説明

新規抗菌性ペプチド

本発明は、特にグラム陽性及びグラム陰性菌に対する抗菌活性を有するモノマー及びマルチマーペプチド化合物に関する。さらに、本発明は、医学的用途に用いられる、殺菌剤及び/又は洗剤として用いられる、又は保存料として用いられる前記ペプチド化合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にグラム陽性及びグラム陰性菌に対する抗菌活性を有するモノマー及びマルチマーペプチド化合物に関する。さらに、本発明は、医学的用途に用いられる、殺菌剤及び/又は洗剤として使用される、あるいは保存料として使用される、前記ペプチド化合物を含む組成物に関する。
【0002】
多剤耐性微生物の発生の増加は、新規抗菌剤の開発において新たな関心を生む。耐性を回避し得る新規部位を標的とする最新薬を製造する流れは、細菌感染の長期制御に重要である(参考文献1)。
【0003】
医薬産業は、以前は、既存の抗生物質を修飾し、最新の抗生物質をタイミングよく開発することによって、このニーズに対応してきた。これらの試みの成功によって、様々な現在入手可能な薬物クラスの抗生物質、すなわちベータラクタム(ペニシリン、カルバペネム、セファロスポリン)、糖ペプチド、マクロライド、ケトライド、アミノグリコシド、フルオロキノロン、オキサゾリジノンなどが産生されてきた(参考文献2)。しかし、最近、ほとんど又は全ての既知クラスの抗生物質に対して耐性である微生物が検出された。したがって、新規抗生物質化合物に対する必要性が増大している。
【0004】
抗菌性ペプチドは、有望な種類の抗感染症薬である、非特異的免疫系の成分である。それらの作用機序は十分には理解されていないが、細胞膜や細胞分裂及び高分子合成の過程をはじめとする多数の標的を有すると考えられている(参考文献3)。
【0005】
ペプチド抗生物質の総説がR.E.W.Hancockにより発表されている(参考文献4)。この総説の主な焦点は、従来の抗生物質と比較した場合のカチオン性抗菌性ペプチド(AMP)の利点及び欠点であり、これらのペプチドを用いた最近の臨床開発をまとめている。これらは短鎖(10〜50アミノ酸)であり、全体的な正電荷(一般的に+2〜+9)及び実質的な割合(≧30%又はそれ以上)の疎水性残基を有すると定義することができる。これらの特性により、ペプチドは、しばしば膜と接触すると三次元で両親媒性構造に折りたたまれ、かくして正に荷電した疎水性アミノ酸を多く含む独立したパッチを形成する。
【0006】
AMPは、細菌、真菌、エンベロープを持ったウイルス、寄生生物及びさらには腫瘍細胞など様々な標的に対してin vitroで広範囲の殺活性を示す(参考文献5及び6)。
【0007】
ここ15年以内に、ほぼ900のAMPが種間で同定され、今や自然免疫系の必須成分として認識されている(参考文献7)。マゲイニン、たとえばマゲイニン2及びPGLaは、最もよく研究されているAMPに含まれる。これらは、最初にアフリカツメガエルの皮膚から単離された直鎖ペプチドである。マゲイニンは、2つの重要な活性、すなわち広い抗菌スペクトルと抗エンドトキシン活性とを有するαへリックスイオノフォアである(参考文献8)。
【0008】
哺乳動物における大きなAMPファミリーは、カテリシジンによって代表される。これらは、アミノ末端カテプシンL阻害物質ドメインを有するAMP(カテリン)である。唯一のヒトカテリシジンh−CAP18のC末端37アミノ酸ドメインであるLL−37は、広い抗菌活性を発揮する両親媒性らせん状ペプチドである(参考文献9)。
【0009】
さまざまな合成ペプチドがin vitroとin vivoとで分析されている。たとえば、米国特許出願第60/651,270号は、様々な病原体に対して活性な抗菌性ヘキサペプチド及びそれらの脂肪誘導体を開示する。これらのペプチドは、動物における真菌性及び細菌性疾患の治療において特に有効であり、多剤耐性菌に対するポリミキシンBなど従来の抗生物質の殺菌活性を促進する可能性を示す。
【0010】
WO2006/006195は、抗菌性ペプチド、とりわけ、配列QKKIRVRLSA(配列番号1)を有するペプチドを開示している。これらのペプチドは抗菌活性を示すが、これらは非常に不安定であるため実用化できない。実際、N末端Glnはピログルタミン誘導体を提供し、その含有量は生成物の保存中に増大する。
【0011】
本発明は、感染性疾患を治療及び/又は予防するために新規抗菌性ペプチド化合物を使用及び製造するための方法を提供する。
【0012】
これらの新規ペプチド化合物は、配列スキャニング法及び直鎖デカペプチドに関する伸長ステップにより同定された。Fmoc/tBu化学反応によって固相で実施されるペプチド合成によって、WO2006/006195に開示される本来の配列(配列番号1)と比較した場合に増大した抗菌活性を有するペプチドのライブラリを単離することができた。
【0013】
本発明の主題は、一般式(Ia):
Z−[K]n−K−I−R−V−R(配列番号25)
(式中、Kは、リシン側鎖、特にL−若しくはD−リシンを有するアミノ酸残基、又は正に荷電した側鎖を有する別のアミノ酸残基であり、
Iは、イソロイシン側鎖、特にL−若しくはD−イソロイシンを有するアミノ酸残基であり、
Rは、アルギニン側鎖又はN−アルキル置換グアニジン側鎖、特にL−若しくはD−アルギニンを有するアミノ酸残基であり、
Vは、バリン側鎖、特にL−若しくはD−バリンを有するアミノ酸残基であり、
ここで、アミノ酸残基K、I、R及びVのうち1つは、アラニン側鎖、特にL−若しくはD−アラニンを有するアミノ酸残基で置換されていてもよく、
Zは、少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、
(i)芳香族アミノ酸残基又は少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラペプチジル基(芳香族アミノ酸残基は、特にトリプトファン、N−メチルトリプトファン、フェニルアラニン、β−フェニルアラニン、ナフチルアラニン、β−ナフチルアラニン、β−ジフェニルアラニン、β−(4,4’−ビフェニル)アラニン、β−アントラセン−9−イルアラニン及びβ−インドール−3−イルアラニン、又はそれらの置換誘導体から選択される)
(ii)脂肪族アミノ酸残基又は少なくとも1つの脂肪族アミノ酸残基を含むジ−、トリ−、テトラペプチジル基(脂肪族残基は、特に脂肪族、好ましくは少なくとも3個のC原子を有する分岐脂肪族側鎖を含むα−アミノ酸残基から選択される)
(iii)ピログルタミン酸(pyrE)残基又はN末端ピログルタミン酸残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラペプチジル基、
(iv)残基Q*又はN末端Q*残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラペプチジル基(Q*は、グルタミン側鎖を有する保護アミノ酸残基、特に保護L−グルタミン残基である)、並びに
(v)(i)〜(iv)のいずれか1つの組み合わせ、たとえば(i)及び(iii)、(i)及び(iv)、(ii)又は(iii)及び(ii)又は(iv)
から選択されるペプチド化合物のN末端基であり、
nは0又は1である)によって表されるアミノ酸配列を含む35アミノ酸残基までの長さを有するペプチド化合物である。
【0014】
好適な実施形態において、本発明は、一般式(Ib):
Z−[K]n−K−I−R−V−R−L−S−A(配列番号26)
(式中、K、I、R、V、Z及びnは前記定義のとおりであり、
Aは、アラニン側鎖、特にL−アラニンを有するアミノ酸残基であり、
Sは、セリン側鎖、特にL−セリンを有するアミノ酸残基であり、
Lは、ロイシン側鎖、特にL−ロイシンを有するアミノ酸残基であり、
アミノ酸残基K、I、R、L、V及びSのうち1つはアラニン側鎖を有するアミノ酸残基で置換されていてもよい)によって表されるアミノ酸配列を含む35アミノ酸残基までの長さを有するペプチド化合物に関する。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、前記定義の複数のペプチド化合物を含むマルチマー化合物に関し、この場合、個々のペプチド化合物は、たとえば多官能性、たとえば二又は三官能性アミノ酸などの二又は三官能性部分によって共有結合している。
【0016】
