説明

新規癌抗原ポリペプチド

【課題】癌の診断に有用な新規ポリペプチド及び新規ポリヌクレオチド、該新規ポリペプチドに対する抗体、該新規ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを発現できる組換えベクター、該ポリヌクレオチドを発現する細胞、並びに癌の検出方法を提供する。
【解決手段】イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして作製した、特定の新規なアミノ酸配列を有するポリペプチド。このタンパク質をコードする遺伝子は精巣と癌組織に特異的に発現し、また、このタンパク質が担癌生体中の血清とのみ特異的に反応するので、この遺伝子及びこのタンパク質は癌の診断に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な癌抗原ポリペプチド、該ポリペプチドに対する抗体、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを発現できる組換えベクター、該ポリヌクレオチドを発現する細胞、及び癌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は全死亡原因の第一位を占める疾患であり、現在行われている治療は手術療法を主体に放射線療法と化学療法を組み合わせたものである。近年の新しい手術法の開発や新たな抗癌剤の発見にも関わらず、一部の癌を除いて、癌の治療成績はあまり向上していないのが現状である。近年、分子生物学や癌免疫学の進歩で癌に反応する細胞障害性T細胞により認識される癌抗原や癌抗原をコードする遺伝子が同定されてき、抗原特異性免疫療法への期待が高まっている(非特許文献1を参照)。免疫療法においては、副作用を軽減するため、その抗原として認識されるペプチド又はタンパクは、正常細胞にはほとんど存在せず、癌細胞に特異的に存在していることが必要とされる。1991年、ベルギーLudwig研究所のBoonらは自己癌細胞株と癌反応性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法によりCD8陽性T細胞が認識するヒトメラノーマ抗原MAGE1を単離した(非特許文献2を参照)。その後、癌患者の生体内で自己の癌に反応して産生される抗体が認識する腫瘍抗原を遺伝子の発現クローニングの手法を取り入れて同定する、SEREX(serological identifications of antigens by recombinant expression cloning)法が報告され(非特許文献3;特許文献1)、各種癌抗原が単離されてきた(非特許文献4−9を参照)。その一部をターゲットにして癌免疫療法の臨床試験も開始されている。
【0003】
一方、ヒトと同様、イヌやネコにも乳腺腫瘍、扁平上皮癌など多数の腫瘍が知られており、イヌやネコの疾病統計でも上位にランクされている。しかしながらイヌやネコの癌に対する有効な治療薬、予防薬および診断薬は現在のところ存在しない。大部分のイヌやネコの腫瘍は、進行して腫瘤が大きくなってから飼い主が気付くケースがほとんで、来院して外科的手術により切除したり、人体薬(抗癌剤など)を投与しても、すでに手遅れで処置後まもなく死亡することが多い。このような現状の中で、イヌやネコに有効な癌の治療薬、予防薬および診断薬が入手可能になれば、イヌの癌に対する用途が開かれると期待される。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5698396号
【非特許文献1】秋吉毅,「癌と化学療法」、1997年、第24巻、p551-519
【非特許文献2】Bruggen P. et al., Science, 254:1643-1647(1991)
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:11810-11813(1995)
【非特許文献4】Int.J.Cancer,72:965-971(1997)
【非特許文献5】Cancer Res., 58:1034-1041(1998)
【非特許文献6】Int.J.Cancer,29:652-658(1998)
【非特許文献7】Int.J.Oncol.,14:703-708(1999)
【非特許文献8】Cancer Res., 56:4766-4772(1996)
【非特許文献9】Hum. Mol. Genet6:33-39, 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、癌の診断に有用な新規ポリペプチド及び新規ポリヌクレオチド、該新規ポリペプチドに対する抗体、該新規ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを発現できる組換えベクター、該ポリヌクレオチドを発現する細胞、並びに癌の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌生体由来の血清中に存在する抗体と結合するタンパク質をコードするcDNAを取得し、そのcDNAを基にして、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを作製した。そして、該タンパク質をコードする遺伝子が精巣と癌組織に特異的に発現すること、及び、該タンパク質が担癌生体中の血清とのみ特異的に反応することを見出し、このため、該遺伝子及び該タンパク質が癌の診断に有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(a)ないし(c)のいずれかのポリペプチドであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応するポリペプチドを提供する:(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、(b) (a)のポリペプチドと80%以上の相同性を有し、7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、(c) (a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド。また、本発明は、癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応する抗体を測定することを含む、癌の検出方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含み、細胞中で該ポリヌクレオチドを発現することができる組換えベクターを提供する。さらに、本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドが導入され、該ポリヌクレオチドを発現する細胞を提供する。さらにまた、本発明は、配列表の配列番号1に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、そのような本発明のポリヌクレオチドから成る、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの測定用ポリヌクレオチドを提供する。さらに、本発明は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応する抗体又は抗原結合性断片を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の抗体又はその抗原結合性断片を含む癌の診断剤を提供する。さらに、本発明は、癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応するポリクローナル抗体の対応抗原又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることを含む、癌の検出方法を提供する。さらに、本発明は、癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることを含む、癌の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、癌の診断に有用な新規癌抗原ポリペプチドが提供された。下記実施例において具体的に示されるように、本発明のポリペプチドは、癌患者の血清中に有意に多く存在するポリクローナル抗体と反応する。従って、本発明のポリペプチドを用いて免疫測定を行うことにより、癌を検出することができる。また、下記実施例にある通り、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、癌細胞と精巣細胞に特異的に発現する。従って、本発明のポリヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いることによっても、癌の検出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明が開示する配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列は、イヌ精巣由来cDNAライブラリーと担癌犬の血清を用いたSEREX法により、担癌犬由来の血清中に特異的に存在する抗体と結合するポリペプチドとして単離された、新規なポリペプチドのアミノ酸配列である(実施例1参照)。従って、例えば配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある)は、前記抗体を免疫測定するための抗原として用いることができ、癌の検出に有用である。なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」又は「塩基配列を有する」とは、アミノ酸残基又は塩基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」とは、aattaaccct cactaaagggの塩基配列を持つ20塩基のサイズのポリヌクレオチドを意味する。また、例えば、「配列番号3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」を「配列番号3のポリヌクレオチド」と略記することがある。「アミノ酸配列を有する」という表現についても同様である。
【0010】
