説明

新規微生物

【課題】通常、バクテリアは新しい環境(培地)に置かれると、増殖を開始する前に増殖準備期間といわれる誘導期が数時間存在するが、本発明の目的は、その期間が全くなく、即座に対数増殖を開始する非溶血性の新規微生物を提供する。
【解決手段】Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)またはBacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)である。その特徴は、OYK菌が対数増殖している期間に他の菌は殆ど増殖しない時期が数時間存在し、この数時間だけをみるとOYKの菌数は他の菌に比べて数万倍となる。OYK菌はそれ自身、有害菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を含む黄色ブドウ球菌など)に抗菌活性を示すが、上述したような増殖スピードの差が悪臭発生菌や多くの有害感染菌を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶血性を有さない新規微生物、及びその利用に関し、詳しくは増殖により悪臭を発生せしめる有害菌(例えば黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌など)に対して高い抗菌活性を有し、これにより、例えば排水処理施設より発生する悪臭を除去することができ、また、その他の細菌(例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌O−157、レジオネラ菌など)に対しても高い抗菌活性を有することから幅広い用途で用いることのできる新規微生物、及びその利用に関する。
【0002】
なお、本発明の新規微生物における抗菌活性は当該新規微生物の菌体外生成物、及び菌体内生成物によって起こるのみならず、次のようなメカニズムによっても発揮されている。
【0003】
すなわち、本発明の新規微生物は、例えば10個/g(ml)の菌濃度が 20〜40℃の培養条件下にて約2時間で10個/g(ml)の菌濃度に達し、しかも6時間以内に10個/g(ml)に達するといった、増殖開始時から通常では考えられないような急激な増殖スピードで以て繁殖する。ところで、通常の細菌の増殖は、6時間前後の増殖準備期間(菌体が新しい環境に置かれた場合、その環境に順応して増殖を開始するための準備期間)、いわゆる“誘導期”を経たのち行なわれるが、本発明の新規微生物は、前述したように上記“誘導期”が殆どなく、実質的には、培養開始後、速やかに、かつ爆発的に細胞分裂を起こして固体数を殖やしていく。このように、前記雑菌の誘導期において、本発明の微生物が回りの栄養分を貪欲に消化しながら爆発的に繁殖し、これによって前記雑菌の繁殖が抑圧され、結果的に上記した有害菌等に抗菌活性を呈するものと考えられる。すなわち、誘導期を殆ど持たず、培養後、即時に増殖する新規微生物が有害菌の増殖を抑制していると考えられる。
【0004】
ところで、細菌の中には比較的高温で増殖する高温菌(例えばミクロモノスポラ、ノカルディア、ストレプトマイセスなどの放線菌、アルタナリア、アスペルギルス、ケトミウムなどの糸状菌など)があり、本発明の微生物が極めて短い誘導期を経たのち爆発的に増殖し、これにより増殖系内の温度が50〜60℃位になるまで熱を発したのち、前記の高温菌が増殖を開始して更に温度が高まり、外気温が30℃程度の場合でも100℃近くに達する。
【背景技術】
【0005】
最近、例えば排水処理技術のように、微生物を利用した技術が盛んである。排水処理に使用される微生物は多数あるが、そのうち主要なものとしては次のものがあげられる。すなわち、細菌としては、Zooglea、Sphaerotilusなどが、原生動物としてはアメーバー類、繊毛虫類、鞭毛虫類などが、また藻類としては藍藻類、緑藻類、ケイ藻類などがあげられる。
【0006】
これらは、有機物、及び一部の無機物を分解することが出来るが、その分解時において、悪臭(アンモニア、硫化水素等)及び悪臭発生物質の産生を引き起こす場合があり、そして処理場から発生する悪臭が、しばしば社会問題として取りざたされていた。つまり生物学的処理法に基づく排水処理に於いて有機物質または無機物質の分解が効率よく行われたとしても、処理場から発生する悪臭に関しては放置されたままであった。特に、沈澱槽に沈澱する活性汚泥は次第に嫌気性となり、嫌気性菌の増殖に伴って多量の悪臭が発生するが、この汚泥を曝気槽に返送する際、排水処理場の周辺に多量の悪臭を漂わせた。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、上記したような問題の発生を背景にして新たな有用微生物を鋭意探索した結果、ついに、有機物の分解時において硫化水素、メチルメルカプタン等による悪臭を発生せず、しかも増殖により悪臭を発生せしめる細菌Staphylococcus aureusおよびKlebsiella pneumoniaeや、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌O−157、レジオネラ菌あるいは緑膿菌などの細菌に対して抗菌性を有する新規な有用微生物を土壌から分離することに成功し、そしてこの新規微生物を幅広い領域で利用できることを見い出し、そして本発明に至った。
【0008】
本発明の新規微生物は、非溶血性バチルスズブチルス類縁菌で、標準枯草菌 (IFO3134株)に比較して菌体体積が4倍以上あり、かつ37℃におけるニュートリエントブロス浸透培養では培養初期に殆ど誘導期がないため10個/mlの初期菌数が4時間後に10個/ml以上に増加し、これらの相乗効果により、増殖によって発生する代謝エネルギーが、前記標準枯草菌のそれに比べて1万倍以上になるものであり、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌O−157、レジオネラ菌、緑膿菌、フザリウム、麹カビ、青カビ、白癬菌及びくものすかびに対して抗菌性を有する。
【0009】
本発明の新規微生物であるバチルスズブチルスの類縁菌の具体例としては下記のOYK菌(通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターに国際寄託されている)が挙げられる。
(1)Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、
(2)Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、
(3)Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)。
以下、OYK−01−600、OYK−03−600、及びOYK−04−000のそれぞれを、単に「OYK菌」ともいう。
【0010】
OYK菌はタンパク質を消化してよく繁殖する。また、OYK菌は溶血素を産生しない特徴を有し、人に対して安全性の高い菌である。なお、この菌を動物に対して静脈内投与、経気道投与、経口投与および皮膚投与の4種類の投与を行ない、当該菌の安全性が確認されている。
【0011】
更にOYK菌は黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、レジオネラ菌、大腸菌O−157、フザリウム(アカカビ)等に抗菌性を有しているので高濃度のOYK菌を投与してこの菌の効力を顕著ならしめることで多方面での利用が可能である。また、このOYK菌は増殖時に、悪臭の源であり、人に対して特に敏感な悪臭であるメチルメルカプタン、硫化水素、トリメチルアミンを生成しないので防臭を必要とする処に用いても効果が発揮される。
【0012】
一般的に菌密度の大きい方が優勢に増殖する傾向にあるので、最初に投与するときの菌濃度は極めて重要になる。本発明における好ましい菌濃度は、10〜10個/g(ml)である。
【0013】
OYK菌はズブチルス種の中でも比較的大型である。例えば、バチルスズブチルスの標準菌(IFO−3134、(0.4〜0.6×1.5〜3.2μm))の約4倍(体積比)である。しかもOYK菌は培養開始後の初期増殖力に優れ、これにより代謝エネルギーを大量に発生する(標準菌が培養開始後4時間で6倍程度の増殖しかないのに対し、OYK菌は約80,000倍という極めて高い増殖を行なう)。また、通性嫌気性であることから、好気嫌気の両条件で強い増殖が可能となる。これにより、堆肥化の際に有機性廃棄物を速やかに昇温させ、そして高温菌である放線菌、糸状菌の活動を促すことで堆肥化の期間を短縮できると共に完全な熟成堆肥が得られる。
【0014】
堆肥は、言うまでもなく農作物の生育のために使用されるもので、堆肥化に用いられた菌を農作物が、或いは人が吸収する可能性があるので、前記菌の安全性は特に重要である。高い熱(70〜80℃)履歴を経過した完熟堆肥は、糞中に含まれる雑草の種子はもちろんの事、有害感染菌はすべて死滅しており、言い換えれば消毒されたものと考えられる。このようにして得られた堆肥は、最近、肉牛の畜舎の敷料として利用されている。敷料としてしかれた完熟堆肥は、牛に快適感を与え牛はよく眠る。肉牛は、快適ではない敷料では寝ずに立ち、これによって肉質が硬くなると言われており、完熟堆肥の別の利用方法として注目されている。この点に鑑み、安全性が確認された菌、すなわちOYK菌を用いることが好ましい。
【0015】
本発明の新規微生物は抗菌防臭効果に優れている。従って、例えば、排水処理場に用いることにより悪臭を発することなく排水を処理することができる。また、増殖スピードが極めて速いことから、堆肥の製造が、気温が比較的低い冬期の場合でも素早く、しかも完全熟成タイプの堆肥の製造が可能となる。
【0016】
さらに、本発明の新規微生物から抗菌性物質を精製することができる。そもそもこの微生物は、毒性が少ないとされる土壌由来の微生物より分離精製したものであるので、その抗菌性物質についても人体に対して比較的安全であることから、おむつや生理用ナプキンあるいは風呂水の雑菌増殖抑制など、従来使用できない分野における抗菌加工を可能にするばかりか、繊維分野における製品(衣料、タオルなど)のように従来より抗菌加工が行なわれてきている製品にはみられない穏やかな抗菌性による抗菌加工(アレルギーが起こらない)ができる。
【0017】
[菌体製剤]
