説明

新規保湿剤およびその使用

本発明は新規の保湿組成物、および乾燥肌、特に軽度から中等度の乾燥肌へのそれの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規保湿組成物、および乾燥肌、特に軽度から中等度の乾燥肌におけるそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの皮膚科医は、良好な皮膚ケアが何れの治療療法においても重要な部分であり、良好な皮膚科学上の健康維持においても重要であるということを主張する(非特許文献1-4)。皮膚疾患の患者は損傷した皮膚保護機能も大抵有するため、皮膚科学医はさらなる損傷の防止および、おそらくは皮膚保護機能回復のための治療療法に加え、穏やかな皮膚ケア療法を一般的には処方するであろう(非特許文献2、3、5)。皮膚製品群(Galderma Laboratories)の穏やかさは、多くの医師が患者のためにこれらの製品を信頼する主要な理由である(非特許文献1、6、7)。全ての品目は皮膚科の患者の使用のための妥当性についての高度な基準を保持するという厳格な要件のため、非常に少数の製品がこの品目に加えられてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Laquieze S, Czernielewski J and Baltas E. Beneficial use of cetaphil moisturizing cream as part of a daily skin care regimen for individuals with rosacea. J Dermatolog Treat 2007;18(3):158-162.
【非特許文献2】Lazuieze S, Czernielewski J and Rueda MJ. Beneficial effect of a moisturizing cream as adjunctive treatment to oral isotretinoin or topical tretinoin in the management of acne. J Drugs Dermatol 2006;5(10):985-990.
【非特許文献3】Subramanyan K. Role of mild cleansing in the management of patient skin. Dermatol Ther 2004;17 Suppl 1:26-34.
【非特許文献4】Bikowski J. The use of cleansers as therapeutic concomitants in various dermatologic disorders. Cutis 2001;68(5 Suppl):12-19.
【非特許文献5】Bouwstra JA and Ponec M. The skin barrier in healthy and diseased state. Biochem Biophys Acta 2006;1758(12):2080-2095.
【非特許文献6】Draelos ZD. The effect of cetaphil gentle skin cleanser on the skin barrier of patients with rosacea. Cutis 2006;77(4 Suppl):27-33.
【非特許文献7】Ananthapadmanabhan KP, Moore DJ, Subramanyan K, et al. Cleansing without compromise: The impact of cleansers on the skin barrier and the technology of mild cleansing. Dermatol Ther 2004;17 Suppl 1:16-25.
【非特許文献8】Bowman JP, Berger RS, Mills OH, et al. The 21-day human cumulative irritation test can be reduced to 14 days without loss of sensitivity. J Cosmet Sci 2003;54(5):443-449.
【非特許文献9】Berger RS and Bowman JP. A reappraisal of the 21-day cumulative irritation test in man. J Toxicol - Cut & Ocular Toxicol 1982;1(2):109-115.
