説明

新規有機化合物、それを有する有機発光素子及び表示装置

【課題】量子収率が高く、色純度が高い新規な有機化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式で示される化合物及び該化合物を有する有機発光素子。


(式中、R1乃至R20は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のチオール基、シリル基及びシアノ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規有機化合物、それを有する有機発光素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機EL素子とも呼ばれる)は、一対の電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する素子である。
【0003】
これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
【0004】
有機発光素子の最近の進歩は著しく、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
【0005】
ところで、現在までに有機発光素子用の有機化合物の創出が盛んに行われている。高性能の有機発光素子を提供するにあたり、発光特性やキャリア輸送性が優れた化合物の創出が重要であるからである。
【0006】
これまでに創出された化合物として、例えば、特許文献1に合成中間体で記載されている、または特許文献2に有機トランジスタ材料とて記載されている下記化合物1−Aがある。
【0007】
【化1】


1−A
【0008】
この化合物1−Aについての発光特性のデータは記されていないが、発光色は、青緑色であり、また、その発光強度は弱く、ほとんど発光しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−110354号 公報
【特許文献2】特開2009−182039号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の化合物が有する基本骨格では、上記のように黄色発光であるうえ、高い量子収率の発光は得られない。
【0011】
本発明は、量子収率が高く、基本骨格のみで緑領域の発光をする有機化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
よって、本発明は、下記一般式(1)で示されることを特徴とする有機化合物を提供する。
【0013】
【化2】


(1)
【0014】
(式(1)において、R乃至R20は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のチオール基、シリル基及びシアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基本骨格自体で、赤領域の発光が可能であり、量子収率が高い有機化合物を提供できる。またそれを有する発光効率が高い有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る発光層積層型の有機発光素子の一例の模式図である。
【図2】本実施形態に係る有機発光素子と、この有機発光素子に接続されているスイッチング素子の一例であるTFT素子と、を有する表示装置の断面模式図である。
【図3】本実施形態に係る有機化合物と比較のための有機化合物とのそれぞれの発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、下記一般式(1)で示されることを特徴とする有機化合物である。
【0018】
【化3】


(1)
【0019】
式(1)において、R乃至R20は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のチオール基、シリル基及びシアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0020】
式(1)中のR乃至R20は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基からそれぞれ独立に選ばれることが好ましい。
【0021】
乃至R20で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
乃至R20で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
乃至R20で表されるアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2−エチル−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
乃至R20で表されるアミノ基として、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N−メチル−N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、アニリノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジナフチルアミノ基、N,N−ジフルオレニルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジアニソリルアミノ基、N−メシチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジメシチルアミノ基、N−フェニル−N−(4−ターシャリブチルフェニル)アミノ基、N−フェニル−N−(4−トリフルオロメチルフェニル)アミノ基、N−ピペリジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
乃至R20で表されるアリール基として、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
乃至R20で表される複素環基として、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
乃至R20で表されるアリールオキシ基として、フェノキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
乃至R20で表されるシリル基として、トリフェニルシリル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
上記アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基、複素環基、アリールオキシ基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本実施形態において、式(1)中のR乃至R20は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基または置換あるいは無置換のアリール基からそれぞれ独立に選ばれるのが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る有機化合物は、基本骨格に置換基を設けた場合、濃度消光を抑制できる。この化合物は、昇華時には昇華性の高く、塗布で使用する際は溶媒溶解性の高い化合物である。
【0032】
また、この濃度消光の抑制の観点からすれば、式(1)中のR乃至R20の少なくともいずれかがアルキル基によって置換されていることが好ましい。
【0033】
ここで、本実施形態において基本骨格とは、共役構造を有する縮環構造を指す。すなわち、本実施形態に係る有機化合物の基本骨格とは、一般式(1)中のR乃至R20が全て水素原子である化合物で表される構造である。
【0034】
次に、本実施形態に係る有機化合物の基本骨格の性質を説明する。
【0035】
本発明者らは、式(1)に示される有機化合物を発明するにあたり、基本骨格それ自体に注目した。具体的には、基本骨格のみの分子が有する発光波長が所望の発光波長領域に収まるものを提供することを試みた。
【0036】
本実施形態において、所望の発光波長領域は緑色領域のことであり、具体的にはトルエン希薄溶液中での最大発光波長が490nm以上530nm以下である。
【0037】
次に、本発明の有機化合物に類似する構造を有する化合物を比較対照として挙げながら、本実施形態に係る有機化合物の基本骨格の性質を説明する。具体的には、比較対象化合物として下記式(2)、(3)でそれぞれ示される化合物を挙げる。
【0038】
【化4】


