説明

新規化合物、光重合性組成物、カラーフィルタ用光重合性組成物、カラーフィルタ、及びその製造方法、固体撮像素子、並びに、平版印刷版原版

【課題】波長365nmや405nmの光に対する感度が高く、経時安定性に優れ、更に、加熱経時による膜物性低下を抑制しうる硬化膜を形成可能な光重合性組成物、及び該光重合性組成物に好適に用いられるオキシム化合物を提供する。また、経時安定性に優れ、高感度で硬化し、良好なパターン形成性を有し、支持体との密着性に優れた着色パターンを形成し、現像後の後加熱時にも優れたパターン形状を有するカラーフィルタ用光重合性組成物、及び上記カラーフィルタ用光重合性組成物を用いてなるカラーフィルタ、その製造方法、固体撮像素子、及び平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。


前記一般式(1)中、R、Y、及びZは、各々独立に、1価の置換基を表し、nは、0〜4の整数を表す。YとZは、互いに結合し、環を形成してもよい。Aは、2価の連結基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、光重合性組成物、カラーフィルタ用光重合性組成物、カラーフィルタ、及びその製造方法、固体撮像素子、並びに、平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性組成物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものがある。このような光重合性組成物は、光を照射されることによって重合硬化するため、光硬化性インキ、感光性印刷版、カラーフィルタ、各種フォトレジスト等に用いられている。
また、光開始剤としては、例えば、光の照射により酸を発生し、発生した酸を触媒とする他の態様もある。具体的には、発生した酸を触媒とする色素前駆体の発色反応を利用して、画像形成、偽造防止、エネルギー線量検出のための材料に用いられたり、発生した酸を触媒とする分解反応を利用した半導体製造用、TFT製造用、カラーフィルタ製造用、マイクロマシン部品製造用等のポジ型レジストなどに用いられる。
【0003】
近年、特に短波長(365nmや405nm)の光源に感受性を有する光重合性組成物が種々の用途から望まれており、そのような短波長の光源に対して優れた感度を示す化合物、例えば、光重合開始剤に対する要求が高まってきている。しかしながら、一般的に、感度に優れた光重合開始剤は安定性に欠けることから、感度向上と同時に経時安定性も満たす光重合開始剤が望まれている。
【0004】
そこで、光重合性組成物に用いられる光重合開始剤として、下記特許文献1〜6には、オキシムエステル誘導体が提案されている。しかし、これらの公知のオキシムエステル化合物は、波長365nm、波長405nmに対する吸光度が低いため、感度の観点で未だ満足のいくものではなかった。
また、光重合性組成物としても、経時安定性に優れると共に、365nm、405nmなどの短波長の光に対して優れた感度を有するものが望まれているのが現状である。
更に、例えば、特許文献7には、オキシム化合物を含有するカラーフィルタ用の着色感放射線性組成物が開示されているが、経時安定性、及び短波長の光に対する感度に関しては、未だ不十分であった。また、カラーフィルタ用の着色感放射線性組成物においては、パターン形成後の色相の再現性が新しい課題となっており、経時により着色性が変化する問題の改善が強く望まれていた。
【0005】
一方、イメージセンサー用カラーフィルタは、CCDなどの固体撮像素子の高集光性、かつ、高色分離性による画質向上のため、カラーフィルタの高着色濃度・薄膜化への強い要求がある。高着色濃度を得るために色材を多量に添加すると、2.5μm以下の微細な画素パターンの形状を忠実に再現するには感度が不足してしまい、全体的にパターンの欠落が多発する傾向がある。なお、この欠落をなくすたねには、より高エネルギーの光照射が必要なため、露光時間が長くなり、製造上の歩留まり低下が顕著になる。以上のことからも、カラーフィルタ用の着色感放射線性組成物に関しては、色材(着色剤)を高濃度で含有しつつも良好なパターン形成性を得る必要があるという点から、感度が高いことが望まれているのが現状である。
【特許文献1】米国特許第4255513号明細書
【特許文献2】米国特許第4590145号明細書
【特許文献3】特開2000−80068号公報
【特許文献4】特開2001−233842号公報
【特許文献5】特開2006−342166号公報
【特許文献6】特開2007−231000号公報
【特許文献7】特開2005−202252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、波長365nmや405nmの光に対する感度が高く、経時安定性に優れ、更に、加熱経時による膜物性低下を抑制しうる硬化膜を形成可能な光重合性組成物、及び該光重合性組成物に好適に用いられるオキシム化合物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、経時安定性に優れ、高感度で硬化し、良好なパターン形成性を有し、支持体との密着性に優れた着色パターンを形成し、現像後の後加熱時にも優れたパターン形状を有するカラーフィルタ用光重合性組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記カラーフィルタ用光重合性組成物を用いてなる、パターン形状が良好であり、支持体との密着性に優れた着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び、該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法、更には、該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することにある。
更には、上記光重合性組成物を用いた平版印刷版原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、新規構造のオキシム化合物を用いることで、波長365nmや405nmの光に対し良好な吸光度を有し、かつ、経時安定性にも優れるとの知見を得た。前記課題を解決するための具体的手段を以下に示す。
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【0008】
【化1】

【0009】
前記一般式(1)中、R、Y、及びZは、各々独立に、1価の置換基を表し、nは、0〜4の整数を表す。YとZは、互いに結合し、環を形成してもよい。Aは、2価の連結基を表す。
【0010】
<2> 下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記<1>に記載の化合物である。
【0011】
【化2】

【0012】
前記一般式(2)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。
【0013】
<3> 下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の化合物である。
【0014】
【化3】

【0015】
前記一般式(3)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。
【0016】
<4> (A)前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の化合物と、(B)重合性化合物とを含有することを特徴とする光重合性組成物である。
【0017】
<5> (C)着色剤を更に含有することを特徴とする前記<4>に記載の光重合性組成物である。
【0018】
<6> 前記(C)着色剤が顔料であり、且つ、(D)顔料分散剤を更に含有することを特徴とする前記<5>に記載の光重合性組成物である。
【0019】
<7> 前記(C)着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする前記<5>又は前記<6>に記載の光重合性組成物である。
【0020】
<8> 前記<5>〜前記<7>のいずれか1つに記載の光重合性組成物を含有することを特徴とするカラーフィルタ用光重合性組成物である。
【0021】
<9> 支持体上に、前記<8>に記載のカラーフィルタ用光重合性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタである。
【0022】
<10> 支持体上に、前記<8>に記載のカラーフィルタ用光重合性組成物を塗布して光重合性組成物層を形成する工程と、
前記光重合性組成物層を、マスクを介して露光する工程と、
露光後の前記光重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、
を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0023】
<11> 前記<9>に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子である。
【0024】
<12> 支持体上に、前記<4>に記載の光重合性組成物を含む感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、波長365nmや405nmの光に対する感度が高く、経時安定性に優れ、更に、加熱経時による膜物性低下を抑制しうる硬化膜を形成可能な光重合性組成物、及び該光重合性組成物に好適に用いられるオキシム化合物を提供することができ、経時安定性に優れ、高感度で硬化し、良好なパターン形成性を有し、支持体との密着性に優れた着色パターンを形成し、現像後の後加熱時にも優れたパターン形状を有するカラーフィルタ用光重合性組成物を提供することができる。また、上記カラーフィルタ用光重合性組成物を用いてなる、パターン形状が良好であり、支持体との密着性に優れた着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び、該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法、更には、該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することができる。さらには、上記光重合性組成物を用いた平版印刷版原版を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<特定オキシム化合物>
本発明の新規化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、適宜、「特定オキシム化合物」と称する)である。
【0027】
【化4】

