説明

新規ラパコン化合物およびその使用方法

本発明は、ラパコンアナログおよびラパコン誘導体、ならびにその使用方法を提供する。これらの化合物は、細胞増殖障害の処置または予防のための薬学的組成物において使用され得る。これらの化合物はまた、乾癬または癌または前癌状態の処置もしくは予防において使用され得る。乾癬状態に加えて、本発明の組成物を用いて処置され得る増殖性疾患の型は、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管性血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病巣、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成腫瘍、および他の形成異常塊などである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
米国において毎年563,000人より多い死亡者を有し、癌は、心臓疾患に続く2番目の主要死因である(UBS Warburg「Disease Dynamics:The Cancer Market」,2000年11月8日)。手術および放射線治療は、疾患が初期に発見される場合、疾患に効き得るが、転移性疾患についての現在の薬物療法は、たいていは、対症的であり、そして長期間の治癒をほとんど提供しない。市場に参入している新規の化学療法を用いてさえ、患者の生存率における向上は、何年間でなく何ヶ月かで測定され、抵抗性腫瘍の処置における第一線の治療としての既存の薬剤、ならびに第二線および第三線の治療としての既存の薬剤の両方と組み合わせて効果的な、新規薬物についての必要性が存続している。
【0002】
過去において、最も成功した薬物処置レジメンは、2つ以上の薬剤を組み合わせており、その各々は、異なる作用機構を有し、そしてその各々は、個々に使用される場合、抗腫瘍活性を有する。これらの作用機構が異なるにも拘らず、癌の化学療法に現在使用される薬剤の大部分(アルキル化剤、白金アナログ、アントラサイクリン、およびトポイソメラーゼインヒビターのカンプトセシンファミリーが挙げられる)は、共通してDNAを重篤に損傷する特性(従って、「DNA損傷薬剤」として命名)を有する。放射線治療も、同様に機能する。大部分のDNA損傷薬剤および微小管標的薬剤(例えば、パクリタキセル)は、細胞周期のG/Mの移行期間における細胞の停止を引き起こす。G/Mの移行期間とは、細胞が、DNAを修復するか、または、DNA損傷が修復不可能である場合にアポトーシスを受けるように確約する、主要な細胞周期チェックポイントである。最近では、細胞チェックポイント機能をさらに開発するために新規の治療剤を同定することに、関心が大きくなっている。
【0003】
キノンであるβ−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]ピラン−5,6−ジオン)は、ラパコ樹木(Tabebuia avellanedae)(カタルパファミリー(Bignoniaceae)のメンバー)から単離され得るラパコール(ナフトキノン)から誘導される。ラパコールおよびβ−ラパコン(番号を付けられている)は、以下の化学構造を有する:
【0004】
【化19】

β−ラパコンならびにその中間体、その誘導体およびアナログは、Li,C.J.ら,(1993)J.Biol.Chem.,268(30):22463−22468に記載される。単一の薬剤として、β−ラパコンは、代表的には、1μM〜10μM(IC50)の範囲の濃度において、ヒト癌細胞株に対する有意な抗腫瘍活性を示している。細胞傷害性は、以下の細胞株において示されている:前骨細胞白血病を罹患する患者に由来する形質転換細胞株(Planchonら,(1996)Cancer Res.,55:3706−3711)、前立腺細胞株(Li,C.J.ら,(1995)Cancer Res.,55:3712−3715)、悪性神経膠腫細胞株(Weller,M.ら,(1997)Int.J.Cancer,73:707−714),ヘパトーム細胞株(Lai,C.C.,ら,(1998)Histol Histopathol,13:89−97)、結腸細胞株(Huang,L.ら,(1999)Mol Med,5,:711−720)、乳房細胞株(Wuertzberger,S.M.ら,(1998)Cancer Res.,58:1876)、卵巣細胞株(Li,C.J.ら,(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96(23):13369−13374),膵臓細胞株(Li,Y.ら,(2000)Mol Med,6:1008−1015;Li,Y.,(1999)Mol Med,5:232−239)、および薬物耐性株を含む多発性骨髄腫細胞株(Li,Y.,(2000)Mol Med,6:1008−1015)。細胞障害性効果は、正常で新鮮なヒトPBMCまたは増殖型のヒトPBMCについては観察されなかった(Li,Y.,(2000)Mol Med,6:1008−1015)。
【0005】
β−ラパコンは、DNA障害および細胞周期段階とは無関係に、チェックポイント分子(例えば、E2F)の不定期の発現を誘発することによって、機能するようにみえる。いくつかの研究は、β−ラパコンが、チェックポイントを活性化し、そして種々の組織由来の癌細胞でのアポトーシスを、これらの組織由来の正常細胞に影響を与えることなく誘発することを示している(米国特許出願公報第2002/0169135号(本明細書中に参考として援用される))。インタクトな調節機構を有する正常細胞において、このようなチェックポイント分子の強いられた発現は、一時的な発現パターンをもたらし、そしてほとんど結果を引き起こさない。対照的に、癌細胞および前癌細胞は、防御機構を有し、この防御機構は、不定期のチェックポイント分子(例えば、E2F)の未チェックの発現および持続的な発現をもたらし、癌細胞および前癌細胞における選択的細胞死をもたらす。
【0006】
β−ラパコンに加えて、抗増殖特性を有する多くのβ−ラパコンアナログは、例えば、PCT国際出願PCT/US93/07878(WO94/04145)(本明細書中で参考として援用される)、および、米国特許第6,245,807号(本明細書中で参考として援用される)に記載されるもののように、当該分野で開示されている。米国特許第6,245,807号において、種々の置換基が、β−ラパコン化合物の3位および4位に結合され得る。PCT国際出願PCT/US00/10169(WO 00/61142)(本明細書中で参考として援用される)は、3位に、および2位に結合したメチル基に代わって、種々の置換基を有し得るβ−ラパコンを開示する。米国特許第5,763,625号、同第5,824,700号、および同第5,969,163号(これらの各々が、本明細書中で参考として援用される)は、2位、3位および4位に種々の置換基を有するアナログならびに誘導体を開示する。さらに、多くの雑誌が、1つ以上の以下の位置(すなわち、2位、3位、8位および/または9位)において置換基を有するβ−ラパコンアナログおよびβ−ラパコン誘導体を報告する(Sabbaら,(1984)J Med Chem 27:990−994(2位、8位および9位における置換基);PortelaおよびStoppani,(1996)Biochem Pharm 51:275−283(2位および9位における置換基);Goncalvesら,(1998)Molecular and Biochemical Parasitology 1:167−176(2位および3位における置換基)を参照のこと)。
【0007】
さらに、ラパコンの「α」位および「β」位に硫黄含有ヘテロ環を有する構造が、報告されている(Kurokawa S,(1970)Bulletin of The Chemical Society of Japan 43:1454−1459;Tapia、RAら,(2000)Heterocycles 53(3):585−598;Tapia、RAら,(1997)Tetrahedron Letters 38(1):153−154;Chuang,CPら,(1996)Heterocycles 40(10):2215−2221;Suginome Hら,(1993)Journal of the Chemical Society,Chemical Communications 9:807−809;Tonholo Jら,(1988)Journal of the Brazilian Chemical Society 9(2):163−169;およびKrapcho APら,(1990)Journal of Medicinal Chemistry 33(9):2651−2655);しかし、これらの化合物の大部分において、ヘテロ環は還元されておらず、そして合成方法は、本発明の合成方法とかなり異なる。「α」位に還元型硫黄含有ヘテロ環を有するこれらの公知化合物もまた、本発明とかなり異なる合成方法を報告する。この合成方法とは、すなわち、2−メルカプト−1,4−ナフトキノンとアルケンとの光付加による2,3−ジヒドロナフト[2,3−b]チオフェン−4,9−ジオンの形成(Suginomeら)、または、ベンゾチオピラノキノンと1,3−ジエンとのAlder−Rickert反応によるナフト[2,3−b]チオピラノキノンの生成(Tapiaら、2000)である。これらの知見は、新規のラパコン誘導体およびラパコンアナログの設計および合成、ならびに種々の生物系における抗増殖性活性についてのこれらの評価を助成する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、式Iの化合物:
【0009】
【化20】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つ;またはR3もしくはR4のうちの1つ、およびR5またはR6のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、この環は、4〜8個の環員を有し;R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数である。
【0010】
好ましい実施形態において、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10は、水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2は、各々メチルであり、そしてR3〜R10は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1〜R4は、各々水素であり、R5およびR6は、各々メチルであり、そしてR7〜R10は、各々水素である。
【0011】
本発明はまた、式IIの化合物:
【0012】
【化21】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数であり、
ここで、R1およびR2が、両方ともメチルであり、R3およびR4が、両方ともHであり、かつR5およびR6のうちの1つが、OHであって、もう1つが、Hである場合、R7は、メチルまたはメトキシでなく、そしてR10は、メチルでない。
【0013】
好ましい実施形態において、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10は、水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2は、各々メチルであり、そしてR3〜R10は、各々水素である。
【0014】
本発明はまた、式IIIの化合物:
【0015】
【化22】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数である。
【0016】
好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つが、アルキルであり、R3およびR4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つが、アルキルであり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。
【0017】
本発明はまた、式IVの化合物:
【0018】
【化23】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数であり、
ここで:R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3およびR4のうちの1つが、メチルでなくて、もう1つが、Hであり、そしてR5、R6、R7およびR8の各々が、Hでなく;R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが、Hでなく;R1およびR2が、両方ともフェニルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、Hである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、メチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、Hであり、かつ、R5、R6、R7およびR8が、Hである場合、R3およびR4のうちの少なくとも1つが、OHでなくて、もう1つが、Hであり;R3およびR4のうちの1つが、カルボエトキシである場合、もう1つが、Hであり;そしてR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、各々Hでない。
【0019】
好ましい実施形態において、R1およびR2の両方は、置換または非置換のアルキルであり、R3およびR4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つは、メチルであり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。
【0020】
本発明はまた、式Vの化合物:
【0021】
【化24】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、該環は、4〜8個の環員を有し;R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、1〜10の整数であり、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々Hではない。
【0022】
好ましい実施形態において、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2は、各々水素であり、R3およびR4のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4のうちの1つは、ヒドロキシメチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。
【0023】
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物を含む薬学的組成物を提供する。好ましくは、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物は、治療有効量にある。
【0024】
本発明はまた、細胞増殖障害を処置または予防する方法を提供し、この方法は、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物をこの処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する。好ましくは、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の投与は、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する。
【0025】
本発明はまた、癌もしくは前癌状態を処置するか、または癌を予防する方法を提供し、この方法は、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物をこの処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する。好ましくは、投与は、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する。
【0026】
本発明はまた、乾癬を処置または予防する方法を提供し、この方法は、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物をこの処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0027】
本発明はまた、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の合成方法を提供する。
【0028】
別段定義されない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で記載されるものと同じか、または等価な方法および物質が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および物質は、以下に記載される。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参考としてそれらの全体において援用される。矛盾が生じる場合は、本明細書(定義を含む)を制御する。さらに、物質、方法、および実施例は、ほんの例示的なものであり、限定されることを意図されない。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、腫瘍性細胞増殖を阻害するための、新規の三環式ジヒドロチオピランおよびジヒドロチオフェンナフトキノン誘導体、この誘導体を作製するための合成方法、ならびにこの誘導体の使用を提供する。本発明のナフトキノン誘導体は、β−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト(1,2−b)ピラン−5,6−ジオン)、α−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[2,3−b]ピラン−5,10−ジオン),およびデュニオン(dunnione)(2,3,3−トリメチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−ナフト(2,3−b)ジヒドロフラン−6,7−ジオン)のような慣用名によって公知の化合物に関連する。α−ラパコンおよびデュニオンは、以下の化学構造を有する:
【0031】
【化25】