通常、タンパク質等のような、複雑な構造をとる分子量の大きい抗原物質の場合、分子上に構造の異なる複数の部位が存在している。従って、生体内では、そのような抗原物質に対し、複数の部位をそれぞれ認識して結合する複数種類の抗体が生産される。すなわち、生体内でタンパク質等の抗原物質に対して生産される抗体は、複数種類の抗体の混合物であるポリクローナル抗体である。本願発明者らが見出した、担癌生体由来の血清中に特異的に存在する、配列番号2のポリペプチドと抗原抗体反応により特異的に結合する抗体もまた、ポリクローナル抗体である。なお、本発明において「ポリクローナル抗体」といった場合には、抗原物質を体内に含む生体由来の血清中に含まれる、該抗原物質に対する抗体を指す。下記実施例では、該抗体の血清中存在量を免疫測定するための抗原として、配列番号2の全長から成るポリペプチドを調製し、このポリペプチドと担癌生体由来の血清中の前記抗体との反応性を確認している。しかしながら、前記抗体はポリクローナル抗体であるから、配列番号2のポリペプチドの全長ではなくその断片であっても、前記ポリクローナル抗体中にはその断片の構造を認識する抗体が含まれ得るため、やはり担癌生体由来の血清中に含まれる前記抗体と結合できる。すなわち、配列番号2の全長から成るポリペプチドであっても、その断片であっても、同様に担癌生体血清中に特異的に含まれる前記ポリクローナル抗体の測定に用いることができ、癌の検出に有用である。従って、本発明のポリペプチドは、配列番号2の全長から成るポリペプチドのみに限定されず、配列番号2のアミノ酸配列中の連続する7個以上、好ましくは連続する10個以上のアミノ酸から成るポリペプチドであって、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体と特異的に反応するポリペプチドが本発明の範囲に含まれる。なお、約7アミノ酸残基以上のポリペプチドであれば抗原性を発揮することがこの分野において知られている。ただし、アミノ酸残基の数があまりに少ないと他のタンパク質とも交叉反応する可能性が高くなるので、免疫測定の抗原として用いる場合には、測定精度を高めるため、アミノ酸残基の数は好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上とする。
【0011】
一般に、タンパク質抗原において、該タンパク質のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され又は挿入された場合であっても、元のタンパク質とほぼ同じ抗原性を有している場合があることは当業者において広く知られている。従って、配列番号2のアミノ酸配列のうち少数のアミノ酸残基が置換され、欠失され、及び/又は挿入された配列を有するポリペプチドであって、配列番号2の配列と80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応により特異的に結合するポリペプチド(以下、便宜的に「特異反応性修飾ポリペプチド」ということがある)も、上記本発明のポリペプチドと同様に癌の検出に用いることができ、本発明の範囲に含まれる。好ましくは、該特異反応性修飾ポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドにおいて1ないし数個のアミノ酸残基が置換され、欠失され、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を有する。ここで、アミノ酸配列の「相同性」とは、両者のアミノ酸配列残基ができるだけ多く一致するように(必要ならばギャップを挿入する)両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を、全アミノ酸残基数(両者の配列で全アミノ酸残基数が異なる場合には短い方の配列の全アミノ酸残基数)で除したものを百分率で表したものであり、BLASTのような周知のソフトにより容易に算出することができる。なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr, Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、配列番号2のポリペプチド中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、対応抗体との結合性を維持できる可能性が高くなる。
【0012】
上記した本発明のポリペプチドを部分配列として含み(すなわち、本発明のポリペプチドの一端又は両端に他の(ポリ)ペプチドが付加されたもの)、かつ、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応により特異的に結合するポリペプチド(以下、便宜的に「特異反応性付加ポリペプチド」ということがある)も、上記本発明のポリペプチドと同様に癌の検出に用いることができ、本発明の範囲に含まれる。
【0013】
上記した本発明のポリペプチドは、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して常法により合成することもできる。また、公知の遺伝子工学的手法を用いて容易に調製することができる。例えば、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子を発現している組織から抽出したRNAから、該遺伝子のcDNAをRT−PCRにより調製し、該cDNAの全長又は所望の一部を発現ベクターに組み込んで、宿主細胞中に導入し、目的とするペプチドを得ることができる。RNAの抽出、RT−PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は、例えば以下に記載するとおり、周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。
【0014】
上記宿主細胞としては、本発明のポリペプチドを発現可能な細胞であればいかなるものであってもよく、原核細胞の例としては大腸菌など、真核細胞の例としてはサル腎臓細胞COS 1、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO等の哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが挙げられる。
【0015】
宿主細胞として原核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、原核細胞中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターを用いる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescriptII、pET発現システム、pGEX発現システムなどが例示できる。本発明のポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで原核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしている本発明のポリペプチドを原核宿主細胞中で発現させることができる。この際、本発明のポリペプチドを、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。なお、本発明のポリペプチドをコードするDNAは、例えば上記したようにRT-PCRによりcDNAを調製して得ることができ、また後述するように市販の核酸合成機を用いて常法により合成することもできる。該cDNAの塩基配列は配列表の配列番号1に示されている。
【0016】
宿主細胞として真核細胞を用いる場合、発現ベクターとしては、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターを用いる。そのような発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK-CMV、pBK-RSV、EBVベクター、pRS、pcDNA3、pMSG、pYES2等が例示できる。上記と同様に、本発明のポリペプチドをコードするDNAをこのような発現ベクターに組み込み、該ベクターで真核宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、前記DNAがコードしている本発明のポリペプチドを真核宿主細胞中で発現させることができる。発現ベクターとしてpIND/V5-His、pFLAG-CMV-2、pEGFP-N1、pEGFP-C1等を用いた場合には、Hisタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質として、本発明のポリペプチドを発現させることができる。
【0017】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の周知の方法を用いることができる。
【0018】
宿主細胞から目的のポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒分別沈殿法、透析、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過、SDS-PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、等が挙げられる。
【0019】
以上の方法によって得られるポリペプチドには、他の任意のタンパク質との融合タンパク質の形態にあるものも含まれる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)やHisタグとの融合タンパク質などが例示できる。このような融合タンパク質の形態のポリペプチドも、上記した特異反応性付加ポリペプチドとして本発明の範囲に含まれる。さらに、形質転換細胞で発現されたポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。このような翻訳後修飾されたポリペプチドも、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体との結合性を有する限り、本発明の範囲に含まれる。この様な翻訳修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。
【0020】
下記実施例に具体的に記載される通り、担癌生体由来の血清試料中には、配列番号2のポリペプチドと抗原抗体反応により結合する抗体が、健常生体由来の血清試料中よりも有意に多く存在している。従って、患者から得た試料における該抗体を測定することにより、癌を検出することができる。例えば、該抗体の存在量を調べ、これを健常生体から得た試料における存在量と比較することにより、該患者が癌であるか否かを調べることができる。すなわち、本発明は、癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対する抗体を測定することを含む癌の検出方法を提供する。なお、健常生体から得た試料における存在量は、多数の健常生体について測定して正常値を定めておけば、該正常値と、測定値を比較することにより癌の検出を行なうことができる。
【0021】