【0028】
前記一般式(1)中、R、Y、及びZは、各々独立に、1価の置換基を表し、nは、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。
【0029】
前記一般式(1)におけるRで表される一価の置換基としては、以下に示す一価の非金属原子団であることが好ましい。
前記一般式(1)におけるRで表される一価の非金属原子団として、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいホスフィノイル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルキルチオカルボニル基、置換基を有してもよいアリールチオカルボニル基、置換基を有してもよいジアルキルアミノカルボニル基、置換基を有してもよいジアルキルアミノチオカルボニル基等が挙げられる。
【0030】
置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられる。
【0031】
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、及びp−トリル基、キシリル基、o−、m−、及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0032】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられる。
【0033】
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0034】
置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基としては、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基が好ましく、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、オクチルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、デカノイルスルフィニル基、ドデカノイルスルフィニル基、オクタデカノイルスルフィニル基、シアノメチルスルフィニル基、メトキシメチルスルフィニル基等が挙げられる。
【0035】
置換基を有してもよいアリールスルフィニル基としては、炭素数6〜30のアリールスルフィニル基が好ましく、例えば、フェニルスルフィニル基、1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−メチルスルファニルフェニルスルフィニル基、4−フェニルスルファニルフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等が挙げられる。
【0036】
置換基を有してもよいアルキルスルホニル基としては、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基が好ましく、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、デカノイルスルホニル基、ドデカノイルスルホニル基、オクタデカノイルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、パーフルオロアルキルスルホニル基等が挙げられる。
【0037】
置換基を有してもよいアリールスルホニル基としては、炭素数6〜30のアリールスルホニル基が好ましく、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−メチルスルファニルフェニルスルホニル基、4−フェニルスルファニルフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0038】
置換基を有してもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0039】
置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0041】
置換基を有してもよいホスフィノイル基としては、総炭素数2〜50のホスフィノイル基が好ましく、例えば、ジメチルホスフィノイル基、ジエチルホスフィノイル基、ジプロピルホスフィノイル基、ジフェニルホスフィノイル基、ジメトキシホスフィノイル基、ジエトキシホスフィノイル基、ジベンゾイルホスフィノイル基、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィノイル基等が挙げられる。
【0042】
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族或いは脂肪族の複素環が好ましい。例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基等が挙げられる。
【0043】
置換基を有してもよいアルキルチオカルボニル基としては、例えば、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、トリフルオロメチルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
置換基を有してもよいアリールチオカルボニル基としては、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、4−メトキシフェニルチオカルボニル基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有してもよいジアルキルアミノカルボニル基としては、ジメチルアミノカルボニル基、ジメエルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基、ジブチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
【0046】
置換基を有してもよいジアルキルアミノチオカルボニル基としては、ジメチルアミノチオカルボニル基、ジプロピルアミノチオカルボニル基、ジブチルアミノチオカルボニル基等が挙げられる。
【0047】
中でも、高感度化の点から、Rとしてはアシル基がより好ましく、具体的には、アセチル基、エチロイル基、プロピオイル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0048】
前記一般式(I)におけるYで表される一価の置換基としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアシルオキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルファニル基、置換基を有してもよいアリールスルファニル基、置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、置換基を有してもよいスルファモイル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいホスフィノイル基、置換基を有してもよい複素環基、ハロゲン基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられる。
【0049】
前記一般式(I)におけるYで表される一価の置換基のうち、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有してもよいホスフィノイル基、及び置換基を有してもよい複素環基は、前記一般式(I)におけるRで表される1価の非金属原子団として説明したものと、それぞれ同義であり、各々の好ましい炭素数の範囲も同様である。
【0050】
置換基を有してもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシキ、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、エトキシカルボニルメチル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ基、アミノカルボニルメチルオキシ基、N,N−ジブチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−メチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−エチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−オクチルアミノカルボニルメチルオキシ基、N−メチル−N−ベンジルアミノカルボニルメチルオキシ基、ベンジルオキシ基、シアノメチルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
置換基を有してもよいアリールオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、2−メトキシフェニルオキシ基、2−ブトキシフェニルオキシ基、3−クロロフェニルオキシ基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシ基、3−シアノフェニルオキシ基、3−ニトロフェニルオキシ基、4−フルオロフェニルオキシ基、4−シアノフェニルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、4−ジメチルアミノフェニルオキシ基、4−メチルスルファニルフェニルオキシ基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシ基等がある。
【0052】
置換基を有してもよいアルキルチオキシ基としては、炭素数1〜30のチオアルコキシ基が好ましく、例えば、メチルチオキシ基、エチルチオキシ基、プロピルチオキシ基、イソプロピルチオキシ基、ブチルチオキシ基、イソブチルチオキシ基、sec−ブチルチオキシ基、tert−ブチルチオキシ基、ペンチルチオキシ基、イソペンチルチオキシ基、ヘキシルチオキシキ、ヘプチルチオキシ基、オクチルチオキシ基、2−エチルヘキシルチオキシ基、デシルチオキシ基、ドデシルチオキシ基、オクタデシルチオキシ基、ベンジルチオキシ基等が挙げられる。
【0053】
置換基を有してもよいアリールチオキシ基としては、炭素数6〜30のアリールチオキシ基が好ましく、例えば、フェニルチオキシ基、1−ナフチルチオキシ基、2−ナフチルチオキシ基、2−クロロフェニルチオキシ基、2−メチルフェニルチオキシ基、2−メトキシフェニルチオキシ基、2−ブトキシフェニルチオキシ基、3−クロロフェニルチオキシ基、3−トリフルオロメチルフェニルチオキシ基、3−シアノフェニルチオキシ基、3−ニトロフェニルチオキシ基、4−フルオロフェニルチオキシ基、4−シアノフェニルチオキシ基、4−メトキシフェニルチオキシ基、4−ジメチルアミノフェニルチオキシ基、4−メチルスルファニルフェニルチオキシ基、4−フェニルスルファニルフェニルチオキシ基等がある。
【0054】
置換基を有してもよいアシルオキシ基としては、炭素数2〜20のアシルオキシ基が好ましく、例えば、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、トリフルオロメチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、1−ナフチルカルボニルオキシ基、2−ナフチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0055】
置換基を有してもよいアルキルスルファニル基としては、炭素数1〜20のアルキルスルファニル基が好ましく、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、シクロヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、2−エチルヘキシルスルファニル基、デカノイルスルファニル基、ドデカノイルスルファニル基、オクタデカノイルスルファニル基、シアノメチルスルファニル基、メトキシメチルスルファニル基等が挙げられる。
【0056】
置換基を有してもよいアリールスルファニル基としては、炭素数6〜30のアリールスルファニル基が好ましく、例えば、フェニルスルファニル基、1−ナフチルスルファニル基、2−ナフチルスルファニル基、2−クロロフェニルスルファニル基、2−メチルフェニルスルファニル基、2−メトキシフェニルスルファニル基、2−ブトキシフェニルスルファニル基、3−クロロフェニルスルファニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルファニル基、3−シアノフェニルスルファニル基、3−ニトロフェニルスルファニル基、4−フルオロフェニルスルファニル基、4−シアノフェニルスルファニル基、4−メトキシフェニルスルファニル基、4−メチルスルファニルフェニルスルファニル基、4−フェニルスルファニルフェニルスルファニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルファニル基等が挙げられる。
【0057】
置換基を有してもよいカルバモイル基としては、総炭素数1〜30のカルバモイル基が好ましく、例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−ブチルカルバモイル基、N−ヘキシルカルバモイル基、N−シクロヘキシルカルバモイル基、N−オクチルカルバモイル基、N−デシルカルバモイル基、N−オクタデシルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−2−メチルフェニルカルバモイル基、N−2−クロロフェニルカルバモイル基、N−2−イソプロポキシフェニルカルバモイル基、N−2−(2−エチルヘキシル)フェニルカルバモイル基、N−3−クロロフェニルカルバモイル基、N−3−ニトロフェニルカルバモイル基、N−3−シアノフェニルカルバモイル基、N−4−メトキシフェニルカルバモイル基、N−4−シアノフェニルカルバモイル基、N−4−メチルスルファニルフェニルカルバモイル基、N−4−フェニルスルファニルフェニルカルバモイル基、N−メチル−N−フェニルカルバモイル基、N、N−ジメチルカルバモイル基、N、N−ジブチルカルバモイル基、N、N−ジフェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0058】
置換基を有してもよいスルファモイル基としては、総炭素数0〜30のスルファモイル基が好ましく、例えば、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N、N−ジアルキルスルファモイル基、N、N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモオイル基等が挙げられる。より具体的には、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基、N−オクチルスルファモイル基、N−2−エチルヘキシルスルファモイル基、N−デシルスルファモイル基、N−オクタデシルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基、N−2−メチルフェニルスルファモイル基、N−2−クロロフェニルスルファモイル基、N−2−メトキシフェニルスルファモイル基、N−2−イソプロポキシフェニルスルファモイル基、N−3−クロロフェニルスルファモイル基、N−3−ニトロフェニルスルファモイル基、N−3−シアノフェニルスルファモイル基、N−4−メトキシフェニルスルファモイル基、N−4−シアノフェニルスルファモイル基、N−4−ジメチルアミノフェニルスルファモイル基、N−4−メチルスルファニルフェニルスルファモイル基、N−4−フェニルスルファニルフェニルスルファモイル基、N−メチル−N−フェニルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジフェニルスルファモイル基等が挙げられる。
【0059】
置換基を有してもよいアミノ基としては、総炭素数0〜50のアミノ基が好ましく、例えば、−NH2、N−アルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N−アシルアミノ基、N−スルホニルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、N、N−ジスルホニルアミノ基等が挙げられる。より具体的には、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−tert―ブチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基、N−オクチルアミノ基、N−2−エチルヘキシルアミノ基、N−デシルアミノ基、N−オクタデシルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−2−メチルフェニルアミノ基、N−2−クロロフェニルアミノ基、N−2−メトキシフェニルアミノ基、N−2−イソプロポキシフェニルアミノ基、N−2−(2−エチルヘキシル)フェニルアミノ基、N−3−クロロフェニルアミノ基、N−3−ニトロフェニルアミノ基、N−3−シアノフェニルアミノ基、N−3−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、N−4−メトキシフェニルアミノ基、N−4−シアノフェニルアミノ基、N−4−トリフルオロメチルフェニルアミノ基、N−4−メチルスルファニルフェニルアミノ基、N−4−フェニルスルファニルフェニルアミノ基、N−4−ジメチルアミノフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N、N−ジメチルアミノ基、N、N−ジエチルアミノ基、N、N−ジブチルアミノ基、N、N−ジフェニルアミノ基、N、N−ジアセチルアミノ基、N、N−ジベンゾイルアミノ基、N、N−(ジブチルカルボニル)アミノ基、N、N−(ジメチルスルホニル)アミノ基、N、N−(ジエチルスルホニル)アミノ基、N、N−(ジブチルスルホニル)アミノ基、N、N−(ジフェニルスルホニル)アミノ基、モルホリノ基、3,5−ジメチルモルホリノ基、カルバゾール基等が挙げられる。
【0060】
ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等がある。
【0061】
更に、前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアシルオキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルファニル基、置換基を有してもよいアリールスルファニル基、置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、置換基を有してもよいスルファモイル基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよい複素環基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0062】
そのような置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、トリメチルアンモニウミル基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0063】
前記一般式(I)におけるnは、0〜4の整数を表す。
は、0〜2が好ましく、2がより好ましい。nが2以上の整数の時は、各々Yは互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。当該環には、脂肪族性又は芳香属性の炭化水素環、或いはヘテロ原子を有するヘテロ環が含まれる。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。
【0064】
脂肪族性又は芳香族性の炭化水素環としては、6員環、5員環、7員環の炭化水素環が挙げられ、6員環、5員環、がより好ましい。
ヘテロ環としては、ヘテロ原子として硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を有するヘテロ環が挙げられ、硫黄原子を有するヘテロ環がより好ましい。
【0065】
さらに多環縮合環を形成する場合、脂肪族性又は芳香族性の炭化水素環としては、1個〜4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどを挙げることができる。ヘテロ原子を含むヘテロ環としては、硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を含む5員環とベンゼン環が縮合環を形成したもの、硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を含む6員環とベンゼン環が縮合環を形成したものなどが挙げられる。
【0066】
が互いに結合して形成しうる環として具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ジチオラン環、オキシラン、ジオキシラン環、チイラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、イミダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾジチオール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾジチオール環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。
【0067】
前記一般式(I)におけるZで表される一価の置換基としては、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルキルスルファニル基、置換基を有してもよいアリールスルファニル基、置換基を有してもよいアルキルスルフィニル基、置換基を有してもよいアリールスルフィニル基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいカルバモイル基、水素原子等が挙げられる。
上記一般式(I)におけるZで表される一価の置換基の具体例および好ましい炭素数の範囲は、前記一般式(I)におけるYで表される一価の置換基の例と同様である。
【0068】
前記一般式(I)におけるYと、前記一般式(I)におけるZとは、互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。当該環には、脂肪族性又は芳香属性の炭化水素環、或いはヘテロ原子を有するヘテロ環が含まれる。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。
【0069】
脂肪族性又は芳香族性の炭化水素環としては、6員環、5員環、7員環の炭化水素環が挙げられ、6員環、5員環、がより好ましく、5員環が特に好ましい。
ヘテロ環としては、ヘテロ原子として硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を有するヘテロ環が挙げられ、硫黄原子を有するヘテロ環がより好ましい。
【0070】
さらに多環縮合環を形成する場合、脂肪族性又は芳香族性の炭化水素環としては、1個〜4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどを挙げることができる。ヘテロ原子を含むヘテロ環としては、硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を含む5員環とベンゼン環が縮合環を形成したもの、硫黄原子又は酸素原子又は窒素原子を含む6員環とベンゼン環が縮合環を形成したものなどが挙げられる。
【0071】
前記一般式(I)におけるYと、前記一般式(I)におけるZとが、互いに結合して形成しうる環として具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ジチオラン環、オキシラン、ジオキシラン環、チイラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、イミダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾジチオール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾジチオール環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。
【0072】
前記一般式(I)におけるAは、2価の連結基を表す。
前記一般式(I)におけるAの具体例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキニレン基等が挙げられる。
置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基、アルキレンオキシド基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基、ベンゾイル基、トリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルハロアルキル基、トリアルキルシリル基、ホスホノ基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
【0073】
前記一般式(I)におけるAの好ましい例としては、下記の部分構造式で表される2価の連結基が挙げられる。なお、下記具体例中、2つの*は、一方が、一般式(I)における部分構造『>C=N−O−R』中の炭素原子(C)に結合し、他方が、一般式(I)における部分構造『>N−Z』中の窒素原子(N)に結合する。
【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
上記具体例(1)〜(112)の中でも、高感度化の点で、(1)、及び(2)が好ましく、(1)が最も好ましい。
前記一般式(1)において、R、Y、n、Z、及びAの好ましい組み合わせは、R、Y、n、Z、及びAの各々の好ましい範囲の組み合わせである。
【0079】
本発明の特定オキシム化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0080】
【化9】

【0081】
前記一般式(2)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。
【0082】
前記一般式(2)におけるRは、前記一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
前記一般式(2)におけるAは、前記一般式(1)におけるAと同義であり、好ましい例も同様である。
【0083】
前記一般式(2)におけるY、及びYで表される1価の置換基は、前記一般式(1)におけるYで表される1価の置換基と同義であり、好ましい炭素数の範囲も同様である。
中でも、前記一般式(2)におけるYは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、無置換であることが好ましい。
前記一般式(2)におけるYは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、又はアシル基が好ましく、特に、下記一般式(3)を表し得る置換基であることが好ましい。
また、n及びnは、各々独立に、0または1が好ましく、nは0、nは1がより好ましい。
【0084】
前記一般式(2)において、R、Y、n、Y、n、Z、及びAの好ましい組み合わせは、R、Y、n、Y、n、Z、及びAの各々の好ましい範囲の組み合わせである。
【0085】
本発明の特定オキシム化合物は、さらに、下記一般式(3)で表されることが好ましい。
【0086】
【化10】

【0087】
前記一般式(3)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。
【0088】
前記一般式(3)におけるRは、前記一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(2)におけるAは、前記一般式(1)におけるAと同義であり、好ましい例も同様である。
【0089】
前記一般式(3)におけるY、及びYで表される1価の置換基は、前記一般式(1)におけるYで表される1価の置換基と同義であり、好ましい炭素数も同様である。
中でも、前記一般式(3)におけるYは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、無置換であることがより好ましい。
前記一般式(3)におけるYは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、アルキルチオキシ基、アリールオキシ基、又はアリールチオキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
また、n、及びnは、各々独立に、0又は1が好ましく、nは0、nは1がより好ましい。
【0090】
前記一般式(3)において、R、Y、n、Y、n、Z、及びAの好ましい組み合わせは、R、Y、n、Y、n、Z、及びAの各々の好ましい範囲の組み合わせである。
【0091】
以下、本発明の特定オキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【化11】

