説明

新規バナジウム化合物

【課題】ナフトールの酸化的カップリングによる1,1’−ビナフトール製造において、触媒量使用して、反応時間が短くなり、かつ、eeが高くなる新規バナジウム化合物の提供を可能とする。
【解決手段】式(I)で表されるバナジウム化合物により前記課題が解決する。


前記式(I)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(I)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規バナジウム化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,1’−ビナフトールは、ナフタレン環の結合軸に対してナフタレン環同士の回転が極度に阻害されるため、軸不斉を有する。そのため、1,1’−ビナフトールにはR体とS体の2種類が安定に存在する。これらのR体とS体は、互いに鏡像体の関係にある。この光学活性な1,1−ビナフトールは、不斉合成や光学分割のための不斉源として、重要な化合物である(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
この光学活性な1,1’−ビナフトールは、ナフトールを金属触媒存在下に不斉酸化的カップリングすることにより製造することができる(例えば、特許文献1参照)。そのような金属触媒としては、キラルな銅触媒(例えば、特許文献2および非特許文献2参照)、キラルなバナジウム触媒(例えば、特許文献3および4ならびに非特許文献3〜6参照)等が種々用いられていた。
【0004】
しかしながら、これらの銅触媒は、触媒量が1当量程度必要であったり、バナジウム触媒は、1週間程度と長い反応時間が必要であったり、鏡像体過剰率(ee)が低い等の問題があった。例えば、従来のV価オキソバナジウム錯体を触媒として用い、ナフトールをカップリングさせて1,1’−ビナフトールを製造すると、収率89%、89%eeを得るために必要な反応時間は7日間と非常に長いものであった(非特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3252491号公報
【特許文献2】特開平4−18043号公報
【特許文献3】特開2005−75774号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0256345号公報
【非特許文献1】ジーン・マイケル・ブルネル(Jean Michel Brunel)著、「バイノール:汎用性のあるキラル試薬(BINOL:A Versatile Chiral Reagent)」、Chem.Rev.、アメリカ化学会、2005年、105巻、857〜897頁。
【非特許文献2】ジャン・ガオ(Jian Gao)ら著、「エナンチオ選択的酸化カップリングのための構造が限定された触媒(Structurally Defined Catalysts for Enantioselective Oxidative Coupling Reactions)」、Angew.Chem. Int. Ed.、ウィリー−ブイシーエイチ・ベラグ・ジーエムビーエイチ・アンド・シーオー社(Wiley-VCH Verlag GmbH &Co.)、2003年、42巻、6008〜6012頁。
【非特許文献3】笹井宏明ら著、「エナンチオ選択性二核バナジウム(IV)触媒による、同種カップリング反応における二重活性化(Dual Activation in a homolytic coupling reaction promoted by an enantioselective dinuclear vanadium (IV) catalyst)」、Tetrahedron Letters, エルゼビア社(Elsevier Ltd.)、2004年、45巻、1841〜1844頁。
【非特許文献4】リンツー・ゴング(Liuzhu Gong)ら著、「2−ナフトールの高度エナンチオ選択的酸化カップリングのための、新規非キラルなビフェノール誘導ジアステレオ選択的オキソバナジウム(IV)錯体(Novel Achiral Biphenol-Derived Diastereometric Oxovanadium (IV) Complexes for Highly Enantioselective Oxidative Coupling of 2-Naphthols)」、Angew.Chem. Int. Ed.、ウィリー−ブイシーエイチ・ベラグ・ジーエムビーエイチ・アンド・シーオー社、2002年、41巻、4532〜4535頁。
【非特許文献5】ビング−ジン・ウァン(Biing-Jiun Uang)ら著、「キラルオキソバナジウム錯体が、2−ナフトールのエナンチオ選択的酸化カップリングを触媒した(Chiral oxovanadium complex catalyzed enantioselective oxidative coupling of 2-naphthols)」、Chem. Commun.、英国化学会、2001年、980〜981頁。
【非特許文献6】チエン−チン・チェン(Chien-Tien Chen)ら著、「キラル三又オキソバナジウム(IV)錯体による、2−ナフトールの触媒的不斉カップリング(Catalytic Asymmetric Coupling of 2-Naphthols by Chiral Tridentate Oxovanadium (IV) complexes)」、Organic Letters、アメリカ化学会、2001年、3巻、869〜872頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ナフトールの酸化的カップリングによる1,1’−ビナフトール製造において、触媒量使用して、反応時間が短くなり、かつ、eeを高くできる新規バナジウム化合物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)で表されるバナジウム化合物である。
【0007】
【化10】

【0008】
前記式(I)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(I)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0009】
【化11】