また、癌を罹患していることが分かっている多数の患者から試料を得て、癌患者における抗体量の基準値(異常値)を定め、正常値及び異常値の両者と比較を行なってもよい。測定した抗体量が正常値より有意に高く、異常値に近ければ、その患者は癌である可能性が高いと考えられる。上記した通り、正常値との比較のみでも癌の検出は可能であるが、異常値との比較も行うことにより、さらに検出精度を高めることができる。また、既に知られている癌マーカーによる診断と組み合わせて、検出精度をさらに高めることができる。なお、異常値及び正常値は、例えば、各試料における抗体量を数値化し、その平均値を算出することによって定めることができる。異常値についても、正常値と同様、一旦定めておけばそれ以後はその異常値を比較に用いることができる。抗体の存在量は、該抗体に結合する抗原を用いた免疫測定により調べることができる。その際の抗原としては、上記本発明のポリペプチドを好ましく用いることができる。
【0022】
この分野で周知の通り、抗体には交差反応性があり、実際に免疫原となった抗原物質以外の分子であっても、分子上に免疫原のエピトープと類似した構造が存在すれば、その分子は免疫原に対して誘導された抗体と抗原抗体反応により結合し得る。そのため、本発明のポリペプチドは、イヌ以外の担癌生体内で特異的に誘導されている抗体とも抗原抗体反応により結合し得る。実際に、下記実施例に記載される通り、本発明のポリペプチドは、担癌ネコ血清中に特異的に含まれる抗体とも抗原抗体反応でき、健常ネコ血清とは反応しない。また、本発明のポリペプチドは、健常ヒト血清とも反応しない。従って、本発明のポリペプチドを抗原として用いて、該ポリペプチドと抗原抗体反応する試料中の抗体を測定することにより、イヌの癌のみならず、ネコ及びヒト等のイヌ以外の哺乳動物の癌も検出し得る。
【0023】
免疫測定自体はこの分野において周知であり、反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、ウェスタンブロット法等がある。また、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定、ビオチン免疫測定等があり、いずれの方法を用いても上記抗体の免疫測定を行うことができる。特に限定されないが、サンドイッチELISAや凝集法は、操作が簡便で大掛かりな装置等を必要としないため、上記抗体の免疫測定方法として好ましく適用することができる。抗体の標識として酵素を用いる場合、酵素としては、ターンオーバー数が大であること、抗体と結合させても安定であること、基質を特異的に着色させる等の条件を満たす物であれば特段の制限はなく、通常の酵素免疫測定法に用いられる酵素、例えば、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコース−6−リン酸化脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素等を用いることもできる。また、酵素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。これら酵素と抗体との結合は、マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法によって行うことができる。基質としては、使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用することができる。例えば酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、3,3',5,5'−テトラメチルベンジシンを、また酵素としてはアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトルフェノール等を用いることができる。放射性同位体としては125Iや3H等の通常ラジオイムノアッセイで用いられている物を使用することができる。蛍光色素としては、フルオロレッセンスイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられる物を使用することができる。
【0024】
なお、これらの免疫測定法自体は周知であり、本明細書で説明する必要はないが、簡単に記載すると、例えば、サンドイッチ法では、本発明のポリペプチドを固相に不動化し、血清等の試料と反応させ、洗浄後、適当な二次抗体を反応させ、洗浄後、固相に結合した二次抗体を測定する。本発明のポリペプチドを固相に不動化することにより、未結合の二次抗体を容易に除去することができるため、上記した本発明の癌の検出方法の態様として好ましい。二次抗体としては、例えば試料がイヌ由来であれば、抗イヌIgG抗体を用いることができる。二次抗体を上記に例示した標識物質で標識しておくことにより、固相に結合した二次抗体を測定することができる。こうして測定した二次抗体量が血清試料中の上記抗体量に相当する。標識物質として酵素を用いる場合には、酵素作用によって分解して発色する基質を加え、基質の分解量を光学的に測定することによって抗体量を測定できる。標識物質として放射性同位体を用いる場合には、放射性同位体の発する放射線量をシンチレーションカウンター等により測定することができる。
【0025】
上記した癌の検出方法に供する試料としては、血液、血清、血漿等の体液、癌組織が挙げられ、中でも血清が好ましい。
【0026】
本発明の癌の検出方法の対象となる癌としては、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子を発現している癌であり、脳腫瘍、頭、首、肺、子宮又は食道の扁平上皮癌、メラノーマ、肺、乳または子宮の腺癌、腎癌等を挙げることができるがこれらに限定されない。また、対象となる動物は、哺乳動物であり、特にイヌやネコ、ヒトが好ましい。
【0027】
上記した本発明のポリペプチドと、抗原提示細胞とをインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドを抗原提示細胞に提示させることができる。すなわち、本発明のポリペプチドは、抗原提示細胞の処理剤として利用し得る。この場合、本発明のポリペプチドは、特に限定されないが、好ましくは約30アミノ酸残基以下、より好ましくは10〜30アミノ酸残基のサイズで用いる。ここで、抗原提示細胞としては、HLAクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞を好ましく用いることができる。種々のHLAクラスI分子が同定されており、周知である。HLAクラスI分子としては、HLA-A、HLA-B、HLA-Cを挙げることができ、より具体的には、HLA-A1, HLA-A0201, HLA-A0204, HLA-A0205, HLA-A0206, HLA-A0207, HLA-A11, HLA-A24, HLA-A31, HLA-A6801, HLA-B7, HLA-B8, HLA-B2705, HLA-B37, HLA-Cw0401, HLA-Cw0602などを挙げることができる。
【0028】
HLAクラスI分子を保有する樹状細胞又はB細胞は、周知の方法により末梢血から調製することができる。例えば、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢血から、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)とIL-3(あるいはIL-4)を用いて樹状細胞を誘導し、その培養系に腫瘍関連ペプチドを加えることにより、腫瘍特異的な樹状細胞を誘導することができる。この樹状細胞を有効量投与することで、癌の治療に望ましい応答を誘導できる。用いる細胞は、健康人から提供された骨髄や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることができるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料のいずれでもよい。末梢血は、全血を培養してもよいし、白血球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合には、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これから単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が含まれている。用いられるサイトカインは、安全性と生理活性が確認された特性のものであれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生産手法については問わないが、好ましくは医療用に用いられる品質が確保された標品が必要最低量で用いられる。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞が誘導される濃度であれば特に限定されず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度である。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温である37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%COを通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要数の細胞が誘導される期間であれば特に限定されないが、通常3日〜2週間の間で行われる。細胞の分離や培養に供される機器は、適宜適当なものを用いることができるが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置については、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わらず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用いることができる。
【0029】
上記本発明のポリペプチドと抗原提示細胞をインビトロで接触させる方法自体は周知の方法により行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を、上記ポリペプチドを含む培養液中で培養することにより行なうことができる。培地中のペプチド濃度は、特に限定されないが、通常、1μg/mlないし100μg/ml程度、好ましくは5μg/mlないし20μg/ml程度である。培養時の細胞密度は特に限定されないが、通常、10細胞/mlから107細胞/ml程度、好ましくは5x10細胞/mlから5x106細胞/ml程度である。培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。なお、抗原提示細胞が表面上に提示できるペプチドの長さは、通常、最大で30アミノ酸残基程度である。従って、特に限定されないが、抗原提示細胞とポリペプチドをインビトロで接触させる場合、該ポリペプチドをおよそ30アミノ酸残基以下の長さに調製してもよい。