【0093】
【化12】

【0094】
【化13】

【0095】
【化14】

【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
【化27】

【0109】
【化28】

【0110】
【化29】

【0111】
【化30】

【0112】
【化31】

【0113】
【化32】

【0114】
【化33】

【0115】
【化34】

【0116】
【化35】

【0117】
【化36】

【0118】
【化37】

【0119】
【化38】

【0120】
【化39】

【0121】
【化40】

【0122】
【化41】

【0123】
【化42】

【0124】
【化43】

【0125】
【化44】

【0126】
【化45】

【0127】
【化46】

【0128】
【化47】

【0129】
上記具体例(201)〜(511)の中でも、高感度化の観点から、(211)〜(237)、(248)〜(275)、(287)〜(313)、(322)〜(347)、(357)〜(382)、(391)〜(416)、(426)〜(448)、(458)〜(463)、及び(468)〜(504)が好ましく、(211)〜(237)、(322)〜(347)、(426)〜(431)、(436)〜(448)、及び(484)〜(486)がより好ましく、(221)〜(234)、(332)〜(344)、(347)、(441)〜(448)、及び(484)〜(486)が最も好ましい。
【0130】
本発明の特定オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する。より好ましくは、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものを挙げることができる。特に、365nm及び455nmの吸光度が高いものが好ましい。
このように、特定オキシム化合物は、従来のオキシム系の化合物に比して、長波長領域に吸収を有する。したがって、365nmや405nmの光源で露光した際に、優れた感度を示すことになる。
【0131】
本発明の特定オキシム化合物の、365nm、又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、10,000〜300,000であることが好ましく、15,000〜300,000であることがより好まく、20,000〜200,000であることが特に好ましい。
ここで、特定オキシム化合物のモル吸光係数は、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用いて0.01g/Lの濃度で測定した値をいう。
【0132】
本発明の特定オキシム化合物〔前記一般式(1)で表される化合物〕は、例えば、以下に示す方法により合成することができるが、この方法に限定されるものではない。なお、下記合成スキーム中、Y、Z、A、R、及びnは、前記一般式(1)におけるY、Z、A、R、及びnと同義である。
【0133】
【化48】

【0134】
本発明の特定オキシム化合物は、光により分解し、重合性化合物の重合を開始、促進する光重合開始剤としての機能を有する。特に、該特定オキシム化合物は365nmや405nmの光源に優れた感度を有するため、光重合性組成物において光重合開始剤として用いた場合に優れた効果を発揮する。
【0135】
また、本発明の特定オキシム化合物は、その光重合開始機能を利用して、以下に示す用途の硬化性材料にも適用することができる。
即ち、例えば、印刷インク用、例えば、スクリーン印刷インク用、オフセットもしくはフレキソ印刷インク用、UV硬化インク用として、例えば、木材または金属に対する、白色もしくは有色仕上げ用として、粉末コーティング用として、特に、紙、木材、金属またはプラスチックに対するコーティング材料用として、建築物のマーキング用や道路マーキング用として、写真複製手法用として、ホログラフ記録の材料用として、画像記録手法用として、有機溶媒もしくは水性アルカリで現像できる印刷原版の製造用として、スクリーン印刷マスクの製造のための日光硬化性コーティング用として、歯科充填用組成物用として、接着剤用として、感圧接着剤用として、積層用樹脂用として、液体および乾燥薄膜双方のエッチングレジスト用として、はんだレジスト用として、電気めっきレジスト用または永久レジスト用として、プリント回路板や電子回路用の光構成性誘電体用として、様々な表示用として、光学スイッチ用として、光学格子(干渉格子)用として、光回路の製造として、大量硬化(透明成形用型でのUV硬化)またはステレオリトグラフィ手法による三次元的物品の製造用として(例えば、米国特許第4,575,330号明細書に記載のような)、複合材料(例えば、所望であれば、ガラス繊維および/またはその他の繊維ならびに他の助剤を含み得るスチレン系ポリエステル)その他の厚層組成物の製造用として、電子部品および集積回路のコーティングまたは密封のためのレジスト用として、あるいは光ファイバー用、または光学レンズ用、例えば、コンタクトレンズもしくはフレネルレンズ製造のためのコーティング用として、さらに、医用機器、補助具またはインプラントの製造や、例えば、ドイツ国特許第19,700,064号および欧州特許第678,534号公報に記載のようなサーモトロピック特性を有するゲルの製造用としての各種の用途が挙げられる。
【0136】
また、本発明の特定オキシム化合物は、エネルギー線、特に光の照射により酸を発生することも可能である。そのため、その発生した酸を触媒とする他の用途にも適用することができ、具体的には、発生した酸を触媒とする色素前駆体の発色反応を利用した画像形成、偽造防止、エネルギー線量検出のための材料、更には、発生した酸を触媒とする分解反応を利用した半導体製造用、TFT製造用、カラーフィルタ製造用、マイクロマシン部品製造用等のポジ型レジストにも利用することができる。
【0137】
以上のように、本発明の特定オキシム化合物を光重合開始剤として用いることが可能であるため、重合性化合物と併用することで、光により重合硬化する光重合性組成物(本発明の光重合性組成物)に適用することが好ましい。
【0138】
<光重合性組成物>
本発明の光重合性組成物は、前述の(A)特定オキシム化合物、及び、(B)重合性化合物を含有することを特徴とする。
本発明の光重合性組成物は、波長365nmや405nmの光に対する感度が高く、経時安定性に優れ、更に、加熱経時による着色を抑制しうる硬化膜を形成することが可能である。この詳細な機構は不明であるが、本発明の特定オキシム化合物は、光を吸収し、開裂した際のラジカル再結合が抑制される構造を有するため、発生ラジカル量が多く高感度化を達成することができる。また、ラジカル再結合が抑制される点から、加熱経時においては、特定オキシム化合物の分解生成物同士の反応が抑えられ、その反応に由来する着色が抑制されるためであると考えられる。
【0139】
また、本発明において、硬化膜の加熱経時による着色を評価するためには、色差ΔEabを用いればよい。ここで、色差ΔEabは、大塚電子(株)製MCPD−3000で測定することができる。
評価の際の条件としては、まず、本発明の光重合性組成物を超高圧水銀灯プロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)、若しくは、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)(365nm)で10mJ/cm〜2,500mJ/cmの範囲の種々の露光量で露光し、硬化膜を形成する。そして、所望により現像を行った後、硬化膜を200℃で1時間加熱する。
この硬化膜の加熱前後の色差ΔEabを測定することで、硬化膜の加熱経時による着色状態を評価することができる。
本発明の光重合性組成物によれば、加熱前後の色差ΔEabを5以下とすることができる。
【0140】
本発明の光重合性組成物は、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合材料、印刷インキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルタ用光重合性組成物、ブラックマトリクス用レジスト、プリント基板用レジスト、半導体製造用レジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト等、絶縁材、ホログラム材料、導波路用材料、オーバーコート剤、接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤等の種々の用途に利用することができる。
【0141】
以下に、本発明の光重合性組成物について、カラーフィルタ形成等に好適に用いうる光重合性組成物(1)〔カラーフィルタ用光重合性組成物〕、及び、平版印刷版原版の感光層形成等に好適に用いうる光重合性組成物(2)を例に説明するが、本発明の光重合性組成物は、これらに限定されるものではない。
【0142】
−光重合性組成物(1)−
〔(1)−(A)特定オキシム化合物〕
光重合性組成物(1)が含有する(A)特定オキシム化合物は、組成物中、重合開始剤として機能しうる。
光重合性組成物(1)における特定オキシム化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し0.5〜40質量%が好ましく、1〜35質量%がより好ましく、1.5〜30質量%が更に好ましい。
特定オキシム化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
光重合性組成物(1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記特定オキシム化合物以外の公知の光重合開始剤を併用してもよい。この場合において、公知の光重合開始剤は、特定オキシム化合物の50質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
併用可能な光重合開始剤は、光により分解し、後述する重合性化合物の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ビイミダゾール系化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
【0144】
〔(1)−(B)重合性化合物〕
光重合性組成物(1)に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0145】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0146】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0147】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0148】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0149】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0150】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0151】
CH=C(R)COOCHCH(R)OH (A)
(ただし、一般式(A)中、R及びRは、それぞれ、H又はCHを示す。)
【0152】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0153】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0154】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、光重合性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、光重合性組成物に含有される他の成分(例えば、光重合開始剤、着色剤(顔料、染料)等、バインダーポリマー等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体などの硬質表面との密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0155】
〔(1)−(C)着色剤〕
光重合性組成物(1)は(C)着色剤を含有することができる。着色剤を含有することにより、所望色の着色光重合性組成物を得ることができる。
なお、光重合性組成物(1)は、短波長の光源である365nmや405nmの光源に優れた感度を有する(A)特定オキシム化合物を含有するため、着色剤を高濃度に含有する場合にも高感度に硬化することができる。
【0156】
光重合性組成物(1)において用いられる着色剤は特に限定されるものではなく、従来公知の種々の染料や顔料を1種又は2種以上混合して用いることができ、これらは光重合性組成物の用途に応じて適宜選択される。本発明の光重合性組成物をカラーフィルタ製造に用いる場合であれば、カラーフィルタの色画素を形成するR、G、B等の有彩色系の着色剤(有彩色着色剤)、及びブラックマトリクス形成用に一般に用いられている黒色系の着色剤(黒色着色剤)のいずれをも用いることができる。
前記(A)特定オキシム化合物を含有する本発明の光重合性組成物は、露光量が少なくても高感度に硬化することができるため、光を透過し難い黒色着色剤を含有する光重合性組成物に、特に好ましく用いることができる。
【0157】
以下、光重合性組成物(1)に適用しうる着色剤について、カラーフィルタ用途に好適な着色剤を例に詳述する。
有彩色系の顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができる。また、無機顔料であれ有機顔料であれ、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく細かいものの使用が好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均粒子径は、0.01μm〜0.1μmが好ましく、0.01μm〜0.05μmがより好ましい。
【0158】
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0159】
有機顔料としては、例えば、
C.I.ピグメント イエロー 11, 24, 31, 53, 83, 93, 99, 108, 109, 110, 138, 139, 147, 150, 151, 154, 155, 167, 180, 185, 199, ;
C.I.ピグメント オレンジ36, 38, 43, 71;
C.I.ピグメント レッド81, 105, 122, 149, 150, 155, 171, 175, 176, 177,209, 220, 224, 242, 254, 255, 264, 270;
C.I.ピグメント バイオレット 19, 23, 32, 39;
C.I.ピグメント ブルー 1, 2, 15, 15:1, 15:3, 15:6, 16, 22, 60, 66;
C.I.ピグメント グリーン 7, 36, 37;
C.I.ピグメント ブラウン 25, 28;
C.I.ピグメント ブラック 1, 7;
カーボンブラック等を挙げることができる。
【0160】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性の窒素原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性の窒素原子をもつ顔料は光重合性組成物(1)中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、感光性重合成分と顔料との親和性の良さが影響しているものと推定される。
【0161】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0162】
C.I.ピグメント イエロー 11, 24, 108, 109, 110, 138, 139, 150, 151, 154, 167, 180, 185,
C.I.ピグメント オレンジ36, 71,
C.I.ピグメント レッド 122, 150, 171, 175, 177, 209, 224, 242, 254, 255, 264,
C.I.ピグメント バイオレット 19, 23, 32,
C.I.ピグメント ブルー 15:1, 15:3, 15:6, 16, 22,
60, 66,
C.I.ピグメント ブラック 1
【0163】
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。上記組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料単独又はそれらの少なくとも一種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料又はペリレン系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメント レッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメント レッド155、C.I.ピグメント レッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメント レッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメント イエロー139との混合が好ましい。また、赤色顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:50が好ましい。100〜4以下では400nmから500nmの光透過率を抑えることが困難で色純度を上げることが出来ない場合がある。また100:51以上では主波長が短波長よりになり、NTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。特に、上記質量比としては、100:10〜100:30の範囲が最適である。なお、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0164】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を単独で、又は、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料若しくはイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。例えば、このような例としては、C.I.ピグメント グリーン7、36、37とC.I.ピグメント イエロー83、C.I.ピグメント イエロー138、C.I.ピグメント イエロー139、C.I.ピグメント イエロー150、C.I.ピグメント イエロー180又はC.I.ピグメント イエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:150が好ましい。上記質量比が100:5未満では400nm〜450nmの光透過率を抑えることが困難となり色純度を上げることが出来ない場合がある。また100:150を越えると主波長が長波長よりになりNTSC目標色相からのずれが大きくなる場合がある。上記質量比としては100:30〜100:120の範囲が特に好ましい。
【0165】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。例えばC.I.ピグメント ブルー15:6とC.I.ピグメント バイオレット23との混合が好ましい。青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:30が好ましく、より好ましくは100:10以下である。
【0166】
また、ブラックマトリックス用の顔料としては、カーボン、チタンカーボン、酸化鉄、酸化チタン単独又は混合が用いられ、カーボンとチタンカーボンとの組合せが好ましい。また、カーボンとチタンカーボンとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。100:61以上では、分散安定性が低下する場合がある。
【0167】
光重合性組成物(1)において、着色剤が染料である場合には、組成物中に均一に溶解した状態の着色組成物を得ることができる。
光重合性組成物(1)に含有される着色剤として使用できる染料は、特に制限はなく、
従来カラーフィルタ用として公知の染料が使用できる。例えば、特開昭64−90403号公報、特開昭64−91102号公報、特開平1−94301号公報、特開平6−11614号公報、特登2592207号、米国特許第4,808,501号明細書、米国特許第5,667,920号明細書、米国特許第5,059,500号明細書、特開平5−333207号公報、特開平6−35183号公報、特開平6−51115号公報、特開平6−194828号公報、特開平8−211599号公報、特開平4−249549号公報、特開平10−123316号公報、特開平11−302283号公報、特開平7−286107号公報、特開2001−4823号公報、特開平8−15522号公報、特開平8−29771号公報、特開平8−146215号公報、特開平11−343437号公報、特開平8−62416号公報、特開2002−14220号公報、特開2002−14221号公報、特開2002−14222号公報、特開2002−14223号公報、特開平8−302224号公報、特開平8−73758号公報、特開平8−179120号公報、特開平8−151531号公報等に開示されている色素が使用できる。
【0168】
化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の染料が使用できる。
【0169】
また、水又はアルカリ現像を行うレジスト系の場合、現像により光未照射部のバインダー及び/又は染料を完全に除去するという観点では、酸性染料及び/又はその誘導体が好適に使用できる場合がある。
その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及び/又は、これらの誘導体等も有用に使用することができる。
【0170】
酸性染料は、スルホン酸やカルボン酸等の酸性基を有するものであれば特に限定されないが、有機溶剤や現像液に対する溶解性、塩基性化合物との塩形成性、吸光度、組成物中の他の成分との相互作用、耐光性、耐熱性等の必要とされる性能の全てを考慮して選択される。
以下に酸性染料の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。例えば、
acid alizarin violet N;acid black 1,2,24,48;acid blue 1,7,9,15,18,23,25,27,29,40〜45,62,70,74,80,83,86,87,90,92,103,112,113,120,129,138,147,158,171,182,192,243,324:1;acid chrome violet K;acid Fuchsin;acid green 1,3,5,9,16,25,27,50;acid orange 6,7,8,10,12,50,51,52,56,63,74,95;acid
red 1,4,8,14,17,18,26,27,29,31,34,35,37,42,44,50,51,52,57,66,73,80,87,88,91,92,94,97,103,111,114,129,133,134,138,143,145,150,151,158,176,183,198,211,215,216,217,249,252,257,260,266,274;acid violet 6B,7,9,17,19;acid yellow 1,3,7,9,11,17,23,25,29,34,36,42,54,72,73,76,79,98,99,111,112,114,116,184,243;Food Yellow 3;及びこれらの染料の誘導体が挙げられる。
【0171】
この中でも酸性染料としては、acid black 24;acid blue 23,25,29,62,80,86,87,92,138,158,182,243,324:1;acid orange 8,51,56,63,74;acid red 1,4,8,34,37,42,52,57,80,97,114,143,145,151,183,217;acid violet 7;acid yellow 17,25,29,34,42,72,76,99,111,112,114,116,184,243;acidgreen 25等の染料及びこれらの染料の誘導体が好ましい。
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
【0172】
なかでも、着色剤としては、トリアリルメタン系、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、オキソノール系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、アンスラピリドン系から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0173】
光重合性組成物(1)において使用しうる着色剤は、顔料であることが好ましい。とりわけ、平均粒子径rが、20nm≦r≦300nm、好ましくは125nm≦r≦250nm、特に好ましくは30nm≦r≦200nmを満たす顔料が望ましい。このような平均粒子径rの顔料を用いることにより、高コントラスト比であり、かつ高光透過率の赤色及び緑色の画素を得ることができる。ここでいう「平均粒子径」とは、顔料の一次粒子(単微結晶)が集合した二次粒子についての平均粒子径を意味する。
また、本発明において使用しうる顔料の二次粒子の粒子径分布(以下、単に「粒子径分布」という。)は、(平均粒子径±100)nmに入る二次粒子が全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上であることが望ましい。
【0174】
前記した平均粒子径及び粒子径分布を有する顔料は、市販の顔料を、場合により使用される他の顔料(平均粒子径は通常、300nmを越える。)と共に、好ましくは分散剤及び溶媒と混合した顔料混合液として、例えばビーズミル、ロールミル等の粉砕機を用いて、粉砕しつつ混合・分散することにより調製することができる。このようにして得られる顔料は、通常、顔料分散液の形態をとる。
【0175】
光重合性組成物(1)に含有される着色剤の含有量としては、光重合性組成物の全固形分中、30質量%〜95質量%であることが好ましく、40質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が更に好ましい。
着色剤の含有量を上記範囲とすることで、光重合性組成物(1)によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られる。また、光硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができるため、アルカリ現像の際の現像ラチチュードが狭くなることを防止することができる。
すなわち、本発明で用いられる(A)特定オキシム化合物は、光吸収効率が高いことから、光重合性組成物中に着色剤を高濃度に含有する場合であっても、顕著に感度向上効果が発揮される。
【0176】
〔(1)−(D)顔料分散剤〕
光重合性組成物(1)が(C)着色剤として顔料を含有する場合、該顔料の分散性を向上させる観点から、(D)顔料分散剤を添加することが好ましい。
【0177】
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0178】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0179】
本発明に用いうる顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。
【0180】
これらの顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0181】
光重合性組成物(1)における顔料分散剤の含有量としては、顔料に対して、1〜80質量%であることが好ましく、5〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料に対して、5〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲がより好ましい。
また、顔料誘導体を使用する場合であれば、その使用量としては、顔料に対し1〜30質量%の範囲にあることが好ましく、3〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0182】
光重合性組成物(1)において、着色剤としての顔料と分散剤とを用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤及び分散剤の含有量の総和が、光重合性組成物を構成する全固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0183】
光重合性組成物(1)は、更に、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
以下、光重合性組成物(1)が含有しうる任意成分について説明する。
【0184】
〔(1)−(E)増感剤〕
光重合性組成物(1)は、ラジカル開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、前記した(A)特定オキシム化合物に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0185】
光重合性組成物(1)に用いられる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ、300nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
即ち、例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
【0186】
光重合性組成物(1)における増感剤として、より好ましい例としては、下記一般式(e−1)〜(e−4)で表される化合物が挙げられる。
【0187】
【化49】