(2)
【0039】
【化5】


(3)
【0040】
ここで、本実施形態に係る有機化合物の1つは、式(1)で示される基本骨格を有しR乃至R、R乃至R、R乃至R14、R16乃至R18、R20が水素原子、R、R、R15、R19がフェニル基である、下記式(4)に示される化合物である。
【0041】
【化6】


(4)
【0042】
ここで、発明者らは、式(4)で示される有機化合物と、式(2)、(3)の有機化合物とのトルエン希薄溶液中での発光波長および量子収率の比較をそれぞれ行った。結果を下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の化合物2の発光色は緑色であるが、その量子収率は0.1以下と化合物4の10分の1程度の低い値を有する。これは、ホールと電子とが再結合する際に生じるエネルギーを効率よく光に変換することができないことを意味する。
【0045】
表1の化合物3の発光色は黄色であり緑色ではない。また、その量子収率が0.1以下と化合物4の10分の1程度の低い値を有する。
【0046】
表1の本実施形態に係る有機化合物である化合物4は、上記の他の材料と比較して量子収率が高く、ディスプレイの規格の緑色に適した発光色を有する。
【0047】
図3に本実施形態に係る有機化合物である化合物4と、比較化合物である化合物3のスペクトルを示す。
【0048】
符号26で示される化合物4のスペクトルの最大発光波長の波形の半値幅は30nm以下である。一方、符号25で示される化合物3のスペクトルの最大発光波長の波形の半値幅が50nm以上である。
【0049】
この半値幅の差は発光色の色純度に関わり、半値幅が狭い方が色純度が高くなり、半値幅が広い方は色純度が低い。
【0050】
ここで、本実施形態において半値幅とは、発光スペクトルの最大発光波長を有するピークの発光強度を1とした際に、発光強度が0.5となる波長の数値の差である。
この点で本実施形態に係る有機化合物は求める色に対して純度の高い発光色を有し、優れた特性を示す。
【0051】
また、本実施形態に係る有機化合物は量子収率が0.7以上と高い材料なので、有機発光素子の緑の発光材料として優れた化合物である。量子収率が高い化合物を有機発光素子に用いた場合、その素子の消費電力を低減できる。
【0052】
本実施形態に係る有機化合物が有する基本骨格は、平面性が高いので、分子間スタックによるエキシマー生成する場合がある。
【0053】
そのため、エキシマー生成を抑制するために、置換基を設けることが好ましい。その抑制効果が高い置換位置は、基本骨格が有する平面に対して直交しやすいR、R、R、R15、R16、R19の少なくともいずれかひとつの位置である。
【0054】
すなわち、この位置にアルキル基またはアリール基等の置換基を設けることが好ましい。
【0055】
また、分子間距離を広げるのに効果的な位置であるR、R、R、R10、R13、R14、R17、R18の位置に置換基を有することが好ましい。
【0056】
また、本実施形態に係る有機化合物のR、R、R10、R13の位置にアルキル基を設けた場合、分子間のスタッキングが抑制されるので好ましい。
【0057】
本実施形態に係る有機化合物のR11,R12の位置に、アリール基、複素環基、置換あるいは無置換のアミノ基を設けた場合、分子の反応性を抑制することができるため、分子が安定になるので好ましい。
【0058】
本実施形態に係る有機化合物は、基本骨格内に3つの5員環構造を有するため、LUMOエネルギーレベルが低い。これは化合物の酸化電位が低いことを意味する。従って、本実施形態に係る有機化合物は酸化に対して安定である。
【0059】
また本実施形態に係る有機化合物は、基本骨格が炭素のみで構成されており、窒素原子等のヘテロ原子を有していない。このことも化合物の酸化電位が低いことに寄与するものであり、本実施形態に係る有機化合物が酸化に対して安定であることを示す理由の一つである。
【0060】
また、本実施形態に係る有機化合物は、置換基を設けることで分子自体の結晶性を抑制できる。結晶性を抑制することは、濃度消光の抑制や昇華性の向上につながる。
【0061】
さらに設ける置換基として具体的には、アルキル基の場合にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが好ましいが、特に立体的に大きいイソプロピル基やターシャリブチル基が特に好ましい。
【0062】
設ける置換基がアリール基の場合には、フェニル基、ビフェニル基等が挙げられる。さらに、メチル基、イソプロピル基、ターシャリブチル基等のアルキル基を有するアリール基が特に好ましい。
【0063】
また、フッ素原子を設けることでも同様の効果があるので、フッ素原子を設けた場合も濃度消光の抑制および昇華性の向上につながる。
【0064】
また、基本骨格に置換基を設けた場合、塗布法に用いる際の膜性の向上にもつながるので置換基を設けることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る有機化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0066】
【化7】