本発明のバチルスズブチルスの類縁菌は、そのままの状態あるいは胞子化した状態で使用することも可能であるが、当該細菌の増殖速度を速やかに上げ(濃度を速やかに上げ)、しかも取扱い易い形態と成すべく、当該細菌を富栄養源に包囲、付着あるいは混入させた菌体製剤として使用されることが好適である。
【0018】
富栄養源としては、その主成分がタンパク質であることが好ましい。タンパク質としては、大豆、脱脂大豆、おからなどの大豆加工品や大豆滓、大豆を絞った豆乳およびこれを濃縮したものやフリーズドライ化したもの、大豆を粉末化して水などの溶媒に分散あるいは溶解した混合物、穀類に含まれるグルテン、乳に含まれるカゼイン、コラーゲンを熱湯処理したゼラチン、魚粉から得られる魚タンパク質などが挙げられる。その他、富栄養源としては米糠、ふすま、バレイショ、ビール酵母、さとうきび等を用いることが出来る。富栄養源として例えば大豆加工品を用いる場合、固形分が多いものでは菌を直接植え付けた後、粉砕乾燥させて用いる。液状のものでは予め水分をある程度除去して粘状物とし、その後、菌を植え付ける。植え付ける菌の形態としては、培養液を含む生菌の状態で行なう。
【0019】
菌体製剤の形態としては特に限定はなく、粉末状、粒状、シート状、成型体等が挙げられる。富栄養源の添加物として、本発明の新規微生物に好気性環境をもたらす、多孔質物が考えられ、コーヒー粕、おがくず、パーライト、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。菌の増殖にはバランスのとれた炭素、窒素、リン、硫黄の4元素が必要であり、大豆はこれを満足している。さらに、50℃以上の高温域で増殖する高温菌(放線菌や糸状菌など)を胞子化させた粉体の状態で混在させて本発明の菌体製剤とすることもできる。上述したような富栄養源を用いることで菌濃度1×10個/g〜1×1010個/gが確保されるような菌体製剤を得ることができる。
【0020】
前記の菌体製剤を有機性廃棄物(生ゴミ)及び排泄物に投入して発酵を促し、堆肥化を図る。本発明の新規微生物は、平均して10〜50℃の温度範囲で活発に増殖活動し、より高温で発酵する菌の活動を促進するための環境を速やかに作り出す。そして、高温域ではOYK菌は温度上昇により死滅、もしくは胞子化し、高温増殖菌の栄養源として取り込まれ、殆ど消滅する。60℃前後で、系の上部と下部とを入れ替えるような作業(切り返し)を行なえば、未発酵物を菌体に接触させることができ、また好気環境を作ることもでき、切り返しによって一時的にみられる温度降下を打ち消す昇温がのちにあり、全体は完熟堆肥へ進行する。
【0021】
高密度の細菌を含んだ菌体製剤を有機性廃棄物に投入し、適温での切り返しにより好気発酵を促す。好気発酵時、アンモニアが多少発生するが、混在させたコーヒー粕などの多孔質物がこれを吸着する。この増殖による代謝エネルギーにより、温度が50℃以上に上がり、これにより高温発酵菌(放線菌、カビ)の活動を促し、70℃以上の温度になる。この高温により有害微生物及び昆虫は死滅し、植物発育障害をもたらす難分解有機物の分解も促進され、また糞中に混在する雑草の種子も死滅する。このことにより、有機栽培に必要な安全な完熟堆肥が得られる。
【0022】
[脱臭剤]
本発明の新規微生物は、嫌気発酵によって発生する不快臭(硫化水素、メチルメルカプタン、トリエチルアミン)に対する脱臭剤として使用することもできる。 脱臭剤としては、そのままの状態あるいは胞子化した状態で使用することも可能であるが、前項で述べた菌体製剤を用いることが好ましい。ただ、防臭を目的とする関係上、有穴盤状、球状、平板状、多角形状、網状、多枝状など、単位重量あたりの表面積が大きい形状であることが好ましい。平板状物にパンチング、ドリリングなどの手段で穴を設けたものでも構わない。なお、脱臭剤を水溶性とすることにより使用範囲が広くなって好ましい。
【0023】
本発明の脱臭剤をそのまま、あるいはネット状の容器に入れて、例えば調理場の流し(シンク)、排水経路(排水口を含む)、動物の飼育場や動物処理場(屠殺場など)あるいは医療現場における汚物処理場やその床や洗浄槽などに用いる。
【0024】
本発明の新規微生物を防臭剤として使用するに当たり、当該微生物に求められる好適な条件を以下に列挙する。
(1)人にやさしく、かつ高密度微生物群を構成し得る菌体である。
(2)高密度微生物群を持続形成するために、多孔性富栄養源中(臭気を吸収する機能を持つものなど)で培養される。
(3)熱湯中では、胞子を形成して生存し得る性質を有する。
(4)低濃度の残留塩素に耐え得る。
(5)増殖にあたり悪臭を発生しないか、又は発生しても微量である。
(6)高湿度環境下、富栄養源を含有する水溶性固形物に分散した場合、増殖に伴い悪臭を発生する他の微生物(雑菌)の増殖を上回る増殖能を有する。
(7)抗菌性物質を生成して分泌し、低濃度の雑菌類の増殖を阻害する。
(8)例え口に入っても安全である。
【0025】
[風呂水用雑菌増殖抑制]
本発明の新規微生物を用いて浴槽の水あるいは浴槽の壁面や蓋における雑菌の増殖の抑制と脱臭を行なうこともできる。
【0026】
[生理対応用品]
本発明の新規微生物を生理対応用品に含ませて用いることもできる。ここでいう生理対応用品とは、人やその他の動物の生理現象に伴う分泌物、排泄物に対処するための用品を指すものであり、例えば生理用ナプキン、おむつ、床ずれ予防シート、肌着などが挙げられるがこれによって限定されるものではない。上掲した生理対応用品のうち、特に有効なものは生理用ナプキンである。すなわち、経血は吸水性の高い高分子素材や繊維素材からなる吸水部材に吸収されるから、当該吸収部材にあらかじめ、本発明の新規微生物、例えばOYK菌や菌体製剤を含ませておけば、経血吸収領域における有害菌を含む雑菌の繁殖を抑制するとともに脱臭作用を奏する。排泄物の吸収や漏れを防止するおむつに本発明の新規微生物を適用しても同様の作用効果を奏する。すなわち、おむつに新規微生物を適用した場合、排泄物に含まれ悪臭の原因となる雑菌の繁殖を抑制すると共に脱臭作用を奏し、同時に本発明の新規微生物が持つ抗菌活性によって感染症の予防が期待され得る。
【0027】
上記した生理対応用品にOYK菌あるいは粉末状のOYK菌を保持させる方法としては種々考えられるが、対象物に菌が定着しにくい場合はペプトンを含む生理食塩液に粉末状の菌を混合して噴霧器で散布すればよい。また、対象物が濡れているような場合にはむしろ粉末状の菌を直接散布する。その他の方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。すなわち、水溶解シートからなる袋体の内部に収納したものを生理対応用品に取着するか、あるいは前記水溶解シートの表面に水溶解性バインダを用いて菌を定着させたものを生理対応用品に取り付ける。水溶解性材料としては澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いる。
【0028】
人あるいはその他の動物が長期に亘って床に伏すような場合、床に当接した皮膚において、いわゆる“床ずれ”を起こす。魚類においては、水槽に長時間保管する場合は魚同士の接触によって鱗が損傷したり、魚体の体表においてヌメリが発生する。鳥類においては翼の表面の艶が失われることがある。犬や猫などの愛玩小動物あるいは牛、豚、羊、馬などの家畜では毛並みが不揃いとなる。これらは全て、体表面や獣毛からの分泌物の蓄積や、魚類においては体表に付着した餌の残留物の腐敗が原因で起こる。すなわち、動物の体表面や獣毛からの分泌物が堆積し、当該分泌物に雑菌が繁殖することにより上記したような異常を来すわけである。時には、緑膿菌など皮膚を犯す菌が繁殖する場合もあり、常在菌の健全な繁殖分布が損なわれる。
【0029】
OYK菌は上記した分泌物を分解し、かつ有害な菌に対して抗菌性を示すので、上記したような症例に対しては、OYK菌を体表面に対して散布あるいは塗布することにより顕著に改善される。人やその他の動物の皮膚、羽、獣毛にOYK菌を直接的に散布あるいは塗布するには、OYK菌を含む溶液を用いるか、あるいは胞子化した粉末を用いるのが手軽である。粉末を用いる場合は、例えばエアスプレー式の粉体散布器を用いて直接散布する。散布されたOYK菌の胞子は、生体からの湿気を得て発芽し、分泌物を消化しながら増殖していく。増殖速度は速く、また増殖時にアンモニアを生産しないので、暫くすると臭気が消え、散布箇所がサラサラして獣毛は洗浄した時と同様の感触が得られる。鳥の羽毛にも同様の効果が得られる。また、魚類の棲む水槽にOYK菌の粉末を投入することにより、体表のぬめりを解消することができ、鱗が仮に損傷しても治癒が速い。この場合は淡水魚が好ましい。散布あるいは塗布されるOYK菌濃度としては、1×10〜1×10個/gで、菌の富栄養源を併用しても良い。
【0030】
[抗菌グッズ]
本発明における抗菌グッズとしては、上掲の生理対応用品の他に、OA機器のケーシング、下敷きや筆箱などの文房具、FAXや電話機などの通信機器などがあげられる。
【0031】
[加温グッズ]
加温グッズとしては例えば面状発熱体が挙げられる。菌体製剤は50〜60%程度の湿気を帯びると約40〜50℃に昇温することが確認されている。したがて、本発明の菌体製剤を、例えば密封容器あるいは密封袋体に入れておき、開封時において湿気に晒された細菌が増殖を始め、これによる代謝エネルギーを前記面状発熱体のエネルギー源とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施例を説明するが、これらの実施例は本発明を説明するための一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
A.新規微生物スクリーニング
増殖により悪臭を発生する細菌に対して抗菌性を有する微生物を土壌より3菌分離した。土壌菌は一般に毒性が少ないと言われており、このような土壌より分離した前記3つのOYK菌も人体に対し安全である(やさしい)といえる。
【0034】
B.菌株の同定
ここで分離選別した菌体の菌学的性質を下記[1]、[2]に基づいて同定した。即ち
[1] Bergey's Mannual of Determinative Bacteriology、 Vol.2 (1986), Williams & Wilkins U.S.A
[2] R.E.Gordon, W.C.Haynes, C.H.Pang. (1973) The Genus Bacillus. Agr. Handbook No.427 United states department of Agriculture. Washington D.C.