【0188】
前記一般式(e−1)中、Aは硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、Lは隣接するA及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0189】
【化50】

【0190】
前記一般式(e−2)中、Ar及びArはそれぞれ独立にアリール基を表し、−L−による結合を介して連結している。ここでLは−O−又は−S−を表す。また、Wは、前記一般式(e−1)に示したものと同義である。
【0191】
【化51】

【0192】
前記一般式(e−3)中、Aは硫黄原子又はNR59を表し、Lは隣接するA及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基又はアリール基を表す。
【0193】
【化52】

【0194】
前記一般式(e−4)中、A、Aはそれぞれ独立に−S−又は−NR62を表し、R62は置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L、Lはそれぞれ独立に、隣接するA、A及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に一価の非金属原子団を表し、又は互いに結合して脂肪族性又は芳香族性の環を形成することができる。
【0195】
光重合性組成物(1)中における増感剤の含有量は、深部への光吸収効率と開始分解効率の観点から、固形分換算で、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0196】
また、光重合性組成物(1)に含有しうる好ましい増感剤としては、上記増感剤の他、下記一般式(II)で表される化合物、及び後記一般式(III)で表される化合物から選択
される少なくとも一種が挙げられる。
これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0197】
【化53】

【0198】
一般式(II)中、R11及びR12は、各々独立に一価の置換基を表し、R13、R14、R15及びR16は、各々独立に水素原子又は一価の置換基を表す。nは0〜5の整数を表し、n’は0〜5の整数を表し、n及びn’が両方とも0となることはない。nが2以上である場合、複数存在するR11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。n’が2以上である場合、複数存在するR12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、一般式(II)において二重結合による異性体については、どちらかに限定されるものではない
【0199】
一般式(II)で表される化合物としては、波長365nmにおけるモル吸光係数εが500mol−1・L・cm−1以上であることが好ましく、波長365nmにおけるεが3000mol−1・L・cm−1以上であることがより好ましく、波長365nmにおけるεが20000mol−1・L・cm−1以上であることが最も好ましい。各波長でのモル吸光係数εの値が上記範囲であると、光吸収効率の観点から感度向上効果が高く好ましい。
【0200】
一般式(II)で表される化合物の好ましい具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書においては、化学式は簡略構造式により記載することもあり、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。
【0201】
【化54】

【0202】
【化55】

【0203】
前記一般式(III)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R23)−を表し、Yは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R23)−を表す。R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、A、R21、R22、及びR23は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0204】
前記一般式(III)において、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R21、R22及びR23が一価の非金属原子を表す場合、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換の芳香族複素環残基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0205】
前記一般式(III)で表される化合物は、光重合開始剤の分解効率向上の観点から、Yは酸素原子、又は−N(R23)−が好ましい。R23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。更に、Yは−N(R23)−であることが最も好ましい。
【0206】
以下、前記一般式(III)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また、酸性核と塩基性核を結ぶ2重結合による異性体については明らかでなく、本発明はどちらかの異性体に限定されるものでもない。
【0207】
【化56】

【0208】
〔(1)−(F)共増感剤〕
光重合性組成物(1)は、更に(F)共増感剤を含有することも好ましい。
本発明において共増感剤は、(A)特定オキシム化合物や(E)増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは、酸素による(B)重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0209】
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0210】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0211】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0212】
これら共増感剤の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、光重合性組成物(1)の全固形分の質量に対し、0.1質量%〜30質量%の範囲が好ましく、1質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、0.5質量%〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0213】
また、光重合性組成物(1)は、共増感剤として、チオール化合物を含有することが好ましい。
光重合性組成物(1)に含有しうるチオール化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0214】
【化57】

【0215】
前記一般式(IV)中、Xは、硫黄原子、酸素原子又は−N(R43)−を表し、R43は、水素原子炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数6〜13のアリール基を表す。R41及びR42は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、アセチル基、又はカルボキシル基を表し、また、R41、R42及びこれらが結合している二重結合を併せてベンゼン環を形成してもよく、R41及びR42が結合している二重結合は、水素添加されていてもよい。
【0216】
また、チオール化合物としては、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報に記載のチオール化合物に記載の化合物が挙げられる。
【0217】
更に、光重合性組成物(1)に好適なチオール化合物は、下記一般式(V)で表されるものであることが好ましい。
【0218】
【化58】

【0219】
前記一般式(V)中、Rは、アルキル基、又はアリール基を表し、Aは、N=C−Nと共にヘテロ環を形成する原子団を表す。
【0220】
前記一般式(V)において、Rは、アルキル基、又はアリール基を表す。
前記アルキル基としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、並びに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0221】
前記アリール基としては、単環構造のものに加え、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどを挙げることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基等を挙げることができ、これらの中では、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0222】
これらのアルキル基やアリール基は、更に置換基を有していてもよく、導入しうる置換基としては、炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素原子数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールオキシカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜20のカルバモイルオキシ基、炭素原子数1〜20のカルボンアミド基、炭素原子数1〜20のスルホンアミド基、炭素原子数1〜20のカルバモイル基、スルファモイル基、炭素原子数1〜20の置換スルファモイル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素原子数1〜20のN−アシルスルファモイル基、炭素原子数1〜20のN−スルファモイルカルバモイル基、炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素原子数6〜20のアリールスルホニル基、炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基、アミノ基、炭素原子数1〜20の置換アミノ基、炭素原子数1〜20のイミノ基、炭素原子数3〜20のアンモニオ基、カルボキシル基、スルホ基、オキシ基、メルカプト基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素原子数6〜20のアリールスルフィニル基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、炭素原子数6〜20のアリールチオ基、炭素原子数1〜20のウレイド基、炭素原子数2〜20のヘテロ環基、炭素原子数1〜20のアシル基、スルファモイルアミノ基、炭素原子数1〜2の置換スルファモイルアミノ基、炭素原子数2〜20のシリル基、イソシアネート基、イソシアニド基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ニトロ基、オニウム基等が挙げられる。
【0223】
また、前記一般式(V)において、Aは、N=C−Nと共にヘテロ環を形成する原子団を表す。
この原子団を構成する原子としては、炭素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、セレン原子等が挙げられる。
なお、AとN=C−Nとで形成されるヘテロ環は、更に置換基を有していてもよく、導入しうる置換基としては、上記アルキル基やアリール基に導入可能な置換基と同様のものが挙げられる。
【0224】
また、光重合性組成物(1)に好適なチオール化合物としては、下記一般式(VI)又は一般式(VII)で表されるものがより好ましい。
【0225】
【化59】