【0067】
【化8】

【0068】
【化9】

【0069】
上記例示化合物のうち、A群に属するものは分子全体が炭化水素のみで構成されている。ここで炭化水素のみで構成される化合物は、一般的にLUMOエネルギーレベルが低いので、酸化に対して安定である。
【0070】
したがって、本実施形態に係る有機化合物のうち、炭化水素のみで構成されている有機化合物、即ち、A群に属する化合物は、分子の安定性が高いので好ましい。
【0071】
またA群に属する有機化合物は、100%の高濃度で発光層や輸送層、注入層に使用することもできるが発光層に用いる場合は、低濃度で用いた方が好ましい。
【0072】
一方、上記例示化合物のうち、B群に属するものは置換基がヘテロ原子を含んでいる。この場合、分子の酸化電位あるいは分子間相互作用が変化する。
【0073】
また置換基がヘテロ原子を含んでいるB群の有機化合物は、電子輸送性やホール輸送性、ホールトラップ型発光材料として有用である。
【0074】
特にフッ素置換されているものは分子間相互作用が抑制されるために、昇華性の向上を期待することもできる。またB群に属する有機化合物は、100%の高濃度で使用することもできる。
【0075】
(本実施形態に係る有機化合物の合成)
次に、本実施形態に係る有機化合物の合成方法を説明する。本実施形態に係る有機化合物は、例えば、下記に示す反応スキームに従って合成される。
【0076】
【化10】