β−ラパコンの構造は、上記されている。
【0032】
本発明のアナログの特別な特徴は、このアナログのジヒドロチオフェンヘテロ環およびジヒドロチオピランヘテロ環である。特に、「β」位にジヒドロチオピランヘテロ環またはジヒドロチオフェンヘテロ環を有する公知のナフトキノン誘導体(すなわち、それぞれ、β−ラパコンまたはデュニオンのアナログ)はない。
【0033】
1つの実施形態において、本発明は式Iの化合物:
【0034】
【化26】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つ;またはR3もしくはR4のうちの1つ、およびR5またはR6のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、この環は、4〜8個の環員を有し(例えば、R1およびR3が、一緒に取り込まれ、4〜8員の炭素環または複素環を形成する);
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数である。
【0035】
好ましい式Iの化合物は、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10は、水素である場合のものである。好ましくは、R1およびR2は、各々メチルであり、そしてR3〜R10は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1〜R4は、各々水素であり、R5およびR6は、各々メチルであり、そしてR7〜R10は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1〜R4は、水素であり、R5およびR6のうちの1つは、アリールであって(ここで、好ましいアリールは、フェニルである)、もう1つは、水素であり、そしてR7〜R10の各々は、水素である化合物である。
【0036】
別の実施形態において、本発明は、式IIの化合物:
【0037】
【化27】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数であり、
ここで、R1およびR2が、両方ともメチルであり、R3およびR4が、両方ともHであり、かつR5およびR6のうちの1つが、OHであって、もう1つが、Hである場合、R7は、メチルまたはメトキシでなく、そしてR10は、メチルでない。
【0038】
好ましい式IIの化合物は、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R6は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10は、各々水素である場合のものである。好ましくは、R1およびR2は、各々メチルであり、そしてR3〜R10は、各々水素である化合物である。
【0039】
別の実施形態において、本発明は、式IIIの化合物:
【0040】
【化28】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数である。
【0041】
好ましい式IIIの化合物は、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つは、アルキルであり、R3およびR4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である場合のものである。好ましくは、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つが、アルキルであり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4は、各々アリールであり(ここで好ましいアリールは、フェニルである)、そしてR5〜R8は、各々水素である化合物である。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、式IVの化合物:
【0043】
【化29】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数であり、
ここで:
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3およびR4のうちの1つが、メチルでなくて、もう1つが、Hであり(まとめると、いずれかの配置において、R3およびR4は、メチルでなくHである)、そしてR5、R6、R7およびR8の各々が、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともフェニルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、Hである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、メチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、Hであり、かつ、R5、R6、R7およびR8が、Hである場合、R3およびR4のうちの少なくとも1つが、OHでなくて、もう1つが、Hであり(まとめると、いずれかの配置において、R3およびR4は、OHでなくHである);
R3およびR4のうちの1つが、カルボエトキシである場合、もう1つが、Hであり;そして
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々Hでない。
【0044】
好ましい式IVの化合物は、R1およびR2の両方は、置換または非置換のアルキルであり、R3およびR4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である場合のものである。好ましくは、R1およびR2のうちの1つは、Hであって、もう1つは、アルキルであり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である化合物である。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、式Vの化合物:
【0046】
【化30】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を提供し、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、この環は、4〜8個の環員を有し;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、1〜10の整数であり、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々Hではない。
【0047】
好ましい式Vの化合物は、R1およびR2は、アルキルであり、R3〜R4は、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である場合のものである。好ましくは、R1およびR2は、各々水素であり、R3およびR4のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4のうちの1つは、ヒドロキシメチルであって、もう1つは、水素であり、そしてR5〜R8は、各々水素である。別の好ましい実施形態において、R1およびR2のうちの1つは、メチルであって、もう1つは、水素であり、R3およびR4は、各々メチルであり、そしてR5〜R8は、各々水素である化合物である。
【0048】
式I、式II、式III、式IV、式Vの代表的な化合物は、図1に示される。
【0049】
用語「アルキル」とは、不飽和を有さない、炭素および水素を含む基(radical)をいう。アルキル基(radical)は、直鎖状または分枝鎖状であり得る。例示的なアルキル基(radical)としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、三級ブチル、二級ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。低級アルキル基は、C〜Cアルキル基(例えば、直鎖状または分枝鎖状のアルキル骨格中に1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基)である。アルキル基は、必要に応じて置換され得る。置換される場合、以下に列挙されるように、任意の特定の結合のポイントにおいて(例えば、任意の所定の炭素原子において)、アルキル基は、4つまでの置換基で置換され得る。このアルキル基が、あるアルキル基で置換されると言われる場合、これは、「分枝鎖アルキル基」と交換可能に用いられる。置換基は、1つ以上の部分を有し得、この部分の例としては、以下である:ヒドロキシル基、カルボキシレート、オキソ、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、ハロアルキル(例えば、CClまたはCF)、アルキルオキシカルボニル(−C(O)R)、アルキルカルボニルオキシ(−OCOR)、カルバモイル(−NHCOOR−または−OCONHR−)、尿素(−NHCONHR−)、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、アミノカルボニル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、複素環カルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cシクロアルキルオキシカルボニル、複素環オキシカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールスルホニル、複素環基など。
【0050】
好ましいアルキル基は、1〜6個の炭素原子を含む。本明細書で使用されるアルキレンとは、式C2nの架橋アルキル基をいう。例としては、CH、−CHCH−、−CHCHCH−などが挙げられる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「シクロアルキル」とは、炭素原子間の二重結合を交換または共鳴することなく、3〜15個の炭素原子を含むアルキル種である。シクロアルキル種は、1〜4つの環を含み得る。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどが挙げられる。シクロアルキル基に対する例示的な置換基は、1つ以上の以下の基を含む:ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオールおよび/またはアルキルチオ。
【0052】
用語「複素環(heterocyclyl)」または「複素環(heterocycle)」とは、安定な非芳香族の3〜7員単環式複素環または7〜11員二環式複素環をいい、これらは、飽和または不飽和のいずれかであり、縮合、スピロまたは架橋されてさらなる環を形成し得る。各複素環は、1つ以上の炭素原子、ならびに、窒素、酸素および硫黄からなる基から選択される1〜4個のヘテロ原子からなる。複素環基(radical)は、安定な構造の生成をもたらす任意の環内原子に結合され得る。好ましい複素環としては、3〜7員単環式複素環(より好ましくは、5〜7員単環式複素環)(例えば、ピペリジニル、ピラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、およびテトラヒドロフラニルであるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル」とは、上記のアルキルに対して長さおよび可能な置換において類似であるが、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、不飽和脂肪族基をいう。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖状アルケニル基(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、分枝鎖状アルケニル基、シクロアルケニル(例えば、脂環式)基(例えば、シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル置換シクロアルケニル基またはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキル置換アルケニル基またはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。用語「アルケニル」は、1つ以上の炭化水素骨格炭素に代えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を含むアルケニル基をさらに含む。特定の実施形態において、直鎖状アルケニル基または分枝鎖状アルケニル基は、6個以下の炭素原子をその骨格中に有する(例えば、直鎖状についてはC〜C、分枝鎖状についてはC〜C)。同様に、シクロアルケニル基は、3〜8個の炭素原子をその環構造中に有し得、より好ましくは、5〜6個の炭素をその環構造中に有し得る。用語「C〜C」は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含む。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキニル」とは、上記のアルキルに対して長さおよび可能な置換において類似であるが、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、不飽和脂肪族基をいう。例えば、用語「アルキニル」としては、直鎖状のアルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、分枝鎖状アルキニル基(アルキル置換アルキニル基またはアルケニル置換アルキニル基を含む)、およびシクロアルキル置換アルキニル基またはシクロアルケニル置換アルキニル基が挙げられる。用語「アルキニル」は、1つ以上の炭化水素骨格炭素に代えて酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはリン原子を含むアルキニル基をさらに含む。特定の実施形態において、直鎖状のアルキニル基または分枝鎖状アルキニル基は、6個以下の炭素原子をその骨格中に有する(例えば、直鎖状についてはC〜C、分枝鎖状についてはC〜C)。用語「C〜C」は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含む。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「アシル」は、アシル基(radical)(CHCO−)またはカルボニル基を含む化合物および部分を含む。「置換アシル」は、1つ以上の水素原子が、以下の基で置換されるアシル基を含む:例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシ、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、複素環、アルキルアリール、または芳香族部分もしくは複素芳香族部分。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「アリール」とは、1つ、2つ、または3つの環を有する芳香族炭素環式部分、または複素芳香族部分をいう。アリール基は、炭素環式であり得るか、または、必要に応じて、1〜4個のヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄、または酸素)をその芳香環中に含み得る。例示的なアリール基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キナゾリニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、フラニル、イミダゾリル、チオフェニルなど。アリール基は、必要に応じて、1つ以上の置換基で置換され得る。この置換基としては、例えば、以下である:ヒドロキシル基、ハロゲン、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、アシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、カルボキシレート、アミノカルボニル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cシクロアルキルカルボニル、複素環カルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cシクロアルキルオキシカルボニル、複素環オキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールスルホニル、複素環基など。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコキシ」とは、−O−アルキル基をいい、ここで、アルキルとは、本明細書中上記で定義されたものである。アルコキシ基は、酸素架橋を介して、主鎖、アリール基またはヘテロアリール基に結合される。アルコキシ基は、直鎖状または分枝鎖状であり得るが;直鎖状が好ましい。例としては、メトキシ、エチルオキシ、プロポキシ、ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、i−プロポキシなどが挙げられる。好ましいアルコキシ基は、1〜4個の炭素原子を含み、特に好ましいアルコキシ基は、1〜3個の炭素原子を含む。最も好ましいアルコキシ基は、メトキシである。
