新規表面露出ヘモフィルス・インフルエンザ(HAEMOPHILUSINFLUENZAE)タンパク質(タンパク質E;pE)
本発明は、表面露出タンパク質(タンパク質E;pE)、毒性因子(これは、配列番号1に記載のようなアミノ酸配列を有し、ヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出することができる。)、この表面露出タンパク質の免疫原性断片及びこの表面露出タンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク質(pE(A))又はその短縮型変異体に関する。核酸配列、ワクチン、プラスミド及びファージ、非ヒト宿主、組み換え核酸配列、融合タンパク質及び融合産物も記載する。このタンパク質又はその短縮型断片を組み換え産生する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ての莢膜性及び型別不能ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)に存在する表面露出タンパク質E、毒性因子に関する。
【背景技術】
【0002】
b型ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)(Hib)及び型別不能H.インフルエンザ(NTHi)は両者とも、小児及び成人において様々な疾患を引き起こす。Hibは、4歳以下の小児における細菌性髄膜炎及びその他の侵襲性感染症を引き起こし、一方、NTHiは中耳炎、副鼻腔炎、喉頭蓋炎、気管気管支炎及び肺炎の症例から単離され、新生児敗血症を引き起こし得る。現在、NTHiに対する市販のワクチンはないが、Hibに対して多くのワクチンが使用されている。これらのワクチンは、18ヶ月齢未満の小児で莢膜多糖に対する免疫反応が弱いことを解決するために様々なタンパク質担体(髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイド、無毒性突然変異ジフテリア毒素又はジフテリアトキソイド)に結合されている、Hib莢膜多糖、ポリリボシルリビトールリン酸からなる。Hib及びNTHi感染後、宿主抗体の標的となることが示されているので、H.インフルエンザ外膜タンパク質(OMP)もまた、ポリリボシルリビトールリン酸の担体となると考えられている。OMP、P1、P2、P4、P5及びP6及び98−kDaタンパク質に対する抗体が、H.インフルエンザ感染に対するインビボでの防御及びインビトロでの殺菌剤アッセイにおいて試験されており、P1、P4及びP6に対する抗体が、同種及び異種H.インフルエンザ株の両者に対して生物学的活性を示している。その他のOMPに対する抗体から異種防御が欠失している理由の1つは、様々なH.インフルエンザ株の間でのこれらのタンパク質の抗原的多様性である。従って、理想的な抗原には、細菌表面に露出され、抗原的によく保存されていることの両方が必須である。本研究室において、Hib及びNTHi株の両者において広く分布し、抗原的に保存されている42−kDa膜タンパク質(タンパク質D)を単離し、クローニングし、配列決定し、病原性因子であり有望なワクチン候補であることを示した(1−5)。
【0003】
20年前、ヘモフィルス・インフルエンザ及びM.カタラーリスは可溶性及び表面結合ヒトIgDの両方に対して強い親和性を示すことが分かった(6)。IgD−結合は、ヘモフィルス・インフルエンザ及びM.カタラーリスによるヒトリンパ球に対する強い細胞分裂促進効果を説明する現象である、表面結合IgDとの同様の相互作用に細胞レベルで平行していると思われる(7−9)。ヘモフィルス・インフルエンザ由来のIgD結合外膜タンパク質(タンパク質D)を分離し、クローニングし、重要な病原性因子であることが分かった(1−5)。しかし、タンパク質Dは試験したIgD骨髄腫の全てに普遍的には結合しない(10)。
【発明の開示】
【0004】
H.インフルエンザが上及び下気道での感染のこのような主要な原因であることが分かったことを考慮して、現在、H.インフルエンザに対して使用できるワクチンを開発することが必要とされている。
【0005】
従って、本発明の目的は、どのようにして、体内でH.インフルエンザが細胞と相互作用し、免疫系と相互作用し、新型ワクチンを提供できるかを発見することである。
【0006】
ある態様によると、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、ヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出することができる表面露出タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0007】
別の態様によると、本発明は、ヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出され得る、前記表面露出タンパク質の免疫原性断片又は天然のもしくは人工的に修飾したその変異体を提供する。
【0008】
さらなる態様によると、本発明は、上述の表面露出タンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク(配列番号1の位置1から21のアミノ酸が欠失しているか又は1つ以上のアミノ酸により置換されている。)を提供する。ある実施形態において、配列番号1の位置1から21のアミノ酸は、0から21個の任意のアミノ酸の配列により置換されている。別の実施形態において、本組み換え免疫原性タンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を有する。
【0009】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0010】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0011】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0012】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0013】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0014】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0015】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0016】
別の態様によると、本発明は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0017】
別の態様によると、本発明は、感染の予防又は治療用の薬剤の製造のための上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドの使用を提供する。ある実施形態において、この感染は、ヘモフィルス・インフルエンザにより引き起こされ、別の実施形態において、ヘモフィルス・インフルエンザは莢膜性又は型別不能である。
【0018】
さらに別の実施形態において、前記の使用は、小児ならびに例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の成人における、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染の予防又は治療のためである。
【0019】
ある態様によると、本発明は、上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドと、1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物と、を含む薬剤を提供する。
【0020】
別の態様によると、本発明は、上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドを含むワクチン組成物を提供する。ある実施形態において、前記ワクチン組成物は、前記タンパク質、断片又はペプチドの、少なくとも1つの、二量体、三量体又は多量体を含む。別の実施形態において、このワクチン組成物は、1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物をさらに含む。さらに別の実施形態において、前記ワクチン組成物は少なくとも1つのさらなるワクチンを含み、さらに別の実施形態において、前記ワクチン組成物は別の分子の免疫原性部分を含み、ここで、別の分子の免疫原性部分は、H.インフルエンザのタンパク質D(EP594 610)、モラクセラ・カタラーリスのMID(WO03/004651、WO97/41731及びWO96/34960)、モラクセラ・カタラーリスのUspA1又はUspA2(WO93/03761)及び何らかの気道病原体の外膜タンパク質又は炭水化物性莢膜又はDNAオリゴヌクレオチド(CpGモチーフなど)を含む群から選択され得る。
【0021】
ある態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドをコードする核酸配列ならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体に関する。ある実施形態において、前記核酸配列は少なくとももう1つの遺伝子に融合している。
【0022】
別の態様において、本発明は、上述の核酸配列を含むプラスミド又はファージに関する。
【0023】
また別の実施形態において、本発明は、上述の少なくとも1つのプラスミドを含み、上述のタンパク質、断片又はペプチドならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体を産生することができる非ヒト宿主に関し、この宿主は、細菌、酵母及び植物の中から選択される。ある実施形態において、前記宿主はE.コリである。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドが上述の組み換え核酸配列の使用によって少なくとももう1つのタンパク質と組み合わせられている、融合タンパク質又はポリペプチドを提供する。ある実施形態において、前記融合タンパク質は、上述のタンパク質、断片又はペプチドの、二量体、三量体又は多量体である。
【0025】
ある態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドが、共有結合により、又は何らかのその他の手段によりタンパク質、炭水化物又はマトリクスに結合した融合産物に関する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドの単離の方法に関する(該方法は、次の段階を含む:
a)該タンパク質、断片又はペプチドをコードするDNAを含むヘモフィルス・インフルエンザ又はE.コリを増殖させ、細菌を回収し、外膜又は封入体を単離し;
b)強い可溶化剤で封入体を可溶化し;
c)再生剤を添加し;
d)得られた懸濁液を8から10のpHの緩衝液に対して透析する。)。
【0027】
前記方法のある実施形態において、可溶化剤はグアニジン塩酸塩であり、別の実施形態において、再生剤はアルギニンである。
【0028】
別の態様において、本発明は、前記融合タンパク質もしくはポリペプチド又は前記融合産物を含む、上述の薬剤又はワクチン組成物に関する。
【0029】
ある態様において、本発明は、上述の薬剤又はワクチン組成物の医薬的有効量を投与することを含む、個体において感染を予防又は治療する方法に関する。ある実施形態において、前記感染は、莢膜性又は型別不能の両方のヘモフィルス・インフルエンザにより引き起こされ、また別の実施形態において、この感染は、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染からなる群から選択される。
【0030】
本発明は、タンパク質E、とりわけタンパク質Eポリペプチド及びタンパク質Eポリヌクレオチド、組み換え物質及びそれらの産生のための方法に関する。別の態様において、本発明は、とりわけ微生物性疾患を予防及び治療することを含む、このようなポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用するための方法に関する。さらなる態様において、本発明は、微生物感染に付随する疾患及びこのような感染に付随する状態を検出するための診断アッセイ、例えばタンパク質Eポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性を検出するためのアッセイなど、に関する。
【0031】
続く記述を読むことにより、及び本開示のその他の部分を読むことにより、開示する本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正が当業者にとって明らかとなろう。
【0032】
本発明を詳細に説明する前に。本発明が、本願おいて本明細書中に記載の実施形態及び段階の詳細に限定されないことを理解することが重要である。言及する実施例は、本発明の例示であるが、何ら本発明を限定するものではない。本発明は、その他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は遂行することができる。本明細書中で使用する語句及び用語は説明のためのものであり限定するものではないことを理解されたい。
【0033】
本願は、タンパク質E(pE)と称する新規H.インフルエンザ外膜タンパク質のクローニング及び発現について述べる。pEに対して特異的親和性を有するヒトIgD(λ)骨髄腫血清を用いて、タンパク質を発見した。
【0034】
組み換えpEの収率を最大限にするために、アミノ酸残基リジン22からリジン160からなる短縮型pE断片を作製した。したがって、アミノ酸グルタミン21を含むN−末端シグナルペプチドを除去し、ベクターpET26(+)由来の9個の残基に加えてリーダーペプチドで置換した。短縮型pE(即ちpE22−160)をpE(A)と名付けた。
【0035】
本発明は、ヘモフィルス外膜タンパク質pE及びpE由来ペプチド、pE22−60、pE22−95、pE22−125、pE41−68、pE56−125、pE56−160、pE86−160、pE115−160及びその二量体、三量体又はオリゴマーを含む。特に、pE又は表面露出している派生ペプチドの配列に高い優先度が与えられる。
【0036】
したがって、本発明によるワクチン組成物は、免疫原性成分として、全てのヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出することができる表面露出タンパク質、該表面露出タンパク質の免疫原性断片、該表面露出タンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク質、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する組み換え免疫原性タンパク質及び/又は配列番号3−10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を含む。ワクチン組成物はまた、免疫原性成分として、融合タンパク質もしくはポリペプチド又は本発明による融合産物も含み得る。この免疫原性成分は、ヘモフィルス・インフルエンザに対して抗体又はその他の免疫反応を誘発することができるが、誘発された抗体は、対象の細胞に対するヘモフィルス・インフルエンザ細菌の病原性を阻害する。本発明によるワクチン組成物の「免疫原性用量」は、投与後、投与前の標準的な免疫反応と比較して、検出可能な液性及び/又は細胞性免疫反応を生成させるものである。
【0037】
抗原を生成させるために本発明のワクチン組成物において使用される核配列は、様々な手順によって、多岐にわたる発現ベクターの何れかに挿入され得る。このような手順は、当業者にとって公知であると思われる。
【0038】
周知の方法及び技術を用いてワクチン組成物が容易に完成され、様々な方法で、好ましくは非経口又は鼻腔内投与で投与することができる。非経口又は鼻腔内投与に適切な処方には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び、問題となる対象の体液と処方物を等張にする溶質を含有し得る、水性及び非水性滅菌注射溶液;及び懸濁剤又は増粘剤を含み得る、水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。活性免疫原性成分は、医薬的に許容可能な賦形剤、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどと混合されることが多い。さらに、ワクチン組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、結合剤、担体又は保存料などの少量の補助剤も含有し得る。
【0039】
ワクチン組成物はまた、フロイントのアジュバント及び当技術分野で公知のその他の系など、組成物の免疫原性を促進するためのアジュバントも含み得る。ワクチン組成物の免疫原性成分、即ちタンパク質、断片、ペプチド、融合タンパク質もしくはポリペプチド、又は本発明の融合産物を中性又は塩形態としてワクチンに処方し得る。
【0040】
ワクチン組成物の投与量は、ワクチンの比活性に依存し、通常の実験により容易に決定され得る。本ワクチン組成物は、治療的に有効及び免疫原的な量で投与され、量は対象に依存する。
【0041】
本発明は、下記でより詳細に記載するタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチドに関する。特に、本発明は、型別不能H.インフルエンザのタンパク質Eのポリペプチド及びポリヌクレオチドに関する。タンパク質Eポリペプチドは、シグナル配列を有し、細菌の表面に露出している。シグナルペプチドはタンパク質Eポリペプチドの残基1から残基20に位置する。
【0042】
本明細書中での「タンパク質E」への言及は、本明細書中で考察する、本発明の、ペプチド、免疫原性断片、融合物、ポリペプチド又はタンパク質(シグナル配列有り又は無しの配列番号1など)の何れかに対する言及である。「タンパク質Dをコードするポリヌクレオチド」とは、本明細書中で考察する、本発明の、ペプチド、免疫原性断片、融合物、ポリペプチド又はタンパク質の何れかをコードする何れかのポリヌクレオチド配列を指す。
【0043】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書中で、代わりに、「からなる(consisting of)」という用語で置換され得る。
【0044】
本発明は、特に、本明細書中で挙げる、タンパク質Eポリヌクレオチド及びコードされるポリペプチドに関する。一般にリボポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドにおいて有用にこのような配列を利用することができることを当業者は認識しているので、「DNA」として下記で挙げる配列で引用される配列は、本発明のある実施形態の実例を表すことを理解されたい。
【0045】
タンパク質Eポリヌクレオチドの配列は、配列番号11(ntHi株772から)で示す。コードされるタンパク質Eポリペプチドの配列は、配列番号1(ntHi株772から)、2、3、4、5、6、7、8、9、10で示す。
【0046】
ポリペプチド
本発明のある態様において、本明細書中で「タンパク質E」及び「タンパク質Eポリペプチド」と呼ばれるH.インフルエンザ(特に、型別不能H.インフルエンザ)のポリペプチドならびに生物学的、診断学的、予防的、臨床的又は治療的に有用なその変異体及びこれらを含む組成物が提供される。
【0047】
本発明は、
(a)配列番号1−10の何れかの配列の配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド;
(b)配列番号0の選択された配列の全長にわたり、配列番号11の何れかの配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;又は
(c)配列番号1−10の何れかの配列のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、をさらに提供する。
【0048】
配列番号1−10で与えられるタンパク質Eポリペプチドは、型別不能H.インフルエンザ株由来のタンパク質Eポリペプチドである。さらなるタンパク質E配列が表1で挙げるH.インフルエンザ株から確かめられている。
【0049】
本発明はまた、配列番号1−10から選択される対応するアミノ酸配列を含むポリペプチドと同じ又は実質的に同じ免疫原性活性を有するタンパク質Eポリペプチドの隣接部分である、タンパク質Eポリペプチドの免疫原性断片も提供する;即ち、この断片(必要に応じて担体に連結される場合)は、タンパク質Eポリペプチドを認識する免疫反応を生じさせることができる。あるいは、又はさらに、この免疫原性断片は、全長タンパク質のIgD結合機能を保持し得る(実施例セクションに記載のように、例えばThe Binding Site(Birmingham、England)からのIgD(λ)結合能)。このような免疫原性断片には、例えば、N−末端リーダー配列及び/又は膜貫通ドメイン及び/又はC末端アンカードメインを欠くタンパク質Eポリペプチドが含まれ得る。好ましい態様において、本発明によるタンパク質Eの免疫原性断片は、配列番号1−10から選択された配列と、この配列の全長にわたり、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも97−99の同一性を有するポリペプチドの細胞外ドメインの実質的に全てを含む。
【0050】
断片は、本発明の何れかのポリペプチドの何れかのアミノ酸配列の、一部が完全に同じであるが全て同じではないアミノ酸配列を有するポリペプチドである。タンパク質Eポリペプチドと同様に、断片は「フリースタンディング」であるか又はそれらが一部又は領域を形成するより大きいポリペプチド内に、最も好ましくは1つのより大きいポリペプチドの1つの連続領域として含まれ得る。したがって、断片は、全長ネイティブ配列より短いものであり得るか、又は、より大きいポリペプチド内に含まれる場合、全長ネイティブ配列又はより長い融合タンパク質であり得る。
【0051】
好ましい断片は、例えば、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列もしくはそれらの変異体の一部を有する短縮ポリペプチド、例えばアミノ及び/又はカルボキシル末端アミノ酸配列を含む連続した一連の残基など、を含む。宿主細胞により又は宿主細胞において産生される本発明のポリペプチドの分解形態もまた好ましい。アルファへリックス及びアルファへリックス形成領域、ベータシート及びベータシート形成領域、ターン及びターン形成領域、コイル及びコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ両親媒性領域、フレキシブル領域、表面形成領域、基質結合領域及び高抗原性指標領域を含む断片など、構造又は機能的属性を特徴とする断片がさらに好ましい。
【0052】
さらに好ましい断片には、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列からの少なくとも15、20、30、40、50又は100個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド又は、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列からの少なくとも15、20、30、40、50又は100個の連続アミノ酸が短縮又は欠失したアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドが含まれる。
【0053】
またさらに好ましい断片は、B細胞エピトープを含むもの、例えば、実施例10に記載の断片/ペプチド、である。
【0054】
ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを作製するために、本発明のポリペプチドの断片を使用し得る;したがって、本発明の全長ポリペプチドを作製するための中間体としてこれらの断片を使用し得る。
【0055】
特に好ましいのは、いくつかの、5−10、1−5、1−3、1−2又は1アミノ酸が何らかの組合せで置換、欠失又は付加されている変異体である。
【0056】
本発明のポリペプチド又は免疫原性断片は、「成熟」タンパク質の形態であり得るか又は、前駆体もしくは融合タンパク質など、より大きいタンパク質の一部であり得る。分泌又はリーダー配列、プロ−配列、複数のヒスチジン残基などの精製を促進する配列又は組み換え産生中の安定性のためのさらなる配列を含有するさらなるアミノ酸配列を含むことは長所となることが多い。さらに、外来ポリペプチド又は脂質テール又は最終分子の免疫原能を向上させるためのポリヌクレオチド配列の付加も考慮される。
【0057】
ある態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はその断片及び様々なサブクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgE)の重もしくは軽鎖の定常領域の様々な部分を含む、遺伝子操作した可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとして好ましいのは、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分であり、ここでは、ヒンジ領域で融合が起こる。特定の実施形態において、単純に血液凝固因子Xaで切断することができる切断配列を組み込むことによってFc部を除去することができる。
【0058】
さらに、本発明は、遺伝子操作によりこれらの融合タンパク質を調製するためのプロセス及び薬物スクリーニング、診断及び治療に対するその使用に関する。本発明のさらなる態様はまた、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにも関する。融合タンパク質技術の例は、国際特許出願WO94/29458及びWO94/22914で見出すことができる。
【0059】
タンパク質は、化学的に共役されるか又は、非融合タンパク質と比較して発現系において産生レベルを向上させる組み換え融合タンパク質として発現され得る。融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープ、を提供することを促進し得るか(免疫学的融合パートナー)、又は、ネイティブ組み換えタンパク質よりも高収率でタンパク質の発現を促進する(発現エンハンサー)。好ましくは融合パートナーは、免疫学的融合パートナー及び発現促進パートナーの両方である。
【0060】
融合パートナーは、ヘモフィルス・インフルエンザ(EP594610)からのタンパク質D及びインフルエンザウイルス、NS1からの非構造タンパク質(ヘマグルチニン)を含む。別の融合パートナーは、Omp26(WO97/01638)として知られるタンパク質である。別の融合パートナーは、LytAとして知られるタンパク質である。好ましくは分子のC末端部分を使用する。LytAは、N−アセチル−L−アラニンアミダーゼ、アミダーゼLytA、(lytA遺伝子によりコ―ドされる(Gene、43(1986)、265−272頁)。)ペプチドグリカン骨格においてある一定の結合を特異的に分解する自己分解酵素、を合成するStreptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)由来である。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン又はDEAEなどの一部のコリン類似体に対する親和性に関与する。この特性は、融合タンパク質の発現に有用なE.コリ C−LytA発現プラスミドの開発に対して利用されてきた。そのアミノ末端にC−LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology:10、(1992)795−798頁)。残基178から始まるC末端で見られるLytA分子の繰り返し部分、例えば残基188−305、を使用することができる。
【0061】
本発明はまた、上述のポリペプチドの変異体(保存的アミノ酸置換(残基が、似た特徴を有する別のもので置換される。)による指示対象と異なるポリペプチド)も含む。典型的なこのような置換は、Ala、Val、Leu及びIleの間;Ser及びThrの間;酸性残基Asp及びGluの間;Asn及びGlnの間;及び塩基性残基Lys及びArgの間;又は芳香族残基Phe及びTyrの間である。
【0062】
何らかの適切な方式で本発明のポリペプチドを調製することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然のポリペプチド、組み換え産生されたポリペプチド、合成により産生されたポリペプチド又はこれらの方法の組み合わせにより産生されたポリペプチドが含まれる。このようなポリペプチドを調製するための方法は当技術分野でよく理解されている。
【0063】
本発明のポリペプチドは型別不能H.インフルエンザ由来であるのが最も好ましいが、好ましくは、同じ分類属の他の生物から得られ得る。本発明のポリペプチドは、例えば、同じ分類科又は目の生物から得られ得る。
【0064】
ポリヌクレオチド
本発明の目的は、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に本明細書中でタンパク質Eと称するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0065】
本発明の特に好ましい実施形態において、本ポリヌクレオチドは、全長遺伝子を含む配列番号11で示される配列を含む、タンパク質Eポリペプチド又はその変異体をコードする領域を含む。
【0066】
配列番号11で与えられるタンパク質Eポリヌクレオチドは、型別不能H.インフルエンザ株772由来のタンパク質Eポリヌクレオチドである。表1で挙げるH.インフルエンザ株由来のタンパク質Eをコードする遺伝子のその他の配列が決定された。
【0067】
本発明のさらなる態様として、タンパク質Eポリペプチドをコード及び/又は発現する単離核酸分子及びポリヌクレオチド、特に型別不能H.インフルエンザタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチド(例えば非プロセシングRNA、リボザイムRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、B−及びZ−DNAを含む。)が提供される。本発明のさらなる実施形態には、生物学的、診断的、予防的、臨床的又は治療的に有用なポリヌクレオチド及びポリペプチド及びそれらの変異体及びこれらを含む組成物が含まれる。
【0068】
本発明の別の態様は、配列番号1−10の推定アミノ酸配列を有するタンパク質Eポリペプチドをコードする少なくとも1つの全長遺伝子を含む単離ポリヌクレオチド及びその類縁ポリヌクレオチド及びこれらの変異体に関する。
【0069】
本発明の別の特定の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列を含むか又はこれらからなる型別不能H.インフルエンザ由来タンパク質Eポリペプチド又はその変異体に関する。
【0070】
配列番号11で示されるポリヌクレオチド配列など、本明細書中で提供される情報を用い、出発物質として型別不能H.インフルエンザ株3224A(又は772)細胞を用いて細菌からの染色体DNA断片をクローニングし配列決定し、次いで全長クローンを得るための方法などの標準的クローニング及びスクリーニング法を使用して、タンパク質Eポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、配列番号0で与えられるポリヌクレオチド配列などの本発明のポリヌクレオチド配列を得るために、通常、E.コリ又はあるその他の適切な宿主中の型別不能H.インフルエンザ株3224A(又は772)の染色体DNAのクローンのライブラリを部分配列由来の放射性標識オリゴヌクレオチド(好ましくは17マー以上)により調べる。次に、ストリンジェントなハイブリッド形成条件を用いてプローブのものと同一のDNAを担うクローンを区別することができる。このように元のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列から設計された配列決定プライマーとのハイブリッド形成によって同定された個々のクローンの配列決定を行うことにより、全長遺伝子配列を決定するために両方向でポリヌクレオチド配列を拡張することが可能となる。都合よく、例えば、プラスミドクローンから調製された変性2本鎖DNAを用いることにより、このような配列決定を行う。適切な技術が、Maniatis、T.、Fritsch、E.F.及びSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1989)に記載されている。(特にScreening By Hybridization 1.90及びSequencing Denatured Double−Stranded DNA Templates 13.70を参照。)。全長遺伝子配列を得るために直接ゲノムDNA配列決定も行い得る。本発明を例証する、配列番号11で示されるポリヌクレオチドが、型別不能H.インフルエンザ由来のDNAライブラリで発見された。
【0071】
さらに、配列番号11で示される各DNA配列は、当業者にとって周知のアミノ酸残基分子量の値を用いて計算することができる推定分子量の、配列番号1で示されるアミノ酸残基数前後を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有する。
【0072】
開始コドンと停止コドンとの間の配列番号0のポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号1のポリペプチドをコードする。
【0073】
さらなる態様において、本発明は、
(a)配列番号0からのポリヌクレオチド配列の全長にわたり、配列番号11からの何れかのポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリヌクレオチド配列又は
(b)配列番号1−10(又は断片)からのアミノ酸配列の全長にわたり、配列番号1−10(又はその断片)から選択された何れかのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は100%完全な同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、を含むか又はこれらからなる、単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0074】
配列番号11又はその断片から選択される何れかの配列からなるかを又はこれらを含む、標識されたプローブ又は検出可能なプローブとともにストリンジェントなハイブリッド形成条件下(例えば45−65℃の範囲の温度、0.1−1%のSDS濃度を用いて)で適切なライブラリをスクリーニングし;前記のポリヌクレオチド配列を含有する全長遺伝子及び/又はゲノムクローンを単離する段階を含むプロセスにより、型別不能H.インフルエンザ以外の種からの相同体及び相同分子種を含む、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
【0075】
本発明は、配列番号11で示されるコード配列(オープンリーディングフレーム)に対して、その全長にわたり同一であるポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はまた、成熟ポリペプチド又はその断片に対するコード配列(単独で)、ならびに、リーダー又は分泌配列、プレ又はプロ又はプレプロ−タンパク質配列をコードする配列などの別のコード配列を伴うリーディングフレームにおける成熟ポリペプチド又は断片に対するコード配列も提供する。本発明のポリヌクレオチドはまた、例えば(限定されないが)少なくとも1つの非コード5’及び3’配列(転写されるが非翻訳の配列)、終結シグナル(rho−依存性及びrho−非依存性終結シグナルなど)、リボソーム結合部位、コザック配列、mRNAを安定化する配列、イントロン及びポリアデニル化シグナルを含む、少なくとも1つの非コード配列も含有し得る。ポリヌクレオチド配列はまた、さらなるアミノ酸をコードするさらなるコード配列も含み得る。例えば、融合ポリペプチドの精製を促進するマーカー配列をコードし得る。本発明のある実施形態において、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen、Inc.)において提供され、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 86:821−824(1989)により記載されているような6個のヒスチジンペプチド又はHAペプチドタグ(Wilsonら、Cell 37:767(1984))であり、この両者は、それらに融合されたポリペプチド配列の精製において有用であり得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、以下に限定されないが、構造遺伝子及び遺伝子発現を調節するその天然に付随する配列を含むポリヌクレオチドも含む。