【0030】
上記したポリペプチドの共存下において抗原提示細胞を培養することにより、ペプチドが抗原提示細胞のHLA分子に取り込まれ、抗原提示細胞の表面に提示される。従って、本発明のポリペプチドを用いて、本発明のポリペプチドとHLA分子の複合体を含む、単離抗原提示細胞を調製することができる。このような抗原提示細胞は、生体内又はインビトロにおいて、T細胞に対して該ポリペプチドを提示し、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。
【0031】
上記のようにして調製される、上記ポリペプチドとHLA分子の複合体とを含む抗原提示細胞を、T細胞とインビトロで接触させることにより、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができる。これは、上記抗原提示細胞とT細胞とを液体培地中で共存培養することにより行なうことができる。例えば、抗原提示細胞を液体培地に懸濁して、マイクロプレートのウェル等の容器に入れ、これにT細胞を添加して培養することにより行なうことができる。共存培養時の抗原提示細胞とT細胞の混合比率は、特に限定されないが、通常、細胞数の比率で1:1〜1:100程度、好ましくは1:5〜1:20程度である。また、液体培地中に懸濁する抗原提示細胞の密度は、特に限定されないが、通常、100〜1000万細胞/ml程度、好ましくは10000〜100万細胞/ml程度である。共存培養は、常法に従い、37℃、5%CO2雰囲気中で行なうことが好ましい。培養時間は、特に限定されないが、通常、2日〜3週間、好ましくは4日〜2週間程度である。また、共存培養は、IL-2、IL-6、IL-7及びIL-12のようなインターロイキンの1種又は複数の存在下で行なうことが好ましい。この場合、IL-2及びIL-7の濃度は、通常、5U/mlから20U/ml程度、IL-6の濃度は通常、500U/mlから2000U/ml程度、IL-12の濃度は通常、5ng/mlから20ng/ml程度であるが、これらに限定されるものではない。上記の共存培養は、新鮮な抗原提示細胞を追加して1回ないし数回繰り返してもよい。例えば、共存培養後の培養上清を捨て、新鮮な抗原提示細胞の懸濁液を添加してさらに共存培養を行なうという操作を、1回ないし数回繰り返してもよい。各共存培養の条件は、上記と同様でよい。
【0032】
上記の共存培養により、該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が誘導され、増殖される。従って、本発明のポリペプチドを用いて、該ポリペプチドとHLA分子の複合体を選択的に結合する、単離T細胞を調製することができる。
【0033】
下記実施例に記載される通り、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子は、イヌの癌細胞と精巣に特異的に発現している。従って、癌細胞においては、配列番号2のポリペプチドが正常細胞よりも有意に多く存在していると考えられる。特に、配列番号2のポリペプチドが癌細胞表面に表出して存在している場合には、上記のようにして調製した細胞障害性T細胞を生体内に投与することにより、癌細胞を障害することができる。また、上記本発明のポリペプチドを提示する抗原提示細胞は、生体内においても該ポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞を誘導し、増殖させることができるので、該抗原提示細胞を生体内に投与することによっても、癌細胞を障害することができる。従って、本発明のポリペプチドは、癌の治療及び/又は予防にも有用であり得る。
【0034】
上記した単離抗原提示細胞や単離T細胞を生体に投与する場合には、これらの細胞を異物として攻撃する生体内での免疫応答を回避するために、治療を受ける患者から採取した抗原提示細胞又はT細胞を、上記のように本発明のポリペプチドを用いて調製したものであることが好ましい。
【0035】
抗原提示細胞又はT細胞を有効成分として含む癌の治療及び/又は予防剤の投与経路は、静脈内投与や動脈内投与のような非経口投与が好ましい。また、投与量は、症状や投与目的等に応じて適宜選択されるが、通常1個〜10兆個、好ましくは100万個〜10億個であり、これを数日ないし数月に1回投与するのが好ましい。製剤は、例えば、細胞を生理緩衝食塩水に懸濁したもの等であってよく、他の抗癌剤やサイトカイン等と併用することもできる。また、製剤分野において周知の1又は2以上の添加剤を添加することもできる。
【0036】
また、本発明のポリペプチドをワクチンとして生体に投与することにより、生体に予め該ポリペプチドに対する細胞性免疫等の免疫を誘導することができる。従って、本発明のポリペプチドを提示する抗原提示細胞や本発明のポリペプチドに特異的な細胞障害性T細胞が癌の治療及び/又は予防に有効である場合には、本発明のポリペプチドを有効成分とするワクチンは、癌の治療及び/又は予防に有効である。すなわち、本発明のポリペプチドは、ワクチンとしても有用であり得る。
【0037】
本発明のポリペプチドをワクチンとして投与する場合には、本発明のポリペプチドに加えてアジュバントを含むことが好ましい。アジュバントは、抗原の貯蔵所(細胞外またはマクロファージ内)を提供し、マクロファージを活性化し、かつ特定組のリンパ球を刺激することにより、免疫学的応答を強化し得る。多数の種類のアジュバントが、当業界で周知である。具体例としては、MPL(SmithKline Beecham)、サルモネラ属のSalmonella minnesota Re 595リポ多糖類の精製および酸加水分解後に得られる同類物;QS21(SmithKline Beecham)、Quillja saponaria抽出物から精製される純QA−21サポニン;PCT出願WO96/33739(SmithKline Beecham)に記載されたDQS21;QS−7、QS−17、QS−18およびQS−L1(ソ(So)、外10名、「モレキュルズ・アンド・セル(Molecules and cells)」、1997年、第7巻、p.178−186);フロイントの不完全アジュバント;フロイントの完全アジュバント;ビタミンE;モンタニド;ミョウバン;CpGオリゴヌクレオチド(例えば、クレイグ(Kreig)、外7名、「ネイチャー(Nature)」、第374巻、p.546−549)を参照);ならびにスクアレンおよび/またはトコフェロールのような生分解性油から調製される種々の油中水エマルションが挙げられる。好ましくは、ペプチドは、DQS21/MPLの組合せと混合されて投与される。DQS21対MPLの比は、典型的には約1:10〜10:1,好ましくは約1:5〜5:1、さらに好ましくは約1:1である。典型的には、ヒト投与に関しては、DQS21およびMPLは、約1μg〜約100μgの範囲でワクチン処方物中に存在する。その他のアジュバントが当業界で既知であり、本発明のポリペプチドをワクチンとして投与する場合に用いられ得る(例えば、ゴッディング(Goding)著,「モノクローナル・アンチボディーズ:プリンシプル・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice)」、第2版、1986年を参照)。ポリペプチドおよびアジュバントの混合物またはエマルションの調製方法は、予防接種の当業者には周知である。
【0038】
対象の免疫応答を刺激するその他の因子も、対象に投与され得る。例えばその他のサイトカインも、リンパ球刺激特性の結果として、予防接種プロトコルに有用である。このような目的のために有用な多数のサイトカインは当業者に既知であり、その例としては、ワクチンの防御作用を強化することが示されているインターロイキン−12(IL−12)、GM−CSF、IL−18およびFlt3リガンドが挙げられる。投与される場合、本発明のポリペプチドは、製薬上許容可能な調製物中で投与される。このような調製物は、製薬上許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、相溶性担体、補助免疫増強剤、例えばアジュバントおよびサイトカイン、ならびに任意にその他の療法的作用物質をルーチンに含有し得る。
【0039】
本発明はまた、上記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、種々の細胞や組織、例えばイヌ精巣由来のcDNAやmRNA、cRNA(相補的RNA)、ゲノムDNA、または合成DNAのいずれであっても良い。また本発明のポリヌクレオチドは1本鎖および2本鎖のいずれの形態もとることができる。配列番号2のポリペプチドをコードするcDNAは、下記実施例において実際にクローニングされ、その塩基配列が配列表の配列番号1に示されている。従って、上記本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列の全長から成るものであってよく、また、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの断片であって、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド断片であってもよい。上記した通り、7アミノ酸残基以上から成る配列番号2のポリペプチドの断片であれば、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応し得るため、配列番号1に示される塩基配列のコード領域内の連続する21塩基以上から成るポリヌクレオチドであれば、該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、配列番号2のポリペプチドに対するポリクローナル抗体との結合性を有し得る。あるいは、それらの保存的置換塩基配列(コードするアミノ酸配列が同じで塩基配列が異なるもの)を用いることができる。なお、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定することができる。従って、上記した特異反応性修飾ポリペプチド及び特異反応性付加ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列も容易に特定することができる。
【0040】