【0058】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素をいう。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合した化合物を含む。「アルキルアミノ」は、窒素が、少なくとも1つのさらなるアルキル基に結合した基および化合物を含む。「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が、少なくとも2つのさらなるアルキル基に結合した基を含む。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、それぞれ、窒素が、少なくとも1つまたは2つのアリール基に結合した基を含む。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」とは、少なくとも1つのアルキル基、および少なくとも1つのアリール基に結合したアミノ基をいう。「アルカミノアルキル」とは、アルキル基に結合した窒素原子にさらに結合したアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基をいう。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「カルボニル」または「カルボキシ」は、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含む、化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、酸無水物などが挙げられる。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン」または「ハロ」は、VIIa族の原子(例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)を含む。
【0062】
本明細書中で使用される場合、用語「塩」は、薬学的に受容可能な塩であり、酸付加塩を含み得る。この酸付加塩としては、以下が挙げられる:塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫化水素塩、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、および酒石酸塩;アルカリ金属カチオン(例えば、Na、K、Li)、アルカリ土類金属塩(例えば、MgもしくはCa)、または有機アミン塩。
【0063】
原子価が満たされていない任意のヘテロ原子または炭素原子は、原子価を満たすために水素原子を有すると仮定されることが、注意されるべきである。
【0064】
本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合形態、または純粋な形態、もしくは実質的に純粋な形態のいずれかにあると考えられる。本発明に従う化合物の定義は、全ての可能な立体異性体(すなわち、各不斉中心に対するRおよびSの立体配置)およびこれらの混合物を包含する。この定義は、非常に特別に、特定の活性を有するラセミ体および単離された光学異性体を包含する。このラセミ体は、物理的方法(例えば、分別結晶、ジアステレオマーの誘導体の分離もしくは結晶化、またはキラルカルムクロマトグラフィーによる分離)によって分割され得る。個々の光学異性体は、従来の方法(例えば、光学活性酸を用いる塩形成に続く結晶化)によって、ラセミ化合物から得られ得る。さらに、全ての幾何異性体(例えば、二重結合におけるE−立体配置およびZ−立体配置)は、他に特に述べられない限り、本発明の範囲内である。本発明の特定の化合物は、互変異性型で存在し得る。このような化合物の互変異性型は、他に特に述べられない限り、本発明の範囲内であると考えられる。
【0065】
本発明はまた、少なくとも1つの薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアと組み合わせて、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物を含む薬学的処方物を提供する。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能な賦形剤」または「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与と適合する、任意または全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅滞剤などを含むことが意図される。適切なキャリアは、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版」,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA(本明細書中に参考として援用される)に記載される。このようなキャリアまたは希釈剤の好ましい例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび不揮発性油のような非水性ビヒクルもまた、使用され得る。薬学的活性物質に対してのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、活性化合物と不適合性でない限り、組成物におけるその使用が意図される。補充性の活性化合物もまた、この組成物中に組み入れられ得る。
【0066】
式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物は、従来の手順に従って(すなわち、本発明の薬学的化合物を生成することによって)、治療有効量(例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍細胞の殺傷、細胞増殖障害の処置または予防などを介して、所望の治療効果を達成するのに十分な有効レベル)の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物(活性成分として)と標準薬学的キャリアまたは希釈剤とを組み合わせることによって調製される、適切な投与形態で投与される。これらの手順は、所望の調製物を得るのに適切なように、成分の混合、顆粒化、および圧縮または溶解を包含し得る。別の実施形態において、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物は、標準薬学的キャリアまたは希釈剤なしに、適切な投与形態で投与される。
【0067】
好ましい薬学的に受容可能なキャリアとしては、固体キャリア(例えば、乳酸、石膏、ショ糖、滑石、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸など)が挙げられる。例示的な液体キャリアとしては、シロップ剤、落花生油、オリーブ油、水などが挙げられる。同様に、このキャリアまたは希釈剤は、当該分野で公知の時間遅延物質(例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン)を、単独か、または蝋、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどとともに含み得る。当該分野で公知のような他の充填剤、賦形剤、芳香剤、および他の添加剤もまた、本発明に従って、薬学的組成物中に含まれ得る。
【0068】
本発明の活性化合物を含有する薬学的組成物は、一般的に公知の様式で(例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤作製、すり潰し、乳化、カプセル化、取り込み、または凍結乾燥処理の手段によって)製造され得る。薬学的組成物は、従来の様式で、薬学的に使用され得る調製物中への活性化合物の処理を容易にする、賦形剤および/または補助剤を含む1つ以上の生理学的に受容可能なキャリアを用いて処方され得る。言うまでもなく、適切な処方物は、選択される投与経路に依存する。
【0069】
本発明の化合物または薬学的組成物は、化学療法処置に現在使用される多くの周知の方法で、被験体に投与され得る。例えば、癌の治療について、本発明の化合物は、腫瘍に直接注入され得るか、血流もしくは体腔に注入され得るか、または経口的に摂取され得るか、あるいはパッチによって皮膚を介して適用され得る。乾癬状態の処置については、全身投与(例えば、経口投与)、または皮膚の罹患した領域に対する局所的投与が、好ましい投与経路である。選択される用量は、有効処置を構築するのに十分な量であるべきであるが、受容可能でない副作用を引き起こすほど多い量であるべきでない。患者の病状(例えば、癌、乾癬など)および健康状態は、好ましくは、処置の間、または処置後の適切な期間に亘って、詳しくモニタリングされるべきである。
【0070】
本発明はまた、哺乳動物における細胞増殖障害の処置のための方法を提供し、この方法は、このような処置を必要としている哺乳動物に、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物を投与する工程を包含する。この哺乳動物は、好ましくは、このような処置を必要としている哺乳動物である。本発明は、細胞増殖障害の処置に有用な医薬品の調製のための、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の使用をさらに提供する。好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物における癌または前癌状態の処置を提供し、この処置は、このような処置を必要としている哺乳動物に、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物を投与する工程を包含する。
【0071】
好ましい実施形態において、有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物は、哺乳動物の正常細胞に影響を与えることなく哺乳動物における細胞増殖障害を処置するための方法で使用される。好ましくは、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物が、哺乳動物における正常細胞に影響を与えることなく癌細胞でのアポトーシスを誘発することによって、哺乳動物における癌を処置するための方法で使用される。別の好ましい実施形態において、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の投与は、正常細胞のE2F活性(例えば、E2Fレベル)に影響を与えることなく、異常増殖細胞における転写因子のE2Fファミリーのメンバー(E2F1、E2F2またはE2F3を含むが、これらに限定されない)の持続的(一時的でない)活性(例えば、レベルの上昇)を誘発する。好ましくは、投与は、正常細胞におけるE2F活性(例えば、E2Fレベル)に影響を与えることなく、癌細胞における持続的E2F活性(例えば、E2Fレベルの上昇)を誘発する。E2F活性の誘発およびE2Fレベルの上昇を測定する方法は、Liら,(2003)Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674−8に示される。別の好ましい実施形態において、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の投与は、正常細胞におけるアポトーシスを誘発することなく、異常に増殖する細胞におけるアポトーシスを誘発する。
【0072】
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の投与することによって、哺乳動物における細胞増殖障害に対して保護する方法を提供する。本発明はまた、細胞増殖障害の予防に有用な医薬の調製のための、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の使用を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、哺乳動物における癌の予防を提供し、この予防は、このような処置を必要としている哺乳動物に、治療有効量の式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物を投与する工程を包含する。
【0073】
別の実施形態において、本発明は、治療有効量の式V’の化合物:
【0074】
【化31】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物を投与することによって、哺乳動物における細胞増殖障害に対して処置または保護する方法を提供する。式V’の化合物において、
R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、この環は、4〜8個の環員を有し;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、1〜10の整数である。
【0075】
好ましくは、治療有効量の式V’の化合物は、哺乳動物における正常細胞に影響を与えることなく癌細胞におけるアポトーシスを誘発することによって、哺乳動物における癌を処置するための方法で使用される。別の好ましい実施形態において、治療有効量の式V’の化合物の投与は、正常細胞のE2F活性(例えば、E2Fレベル)に影響を与えることなく、異常に増殖する細胞における転写因子のE2Fファミリーのメンバー(E2F1、E2F2またはE2F3を含むが、これらに限定されない)の持続的(一時的でない)活性(例えば、レベルの上昇)を誘発する。好ましくは、投与は、正常細胞におけるE2F活性(例えば、E2Fレベル)に影響を与えることなく、癌細胞における持続的なE2F活性の上昇(例えば、E2Fレベルの上昇)を誘発する。別の好ましい実施形態において、治療有効量の式V’の化合物の投与は、正常細胞におけるアポトーシスを誘発することなく、異常に増殖する細胞におけるアポトーシスを誘発する。
【0076】
本発明の化合物は、好ましくは、(例えば、本明細書中で記載されるような)薬学的組成物の形態で投与される。
【0077】
哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ)であり得る。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞増殖障害」とは、細胞の無秩序な増殖および/または異常増殖が、癌性または非癌性(例えば、乾癬状態)であり得る所望しない状態または疾患の発症をもたらし得る状態をいう。本明細書中で使用される場合、用語「乾癬状態」とは、ケラチノサイト高増殖、炎症性細胞浸潤、およびサイトカイン変質を含む障害をいう。
【0079】
好ましい実施形態において、細胞増殖障害は、癌である。本明細書中で使用される場合、用語「癌」は、固体腫瘍(例えば、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、悪性黒色腫、黒色腫でない皮膚癌)、ならびに血液学的腫瘍および/または悪性腫瘍(例えば、小児白血病およびリンパ腫、多発性黒色腫、ホジキン病、リンパ球起源および皮膚起源のリンパ腫、急性白血病および慢性白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病))、形質細胞新生物、リンパ様新生物、およびAIDSに関連する癌を含む。
【0080】
乾癬状態に加えて、本発明の組成物を用いて処置され得る増殖性疾患の型は、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細血管性血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病巣、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成腫瘍、および他の形成異常塊などである。1つの実施形態において、増殖性疾患は、形成異常および形成異常様の疾患を含む。
【0081】
本発明はまた、式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の合成についての方法を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、スキーム1に従う化合物の合成のための方法を提供する。
【0082】
1つの実施形態において、本発明は、式Iの化合物の合成方法を提供し、この方法は、式A:
【0083】
【化32】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、酸素を硫黄と交換して、式Aの化合物のジチオンを形成する工程であって、
式Aにおいて、R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数である、工程;
および、
上記式Aの化合物のジチオンと強酸とを反応させて、式Iの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0084】
好ましい実施形態において、式Iの形態をなす化合物は、化合物1である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸である。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、式IIの化合物の合成方法を提供し、この方法は、式B:
【0086】
【化33】