【非特許文献10】Clinical Geriatric Medicine, February 2002, pages 103-120
【非特許文献11】Progressive Lipid Research, January 2003, pages 1-36
【非特許文献12】Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, November 2002, pages 587-594
【非特許文献13】Contact Dermatitis, June 2002, pages 331-338
【非特許文献14】Journal of Investigative Dermatology, May 1996, pages 1096-1101
【非特許文献15】British Journal of Dermatology and Venereology, November 1995, pages 679-685
【非特許文献16】Skin Pharmacology and Physiology, September-October 2004, pages 207-213
【非特許文献17】Free Radical Research, April 2002, pages 471-477
【非特許文献18】Journal of Lipid Research, May 2002, pages 794-804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は新規保湿剤(CDAと称する)を提供する。本発明に係る保湿組成物は、現在入手可能な他の推奨される製品との比較において、軽度から中等度の乾燥肌のヒトにおけるローション形態の保湿組成物(以降CDA)の水和性および刺激能に関して、有益で改善された効果を有することが驚くべきことに見出された。加えて、CDAは他の試験ローションと比較した場合、適用後2時間でより良好な水和をもたらし、24時間までの全ての時点において、未処置のコントロールとは著しく異なっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の対象は少なくとも、天然保湿因子(NMF)、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、少なくとも1つのシリコーン、およびパンテノールを医薬上許容可能な媒体中に含む保湿組成物である。好ましくは、シリコーンはシクロメチコン、ジメチコノール、またはそれらの混合物から選択され、より好ましくはシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシクロシロキサン、ジメチコノール、またはそれらの混合物の一覧から選択される。本発明の好ましい実施態様において、天然保湿因子は成分の混合物であり、PCAナトリウム(ピロリドンカルボン酸)を含む。好ましくは、この混合物はPCAナトリウムを少なくとも10%含む。その他の実施態様において、本発明は下記成分を含む保湿組成物に関する:
‐水、
‐グリセリン、
‐ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、
‐シクロペンタシロキサン、
‐PCAナトリウム、
‐パンテノール、
‐ジメチコノール、および
‐任意でポリアクリル酸ナトリウム。
【0006】
より格別には、前記保湿組成物は本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である下記成分を含む:
‐50%から85%の間、好ましくは55%から70%の間の水
‐1%から20%の間、好ましくは10%から19%の間のグリセリン
‐1%から10%の間、好ましくは1%から5%の間のブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐0.1%から3%の間、好ましくは0.5%から2%の間のシクロペンタシロキサン
‐0.1%から5%の間、好ましくは0.5%から3%の間のPCAナトリウム
‐0.1%から5%の間、好ましくは0.1%から2%の間のパンテノール
‐0.05%から3%の間、好ましくは0.05%から1%の間のジメチコノール、および
‐任意で0.05%から2%の間、好ましくは0.1%から1%の間のポリアクリル酸ナトリウム。
【0007】
前記保湿組成物は本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である少なくとも1つの下記成分を含んでよい:
‐脂肪族成分
‐エマルション安定化剤
‐保存剤、
‐乳化剤および/または
‐pH調節剤。
【0008】
本発明の文脈において、前記保湿組成物はクリームのようなエマルション、ローション、ゲル、含浸タオル、パッチ、洗身剤のような洗浄製品、洗顔剤の形態である。
【0009】
本発明のその他の対象は、水和または保湿を必要とする皮膚の水和または保湿のための、上記のような保湿組成物の使用である。CDAは適用後2時間の早期で水和を提供する。好ましい実施態様において、水和または保湿を必要とする皮膚は乾燥肌であり、好ましくは軽度から中等度の乾燥肌である。