【0077】
【化11】

【0078】
上記合成スキームにて示されるように、本実施形態に係る有機化合物は、下記(a)乃至(d)に示される化合物を原料として合成されるものである。
(a)ベンゾ[k]フルオランテン誘導体(D1)
(b)ベンゾ[k]フルオランテン誘導体(D2)
(c)フルオランテノ[8,9−k]フルオランテン誘導体(D4)
(d)ナフタレン誘導体(D5)
ここで上記(a)乃至(d)に示される化合物に適宜置換基を導入することにより、式(1)中のR乃至R20のいずれかが水素原子から所定の置換基に置換されることになる。ここで導入する置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、フェニル基、メトキシ基、シアノ基等が挙げられる。
【0079】
また上記合成スキームにおいて、D1乃至D4をそれぞれ変えることで種々の有機化合物を合成することができる。
【0080】
(本実施形態に係る有機発光素子の性質について)
次に、本実施形態の有機発光素子について説明する。
【0081】
本実施形態に係る有機発光素子は、一対の電極の一例である陽極と陰極と、これら電極の間に配置されている有機化合物層と、を有する。
【0082】
本実施形態に係る有機発光素子が有する有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。
【0083】
ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0084】
本実施形態に係る有機発光素子は、上記有機化合物層の少なくとも一層に本実施形態に係る有機化合物が含まれている。
【0085】
本実施形態に係る有機発光素子は、本実施形態に係る有機化合物をどの層に有していてもよいが、発光層に有していることが好ましい。
【0086】
本実施形態に係る有機発光素子の発光層に、本実施形態に係る有機化合物を有する場合、発光層は、本実施形態に係る有機化合物のみからなる層であってもよいし、本実施形態に係る有機化合物と他の化合物とを有する層であってもよい。
【0087】
ここで、発光層が本実施形態に係る有機化合物と他の化合物とを有する場合、本実施形態に係る有機化合物は、発光層のホストとして使用してもよいし、ゲストとして使用してもよい。また発光層に含まれ得るアシスト材料として使用してもよい。
【0088】
ここでホストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比が最も大きい化合物である。またゲストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。
【0089】
またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。尚、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。
【0090】
ここで、本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、発光層全体に対して0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上5重量%以下であることがより好ましい。
【0091】
また本実施形態に係る有機化合物を発光層のゲストとして用いる場合には、本実施形態に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料(LUMOが真空準位により近い材料)をホストとして用いることが好ましい。
【0092】
というのも本実施形態に係る有機化合物はLUMOが低いため、本実施形態に係る有機化合物よりもLUMOが高い材料をホストにすることで、発光層のホストから供給される電子を本実施形態に係る有機化合物が受領しやすくすることができるからである。
【0093】
本実施形態に係る有機化合物を、有機発光素子の発光層のホスト又はゲストとして、特に、発光層のゲストとして用いた場合、高効率で高輝度な光出力を有し、かつ耐久性が高い有機発光素子が得られる。
【0094】
本実施形態に係る有機発光素子の発光色は緑が好ましいが、特に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
【0095】
本実施形態に係る有機発光素子が白色を発する素子の場合、別の発光層が緑色以外の色、すなわち青色や赤色を発光し、それぞれの発光色が混色することで白色を発することができる。この赤色を発する発光材料が本実施形態に係る有機化合物であることが好ましい。
【0096】
本実施形態に係る白色有機発光素子は、発光層を複数有する形態でも、発光部が複数の発光材料を有する形態でもよい。
【0097】
図1は、本実施形態に係る白色有機発光素子の一例として、積層型の発光層を有する素子構成の一例を示した断面模式図である。本図では3色の発光層を有する有機発光素子が図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0098】
この有機発光素子は、ガラス等の基板上に、陽極1、正孔注入層2、正孔輸送層3、青色発光層4、緑色発光層5、赤色発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9を積層させた素子構成である。ただし、青、緑、赤色発光層の積層は順番が異なってもよい。
【0099】
また、発光層は積層される形態に限られず、横並びに配置されてもよい。横並びとは、配置された発光層はいずれも正孔輸送層および電子輸送層等の隣接層に接するように配置されることである。
【0100】
また、発光層は、一の色を発光する発光層の中に他の色を発する発光層のドメインを形成する形態でもよい。
【0101】
青色発光層の発光材料および赤色発光層の発光材料は、特に限定されないがクリセン骨格、フルオランテン骨格、またはアントラセン骨格を有する化合物、もしくはホウ素錯体またはイリジウム錯体を用いることが好ましい。
【0102】
ここで、本実施形態に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0103】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0104】
ホール注入性化合物、ホール輸送性化合物としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
ホストとしては、具体的には、下記表2に示される化合物が挙げられる。
【0106】
【表2】