本発明のポリペプチドをコードする上記ポリヌクレオチドは、例えば以下のようにして調製することができる。配列番号1の塩基配列を有するDNAは、イヌ染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、配列番号1に記載した塩基配列を増幅できるように設計した一対のプライマーを用いてPCRを行うことにより調製することができる。PCRの反応条件は適宜設定することができ、例えば、94℃で30秒間(変性)、55℃で30秒〜1分間(アニーリング)、72℃で2分間(伸長)からなる反応行程を1サイクルとして、例えば30サイクル行った後、72℃で7分間反応させる条件などを挙げることができるが、これに限定されない。また、本明細書中の配列表の配列番号1および配列番号2に記載した塩基配列およびアミノ酸配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それを用いてイヌなどのcDNAライブラリーをスクリーニングする事により本発明のDNAを単離することができる。cDNAライブラリーは、本発明のDNAを発現している細胞、器官又は組織から作製することが好ましい。上記したプローブ又はプライマーの調製、cDNAライブラリーの構築、cDNAライブラリーのスクリーニング、ならびに目的遺伝子のクローニングなどの操作は当業者に既知であり、例えば、モレキュラークロニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラバイオロジー等に記載された方法に準じて行うことができる。また、上記した通り、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定できるので、そのようなポリヌクレオチドは、市販の核酸合成機を用いて常法により合成することができる。
【0041】
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含み、細胞中で該ポリヌクレオチドを発現することができる組換えベクターをも提供する。細胞は、哺乳動物細胞であっても、大腸菌や酵母菌のような原核又は真核微生物であってもよい。哺乳動物細胞に遺伝子導入するためのベクターとしては、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよく、これら自体は周知であり、種々のものが市販されているので、市販のベクターを利用することができる。市販のベクターのマルチクローニング部位に上記した本発明のポリヌクレオチドを挿入することにより本発明の組換えベクターを得ることができる。
【0042】
哺乳動物細胞に遺伝子導入するためのベクターに本発明のポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターは、癌の治療及び/又は予防のための遺伝子ワクチンとして有用であり得る。遺伝子ワクチンの投与経路は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与経路であり、投与量は、抗原の種類等に応じて適宜選択することができるが、通常、体重1kg当たり、遺伝子ワクチンの重量で0.1μg〜100mg程度、好ましくは1μg〜10mg程度である。
【0043】
ウイルスベクターによる方法としては、例えばレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス等のRNAウイルスまたはDNAウイルスに本発明のDNAを組み込んで導入する方法が挙げられる。この中で、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス等を用いた方法が特に好ましい。
【0044】
その他の方法としては、発現プラスミドを直接筋肉内に投与する方法(DNAワクチン法)、リポソーム法、リポフェクチン法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等が挙げられ、特にDNAワクチン法、リポソーム法が好ましい。
【0045】
本発明のペプチドをコードする遺伝子を実際に医薬として作用させるには、遺伝子を直接体内に導入するin vivo方法、およびヒトからある種の細胞を採取し体外で遺伝子を該細胞に導入しその細胞を体内に戻すex vivo方法がある(日経サイエンス,1994年4月,p20−45、月刊薬事,1994年,第36巻,第1号,p.23−48、実験医学増刊,1994年,第12巻,第15号、およびこれらの引用文献等)。in vivo方法がより好ましい。
【0046】
in vivo方法により投与する場合は、治療目的の疾患、症状等に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投与することが出来る。in vivo方法により投与する場合は、例えば、液剤等の製剤形態をとりうるが、一般的には有効成分である本発明のDNAを含有する注射剤等とされ、必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。また、本発明のDNAを含有するリポソームまたは膜融合リポソーム(センダイウイルス(HVJ)−リポソーム等)においては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤等のリポソーム製剤の形態とすることができる。
【0047】
一方、大腸菌や酵母菌などの微生物用のベクターも周知であり、種々のものが市販されている。その具体例は上記したとおりである。微生物用のベクターに本発明のポリヌクレオチドを組み込んだ組換えベクターは、上記した通り、本発明のペプチドを遺伝子工学的に大量生産するために用いることができる。遺伝子工学的手法による本発明のポリペプチドの生産方法は、上記したとおりである。
【0048】
下記実施例に記載される通り、本発明により、精巣と癌細胞において特異的に発現している新規ポリペプチドのcDNAの塩基配列(配列番号1)が明らかになった。すなわち、本発明は、配列番号1に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、上記新規ポリペプチドのmRNAやcDNAを測定するためのポリヌクレオチド(以下「測定用ポリヌクレオチド」という)として用いることができる。
【0049】
ここで、「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイズの条件下において、配列番号1に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチドとのみハイブリダイズし、その他のポリヌクレオチドとは実質的にハイブリダイズしないという意味である。「通常のハイブリダイズの条件下」とは、通常のPCRのアニーリングやプローブによる検出に用いられる条件下のことをいい、例えば、Taqポリメラーゼを用いたPCRの場合には、50mM KCl、10mM Tris-HCl(pH 8.3〜9.0)、1.5mM MgCl2といった一般的な緩衝液を用いて、54℃〜60℃程度の適当なアニーリング温度で反応を行なうことをいい、また、例えばノーザンハイブリダイゼーションの場合には、5 x SSPE、50%ホルムアミド、5 x Denhardt's solution、0.1〜0.5%SDSといった一般的なハイブリダイゼーション溶液を用いて、42℃〜65℃程度の適当なハイブリダイゼーション温度で反応を行なうことをいう。ただし、適当なアニーリング温度又はハイブリダイゼーション温度は、上記例示に限定されず、プライマー又はプローブとして用いる測定用ポリヌクレオチドのTm値及び実験者の経験則に基づいて定められ、当業者であれば容易に定めることができる。「実質的にハイブリダイズしない」とは、全くハイブリダイズしないか、するとしても検出対象のポリヌクレオチドにハイブリダイズする量よりも大幅に少なく、相対的に無視できる程度の微量しかハイブリダイズしないという意味である。そのような条件下で特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、対象のポリヌクレオチドの塩基配列と一定以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられ、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。相同性の定義は、上記したアミノ酸配列の相同性と同様である。なお、測定用ポリヌクレオチドの末端に対象とハイブリダイズしない領域が含まれていても、プローブの場合には、ハイブリダイズする領域がプローブ全体のおよそ半分以上を占めていれば検出に用いることができるし、また、プライマーの場合には、ハイブリダイズする領域がプライマー全体のおよそ半分以上を占め、かつ3'末端側にあれば、正常にアニーリングして伸長反応を生じ得るので、検出に用いることができる。そのように、測定用ポリヌクレオチドの末端にハイブリダイズしない領域が含まれている場合において、対象の塩基配列との相同性を算出するときは、ハイブリダイズしない領域は考慮せず、ハイブリダイズする領域のみに着目して算出するものとする。
【0050】
なお、本発明において、「配列番号1に示される塩基配列」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列の他、これと相補的な配列も包含する。従って、「配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」と言った場合には、配列番号1に実際に示されている塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、その相補的な塩基配列を有する一本鎖ポリヌクレオチド、及びこれらから成る二本鎖ポリヌクレオチドが包含される。上記した測定用ポリヌクレオチドを調製する場合には、適宜いずれかの塩基配列を選択することとなるが、当業者であれば容易にその選択をすることができる。
【0051】
上記測定用ポリヌクレオチドは、プローブ又は核酸増幅法におけるプライマーとして用いることができる。特異性を確保するために、測定用ポリヌクレオチドの塩基数は18塩基以上が好ましい。サイズは、プローブとして用いる場合には、好ましくは18塩基以上、さらに好ましくは20塩基以上、コード領域の全長以下が好ましく、プライマーとして用いる場合には、18塩基以上が好ましく、50塩基以下が好ましい。被検核酸の部分領域と相補的な配列を有するポリヌクレオチドをPCRのような遺伝子増幅法のプライマー、又はプローブとして用いて被検核酸を測定する方法自体は周知であり、例えば下記実施例に具体的に詳述されるRT-PCRの他、ノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等が挙げられる。なお、本明細書において、「測定」には、検出、定量、半定量のいずれもが包含される。
【0052】