【0226】
前記一般式(VI)中、Rは、アリール基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0227】
前記一般式(VII)中、Rは、アルキル基、又はアリール基を表し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0228】
前記一般式(VI)及び(VII)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0229】
前記一般式(VI)及び(VII)におけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリロキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメチルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0230】
前記一般式(VI)及び(VII)におけるアルキル基は、前記一般式(V)のRで表されるアルキル基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
また、前記一般式(VI)及び(VII)におけるアリール基は、前記一般式(V)のRで表されるアリール基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0231】
前記一般式(VI)及び(VII)における各基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記一般式(V)のRで表されるアルキル基やアリール基に導入可能な置換基として挙げられているものと同様である。
【0232】
前記一般式(VI)及び(VII)中、Xは、光重合性組成物の調製に好ましく用いられる溶剤であるPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)への溶解性の観点で、水素原子であることが、より好ましい。
前記一般式(VI)中、Rは、フェニル基であることが、感度とPGMEA溶解性の観点で最も好ましい。
前記一般式(VII)中、Rは、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基であることが、感度とPGMEA溶解性の観点でより好ましい。
【0233】
前記一般式(VI)及び(VII)で表される化合物の中で、PGMEA溶解性の観点で、前記一般式(VII)で表される化合物が最も好ましい。
【0234】
以下、本発明に用いうるチオール化合物の好ましい具体例を、PGMEAへの溶解度と共に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書においては、化学式は簡略構造式により記載することもあり、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。また、下記具体例において、Meはメチル基を表す。
【0235】
【化60】

【0236】
【化61】

【0237】
【化62】

【0238】
これらチオール化合物のPGMEA溶媒に対する溶解度は、塗膜均一性の観点から20g/L以上であることが好ましく、より好ましくは20g/L以上〜50g/L以下であり、更に好ましくは20g/L以上〜40g/L以下である。
【0239】
−溶解度測定方法−
本明細書において、チオール化合物の溶解度は、以下のように定義する
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶媒5mLに特定チオール化合物を加え、25℃で1時間攪拌したときに特定チオール化合物が溶けなくなる直前の量を溶解度とした。
【0240】
これらのチオール化合物は、J.Appl.Chem.,34、2203−2207(1961)に記載の方法で合成することができる。
【0241】
チオール化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
チオール化合物を併用する場合、前記した一般式のいずれかで表される化合物のみを2種以上併用してもよいし、異なる一般式で表される化合物を併用してもよい(例えば、前記一般式(VI)で表される化合物から選択される化合物と、前記一般式(VII)で表される化合物から選択される化合物とを併用する態様がある。)。
【0242】
光重合性組成物(1)がチオール化合物を含有する場合、その含有量としては、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、光重合性組成物の全固形分の質量に対し、0.5質量%〜30質量%の範囲が好ましく、1質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、3質量%〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0243】
〔(1)−(G)バインダーポリマー〕
光重合性組成物(1)においては、皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、更にバインダーポリマーを使用することができる。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭54−92723号公報、特開昭59−53836号公報、特開昭59−71048号公報に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独或いは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独或いは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解若しくはハーフエステル化若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0244】
アルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、先にあげたモノマー以外の他のモノマーを用いることもできる。他のモノマーの例としては、下記(1)〜(12)の化合物が挙げられる。
【0245】
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、ビニルアクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、1−プロペニルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート等のアルキルアクリレート。
【0246】
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0247】
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0248】
(10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595号明細書、特願2001−115598号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0249】
これらの中で、側鎖にアリル基やビニルエステル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂及び特開2000−187322号公報、特開2002−62698号公報に記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂や、特開2001−242612号公報に記載されている側鎖にアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0250】
また、特公平7−12004号公報、特公平7−120041号公報、特公平7−120042号公報、特公平8−12424号公報、特開昭63−287944号公報、特開昭63−287947号公報、特開平1−271741号公報、特願平10−116232号公報等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーや、特開2002−107918号公報に記載される酸基と二重結合を側鎖に有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、欧州特許993966号明細書、欧州特許1204000号明細書、特開2001−318463号公報等に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。
更にこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0251】
光重合性組成物(1)で使用しうるバインダーポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0252】
本発明で用いうるバインダーポリマーは、従来公知の方法により合成できる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上混合して用いられる。
光重合性組成物(1)において用いうるバインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等公知の化合物が挙げられる。
【0253】
〔(1)−(H)重合禁止剤〕
光重合性組成物(1)においては、光重合性組成物の製造中或いは保存中において、(B)重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0254】
熱重合防止剤の添加量は、光重合性組成物(1)の全固形分に対し約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0255】
〔(1)−(I)密着向上剤〕
光重合性組成物(1)においては、支持体などの硬質表面との密着性を向上させるために、密着向上剤を添加することができる。密着向上剤としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0256】
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビスアリルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、(アクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
中でも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0257】
密着向上剤の添加量は、光重合性組成物(1)の全固形分中0.5質量%〜30質量%が好ましく、0.7質量%〜20質量%がより好ましい。
【0258】
〔(1)−(J)希釈剤〕
光重合性組成物(1)は、希釈剤として、種々の有機溶剤を用いてもよい。
ここで使用する有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。有機溶剤に対する固形分の濃度は、2質量%〜60質量%であることが好ましい。
【0259】
〔(1)−(K)その他の添加剤〕
更に、光重合性組成物(1)に対しては、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、可塑剤、感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、重合性化合物とバインダーポリマーとの合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0260】
以上、光重合性組成物(1)は、(A)特定オキシム化合物を含むことから、高感度で硬化し、かつ、保存安定性も良好であり、更に、加熱経時させた場合の着色を抑制することができる。また、光重合性組成物(1)を硬質材料表面に適用して硬化させた場合には、該表面に対して高い密着性を示す。
このような光重合性組成物(1)は、(A)特定オキシム化合物、(B)重合性化合物、及び(C)着色剤を含有させてカラーフィルタ用光重合性組成物(本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物)として用いることが好ましい。
【0261】
−光重合性組成物(2)−
〔(2)−(A)特定オキシム化合物〕
光重合性組成物(2)が含有する特定オキシム化合物は、組成物中、重合開始剤として機能しうる。
光重合性組成物(2)における特定オキシム化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜35質量%がより好ましく、1.5質量%〜30質量%が更に好ましい。
特定オキシム化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0262】
光重合性組成物(2)においても、本発明の効果を損なわない範囲において、前記特定オキシム化合物以外の他の知の重合開始剤を併用してもよい。
他の重合開始剤としては、例えば、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。より具体的には、例えば、特開2006−78749号公報の段落番号[0081]〜[0139]、等に記載される重合開始剤が挙げられる。
【0263】
〔(2)−(B)重合性化合物〕
光重合性組成物(2)が含有する(B)重合性化合物としては、光重合性組成物(1)にて既述した付加重合性化合物が挙げられる。
【0264】
これらの、付加重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と、強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感光スピードや、膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。
【0265】
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。感光層中の付加重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、感光層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
【0266】
これらの観点から、付加重合性化合物の含有量は、光重合性組成物(2)の全固形分に対して5質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは25質量%〜75質量%である。
また、これらの付加重合性化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0267】
〔(2)−(C)バインダーポリマー〕
光重合性組成物(2)は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。
【0268】
バインダーポリマーとしては、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」は特に限定的ではなく、いずれを使用してもよい。好ましくは水現像又は弱アルカリ水現像を可能とする、水又は弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、光重合性組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水又は有機溶剤現像剤の仕様に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体が挙げられる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0269】
特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体は、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0270】
アミド結合又はウレタン結合を有するバインダーポリマーを含有してもよい。ここで、アミド結合又はウレタン結合を有するバインダーポリマーとしては、アミド結合又はウレタン結合を有する線状有機高分子重合体であることが好ましい。このような「アミド結合又はウレタン結合を有する線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性であるアミド結合又はウレタン結合を有する線状有機高分子重合体が選択される。アミド結合又はウレタン結合を有する線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このようなアミド結合又はウレタン結合を有する線状有機高分子重合体として、たとえば特開平11−171907号公報に記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度とを併せもち好適である。
【0271】
また、特公平7−120040号公報、特公平7−120041号公報、特公平7−120042号公報、特公平8−12424号公報、特開昭63−287944号公報、特開昭63−287947号公報、特開平1−271741号公報の各公報、特願平10−116232号明細書等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。また、特開平11−171907号記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度をあわせもち、好適である。
【0272】
更にこの他に、水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0273】
バインダーポリマーは、光重合性組成物(2)中に任意な量で混和させることができる。画像強度等の点からは、感光層を構成する全固形分に対して、好ましくは30質量%〜85質量%の範囲である。また、前記付加重合性化合物とバインダーポリマーとは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0274】
また、好ましい実施様態において、バインダーポリマーは実質的に水不要でアルカリに可溶なものが用いられる。これにより、現像液として環境上好ましくない有機溶剤を用いないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。この様な使用法においてはバインダーポリマーの酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4meq/g〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は3,000〜50万の範囲である。より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
【0275】
〔(2)−(D)増感剤〕
光重合性組成物(2)は、(A)特定オキシム化合物等の重合開始剤とともに増感剤を含有することが好ましい。本発明において用いうる増感剤としては、分光増感色素、光源の光を吸収して重合開始剤と相互作用する染料又は顔料などが挙げられる。
【0276】
好ましい分光増感色素又は染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体(例えば、下記化合物)、アントラキノン類、例えば(アントラキノン)スクアリウム類、例えば(スクアリウム)等が挙げられる。
【0277】
【化63】