に基づいて同定した。試験は、下記の手法により行った。
【0035】
1.形態的性質(結果を下記[表1]に示す)
(1)細胞の大きさ
(2)細胞の形
(3)細胞の多形性の有無
倍率5,000〜30,000倍での電子顕微鏡にて観察する。試験菌は普通寒天平板培地で37℃×1日培養して、発生したコロニーより取る。使われた普通寒天培地は、肉エキス5g、ペプトン10g、NaCl5g、寒天15g、蒸留水1,000mlからなる。
【0036】
(4)運動性の有無
1)西沢・菅原の方法にて鞭毛を染色し、電子顕微鏡(倍率10,000倍)にて観察する。第1液は、タンニン酸100ml、局方塩化第二鉄液1.5ml、ホルマリン2ml、1%NaOH1ml、蒸留水100mlからなり、第2液は硝酸銀2g、局方アンモニア水少量、蒸留水100mlからなる。
2)半流動性普通寒天高層培地に穿刺培養し、培地全体の混濁にて判定する。使われた半流動性寒天培地は、肉エキス5g、ペプトン10g、NaCl5g、寒天5g、蒸留水1,000mlからなる。
【0037】
(5)胞子の有無
1)普通ブイヨン培地にて振とう培養した培養液を、85℃×15分加熱後、普通寒天平板培地へ混釈培養し、コロニーの発生にて判断する。使われた普通ブイヨン培地は、肉エキス3g、ペプトン5g、蒸留水1,000mlからなる。
2)Wirtzの法(Schaeffer−Fultonの変法)により胞子を染色し、菌体は赤、胞子は緑の染色性にて判断する。菌体の赤色は0.5%サフラニン水溶液、胞子の緑色は5%マラカイトグリーン水溶液による。
【0038】
(6)胞子嚢の形
(7)胞子の形
(8)胞子の形成部位
(9)胞子の大きさ
Wirtzの法(Schaeffer−Fultonの変法)により胞子を染色し、倍率5,000倍での電子顕微鏡にて観察する。試験菌は普通寒天平板培地で37℃×1日培養した後、4℃×1日間冷蔵庫にて冷却したコロニーより取る。
【0039】
(10)グラム染色
Huckerの変法にて行う。陽性はクリスタルバイオレットの紫に、陰性は対比染色のサフラニンの赤で判定する。試験菌は普通寒天平板培地で37℃×1日培養して、発生したコロニーより取る。
【0040】
(11)抗酸性
Ziiehl−Neeisen染色法により行う。陽性は石炭酸フクシンの赤に、陰性は対比染色のマラカイトグリーンの緑で判定する。試験菌は普通寒天平板培地で37℃×1日培養して、発生したコロニーより取る。
【0041】
【表1】

【0042】
2.各培地に於ける生育状態(結果を下記[表2][表3]に示す)
(1)普通寒天平板培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、ペプトン10g、寒天15g(pH7.0±0.1)
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×3日。
【0043】
(2)普通寒天斜面培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
同上
[培養条件]
滅菌試験管内に培地を斜面固定し、その上に画線培養する。37℃×3日。
【0044】
(3)普通ブイヨン液体培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、ペプトン10g、pH7.0±0.1
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に菌を懸濁する。37℃×3日、170回/分で振とう培養。
【0045】
(4)ゼラチン穿刺培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、ペプトン10g、ゼラチン15g(pH7.0±0.1)
[培養条件]
滅菌試験管に培地を高層固定し、穿刺培養する。25℃×7日
[生育以外の観察項目]
タンパク質の消化によるゼラチンの液化。
【0046】
(5)リトマスミルク液体培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
脱脂粉乳110g、リトマス液適量、pH7.0±0.1
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注しその中に菌を懸濁する。25℃×14日、静置培養
[生育以外の観察項目]
乳糖の分解時、酸の産生による牛乳の凝固
乳糖の分解時、凝乳酵素の産生による牛乳の凝固
乳糖の分解時、凝乳酵素の産生による牛清の析出。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
3.生理学的性質(1)(結果を下記[表4]に示す)
(1)硝酸塩の還元
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
硝酸カリウム1g、ペプトン5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁。37℃×5日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
亜硝酸塩の検出:α−ナフチルアミン液1mlとスルファニル酸液1mlを培地に良く混ぜ桃赤色になれば陽性と判定する。
【0050】
(2)脱窒反応
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
1)硝酸ナトリウム10g、肉エキス5g
2)肉エキス5g
[培養条件]
滅菌試験管に上記1、2の培地を2本づつ分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。2本のうち一方に流動パラフィンを1〜2cm重層する。37℃×1〜3日、静置培養
[観察項目]
硝酸塩存在下における嫌気的生育があるか:硝酸塩の有無、さらに流動パラフィンの有無の4本の濁度、ガスの発生の観察にて判定する。
【0051】
(3)VPテスト
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン5g、リン酸二水素カリウム5g、ブドウ糖5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×3日、170回/分、振とう培養
[観察項目]
グルコース分解産物であるacetylmethylcarbinolの存否を調べる:培養液1mlにα−ナフトール溶液0.6mlと40%KOH水溶液0.2mlとを加え、濃い赤色になったものを陽性と判定する。
【0052】
(4)MRテスト
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン5g、リン酸二水素カリウム5g、ブドウ糖5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×3日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
グルコース分解による酸形成を調べる:培養液1mlにメチルレッドを滴下し、赤色が陽性、黄色が陰性と判定。
【0053】
(5)インドールの産生
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、塩化ナトリウム5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×3日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
インドールの検出:アミノ酸のトリプトファンからインドールを産生する能力の有無を調べる。培養液の1/5〜1/10のKovac試薬(下記参照)を加えよく振って静置し、2層に分離した上層が真紅色なら陽性、黄色なら陰性と判定
<Kovac試薬>
p−ジメチルアミノベンズアルデヒド5g、アミルアルコール75ml、濃塩酸25ml。
【0054】
(6)硫化水素の産生
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販TSI寒天培地)
肉エキス5g、ブドウ糖1g、塩化ナトリウム5g、クエン酸第二鉄0.2g、ペプトン15g、チオ硫酸ナトリウム0.2g、乳糖10g、フェノールレッド0.002g、白糖10g、寒天15g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を半斜面に固定し、高層部に穿刺培養し、斜面に塗布培養する。37℃×1日
[観察項目]
硫化水素の検出:斜面低位に黒変物あれば陽性と判定する。
【0055】
(7)デンプンの加水分解
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
デンプン2g、肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。室温×5日
[観察項目]
デンプンの検出:ヨード、ヨードカリ液(下記参照)を菌の増殖が見られるシャーレに滴下、濃い紫色が消えると陽性と判定
<ヨード、ヨードカリ液>
ヨウ化カリウム5g、ヨウ素4g/200ml。
【0056】
(8)カゼインの液化
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
スキムミルク2g、寒天5g
[培養条件]
上記の培地を別々に滅菌し、滅菌シャーレ上で混合固定し、その上に画線培養する。37℃×1日
[観察項目]
カゼインの残存:画線部分の周囲に透明な部分が見られたら陽性と判定。
【0057】
(9)クエン酸の利用
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販CIT寒天培地)
リン酸二カリウム1g、リン酸一アンモニウム1g、クエン酸ナトリウム2g硫酸マグネシウム0.2g、塩化ナトリウム5g、BTB0.024g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×1〜3日
[観察項目]
炭素栄養源としてクエン酸のみを利用して生育するかの有無:培地の青変または菌の生育が認められるとき陽性と判定する。
【0058】
(10)色素の生成
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン20g、グリセリン10g、KSO10g、MgCl1.4g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。25℃×5日
[観察項目]
色素の生成:コロニー周辺部のみに着色した時は非水溶性、培地全体に着色した時は水溶性各色素の生成があると判定する。
【0059】
(11)ウレアーゼ
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
尿素20g、ペプトン2g、ブドウ糖1g、塩化ナトリウム5g、リン酸二水素カリウム2g、0.2%フェノールレッド6ml、寒天15g(ただし、寒天は121℃×15分滅菌、それ以外は濾過滅菌する)
[培養条件]
滅菌試験管に培地を斜面に固定し、その上に塗布培養する。37℃×1日
[観察項目]
アンモニアの検出:培地が赤色となった時、陽性と判定する。
【0060】
(12)オキシターゼ
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×1日
[観察項目]
チトクロームの存否:平板上のコロニーに、 dimetyl-p -phenylenediamineの1%水溶液を滴下し、滴下色がピンクを経て黒に変わった時、陽性と判定。
【0061】
(13)カタラーゼ
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×1日
[観察項目]
カタラーゼの存否:過酸化水素の分解を触媒する酵素の存否。スライドグラスに3%H液を1滴のせ、それに菌を1白金耳良く混ぜて入れる。酸素の気泡が多量にまたは継続的に発生した時、陽性と判定する。
【0062】
【表4】

【0063】
4.生理学的性質(2)(結果を下記[表5][表6]に示す)
(1)pHによる生育
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販ニュートリエントブロス)
肉エキス3g、ペプトン5g、pH調整剤(酸:HSO 1ml/100ml,アルカリ:NaOH 4g/1,000ml)、pHの変化は、3.6〜10.9の15水準で行う
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×1日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