本発明は、ペプチド化合物に関する。「ペプチド化合物」という用語は共有結合により、好ましくはカルボキサミド結合により結合したアミノ酸構成単位又はその類似体を少なくとも部分的に含む化合物を包含する。構成単位は、好ましくはアミノカルボン酸、たとえばα−アミノカルボン酸又は他の種類のカルボン酸、たとえばβ−又はさらにはω−アミノカルボン酸から選択される。アミノ酸構成単位は、遺伝的にコードされたL−α−アミノカルボン酸及び/又はそれらのD−エナンチオマー及び/又は天然に存在しないアミノ酸構成単位から選択することができる。ペプチド化合物の個々の構成単位は、共有結合、たとえばカルボキサミド、カーバメート、エステル及びチオエステル結合によって結合する。本発明のペプチド化合物は、直鎖又は環状であってよい。モノマーペプチド化合物は、35アミノ酸残基までの長さ、好ましくは少なくとも8、さらに好ましくは少なくとも10及び15アミノ酸構成単位までの長さを有する。
【0017】
一実施形態において、本発明のペプチド化合物は、芳香族アミノ酸残基、好ましくは少なくとも1つの単環式若しくは多環式芳香族環、好ましくは少なくとも1つの二環式若しくは三環式芳香族環、たとえばフェニル、ナフチル、アントラセニル、ジフェニル、インドリルなどを含むα−アミノ酸残基、又は前記のような少なくとも1つの芳香族アミノ酸構成単位を含むジ−、トリ−若しくはテトラ−ペプチジル基を含むN末端基Zを含む。
【0018】
芳香族アミノ酸残基の具体例は、トリプトファン、N−メチルトリプトファン、フェニルアラニン、β−フェニルアラニン、ナフチルアラニン、β−ナフチルアラニン、β−ジフェニルアラニン、β−(4−4’−ビフェニル)アラニン、β−アントラセン−9−イルアラニン及びβ−インドール−3−イルアラニン、又はそれらの置換誘導体、たとえばそれらの一若しくは多アルキル置換誘導体である。さらに好ましくは、芳香族アミノ酸残基は、トリプトファン側鎖(W)、たとえばL(又はD)−トリプトファンを含む。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明のペプチド化合物は、脂肪族アミノ酸残基、好ましくは脂肪族、さらに好ましくは少なくとも3個のC原子、たとえば3、4、5、6若しくは7個のC原子を有する分岐脂肪族側鎖を含むα−アミノ酸残基又は少なくとも1つの前記定義の脂肪族アミノ酸構成単位を含むジ−、トリ−若しくはテトラ−ペプチジル基を含むN末端基Zを含む。脂肪族アミノ酸残基の具体例は、分岐アルキル、たとえば2−アミノペンタン酸、2−アミノヘキサン酸若しくは2−アミノヘプタン酸のメチル誘導体又はそれらのL−若しくはD−エナンチオマー形である。さらに好ましくは、脂肪族アミノ酸残基は、ロイシン側鎖(L)、たとえばL−ロイシンを含む。
【0020】
本発明のさらなる実施形態において、ペプチド化合物は、ピログルタミン酸(pyrE)残基又はN末端ピログルタミン酸残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラ−ペプチジル基であるN末端基を含む。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態において、ペプチド化合物は、Q*残基であるN末端基を含み、この場合、Q*はグルタミン側鎖を有する保護アミノ酸残基、特に保護L−グルタミン、又はその誘導体のN末端Q*残基を含むジ−、トリ−、若しくはテトラ−ペプチジル基である。Q*残基の好適な例は、ジペプチジル残基X−Qであり、ここでXはQとは異なるアミノ酸残基、たとえばG(グリシン)又はN末端アミノ酸及び/又はカルボキシル側鎖基が、たとえばアセチル基などのアシル、アミノ基によって保護されたQ残基である。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明のペプチド化合物は、芳香族アミノ酸残基とN末端ピログルタミン酸残基との組み合わせ又は芳香族アミノ酸残基とN末端Q*残基との組み合わせを含む。
【0023】
特に好適な実施形態において、ペプチド化合物のN末端基Zは、Ar、Ar−Q、G−Q若しくはアセチル−QなどのQ*、G−Q−Ar若しくはアセチル−Q−ArなどのQ*−Ar、pyrE及びpyrE−Ar(ここで、Arは前記定義の芳香族アミノ酸残基である)から選択される。
【0024】
本発明のペプチド化合物の具体例は:
WKKIRVRLSA(配列番号6)
pyrEWKIRVRLSA(配列番号27)
GQWKIRVRLSA(配列番号14)
アセチル−QWKIRVRLSA(配列番号12)
Aoa−QWKIRVRLSA(配列番号16)
(GQWKIRVRLSA)2K−β−Ala(配列番号19)
(式中、pryEはピログルタミン酸残基であり、Aoaは8−アミノオクタン酸残基であり、β−Alaはβ−アラニン残基であり、前記ペプチドはそれらのC末端で場合によってアミド化されている))から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
好適な実施形態において、本発明は、前記の複数のペプチド化合物を含むマルチマー化合物に関する。たとえば、本発明のマルチマー化合物は、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上のペプチド化合物を含み得る。マルチマー化合物は、マトリックス、たとえばポリペプチド、単糖、オリゴ糖若しくは多糖又は有機ポリマー、好ましくは直鎖有機ポリマーに基づくマトリックス上でマルチマー化されたペプチド化合物を含み得る。たとえば、マトリックスは、ポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリメラミン、デキストラン、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンから選択することができる。ペプチド化合物のマトリックスとのカップリングは、ペプチド化合物のN末端及び/又はC末端により、好ましくはマトリックス上の反応性基、たとえばヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、又はカルボキシル基とのカップリングを可能にするホモ−及び/又はヘテロ−二官能性リンカーを用いて行われる。
【0026】
さらなる好適な実施形態において、マルチマー化合物は分岐した、特にデンドリマー構造を有する。
【0027】
さらに別の実施形態において、マルチマー化合物は:
(i)R−(Y1−R)m−Y1−(R)m’(IIa)
(式中、Rは請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、Y1は共有結合又は二官能性リンカー、たとえばプロピレングリコールなどのジアルコール、コハク酸などのジカルボン酸、エチレンジアミンなどのジアミン、アミノ酸、ヒドロキシカルボン酸、たとえばヒドロキシアルカン酸、又はジイソシアネートであり、mは0又は正の整数であり、m’は0又は1である)
(ii)[[(R)n11’n2]Y2(IIb)
(式中、Rは、請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、
1’はそれぞれの場合独立して少なくとも3の官能価を有するリンカー、たとえばリシン、オルニチン、ノルリシン、アミノアラニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
2は、少なくとも2の官能価を有するリンカーであり、
1及びn2はそれぞれの場合独立して、少なくとも2、好ましくは2、3又は4、さらに好ましくは2の整数である)、
(iii){[[(R)n11n2]Y2’n33(IIc)
(式中、Rは、請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、
1及びY2’は、それぞれの場合独立して、少なくとも3の官能価を有するリンカー、たとえばリシン、オルニチン、ノルリシン、アミノアラニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
3は、少なくとも2の官能価を有するリンカーであり、
1、n2及びn3は、それぞれの場合独立して、少なくとも2、好ましくは2、3又は4、さらに好ましくは2の整数である)
から選択される。
【0028】
マルチマー化合物(IIa)は、複数のペプチド化合物が共有結合及び/又はホモ−若しくはヘテロ−二官能性リンカーY1によって結合したマルチマー直鎖化合物である。好ましくは、マルチマー化合物は、8個まで、さらに好ましくは4個までのペプチド化合物(Ia)若しくは(Ib)の単位を含む。
【0029】
マルチマー化合物(IIb)及び(IIc)は、個々のペプチド単位Rが、少なくとも3の官能価を有するリンカーによって結合した分岐化合物である。好適な実施形態において、マルチマー化合物(IIb)は4個のペプチド単位を含み、構造:
【化1】