【0278】
より好ましい分光増感色素又は染料の例としては、例えば、例えば、特開2006−78749号公報の段落番号[0144]〜[0202]、等に記載されるものが挙げられる。
【0279】
また、光重合性組成物(2)に適用しうる増感剤としては、光重合性組成物(1)の説明において既述したものも挙げられる。
【0280】
増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。光重合性組成物(2)中の全重合開始剤と増感色素のモル比は100:0〜1:99であり、より好ましくは90:10〜10:90であり、最も好ましくは80:20〜20:80である。
【0281】
〔(2)−(E)共増感剤〕
光重合性組成物(2)には、感度を一層向上させる、或いは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
【0282】
共増感剤の例としては、硬光重合性組成物(1)の説明において既述したものも挙げられる。また、これらの他、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等も挙げられる。
【0283】
共増感剤を使用する場合には、光重合性組成物(2)に含有される重合開始剤の総量1質量部に対して、0.01質量部〜50質量部使用するのが適当である。
【0284】
〔(2)−(F)重合禁止剤〕
光重合性組成物(2)は、該組成物の製造中或いは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0285】
熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0286】
〔(2)−(G)着色剤等〕
更に、感光層の着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系感光層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0287】
〔(2)−(H)その他の添加剤〕
更に、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0288】
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0289】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加もできる。
【0290】
<カラーフィルタ及びその製造方法>
次に、本発明のカラーフィルタ及びその製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物〔前記光重合性組成物(1)〕を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0291】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物〔前記光重合性組成物(1)〕を塗布して着色光重合性組成物層を形成する工程(以下、適宜「着色光重合性組成物層形成工程」と略称する。)と、前記着色光重合性組成物層をマスクを介して露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の前記光重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含むことを特徴とする。
【0292】
具体的には、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を、直接又は他の層を介して支持体(基板)上に塗布して、光重合性組成物層を形成し(着色光重合性組成物層形成工程)、所定のマスクパターンを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させ(露光工程)、現像液で現像することによって(現像工程)、各色(3色或いは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、本発明のカラーフィルタを製造することができる。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0293】
〔着色光重合性組成物層形成工程〕
着色光重合性組成物層形成工程では、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を塗布して着色光重合性組成物層を形成する。
【0294】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0295】
支持体上への本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0296】
カラーフィルタ用光重合性組成物の塗布膜厚としては、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましく、0.2μm〜3μmが更に好ましい。
また、固体撮像素子用のカラーフィルタを製造する際には、カラーフィルタ用光重合性組成物の塗布膜厚としては、解像度と現像性の観点から、0.35μm〜1.5μmが好ましく、0〜40μm〜1.0μmがより好ましい。
【0297】
支持体上に塗布されたカラーフィルタ用光重合性組成物は、通常、70℃〜110℃で2分〜4分程度の条件下で乾燥され、着色光重合性組成物層が形成される。
【0298】
〔露光工程〕
露光工程では、前記着色光重合性組成物層形成工程において形成された着色光重合性組成物層をマスクを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させる。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられ、高圧水銀灯がより好まれる。照射強度は5mJ/cm〜1500mJ/cmが好ましく10mJ/cm〜1000mJ/cmがより好ましく、10mJ/cm〜800mJ/cmが最も好ましい。
【0299】
〔現像工程〕
露光工程に次いで、アルカリ現像処理(現像工程)を行い、露光工程における光未照射部分をアルカリ水溶液に溶出させる。これにより、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は20秒〜90秒である。
【0300】
現像液に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7− ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0301】
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、上述した、光重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0302】
以上説明した、着色光重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により硬化工程)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0303】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えたことを特徴とする。
本発明のカラーフィルタは、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を用いているため、形成された着色パターンが支持体基板との高い密着性を示し、硬化した組成物は耐現像性に優れるため、露光感度に優れ、露光部の基板との密着性が良好であり、かつ、所望の断面形状を与える高解像度のパターンを形成することができる。従って、液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等に好適である。つまり、本発明のカラーフィルタは、固体撮像素子に適用されることが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、例えば、CCDを構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0304】
<平版印刷版原版>
続いて、本発明の平版印刷版原版について説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に本発明の光重合性組成物を含む感光層を有することを特徴とする。
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、保護層、中間層等の他の層を有してもよい。本発明の平版印刷版原版は、感光層に本発明の光重合性組成物を含むことにより、感度が高く、経時安定性及び耐刷性に優れる。以下、本発明の平版印刷版原版を構成する各要素について説明する。
【0305】
〔感光層〕
感光層は、本発明の光重合性組成物を含む層である。具体的には、本発明の光重合性組成物の好適な態様の一つである前記光重合性組成物(2)を、感光層形成用の組成物(以下、適宜、「感光層用組成物」と称する。)として用い、該組成物を含む塗布液を支持体上に塗布、乾燥して感光層を形成することができる。
【0306】
感光層用組成物を支持体上に塗布する際には、該組成物に含有させる各成分を、種々の有機溶剤に溶かして使用する。ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0307】
感光層の支持体被覆量は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響しうるもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の主要な目的である走査露光用平版印刷版としては、その被覆量は乾燥後の質量で0.1g/m〜10g/mの範囲が適当である。より好ましくは0.5g/m〜5g/mである。
【0308】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版における支持体としては、表面が親水性の支持体が好ましい。親水性の支持体としては、平版印刷版に使用される従来公知の親水性支持体を制限なく使用することができる。
支持体は寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のような金属がラミネート若しくは蒸着された紙若しくはプラスチックフィルム等が含まれ、これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上、等の目的で適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0309】
特に、好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度に優れた表面を提供できるアルミニウム板は特に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0310】
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にはアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0〜4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0311】
また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、粗面化(砂目立て)処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、或いは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
【0312】
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸、硝酸等の電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。また、アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するために、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0313】
更に、粗面化したのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号公報に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、若しくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸又はそれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0314】
また、米国特許第3658662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。
【0315】
更に、特公昭46−27481号公報、特開昭52−58602号公報、特開昭52−30503号公報の各公報に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び珪酸ソーダ処理を組合せた表面処理も有用である。
【0316】
また、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレイン、陽極酸化処理更に珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。
【0317】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)若しくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
【0318】
更に特開平7−154983号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0319】
その他好ましい例として、任意の支持体上に表面層として耐水性の親水性層を設けたものも挙げることができる。このような表面層としては例えば米国特許第3055295号明細書や、特開昭56−13168号公報に記載の無機顔料と結着剤とからなる層、特開平9−80744号公報に記載の親水性膨潤層、特表平8−507727号公報に記載の酸化チタン、ポリビニルアルコール、珪酸類からなるゾルゲル膜等を挙げることができる。
【0320】
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる光重合性組成物の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性の向上等のために施されるものである。
【0321】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版においては、感光層上に、更に、保護層を有することが好ましい。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や、塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光を可能とする。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0322】
保護層に関する工夫は従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られている。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0323】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71モル%〜100モル%加水分解され、分子量が質量平均分子量で300から2400の範囲のものを挙げることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
【0324】
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には、使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。
【0325】
更に、保護層に他の機能を付与することもできる。例えば、露光に使う、350nmから450nmの光の透過性に優れ、かつ500nm以上の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性を更に高めることができる。
【0326】
〔他の層〕
その他、感光層と支持体との密着性向上や、未露光感光層の現像除去性を高めるための層を設けることを可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗り層により、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗り層により、非画像部の現像性が向上し、耐汚れ性の向上が可能となる。
【0327】
〔製版〕
平版印刷版原版は、通常、画像露光したのち、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像を得る。
【0328】
本発明の平版印刷版原版に適用しうる露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。望ましい、光源の波長は350nmから450nmであり、具体的にはInGaN系半導体レーザーが好適である。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。また、感光層成分は、高い水溶性のものを使用することで、中性の水や弱アルカリ水に可溶とすることもできるが、このような構成の平版印刷版は印刷機上に装填後、機上で露光−現像といった方式を行うこともできる。
【0329】
350〜450nmの入手可能なレーザー光源としては以下のものを利用することができる。
【0330】
ガスレーザーとして、Arイオンレーザー(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザー(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザー系として、KNbO3リング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、その他、パルスレーザーとしてNレーザー(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)、等が挙げられる。
【0331】
特にこれらの中で、AlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0332】
また、走査露光方式の平版印刷版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源の中でパルスレーザー以外のもの全てを利用することができる。現実的には感材感度と製版時間の関係で、以下の露光装置が特に好ましい。
【0333】
・内面ドラム方式でガスレーザー或いは固体レーザー光源を1つ使用するシングルビーム露光装置
・フラットベッド方式で半導体レーザーを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
・外面ドラム方式で半導体レーザーを多数(10個以上)使用したマルチビームの露光装置
【0334】
以上のようなレーザー直描型の平版印刷版においては、一般に感材感度X(J/cm)、感材の露光面積S(cm)、レーザー光源1個のパワーq(W)、レーザー本数n、全露光時間t(s)との間に、下記式(eq1)が成立する。
【0335】
X・S=n・q・t 式(eq1)
【0336】
i)内面ドラム(シングルビーム)方式の場合
レーザー回転数f(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)の間には一般的に、下記式(eq2)が成立する。
【0337】
f・Z・t=Lx 式(eq2)
【0338】
ii)外面ドラム(マルチビーム)方式の場合
ドラム回転数F(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に、下記式(eq3)が成立する。
【0339】
F・Z・n・t=Lx 式(eq3)
【0340】
iii)フラットベッド(マルチビーム)方式の場合
ポリゴンミラーの回転数H(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に、下記式(eq4)が成立する。
【0341】
H・Z・n・t=Lx 式(eq4)
【0342】
実際の印刷版に要求される解像度(2560dpi)、版サイズ(A1/B1、副走査長42inch)、20枚/1時間程度の露光条件と本発明の光重合性組成物の感光特性(感光波長、感度:約0.1mJ/cm)を上記式に代入することで、本発明の感材においては半導体レーザーのマルチビーム露光方式との組み合わせがより好ましいことが理解できる。更に操作性、コスト等を掛け合わせることにより外面ドラム方式の半導体レーザーマルチビーム露光装置との組み合わせが最も好ましいことになる。
【0343】
また、その他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視及び紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる。
【0344】
本発明の平版印刷版原版に好適な現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%になるように添加される。
【0345】
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号明細書及び同第3615480号明細書の各明細書に記載されているものを挙げることができる。
【0346】
更に、特開昭50−26601号公報、同58−54341号公報、特公昭56−39464号公報、同56−42860号公報の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0347】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の、下記一般式(α)で表される非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3mS/cm〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
【0348】
A−W 一般式(α)
【0349】
式(α)中、Aは、A−HのlogPが1.5以上の疎水性有機基を表し、Wは、W−HのlogPが1.0未満の非イオン性の親水性有機基を表す。
前記logPとは、C.Hansch,A.Leo,“Substituent Constants for CorrelationAnalysis in Chemistry and Biology”,J.Wile&Sons,1979. 記載の疎水性パラメータとして一般的に使用されるものであり、目的とする分子(A−H及びW−H)のオクタノール/水2層系に対して、各層に分配される割合から算出した平衡濃度比Pの対数として定義される。ここでは、一般式(α)中のA,Wの各基を特定する指標として使用しており、A,W各有機基に便宜的に水素原子結合させた、A−H、W−H構造に対して、A.K.Ghose、et.al.J. Comput.Chem. 9,80(1988).記載の方法に基づき、既知データより計算し、求めたものである。
なお、この現像液成分については特開2002−202616号公報の段落(0024)〜(0067)に詳述されている。
【0350】
前記一般式(α)で示される非イオン性化合物は、現像液中0.1質量%〜15質量%、好ましくは1.0質量%〜8.0質量%添加することが効果的である。
【0351】
その他、平版印刷版原版の製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や、感度の安定化といった利点が生じ得る。更に、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。150℃以下であると、非画像部にかぶりの問題が生じない。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は200℃〜500℃の範囲である。200℃以上であると十分な画像強化作用が得られ、500℃以下の場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題が生じない。
【実施例】
【0352】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準であり、「%」、「wt%」は、「質量%」である。
【0353】
まず、実施例及び比較例に用いる特定オキシム化合物(特定化合物1〜特定化合物9)及び比較化合物(比較化合物1〜比較化合物3)の詳細を示す。
【0354】
【化64】

【0355】
【化65】

【0356】
【化66】

【0357】
上記一覧中の特定オキシム化合物である特定化合物1〜特定化合物9を以下に示す方法で合成した。
【0358】
(合成例1:特定オキシム化合物である特定化合物1の合成)
下記化合物A(18.0g、76.2mmol)を100mlのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン(9.25g、91.4mmol)を加えた。次に、0℃に冷却後、アセチルクロライド(7.18g、91.4mmol)を20分かけて滴下後、室温に昇温して2時間攪拌する。反応液を0℃に冷却した蒸留水150mlに滴下し、酢酸エチルで有機層を抽出後、硫酸マグネシウムを加え乾燥し、溶媒を減圧留去した。析出した結晶をメタノールで洗浄し、下記構造の特定化合物1(収量19.5g、収率92%)を得た。
【0359】
【化67】

【0360】
得られた特定化合物1の構造はNMRにて同定した。
(1H−NMR 400MHz 重アセトン):8.22(d,1H,J=7.8Hz),8.20(d,1H,J=7.8Hz),7.95(d,1H,J=7.6Hz),7.60(d,1H,J=8.0Hz),7.54−7.50(m.1H),7.27(t,2H,7.3Hz),4.45(t,2H,6.8Hz),3.50(t,2H,6.8Hz),2.29(s,3H).
【0361】
(合成例2:特定オキシム化合物である化合物2の合成)
下記特定化合物B(20.0g、56.4mmol)を100mlのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン(6.85g、67.7mmol)を加えた。次に、0℃に冷却後、アセチルクロライド(5.32g、67.7mmol)を20分かけて滴下後、室温に昇温して2時間攪拌する。反応液を0℃に冷却した蒸留水150mlに滴下し、酢酸エチルで有機層を抽出後、硫酸マグネシウムを加え乾燥し、溶媒を減圧留去した。析出した結晶をメタノールで洗浄し、下記構造の特定化合物2(収量19.0g、収率85%)を得た。
【0362】
【化68】

【0363】
得られた特定化合物2の構造はNMRにて同定した。
(1H−NMR 400MHz 重アセトン):8.62(s,1H),8.29(d,1H,J=7.8Hz),8.02−7.98(m,2H),7.71(d,1H,J=8.7Hz),7.49−7.32(m,1H),7.40−7.32(m,4H),4.57(t,2H,J=6.8Hz),3.53(t,2H,J=6.8Hz),2.30(s,3H),2.29(s,3H).
【0364】
なお、上記の合成例1〜合成例2と同様にして、前記一覧に記載の特定オキシム化合物である特定化合物3〜特定化合物9を合成した。
また、前記化合物一覧中に示される比較化合物1(IRGACURE OXE 01)および比較化合物2(IRGACURE OXE 02)の構造は以下の通りである。
【0365】
【化69】

【0366】
[実施例1−1]
<光重合性組成物1の調製及び評価>
光重合性組成物1を以下のように調製し、その感度を評価した。
特定オキシム化合物として前記特定化合物1を0.08mmol、ラジカル重合性化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを1g、バインダー樹脂としてポリメチルメタクリレート(Aldrich社製、分子量c.a.996000)1g、及び、溶剤としてシクロヘキサノン16gを含有する均一な組成物を調製した。得られた組成物を塗液として用い、これをガラス板上にスピンコーターにて塗工して、40℃で10分間乾燥し、1.5μmの膜厚の塗工膜を形成した。この塗工膜上に21√2ステップタブレット(大日本スクリーン製造(株)製のグレイスケールフィルム)を置き、ウシオ電機(株)製の500mWの高圧水銀ランプの光を、熱線カットフィルターを介して30秒間露光した後、トルエン中に60秒間含浸させて現像処理を行った。ステップタブレットに対応した完全に硬化して不溶化した段数を感度として評価したところ、感度は8段であった。
なお、感度段数は数字が大きいほど感度が高いことを示す。
【0367】
[実施例1−2〜実施例1−9、及び比較例1−1〜比較例1−3]
実施例1−1において、特定オキシム化合物として用いた特定化合物1:0.08mmolを、前記一覧に示した各化合物(特定化合物2〜特定化合物9及び比較化合物1〜比較化合物3):各0.08mmolにそれぞれ置き替えた他は、実施例1−1と全く同一の操作で光重合性組成物2〜光重合性組成物12をそれぞれ調製し、実施例1−1と同様にして感度段数を評価した。
実施例1−1〜1−9、及び比較例1−1〜比較例1−3の評価結果を下記表1に示す。
【0368】
【表1】