生育の有無
++………良く生育する
+…………生育する
−+………僅か生育する
−…………極僅か生育する
−−………全く生育しない。
【0064】
(2)温度による生育
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販普通寒天培地)
肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、ペプトン10g、寒天15g(pH7.0±0.1)
[培養条件]
滅菌シャーレ上に培地を固定し、その上に画線培養
温度を4,10,20,30,37,40,50℃に変えそれぞれ×1日
[観察項目]
生育の有無
++………良く生育する
+…………生育する
−+………僅か生育する
−…………極僅か生育する
−−………全く生育しない。
【0065】
(3)酸素に対する態度
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販普通寒天培地)
肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、ペプトン10g、寒天15g(pH7.0±0.1)
[培養条件]
滅菌試験管に菌と培地を混釈した状態で高層に固定して培養。37℃×1日
[観察項目]
好気、嫌気での生育の有無
表面のみ生育………………好気性
表面と高層内で生育………通性嫌気性
高層内のみ生育……………偏性嫌気性。
【0066】
(4)O−Fテスト
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン2g、塩化ナトリウム5g、KHPO 0.3g、寒天3g、0.2%BTB15ml、グルコース10g(ただし、グルコースはろ過滅菌、その他は121℃×15分滅菌する)
[培養条件]
2本の滅菌試験管に培地を分注し高層に固定する。それぞれに穿刺培養し、内1本に流動パラフィンを1〜2cm重層する。37℃×3〜4日
[観察項目]
糖分解が酸化的に行われるか、発酵的に行われるか見る
”0”………酸化的糖分解(嫌気条件のみ黄変した時)
”F”………発酵的糖分解(好気、嫌気条件とも黄変した時)。
【0067】
(5)PPAテスト
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
酵母エキス3g、フェニルアラニン2g、燐酸ナトリウム1g、塩化ナトリウム5g、寒天15ml
[培養条件]
滅菌試験管に培地を斜面固定し、その上に塗布培養する。37℃×1日
[観察項目]
フェニルアラニンをフェニルピルピン酸に脱アミノ化するかの有無:10%塩化第二鉄水溶液の滴下により緑変した時、陽性と判定する。
【0068】
(6)プロピオン酸の利用
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
硫酸マグネシウム0.2g、プロピオン酸ソーダ2g、燐酸水素二カリウム1g、燐酸一アンモニウム1g、塩化ナトリウム5g、寒天10g、0.2%BTB溶液12ml
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×1日
[観察項目]
炭素栄養源としてプロピオン酸のみを利用して生育するかの有無:培地の青変または菌の生育が認められるとき陽性と判定する。
【0069】
(7)チロシンの分解
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
L−チロシン5g、肉エキス3g、ペプトン5g、寒天15g(ただし、チロチンとニュートリエントアガーは、別々に湿熱滅菌し混合する)
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に画線培養する。37℃×7〜14日
[観察項目]
チロシンの分解の有無:コロニーの下に結晶で存在するチロシンが溶解した時、陽性と判断する。
【0070】
(8)卵黄反応
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、NaHPO 5g、KHPO 1g、NaCl2g、MgSO 0.1g、グルコース2g、卵黄15ml(ただし、卵黄以外は湿熱滅菌し、それに無菌的に吸い取った卵黄を加え一昼夜冷蔵庫でならす。卵黄の加えないブロスも用意する)
[培養条件]
二本の滅菌試験管に卵黄のありなしの培地を分注し、それぞれのその中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×7日、観察は、1、3、5、7日に行う。170回/分で振とう培養
[観察項目]
白色沈澱物の有無:卵黄無しに比べ、卵黄ありに白色沈澱物が試験管低部や表面に見られた時、陽性と判定する。
【0071】
(9)2%NaCl下での生育
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス3g、ペプトン5g、NaCl20g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×14日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
生育の有無
++………良く生育する
+…………生育する
−+………僅か生育する
−…………極僅か生育する
−−………全く生育しない。
【0072】
(10)5%NaCl下での生育
(11)7%NaCl下での生育
(12)12%NaCl下での生育
(13)20%NaCl下での生育
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
上記9のNaClを70g、120g、200gに変える
[培養条件]
上記9と同じ
[観察項目]
上記9と同じ。
【0073】
(14)リゾチウム存在下での生育
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
肉エキス3g、ペプトン5g、リゾチウム0.1g(リゾチウムは0.01NのHCl溶液中で20分間煮沸した後ニュートリエントブロスに加える)
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の菌を懸濁する。37℃×14日、170回/分で振とう培養
[観察項目]
生育の有無
++………良く生育する
+…………生育する
−+………僅か生育する
−…………極僅か生育する
−−………全く生育しない。
【0074】
(15)溶血素の産生
[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販羊血液寒天培地)
Pancreatic Digest of Casein.14.5g、Papaic Digest of Soybean Meal.5.0g、Sodium Chloride.5.0g、Growth Factors1. 5g、Agar14.0g、Sheep blood, defibrinated.5.0%
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に画線する。37℃×1日
[観察項目]
溶血素の産生の有無
α型溶血……コロニー周辺に緑色帯(ヘモグロビンの変質)
β型溶血……コロニー周辺を透明化(赤血球膜の破壊)。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
5.炭素源の酸及びガスの生成(結果を下記[表7]に示す)
(1)D−グルコース
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン1g、塩化ナトリウム5g、寒天10g、0.2%BTB15ml、D−グルコース8g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、高層に固定する。その後、それに穿刺培養する。37℃×14日
[観察項目]
酸の生成:BTB試薬の黄変度にて判定
++………良く生成
+…………生成
−+………生成微弱
−…………生成無し
ガスの生成:高層部に亀裂の有無で判定
++………良く生成
+…………生成
−+………生成微弱
−…………生成無し。
【0078】
(2)L−アラビノース
(3)D−キシロース
(4)D−マンニット
(5)D−マンノース
(6)D−ガラクトース
(7)D−ソルビトース
(8)イノシトール
(9)トレハロース
(10)ラクトース
(11)マルトース
(12)フルクトース
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
上記(1)の糖(D−グルコース)の部分を、上の(2)〜(12)の糖に変更 [培養条件]
上記(1)と同じ
[観察項目]
上記(1)と同じ。
【0079】
【表7】

【0080】
6.同定結果
OYK−01−600、OYK−03−600、及びOYK−04−000の3株を、下記の文献に従って分類した。
[1] Bergey's Mannual of Determinative Bacteriology、 Vol.2 (1986),Williams &Wilkins U.S.A
[2] R.E.Gordon,W.C.Haynes,C.H.Pang. (1973) The Genus Bacillus. Agr. Handbook No.427 United states department of Agriculture. Washington D.C.
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
【表10】

これにより、上記3株とも[表8]よりBacillus属に属すると認められ、次に[表9][表10]よりB.subtilisの類縁菌であると考えられるが、嫌気下で生育すること、糖からの酸の産生が微弱であること、及び7%NaClで生育しないことにより同定に至らず、新種であると判断しBacillus sp.とした。
【0084】
[寄託された生物材料への言及]
[1] 寄託機関の名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所特許微生物 寄託センター
あて名 :郵便番号305−0046 日本国茨城県つくば市東1−1−3(TEL;0298−54−6029)
[2] 寄託日 :1998年6月29日
[3] 寄託番号:(1)FERM BP−6394
(2)FERM BP−6395
(3)FERM BP−6396。
【0085】
上記の変異株は、増殖に伴って悪臭を発生させる菌に対して抗菌性を有する。また、当該微生物を培養し、この培養液から抗菌性物質を分離精製することができる。分離精製された抗菌性物質をそのまま、あるいは水などの適当な溶媒に溶解または分散したものを、そのまま、または適宜希釈して、その単独をあるいは他の物質と併用した混合物を、撒布、塗布、含浸、潜着、係着、接着、付着、混入、添加、内服、注射、のうちの少なくとも1つ以上の手段を用いて、抗菌、防臭したい物品、あるいはこれらの性能をあらかじめ備えておこうとする物品、例えば繊維製品、寝具、衣料品、医療品、サニタリー機器及び備品、生理用品、履き物、各種空調設備・エアーコンディショナー(空気清浄装置を含む)のフィルター、内外装を含む建材、家具、動物、動物飼育場、動物飼育機器、動物飼育用水及び飼料、食器、薬品、汚水または汚水処理場または機器、マイクロカプセル、旅客輸送車両または船舶または航空機の座席も含めたインテリア材、死体安置及び葬儀用品などに直接あるいは間接的に付与する。
さらに詳しくは、引き続き以下の実施例にて説明する。
【0086】
C.微生物の持つ抗菌活性物質の確認(結果を下記[表11]に示す)
Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)が抗菌活性物質を分泌していることを以下の実験により確認した。
【0087】
1.微生物の懸濁液の調整
(1)微生物
OYK−01−600,OYK−03−600,及びOYK−04−000の3株。
(2)前培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、寒天10g
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に保存菌を画線培養する。37℃×1日。
(3)本培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に1白金耳の(2)を懸濁する。37℃×1日、170回/分で振とう培養する。
【0088】
2.抗菌試験菌の懸濁液の調整
(1)抗菌試験菌
