説明

新規ジアザビシクロノネン誘導体

本発明は、新規3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノネン誘導体およびこれらのエナンチオマー、並びに医薬組成物の製造における活性成分としてのこれらの使用に関する。また、本発明は、非ペプチド性の性質で、低分子量のレニン阻害剤に関する。長期作用を有し、かつ組織レニン-キマーゼ系が活性化されて、腎臓、心臓、および血管の再造形、アテローム性動脈硬化症、並びにおそらく再狭窄などの病態生理学的に変化した局所機能を引き起こす可能性のある血圧調節の範囲を越えた徴候において活性な、式(I)および(I’)の経口活性レニン阻害剤を記述する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規式(I)の化合物および式(I’)のこれらのエナンチオマーに関する。また、本発明は、化合物の製造のための方法、少なくとも1つの式(I)または(I’)の化合物を含む医薬組成物、並びに特に心血管イベントおよび腎不全におけるレニン阻害剤としてのこれらの使用を含む関連した側面に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン-アンジオテンシン系(RAS)において、生物学的に活性なアンジオテンシンII(Ang II)は、2段階機構によって産生される。高度に特異的な酵素レニンは、アンジオテンシノーゲンを切断してアンジオテンシンI(Ang I)とし、次いでこれをそれほど特異的ではないアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってさらにAng IIにプロセスする。AngIIは、AT1およびAT2と呼ばれる少なくとも2つの受容体サブタイプに対して作用することが知られている。AT1は、Ang IIの既知の機能のほとんどを伝達するようであるが、AT2の役割は、いまだ不明である。
【0003】
RASの調整は、心臓血管疾患の治療において主な進歩を意味する。ACE阻害剤およびAT1遮断薬は、高血圧症を治療するために承認されている(非特許文献1;非特許文献2)。加えて、ACE阻害剤は、腎保護のために(非特許文献3;非特許文献4)、鬱血性心不全(非特許文献5;非特許文献6)および心筋梗塞(非特許文献7)の予防に使用されている。
【0004】
レニン阻害剤を開発する理論的根拠は、レニンの特異性である(非特許文献8)。レニンに対する既知の唯一の基質は、アンジオテンシノーゲンであり、これはレニンによってのみプロセスされ得る(生理学的条件下で)。対照的に、ACEは、Ang Iの他にブラジキニンも切断することができ、セリンプロテアーゼのキマーゼによってバイパスされ得る(非特許文献9)。したがって、患者において、ACEを阻害することにより、ブラジキニン蓄積を引き起こし、咳(5〜20%)および致命的となる可能性のある血管神経性浮腫(0.1〜0.2%)を生じさせる(非特許文献10)。キマーゼは、ACE阻害剤によって阻害されない。したがって、ACE阻害剤で治療した患者でも、Ang IIの形成が依然として起こり得る。一方、AT1受容体の遮断(たとえば、ロサルタンによる)は、AT1受容体の遮断によってその濃度が有意に増大されたAng IIに対して、その他のAT受容体サブタイプ(たとえば、AT2)を過剰露出させる。要約すると、レニン阻害剤は、RASを遮断する際の有効性に関して、また安全の側面において、ACE阻害剤およびAT1遮断薬とは異なる薬学的プロフィールを示すことが予想される。
【0005】
レニン阻害剤は、これらのペプチド模倣特性のために経口活性が不十分であるので、限られた臨床経験(非特許文献11)が得られただけである(非特許文献12)。いくつかの化合物の臨床開発は、この問題と共に製品の高価格を理由として中止されている。4つのキラル中心を含む1つの化合物のみが、臨床試験に入っている(非特許文献13;非特許文献14)。したがって、優れた経口生物学的利用能および長い作用期間をもつレニン阻害剤が必要とされる。最近、高いインビトロ活性を示す最初の非ペプチドレニン阻害剤が記述されている(非特許文献15;特許文献1;非特許文献16)。しかし、これらの化合物の開発状況は不明である。
【0006】
【特許文献1】国際公開第97/09311号パンフレット
【非特許文献1】GWaeber B. et al., “The renin-angiotensin system: role in experimental and human hypertension”, in Birkenhager W. H., Reid J. L. (eds): Hypertension, Amsterdam, Elsevier Science Publishing Co, 1986, 489-519
【非特許文献2】Weber M. A., Am. J. Hypertens., 1992, 5, 247S
【非特許文献3】Rosenberg M. E. et al., Kidney International, 1994, 45, 403
【非特許文献4】Breyer J. A. et al., Kidney International, 1994, 45, S156
【非特許文献5】Vaughan D. E. et al., Cardiovasc. Res., 1994, 28, 159
【非特許文献6】Fouad-Tarazi F. et al., Am. J. Med., 1988, 84 (Suppl. 3A), 83
【非特許文献7】Pfeffer M. A. et al., N. Engl. J. Med., 1992, 327, 669
【非特許文献8】Kleinert H. D., Cardiovasc. Drugs, 1995, 9, 645
【非特許文献9】Husain A., J. Hypertens., 1993, 11, 1155
