素原子を含む(C2〜6アルキニル)。その最も好ましい実施形態において、本発明のアルキニル基は、エチニル;1−又は2−プロピニル;1−、2−又は3−ブチニル、又は1,3−ブタジイニル;1−、2−、3−、4−ペンチニル、又は1,3−ペンタジイニル;1−、2−、3−、4−又は5−ヘキシニル、又は1,3−ヘキサジイニル、又は1,3,5−ヘキサトリイニルである。
【0023】
本発明の文脈において、シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルなどの、好ましくは3〜7個の炭素原子を含む環状アルキル基(C3〜7シクロアルキル)を意味する。
【0024】
アルコキシは、O−アルキル(ここで、アルキルは前に定義した通り)である。
【0025】
シクロアルコキシは、O−シクロアルキル(ここで、シクロアルキルは前に定義した通りである)を意味する。
【0026】
シクロアルキルアルキルは、前記の通りのシクロアルキル及び前記の通りのアルキルを意味し、例えばシクロプロピルメチルを意味する。
【0027】
アミノは、NH、NH−アルキル、又はN−(アルキル)(ここで、アルキルは前に定義した通り)である。
【0028】
本発明の文脈において、ヘテロアリール基は、その環構造中に1つ又は複数のヘテロ原子を有する芳香族の単環式又は二環式複素環基を意味する。好ましいヘテロ原子には、窒素(N)、酸素(O)及び硫黄(S)が含まれる。
【0029】
本発明の好ましい単環式ヘテロアリール基には、例えば限定はされないが、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、又はピリダジニルなどの、芳香族で5−又は6−員の複素環単環式基が含まれる。
【0030】
本発明の好ましい二環式ヘテロアリール基には、例えば限定はされないが、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[d]イソチアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、及びインデニルが含まれる。
【0031】
薬学上許容される塩
本発明の化合物は、意図された投与に適した任意の形態で提供できる。適切な形態には、本発明の化合物の薬学上(即ち、生理学上)許容される塩、及びプレ−又はプロドラッグの形態が含まれる。
【0032】
薬学上許容される付加塩の例には、限定はされないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩などの非毒性無機酸及び有機酸付加塩が含まれる。このような塩は、当技術分野で周知であり且つ記載されている方法によって形成できる。
【0033】
薬学上許容されるとは考え難いシュウ酸などのその他の酸も、本発明の化合物及びその薬学上許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩を調製するのに有用である可能性がある。
【0034】
本発明の化合物の薬学上許容されるカチオン塩の例には、限定はされないが、アニオン基を含む本発明の化合物のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩、コリン塩、リシン塩、及びアンモニウム塩などが含まれる。このようなカチオン塩は、当技術分野で周知であり且つ記載されている方法により形成できる。
【0035】
本発明の文脈で、N含有化合物の「オニウム塩」も、薬学上許容される塩と考えられる。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が含まれる。
【0036】
本発明の化合物のプレ−又はプロドラッグ形態の例には、親化合物の1つ又は複数の反応性のある又は誘導体化できる基の位置で修飾された化合物などの、本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれる。特に重要なのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基の位置で修飾された化合物である。適切な誘導体の例は、エステル又はアミドである。
【0037】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学上許容される溶媒と一緒に、溶解できる又は溶解できない形態で提供できる。可溶性形態としては、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、三水和物、四水和物などの水和された形態を挙げることもできる。一般に、可溶性形態は、本発明の目的に関して不溶性形態と等価と考えられる。
【0038】
立体異性体
当業者は、本発明の化合物が、エナンチオマー、ジアステレオマー及びシス−トランス異性体などの様々な立体異性形で存在できることを認識するであろう。
【0039】
例えば、式Iの基−O−Qは、詳細には、アザビシクロ環に関してエキソ又はエンドの立体配座で存在できる。
【0040】
本発明は、すべてのこのような立体異性体、及びラセミ混合物などの任意のその混合物を含む。
【0041】
ラセミ形は、周知の方法及び技術によって光学的対掌体に分割できる。エナンチオマー化合物(エナンチオマー性中間体を含む)の1つの分離法は、該化合物がキラルな酸であるなら、光学活性アミンを使用すること、及びジアステレオマー性の分割された塩を酸処理で遊離させることによる。ラセミ化合物を光学的対掌体に分割する別の方法は、光学活性マトリックスでのクロマトグラフィーに基づく。本発明のラセミ化合物は、従って、例えば、D−又はL−塩(酒石酸塩、マンデル酸塩又はカンファースルホン酸塩)の分別結晶によってそれらの光学的対掌体に分割できる。
【0042】
本発明の化合物は、また、本発明の化合物と(+)又は(−)フェニルアラニン、(+)又は(−)フェニルグリシン、(+)又は(−)カンファー酸から誘導されるような光学的に活性な活性化カルボン酸との反応によりジアステレオマー性アミドを形成することによって、或いは本発明の化合物と光学活性クロルギ酸エステルなどとの反応によりジアステレオマー性カルバミン酸エステルを形成することによって分割できる。
【0043】