【発明の効果】
【0010】
本発明のバナジウム化合物は、ナフトールの酸化的カップリングによる1,1’−ビナフトール製造反応において、触媒量使用することにより、反応時間を短くでき、かつ、得られる1,1’−ビナフトールのeeを高くすることが可能であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、前記のように、式(I)に示すV価のバナジウム化合物である。
【0012】
前記式(I)の化合物は、前記置換基Rの立体配置が、Sであるのが好ましい。
【0013】
前記式(I)の化合物は、前記環Aの軸配置が、Raであるのが好ましい。
【0014】
前記式(I)の化合物は、前記置換基Rが、C15アルキル基、C715アラルキル基、またはC614アリール基であるのが好ましく、tert−ブチル、ベンジルまたはフェニルであるのがより好ましい。
【0015】
前記式(I)の化合物としては、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A2)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、ベンジルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、および
前記置換基Rが、フェニルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物からなる群から選択されるのが、好ましい。
【0016】
また、本発明は、溶媒中で、式(X)で表されるナフトール化合物を、バナジウム触媒存在下に酸化的にカップリングさせて式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物を形成する、式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の製造方法であって、前記バナジウム触媒が、本発明のバナジウム化合物であることを特徴とする。
【0017】
【化12】

【0018】
前記式(X)および(XI)中、置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択されるか、または、
前記置換基R1およびR2、R3およびR4、R4およびR5、ならびにR5およびR6のうちいずれかは、前記置換基が結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の5〜7員環を形成し、残りの置換基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択される。
【0019】
前記ビナフトール化合物の製造方法においては、前記溶媒が、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、(CH2Cl)2、n−ペンタン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールおよびアセトニトリルからなる群から選択されるのが好ましい。さらに、前記溶媒が、CH2Cl2であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がSである場合、または、前記溶媒が、CCl4であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がRである場合が好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法(以下、バナジウム化合物の第1の製造方法と呼ぶ)であって、
式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物とを反応させ、
前記反応混合物にさらにVOCl3を添加して反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成することを含む。
【0021】
【化13】

【0022】
前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0023】
【化14】

【0024】
また、本発明は、前記式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法(以下、バナジウム化合物の第2の製造方法と呼ぶ)であって、
式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物と、VOSO4とを酸素存在下に反応させ、前記式(I)で表される化合物を形成することを含む。
【0025】
【化15】

【0026】
前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0027】
【化16】

【0028】
また、本発明は、前記式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法(以下、バナジウム化合物の第3の製造方法と呼ぶ)であって、
式(XXX)で表される化合物の溶液に、酸素をバブリングして反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成することを含む。
【0029】
【化17】

【0030】
前記式(XXX)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XXX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0031】
【化18】