【非特許文献10】Israili Z. H. et al., Annals of Internal Medicine, 1992, 117, 234
【非特許文献11】Azizi M. et al., J. Hypertens., 1994, 12, 419; Neutel J. M. et al., Am. Heart, 1991, 122, 1094
【非特許文献12】Kleinert H. D., Cardiovasc. Drugs, 1995, 9, 645
【非特許文献13】Rahuel J. et al., Chem. Biol., 2000, 7, 493
【非特許文献14】Mealy N. E., Drugs of the Future, 2001, 26, 1139
【非特許文献15】Oefner C. et al., Chem. Biol., 1999, 6, 127
【非特許文献16】Marki H. P. et al., Il Farmaco, 2001, 56, 21
【発明の開示】
【0007】
本発明は、非ペプチド性の性質で、低分子量のレニン阻害剤に関する。長期作用を有し、かつ組織レニン-キマーゼ系が活性化されて、腎臓、心臓、および血管の再造形、アテローム性動脈硬化症、並びにおそらく再狭窄などの病態生理学的に変化した局所機能を引き起こす可能性のある血圧調節の範囲を越えた徴候において活性な、式(I)および(I’)の経口活性レニン阻害剤を記述する。
【0008】
特に、本発明は、構造式(I)の新規化合物、並びに光学的に純粋なエナンチオマーまたはラセミ化合物などのエナンチオマーの混合物;並びにこれらの薬学的に許容される塩、溶媒錯体および形態型に関する:(1R*,5S*)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)-プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミド
【化1】

【0009】
好ましいエナンチオマーは、式(I’)によって表されるものである:(1R,5S)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミド
【化2】

【0010】
薬学的に許容される塩という表現には、塩酸または臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、その他のような無機酸または有機酸とのいずれかの生体に対し有毒でない塩を包含する。
【0011】
式(I)の化合物は、相対立体化学(1R*,5S*)を有する2つの相互依存的不斉炭素原子を含み、光学的に純粋なエナンチオマーの(1R,5S)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)-プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミド(すなわち、好ましい式(I’)の化合物)および(1S,5R)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)-プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミドの形態で、またはラセミ化合物などの2つのエナンチオマーの混合物として製造してもよい。本発明は、これらの形態の全てを包含する。混合物は、それ自体は既知の様式で、すなわちカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLC、結晶化または分解能によって分離してもよい。
【0012】
特に、酒石酸を使用して化合物3の分割をすることができる(下記参照)。D-(-)-酒石酸を使用することにより、所望のエナンチオマーを導くであろう。
【0013】
式(I)および(I’)の化合物は、レニン-アンジオテンシン系の調節不全と関連する疾患、特に高血圧症、鬱血性心不全、肺性高血圧、腎不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心臓線維症、心筋虚血症、心筋症、糸球体腎炎、腎疝痛、腎症、脈管障害および神経障害などの糖尿病によって生じる合併症、緑内障、眼内圧上昇、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後の再狭窄、血管もしくは心臓外科手術後の合併症、勃起障害、高アルドステロン症、肺線維症、強皮症、不安症、認知障害、免疫抑剤で治療の合併症、並びにレニン-アンジオテンシン系に関連があることが既知のその他の疾患などの、または関連した疾患の治療および/または予防のために有用である。
【0014】
式(I)および(I’)の化合物は、特に高血圧症、鬱血性心不全、肺性高血圧、腎不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心臓線維症、心筋虚血症、心筋症、腎症、脈管障害および神経障害などの糖尿病によって生じる合併症の治療および/または予防のために有用である。
【0015】
一つの態様において、本発明は、レニン-アンジオテンシン系の調節不全と関連する疾患の治療または予防のための方法に、特に上述の疾患の治療または予防のための方法に関し、前記方法は、式(I)または(I’)の化合物の薬学的に活性な量を患者に対して投与することを含む。
【0016】
本発明の更なる側面は、式(I)または(I’)の化合物と薬学的に許容されるキャリア物質とを含む医薬組成物に関する。これらの医薬組成物は、上述の疾患の治療および/または予防のために使用してもよい。医薬組成物は、経腸、非経口、または局所的投与のために使用することができる。たとえば、これらはたとえば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル、溶液、乳剤、もしくは懸濁液の形態で経口的に、たとえば坐薬の形態で直腸に、たとえば注射溶液もしくは輸液の形態で非経口的に、またはたとえば軟膏、クリームもしくは油の形態で局所的に投与することができる。