光学異性体のさらなる分割方法も、当業界で周知である。このような方法には、Jaques J、Collet A及びWilen Sが「エナンチオマー、ラセミ体及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」John Wiley and Sons、New York(1981)中に記載している方法が含まれる。
【0044】
光学活性化合物は、光学的に活性な出発原料から調製することもできる。
【0045】
標識された化合物
本発明の化合物は、それらを標識した形態又は未標識の形態で使用できる。本発明の文脈において、標識された化合物は、天然に通常的に見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって取り替えられた1つ又は複数の原子を有する。標識することにより、該化合物の容易な定量的検出が可能になる。
【0046】
標識された本発明の化合物は、各種の診断方法における診断ツール、放射性トレーサー、又はモニタリング剤として、及びインビボでの受容体画像化のために有用である可能性がある。
【0047】
標識された本発明の化合物は、好ましくは、標識として少なくとも1種の照射性核種を含む。陽電子を放射する放射性核種は、すべて、使用の候補となる。本発明の文脈において、放射性核種は、好ましくは、H(重水素)、H(三重水素)、11C、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択される。
【0048】
標識された本発明の化合物を検出するための物理的方法は、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子画像化コンピューター断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴画像法(MRI)及びコンピューターX線体軸撮影法(CAT)、又はこれらの組合せから選択できる。
【0049】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成に関する通常の方法、例えば、実施例中に記載の方法によって調製できる。本出願中に記載の方法のための出発原料は、既知であるか、或いは市販の化学薬品から通常の方法で容易に調製できる。
【0050】
また、本発明のある化合物は、通常の方法を使用して、本発明の別の化合物に転換できる。
【0051】
本明細書中に記載の反応の最終生成物は、通常の技術、例えば、抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどによって単離できる。
【0052】
生物学的活性
本発明の化合物を、例えば国際公開第97/30997号(NeuroSearch A/S)に記載のように、シナプトソーム中でモノアミン類であるドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込みを阻害するそれら化合物の能力についてテストすることができる。これらの試験で観察されるバランスの取れた活性に基づいて、本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態を治療、予防又は軽減するのに有用であると考えられる。
【0053】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、気分障害、鬱病、非定型鬱病、疼痛に続発する鬱病、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、全般的医療状態による気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンサー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、肥満、不安、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症、認知症、加齢性認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、後天性免疫不全症候群複合型認知症、加齢性記憶機能不全、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、慢性ストレス障害、薬物耽溺、薬物乱用、薬物乱用傾向、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール耽溺、アルコール依存症、窃盗癖、耽溺性物質の使用停止により引き起こされた離脱症状、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、糖尿病性神経因性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病に付随する疼痛、線維筋痛症、関節炎、骨関節炎、リウマチ様関節炎、背部痛、癌痛、過敏性腸痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、発作後疼痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経性持続性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋筋膜性疼痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、月経前不快気分障害、後期黄体期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、持続的植物状態、尿失禁、ストレス性尿失禁、切迫性尿失禁、夜間尿失禁、性機能不全、早漏症、勃起困難、勃起不全、早期女性オルガスム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、発作後鬱病、発作誘発性脳傷害、発作誘発性神経傷害、ジル・ド・ラ・トゥレット病、耳鳴、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害又は発作後能力障害の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられる。好ましい実施形態において、該化合物は、鬱病の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられる。