PCRのような核酸増幅法自体は、この分野において周知であり、そのための試薬キット及び装置も市販されているので容易に行うことができる。すなわち、例えば、鋳型となる被検核酸(例えば、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子のcDNA)と本発明の測定用ポリヌクレオチド(プライマー)の一対とを、公知の緩衝液中で、Taqポリメラーゼ及びdNTPの存在下で、変性、アニーリング、伸長の各工程を反応液の温度を変化させることにより行う。通常、変性工程は、90〜95℃、アニーリング工程は、鋳型とプライマーのTm又はその近傍(好ましくは±4℃以内)、伸長工程はTaqポリメラーゼの至適温度である72℃で行われる。各工程は30秒〜2分程度で適宜選択される。この熱サイクルを例えば25〜40回程度繰り返すことにより、一対のプライマーで挟まれた鋳型核酸の領域が増幅される。なお、核酸増幅法はPCRに限定されるものではなく、この分野において周知の他の核酸増幅法も用いることができる。このように、上記した本発明の測定用ポリヌクレオチドの一対をプライマーとして用い、被検核酸を鋳型として用いて核酸増幅法を行うと、被検核酸が増幅されるのに対し、検体中に被検核酸が含まれない場合には増幅が起きないので、増幅産物を検出することにより検体中に被検核酸が存在するか否かを知ることができる。増幅産物の検出は、増幅後の反応溶液を電気泳動し、バンドをエチジウムブロミド等で染色する方法や、電気泳動後の増幅産物をナイロン膜等の固相に不動化し、被検核酸と特異的にハイブリダイズする標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、該標識を検出することにより行うことができる。また、クエンチャー蛍光色素とレポーター蛍光色素を用いたいわゆるリアルタイム検出PCRを行うことにより、検体中の被検核酸の量を定量することも可能である。なお、リアルタイム検出PCR用のキットも市販されているので、容易に行うことができる。さらに、電気泳動バンドの強度に基づいて被検核酸を半定量することも可能である。なお、被検核酸は、mRNAでも、mRNAから逆転写したcDNAであってもよい。被検核酸としてmRNAを増幅する場合には、上記一対のプライマーを用いたNASBA法(3SR法、TMA法)を採用することもできる。NASBA法自体は周知であり、そのためのキットも市販されているので、上記一対のプライマーを用いて容易に実施することができる。
【0053】
プローブとしては、上記測定用ポリヌクレオチドに蛍光標識、放射標識、ビオチン標識等の標識を付した標識プローブを用いることができる。ポリヌクレオチドの標識方法自体は周知である。被検核酸又はその増幅物を固相化し、標識プローブとハイブリダイズさせ、洗浄後、固相に結合された標識を測定することにより、検体中に被検核酸が存在するか否かを調べることができる。あるいは、測定用ポリヌクレオチドを固相化し、被検核酸をハイブリダイズさせ、固相に結合した被検核酸を標識プローブ等で検出することも可能である。このような場合、固相に結合した測定用ポリヌクレオチドもプローブと呼ばれる。なお、ポリヌクレオチドプローブを用いた被検核酸の測定方法もこの分野において周知であり、緩衝液中、ポリヌクレオチドプローブを被検核酸とTm又はその近傍(好ましくは±4℃以内)で接触させることによりハイブリダイズさせ、洗浄後、ハイブリダイズした標識プローブ又は固相プローブに結合された鋳型核酸を測定することにより行うことができる。このような方法には、例えばノーザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーション、サザンブロット法等の周知の方法が包含される。
【0054】
また、本発明により、配列番号2のポリペプチドが提供されたので、これと抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片を調製することもできる。該抗体又は抗原結合性断片を用いて免疫測定することにより、配列番号2のポリペプチドを測定することができる。ここで、抗原結合性断片とは、抗体分子中に含まれるFab断片やF(ab')2断片のような、抗原との結合能を有する抗体断片を意味する。免疫測定方法については上記したとおりであり、サンドイッチ法による方法であれば、例えば本発明の抗体又は抗原結合性断片を固相に不動化することにより、試料中の配列番号2のポリペプチドを測定することができる。また、固定した体組織切片を試料として用いる場合には、例えば、体組織試料を本発明の抗体又は抗原結合性断片と反応させ、洗浄後、蛍光標識した適当な二次抗体と反応させ、洗浄後、蛍光顕微鏡を組み合わせた測定装置によって測定を行うことにより、体組織中の配列番号2のポリペプチドの局在や存在量を調べることができる。
【0055】
本発明の抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、免疫測定等のためには、再現性の高いモノクローナル抗体が好ましい。ペプチドを免疫原とするポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の調製方法は周知であり、常法により容易に行なうことができる。例えば、ペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やカゼイン等のキャリアタンパク質に結合させたものを免疫原とし、アジュバントと共に動物に免疫することにより該ペプチドに対する抗体を誘起することができる。免疫した動物から採取した脾細胞やリンパ球のような抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを調製し、本発明のペプチドと結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択し、これを増殖させて培養上清から本発明のポリペプチドを対応抗原とするモノクローナル抗体を得ることができる。なお、上記の方法は周知の常法である。
【0056】
下記実施例にある通り、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子は、精巣と癌細胞に特異的に発現しており、従って、癌細胞中では配列番号2のポリペプチドが健常細胞よりも有意に多く存在していると考えられる。従って、癌の疑いのある患者から得た試料における、該ポリペプチド又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることにより、該患者が癌であるか否かを調べることができる。すなわち、本発明は、癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることを含む、癌の検出方法を提供する。該検出方法は、例えば、患者から得た試料中の前記ポリペプチド又は前記遺伝子の発現量を調べ、これを健常生体から得た試料における発現量と比較することにより行うことができる。健常生体から得た試料における発現量は、一旦多数の健常生体について測定して正常値を定めておけば、それ以後は該正常値と測定値とを比較することにより癌の検出を行うことができる。また、癌を罹患していることが分かっている多数の患者から試料を得て、癌患者における発現量の基準値(異常値)を定め、正常値及び異常値の両者と比較を行なってもよい。発現量が正常値より有意に高く、異常値に近ければ、その患者は癌である可能性が高いと考えられる。正常値との比較のみでも癌の検出は可能であるが、異常値との比較も行うことにより、さらに検出精度を高めることができる。異常値についても、正常値と同様、一旦定めておけばそれ以後はその異常値を比較に用いることができる。なお、正常値及び異常値は、例えば、各試料における発現量を数値化し、その平均値を算出することによって定めることができる。遺伝子やタンパク質の発現量は常法により測定することができる。例えば、遺伝子の発現量は、mRNAを鋳型とするリアルタイム検出RT-PCRのような常法により定量することができ、常法であるノーザンブロットにおける染色強度等によっても概ね定量することができる。また、タンパク質の発現量は、常法である免疫測定により定量することができる。試料としては、例えば哺乳動物由来の体組織等を用いることができる。対象となる患者は哺乳動物であり、好ましくはイヌ、ネコ又はヒトである。
【0057】
また、上述した通り、ネコ及びヒトにおいても、本発明のポリペプチドと抗原抗体反応するポリクローナル抗体を癌患者特異的に検出し得る(下記実施例参照)。従って、ネコ及びヒト等のイヌ以外の哺乳動物においても、該ポリクローナル抗体の対応抗原であるポリペプチド及びそれをコードする遺伝子が高発現していると考えられるので、該対応抗原又は該遺伝子の発現を調べることによって、該哺乳動物の癌を検出することができる。
【0058】
対応抗原ポリペプチドの測定は、周知の免疫測定により容易に行うことができる。ここで、イヌ由来の配列(配列番号2)をもとに調製された本発明のポリペプチドであっても、担癌ネコ等のイヌ以外の担癌生体内で特異的に誘導されている抗体と抗原抗体反応するのであるから、担癌イヌ体内で高発現している抗原ポリペプチド(配列番号2)と、ネコ等のイヌ以外の担癌生体内で高発現している抗原ポリペプチドとは、アミノ酸配列の相同性が高く、エピトープの構造がほぼ一致しているものと考えられる。従って、本発明のポリペプチドを免疫原として用いて調製した抗体は、イヌ以外の担癌生体で高発現している抗原ポリペプチドとも抗原抗体反応し得るので、該抗体を上記した対応抗原ポリペプチドの免疫測定に好ましく用いることができる。すなわち、配列番号2のポリペプチドと抗原抗体反応する上記本発明の抗体又はその抗原結合性断片を用いて、上記した対応抗原ポリペプチドを免疫測定することができる。
【0059】
また、担癌生体内で高発現している抗原ポリペプチドをコードする遺伝子も、相互に相同性が高いと考えられるので、配列番号2のポリペプチドをコードする遺伝子(配列番号1)のmRNAと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、イヌ以外の担癌生体内で高発現する該遺伝子のmRNAとも特異的にハイブリダイズし得る。従って、配列番号1のポリヌクレオチドを測定するための測定用ポリヌクレオチドを用いて、上記した対応抗原ポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を調べることができる。
【0060】
本発明の抗体又は抗原結合性断片には、マンガンや鉄等の金属を結合させることもできる。そのような金属結合抗体又は抗原結合性断片を体内に投与すると、抗原タンパク質が存在する部位に該抗体又は抗原結合性断片が集積するので、MRI等によって金属を測定すれば、抗原タンパク質を産生する癌細胞の存在を検出することができる。従って、本発明の抗体又は抗原結合性断片は、このような癌の診断剤としても有用であり得る。
【0061】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
【実施例】
【0062】
実施例1:SEREX法による新規癌抗原タンパクの取得
(1)cDNAライブラリの作製
