説明

新規化合物

本発明は,新規化合物,これを含む医薬組成物,とりわけショック状態を治療するための医薬品の製造における前記化合物の使用,ならびに前記化合物を投与することにより前記状態を治療する方法に関する。化合物は,本明細書において定義される一般式(I):
【化5】


で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物,これを含む医薬組成物,とりわけショック状態の治療用の医薬品の製造における前記化合物の使用、ならびに前記化合物を投与することにより前記状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド性バソプレシンV1aレセプターアゴニスト,例えば、テルリプレシン(例えば、O’Brian et al.,Lancet 359(9313):1209−10,June 4th,2002を参照)は,最近、救急救命疾患および状態、例えば、循環血液量減少性(例えば出血性)または血管拡張性(例えば敗血症性)のショック,食道静脈瘤出血(BEV),肝腎症候群(HRS),心肺蘇生法および麻酔誘発性低血圧症の治療において臨床で使用するために、ますます興味がもたれている。これらはまた、起立性低血圧症,穿刺誘発性循環機能不全,術中失血および火傷創面切除および鼻血にともなう失血の治療に、および流涙/涙形成を増加させることによる種々の眼科疾患の治療において、臨床的に使用しうることが見いだされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、救急救命状態の治療においてテルリプレシン等の代替となりうる、特にヒトV1a(hV1a)レセプターにおいて有効な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本発明は、一般式(I):
【化3】

[式中、
は、Hおよび3−8個の炭素原子を含む脂環式構造の一部から選択され;
は、(CH−Xおよび前記脂環式構造の一部から選択され;
mは、0,1,2および3から選択され;
nは、0,1,2,3および4から選択され;
pは、2,3および4から選択され;
がHであるとき,Rは(CH−Xであり;
がHではないとき,RおよびRは、これらが結合しているα炭素原子と一緒になって、前記脂環式構造を形成し;
mが0,2または3であるとき,Xは、C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニルおよびC5−8−シクロアルキニルから選択され;
mが1であるとき,Xは、C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニル,C5−8−シクロアルキニル,イソプロピルおよびtert−ブチルから選択され;
前記脂環式構造,C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニルおよびC5−8−シクロアルキニルは、任意に、少なくとも1つのアルキル,O−アルキルまたはヒドロキシル置換基を有していてもよく;
,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、H,アルキル,OH,O−アルキルおよびOC(O)−アルキルから選択され;
アルキルは、C1−6の直鎖アルキルおよびC4−8の分枝鎖アルキルから選択され、任意に少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有していてもよい]
で表される化合物、およびその溶媒和物および薬学的に許容しうる塩に関する。
【0005】
1−6直鎖アルキルとの表現には、イソプロピルおよび2−n−ブチル基も包含されることに言及すべきである。これは、前記表現は、問題とする直鎖の結合部位とは関係ないからである。
【0006】
1−6とは、1から6個の炭素原子(この間の任意の数も含む)を有することを表し、この用語は本明細書において同様に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書において用いられる略語は以下のとおりである:
AcBuc 1−アミノシクロブタン−1−カルボン酸
Ala(cPe) シクロペンチルアラニン
Boc tert−ブトキシカルボニル
BOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ トリスジメチルアミノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
Bu ブチル
Cha シクロヘキシルアラニン
Dbu 2,4−ジアミノ酪酸
DCC N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCHA ジシクロヘキシルアミン
DCM ジクロロメタン
DIAD ジイソプロピルジアゾジカルボキシレート
DIC N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
Fm 9−フルオレニルメチル
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
i イソ
Mmt 4−メトキシトリチル
Mob p−メトキシベンジル
MS 質量分析
Orn オルニチン
Ph フェニル
Pr プロピル
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ トリスピロリジンホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