【0369】
[実施例2−1]
〔1.着色光重合性組成物A−1の調製〕
カラーフィルタ形成用光重合性組成物として、着色剤(顔料)を含有するネガ型の着色光重合性組成物A−1を調製し、これを用いてカラーフィルタを作製した。
【0370】
1−1.顔料分散液(P1)の調製
顔料としてC.I.ピグメント グリーン36と、C.I.ピグメント イエロー219との30/70(質量比)混合物40質量部、分散剤としてBYK2001〔Disperbyk :ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%〕10質量部(固形分換算約4.51質量部)、及び、溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル150質量部からなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、顔料分散液(P1)を調製した。
【0371】
得られた顔料分散液(P1)について、顔料の平均粒径を動的光散乱法により測定したところ、200nmであった。
【0372】
1−2.着色光重合性組成物A−1(塗布液)の調製
下記組成A−1の成分を混合して溶解し、着色光重合性組成物A−1を調製した。
【0373】
<組成A−1>
・顔料分散液(P1) 600質量部
・アルカリ可溶性樹脂 200質量部
(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、mol比:80/10/10、Mw:10,000)
・多官能性単量体:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 60質量部
・特定オキシム化合物:特定化合物1 60質量部
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1,000質量部
・界面活性剤(商品名:テトラニック150R1、BASF社) 1質量部
・γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン 5質量部
【0374】
〔2.カラーフィルタの作製〕
2−1.光重合性組成物層の形成
上記により得られた顔料を含有する着色光重合性組成物A−1をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態に保持し、真空乾燥とプレベーク(prebake)(100℃80秒)を施して光重合性組成物塗膜(光重合性組成物層)を形成した。
【0375】
(スリット塗布条件)
塗布ヘッド先端の開口部の間隙:50μm
塗布速度:100mm/秒
基板と塗布ヘッドとのクリヤランス:150μm
塗布厚(乾燥厚):2μm
塗布温度:23℃
【0376】
2−2.露光、現像
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて、光重合性組成物層をパターン状に露光した。露光後の光重合性組成物層の全面を、有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0377】
2−3.加熱処理
その後、光重合性組成物層上に純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、次いで、220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に着色パターンを有するカラーフィルタを得た。
【0378】
〔3.性能評価〕
着色光重合性組成物の保存安定性及び露光感度、着色光重合性組成物を用いてガラス基板上に着色パターンを形成した際の現像性、得られた着色パターンの加熱経時での着色、基板密着性、及びパターン断面形状について、下記のようにして評価した。評価結果をまとめて表2に示す。
【0379】
3−1.着色光重合性組成物の保存安定性
着色光重合性組成物を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0380】
3−2.着色光重合性組成物の露光感度
着色光重合性組成物を、ガラス基板上にスピンコート塗布後、乾燥して膜厚1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpmで5秒の後、800rpmで20秒とし、乾燥条件は100℃で80秒とした。次に、得られた塗膜を、線幅2.0μmのテスト用のフォトマスクを用い、超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)により、10mJ/cm〜1600mJ/cmの種々の露光量で露光した。次に、60%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、露光後の塗膜を、25℃、60秒間の条件で現像した。その後、流水で20秒間リンスした後、スプレー乾燥しパターニングを完了した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0381】
3−3.現像性、パターン断面形状、強制加熱経時での着色変化、基板密着性
「2−3.加熱処理」においてポストベークを行った後の基板表面及び断面形状を、光学顕微鏡及びSEM写真観察により通常の方法で確認することにより、現像性、基板密着性、強制加熱経時での着色変化、及びパターン断面形状の評価を行った。評価方法の詳細は以下の通りである。
【0382】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった
×:未露光部に、残渣が著しく確認された
【0383】
<強制加熱経時での着色評価>
露光、及び現像後の光重合性組成物層(着色パターン)を、ホットプレートで200℃、1時間加熱し、下記基準に基づいて加熱前後の色差ΔEabを、大塚電子(株)製MCPD−3000で評価した。
−評価基準−
○:ΔEab≦5
△:5<ΔEab<8
×:ΔEab≧8
【0384】
<基板密着性>
基板密着性は、パターン欠損が発生しているか否かを観察し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された
×:パターン欠損が著しく多く観察された
【0385】
<パターン断面形状>
形成されたパターンの断面形状を観察して評価した。パターンの断面形状は、矩形が最も好ましく、順テーパーが次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
<後加熱パターン断面形状>
「2−3.加熱処理」においてポストベークを行った後形成されたパターンの断面形状を観察して評価した。パターンの断面形状は矩形が最も好ましく、順テーパーが次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
【0386】
[実施例2−2〜2−17、比較例2−1〜2−3]
実施例2−1での着色光重合性組成物A−1の調製に用いた組成A−1において、特定化合物1(特定オキシム化合物)60質量部を下記表2に示される各化合物及び量に代え、実施例2−10〜2−17については、更に、増感剤、共増感剤を下記表2に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例2−1と同様にして、着色光重合性組成物A−2〜A−17及びA’−1〜A’−3を調製し、カラーフィルタを得た。更に、実施例2−1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0387】
【表2】

【0388】
前記表2中、「化合物」欄中の「特定」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。また、「含有量」の単位は、いずれも質量部である。
前記表2中に示される、増感剤の種類A1〜A3、共増感剤の種類F1〜F3、及びLD−5は、以下に示す化合物である。
【0389】
【化70】

【0390】
表2の結果から、特定オキシム化合物(化合物1〜9)を含有する各実施例の着色光重合性組成物は保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの着色光重合性組成物は露光感度が高く、カラーフィルタの着色パターンを形成に用いた際の現像性、得られた着色パターンの加熱経時での着色がなく、また、基板密着性及びパターン断面形状のいずれにも優れていることが判る。
【0391】
[実施例3−1]
〔1.レジスト液の調製〕
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
−レジスト液の組成−
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
19.20質量部
・乳酸エチル 36.67質量部
・樹脂 30.51質量部
〔メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18)の40%PGMEA溶液〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合性化合物)
12.20質量部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061質量部
・フッ素系界面活性剤 0.83質量部
(F−475、大日本インキ化学工業(株)製)
・光重合開始剤 0.586質量部
〔TAZ−107(トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤)、みどり化学(株)製〕
【0392】
〔2.下塗り層付シリコンウエハー基板の作製〕
6inchシリコンウエハーをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハー上に前記レジスト液を乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハー基板を得た。
【0393】
〔3.着色光重合性組成物B−1の調製〕
下記組成B−1の成分を混合して溶解し、着色剤(染料)を含有する着色光重合性組成物B−1を調製した。
【0394】
<組成B−1>
・シクロヘキサノン 80質量部
・着色剤 C.I.Acid Blue 108 7.5質量部
・着色剤 C.I.ソルベントイエロー162 2.5質量部
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 7.0質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 2.5質量部
・グリセロールプロポキシレート 0.5質量部
〔数平均分子量Mn:1,500、モル吸光係数ε=0〕
【0395】
〔4.着色光重合性組成物B−1(塗布液)の保存安定性評価〕
着色光重合性組成物B−1を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。結果を下記表3に示す。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0396】
〔5.着色光重合性組成物B−1によるカラーフィルタの作製及び評価〕
前記3.で調製した着色光重合性組成物B−1を、前記2.で得られた下塗り層付シリコンウエハー基板の下塗り層上に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が0.9μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長でパターンが2μm四方のIslandパターンマスクを通して10〜1600mJ/cmの露光量で照射した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハー基板をスピン・シャワー現像機〔DW−30型、(株)ケミトロニクス製〕の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハー基板上に着色パターンを形成した。
【0397】
着色パターンが形成されたシリコンウエハー基板を真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハー基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
以上のようにして、基板上に着色パターンが形成されたカラーフィルタを得た。
【0398】
<露光感度、及びパターンサイズ>
露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
またその際の、測長SEM「S−9260A」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、着色パターンのサイズを測定した。パターンサイズが2μmに近いほど、硬化性が充分で感度が良好であることを示す。
結果を下記表3に示す。
【0399】
<現像性、加熱経時での着色、基板密着性、パターン断面形状、後加熱パターン断面形状>
現像性、加熱経時での着色、基板密着性、パターン断面形状、後加熱パターン断面形状の評価は、実施例2−1に対して行った評価方法及び評価基準に基づいて評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0400】
[実施例3−2〜3−17、比較例3−1〜3−3]
実施例3−1において、着色光重合性組成物B−1の調製に用いた組成B−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)2.5質量部を下記表3に示される各化合物及び量に代え、更に実施例3−10〜実施例3−17については、下記表3に示される増感剤、共増感剤を下記表3に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例3−1と同様にして、着色光重合性組成物B−2〜B−17及びB’−1〜B’−3を調製し、カラーフィルタを得た。更に、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0401】
【表3】

【0402】
前記表3中、「化合物」欄中の「特定」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。また、「含有量」の単位は、いずれも質量部である。
なお、前記表3に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0403】
[実施例3−18]
下記組成C−1の成分を混合して溶解し、着色剤(顔料)を含有する着色光重合性組成物C−1を調製した。
【0404】
<組成C−1>
・3−エトキシプロピオン酸エチル〔溶剤〕 17.9質量部
・着色剤 C.I.PigmentRed 254の分散液 26.7質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・着色剤 C.I.PigmentYellow 139の分散液 17.8質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 3.5質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 0.5質量部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体 2.0質量部
(モル比=70/30)
【0405】
[実施例3−19〜3−34、比較例3−4〜3−6]
実施例3−18において、着色光重合性組成物C−1の調製に用いた組成C−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)0.5質量部を、下記表4に示される各化合物及び量に代え、更に、実施例3−27〜実施例3−34については、下記表4に示される増感剤及び共増感剤を下記表4に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例3−18と同様にして、着色光重合性組成物C−2〜C−17及びC’−1〜C’−3を調製した。
【0406】
得られた各着色光重合性組成物について、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0407】
【表4】

【0408】
前記表4中、「化合物」欄中の「特定」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。また、「含有量」の単位は、いずれも質量部である。
なお、前記表4に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0409】
[実施例3−35]
下記組成D−1の成分を混合して溶解し、着色剤(顔料)を含有する着色光重合性組成物D−1を調製した。
【0410】
<組成D−1>
・3−エトキシプロピオン酸エチル〔溶剤〕 17.9質量部
・着色剤 C.I.PigmentRed 254の分散液
33.34質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・着色剤 C.I.PigmentYellow 139の分散液
22.23質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 2.5質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 0.5質量部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体 2.0質量部
(モル比=70/30)
【0411】
[実施例3−36〜実施例3−51、比較例3−7〜比較例3−9]
実施例3−35において、着色光重合性組成物D−1の調製に用いた組成D−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)0.5質量部を、下記表5に示される各化合物0.5質量部に代えた以外は、すべて実施例3−35と同様にして、着色光重合性組成物D−2〜D−17及びD’−1〜D’−3を調製した。
【0412】
得られた各着色光重合性組成物について、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0413】
【表5】