Klebsiella pneumoniae ATCC 4352,Staphylococcus aureus ATCC 6538P。
(2)前培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
子牛脳浸出液200g、牛心臓浸出液250g、プロテオースペプトン10g、ブドウ糖2g、塩化ナトリウム5g、リン酸二ナトリウム2.5g、寒天15g
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に保存菌を画線培養する。37℃×1日。
(3)本培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g
[培養条件]
滅菌試験管に培地を分注し、その中に(2)を入れ、振とう培養する。
Klebsiella pneumoniae ……37℃×20時間、170回/分
Staphylococcus aureus ……37℃×10時間、170回/分。
(4)菌数調整
滅菌緩衝生理食塩水にて菌数が、5〜30×10個/mlになるよう調整する。
【0089】
3.抗菌性試験
(1)試験用培地の作成
1)上記(4)の2試験菌の菌液を、ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、及び寒天10gよりなる培地(蒸留水1,000ml中)にそれぞれ0.2ml混釈して、滅菌シャーレ上で固定する。
2)ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、及び寒天10gよりなる培地(蒸留水1,000ml中)を滅菌シャーレ上で固定し、その表面全体に上記(4)の2試験菌の菌液を0.2mlスプレッダーにて植菌する。
【0090】
(2)微生物と抗菌性の比較のための菌の準備
OYK-01-600,OYK-03-600,OYK-04-000の3株と比較するため納豆菌を含めたBacillus subtilisのA、B、C各菌の3株を準備した。
【0091】
(3)微生物と抗菌性比較菌の植菌
上記した「1.微生物の懸濁液の調製」の(3)のOYK-01-600,OYK-03-600,OYK-04-000の3菌株と、上記(2)のA、B、C各菌の3菌株、計6菌株を、上記(1)で作成した試験用培地上に、下記の1)、2)の方法で植菌する。
1)シャーレ中央にペニシリンカップを置き、その中に各菌液0.05mlを注ぐ。
2)シャーレ中央に各菌液を0.02ml滴下する。植菌されたものは、37℃×1日静置培養する。
【0092】
(4)判定方法
++…試供菌のコロニーの下及び周辺に、試験菌の増殖はなく、2mm以上の増殖阻止帯(ハロー)が認められる
+……試供菌のコロニーの下及び周辺に、試験菌の増殖はなく、0〜2mmの増殖阻止帯(ハロー)が認められる
+−…増殖阻止帯(ハロー)は認められないが、試供菌コロニー内に試験菌の増殖は認められない
−……試供菌のコロニー内の一部に、試験菌の増殖が認められる
−−…試供菌のコロニー内の全てに、試験菌の増殖が認められる
ND…試験を行っていない。
【0093】
【表11】

【0094】
[表11]の通り、微生物は、その増殖期において、Klebsiella pneumoniaeとStaphylococcus aureusの双方に対して抗菌活性を示す物質を分泌していると認められた。
【0095】
D.微生物による排水処理場の防臭試験(結果を下記[表12]に示す)
Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)を排水処理場に投入する事により処理場周辺の防臭に効果があることを以下の実験により確認した。
【0096】
1.試験に供した排水処理場の概要
(1)場所及び業種
三重県、洗濯業
(2)排水設備と処理能力
図1参照。
【0097】
2.防臭試験方法
(1)微生物の懸濁液の調整
本試験にはBacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)を選択し、上記した「1.微生物の懸濁液の調製」と同じ方法で微生物の懸濁液を調整した。
(2)排水設備への菌の投入
上記(1)で調整された微生物懸濁液2.5リットルを、図1における排水処理設備原水槽に投入した。
(3)効果の判定
1)判定者:同工場社員3名
2)判定基準:6段階臭気強度表示法
臭気強度0=無臭
1=やっと感知出来る臭い(検知閾値濃度)
2=何の臭いかわかる弱い臭い(認知閾値濃度)
3=楽に感知できる臭い
4=強い臭い
5=強烈な臭い
3)判定場所
沈澱槽より活性汚泥が曝気槽に返送される場所
4)その他の測定項目
BOD、投入菌のml当たりの菌数
【0098】
【表12】

【0099】
[表12]の通り、微生物の増殖に伴って、臭気の強さが減少することを確認できた。この微生物は、増殖時に、人に少量で不快を感ずる硫化水素、メチルメルカプタン、トリエチルメタン等の発生がなく、また糖分解もガスの発生なしで行うため上記の結果が得られたと考えられる。他の微生物が増殖するとき、発生するガスを栄養的に消費するかどうかの確認はしていない。
【0100】
なお、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)及びBacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)についても上記と同様の好結果が得られる旨を確認した。
【0101】
E.微生物が生成する分泌物の分離精製
Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)が、Klebsiella pneumoniae と、Staphylococcus aureus に対して抗菌活性を示した物質を下記の通り分離精製した。
【0102】
1.微生物の懸濁液の調整
(1)微生物
OYK−01−600,OYK−03−600,OYK−04−000の3株、比較のため納豆菌を含めたBacillus subtilis のA、B、C各菌の3株も同様の作業を行なった。
(2)前培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g、寒天10g
[培養条件]
滅菌シャーレに培地を固定し、その上に保存菌を画線培養する。37℃×1日
(3)本培養
[培地組成](蒸留水1,000ml中)
ペプトン10g、肉エキス5g、塩化ナトリウム5g
[培養条件]
滅菌坂口フラスコに培地を分注し、その中に1白金耳の(2)を懸濁する。37℃×2日、170回/分で振とう培養する。
【0103】
2.菌体と分泌物の分離
得られた培養液を4℃、回転数12,000RPMで14分間低温遠心分離機にかける。その上澄みだけを取り出し、その液を0.45μのメンブランフィルターで吸引ろ過する。
【0104】
3.分泌物の濃縮化
得られたろ過液を、なす型フラスコに移し、ろ過液が完全にフラスコ壁面に凍結させた後、48時間凍結真空乾燥機にて乾燥し、粉末精製物を得た。
【0105】
F.微生物が生成する物質の抗菌力試験(結果を下記[表13]に示す)
Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)の分泌物から得られた抗菌活性を持つと考えられる分離精製物の抗菌力を下記の方法で確認した。
【0106】
1.試供物
上記「3.分泌物の濃縮化」で得られた分泌物質
[1] Bacillus sp. OYK−01−600(FERM BP−6394)
[2] Bacillus sp. OYK−03−600(FERM BP−6395)
[3] Bacillus sp. OYK−04−000(FERM BP−6396)
[4] Bacillus sp. A
[5] Bacillus sp. B
[6] Bacillus sp. C
の6種の分泌物質と、抗菌力基準薬剤として用いた下記[7]、[8]の計8種の試供物で行なった。
[7] クロラムフェニコール(和光純薬工業(株)製抗生物質、Mw:323.13 CAS:56-75-7、タンパク合成阻止作用を持ち、グラム陽性菌、グラム陰性菌、リケッチア、ウィルスに有効、抗菌作用は、通常静菌的。抗菌テストには10mg/100mlの水溶液を0.2ml使用)。
[8] ニッカノンRB(日華化学(株)製の第四級アンモニウム系合成抗菌剤、黄色ブドウ球菌に優れた抗菌性があり、防かび性も有する。洗濯耐久性のある抗菌防臭剤。抗菌テストには、1ml/100mlの水溶液を0.2ml使用)。計上記[1]〜[8]の8種の試供物で行う。
【0107】
2.抗菌試験菌
上記した「2.抗菌試験菌の懸濁液の調整」で得られた2種
[1] Klebsiella pneumoniae ATCC 4352
[2] Staphylococcus aureus ATCC 6538P 。
【0108】
3.抗菌性試験方法
(1)培養液の白濁度で判定する方法
1)[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販ニュートリエントブロス) 肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g
2)[培養条件]
滅菌試験管に培地を5ml分注し、それに試供物0.02gと、試験菌懸濁液0.1mlを加え混釈する。37℃×1日、170回/分振とう培養
3)[観察項目]
日立製作所(株)製Model 100−20 分光光度計にて培養液の透過率を測定する。測定波長475nm、表示単位%(Klebsiella pneumoniae で、菌数約5〜30×10は、透過率52%を示す)。
【0109】
(2)菌数の測定で判定する方法
1)[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販普通寒天培地)
肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g
2)[培養条件]
滅菌シャーレに培地を15ml分注し、その中に試供物0.02gを混釈溶解したのち固定する。その表面に試験菌懸濁液0.2mlを均一に塗布培養する。37℃×1日
3)[観察項目]
シャーレ上に増殖したコロニーをカウントする。表示単位:指数部(例えば、A×10Bの場合は「B」と表示)。
【0110】
(3)増殖阻止帯(ハロー)の観察で判定する方法
1)[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販普通寒天培地)
肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g
2)[培養条件]
滅菌シャーレに培地を15ml分注固定し、その表面に試験菌懸濁液0.2mlを均一に塗布し、表面が半乾き後シャーレ中央に試供物を固形の状態で0.02g置き静置培養する。37℃×1日
3)[観察項目]
発生したハローの最大直径を計測する。表示単位:mm。
【0111】
(4)ペニシリンカップ法
1)[培地組成](蒸留水1,000ml中、市販ニュートリエントブロス) 下層培地:肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天15g 上層重層培地:肉エキス5g、ペプトン10g、塩化ナトリウム5g、寒天7g
2)[培養条件]
滅菌シャーレに下層培地を15ml分注固定する。その上に上層培地4mlに試験菌懸濁液0.1mlを混釈し重層する。表面が半乾き後、シャーレ中央にステンレススチール製の円筒(内径6mm、外径8mm、高さ10mm)を10〜13mmの高さから垂直に落下させる。その円筒内に試供物0.02gを0.2mlの滅菌水に溶解したものを入れて静置培養する。37℃×1日
3)[観察項目]
カップ内外に発生した試験菌の増殖を観察
表示単位
−−…カップ内全体に試験菌の増殖が見られる
+−…カップ内の一部に試験菌の増殖が見られる
+……カップ内に全く試験菌の増殖が見られない
A……カップ外に最大直径Amm(例えば)のハローが観察された時。
【0112】
【表13】

【0113】
[表13]の通り、微生物が分泌する物質が抗菌効果を有することが確認できた。
【0114】
G.OYK菌体生成物の抗菌活性テスト
OYK菌としてBacillus sp.OYK−01−600を用いたが、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)及びBacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)についても同様の好結果が得られている。
【0115】
1.OYK菌体生成物の分離精製
[1] 菌体外生成物