を有する化合物と二硫化ナトリウムとを反応させて、酸素を水素と交換し、式Bの化合物のジチオンを形成する工程であって、
式Bにおいて、R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして、
nは、0〜10の整数であり、
ここで、R1およびR2が、両方ともメチルであり、R3およびR4が、両方ともHであり、かつR5およびR6のうちの1つが、OHであって、もう1つがHである場合、R7が、メチルまたはメトキシでなく、そしてR10が、メチルでない、工程;
および、
上記式Bの化合物のジチオンと強酸とを反応させて、式IIの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0087】
好ましい実施形態において、式IIの形態をなす化合物は、化合物2である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸である。
【0088】
別の実施形態において、本発明は、式IIIの化合物を合成する方法を提供し、この方法は、式C:
【0089】
【化34】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、この式Cの化合物のジチオンを形成する工程であって、
式Cにおいて、Raは、R1およびR2より選択され;
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは、0〜10の整数である、工程;
および、
上記式Cの化合物のジチオンを強酸で処置して、式IIIの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0090】
好ましい実施形態において、式IIIの形態をなす化合物は、化合物3である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸である。
【0091】
別の実施形態において、本発明は、式IVの化合物を合成する方法を提供し、この方法は、式D:
【0092】
【化35】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、式Dの化合物のジチオンを形成する工程であって、
式Dにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして、
nは、0〜10の整数であり、
ここで:
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3およびR4のうちの1つが、メチルでなくて、もう1つが、Hであり、そしてR5、R6、R7およびR8の各々が、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともフェニルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、Hである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、メチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、Hであり、かつ、R5、R6、R7およびR8が、Hである場合、R3およびR4のうちの少なくとも1つが、OHでなくて、もう1つが、Hであり;
R3およびR4のうちの1つが、カルボエトキシである場合、もう1つが、Hであり;そして、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、各々Hでない、工程;
および、
上記式Dの化合物のジチオンを強酸で処置して、式IVの化合物を形成する工程、
を包含する、方法を提供する。
【0093】
好ましい実施形態において、式IVの形態をなす化合物は、化合物4である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸である。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明は、スキーム2に従う化合物の合成のための方法を提供する。1つの実施形態において、本発明は、式Iの化合物の合成方法を提供し、この方法は、式E:
【0095】
【化36】