【0017】
本発明は、上述の疾患の治療および/または予防のための医薬組成物の製造のための、式(I)または(I’)の化合物の使用にも関する。
【0018】
医薬組成物の製造は、当業者になじみがあるであろういずれの様式で(たとえば、Mark Gibson, Editor, Pharmaceutical Preformulation and Formulation, IHS Health Group, Englewood, CO, USA, 2001; Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Philadelphia College of Pharmacy and Scienceを参照されたい)、記述された式(I)もしくは(I’)の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩を、任意にその他の治療に役立つ物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な治療適合性の固体または液体キャリア物質、および必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共にガレノス投与形態にすることによって行うこともできる。
【0019】
適切なキャリア物質には、無機的キャリア物質だけでなく、有機的キャリア物質もある。したがって、たとえば、乳糖、コーンスターチまたはこれらの誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩を錠剤、コーティング錠、糖衣錠および硬ゼラチンカプセルのためのキャリア物質として使用することができる。軟ゼラチンカプセルのために適したキャリア物質は、たとえば、植物油、蝋、脂肪、並びに半固体ポリオールおよび液体ポリオールである(しかし、活性成分の性質に応じて、軟らかいゼラチンカプセルの場合には、キャリアは必要とされない)。溶液およびシロップの製造のために適したキャリア物質は、たとえば水、ポリオール、ショ糖、転化糖などである。注射のために適したキャリア物質は、たとえば、水、アルコール、ポリオール、グリセロールおよび植物油である。坐薬のために適したキャリア物質は、たとえば、天然油または硬化油、蝋、脂肪および半液体または液体ポリオールである。局所製剤のために適したキャリア物質は、グリセリド、半合成および合成グリセリド、硬化油、液体蝋、流動パラフィン、液体脂肪アルコール、ステロール、ポリエチレングリコールおよびセルロース誘導体である。
【0020】
通常の安定剤、防腐剤、湿潤および乳化剤、粘稠度-改良剤、香味-改良剤、浸透圧を変化させるための塩、緩衝物質、可溶化剤、着色剤、並びにマスキング剤および抗酸化剤も、薬学的アジュバントとして考慮される。
【0021】
式(I)および(I’)の化合物の投薬量は、制御される疾患、患者の年齢および個人的条件、並びに投与様式に応じて幅広い範囲内で変化することができ、もちろん、それぞれの具体的症例の個々の要求にあわせることとなる。
【0022】
好ましい態様において、この量は、1日あたり2mg〜1000/mgの間で構成される。
【0023】
特定の好ましい態様において、この量は、1日あたり1mg〜500/mgの間で構成される。
【0024】
特により好ましい態様において、この量は、1日あたり5mg〜200/mgの間で構成される。
【0025】
本発明のもう一つの側面は、式(I)または(I’)の化合物を構成する医薬組成物の製造のための方法に関する。前記方法によれば、式(I)または(I’)の1つまたは複数の活性成分を、それ自体既知の様式で不活性賦形剤と混合させる。
【0026】
また、式(I)および(I’)の化合物または上述の医薬組成物は、ACE-阻害剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、エンドセリン受容体アンタゴニスト、血管拡張薬、カルシウム拮抗薬、カリウム活性化因子、利尿剤、交感神経抑制薬、β-アドレナリン作動性アンタゴニスト、α-アドレナリン作動性アンタゴニストおよび/またはアルドステロンアンタゴニスト、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型阻害剤および可溶性グアニル酸シクラーゼ活性化因子などの上述の疾患の予防または治療のために有益なその他の薬剤などのその他の薬理活性化合物との組み合わせに有用である。
【0027】
また、本発明は、インビボにおいて式(I)または(I’)の化合物それ自体に変換する式(I)または(I’)の化合物のプロドラッグに関する。したがって、式(I)または(I’)の化合物についてのいずれもの言及も、適切かつ好都合な限り、式(I)または(I’)の化合物の対応するプロドラッグをもいうことが理解される。
【0028】
式(I)および(I’)の化合物は、下記に概説した方法によって、実施例に記述した方法によって、または類似の方法によって製造することができる。
【0029】
式(I)および(I’)の化合物の製造:
本明細書に記述した式(I)および(I’)の化合物の合成は、多くのその他の変形例のうちの1つの可能性のある合成である。その他の合成経路および方法論が、当技術分野の当業者に明らかであろう。
【0030】