o−NBS−Cl 塩化2−ニトロベンゼンスルホニル
OT オキシトシン
Rt 保持時間
t tert
TFA トリフルオロ酢酸
TIS トリイソプロピルシラン
TMOF オルトギ酸トリメチル
TPP トリフェニルホスフィン
Trt トリチル
VT バソトシン,[Ile]バソプレシン
Z ベンジルオキシカルボニル
【0008】
特に記載しないかぎり、L−アミノ酸が用いられ、慣用的なアミノ酸用語にしたがう。
【0009】
薬学的に許容しうる塩の例としては、酸付加塩,例えば、塩酸等のハロゲン化水素酸、および硫酸,リン酸および硝酸等の無機酸、ならびに、脂肪族,脂環式,芳香族または複素環スルホン酸またはカルボン酸,例えば、ギ酸,酢酸,プロピオン酸,コハク酸,グリコール酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,アスコルビン酸,マレイン酸,ヒドロキシマレイン酸,ピルビン酸,p−ヒドロキシ安息香酸,エンボン酸,メタンスルホン酸,エタンスルホン酸,ヒドロキシエタンスルホン酸,ハロベンゼンスルホン酸,トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸との反応により形成される塩が挙げられる。
【0010】
好ましい態様においては、RおよびRはHである。RおよびRがHであることが特に好ましい。
【0011】
nが1または2であることも好ましい。アルキルは、典型的には、メチル,エチル,n−プロピル,i−プロピル,t−ブチルおよびi−アミルから選択される。
【0012】
Xは、好ましくは、シクロペンチルおよびシクロヘキシルから選択される。
【0013】
前記脂環式構造は、好ましくはシクロブチル構造である。
【0014】
最も好ましい態様においては、式(I)を有する前記化合物は、
【化4】

からなる群より選択される。
【0015】
かっこ内の数字は、下記で参照される化合物を表す。
【0016】
さらに、本発明は、医薬品として使用するための上述の化合物に関する。
【0017】
したがって,本発明はまた、活性成分として上述の化合物を、薬学的に許容しうるアジュバント,希釈剤または担体とともに含む医薬組成物に関する。
【0018】
医薬組成物は、経口,静脈内,局所,腹腔内,鼻腔内,口腔内,舌下または皮下投与用に、または呼吸管を介する投与用に、例えばエアロゾルまたは空気浮遊微粉末の形に適合されている。したがって、組成物は、例えば、錠剤,カプセル,粉末,微小球,顆粒,シロップ,懸濁液,溶液,経皮パッチまたは座剤の形であることができる。
【0019】
本発明にしたがう組成物は、任意に、上述の化合物の2またはそれ以上を含んでいてもよいことに注意すべきである。
【0020】
本発明の医薬組成物は、任意に、崩壊剤,結合剤,潤滑剤,香味料,保存料,着色料およびこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つのさらなる添加物を含んでいてもよい。そのような添加物の例は、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”;Ed.A.H.Kibbe,3rd Ed.,American Pharmaceutical Association,USA and Pharmaceutical Press UK,2000に見いだすことができる。
【0021】
本発明の医薬組成物は、最も好ましくは非経口投与用に適合される。これは、本発明の化合物の滅菌水性調製物を含んでいてもよく、好ましくはレシピエントの血液と等張である。この水性調製物は、既知の方法にしたがって、適当な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤することができる。注射可能な水性製剤であるRemestyp(登録商標)(テルリプレシン)は、適当な医薬製剤の一例である。製剤はまた、希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁液であってもよく、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。許容しうる希釈剤の例は、水,リンゲル溶液,および等張塩化ナトリウム溶液である。滅菌した,固定油もまた溶媒または懸濁媒体として用いることができる。無刺激性の固定油,例えば合成のモノまたはジグリセリド,およびオレイン酸等の脂肪酸を用いてもよい。
【0022】
さらに、本発明は、循環血液量減少性または血管拡張性のショック,BEV,HRS,心肺蘇生法,麻酔誘導性低血圧症,起立性低血圧症,穿刺誘導性循環機能不全,術中失血または火傷創面切除および鼻血にともなう失血の治療用の、および流涙/涙形成を増加させることによる眼科疾患の治療用の、医薬品の製造における上述の化合物の使用に関する。
【0023】
別の態様においては、本発明は、循環血液量減少性または血管拡張性のショック,BEV,HRS,心肺蘇生法,麻酔誘導性低血圧症,起立性低血圧症,穿刺誘発性循環機能不全,術中失血または火傷創面切除および鼻血にともなう失血,および流涙/涙形成を増加させることにより種々の眼科疾患を治療する方法に関し,ここで、前記方法は、動物,例えばヒトの患者に、治療上有効量の上述の化合物を投与することを含む。
【0024】
本発明にしたがう化合物の典型的な投与量は、広範な範囲で変更可能であり、それぞれの患者の個別の必要性および投与の経路等の種々の因子によって異なるであろう。注入により投与される投与量は、一般に、1時間あたり0.01−200μg/kg体重の範囲内である。当該技術分野の医師は、個別の状況に応じて投与量を最適化することができる。