【0076】
配列番号1−10のタンパク質Eポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11(又は配列番号11内に含まれるもの)の対応するポリヌクレオチドコード配列と同一であり得る。あるいは、これは、遺伝子コードの重複(縮重)の結果として、配列番号1−10のポリペプチドもコードする、何れかの配列であり得る。
【0077】
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、本明細書中で使用する場合、本発明のポリペプチド、特に細菌のポリペプチド及びより具体的には配列番号1−10の配列の何れかにおいて示されるアミノ酸配列を有する型別不能H.インフルエンザタンパク質Eのポリペプチド又はその断片をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。この用語は、コード及び/又は非コード配列も含有し得るさらなる領域を伴う、ポリペプチドをコードする1個の連続領域又は不連続領域を含むポリヌクレオチド(例えば、組み込まれたファージ、組み込まれた挿入配列、組み込まれたベクター配列、組み込まれたトランスポゾン配列が介入したポリヌクレオチド又はRNA編集もしくはゲノムDNA再構成によるもの)も包含する。
【0078】
本発明は、さらに、配列番号1−10の配列の何れかの推定アミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体をコードする、本明細書中に記載のポリヌクレオチドの変異体に関する。例えば、本発明の全長ポリヌクレオチドを合成するために、本発明のポリヌクレオチドの断片を使用し得る。
【0079】
好ましい断片は、B−細胞エピトープ、例えば、実施例10に記載の断片/ペプチド、をコードするポリヌクレオチド及び、このポリヌクレオチド断片を含む、組み換え、キメラ遺伝子である。
【0080】
さらに特に好ましい実施形態は、いくつか、数個、5から10、1から5、1から3、2、1個のアミノ酸残基が置換、修飾、欠失及び/又は付加(何れかの組合せにおける)されているか又は全く置換、修飾、欠失及び/又は付加されていない、配列番号1−10からの何れかの配列のタンパク質Eポリペプチドのアミノ酸配列を有するタンパク質E変異体をコードするポリヌクレオチドである。これらの中で特に好ましいのは、タンパク質Eポリペプチドの特性及び活性(例えば、本明細書中の実施例セクションに記載の特性)を変化させない、静的置換、付加及び欠失である。
【0081】
本発明のさらに好ましい実施形態は、配列番号1−10の配列の何れかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対してその全長にわたって少なくとも85%同一であるポリヌクレオチド及びこのようなポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドである。あるいは、最も好ましいものは、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対してその全長にわたって少なくとも90%同一である領域を含むポリヌクレオチド及びこれに相補的なポリヌクレオチドである。この点において、上記のものとその全長にわたり少なくとも95%同一であるポリヌクレオチドが特に好ましい。さらに、少なくとも97%同一であるものは、少なくとも95%同一であるものの中で非常に好ましく、これらの中で、少なくとも98%及び少なくとも99%同一であるものが特に非常に好ましく、少なくとも99%同一であるものはより好ましい。
【0082】
好ましい実施形態は、配列番号11から選択されるDNA配列によりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性(例えば、本明細書中の実施例セクションに記載の活性)を保持するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0083】
本発明のある好ましい実施形態によると、特にストリンジェントな条件下で、配列番号11のポリヌクレオチドなどのタンパク質Eポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドが提供される。
【0084】
本発明は、さらに本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列に対してハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。この点において、本発明は、特に、本明細書中に記載のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。本明細書中で使用する場合、「ストリンジェントな条件」及び「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」という用語は、配列間で少なくとも95%及び好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合のみ生じるハイブリッド形成を意味する。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の具体例は、50%ホルムアミド、5xSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハート溶液、10%硫酸デキストラン及び変性せん断サケ精子DNA20μg/mLを含む溶液中で42℃にて一晩温置、次いで約65℃にて0.1xSSC中でハイブリッド形成支持体を洗浄するものである。ハイブリッド形成及び洗浄条件は周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor、New York(1989)、特にその第11章で例示されている。溶液ハイブリッド形成はまた、本発明により提供されるポリヌクレオチド配列とともに使用し得る。
【0085】
本発明はまた、配列番号11の対応する配列で示される前記のポリヌクレオチド配列又はその断片の配列を有するプローブを用いてストリンジェントなハイブリッド形成条件下で、配列番号11の配列の何れかで示されるポリヌクレオチド配列に対する完全な遺伝子を含有する適切なライブラリをスクリーニングし;前記のポリヌクレオチド配列を単離することにより得られるポリヌクレオチド配列からなるか又はこれらを含むポリヌクレオチドも提供する。このようなポリヌクレオチドを得るために有用な断片には、例えば、本明細書中において他の部分で詳述するプローブ及びプライマーが含まれる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中の他の部分に記載のように、例えば、本発明のポリヌクレオチドは、タンパク質Eをコードする全長cDNA及びゲノムクローンを単離するために、及び、タンパク質E遺伝子に対して、高い同一性、特に高い配列同一性を有するその他の遺伝子のcDNA及びゲノムクローンを単離するために、RNA、cDNA及びゲノムDNAに対するハイブリッド形成プローブとして使用され得る。このようなプローブは、通常、少なくとも15のヌクレオチド残基又は塩基対を含む。好ましくは、このようなプローブは、少なくとも30のヌクレオチド残基又は塩基対を有し、少なくとも50のヌクレオチド残基又は塩基対を有し得る。特に好ましいプローブは、少なくとも20のヌクレオチド残基又は塩基対を有し、30未満のヌクレオチド残基又は塩基対を有する。
【0087】
タンパク質E遺伝子のコード領域は、オリゴヌクレオチドプローブを合成するために配列番号11により与えられるDNA配列を用いてスクリーニングすることにより単離され得る。次に、ライブラリのどのメンバーとプローブがハイブリッド形成するかを決定するためにcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリをスクリーニングするため、本発明の遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを使用する。
【0088】
全長DNAを得るため又は短いDNAを伸長させるために、例えばcDNA末端の迅速増幅(RACE)の方法に基づくものなど、利用可能かつ当業者にとって周知の方法がいくつかある(例えば、Frohmanら、PNAS USA 85:8998−9002、1988を参照。)。MarathonTM技術(Clontech Laboratories Inc.)に代表されるようにこの技術が最近改変されたことによって、例えば、より長いcDNAに対する研究が非常に簡素化された。MarathonTM技術において、選択された組織及び各末端に連結された「アダプター」配列より抽出されたmRNAからcDNAが調製された。次いで、遺伝子特異的及びアダプター特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせを用いてこのDNAの「欠けている」5’末端を増幅するために、核酸増幅(PCR)を行う。
【0089】
次いで、増幅された産物内でアニーリングするように設計されたプライマーである「ネスト化」プライマーを用いてPCR反応を繰り返す(通常、アダプター配列においてさらに3’にアニーリングするアダプター特異的プライマー及び選択された遺伝子配列においてさらに5’にアニーリングする遺伝子特異的プライマー)。次に、DNA配列決定によりこの反応の産物を分析することができ、完全配列を与えるために産物を存在するDNAに直接連結するか、又は5’プライマーの設計のために新しい配列情報を用いて個別の全長PCRを行うかの何れかにより、全長DNAを構築することができる。
【0090】
ポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中でさらに考察するように、例えば研究試薬として、及び、疾患、特にヒト疾患に対する治療及び診断法の発見のための材料として、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドを使用し得る。
【0091】
記載のように本明細書中のプロセスにおいて、しかし、好ましくはPCRに対して、本明細書中で同定されたポリヌクレオチドの全体又は一部が感染組織中で細菌において転写されるか否かを調べるために、配列番号11の配列由来のオリゴヌクレオチドである本発明のポリヌクレオチドを使用し得る。このような配列はまた病原体が獲得した感染のステージ及び感染のタイプの診断においても役立つことが認められている。
【0092】
本発明はまた、成熟タンパク質プラスさらなるアミノもしくはカルボキシル末端アミノ酸又は成熟ポリペプチドに対する内側のアミノ酸(例えば成熟型が複数のポリペプチド鎖を有する場合)であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。このような配列は、前駆体から成熟型へのタンパク質のプロセシングに関与し、タンパク質輸送を可能にし得、タンパク質半減期を長く又は短くし得るか、又はとりわけ、アッセイもしくは産生のためのタンパク質の操作を促進し得る。インビボの場合一般的であるように、さらなるアミノ酸が、細胞性酵素によって、成熟タンパク質からプロセシング除去され得る。
【0093】
本発明のそれぞれの全てのポリヌクレオチドに対して、それに相補的なポリヌクレオチドが提供される。これらの相補的ポリヌクレオチドは、それらが相補的である各ポリヌクレオチドに完全に相補的であることが好ましい。
【0094】
1つ以上のプロ配列に融合されたポリペプチドの成熟型を有する前駆タンパク質は、そのポリペプチドの不活性型であり得る。プロ配列が除去されると、このような不活性前駆体は通常活性化される。プロ配列の一部又は全てが活性化前に除去され得る。一般に、このような前駆体はプロタンパク質と呼ばれる。
【0095】
ヌクレオチドに対する標準的A、G、C、T/U表記に加えて、「N」という用語も本発明のある一定のポリヌクレオチドを説明することにおいて使用され得る。「N」は、Nが、隣接ヌクレオチド位置と合わせて取られる場合、正しいリーディングフレームで読まれる場合、このようなリーディングフレームにおいて未成熟な終止コドンを生じさせる影響を有する核酸でないことが好ましいことを除き、4種類のDNA又はRNAヌクレオチドの何れかがDNA又はRNA配列のこのような指定位置で出現し得ることを意味する。
【0096】
要するに、本発明のポリヌクレオチドは、成熟タンパク質、(プレタンパク質と呼ばれ得る)成熟タンパク質プラスリーダー配列、プレタンパク質のリーダー配列ではない1つ以上のプロ配列(通常ポリペプチドの活性及び成熟型を産生するプロセシング段階中に除去される。)を有する成熟タンパク質の前駆体又はプレプロタンパク質(これは、リーダー配列及び1つ以上のプロ配列を有する、プロタンパク質に対する前駆体である。)をコードし得る。
【0097】
本発明の態様によると、治療又は予防的な、特に遺伝子による免疫法の目的のための、本発明のポリヌクレオチドの使用が提供される。
【0098】
遺伝子による免疫法における本発明のポリヌクレオチドの使用は、好ましくは、プラスミドDNAの筋肉への直接注入(Wolffら、Hum Mol Genet(1992)1:363、Manthorpeら、Hum.Gene Ther.(1983)4:419)、特異的タンパク質担体と複合化されたDNAの送達(Wuら、J Biol Chem.(1989)264:16985)、リン酸カルシウムとのDNAの共沈殿(Benvenisty及びReshef、PNAS USA、(1986)83:9551)、リポソームの様々な形態でのDNAの封入(Kanedaら、Science(1989)243:375)、粒子衝突(Tangら、Nature(1992)356:152、Eisenbraunら、DNA Cell Biol(1993)12:791)及びクローン化レトロウイルスベクターを用いたインビボ感染(Seegerら、PNAS USA(1984)81:5849)などの適切な送達法を用いる。
【0099】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターにより遺伝子操作されている宿主細胞及び組み換え技術による本発明のポリペプチドの産生にも関する。本発明のDNAコンストラクト由来のRNAを用いてこのようなタンパク質を産生させるために無細胞翻訳系を使用することもできる。
【0100】
発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当業者にとって周知のプロセスによって本発明の組み換えポリペプチドを調製し得る。したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現系、このような発現系により遺伝子操作されている宿主細胞及び組み換え技術による本発明のポリペプチドの産生に関する。
【0101】
本発明のポリペプチドの組み換え産生のために、発現系もしくはその一部又は本発明のポリヌクレオチドを組み込むように宿主細胞を遺伝子操作することができる。リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランを介したトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質を介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、共役、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)及び感染など、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986)及びSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1989)などの多くの標準的実験マニュアルに記載の方法によって宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入を達成することができる。
【0102】
適切な宿主の代表例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、E.コリ、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌、髄膜炎菌、ヘモフィルス・インフルエンザ及びモラクセラ・カタラーリスの細胞などの細菌細胞;酵母、クルイベロミセス属(Kluveromyces)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピチア属(Pichia)、担子菌(basidiomycete)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びアスペルギルスの細胞などの真菌細胞;Drosophila S2及びSpodoptera Sf9の細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV−I及びボウズメラノーマ細胞などの動物細胞;及び裸子植物又は被子植物の細胞などの植物細胞が含まれる。
【0103】
本発明のポリペプチドを産生させるために多岐にわたる発現系を使用することができる。このようなベクターには、とりわけ、染色体由来、エピソーム由来及びウイルス由来ベクター、例えば、細菌性プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、バキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40など、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルス及びアルファウイルスなどのウイルス由来のベクター及び、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝エレメント由来のもの(例えばコスミド及びファージミド)などのこれらの組み合わせ由来のベクターが含まれる。発現系コンストラクトは、発現を制御ならびに生じさせる調節領域を含有し得る。一般に、この点での発現のために、ポリヌクレオチドを維持、増殖又は発現させる、及び/又は宿主においてポリペプチドを発現させるのに適切な何らかの系又はベクターを使用し得る。例えばSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL(前出)で示されるものなどの、様々な周知及び通常の技術の何れかによって、適切なDNA配列を発現系に挿入し得る。
【0104】
小胞体の内腔へ、ペリプラズム空間へ、又は細胞外環境への、翻訳されたタンパク質の分泌のための真核細胞での組み換え発現系において、適切な分泌シグナルを発現ポリペプチドに組み込み得る。これらのシグナルは、ポリペプチドに対して内在性であり得るか又はこれらは異種性シグナルであり得る。
【0105】
硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組み換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し、精製することができる。最も好ましくは、イオン金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を精製に使用する。細胞内合成、単離又は精製中にポリペプチドが変性させられる場合、活性立体構造を再生するために、タンパク質の再折りたたみのための周知の技術を使用し得る。
【0106】
発現系は、ウイルス又は細菌などの生きている組み換え微生物でもあり得る。生きている組み換えウイルス又は細菌のゲノムに関心ある遺伝子を挿入することができる。この生きているベクターを用いた接種及びインビボ感染によって、抗原のインビボ発現及び免疫反応の誘発が起こる。この目的のために使用されるウイルス及び細菌は、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、カナリア痘)、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、リノウイルス)、ヘルペスウイルス(バリセラ・ゾスターウイルスなど)、リステリア、サルモネラ、赤痢菌、BCG、連鎖球菌である。これらのウイルス及び細菌は、毒性が強いか、又は生ワクチンを得るために様々な方法で弱毒化され得る。このような生ワクチンも本発明の一部を形成する。
【0107】
診断的、予後診断的血清型決定及び突然変異アッセイ
本発明はまた、診断試薬としての使用のための、本発明のタンパク質Eポリヌクレオチド及びポリペプチドの使用にも関する。真核生物、特に哺乳動物、とりわけヒト中でのタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの検出は、疾患の診断、疾患のステージ診断又は薬物に対する感染生物の反応に対する診断方法を提供する。真核生物、特に、哺乳動物及びとりわけヒト、とりわけ、タンパク質E遺伝子又はタンパク質を含む生物に感染している又は感染している疑いのあるものを、様々な周知の技術により、ならびに本明細書中で提供される方法により、核酸又はアミノ酸レベルで検出し得る。
【0108】
感染していると推定される、及び/又は感染している個体の身体物質から、予後診断、診断又はその他の分析のためのポリペプチド及びポリヌクレオチドを得うる。これらの源の何らかからのポリヌクレオチド、特にDNA又はRNAを直接、検出のために使用し得るか又はPCRもしくは何らかのその他の増幅技術によって分析前に酵素的に増幅させ得る。RNA、特にmRNA、cDNA及びゲノムDNAも同様に使用し得る。増幅を用いて、その生物の選択されたポリヌクレオチドの遺伝子型の分析によって、個体に存在する感染性及び寄生微生物の種及び株の特徴を調べ得る。関連生物、好ましくは同じ属の異なる種又は同じ種の異なる株から選択された参照配列の遺伝子型と比較した増幅産物のサイズの変化によって、欠失及び挿入を検出することができる。標識したタンパク質Eポリヌクレオチド配列に対して増幅DNAをハイブリッド形成させることによって、点突然変異を同定することができる。それぞれDNAもしくはRNAに対するDNaseもしくはRNase消化によって、又は融解温度もしくは再生動態の違いを検出することによって、不完全に又はより顕著に不一致である二本鎖部位から、完全に又は顕著に一致する配列を区別することができる。ポリヌクレオチド配列の違いはまた、参照配列と比較した場合の、ゲルにおけるポリヌクレオチド断片の電気泳動の移動度変化によっても検出し得る。変性剤あり又はなしでこれを行い得る。ポリヌクレオチドの違いは、直接的DNA又はRNA配列決定によっても検出し得る。例えば、Myersら、Science 230:1242(1985)を参照のこと。RNase、VI及びS1保護アッセイなど、ヌクレアーゼ保護アッセイ又は化学的切断法によっても特定の位置での配列変化を明らかにし得る。例えば、Cottonら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、85:4397−4401(1985)を参照のこと。
【0109】
別の実施形態において、例えば遺伝子突然変異、血清型、分類学的分類又は同定の効率的なスクリーニングを行うために、タンパク質Eヌクレオチド配列又はその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築することができる。アレイ技術法は周知であり、一般的に適用でき、遺伝子発現、遺伝子連鎖及び遺伝的変異を含む分子遺伝学において様々な疑問に取り組むために使用することができる(例えばCheeら、Science、274:610(1996)を参照のこと。)。
【0110】
したがって、別の態様において、本発明は、次のものを含む診断キットに関する:
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは配列番号11のヌクレオチド配列の何れかもしくはその断片;
(b)(a)の配列に相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくは配列番号1−10のポリペプチドの何れかもしくはその断片;又は
(d)本発明のポリペプチドに対する抗体、好ましくは配列番号1−10のポリペプチドの何れかに対するもの。
【0111】
当然のことながら、何らかのこのようなキットにおいて、(a)、(b)、(c)又は(d)は、実質的な成分を含み得る。このようなキットは、とりわけ、疾患又は疾患に対する感受性を診断するのに役立つ。
【0112】
本発明はまた、診断試薬としての本発明のポリヌクレオチの使用にも関する。本発明のポリヌクレオチド、好ましくは、疾患又は病原性に関連する、配列番号11の何れかの配列の突然変異形態の検出により、疾患の診断に付加するかもしくはこれを定義することができるか、又は疾患の診断、疾患の経過の予後診断、疾患のステージの決定もしくは疾患に対する感受性に付加するかもしくはこれを定義することができる診断ツールが提供されるが、これは、そのポリヌクレオチドの抑制発現、過剰発現又は発現変化の結果による。本明細書中の他の部分に記載のものなどの様々な技術によって、このようなポリヌクレオチドの突然変異を有する、生物、特に感染性生物をポリヌクレオチドレベルで検出し得る。
【0113】
例えば血清型決定を可能にするための様々な技術によって、ポリヌクレオチド又はポリペプチドレベルで、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドにおける突然変異又は多形体(対立遺伝子変異)を有する生物からの細胞も検出し得る。例えば、RNAにおいて突然変異を検出するために、RT−PCRを使用することができる。例えば、GeneScanなど、自動化検出系と組み合わせてRT−PCRを使用することは特に好ましい。同じ目的、PCR、のために、RNA、cDNA又はゲノムDNAも使用し得る。例として、突然変異体を同定し分析するために、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的なPCRプライマーを使用することができる。
【0114】
本発明は、1、2、3又は4個のヌクレオチドが5’及び/又は3’末端から除去されたプライマーをさらに提供する。とりわけ、身体的物質などの個体由来の試料から単離されたタンパク質E DNA及び/又はRNAを増幅するために、これらのプライマーを使用し得る。次に、ポリヌクレオチド配列を明らかにするための様々な技術にポリヌクレオチドを供し得るように、感染している個体から単離されたポリヌクレオチドを増幅するため、これらのプライマーを使用し得る。このようにして、感染もしくはそのステージもしくはその経過を診断及び/又は予後診断するか、又は血清型を決定する、及び/又は感染性物質を分類するために、ポリヌクレオチド配列中の突然変異を検出し、使用し得る。
【0115】
本発明は、配列番号11の配列の何れかの配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル上昇を身体的物質などの個体由来の試料から決定することを含む、疾患、好ましくは細菌性感染、より好ましくは型別不能H.インフルエンザにより起こる感染を診断するためのプロセスをさらに提供する。例えば、増幅、PCR、RT−PCR、RNase保護、ノーザンブロッティング、スペクトロメトリー及びその他のハイブリッド形成法など、ポリヌクレオチドを定量するための当技術分野で周知の方法の何れかを使用して、タンパク質Eポリヌクレオチドの発現上昇又は低下を測定することができる。
【0116】
さらに、例えば感染の有無を検出するために、正常な対照組織試料と比較したタンパク質Eポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明による診断アッセイを使用し得る。宿主由来の試料(身体的物質など)中でタンパク質Eポリペプチドのレベルを調べるために使用することができるアッセイ技術は当業者にとって周知である。このようなアッセイ法には、放射性免疫アッセイ、競合的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、抗体サンドイッチアッセイ、抗体検出及びELISAアッセイが含まれる。
【0117】
ポリヌクレオチドアレイ、好ましくは高密度アレイ又はグリッドの成分として、本発明のポリヌクレオチドを使用し得る。これらの高密度アレイは、診断及び予後診断目的に特に有用である。例えば、個体における特定のポリヌクレオチド配列又は関連配列の有無を調べるための、身体試料から得られた又はこれ由来のプローブを用いた探索のために(ハイブリッド形成又は核酸増幅を使用して、など)、それぞれ異なる遺伝子を含み、さらに本発明のポリヌクレオチドを含む一連のスポットを使用し得る。このような配列の存在から、病原体、特に型別不能H.インフルエンザの存在が示唆され得、これは、疾患又は疾患の経過の診断及び/又は予後診断において有用であり得る。配列番号11の何れかのポリヌクレオチド配列の多くの変異体を含むグリッドが好ましい。配列番号1−10の何れかのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列の多くの変異体も好ましい。
【0118】
抗体
免疫原として、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドもしくはその変異体又はこれらを発現する細胞を使用して、このようなポリペプチド及びポリヌクレオチドに対して免疫特異的な抗体をそれぞれ作製することができる。あるいは、本発明のポリペプチドに免疫特異的な抗体を作製するために、免疫原として、ポリペプチド配列内のエピトープの、ミモトープ、特にペプチドミモトープを使用することもできる。「免疫特異的」という用語は、先行技術におけるその他の関連ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して、抗体が実質的により大きい親和性を有することを意味する。
【0119】
本発明のある好ましい実施形態において、タンパク質Eポリペプチド又はポリヌクレオチドに対する抗体が提供される。
【0120】
通常のプロトコールを用いて、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド又は何れかもしくは両方のエピトープを含む断片、何れかもしくは両方の類似体又は何れかもしくは両方を発現する細胞を、動物、好ましくは非ヒトに投与することにより、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに対して生成される抗体を得ることができる。モノクローナル抗体の調製のために、連続的細胞株培養により産生される抗体を与える、当技術分野で公知の何れかの技術を使用することができる。例として、Kohler、G.及びMilstein、C.、Nature 256:495−497(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983);Coleら、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss、Inc.(1985)の77−96でのものなどの様々な技術が挙げられる。
【0121】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに対して1本鎖抗体を作製するために、1本鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに免疫特異的なヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又はその他の生物もしくは動物、例えばその他の哺乳動物など、も使用し得る。
【0122】
あるいは、抗タンパク質Eを保持することに関してスクリーニングされたヒトからのリンパ球の、PCR増幅したv−遺伝子のレパートリー又はナイーブライブラリの何れかから、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体遺伝子を選択するために、ファージディスプレイ技術を利用し得る(McCaffertyら、(1990)、Nature 348、552−554;Marksら、(1992)Biotechnology 10、779−783)。例えば、鎖シャフリング(chain shuffling)によって、これらの抗体の親和性を向上させることもできる(Clacksonら、(1991)Nature 352:628)。
【0123】
例えばアフィニティークロマトグラフィーによって、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを精製するために本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現するクローンを単離又は同定するため、上述の抗体を使用し得る。
【0124】
したがって、感染、特に細菌感染を治療するために、とりわけ、タンパク質Eポリペプチド又はタンパク質Eポリヌクレオチドに対する抗体を使用し得る。
【0125】
ポリペプチド変異体には、本発明の特定の態様を形成する、抗原的に、エピトープ的に又は免疫的に同等な変異体が含まれる。
【0126】
好ましくは、個体における免疫原性を低めるように抗体又はその変異体を修飾する。例えば、個体がヒトである場合、抗体を最も好ましくはヒト化し得、ここでは、例えば、Jonesら(1986)、Nature 321、522−525又はTempestら(1991)Biotechnology 9、266−273に記載のように、相補性決定領域又はハイブリドーマ由来抗体の領域がヒトモノクローナル抗体に移植されている。
【0127】
アンタゴニスト及びアゴニスト−アッセイ及び分子
例えば、細胞、無細胞標品、化学ライブラリ及び天然産物混合物中で小分子基質及びリガンドの結合を評価するために、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用することもできる。これらの基質及びリガンドは天然の基質及びリガンドであり得るか又は構造的もしくは機能的摸倣物であり得る。例えば、Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):第5章(1991)を参照。
【0128】
スクリーニング法は、直接又は間接的に候補化合物に会合した標識によって、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対する、又はポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを有する細胞もしくは膜に対する、又はポリペプチドの融合タンパク質に対する、候補化合物の結合を単純に測定し得る。あるいは、本スクリーニング法は、標識された競合物との競合を含み得る。さらに、これらのスクリーニング法は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む細胞に適切な検出系を使用して、候補化合物によって、結果としてポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化又は阻害によりシグナルが生成するか否かを試験し得る。活性の阻害剤は通常、既知のアゴニスト存在下でアッセイし、候補化合物の存在がアゴニストによる活性に影響を及ぼすかを観察する。場合によっては、候補化合物によって結果としてポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化が阻害されるか否かを試験することによる、アゴニスト又は阻害剤非存在下での、逆アゴニスト又は阻害剤に対するスクリーニング法において、構造的に活性のあるポリペプチド及び/又は構造的に発現されるポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用し得る。さらに、本スクリーニング法は単純に、混合物を形成するために本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含有する溶液と候補化合物を混合し、混合物中のタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド活性を測定し、混合物のタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド活性を標準と比較する、段階を含み得る。本発明のポリペプチドならびに系統発生的及び/又は機能的に関連するポリペプチドのアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイに対して、本明細書中で既に述べたようなFc部分及びタンパク質Eポリペプチドから作製されたものなどの融合タンパク質を使用することもできる(D.Bennettら、J Mol Recognition、8:52−58(1995);及びK.Johansonら、J Biol Chem、270(16):9459−9471(1995)を参照のこと。)。