ビシクロノナン誘導体3(スキーム1)は、以前に記述されたように(国際公開第2003/093267号)ラセミ化合物として製造することができる。ビニルトリフラート6の製造は、水素化ナトリウムおよびN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)を使用して進行する。ビシクロ系6とブロモフェニル誘導体10との間のネギシ-カップリングにより、ジアザビシクロネン7を導く。ブロモフェニル誘導体10は、1,4-ジブロモベンゼンから、臭化アリル(→化合物8)とのグリニャール反応、次いでヒドロホウ素化反応(→化合物9)、最後にシリルエーテルとしてのヒドロキシ置換基の保護を経て3工程で製造される。次いで、ビシクロノナン7は、ビシクロノナン11へと別の場所を保護する(transprotect)。2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノールとのミツノブ型カップリングにより、誘導体12を導く。強塩基性条件下でのエチルエステルのけん化により、カルボン酸誘導体13および14の混合物を導く。
【0031】
スキーム1
【化3】


化合物13および14の混合物は、分離せず、還元アミノ化(スキーム2)を使用して一段階で製造されるアミン誘導体16とのアミド結合工程にさらに直接使用する。アミドカップリング生成物15が得られる。両方のBoc-保護基の切断により、式(I)の化合物を導く。
【0032】
スキーム2
【化4】


エナンチオ選択的合成:
本発明の化合物は、2つのキラル中心を含むが、これらは互いに独立していない。今までに示された合成法により、ラセミ化合物を導いた。ラセミ化合物は、キラルHPLC-カラムを使用して、式(I’)およびそのエナンチオマーの化合物に分離することができる。また、両エナンチオマーは、国際公開第2003/093267号に記載されているように、エナンチオ選択的アシル化(Majewski M., Lasny R., J. Org. Chem., 1995, 60, 5825)を使用して、化合物17(スキーム3)のようなメソ-ビシクロノナン誘導体から選択的に製造されるであろう。もう一つの変形例は、キラル有機酸誘導体を使用するラセミ化合物の分割である。
【0033】
スキーム3
【化5】


以下の実施例は、さらに詳細に本発明を例証するために役立つ。しかし、これらは、その範囲を任意の様式に限定することは意図されない。
【0034】
実施例
一般所見
化合物は、少なくともLC-MSおよび1H-NMRによって特徴づけてある。LC-MSデータのみを本明細書に示してある。
HPLC-またはLC-MS条件(他に示されていない場合):
分析的:Agilent TechnologiesからのZorbax 59 SB Aquaカラム、4.6×50mm。
溶出剤:A:アセトニトリル;B:H2O + 0.5% TFA。勾配:2分にわたって90% B→5% B。流速:1mL/分。検出:UV/Vis + MS。
調製用:Agilent TechnologiesからのZorbax SB Aquaカラム、20×500mm。
溶出剤:A:アセトニトリル;B:H2O +0.05%水酸化アンモニウム(25%水溶液)。
勾配:6分にわたって80% B→10% B。流速:40mL/分。検出:UV + MSまたはUV + ELSD。
キラル分析的:Regis Whelkカラム、4.6×250mm、10μm。溶出剤A:EtOH + 0.05% Et3N。溶出剤B:ヘキサン。均一溶媒条件、40分にわたって60% B、1mL/分。均一溶媒混合物は、化合物に応じて変更してもよい。
キラル調整用:Regis Whelk 01カラム、50×250mmおよび100mL/分の流速であるが、分析的条件と同じ。
全てのtRは、分で示してある。
【0035】
略語(本明細書に使用したとおり)
ACE アンジオテンシン変換酵素
Ang アンジオテンシン
aq. 水性の
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
Bu ブチル
BuLi n-ブチルリチウム
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC.HCl エチル-N,N-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドハイドロクロライド
EIA 酵素免疫測定法
ELSD 蒸気化の光散乱検出
ES+ エレクトロスプレー、ポジティブイオン化
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FC フラッシュクロマトグラフィー
h 時間
HOBt ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC-MS 液体クロマトグラフィー-質量分析
MeOH メタノール
min 分
MS 質量分析法
org. 有機の
Ph フェニル
rt 室温
sat. 飽和した
sol. 溶液
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
Tf トリフルオロメチルスルホニル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
tR 保持時間
UV 紫外線
Vis 可視。
【0036】
化合物6
化合物3(国際公開第2003/093267号、99.58g、305mmol)を窒素雰囲気下で乾燥THF(1450mL)に溶解して、混合物を0℃に冷却した。NaH(16.64g;鉱油(381mmol)中で55%分散)を0〜4℃の間に温度を保持しながら35分の期間にわたって2gずつにより添加した。H2ガスが発生した。添加後、混合物は、黄緑色であり、わずかに懸濁した。反応混合物を0〜4℃にて75分間撹拌した。次いで、Tf2NPh(128.6g、360mmol)を5分以内に固体として添加した。反応混合物は褐色になった。冷却浴を除いて、反応を室温にて週末にわたって撹拌した。反応混合物を1Lの氷/水上に注ぎ、THFを減圧下で除去した。残りの水相を(3× 500mL)EtOAcで抽出した。合わせた有機層を水(500mL)および鹹水(500mL)で洗浄した。次いで、有機相を、MgSO4上で乾燥させ、濾過して、減圧下で蒸発させた。粗製の茶色残渣(174g)に、50mLのペンタンを添加して、混合物を4℃にて一晩撹拌した。結晶を濾過して、冷却ヘキサン(70mL)およびヘキサン/ジエチルエーテル(4:1、100mL)の冷却混合物で洗浄した。これにより、いくらかのTfNHPhを含む84gの生成物が生じた。この材料を、シリカゲル(75g)を通して濾過した。TfNHPhをCH2Cl2で洗い流した。この生成物をその後にEtOAc(3回1L)で洗い流して、減圧化での蒸発後に表題化合物を得た。表題化合物は、3つの画分で得られた:a)44.45gのオフホワイトの結晶、b)27.98gのわずかに褐色の結晶およびc)生成物とTfNHPhとを含む15gの黄色の油。2日後、画分c)に含まれるTfNHPhが結晶化した。これを濾過して褐色油として9.43gの生成物を得た。