【0107】
ただし本発明はこれらに限定されるものではない。表2で示されている化合物のその誘導体である化合物もホストとして使用することができる。またそれ以外にも、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
電子注入性化合物、電子輸送性化合物としては、ホール注入性化合物、ホール輸送性化合物のホール移動度とのバランス等を考慮した上で適宜選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する化合物としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
陽極の構成材料としては、仕事関数がなるべく大きいものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれら金属単体を複数組み合わせてなる合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は1種類を単独で使用してもよいし複数種を併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0110】
一方、陰極の構成材料としては、仕事関数が小さいものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を複数組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は1種類を単独で使用してもよいし、複数種を併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0111】
本実施形態の有機発光素子において、本実施形態に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0112】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0113】
(本実施形態に係る有機発光素子の用途)
本実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、カラーフィルターを用いた白色光源等の用途がある。カラーフィルターは例えば赤、緑、青の3つの色が透過するフィルターが挙げられる。
【0114】
表示装置は、本実施形態の有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。そしてこの画素は本実施形態の有機発光素子と、発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例であるTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極又は陰極とTFT素子のドレイン電極又はソース電極とが接続されている。ここで表示装置は、PC等の画像表示装置として用いることができる。
【0115】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する入力部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像表示装置でもよい。
【0116】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、外部から入力された画像情報を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0117】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。照明装置は本実施形態に係る有機発光素子とそれに接続されるコンバーター回路を有している。白とは色温度が4200K○○で昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルターを有してもよい。
【0118】
本実施形態に係るコンバーター回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。
【0119】
次に、本実施形態の有機発光素子を使用した表示装置について図2を用いて説明する。
【0120】
図2は、本実施形態に係る有機発光素子とそれに接続されたTFT素子とを有する表示装置の断面模式図である。
【0121】
この表示装置は、ガラス等の基板10とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜11が設けられている。また符号12は金属のゲート電極12である。符号13はゲート絶縁膜13であり、14は半導体層である。
【0122】
TFT素子17は半導体層14とドレイン電極15とソース電極16とを有している。TFT素子17の上部には絶縁膜18が設けられている。コンタクトホール19を介して有機発光素子の陽極20とソース電極16とが接続されている。
【0123】
本実施形態に係る表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0124】
有機化合物層21は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが複数層であってよい。陰極22の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層23や第二の保護層24が設けられている。
【0125】
本実施形態に係る表示装置が白色を発する表示装置の場合は、図2中の有機化合物層21の部分を図1で示される積層型の発光層等とすることで白色を発する表示装置となる。
【0126】
本実施形態に係る白色を発する表示装置が有する発光層は、図1に示される素子構成に限定されず、異なる発光色を発する発光層を横並びにしても、一の発光層の中にドメインを形成してもよい。
【0127】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFT素子により発光輝度が制御される。有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。
【0128】
本実施形態に係る有機発光素子が有するスイッチング素子は、TFT素子に限られず、トランジスタやMIM素子、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。
【0129】
これは精細度によって選択され、たとえば1インチでQVGA程度の精細度の場合はSi基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0130】
本実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置を駆動することにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]例示化合物A2の合成
【0133】
【化12】

【0134】
(1)化合物E3の合成
100mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E1:3.56g(10mmol)
化合物E2:3.25g(13mmol)
亜硝酸イソアミル:1.52g(13mmol)
トルエン:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で110℃に加熱しこの温度(80℃)で3時間攪拌を行った。反応終了後、水50mlで2回洗浄した。この有機層を飽和食塩水で洗浄し,硫酸マグネシウムで乾燥した後、この溶液を濾過後、ろ液を濃縮して茶褐色液体を得た。これをカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘプタン=1:4)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行い、黄色結晶のE3を4.3g(収率:83%)得た。
【0135】
(2)化合物E5の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E4:2.59g(5mmol)
化合物E5:2.65g(5mmol)
Pd(PPh:0.1g
トルエン:50ml
エタノール:20ml
2M―炭酸ナトリウム水溶液:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で80℃に加熱しこの温度(80℃)で8時間攪拌を行った。反応終了後、エタノールを加えて結晶を析出させた後に結晶をろ別し、水、エタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った。次に、得られた結晶をトルエンに加熱溶解した後、これをカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘプタン=1:3)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行うことにより、黄色の化合物E5を3.28g(収率:78%)得た。
【0136】
(3)例示化合物A2の合成
20mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E5:841mg(1mmol)
Pd(dba):238mg
P(Cy)(トリシクロヘキシルフォスフィン):280mg
DBU(ジアザビシクロウンデセン):0.15ml
DMF:5ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で145℃に加熱しこの温度(145℃)で6時間攪拌を行った。反応終了後、エタノールを加えて結晶を析出させた後に結晶をろ別し、水、エタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った。次に、得られた紫色結晶をトルエンに加熱溶解した後、熱時ろ過、トルエン/メタノールで再結晶を行うことにより、橙色の例示化合物A2を0.60g(収率:75%)得た。
【0137】
この化合物の純度はHPLCを用いて純度99%以上であることを確認した。
例示化合物A2の1×10−5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、512nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
尚、例示化合物A2は、MALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=804.11 計算値:C6436=804.28
【0138】
[実施例2]例示化合物A3の合成
【0139】
【化13】