【0129】
細胞でのmRNA及び/又はポリペプチドの産生に対する、添加化合物の影響を検出するためのスクリーニング法を設定するために、本発明のポリペプチドと結合及び/又は相互作用する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び抗体も使用し得る。例えば、当技術分野で公知の標準的方法により、モノクローナル及びポリクローナル抗体を用いて、ポリペプチドの分泌又は細胞結合レベルを測定するためにELISAアッセイを構築し得る。適切に操作した細胞又は組織からポリペプチドの産生を阻害又は促進し得る物質(それぞれアンタゴニスト又はアゴニストとも呼ばれる。)を探索するために、これを使用することができる。
【0130】
本発明はまた、タンパク質Eポリペプチド又はポリヌクレオチドの作用を促進(アゴニスト)又は阻害(アンタゴニスト)する化合物、特に静菌及び/又は殺菌剤である化合物を同定するために化合物をスクリーニングする方法も提供する。スクリーニングの方法は、ハイスループット技術を含み得る。例えば、アゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングするために、タンパク質Eアゴニスト又はアンタゴニストであり得る候補分子の非存在下又は存在下で、タンパク質Eポリペプチド及び標識した基質又はこのようなポリペプチドのリガンドを含む、合成反応混合液、細胞内コンパートメント、例えば膜、細胞エンベロープもしくは細胞壁など、又はそれらの何らかの調製物を温置する。候補分子がタンパク質Eポリペプチドを作動させるか又はこれに拮抗する能力は、標識したリガンドの結合低下又はこのような基質からの産物の産生低下に反映される。無条件で、即ちタンパク質Eポリペプチドの効果を誘導することなく結合する分子は、優れたアンタゴニストとなる可能性が最も高い。よく結合する、場合によっては、基質からの産物産生の速度を向上させる、シグナル伝達を向上させる、又は化学的チャネル活性を向上させる分子はアゴニストである。場合によっては、基質からの産物産生の速度又はレベル、シグナル伝達又は化学的チャネル活性の検出は、レポーター系を用いることにより容易になり得る。この点で有用であり得るレポーター系には、以下に限定されないが、比色、産物に変換される標識された基質、タンパク質Eポリヌクレオチド又はポリペプチド活性の変化に反応性があるレポーター遺伝子及び当技術分野で公知の結合アッセイが含まれる。
【0131】
タンパク質Eアゴニストに対するアッセイの別の例は、競合的阻害アッセイに対して適切な条件下で、タンパク質E結合分子、組み換えタンパク質E結合分子、天然基質もしくはリガンド又は基質もしくはリガンド摸倣体と、タンパク質E及び潜在的なアゴニストを組み合わせる競合的アッセイである。潜在的なアンタゴニストの有効性を評価するために、結合分子に結合されるか又は産物に変換されるタンパク質E分子の数を正確に調べることができるよう、放射活性又は比色化合物などによりタンパク質Eを標識することができる。
【0132】
潜在的なアンタゴニストには、とりわけ、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドに結合し、それによりその活性又は発現を阻害又は消去する、小型の有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。潜在的アンタゴニストはまた、小型の有機分子、ペプチド、ポリペプチド、例えば、結合分子において同じ部位に結合する近縁のタンパク質又は抗体など、例えば、タンパク質E誘導性の活性を誘導することなく、それにより、結合からタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを排除してタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの作用又は発現を阻止する結合分子など、でもあり得る。
【0133】
潜在的なアンタゴニストには、ポリペプチドの結合部位に結合しその部位を占有し、それにより細胞性結合分子への結合を阻止し、正常な生物学的活性を妨げる小分子が含まれる。小分子の例には、以下に限定されないが、小型の有機分子、ペプチド又はペプチド様分子が含まれる。その他の潜在的なアンタゴニストには、アンチセンス分子が含まれる(これらの分子の記載に対して、Okano、J.Neurochem.56:560(1991);OLIGODEOXYNUCLEOTIDES AS ANTISENSE INHIBITORS OF GENE EXPRESSION、CRC Press、Boca Raton、FL(1988)を参照。)。好ましい潜在的なアンタゴニストには、タンパク質Eに関連する化合物及びタンパク質Eの変異体が含まれる。
【0134】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はその断片及び様々なサブクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgE)の重もしくは軽鎖の定常領域の様々な部分を含む、遺伝子操された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとして好ましいのは、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分であり、ここではヒンジ領域で融合が起こる。特定の実施形態において、単純に血液凝固因子Xaで切断することができる切断配列を組み込むことによってFc部を除去することができる。さらに本発明は、遺伝子操作によりこれらの融合タンパク質を調製するためのプロセス及び薬物スクリーニング、診断及び治療に対するその使用に関する。本発明のさらなる態様は、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにも関する。融合タンパク質技術の例は国際特許出願WO94/29458及びWO94/22914で見出すことができる。
【0135】
抗菌性化合物の探索及び開発において本明細書中で提供される各ポリヌクレオチド配列を使用し得る。発現において、抗菌性薬物のスクリーニングのための標的として、コードされるタンパク質を使用することができる。さらに、関心のあるコード配列の発現を調節するためのアンチセンス配列を構築するために、コードされるタンパク質のアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列又はシャイン・ダルガルノ又は個々のmRNAのその他の翻訳促進配列を使用することができる。
【0136】
本発明はまた、病原体と、感染の続発症に関与する真核生物、好ましくは哺乳動物の宿主との間の最初の物理的相互作用を妨げるための、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニスト又はアンタゴニストの使用も提供する。特に、真核生物、好ましくは哺乳動物の体内装置上の細胞外マトリクスタンパク質又は傷における細胞外マトリクスタンパク質への、細菌、特にグラム陽性及び/又はグラム陰性細菌の付着の予防において;真核生物、好ましくは哺乳動物の細胞外マトリクスタンパク質と、組織損傷を媒介する細菌のタンパク質Eタンパク質との間の細菌の付着を防御するために及び/又は;体内装置の移植又はその他の手術手技以外により開始された感染における病原の正常な進行を妨害するために、本発明の分子を使用し得る。
【0137】
本発明のさらに別の態様によると、タンパク質Eアゴニスト及びアンタゴニスト、好ましくは静菌性又は殺菌性のアゴニスト及びアンタゴニストが提供される。
【0138】
例えば、疾患を、予防、抑制及び/又は治療するために、本発明のアンタゴニスト及びアゴニストを使用し得る。
【0139】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドのミモトープに関する。ミモトープは、ネイティブペプチドに十分に類似している(配列又は構造的に)ペプチド配列であり、これは、ネイティブペプチドを認識する抗体により認識され得るか;又は適切な担体と連結した場合、ネイティブペプチドを認識する抗体を生じさせることができる。
【0140】
選ばれたアミノ酸の、付加、欠失又は置換により、特定の目的のためにペプチドミモトープを設計し得る。したがって、タンパク質担体への共役を容易にするためにペプチドを修飾し得る。例えば、ある化学的共役方法が末端システインを含むことが所望され得る。さらに、ペプチドのフリーの非共役末端が担体タンパク質の表面と会合し続けるように、タンパク質担体に共役されたペプチドがペプチドの共役末端から離れた疎水性末端を含むことが所望され得る。それによって、ネイティブ分子全体に関して見られるように、ペプチドの立体配座と非常に似ている立体配座でペプチドを提示する。例えば、N−末端システイン及びC−末端疎水性アミド化テールを有するようにペプチドを変化させ得る。あるいは、有益な誘導体を作製するために、例えばペプチドの安定性を促進するために、アミノ酸(インバーソ(inverso)配列)の1つ以上のD−立体異性体型の付加又は置換を行い得る。ミモトープは、天然ペプチド配列と配列方向が逆になっているレトロ配列でもあり得る。ミモトープはまた、特徴において、レトロ−インバーソでもあり得る。レトロ、インバーソ及びレトロ−インバーソペプチドはWO95/24916及びWO94/05311に記載されている。
【0141】
あるいは、ファージディスプレイ技術(EP 0 552 267 B1)などの技術を使用して、それ自身が本発明のポリペプチドに結合できる抗体を用いて、ペプチドミモトープを同定し得る。この技術は、ネイティブペプチドの構造を摸倣し、従って、抗−ネイティブペプチド抗体に結合することができるが、ネイティブポリペプチドと顕著な配列ホモロジーをそれ自身が必ずしも持ち得ない、大量のペプチド配列を生成させる。
【0142】
ワクチン
本発明の別の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、免疫反応を誘発するための方法に関し、この方法は、感染、特に細菌感染及びとりわけ型別不能H.インフルエンザ感染から個体を保護するために抗体及び/又はT細胞免疫反応を生じさせるのに妥当なタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体を個体に接種することを含む。このような免疫反応が細菌複製を遅らせる方法も提供される。本発明のさらに別の態様は、個体において免疫反応を誘発する方法に関し、この方法は、抗体及び/又はT細胞免疫反応(例えばサイトカイン産生T細胞又は細胞毒性T細胞を含む。)を生じさせるため、個体、好ましくはヒトを疾患(その疾患が、既に個体中で確立されているものであれ、そうでないものであれ)から防御するためなど、免疫反応を誘発するために、インビボでタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体を発現させるために、タンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体の発現を支配するための、核酸ベクター、配列又はリボザイムをこのような個体に送達することを含む。遺伝子を投与することの一例は、粒子その他に対するコーティングとして所望の細胞への遺伝子の投与を加速することである。このような核酸ベクターは、DNA、RNA、リボザイム、修飾された核酸、DNA/RNAハイブリッド、DNA−タンパク質複合体又はRNA−タンパク質複合体を含み得る。
【0143】
本発明のさらなる態様は、その中で免疫反応が誘発されている可能性がある、個体、好ましくはヒトへ導入する際に、タンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はそれからコードされるポリペプチドに対してこのような個体において免疫反応を誘発する免疫組成物に関し、ここでこの組成物は、組み換えタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はそれからコードされるポリペプチドを含み、及び/又はタンパク質Eポリヌクレオチド、それからコードされるポリペプチド又は本発明のその他のポリペプチドの抗原をコードし、発現する、DNA及び/又はRNAを含む。免疫反応を治療的又は予防的に使用することができ、これは、抗体免疫及び/又は細胞性免疫(CTL又はCD4+T細胞から生じる細胞性免疫など)の形態を取り得る。
【0144】
それ自身により抗体を産生し得るか又はし得ないが、第一のタンパク質を安定化し、抗原性及び/又は免疫原性特性、及び好ましくは予防的特性を有するであろう融合又は修飾タンパク質を生じさせる共タンパク質又は化学部分とタンパク質Eポリペプチド又はその断片を融合させ得る。したがって、融合組み換えタンパク質は、好ましくは、ヘモフィルス・インフルエンザ(EP594610)由来のリポタンパク質又はタンパク質Dなどの抗原性共タンパク質、タンパク質を可溶化し、その産生及び精製を促進する、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)又はβ−ガラクトシダーゼ又は何らかのその他の比較的大型の共タンパク質をさらに含む。さらに、共タンパク質は、タンパク質を受容する生物の免疫系の全身性刺激を提供するという意味のアジュバントとして作用し得る。第一のタンパク質のアミノ又はカルボキシ末端の何れかに、共タンパク質を連結させ得る。
【0145】
本発明によるワクチン組成物において、タンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド又はその断片もしくはミモトープもしくは変異体は、例えば生きている細菌ベクターなど、上述の生きている組み換えベクターなどのベクターに存在し得る。
【0146】
タンパク質Eポリペプチドに対して、非生物ベクターも適切である(例えば、細菌の外膜小胞又は「泡状突起」)。OM泡状突起は、グラム陰性細菌の2層膜の外膜由来であり、C.トラコマチス(C.trachomatis)及びC.シッタシ(C.psittaci)を含む多くのグラム陰性細菌において記録されている(Zhou、L.ら 1998 FEMS Microbiol.Lett.163:223−228)。泡状突起を生成することが報告されている細菌性病原体の限定的なリストには、以下のものも含まれる:百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ菌(Brucella melitensis)、ヒツジブルセラ菌(Brucella ovis)、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス・インフルエンザ、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pheumophila)、モラクセラ・カタラーリス、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)。
【0147】
泡状突起は、そのネイティブ立体配座において外膜タンパク質を与えるという長所を有し、従って、ワクチンに対して特に有用である。外膜において1つ以上の分子の発現を変化させるように細菌を操作することにより、ワクチン用途に対して泡状突起を改善することもできる。従って、例えば、タンパク質Eポリペプチドなどの外膜での所望の免疫原性タンパク質の発現を導入するか又は上方制御(例えばプロモーターを変化させることにより)することができる。代わりに、又は加えて、関連がないか(例えば非防御抗原又は免疫優勢であるが可変のタンパク質)又は有害であるか(例えば、LPSなどの毒性分子又は自己免疫反応の潜在的誘導物質)の何れかである外膜分子の発現を下方制御することができる。これらのアプローチは下記で詳細に考察する。
【0148】
タンパク質E遺伝子の非コード隣接領域は、遺伝子の発現に重要な制御エレメントを含有する。この制御は、転写及び翻訳の両レベルで起こる。遺伝子のオープンリーディングフレームの上流又は下流の何れかであるこれらの領域の配列は、DNA配列決定により得ることができる。この配列情報により、異なるプロモーターエレメント、終結配列、誘導配列エレメント、リプレッサー、相変異に関与するエレメント、シャイン・ダルガルノ配列、制御に関わる潜在的な二次構造を伴う領域ならびにその他のタイプの制御モチーフ又は配列などの潜在的な制御モチーフの決定が可能となる。この配列は、本発明のさらなる態様である。
【0149】
この配列情報により、タンパク質E遺伝子の天然の発現の調節が可能となる。この遺伝子発現の上方制御は、プロモーター、シャイン・ダルガルノ配列、潜在的リプレッサー又はオペレーターエレメント又は関連する何らかのその他のエレメントを付随し得る。同様に、発現の下方制御は、同じタイプの修飾により達成することができる。あるいは、相変異配列を変化させることにより、遺伝子の発現を相変異調節下に置くことができるか、又はこの制御から切り離し得る。別のアプローチにおいて、発現の制御を可能にする1つ以上の誘導エレメントの調節下に遺伝子の発現を置くことができる。このような制御の例には、以下に限定されないが、温度変化による誘導、選択された炭水化物又はその誘導体などの誘導基質、微量元素、ビタミン、共同因子、金属イオンなどの添加が含まれる。
【0150】
いくつかの異なる手段により、上述のような修飾を導入することができる。無作為突然変異誘発とそれに続く所望の表現型の選択によって、遺伝子発現に関与する配列の修飾をインビボで行うことができる。別のアプローチは、関心のある領域を単離し、無作為突然変異誘発又は部位特異的置換、挿入又は欠失突然変異誘発によりそれを修飾することにある。次に、相同組み換えにより、細菌ゲノムに修飾した領域を再び導入することができ、遺伝子発現における影響を評価することができる。別のアプローチにおいて、天然の制御配列の全て又は一部を置換又は欠失させるために、関心のある領域の配列の知識を使用することができる。この場合、標的とする制御領域を単離し、別の遺伝子からの制御エレメント、異なる遺伝子からの制御エレメントの組み合わせ、合成制御領域又は何らかのその他の制御領域を含有するように、又は野生型制御配列の選択部分を欠失するように、修飾する。次に、これらの修飾配列をゲノムへの相同組み換えにより細菌に再導入することができる。遺伝子発現の上方制御のために使用され得る好ましいプロモーターの限定的リストには、髄膜炎菌(N.meningitidis)又は淋菌(N.Gonorroheae)からの、プロモーター、porA、porB、lbpB、tbpB、p110、lst、hpuAB;M.カタラーリスからのompCD、copB、lbpB、ompE、UspA1;UspA2;M.カタラーリスからのTbpB;H.インフルエンザからのp1、p2、p4、p5、p6、lpD、tpbB、D15、Hia、Hmw1、Hmw2が含まれる。
【0151】
一例において、そのプロモーターをより強力なプロモーターに交換することにより、遺伝子の発現を調節することができる(遺伝子の上流配列の単離、この配列のインビトロ修飾及び相同組み換えによるゲノムへの再導入を介する。)。細菌においてならびに細菌から分離された(又は生成された)外膜小胞の両方において、発現を上方制御することができる。
【0152】
その他の例において、ワクチン適用のための特徴が向上した組み換え細菌株を作製するために、記載されるアプローチを使用することができる。これらは、以下に限定されないが、弱毒化株、選択された抗原の発現が向上している株、免疫反応を妨害する遺伝子がノックアウト(又は発現低下)されている株、免疫優勢タンパク質の発現が調節されている株、外膜小胞の脱落が調節されている株であり得る。
【0153】
従って、本発明により、タンパク質E遺伝子の修飾された上流領域も提供され、ここで、修飾された上流領域は、外膜に位置するタンパク質Eタンパク質の発現レベルを変化させる異種制御エレメントを含有する。本発明のこの態様による上流領域には、タンパク質E遺伝子の配列上流が含まれる。この上流領域は、タンパク質E遺伝子のすぐ上流から開始し、通常、ATG開始コドンからこの遺伝子のわずか約1000bp上流の位置まで続く。多シストロン性の配列(オペロン)に位置する遺伝子の場合、上流領域は、関心のある遺伝子の直前又はオペロンの第一の遺伝子の手前から開始し得る。好ましくは、本発明のこの態様による修飾された上流領域は、ATGの500から700bp上流の位置で異種プロモーターを含有する。
【0154】
タンパク質E遺伝子の発現を上方制御するための開示された上流領域の使用、相同組み換えを通じてこれを達成するためのプロセス(例えば本明細書中に参照により組み込まれるWO01/09350に記載のものなど)、この目的に適切な上流配列を含むベクター及びそのように変更された宿主細胞は全て、本発明のさらなる態様である。
【0155】
したがって、本発明は、修飾された細菌の泡状突起において、タンパク質Eポリペプチドを提供する。本発明は、非生物膜に基づく泡状突起ベクターを生成することができる修飾された宿主細胞をさらに提供する。本発明は、異種制御エレメントを含有する修飾された上流領域を有するタンパク質E遺伝子を含む核酸ベクターをさらに提供する。
【0156】
本発明により、本発明による、宿主細胞及び細菌の泡状突起を調製するためのプロセスがさらに提供される。
【0157】
本発明により、組成物、特にワクチン組成物及び、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド及び免疫刺激性DNA配列、例えばSato、Y.ら、Science 273:352(1996)に記載のものなど、を含む方法も提供される。
【0158】
本発明により、記載のポリヌクレオチド又はその特定の断片を使用する方法も提供されるが、これは、型別不能H.インフルエンザによる感染の動物モデルにおける、このような遺伝子免疫実験で使用されるポリヌクレオチドコンストラクトにおいて、細菌の細胞表面タンパク質の非可変領域をコードすることが示されている。このような実験は、予防的又は治療的免疫反応を誘発することができるタンパク質エピトープを同定するために特に有用である。このアプローチにより、哺乳動物、特にヒトにおいて、細菌感染、特に型別不能H.インフルエンザ感染の予防薬又は治療薬を開発するために、感染を首尾よく阻止するか又は除去した動物の必要な器官由来の、特定の価のモノクローナル抗体をその後に調製することが可能になると考えられている。
【0159】
本発明はまた、医薬的に許容可能な担体などの適切な担体とともに本発明の免疫原性組み換えポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含むワクチン製剤も含む。ポリペプチド及びポリヌクレオチドは胃で分解され得るので、それぞれを好ましくは、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は皮内である投与を含む非経口により投与する。非経口投与に適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌化合物及び、製剤を個体の体液(好ましくは血液)と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射溶液;及び懸濁剤又は増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。単位投与又は複数回投与容器、例えば密封アンプル及びバイアル中で製剤を与えることができ、使用直前に滅菌液体担体を添加することのみが必要な凍結乾燥状態で保存することができる。
【0160】
本発明のワクチン製剤はまた、製剤の免疫原性を促進するためのアジュバント系も含み得る。好ましくは、アジュバント系は、選択的にTH1型反応を生じさせる。
【0161】
免疫反応は、広義に、液性又は細胞介在免疫反応という、2つの大きなカテゴリーに区別し得る(伝統的に、それぞれ、抗体及び防御の細胞エフェクター機構を特徴とする。)。反応のこれらのカテゴリーは、TH1型反応(細胞介在反応)及びTH2型免疫反応(液性反応)と呼ばれる。
【0162】
極端なTH1型免疫反応は、抗原特異的な、ハプロタイプ限定的細胞毒性Tリンパ球及びナチュラルキラー細胞反応の生成を特徴とし得る。マウスにおいて、TH1型反応は、IgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とすることが多く、一方、ヒトでは、これらは、IgG1型抗体に相当する。TH2型免疫反応は、マウスIgG1、IgA及びIgMを含む、広い範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成を特徴とする。
【0163】
これらの2タイプの免疫反応の発現の裏にある原動力はサイトカインであると考えられ得る。高レベルのTH1型サイトカインは、ある種の抗原に対して細胞介在免疫反応の誘発を促進する傾向があるが、一方で、高レベルのTH2型サイトカインは、抗原に対して液性免疫反応の誘発を促進する傾向がある。
【0164】
TH1及びTH2型免疫反応の相違は絶対的ではない。現実に、個体は、主にTH1又は主にTH2であるとして記載されている免疫反応を支持する。しかし、Mosmann及びCoffman(Mosmann、T.R.及びCoffman、R.L.(1989)TH1 and TH2 cells:different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties.Annual Review of Immunology、7、p145−173)によりマウスCD4+ve T細胞クローンにおいて記載されたものに関してサイトカインのファミリーを考えることが好都合であることが多い。伝統的に、TH1型反応は、Tリンパ球によるINF−γ及びIL−2サイトカインの産生を伴う。IL−12など、直接、TH1型免疫反応の誘発に付随することが多いその他のサイトカインは、T細胞により産生されない。一方、TH2型反応は、IL−4、IL−5、IL−8及びIL−13の分泌を付随する。
【0165】
ある一定のワクチンアジュバントが、TH1又はTH2型サイトカイン反応の何れかの刺激に特に適していることが知られている。伝統的に、ワクチン接種又は感染後の免疫反応のTH1:TH2バランスの最良の指標には、抗原による再刺激後のインビトロでのTリンパ球によるTH1又はTH2型サイトカインの産生の直接的測定及び/又はIgG1:IgG2、抗原特異的抗体反応の比の測定が含まれる。
【0166】
従って、TH1型アジュバントは、インビトロで抗原により再刺激された際に高レベルのTH1型サイトカインを産生させるために単独のT細胞集団を選択的に刺激し、CD8+細胞毒性Tリンパ球及びTH1型アイソタイプを付随する抗原特異的免疫グロブリン反応の両方の進行を促進するものである。
【0167】
TH1細胞反応の選択的刺激が可能なアジュバントは、国際特許出願WO94/00153及びWO95/17209に記載されている。
【0168】
3De−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)は、あるこのようなアジュバントである。これはGB2220211(Ribi)から知られている。化学的に、これは、4、5又は6個のアシル化鎖と3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物であり、Ribi Immunochem、Montanaにより製造されている。3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい形態は、欧州特許0 689 454B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に記載されている。
【0169】
好ましくは、3D−MPLの粒子は、0.22ミクロン膜に通してろ過滅菌できるよう十分小さい(欧州特許第0 689 454号)。
【0170】
3D−MPLは、投与あたり10μg−100μg、好ましくは25−50μgの範囲で存在し、この投与において抗原は通常、投与あたり2−50μgの範囲で存在する。
【0171】
別の好ましいアジュバントは、QS21、シャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮由来の、HPLC精製した無毒性分画を含む。場合によっては、これを3De−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)と混合し得る(場合によっては担体と一緒に)。
【0172】
QS21の作製方法は、米国特許第5,057,540号で開示されている。
【0173】
QS21を含有する非反応原性アジュバント製剤は既に記載されている(WO96/33739)。QS21及びコレステロールを含むこのような製剤は、抗原と一緒に処方した場合、優れたTH1刺激アジュバントであることが分かっている。
【0174】
TH1細胞反応の選択的刺激剤であるさらなるアジュバントには、免疫調節オリゴヌクレオチド、例えばWO96/02555で開示されているような非メチル化CpG配列が含まれる。
【0175】
本明細書中で上記で述べたものなどの様々なTH1刺激アジュバントの組み合わせもまた、TH1細胞反応の選択的刺激剤であるアジュバントを提供する際にもくろまれる。例えば、3D−MPLとともにQS21を処方することができる。QS21:3D−MPLの比は、通常、1:10から10:1;好ましくは1:5から5:1のオーダーであり、実質的に1:1であることが多い。最適な相乗効果のための好ましい範囲は2.5:1から1:1 3D−MPL:QS21である。
【0176】
好ましくは、本発明によるワクチン組成物中には担体も存在する。担体は、水中油型乳剤又はアルミニウム塩(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムなど)であり得る。
【0177】
好ましい水中油型乳剤は、代謝可能な油、例えばスクアレン、アルファトコフェロール及びTween80などを含む。特に好ましい態様において、このような乳剤中で本発明によるワクチン組成物中の抗原をQS21及び3D−MPLと組み合わせる。さらに、水中油型乳剤は、スパン85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含有し得る。
【0178】
通常、ヒトへの投与に対して、QS21及び3D−MPLは、投与あたり1μg−200μgの範囲、10−100μgなど、好ましくは10μg−50μg、でワクチン中に存在する。通常、水中油滴は、2から10%のスクアレン、2から10%のアルファトコフェロール及び0.3から3%のTween80を含む。好ましくは、スクアレン:アルファトコフェロールの比は、これがより安定な乳剤を与えるので、1以下である。Span85も1%のレベルで存在し得る。ある場合において、本発明のワクチンが安定化剤をさらに含有することは有利であり得る。
【0179】
無毒性の水中油型乳剤は、好ましくは、水性担体中で、無毒性の油(例えばスクアラン又はスクアレン)、乳化剤(例えばTween80)を含有する。水性担体は、例えば、リン酸緩衝食塩水であり得る。
【0180】
水中油型乳剤中にQS21、3D−MPL及びトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO95/17210に記載されている。
【0181】
ある一定のタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチドに関して本発明を説明してきたが、これが天然のポリペプチド及びポリヌクレオチドの断片、及び組み換えポリペプチド又はポリヌクレオチドの免疫原性特性に実質的に影響しない、付加、欠失又は置換がある、同様のポリペプチド及びポリヌクレオチドを包含することを理解されたい。好ましい断片/ペプチドは実施例10に記載されている。
【0182】
本発明は、その他の抗原、特に中耳炎の治療に有用な抗原と組み合わせて本発明のワクチン製剤を含む多価ワクチン組成物も提供する。このような多価ワクチン組成物には、本明細書中で前に述べたようなTH−1誘導アジュバントが含まれ得る。
【0183】
好ましい実施形態において、次の抗原群の1つ以上とともに本発明のポリペプチド、断片及び免疫原を処方する:a)1つ以上の肺炎球菌莢膜多糖類(そのままか又は担体タンパク質に共役されているかの何れか);b)M.カタラーリス感染から宿主を防御することができる1つ以上の抗原;c)肺炎連鎖球菌感染から宿主を防御することができる1つ以上のタンパク質抗原;d)1つ以上のさらなる型別不能ヘモフィルス・インフルエンザタンパク質抗原;e)RSVから宿主を防御することができる1つ以上の抗原;及びf)インフルエンザウイルスから宿主を防御することができる1つ以上の抗原。群a)及びb);b)及びc);b)、d)及びa)及び/又はc);b)、d)、e)、f)及びa)及び/又はc)の組み合わせが好ましい。世界的な中耳炎ワクチンとして、このようなワクチンを有利に使用し得る。
【0184】
肺炎球菌莢膜多糖類抗原は、好ましくは、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F(最も好ましくは血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fから)から選択される。
【0185】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、肺炎球菌の外表面に露出される肺炎球菌タンパク質(肺炎球菌のライフサイクルの少なくとも一部の間に宿主の免疫系により認識され得る。)であるか又は肺炎球菌によって分泌もしくは放出されるタンパク質である。最も好ましくは、タンパク質は毒素、付着因子、2−成分シグナルトランスデューサーもしくは肺炎連鎖球菌のリポタンパク質又はその断片である。特に好ましいタンパク質には、以下に限定されないが、ニューモリシン(好ましくは化学的処理又は突然変異により解毒されたもの)[Mitchellら、Nucleic acids Res.1990 7月11日;18(13):4010「Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumonia types 1 and 2」、Mitchellら、Biochim Biophys Acta 1989 1月23日;1007(1):67−72「Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli:rapid purification and biological properties」、WO96/05859(A.Cyanamid)、WO90/06951(Patonら)、WO99/03884(NAVA)];PspA及びその膜貫通欠失変異体(WO92/14488;WO99/53940;US5804193−Brilesら);PspC及びその膜貫通欠失変異体(WO99/53940;WO97/09994−Brilesら);PsaA及びその膜貫通欠失変異体(Berry&Paton、Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255−62「Sequence heterogeneity of PsaA、a 37−kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae」);肺炎球菌コリン結合タンパク質及びその膜貫通欠失変異体;CbpA及びその膜貫通欠失変異体(WO97/41151;WO99/51266);グリセルアルデヒド−3−ホスフェート−デヒドロゲナーゼ(Infect.Immun.1996 64:3544);HSP70(WO96/40928);PcpA(Sanchez−Beatoら、FEMS Microbiol Lett 1998、164:207−14);M様タンパク質、SB特許出願EP0837130;及び付着因子18627(SB特許出願EP0834568)が含まれる。さらに好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO98/18931で開示されているもの、特に、WO98/18930及びPCT/US99/30390において選択されるものである。
【0186】
混合ワクチンに含まれ得る好ましいモラクセラ・カタラーリスタンパク質抗原(特に中耳炎の予防のため)は、OMP106[WO97/41731(Antex)及びWO96/34960(PMC)];OMP21;LbpA及び/又はLbpB[WO98/55606(PMC)];TbpA及び/又はTbpB[WO97/13785及びWO97/32980(PMC)];CopB[Helminen MEら(1993)Infect.Immun.61:2003−2010];UspA1及び/又はUspA2[WO93/03761(University of Texas)];OmpCD;HasR(PCT/EP99/03824);PilQ(PCT/EP99/03823);OMP85(PCT/EP00/01468);lipo06(GB9917977.2);lipo10(GB9918208.1);lipo11(GB9918302.2);lipo18(GB9918038.2);P6(PCT/EP99/03038);D15(PCT/EP99/03822);OmplA1(PCT/EP99/06781);Hly3(PCT/EP99/03257);及びOmpEである。