を有する化合物と、式:
【0096】
【化37】

を有する分枝アリルチオールとを、弱塩基の存在下で反応させて、式:
【0097】
【化38】

を有するスルフィド中間体を形成する工程であって、
式Eにおいて、R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
分枝アルカンチオールにおいて、Raは、R3およびR4より選択され;
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そして、nは、0〜10の整数である、工程、
および、
上記スルフィド中間体を強酸で処置して、式Iの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0098】
好ましい実施形態において、式Iの形態をなす化合物は、化合物5である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸であり、弱塩基は、トリエチルアミンである。
【0099】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式IIIの化合物の合成方法を提供し、この方法は、式F:
【0100】
【化39】

を有する化合物と、式:
【0101】
【化40】

を有する2−ヒドロキシアルキルチオールとを、弱塩基の存在下で反応させて、式:
【0102】
【化41】

を有するスルフィド中間体を形成する工程であって、
式Fにおいて、R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
2−ヒドロキシアルキルチオールにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そしてnは、1〜10の整数である、工程、
および、
上記スルフィド中間体を強酸で処置して、式IIIの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0103】
好ましい実施形態において、式IIIの形態をなす化合物は、化合物6および化合物7である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸であり、弱塩基は、トリエチルアミンである。
【0104】
別の好ましい実施形態において、本発明は、式Vの化合物を合成する方法を提供し、この方法は、式G:
【0105】
【化42】

を有する化合物と、式:
【0106】
【化43】

を有する2−ヒドロキシアルコールとを反応させて、式:
【0107】
【化44】

を有するスルフィドを形成する工程であって、
式Gにおいて、R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
2−ヒドロキシアルコールにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そして、nは、1〜10の整数である、工程、
および、
上記スルフィドを強酸で処置して、そして反応を酸化剤に曝露し、式Vの化合物を形成する工程、
を包含する。
【0108】
好ましい実施形態において、式Vの形態をなす化合物は、化合物8、化合物9、化合物10、化合物11および化合物12である。別の好ましい実施形態において、強酸は、濃硫酸またはトリフルオロ酢酸である。別の好ましい実施形態において、酸化剤は、酸素ガスである。好ましくは、酸素ガスは、空気である。
【0109】
本発明は、以下の実施例にさらに記載される。この実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0110】
(概要)
本発明の化合物は、種々の方法で調製され得る。この方法のうちのいくつかは、当該分野で公知である。概して、本発明の化合物は、当業者に公知の標準合成方法および手順、または、本明細書中の教示に照らして当業者に明らかである標準合成方法および手順を使用することによって、市販の出発物質、文献に公知の化合物、または容易に調製される中間体から調製され得る。有機分子の調製および官能基変換ならびに官能基操作のための標準合成方法および手順は、関連の科学文献から、または当該分野の標準教本から取得し得る。任意の1つの出典またはいくつかの出典に限定されないが、古典的教本(例えば、Smith,M.B.;March,J.March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,第5版;John Wiley & Sons:New York,2001;およびGreene,T.W.;Wuts,P.G.M.Protective Groups in Organic Synthesis,第3版;John Wiley & Sons:New York,1999)は、当業者に公知の有機合成の有用かつ認識された参考教本である。以下の合成法の記載は、本発明の化合物の調製のための一般的手順を例示するが、限定しないように設計される。
【0111】
クロマトグラフィーとは、別段述べられない限り、溶離液としてCHClを用いるシリカゲルのカラムクロマトグラフィーをいう。H NMRスペクトルを、内部標準としてテトラメチルシランを用いて400MHzで記録した。
【0112】
(実施例1.式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の合成)
本発明の化合物1、化合物2、化合物3および化合物4を、O含有ヘテロ環を有するほぼ置換されたナフトキノンアナログから出発して、2工程の反応プロセスによって合成した。2つの工程は:1)水硫化ナトリウムでの処置による、ナフトキノン分子のカルボニル基における酸素原子の硫黄原子での交換;および2)濃硫酸のインサイチュ付加による、ジヒドロチオピラン複素環またはジヒドロチオフェン複素環の形成である。第1の反応工程は、一般的な求核反応である。この反応において、水硫化物アニオンは、カルボニル基を攻撃して、硫黄置換カルボニル基を形成し;この工程の収率は、溶媒極性および溶媒中の置換カルボニル基の安定性によって決定される。第2反応工程は、β−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト(1,2−b)ピラン−5,6−ジオン)およびα−ラパコン(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[2,3−b]ピラン−5,10−ジオン)が、濃硫酸中で互いに変換され得るという観察に基づく。第2の反応工程は、2位(上記のβ−ラパコンの構造を参照のこと)における炭素カチオン中間体の形成を包含する。この炭素カチオン中間体の形成は、エーテル結合の切断(例えば、α−ラパコン、β−ラパコンまたはデュニオンが、出発物質である場合)、またはアルケン基のプロトン付加(例えば、ラパコールアナログが、出発物質である場合)に起因する。この工程の収率は、炭素カチオンの安定性により決定され、2つのイソ形(αおよびβ)の割合は、硫酸溶液の温度によってある程度決定され得る。炭素カチオンを安定させる2位における任意の置換は、この反応工程の収率を向上させるはずである。所望のイソ形は、抽出およびカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)によって、単離および精製され得る。
【0113】
化合物1(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオン)、化合物2(3,4−ジヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ナフト[2,3−b]チオピラン−5,10−ジオン)、化合物3(2,3,3−トリメチル−2H−3H−ナフト[1,2−b]チオフェン−4,5−ジオン)、および化合物4(2,3,3−トリメチル−2H−3H−ナフト[1,2−b]チオピラン−4,9−ジオン)の調製のために使用されるプロセスは、以下の通りである(また、以下のスキーム1を参照のこと):乾燥した250mlの丸底フラスコ中で、化合物1については1.5g(6.2mmol)のα−ラパコン(または、化合物2、化合物3もしくは化合物4については、それぞれ、β−ラパコン、ラパコールアナログ、もしくはデュニオン)を、アルゴン雰囲気下で20mlの無水THFに溶解した。次いで、1.5g(19.2mmol)の乾燥水硫化ナトリウムを溶液中に加え、そして生じた混合物を、室温で、アルゴン雰囲気下、1時間激しく撹拌した。1,4−ジオキサン中の4.5ml(18mmol)の4M HCl溶液を、この混合物中に加え、そしてこの混合物を、同条件でさらに4時間撹拌した。化合物1および化合物3の合成については、この反応混合物を氷浴において冷却し、次いで、100mlの濃硫酸を加え、そして生じた混合物を0℃で、アルゴン雰囲気下、20分間撹拌した。化合物2および化合物4の合成については、100mlの濃硫酸を、室温で直接加え(硫酸と過剰な水硫化ナトリウムとの間の反応が、この反応混合物を加熱した)、そして生じた混合物を、室温で、アルゴン雰囲気下、20分間撹拌した。この反応を、この混合物を400mlの氷水中に注ぐことによって停止させ、生じた混合物を2×150mlのジクロロメタンで抽出した。この有機相を貯蔵して、水(300ml)、5%重炭酸ナトリウム水溶液(300ml)および1%塩化ナトリウム水溶液(300ml)で連続的に洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム(20g)で乾燥させた。濾過の後、この濾液をRotovapによって蒸発して乾燥させた。残渣を20mlのジクロロメタン/ヘキサン(1:1)に溶解し、そしてシリカゲルカラムに充填した。ジクロロメタンを使用して化合物1および化合物3を溶出し、そしてジクロロメタン/ヘキサン(2:1)を使用して化合物2および化合物4を溶出した。各生成物に、1つの主な不純物が付随した。この得られた不純物は、化合物1、化合物2、化合物3および化合物4の反応混合物について、それぞれ、β−ラパコン、α−ラパコン、デュニオン、および2,3,3−トリメチル−2H−3H−ナフト[2,3−b]フラン−4,9−ジオン(α−デュニオン)であった。生成物のNMR分析および質量スペクトル(MS)分析を、Spectral Data Service,Inc.,818 Pioneer St.,Champaign,IL 61820およびHT Laboratories,9823 Pacific Height Blvd.,Suite F,San Diego,CA 92121によって行った。NMR分析およびMS分析は、表1に示される化合物1、化合物2、および化合物3の構造を確認する。α−デュニオンは、単離された化合物が化合物4に示される構造を有することを強く示唆する。
【0114】
この合成法によって生成された化合物の全収率は、2%と10%との間であった。上記のように、収率は、出発ナフトキノンの2位における置換に依存する。β−ラパコンの2位における三級構造は、より安定な中間体を提供し、従って、デュニオンの2位における二級炭素よりも高い収率となる。生成物収率はまた、溶媒選択に依存するので、テトラヒドロフラン(THF)以外の溶媒が、より高い収率を達成するために使用され得る。
【0115】
【化45】