【0037】
母液の処置:
上で得られた合わせられた母液を真空下で濃縮した。褐色油残渣(75g)を(EtOAc/ヘプタン1:9 → EtOAc)の勾配を使用するFC(1500g シリカゲル)によって精製した。次いで、カラムをEtOAc/MeOH 9:1で洗浄した。表題化合物は、純粋生成物として25.44gのオフホワイトの固体のとして単離された。LC-MS:tR = 0.87分;ES+:459.24。
【0038】
化合物7
窒素下において化合物10(102.1g、310mmol)のTHF(1.50L)溶液を-78℃に冷却した。BuLi(1.5Mのヘキサン溶液、212mL、318mmol)を添加した。30分後、ZnCl2(1MのTHF溶液、465mL、465mmol)を添加した。混合物を室温まで温めた。化合物6(83.6g、155mmol)のTHF(100mL)溶液、次いでPd(PPh34(4.48g、3.87mmol)を添加した。混合物を加熱して30分間還流し、室温に冷却させた。混合物をEtOAcで希釈して、1MのNaOH(1×)水溶液で洗浄した。有機抽出物をMgSO4上で乾燥させ、濾過して、溶媒は減圧下で除去した。FC(MeOH/CH2Cl21:49→1:24 →3:47 →2:23)による残渣の精製により、表題生成物(88.6g、実質的に定量的)を得た。LC-MS:tR = 0.98分;ES+:559.24。
【0039】
化合物8
Mg(8.76g、360mmol)を濃縮器および滴下漏斗を備えた三首フラスコ内において窒素下でTHF(90mL)に懸濁した。滴下漏斗を1,4-ジブロモベンゼン(77.3g、327mmol)のTHF(40mL)溶液で満たした。約5%の1,4-ジブロモベンゼン溶液を慎重にMg懸濁液に添加して、熱銃の助けを借りて反応を開始した。反応開始時に、1,4-ジブロモベンゼン溶液を、反応混合物が穏やかに逆流するような速度で添加した(約20分)。混合物をさらに30分間撹拌して、0℃に冷却した。THF(100mL)を添加して、滴下漏斗を臭化アリル(30.5mL、360mmol)のTHF(50mL)溶液で満たした。臭化アリル溶液を、20℃を下回る反応温度を維持しながらゆっくり添加した。添加完了時に、混合物をさらに30分間撹拌し、その一方で、0℃に冷却した。1MのHCl水溶液を添加した。混合物をEt2Oで希釈して、1MのHCl水溶液および鹹水で洗浄した。合わせた水性抽出物をEt2Oで抽出し戻した。合わせた有機抽出物を、MgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣の蒸留(11 mbar、88〜92℃)により、別の未同定の不純物と共に表題化合物(39.3g、約61%)を得た。
【0040】
化合物9
BH3(1MのTHF溶液、412mL、412mmol)を窒素下で0℃において化合物8(204g、1.03mmol)のTHF(1.00L)溶液に添加した。混合物を一晩撹拌し、一方で室温まで温めた。NaOH水溶液(2.5M、1.65L、4.12mol)を添加して、混合物を0℃に冷却した。H2O2(35%、480mL、5.15mol)を慎重に滴下して、混合物を3時間撹拌した。Et2Oを添加して、相を分離した。有機層を水(1×)および鹹水(1×)で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FC(Et2O/石油エーテル1:1→Et2O)による精製により、表題化合物(97.4g、44%)を得た。
【0041】
化合物10
化合物9(49.4g、230mmol)のDMF(500mL)溶液を0℃に冷却して、イミダゾール(23.77g、349mmol)およびTBDMS-Cl(52.6g、349mmol)を添加した。混合物を一晩撹拌し、その一方で、室温まで温めた。混合物をヘプタン(1.0L)および飽和NH4Cl水溶液(800mL)で希釈して、混合物を振盪した。層を分離した。水層をヘプタンで抽出して、合わせた有機抽出物を鹹水で洗浄した。有機抽出物をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FC(Et2O/ヘプタン1:99→1:19)による精製により、表題化合物(68.1g、90%)を得た。LC-MS:tR= 1.24分;ES+:not visible。
【0042】
化合物11
化合物7(32.0g、57.3mmol)を乾燥1,2-ジクロロエタン(590mL)に溶解した。NaHCO3(48.2g、573mmol)および1-クロロエチルクロロホルマート(62.5mL、573mmol)を添加して、懸濁液を80℃まで加熱した。3時間後、反応混合物を室温に冷却させた。混合物を濾過して、濾液を減圧下で蒸発させた。残渣を高真空下で15分乾燥させた。次いで、生成物をMeOH(400mL)に希釈して、混合物を50℃まで20分間加熱した。反応混合物を室温に冷却させて、溶媒を減圧下で除去した。黄色の固体を高真空下で1時間乾燥させた。固体をCH2Cl2(190mL)に溶解して、溶液を0℃に冷却した。DIPEA(49.1mL、287mmol)およびBoc2O(37.5g、172mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、一方で室温まで温めた。反応混合物をCH2Cl2(110mL)で希釈した。有機層を1MのHCl水溶液(2× 300mL)および飽和NaHCO3水溶液(300mL)で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。FC(CH2Cl2/MeOH 100:0 →2:98→5:95)による残渣の精製により、表題化合物(26.2g、86%)を得た。LC-MS:tR = 1.05分;ES+:531.33。