【0187】
混合ワクチン中に含まれ得る好ましいさらなる型別不能ヘモフィルス・インフルエンザタンパク質抗原(特に中耳炎の予防のため)には、フィンブリンタンパク質[(US5766608−Ohio State Research Foundation)]及びそれ由来のペプチドを含む融合物[例えばLB1(f)ペプチド融合物;US5843464(OSU)又はWO99/64067];OMP26[WO97/01638(Cortecs)];P6[EP281673(State University of New York)];タンパク質D(EP594610);TbpA及び/又はTbpB;Hia;Hsf;Hin47;Hif;Hmw1;Hmw2;Hmw3;Hmw4;Hap;D15(WO94/12641);P2;P5(WO94/26304);NlpC2(BASB205)[WO02/30971];Slp(BASB203)[WO02/30960];及びiOMP1681(BASB210)[WO02/34772]が含まれる。
【0188】
好ましいインフルエンザウイルス抗原には、丸ごと、生きている又は不活性化ウイルス、スプリットインフルエンザウイルス(卵又はMDCK細胞又はVero細胞中で増殖させたもの)又は全fluウイロソーム(virosome)(R.Gluck、Vaccine、1992、10、915−920により記載されたもの)又はその精製もしくは組換えタンパク質、例えばHA,NP,NAもしくはMタンパク質又はその組合せ)が含まれる。
【0189】
好ましいRSV(呼吸器多核体ウイルス)抗原には、F糖タンパク質、G糖タンパク質、HN糖タンパク質又はその誘導体が含まれる。
【0190】
組成物、キット及び投与
本発明のさらなる態様において、細胞又は多細胞生物への投与のためのタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はタンパク質Eポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0191】
本発明はまた、本明細書中で考察するポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストを含む組成物にも関する。個体への投与に適切な医薬的担体など、細胞、組織又は生物との使用のための非滅菌又は滅菌担体と組み合わせて本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用し得る。このような組成物は、例えば、添加物又は本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの治療的有効量及び医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む。このような担体には、以下に限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせが含まれ得る。処方物は、投与法に適するべきである。本発明は、さらに、本発明の上述の組成物の成分の1つ以上で満たされた1つ以上のの容器を含む、診断及び医薬パック及びキットに関する。
【0192】
単独で、又は治療用化合物などのその他の化合物と組み合わせて、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及びその他の化合物を使用し得る。
【0193】
例えば、とりわけ、局所、経口、肛門、膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内又は皮内経路の投与を含む、何らかの有効で都合のよい方法で、本医薬組成物を投与し得る。
【0194】
治療において、又は予防として、注射用組成物として、例えば、滅菌水性分散液として(好ましくは等張)、個体に活性物質を投与し得る。
【0195】
さらなる態様において、本発明は、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせて、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの可溶性形態、アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド又は小分子化合物などの、ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの治療的有効量を含む医薬組成物を提供する。このような担体には、以下に限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせが含まれる。本発明は、さらに、本発明の上述の組成物の成分の1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む、医薬のパック及びキットに関する。単独で、又は治療用化合物などのその他の化合物と組み合わせて、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及びその他の化合物を使用し得る。
【0196】
例えば、全身又は経口経路による投与経路に本組成物を適応させる。全身投与の好ましい形態には、通常は静脈内注射による注射が含まれる。皮下、筋肉内又は腹腔内などのその他の注射経路を使用することができる。全身投与の代替法には、胆汁塩又はフシジン酸などの浸透剤又はその他の界面活性剤を用いた経粘膜及び経皮投与が含まれる。さらに、本発明のポリペプチド又はその他の化合物を腸溶性又はカプセル製剤に処方することができる場合、経口投与も可能であり得る。これらの化合物の投与もまた、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、粉末などの形態での、局所及び/又は局所化であり得る。
【0197】
哺乳動物及び特にヒトへの投与の場合、活性物質の1日投与レベルは0.01mg/kgから10mg/kg、通常は1mg/kg前後となることが予想される。医師は、何れにせよ、個体に最も適切な実際の投与量を決定し、特定の個人の年齢、体重及び反応によって変化させる。上記の投与量は平均的な場合の代表例である。言うまでもなく、より高い又はより低い投与量範囲に値する個々の例があり得、これらは本発明の範囲内である。
【0198】
必要とされる投与量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、対象の状態の性質及び担当医師の判断に依存する。しかし、適切な投与量は、0.1から100μg/(対象の)kgの範囲である。
【0199】
ワクチン組成物は、都合よく、注射用の形態である。免疫反応を促進するために、従来のアジュバントを使用し得る。ワクチン接種に対する適切な単位用量は0.5−5μg/kg(抗原)であり、好ましくは1−3回、1−3週間の間隔でこのような用量を投与する。指示された用量範囲により、本発明の化合物で、適切な個体への投与を妨げる有害な毒物学的影響は観察されないであろう。
【0200】
しかし、利用可能な様々な化合物及び様々な投与経路の様々な効率の観点で、必要とされる投与量が幅広く変化することが予想される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与より高い投与量を必要とすると予想される。当技術分野でよく理解されているように、これらの投与量レベルの変化は、最適化のための標準的な実験による通常の方法を用いて調整することができる。
【0201】
有形的表現媒体における配列データベース、配列及びアルゴリズム
ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、それらの2次元及び3次源構造を決定するため、ならびに同様のホモロジーのさらなる配列を同定するために、価値ある情報リソースを形成する。コンピュータ可読媒体に配列を保存し、次いで既知の巨大分子構造プログラムにおいて、又はGCGプログラムパッケージなどの周知の検索ツールを用いて配列データベースを検索するために保存データを使用することにより、これらのアプローチは、最も容易に促進される。
【0202】
本発明により、文字配列(character sequence)又は文字列、特に遺伝子配列又はコードされるタンパク質配列の分析方法も提供される。好ましい配列分析の方法には、例えば、同一性及び類似性分析などの配列ホモロジー分析の方法、DNA、RNA及びタンパク質構造分析、配列アセンブリ、分岐分析、配列モチーフ分析、オープンリーディングフレーム決定、核酸塩基呼び出し、コドン使用頻度分析、核酸塩基トリミング及び配列決定クロマトグラムピーク分析が含まれる。
【0203】
コンピュータに基づく方法は、ホモロジー同定を行うために与えられる。この方法は、コンピュータ可動媒体において本発明のポリヌクレオチドの配列を含む第一のポリヌクレオチド配列を提供し;ホモロジーを同定するために、少なくとも1つの第二のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と前記の第一のポリヌクレオチド配列を比較する段階を含む。
【0204】
ホモロジー同定を行うためにも、コンピュータに基づく方法を提供するが、この方法は、コンピュータ可動媒体において本発明のポリペプチドの配列を含む第一のポリペプチド配列を提供し;ホモロジーを同定するために、少なくとも1つの第二のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と前記の第一のポリペプチド配列を比較する段階を含む。
【0205】
本明細書中で引用する、以下に限定されないが特許及び特許出願を含む全ての刊行物及び参考文献は、個々の刊行物又は参考文献が具体的かつ個別に、完全に説明されたものとして、本明細書中で参照により組み込まれることが示されるように、その全体を参照により本明細書中に組み込む。本願が優先権を主張する何れの特許出願も、刊行物及び参考文献に対して上記で述べたようにしてその全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0206】
定義
当技術分野で公知のように、「同一性」とは、場合によっては、配列を比較することにより決定される場合、2以上のポリペプチド配列又は2以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、このような配列の文字列間の一致によって決定される場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、以下に限定されないが、(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin、A.M.及びGriffin、H.G編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heine、G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov、M.及びDevereux、J.編、M Stockton Press New York、1991;及びCarillo、H.及びLipman、D.、SIAM J、Applied Math.、48:1073(1988)に記載のものを含む既知の方法により容易に計算することができる。試験する配列間で最大の一致を与えるために、同一性を決定するための方法を設計する。さらに、公開されているコンピュータプログラムにおいて同一性を決定するための方法が体系化されている。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム法には、以下に限定されないが、GCGプログラムパッケージにおけるGAPプログラム(Devereux、J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN(Altschul、S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403−410(1990)及びFASTA(Pearson及びLipman Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85;2444−2448(1988)が含まれる。プログラムのBLASTファミリーはNCBI及びその他のソースから公開されている(BLAST Manual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD20894;Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。同一性を決定するために、周知のSmith Watermanアルゴリズムも使用し得る。
【0207】
ポリペプチド配列比較のためのパラメータには次のものが含まれる:
アルゴリズム:Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);
比較行列:Henikoff及びHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919(1992)からのBLOSSUM62
ギャップペナルティー:8
ギャップ長ペナルティー:2。
【0208】
これらのパラメータとともに有用なプログラムは、Genetic Computer Group、Madison、WIから「ギャップ」プログラムとして公開されている。上述のパラメータは、ペプチド比較に対する初期設定パラメータ(エンドギャップに対してペナルティーなし)である。
【0209】
ポリヌクレオチド比較に対するパラメータには次のものが含まれる:
アルゴリズム:Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);
比較行列:マッチ=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティー:50
ギャップ長ペナルティー:3。
【0210】
Genetic Computer Group、Madison、WIから「ギャップ」プログラムとして利用可能。これらは、核酸比較に対する初期設定パラメータである。
【0211】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドに対する「同一性」についての好ましい意味は、場合によっては、下記(1)及び(2)で与えられる。
【0212】
(1)ポリヌクレオチド実施態様は、配列番号11の参照配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97又は100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドをさらに含み、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号11の参照配列と同一であり得るか、又は参照配列と比較した場合にヌクレオチド変化のある一定の整数個以下を含み得、この変化は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転位及びトランスバージョンを含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端の位置で、又は参照配列におけるヌクレオチド間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得、このヌクレオチド変化の数は、配列番号11のヌクレオチドの総数に、%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号11のヌクレオチド総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
nn≦xn−(xn・y)、
(式中、nnはヌクレオチド変化の数であり、xnは配列番号11のヌクレオチド総数であり、yは50%に対して0.50、60%に対して0.60、70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85、90%に対して0.90、95%に対して0.95、97%に対して0.97又は100%に対して1.00であり、・は掛け算に対する記号であり、xn及びyの非整数の積は何れも、xnからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。配列番号1−10のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変化は、このコード配列において、ナンセンス、ミスセンス又はフレームシフト突然変異を生じさせ得、それによってこのような変化の後、このポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが変化する。
【0213】
一例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号11の参照配列と同一であり得、これは100%であり得るか、又は%同一性が100%の同一性未満であるように、参照配列と比較した場合に、核酸変化のある一定の整数以下を含み得る。このような変化は、少なくとも1つの核酸の欠失、置換(転位及びトランスバージョンを含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置で、又は参照配列における核酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得る。ある%同一性に対する核酸変化の数は、配列番号11の核酸の総数に、%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号11の核酸の総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
nn≦xn−(xn・y)、
(式中、nnは核酸変化の数であり、xnは配列番号11の核酸総数であり、yは例えば70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85などであり、・は掛け算に対する記号であり、xn及びyの非整数の積は何れも、xnからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0214】
(2)ポリペプチド実施形態は、配列番号1−10のポリペプチド参照配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97又は100%の同一性を有するポリペプチドを含む単離ポリペプチドをさらに含み、ここで、このポリペプチド配列は、配列番号1−10の参照配列と同一であり得るか、又は参照配列と比較した場合にアミノ酸変化のある一定の整数個以下を含み得、この変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端で、又は参照配列のアミノ酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得、このアミノ酸変化の数は、配列番号1−10のアミノ酸の総数に100で割った%同一性を定義する整数を掛け、次いで配列番号1−10のアミノ酸総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
na≦xa−(xa・y)、
(式中、naはアミノ酸変化の数であり、xaは配列番号1−10のアミノ酸総数であり、yは50%に対して0.50、60%に対して0.60、70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85、90%に対して0.90、95%に対して0.95、97%に対して0.97又は100%に対して1.00であり、・は掛け算に対する記号であり、xa及びyの非整数の積は何れも、xaからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0215】
一例として、本発明のポリペプチド配列は、配列番号1−10の参照配列と同一であり得、これは100%であり得るか、又は%同一性が100%の同一性未満であるように、参照配列と比較した場合に、アミノ酸変化のある一定の整数以下を含み得る。このような変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端で、又は参照配列のアミノ酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得る。ある%同一性に対するアミノ酸変化の数は、配列番号1−10のアミノ酸の総数に%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号1−10のアミノ酸総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
na≦xa−(xa・y)、
(式中、naはアミノ酸変化の数であり、xaは配列番号1−10のアミノ酸総数であり、yは70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85などであり、・は掛け算に対する記号であり、xa及びyの非整数の積は何れも、xaからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0216】
本明細書中で使用する場合、「個体」という用語は、生物に関して、多細胞真核生物を指し、これには、以下に限定されないが、後生動物、哺乳動物、ヒツジ科、ウシ科、類人猿、霊長類及びヒトが含まれる。
【0217】
「単離された」は、その天然の状態から「人の手によって」変化させられること、即ち、天然において生じる場合、その元来の環境から変化させられているか又は除去されていること又はその両方を意味する。例えば、生体中に天然に存在する生物ポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、この用語を本明細書中で用いる場合、「単離されて」いる。さらに、形質転換、遺伝子操作又は何らかのその他の組み換え法により生物に導入されているポリヌクレオチド又はポリペプチドは、その生物中に存在し続けている場合でも「単離されて」おり、その生物が生きていても生きていなくてもよい。
【0218】
「ポリヌクレオチド」とは、通常、何らかのポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは、1本鎖及び2本鎖領域を含む、非修飾RNAもしくはDNA又は修飾RNAもしくはDNAであり得る。
【0219】
「変異体」とは、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるが、基本的な特性を保持するポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、別の参照ヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもよいし変化させなくてもよい。ヌクレオチド変化の結果、下記で考察するように、参照配列によりコードされるポリペプチドにおいて、アミノ酸置換、付加、欠失、融合及び短縮が起こり得る。ポリペプチドの典型的な変異体は、別の参照ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般に、相違は、参照ポリペプチド及び変異体の配列が全体的に非常に近く、多くの領域において同一であるように限定される。変異体及び参照ポリペプチドは、何れかの組み合わせでの1つ以上の置換、付加、欠失によりアミノ酸配列が異なり得る。置換された又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによりコードされるものであってもよいしそうでなくてもよい。ポリヌクレオチド又はポリペプチドの変異体は、対立遺伝子多形などの天然のものであり得るか又は天然に生じることが知られていない変異体であり得る。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの非天然変異体は、突然変異誘発技術又は直接的合成により作製し得る。
【0220】
「疾患」は、細菌による感染により引き起こされるか又は細菌による感染に関連する何らかの疾患を意味し、例えば、乳児及び小児の中耳炎、高齢者の肺炎、副鼻腔炎、院内感染及び侵襲性疾患、聴力低下を伴う慢性中耳炎、中耳での液体貯留、聴覚神経損傷、言葉の発達の遅延、上気道の感染及び中耳の炎症が含まれる。
【0221】
実験パート
他に詳しく述べる場合を除き、当業者にとって周知であり通常のものである標準的技術を用いて下記の実施例を行う。実施例は例証であるが、本発明を限定しない。
【0222】
本研究は、H.インフルエンザのタンパク質E(pE)と名付けられた新規外膜タンパク質及び、ヒトIgD(λ)骨髄腫血清を用いて発見された短縮型組み換えpE(A)の、単離、精製、特性解析、クローニング及び発現を述べる。
【0223】
材料及び方法
試薬
b型H.インフルエンザ株MinnA及びNTHi3655は、Robert S.Munson Jr.(Washington University School of Medicine(St.Louis、Mo))の好意により入手した。型別不能H.インフルエンザ株NTHi772は、発明者らの部署での鼻咽頭スワブ培養物からの臨床分離株であった(2)。一連の様々なHaemophilus(ヘモフィルス)種も分析し、表1で述べる。ヒトIgD骨髄腫全血清IgD(λ)をThe Binding Site(Birmigham、England)より購入した。特異的な抗−pE抗血清を作製するために、完全フロイントアジュバント(Difco、Becton Dickinson、Heidelberg、Germany)中で乳化した組み換えpE22−160[pE(A)]又はキーホールリンペットへモシアニン(KLH)に共役されたpE41−68ペプチド200μgを用いて筋肉内投与でウサギに免疫付与し、不完全フロイントアジュバント中のタンパク質の同用量で第18日及び36日に免疫促進した。2から3週間後に採血した。CnBr−セファロースに共役されたpE(A)又は特異的pEペプチド(pE41−68)を用いて、得られたポリクローナル抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより単離した(11)。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗−ヒトIgDはBiosource(Camarillo、CA)から入手した。ウサギ抗−ヒトIgD pAbはDakopatts(Gentofte、Denmark)から入手した。
【0224】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合マウス抗−ヒトIgD、HRP標識ウサギ抗−ヒト軽鎖(κ及びλ)及びFITC−結合ブタ抗ウサギポリクローナル免疫グロブリンはDakopattsから購入した。
【0225】
タンパク質Eの抽出及び精製
NAD及びヘミン(Sigma、St.Louis、MO)を各10μg/mLずつ添加したブレインハートインフュージョン(BHI)培地(Difco Laboratories、Detroit、Mich.)中でH.インフルエンザb型(MinnA)を一晩増殖させた。2回洗浄した後、0.5%Empigen(R)(Calbiochem Novabiochem、Bedford、MA)を含有する0.05M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)中で細菌を抽出した。磁気撹拌装置により37℃で2時間、細菌懸濁液を混合した。4℃にて8000xgで20分間遠心した後、上清を滅菌フィルター(0.45μm;Sterivex−HV、Millipore)でろ過した。0.5%Empigen(R)中のH.インフルエンザ抽出物を6M尿素含有0.05M Tris−HCl(pH8.8)で平衡化したQ−セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech)にかけた。同じ緩衝液中の0から1M NaClの直線的勾配を用いてカラムを溶出した。IgD(λ)骨髄腫血清により検出された分画を集め、0.05M Tris−HCl(pH8.8)に対してSpectraphorメンブレンチューブ(分子量カットオフ6−8,000;Spectrum、Laguna hills、CA)中で透析し、YM100ディスクメンブレン(分子量カットオフ10,000;Amicon 、Beverly、MA)で濃縮した。
【0226】
SDS−PAGE及び膜でのタンパク質の検出(ウェスタンブロット)
ランニング(MES)、試料(LDS)及び転写緩衝液ならびにNovexからのブロッティング装置(San diego、CA)とともに10%Bis−Trisゲルを用いて150Vの一定電圧でSDS−PAGEを行った。試料を一様に100℃で10分間加熱した。クーマシーブリリアントブルーR−250(13;Bio−Rad、Sundbyberg、Sweden)によりゲルを染色した。ゲルからイモビロン−P膜(Millipore、Bedford、MA)へのタンパク質バンドの電気泳動的転写を30Vで2から3時間行った。転写後、5%粉乳を含有する0.05%Tween20を添加したPBS(PBS−Tween)中でイモビロン−P膜をブロッキング処理した。PBS−Tween中で数回洗浄した後、2%粉乳を含有するPBS−Tween中の精製IgD骨髄腫タンパク質(0.5μg/mL、hu IgD(λ)骨髄腫;The Bindingsite)とともにこの膜を室温で1時間温置した。PBS−Tween中で数回洗浄した後、1/1000希釈したHRP結合ヤギ抗−ヒトIgDを添加した。室温で40分間温置し、PBS−Tween中でさらに数回洗浄した後、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)を用いて発色を行った。
【0227】
2次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2−D PAGE)及びウエスタンブロット
イオン交換クロマトグラフィー後、IPGphor IEFシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、H.インフルエンザ(MinnA)のEmpigen(R)抽出物を等電点電気泳動(IEF)に供した(5、12)。ゲルでの検定のために、標準物質を使用した(カタログ番号161−0320;Bio−Rad)。Immobilon−PVDFフィルター(0.45mm;Millipore、Bedford、US)へと、2−Dポリアクリルアミドゲルを120mAで一晩電気的ブロッティングにより転写した。飽和後、温置、ブロッキング処理及び洗浄段階を上述のように行った。
【0228】
アミノ酸配列分析
Applied Biosystems(Foster City、CA)470ガス液体固体相シークエネーターを用いて自動化アミノ酸配列分析を行った。
【0229】
H.インフルエンザゲノムライブラリの構築
Berns及びThomasの変法(2、13)を使用することにより、株772から染色体DNAを調製した。簡潔に述べると、Sau3Aで1時間、部分的に消化したDNA40μgからH.インフルエンザ772ゲノムライブラリを構築した。切断されたDNAをスクロース勾配上で分画した(14)。適切なサイズ(2から7kbp)のDNA断片を含有する分画を集め、DNAをBamHI消化したpUC18に連結し、次いでGene pulser(Bio−Rad、Richmond、CA)を用いてエレクトロポレーションにより大腸菌JM83に形質転換した。アンピシリン及びX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)を添加したLB寒天上に細菌を播種した。
【0230】
コロニー免疫アッセイ、DNA単離及び配列決定
寒天表面を乾いたフィルターで覆うことによって、LB寒天上で一晩培養したE.コリ形質転換体をニトロセルロースフィルター(Sartorius、Gottingen、Germany)に転写した。このプレートを15分間放置し、飽和クロロホルム蒸気に20分間曝露することにより、細胞を溶解した。オボアルブミンを含有するTris平衡塩類溶液(50mM Tris−塩酸塩、154mM NaCl、1.5%オボアルブミン[pH7.4])中で30分間フィルターを温置することにより、フィルター上の残りのタンパク質−結合部位をブロッキング処理した。ブロッキング処理後、ヒトIgD(λ)とともにこのフィルターを30分間温置した。洗浄後にHRP結合抗−ヒトIgDポリクローナル抗体を添加し、フィルターを30分間温置した。温置は全て室温で行った。最後に、4−クロロ−1−ナフトール及びH2O2を用いてフィルターを発色させた。陽性のクローンを拾い、NTHi772ゲノムDNAを含有するpUC18プラスミドDNAを精製した。隣接プライマーM13+及びM13−及びBigDye Terminator Cycle Sequencing v.2.0 Ready Reaction配列決定キット(Perkin−Elmer、Foster City、Ca)を用いて、得られたNTHi772DNA挿入物の配列決定を行った。得られた挿入配列(3.55kbp)は、タンパク質HI0175、HI0176、HI0177及び最後にHI0178(15)をコードするDNAを含有するストレッチに対応した。
【0231】
DNAクローニング及びタンパク質発現
PCR増幅断片を用いて、全コンストラクトを作製した。NTHi772ゲノムDNA(HI0175からHI0178)を含有するpUC18を鋳型として使用した。TaqDNAポリメラーゼはRoche(Manheim、Germany)からのものであり、PCR条件は、製造者により推奨されるものであった。4種類の予想されるタンパク質、HI0175からHI0178のオープンリーディングフレームをクローニングしたが、ここでは、HID(HI0178)のクローニングを述べる手順のみを記載した。pE22−160[pE(A)と称する。]は、アミノ酸残基グルタミン21を含む内在性シグナルペプチドを欠き、制限酵素部位、BamRI及びHindIIIを導入するプライマー5’−ctcaggatccaaaggctgaacaaaatgatgtg−3’及び5’−ggtgcagattaagcttttttttatcaactg−3’を用いてPCRにより増幅した。発現ベクターによりコードされる6個のヒスチジン残基を融合させるために、pE22−160終止コドンを突然変異させた。pe遺伝子の得られた417bpオープンリーディングフレームをpET26(+)(Novagen、Darmstadt、Germany)に連結した。推定される毒性を避けるために、得られたプラスミドを最初に宿主E.コリDH5αに形質転換した。その後、pE及びpE(A)をコードするプラスミドを発現宿主BL21(DE3)に形質転換した。全長pE及びpE(A)に加えて、一連の短縮型pE変異体を製造した。概略を図8で示す。BamHI及びHindIIIを含有するプライマーを全コンストラクトに対して使用した。短縮型変異体に対する手順は上述のとおりであった。BigDye Terminator Cycle Sequencing v.2.0 Ready reaction配列決定キット(Perkin−Elmer、Foster City、Ca)を用いて、全コンストラクトの配列決定を行った。
【0232】
組み換えタンパク質を作製するために、対数増殖期中期(OD600 0.6から0.8)まで細菌を増殖させ、次いで1mM イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)で誘導し、その結果、pE(A)の過剰発現が起こった。OD600が1.5から1.7に到達したときに細菌を回収し、標準的プロトコールに従い封入体を単離した。ニッケルカラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより組み換えタンパク質をさらに精製し得る。精製した組み換えタンパク質を続いてSDS−PAGEで分析した。
【0233】
H.インフルエンザDNA精製、PCR条件及び配列決定