を有する。
【0030】
さらなる好適な実施形態において、マルチマー化合物(IIc)は8個のペプチド単位を含み、構造:
【化2】

を有する。
【0031】
本発明のさらなる実施形態において、ペプチド及びマルチマー化合物は、少なくとも1つの修飾を含み、特に脂質、アミド、エステル、アシル及び/又はアルキル部分から選択されるものが結合し、たとえばN末端基、C末端基及び/又は側鎖基に結合している。N−及び/又はC末端修飾が好適である。
【0032】
特に好適な修飾は、3〜25、好ましくは5〜25個のC原子を有する直鎖又は環状、飽和又は一不飽和若しくは多不飽和炭化水素基を含む少なくとも1つのアミノカルボン酸、たとえば5−アミノバレロイック酸(valeroic acid)、8−アミノオクタン酸又は2−アミノデカン酸である、少なくとも1つの脂質部分が結合していることである。好ましくは、脂質部分は、化合物のN末端及び/又はC末端に結合する。脂質部分は、たとえばペプチド化合物及び/又はマルチマー化合物の遊離N末端若しくはC末端と結合することができる。しかし、脂質部分は、たとえば化合物(IIa)、(IIb)及び(IIc)に関して記載したように、N末端及び/又はC末端リンカーと結合することもできる。化合物(IIb)及び(IIc)の好適な実施形態において、C末端リンカーY2及びY3は、脂質部分が結合可能な三官能性リンカーである。
【0033】
さらなる好適な実施形態は、N末端へのアシル、たとえばアセチル基の結合及び/又は遊離C末端のアミド化である。
【0034】
本発明の化合物は、抗菌活性、特に、原核生物、たとえば真正細菌又は古細菌、及び真核生物、たとえば真菌、藻類又は寄生生物から選択される病原生物に対する活性を有し得る。好ましくは、化合物は、抗菌活性、たとえばグラム陰性及び/又はグラム陽性細菌に対する活性を有する。
【0035】
本発明の化合物は、抗バイオフィルム活性も有し得る。体内への医療機器の挿入に関連する感染は、時間とともに増大する。その過程は、器具上への生物の接着、増殖及びバイオフィルム形成を伴う。バイオフィルムは、従来の抗菌剤で根絶するのが困難であり、抗菌性耐性はバイオフィルム成長のある特異性によって決定される(参考文献10)。したがって、さらなる態様において、本発明の化合物は、バイオフィルムに埋め込まれた細菌、たとえばこれらに限定されるものではないが:大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の成長及び増殖を防止又は阻害するために用いることもできる。
【0036】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの前記定義の化合物、たとえば前記定義のペプチド又はマルチマー化合物を、薬剤的に許容される担体、希釈剤及び/又はアジュバントとともに含む医療用組成物である。人間医学又は獣医学において使用するために、組成物は、好ましくは、固体、液体又はゲル及びこれらの組み合わせから選択される医薬投与形態、たとえば洗眼液、洗口液、軟膏、エアロゾル又は局所製品としての形態である。医薬投与形態は、医薬有効量の本発明のモノマー又はマルチマーペプチド化合物、すなわち、病原生物の存在によって引き起こされる、関連する、又は不随して起きる障害の治療及び/又は予防に有効な活性剤の量を含む。「薬剤的に許容される」という表現は、本明細書では、妥当な損益比に相応して、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト又は場合によって動物の組織と接触する使用に適した化合物、物質、組成物、及び/又は投与形態を意味するために用いられる。
【0037】
本発明の医薬投与形態における活性剤の実際の量は、投与経路並びに治療される障害の種類及び重篤度に応じて変わり得る。所望の(1つ若しくは複数の)効果を達成するために、ペプチドモノマー又はマルチマー化合物を、単回投与量又は分割量として、たとえば少なくとも約0.01mg/kg(体重)乃至約200〜550mg/kg(体重)、少なくとも約0.01mg/kg(体重)乃至約100〜300mg/kg(体重)、少なくとも約0.1mg/kg(体重)乃至約50〜100mg/kg(体重)又は少なくとも約1mg/kg(体重)乃至約10〜50mg/kg(体重)又は少なくとも約1mg/kg乃至約20mg/kg(体重)で投与することができるが、他の用量でも有益な結果が得られる可能性がある。
【0038】
医薬組成物を製造するためには、本発明のペプチドを合成、又は他の方法で得、必要であるか若しくは望ましいならば精製し、次いで好ましくは凍結乾燥し、安定化させる。ペプチドを次いで適当な濃度に調節することができ、場合によって、他の薬剤的に許容される薬剤と組み合わせることができる。
【0039】
このように、本発明の治療用ペプチドを含む1以上の好適な単位投与形態は、経口、局所、非経口(皮下、静脈内、筋肉内及び腹腔内を包含する)、膣、直腸、皮膚、経皮、胸腔内、肺内及び鼻内(呼吸器)経路をはじめとする様々な経路により投与することができる。
【0040】
局所投与に関して、活性剤を標的部分、たとえば爪及び皮膚に直接適用するために当該分野で既知のように処方することができる。局所適用のために主に調節された形態は、たとえば、ラッカー、クリーム、乳液、ゲル、粉末、分散液、又はミクロエマルジョン、多少増粘されたローション、含浸パッド、軟膏又はスティック、エアロゾル処方(たとえばスプレー若しくはフォーム)、石けん、洗剤、ローション若しくは固形石けんの形態を取る。この目的のための他の通常の形態としては、創傷包帯、コーティングされた包帯又は他のポリマーカバリング、軟膏、クリーム、ローションが挙げられる。
【0041】
さらなる好適な実施形態において、本発明のモノマー若しくはマルチマー化合物又は組成物は、獣医用医薬用途において用いられる。したがって、本発明は、前記の少なくとも1つの化合物を含む獣医用組成物にも関する。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態は、前記の少なくとも1つの化合物を含む、殺菌剤及び/又は洗剤として使用される、又は保存料、たとえば医薬、化粧品若しくは食品用保存料の使用のための、前記の少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は、バイオフィルムに埋め込まれた微生物の成長又は増殖を減少させるための、前記の少なくとも1つの化合物を含む組成物に関する。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態において、ペプチド化合物及び組成物は、装置、好ましくは微生物耐性であることが望ましい医療機器の表面を処理するために用いられる。特に、本発明のこの態様によれば、ペプチド化合物及びそれらの組成物を、特に本発明の化合物及び組成物を医療機器上に結合、コーティング及び/又は埋め込むことによって、医療機器の表面上にコーティングする。医療機器の例としては、管類及びカニューレ、ステント、手術器具、カテーテル、ペースメーカー、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、コンタクトレンズ、及び子宮内避妊器具が挙げられる。