【0043】
化合物12
化合物11(56.0g、106mmol)、2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノール(34.8g、211mmol)、アザジカルボン酸ジピペリジン(53.4g、211mmol)およびPBu3(85%、83mL、317mmol)の混合物のトルエン(1.20L)溶液を加熱して窒素下で1時間還流した。混合物を室温に冷却させた。混合物をEtOAc(2.00L)で希釈して、混合物を1MのNaOH水溶液(2×900mL)で洗浄した。有機抽出物をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FC(EtOAc/ヘプタン1:19→1:1)による残渣の精製により、表題化合物(67.5g、94%)を得た。LC-MS:tR= 1.24分;ES+:617.25。
【0044】
化合物13および14
化合物12(67.5g、99.6mmol)の1MのNaOH水溶液(700mL)とEtOH(1.40L)の混合物を80℃にて一晩撹拌した。混合物を減圧下で部分的に蒸発させて、EtOAc(500mL)を添加した。水相を3M HCl水溶液で酸性化し、混合物を抽出した。有機層を分離して、MgSO4上で乾燥させて、濾過して、溶媒を減圧下で除去した。残渣を高真空下で乾燥させ、化合物13および14の1:1混合物を得て、これをさらに精製することなく使用した(61.8g、95%)。LC-MS:tR= 1.12および1.14分;ES+:649.37。
【0045】
化合物15
化合物13および14(20.7g、32.0mmol)、化合物16(17.3g、80mmol)、EDC・HCl(18.4g、96mmol)、HOBt(5.40g、40.0mmol)、DMAP(0.98g、8.00mmol)およびDIPEA(22.0mL、128mmol)のCH2Cl2(540mL)溶液の混合物を室温にて撹拌した。反応をLC-MSによって毎日点検して、反応が完了していない場合、EDC・HCl(6.13g、32mmol)およびDIPEA(5.5mL、32mmol)を添加した。反応が完了したときは、混合物をより多くのCH2Cl2で希釈して、1MのHCl水溶液(3×)および飽和NaHCO3水溶液(2×)で洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FCによる精製により、表題化合物(16.5g、60%)を得た。LC-MS:tR= 1.29分;ES+:848.35。
【0046】
化合物16
2,3-ジクロロベンズアルデヒド(90.0g、514mmol)およびシクロプロピルアミン(72mL、1.02mol)の乾燥MeOH(1300mL)溶液の混合物を室温にて一晩撹拌した。反応混合物を0℃に冷却して、NaBH4(25.3g、668mmol)を添加した。反応混合物を再び室温にて一晩撹拌した。氷を反応混合物に添加して、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をEtOAcに溶解して、1MのNaOH水溶液で洗浄した。水層をEtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FC(EtOAc/ヘプタン9:1→1:1)による残渣の精製により、表題化合物(97.4g、87%)を得た。LC-MS:tR= 0.64分;ES+:216.15。
【0047】
化合物(I):(rac.)-(1R*,5S*)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)-プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロ-プロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミド
化合物15(16.5g、19.4mmol)のCH2Cl2(100mL)溶液を0℃に冷却した。HCl(4Mのジオキサン溶液、100mL)を添加した。混合物を0℃にて1時間、次いで室温にて1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、残渣を高真空下で乾燥した。残渣をCH2Cl2で希釈して、水層が塩基性に落ち着くまで1MのNaOH水溶液で洗浄した。有機抽出物をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。FC(MeOH/CH2Cl25:95→10:90→20:80)による残渣の精製により、表題化合物(12.0g、95%)を得た。LC-MS:tR = 0.88分;ES+:648.36。
【0048】
化合物(I’):(1R,5S)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)プロピル]-フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミド
化合物(I)(1.00g、1.55mmol)を、均一溶媒条件(25%のEtOH、0.1%のジエチルアミン、75%のヘキサン)および100mL/分の流速を使用して、Regis Whelk 01カラム、50×250mmで精製した。所望の化合物が、第1のエナンチオマー(tR = 20.00分)として出てきた。減圧下で溶媒を蒸発させた後、残渣を高真空下で乾燥させた。残渣をCH2Cl2に溶解して、10%のK2CO3水溶液で洗浄した。有機抽出物をMgSO4上で乾燥させて、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。高真空下で残渣を乾燥させることにより、表題化合物(350mg)を得た。