【0054】
現在の時点で、活性のある医薬成分(API)の適切な投与量は、約0.1〜約1000mgAPI/日、より好ましくは約10〜約500mgAPI/日、最も好ましくは約30〜約100mgAPI/日の範囲内にあると考えられるが、正確な投与方式、それを投与する形態、考慮されている適応症、対象及び特に関与する対象の体重、さらに担当の医師又は獣医師の選好及び経験によって左右される。
【0055】
好ましい本発明の化合物は、マイクロモル未満及びマイクロモルの領域、即ち1未満〜100μMで生物学的活性を示す。
【0056】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物を含有する新規医薬組成物を提供する。
【0057】
治療で使用するための本発明の化合物は、そのままの化合物の形態で投与することができるが、任意選択で生理学上許容される塩の形態の該活性成分を、1種以上のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又はその他の通例的医薬補助剤と一緒に医薬組成物中に導入することが好ましい。
【0058】
好ましい実施態様において、本発明は、本発明の化合物、又はその薬学上許容される塩若しくは誘導体を、1種又は複数の薬学上許容される担体、及び任意選択で、当技術分野で周知であり且つ使用されているその他の治療用及び/又は予防用成分と一緒に含有する医薬組成物を提供する。担体(群)は、該製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容」されなければならず、且つその受容者に対して有害であってはならない。
【0059】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、鼻腔、肺、局所(口内及び舌下を含む)、経皮、膣、又は非経口(皮膚、皮下、筋内、腹膜内、静脈内、動脈内、大脳内、眼内の注射又は点滴を含む)投与に適した組成物、或いは粉末及び液体のエアロゾル投与を含む吸入又は吹込みによって、或いは徐放システムによって投与するのに適した形態の組成物でよい。徐放システムの適切な例には、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、該マトリックスは、成型された物品の形態、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態でよい。
【0060】
従って、本発明の化合物を、通常のアジュバント、担体又は希釈剤と一緒にして、医薬組成物及びその単位投与量の形態中に配置できる。このような形態には、すべて経口で使用するための、固体、特に、錠剤、充填カプセル、粉末及びペレット形態;及び液体、特に水溶液又は非水溶液、懸濁液、乳剤、エレキシル、及びそれらを充填したカプセル(すべて経口用);直腸投与のための坐剤;及び非経口で使用するための無菌の注射可能な溶液が含まれる。このような医薬組成物及び単位剤形は、通常の成分を通常の比率で、追加的な活性化合物又は成分を含めて又は含めずに、含有することができ、このような単位剤形は、採用予定の意図した1日当たり投与量範囲にふさわしい任意の適切な有効量の活性成分を含むことができる。
【0061】
本発明の化合物は、広範な種類の経口及び非経口剤形で投与できる。当業者にとって、次の剤形が、活性成分として、本発明の化合物、又は本発明の化合物の薬学上許容される塩を含むことができることは明らかであろう。
【0062】
本発明の化合物から医薬組成物を調製する場合、薬学上許容される担体は、固体又は液体のどちらでもよい。固体形態の製剤としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料として機能を発揮することもできる1種又は複数の物質でよい。
【0063】
散剤において、担体は、微細な固体であり、それは、微細な活性成分との混合物の状態で存在する。
【0064】
錠剤において、活性成分は、必要な結合能力を有する担体と適切な比率で混合され、所望の形状及び大きさに圧縮される。
【0065】
散剤及び錠剤は、好ましくは、5%又は10%から約70%の活性化合物を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖類、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。用語「製剤」は、カプセルを準備する担体としてのカプセル化材料を含めた活性成分の製剤を含むと意図され、該カプセル中で、活性化合物は、担体を含めて又は担体を含まないで、担体によって取り囲まれ、かくして該活性化合物はカプセルと提携状態にある。同様に、カシェ剤及びトローチ剤が含まれる。経口投与に適した固体形態として、錠剤、散剤、カプセル、丸剤、カシェ剤、及びトローチ剤を使用できる。
【0066】
坐剤を調製するには、脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物などの低融点ワックスを、先ず溶融し、攪拌しながらその中に活性成分を均一に分散させる。次いで、溶融した均一混合物を都合のよい大きさの鋳型に注ぎ、放冷し、それによって固化する。
【0067】
膣内投与に適した組成物は、活性成分に加え、適切であることが当技術分野で周知であるような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡物又はスプレーとして提供できる。
【0068】
液体製剤には、液剤、懸濁剤、及び乳剤、例えば、水又は水−プロピレングリコール溶液剤が含まれる。例えば、非経口注射用液体製剤は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液剤として製剤できる。
【0069】