(1)−82℃で凍結保存された種菌1mlを解凍した。
(2)試験管に滅菌されたBGG液体培地(大豆蛋白抽出物とグルコースとグルタミン酸ソーダよりなる培地、以下同様)4mlを取り、その中に上記(1)で得た菌を入れ、37℃で24時間種培養した。
(3)坂口フラスコに滅菌されたBGG液体培地100mlを取り、その中に上記(2)の菌を入れ、37℃で72時間本培養した。(OD=10,pH=7.9)
(4)のち遠心分離し、上澄みを取った。(12,000rpm×10min、4℃)
(5)メンブランフィルターにて上記(4)を濾過した。(0.2μmフィルター)
(6)上記(5)における濾液を凍結乾燥した。
(7)上記(6)にて凍結乾燥したものを3〜4mlの生理食塩水で溶解した。
(8)後述する抗菌テストでは、上記(7)の溶解液を50μリットル滴下した。
【0116】
[2] 菌体内生成物
(1)−82℃で凍結保存された種菌1mlを解凍した。
(2)試験管に滅菌されたBGG液体培地4mlを取り、その中に上記(1)で得た菌を入れ、37℃で24時間種培養した。
(3)坂口フラスコに滅菌されたBGG液体培地100mlを取り、その中に上記(2)の菌を入れ、37℃で72時間本培養した。(OD=10,pH=7.9)
(4)のち遠心分離し、沈殿物を取った。(12,000rpm×10min、4℃)
(5)上記沈殿物に5mlの生理食塩水を加え、沈殿物を分散した。
(6)前記沈殿物が分散したものに対し、20mlのn−ブタノールを加え、1時間撹拌し、水層とアルコール層に分離するまで待った。
(7)上記(6)のアルコール層を取り出し、エバポレーションにてn−ブタノールを蒸発させた。
(8)これをデシケータに移し、さらに乾燥した。
(9)この乾燥物に生理食塩水を1ml加え、精製物を分散させた。
(10)この分散液をメンブランフィルターにて濾過した。(0.2μmフィルター)
(11)次項の抗菌テストでは上記(10)の濾液を50μリットル滴下した。
【0117】
2.OYK菌菌体生成物の抗菌テスト
[1] 試供菌体生成物
(1)上記1.の[1]で得られたOYK菌菌体外生成物
(2)上記1.の[2]で得られたOYK菌菌体内生成物
【0118】
[2] 対象試験菌
(1)Staphylococcus aoureus(ATCC25923、黄色ブドウ球菌)
(2)Klebsiella pneumoniae(ATCC13883、肺炎桿菌)
(3)MRSA1002(分離株、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
(4)Escherichia coli O−157(S180、大腸菌O−157)
(5)Legionella pneumophilla(OCI 88171、レジオネラ菌)
(6)Pseudomonas aeruginosa(IFO3452、緑膿菌(赤色色素産生))
(7)Pseudomonas aeruginosa(ATCC27853、緑膿菌(青色色素産生))
(8)Fuzarium Proliferatum Nirenberg S12(IFO6349、フザリウム(アカカビ))
(9)Aspergillus niger van Tieghem S1(IFO6341、麹カビ)
(10)Penisillium cittrinum Thom S5(IFO6352、青カビ)
(11)Trichophyton mentagrophytes(IFO5466、白癬菌)
(12)Rhizopus stolonifer Lind S7(FERM S−7、くものすカビ)。
【0119】
[3] 試験方法
(1)保存試験菌を試験菌のそれぞれの最適条件で種培養した。
(2)一定の菌数の試験菌菌液をそれぞれの試験菌の最適固形培地上に一定量塗布し、半乾きになるまで放置した。
(3)2種類の試供菌体生成物(上記[1]参照)を上記(2)の培地上に50μリットル滴下した。
(4)試験菌の最適培養条件にて培養した。
(5)抗菌活性があれば、滴下点に増殖阻止帯(ハロー)が見られる。その阻止帯の直径(短径、長径)を測定した(単位cm)。結果を下記[表14]に記載する。
【0120】
【表14】

【0121】
H.OYK菌の増殖速度試験(図2参照)
本発明の新規微生物は、培養開始後、誘導期(増殖準備期間)を必要とせず速やかに増殖を始める。例えば、約10個/ml(g)の菌濃度が、20〜40℃の培養条件下にて6時間以内に10個/ml(g)以上に増加する。
【0122】
図2に、Bacillus sp .OYK−01−600の経時的な増殖状況を示す。なお、比較対照のため、B.subtilisの標準菌(IFO3134)の増殖状況を併記する。図2に示したグラフは、縦軸に菌数の対数を取り、横軸に時間を取ってプロットした増殖曲線である。このグラフからも分かるように、本発明のOYK菌は、誘導期が殆どなく、培養開始後に速やかに増殖を始め、約10個/gの菌濃度が5時間程度で10個/ml以上に達している。これに対し、B.subtilisの標準菌(IFO3134)は、培養開始後、6〜8時間の誘導期を経たのち、本格的な増殖が始まり、約10個/gの菌濃度に達するまでにおよそ12時間かかっている。一方、OYK菌は、上記標準菌の体積に対し4倍の体積を有し、かつ4時間後においては標準菌の増殖が6倍であるのに対し、OYK菌は20,000倍であるから、体積については20,000×4=80,000倍である。単純に比較すれば80,000÷6=13,333…となり、優に1万倍以上の体積を占めることになる。
【0123】
I.OYK菌の利用
なお、OYK菌としてBacillus sp .OYK−01−600を用いたが、Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、及びBacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)についても同様の好結果が得られている。
【0124】
(OYK菌の粉末化)
以下、OYK菌を粉体にする工程を説明する。
(1)−82℃で凍結保存された種菌1mlを解凍した。
(2)試験管に滅菌されたBGG液体培地4mlを取り、その中に上記(1)にて解凍した菌を入れ、37℃で24時間種培養した。
(3)坂口フラスコに滅菌されたBGG液体培地100mlを取り、その中に上記(2)の菌を入れ、37℃で24時間本培養した。このときのOD値は、約10を示し、菌数は1×10個/mlであった。
(4)上記(3)の液体を凍結乾燥し、1gの菌粉末(培地成分も含まれる)を得た。菌数は1×1010個/gであった。
【0125】
得られた菌粉体は、OYK菌全てが胞子化されていた。これにより次のような作用効果を奏する。すなわち、
[1] 胞子化されているため防湿さえ考慮すれば、常温での保管が可能であり、菌数の減少や菌の変異等の心配がない。
[2] 打込み強さが10トン程度の打錠機にて錠剤化できる。打錠による菌数減少はない。
[3] 芳香剤、凝固剤、遅溶剤など、錠剤にするために必要な化学薬品の添加が可能である。
【0126】
(錠剤としての利用)
上記実施例で得られた菌粉体を、菌の増殖を促進させる添加物(例えばグルコース、グルタミン酸ソーダ、大豆タンパクの抽出物、培地成分など)を加えたうえで打錠機で打錠し、錠剤にすることができた。この錠剤を生ゴミの中に投入すると、結果として生ゴミから発生する悪臭を防止することができた。これは、前記錠剤を生ゴミの中に投入することによって湿気や水分により溶解し、胞子は水分を得て菌として活動を始め、臭気を出す腐敗菌の増殖に勝る速度で当該OYK菌が増殖したものと考えられる。また、OYK菌は大腸菌O−157にも抗菌活性があることから、台所回りでの上記錠剤の使用により食中毒の防止にも応用できる。
【0127】
(堆肥の製造例と製造された堆肥の効果)
さらに、本発明のOYK菌は、堆肥の製造工程においても有効な作用を示す。特に製造工程中、初期の発酵温度の立上がりに有効な作用を示す。その一例を以下に示す。
【0128】
牛糞700gが温度50℃まで昇温する日数を測った結果が8日であるのに対し、牛糞700gに濃度1×10個/mlのOYK菌液(OYK−01−600)50mlを添加したものは3日しか掛からず、時間の短縮が見られた。また、40℃以上保持される時間については、添加しない場合は6日であるのに対し、OYK菌を添加したものについては17日と保温時間の延長が見られた。堆肥製造工程は、それぞれの温度域で多数の菌や黴が増殖、死滅を繰り返し高分子有機物を低分子化すると言われている。このサイクルの中で70℃の最高温では胞子として生存し、昇温または降温での40℃付近で活発に増殖することによりサイクルの短縮を図っている。さらに、OYK菌の特徴である増殖時に悪臭を発しないことから、製造工程中におけるメルカプタン、硫化水素臭の発散が防止された。
【0129】
(OYK菌のシート化とその利用)
本発明のOYK菌の効果を医療現場において手軽に利用するための試みを行なった。以下詳述する。
菌(OYK−01−600)濃度1×10個/mlの菌液とバインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール)を10%添加した分散溶液を密度1500メッシュのスクリーン捺染機を用いて100g/mの不織布に捺染した。水分を蒸発させたあと、前記不織布を顕微鏡で観察した結果、OYK菌は胞子化されて不織布の繊維に絡まった状態に固定化されていることが確認できた。
この不織布を適当な広さに裁断し、これを、緑膿菌が原因とされている床ずれに悩む患者の背中に当てがうべく、シーツに敷いて様子を観察したところ、次第に悪臭がなくなり、床ずれも快方に向かうことが確認された。
なお、上記実施例において不織布を使用したが、これに限らず、合成樹脂繊維あるいは天然繊維からなる織物や編物、合成樹脂シート、合成樹脂発泡シート等を用いても構わない。
【0130】
(池水の浄化への利用)
ゴルフ場内にある池は、芝に多量の肥料を投入することから、その肥料が池に流れ込んで富栄養状態となっている。このような池は、時として、赤味を帯びた植物プランクトンが異常増殖し、さらにこの増殖により、池中の溶存酵素が減少する。これにより、嫌気性細菌の増殖を促し、悪臭の発生を招く。このような状態の池(400t水量規模)にOYK菌液(OYK−01−600、菌濃度1×10個/ml)10リットルを投入したところ、2週間で表面の赤味が消え、透明度が増した。このメカニズムは未だ解明していないが、OYK菌の増殖により池水中の栄養物分が減少し、植物プランクトンが死滅したと推察できる。
【0131】
(脱臭剤としての利用)
富栄養状態の池における水浄化効果、あるいは上記した「D.微生物による排水処理場の防臭試験」の項で述べた排水(廃水)処理場の防臭効果については先述の通りであるが、乳牛や肉牛の飼育場、養鶏場、養豚場における悪臭に対しては堆肥の製造例に見るごとく、メルカプタン、硫化水素臭の発散を防止しうることからOYK菌の散布による脱臭が可能である。また、と殺場、手術室、衛生汚物、加工中の動物皮革においては、上記[表12]とその次のパラグラフに記載したように、OYK菌は蛋白質、脂質、炭水化物等を分解する際に悪臭を発生させる菌よりも速く増殖して防臭することができる。散布、混入、あるいは付着させるOYK菌は、菌の溶液をそのまま用いるか胞子化した粉体でも良く、さらに菌体内生成物あるいは菌体外生成物であっても同様の効果が得られる。
【0132】
(堆肥化における利用[I])
OYK菌が発酵温度にどのような効果をもたらすかを調べるため、少量の牛糞を用いて室内(室温18℃)で堆肥化の試験を行った。試料の内訳は次の通りである。
(1−1) 牛糞 400g(水分率60%)
CFP 40g(コーヒー搾り滓、水分率8%)
おから粉末 20g(大豆タンパク源)
OYK菌粉末 4g(菌濃度1×1010個/g)
(1−2) 牛糞 400g(水分率60%)。
【0133】
これらの試料を魔法瓶内に置き、発酵温度の変化をグラフにしたものを図3に示す。第1日目は準備に費やされているが6時間毎の温度の変化を測定した。図中曲線(1−1),(1−2)の符号は上記試料の番号と一致させている。
【0134】
試料(1−1)に於けるおから粉末は、OYK菌の富栄養源で増殖に寄与し、CFPは多孔質で水分調整の他に、微量発生するアンモニア臭気の吸収と好気的環境を作る働きがある。また、OYK菌粉末は培養液を凍結乾燥したもので菌濃度は1×1010個/gである。試料(1−1)に於いては約1日で室温から70℃迄上昇した。OYK菌は、10℃〜55℃の範囲で活動し、30〜40℃の範囲で最も活発に活動し、牛糞の温度上昇を急速に促進させ、またOYK菌の増殖により多少のアンモニアが発生し、温度と弱アルカリにより放線菌などの高温菌の活動を促す。これにより、図3のグラフに示すように、約1日で牛糞の温度が70℃に達したものと推察される。2日後からは再度室温まで降下していくが切り返しを行って再び発酵温度が上昇した。