【0049】
生物学的アッセイ法
1. AngI蓄積およびレニン阻害を推定するための酵素免疫アッセイ法(EIA)
1.1 AngI-BSA抱合体の製造
1.3mg(1μmol)のAngI[1-10(Bachem, H-1680)]および17mg(0.26μmol)のBSA(Fluka, 05475)を4mLの0.1M リン酸緩衝液(pH 7.4)に溶解し、その後、2mLの1:100希釈のグルタルアルデヒドのH2O溶液(Sigma G-5882)を滴状に添加した。混合物を4℃にて一晩インキュベートし、次いで2リットルの0.9%のNaClに対して2回、室温にて4時間透析し、続いて室温にて2リットルのPBS 1Xに対して一晩透析した。次いで、溶液をシリンジフィルター、0.45μm(Nalgene, Cat番号194-2545)で濾過した。抱合体は、ポリプロピレン・チューブ内の0.05%のアジ化ナトリウム中に4℃にて少なくとも12月間貯蔵することができる。
【0050】
1.2 BSA-AngIコーティングしたMTPの製造
マイクロタイタープレート(MPT384, MaxiSorp(商標), Nunc)をテフロン(登録商標)・ビーカー内のPBS 1×中に1:100,000に希釈(正確な希釈は、抱合体のバッチに依存する)した80μlのAngI(1-10)/BSA抱合体と共に4℃にて一晩インキュベートし、空にして、90μlのブロッキング溶液[0.5%のBSA(Sigma A-2153)のPBS 1×溶液、0.02%のNaN3]で満たし、室温にて少なくとも2時間、または4℃にて一晩インキュベートした。ブロッキング溶液が3%のBSAを含んでいたことを除いては、上記のように、96ウェルMTP(MaxiSorp(商標), Nunc)を200μlの抱合体でコーティングして、250μlのブロッキング溶液でブロックした。プレートを4℃にて1月間ブロッキング溶液中に貯蔵することができる。
【0051】
1.3 384ウェルMTP中のAngI-EIA
AngI(1-10)/BSAコーティングしたMTPを洗浄緩衝液(PBS 1×、0.01%のTween 20)で3回洗浄して、75μlの一次抗体溶液(抗AngI抗血清、ウマ血清中に1:10に事前に希釈した)を満たし、アッセイ緩衝液(PBS 1X、1mM EDTA、0.1%のBSA、pH 7.4)中に1:100,000の終濃度に希釈した。5μlのレニン反応液(またはアッセイ緩衝液中の標準)(下記を参照されたい)を一次抗体溶液に添加して、プレートを4℃にて一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄して、二次抗体[洗浄緩衝液中に1:2,000に希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(Amersham Bioscience, NA 934V)]と共に室温にて2時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄し、次いで基質溶液[1.89mM ABTS(2.2’-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリンスルホネート)](Roche Diagnostics, 102 946)および2.36mM H2O2[30%(Fluka, 95300]の基質緩衝液(0.1M 酢酸ナトリウム、0.05Mのリン酸二水素ナトリウム、pH 4.2)溶液と共に室温にて1時間インキュベートした。プレートのODをマイクロプレートリーダー(BMGからのFLUOStar Optima)で405nmにて読み込んだ。レニン反応の間のAngIの産生は、平行して測定したAngI(1-10)の標準曲線のODと試料のODを比較することによって定量化した。
【0052】
2. 一次レニン阻害アッセイ法:緩衝液(384ウェルMTP)中のIC50
レニン・アッセイ法は、以前に記述されたアッセイ法(Fischli W. et al., Hypertension, 1991, 18:22-31)から適応させており、2工程からなる:第1工程において、組換えヒト・レニンをその基質(市販のヒトテトラデカペプチドレニン基質)と共にインキュベートして生成物のアンジオテンシンI(AngI)を産生させる。第2工程において、蓄積されたAngIを免疫学的なアッセイ法(酵素免疫アッセイ法、EIA)によって測定する。このアッセイ法の詳細な説明は、下記に見いだされる。EIAは、非常に感受性であり、かつ緩衝液中、または血漿中でのレニン活性化の測定のために非常に適している。このアッセイ法に使用されるレニンは低濃度であるため(1アッセイ法あたり2fmolチューブまたは10pM)、この一次アッセイ法における阻害剤親和性の測定を低pM濃度まで下げることができる。
【0053】
2.1 方法論
組換えヒトレニン(3pg/μl)アッセイ緩衝液(PBS 1×、1mM EDTA、0.1%のBSA、pH 7.4)溶液、ヒトテトラデカペプチド(1-14)基質(Bachem, M-1120)[5μMの10mM HCl溶液)、硫酸ヒドロキシキノリン(Fluka, 55100)[30mMのH2O溶液]およびアッセイ緩衝液を4℃にて100:30:10:145の比でプレミックスした。ウェルあたり47.5μlのこのプレミックスをポリプロピレンプレート(MTP384, Nunc)に移した。試験化合物を溶解して、100%のDMSO中に希釈し、2.5μlをプレミックスに添加して、次いで37℃にて3時間インキュベートした。インキュベーション期間終了後、5μlのレニン反応液(またはアッセイ緩衝液中の標準)をEIAアッセイ法(上記の通り)に移して、レニンによって産生されたAngIを定量化した。レニン阻害(AngI減少)の割合を化合物のそれぞれの濃度について算出し、酵素活性を50%まで阻害するレニン阻害の濃度(IC50)を決定した。試験した全ての化合物のIC50値は、100nMを下回る。しかし、選択された化合物は、非常に優れた生物学的利用能を示し、従来技術の化合物よりも代謝的に安定である。