【0140】
(1)化合物E8の合成
200mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E6:3.27g(5mmol)
化合物E7:1.43g(5mmol)
Pd(PPh:0.1g
トルエン:50ml
エタノール:20ml
2M―炭酸ナトリウム水溶液:50ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で60℃に加熱しこの温度(60℃)で5時間攪拌を行った。反応終了後、エタノールを加えて結晶を析出させた後に結晶をろ別し、水、エタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った。次に、得られた結晶をトルエンに加熱溶解した後、これをカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘプタン=1:3)にて精製後、クロロホルム/メタノールで再結晶を行うことにより、黄色の化合物E8を2.1g(収率:58%)得た。
【0141】
(2)例示化合物A3の合成
20mlのナスフラスコに、以下に示す試薬、溶媒を仕込んだ。
化合物E5:734mg(1mmol)
Pd(dba):238mg
P(Cy)(トリシクロヘキシルフォスフィン):280mg
DBU(ジアザビシクロウンデセン):0.15ml
DMF:5ml
次に、反応溶液を、窒素気流下で145℃に加熱しこの温度(145℃)で6時間攪拌を行った。反応終了後、エタノールを加えて結晶を析出させた後に結晶をろ別し、水、エタノール、ヘプタンで順次分散洗浄を行った。次に、得られた紫色結晶をトルエンに加熱溶解した後、熱時ろ過、トルエン/メタノールで再結晶を行うことにより、橙色の例示化合物A3を0.43g(収率:66%)得た。
【0142】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0143】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A3のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、511nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0144】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=652.46 計算値:C5228=652.22
【0145】
[実施例3]例示化合物A4の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E9を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A4を得た。
【0146】
【化14】

【0147】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0148】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A4のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、511nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0149】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=652.48 計算値:C5228=652.22
【0150】
[実施例4]例示化合物A5の合成
実施例1の(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E10、化合物E4に代えて下記に示す化合物E11を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A6を得た。
【0151】
【化15】

【0152】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0153】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A5のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、513nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0154】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=668.50 計算値:C5344=668.34
【0155】
[実施例5]例示化合物A12の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E12を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A12を得た。
【0156】
【化16】

【0157】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0158】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A12のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、515nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0159】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=1028.66 計算値:C8068=1028.53
【0160】
[実施例6]例示化合物A14の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E13、化合物E4に代えて下記に示す化合物E14を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A14を得た。
【0161】
【化17】

【0162】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0163】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A14のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、517nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0164】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=1252.12 計算値:C96100=1252.78
【0165】
[実施例7]例示化合物A15の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E15、化合物E4に代えて下記に示す化合物E15を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A15を得た。
【0166】
【化18】

【0167】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度98%以上であることを確認した。
【0168】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A15のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、516nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0169】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=972.18 計算値:C7660=972.47
【0170】
[実施例8]例示化合物A16の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E17、化合物E18に代えて下記に示す化合物E16を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物A16を得た。
【0171】
【化19】