【0032】
式中のC15アルキル基ならびにC15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルキルチオ基およびC15アルコキシで置換されたC15アルキル基におけるC15アルキル部分としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、1−エチルヘキシル等が挙げられる。前記C15アルキル基は、好ましくはtert−ブチル、イソプロピル、より好ましくはtert−ブチルである。
【0033】
式中のC15アルコキシ基ならびにC15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基およびC15アルコキシカルボニル基におけるC15アルコキシ部分としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、tert−ペンチルオキシ、1−メチルブチルオキシ、2−メチルブチルオキシ、1,2−ジメチルプロピルオキシ、1−エチルヘキシルオキシ等が挙げられる。前記C15アルコキシ基は、好ましくはメトキシ、tert−ブチルオキシ、より好ましくはメトキシである。
【0034】
式中のC15アルキルチオ基としては、炭素数炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert−ペンチルチオ、1−メチルブチルチオ、2−メチルブチルチオ、1,2−ジメチルプロピルチオ、1−エチルヘキシルチオ等が挙げられる。前記C15アルキルチオ基は、好ましくはtert−ブチルチオ、イソプロピルチオ、より好ましくはtert−ブチルチオである。
【0035】
式中のC614アリール基は、炭素数6〜14のアリール基を意味し、たとえば、フェニル、ペンタレニル、インデニル、ナフチル、アズレニル、ヘプタレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントラセニル、ピレニル等が挙げられる。前記C614アリール基は、好ましくはフェニル、ナフチルであり、より好ましくはフェニルである。
【0036】
式中のC715アラルキル基ならびにC15アルコキシで置換されたC715アラルキル基およびC715アラルキルオキシ基のC715アラルキル部分としては、炭素数6〜14のアリール基で置換された炭素数1〜8の直鎖状または分岐状アルキル基を意味し、例えば、フェニルメチル(ベンジル)、ペンタレニルメチル、インデニルメチル、ナフチルメチル、アズレニルメチル、ヘプタレニルメチル、フェナレニルメチル、フェナントレニルメチル、アントラセニルメチル、ピレニルメチル、フェニルエチル(フェネチル)、ペンタレニルエチル、インデニルエチル、ナフチルエチル、アズレニルエチル、ヘプタレニルエチル、フェナレニルエチル、フェナントレニルエチル、アントラセニルエチル、ピレニルエチル等が挙げられる。前記C715アラルキル基は、好ましくはベンジル、フェニルエチルであり、より好ましくはベンジルである。
【0037】
式中のC715アラルキルオキシ基は、例えば、フェニルメチルオキシ(ベンジルオキシ)、ペンタレニルメチルオキシ、インデニルメチルオキシ、ナフチルメチルオキシ、アズレニルメチルオキシ、ヘプタレニルメチルオキシ、フェナレニルメチルオキシ、フェナントレニルメチルオキシ、アントラセニルメチルオキシ、ピレニルメチルオキシ、フェニルエチルオキシ(フェネチルオキシ)、ペンタレニルエチルオキシ、インデニルエチルオキシ、ナフチルエチルオキシ、アズレニルエチルオキシ、ヘプタレニルエチルオキシ、フェナレニルエチルオキシ、フェナントレニルエチルオキシ、アントラセニルエチルオキシ、ピレニルエチルオキシ等が挙げられる。前記C715アラルキルオキシ基は、好ましくはベンジルオキシ、フェニルエチルオキシであり、より好ましくはベンジルオキシである。
【0038】
式中のC38アルケニルオキシ基は、例えば、プロペニルオキシ(ビニルオキシ)、イソプロペニルオキシ、ブタン−1−エニルオキシ、ペンタ−2−エニルオキシ、ヘキサ−3−エニルオキシ、オクタ−4−エニルオキシ等が挙げられる。前記C38アルケニルオキシ基は、好ましくは、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシであり、より好ましくはビニルオキシ)である。
【0039】
式中のC15アルキルチオで置換されたC15アルキル基は、例えば、メチルチオメチル、メチルチオエチル、エチルチオメチル、プロピルチオエチル、イソプロピルチオメチル、ブチルチオエチル、イソブチルチオメチル、sec−ブチルチオエチル、tert−ブチルチオメチル、ペンチルチオエチル、イソペンチルチオメチル、ネオペンチルチオメチル、tert−ペンチルチオメチル、1−メチルブチルチオエチル、2−メチルブチルチオエチル、1,2−ジメチルプロピルチオエチル、1−エチルヘキシルチオエチル等が挙げられる。前記C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基は、好ましくはメチルチオメチル、イソプロピルチオメチル、より好ましくはメチルチオメチルである。
【0040】
式中のC15アルコキシで置換されたC15アルキル基は、例えば、メトキシメチル、エトキシエチル、プロポキシメチル、イソプロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、イソブチルオキシエチル、sec−ブチルオキシメチル、tert−ブチルオキシプロピル、ペンチルオキシメチル、イソペンチルオキシエチル、ネオペンチルオキシペンチル、tert−ペンチルオキシメチル、1−メチルブチルオキシエチル、2−メチルブチルオキシメチル、1,2−ジメチルプロピルオキシエチル、1−エチルヘキシルオキシペンチル等が挙げられる。前記C15アルコキシで置換されたC15アルキル基は、好ましくはメトキシメチル、tert−ブチルオキシプロピル、より好ましくはメトキシメチルである。
【0041】
式中のC15アルコキシで置換されたC715アラルキル基は、例えば、4−メトキシフェニルメチル(4−メトキシベンジル)、4−エトキシフェニルメチル、4−tert−ブチルオキシフェニルメチル等が挙げられる。前記C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基は、4−メトキシフェニルメチルが好ましい。
【0042】
式中のC15アルコキシカルボニル基は、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、tert−ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、tert−ペンチルオキシカルボニル、1−メチルブチルオキシカルボニル、2−メチルブチルオキシカルボニル、1,2−ジメチルプロピルオキシカルボニル、1−エチルヘキシルオキシカルボニル等が挙げられる前記C15アルコキシカルボニル基は、メトキシカルボニルが好ましい。
【0043】
式中のハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等であり、好ましくは臭素である。
【0044】
前記式(I)の化合物において、前記置換基Rの立体配置はSが好ましい。そのような化合物は、以下の式(II)で表される。
【0045】
【化19】

【0046】
また、前記式(I)の化合物において、前記環Aの軸配置はRaであるのが好ましい。そのような化合物は、以下の式(I―A1)または式(I−A2)で表される。前記環Aが式(A1)で表される場合、式(I)の化合物は式(I―A1)で表され、前記環Aが式(A2)で表される場合、式(I)の化合物は式(I―A2)で表される。
【0047】
【化20】

【0048】
前記式(I−A1)および(I−A2)において、置換基Rは前記式(I)における置換基Rと同じ意味を有する。
【0049】
さらに、前記式(II)の化合物において、前記環Aの軸配置はRaであるのが好ましい。そのような化合物は、以下の式(II―A1)または式(II−A2)で表される。前記環Aが式(A1)で表される場合、式(II)の化合物は式(II―A1)で表され、前記環Aが式(A2)で表される場合、式(II)の化合物は式(II―A2)で表される。
【0050】
【化21】

【0051】
前記式(II−A1)および(II−A2)において、置換基Rは前記式(I)における置換基Rと同じ意味を有する。
【0052】
前記式(I)で表わされる化合物、式(II)で表わされる化合物、式(I−A1)で表わされる化合物、式(I−A2)で表わされる化合物、式(II−A1)で表わされる化合物および式(II−A2)で表わされる化合物において、前記置換基Rは、C15アルキル基、C715アラルキル基、またはC614アリール基であるのが好ましく、tert−ブチル、ベンジルまたはフェニルであるのが更に好ましい。
【0053】
前記式(I)で表す化合物は、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A2)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、ベンジルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、および
前記置換基Rが、フェニルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物が好ましい。
【0054】
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物は、具体的には、下記式(I−1)で表され、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A2)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物は、具体的には、下記式(I−2)で表され、
前記置換基Rが、ベンジルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物は、具体的には、下記式(I−3)で表され、
前記置換基Rが、フェニルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物は、具体的には、下記式(I−4)で表される。
【0055】
【化22】