化合物5、化合物6および化合物7を、2工程の反応プロセスによって合成した。この2工程は:(1)少量のトリエチルアミン存在下、アセトニトリル中での1,2−ナフトキノンとの反応による、2−ヒドロキシアルキルチオールまたは分枝鎖状アリルチオールのアリール化:(2)濃硫酸での処理による、ジヒドロチオピラン複素環またはジヒドロチオフェン複素環の形成である。第1の反応工程は、周知のキノンアリール化反応である。本願の方法は、反応時間を減らし、生成物の収率を高める弱塩基(すなわち、トリエチルアミン)の使用の初めての例であるので、本願の方法は、Mackenzieら,(1986)J.Chem.Soc.Perkin Tran.I,2233−2241)によって報告される方法と異なる。第2の反応工程は、三級ヒドロキシルまたは分枝鎖状アリルのプロトン付加によって形成されるカチオン中間体を含む新規の反応である。カチオン中間体は、二級ヒドロキシルのプロトン付加から形成されることはより難しいので、以前に決められたように濃硫酸で処理する場合、セミデヒドロチオキサンヘテロ環を、2−ヒドロキシアルキルチオールアリール化生成物から形成した。
【0116】
化合物5(2−メチル−3,3−ジフェニル−2H−3H−ナフト[1,2−b]チオフェン−4,5−ジオン)、化合物6(3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオン)および化合物7(3,4−ジヒドロ−4−フェニル−2H−ナフト[1,2−b]チオピラン−5,6−ジオン)の調製のために使用されるプロセスは、以下の通りである(また、以下のスキーム2を参照のこと):乾燥した250mlの丸底フラスコ中で、10mmolの1,1−ジフェニル−2−メルカプト−1−プロパノール(または、化合物5、化合物6もしくは化合物7について、それぞれ、3−メチル−1−メルカプト−2−ブテン、もしくはシンナミルチオール)を、100mlのアセトニトリル中に溶解させ、次いで、0.5mlのトリエチルアミン(TEA)および1.58g(10mmol)の1,2−ナフトキノンを加えた。この混合物を、室温で、一級チオールを有する化合物については2時間、または二級チオールを有する化合物については一晩撹拌し、次いで、蒸発して乾燥させた。20mlの無水トルエンをこの残渣に加え、そして再び蒸発して乾燥させた。この残渣を、15mlのメチレンクロライドに溶解し、シリカゲルカラムに充填した。この中間生成物4−(2−ヒドロキシアルキルスルファニルまたは分枝鎖状アリルスルファニル)−1,2−ナフトキノンを、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)によって溶出した。この中間生成物の収率は、10%〜80%の範囲にあり、一級チオールついては高収率であり、そして、二級チオールについては低収率であった。
【0117】
精製された中間生成物4−(2−ヒドロキシアルキルスルファニルまたは分枝鎖状アリルスルファニル)−1,2−ナフトキノンを、50重量倍の濃硫酸に溶解し、そしてこの混合物を、室温に30分間置き、次いで、10倍容積の氷水中に注ぎ、そして生じた混合物を、メチレンクロライドで抽出した。この有機相を水で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過の後、この濾液を蒸発して乾燥させ、次いで、10mlのメチレンクロライドに溶解し、シリカゲルカラムに充填した。最終純生成物を、メチレンクロライド/酢酸エチル(10:0〜10:2)を用いて溶出した。生成物のNMR分析およびMS分析を、上記のように行った。結果は表1に示す。
【0118】
【化46】