【0010】
本発明のその他の対象は、皮膚の表面上での上記のような組成物の投与を含む、水和または保湿を必要とする皮膚の水和または保湿のための方法である。1つの実施態様において、水和または保湿を必要とする皮膚はヒトの皮膚である。好ましい実施態様において、水和または保湿を必要とする皮膚は乾燥肌であり、好ましくは軽度から中等度の乾燥肌である。
【0011】
多くの皮膚科医は、良好な皮膚ケアが何れの治療計画においても重要な部分であり、良好な皮膚科学上の健康維持においても重要であるということを主張する。製品群(Galderuma Laboratories)の穏やかさは数十年に渡る特徴であり、多くの医師が皮膚の損傷を伴う患者のためにこれらの製品を信頼する主要な理由である。全ての品目は皮膚科の患者の使用のための妥当性についての高度な基準を保持するという厳格な要件のため、非常に少数の製品がこの品目に加えられてきた。
【0012】
本発明は新規の保湿剤/保湿組成物(CDAと称する)を提供する。実施例において開示されるように、本発明に係る保湿組成物の好ましい効果を証明する試験は、現在入手可能である他の推奨される製品4種との比較において、本保湿剤の水和性を分析するために実施された。24時間の期間を通じての皮膚水分測定により客観的に決定されたように、CDAは全ての時点で最上の保湿剤として常に機能した。加えて、新規保湿剤は適用後2時間の早期で著しくより良好な水和の効果をもたらす、唯一の試験された製品であった。さらに、皮膚水分測定による水和分析は非常に乾燥した皮膚の被験者で繰り返され、CDAが皮膚に著しい水和を与えることが見出された。加えて、14日間の累積刺激能試験が、他の現在推奨される製品に対するCDAの穏やかさを比較するために実施された。白色ワセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムもネガティブおよびポジティブコントロールとしてそれぞれ含まれた。CDAはワセリン(累積スコア1.9)よりも低い0.00の累積スコアであった。これら試験結果は、皮膚ケア製品群におけるこの最も新しい保湿剤が水和すること、穏やかであること、並びに皮膚科医および患者が利用可能な選択肢を広げることを示す。
【0013】
細胞間基質は水喪失に対する皮膚の防御の最前線である。皮膚の脂質およびNMF含有量が減少する場合、我々は表面の粗さ、剥離、小じわ、および締め付けられるような不快感を経験する。
【0014】
本発明の第一の対象は少なくとも、天然保湿因子、ブチロスパーマムパーキー(シアバター)、少なくとも1つのシリコーン、およびパンテノールを医薬上許容可能な媒体中に含む保湿組成物である。好ましくは、シリコーンはシクロメチコン、ジメチコノール、またはそれらの混合物の一覧から選択され、より好ましくはシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシクロシロキサン、ジメチコノール、またはそれらの混合物から選択される。本発明の好ましい実施態様において、天然保湿因子は成分の混合物であり、PCAナトリウムを含む。好ましくは、この混合物はPCAナトリウムを少なくとも10%含む。
【0015】
事実、天然保湿因子(NMFs)はアミノ酸、セラミド、ヒアルロン酸、コレステロール、脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ糖脂質、尿素、リノール酸、グリコサミノグルカン、ムコ多糖、およびPCAナトリウム(ピロリドンカルボン酸)を含む広い成分群を構成する。
【0016】
皮膚の支持的なNMFsおよび脂質は全て、皮膚細胞の間および皮膚表面上の脂質成分内の両方である細胞間構造内に存在する。これら成分の何れかが皮膚ケア製品において使用される場合、これらはこの複雑な細胞間皮膚基質の安定化および維持を助けるように思われる。これら非常に良好なNMFsおよび脂質で永続的に皮膚に作用するまたは皮膚を変化させることが可能なものは無いにも関わらず、これらは皮膚の乾燥感および不快感の除去を一時的に保つことに優れている。より重要なことに、これら成分の全て、およびそれ以上の多くは、皮膚の細胞間領域を無傷で保つことにより皮膚の細胞間領域を維持することを助けることが可能である。この維持は皮膚内部へのより深い浸透による表面の刺激の防止を助け、バクテリアを外部に保つために機能し、皮膚の免疫/治癒機構を補助する。