【0045】
さらに、本発明を、以下の図面及び実施例によりさらに詳細に説明する。
【0046】
図1は、in vivo試験での有効性のKaplan−Meyer生存率プロットを示し、ここでは、本発明の二量体ペプチド化合物ID24(配列番号24、第4表を参照)をマウス敗血症モデルにおける同じ用法での参考抗生物質化合物コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)と比較した。
【0047】
図2a及び図2bは、2つのヒストグラムプロットを示し、この図では、緑膿菌(P.aeruginosa)ATCC27853の24時間バイオフィルムの、異なる濃度の二量体ペプチド化合物ID24及び参考抗生物質化合物CMSそれぞれへの暴露を記録する。
【0048】
特に、図2aは、緑膿菌ATCC27853の24時間バイオフィルムの、異なる濃度の本発明のID24化合物への暴露を示す。複製数/濃度はn=2である。
【0049】
一方、図2bは、緑膿菌ATCC27853の24時間バイオフィルムの、異なる濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)への暴露を示す。複製数/濃度はn=2である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、in vivo試験での有効性のKaplan−Meyer生存率プロットを示す図である。
【図2a】図2aは、緑膿菌ATCC27853の24時間バイオフィルムの、異なる濃度の本発明のID24化合物への暴露を示す図である。
【図2b】図2bは、緑膿菌ATCC27853の24時間バイオフィルムの、異なる濃度のコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)への暴露を示す図である。
【0051】
実施例
材料
溶媒(すべてHPLC等級)をSigma Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)から入手し、さらに精製せずに使用した。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、トリフルオロ酢酸及びトリイソプロピルシランをAldrich and Fluka(米国ミズーリ州セントルイス)から購入した。Fmoc−アミノ酸、HOBT、HBTU及び樹脂は、Chem−lmpex International(イリノイ州ウッドデール)及びMerck(ドイツ国ダルムシュタット)から提供された。
【0052】
ペプチド合成。全てのペプチドは、MultiSynTech Syro(ドイツ国ウィッテン)上、Fmoc/tBu化学を用いて、固相合成によって合成した。カップリング活性化は、DMF中HOBt/DIPEA/HBTU(1/2/0.9)によって実施し、NMP中40%ピペリジンを用いてアミン上のFmoc保護を除去した。側鎖保護基は、Glu及びAspについてはtert−ブチルエステル、His、Gln及びAsnについてはトリチル、Argについては2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、Ser、Thr及びTyrについてはtert−ブチルエーテル、Lys、Pro及びTrpについてはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)であった。Fmoc−Lys(Fmoc)−OHは、二量体及び四量体ペプチドを合成するために使用されたアミノ酸であった。Fmoc−5−アミノ吉草酸(5−Ava)及びFmoc−8−アミノオクタン酸(8−Aoa)を用いて、直鎖ペプチド及び二量体ペプチドの両方のN末端及び/又はC末端で脂質化を実施した。四量体、二量体及び直鎖ペプチドを、リンクアミド4−ベンズヒドリルアミン樹脂(MBHA)上で製造し、遊離アミノ基における最終ローディングを分光光度計によって測定することによって評価し、同時に酸ペプチドを2−クロロトリチルクロリド樹脂上で製造した。全ペプチドを樹脂から開裂させ、トリフルオロ酢酸、水及びトリイソプロピルシラン(TIPS、95:2.5:2.5)での処理によって脱保護した。ジエチルエーテル中で沈降させることによって得られた粗ペプチドを、C12Phenomenexカラム上Waters HPLC−UV(マサチューセッツ州ミルフォード)によって精製し、Bruker MALDI−TOF分光分析(マサチューセッツ州ビレリカ)によって特性化した。
【0053】
MICの決定。MICは、MHB中、微量液体希釈法により、CLSI法(従来はNCCLS、参考文献11)にしたがって、1〜5×105CFU/mLの最終細菌接種物を用いることにより、決定した。分析を、丸底ウェルを有する滅菌96穴マイクロタイタープレート(Corning Costar)中で実施した。プレートを37℃でインキュベーションし、20〜24時間後に読み取った。MICを、視認可能な細菌成長の完全な抑制を引き起こす最低薬剤濃度として定義した。全化合物を(5%v/vDMSO)中に溶解させた。
【0054】
実施例I
2−X1ミニライブラリ合成
ペプチド合成を前述のように2−クロロトリチルクロリド樹脂上で実施した。一般的配列H−X1−KKIRVRLSA−OH(X1=F、I、L、V、W、Y)を有する6つの直鎖酸ペプチドを合成し、等モル量で組み合わせた。得られた粗ペプチド混合物をC12HPLCカラム上で精製して、開裂によって生じる塩及びスカベンジャーを除去し、HPLCシステム(Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)と連結したLC−MS(ESI/イオントラップ)により、成分を勾配モード(B 20分で5→95%;A 水中0.1%TFA、B アセトニトリル中0.1%TFA)を1.0mL/分の流速で溶出して分析した。MS(LC−MS ESI/イオントラップ):(ID2)C561001812(X1=F)の計算値は(M)1216であり、実測値は1217(M+H)であり;(ID3)C531021812(X1=I)の計算値は(M)1182であり、実測値は1183(M+H)であり;(ID4)C531021812(X1=L)の計算値は(M)1182であり、実測値は1183(M+H)であり;(ID5)C521001812(X1=V)の計算値は(M)1168であり、実測値は1169(M+H)であり;(ID6)C581011912(X1=W)の計算値は(M)1255であり、実測値は1256(M+H)であり;(ID7)C561001813(X1=Y)の計算値は(M)1232であり、実測値は1233(M+H)である。
【0055】
実施例II
3−X1ミニライブラリ合成