【0056】
また、前記のように、本発明のバナジウム化合物は、ナフトール化合物の酸化的カップリングの触媒として有用である。具体的には、本発明は、溶媒中で、式(X)で表されるナフトール化合物を、バナジウム触媒存在下に酸化的にカップリングさせて式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物を形成する、式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の製造方法であって、前記バナジウム触媒が、本発明のバナジウム化合物であることを特徴とする。
【0057】
【化23】

【0058】
前記式(X)および(XI)中、置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択されるか、または、
前記置換基R1およびR2、R3およびR4、R4およびR5、ならびにR5およびR6のうちいずれかは、前記置換基が結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の5〜7員環を形成し、残りの置換基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択される。
【0059】
前記式(X)および(XI)中、置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6についての、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基の定義は前記のとおりである。
【0060】
前記式(X)で表されるナフトール化合物においては、置換基R1、R4およびR5のいずれか1つが、水素原子、ハロゲン原子、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択されるいずれかであるのが好ましく、水素原子、臭素原子、メトキシ、アリールオキシ、メトキシカルボニル、ベンジルおよびベンジルオキシからなる群から選択されるいずれかであるのがより好ましい。
【0061】
前記置換基R1およびR2、R3およびR4、R4およびR5、ならびにR5およびR6のうちいずれかは、前記置換基が結合する炭素原子と一緒になって形成する、飽和または不飽和の5〜7員環は、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素の5〜7員環、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロピロール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の飽和ヘテロ環化合物の5〜7員環、ベンゼン等の不飽和炭化水素の5〜7員環、チオフェン、フラン、ピラン、ピロール、ピリジン等の不飽和へテロ環化合物の5〜7員環等が挙げられる。前記5〜7員環のうち、ベンゼン等の不飽和炭化水素の5〜7員環が好ましく、ベンゼンがより好ましい。前記置換基のうち、置換基R1およびR2が結合する炭素原子と一緒になって、好ましくは飽和または不飽和の5〜7員環、より好ましくは不飽和の5〜7員環、さらに好ましくはベンゼン等の不飽和炭化水素の5〜7員環、最も好ましくはベンゼンを形成する。
【0062】
前記式(X)で表されるナフトール化合物としては、例えば、以下の式で表す化合物が挙げられる。
【0063】
【化24】

【0064】
前記式(X)で表されるナフトール化合物は、中でも以下の式で表す化合物が好ましい。
【0065】
【化25】

【0066】
前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物としては、例えば、以下の式で表す化合物が挙げられる。
【0067】
【化26】

【0068】
【化27】

【0069】
前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物は、中でも以下の式で表す化合物が好ましい。
【0070】
【化28】

【0071】
前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置は、RおよびSがある。本発明のビナフトール化合物の製造方法においては、いずれか一方の軸配置を有する式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物を製造する方法が好ましい。
【0072】
前記ビナフトール化合物の製造方法においては、前記溶媒は限定されないが、例えば、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4、(CH2Cl)2等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトニトリルが挙げられる。前記溶媒としては、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4、(CH2Cl)2、n−ペンタン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルエーテルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択されるのが好ましく、CH2Cl2およびCCl4がさらに好ましい。
【0073】
さらに、前記溶媒が、CH2Cl2であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がSである場合、または、前記溶媒が、CCl4であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がRである場合が好ましい。このように、本発明のバナジウム化合物(I)は、溶媒を選択することにより、得られるビナフトール化合物(XI)の軸配置をコントロールすることができる。
【0074】
なお、軸配置がRである前記式(XI)で表される化合物は、下記式(XI−R)で、軸配置がSである前記式(XI)で表される化合物は、下記式(XI−S)で表される。
【0075】
【化29】

【0076】
前記式(XI−R)および(XI−S)中、置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、前記式(XI)中の置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6と同じ意味を有する。
【0077】
前記ビナフトール化合物の製造方法においては、反応温度は限定されないが、例えば−78℃〜120℃、好ましくは−30℃〜80℃、より好ましくは0〜35℃である。
【0078】
前記ビナフトール化合物の製造方法において、反応時間は限定されないが、例えば1分〜120時間、好ましくは1時間〜96時間、より好ましくは24時間〜72時間である。
【0079】
前記ビナフトール化合物の製造方法において、式(X)で表されるナフトール化合物に対し使用される本発明のバナジウム化合物のモル比(式(X)で表されるナフトール化合物:本発明のバナジウム化合物)は、例えば1:0.001〜0.7、好ましくは1:0.005〜0.5、より好ましくは1:0.01〜0.1である。
【0080】
次に、本発明の式(I)で表されるバナジウム化合物を製造するための製造方法について、例を挙げて説明する。このような製造方法により、従来にはない化学構造を有する、本発明のバナジウム化合物の製造が可能になった。なお、本発明の式(I)で表されるバナジウム化合物は、以下の方法以外の方法で製造されてもよい。
【0081】
本発明の式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法の一例を説明する。その製造方法は、式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物とを反応させ(第1工程)、前記反応混合物にさらにVOCl3を添加して反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成すること(第2工程)を含む(以下、バナジウム化合物の第1の製造方法と呼ぶ)。
【0082】
【化30】