NMFsを含む何れかの種類の保湿剤(それらが抗老化、抗しわ、美容液、ローション、または日焼け防止として標識されている)を選択することは、皮膚が乾燥および過剰な刺激に苦しむ場合に引き起こされる障害無しに、皮膚自身を修復し再生させるという皮膚の仕事を行うことを可能にする(出典:Clinical Geriatric Medicine, February 2002, pages 103-120; Progressive Lipid Research, January 2003, pages 1-36; Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, November 2002, pages 587-594; Contact Dermatitis, June 2002, pages 331-338; Journal of Investigative Dermatology, May 1996, pages 1096-1101; British Journal of Dermatology and Venereology, November 1995, pages 679-685; Skin Pharmacology and Physiology, September-October 2004, pages 207-213; Free Radical Research, April 2002, pages 471-477; および Journal of Lipid Research, May 2002, pages 794-804)。
【0017】
本発明の対象は、少なくとも1つの天然保湿因子を含む特定の成分の複合体(ERCまたは表皮補充複合体と称される)を医薬上許容可能な媒体中に少なくとも含む、上記で規定されるような保湿組成物である。好ましい天然保湿因子はPCAナトリウムである。本発明の明細書において、ERCは成分の混合物であり、PCAナトリウム(天然保湿因子)を少なくとも10%または他のNMFsを含む。より格別には、ERCは下記成分を含む:
‐ブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐シクロペンタシロキサン
‐天然保湿因子としてのPCAナトリウム
‐ジメチコノール
‐パンテノール。
【0018】
従って、本発明の1つの実施態様は皮膚の良好なバランスのために必要とされる必須成分を皮膚に提供する、選択された活性成分であるPCAナトリウム、シアバター、パンテノール、ジメチコノール、およびシクロペンタシロキサンを含む「表皮補充複合体」(以降ERC)である。
【0019】
シクロペンタシロキサンは多くのタイプのシリコーンの内の1つである。一般的に、シリコーンは潤滑、防水、および光沢を与えるその能力について周知である。ジメチコノールはシリカから誘導され、毛髪調整剤のためのベタベタしない潤滑剤を提供し、毛髪に光沢を与える。加えて、ERCはCDAに存在する下記成分から選択される他の皮膚調整剤の作用を強化する:
‐グリセリン
‐マカダミア油
‐水素化ポリイソブテン
‐ビタミンEアセテート。
【0020】
本配合の他の成分との相乗効果で機能する、特定の成分の実際に効果的な複合体である「表皮補充複合体」(ERC)のおかげで、CDAは乾燥肌に本質的な機能および健康的な態様を回復させることが可能である。CDAは保湿量を回復させそれから改善することおよび皮膚保護機能を補強することが可能であることが証明された(実施例2)。
【0021】
1つの実施態様において、本発明は下記成分を含む保湿組成物を提供する:
‐水
‐グリセリン
‐ブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐シクロペンタシロキサン
‐PCAナトリウム(天然保湿因子)
‐パンテノール
‐ジメチコノール、および
‐任意でポリアクリル酸ナトリウム。
【0022】
より格別には、前記保湿組成物は本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である下記成分を含む:
‐50%から85%、好ましくは55%から70%の間の水
‐1%から20%、好ましくは10%から19%の間のグリセリン
‐1%から10%、好ましくは1%から5%の間のブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐0.1%から3%、好ましくは0.5%から2%の間のシクロペンタシロキサン
‐0.1%から5%、好ましくは0.5%から3%の間のPCAナトリウム
‐0.1%から5%、好ましくは0.1%から2%の間のパンテノール
‐0.05%から3%、好ましくは0.05%から1%の間のジメチコノール
‐0.5%から2.5%、好ましくは1%から2%の間のセテアレス20
‐任意で0.01%から2%、好ましくは0.1%から1%の間のポリアクリル酸ナトリウム。
【0023】
前記保湿組成物は本組成物の総重量に対する重量で表される濃度である下記成分の少なくとも1つを更に含んでよい:
‐脂肪族成分
‐エマルション安定化剤
‐保存料、
‐乳化剤および/または
‐pH調節剤。