【0135】
一方試料(1−2)に於いては牛糞の温度は10℃程上昇しているとはいうものの発酵は不十分であり堆肥化されなかった。なお、上記テストは発酵温度を正確に測定するため、試料を魔法瓶の中に置き、強制通気を行った。
【0136】
(堆肥化における利用[II])
牛糞の水分率の影響をみるために次のような試料で同様の試験を試みた。室温は18℃である。試料の温度変化をグラフにして図4に示す。
(2−1) 牛糞 400g(水分調整せず。水分率80%)
CFP 40g(コーヒー搾り滓、水分率8%)
OYK菌粉末 4g(菌濃度1×1010個/g)
(2−2) 牛糞 400g(水分率60%)。
試料(2−1)では、温度は室温から上昇を続けるが最高温度の70℃に達する。
また、試料(2−2)に於いては温度の上昇は僅かであり30℃を越えることはなかった。
【0137】
(堆肥化における利用[III])
上記実施例1〜2を参考に屋外に於ける堆肥化試験を試みた。容量も7tに増やした。試験場所は、静岡県下の堆肥化センター内で堆肥化の困難な冬期に試験を行なった。試料は屋外で山積みとし、その上にシートを被せた。
(3−1) 牛糞 5t(水分調整せず。水分率80%)
戻し堆肥 1.5t(水分調整用に使用。水分率44%)
CFP 150kg(コーヒー搾り滓、水分率8%)
脱脂大豆粕 150kg(大豆タンパク源)
OYK菌粉末 5kg(菌濃度1×1010個/g)。
発酵温度及び外気の気温の変化をグラフにして図5に示す。冬期であるがため試料の温度も低く発酵温度が上昇するかどうかが懸念されたが、1日で20℃の上昇が確認され、山積みの試料から蒸気の発生が確認された。その後は室内に於ける試験(上掲)と同様の上昇がみられ最高温度は78度に達した。その後、温度の降下がみられ、この時点で“切り返し”を行った。これにより、再び発酵温度の上昇が確認された。
【0138】
(菌体製剤の作成)
上述した実施例では菌を直接粉体として用いているが、規模が大きくなると広範囲に高濃度の菌を効率よく混入するための菌体製剤が必要となる。次に菌体製剤の作成要領の一例を説明する。
【0139】
(1) 冷凍保存されたOYK菌をニュートリエンブロス(肉エキス培地)に1%植菌し37℃にて24時間振とう培養する。
(2) 1日浸水した丸大豆を121℃,20分,2気圧で高温高圧滅菌蒸煮を行う。
(3) 平型バットに、工程(2)にて滅菌蒸煮した丸大豆を敷き詰める。
(4) クリーンベンチ内でOYK菌液をスプレー植菌する。
(5) 植菌された丸大豆を37℃の恒温室内に静置して2日間培養し、菌数を測定する。菌数が1×10個/g以上存在することを確認する。
(6) 工程(5)が終了したものを60℃にて充分乾燥させ、粉砕機にて顆粒状に粉砕する。この状態におけるOYK菌は胞子化して生存している。
【0140】
この様にして生成された顆粒状物が、本発明の菌体製剤の一例である。なお、上記(6)の工程において、乾燥物を顆粒状に粉砕したが、この大きさは、富栄養源の種類により、粒子の大きさを微粒子から顆粒の範囲で適宜変更する。その理由は、同一重量において粒子が細かい程、菌の増殖ポイントが増加するためである。
【0141】
(菌体製剤の堆肥化への利用)
本発明の菌体製剤が実用的であることを確認するため、静岡県下の堆肥化センター内の発酵レーンで菌体製剤を用いた堆肥化試験を行なった。なお、この試験は、堆肥化の困難な冬期に行なった。
【0142】
用意された試料は次のようなものである。
(4−1) 牛糞 54t(水分調整せず。水分率80%)
CFP 9t(コーヒー搾り滓、水分率8%)
脱脂大豆粕 3t(大豆タンパク源)
OYK菌 50kg(大豆タンパク菌体製剤)
(4−2) 牛糞 54t(水分調整済み)
CFP 9t
(4−3) 牛糞 54t(水分調整無し)。
【0143】
発酵の温度変化及び外気の気温をグラフにして図6に示す。各曲線の符号は試料の番号である。試料(4−2)に示されるようにCFPのみでは発酵温度は不十分でありまた試料(4−3)においては発酵温度の上昇は殆どみられない。これらの結果から菌体製剤が発酵温度の上昇に大きな効果があることが実用条件下で証明された。試料(4−1)に於いては試験開始後直ぐに温度の上昇がみられ、以後継続して上昇を続けた。その後の状況は図5とほぼ同様で実用可能な結果をもたらした。
【0144】
これによる堆肥は糞臭は全くなく僅かな土臭がした。しかしCFPの添加は水分の調節と好気環境を保持する効果があり通性嫌気性菌であるOYK菌は、嫌気より好気の方が増殖効果が大きいため、OYK菌の活動を活発にした。温度が低い環境での堆肥化は、微生物の活動により温度が上昇しかけてもすぐに周辺の低温部に熱を奪われ、結果的には40℃以上の温度上昇はみられないことが多い。しかし、OYK菌体製剤を混入する牛糞では、OYK菌が標準菌に比べ投入直後では約1万倍という異常増殖を発生させ、これにより周辺低温部に負けない温度上昇が発生し、逆に周辺部に熱エネルギーを拡散し、その周辺にすでに生息する微生物の増殖を促し、全体が80℃近い温度まで上昇させる。これは、高温発酵菌の増殖によるものである、これにより、有害菌、雑草の種子を死滅させた安全な完熟堆肥が製造できる。
【0145】
上述の実施例では本発明になる菌体製剤を牛糞に用いて説明しているが他の動物の排泄物(例えば鶏糞、馬糞)や生ゴミに対しても有効に使用しうることは云うまでもない。
【0146】
(菌体製剤の脱臭材への利用)
水100ccに粉末寒天1.5g、グルコース1g、グルタミンソーダ1g、大豆タンパク菌体製剤1g、コーヒー搾り滓10gを溶解させ充分撹拌して容器に注入した。20℃にて1日放置すると固形物が得られる。
この固形物を調理場の流し排水口や生ゴミ収容篭に投与した。これにより、流し排出口や生ゴミ収納篭からの悪臭の発散を予防することができた。これは、投入された固形物が少しずつ溶解しながらOYK菌が流出して増殖し、そしてこのOYK菌が腐敗菌の増殖を抑制して悪臭の発散を阻止したものと考えられる。
【0147】
(菌体製剤の錠剤)
大豆タンパクを含む菌体製剤、ゼラチンの水溶物、及びコーヒー搾り滓(CFP)を混練し、バラけない程度に水分を蒸発させた。その後、混練物を打錠機で打錠して錠剤を得た。ゼラチンは菌のタンパク源となるほかバインダーとして働き、形状の維持に効果がある。また、CFPは通気性を良好にする。
得られた錠剤において、菌は胞子化した状態で生存する。この錠剤に水分を与えると菌の増殖が始まるので、例えば有機汚染された池などに投与すると、当該錠剤は浮遊しながら池表面に広がるので都合がよい。菌が実際にその効果を示す条件は投与時点で高濃度であることが必要で徐々に分散範囲を広げていくようにすれば菌の作用が顕著でやがて池全体に効果が及ぶ。
【0148】
(盤状脱臭剤の作成)
多数の貫通穴を有する円盤状の固形物の作成について説明する。
水100ccに、粉末寒天1g、グルコース1g、グルタミン酸ソーダ1g、大豆タンパク1g及びコーヒー抽出滓100gを混合し溶解した。この混合液を充分攪拌し、120℃、20分間オートクレーブ処理した。
上記混合液は70℃以上では流動性を有しているので、図8に示すような、底面から上方に向けて延びる凸部(13)を多数有するプラスチック製容器(14)に上述の混合液(15)を注入し、のち室温になるまで徐冷した。
1×10個/mlのOYK菌濃縮液(16)の約0.1mlを混合液(15)上に散布し、室温20℃にて24時間放置した。これにより、混合液(15)が固形化した。なお、混合液(15)は収縮しながら固形化するので、固化後、容器(14)から簡単に離形させることができ、図7に示すような、穴(12)を多数有する円盤状の固形物(11)を得た。
【0149】
(盤状脱臭剤の利用)
上記実施例で得た固形物(11)を脱臭剤として用いる。設置個所としては、調理場のシンク排水口や、シンク内に別途設置した、生ゴミ用の網目状容器などである。
【0150】
固形物(11)を投入した箇所において、悪臭の発生を最小限に抑えることができた。これは、OYK菌が、有機物の腐敗を促す雑菌の増殖を抑制した結果である。すなわち、固形物(11)は、多数個のコーヒー搾り滓を互いに付着させることにより多孔質、つまり好気的環境となり、また固形物(11)はOYK菌にとっては富栄養物でもあるので当該OYK菌は活発に増殖する。そして穴(12)は固形物(11)の表面積を増大させると共に、水流の通り抜け口ともなる。 なお、上記実施例に用いた粉末寒天の一部を糊剤に変えることもできる。糊剤としては、澱粉などの天然高分子物質やアクリル酸系の合成高分子物質を用いることができる。例えば、粉末寒天1gに変え、0.2gの粉末寒天と0.8gの澱粉とすることができる。また、コーヒー搾り滓の代わりにその一部をおがくずで置換してもよい。おがくずは、水に添加する栄養物質を吸着するほか多孔質にて微生物の増殖基地としての役割を果たすことができる。
【0151】
多孔性無機物質を使用する例としては、パーライトに栄養分を付着させ、これに菌を入植させて用いる場合と、臭気を吸着する機能を有する多孔性無機物質、例えば粒状活性炭、ゼオライトなどの無機微粒子を適宜配合して吸収性能を向上した合成吸着剤を用いる場合がある。ゼオライトはトリメチルアミンやメチルメルカプタンの吸収能が高く、菌の増殖と相俟って脱臭作用に効を奏す。なお、ゼオライトを配合する場合の処方は、次の通り。水100cc、粉末寒天1g、グルコース1g、グルタミン酸ソーダ1g、大豆タンパク1g、コーヒー搾り滓50g、ゼオライト細粒5g
【0152】
(浴槽の湯における雑菌の繁殖防止)
OYK菌を増殖させて浴槽の湯における雑菌の繁殖防止方法を図面に基づいて説明する。
先ず、水100ccに対し、寒天粉末1.5gと、菌が増殖するための栄養分としてグルタミン酸ソーダ、グルコースおよび大豆蛋白を各々溶解させ、120℃にて20分間オートクレーブ処理した後、徐冷した。この混合液の粘度が高くなったところで、図9に示すように四角形(15cm×10cm)のポリエステル不織布(1a)上に厚さ2mmの塗布厚で以て前記混合液を塗布し、固形化して寒天培地(2)を形成した。そして、この寒天培地(2)上にOYK菌の濃縮液(約10個/ml)を0.1ml散布した。
【0153】
その後、図10に示すように、寒天培地(2)の全体を覆うようにポリエステル不織布(1b)敷設するとともに、周辺部分にて両不織布を互いに接着剤で貼着し、OYK菌担体(10)を得た。
【0154】
図11に示すように、浮き子(3)をポリエステル不織布(1a)の外側面に貼着することにより、OYK菌担体(10)を湯面に浮かせることができる。この浮き子(3)は、例えば内径2mmの樹脂チューブの両端を閉じた物からなり、OYK菌担体(10)の四辺の各々に沿って貼着される。
【0155】
なお、図12に示すように、OYK菌担体(10)の端部に紐(4)を輪奈状にして取り付け、図13に示すように浴槽(5)に設けられた栓(6)に引掛けてもよい。これにより、槽壁(8)にOYK菌担体(10)を設置することができる。また、OYK菌担体(10)を浴槽蓋(図示せず)の裏側に接着テープで貼着することもできる。さらに、ジャグジー風呂において、泡を発生させるための空気取り入れ口のフィルターにOYK菌担体(10)を設置して外気から侵入する雑菌の増殖の抑制を図り、同時に空気供給パイプの内壁を清潔に維持することも可能である。
【0156】
その他、OYK菌を24時間風呂(浴槽の水を入浴ごと取り替えないで循環式にしてゴミを取り除き、しかも常時保温していつでも入浴できる快適さを持った風呂)に用いて浴槽の水における雑菌の繁殖防止を図ることもできる。すなわち、OYK菌が繁殖して湯中に遊出し、24時間風呂の温湯の循環経路や循環装置の内部を通る。増殖したOYK菌は長期間に亘り雑菌(例えばレジオネラ菌など)の増殖を抑制する共に雑菌が増殖した結果として発生する悪臭を減少させる。
【0157】
なお、上述の実施例で得た菌体製剤を用いて、浴槽の湯中におけるレジオネラ菌などの雑菌の繁殖防止を図ることもできる。
【0158】
(生理用ナプキンへの利用)
市販の女性用生理ナプキンの経血吸収領域に、多数のOYK菌が胞子化した粉末(菌濃度1×1010個/g)を適量封入した。封入の仕方としては、例えば、当該粉末を加圧空気式の散布器に充填し、この散布器の噴射口から散布する方法がある。
【0159】
封入した粉体が経血に触れると発芽し、経血に含まれる蛋白質を消化して増殖する。OYK菌は弱酸性から弱アルカリ性の領域および30℃近い温度領域で最も良く活動し、しかも初期の菌濃度が極めて高いので、他の雑菌の繁殖を抑制して異臭の発散を防止するとともに局部を清潔に保つことができる。