【実施例】
【0025】
実験(合成)
アミノ酸誘導体および樹脂は、商業的供給元から購入した(Novabiochem,Bachem,Peptide International and PepTech Corporation)。他の化学物質および溶媒は、Sigma−Aldrich,Fisher ScientificおよびVWRから購入した。
【0026】
本発明の化合物は、標準的な方法論により、FmocおよびBoc方法論の両方を用いて固相ペプチド化学で合成した。特に記載しないかぎり、すべての反応は室温で行った。一般的実験設定ならびに出発物質および試薬の入手のガイダンスは、上で引用した文献に加えて、以下の標準的な参考書に提供される:
Kates,S.A.,Albericio,F.,Eds.,Solid Phase Synthesis.A Practical Guide,Marcel Dekker,New York,Basel,2000;
Stewart,J.M.,Young,J.D.Solid Phase Synthesis,Pierce Chemical Company,1984;
Bisello,et al.,J.Biol.Chem.1998,273,22498−22505;および
Merrifield,J.Am.Chem.Soc.1963,85,2149−2154。
【0027】
合成したペプチドの純度は、分析用逆相HPLCにより判定することができる。ペプチドの構造一体性は、アミノ酸分析およびエレクトロスプレー質量分析を用いて確認することができる。
【0028】
Fmoc方法論で合成したペプチドは、TFA/TIS/HO96/2/2(v/v/v)溶液で切断し,Boc方法論における切断は90%HF/10%アニソール(v/v)溶液を用いて行った。ジスルフィド架橋(環)形成は、10%TFA(水性)に溶解した直鎖状ペプチドをヨウ素で酸化することにより行った。ペプチドは調製用HPLCにより、リン酸トリエチルアンモニウムバッファ(水性)中で精製した。化合物は最後に慣用のHPLC方法論を用いて酢酸塩に変換した。97%を超える純度を有する画分をプールし、凍結乾燥した。
【0029】
8位にアルキル化側鎖を有するペプチド(例えば化合物4)の合成:
ペプチドはFmoc方法論を用いて組み立てた。8位のジアミノ酸残基に酸不安定性の(すなわち、1−2%TFAを含む溶液を用いて除去可能な)保護基,例えば、メトキシトリチル(Mmt;Barlos,K.et al.Peptides 1992,Schneider,C.H.,Eberle,A.N.,Eds.,ESCOM Science Publishers B.V.,1993,pp283−284を参照)を導入した。樹脂結合ペプチドをDCM/TIS/TFA93/5/2(v/v/v)溶液で処理してMmt基を除去した。アセトン/NaBH(OAc)を用いる還元的アルキル化によりN−イソプロピルペプチドを得た。
【0030】
上述の方法の還元的アルキル化において、直鎖アルキルアルデヒドを用いるときに生ずる望ましくないN,N−ジアルキル化を回避するために、別の方法を開発した。すなわち、Mmtを除去した後、まずアミノ基を塩化2−ニトロベンゼンスルホニルで誘導化した(o−NBS−Cl;Fukuyama,T.;Jow,C.−K.;Cheung,M.Tetrahedron Lett.1995,36,6373−6374を参照)。次に、得られたスルホンアミドを、適当なアルコールを用いて、慣用のミツノブ反応条件下で,典型的には1,2−ジメトキシエタン中TPP/DIADを用いてアルキル化した(Mitsunobu,O.Synthesis 1981,1−28)。次にDMF中5%カリウムチオフェノレートによりo−NBS−Cl基を除去した後、ペプチドを樹脂から切断した。
【0031】
4位にN−アルキル化側鎖を有するペプチドの合成:
ペプチドはBoc方法論を用いて組み立てた。4位の残基をBoc−Asp(OFm)−OHとして配列中に導入した。ペプチドの組み立てが完了した後、DMF中30%ピペリジンを用いて側鎖保護を除去した。得られた遊離カルボキシル基をPyBOPまたはBOP/DIEAにより適当なアミンとカップリングさせることにより、所望のアミドに変換した。次にN−末端Boc基を除去し、HF切断,環化およびHPLCによる精製を行った。
【0032】
表1は、上述の方法により製造した化合物を、測定した(下記を参照)EC50(有効濃度中央値)のナノモル/Lの値とともに示す。化合物4以外のすべての化合物において、R,R,R,R,RおよびRはHであり、化合物4ではRはHではなくイソプロピルである。挙げられた化合物において、RおよびRが脂環式構造(2位のアミノ酸のα炭素と一緒になって形成)の一部である場合、例えばここでは1,1−シクロブチルである場合を除き、mは1である。
【0033】
【表1】

【0034】
以下の詳細な例により、合成をさらに説明する。
化合物4;[Cha,Asn,Orn(i−Pr)]VT:
用いたアミノ酸誘導体は、Boc−Cys(Trt)−OH,Fmoc−Cha−OH,Fmoc−Ile−OH,Fmoc−Gln(Trt)−OH,Fmoc−Asn(Trt)−OH,Fmoc−Cys(Trt)−OH,Fmoc−Pro−OH,Fmoc−Orn(Mmt)−OHおよびFmoc−Gly−OHであった。分析用HPLCはWaters 600液体クロマトグラフでVydac C18,5μ 4.6x250mmのカラムを用い、流速2ml/minで実施した。調製用HPLCは、Waters 2000液体クロマトグラフでPrepak 47x300mmカートリッジを用い、流速100ml/minで実施した。最終的な化合物の分析は、1100 Agilent液体クロマトグラフで、Vydac C18,5μ 2.1x250mmのカラムを用い、流速0.3ml/minで行った。質量スペクトルはFinnigan MAT分光光度計で記録した。
【0035】
完全に保護されたペプチド樹脂は、Applied Biosystems 9050ペプチド合成機で、0.4g(0.1mmol)のTentagel−S−RAM樹脂(Peptides International)から出発して合成した。4倍過剰のアミノ酸誘導体を用いるDIC/HOBt媒介性1回カップリングを行った。Fmoc基はDMF中20%ピペリジンで除去した。自動合成が完了した後、樹脂を手動合成容器に移し、DCM/TIS/TFA93/5/2(v/v/v)溶液(30ml)で2x1.5時間処理して、Mmt基を除去した。樹脂をDCMでよく洗浄し、次に15mlの1,2−ジクロロエタン/TMOF1:1(v/v)に懸濁した。次に、0.2mlのアセトンを加えた後、0.6gのNaBH(OAc)を加えた。懸濁液を一晩撹拌し、樹脂をメタノール,DMFおよびDCMで洗浄し、真空下で乾燥した。次に樹脂を30mlのTFA/TIS/HO96/2/2(v/v/v)溶液で1.5時間処理し、濾別した。濾液を蒸発させ、粗直鎖状ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させた。沈殿物をただちに500mlの10%TFA(水性)に溶解し、機械的に撹拌した溶液にメタノール中0.1MIを黄色が残るようになるまで加えることにより、ペプチドを酸化した。過剰のヨウ素をアスコルビン酸で還元した。次に反応混合物を砕氷で冷却し、濃アンモニア(水性)を加えてpHを約5に調節した。混合物をHPLCカラムに負荷し、トリエチルアンモニウムリン酸バッファ(pH5.2)を用いて精製した。化合物をアセトニトリルの勾配で溶出した。97%を超える純度を有する画分をプールし、得られた溶液を2倍容量の水で希釈した。溶液をカラムに再び負荷し、2lの0.1M酢酸アンモニウム(水性)で洗浄し、2%酢酸(水性)で平衡化した。化合物をアセトニトリルの急勾配(3%/min)で溶出した。所望の生成物を含む画分をプールし、凍結乾燥した。20.7mg(収率20%)の白色アモルファス粉体を得た。HPLC:Rt=8.2min,勾配:30→50%B/20分間,流速:0.3ml/min,t=40℃,溶媒A0.01%TFA(aq),溶媒B70%CHCN,0.01%TFA(aq);純度:100%;MS(M+H):予測値1026.5,実測値1026.5。
【0036】
化合物3;[AcBuc,Dbu]VT:
用いたアミノ酸誘導体は、Boc−Cys(Mob)−OH,Boc−AcBuc−OH,Boc−Ile−OH,Boc−Gln−OH,Boc−Asn−OH,Boc−Pro−OH,Boc−Dbu(Z)−OHDCHA塩およびBoc−Gly−OHであり、これらはすべてNovabiochemおよびBachemから購入した。HPLCおよびMSの操作は、化合物4の合成と同様にして行った。
【0037】
完全に保護されたペプチド樹脂を、0.6g(0.4mmol)の4−メチル−ベンズヒドリルアミン樹脂(Novabiochem)から出発して手動で合成した。2.5倍過剰のアミノ酸誘導体を用いる、DCC,PyBOPまたはDIC/HOBtにより媒介される1回カップリングを利用した。Boc基は1%m−クレゾールを含むDCM中50%TFAで除去した。得られた樹脂をメタノール,DMFおよびDCMで洗浄し、真空下で乾燥した。3mlのアニソールを含む30mlの無水HFを用いて、0℃で90分間でペプチドを樹脂から切断した。HFを留去し、粗直鎖状ペプチドをジエチルエーテルで洗浄した。ペプチドをただちに200mlの25%アセトニトリル/10%TFA(aq)に溶解し、上述したようにして酸化した。得られた混合物を直接HPLCカラムに負荷し、リン酸トリエチルアンモニウムバッファ(pH2.3)を用いて精製した。特に記載しない限り、この後の工程は化合物4についての方法と同じである。80.6mg(収率22%)の白色アモルファス粉体を得た。HPLC:Rt=7.3min,勾配:20→40%B/20分間,流速:0.3ml/min,t=40℃,溶媒A0.01%TFA(水性),溶媒B70%CHCN,0.01%TFA(水性);純度:99.6%;MS(M+H):予測値928.4,実測値928.3。
【0038】
他の化合物は、これらの合成方法と同様にして製造した。
【0039】
実験(生物学的試験)
インビトロレセプターアッセイ:
化合物のhV1aレセプターに対するアゴニスト活性は、転写レポーターアッセイにおいて、レセプター発現DNAを、蛍ルシフェラーゼの発現を制御する細胞内カルシウム応答プロモーター要素を含有するレポーターDNAとともにHEK−293細胞に過渡的にトランスフェクトすることにより、測定した。このアッセイのさらに詳細な説明については、Boss,V.,Talpade,D.J.,Murphy,T.J.J.Biol.Chem.1996,May3;271(18),10429−10432を参照。1回投与量あたり10倍に希釈した化合物の希釈系列に細胞を5時間暴露し、次に細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定して,非線形回帰により化合物の効力およびEC50値を求めた。各実験において、アルギニン−バソプレシン(AVP)を内部対称として用い(EC50=0.21nM),化合物は少なくとも3回の独立した実験で試験した。