化合物8、化合物9、化合物10、化合物11、および化合物12を、2工程の反応プロセスで合成した。この2工程は:(1)微量のトリエチルアミンの存在下、アセトニトリル中での1,2−ナフトキノンとの反応による、2−ヒドロキシアルキルチオールのアリール化;(2)濃硫酸(またはトリフルオロ酢酸)での処理および空気への曝露による、セミデヒドロチオキサンヘテロ環の形成である。第1の反応工程は、周知のキノンアリール化反応である。本願方法は、反応時間を減らし、生成物の収率を高める弱塩基(すなわち、トリエチルアミン)を使用したので、本願の方法は、Mackenzieら,(1986)J.Chem.Soc.Perkin Tran.I,2233−2241)によって報告される方法と異なる。この第2の反応工程は新規の反応であり、この機構は、まだ明らかではない。4−(2−ヒドロキシエチルスルファニル)−1,2−ナフトキノンとしての2−ヒドロキシアルキルチオールのアリール化生成物は、空気に曝露される場合、室温で非常に安定であり、これは、以前の研究(Sugiyamaら,(1999)Drug Metabolism and Disposition,27(1):60−67)と反対であり、そして強酸(例えば、濃硫酸またはトリフルオロ酢酸)で処理される場合のみ、セミデヒドロチオキサンヘテロ環を形成する。
【0119】
化合物8(11,12−デヒドロ−ナフト[1,2−b]チオキサン−9,10−ジオン)、化合物9(2−メチル−11,12−デヒドロ−ナフト[1,2−b]チオキサン−9,10−ジオン)、化合物10(2,3−ジメチル−11,12−デヒドロ−ナフト[1,2−b]チオキサン−9,10−ジオン)、化合物11(2−ヒドロキシメチル−11,12−デヒドロ−ナフト[1,2−b]チオキサン−9,10−ジオン)、および化合物12(2,2,3−トリメチル−11,12−デヒドロ−ナフト[1,2−b]チオキサン−9,10−ジオン)の調製のために使用されるプロセスは、以下の通りである(また、以下のスキーム3を参照のこと):乾燥した250mlの丸底フラスコ中で、10mmolの2−メルカプトエタノール(またはl−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メチル−3−メルカプト−2−ブタノール、他の2−ヒドロキシアルキルチオール)を、100mlのアセトニトリルに溶解し、次いで、0.5mlのトリエチルアミンおよび1.58g(10mmol)の1,2−ナフトキノンを加えた。この混合物を、室温で、一級チオールについては2時間、または二級チオールについては一晩撹拌し、次いで、蒸発して乾燥させた。20mlの無水トルエンをこの残渣に加え、そして蒸発して乾燥させた。この残渣を、15mlのメチレンクロライドに溶解し、そしてシリカゲルカラムに充填した。この中間生成物4−(2−ヒドロキシアルキルスルファニル)−1,2−ナフトキノンを、酢酸エチル/ヘキサン(9:1〜1:1、2−ヒドロキシアルキルチオールの極性に依存する)によって溶出した。この中間生成物の収率は、10%〜80%の範囲にあり、一級チオールについては高収率であり、2級チオールについては低収率であった。
【0120】
精製した中間生成物4−(2−ヒドロキシアルキルスルファニル)−1,2−ナフトキノンを、50倍重量のトリフルオロ酢酸(または濃硫酸)に溶解し、そしてこの混合物を、室温で30分間置いた。トリフルオロ酢酸溶液に対しては、蒸発およびトルエンとの共蒸発(co−evaporation)を適用して、トリフルオロ酢酸を除去した。しかし、濃硫酸溶液を10倍容積の氷水中に注ぎ、そして生じた混合物を、メチレンクロライドで抽出した。次いで、この有機相を水で洗浄して、そして硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。濾過の後、この濾液を蒸発して乾燥させた。両方の場合において、粗生成物残渣を10mlのメチレンクロライドに溶解し、そしてシリカゲルカラムに充填した。最終純生成物を、メチレンクロライド/酢酸エチル(10:0〜10:2)を用いて溶出した。この生成物のNMR分析およびMS分析を、上述のように行った。結果は表1に示す。
【0121】
【化47】

【0122】
【表1】

(実施例2.式I、式II、式III、式IVまたは式Vの化合物の抗増殖活性)
本発明の化合物は、種々の癌細胞株に対する強力な抗増殖活性を実証された。この癌細胞株としては、以下が挙げられる:SK−OV−3およびOVCAR−3ヒト卵巣癌細胞;SW−480,HT−29,DLD1およびHCT−116ヒト結腸癌細胞;MCF−7およびMDA−MB−231ヒト乳癌細胞;MIA PACA−2およびBXPC−3ヒト膵癌細胞;NCI−H226およびA549ヒト肺癌細胞;ならびにDU−145およびPC−3ヒト前立腺癌細胞。β−ラパコンは、癌細胞株のみでアポトーシスを誘発し、正常細胞では誘発しないので(Liら,(2003)Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674−8)、本願化合物はまた、NCM 460正常結腸上皮細胞およびMCF 10A正常乳房上皮細胞を含む種々の組織由来の正常細胞株のパネルにおいて試験した。
【0123】
表2は、50%の細胞増殖(IC50)を阻害するために必要とされる化合物の濃度を示す。表2に示されるように、少ないマイクロモル範囲以下にあるIC50値が、試験された全ての癌細胞株において、いくつかのこれらの化合物について得られた。
【0124】
本発明の化合物の別の効果は、転写因子のE2Fファミリーのメンバーの活性(例えば、レベルの上昇)の誘発または上昇である。β−ラパコンは、癌細胞の核において持続的E2F活性(例えば、レベルの上昇)を誘発するが、正常細胞においては誘発せず、G1期および/またはS期における癌細胞の停止という結果になることが研究によりを示された。本発明のいくつかの化合物は、持続するE2F活性(例えば、レベルの上昇)において効果的であり、従って、G1期および/またはS期の停止を引き起こした。さらに、本発明の化合物は、正常細胞に対して有意な毒性効果を有さない(表2を参照のこと)。
【0125】
細胞増殖アッセイを、上記のように行った(Muellerら,(1996)J.Med.Chem.39:3132−3138;Muellerら,(1994)J.Med.Chem.37:1660−1669)。さらに詳細には、指数関数的に増殖する細胞を、6ウェルプレートの1ウェル当たり細胞1,000個で撒き、そして24時間付着させた。本発明の化合物、またはβ−ラパコン、またはデュニオンを、DMSOに可溶化し、そしてマイクロモル濃度でそのウェルに加えた。コントロールウェルを、当用量のDMSOで処理した。4時間後、上清を除去し、そして新しい培地を加えた。培養物を、10〜15日間毎日観察し、次いで、固定して染色した。細胞30個以上のコロニーを、生存体として数えた。
【0126】
表2に示される本発明のアッセイ、ならびにE2F活性の誘発およびE2Fレベルの上昇を測定する方法は、以下に見出された記載に従って実行され得る:Liら,(2003)Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674−8および米国特許出願公報第2002/0169135号(両方とも、本明細書中で参考としてその全体において援用される)。
【0127】
本願の合成ラパコン誘導体化合物の抗増殖活性は、本発明の化合物が、広い抗癌活性を示すことが期待され得ると示唆する。例えば、本発明の化合物は、癌(例えば、乳癌、白血病、肺癌、卵巣癌、脳癌、肝臓癌、膵癌、前立腺癌、および結腸直腸癌)を処置するのに効果的である。これらの処置は、本願のラパコン誘導体化合物(式I、式II、式III、式IVまたは式V)を、単独か、または他の化学療法薬剤もしくは放射線治療と組み合わせて利用することによって達成される。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、高増殖性細胞形成または癌細胞形成を予防することによって、高増殖性障害および癌の予防または処置のために(例えば、予防薬として)使用される。
【0128】
β−ラパコンおよび類似の化合物を用いた実験の結果は、本発明の化合物が、種々のヒト癌細胞に対して強力なアポトーシス効果を有し、そして他のヒト癌細胞の増殖を阻害し得ることを示した。本発明の化合物は、化学療法処置に現在使用される多くの周知の方法で適用され得る。例えば、本発明の化合物は、腫瘍に直接注入され得るか、血流もしくは体腔に注入され得るか、または経口的に摂取され得るか、あるいはパッチによって皮膚を介して適用され得る。選択される用量は、有効な処置を構築するのに十分な量であるべきだが、受容可能でない副作用を引き起こすほど多い量であるべきでない。患者の癌の状態および健康状態は、好ましくは、処置の間、および処置後の適切な期間、詳しくモニタリングされるべきである。
【0129】
【表2−1】