本発明の文脈において、脂肪族成分は何れか無機油、植物油、動物もしくは合成油、脂肪酸、脂肪族アルコール、合成ポリマーもしくはエステル、シリコーン油もしくはエステルの単独または混合物を意味する。無機油の例として、Esso社により販売されるPrimol352(登録商標)、Marcol82(登録商標)、Marcol152(登録商標)のような各種粘性のパラフィン油を挙げることができる。植物油として、マカダミアテルニフォリアナッツ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、スイートアーモンド油、パーム油、ゴマ油のような植物から抽出された何れかの油を挙げることができる。動物油の例として、ラノリン、スクアレン、魚油、ミンク油およびLaserson社により販売されるCosbiolと呼ばれるミンク油のスクアレン誘導体を挙げることができる。合成油として、セテアリルイソノナノエート(Cognis France社によるCetiol SN PH(登録商標)として知られている)、イソプロピルパルミテート(Croda社によるCrodamol IPP(登録商標)として知られている)、ジイソプロピルアジペート(Croda社によるCrodamol DAとして知られている)のようなエステル、Huls/Univar社により販売されるMiglyol812(登録商標)として知られる製品のようなカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを挙げることができる。揮発性または非揮発性シリコーン油として、粘性20cstから12500cstの商品名Q7-9120のシリコーン液またはDow corning社により販売される製品ST-Cyclomethicone-5NF(登録商標)を挙げることができる。
【0024】
合成ポリマーまたはエステルの例として、ポリマーであるポリイソブテンおよび水素化ポリイソブテンのようなポリマーを挙げることができる。好ましい実施態様において、水素化ポリイソブテンは分枝した脂肪族炭化水素構造のポリマーであり、環状構造を有さないものが選択される。
【0025】
脂肪酸および脂肪族アルコールは当業者に周知であり、相応に選択されるであろう。
【0026】
しかしながらエマルション安定化剤の例は下記成分の一覧に制限されない:
‐カルボマーおよびその塩
‐アクリレート/C10-30 アルキルアクリレートクロスポリマー
‐ヒドロキシエチルセルロース
‐ヒドロキシプロピルセルロース
‐ポリアクリルアミド族(simulgel600、Sepigel305、Sepigel501)
‐キサンタンガム。
【0027】
本発明の好ましい実施態様ではアクリレート/C10-30 アルキルアクリレートクロスポリマーである。
【0028】
保存剤として、ベンザルコニウムクロレート、ブロノポール、クロルヘキシジン、クロロクレゾールおよびその誘導体、エチルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸カリウム、ジアゾリジニルウレア、ベンジルアルコール、パラベンの単独または混合物を挙げることができる。
【0029】
乳化剤として、レシチン、ビーワックスもしくは何れか天然ワックス、乳化ワックスNF、セテアリルアルコール/セテアレス20、グリセリルステアレート、ポリソルベート20、セテアレス20、エトキシ化グリセリルモノステアレート、セテアリルアルコール、およびステアロイル乳酸ナトリウムの単独または混合物を挙げることができる。好ましくは、セテアレス20およびセテアリルアルコールの単独または混合物が選択される。
【0030】
pH調節剤として、トリエタノールアミン、10%の水酸化ナトリウム溶液、コハク酸/コハク酸ナトリウム緩衝剤、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝剤のような典型的な無機もしくは有機の塩基性または酸性pH中和剤を挙げることができる。
【0031】
当業者は、有利な性質が変更されていない、または本質的に変更されていないそのような組成物として、これら相補的成分および/または濃度の1つを選択するであろう。これら相補的成分の殆どは、組成物の総重量に対して0.001%から20%の間の濃度の範囲で本発明の組成物中に組み込むことが可能である。
【0032】
特定の実施態様において、本発明は下記成分を含む保湿組成物を提供する:
‐水
‐グリセリン
‐水素化ポリイソブテンのような合成ポリマーまたはエステル
‐セテアリルアルコール
‐セテアレス20
‐マカダミアテルニフォリア油のような脂肪族成分
‐ブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐トコフェリルアセテート
‐シクロペンタシロキサン
‐PCAナトリウム(天然保湿因子)
‐ジメチコノール
‐パンテノール
‐任意でフェノキシエタノール
‐任意でポリアクリル酸ナトリウム
‐任意でステアロキシトリメチルシラン
‐任意でステアリックアルコール
‐任意でベンジルアルコールのような保存剤
‐任意でファルネソール
‐任意でアクリレート/C10-30 アルキルアクリレートクロスポリマーのようなエマルション安定化剤
‐任意で水酸化ナトリウムのようなpH調節剤
‐任意でクエン酸のようなpH調節剤。
【0033】