DNeasy Tissue kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いてH.インフルエンザ臨床分離株からのゲノムDNAを単離した。TaqDNAポリメラーゼは、Roche(Mannheim、Germany)からのものであり、PCR条件は製造者により推奨されるものであった。pE遺伝子を単離するために、プライマーペア5’−gcatttattaggtcagtttattg−3’及び5’−gaaggattatttctgatgcag−3’(これらは、それぞれ、隣接遺伝子HI077、HI0179にアニーリングする。)を使用した。プライマー5’−cttgggttacttaccgcttg−3’及び5’−gtgttaaacttaacgtatg−3’に加えて上述のプライマーを用いて遺伝子歩行により、得られたPCR産物(948bp)の配列決定を行った。ダイターミネーターサイクル配列決定キット(CEQ DTCSキット、Beckman Coulter、Stockholm、Sweden)を用いてBeckman CEQ2000においてキャピラリー電気泳動を行った。PHRED(CodonCode、Deadham、USA)及びSEQUENCHER(MedProbe、Oslo、Norway)を用いて、得られたDNA配列の編集及びアラインメントを行った。
【0234】
pE欠失H.インフルエンザ(NTHi 3655 Δpe)の作製
NTHi 772から単離されたゲノムDNAを鋳型として使用した。2つのカセットにおいて特異的な取り込み配列に加えて、それぞれ制限酵素部位XhoIとEcoRI、及びEcoRIとSpEIを導入するDyNAzymeTMII DNAポリメラーゼ(Finnzymes、Espoo、Finland)を用いて、遺伝子HI0177及びHI0179の一部を含むpeの5’−及び3’−末端を2つのカセット(それぞれ815bp及び836bp)として増幅した(18)。得られたPCR断片を消化し、pBluescript SK(+/−)にクローニングした。EcoRIに対する制限酵素部位を用いてpUC4Kからカナマイシン耐性遺伝子カセット(1282bp)を得た。消化後、HI0177及びHI0179遺伝子の一部を含有する短縮型pe遺伝子断片にPCR産物を連結した。HeriottらのM−IV法(19)に従い、H.インフルエンザ株Eagan及びRM804を形質転換した。得られた突然変異体をPCRにより確認し、ウエスタンブロット及びフローサイトメトリーによりpE発現を分析した。
【0235】
分子生物学ソフトウェア
利用可能なH.インフルエンザKW20ゲノムと得られた配列を比較した(http://www.tigr.org)(15)。SignalP Vl.1 World Wide Web Prediction Server Center for Biological Sequence Analysis(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)(16)を用いてシグナルペプチドを推定した。Kyte及びDoolittleの方法(17)により、pEの疎水性プロファイルを分析した。
【0236】
動物、手術手順及びラット中耳炎モデル
体重200から250gの健常な雄Sprague−Dawleyラットを使用した。動物は全て、手術前に耳顕微鏡で観察したところ、中耳感染はなかった。診療において、ラットをメトヘキシタール(Brietal(R)、Elli Lilly and Company、Indianapolis、NI)で静脈内投与により、又は抱水クロラール(apoteksbolaget、Lund、Sweden)で腹腔内投与により麻酔した。動物実験のための細菌を上述のように培養した。遠心により回収した後、NTHi 3655及び対応するpE突然変異体の両方に対して、新鮮な培地中で2x1010コロニー形成単位(cfu)の濃度になるように細菌を懸濁した。調製物を使用まで氷上で保存した。急性中耳炎(AOM)を誘発するために、頸部を腹側正中切開して中耳に到達するようにし、細菌懸濁液およそ0.05mLを中耳腔に染み込ませた。術後第3日及び第5日に耳顕微鏡により観察を行った。第3日に化膿性滲出液、即ち不透明な滲出液、及びしばしば著しい器官の膨張がある中耳炎をAOMとした。
【0237】
結果
IgD(λ)骨髄腫血清により検出されるH.インフルエンザタンパク質(pE)の抽出及び分離
以前、型別不能 H.インフルエンザ(NTHi)はIgDに結合せず(19)、一方、莢膜性H.インフルエンザはIgDに強く結合すると考えられてきた。発明者らは、IgD(λ)骨髄腫血清がNTHiにも特異的に結合することを発見した。NTHi772の典型的なフローサイトメトリープロファイルを図1で示す。IgDなしの対照と比較して、IgD(λ)骨髄腫タンパク質存在下で強いシフト及び蛍光の増強が見られた。
【0238】
IgD(λ)骨髄腫により検出されたH.インフルエンザ外膜タンパク質を詳細に分析するために、外膜分画を界面活性剤Empigen(R)中で可溶化した。図1Bは、およそ16kDaの見かけの分子量を有するタンパク質に対するウエスタンブロットにおいて非常に強いIgD結合活性が得られたことを示す。しかし、IgD結合活性に対応する明瞭なタンパク質バンドをクーマシーブリリアントブルー染色SDS−PAGEで検出することはできなかった。Q−セファロースカラムでの分離後、同じ外膜抽出物を2次元ゲル電気泳動及び銀染色に供した(図1C)。平行して、ヒトIgD(λ)をプローブとして用いた対応するウエスタンブロットを行った。このように、pEが局在した部分を丸で囲むことができた。しかし、見えるタンパク質は観察されなかった(図1C)。
【0239】
タンパク質Eのクローニング及びpEを欠く型別不能H.インフルエンザ突然変異体の作製
分離後、2−D分析でタンパク質を全く検出することができなかったので、型別不能H.インフルエンザ(NTHi)株772を用いてH.インフルエンザDNAライブラリを構築した。2から7kbpの範囲の断片を含有するゲノムDNAをpUC18に連結し、続いてE.コリJM83へと形質転換した。ヒトIgD(λ)及びHRP結合抗−ヒトIgDポリクローナル抗体からなるコロニー免疫アッセイを用いて、IgD結合について形質転換体を分析した。試験した20,000個のコロニーから3個の陽性のコロニーを見出し、IgD(λ)を用いた第2回目のスクリーニングに供した。発明者らは、陽性コロニーのうち1個の配列決定を行い、H.インフルエンザKW20(15)の物理的地図に従う4個のタンパク質HI0175からHI0178をコードするDNAを含有する3.55kb挿入断片を見出した。IgD(λ)との特異的な相互作用をさらに確認するために、選択した形質転換体をフローサイトメトリーによっても分析した。図2Bで見ることができるように、空のベクターのみで形質転換した陰性対照E.コリと比較した際に、HI0175からHI0178をコードする配列に対応するH.インフルエンザ772ゲノムDNAを有するE.コリJM83をIgD(λ)により検出した(図2A)。
【0240】
E.コリJM83クローンの分析に加えて、4種類のH.インフルエンザタンパク質(HI0175からHI0178)を発現ベクターpET26(+)にクローニングし、E.コリBL21D3において産生させた。得られた組み換えタンパク質をウエスタンブロット上でIgD(λ)により分析し、HI0178がIgD(λ)により検出される唯一のタンパク質であることが分かった(データは示さない。)。
【0241】
pEをコードする遺伝子においてカナマイシン耐性遺伝子カセットを導入することにより、型別不能H.インフルエンザ(NTHi 3655)を突然変異させた。得られた突然変異体をPCRによって確認し、特異的抗−pE抗血清を用いたウエスタンブロットでの外膜タンパク質の分析によってpE発現がないことが証明された(データは示さない。)。NTHi 3655Δpe突然変異体もフローサイトメトリーよって試験し、ウサギ抗−pE一価抗血清及びFITC−結合ヤギ抗−ウサギ二次pAbで分析した際に、対応するNTHi 3655野生型と比較して、突然変異によって蛍光が明らかに低下していることが分かった(図2C及びD)。
【0242】
全H.インフルエンザでタンパク質Eを検出したが、一方、その他の種は陰性であった。
【0243】
NTHiの臨床単離株及び標準株のpE発現を分析するために、発明者らは、IgD(λ)血清及びヒトIgDに対するFITC−結合二次抗体からなる直接結合フローサイトメトリーアッセイを開発した。最初の実験において、様々な時点で回収した細菌をpE発現について分析した。対数増殖期又は静止期の細菌の間でpE発現について相違は観察されず、このことから、NTHi表面pEが増殖期には依存していないことが示唆された。従って、全てのさらなる分析において静止期の細菌を使用した。細菌細胞あたりの平均蛍光強度(mfi)を分析し、全部で22種類のNTHi株を発明者らの実験に取り入れた。検出抗体としてIgD(λ)骨髄腫血清を用いたこの特定のアッセイにおいて大部分のNTHiでpEが検出されたが、蛍光強度はNTHi株によって様々であった(図3)。
【0244】
その他の実験において、表面露出pEの検出のために特異的ウサギ抗−pE抗体を使用した。特異的抗−pE抗血清は、H.インフルエンザ、H.エジプチクス(H.aegypticus)及びH.ヘモリチクス(H.haemolyticus)の莢膜性株においてもpEを特異的に認識した(データは示さない。)。
【0245】
pE発現レベルをさらに分析するために、検出抗体としてIgD(λ)を用いてウエスタンブロットにおいて様々なヘモフィルス種のEmpigen(R)処理外膜抽出物を試験した(表1)。これらの実験において、高発現及び低発現ヘモフィルス株の間で差は見られず、即ち、ウエスタンブロットにおいて、全ての株が、同じ強度及び16kDaに相当する同じ位置で、pEを示した。ウエスタンブロットにより明らかなように、莢膜性H.インフルエンザ(a型からf型)もpEを発現した(表1)。例えば、4種類のH.インフルエンザ莢膜b型(Hib)におけるpE発現を図4でNTHiと比較する。H.エジプチクス及びH.ヘモリチクスはpEを発現したが(表1)、一方、その他の関連ヘモフィルス種については、フローサイトメトリーにおいて陰性であり(図3)、ウエスタンブロット分析においてpEは検出されなかった。特異的抗−pE抗血清は莢膜性株においてもpEを特異的に認識した(データは示さない。)。
【0246】
【表1】
【0247】
組み換え産生されたpE22−160[pE(A)]はIgD(λ)により検出される。
【0248】
最初の実験において、発明者らは、pEの組み換え産生を試みたが、低濃度しか得られなかった。タンパク質収率を最大にするために、アミノ酸残基リジン22からリジン160からなる短縮型pE断片を構築した。このように、アミノ酸グルタミン21を含むN−末端シグナルペプチドを除去し、ベクターpET26(+)由来の9個の残基に加えてリーダーペプチドで置換した(図5A)。短縮型pE22−160をpE(A)と名付けた(図5B)。組み換えタンパク質産物が「野生型」pEに対応することを確認するために、プローブとしてIgD(λ)を使用して、NTHi772から単離したpEとともに組み換え発現させたpE(A)をSDS−PAGE及びウエスタンブロットにより分析した。図5Dで示されるように、組み換えpE(A)はSDS−PAGEにおいて野生型pEにはっきりとに対応した。さらに、E.コリで産生されたpE(A)は、IgD(λ)抗血清によって0.01μg単位まで検出することができた(図5E)。
【0249】
ウサギの免疫付与のためにpE(A)を使用し、材料及び方法で詳述したような免疫付与計画を完遂後、計算した免疫優勢ペプチド(アミノ酸pE1−68)からなるカラムで抗−pE抗血清を精製した。得られた抗体は、細菌表面(図2C)及びウエスタンブロット(示さない。)の両方で、明らかにpEを検出した。
【0250】
タンパク質e遺伝子のDNA配列及びオープンリーディングフレーム
株NTHi 772からのpE1−160のDNA及びアミノ酸配列を図6で概説する。オープンリーディングフレーム(ORF)は160アミノ酸長であり、予想されるシグナルペプチドの長さは20アミノ酸である。コンピュータ分析から、シグナルペプチダーゼがアミノ酸残基アラニン18からリジン22を認識し、残基イソロイシン20とグルタミン21との間で切断することが示唆された(38)。平行して、HIDハイドロパシープロファイル(39)から、pEが疎水性シグナルペプチドを有し、一方、その分子の残りの部分は主に親水性であることが分かる(図7)。
【0251】
シグナルペプチダーゼ切断部位を詳しく調べるために、組み換え全長pEをエドマン分解に供した。しかし、おそらくpEポリペプチド鎖のアミノ末端が封鎖されていた。この失敗に対して考えられる説明は、タンパク質のM.カタラーリス UspAファミリーに対して以前記載されているように、第一のアミノ酸がピログルタミル残基であったことであろう(11)。しかし、ピログルタメートアミノぺプチダーゼによりこの推定残基を除去する試みは失敗した。全長pE1−160と対照的に、内在性H.インフルエンザシグナルペプチドを欠くpE(A)(pE22−160)に対するN−末端配列(図5)は、エドマン分解によりうまく特性が明らかになり、予想されるベクター配列を含有する、即ちE.コリのシグナルペプチダーゼが正しい位置で切断したことが分かった(図5A)。
【0252】
NTHi及び莢膜性H.インフルエンザを含む一連の様々なヘモフィルス種のタンパク質の配列を決定した(表1)。興味深いことに、pEは非常によく保存されていた。数個のアミノ酸のみが点突然変異を起こしており、特異的なパターンに従い、これらは殆どの株で突然変異していた(図6及び表2)。
【0253】
【表2】
【0254】
pEの様々な断片はE.コリにおいて容易に産生させることができる。
【0255】
全長pE由来の8個のcDNA配列をpET26b(+)にクローニングし、E.コリで発現させた。ヒスチジンタグに対する親和性があるニッケルレジンにおいて、得られたタンパク質を精製した(図8)。組み換えタンパク質は、成熟pEタンパク質産物全体を包含し、それらの個々の長さ及び位置は図8Aで示されるとおりであり、精製産物は図8Bで概説する。
【0256】
pEはラット急性中耳炎(AOM)において決定的な毒性因子である。
【0257】
NTHiに対する毒性因子としてのpEの役割を調べるために、ラットの中耳に105から109個のNTHi 3655 Δpe又は対応する野生型NTHi 3655を接種した(図9)。興味深いことに、野生型細菌と比較した場合、同様のAOMを誘発するためには、100から1,000倍を超えるNTHi 3655Δpeが必要であった。従って、pEはNTHi−誘発性AOMに対する決定的な毒性因子である。
【0258】
pEは規定の集団において免疫原性が高い。
【0259】
小児及び血液ドナーにおける抗体レベルを測定するために、E.コリから組み換えpE(A)を精製し(図5B)、ELISAで使用した。pE(A)に対する抗体のELISA分析の結果を図9で示す。6ヶ月齢未満の小児では、pE(A)に対してIgG及びIgAが検出可能であった。5歳から10歳までの小児でIgG抗体はピークレベルを示した。一方、IgA抗体は年齢が上がるとともに徐々に上昇し、最大値は70歳から80歳の群で検出された。
【0260】
有用なエピトープ
タンパク質のB−細胞エピトープは主にその表面に局在する。タンパク質EポリペプチドのB−細胞エピトープを予測するために、2D−構造予想及び抗原性指数予想の2種類の方法を組み合わせた。2D−構造予想は、PSIPREDプログラム(David Jones、Brunei Bioinformatics Group、Dept.Biological Sciences、Brunei University、Uxbridge UB8 3PH、UKより)を用いて行った。抗原性指数は、Jameson及びWolf(CABIOS 4:181−186[1988])によって述べられた方法に基づいて計算した。このプログラムで使用したパラメーターは抗原性指数及び抗原性ペプチドに対する最小限度の長さであった。最小で5個の連続アミノ酸に対する0.9という抗原性指数をプログラムにおいて閾値として使用した。良好で可能なB−細胞エピトープを含むペプチドを表3で挙げる。ntHi感染を予防するためのワクチン組成物において、これらは有用であり得(好ましくは、より大きいタンパク質に共役又は組み換え連結されている。)、保存的突然変異(表3の配列に対して好ましくは70、80、85、95、99又は100%同一)又はそれらからの5以上(例えば、6、7、8、9、10、11、12、15、20又は25)のアミノ酸を含む短縮型又は、タンパク質Eポリペプチドに対して宿主において免疫反応を誘発できる有効なエピトープが保存されている、タンパク質E(上記表2で示されるような配列番号1又はその天然の相同体)ポリペプチドの天然の状態からのペプチドのN及び/又はC末端に例えば、1、2、3、5、10個のさらなるアミノ酸を含む延長型を含む、類似のペプチドも同様である。
【0261】
【表3】
【0262】
結論
表面露出ヘモフィルス外膜タンパク質pEは、NTHi誘発性AOMに対する決定的な毒性因子であり、規定の集団において高い免疫原性があり、従って、様々なヒト疾患に対する非常に適切なワクチン候補である。
【0263】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】16.3kDaヘモフィルス・インフルエンザタンパク質EをIgD(λ)骨髄腫タンパク質により検出する。Aにおいて、H.インフルエンザ772におけるpE発現のフローサイトメトリー分析を示す。H.インフルエンザMinnAのEmpigen(R)処理外膜タンパク質のSDS−PAGE及びウエスタンブロット(B)及び二次元−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析(C)を示す。外膜タンパク質抽出物のQ−セファロースでの分離の前(B)及び後(C)を示す。パネルCの矢印は、対応するゲルのウエスタンブロット(プローブとしてIgD(λ)を使用。)に基づくpEに対する予想位置を示す。Aにおいて、IgD(λ)骨髄腫タンパク質とともに細菌を添加し、次いでウサギFITC−結合抗−IgD pAbとともに温置し、フローサイトメトリー分析を行った。Bにおいて、クーマシーブルー染色SDS−ゲル(染色)及び、ヒト骨髄腫IgD(λ)を用い、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗−ヒトIgDポリクローナル抗体とともに温置して行ったウエスタンブロットを示す。添加前に10分間、2−メルカプトエタノール存在下で試料を煮沸した。
【図2】pE−発現E.コリのフローサイトメトリープロファイルを、H.インフルエンザ3655野生型及びpE欠損突然変異体と比較した。空のpUC18ベクターを有するE.コリ(A)を、H.インフルエンザ772(遺伝子HI0175からH10178)由来のゲノムDNAを含有するpUC18で形質転換した細菌(B)と比較する。型別不能H.インフルエンザ3655野生型(C)及び対応する突然変異体(D)でのpE発現を示す。液体培養中で一晩、E.コリ株JM83及びH.インフルエンザを増殖させた。E.コリをヒト骨髄腫IgD(λ)とともに氷上で温置した。1時間及び洗浄後、FITC−結合ウサギ抗−ヒトIgD pAbをさらに30分間添加し、次いで、洗浄段階及び続くフローサイトメトリー分析を行った。特異的なウサギ抗−pEポリクローナル抗体及びFITC−結合ヤギ抗−ウサギpAbを使用して、H.インフルエンザ3655又は派生pE突然変異体を用いて同じ手順を行った。
【図3】フローサイトメトリー及びIgD(λ)骨髄腫血清により明らかにされる場合の、H.インフルエンザ及び関連種のpE発現。NTHiの22種の株及びヘモフィルス種の27種の株又は関連細菌を分析した。氷上でヒト骨髄腫IgD(λ)とともに静止期まで細菌を培養し、温置した。1時間及び洗浄後、FITC−結合ウサギ抗−ヒトIgDポリクローナル抗体(pAb)をさらに30分間添加し、次いで洗浄段階及び続くフローサイトメトリー分析を行った。
【図4】ウエスタンブロットにより明らかとなるように、NTHi及び莢膜性H.インフルエンザにおいてpEが発現される。Empigen(R)を用いて指定した株からの細菌性タンパク質を調製し、SDS−ゲルに供し、次いで、ウエスタンブロットを行い、ヒト骨髄腫IgD(λ)及び検出抗体としてホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗−ヒトIgDポリクローナルpAbを用いて調べた。
【図5】H.インフルエンザMinnA由来のネイティブpEと比較した場合の、NTHi772由来の配列に基づく組み換えpE22−160。Aにおいて、pE由来断片Aのアミノ末端配列をネイティブタンパク質pEの予想されるアミノ末端配列と比較した。Bにおいて、ヒスチジンタグ付きのpE(A)の概略図を示す。Cにおいて、クーマシー染色PAGEでの大きさ及び純度を示す。D及びEにおいて、クーマシー染色ゲル及びウエスタンブロットで、それぞれ、H.インフルエンザMinnAからの外膜タンパク質(OMP)抽出物を組み換え産生pE(A)と比較する。Aにおいて、アミノ酸残基グルタミン21に加えて、シグナルペプチド配列を除去した。9個のアミノ酸は、示されるように発現ベクターpET2β(+)由来であった。数は、pEの翻訳開始から始まるアミノ酸位置を表す。E.コリにおいて組み換えpE(A)を産生させ、精製し、シグナルペプチダーゼ切断部位を分析するためにエドマン分解に供した。D及びEにおいて、2つのゲルを同時に流し、一方はクーマシーブリリアントブルーで染色し、一方はImmobilon−P膜上にブロットし、ヒトIgD(λ)骨髄腫タンパク質を用い、次いで適切なホースラディッシュペルオキシダーゼ共役二次抗体とともに温置して調べた。材料及び方法に記載のようにEmpigen(R)を用いてOMP断片を精製した。
【図6】タンパク質Eは非常によく保存されている。莢膜性及び型別不能単離株の両方を含む13から31のヘモフィルス・インフルエンザ株における点突然変異の頻度(表2)を示す。隣接プライマーを用いた配列決定によって結果を得た。参照配列として使用するH.インフルエンザRdのpE配列と全配列を比較し、ここで示す。
【図7】pEのハイドロパシープロファイル。個々のアミノ酸残基の疎水性及び親水性部分を示す。予想されるシグナルペプチドも概説する。記載のような標準的方法(21)を使用することにより、データを得た。
【図8】組み換えpE22−160(断片A)及びBからHと称する一連の短縮型断片を示すSDS−PAGE。Aにおいて、様々な断片の概略を示し、一方、Bにおいて、SDS−PAGEを示す。様々なタンパク質をコードするDNAを発現ベクターpET26(+)に連結し、E.コリで組み換え発現させた。得られた過剰発現タンパク質をニッケルレジン上で精製し、SDS−PAGEでの分離に供し、次いでクーマシーブリリアントブルー染色を行った。
【図9】pE欠失突然変異株(NTHi 3655)のラットにおける急性中耳炎誘発能は100から1,000倍低い。頸部を腹側正中で切開し、次いで0.05mLの指示された数の細菌を中耳腔に注入することによって雄Sprague−Dawleyラットにおいて感染を誘発した。示されるデータは感染誘発第3日からのものであり、各群の5匹の動物の代表である。
【図10】様々な齢群からの血清における、pEに対するIgG及びIgA抗体の平均濃度。ベート(bate)として組み換えpE(A)を用いて、サンドイッチELISAにより、抗−pE抗体を分析した。pE(A)の純度は図5で示されるとおりであった。
【図11】様々なヘモフィルス株内でpEは非常によく保存されている。隣接プライマーを用いて、莢膜性H.インフルエンザ a型(n=2)、b型(n=2)、c型(n=2)、d型(n=1)、e型(n=2)及びf型(n=3)、NTHi(n=8)、H.インフルエンザ次亜種エジプチクス(aegypticus)(n=6)及びH.エジプチクス(n=5)において、pE遺伝子の配列決定を行った。RdはH.インフルエンザ株Rd(Hi0178)及び772と称し、772はNTHi株772である。番号65から577は表1で概説する株に対応する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ての莢膜性及び型別不能ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)に存在する表面露出タンパク質E、毒性因子に関する。
【背景技術】
【0002】
b型ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)(Hib)及び型別不能H.インフルエンザ(NTHi)は両者とも、小児及び成人において様々な疾患を引き起こす。Hibは、4歳以下の小児における細菌性髄膜炎及びその他の侵襲性感染症を引き起こし、一方、NTHiは中耳炎、副鼻腔炎、喉頭蓋炎、気管気管支炎及び肺炎の症例から単離され、新生児敗血症を引き起こし得る。現在、NTHiに対する市販のワクチンはないが、Hibに対して多くのワクチンが使用されている。これらのワクチンは、18ヶ月齢未満の小児で莢膜多糖に対する免疫反応が弱いことを解決するために様々なタンパク質担体(髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイド、無毒性突然変異ジフテリア毒素又はジフテリアトキソイド)に結合されている、Hib莢膜多糖、ポリリボシルリビトールリン酸からなる。Hib及びNTHi感染後、宿主抗体の標的となることが示されているので、H.インフルエンザ外膜タンパク質(OMP)もまた、ポリリボシルリビトールリン酸の担体となると考えられている。OMP、P1、P2、P4、P5及びP6及び98−kDaタンパク質に対する抗体が、H.インフルエンザ感染に対するインビボでの防御及びインビトロでの殺菌剤アッセイにおいて試験されており、P1、P4及びP6に対する抗体が、同種及び異種H.インフルエンザ株の両者に対して生物学的活性を示している。その他のOMPに対する抗体から異種防御が欠失している理由の1つは、様々なH.インフルエンザ株の間でのこれらのタンパク質の抗原的多様性である。従って、理想的な抗原には、細菌表面に露出され、抗原的によく保存されていることの両方が必須である。本研究室において、Hib及びNTHi株の両者において広く分布し、抗原的に保存されている42−kDa膜タンパク質(タンパク質D)を単離し、クローニングし、配列決定し、病原性因子であり有望なワクチン候補であることを示した(1−5)。
【0003】
20年前、ヘモフィルス・インフルエンザ及びM.カタラーリスは可溶性及び表面結合ヒトIgDの両方に対して強い親和性を示すことが分かった(6)。IgD−結合は、ヘモフィルス・インフルエンザ及びM.カタラーリスによるヒトリンパ球に対する強い細胞分裂促進効果を説明する現象である、表面結合IgDとの同様の相互作用に細胞レベルで平行していると思われる(7−9)。ヘモフィルス・インフルエンザ由来のIgD結合外膜タンパク質(タンパク質D)を分離し、クローニングし、重要な病原性因子であることが分かった(1−5)。しかし、タンパク質Dは試験したIgD骨髄腫の全てに普遍的には結合しない(10)。
【発明の開示】
【0004】
H.インフルエンザが上及び下気道での感染のこのような主要な原因であることが分かったことを考慮して、現在、H.インフルエンザに対して使用できるワクチンを開発することが必要とされている。
【0005】
従って、本発明の目的は、どのようにして、体内でH.インフルエンザが細胞と相互作用し、免疫系と相互作用し、新型ワクチンを提供できるかを発見することである。
【0006】
ある態様によると、本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、ヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出することができる表面露出タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0007】
別の態様によると、本発明は、ヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出され得る、前記表面露出タンパク質の免疫原性断片又は天然のもしくは人工的に修飾したその変異体を提供する。
【0008】
さらなる態様によると、本発明は、上述の表面露出タンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク(配列番号1の位置1から21のアミノ酸が欠失しているか又は1つ以上のアミノ酸により置換されている。)を提供する。ある実施形態において、配列番号1の位置1から21のアミノ酸は、0から21個の任意のアミノ酸の配列により置換されている。別の実施形態において、本組み換え免疫原性タンパク質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を有する。
【0009】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0010】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0011】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0012】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0013】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0014】
またさらなる態様によると、本発明は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0015】
さらなる態様によると、本発明は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0016】
別の態様によると、本発明は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を提供する。
【0017】
別の態様によると、本発明は、感染の予防又は治療用の薬剤の製造のための上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドの使用を提供する。ある実施形態において、この感染は、ヘモフィルス・インフルエンザにより引き起こされ、別の実施形態において、ヘモフィルス・インフルエンザは莢膜性又は型別不能である。
【0018】
さらに別の実施形態において、前記の使用は、小児ならびに例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の成人における、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染の予防又は治療のためである。
【0019】
ある態様によると、本発明は、上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドと、1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物と、を含む薬剤を提供する。
【0020】
別の態様によると、本発明は、上述の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドを含むワクチン組成物を提供する。ある実施形態において、前記ワクチン組成物は、前記タンパク質、断片又はペプチドの、少なくとも1つの、二量体、三量体又は多量体を含む。別の実施形態において、このワクチン組成物は、1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物をさらに含む。さらに別の実施形態において、前記ワクチン組成物は少なくとも1つのさらなるワクチンを含み、さらに別の実施形態において、前記ワクチン組成物は別の分子の免疫原性部分を含み、ここで、別の分子の免疫原性部分は、H.インフルエンザのタンパク質D(EP594 610)、モラクセラ・カタラーリスのMID(WO03/004651、WO97/41731及びWO96/34960)、モラクセラ・カタラーリスのUspA1又はUspA2(WO93/03761)及び何らかの気道病原体の外膜タンパク質又は炭水化物性莢膜又はDNAオリゴヌクレオチド(CpGモチーフなど)を含む群から選択され得る。
【0021】
ある態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドをコードする核酸配列ならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体に関する。ある実施形態において、前記核酸配列は少なくとももう1つの遺伝子に融合している。
【0022】
別の態様において、本発明は、上述の核酸配列を含むプラスミド又はファージに関する。
【0023】
また別の実施形態において、本発明は、上述の少なくとも1つのプラスミドを含み、上述のタンパク質、断片又はペプチドならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体を産生することができる非ヒト宿主に関し、この宿主は、細菌、酵母及び植物の中から選択される。ある実施形態において、前記宿主はE.コリである。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドが上述の組み換え核酸配列の使用によって少なくとももう1つのタンパク質と組み合わせられている、融合タンパク質又はポリペプチドを提供する。ある実施形態において、前記融合タンパク質は、上述のタンパク質、断片又はペプチドの、二量体、三量体又は多量体である。
【0025】
ある態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドが、共有結合により、又は何らかのその他の手段によりタンパク質、炭水化物又はマトリクスに結合した融合産物に関する。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、上述のタンパク質、断片又はペプチドの単離の方法に関する(該方法は、次の段階を含む:
a)該タンパク質、断片又はペプチドをコードするDNAを含むヘモフィルス・インフルエンザ又はE.コリを増殖させ、細菌を回収し、外膜又は封入体を単離し;
b)強い可溶化剤で封入体を可溶化し;
c)再生剤を添加し;
d)得られた懸濁液を8から10のpHの緩衝液に対して透析する。)。
【0027】
前記方法のある実施形態において、可溶化剤はグアニジン塩酸塩であり、別の実施形態において、再生剤はアルギニンである。
【0028】
別の態様において、本発明は、前記融合タンパク質もしくはポリペプチド又は前記融合産物を含む、上述の薬剤又はワクチン組成物に関する。
【0029】
ある態様において、本発明は、上述の薬剤又はワクチン組成物の医薬的有効量を投与することを含む、個体において感染を予防又は治療する方法に関する。ある実施形態において、前記感染は、莢膜性又は型別不能の両方のヘモフィルス・インフルエンザにより引き起こされ、また別の実施形態において、この感染は、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染からなる群から選択される。
【0030】
本発明は、タンパク質E、とりわけタンパク質Eポリペプチド及びタンパク質Eポリヌクレオチド、組み換え物質及びそれらの産生のための方法に関する。別の態様において、本発明は、とりわけ微生物性疾患を予防及び治療することを含む、このようなポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用するための方法に関する。さらなる態様において、本発明は、微生物感染に付随する疾患及びこのような感染に付随する状態を検出するための診断アッセイ、例えばタンパク質Eポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現又は活性を検出するためのアッセイなど、に関する。
【0031】
続く記述を読むことにより、及び本開示のその他の部分を読むことにより、開示する本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正が当業者にとって明らかとなろう。
【0032】
本発明を詳細に説明する前に。本発明が、本願おいて本明細書中に記載の実施形態及び段階の詳細に限定されないことを理解することが重要である。言及する実施例は、本発明の例示であるが、何ら本発明を限定するものではない。本発明は、その他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は遂行することができる。本明細書中で使用する語句及び用語は説明のためのものであり限定するものではないことを理解されたい。
【0033】
本願は、タンパク質E(pE)と称する新規H.インフルエンザ外膜タンパク質のクローニング及び発現について述べる。pEに対して特異的親和性を有するヒトIgD(λ)骨髄腫血清を用いて、タンパク質を発見した。
【0034】
組み換えpEの収率を最大限にするために、アミノ酸残基リジン22からリジン160からなる短縮型pE断片を作製した。したがって、アミノ酸グルタミン21を含むN−末端シグナルペプチドを除去し、ベクターpET26(+)由来の9個の残基に加えてリーダーペプチドで置換した。短縮型pE(即ちpE22−160)をpE(A)と名付けた。
【0035】