【0172】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0173】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A16のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、516nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0174】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=1140.21 計算値:C8884=1140.66
【0175】
[実施例9]例示化合物A22の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E19を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A22を得た。
【0176】
【化20】

【0177】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0178】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A22のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、514nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0179】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=876.44 計算値:C6860=876.47
【0180】
[実施例10]例示化合物A23の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E20を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A23を得た。
【0181】
【化21】

【0182】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度97%以上であることを確認した。
【0183】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A23のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、514nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0184】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=804.82 計算値:C6436=804.28
【0185】
[実施例11]例示化合物A33の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E21を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A33を得た。
【0186】
【化22】

【0187】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0188】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A33のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、516nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0189】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=668.56 計算値:C5244=668.34
【0190】
[実施例12]例示化合物A42の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E22を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A42を得た。
【0191】
【化23】

【0192】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度98%以上であることを確認した。
【0193】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A42のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、516nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0194】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=960.05 計算値:C7472=960.56
【0195】
[実施例13]例示化合物A45の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E23を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物A45を得た。
【0196】
【化24】

【0197】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度98%以上であることを確認した。
【0198】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物A45のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、517nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0199】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=724.88 計算値:C5652=724.41
【0200】
[実施例14]例示化合物B1の合成
実施例1(1)において、化合物E1に代えて下記に示す化合物E24を使用する以外は、実施例1と同様の方法により例示化合物B1を得た。
【0201】
【化25】

【0202】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度99%以上であることを確認した。
【0203】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物B1のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、510nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0204】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=807.55 計算値:C5836=808.28
【0205】
[実施例15]例示化合物B9の合成
実施例2(1)において、化合物E6に代えて下記に示す化合物E24を使用する以外は、実施例2と同様の方法により例示化合物B9を得た。
【0206】
【化26】

【0207】
HPLCを用いて得られた化合物の純度を評価したところ、純度98%以上であることを確認した。
【0208】
また実施例1と同様の方法により、例示化合物B9のトルエン溶液(濃度:1×10−5mol/L)における発光スペクトルの測定を行った結果、533nmに最大強度を有するスペクトルを得た。
【0209】
さらにMALDI−TOF−MS(Bruker社製Autoflex LRF)を用いて質量分析を行った。
[MALDI−TOF−MS]
実測値:m/z=819.86 計算値:C6437N=819.29
【0210】
[実施例16]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0211】
【化27】

【0212】
まずガラス基板上に、ITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。このときITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0213】
上記ITO基板上に、下記表3に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mmとなるようにした。
【0214】
【表3】

【0215】
尚、本実施例において、G−3及びG−4は、それぞれ表2に示されるH10、H21である。
【0216】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表4に示す。
【0217】
[実施例17乃至27]
実施例15において、G−3、G−4及びゲストを、下記表4に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例15と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例15と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表5に示す。尚、表4において、G−3とG−4は表2に示される化合物である。G‐3とG−4とが同じ材料の場合はホストとアシストが同じ材料であることを示す。
【0218】
【表4】



【0219】
[実施例28]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例で作製される有機発光素子は共振構造を有している。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0220】
【化28】

【0221】
まずスパッタリング法により、ガラス基板(支持体)上に、アルミニウム合金(AlNd)を成膜し反射性陽極を形成した。
このとき反射性陽極の膜厚を100nmとした。
【0222】
次に、スパッタリング法により、反射性陽極上にITOを成膜し透明性陽極を形成した。このとき透明性陽極の膜厚を80nmとした。
次に、この陽極の周辺にアクリル製の素子分離膜を膜厚1.5μmで形成した後、所望のパターニング成形を行い、半径3mmの開口部を設けた。
次に、陽極が形成されている基板を、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄した。
次に、IPAで煮沸洗浄してから乾燥させた。次に、この基板表面に対してUV/オゾン洗浄を施した。
次に、1×10−5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表5に示す有機化合物層を連続成膜した。
【0223】
【表5】