好ましい実施態様において、本保湿組成物は本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である下記成分をより格別には含む:
‐50%から85%、好ましくは55%から70%の間の水
‐1%から20%、好ましくは10%から19%の間のグリセリン
‐1%から10%、好ましくは1%から5%の間のブチロスパーマムパーキー(シアバター)
‐0.1%から3%、好ましくは0.5%から2%の間のシクロペンタシロキサン
‐0.1%から5%、好ましくは0.5%から3%の間のPCAナトリウム
‐0.1%から5%、好ましくは0.1%から2%の間のパンテノール
‐0.05%から3%、好ましくは0.05%から1%の間のジメチコノール
‐任意で0.01%から2%、好ましくは0.1%から1%の間のポリアクリル酸ナトリウム
‐1%から7%、好ましくは4%から6%の間の合成ポリマーまたはエステルおよび優先的には水素化ポリイソブテン
‐任意で2%から5%、好ましくは3%から4%の間のセテアリルアルコール
‐0.5%から2.5%、好ましくは1%から2%の間のセテアレス20
‐任意で1%から10%、好ましくは3%から4%の間の脂肪族成分、優先的にはマカダミアテルニフォリア油
‐0.1%から0.3%、好ましくは0.5%から1.5%の間のトコフェリルアセテート
‐ベンジルアルコール
‐0.05%から0.5%のセテアロキシトリメチルシラン
‐0.01%から0.5%のステアリックアルコール
‐任意で0.01%から0.5%のファルネソール
‐任意で0.01%から0.5%のエマルション安定化剤、優先的にはアクリレート/C10-30 アルキルアクリレートクロスポリマー
‐任意で水酸化ナトリウム、適量 pH6から7
‐任意でクエン酸、適量 pH6から7。
【0034】
本発明の文脈において、保湿組成物は各種の形態である。これら組成物はクリームのようなエマルション、ローション、ゲル、含浸タオル、パッチ、洗身剤のような洗浄製品、洗顔剤、または何れか他の適切な形態である。本発明は皮膚での水和およびより少ない刺激効果をもたらすための本保湿組成物の使用についても提供する。実施例2において開示されるように、本発明は軽度から中等度の乾燥肌の治療のための組成物を提供する。これもまた実施例で示されるように、CDAは他の試験ローションと比較した場合に適用後2時間の早期でより良好な水和を提供し、24時間までの全ての時点において、未処置のコントロールとは著しく異なっていた。
【0035】
本発明の組成物は刺激された乾燥肌に使用可能である。その刺激は攻撃因子、薬剤のような天然または化学因子、風、海水によるはずである。したがって、1つの特定の実施態様において、本発明は乾燥および/または刺激された皮膚の治療を意図する薬剤の調整のための保湿組成物の使用を提供する。
【0036】
したがって、本発明の他の実施態様は皮膚表面上への組成物の投与を含む、水和または保湿を必要とする皮膚の水和または保湿のための方法に関する。好ましい実施態様において、考慮される皮膚は乾燥肌であり、好ましくは軽度から中等度の乾燥肌である。好ましくは、皮膚はヒトの皮膚である。ヒトの皮膚とは成人、小児または乳幼児の皮膚のような何れかヒトの皮膚と理解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】24時間を通して改善された皮膚の落屑。適用後2、4、8、12、および24時間において未処置のコントロールと比較した場合、全ての試験製品は皮膚の落屑を著しく改善した。試験製品と未処置のコントロールとの比較は、ペアワイズ比較(フィッシャーの最小有意差法)による分散分析(ANOVA)を使用して実施された。
【図2】24時間を通して改善された皮膚のひび割れ。適用後2、4、8、12、および24時間において未処置のコントロールと比較した場合、全ての試験製品は皮膚のひび割れを著しく改善した。試験製品と未処置のコントロールとの比較は、ペアワイズ比較(フィッシャーの最小有意差法)による分散分析(ANOVA)を使用して実施された。
【図3】24時間を通しての皮膚水分測定による水和測定。適用後2、4、8、12、および24時間において未処置のコントロールと比較した場合、全ての試験製品は皮膚の水和を著しく改善し、一方CDAローション(Cphl(+)と記述される)は2および4時間において最も高度な水和が測定された。試験製品と未処置のコントロールとの比較は、ペアワイズ比較(フィッシャーの最小有意差法)による分散分析(ANOVA)を使用して実施された。
【実施例】
【0038】

表1.標準化された累積刺激スコアおよび分類
【0039】
実施例1:組成物
本実施例は詳細な成分組成の各種組成物を提供する:
【0040】
【表1】

【0041】
実施例2:現在入手可能な他の推奨される製品との比較のための、ボランティアにおけるローション形態の保湿組成物CDAの水和性および刺激能の分析のための試験。
【0042】