本発明は、ヘモフィルス外膜タンパク質pE及びpE由来ペプチド、pE22−60、pE22−95、pE22−125、pE41−68、pE56−125、pE56−160、pE86−160、pE115−160及びその二量体、三量体又はオリゴマーを含む。特に、pE又は表面露出している派生ペプチドの配列に高い優先度が与えられる。
【0036】
したがって、本発明によるワクチン組成物は、免疫原性成分として、全てのヘモフィルス・インフルエンザにおいて検出することができる表面露出タンパク質、該表面露出タンパク質の免疫原性断片、該表面露出タンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク質、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する組み換え免疫原性タンパク質及び/又は配列番号3−10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物を含む。ワクチン組成物はまた、免疫原性成分として、融合タンパク質もしくはポリペプチド又は本発明による融合産物も含み得る。この免疫原性成分は、ヘモフィルス・インフルエンザに対して抗体又はその他の免疫反応を誘発することができるが、誘発された抗体は、対象の細胞に対するヘモフィルス・インフルエンザ細菌の病原性を阻害する。本発明によるワクチン組成物の「免疫原性用量」は、投与後、投与前の標準的な免疫反応と比較して、検出可能な液性及び/又は細胞性免疫反応を生成させるものである。
【0037】
抗原を生成させるために本発明のワクチン組成物において使用される核配列は、様々な手順によって、多岐にわたる発現ベクターの何れかに挿入され得る。このような手順は、当業者にとって公知であると思われる。
【0038】
周知の方法及び技術を用いてワクチン組成物が容易に完成され、様々な方法で、好ましくは非経口又は鼻腔内投与で投与することができる。非経口又は鼻腔内投与に適切な処方には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び、問題となる対象の体液と処方物を等張にする溶質を含有し得る、水性及び非水性滅菌注射溶液;及び懸濁剤又は増粘剤を含み得る、水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。活性免疫原性成分は、医薬的に許容可能な賦形剤、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどと混合されることが多い。さらに、ワクチン組成物はまた、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、結合剤、担体又は保存料などの少量の補助剤も含有し得る。
【0039】
ワクチン組成物はまた、フロイントのアジュバント及び当技術分野で公知のその他の系など、組成物の免疫原性を促進するためのアジュバントも含み得る。ワクチン組成物の免疫原性成分、即ちタンパク質、断片、ペプチド、融合タンパク質もしくはポリペプチド、又は本発明の融合産物を中性又は塩形態としてワクチンに処方し得る。
【0040】
ワクチン組成物の投与量は、ワクチンの比活性に依存し、通常の実験により容易に決定され得る。本ワクチン組成物は、治療的に有効及び免疫原的な量で投与され、量は対象に依存する。
【0041】
本発明は、下記でより詳細に記載するタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチドに関する。特に、本発明は、型別不能H.インフルエンザのタンパク質Eのポリペプチド及びポリヌクレオチドに関する。タンパク質Eポリペプチドは、シグナル配列を有し、細菌の表面に露出している。シグナルペプチドはタンパク質Eポリペプチドの残基1から残基20に位置する。
【0042】
本明細書中での「タンパク質E」への言及は、本明細書中で考察する、本発明の、ペプチド、免疫原性断片、融合物、ポリペプチド又はタンパク質(シグナル配列有り又は無しの配列番号1など)の何れかに対する言及である。「タンパク質Dをコードするポリヌクレオチド」とは、本明細書中で考察する、本発明の、ペプチド、免疫原性断片、融合物、ポリペプチド又はタンパク質の何れかをコードする何れかのポリヌクレオチド配列を指す。
【0043】
「含む(comprising)」という用語は、本明細書中で、代わりに、「からなる(consisting of)」という用語で置換され得る。
【0044】
本発明は、特に、本明細書中で挙げる、タンパク質Eポリヌクレオチド及びコードされるポリペプチドに関する。一般にリボポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドにおいて有用にこのような配列を利用することができることを当業者は認識しているので、「DNA」として下記で挙げる配列で引用される配列は、本発明のある実施形態の実例を表すことを理解されたい。
【0045】
タンパク質Eポリヌクレオチドの配列は、配列番号11(ntHi株772から)で示す。コードされるタンパク質Eポリペプチドの配列は、配列番号1(ntHi株772から)、2、3、4、5、6、7、8、9、10で示す。
【0046】
ポリペプチド
本発明のある態様において、本明細書中で「タンパク質E」及び「タンパク質Eポリペプチド」と呼ばれるH.インフルエンザ(特に、型別不能H.インフルエンザ)のポリペプチドならびに生物学的、診断学的、予防的、臨床的又は治療的に有用なその変異体及びこれらを含む組成物が提供される。
【0047】
本発明は、
(a)配列番号1−10の何れかの配列の配列と、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド;
(b)配列番号0の選択された配列の全長にわたり、配列番号11の何れかの配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;又は
(c)配列番号1−10の何れかの配列のアミノ酸配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、をさらに提供する。
【0048】
配列番号1−10で与えられるタンパク質Eポリペプチドは、型別不能H.インフルエンザ株由来のタンパク質Eポリペプチドである。さらなるタンパク質E配列が表1で挙げるH.インフルエンザ株から確かめられている。
【0049】
本発明はまた、配列番号1−10から選択される対応するアミノ酸配列を含むポリペプチドと同じ又は実質的に同じ免疫原性活性を有するタンパク質Eポリペプチドの隣接部分である、タンパク質Eポリペプチドの免疫原性断片も提供する;即ち、この断片(必要に応じて担体に連結される場合)は、タンパク質Eポリペプチドを認識する免疫反応を生じさせることができる。あるいは、又はさらに、この免疫原性断片は、全長タンパク質のIgD結合機能を保持し得る(実施例セクションに記載のように、例えばThe Binding Site(Birmingham、England)からのIgD(λ)結合能)。このような免疫原性断片には、例えば、N−末端リーダー配列及び/又は膜貫通ドメイン及び/又はC末端アンカードメインを欠くタンパク質Eポリペプチドが含まれ得る。好ましい態様において、本発明によるタンパク質Eの免疫原性断片は、配列番号1−10から選択された配列と、この配列の全長にわたり、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも97−99の同一性を有するポリペプチドの細胞外ドメインの実質的に全てを含む。
【0050】
断片は、本発明の何れかのポリペプチドの何れかのアミノ酸配列の、一部が完全に同じであるが全て同じではないアミノ酸配列を有するポリペプチドである。タンパク質Eポリペプチドと同様に、断片は「フリースタンディング」であるか又はそれらが一部又は領域を形成するより大きいポリペプチド内に、最も好ましくは1つのより大きいポリペプチドの1つの連続領域として含まれ得る。したがって、断片は、全長ネイティブ配列より短いものであり得るか、又は、より大きいポリペプチド内に含まれる場合、全長ネイティブ配列又はより長い融合タンパク質であり得る。
【0051】
好ましい断片は、例えば、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列もしくはそれらの変異体の一部を有する短縮ポリペプチド、例えばアミノ及び/又はカルボキシル末端アミノ酸配列を含む連続した一連の残基など、を含む。宿主細胞により又は宿主細胞において産生される本発明のポリペプチドの分解形態もまた好ましい。アルファへリックス及びアルファへリックス形成領域、ベータシート及びベータシート形成領域、ターン及びターン形成領域、コイル及びコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ両親媒性領域、フレキシブル領域、表面形成領域、基質結合領域及び高抗原性指標領域を含む断片など、構造又は機能的属性を特徴とする断片がさらに好ましい。
【0052】
さらに好ましい断片には、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列からの少なくとも15、20、30、40、50又は100個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド又は、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列からの少なくとも15、20、30、40、50又は100個の連続アミノ酸が短縮又は欠失したアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドが含まれる。
【0053】
またさらに好ましい断片は、B細胞エピトープを含むもの、例えば、実施例10に記載の断片/ペプチド、である。
【0054】
ペプチド合成により対応する全長ポリペプチドを作製するために、本発明のポリペプチドの断片を使用し得る;したがって、本発明の全長ポリペプチドを作製するための中間体としてこれらの断片を使用し得る。
【0055】
特に好ましいのは、いくつかの、5−10、1−5、1−3、1−2又は1アミノ酸が何らかの組合せで置換、欠失又は付加されている変異体である。
【0056】
本発明のポリペプチド又は免疫原性断片は、「成熟」タンパク質の形態であり得るか又は、前駆体もしくは融合タンパク質など、より大きいタンパク質の一部であり得る。分泌又はリーダー配列、プロ−配列、複数のヒスチジン残基などの精製を促進する配列又は組み換え産生中の安定性のためのさらなる配列を含有するさらなるアミノ酸配列を含むことは長所となることが多い。さらに、外来ポリペプチド又は脂質テール又は最終分子の免疫原能を向上させるためのポリヌクレオチド配列の付加も考慮される。
【0057】
ある態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はその断片及び様々なサブクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgE)の重もしくは軽鎖の定常領域の様々な部分を含む、遺伝子操作した可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとして好ましいのは、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分であり、ここでは、ヒンジ領域で融合が起こる。特定の実施形態において、単純に血液凝固因子Xaで切断することができる切断配列を組み込むことによってFc部を除去することができる。
【0058】
さらに、本発明は、遺伝子操作によりこれらの融合タンパク質を調製するためのプロセス及び薬物スクリーニング、診断及び治療に対するその使用に関する。本発明のさらなる態様はまた、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにも関する。融合タンパク質技術の例は、国際特許出願WO94/29458及びWO94/22914で見出すことができる。
【0059】
タンパク質は、化学的に共役されるか又は、非融合タンパク質と比較して発現系において産生レベルを向上させる組み換え融合タンパク質として発現され得る。融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープ、を提供することを促進し得るか(免疫学的融合パートナー)、又は、ネイティブ組み換えタンパク質よりも高収率でタンパク質の発現を促進する(発現エンハンサー)。好ましくは融合パートナーは、免疫学的融合パートナー及び発現促進パートナーの両方である。
【0060】
融合パートナーは、ヘモフィルス・インフルエンザ(EP594610)からのタンパク質D及びインフルエンザウイルス、NS1からの非構造タンパク質(ヘマグルチニン)を含む。別の融合パートナーは、Omp26(WO97/01638)として知られるタンパク質である。別の融合パートナーは、LytAとして知られるタンパク質である。好ましくは分子のC末端部分を使用する。LytAは、N−アセチル−L−アラニンアミダーゼ、アミダーゼLytA、(lytA遺伝子によりコ―ドされる(Gene、43(1986)、265−272頁)。)ペプチドグリカン骨格においてある一定の結合を特異的に分解する自己分解酵素、を合成するStreptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)由来である。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン又はDEAEなどの一部のコリン類似体に対する親和性に関与する。この特性は、融合タンパク質の発現に有用なE.コリ C−LytA発現プラスミドの開発に対して利用されてきた。そのアミノ末端にC−LytA断片を含有するハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology:10、(1992)795−798頁)。残基178から始まるC末端で見られるLytA分子の繰り返し部分、例えば残基188−305、を使用することができる。
【0061】
本発明はまた、上述のポリペプチドの変異体(保存的アミノ酸置換(残基が、似た特徴を有する別のもので置換される。)による指示対象と異なるポリペプチド)も含む。典型的なこのような置換は、Ala、Val、Leu及びIleの間;Ser及びThrの間;酸性残基Asp及びGluの間;Asn及びGlnの間;及び塩基性残基Lys及びArgの間;又は芳香族残基Phe及びTyrの間である。
【0062】
何らかの適切な方式で本発明のポリペプチドを調製することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然のポリペプチド、組み換え産生されたポリペプチド、合成により産生されたポリペプチド又はこれらの方法の組み合わせにより産生されたポリペプチドが含まれる。このようなポリペプチドを調製するための方法は当技術分野でよく理解されている。
【0063】
本発明のポリペプチドは型別不能H.インフルエンザ由来であるのが最も好ましいが、好ましくは、同じ分類属の他の生物から得られ得る。本発明のポリペプチドは、例えば、同じ分類科又は目の生物から得られ得る。
【0064】
ポリヌクレオチド
本発明の目的は、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に本明細書中でタンパク質Eと称するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0065】
本発明の特に好ましい実施形態において、本ポリヌクレオチドは、全長遺伝子を含む配列番号11で示される配列を含む、タンパク質Eポリペプチド又はその変異体をコードする領域を含む。
【0066】
配列番号11で与えられるタンパク質Eポリヌクレオチドは、型別不能H.インフルエンザ株772由来のタンパク質Eポリヌクレオチドである。表1で挙げるH.インフルエンザ株由来のタンパク質Eをコードする遺伝子のその他の配列が決定された。
【0067】
本発明のさらなる態様として、タンパク質Eポリペプチドをコード及び/又は発現する単離核酸分子及びポリヌクレオチド、特に型別不能H.インフルエンザタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチド(例えば非プロセシングRNA、リボザイムRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、B−及びZ−DNAを含む。)が提供される。本発明のさらなる実施形態には、生物学的、診断的、予防的、臨床的又は治療的に有用なポリヌクレオチド及びポリペプチド及びそれらの変異体及びこれらを含む組成物が含まれる。
【0068】
本発明の別の態様は、配列番号1−10の推定アミノ酸配列を有するタンパク質Eポリペプチドをコードする少なくとも1つの全長遺伝子を含む単離ポリヌクレオチド及びその類縁ポリヌクレオチド及びこれらの変異体に関する。
【0069】
本発明の別の特定の好ましい実施形態において、本発明は、配列番号1−10から選択されたアミノ酸配列を含むか又はこれらからなる型別不能H.インフルエンザ由来タンパク質Eポリペプチド又はその変異体に関する。
【0070】
配列番号11で示されるポリヌクレオチド配列など、本明細書中で提供される情報を用い、出発物質として型別不能H.インフルエンザ株3224A(又は772)細胞を用いて細菌からの染色体DNA断片をクローニングし配列決定し、次いで全長クローンを得るための方法などの標準的クローニング及びスクリーニング法を使用して、タンパク質Eポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。例えば、配列番号0で与えられるポリヌクレオチド配列などの本発明のポリヌクレオチド配列を得るために、通常、E.コリ又はあるその他の適切な宿主中の型別不能H.インフルエンザ株3224A(又は772)の染色体DNAのクローンのライブラリを部分配列由来の放射性標識オリゴヌクレオチド(好ましくは17マー以上)により調べる。次に、ストリンジェントなハイブリッド形成条件を用いてプローブのものと同一のDNAを担うクローンを区別することができる。このように元のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列から設計された配列決定プライマーとのハイブリッド形成によって同定された個々のクローンの配列決定を行うことにより、全長遺伝子配列を決定するために両方向でポリヌクレオチド配列を拡張することが可能となる。都合よく、例えば、プラスミドクローンから調製された変性2本鎖DNAを用いることにより、このような配列決定を行う。適切な技術が、Maniatis、T.、Fritsch、E.F.及びSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1989)に記載されている。(特にScreening By Hybridization 1.90及びSequencing Denatured Double−Stranded DNA Templates 13.70を参照。)。全長遺伝子配列を得るために直接ゲノムDNA配列決定も行い得る。本発明を例証する、配列番号11で示されるポリヌクレオチドが、型別不能H.インフルエンザ由来のDNAライブラリで発見された。
【0071】
さらに、配列番号11で示される各DNA配列は、当業者にとって周知のアミノ酸残基分子量の値を用いて計算することができる推定分子量の、配列番号1で示されるアミノ酸残基数前後を有するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含有する。
【0072】
開始コドンと停止コドンとの間の配列番号0のポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号1のポリペプチドをコードする。
【0073】
さらなる態様において、本発明は、
(a)配列番号0からのポリヌクレオチド配列の全長にわたり、配列番号11からの何れかのポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は完全な同一性を有するポリヌクレオチド配列又は
(b)配列番号1−10(又は断片)からのアミノ酸配列の全長にわたり、配列番号1−10(又はその断片)から選択された何れかのアミノ酸配列に対して、少なくとも85%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも97−99%又は100%完全な同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、を含むか又はこれらからなる、単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0074】
配列番号11又はその断片から選択される何れかの配列からなるかを又はこれらを含む、標識されたプローブ又は検出可能なプローブとともにストリンジェントなハイブリッド形成条件下(例えば45−65℃の範囲の温度、0.1−1%のSDS濃度を用いて)で適切なライブラリをスクリーニングし;前記のポリヌクレオチド配列を含有する全長遺伝子及び/又はゲノムクローンを単離する段階を含むプロセスにより、型別不能H.インフルエンザ以外の種からの相同体及び相同分子種を含む、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
【0075】
本発明は、配列番号11で示されるコード配列(オープンリーディングフレーム)に対して、その全長にわたり同一であるポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はまた、成熟ポリペプチド又はその断片に対するコード配列(単独で)、ならびに、リーダー又は分泌配列、プレ又はプロ又はプレプロ−タンパク質配列をコードする配列などの別のコード配列を伴うリーディングフレームにおける成熟ポリペプチド又は断片に対するコード配列も提供する。本発明のポリヌクレオチドはまた、例えば(限定されないが)少なくとも1つの非コード5’及び3’配列(転写されるが非翻訳の配列)、終結シグナル(rho−依存性及びrho−非依存性終結シグナルなど)、リボソーム結合部位、コザック配列、mRNAを安定化する配列、イントロン及びポリアデニル化シグナルを含む、少なくとも1つの非コード配列も含有し得る。ポリヌクレオチド配列はまた、さらなるアミノ酸をコードするさらなるコード配列も含み得る。例えば、融合ポリペプチドの精製を促進するマーカー配列をコードし得る。本発明のある実施形態において、マーカー配列は、pQEベクター(Qiagen、Inc.)において提供され、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 86:821−824(1989)により記載されているような6個のヒスチジンペプチド又はHAペプチドタグ(Wilsonら、Cell 37:767(1984))であり、この両者は、それらに融合されたポリペプチド配列の精製において有用であり得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、以下に限定されないが、構造遺伝子及び遺伝子発現を調節するその天然に付随する配列を含むポリヌクレオチドも含む。
【0076】
配列番号1−10のタンパク質Eポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11(又は配列番号11内に含まれるもの)の対応するポリヌクレオチドコード配列と同一であり得る。あるいは、これは、遺伝子コードの重複(縮重)の結果として、配列番号1−10のポリペプチドもコードする、何れかの配列であり得る。
【0077】
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、本明細書中で使用する場合、本発明のポリペプチド、特に細菌のポリペプチド及びより具体的には配列番号1−10の配列の何れかにおいて示されるアミノ酸配列を有する型別不能H.インフルエンザタンパク質Eのポリペプチド又はその断片をコードする配列を含むポリヌクレオチドを包含する。この用語は、コード及び/又は非コード配列も含有し得るさらなる領域を伴う、ポリペプチドをコードする1個の連続領域又は不連続領域を含むポリヌクレオチド(例えば、組み込まれたファージ、組み込まれた挿入配列、組み込まれたベクター配列、組み込まれたトランスポゾン配列が介入したポリヌクレオチド又はRNA編集もしくはゲノムDNA再構成によるもの)も包含する。
【0078】
本発明は、さらに、配列番号1−10の配列の何れかの推定アミノ酸配列を有するポリペプチドの変異体をコードする、本明細書中に記載のポリヌクレオチドの変異体に関する。例えば、本発明の全長ポリヌクレオチドを合成するために、本発明のポリヌクレオチドの断片を使用し得る。
【0079】
好ましい断片は、B−細胞エピトープ、例えば、実施例10に記載の断片/ペプチド、をコードするポリヌクレオチド及び、このポリヌクレオチド断片を含む、組み換え、キメラ遺伝子である。
【0080】
さらに特に好ましい実施形態は、いくつか、数個、5から10、1から5、1から3、2、1個のアミノ酸残基が置換、修飾、欠失及び/又は付加(何れかの組合せにおける)されているか又は全く置換、修飾、欠失及び/又は付加されていない、配列番号1−10からの何れかの配列のタンパク質Eポリペプチドのアミノ酸配列を有するタンパク質E変異体をコードするポリヌクレオチドである。これらの中で特に好ましいのは、タンパク質Eポリペプチドの特性及び活性(例えば、本明細書中の実施例セクションに記載の特性)を変化させない、静的置換、付加及び欠失である。
【0081】
本発明のさらに好ましい実施形態は、配列番号1−10の配列の何れかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対してその全長にわたって少なくとも85%同一であるポリヌクレオチド及びこのようなポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドである。あるいは、最も好ましいものは、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対してその全長にわたって少なくとも90%同一である領域を含むポリヌクレオチド及びこれに相補的なポリヌクレオチドである。この点において、上記のものとその全長にわたり少なくとも95%同一であるポリヌクレオチドが特に好ましい。さらに、少なくとも97%同一であるものは、少なくとも95%同一であるものの中で非常に好ましく、これらの中で、少なくとも98%及び少なくとも99%同一であるものが特に非常に好ましく、少なくとも99%同一であるものはより好ましい。
【0082】
好ましい実施形態は、配列番号11から選択されるDNA配列によりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性(例えば、本明細書中の実施例セクションに記載の活性)を保持するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0083】
本発明のある好ましい実施形態によると、特にストリンジェントな条件下で、配列番号11のポリヌクレオチドなどのタンパク質Eポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドが提供される。
【0084】
本発明は、さらに本明細書中で提供されるポリヌクレオチド配列に対してハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。この点において、本発明は、特に、本明細書中に記載のポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリッド形成するポリヌクレオチドに関する。本明細書中で使用する場合、「ストリンジェントな条件」及び「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」という用語は、配列間で少なくとも95%及び好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合のみ生じるハイブリッド形成を意味する。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の具体例は、50%ホルムアミド、5xSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハート溶液、10%硫酸デキストラン及び変性せん断サケ精子DNA20μg/mLを含む溶液中で42℃にて一晩温置、次いで約65℃にて0.1xSSC中でハイブリッド形成支持体を洗浄するものである。ハイブリッド形成及び洗浄条件は周知であり、Sambrookら、Molecular Cloning:A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor、New York(1989)、特にその第11章で例示されている。溶液ハイブリッド形成はまた、本発明により提供されるポリヌクレオチド配列とともに使用し得る。
【0085】
本発明はまた、配列番号11の対応する配列で示される前記のポリヌクレオチド配列又はその断片の配列を有するプローブを用いてストリンジェントなハイブリッド形成条件下で、配列番号11の配列の何れかで示されるポリヌクレオチド配列に対する完全な遺伝子を含有する適切なライブラリをスクリーニングし;前記のポリヌクレオチド配列を単離することにより得られるポリヌクレオチド配列からなるか又はこれらを含むポリヌクレオチドも提供する。このようなポリヌクレオチドを得るために有用な断片には、例えば、本明細書中において他の部分で詳述するプローブ及びプライマーが含まれる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中の他の部分に記載のように、例えば、本発明のポリヌクレオチドは、タンパク質Eをコードする全長cDNA及びゲノムクローンを単離するために、及び、タンパク質E遺伝子に対して、高い同一性、特に高い配列同一性を有するその他の遺伝子のcDNA及びゲノムクローンを単離するために、RNA、cDNA及びゲノムDNAに対するハイブリッド形成プローブとして使用され得る。このようなプローブは、通常、少なくとも15のヌクレオチド残基又は塩基対を含む。好ましくは、このようなプローブは、少なくとも30のヌクレオチド残基又は塩基対を有し、少なくとも50のヌクレオチド残基又は塩基対を有し得る。特に好ましいプローブは、少なくとも20のヌクレオチド残基又は塩基対を有し、30未満のヌクレオチド残基又は塩基対を有する。
【0087】
タンパク質E遺伝子のコード領域は、オリゴヌクレオチドプローブを合成するために配列番号11により与えられるDNA配列を用いてスクリーニングすることにより単離され得る。次に、ライブラリのどのメンバーとプローブがハイブリッド形成するかを決定するためにcDNA、ゲノムDNA又はmRNAのライブラリをスクリーニングするため、本発明の遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドを使用する。
【0088】
全長DNAを得るため又は短いDNAを伸長させるために、例えばcDNA末端の迅速増幅(RACE)の方法に基づくものなど、利用可能かつ当業者にとって周知の方法がいくつかある(例えば、Frohmanら、PNAS USA 85:8998−9002、1988を参照。)。MarathonTM技術(Clontech Laboratories Inc.)に代表されるようにこの技術が最近改変されたことによって、例えば、より長いcDNAに対する研究が非常に簡素化された。MarathonTM技術において、選択された組織及び各末端に連結された「アダプター」配列より抽出されたmRNAからcDNAが調製された。次いで、遺伝子特異的及びアダプター特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組み合わせを用いてこのDNAの「欠けている」5’末端を増幅するために、核酸増幅(PCR)を行う。
【0089】
次いで、増幅された産物内でアニーリングするように設計されたプライマーである「ネスト化」プライマーを用いてPCR反応を繰り返す(通常、アダプター配列においてさらに3’にアニーリングするアダプター特異的プライマー及び選択された遺伝子配列においてさらに5’にアニーリングする遺伝子特異的プライマー)。次に、DNA配列決定によりこの反応の産物を分析することができ、完全配列を与えるために産物を存在するDNAに直接連結するか、又は5’プライマーの設計のために新しい配列情報を用いて個別の全長PCRを行うかの何れかにより、全長DNAを構築することができる。
【0090】
ポリヌクレオチドアッセイに関して本明細書中でさらに考察するように、例えば研究試薬として、及び、疾患、特にヒト疾患に対する治療及び診断法の発見のための材料として、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドを使用し得る。
【0091】
記載のように本明細書中のプロセスにおいて、しかし、好ましくはPCRに対して、本明細書中で同定されたポリヌクレオチドの全体又は一部が感染組織中で細菌において転写されるか否かを調べるために、配列番号11の配列由来のオリゴヌクレオチドである本発明のポリヌクレオチドを使用し得る。このような配列はまた病原体が獲得した感染のステージ及び感染のタイプの診断においても役立つことが認められている。
【0092】
本発明はまた、成熟タンパク質プラスさらなるアミノもしくはカルボキシル末端アミノ酸又は成熟ポリペプチドに対する内側のアミノ酸(例えば成熟型が複数のポリペプチド鎖を有する場合)であるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも提供する。このような配列は、前駆体から成熟型へのタンパク質のプロセシングに関与し、タンパク質輸送を可能にし得、タンパク質半減期を長く又は短くし得るか、又はとりわけ、アッセイもしくは産生のためのタンパク質の操作を促進し得る。インビボの場合一般的であるように、さらなるアミノ酸が、細胞性酵素によって、成熟タンパク質からプロセシング除去され得る。
【0093】
本発明のそれぞれの全てのポリヌクレオチドに対して、それに相補的なポリヌクレオチドが提供される。これらの相補的ポリヌクレオチドは、それらが相補的である各ポリヌクレオチドに完全に相補的であることが好ましい。
【0094】
1つ以上のプロ配列に融合されたポリペプチドの成熟型を有する前駆タンパク質は、そのポリペプチドの不活性型であり得る。プロ配列が除去されると、このような不活性前駆体は通常活性化される。プロ配列の一部又は全てが活性化前に除去され得る。一般に、このような前駆体はプロタンパク質と呼ばれる。
【0095】
ヌクレオチドに対する標準的A、G、C、T/U表記に加えて、「N」という用語も本発明のある一定のポリヌクレオチドを説明することにおいて使用され得る。「N」は、Nが、隣接ヌクレオチド位置と合わせて取られる場合、正しいリーディングフレームで読まれる場合、このようなリーディングフレームにおいて未成熟な終止コドンを生じさせる影響を有する核酸でないことが好ましいことを除き、4種類のDNA又はRNAヌクレオチドの何れかがDNA又はRNA配列のこのような指定位置で出現し得ることを意味する。
【0096】
要するに、本発明のポリヌクレオチドは、成熟タンパク質、(プレタンパク質と呼ばれ得る)成熟タンパク質プラスリーダー配列、プレタンパク質のリーダー配列ではない1つ以上のプロ配列(通常ポリペプチドの活性及び成熟型を産生するプロセシング段階中に除去される。)を有する成熟タンパク質の前駆体又はプレプロタンパク質(これは、リーダー配列及び1つ以上のプロ配列を有する、プロタンパク質に対する前駆体である。)をコードし得る。
【0097】
本発明の態様によると、治療又は予防的な、特に遺伝子による免疫法の目的のための、本発明のポリヌクレオチドの使用が提供される。
【0098】
遺伝子による免疫法における本発明のポリヌクレオチドの使用は、好ましくは、プラスミドDNAの筋肉への直接注入(Wolffら、Hum Mol Genet(1992)1:363、Manthorpeら、Hum.Gene Ther.(1983)4:419)、特異的タンパク質担体と複合化されたDNAの送達(Wuら、J Biol Chem.(1989)264:16985)、リン酸カルシウムとのDNAの共沈殿(Benvenisty及びReshef、PNAS USA、(1986)83:9551)、リポソームの様々な形態でのDNAの封入(Kanedaら、Science(1989)243:375)、粒子衝突(Tangら、Nature(1992)356:152、Eisenbraunら、DNA Cell Biol(1993)12:791)及びクローン化レトロウイルスベクターを用いたインビボ感染(Seegerら、PNAS USA(1984)81:5849)などの適切な送達法を用いる。
【0099】
ベクター、宿主細胞、発現系