かくして、本発明による化合物を、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は連続点滴による)用に製剤し、アンプル、事前充填シリンジ、小量点滴、又は保存剤を添加した複数回投与容器中の単位投与形態で提供できる。組成物は、懸濁剤、溶液剤、又は油性又は水性ビヒクル中の乳剤のような形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤用薬剤を含むことができる。別法として、活性成分は、適切なビヒクル、例えば無菌のパイロジェン不含水を用いて使用前に構成するために、滅菌固体の無菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態でよい。
【0070】
経口での使用に適した水溶液は、活性成分を水に溶解すること、及び所望される場合には、適切な着色剤、風味剤、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製できる。
【0071】
経口での使用に適した水性懸濁液は、微細な活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はその他周知の懸濁剤などの粘性材料と共に水中に分散させることによって調製することができる。
【0072】
また、使用直前に経口投与のための液体形態の製剤に転換することを意図した固体形態の製剤も含まれる。このような液体形態には、溶液剤、懸濁剤、及び乳剤が含まれる。活性成分に加え、このような製剤は、着色剤、風味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含むことができる。
【0073】
表皮に対する局所投与のためには、本発明の化合物を、軟膏、クリーム又はローションとして、或いは経皮パッチとして製剤できる。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を加えた水性又は油性基剤を用いて製剤できる。ローションは、水性又は油性基剤を用いて製剤することができ、一般には、1種又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤も含む。
【0074】
口内での局所投与に適した組成物には、風味を付けた基剤、通常的には蔗糖及びアラビアゴム又はトラガカントゴム中に活性薬剤を含むトローチ剤;ゼラチンとグリセリン又は蔗糖とアラビアゴムなどの不活性基剤中に活性成分を含むトローチ剤(pastille);並びに適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が含まれる。
【0075】
溶液剤又は懸濁剤は、鼻腔内へ、通常の手段、例えば、点滴器、ピペット又はスプレーによって直接的に適用される。組成物は、1回又は複数回投与の形態で提供できる。
【0076】
気道への投与は、活性成分が、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切なガスなどの適切な噴射剤と共に加圧容器中に準備されるエアロゾル製剤の手段によって達成することもできる。エアロゾルは、好都合には、レシチンなどの界面活性剤を含むこともできる。薬物の用量は、計量バルブを備えることによって調節できる。
【0077】
別法として、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、及びポリビニルピロリドン(PVP)などの適切な粉末基剤中での化合物の粉末混合物の形態で提供できる。好都合には、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、吸入器の手段で粉末を投与できる、例えば、ゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又はブリスターパックの状態の単位投与形態で提供できる。
【0078】
鼻腔内組成物を含む気道への投与を意図した組成物において、該化合物は、一般に、例えば5μ以下の桁の小さな粒子径を有する。このような粒子径は、当技術分野で周知の手段、例えばミクロ化によって得ることができる。
【0079】
所望であれば、活性成分の徐放出を付与するように構成された組成物を採用できる。
【0080】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。このような形態において、製剤は、適切な量の活性成分を含む単位用量に再分割される。単位剤形は、包装された製剤、包装された錠剤、カプセル、及びバイアル瓶又はアンプル中の粉末などの、別々の量の製剤を含むパッケージでよい。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤又はトローチ剤自体でよく、或いはそれは、包装された形態中の適切な数の任意のこれらでよい。
【0081】
経口投与のための錠剤又はカプセル、並びに静脈内投与及び連続点滴のための液剤は、好ましい組成物である。
【0082】
製剤及び投与のための技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、Easton、ペンシルベニア州)の最新版中に見出すことができる。
【0083】
治療上有効な用量は、症状又は状態を改善する活性成分の量を指す。治療効力及び毒性、例えばED50及びLD50は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬理学的方法によって判定できる。治療効果と毒性効果との間の用量比率が、治療指数であり、比率LD50/ED50で表現される。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0084】
投与される用量は、もちろん、治療される個体の年齢、体重及び状態、並びに投与経路、剤形及び投与計画、及び所望される結果に注意深く適合させなければならず、且つ正確な投与量は、もちろん開業医によって決定されるべきである。
【0085】