なお、前記したOYK菌の粉末と粉末状の富栄養源、例えば大豆タンパクとを混合して用いることもできる。この場合にあっては、当該混合物を吸水部材に直接散布して用いるか、あるいは水溶解性のフィルムから成る扁平な袋に封止して吸水層に挟み込むのが適切である。水溶解性のフィルムの材料としては、例えば澱粉(オブラート)、カゼイン、ゼラチン、PVA、CMCなどを使用する。
【0160】
また、OYK菌の粉末を複数層に積層された不織布よりなる吸水部材の内部に固定することもできる。すなわち、生理用ナプキンの経血吸収部分は、複数層に積層された不織布からなる場合が多いが、そのうちの1つあるいは2以上の不織布にOYK菌を接着すればよい。例えば、濃度1×10個/mlのOYK菌の菌液にPVA(バインダー)を10%添加した分散溶液を不織布に対してスクリーン捺染機を用いて捺染し、のち60℃程度で乾燥させてOYK菌を全て胞子化させる。これにより、OYK菌の胞子の多数が不織布の繊維に絡まった状態に固定するので、この不織布を裁断して吸水部材を構成する不織布の一層とすることもできる。
【0161】
(おむつへの利用)
OYK菌をおむつに適用する場合も、前述したように、OYK菌の菌液にバインダーを添加した分散溶液を捺染した不織布を用いることもできる。
また、OYK菌は、必ずしも胞子化した状態で付着させる必要はなく、例えば肉エキスとペプトンの混合粉末(ニュートリエントブロス)の7%溶液にOYK菌を投入して振とう培養し、この培養液に不織布を浸漬してOYK菌を含ませ、のち水分を除去して用いることもできる。この場合、OYK菌は乾燥により胞子化されて繊維に絡まって保持される。
【0162】
(OYK菌を混入させたフィルム)
澱粉、カゼイン、ゼラチン、PVA、あるいはCMCの水溶液に、胞子化したOYK菌を混合して分散させた。この分散液を、所定の厚みを以て平らな面に塗布し、のち50〜70℃で乾燥させた。そして、乾燥物を平らな面から剥がしてOYK菌を保持したフィルムを得た。
このようにして得たフィルムを、例えば上記した生理用ナプキンにおける経血吸水部分に積層したり、おむつに用いたりすることができる。
【0163】
(熱エネルギー源としての代謝エネルギーの利用)(図14参照)
有機性廃棄物(例えば家畜糞尿)の堆肥化発酵工程では、発酵に伴う昇温がみられる。これを着脱可能な蓋付きの断熱容器(31)内で、水分、栄養分(C/N比)、通気量、温度などを調節しながら最も効率の良い発酵を行なわせ、発生する余剰発酵熱を利用することができる。通常、家畜糞尿の発酵では30〜50℃程度しか昇温しないが、OYK菌及びOYK菌と高温菌の菌体製剤を添加することにより堆肥化初期段階に急速に昇温し、高温菌(好熱菌)の活動が活性化され、70〜100℃の温度が得られる。ここでいう余剰発酵熱利用期間とは、堆肥化発酵工程において、熱交換を行なっても温度上昇が確認できる期間である。
【0164】
温度センサー(38)が容器内の堆肥の温度を測定し、その温度状況により自動的にバルブ(39)が制御される。発熱の際の水分蒸発を妨げないようにするために、エアーバルブ(36)より適切量の水蒸気が放出され、栄養分や水分の不足に対しては、投入口(35)より容器内へ投入できるようになっている。通気口(37)は断熱容器(31)の床面に設置されており、堆肥体積に対する空気の通過の極端なムラが生じないようになっている。また、容器内の発酵熱は熱交換機(32)により、媒体として水、空気、高分子の液体等を用いて熱エネルギーを取り出すことができる。更に、容器内の発酵を均一化させるために、攪拌モータ(33)と連動している攪拌スクリュー(34)が回転する。攪拌は、発酵の状況にもよるが、1日1回程度の攪拌でよい。
【0165】
また、単に堆肥製造一次発酵槽、二次発酵槽の床面、壁面及び堆肥を覆うシートに熱交換機を配管し、堆肥化発酵工程における発酵熱を利用してもよい。
【0166】
有機性廃棄物の堆肥化発酵工程において、積極的な通気管理及び攪拌(切り返し)を行なっても温度が上昇しないようならば、一次発酵は終了したものと考えられる。当該装置において、堆肥の温度が上昇しないような状態になれば、断熱容器(31)から搬出したものを堆肥として利用することができる。
【0167】
一般的に堆肥化発酵工程において、温度の履歴があるほど栄養分(C/N比)の値は低下する。当該装置において熱交換機を利用して発酵温度を調節し、堆肥の発酵自体を制御することによって完熟堆肥を製造するだけでなく、未分解の栄養成分を含んだ堆肥を製造することが可能になる。
【0168】
よって、当該装置を数機設置することで、有機性廃棄物の堆肥化発酵工程における余剰発酵熱を発酵初期段階に必要な熱源として利用することができたり、畜舎の床面の暖房、冬期における融雪などの熱源として利用することができ、農業環境の一層の改善につながるものである。
【0169】
また、乳牛などの畜舎における床や壁の温水洗浄として利用すれば、当該乳牛の乳房炎を防ぐのに極めて大きな効果をもたらす。
【0170】
さらに、廃棄物から可燃ガスを抽出する嫌気発酵手段にも用いることができる。すなわち、上述の装置から得られる温湯を嫌気発酵槽内の廃棄物の加温に使用するほか、本発明の菌体製剤を嫌気発酵の前段階に利用し、まず廃棄物を菌体製剤で40℃程度まで昇温した後、嫌気環境に切り換え、嫌気発酵の高効率化を図ることができる。
【0171】
(カプセル化したOYK菌の利用)
OYK菌またはこれを含んだOYK菌体製剤をカプセルまたは重層錠剤に封じ込め、それを経口投与した人または家畜、または座薬として投入した人または家畜の糞臭を抑えることに利用する方法を述べる。
【0172】
OYK菌は、その性質から、pH6.1の環境では増殖するが、pH5.4では増殖しない。動物の胃の中はpH2〜3の強い酸となっており、上記カプセル等を投与した場合、胃酸により細菌は死滅する。OYK菌を生きたまま腸まで届かせ、糞臭をOYK菌の増殖によって抑えるためには、当該OYK菌を胃中を通過させ、小腸の働きを妨害せずに直腸まで到達させ、直腸内の糞を有機性栄養分として取り込んで増殖させる必要がある。その方法としては次のような手段がある。すなわち、OYK菌またはOYK菌体製剤を腸溶性(胃では溶けず腸で溶ける)の保護膜あるいはカプセルにより包み込んであるいはコーティングして、錠剤、カプセル剤、座薬などの製剤とすればよい。
【0173】
以下、具体的に述べる。
ゼラチン14重量部、グリセリン3重量部、低メトキシルペクチン3重量、及び精製水80重量部を均一に混合し、液状の被覆組成物を得た。この被覆組成物を環状孔から押し出すと同時に環状孔の内側において同心円状に設けられた内孔口よりOYK菌またはOYK菌体製剤の練り品を押し出し、この複合ジェットを冷却液中に放出した。これにより、0.5〜10mmφの粒度のカプセルを得た。これを塩化カルシウム水溶液に数分浸漬し、乾燥洗浄して腸溶性軟カプセルを得た。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】防臭試験に供した排水処理場における排水設備と処理能力を示した説明図である。
【図2】OYK菌とB.subtilis標準菌との増殖速度を比較したグラフを示す図である。
【図3】堆肥化の温度変化をグラフに示した図である。
【図4】堆肥化の温度変化をグラフに示した図である。
【図5】屋外における堆肥化の温度変化をグラフに示した図である。
【図6】実用試験における堆肥化の温度変化をグラフに示した図である。
【図7】本発明の脱臭剤の形状を示す斜視図である。
【図8】本発明の脱臭剤として固形物を成形する状態を示す断面図である。
【図9】寒天培地の固定状態を示す断面図である。
【図10】OYK菌担体の断面図である。
【図11】浮き子を貼着したOYK菌担体の断面図である。
【図12】別の実施態様のOYK菌担体の断面図である。
【図13】OYK菌担体を浴槽に用いた例を示す断面図である。
【図14】代謝エネルギーを熱エネルギー源として利用する装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶血性バチルスズブチルス類縁菌で、標準枯草菌(IFO3134株)に比較して菌体体積が4倍以上あり、かつ37℃におけるニュートリエントブロス浸透培養では培養初期に殆ど誘導期がないため10個/mlの初期菌数が4時間後に10個/ml以上に増加し、これらの相乗効果により、増殖によって発生する代謝エネルギーが、前記標準枯草菌のそれに比べて1万倍以上になることを特徴とする新規微生物。
【請求項2】
バチルス属に属するズブチルス種の溶血性を有さない類縁菌であり、少なくとも黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌O157、レジオネラ菌、緑膿菌、フザリウム、麹カビ、青カビ、白癬菌、及びくものすかびに対して抗菌性を有することを特徴とする新規微生物。
【請求項3】
Bacillus sp.OYK−01−600(FERM BP−6394)、
Bacillus sp.OYK−03−600(FERM BP−6395)、及び
Bacillus sp.OYK−04−000(FERM BP−6396)からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の新規微生物。
【請求項4】
堆肥製造用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の新規微生物。
【請求項5】
請求項4に記載の新規微生物により製造された堆肥。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の新規微生物を、富栄養源に包囲、付着あるいは混入させてなることを特徴とする菌体製剤。
【請求項7】
前記富栄養源がタンパク質を主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の菌体製剤。
【請求項8】
前記富栄養源の少なくとも一部が多孔性物質からなることを特徴とする請求項7に記載の菌体製剤。
【請求項9】
前記多孔性物質がコーヒー滓、食用油の抽出滓、おから、ビール滓、ヤシの実滓、果実滓などの植物の実の絞り滓などの食品の抽出滓、おがくず、籾殻などの植物細片からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の菌体製剤。
【請求項10】
50℃以上の高温域で増殖する放線菌や糸状菌などの高温菌を混在させた請求項6〜9のいずれか1項に記載の菌体製剤
【請求項11】
堆肥製造用であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の菌体製剤。
【請求項12】
請求項11に記載の菌体製剤を用いて製造された堆肥。
【請求項13】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の菌体製剤を用いてこれに含まれる新規微生物を増殖させるときに発生する代謝エネルギーを熱エネルギー源とする加温方法。
【請求項14】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の菌体製剤を用いてこれに含まれる新規微生物を増殖させるときに発生する代謝エネルギーを熱エネルギー源として利用した加熱装置。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の新規微生物を腸溶性の保護膜あるいは腸溶性のカプセルにより包囲してなる製剤。
【請求項16】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の菌体製剤を含んでなる加温装置。
【請求項17】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の菌体製剤を含んでなる抗菌グッズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−278890(P2008−278890A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122693(P2008−122693)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【分割の表示】特願2000−508768(P2000−508768)の分割
【原出願日】平成10年9月3日(1998.9.3)
【出願人】(000116231)ワシ興産株式会社 (25)
【Fターム(参考)】