【0130】
【表2−2】

(他の実施形態)
本発明は、その詳細な説明と組み合せて記載されているが、上記の説明は、例示的であることを意図し、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。他の局面、利点、および変更は、添付の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、本発明に従う、ラパコンアナログ化合物およびラパコン誘導体化合物を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物であって、ここで、
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つ;またはR3もしくはR4のうちの1つ、およびR5またはR6のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、該環は、4〜8個の環員を有し;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数である、
化合物。
【請求項2】
R1およびR2が、アルキルであり、R3〜R6が、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10が、水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1およびR2が、各々メチルであり、そしてR3〜R10が、各々水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1〜R4が、各々水素であり、R5およびR6が、各々メチルであり、そしてR7〜R10が、各々水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療有効量の請求項1に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項6】
細胞増殖障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項5に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項7】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
癌もしくは前癌状態を処置するか、または癌を予防する方法であって、治療有効量の請求項5に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項9】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
乾癬を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項5に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
式IIの化合物:
【化2】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物であって、ここで、
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数であり、
ここで、R1およびR2が、両方ともメチルであり、R3およびR4が、両方ともHであり、かつR5およびR6のうちの1つが、OHであって、もう1つが、Hである場合、R7は、メチルまたはメトキシでなく、そしてR10は、メチルでない、
化合物。
【請求項12】
R1およびR2が、アルキルであり、R3〜R6が、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10が、水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
R1およびR2が、各々メチルであり、そしてR3〜R10が、各々水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療有効量の請求項11に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項15】
細胞増殖障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
癌もしくは前癌状態を処置するか、または癌を予防する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項18】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
乾癬を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
式IIIの化合物:
【化3】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物であって、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数である、
化合物。
【請求項21】
R1およびR2のうちの1つが、Hであって、もう1つが、アルキルであり、R3およびR4が、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニルであり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
R1およびR2のうちの1つが、Hであって、もう1つがアルキルであり、R3およびR4が、各々メチルであり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療有効量の請求項20に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
細胞増殖障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項23に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項25】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
癌もしくは前癌状態を処置するかまたは癌を予防する方法であって、治療有効量の請求項23に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項27】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
乾癬を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項23に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項29】
式IVの化合物:
【化4】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物であって、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、0〜10の整数であり、
ここで:
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3およびR4のうちの1つが、メチルでなくて、もう1つが、Hであり、そしてR5、R6、R7およびR8の各々が、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともフェニルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、Hである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、メチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、Hであり、かつ、R5、R6、R7およびR8が、Hである場合、R3およびR4のうちの少なくとも1つが、OHでなくて、もう1つが、Hであり;
R3およびR4のうちの1つが、カルボエトキシである場合、もう1つが、Hであり;そして
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、各々Hでない、
化合物。
【請求項30】
R1およびR2の両方が、置換または非置換のアルキルであり、R3およびR4が、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、または置換もしくは非置換のアルキルカルボニル、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
R1およびR2のうちの1つが、Hであって、もう1つが、メチルであり、R3およびR4が、各々メチルであり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療有効量の請求項29に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項33】
細胞増殖障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項32に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項34】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
癌もしくは前癌状態を処置するか、または癌を予防する方法であって、治療有効量の請求項32に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項36】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
乾癬を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項32に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項38】
式Vの化合物:
【化5】

またはその薬学的に受容可能な塩、もしくはその位置異性体混合物であって、ここで、
R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択されるか;または、R1もしくはR2のうちの1つ、およびR3もしくはR4のうちの1つは、縮合環を形成し、ここで、該環は、4〜8個の環員を有し;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして
nは、1〜10の整数であり、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々Hではない、
化合物。
【請求項39】
R1およびR2が、アルキルであり、R3〜R4が、独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、置換もしくは非置換のアシル、置換アルケニルまたは置換アルキルカルボニルであり、そしてR7〜R10が、各々水素である、請求項40に記載の化合物。
【請求項40】
R1およびR2が、各々水素であり、R3およびR4のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、水素であり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項40に記載の化合物。
【請求項41】
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、水素であり、R3およびR4のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、水素であり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、水素であり、R3およびR4のうちの1つが、ヒドロキシメチルであって、もう1つが、水素であり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項40に記載の化合物。
【請求項43】
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、水素であり、R3およびR4が、各々メチルであり、そしてR5〜R8が、各々水素である、請求項40に記載の化合物。
【請求項44】
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて治療有効量の請求項40に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項45】
細胞増殖障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項44に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、異常に増殖する細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
癌もしくは前癌状態を処置するか、または癌を予防する方法であって、治療有効量の請求項44に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項48】
投与が、正常細胞におけるE2Fレベルに影響を与えることなく、癌細胞におけるE2Fレベルの持続的上昇を誘発する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
乾癬を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項44に記載の薬学的組成物を該処置または予防を必要としている哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項50】
式Iの化合物の合成方法であって、以下:
式A:
【化6】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、酸素を硫黄と交換して、該式Aの化合物のジチオンを形成する工程であって、
該式Aにおいて、R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そしてnは、0〜10の整数である、工程;
および、
該式Aの化合物のジチオンと強酸とを反応させて、該式Iの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項51】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
式IIの化合物の合成方法であって、以下:
式B:
【化7】

を有する化合物と二硫化ナトリウムとを反応させて、酸素を水素と交換し、該式Bの化合物のジチオンを形成する工程であって、
該式Bにおいて、R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして、
nは、0〜10の整数であり、
ここで、R1およびR2が、両方ともメチルであり、R3およびR4が、両方ともHであり、かつR5およびR6のうちの1つが、OHであって、もう1つがHである場合、R7が、メチルまたはメトキシでなく、そしてR10が、メチルでない、工程;
および、
該式Bの化合物のジチオンと強酸とを反応させて、該式IIの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項53】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
式IIIの化合物を合成する方法であって、以下:
式C:
【化8】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、該式Cの化合物のジチオンを形成する工程であって、
該式Cにおいて、Raは、R1およびR2より選択され;
R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;nは、0〜10の整数である、工程;
および、
該式Cの化合物のジチオンを強酸で処置して、該式IIIの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項55】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
式IVの化合物を合成する方法であって、
式D:
【化9】

を有する化合物と水硫化ナトリウムとを反応させて、該式Dの化合物のジチオンを形成する工程であって、
該式Dにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;
R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり;そして、
nは、0〜10の整数であり、
ここで:
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3およびR4のうちの1つが、メチルでなくて、もう1つが、Hであり、そしてR5、R6、R7およびR8の各々が、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともメチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2が、両方ともフェニルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、Hである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、フェニルであって、もう1つが、メチルである場合、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つが、Hでなく;
R1およびR2のうちの1つが、メチルであって、もう1つが、Hであり、かつ、R5、R6、R7およびR8が、Hである場合、R3およびR4のうちの少なくとも1つが、OHでなくて、もう1つが、Hであり;
R3およびR4のうちの1つが、カルボエトキシである場合、もう1つが、Hであり;そして、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、各々Hでない、工程;
および、
該式Dの化合物のジチオンを強酸で処置して、該式IVの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項57】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
式Iの化合物の合成方法であって、以下:
式E:
【化10】

を有する化合物と、式:
【化11】

を有する分枝アリルチオールとを、弱塩基の存在下で反応させて、式:
【化12】

を有するスルフィド中間体を形成する工程であって、
式Eにおいて、R7〜R10は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
該分枝アリルチオールにおいて、Raは、R3およびR4より選択され;
R1〜R6は各々、独立して、H、OH、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そして、nは、0〜10の整数である、工程、
および、
該スルフィド中間体を強酸で処置して、該式Iの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項59】
前記弱塩基が、トリエチルアミンである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
式IIIの化合物の合成方法であって、以下:
式F:
【化13】

を有する化合物と、式:
【化14】

を有する2−ヒドロキシアルキルチオールとを、弱塩基の存在下で反応させて、式:
【化15】

を有するスルフィド中間体を形成する工程であって、
該式Fにおいて、R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
該2−ヒドロキシアルキルチオールにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そしてnは、1〜10の整数である、工程、
および、
該スルフィド中間体を強酸で処置して、該式IIIの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項62】
前記弱塩基が、トリエチルアミンである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記強酸が、濃硫酸である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
式Vの化合物を合成する方法であって、以下:
式G:
【化16】

を有する化合物と、式:
【化17】

を有する2−ヒドロキシアルコールとを反応させて、式:
【化18】

を有するスルフィドを形成する工程であって、
該式Gにおいて、R5〜R8は各々、独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、ニトロ、シアノまたはアミドであり:
該2−ヒドロキシアルコールにおいて、R1〜R4は各々、独立して、H、置換および非置換のC〜Cアルキル、置換および非置換のC〜Cアルケニル、置換および非置換のC〜Cアルコキシ、置換および非置換のC〜Cアルコキシカルボニル、置換および非置換のC〜Cアシル、−(CH−アミノ、−(CH−アリール、−(CH−複素環、および−(CH−フェニルからなる群より選択され;そして、nは、1〜10の整数である、工程、
および、
該スルフィドを強酸で処置して、そして反応を空気に曝露し、式Vの化合物を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項65】
前記強酸が、濃硫酸またはトリフルオロ酢酸である、請求項64に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−508147(P2006−508147A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553999(P2004−553999)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/037219
【国際公開番号】WO2004/045557
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505181675)アルキュール, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】