【0054】
式(I’)の化合物は、0.5nMのIC50値を示す。
血行力学的測定(テレメータリング法)
動物−ヒトレニンおよびヒトアンジオテンシノーゲンをもつ雌二重トランスジェニックラットはRCC Ltd, Fullingsdorf, Switzerlandから購入した。全ての動物は、同一条件下で維持し、通常のペレット化されたラット固形飼料および水を自由に摂取させた。ラットには、最初にエナラプリル(1mg/kg/日)で2月間処置した。エナラプリル処置の停止後およそ2週後に、二重トランスジェニックラットは、高血圧になり、160〜170mmHgの範囲の平均動脈血圧に達する。
【0055】
トランスミッタ移植−ラットを、90mg/kgのケタミン-HCl(Ketavet, Parke-Davis, Berlin FRG)および10mg/kgのキシラジン(Rompun, Bayer, Leverkusen, FRG)の混合物で腹腔内麻酔した。圧力トランスミッタを、無菌条件下にて、上流を示す腎動脈の下の下行大動脈に配置した検知カテーテルと共に腹腔内に移植した。トランスミッタを腹筋系に縫合し、皮膚を閉じた。
【0056】
テレメータリング-システム−テレメトリーユニットは、Data Sciences(St. Paul, MN)から得た。移植したセンサーは、高度に安定な低コンダクタンスのひずみゲージ圧力トランスデューサー(これにより、真空と比較した絶対動脈圧が測定される)と高周波トランスミッタとに接続された液体充填カテーテル(0.7mmの直径、長さ8cm;モデルTA11PA-C40)からなった。カテーテルの先端は、血液還流を防止する粘稠性ゲルで満たして、血栓形成を阻害するために抗血栓性フィルムでコーティングした。インプラント(長さ=2.5cm、直径=1.2cm)は、9gの重量であり、6月の典型的バッテリ寿命を有する。レシーバプラットフォーム(RPC-1、Data Sciences)により、無線信号をデジタル化された入力に接続し、これを専用のパーソナルコンピューター(Compaq, deskpro)に送信させた。動脈圧は、雰囲気圧参照(APR-1、Data Sciences)からの入力を使用することによって較正した。収縮期、平均および弛緩期血圧は、水銀柱ミリメートル(mmHg)で表した。
【0057】
血行力学的測定−圧力トランスミッタを移植した二重トランスジェニックラットには、媒体または10mg/kgの試験物質を経口胃管栄養法によって投薬し(群あたりn=6)、平均動脈血圧を連続モニターした。試験物質の効果は、処置群対対照群における平均動脈圧(MAP)の最大の減少として表した。
【0058】
式(I’)の化合物は、この動物モデルにおいて活性である。10mg/kgの経口1回投与にて26mmHgの血圧減少を、および3mg/kgの経口1回投与にて13mmHgの血圧減少を引き起こした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1R*,5S*)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミドと命名される式(I)の化合物、並びに光学的に純粋なエナンチオマーまたはラセミ化合物などのエナンチオマーの混合物;並びにこれらの薬学的に許容される塩、溶媒錯体および形態型:
【化1】

【請求項2】
式(I’)によって表され、かつ(1R,5S)-7-{4-[3-(2-クロロ-3,6-ジフルオロフェノキシ)プロピル]フェニル}-3,9-ジアザビシクロ-[3.3.1]ノン-6-エン-6-カルボン酸シクロプロピル-(2,3-ジクロロベンジル)アミドと命名される請求項1に記載の式(I)の化合物のエナンチオマー、並びにこれらの薬学的に許容される塩、溶媒錯体および形態型
【化2】

【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と薬学的に許容されるキャリア物質とを含む医薬組成物。
【請求項4】
医薬として使用するための、請求項1または2に記載の化合物または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
高血圧症、鬱血性心不全、肺性高血圧、腎不全、腎虚血、腎不全、腎線維症、心不全、心肥大、心臓線維症、心筋虚血症、心筋症、糸球体腎炎、腎疝痛、腎症、脈管障害および神経障害などの糖尿病によって生じる合併症、緑内障、眼内圧上昇、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後の再狭窄、血管または心臓外科手術後の合併症、勃起障害、高アルドステロン症、肺線維症、強皮症、不安症、認知障害、免疫抑剤で治療の合併症、並びにレニン-アンジオテンシン系に関連があることが既知のその他の疾患から選択される疾患の治療および/または予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1または2に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−522967(P2008−522967A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543997(P2007−543997)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054113
【国際公開番号】WO2006/061791
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】