【0083】
前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0084】
【化31】

【0085】
前記式(XXI)中、置換基RのC15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基の定義は前記のとおりである。
【0086】
前記第1の製造方法の第1工程は、例えば、触媒存在下に行ってもよい。前記触媒を用いることにより、第1工程の反応が促進されるからである。前記触媒としては、例えば脱水触媒等が挙げられる。前記脱水触媒としては、モレキュラーシーブス、無水Na2SO4、無水MgSO4等が挙げられる。
【0087】
前記第1の製造方法の第2工程の後、VOCl3を分解させるために例えばアルコール(例えばメタノール)を反応混合物に添加してもよい。前記アルコールを添加した後の反応混合物は、溶媒を留去した後、得られた残渣を、有機溶媒で洗浄、抽出等して、精製して、バナジウム化合物(I)を単離してもよい。洗浄、抽出等に用いる有機溶媒としては、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0088】
前記第1の製造方法の第1工程および第2工程において、反応溶媒は限定されないが、例えば、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられる。前記第1工程における前記溶媒としては、アルコール類およびエーテル類からなる群から選択されるのが好ましく、エタノールがさらに好ましい。前記第1の製造方法の第1工程の後、第1工程で用いた反応溶媒を除去して、別の反応溶媒を用いてもよい。その場合、前記第2工程における前記溶媒としては、塩素で置換された炭化水素類から選択されるのが好ましく、CH2Cl2がさらに好ましい。
【0089】
前記第1の製造方法の第1工程および第2工程において、反応温度は限定されないが、例えば−78℃〜200℃である。前記第1工程における反応温度は、好ましくは10℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃である。前記第2工程における反応温度は、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは10℃〜50℃である。
【0090】
前記第1の製造方法の第1工程および第2工程において、反応時間は限定されないが、例えば1分〜120時間である。前記第1工程における反応時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは1時間〜6時間である。前記第2工程における反応時間は、好ましくは30分〜48時間、より好ましくは1時間〜24時間である。
【0091】
前記第1の製造方法の第1工程において、式(XX)で表される化合物に対し使用される式(XXI)で表される化合物のモル比(式(XX)で表される化合物:式(XXI)で表される化合物)は、例えば1:1〜20、好ましくは1:1〜5、より好ましくは1:1〜3である。
【0092】
前記第1の製造方法の第2工程において、式(XX)で表される化合物に対し使用されるVOCl3のモル比(式(XX)で表される化合物:VOCl3)は、例えば1:1〜20、好ましくは1:1〜10、より好ましくは1:1〜5である。
【0093】
本発明の式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法の別の一例を説明する。その製造方法は、式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物と、VOSO4とを酸素存在下に反応させ、前記式(I)で表される化合物を形成することを含む(以下、バナジウム化合物の第2の製造方法と呼ぶ)。
【0094】
【化32】

【0095】
前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0096】
【化33】

【0097】
前記式(XXI)中、置換基RのC15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基の定義は前記のとおりである。
【0098】
前記第2の製造方法は、例えば、触媒存在下に行ってもよい。前記触媒を用いることにより、反応が促進されるからである。前記触媒としては、例えば脱水触媒等が挙げられる。前記脱水触媒としては、モレキュラーシーブス、無水Na2SO4、無水MgSO4等が挙げられる。
【0099】
前記第2の製造方法において、式(XX)で表される化合物、式(XXI)で表される化合物、VOSO4との反応終了後、例えば、反応溶媒を留去し、得られた残渣を有機溶媒で溶解させ、不溶物を濾過して除去し、ろ液を濃縮することでバナジウム化合物(I)を単離してもよい。前記有機溶媒としては、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0100】
前記第2の製造方法において、反応溶媒は限定されないが、例えば、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられる。前記第2製造方法における前記溶媒としては、アルコール類から選択されるのが好ましく、メタノールがさらに好ましい。
【0101】
前記第2の製造方法において、反応温度は限定されないが、例えば−78℃〜200℃である。前記第2製造方法における反応温度は、好ましくは10℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃である。
【0102】
前記第2の製造方法において、反応時間は限定されないが、例えば1分〜120時間、好ましくは10分〜72時間、より好ましくは1時間〜48時間である。
【0103】
前記第2の製造方法において、式(XX)で表される化合物に対し使用される式(XXI)で表される化合物のモル比(式(XX)で表される化合物:式(XXI)で表される化合物)は、例えば1:1〜20、好ましくは1:1〜5、より好ましくは1:1〜3である。
【0104】
前記第2の製造方法において、式(XX)で表される化合物に対し使用されるVOSO4のモル比(式(XX)で表される化合物:VOSO4)は、例えば1:1〜20、好ましくは1:1〜10、より好ましくは1:1〜5である。
【0105】
本発明の式(I)で表されるバナジウム化合物の製造方法のさらに別の一例を説明する。その製造方法は、式(XXX)で表される化合物の溶液に、酸素をバブリングして反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成することを含む(以下、バナジウム化合物の第3の製造方法と呼ぶ)。
【0106】
【化34】