【0040】
インビトロアッセイの結果を、テルリプレシンの結果とともに上述の表1に示す。記載されるEC50値は、幾何学平均であり、ナノモル/L(nM)で表す。
【0041】
示されるすべての参考文献は本明細書の一体部分と見なすべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
は、Hおよび3−8個の炭素原子を含む脂環式構造の一部から選択され;
は、(CH−Xおよび前記脂環式構造の一部から選択され;
mは、0,1,2および3から選択され;
nは、0,1,2,3および4から選択され;
pは、2,3および4から選択され;
がHであるとき,Rは(CH−Xであり;
がHではないとき,RおよびRは、これらが結合しているα炭素原子と一緒になって前記脂環式構造を形成し;
mが0,2または3であるとき,Xは、C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニルおよびC5−8−シクロアルキニルから選択され;
mが1であるとき,Xは、C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニル,C5−8−シクロアルキニル,イソプロピルおよびtert−ブチルから選択され;
前記脂環式構造,C3−8−シクロアルキル,C5−8−シクロアルケニルおよびC5−8−シクロアルキニルは、任意に、少なくとも1つのアルキル,O−アルキルまたはヒドロキシル置換基を有していてもよく;
,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立して、H,アルキル,OH,O−アルキルおよびOC(O)−アルキルから選択され;
アルキルは、C1−6の直鎖アルキルおよびC4−8の分枝鎖アルキルから選択され、および任意に少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有していてもよい]
を有する化合物およびその溶媒和物および薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
およびRはHである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびRはHである、請求項1−2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
nは1または2である、請求項1−3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
アルキルは、メチル,エチル,n−プロピル,i−プロピル,t−ブチルおよびi−アミルから選択される、請求項1−4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Xはシクロペンチルまたはシクロヘキシルである、請求項1−5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
前記脂環式構造はシクロブチル構造である、請求項1−5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
化合物は、
【化2】

からなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
医薬品として用いるための、請求項1−8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
請求項1−8のいずれかに記載の化合物を活性成分として、薬学的に許容しうるアジュバント,希釈剤または担体とともに含む医薬組成物。
【請求項11】
循環血液量減少性または血管拡張性のショック,食道静脈瘤出血,肝腎症候群,心肺蘇生法,麻酔誘導性低血圧症,起立性低血圧症,穿刺誘導性循環機能不全,術中失血または火傷創面切除および鼻血にともなう失血を治療するための,および流涙/涙形成を増加させることにより種々の眼科疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1−8のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
循環血液量減少性または血管拡張性のショック,食道静脈瘤出血,肝腎症候群,心肺蘇生法,麻酔誘導性低血圧症,起立性低血圧症,穿刺誘導性循環機能不全,術中失血または火傷創面切除および鼻血にともなう失血,および流涙/涙形成を増加させることにより種々の眼科疾患を治療する方法であって、ヒト等の動物の患者に、治療上有効量の請求項1−8のいずれかに記載の化合物を投与することを含む方法。



【公表番号】特表2009−526061(P2009−526061A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554307(P2008−554307)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/003213
【国際公開番号】WO2007/095021
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(500297535)フェリング ベスローテン フェンノートシャップ (36)
【Fターム(参考)】