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターにより遺伝子操作されている宿主細胞及び組み換え技術による本発明のポリペプチドの産生にも関する。本発明のDNAコンストラクト由来のRNAを用いてこのようなタンパク質を産生させるために無細胞翻訳系を使用することもできる。
【0100】
発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当業者にとって周知のプロセスによって本発明の組み換えポリペプチドを調製し得る。したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む発現系、このような発現系により遺伝子操作されている宿主細胞及び組み換え技術による本発明のポリペプチドの産生に関する。
【0101】
本発明のポリペプチドの組み換え産生のために、発現系もしくはその一部又は本発明のポリヌクレオチドを組み込むように宿主細胞を遺伝子操作することができる。リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランを介したトランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質を介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、共役、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)及び感染など、Davisら、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(1986)及びSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1989)などの多くの標準的実験マニュアルに記載の方法によって宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入を達成することができる。
【0102】
適切な宿主の代表例には、連鎖球菌、ブドウ球菌、腸球菌、E.コリ、ストレプトミセス、シアノバクテリア、枯草菌、髄膜炎菌、ヘモフィルス・インフルエンザ及びモラクセラ・カタラーリスの細胞などの細菌細胞;酵母、クルイベロミセス属(Kluveromyces)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピチア属(Pichia)、担子菌(basidiomycete)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びアスペルギルスの細胞などの真菌細胞;Drosophila S2及びSpodoptera Sf9の細胞などの昆虫細胞;CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、293、CV−I及びボウズメラノーマ細胞などの動物細胞;及び裸子植物又は被子植物の細胞などの植物細胞が含まれる。
【0103】
本発明のポリペプチドを産生させるために多岐にわたる発現系を使用することができる。このようなベクターには、とりわけ、染色体由来、エピソーム由来及びウイルス由来ベクター、例えば、細菌性プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、バキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40など、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルス及びアルファウイルスなどのウイルス由来のベクター及び、プラスミド及びバクテリオファージ遺伝エレメント由来のもの(例えばコスミド及びファージミド)などのこれらの組み合わせ由来のベクターが含まれる。発現系コンストラクトは、発現を制御ならびに生じさせる調節領域を含有し得る。一般に、この点での発現のために、ポリヌクレオチドを維持、増殖又は発現させる、及び/又は宿主においてポリペプチドを発現させるのに適切な何らかの系又はベクターを使用し得る。例えばSambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL(前出)で示されるものなどの、様々な周知及び通常の技術の何れかによって、適切なDNA配列を発現系に挿入し得る。
【0104】
小胞体の内腔へ、ペリプラズム空間へ、又は細胞外環境への、翻訳されたタンパク質の分泌のための真核細胞での組み換え発現系において、適切な分泌シグナルを発現ポリペプチドに組み込み得る。これらのシグナルは、ポリペプチドに対して内在性であり得るか又はこれらは異種性シグナルであり得る。
【0105】
硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法によって、組み換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し、精製することができる。最も好ましくは、イオン金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を精製に使用する。細胞内合成、単離又は精製中にポリペプチドが変性させられる場合、活性立体構造を再生するために、タンパク質の再折りたたみのための周知の技術を使用し得る。
【0106】
発現系は、ウイルス又は細菌などの生きている組み換え微生物でもあり得る。生きている組み換えウイルス又は細菌のゲノムに関心ある遺伝子を挿入することができる。この生きているベクターを用いた接種及びインビボ感染によって、抗原のインビボ発現及び免疫反応の誘発が起こる。この目的のために使用されるウイルス及び細菌は、例えば、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、カナリア痘)、アルファウイルス(シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルス)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、リノウイルス)、ヘルペスウイルス(バリセラ・ゾスターウイルスなど)、リステリア、サルモネラ、赤痢菌、BCG、連鎖球菌である。これらのウイルス及び細菌は、毒性が強いか、又は生ワクチンを得るために様々な方法で弱毒化され得る。このような生ワクチンも本発明の一部を形成する。
【0107】
診断的、予後診断的血清型決定及び突然変異アッセイ
本発明はまた、診断試薬としての使用のための、本発明のタンパク質Eポリヌクレオチド及びポリペプチドの使用にも関する。真核生物、特に哺乳動物、とりわけヒト中でのタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの検出は、疾患の診断、疾患のステージ診断又は薬物に対する感染生物の反応に対する診断方法を提供する。真核生物、特に、哺乳動物及びとりわけヒト、とりわけ、タンパク質E遺伝子又はタンパク質を含む生物に感染している又は感染している疑いのあるものを、様々な周知の技術により、ならびに本明細書中で提供される方法により、核酸又はアミノ酸レベルで検出し得る。
【0108】
感染していると推定される、及び/又は感染している個体の身体物質から、予後診断、診断又はその他の分析のためのポリペプチド及びポリヌクレオチドを得うる。これらの源の何らかからのポリヌクレオチド、特にDNA又はRNAを直接、検出のために使用し得るか又はPCRもしくは何らかのその他の増幅技術によって分析前に酵素的に増幅させ得る。RNA、特にmRNA、cDNA及びゲノムDNAも同様に使用し得る。増幅を用いて、その生物の選択されたポリヌクレオチドの遺伝子型の分析によって、個体に存在する感染性及び寄生微生物の種及び株の特徴を調べ得る。関連生物、好ましくは同じ属の異なる種又は同じ種の異なる株から選択された参照配列の遺伝子型と比較した増幅産物のサイズの変化によって、欠失及び挿入を検出することができる。標識したタンパク質Eポリヌクレオチド配列に対して増幅DNAをハイブリッド形成させることによって、点突然変異を同定することができる。それぞれDNAもしくはRNAに対するDNaseもしくはRNase消化によって、又は融解温度もしくは再生動態の違いを検出することによって、不完全に又はより顕著に不一致である二本鎖部位から、完全に又は顕著に一致する配列を区別することができる。ポリヌクレオチド配列の違いはまた、参照配列と比較した場合の、ゲルにおけるポリヌクレオチド断片の電気泳動の移動度変化によっても検出し得る。変性剤あり又はなしでこれを行い得る。ポリヌクレオチドの違いは、直接的DNA又はRNA配列決定によっても検出し得る。例えば、Myersら、Science 230:1242(1985)を参照のこと。RNase、VI及びS1保護アッセイなど、ヌクレアーゼ保護アッセイ又は化学的切断法によっても特定の位置での配列変化を明らかにし得る。例えば、Cottonら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、85:4397−4401(1985)を参照のこと。
【0109】
別の実施形態において、例えば遺伝子突然変異、血清型、分類学的分類又は同定の効率的なスクリーニングを行うために、タンパク質Eヌクレオチド配列又はその断片を含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築することができる。アレイ技術法は周知であり、一般的に適用でき、遺伝子発現、遺伝子連鎖及び遺伝的変異を含む分子遺伝学において様々な疑問に取り組むために使用することができる(例えばCheeら、Science、274:610(1996)を参照のこと。)。
【0110】
したがって、別の態様において、本発明は、次のものを含む診断キットに関する:
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは配列番号11のヌクレオチド配列の何れかもしくはその断片;
(b)(a)の配列に相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくは配列番号1−10のポリペプチドの何れかもしくはその断片;又は
(d)本発明のポリペプチドに対する抗体、好ましくは配列番号1−10のポリペプチドの何れかに対するもの。
【0111】
当然のことながら、何らかのこのようなキットにおいて、(a)、(b)、(c)又は(d)は、実質的な成分を含み得る。このようなキットは、とりわけ、疾患又は疾患に対する感受性を診断するのに役立つ。
【0112】
本発明はまた、診断試薬としての本発明のポリヌクレオチの使用にも関する。本発明のポリヌクレオチド、好ましくは、疾患又は病原性に関連する、配列番号11の何れかの配列の突然変異形態の検出により、疾患の診断に付加するかもしくはこれを定義することができるか、又は疾患の診断、疾患の経過の予後診断、疾患のステージの決定もしくは疾患に対する感受性に付加するかもしくはこれを定義することができる診断ツールが提供されるが、これは、そのポリヌクレオチドの抑制発現、過剰発現又は発現変化の結果による。本明細書中の他の部分に記載のものなどの様々な技術によって、このようなポリヌクレオチドの突然変異を有する、生物、特に感染性生物をポリヌクレオチドレベルで検出し得る。
【0113】
例えば血清型決定を可能にするための様々な技術によって、ポリヌクレオチド又はポリペプチドレベルで、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドにおける突然変異又は多形体(対立遺伝子変異)を有する生物からの細胞も検出し得る。例えば、RNAにおいて突然変異を検出するために、RT−PCRを使用することができる。例えば、GeneScanなど、自動化検出系と組み合わせてRT−PCRを使用することは特に好ましい。同じ目的、PCR、のために、RNA、cDNA又はゲノムDNAも使用し得る。例として、突然変異体を同定し分析するために、タンパク質Eポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに相補的なPCRプライマーを使用することができる。
【0114】
本発明は、1、2、3又は4個のヌクレオチドが5’及び/又は3’末端から除去されたプライマーをさらに提供する。とりわけ、身体的物質などの個体由来の試料から単離されたタンパク質E DNA及び/又はRNAを増幅するために、これらのプライマーを使用し得る。次に、ポリヌクレオチド配列を明らかにするための様々な技術にポリヌクレオチドを供し得るように、感染している個体から単離されたポリヌクレオチドを増幅するため、これらのプライマーを使用し得る。このようにして、感染もしくはそのステージもしくはその経過を診断及び/又は予後診断するか、又は血清型を決定する、及び/又は感染性物質を分類するために、ポリヌクレオチド配列中の突然変異を検出し、使用し得る。
【0115】
本発明は、配列番号11の配列の何れかの配列を有するポリヌクレオチドの発現レベル上昇を身体的物質などの個体由来の試料から決定することを含む、疾患、好ましくは細菌性感染、より好ましくは型別不能H.インフルエンザにより起こる感染を診断するためのプロセスをさらに提供する。例えば、増幅、PCR、RT−PCR、RNase保護、ノーザンブロッティング、スペクトロメトリー及びその他のハイブリッド形成法など、ポリヌクレオチドを定量するための当技術分野で周知の方法の何れかを使用して、タンパク質Eポリヌクレオチドの発現上昇又は低下を測定することができる。
【0116】
さらに、例えば感染の有無を検出するために、正常な対照組織試料と比較したタンパク質Eポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明による診断アッセイを使用し得る。宿主由来の試料(身体的物質など)中でタンパク質Eポリペプチドのレベルを調べるために使用することができるアッセイ技術は当業者にとって周知である。このようなアッセイ法には、放射性免疫アッセイ、競合的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、抗体サンドイッチアッセイ、抗体検出及びELISAアッセイが含まれる。
【0117】
ポリヌクレオチドアレイ、好ましくは高密度アレイ又はグリッドの成分として、本発明のポリヌクレオチドを使用し得る。これらの高密度アレイは、診断及び予後診断目的に特に有用である。例えば、個体における特定のポリヌクレオチド配列又は関連配列の有無を調べるための、身体試料から得られた又はこれ由来のプローブを用いた探索のために(ハイブリッド形成又は核酸増幅を使用して、など)、それぞれ異なる遺伝子を含み、さらに本発明のポリヌクレオチドを含む一連のスポットを使用し得る。このような配列の存在から、病原体、特に型別不能H.インフルエンザの存在が示唆され得、これは、疾患又は疾患の経過の診断及び/又は予後診断において有用であり得る。配列番号11の何れかのポリヌクレオチド配列の多くの変異体を含むグリッドが好ましい。配列番号1−10の何れかのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列の多くの変異体も好ましい。
【0118】
抗体
免疫原として、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドもしくはその変異体又はこれらを発現する細胞を使用して、このようなポリペプチド及びポリヌクレオチドに対して免疫特異的な抗体をそれぞれ作製することができる。あるいは、本発明のポリペプチドに免疫特異的な抗体を作製するために、免疫原として、ポリペプチド配列内のエピトープの、ミモトープ、特にペプチドミモトープを使用することもできる。「免疫特異的」という用語は、先行技術におけるその他の関連ポリペプチドに対する親和性よりも、本発明のポリペプチドに対して、抗体が実質的により大きい親和性を有することを意味する。
【0119】
本発明のある好ましい実施形態において、タンパク質Eポリペプチド又はポリヌクレオチドに対する抗体が提供される。
【0120】
通常のプロトコールを用いて、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド又は何れかもしくは両方のエピトープを含む断片、何れかもしくは両方の類似体又は何れかもしくは両方を発現する細胞を、動物、好ましくは非ヒトに投与することにより、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに対して生成される抗体を得ることができる。モノクローナル抗体の調製のために、連続的細胞株培養により産生される抗体を与える、当技術分野で公知の何れかの技術を使用することができる。例として、Kohler、G.及びMilstein、C.、Nature 256:495−497(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983);Coleら、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss、Inc.(1985)の77−96でのものなどの様々な技術が挙げられる。
【0121】
本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに対して1本鎖抗体を作製するために、1本鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドに免疫特異的なヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又はその他の生物もしくは動物、例えばその他の哺乳動物など、も使用し得る。
【0122】
あるいは、抗タンパク質Eを保持することに関してスクリーニングされたヒトからのリンパ球の、PCR増幅したv−遺伝子のレパートリー又はナイーブライブラリの何れかから、本発明のポリペプチドに対する結合活性を有する抗体遺伝子を選択するために、ファージディスプレイ技術を利用し得る(McCaffertyら、(1990)、Nature 348、552−554;Marksら、(1992)Biotechnology 10、779−783)。例えば、鎖シャフリング(chain shuffling)によって、これらの抗体の親和性を向上させることもできる(Clacksonら、(1991)Nature 352:628)。
【0123】
例えばアフィニティークロマトグラフィーによって、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを精製するために本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを発現するクローンを単離又は同定するため、上述の抗体を使用し得る。
【0124】
したがって、感染、特に細菌感染を治療するために、とりわけ、タンパク質Eポリペプチド又はタンパク質Eポリヌクレオチドに対する抗体を使用し得る。
【0125】
ポリペプチド変異体には、本発明の特定の態様を形成する、抗原的に、エピトープ的に又は免疫的に同等な変異体が含まれる。
【0126】
好ましくは、個体における免疫原性を低めるように抗体又はその変異体を修飾する。例えば、個体がヒトである場合、抗体を最も好ましくはヒト化し得、ここでは、例えば、Jonesら(1986)、Nature 321、522−525又はTempestら(1991)Biotechnology 9、266−273に記載のように、相補性決定領域又はハイブリドーマ由来抗体の領域がヒトモノクローナル抗体に移植されている。
【0127】
アンタゴニスト及びアゴニスト−アッセイ及び分子
例えば、細胞、無細胞標品、化学ライブラリ及び天然産物混合物中で小分子基質及びリガンドの結合を評価するために、本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用することもできる。これらの基質及びリガンドは天然の基質及びリガンドであり得るか又は構造的もしくは機能的摸倣物であり得る。例えば、Coliganら、Current Protocols in Immunology 1(2):第5章(1991)を参照。
【0128】
スクリーニング法は、直接又は間接的に候補化合物に会合した標識によって、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに対する、又はポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを有する細胞もしくは膜に対する、又はポリペプチドの融合タンパク質に対する、候補化合物の結合を単純に測定し得る。あるいは、本スクリーニング法は、標識された競合物との競合を含み得る。さらに、これらのスクリーニング法は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを含む細胞に適切な検出系を使用して、候補化合物によって、結果としてポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化又は阻害によりシグナルが生成するか否かを試験し得る。活性の阻害剤は通常、既知のアゴニスト存在下でアッセイし、候補化合物の存在がアゴニストによる活性に影響を及ぼすかを観察する。場合によっては、候補化合物によって結果としてポリペプチド又はポリヌクレオチドの活性化が阻害されるか否かを試験することによる、アゴニスト又は阻害剤非存在下での、逆アゴニスト又は阻害剤に対するスクリーニング法において、構造的に活性のあるポリペプチド及び/又は構造的に発現されるポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用し得る。さらに、本スクリーニング法は単純に、混合物を形成するために本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含有する溶液と候補化合物を混合し、混合物中のタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド活性を測定し、混合物のタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド活性を標準と比較する、段階を含み得る。本発明のポリペプチドならびに系統発生的及び/又は機能的に関連するポリペプチドのアンタゴニストを同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイに対して、本明細書中で既に述べたようなFc部分及びタンパク質Eポリペプチドから作製されたものなどの融合タンパク質を使用することもできる(D.Bennettら、J Mol Recognition、8:52−58(1995);及びK.Johansonら、J Biol Chem、270(16):9459−9471(1995)を参照のこと。)。
【0129】
細胞でのmRNA及び/又はポリペプチドの産生に対する、添加化合物の影響を検出するためのスクリーニング法を設定するために、本発明のポリペプチドと結合及び/又は相互作用する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び抗体も使用し得る。例えば、当技術分野で公知の標準的方法により、モノクローナル及びポリクローナル抗体を用いて、ポリペプチドの分泌又は細胞結合レベルを測定するためにELISAアッセイを構築し得る。適切に操作した細胞又は組織からポリペプチドの産生を阻害又は促進し得る物質(それぞれアンタゴニスト又はアゴニストとも呼ばれる。)を探索するために、これを使用することができる。
【0130】
本発明はまた、タンパク質Eポリペプチド又はポリヌクレオチドの作用を促進(アゴニスト)又は阻害(アンタゴニスト)する化合物、特に静菌及び/又は殺菌剤である化合物を同定するために化合物をスクリーニングする方法も提供する。スクリーニングの方法は、ハイスループット技術を含み得る。例えば、アゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングするために、タンパク質Eアゴニスト又はアンタゴニストであり得る候補分子の非存在下又は存在下で、タンパク質Eポリペプチド及び標識した基質又はこのようなポリペプチドのリガンドを含む、合成反応混合液、細胞内コンパートメント、例えば膜、細胞エンベロープもしくは細胞壁など、又はそれらの何らかの調製物を温置する。候補分子がタンパク質Eポリペプチドを作動させるか又はこれに拮抗する能力は、標識したリガンドの結合低下又はこのような基質からの産物の産生低下に反映される。無条件で、即ちタンパク質Eポリペプチドの効果を誘導することなく結合する分子は、優れたアンタゴニストとなる可能性が最も高い。よく結合する、場合によっては、基質からの産物産生の速度を向上させる、シグナル伝達を向上させる、又は化学的チャネル活性を向上させる分子はアゴニストである。場合によっては、基質からの産物産生の速度又はレベル、シグナル伝達又は化学的チャネル活性の検出は、レポーター系を用いることにより容易になり得る。この点で有用であり得るレポーター系には、以下に限定されないが、比色、産物に変換される標識された基質、タンパク質Eポリヌクレオチド又はポリペプチド活性の変化に反応性があるレポーター遺伝子及び当技術分野で公知の結合アッセイが含まれる。
【0131】
タンパク質Eアゴニストに対するアッセイの別の例は、競合的阻害アッセイに対して適切な条件下で、タンパク質E結合分子、組み換えタンパク質E結合分子、天然基質もしくはリガンド又は基質もしくはリガンド摸倣体と、タンパク質E及び潜在的なアゴニストを組み合わせる競合的アッセイである。潜在的なアンタゴニストの有効性を評価するために、結合分子に結合されるか又は産物に変換されるタンパク質E分子の数を正確に調べることができるよう、放射活性又は比色化合物などによりタンパク質Eを標識することができる。
【0132】
潜在的なアンタゴニストには、とりわけ、本発明のポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドに結合し、それによりその活性又は発現を阻害又は消去する、小型の有機分子、ペプチド、ポリペプチド及び抗体が含まれる。潜在的アンタゴニストはまた、小型の有機分子、ペプチド、ポリペプチド、例えば、結合分子において同じ部位に結合する近縁のタンパク質又は抗体など、例えば、タンパク質E誘導性の活性を誘導することなく、それにより、結合からタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを排除してタンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの作用又は発現を阻止する結合分子など、でもあり得る。
【0133】
潜在的なアンタゴニストには、ポリペプチドの結合部位に結合しその部位を占有し、それにより細胞性結合分子への結合を阻止し、正常な生物学的活性を妨げる小分子が含まれる。小分子の例には、以下に限定されないが、小型の有機分子、ペプチド又はペプチド様分子が含まれる。その他の潜在的なアンタゴニストには、アンチセンス分子が含まれる(これらの分子の記載に対して、Okano、J.Neurochem.56:560(1991);OLIGODEOXYNUCLEOTIDES AS ANTISENSE INHIBITORS OF GENE EXPRESSION、CRC Press、Boca Raton、FL(1988)を参照。)。好ましい潜在的なアンタゴニストには、タンパク質Eに関連する化合物及びタンパク質Eの変異体が含まれる。
【0134】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はその断片及び様々なサブクラスの免疫グロブリン(IgG、IgM、IgA、IgE)の重もしくは軽鎖の定常領域の様々な部分を含む、遺伝子操された可溶性融合タンパク質に関する。免疫グロブリンとして好ましいのは、ヒトIgG、特にIgG1の重鎖の定常部分であり、ここではヒンジ領域で融合が起こる。特定の実施形態において、単純に血液凝固因子Xaで切断することができる切断配列を組み込むことによってFc部を除去することができる。さらに本発明は、遺伝子操作によりこれらの融合タンパク質を調製するためのプロセス及び薬物スクリーニング、診断及び治療に対するその使用に関する。本発明のさらなる態様は、このような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドにも関する。融合タンパク質技術の例は国際特許出願WO94/29458及びWO94/22914で見出すことができる。
【0135】
抗菌性化合物の探索及び開発において本明細書中で提供される各ポリヌクレオチド配列を使用し得る。発現において、抗菌性薬物のスクリーニングのための標的として、コードされるタンパク質を使用することができる。さらに、関心のあるコード配列の発現を調節するためのアンチセンス配列を構築するために、コードされるタンパク質のアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチド配列又はシャイン・ダルガルノ又は個々のmRNAのその他の翻訳促進配列を使用することができる。
【0136】
本発明はまた、病原体と、感染の続発症に関与する真核生物、好ましくは哺乳動物の宿主との間の最初の物理的相互作用を妨げるための、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニスト又はアンタゴニストの使用も提供する。特に、真核生物、好ましくは哺乳動物の体内装置上の細胞外マトリクスタンパク質又は傷における細胞外マトリクスタンパク質への、細菌、特にグラム陽性及び/又はグラム陰性細菌の付着の予防において;真核生物、好ましくは哺乳動物の細胞外マトリクスタンパク質と、組織損傷を媒介する細菌のタンパク質Eタンパク質との間の細菌の付着を防御するために及び/又は;体内装置の移植又はその他の手術手技以外により開始された感染における病原の正常な進行を妨害するために、本発明の分子を使用し得る。
【0137】
本発明のさらに別の態様によると、タンパク質Eアゴニスト及びアンタゴニスト、好ましくは静菌性又は殺菌性のアゴニスト及びアンタゴニストが提供される。
【0138】
例えば、疾患を、予防、抑制及び/又は治療するために、本発明のアンタゴニスト及びアゴニストを使用し得る。
【0139】
さらなる態様において、本発明は、本発明のポリペプチドのミモトープに関する。ミモトープは、ネイティブペプチドに十分に類似している(配列又は構造的に)ペプチド配列であり、これは、ネイティブペプチドを認識する抗体により認識され得るか;又は適切な担体と連結した場合、ネイティブペプチドを認識する抗体を生じさせることができる。
【0140】
選ばれたアミノ酸の、付加、欠失又は置換により、特定の目的のためにペプチドミモトープを設計し得る。したがって、タンパク質担体への共役を容易にするためにペプチドを修飾し得る。例えば、ある化学的共役方法が末端システインを含むことが所望され得る。さらに、ペプチドのフリーの非共役末端が担体タンパク質の表面と会合し続けるように、タンパク質担体に共役されたペプチドがペプチドの共役末端から離れた疎水性末端を含むことが所望され得る。それによって、ネイティブ分子全体に関して見られるように、ペプチドの立体配座と非常に似ている立体配座でペプチドを提示する。例えば、N−末端システイン及びC−末端疎水性アミド化テールを有するようにペプチドを変化させ得る。あるいは、有益な誘導体を作製するために、例えばペプチドの安定性を促進するために、アミノ酸(インバーソ(inverso)配列)の1つ以上のD−立体異性体型の付加又は置換を行い得る。ミモトープは、天然ペプチド配列と配列方向が逆になっているレトロ配列でもあり得る。ミモトープはまた、特徴において、レトロ−インバーソでもあり得る。レトロ、インバーソ及びレトロ−インバーソペプチドはWO95/24916及びWO94/05311に記載されている。
【0141】
あるいは、ファージディスプレイ技術(EP 0 552 267 B1)などの技術を使用して、それ自身が本発明のポリペプチドに結合できる抗体を用いて、ペプチドミモトープを同定し得る。この技術は、ネイティブペプチドの構造を摸倣し、従って、抗−ネイティブペプチド抗体に結合することができるが、ネイティブポリペプチドと顕著な配列ホモロジーをそれ自身が必ずしも持ち得ない、大量のペプチド配列を生成させる。
【0142】
ワクチン
本発明の別の態様は、個体、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、免疫反応を誘発するための方法に関し、この方法は、感染、特に細菌感染及びとりわけ型別不能H.インフルエンザ感染から個体を保護するために抗体及び/又はT細胞免疫反応を生じさせるのに妥当なタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体を個体に接種することを含む。このような免疫反応が細菌複製を遅らせる方法も提供される。本発明のさらに別の態様は、個体において免疫反応を誘発する方法に関し、この方法は、抗体及び/又はT細胞免疫反応(例えばサイトカイン産生T細胞又は細胞毒性T細胞を含む。)を生じさせるため、個体、好ましくはヒトを疾患(その疾患が、既に個体中で確立されているものであれ、そうでないものであれ)から防御するためなど、免疫反応を誘発するために、インビボでタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体を発現させるために、タンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はその断片もしくは変異体の発現を支配するための、核酸ベクター、配列又はリボザイムをこのような個体に送達することを含む。遺伝子を投与することの一例は、粒子その他に対するコーティングとして所望の細胞への遺伝子の投与を加速することである。このような核酸ベクターは、DNA、RNA、リボザイム、修飾された核酸、DNA/RNAハイブリッド、DNA−タンパク質複合体又はRNA−タンパク質複合体を含み得る。
【0143】
本発明のさらなる態様は、その中で免疫反応が誘発されている可能性がある、個体、好ましくはヒトへ導入する際に、タンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はそれからコードされるポリペプチドに対してこのような個体において免疫反応を誘発する免疫組成物に関し、ここでこの組成物は、組み換えタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はそれからコードされるポリペプチドを含み、及び/又はタンパク質Eポリヌクレオチド、それからコードされるポリペプチド又は本発明のその他のポリペプチドの抗原をコードし、発現する、DNA及び/又はRNAを含む。免疫反応を治療的又は予防的に使用することができ、これは、抗体免疫及び/又は細胞性免疫(CTL又はCD4+T細胞から生じる細胞性免疫など)の形態を取り得る。
【0144】
それ自身により抗体を産生し得るか又はし得ないが、第一のタンパク質を安定化し、抗原性及び/又は免疫原性特性、及び好ましくは予防的特性を有するであろう融合又は修飾タンパク質を生じさせる共タンパク質又は化学部分とタンパク質Eポリペプチド又はその断片を融合させ得る。したがって、融合組み換えタンパク質は、好ましくは、ヘモフィルス・インフルエンザ(EP594610)由来のリポタンパク質又はタンパク質Dなどの抗原性共タンパク質、タンパク質を可溶化し、その産生及び精製を促進する、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)又はβ−ガラクトシダーゼ又は何らかのその他の比較的大型の共タンパク質をさらに含む。さらに、共タンパク質は、タンパク質を受容する生物の免疫系の全身性刺激を提供するという意味のアジュバントとして作用し得る。第一のタンパク質のアミノ又はカルボキシ末端の何れかに、共タンパク質を連結させ得る。
【0145】
本発明によるワクチン組成物において、タンパク質Eポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド又はその断片もしくはミモトープもしくは変異体は、例えば生きている細菌ベクターなど、上述の生きている組み換えベクターなどのベクターに存在し得る。
【0146】
タンパク質Eポリペプチドに対して、非生物ベクターも適切である(例えば、細菌の外膜小胞又は「泡状突起」)。OM泡状突起は、グラム陰性細菌の2層膜の外膜由来であり、C.トラコマチス(C.trachomatis)及びC.シッタシ(C.psittaci)を含む多くのグラム陰性細菌において記録されている(Zhou、L.ら 1998 FEMS Microbiol.Lett.163:223−228)。泡状突起を生成することが報告されている細菌性病原体の限定的なリストには、以下のものも含まれる:百日咳菌(Bordetella pertussis)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ菌(Brucella melitensis)、ヒツジブルセラ菌(Brucella ovis)、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス・インフルエンザ、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pheumophila)、モラクセラ・カタラーリス、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)。