実際の投与量は、治療される疾患の本質及び重症度により左右され、医師の裁量に包含され、所望の効果を生み出すために、本発明の個々の状況に対する投与量を増減することによって変更できる。しかし、現在のところ、1単位の用量につき約0.1〜約500mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの活性成分を含む医薬組成物が、治療処置に適していると考えられる。
【0086】
活性成分は、1日に1回又は数回の投与で投与できる。満足できる結果は、いくつかの例で、静脈内で0.1μg/kg、及び経口で1μg/kgのような低い投与量で得ることができる。投与量範囲の上限は、現在のところ、静脈内で約10mg/kg、経口で約100mg/kgであると考えられる。好ましい範囲は、静脈内で約0.1μg/kg〜約10mg/kg/日、経口で約1μg/kg〜約100mg/kg/日である。
【0087】
治療方法
別の態様において、本発明は、ヒトを含む動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に対して応答する疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減方法を提供し、該方法は、必要とするヒトを含むこのような動物の生体に、有効量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0088】
現在の時点で、適切な投与量範囲は、1日に0.1〜1000mg、10〜500mg、特に30〜100mgと考えられており、通常通り、正確な投与方式、投与される形態、投与が指示される適応症、関与する対象、及び関与する対照の体重、さらに担当する医師又は獣医師の選好及び経験によって左右される。
【実施例】
【0089】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに説明するが、該実施例は、特許を請求する本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図しない。
【0090】
準備的実施例
空気に敏感な試薬又は中間体を含む反応は、すべて、窒素下に無水溶媒中で実施した。後処理中の乾燥剤としては硫酸マグネシウムを使用し、溶媒は、減圧下で蒸発させた。
【0091】
(実施例1)
【化3】


endo−安息香酸8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルエステル
トロピン(70.6g、500ミリモル)、カリウムtert−ブトキシド(67.3g、600ミリモル)及びTHF(500ml)の混合物に、塩化ベンゾイル(84.3g、600ミリモル)を30℃未満で30分間かけて添加した。この混合物を室温で2時間攪拌した。水(1L)を添加し、続いて、ジエチルエーテル(2×500ml)で抽出した。有機相を、水で2回(2×200ml)、続いて塩化ナトリウム飽和水溶液(200ml)で洗浄した。エーテル相を乾燥し、塩酸/エタノール(170ml、3M)を添加した。沈殿した塩酸塩を、濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。遊離塩基は、過剰のアンモニア水を添加し、続いて酢酸エチルとジエチルエーテルとの混合物で抽出することによって得られた。収量66.8g(54%)。
【0092】
【化4】


endo−安息香酸8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルエステル
endo−安息香酸8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルエステル(66.8g、272ミリモル)と乾燥トルエン(500ml)との混合物にクロロギ酸2,2,2−トリクロロエチル(75.0ml、544ミリモル)を滴加した。この混合物を室温で1時間、続いて100℃で15時間攪拌したままにした。水(250ml)を添加し、続いて1時間攪拌した。相を分離し、有機相を水で2回(2×200ml)洗浄した。中間体3−ベンゾイルオキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸トリクロロメチルエステルの混合物を、乾燥し、蒸発濃縮した。酢酸(350ml)を添加し、続いて亜鉛(53.4g、817ミリモル)を3時間にわたって添加した。水(100ml)を添加し、氷を添加して冷却し、濃アンモニア水(約400ml)を添加してアルカリ性とし、混合物をジクロロメタン(2×300ml)で抽出した。収量44.5g(61%)。
【0093】
【化5】


endo−3−ベンゾイルオキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル
endo−安息香酸8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルエステル(44.5g、166.4ミリモル)、トリエチルアミン(67.4g、666ミリモル)及びTHF(250ml)の攪拌された混合物に、THF(100ml)に溶解した二炭酸ジ−tert−ブチル(39.9g、183ミリモル)を室温で0.5時間かけて添加し、続いて1時間攪拌した。水(1L)を添加し、混合物をジエチルエーテル(2×300ml)で抽出した。合わせたエーテル相を、水で2回(2×200ml)洗浄し、乾燥し、蒸発濃縮した。収量60.1g(100%)。
【0094】
【化6】


endo−3−ヒドロキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル
endo−3−ベンゾイルオキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(55.0g、166ミリモル)、水酸化カリウム(11.2g、199ミリモル)及びエタノール(99%、400ml)の混合物を室温で3日間攪拌した。安息香酸カリウムを濾過により分離し、濾液を蒸発濃縮した。ジエチルエーテル(200ml)を添加し、残留している安息香酸カリウムを濾過により分離し、濾液を蒸発濃縮した。生成物を石油と一緒に磨り潰した。収量30.0g(80%)。Mp139.5〜140.8℃。
【0095】
【化7】


exo−7−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン
トリフェニルホスフィン(7.5g、28.6ミリモル)をジオキサン(70ml)に溶解し、8℃まで冷却した。この混合物にアゾジカルボン酸ジエチル(5.0g、28.6ミリモル)を15℃未満で添加し、続いて15分間攪拌した。混合物に、endo−3−ヒドロキシ−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.0g、22.0ミリモル)及び7−ヒドロキシクマリン(4.3g、26.4ミリモル)を添加した。発熱反応であるため、温度が上昇した。混合物を室温で15時間攪拌したままにした。水(200ml)を添加し、続いてジエチルエーテル(2×100ml)で抽出した。混合物を、乾燥し、蒸発濃縮した。溶媒としてジクロロメタン+5%メタノールを用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーを行った。粗生成物をジエチルエーテル(200ml)に溶解し、水酸化ナトリウム水(3×200ml、1M)で洗浄した。生成物を乾燥し、蒸発濃縮した。収量5.32g(65%)。
【0096】
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]3−ブロモ−クロメン−2−オン
exo−7−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イルオキシ)−クロメン−2−オン(7.8g、21.0ミリモル)、酢酸(150ml)及び酢酸ナトリウム(5.2g、63.0ミリモル)の混合物に臭素(1.38ml、27.0ミリモル)を添加した。混合物を室温で90分間攪拌した。水(100ml)を添加した。沈殿物を、濾過し、水(10ml)、メタノール(5ml)及びジエチルエーテル(20ml)で洗浄した。収量7.5g(79%)。
【0097】
方法A
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン塩酸塩
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−ブロモ−クロメン−2−オン(2.0g、4.0ミリモル)、2−フランボロン酸(0.89g、8.0ミリモル)、炭酸カリウム(1.66g、12.0ミリモル)、1,2−ジメトキシエタン(20ml)及び水(10ml)の混合物を攪拌し、アルゴンを10分間吹き込んだ。パラダサイクル(94mg、0.1ミリモル)及びPd(PPh(115mg、0.1ミリモル)を添加し、続いて還流下に2時間攪拌した。混合物を放置して室温まで冷却した。水(25ml)を添加し、沈殿した固体を濾過した。その固体と塩化水素/酢酸(20ml、1M)との混合物を3時間攪拌した。混合物を、アンモニア水を添加することによってアルカリ性とした。生成物が沈殿した。溶媒としてジクロロメタン、10%メタノール、1%アンモニア水を用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーにより純粋な遊離塩基を得た。化合物を、塩化水素/酢酸(5ml、1M)中で攪拌することによって対応する塩に転換した。収量150mg(12%)。LC−ESI−HRMSによる[M+H]+は、338.1389Daを示す。計算値338.139234Da、偏差−1ppm。
【0098】
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−3−イル−クロメン−2−オン塩酸塩
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]3−ブロモ−クロメン−2−オン及び3−フランボロン酸から方法Aに従って調製した。LC−ESI−HRMSによる[M+H]+は、338.1406Daを示す。計算値338.139234Da、偏差4ppm。
【0099】
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−ベンゾフラン−2−イル−クロメン−2−オン塩酸塩
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−tert−ブトキシカルボニル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]3−ブロモ−クロメン−2−オン及び2−ベンゾフランボロン酸から方法Aに従って調製した。LC−ESI−HRMSによる[M+H]+は、338.1554Daを示す。計算値338.154884Da、偏差1.3ppm。
【0100】
試験実施例
インビトロでの阻害活性
いくつかの化合物を、シナプトソームにおいてモノアミン神経伝達物質ドーパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)及びセロトニン(5−HT)の再取り込みを阻害するそれらの能力について、国際公開第97/16451号に記載されているように試験した。
【0101】
試験値は、IC50H−DA、H−NA、又はH−5−HTの特異的結合を50%阻害する試験物質の濃度(μM))として得られる。
【0102】
選択した本発明の化合物を試験することによって得られた試験結果を、下表に示す。
表1
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩
(式中、
Qは、クロメン−2−オン−イル基を表し;
該クロメン−2−オン−イル基は、1つのヘテロアリール基で置換されており;
該ヘテロアリール基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよく;
且つ該クロメン−2−オン−イル基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基でさらに置換されていてもよく;
は、水素又はアルキルを表し;
該アルキルは、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい)。
【請求項2】