前記のようにしてペプチド合成を実施した。一般的配列H−Q−X1−KIRVRLSA−OH(X1=F、I、L、V、W、Y)を有する6つの直鎖酸ペプチドを合成し、等モル量で組み合わせた。粗ペプチド混合物を実施例Iで記載するようにして精製した。MS(LC−MS ESI/イオントラップ):(ID8)C55961813(X1=F)の計算値は(M)1216であり、実測値は1217(M+H)であり;(ID9)C531011813(X1=I)の計算値は(M)1197であり、実測値は1198(M+H)であり;(ID10)C52981813(X1=L)の計算値は(M)1182であり、実測値は1183(M+H)であり;(ID11)C51961813(X1=V)の計算値は(M)1168であり、実測値は1169(M+H)であり;(ID12)C57971913(X1=W)の計算値は(M)1255であり、実測値は1256(M+H)であり;(ID13)C55961814(X1=Y)の計算値は(M)1232であり、実測値は1233(M+H)である。
【0056】
実施例III
直鎖酸ペプチド合成:ID1、ID6及びID14
酸ペプチド合成を前記のとおり実施した。合成後、粗ペプチドをHPLC−UVによって勾配B(20分で5→95%)により精製し、MALDI−TOFによって特性化した。質量値(M+H)は次のとおりであった:(ID1)計算値は(M)1197であり、実測値は1198(M+H)であり;(ID6)計算値は(M)1255であり、実測値は1256(M+H)であり;(ID14)計算値は(M)1383であり、実測値は1384(M+H)である。
【0057】
実施例IV
N−アシル化直鎖アミドペプチド合成:ID15、ID16及びID17
アミドペプチド合成は、ペプチド合成の項で前述したようにリンクアミド樹脂上で実施した。合成後、実施例Iで記載されているように、粗ペプチドをHPLC−UVによって精製し、MALDI−TOFによって特性化した。質量値(M+H)は以下のとおりであった:(ID15)計算値は(M)1395であり、実測値は1397(M+H)であり;(ID16)計算値は(M)1395であり、実測値は1397(M+H)であり;(ID17)計算値は(M)1337)であり、実測値は1339(M+H)である。
【0058】
実施例V
二量体ペプチド合成:ID18、ID19及びID20
前記のようにしてペプチド合成を実施した。合成後、実施例Iで記載されているように、粗ペプチドをHPLC−UVによって精製し、MALDI−TOFによって特性化した。質量値(M+H)は以下のとおりであった:(ID18)計算値は(M)2694であり、実測値は2696(M+H)であり;(ID19)計算値は(M)2807)であり、実測値は2808(M+H)であり;(ID20)計算値は(M)2691であり、実測値は2692(M+H)である。
【0059】
実施例VI
二量体脂質化ペプチド合成:ID21、ID22、ID23及びID24
前記のようにしてペプチド合成を実施した。合成後、実施例Iで記載されているように、粗ペプチドをHPLC−UVによって精製し、MALDI−TOFによって特性化した。質量値(M+H)は以下のとおりであった:(ID21)計算値は(M)2891であり、実測値は2892(M+H)であり;(ID22)計算値は(M)2891であり、実測値は2893(M+H)であり;(ID23)計算値は(M)2859であり、実測値は2862(M+H)であり;(ID24)計算値は(M)2763であり、実測値は2764(M+H)である。
【0060】
実施例VII
in vitro細胞毒性分析
HeLa(ヒト上皮癌細胞系)、HepG2(ヒト肝細胞肝癌由来細胞系)及びHaCat(ヒトケラチノサイト)をコンフルエンスまで成長させ、次いで20,000、12,500及び30,000細胞/ウェルで播種した(各細胞系について最適の細胞数をあらかじめ決めた)。24時間後、FBSを含まないDMEM中ID24を800〜100ug/mlの範囲の濃度で添加した。正の対照として、100%の生存率を表す無血清培地で洗浄した100uLの細胞及び、負の対照として、100uLの無血清培地も添加した。
【0061】
5%v/vCO2雰囲気中37℃で24時間インキュベーションした後、10ulのMTT試薬[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラソジウムブロミド、最終濃度0.5mg/mL)を各ウェルに添加し、2〜4時間インキュベーションした。MTTの代謝還元によって形成されたホルマザンの可溶化は、ストップミックス溶液(10%w/vドデシル硫酸ナトリウム、45%v/vジメチルホルムアミド、氷酢酸でpH4.5に調節)を用いて得られた。プレートをマイクロプレート分光光度計(Biorad, Benchmark plus)で読み取った。ID24に暴露された、又は培地単独に暴露された培養物を、分光光度計によって二波長(565〜650nm)で測定した。実験は3連で実施した。
【0062】
実施例VIII
in vitro溶血
2つの異なる分析によって溶血を測定した。このうち1つは、新鮮なヒト赤血球のみを用いることによって、Shinらの方法を適応させた(参考文献12)。もう1つでは、ID24溶液を全血中でインキュベーションした。
【0063】
第1の方法
溶血分析をShinらの方法から適応させた(参考文献12)。新鮮なヒト赤血球を使用して、ペプチドの溶血活性を試験した。4%w/vクエン酸ナトリウム溶液を含む滅菌管中に全血を集め(1:10のクエン酸ナトリウム:全血の比)、氷中に入れ、4℃にて5分間1000gで遠心分離した。
【0064】
赤血球ペレット上の白血球を含む上清を慎重に除去し、廃棄した。無傷赤血球を2容積(1mL)のあらかじめ冷却した無ピロゲン塩水(PBS(1×))で3回洗浄した。赤血球懸濁液を調節して、0.8%(1mL中8ul又は20mL中160uL)のPBS(1×)にした。
【0065】
溶血分析のために、ID24の連続2倍希釈液をPBS(1×)中で製造し、100uLアリコートを、滅菌96穴マイクロタイタープレート(Nunc)中の等体積の0.8%赤血球懸濁液(PBS(1×)中)に3連で添加した。プレートを37℃で2時間インキュベーションした。
【0066】
続いて、無傷赤血球を1000gで5分間4℃にて遠心分離することによりペレット化した。各ウェルからの上清100マイクロリットルを適宜新しい96穴マイクロタイタープレートに移し、490nmの参考波長に対して414nmでの吸光度を読み取ることによって、上清中に放出されたヘモグロビンの量を測定した。PBS(1×)中1%TritonX100中に溶解させた0.4%赤血球100uLを含む正の対照(200uLのPBS(1×)中赤血球懸濁液0.8%及び200uLのPBS(1×)と2%(4uL)TritonX100)を100%溶解とみなした。負の対照は、最小の溶解をもたらすPBS(1×)単独中の赤血球であった。これを0%の溶血と見なした。
【0067】
第2の方法