健常な犬の精巣組織から酸−グアニジウム−フェノール−クロロフォルム法(Acid guanidium-Phenol-Chloroform法)により全RNAを抽出し、Oligotex-dT30 mRNA purification Kit(宝酒造社製)を用いてキット添付のプロトコールに従ってポリA RNAを精製した。
【0063】
この得られたmRNA(5μg)を用いてイヌ精巣cDNAファージライブラリを合成した。cDNAファージライブラリの作製にはcDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA Synthesis Kit,ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE社製)を用い、キット添付のプロトコールに従ってライブラリを作製した。作製したcDNAファージライブラリのサイズは1.3×10pfu/mlであった。
【0064】
(2)血清によるcDNAライブラリのスクリーニング
上記作製したイヌ精巣由来cDNAファージライブラリを用いて、イムノスクリーニングを行った。具体的にはΦ90×15mmのNZYアガロースプレートに2340クローンとなるように宿主大腸菌(XL1-Blue MRF')に感染させ、42℃、3〜4時間培養し、溶菌班(プラーク)を作らせ、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトシド)を浸透させたニトロセルロースメンブレン(Hybond C Extra: GE Healthecare Bio-Science社製)でプレートを37℃で4時間覆うことによりタンパク質を誘導・発現させ、メンブレンにタンパク質を転写した。その後メンブレンを回収し0.5%脱脂粉乳を含むTBS(10mM Tris-HCl,150mM NaCl pH7.5)に浸し4℃で一晩振盪することによって非特異反応を抑制した。このフィルターを250倍希釈した患犬血清と室温で2〜3時間反応させた。
【0065】
上記患犬血清としては、扁平上皮癌の患犬より採取した血清を用いた。これらの血清は−80℃で保存し、使用直前に前処理を行った。血清の前処理方法は、以下の方法による。すなわち、外来遺伝子を挿入していないλ ZAP Expressファージを宿主大腸菌(XL1-BLue MRF')に感染させた後、NZYプレート培地上で37℃、一晩培養した。次いで0.5M NaClを含む0.2M NaHCO3 pH8.3のバッファーをプレートに加え、4℃で15時間静置後、上清を大腸菌/ファージ抽出液として回収した。次に、回収した大腸菌/ファージ抽出液をNHS-column(GE Healthecare Bio-Science社製)に通液して、大腸菌・ファージ由来のタンパク質を固定化した。このタンパク固定化カラムに患犬血清を通液・反応させ、大腸菌およびファージに吸着する抗体を血清から取り除いた。カラムを素通りした血清画分は、0.5%脱脂粉乳を含むTBS−T(0.05% Tween20/TBS)にて250倍希釈し、これをイムノスクリーンニング材料とした。
【0066】
かかる処理血清と上記融合タンパク質をブロットしたメンブレンをTBST(0.05% Tween20/TBS)にて4回洗浄を行った後、二次抗体として0.5%脱脂粉乳を含むTBSにて3000倍希釈を行った抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated: BETHYL Laboratories社製)を、室温1時間反応させ、NBT/BCIP反応液(Roche社製)を用いた酵素発色反応により検出し、発色反応陽性部位に一致するコロニーをΦ90×15mmのNZYアガロースプレート上から採取し、SM緩衝液(100mM NaCl、10mM MgClSO4、50mM Tris-HCl、0.01%ゼラチン pH7.5)500μlに溶解させた。発色反応陽性コロニーが単一化するまで上記と同様の方法で、二次、三次スクリーニングを繰り返し、血清中のIgGと反応する35360個のファージクローンをスクリーニングして、7個の陽性クローンを単離した。
【0067】
(3)単離抗原遺伝子の相同性検索
上記方法により単離した7個の陽性クローンを塩基配列解析に供するため、それぞれのクローンについて、ファージベクターからプラスミドベクターに転換する操作を行った。具体的には宿主大腸菌(XL1-Blue MRF’)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液200μlと、精製したファージ溶液100μlさらにExAssist helper phage (STRATAGENE社製)1μlを混合した後37℃で15分間反応後、LB培地を4ml添加し37℃で2〜3時間培養を行い、直ちに70℃の水浴にて20分間保温した後、4℃、5000rpm、20分間遠心を行い上清をファージミド溶液として回収した。次いでファージミド宿主大腸菌(SOLR)を吸光度OD600が1.0となるよう調製した溶液100μlと、精製したファージ溶液100μlを混合した後37℃で15分間反させ、100μlをアンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB寒天培地に播き37℃一晩培養した。トランスフォームしたSOLRのシングルコロニーを採取し、アンピシリン(終濃度50μg/ml)含有LB培地37℃にて培養後、PureLink Quick plasmid Miniprep Kit(invitrogen社製)を使って目的のインサートを持つプラスミドDNAを精製した。
【0068】
精製した各プラスミドは、配列番号3に記載のT3プライマーと配列番号4に記載のT7プライマーを用いて、プライマーウォーキング法によるインサート全長配列の解析を行った。このシークエンス解析により取得した塩基配列およびアミノ酸配列を用いて、相同性検索プログラムBLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を行い既知遺伝子との相同性検索を行った結果、7個の陽性クローンは5個の遺伝子であることが確認された。その内の1つは新規遺伝子であり、795アミノ酸をコードする遺伝子であることが判明した。この遺伝子のcDNA塩基配列を配列番号1に記載した。
【0069】
(4)各組織での発現解析
上記方法により得られた遺伝子に対しイヌ正常組織および各種癌細胞株における発現をRT−PCR(Reverse Transcription-PCR)法により調べた。逆転写反応は以下の通り行なった。すなわち、各組織50−100mgおよび各細胞株5−10×10個の細胞からTRIZOL試薬(invitrogen社製)を用いて添付のプロトコールに従い全RNAを抽出した。この全RNAを用いてSuperscript First-Strand Synthesis System for RT-PCR(invitrogen社製)により添付のプロトコールに従いcDNAを合成した。PCR反応は、取得した遺伝子特異的なプライマー(配列番号5および6に記載)を用いて以下の通り行った。すなわち、逆転写反応により調製したサンプル0.25μl、上記プライマーを各2μM、0.2mM各dNTP,0.65UのExTaqポリメラーゼ(宝酒造社製)となるように各試薬と添付バッファーを加え全量を25μlとし、Thermal Cyclerを用いて、94℃−30秒、55℃−30秒、72℃−1分のサイクルを30回繰り返した。なお、上記の遺伝子特異的プライマーは、配列番号1中の1833番塩基〜2350番塩基の領域を増幅するものであった。比較対照のため、GAPDH特異的なプライマー(配列番号7および8に記載)も同時に用いた。その結果、図1に示すように、健常なイヌ組織では精巣特異的に強く発現しており、癌細胞株では乳癌細胞株で強い発現が確認された。取得した遺伝子の相同因子の発現を併せて確認したところ、各種癌細胞株で強い発現が検出された。
【0070】
なお、図1中、縦軸の参照番号1は、本発明において取得した新規遺伝子の発現パターンを、参照番号2は、比較対照であるGAPDH遺伝子の発現パターンを示す。
【0071】
実施例2:担癌検体由来血清を用いた癌診断
(1)組換えタンパク質の作製
実施例1で取得した遺伝子を基にした組換えタンパク質を以下の方法にて作製した。PCRは、実施例1で得られたファージミド溶液より調製し、配列解析に供したベクターを1μl、それぞれ2種類のプライマー(配列番号9および配列番号10に記載)を各1μM, 0.2mM各dNTP, 1mM MgSO4, 1UのKODポリメラーゼとなるように各試薬と添付バッファーを加え全量を50μlとし、Thermal Cyclerを用いて、94℃−30秒、55℃−30秒、68℃−3分のサイクルを15回繰り返すことにより行った。なお、上記2種類のプライマーは、配列番号1に示す塩基配列のコード領域の全長を含む領域を増幅するものであった。PCR後、増幅されたDNAを1%アガロースゲルにて電気泳動し、PureLink Quick Gel Extraction Kit(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA)を用いて約2.4KbpのDNA断片を精製・調製した。
【0072】
調製したDNA断片をpET100/D-TOPO(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA )とでTOPO反応を行い、大腸菌用発現ベクターを作製した。宿主として大腸菌BL21(Star)(invitrogen Carlsbad,CA 92008 USA )を使用した。トランスフォームしたBL21のシングルコロニーをアンピシリン(終濃度100μg/ml)含有LB培地でOD600が約0.5になるまで37℃で培養後、終濃度1mMになるようにIPTGを添加してさらに20℃で20時間培養した。培養後、大腸菌を5,000xgで4℃、30分間遠心し、沈殿物を0.1% CHAPSとプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma社製)の存在下で超音波にて破砕した。その後、16,000xgで4℃、30分間、遠心し、得られた上清を可溶性画分、沈殿物を不溶性画分とした。
【0073】
組換えタンパク質の産生はウェスタンブロットにより以下の方法で確認した。回収した培養上清に等量の2×泳動バッファー(0.125MTris-HCl pH6.8,10% 2ME,4% SDS,10% Succrose,0.01% BPB)を添加し、95℃で5分間熱処理を行った。その後、サンプルをSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に転写した。タンパクが転写されたPVDF膜を10%ブロックエース(雪印社製)を含むPBSで4℃、一晩、ブロッキングし、その後、抗His-Tagに対する抗体(Anti-His Antibody Selector Kit QIAGEN社製)を室温で2-3時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、SuperSignal WestFemto(ピアス社製)に反応させ、X線フィルムに感光することで、組換えタンパク質の発現を確認した。なお、当該組換えタンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列の全長を含むものであった。