2日間の単盲験比較臨床試験が、単回の適用後に皮膚に湿度を送達するCDAローションの能力を評価するために実施された。皮膚の落屑およびひび割れについての臨床上の視覚的な格付けに加え、皮膚の湿度含有量の評価がCorneometer(登録商標)(CM 825、Courage + Khazaka、Germany)により行われた。18から65歳で下肢の外側面に軽度から中等度の乾燥肌を有する患者が登録について適格であった。彼らはまた、2日間の臨床上の訪問の間、試験される部位を濡らさないように、剃毛しないように、また何れか更なる製品を適用しないようにしなくてはならなかった。制御不能な病気(すなわち糖尿病、高血圧、甲状腺機能亢進症、および/または甲状腺機能低下症)および/または試験される部位の皮膚に何らかの病気または状態(すなわち活動性の乾癬、活動性の湿疹、刺青、瘢痕、切り傷/すり傷/引かき傷、日焼け等)を有する個体は本試験から除外された。臨床上の測定には、製品適用前および、適用後2、4、8、12、および24時間後に再度臨床上の格付けおよびCorneometer(登録商標)測定が含まれた。Corneometer(登録商標)は電気容量法により角質層(SC)における湿度含有量を定量化した。この測定は皮膚がより水和されるほど増加する、任意の単位を使用する。CDAローションは下記に指定される他の現在市販されている保湿剤と比較された:Cphlローション(Galderma Laboratories, L.P.)、CerVローション(Coria Laboratories, Ltd.)、Avnoローション(Johnson & Johnson Consumer Companies, Inc.)、およびEucnローション(Beiersdorf, Inc.)。皮膚の落屑およびひび割れは、0は無し、4は皮膚に明白な巨大落屑(1.0mmより大きい)または明白なひび割れ/亀裂を示す5点スケールに基づき評価された。試験製品と未処置のコントロールとの比較は、ペアワイズ比較(フィッシャーの最小有意差法)による分散分析(ANOVA)を使用して実施された。
【0043】
さらに、14日間の累積刺激能試験がCDAローションの穏やかさを他の製品と比較するため、公表された方法に従い実施された(非特許文献8、9)。年齢が18歳から70歳であり、Fitzpatrickの皮膚タイプがIからIVであり、本試験の期間中に試験される部位を直接日光に露出することおよびタンニングベッドの使用を避ける意思を有する患者が登録について適格であった。活動性の乾癬、活動性のアレルギー皮膚反応、活動性の湿疹、又は日焼け、ざ瘡、擦過傷、痕跡組織、刺青、および/または皮膚病を試験される部位に有する患者、または抗癌剤、免疫抑制治療/処方、および/または放射線療法、または試験される部位で局所的にステロイドまたは他の薬剤を使用する患者は本試験から除外された。予測的パッチ試験技術がCDAローションとCphlローション、CerVローション、Avnoローション、およびEucnローションとを比較するために使用された。100マイクロリッターの試験製品を含む閉鎖性パッチが14日間毎日皮膚に適用された。1.0%のラウリル硫酸ナトリウmjのパッチがポジティブコントロールとして使用され、一方ワセリンがネガティブコントロールとして使用された。
【0044】
両方の試験期間における全ての有害事象は重篤度および試験製品との関連性の観点から報告された。
【0045】
結果
ANOVA比較は、適用後2、4、8、12、および24時間において未処置のコントロールと比較した場合、全ての試験製品が皮膚の落屑(図1)および皮膚のひび割れ(図2)を有意に改善することを示した(P≦.05)。ANOVA比較はまた、未処置のコントロールと比較した場合にCorneometer(登録商標)測定により決定されるように、全ての試験製品が全ての時点で有意により水和することを示した(P≦.05;図3)。さらに、CDAローションは適用後2時間という早期において最高の水和が測定された。適用後4時間においてさえ、CDAローションは他の試験ローションよりも良好な水和をもたらした。CDAローション、Cphlローション、およびEucnローションは他のローションと比較した場合、24時間まで最高の水和を提供した。
【0046】
14日間の累積刺激能試験の結果は、現在推奨される他の試験製品との比較においてCDAローションの穏やかさを明らかにした。CDAローションはネガティブコントロールである白色ワセリン(累積スコア1.9)よりも低い累積スコア0.00であった。ポジテイブコントロールである1.0%のソディウムラウリルサルフェートは累積刺激スコアが595.4であった(表1)。BergerおよびBowmanに使用される刺激分類によると、標準化された累積刺激スコアに基づき全ての試験製品は「低刺激性物質」(カテゴリーI)として分類され、一方ポジティブコントロールは「おそらく低刺激性」(カテゴリーIII)として分類された。
【0047】
これら試験を通して有害事象は報告されなかった。
【0048】
【表2】

【0049】
結論
・CDAローションは他の試験ローションと比較した場合、適用後2時間でより良好な水和をもたらし、24時間までの全ての時点において未治療のコントロールとは有意に異なっていた(P≦.05)。