【0224】
尚、本実施例において、G−13及びG−14は、それぞれ表2に示されるH5、H19である。
【0225】
次に、スパッタリング法により、電子注入層上に、ITOを成膜して陰極を形成した。このとき陰極の膜厚を30nmとした。最後に、窒素雰囲気下において封止を行った。
以上により、有機発光素子を作製した。
【0226】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表7に示す。
【0227】
[実施例29乃至32]
実施例28において、G−13、G−14及びゲストを、表7に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例28と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例28と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表7に示す。
【0228】
尚、表6において、G−13とG−14は同じ材料の場合はホストとアシストが同じ材料であり、また表2に示されるホストである。
【0229】
【表6】

【0230】
[実施例33]
本実施例では、基板上に、陽極、ホール輸送層、第1発光層、第2発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、陰極が順次形成された有機発光素子を作製した。尚、本実施例の有機発光素子は発光層が複数ある態様である。以下に、本実施例で使用した材料の一部を示す。
【0231】
【化29】

【0232】
まずガラス基板上に、ITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。このときITO電極の膜厚を100nmとした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。
【0233】
次に、1×10−5Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表に示す有機化合物層及び電極層を連続成膜した。尚、このとき対向する電極(金属電極層、陰極)の電極面積が3mmとなるようにした。
【0234】
【表7】

【0235】
尚、本実施例において、G−23、G−25は、それぞれ表2に示されるH10、H14である。
【0236】
得られた素子について、素子の特性を測定・評価した。具体的には、電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。測定の結果を表8に示す。
【0237】
[実施例33乃至36]
実施例32において、G−23、G−25及びゲストを、表9に示される化合物に適宜変更する以外は、実施例32と同様の方法により有機発光素子を作製した。得られた素子について実施例32と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を表8に示す。
【0238】
尚、表8において使用されているG−23、G−25は表2に示されるホストである。
【0239】
【表8】

【0240】
以上実施例を挙げて説明したように、本発明に係る有機化合物は発光素子にした場合、半値幅の狭い、高効率な緑色発光に適した色度を示すため緑色発光材料として好ましい。発光効率は発光材料に本発明の化合物のみ用いた場合では最大54cd/Aと高い値を示す。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明に係る有機化合物は、高い量子収率を有し、緑色発光に適した発光を有する化合物である。このため本発明に係る有機化合物を有機発光素子の構成材料として用いることで、良好な発光特性を有する有機発光素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0242】
4 青色発光層
5 緑色発光層
6 赤色発光層
17 TFT素子
20 陽極
21 有機化合物層
22 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とする有機化合物。
【化1】


(1)
一般式(1)において、R乃至R20は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアミノ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基、置換あるいは無置換のチオール基、シリル基及びシアノ基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項2】
前記R乃至R20が、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基及び置換あるいは無置換のアリール基からそれぞれ独立に選ばれることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
【請求項3】
一対の電極と前記一対の電極の間に配置されている有機化合物層と、を有する有機発光素子であって、
前記有機化合物層の少なくとも一層は、請求項1または2に記載の有機化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
前記有機化合物層の少なくとも一層が発光層であることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
赤色発光することを特徴とする、請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物層は、発光部を有し、前記発光部は複数の発光層を有し、
前記複数の発光層のうち少なくともいずれか一つの層が前記有機化合物を有し、
前記複数の発光層はそれぞれの発光層がそれぞれ異なる発光色を発光する発光層であり、
前記異なる発光色が混色することにより白色を発することを特徴とする請求項3または4に記載の有機発光素子。
【請求項7】
複数の画素を有し、前記画素は、請求項3乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されているスイッチング素子と、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
カラーフィルターをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記有機発光素子は、基板上に設けられており、
前記基板内に前記スイッチング素子を有することを特徴とする請求項7または8に記載の表示装置。
【請求項10】
画像情報を入力するための入力部と、画像を表示するための表示部と、を有し、
前記表示部が、請求項7乃至9に記載の表示装置を有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
請求項3乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するコンバーター回路とを有することを特徴とする照明装置。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−67586(P2013−67586A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207325(P2011−207325)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】