【0107】
前記式(XXX)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XXX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【0108】
【化35】

【0109】
前記式(XXI)中、置換基RのC15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基の定義は前記のとおりである。
【0110】
前記第3の製造方法において、式(XX)で表される化合物、式(XXI)で表される化合物、VOSO4との反応終了後、例えば、反応溶媒を留去することでバナジウム化合物(I)を単離してもよい。
【0111】
前記第3の製造方法において、反応溶媒は限定されないが、例えば、CH2Cl2、クロロホルム、CCl4等の塩素で置換された炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類等が挙げられる。前記第2製造方法における前記溶媒としては、アルコール類から選択されるのが好ましく、メタノールがさらに好ましい。
【0112】
前記第3の製造方法において、反応温度は限定されないが、例えば−78℃〜200℃、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは10℃〜50℃である。
【0113】
前記第3の製造方法において、反応時間は限定されないが、例えば1分〜120時間、好ましくは10分〜72時間、より好ましくは1時間〜48時間である。
【0114】
前記第1の製造方法、第2の製造方法、および第3の製造方法において、前記式(XX)で表される化合物、式(XXI)で表される化合物、前記式(XXX)で表される化合物は、市販で入手してもよいし、公知文献を参照して自家製造してもよい。式(XXX)で表される化合物は、例えば、笹井宏明ら著、「エナンチオ選択性二核バナジウム(IV)触媒による、同種カップリング反応における二重活性化(Dual Activation in a homolytic coupling reaction promoted by an enantioselective dinuclear vanadium (IV) catalyst)」、Tetrahedron Letters, エルゼビア社(Elsevier Ltd.)、2004年、45巻、1841〜1844頁(前記非特許文献3)に従い、製造することができる。
【0115】
前記非特許文献3に従う式(XXX)で表される化合物は、具体的には、以下のようにして製造できる。
【0116】
【化36】

【0117】
前記式(XX)で表される化合物と、前記式(XXI)で表される化合物を、例えばモレキュラーシーブス、無水Na2SO4、無水MgSO4等存在下に縮合させて、ジイミン化合物(XXII)を得る。前記ジイミン化合物(XXII)へ、VOSO4の水溶液を添加して、その後、反応溶媒を留去することで式(XXX)で表される化合物を単離することができる。
【0118】
前記第1の製造方法、第2の製造方法、および第3の製造方法において、式(I)中前記置換基Rの立体配置がSである式(I)の化合物を製造する場合には、立体配置がSである前記式(XXI)で表される化合物を用いればよい。また、式(I)中前記置換基Rの立体配置がRである式(I)の化合物を製造する場合には、立体配置がRである前記式(XXI)で表される化合物を用いればよい。
【0119】
また、前記第1の製造方法、第2の製造方法、および第3の製造方法において、式(I)中前記環Aの軸配置がRaである式(I)の化合物を製造する場合には、立体配置がRである前記式(XX)で表される化合物を用いればよい。また、式(I)中前記環Aの軸配置がSaである式(I)の化合物を製造する場合には、立体配置がSaである前記式(XXI)で表される化合物を用いればよい。
【実施例1】
【0120】
バナジウム化合物(I−1)の製造
【0121】
【化37】