【0414】
前記表5中、「化合物」欄中の「特定」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。また、「含有量」の単位は、いずれも質量部である。
なお、前記表5に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0415】
表3〜表5の結果から、特定オキシム化合物(化合物1〜9)を含有する各実施例の着色光重合性組成物は保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの着色光重合性組成物は露光感度が高く、カラーフィルタの着色パターンを形成に用いた際の現像性、得られた着色パターンの加熱経時での着色がなく、また、基板密着性及びパターン断面形状のいずれにも優れていることが判る。
また、表5に明らかなように、顔料の含有量が多い場合であっても、優れた露光感度を有することが分かる。
【0416】
[実施例4−1〜4−38、比較例4−1〜4−12]
〔黒色光重合性組成物の調製〕
<カーボンブラック分散液Aの調製>
下記組成1の成分を二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。この際の分散物の粘度は70,000mPa・sであった。
その後、この分散物に下記組成2の成分を添加し、3,000rpmの条件でホモジナイザーを用いて3時間攪拌した。得られた混合溶液を、0.3mmジルコニアビーズを用いた分散機(商品名:ディスパーマット GETZMANN社製)にて4時間微分散処理を施して、カーボンブラック分散液A(以下、CB分散液Aと表記する。)を調製した。この際の、混合溶液の粘度は37mPa・sであった。
【0417】
(組成1)
・平均一次粒径15nmカーボンブラック(PigmentBlack7) 23部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45%溶液 22部
(BzMA/MAA=70/30 Mw:30,000)
・ソルスパース5000(ゼネカ社製) 1.2部
【0418】
(組成2)
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45%溶液 22部
(BzMA/MAA=70/30 Mw:30,000)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200部
【0419】
<チタンブラック分散液Aの調製>
下記組成3の成分を二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。この際の分散物の粘度は40,000mPa・sであった。
なお、高粘度分散処理の前にニーダーで30分混練することを行ってもよい。
【0420】
(組成3)
・平均一次粒径75nmチタンブラック13M−C 39部
(三菱マテリアルズ(株)製)(ピグメント ブラック35)
・ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 8部
(BzMA/MAA=70/30、Mw:30,000、固形分40質量%)
・ソルスパース5000(ゼネカ社製) 1部
【0421】
得られた分散物に、下記組成4の成分を添加し、3,000rpmの条件でホモジナイザーを用いて3時間攪拌した。得られた混合溶液を、0.3mmジルコニアビーズを用いた、分散機(商品名:ディスパーマット GETZMANN社製)にて4時間微分散処理を施して、チタンブラック分散液A(以下、TB分散液Aと表記する。)を得た。
この際の、混合溶液の粘度は7.0mPa・sであった。
【0422】
(組成4)
・ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 8部
(BzMA/MAA=70/30Mw:30,000、固形分40質量%)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200部
【0423】
<黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の調製>
下記組成E−aの成分を攪拌機で混合して黒色光重合性組成物E−1〜E−18、及びE’−1〜E’−6を調製した。
【0424】
(組成E−a)
・メタクリレート/アクリル酸共重合体(アルカリ可溶樹脂) 1.6質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.3質量部
・エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート 0.8質量部
・前記CB分散液A、又は前記TB分散液A 24質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
・エチル−3−エトキシプロピオネート 8質量部
・下記表6に記載の化合物:特定オキシム化合物、比較化合物又はLD−5
下記表6に記載の量
・共増感剤:前記F3 添加なし、又は0.1質量部
【0425】
下記組成E−bの成分を攪拌機で混合して黒色光重合性組成物E−19〜E−38、及びE’−7〜E’−12を調製した。
【0426】
(組成E−b)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.3質量部
・前記CB分散液A、又は前記TB分散液A 24質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
・エチル−3−エトキシプロピオネート 8質量部
・下記表7に記載の化合物:特定オキシム化合物、比較化合物又はLD−5
下記表7に記載の量
・共増感剤:前記F3 添加なし、又は0.1質量部
【0427】
〔評価〕
上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を用いて、以下のような評価を行った。その結果を表6及び表7にまとめて示す。
【0428】
−露光感度評価−
まず、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の露光感度を、下記の方法で求めて、評価した。
【0429】
黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を用いて、塗布後に表面温度120℃で120秒間ホットプレートでの加熱処理後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコートの塗布回転数を調整し、シリコンウエハー上に均一に塗布して1.0μmの塗膜を得た。
次いで、i線ステッパー、FPA−3000iS+(キャノン(株)製)を使用して、10nmのL&S(ラインアンドスペース)のパターンが描かれてあるマスクを介して、100〜5,100mJ/cmの範囲の露光量を、100mJ/cmの刻みで変化させて照射した。
照射後に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)0.3%水溶液を用いて、23℃にて60秒間パドル現像を行い、その後、純水を用いて20秒スピンシャワーにて、リンスを行い、更に純水にて水洗を行った。その後、付着した水滴を高度のエアーで除去し、基板を自然乾燥させ、黒色画像パターンを得た。
得られた各着色画像パターンについて、光学顕微鏡を用いて下記の基準で評価した。
【0430】
上記の露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を測定し、これを露光感度として評価した。
露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0431】
−保存安定性(経時安定性)評価−
また、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の経時安定性(保存安定性)について、下記の方法で評価した。
即ち、黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0432】
−現像性評価−
更に、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の現像性について、下記の方法で評価した。
即ち、上記感度評価の際の露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった
×:未露光部に、残渣が著しく確認された
【0433】
【表6】

【0434】
【表7】

【0435】
前記表6及び表7中、「化合物」欄中の「特定」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。また、「含有量」の単位は、いずれも質量部である。
【0436】
表6及び表7に明らかなように、特定オキシム化合物を含有する各実施例の黒色光重合性組成物は、保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの黒色光重合性組成物は比較例に比べ露光感度が高く、また、未露光部の現像性に優れることから、少ない露光量であっても良好な黒色パターン(着色パターン)を形成しうることが判る。
【0437】
[実施例5]
<フルカラーのカラーフィルタの作製>
前記実施例4−1で作製した黒色画像パターンをブラックマトリックスとし、該ブラックマトリックス上に、前記着色光重合性組成物A−1を用いて、実施例2−1に記載の方法と同じ要領で1.6×1.6μmの緑色(G)の着色パターンを形成した。さらに、前記着色光重合性組成物A−1について、顔料(C.I.ピグメント グリーン36と、C.I.ピグメント イエロー219との30/70〔質量比〕混合物)のみを、青色顔料(C.I.ピグメント ブルー15:6とC.I.ピグメント バイオレット23との30/70〔質量比〕混合物)と赤色顔料(C.I.ピグメント レッド254)とにそれぞれ変更した他は同様にして青色(B)、赤色(R)の着色光重合性組成物を調製した。
上記基板にまず、緑色(G)光重合性組成物A−1で実施したのと同様にして1.6×1.6μmの青色(B)、赤色(R)パターンを順次形成して固体撮像素子用のカラーフィルターを作製した。
【0438】
得られたフルカラーのカラーフィルタについて、実施例2−1と同じ方法で、黒色画像パターンとRGB各色の着色パターン、それぞれの断面形状及び基板密着性について評価したところ、いずれのパターンも矩形であり、またいずれもパターン欠損が無く、基板密着性に優れていることがわかった。
【0439】
[実施例6]
<固体撮像素子の作製>
実施例5にて得られたフルカラーのカラーフィルタを固体撮像素子に組み込んだところ、該固体撮像素子は、高解像度で、色分離性に優れることが確認された。
【0440】
[実施例7−1〜7−15、比較例7−1〜7−4]
<支持体の作製>
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で、水洗後、20%HNOで中和洗浄、水洗した。このアルミニウム板を、VA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0〜45μm(Ra表示)であった。ひき続いて、アルミニウム板を30%のH2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dmにおいて50秒間陽極酸化したところ、厚さが2.7g/mであった。
以上のようにして、平版印刷版原版用の支持体A−1を得た。
【0441】
<感光層の形成>
得られた支持体上に、下記組成の感光層用塗布液を、乾燥塗布量が1.4g/mとなるように塗布し、95℃で乾燥し、感光層を形成した。
【0442】
−感光層用塗布液組成−
・付加重合性化合物(表8に記載のM、N、又はO) 0.80質量部
・バインダーポリマー(表8に記載のB1、B2、又はB3) 0.90質量部
・増感剤(表8に記載のA1、A2、又はA3) 添加なし又は0.10質量部
・下記表8に記載の化合物:特定オキシム化合物、比較化合物又はLD−5
0.05質量部
・共増感剤(表8に記載の前記F2又は前記F3) 添加なし又は0.25質量部
・フッ素系界面活性剤 0.02質量部
(メガファックF−177:大日本インキ化学工業(株)製)
・熱重合禁止剤 0.03質量部
(N−ニトロソヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・ε型の銅フタロシアニン分散物 0.2質量部
・メチルエチルケトン 16.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 16.0質量部
【0443】
<保護層の形成>
得られた感光層上に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/mとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成した。
【0444】
以上のようにして、実施例の平版印刷版原版及び比較例の平版印刷版原版を得た。
【0445】
<製版>
平版印刷版原版に対して、以下の露光・現像処理を行った。
【0446】
(露光)
平版印刷版原版を、波長405nmのバイオレットLD(FFEI社製バイオレットボクサー)で50μJ/cmの露光量で、4,000dpiにて175線/インチの条件でベタ画像と1〜99%の網点画像(1%刻み)を走査露光した。
【0447】
(現像)
下記現像液1及びフィニッシングガム液「FP−2W」(富士フイルム(株)製)を仕込んだ自動現像機(富士フイルム製LP−850P2)で標準処理を行った。プレヒートの条件は版面到達温度が100℃、現像液温は30℃、現像液への浸漬時間は約15秒であった。
【0448】
現像液1は下記組成よりなり、pHは25℃で11.5であり、導電率は5mS/cmであった。
【0449】
−現像液1の組成−
・水酸化カリウム 0.15g
・ポリオキシエチレンフェニルエーテル(n=13) 5.0g
・キレスト400(キレート剤) 0.1g
・水 94.75g
【0450】
[評価]
平版印刷版原版の感度、保存安定性について、下記の方法で評価した。結果を表8にまとめて併記する。
【0451】
1.感度の評価
平版印刷版原版を、上記の条件で露光し、その直後に上記の条件にて現像して画像形成を行い、その際の50%網点の面積%を網点面積測定器(グレタグーマクベス)で測定した。数字が大きいほど感度が高いことを示す。
【0452】
2.画像部耐刷性試験
印刷機として、ローランド社製「R201」を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製の「GEOS−G(N)」を使用して、平版印刷版原版を用い印刷を行った。ベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいことを示す。
【0453】
3.保存安定性(強制経時変化量)の評価
平版印刷版原版の各々を、合紙とともにアルミクラフト紙で密閉し、60℃で4日放置したものを用いた以外は、感度評価時とすべて同じ方法で網点面積測定を行った。次に、60℃、4日放置有りの網点面積と60℃、4日放置無しの網点面積との差を取り、強制経時による網点変動(Δ%)を測定した。この数字の絶対値が小さいほど強制経時による影響が少ないこと、すなわち経時安定性が高いことを示す。
【0454】
【表8】

【0455】
表8中、「付加重合性化合物」欄におけるM、N、O、及び、「バインダーポリマー」欄におけるB1、B2、B3の詳細は、下記のとおりである。なお、下記B3は、MDI/HMDIの共重合体〔モル比80/20〕と、下記構造のDMPAとPPG(m=3)とTEGとの共重合体〔モル比52/22/26〕との混合物である〔混合比50/50(モル比)〕。
【0456】
【化71】

【0457】
表8から明らかなように、本発明の特定オキシム化合物を感光層に含有する実施例7−1〜7−15の平版印刷版原版は、高感度で、経時安定性、及び耐刷性に優れたものであることが判る。
一方、比較例7−1〜7−4の平版印刷版原版では、高感度で、経時安定性、及び耐刷性のいずれもが実施例の平版印刷版原版よりも劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】


〔前記一般式(1)中、R、Y、及びZは、各々独立に、1価の置換基を表し、nは、0〜4の整数を表す。YとZは、互いに結合し、環を形成してもよい。Aは、2価の連結基を表す。〕
【請求項2】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化2】


〔前記一般式(2)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。〕
【請求項3】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【化3】


〔前記一般式(3)中、R、Y、及びYは、各々独立に、1価の置換基を表し、n、及びnは、各々独立に、0〜4の整数を表す。Aは、2価の連結基を表す。〕
【請求項4】
(A)請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化合物と、(B)重合性化合物とを含有することを特徴とする光重合性組成物。
【請求項5】
(C)着色剤を更に含有することを特徴とする請求項4に記載の光重合性組成物。
【請求項6】
前記(C)着色剤が顔料であり、且つ、(D)顔料分散剤を更に含有することを特徴とする請求項5に記載の光重合性組成物。
【請求項7】
前記(C)着色剤が黒色着色剤であることを特徴とする請求項6に記載の光重合性組成物。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の光重合性組成物を含有することを特徴とするカラーフィルタ用光重合性組成物。
【請求項9】
支持体上に、請求項8に記載のカラーフィルタ用光重合性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項10】
支持体上に、請求項8に記載のカラーフィルタ用光重合性組成物を塗布して光重合性組成物層を形成する工程と、
前記光重合性組成物層を、マスクを介して露光する工程と、
露光後の前記光重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、
を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを備えた固体撮像素子。
【請求項12】
支持体上に、請求項4に記載の光重合性組成物を含む感光層を有することを特徴とする平版印刷版原版。

【公開番号】特開2009−227624(P2009−227624A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76553(P2008−76553)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】