が、水素又はアルキルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが、置換されたクロメン−2−オン−7−イル基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、3−(置換されていてもよいヘテロアリール)−クロメン−2−オン−イル基を表す、請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Qが、フラニル又はベンゾフラニル基で置換されたクロメン−2−オン−7−イルを表す、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−2−イル−クロメン−2−オン;
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−フラン−3−イル−クロメン−2−オン;
exo−7−[(1S,3S,5R)−(8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル)オキシ]−3−ベンゾフラン−2−イル−クロメン−2−オン;
又はそれらの薬学上許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
治療有効量の請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を、少なくとも1種の薬学上許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩の、医薬を製造するための使用。
【請求項9】
ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態を治療、予防又は軽減するための医薬組成物を製造するための、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
疾患、障害又は状態が、気分障害、鬱病、非定型鬱病、疼痛に続発する鬱病、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、全般的医療状態による気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンサー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴を伴わない広場恐怖症、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、肥満、不安、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症、認知症、加齢性認知症、老人性認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、後天性免疫不全症候群複合型認知症、加齢性記憶機能不全、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、慢性ストレス障害、薬物耽溺、薬物乱用、薬物乱用傾向、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール耽溺、アルコール依存症、窃盗癖、耽溺性物質の使用停止により引き起こされた離脱症状、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、糖尿病性神経因性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病に付随する疼痛、線維筋痛症、関節炎、骨関節炎、リウマチ様関節炎、背部痛、癌痛、過敏性腸痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、発作後疼痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経性持続性疼痛、三叉神経痛、歯痛、筋筋膜性疼痛、幻肢痛、過食症、月経前症候群、月経前不快気分障害、後期黄体期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、持続的植物状態、尿失禁、ストレス性尿失禁、切迫性尿失禁、夜間尿失禁、性機能不全、早漏症、勃起困難、勃起不全、早期女性オルガスム、下肢静止不能症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、発作後鬱病、発作誘発性脳傷害、発作誘発性神経傷害、ジル・ド・ラ・トゥレット病、耳鳴、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害又は発作後能力障害である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含む動物の生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態を治療、予防又は軽減する方法であって、それを必要とするこのような動物の生体に治療有効量の請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩を投与するステップを含む方法。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩。
【請求項13】
ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する疾患、障害又は状態を治療、予防又は軽減するのに使用するための、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、任意のその立体異性体又はその立体異性体の任意の混合物、或いはそれらの薬学上許容される塩。

【公表番号】特表2010−513391(P2010−513391A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542030(P2009−542030)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064130
【国際公開番号】WO2008/074797
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】