全血を、4%w/vのクエン酸ナトリウム溶液を含む滅菌管中に集め(1:10のクエン酸ナトリウム:全血比で)、氷中で保存した。ID24の連続希釈(1mg/mLから62.5ug/mL)を1:1又は1:10の比で全血に添加した。溶血可能性をサポニンに対して表し、同じ割合で添加し、100%溶血と見なした。負の対照は、最小溶解をもたらす生理溶液中の全血であった。各懸濁液の100uLアリコートを滅菌96穴マイクロタイタープレート(Nunc)中に3連で添加した。プレートを37℃で30分間インキュベーションした。
【0068】
続いて、1000gで10分間4℃にて遠心分離することによって、懸濁液をペレット化した。100マイクロリットルの各ウェルからの上清を適宜新しい96穴マイクロタイタープレートに移し、560nmでの吸光度を読み取ることによって、上清中に放出されたヘモグロビンの量を測定した。
【0069】
実施例IX
マウス敗血症モデルにおけるin vivo有効性
ID24を、7.5×102CFUの大腸菌(E.coli)EC47(最終体積0.5mL)で腹腔内感染させたマウスに静脈内投与した。特に、ID24を感染後15分及び6時間に3mg/kgの用量で投与した。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)を感染後15分に単回注射として3mg/kgの用量で投与した。
【0070】
動物
実験当日に体重25グラムのメスICRマウス(Harlan Italy、イタリア国サン・ピエトロ・アル・ナティゾーネ)を使用した。実験開始前にマウスを恒温恒湿室内で少なくとも5日間飼育し、標準的実験室用飼料及び水を自由に与えた。
【0071】
試験化合物及び参考化合物
試験化合物及び参考化合物であるID24及びコリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)をそれぞれ0.1Mのリン酸塩緩衝塩溶液pH6.9中に必要とされる薬剤濃度で溶解させた。溶液を投与直前に作製し、計画された処置の最後まで4℃で保存した。大腸菌EC47株に関するID24MIC値は2ug/mLである[MICは、Muller Hinton培地中微量液体希釈法(NCCLSガイドライン)により、約105CFU/mLの細菌接種物を用いて測定した]。
【0072】
感染懸濁液の製造
大腸菌EC47株の凍結バイアルを使用して、50mLのDifcoブレインハートインフュージョンブロスに接種し、培養物をロータリーシェーカー水浴(New Brunswick Scientific、米国ニュージャージー州)上で20時間35℃にてインキュベーションし、次いで5%のDifco細菌ムチン中で1:1,000,000に希釈した。実際の接種物のサイズは、懸濁液の10倍溶液の2つの0.025mLアリコートをDifco Todd Hewitt寒天プレート上に播種することによって決定した。
【0073】
動物を7.5×102CFUの大腸菌EC47(最終体積0.5mL)で腹腔内感染させた。この接種物は、未処置動物の100%を感染の72時間以内に死亡させるのに十分であった。
【0074】
抗生物質処置
ID24を3mg/kgの用量で、感染後15分及び6時間に投与した。総用量は6mg/kgである。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)を1回量で、すなわち単回注射において3mg/kgで感染後15分に投与した。
【0075】
処置は静脈内経路により行い(0.25mL/マウス)、8匹の動物を各用量の各抗生物質で処置した。細菌接種後7日間、毎日1回死亡率を記録した。
【0076】
実施例X
バイオフィルム根絶の実験手順
約1×107CFU/mLの緑膿菌ATCC27853の対数期接種物をMBEC TMハイスループット分析用Innovotechプレートの試薬容器(Innovotech Inc.、カナダ国エドモントン)中に注いだ。22mLの接種物をトラフに添加し、ペグ付蓋を被せた。装置を37℃の加湿ボックス中、80rpmのシェーキングインキュベータ上に置いた。
【0077】
24時間のインキュベーション後、ペグを、200uLの生理溶液を含むプレート中にすすいで、軽く付着した浮遊細胞をバイオフィルムから除去し、次いでTSB中で連続希釈した200uLの異なる抗生物質溶液を含むマイクロプレート中に入れた。
【0078】
シェーキングインキュベータ上37℃で4時間接触及びインキュベーションした後、ペグ付蓋をトラフから取り出し、リンスプレート中に2分間浸漬した。
【0079】
次いで、試料ペグを含む塩溶液を含む新しいマイクロタイターを、超音波洗浄器のトレイ中に入れ、そして30分間音波処理して、96ペグの表面からバイオフィルムを分離させた。
【0080】
各ウェルの10倍連続希釈の二重アリコート(0.01又は0.005mL)をMHAプレート上に塗布し、24時間のインキュベーション後、生存細胞計数のためコロニーを読み取った。
【0081】
実施例XI
in vivo急性毒性
動物
9〜10週令メスCD1マウス(Charles River Lab. Italia s.r.l. Via Indipendenza, 11−23885 Calco(LC),Italy)(実験当日の平均体重28.23g)を使用した。マウスを実験開始前に恒温恒湿室内で3日間飼育し、標準的実験室用飼料及び水を自由に与えた。
【0082】
試験化合物
ID24を、用量濃度20及び40mg/kgでヒトに投与するため0.9%w/vのNaCl滅菌溶液(Sigma−Aldrich)中に溶解し、音波処理した。化合物製造は、投与直前に実施した。
【0083】
抗生物質の投与
2種の用量(20mg/kg及び40mg/kg)のID24を単回腹腔内注射とともにマウスに投与した。5匹の動物を各用量の抗生物質で処置した。注射後7日間、有害症状を毎日モニタリングした。
【0084】
結果の評価
生存及び臨床/行動的兆候を14日間毎日記録した。
【0085】
観察されるパラメータ
Irwin試験によって得られた主な行動的パラメータ及び臨床的兆候(参考文献13)。
【0086】
単回量注射後に全群を観察することによって、以下の症状及び行動の変化を強調することができる:
20mg/kg:行動の変化なし;
40mg/kg:行動の変化なし。
【0087】
ID24のIP投与後、有害症状、行動変化及び死亡は記録されず、40mg/kgの最高用量でも記録されなかった。
【0088】
結果
ミニライブラリ構築及びMICの測定
WO2006/006195に記載されている直鎖デカペプチド配列番号1を、グラム陰性菌に対する活性の点で最適化した。このペプチドは、リシンコア上に四量体構造として存在する場合に活性であった。モノマー形態で、ペプチドはごくわずかな活性しか有していなかった。最適化法は、第1表に概略が記載されているような配列スキャニングによって得られる9のペプチドミニライブラリの合成から構成されていた。
【0089】
第1表 9のデカペプチド位置スキャニングライブラリ
【表1】