・CDAローションは標準化された累積刺激スコアが0であることに基づき、穏やかであると報告された。
・CDAローションは皮膚科医およびその患者が利用可能な低刺激性保湿剤の選択肢を広げる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、天然保湿因子、ブチロスパーマムパーキー、少なくとも1つのシリコーン、およびパンテノールを医薬上許容可能な媒体中に含む保湿組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのシリコーンがシクロメチコン、ジメチコノール、またはそれらの混合物の一覧から選択される、請求項1に記載の保湿組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのシリコーンがシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシクロシロキサン、ジメチコノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の保湿組成物。
【請求項4】
天然保湿因子が成分の混合物でありピロリドンカルボン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の保湿組成物。
【請求項5】
PCAナトリウムを少なくとも10%含む、請求項1から4の何れか一項に記載の保湿組成物。
【請求項6】
下記成分を含む、請求項1に記載の保湿組成物:
‐水
‐グリセリン
‐ブチロスパーマムパーキー
‐シクロペンタシロキサン
‐ピロリドンカルボン酸ナトリウム
‐パンテノール
‐ジメチコノール、および
‐任意でポリアクリル酸ナトリウム。
【請求項7】
本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である下記成分を含む、請求項6に記載の保湿組成物:
‐50%から85%の間、好ましくは55%から70%の間の水
‐1%から20%の間、好ましくは10%から19%の間のグリセリン
‐1%から10%の間、好ましくは1%から5%の間のブチロスパーマムパーキー
‐0.1%から3%の間、好ましくは0.5%から2%の間のシクロペンタシロキサン
‐0.1%から5%の間、好ましくは0.5%から3%の間のピロリドンカルボン酸ナトリウム
‐0.1%から5%の間、好ましくは0.1%から2%の間のパンテノール
‐0.05%から3%の間、好ましくは0.05%から1%の間のジメチコノール
‐任意で0.01%から2%の間、好ましくは0.1%から1%の間のポリアクリル酸ナトリウム。
【請求項8】
本組成物の総重量に対する重量で表示される濃度である下記成分の少なくとも1つを更に含む、請求項7に記載の保湿組成物:
‐脂肪族成分、
‐エマルション安定化剤、
‐保存料、
‐および/またはpH調節剤。
【請求項9】
クリームのようなエマルション、ローション、ゲル、含浸タオル、パッチ、洗身剤のような洗浄製品、または洗顔剤の形態である請求項1から8の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
水和または保湿を必要とする皮膚の水和または保湿のための、請求項1から9の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
適用後2時間の早期で水和を提供するための、請求項1から9の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
水和または保湿を必要とする皮膚は乾燥肌であり、好ましくは軽度から中等度の乾燥肌である請求項10または11に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物の皮膚表面上への投与を含む、水和または保湿を必要とする皮膚を水和または保湿するための方法。
【請求項14】
水和または保湿を必要とする皮膚が乾燥肌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水和または保湿を必要とする皮膚が軽度から中等度の乾燥肌である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水和または保湿を必要とする皮膚がヒトの皮膚である、請求項13から15の何れか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−521886(P2011−521886A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509842(P2010−509842)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056722
【国際公開番号】WO2008/145747
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】