【0122】
空気雰囲気下、(R)−3,3’−ジホルミル−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(100mg,0.292mmol)と(S)−tert−ロイシン(76.6mg,0.584mmol)のエタノール溶液(9.7mL)にモレキュラーシーブス3A(100mg)を加え、80℃で加熱環流した。2時間後、反応溶媒のエタノールを減圧下留去し、得られた残渣にCH2Cl2(9.7mL)を加えた。アルゴン雰囲気下、得られた溶液にVOCl3(82μL,0.876mmol)を室温で加えた。8時間攪拌した後、メタノール(9.7mL)を反応混合物に加え、その後、減圧下に反応溶媒を留去した。得られた残渣をジエチルエーテル(20mL)で洗浄した。前記残渣をCH2Cl2と水の混合物(CH2Cl210mLと水10mL)に溶解し、前記有機層(CH2Cl2)を抽出した。前記有機層を乾燥した後、減圧乾燥して表題化合物(48%,103mg)を得た。
【0123】
1H-NMR(270MHz, CD3OD) δ1.20(s, 18H), 4.23(s, 2H), 7.38-7.46(m. 4H), 7.68-7.72(m, 2H), 8.04-8.07(m, 2H), 8.47(s, 2H), 8.96(bs, 2H)
IRスペクトル (KBr):1682(C=N), 1608(C=O), 995(V=O) cm-1
質量分析(ESI-TOF): m/z = 783 [M++2(-OMe)+Na]
元素分析[水和物として]:
計算値: C, 54.41; H, 4.83; N, 3.73;
測定値: C, 53.98; H, 4.60; N, 3.56
【実施例2】
【0124】
バナジウム化合物(I−1)の別の製造
酸素雰囲気下、(R)−3,3’−ジホルミル2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(50mg,0.146mmol)、(S)−tert−ロイシン(38.3mg,0.292mmol)及びVOSO4(95.2mg,0.584mmol)のエタノール溶液(5mL)に、モレキュラーシーブス3A(50mg)を加え、80℃で加熱環流した。48時間後、反応溶媒のエタノールを減圧下留去し、得られた残渣にCH2Cl2(10mL)を加えた。前記CH2Cl2に不溶な残渣(未反応のVOSO4)を濾過で除去した後、濾液から溶媒を減圧下留去した。得られた残渣を減圧下乾燥して、表題化合物(定量的,106mg)を得た。得られた化合物の1H−NMRスペクトル、IRスペクトル、質量スペクトルおよび元素分析の結果から、実施例1の化合物と同一物質であることを確認した。
【実施例3】
【0125】
バナジウム化合物(I−1)のさらに別の製造
笹井宏明ら著、「エナンチオ選択性二核バナジウム(IV)触媒による、同種カップリング反応における二重活性化(Dual Activation in a homolytic coupling reaction promoted by an enantioselective dinuclear vanadium (IV) catalyst)」、Tetrahedron Letters, エルゼビア社(Elsevier Ltd.)、2004年、45巻、1841〜1844頁(前記非特許文献3)に従い合成した下記式(XXX−1)で表されるバナジウム化合物(20mg,0.0286mmol)のメタノール(0.3mL)溶液を、室温下で2時間酸素バブリングした。反応溶媒を留去した後、得られた残渣を減圧下乾燥して表題化合物(定量的,21mg)を得た。得られた化合物の1H−NMRスペクトル、IRスペクトル、質量スペクトルおよび元素分析の結果から、実施例1の化合物と同一物質であることを確認した。
【0126】
【化38】

【実施例4】
【0127】
バナジウム化合物(I−2)の製造
【0128】
【化39】

【0129】
(R)−3,3’−ジホルミル−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル(50mg,0.146mmol)の代わりに、(R)−3,3’−ジホルミル−2,2’−ジヒドロキシ−5,6,7−トリヒドロ−1,1’−ビナフチル(52mg,0.146mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして行い、表題化合物を得た(47%,25.4mg)。
1H-NMR(270MHz, CD3OD) δ1.20(s, 18H), 1.60-1.95(m, 8H), 2.20-2.40(m, 2H), 2.80-3.20(m, 6H), 4.12(s, 2H), 7.41(s, 2H), 8.59(bs, 2H).
【実施例5】
【0130】
バナジウム化合物(I−3)の製造
【0131】
【化40】

【0132】
(S)−tert−ロイシン(76.6mg,0.584mmol)の代わりに(S)−フェニルアラニン(24.1mg,0.146mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして行い、表題化合物を得た(50%,29.2mg)。
IR (KBr):1684(C=N), 1614(C=O), 985(V=O) cm-1.
【実施例6】
【0133】
バナジウム化合物(I−4)の製造
【0134】
【化41】

【0135】
(S)−tert−ロイシン(76.6mg,0.584mmol)の代わりに(S)−フェニルグリシン(22.1mg,0.146mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして行い、表題化合物を得た(53%,29.9mg)。
IR (KBr):1680(C=N), 1610(C=O), 981(V=O) cm-1.
【0136】
実施例7〜15
ビナフトールの製造
式(X)のナフトール(0.2mol)および式(I−1)のバナジウム化合物(0.01mol、5mol%)のCH2Cl2溶液(1mL)を、空気雰囲気下攪拌した。反応終了後、反応溶液を濃縮することなく、直接シリカゲルクロマトカラムにより精製した。(展開溶媒 酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4〜1:4.5)。得られた式(XI)の化合物の収率および立体配置は、以下の表1に示すとおりである。前記式(XI)の化合物の収率は、別途合成した式(XI)の化合物を用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、下記表2に示すとおりである。
【0137】
【化42】