*:Xnは:n=1ならば、O=F、I、L、V、W、Y;n=2ならば、O=K、R、H、N、P、Q;n=3ならば、O=G、A、S、T、D、Eを含む6のアミノ酸の群に対応する。
【0090】
全ての天然のアミノ酸は、その化学物理的特性に基づいて3群に分割される。合計27のミニライブラリ(それぞれは等モル量で6つのペプチドを含む)を得、参考株としての大腸菌ATCC25922に対して分析した。MICで表した活性値を第2表に記載する。MIC(最小阻止濃度)は、視認可能な成長を100%阻害する最低濃度として定義される。
【0091】
第2表 9のデカペプチド位置スキャニングミニライブラリ:活性又は大腸菌ATCC25922に対する結果として得られる27のペプチドミニライブラリ
【表2】

a:不活性な本来の10mer配列。
【0092】
62.5ug/mLのMICを有する4つのミニライブラリは、配列番号1よりも活性が高いと見なされた。これらのペプチドを個々に合成し、各配列の活性を分析した。最も活性の高いミニライブラリ(2−X1、2−X2、3−X1及び8−X1)を開き、抗菌活性に対する各配列位置での各残基の寄与を評価した。さらに、Lys−β−Ala又はLys−8−Aoa(8−アミノオクタン酸)上でのN−及びC−アシル化ならびに二量化などの修飾も、ミニライブラリから単離されたさらに活性の高い配列に関して実施した。第3表では、グラム陰性株大腸菌ATCC25922、緑膿菌ATCC27853及び肺炎桿菌ATCC10031ならびにグラム陽性株黄色ブドウ球菌ATCC25923に対して試験した、ミニライブラリ2−X1 e 3−X1に属するペプチドを記載する。2−X2及び8−X1という名称の他の2つの最も活性の高いミニライブラリも開いたが、個々に試験した各ペプチドは>128ug/mLの活性を有していた(データは割愛)。
【0093】
第3表 ミニライブラリペプチドを個々に合成した:グラム陰性及びグラム陽性菌に対するMIC(ug/mL)を記載する。
【0094】
【表3】

【0095】
ピログルタミン酸又はジペプチドGly−Glnの導入は、ペプチドの活性に影響を及ぼすことなく位置A1で実施することができる(データは割愛)。これらの修飾は、ピログルタメート形成でN末端グルタミンが環化するのを防止する。
【0096】
2−X1−W及び3−X1−Wという名称の2つのミニライブラリから単離された2つの選択されたペプチド(配列番号6及び14)を二量体形態(配列番号18及び19)で合成し、それらの直鎖カウンターパートについての多価性に関連する増大した活性を証明した。ペプチド配列番号14は、Glnの環化を回避するためにN末端にGlyが導入されている選択されたペプチド配列番号12の誘導体である。さらに、直鎖及び二量体ペプチドの両方のN末端(ID16、16、17、21、22及び23)並びにC末端(配列番号24)での5−アミノ吉草酸(5−Ava)及び8−アミノオクタン酸(8−Aoa)での脂質化などの修飾を実施し、結果として得られた生成物を試験した。
【0097】
第4表において、直鎖及び二量体ペプチドならびにそれらの脂肪誘導体のMIC値を記載する。
【0098】
第4表 直鎖及び二量体ペプチドならびにそれらの脂肪誘導体のMIC値。
【0099】
【表4】

ND:測定せず。
【0100】
2つの化合物ID18及びID24は活性が最も高かった。これらの化合物をグラム陰性臨床分離株の大パネルに対して試験し、相対的MIC値を第5表に記載した(パート1〜3)。
【0101】
第5表 ID24及びID18対いくつかのグラム陰性菌臨床分離株のin vitro活性(パート1)
【表5】

【0102】
第5表 ID24及びID18対いくつかのグラム陰性菌臨床分離株のin vitro活性(パート2)
【表6】

【0103】
第5表 ID24及びID18対いくつかのグラム陰性菌臨床分離株のin vitro活性(パート3)
【表7】

【0104】
細胞毒性及び溶血in vitro効果
in vitro細胞毒性
in vitroID24細胞毒性を3つの細胞系に関して、MTT色素還元分析を用いて試験した。ID24についてのCC50値を第6表にまとめる。
【0105】
第6表 ID24のin vitro細胞毒性
【表8】

【0106】
in vitro溶血
溶血を実施例VIIIで記載されているように、2つの異なる分析によって測定した。第7表〜第9表に、全ての溶血率(%)値(UV−VIS分光光度法によって測定)を記載する。第7表では、特に、異なる濃度で、赤血球懸濁液と1:1の割合のID24の溶血率(%)を記載する。溶血率(%)は、414nmでの吸光度を読み取ることにより、上清中に放出されるヘモグロビンの量を測定するUV−VIS分光光度法によって測定した(参考波長490nm)。これらの結果は、Shinのプロトコル(参考文献12)に準拠した実施例VIIIの第1の方法を参照する。
【0107】
第7表 赤血球懸濁液中様々な濃度でのID24の溶血率(%)
【表9】

*:ブランク(生理溶液)を差し引いた吸光度値。3回の測定を各処置について実施した。
【0108】
第8表には、全血と1:1比の異なる量のID24の溶血率(%)を記載し、一方、第9表には、全血と1:10比の異なる量のID24の溶血率(%)を記載する。上清中に放出されたヘモグロビンの量は、560nmでの吸光度を読み取ることによって測定した。これらの結果は、実施例VIIIの第2の方法を参照する。
【0109】
第8表 全血と1:1比のID24の溶血率(%)
【表10】

*:ブランク(生理溶液)を差し引いた吸光度値。3回の測定を各処置に関して実施した。
【0110】
第9表 全血と1:10比のID24の溶血率(%)。
【0111】
【表11】