【0074】
上記方法により得られた可溶性画分を5mlのHis-Trapカラム(Amersham Biosciences社製)に通液した後、未吸着画分をPBSにて洗浄後、直ちに10mMイミダゾールを含む50mM Tris-HCl pH8.0の緩衝液にてカラム容量の10倍洗浄を行った後、100mMイミダゾールを含む50mMTris-HCl pH8.0の緩衝液にて溶出を行い精製画分とし、以降この精製画分をELISA用の材料とした。
【0075】
(3)イヌの癌診断
病理診断で悪性と診断された腫瘍を持つ患犬133頭と健常犬6頭より血液を採取し血清を分離した。作製した組換えタンパク質と採取した血清および抗イヌIgG抗体を用いてELISA法にて組換えタンパク質特異的IgG抗体を測定した。具体的には、大腸菌を用いて作製した組換えタンパク質をNunc社製96穴イムノプレートに固相化後、余剰官能基をブロックするため0.5% BSAを含む50mM NaHCO3 pH8.3の緩衝液にて室温1時間反応させた後、各種癌血清を0.5% BSAを含む50mM NaHCO3 pH8.3の緩衝液にて250倍に希釈を行い反応させた。その後、PBS-T(0.05% Tween 20を含むPBS)にて洗浄した後、ヤギ抗イヌIgG(Goat anti Dog IgG-h+I HRP conjugated:BETHYL Laboratories社製)と基質であるO-フェニレンジアミンを加えて吸光度計を用いて吸光度を測定した。その結果の一部を図2に示す。図2に示すように、担癌生体由来の血清においてのみ有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価が検出された。
【0076】
図2中、参照番号3から参照番号6までは、乳癌の患犬由来の血清を用いた結果であり、参照番号7から参照番号9までは健常犬由来の血清を用いた結果である。
【0077】
上記癌診断に用いた133検体は、各癌種を含む。具体的には、悪性黒色腫、悪性混合腫瘍、肝細胞癌、基底細胞癌、勅細胞腫様歯肉腫、口腔内腫瘤、肛門周囲腺癌、肛門嚢腫瘤、肛門嚢アポクリン腺癌、セルトリ細胞腫、膣前庭癌、皮脂腺癌、皮脂腺上皮腫、脂腺腺腫、汗腺癌、鼻腔内腺癌、鼻腺癌、甲状腺癌、大腸癌、気管支腺癌、腺癌、腺管癌、乳腺癌、複合型乳腺癌、乳腺悪性混合腫瘍、乳管内乳頭状腺癌、線維肉腫、血管周皮腫、骨肉腫、軟骨肉腫、軟部組織肉腫、組織球肉腫、粘液肉腫、未分化肉腫、肺癌、肥満細胞腫、皮膚平滑筋腫、腹腔内平滑筋腫、平滑筋腫、扁平上皮癌、慢性型リンパ球性白血病、リンパ腫、消化管型リンパ腫、消化器型リンパ腫、小〜中細胞型リンパ腫、副腎髄質腫瘍、顆粒膜細胞腫、褐色細胞腫などである。これら担癌犬生体由来の血清は、有意に高い組換えタンパク質に対する抗体価を示した。本診断法による悪性癌判断を健常犬平均値の2倍以上とした場合、約60%(79検体)で悪性癌と診断できることがわかった。
【0078】
(4)ネコの癌診断
次に担癌猫および健常猫の診断を行った。上記で作製した組換えタンパク質と抗ネコIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該組換えタンパクに特異的に反応するネコ血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ネコIgG抗体(PEROXIDASE-CONJUGATED GOAT IgG FRACTION TO CAT IgG (WHOLE MOLECULE): CAPPEL RESERCH REAGENTS社製)をブロッキング溶液にて8000倍希釈して用いた。
【0079】
その結果、病理診断で悪性癌と判定された担癌猫3匹では、450nmでの吸光度でいずれも0.1以上の値が検出された。一方、健常猫では全く検出されなかった。
【0080】
従って犬と同様、ネコの場合も、癌を患った検体では値が検出され、一方健常の検体ではまったく検出されなかったため、ネコについても犬と同様に、本手法にて癌診断が可能であることがわかった。
【0081】
(5)健常人の診断
上記で作製した組換えタンパク質と抗ヒトIgG抗体を用いて、上記と同様にして、該組換えタンパクに特異的に反応する健常人血清中のIgG抗体価を測定した。2次抗体は、HRP修飾抗ヒトIgG抗体(HRP-Goat Anti-Human IgG(H+L) Conjugate: Zymed Laboratories社製)をブロッキング溶液にて10000倍希釈して用いた。ポジティブコントロールとしてリン酸緩衝化生理食塩水にて50μg/mlに調整した卵白アルブミン抗原を固相化したものを用いた。その結果、450nmでの吸光度は卵白アルブミン抗原では、健常人6人でいずれも0.2以上であったのに対し、この組換えタンパク質には0と全く検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明で取得した新規遺伝子の、イヌ正常組織および腫瘍細胞株での発現パターンを示す図である。参照番号1;新規遺伝子の発現、参照番号2;GAPDH遺伝子の発現を示す。
【図2】本発明のタンパク質に対する、担癌犬由来血清中の抗体の反応性を示す図である。参照番号3ないし6;乳癌患犬由来の血清、参照番号7ないし9;健常犬由来の血清の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)ないし(c)のいずれかのポリペプチドであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対するポリクローナル抗体と抗原抗体反応するポリペプチド。
(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド。
(b) (a)のポリペプチドと80%以上の相同性を有し、7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド。
(c) (a)又は(b)のポリペプチドを部分配列として含むポリペプチド。
【請求項2】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチド、又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列中の連続する7個以上のアミノ酸から成るポリペプチドである請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応する抗体を測定することを含む、癌の検出方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリペプチドと前記試料中に含まれる前記抗体との間の抗原抗体反応を利用した免疫測定により行なう請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記試料が血清である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記患者がイヌ、ネコ又はヒトである請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含み、細胞中で該ポリヌクレオチドを発現することができる組換えベクター。
【請求項11】
請求項9に記載のポリヌクレオチドが導入され、該ポリヌクレオチドを発現する細胞。
【請求項12】
配列表の配列番号1に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列表の配列番号1に示される塩基配列中の連続する18塩基以上から成るポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のポリヌクレオチドから成る、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドの測定用ポリヌクレオチド。
【請求項15】
プローブ又はプライマーである請求項14記載の測定用ポリヌクレオチド。
【請求項16】
癌検出用ポリヌクレオチドである請求項14又は15に記載の測定用ポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応する抗体又は抗原結合性断片。
【請求項18】
請求項17記載の抗体又はその抗原結合性断片を含む癌の診断剤。
【請求項19】
癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと抗原抗体反応するポリクローナル抗体の対応抗原又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることを含む、癌の検出方法。
【請求項20】
癌であるか否かを検出すべき患者から得た試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそれをコードする遺伝子の発現量を調べることを含む、癌の検出方法。
【請求項21】
請求項16記載のポリヌクレオチドを用いて、前記試料における、前記遺伝子から生産されるmRNAの存在量を調べることにより、前記遺伝子の発現量を調べる、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
請求項17記載の抗体又は抗原結合性断片を用いて、前記試料における、前記対応抗原の存在量を調べることにより、前記対応抗原の発現量を調べる、請求項19記載の方法。
【請求項23】
請求項17記載の抗体又は抗原結合性断片を用いて、前記試料における、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの存在量を調べることにより、前記ポリペプチドの発現量を調べる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記患者がイヌ、ネコ又はヒトである請求項19ないし23のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−173120(P2008−173120A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326708(P2007−326708)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】