【0138】
【表1】


【0139】
【表2】

【0140】
実施例7〜15の結果に示すように、本発明のバナジウム化合物(I)は、触媒量使用することにより、ナフトールの酸化的カップリング反応の反応時間を短くすることが可能であり、かつ、得られる1,1’−ビナフトールのeeを高くすることが可能であることを確認できた。
【0141】
実施例16
2−ナフトール(0.2mol)および式(I−1)のバナジウム化合物(0.01mol、5mol%)のCH2Cl2溶液(1mL)を、空気雰囲気下30℃で24時間攪拌して(S)−ビナフトール(96%,85%ee)を得た。得られた(S)−ビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(S)−ビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例7と同様である。
【0142】
実施例17
CH2Cl2の代わりにCCl4、空気雰囲気の代わりに酸素雰囲気、30℃の代わりに0℃を用いた以外は実施例16と同様にして、(R)−ビナフトール(70%,70%ee)を得た。得られた(R)−ビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(R)−ビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例7と同様である。
【0143】
実施例18
式(I−1)のバナジウム化合物の代わりに、式(I−2)のバナジウム化合物を用いた以外は、実施例16と同様にして、(S)−ビナフトール(96%,76%ee)を得た。得られた(S)−ビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(S)−ビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例7と同様である。
【0144】
実施例19
式(I−1)のバナジウム化合物の代わりに、式(I−2)のバナジウム化合物を用いた以外は、実施例17と同様にして、(R)−ビナフトール(85%,78%ee)を得た。得られた(R)−ビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(R)−ビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例7と同様である。
【0145】
実施例20
7−メトキシ−2−ナフトール(0.2mol)および式(I−1)のバナジウム化合物(0.01mol、5mol%)のCH2Cl2溶液(1mL)を、空気雰囲気下30℃で24時間攪拌して(S)−7,7−ジメトキシビナフトール(98%,86%ee)を得た。得られた(S)−7,7−ジメトキシビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(S)−7,7−ジメトキシビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例12と同様である。
【0146】
実施例21
CH2Cl2の代わりにCCl4、空気雰囲気の代わりに酸素雰囲気、30℃の代わりに0℃を用いた以外は、実施例20と同様にして、(R)−7,7−ジメトキシビナフトール(33%,95%ee)を得た。得られた(R)−7,7−ジメトキシビナフトールの収率および立体配置は、別途合成した(R)−7,7−ジメトキシビナフトールを用いて、反応混合物をキラルHPLCで分析することにより得た。前記HPLC分析の測定条件は、実施例12と同様である。
【0147】
前記実施例16〜21の結果を、以下の表3にまとめて示した。表3に示すように、本発明のバナジウム化合物(I)は、反応溶媒等の反応条件を変更することにより、得られるビナフトールの立体配置をコントロールすることができることが確認できた。また、前記得られるビナフトールの鏡像体過剰率(ee)が高いことも確認できた。
【0148】
【表3】



【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の新規バナジウム化合物は、種々の反応の不斉触媒用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるバナジウム化合物。
【化1】

前記式(I)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(I)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【化2】

【請求項2】
前記置換基Rの立体配置が、Sである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記環Aの軸配置が、Raである請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記置換基Rが、C15アルキル基、C715アラルキル基、またはC614アリール基である請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
前記置換基Rが、tert−ブチル、ベンジルまたはフェニルである請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、tert−ブチルであり、前記環Aが、前記式(A2)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、
前記置換基Rが、ベンジルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物、および
前記置換基Rが、フェニルであり、前記環Aが、前記式(A1)で表される環であり、前記置換基Rの立体配置がSであり、前記環Aの軸配置がRaである式(I)に記載の化合物からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
溶媒中で、式(X)で表されるナフトール化合物を、バナジウム触媒存在下に酸化的にカップリングさせて式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物を形成する、式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の製造方法であって、
前記バナジウム触媒が、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物である製造方法。
【化3】

前記式(X)および(XI)中、置換基R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択されるか、または、
前記置換基R1およびR2、R3およびR4、R4およびR5、ならびにR5およびR6のうちいずれかは、前記置換基が結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の5〜7員環を形成し、残りの置換基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C15アルキル基、C15アルキルチオ基、C15アルコキシ基、C38アルケニルオキシ基、C15アルコキシカルボニル基、C715アラルキル基、C715アラルキルオキシ基およびC614アリール基からなる群から選択される。
【請求項8】
前記溶媒が、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、(CH2Cl)2、n−ペンタン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールおよびアセトニトリルからなる群から選択される請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、CH2Cl2であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がSである請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒が、CCl4であり、前記式(XI)で表される1,1’−ビナフトール化合物の軸配置がRである請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、
式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物とを反応させ、
前記反応混合物にさらにVOCl3を添加して反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成する製造方法。
【化4】

前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【化5】

【請求項12】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、
式(XX)で表される化合物と、式(XXI)で表される化合物と、VOSO4とを酸素存在下に反応させ、前記式(I)で表される化合物を形成する製造方法。
【化6】

前記式(XXI)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【化7】

【請求項13】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法であって、
式(XXX)で表される化合物の溶液に、酸素をバブリングして反応させて、前記式(I)で表される化合物を形成する製造方法。
【化8】

前記式(XXX)中、置換基Rは、水素原子、C15アルキル基、C15アルキルチオで置換されたC15アルキル基、C15アルコキシで置換されたC15アルキル基、C715アラルキル基、C15アルコキシで置換されたC715アラルキル基またはC614アリール基であり、
前記式(XXX)中の炭素原子aおよびbと共に形成する環Aは、下記式(A1)または式(A2)で表される環である。
【化9】


【公開番号】特開2008−63250(P2008−63250A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240632(P2006−240632)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、文部科学省、研究テーマ「科学技術総合研究委託 若手任期付研究員支援 自己組織化による機能性ナノマテリアルの創製」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】