*:ブランク(生理溶液)を差し引いた吸光度値。3回の測定を各処置に関して実施した。
【0112】
マウス敗血症モデルにおけるin vivo有効性
ID24を、7.5×102CFUの大腸菌EC47で腹腔内感染させたマウスに静脈内投与した。特に、ID24を感染後15分及び6時間に1回量で投与した。結果を図1に示し、この図は、ID24を感染後15分及び6時間に3mg/kgの用量で2回投与し、一方、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム(CMS)を感染後15分に3mg/kgの用量で1回投与した場合の、カプラン・マイヤー生存曲線を示す。対照群に含まれるマウスは第3日までに全て死亡した。各群は8匹のマウスで構成されていた。
【0113】
ID24は、大腸菌の臨床分離株(EC47)によって引き起こされる感染症からマウスを保護することが証明された。
【0114】
抗バイオフィルム活性
異なる濃度のID24(MIC値の1/4、1/2、1、2及び4倍)に暴露すると、細菌バイオフィルムが実質的に減少し、実施した2つの実験において、88.7%〜99.9%の範囲の阻害率(%)(0.95から3.05log10の減少)が、未処理の対照と比較して試験した全ての濃度で観察された。抑制濃度以下で、0.9から2.35log10の減少が、MIC値のそれぞれ1/4及び1/4倍で観察された。
【0115】
他の方法では、コリスチンはID24よりも活性が低くなり、試験した全濃度について、バイオフィルム減少は88.3%〜97.1%(0.88から1.55log10CFU/mLの減少)であった。結果を図2a及び2bに示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ia):
Z−[K]n−K−I−R−V−R(配列番号25)
(式中、Kは、リシン側鎖、特にL−リシンを有するアミノ酸残基、又は正に荷電した側鎖を有する別のアミノ酸残基であり、
Iは、イソロイシン側鎖、特にL−イソロイシンを有するアミノ酸残基であり、
Rは、アルギニン又はN−アルキル置換グアニジン側鎖、特にL−アルギニンを有するアミノ酸残基であり、
Vは、バリン側鎖、特にL−バリンを有するアミノ酸残基であり、
前記アミノ酸残基K、I、R及びVのうち1つは、アラニン側鎖、特にL−アラニンを有するアミノ酸残基により置換されていてもよく、
Zは、少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、
(i)芳香族アミノ酸残基又は少なくとも1つの芳香族アミノ酸残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラペプチジル基(ここで、前記芳香族アミノ酸残基は、トリプトファン、N−メチルトリプトファン、フェニルアラニン、β−フェニルアラニン、ナフチルアラニン、β−ナフチルアラニン、β−ジフェニルアラニン、β−(4,4’−ビフェニル)アラニン、β−アントラセン−9−イルアラニン及びβ−インドール−3−イルアラニン、又はその置換誘導体から特に選択される)、
(ii)脂肪族アミノ酸残基又は少なくとも1つの脂肪族アミノ酸残基を含むジ−、トリ−、テトラペプチジル基(ここで、前記脂肪族残基は、特に、脂肪族、好ましくは少なくとも3個のC原子を有する分岐脂肪族側鎖を含むα−アミノ酸残基から選択される)
(iii)ピログルタミン酸(pyrE)残基又はN末端ピログルタミン酸残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラ−ペプチジル基、
(iv)残基Q*又はN末端Q*残基を含むジ−、トリ−若しくはテトラペプチジル基(ここで、Q*は、グルタミン側鎖を有する保護アミノ酸残基、特に保護L−グルタミン残基である)、
(v)(i)〜(iv)のいずれか1つの組み合わせ、たとえば(i)及び(iii)、(i)及び(iv)、(ii)又は(iii)及び(ii)又は(ii)及び(iv)
から選択されるペプチド化合物のN末端基であり、
nは0又は1である)
により表されるアミノ酸配列を含む35アミノ酸残基までの長さを有するペプチド化合物であって、前記ペプチド化合物が、L−及び/又はD−アミノ酸残基構成単位を含み得る、ペプチド化合物。
【請求項2】
一般式(Ib):
Z−[K]n−K−I−R−V−R−L−S−A(配列番号26)
(式中、K、I、R、V、Z及びnは前記定義のとおりであり、
Sはセリン側鎖、特にL−セリンを有するアミノ酸残基であり、
Aは、アラニン側鎖、特にL−アラニンを有するアミノ酸残基であり、
Lは、ロイシン側鎖、特にL−ロイシンを有するアミノ酸残基であり、前記アミノ酸残基K、I、R、L、V及びSのうち1つが、アラニン側鎖を有するアミノ酸残基で置換されていてもよく、Z及びnは請求項1で定義したとおりである)により表されるアミノ酸配列を含む35アミノ酸残基までの長さを有し、L−及び/又はD−アミノ酸残基構成単位を含み得る、請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項3】
前記N末端基Zが、Ar、Ar−Q、G−Q又はアセチル−QなどのQ*、G−Q−Ar又はアセチル−Q−ArなどのQ*−Ar、pyrE及びpyrE−Ar(ここで、Arは芳香族アミノ酸残基である)から選択される、請求項1又は2に記載のペプチド化合物。
【請求項4】
WKKIRVRLSA(配列番号6)
pyrEWKIRVRLSA(配列番号27)
GQWKIRVRLSA(配列番号14)
アセチル−QWKIRVRLSA(配列番号12)
Aoa−QWIRVRLSA(配列番号16)
(GQWKIRVRLSA)2K−β−Ala(配列番号19)
(ここで、pryEはピログルタミン酸残基であり、Aoaは8−アミノオクタン酸残基であり、β−Alaはβ−アラニン残基である)から選択されるアミノ酸配列を含み、前記ペプチドが場合によりそれらのC末端でアミド化されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド化合物。
【請求項5】
15アミノ酸残基までの長さを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド化合物。
【請求項6】
直鎖又は環状形態を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物を複数含む、マルチマー化合物。
【請求項8】
ポリ(N−アルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリメラミン、デキストラン、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール及び/又はポリビニルピロリドンから特に選択されるマトリックス上でマルチマー化される、請求項7に記載のマルチマー化合物。
【請求項9】
分岐した、特にデンドリマー構造を有する、請求項7に記載のマルチマー化合物。
【請求項10】
(i)R−(Y1−R)m−Y1−(R)m’(IIa)
(式中、Rは、請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、
1は、共有結合又は二官能性リンカー、たとえばプロピレングリコールなどのジアルコール、コハク酸などのジカルボン酸、エチレンジアミンなどのジアミン、アミノ酸、ヒドロキシカルボン酸、若しくはジイソシアネートであり、mは0又は正の整数であり、m’は0又は1である)
(ii)[[(R)n11’n2]Y2(IIb)
(式中、Rは、請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、Y1’はそれぞれの場合独立して、少なくとも3の官能価を有するリンカー、たとえばリシン、オルニチン、ノルリシン、アミノアラニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
2は、少なくとも2の官能価を有するリンカーであり、n1及びn2はそれぞれの場合独立して、少なくとも2、好ましくは2、3又は4、さらに好ましくは2の整数である)、
(iii){[[(R)n11’n2]Y2’n33(IIc)
(式中、Rは、請求項1〜6のいずれか1項で定義されたペプチド化合物であり、
1及びY2’はそれぞれの場合少なくとも3の官能価を有する独立したリンカー、たとえばリシン、オルニチン、ノルリシン、アミノアラニン、アスパラギン酸又はグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
3は、少なくとも2の官能価を有するリンカーであり、
1、n2及びn3は、それぞれの場合独立して、少なくとも2、好ましくは2、3又は4、さらに好ましくは2の整数である)
から選択される、請求項7又は9に記載のマルチマー化合物。
【請求項11】
特にこれに結合した脂質、アミド、エステル、アシル及び/又はアルキル部分から選択される少なくとも1つの修飾を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
3〜25個のC原子を有する直鎖又は環状飽和一不飽和若しくは多不飽和炭化水素基、たとえば5−アミノ吉草酸、8−アミノオクタン酸又は2−アミノデカン酸を含む少なくとも1つのアミノカルボン酸であり、好ましくは、前記化合物のN末端及び/又はC末端と結合した少なくとも1つの脂質部分を含む、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
原核生物、たとえば真正細菌又は古細菌、及び真核生物、たとえば真菌、藻類又は寄生生物から選択される病原生物に対する活性を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
抗菌活性を有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項で定義した少なくとも1つの化合物を薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又はアジュバントとともに含む、医療用組成物。
【請求項16】
固体、液体又はゲル及びこれらの組み合わせから選択される、たとえば洗眼液、洗口液、軟膏、エアゾル又は局所製品としての医薬投与形態の形状の請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項で定義した少なくとも1つの化合物を含む殺菌剤及び/又は洗剤として用いられる組成物。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1項で定義した少なくとも1つの化合物を含む保存料として用いられる組成物。
【請求項19】
医薬、化粧品又は食品の保存料としての請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
バイオフィルムに埋め込まれた微生物の成長又は増殖を減少させるための請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1〜14のいずれか1項で定義した少なくとも1つの化合物を含む獣医学用組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2011−521984(P2011−521984A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512013(P2011−512013)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003931
【国際公開番号】WO2009/146886
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510318480)スパイダー バイオテック ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】Spider Biotech S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Bioindustry Park del Canavese, Via Ribes 5, I−10010 Colleretto Giacosa, Italy
【Fターム(参考)】