【0147】
泡状突起は、そのネイティブ立体配座において外膜タンパク質を与えるという長所を有し、従って、ワクチンに対して特に有用である。外膜において1つ以上の分子の発現を変化させるように細菌を操作することにより、ワクチン用途に対して泡状突起を改善することもできる。従って、例えば、タンパク質Eポリペプチドなどの外膜での所望の免疫原性タンパク質の発現を導入するか又は上方制御(例えばプロモーターを変化させることにより)することができる。代わりに、又は加えて、関連がないか(例えば非防御抗原又は免疫優勢であるが可変のタンパク質)又は有害であるか(例えば、LPSなどの毒性分子又は自己免疫反応の潜在的誘導物質)の何れかである外膜分子の発現を下方制御することができる。これらのアプローチは下記で詳細に考察する。
【0148】
タンパク質E遺伝子の非コード隣接領域は、遺伝子の発現に重要な制御エレメントを含有する。この制御は、転写及び翻訳の両レベルで起こる。遺伝子のオープンリーディングフレームの上流又は下流の何れかであるこれらの領域の配列は、DNA配列決定により得ることができる。この配列情報により、異なるプロモーターエレメント、終結配列、誘導配列エレメント、リプレッサー、相変異に関与するエレメント、シャイン・ダルガルノ配列、制御に関わる潜在的な二次構造を伴う領域ならびにその他のタイプの制御モチーフ又は配列などの潜在的な制御モチーフの決定が可能となる。この配列は、本発明のさらなる態様である。
【0149】
この配列情報により、タンパク質E遺伝子の天然の発現の調節が可能となる。この遺伝子発現の上方制御は、プロモーター、シャイン・ダルガルノ配列、潜在的リプレッサー又はオペレーターエレメント又は関連する何らかのその他のエレメントを付随し得る。同様に、発現の下方制御は、同じタイプの修飾により達成することができる。あるいは、相変異配列を変化させることにより、遺伝子の発現を相変異調節下に置くことができるか、又はこの制御から切り離し得る。別のアプローチにおいて、発現の制御を可能にする1つ以上の誘導エレメントの調節下に遺伝子の発現を置くことができる。このような制御の例には、以下に限定されないが、温度変化による誘導、選択された炭水化物又はその誘導体などの誘導基質、微量元素、ビタミン、共同因子、金属イオンなどの添加が含まれる。
【0150】
いくつかの異なる手段により、上述のような修飾を導入することができる。無作為突然変異誘発とそれに続く所望の表現型の選択によって、遺伝子発現に関与する配列の修飾をインビボで行うことができる。別のアプローチは、関心のある領域を単離し、無作為突然変異誘発又は部位特異的置換、挿入又は欠失突然変異誘発によりそれを修飾することにある。次に、相同組み換えにより、細菌ゲノムに修飾した領域を再び導入することができ、遺伝子発現における影響を評価することができる。別のアプローチにおいて、天然の制御配列の全て又は一部を置換又は欠失させるために、関心のある領域の配列の知識を使用することができる。この場合、標的とする制御領域を単離し、別の遺伝子からの制御エレメント、異なる遺伝子からの制御エレメントの組み合わせ、合成制御領域又は何らかのその他の制御領域を含有するように、又は野生型制御配列の選択部分を欠失するように、修飾する。次に、これらの修飾配列をゲノムへの相同組み換えにより細菌に再導入することができる。遺伝子発現の上方制御のために使用され得る好ましいプロモーターの限定的リストには、髄膜炎菌(N.meningitidis)又は淋菌(N.Gonorroheae)からの、プロモーター、porA、porB、lbpB、tbpB、p110、lst、hpuAB;M.カタラーリスからのompCD、copB、lbpB、ompE、UspA1;UspA2;M.カタラーリスからのTbpB;H.インフルエンザからのp1、p2、p4、p5、p6、lpD、tpbB、D15、Hia、Hmw1、Hmw2が含まれる。
【0151】
一例において、そのプロモーターをより強力なプロモーターに交換することにより、遺伝子の発現を調節することができる(遺伝子の上流配列の単離、この配列のインビトロ修飾及び相同組み換えによるゲノムへの再導入を介する。)。細菌においてならびに細菌から分離された(又は生成された)外膜小胞の両方において、発現を上方制御することができる。
【0152】
その他の例において、ワクチン適用のための特徴が向上した組み換え細菌株を作製するために、記載されるアプローチを使用することができる。これらは、以下に限定されないが、弱毒化株、選択された抗原の発現が向上している株、免疫反応を妨害する遺伝子がノックアウト(又は発現低下)されている株、免疫優勢タンパク質の発現が調節されている株、外膜小胞の脱落が調節されている株であり得る。
【0153】
従って、本発明により、タンパク質E遺伝子の修飾された上流領域も提供され、ここで、修飾された上流領域は、外膜に位置するタンパク質Eタンパク質の発現レベルを変化させる異種制御エレメントを含有する。本発明のこの態様による上流領域には、タンパク質E遺伝子の配列上流が含まれる。この上流領域は、タンパク質E遺伝子のすぐ上流から開始し、通常、ATG開始コドンからこの遺伝子のわずか約1000bp上流の位置まで続く。多シストロン性の配列(オペロン)に位置する遺伝子の場合、上流領域は、関心のある遺伝子の直前又はオペロンの第一の遺伝子の手前から開始し得る。好ましくは、本発明のこの態様による修飾された上流領域は、ATGの500から700bp上流の位置で異種プロモーターを含有する。
【0154】
タンパク質E遺伝子の発現を上方制御するための開示された上流領域の使用、相同組み換えを通じてこれを達成するためのプロセス(例えば本明細書中に参照により組み込まれるWO01/09350に記載のものなど)、この目的に適切な上流配列を含むベクター及びそのように変更された宿主細胞は全て、本発明のさらなる態様である。
【0155】
したがって、本発明は、修飾された細菌の泡状突起において、タンパク質Eポリペプチドを提供する。本発明は、非生物膜に基づく泡状突起ベクターを生成することができる修飾された宿主細胞をさらに提供する。本発明は、異種制御エレメントを含有する修飾された上流領域を有するタンパク質E遺伝子を含む核酸ベクターをさらに提供する。
【0156】
本発明により、本発明による、宿主細胞及び細菌の泡状突起を調製するためのプロセスがさらに提供される。
【0157】
本発明により、組成物、特にワクチン組成物及び、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド及び免疫刺激性DNA配列、例えばSato、Y.ら、Science 273:352(1996)に記載のものなど、を含む方法も提供される。
【0158】
本発明により、記載のポリヌクレオチド又はその特定の断片を使用する方法も提供されるが、これは、型別不能H.インフルエンザによる感染の動物モデルにおける、このような遺伝子免疫実験で使用されるポリヌクレオチドコンストラクトにおいて、細菌の細胞表面タンパク質の非可変領域をコードすることが示されている。このような実験は、予防的又は治療的免疫反応を誘発することができるタンパク質エピトープを同定するために特に有用である。このアプローチにより、哺乳動物、特にヒトにおいて、細菌感染、特に型別不能H.インフルエンザ感染の予防薬又は治療薬を開発するために、感染を首尾よく阻止するか又は除去した動物の必要な器官由来の、特定の価のモノクローナル抗体をその後に調製することが可能になると考えられている。
【0159】
本発明はまた、医薬的に許容可能な担体などの適切な担体とともに本発明の免疫原性組み換えポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドを含むワクチン製剤も含む。ポリペプチド及びポリヌクレオチドは胃で分解され得るので、それぞれを好ましくは、例えば、皮下、筋肉内、静脈内又は皮内である投与を含む非経口により投与する。非経口投与に適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌化合物及び、製剤を個体の体液(好ましくは血液)と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の滅菌注射溶液;及び懸濁剤又は増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。単位投与又は複数回投与容器、例えば密封アンプル及びバイアル中で製剤を与えることができ、使用直前に滅菌液体担体を添加することのみが必要な凍結乾燥状態で保存することができる。
【0160】
本発明のワクチン製剤はまた、製剤の免疫原性を促進するためのアジュバント系も含み得る。好ましくは、アジュバント系は、選択的にTH1型反応を生じさせる。
【0161】
免疫反応は、広義に、液性又は細胞介在免疫反応という、2つの大きなカテゴリーに区別し得る(伝統的に、それぞれ、抗体及び防御の細胞エフェクター機構を特徴とする。)。反応のこれらのカテゴリーは、TH1型反応(細胞介在反応)及びTH2型免疫反応(液性反応)と呼ばれる。
【0162】
極端なTH1型免疫反応は、抗原特異的な、ハプロタイプ限定的細胞毒性Tリンパ球及びナチュラルキラー細胞反応の生成を特徴とし得る。マウスにおいて、TH1型反応は、IgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とすることが多く、一方、ヒトでは、これらは、IgG1型抗体に相当する。TH2型免疫反応は、マウスIgG1、IgA及びIgMを含む、広い範囲の免疫グロブリンアイソタイプの生成を特徴とする。
【0163】
これらの2タイプの免疫反応の発現の裏にある原動力はサイトカインであると考えられ得る。高レベルのTH1型サイトカインは、ある種の抗原に対して細胞介在免疫反応の誘発を促進する傾向があるが、一方で、高レベルのTH2型サイトカインは、抗原に対して液性免疫反応の誘発を促進する傾向がある。
【0164】
TH1及びTH2型免疫反応の相違は絶対的ではない。現実に、個体は、主にTH1又は主にTH2であるとして記載されている免疫反応を支持する。しかし、Mosmann及びCoffman(Mosmann、T.R.及びCoffman、R.L.(1989)TH1 and TH2 cells:different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties.Annual Review of Immunology、7、p145−173)によりマウスCD4+ve T細胞クローンにおいて記載されたものに関してサイトカインのファミリーを考えることが好都合であることが多い。伝統的に、TH1型反応は、Tリンパ球によるINF−γ及びIL−2サイトカインの産生を伴う。IL−12など、直接、TH1型免疫反応の誘発に付随することが多いその他のサイトカインは、T細胞により産生されない。一方、TH2型反応は、IL−4、IL−5、IL−8及びIL−13の分泌を付随する。
【0165】
ある一定のワクチンアジュバントが、TH1又はTH2型サイトカイン反応の何れかの刺激に特に適していることが知られている。伝統的に、ワクチン接種又は感染後の免疫反応のTH1:TH2バランスの最良の指標には、抗原による再刺激後のインビトロでのTリンパ球によるTH1又はTH2型サイトカインの産生の直接的測定及び/又はIgG1:IgG2、抗原特異的抗体反応の比の測定が含まれる。
【0166】
従って、TH1型アジュバントは、インビトロで抗原により再刺激された際に高レベルのTH1型サイトカインを産生させるために単独のT細胞集団を選択的に刺激し、CD8+細胞毒性Tリンパ球及びTH1型アイソタイプを付随する抗原特異的免疫グロブリン反応の両方の進行を促進するものである。
【0167】
TH1細胞反応の選択的刺激が可能なアジュバントは、国際特許出願WO94/00153及びWO95/17209に記載されている。
【0168】
3De−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)は、あるこのようなアジュバントである。これはGB2220211(Ribi)から知られている。化学的に、これは、4、5又は6個のアシル化鎖と3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物であり、Ribi Immunochem、Montanaにより製造されている。3De−O−アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい形態は、欧州特許0 689 454B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に記載されている。
【0169】
好ましくは、3D−MPLの粒子は、0.22ミクロン膜に通してろ過滅菌できるよう十分小さい(欧州特許第0 689 454号)。
【0170】
3D−MPLは、投与あたり10μg−100μg、好ましくは25−50μgの範囲で存在し、この投与において抗原は通常、投与あたり2−50μgの範囲で存在する。
【0171】
別の好ましいアジュバントは、QS21、シャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮由来の、HPLC精製した無毒性分画を含む。場合によっては、これを3De−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)と混合し得る(場合によっては担体と一緒に)。
【0172】
QS21の作製方法は、米国特許第5,057,540号で開示されている。
【0173】
QS21を含有する非反応原性アジュバント製剤は既に記載されている(WO96/33739)。QS21及びコレステロールを含むこのような製剤は、抗原と一緒に処方した場合、優れたTH1刺激アジュバントであることが分かっている。
【0174】
TH1細胞反応の選択的刺激剤であるさらなるアジュバントには、免疫調節オリゴヌクレオチド、例えばWO96/02555で開示されているような非メチル化CpG配列が含まれる。
【0175】
本明細書中で上記で述べたものなどの様々なTH1刺激アジュバントの組み合わせもまた、TH1細胞反応の選択的刺激剤であるアジュバントを提供する際にもくろまれる。例えば、3D−MPLとともにQS21を処方することができる。QS21:3D−MPLの比は、通常、1:10から10:1;好ましくは1:5から5:1のオーダーであり、実質的に1:1であることが多い。最適な相乗効果のための好ましい範囲は2.5:1から1:1 3D−MPL:QS21である。
【0176】
好ましくは、本発明によるワクチン組成物中には担体も存在する。担体は、水中油型乳剤又はアルミニウム塩(リン酸アルミニウム又は水酸化アルミニウムなど)であり得る。
【0177】
好ましい水中油型乳剤は、代謝可能な油、例えばスクアレン、アルファトコフェロール及びTween80などを含む。特に好ましい態様において、このような乳剤中で本発明によるワクチン組成物中の抗原をQS21及び3D−MPLと組み合わせる。さらに、水中油型乳剤は、スパン85及び/又はレシチン及び/又はトリカプリリンを含有し得る。
【0178】
通常、ヒトへの投与に対して、QS21及び3D−MPLは、投与あたり1μg−200μgの範囲、10−100μgなど、好ましくは10μg−50μg、でワクチン中に存在する。通常、水中油滴は、2から10%のスクアレン、2から10%のアルファトコフェロール及び0.3から3%のTween80を含む。好ましくは、スクアレン:アルファトコフェロールの比は、これがより安定な乳剤を与えるので、1以下である。Span85も1%のレベルで存在し得る。ある場合において、本発明のワクチンが安定化剤をさらに含有することは有利であり得る。
【0179】
無毒性の水中油型乳剤は、好ましくは、水性担体中で、無毒性の油(例えばスクアラン又はスクアレン)、乳化剤(例えばTween80)を含有する。水性担体は、例えば、リン酸緩衝食塩水であり得る。
【0180】
水中油型乳剤中にQS21、3D−MPL及びトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO95/17210に記載されている。
【0181】
ある一定のタンパク質Eポリペプチド及びポリヌクレオチドに関して本発明を説明してきたが、これが天然のポリペプチド及びポリヌクレオチドの断片、及び組み換えポリペプチド又はポリヌクレオチドの免疫原性特性に実質的に影響しない、付加、欠失又は置換がある、同様のポリペプチド及びポリヌクレオチドを包含することを理解されたい。好ましい断片/ペプチドは実施例10に記載されている。
【0182】
本発明は、その他の抗原、特に中耳炎の治療に有用な抗原と組み合わせて本発明のワクチン製剤を含む多価ワクチン組成物も提供する。このような多価ワクチン組成物には、本明細書中で前に述べたようなTH−1誘導アジュバントが含まれ得る。
【0183】
好ましい実施形態において、次の抗原群の1つ以上とともに本発明のポリペプチド、断片及び免疫原を処方する:a)1つ以上の肺炎球菌莢膜多糖類(そのままか又は担体タンパク質に共役されているかの何れか);b)M.カタラーリス感染から宿主を防御することができる1つ以上の抗原;c)肺炎連鎖球菌感染から宿主を防御することができる1つ以上のタンパク質抗原;d)1つ以上のさらなる型別不能ヘモフィルス・インフルエンザタンパク質抗原;e)RSVから宿主を防御することができる1つ以上の抗原;及びf)インフルエンザウイルスから宿主を防御することができる1つ以上の抗原。群a)及びb);b)及びc);b)、d)及びa)及び/又はc);b)、d)、e)、f)及びa)及び/又はc)の組み合わせが好ましい。世界的な中耳炎ワクチンとして、このようなワクチンを有利に使用し得る。
【0184】
肺炎球菌莢膜多糖類抗原は、好ましくは、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F及び33F(最も好ましくは血清型1、3、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fから)から選択される。
【0185】
好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、肺炎球菌の外表面に露出される肺炎球菌タンパク質(肺炎球菌のライフサイクルの少なくとも一部の間に宿主の免疫系により認識され得る。)であるか又は肺炎球菌によって分泌もしくは放出されるタンパク質である。最も好ましくは、タンパク質は毒素、付着因子、2−成分シグナルトランスデューサーもしくは肺炎連鎖球菌のリポタンパク質又はその断片である。特に好ましいタンパク質には、以下に限定されないが、ニューモリシン(好ましくは化学的処理又は突然変異により解毒されたもの)[Mitchellら、Nucleic acids Res.1990 7月11日;18(13):4010「Comparison of pneumolysin genes and proteins from Streptococcus pneumonia types 1 and 2」、Mitchellら、Biochim Biophys Acta 1989 1月23日;1007(1):67−72「Expression of the pneumolysin gene in Escherichia coli:rapid purification and biological properties」、WO96/05859(A.Cyanamid)、WO90/06951(Patonら)、WO99/03884(NAVA)];PspA及びその膜貫通欠失変異体(WO92/14488;WO99/53940;US5804193−Brilesら);PspC及びその膜貫通欠失変異体(WO99/53940;WO97/09994−Brilesら);PsaA及びその膜貫通欠失変異体(Berry&Paton、Infect Immun 1996 Dec;64(12):5255−62「Sequence heterogeneity of PsaA、a 37−kilodalton putative adhesin essential for virulence of Streptococcus pneumoniae」);肺炎球菌コリン結合タンパク質及びその膜貫通欠失変異体;CbpA及びその膜貫通欠失変異体(WO97/41151;WO99/51266);グリセルアルデヒド−3−ホスフェート−デヒドロゲナーゼ(Infect.Immun.1996 64:3544);HSP70(WO96/40928);PcpA(Sanchez−Beatoら、FEMS Microbiol Lett 1998、164:207−14);M様タンパク質、SB特許出願EP0837130;及び付着因子18627(SB特許出願EP0834568)が含まれる。さらに好ましい肺炎球菌タンパク質抗原は、WO98/18931で開示されているもの、特に、WO98/18930及びPCT/US99/30390において選択されるものである。
【0186】
混合ワクチンに含まれ得る好ましいモラクセラ・カタラーリスタンパク質抗原(特に中耳炎の予防のため)は、OMP106[WO97/41731(Antex)及びWO96/34960(PMC)];OMP21;LbpA及び/又はLbpB[WO98/55606(PMC)];TbpA及び/又はTbpB[WO97/13785及びWO97/32980(PMC)];CopB[Helminen MEら(1993)Infect.Immun.61:2003−2010];UspA1及び/又はUspA2[WO93/03761(University of Texas)];OmpCD;HasR(PCT/EP99/03824);PilQ(PCT/EP99/03823);OMP85(PCT/EP00/01468);lipo06(GB9917977.2);lipo10(GB9918208.1);lipo11(GB9918302.2);lipo18(GB9918038.2);P6(PCT/EP99/03038);D15(PCT/EP99/03822);OmplA1(PCT/EP99/06781);Hly3(PCT/EP99/03257);及びOmpEである。
【0187】
混合ワクチン中に含まれ得る好ましいさらなる型別不能ヘモフィルス・インフルエンザタンパク質抗原(特に中耳炎の予防のため)には、フィンブリンタンパク質[(US5766608−Ohio State Research Foundation)]及びそれ由来のペプチドを含む融合物[例えばLB1(f)ペプチド融合物;US5843464(OSU)又はWO99/64067];OMP26[WO97/01638(Cortecs)];P6[EP281673(State University of New York)];タンパク質D(EP594610);TbpA及び/又はTbpB;Hia;Hsf;Hin47;Hif;Hmw1;Hmw2;Hmw3;Hmw4;Hap;D15(WO94/12641);P2;P5(WO94/26304);NlpC2(BASB205)[WO02/30971];Slp(BASB203)[WO02/30960];及びiOMP1681(BASB210)[WO02/34772]が含まれる。
【0188】
好ましいインフルエンザウイルス抗原には、丸ごと、生きている又は不活性化ウイルス、スプリットインフルエンザウイルス(卵又はMDCK細胞又はVero細胞中で増殖させたもの)又は全fluウイロソーム(virosome)(R.Gluck、Vaccine、1992、10、915−920により記載されたもの)又はその精製もしくは組換えタンパク質、例えばHA,NP,NAもしくはMタンパク質又はその組合せ)が含まれる。
【0189】
好ましいRSV(呼吸器多核体ウイルス)抗原には、F糖タンパク質、G糖タンパク質、HN糖タンパク質又はその誘導体が含まれる。
【0190】
組成物、キット及び投与
本発明のさらなる態様において、細胞又は多細胞生物への投与のためのタンパク質Eポリヌクレオチド及び/又はタンパク質Eポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0191】
本発明はまた、本明細書中で考察するポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド又はそれらのアゴニストもしくはアンタゴニストを含む組成物にも関する。個体への投与に適切な医薬的担体など、細胞、組織又は生物との使用のための非滅菌又は滅菌担体と組み合わせて本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドを使用し得る。このような組成物は、例えば、添加物又は本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの治療的有効量及び医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む。このような担体には、以下に限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせが含まれ得る。処方物は、投与法に適するべきである。本発明は、さらに、本発明の上述の組成物の成分の1つ以上で満たされた1つ以上のの容器を含む、診断及び医薬パック及びキットに関する。
【0192】
単独で、又は治療用化合物などのその他の化合物と組み合わせて、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及びその他の化合物を使用し得る。
【0193】
例えば、とりわけ、局所、経口、肛門、膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内又は皮内経路の投与を含む、何らかの有効で都合のよい方法で、本医薬組成物を投与し得る。
【0194】
治療において、又は予防として、注射用組成物として、例えば、滅菌水性分散液として(好ましくは等張)、個体に活性物質を投与し得る。
【0195】
さらなる態様において、本発明は、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤と組み合わせて、本発明のポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの可溶性形態、アゴニストもしくはアンタゴニストペプチド又は小分子化合物などの、ポリペプチド及び/又はポリヌクレオチドの治療的有効量を含む医薬組成物を提供する。このような担体には、以下に限定されないが、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール及びこれらの組み合わせが含まれる。本発明は、さらに、本発明の上述の組成物の成分の1つ以上で満たされた1つ以上の容器を含む、医薬のパック及びキットに関する。単独で、又は治療用化合物などのその他の化合物と組み合わせて、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及びその他の化合物を使用し得る。
【0196】
例えば、全身又は経口経路による投与経路に本組成物を適応させる。全身投与の好ましい形態には、通常は静脈内注射による注射が含まれる。皮下、筋肉内又は腹腔内などのその他の注射経路を使用することができる。全身投与の代替法には、胆汁塩又はフシジン酸などの浸透剤又はその他の界面活性剤を用いた経粘膜及び経皮投与が含まれる。さらに、本発明のポリペプチド又はその他の化合物を腸溶性又はカプセル製剤に処方することができる場合、経口投与も可能であり得る。これらの化合物の投与もまた、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、粉末などの形態での、局所及び/又は局所化であり得る。
【0197】
哺乳動物及び特にヒトへの投与の場合、活性物質の1日投与レベルは0.01mg/kgから10mg/kg、通常は1mg/kg前後となることが予想される。医師は、何れにせよ、個体に最も適切な実際の投与量を決定し、特定の個人の年齢、体重及び反応によって変化させる。上記の投与量は平均的な場合の代表例である。言うまでもなく、より高い又はより低い投与量範囲に値する個々の例があり得、これらは本発明の範囲内である。
【0198】
必要とされる投与量範囲は、ペプチドの選択、投与経路、製剤の性質、対象の状態の性質及び担当医師の判断に依存する。しかし、適切な投与量は、0.1から100μg/(対象の)kgの範囲である。
【0199】
ワクチン組成物は、都合よく、注射用の形態である。免疫反応を促進するために、従来のアジュバントを使用し得る。ワクチン接種に対する適切な単位用量は0.5−5μg/kg(抗原)であり、好ましくは1−3回、1−3週間の間隔でこのような用量を投与する。指示された用量範囲により、本発明の化合物で、適切な個体への投与を妨げる有害な毒物学的影響は観察されないであろう。
【0200】
しかし、利用可能な様々な化合物及び様々な投与経路の様々な効率の観点で、必要とされる投与量が幅広く変化することが予想される。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与より高い投与量を必要とすると予想される。当技術分野でよく理解されているように、これらの投与量レベルの変化は、最適化のための標準的な実験による通常の方法を用いて調整することができる。
【0201】
有形的表現媒体における配列データベース、配列及びアルゴリズム
ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、それらの2次元及び3次源構造を決定するため、ならびに同様のホモロジーのさらなる配列を同定するために、価値ある情報リソースを形成する。コンピュータ可読媒体に配列を保存し、次いで既知の巨大分子構造プログラムにおいて、又はGCGプログラムパッケージなどの周知の検索ツールを用いて配列データベースを検索するために保存データを使用することにより、これらのアプローチは、最も容易に促進される。
【0202】
本発明により、文字配列(character sequence)又は文字列、特に遺伝子配列又はコードされるタンパク質配列の分析方法も提供される。好ましい配列分析の方法には、例えば、同一性及び類似性分析などの配列ホモロジー分析の方法、DNA、RNA及びタンパク質構造分析、配列アセンブリ、分岐分析、配列モチーフ分析、オープンリーディングフレーム決定、核酸塩基呼び出し、コドン使用頻度分析、核酸塩基トリミング及び配列決定クロマトグラムピーク分析が含まれる。
【0203】
コンピュータに基づく方法は、ホモロジー同定を行うために与えられる。この方法は、コンピュータ可動媒体において本発明のポリヌクレオチドの配列を含む第一のポリヌクレオチド配列を提供し;ホモロジーを同定するために、少なくとも1つの第二のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と前記の第一のポリヌクレオチド配列を比較する段階を含む。
【0204】
ホモロジー同定を行うためにも、コンピュータに基づく方法を提供するが、この方法は、コンピュータ可動媒体において本発明のポリペプチドの配列を含む第一のポリペプチド配列を提供し;ホモロジーを同定するために、少なくとも1つの第二のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と前記の第一のポリペプチド配列を比較する段階を含む。
【0205】
本明細書中で引用する、以下に限定されないが特許及び特許出願を含む全ての刊行物及び参考文献は、個々の刊行物又は参考文献が具体的かつ個別に、完全に説明されたものとして、本明細書中で参照により組み込まれることが示されるように、その全体を参照により本明細書中に組み込む。本願が優先権を主張する何れの特許出願も、刊行物及び参考文献に対して上記で述べたようにしてその全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0206】
定義
当技術分野で公知のように、「同一性」とは、場合によっては、配列を比較することにより決定される場合、2以上のポリペプチド配列又は2以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、このような配列の文字列間の一致によって決定される場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、以下に限定されないが、(Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith、D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin、A.M.及びGriffin、H.G編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heine、G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov、M.及びDevereux、J.編、M Stockton Press New York、1991;及びCarillo、H.及びLipman、D.、SIAM J、Applied Math.、48:1073(1988)に記載のものを含む既知の方法により容易に計算することができる。試験する配列間で最大の一致を与えるために、同一性を決定するための方法を設計する。さらに、公開されているコンピュータプログラムにおいて同一性を決定するための方法が体系化されている。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータプログラム法には、以下に限定されないが、GCGプログラムパッケージにおけるGAPプログラム(Devereux、J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN(Altschul、S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403−410(1990)及びFASTA(Pearson及びLipman Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85;2444−2448(1988)が含まれる。プログラムのBLASTファミリーはNCBI及びその他のソースから公開されている(BLAST Manual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD20894;Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。同一性を決定するために、周知のSmith Watermanアルゴリズムも使用し得る。
【0207】
ポリペプチド配列比較のためのパラメータには次のものが含まれる:
アルゴリズム:Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);
比較行列:Henikoff及びHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919(1992)からのBLOSSUM62
ギャップペナルティー:8
ギャップ長ペナルティー:2。
【0208】
これらのパラメータとともに有用なプログラムは、Genetic Computer Group、Madison、WIから「ギャップ」プログラムとして公開されている。上述のパラメータは、ペプチド比較に対する初期設定パラメータ(エンドギャップに対してペナルティーなし)である。
【0209】
ポリヌクレオチド比較に対するパラメータには次のものが含まれる:
アルゴリズム:Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443−453(1970);
比較行列:マッチ=+10、ミスマッチ=0
ギャップペナルティー:50
ギャップ長ペナルティー:3。
【0210】
Genetic Computer Group、Madison、WIから「ギャップ」プログラムとして利用可能。これらは、核酸比較に対する初期設定パラメータである。
【0211】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドに対する「同一性」についての好ましい意味は、場合によっては、下記(1)及び(2)で与えられる。
【0212】
(1)ポリヌクレオチド実施態様は、配列番号11の参照配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97又は100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドをさらに含み、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号11の参照配列と同一であり得るか、又は参照配列と比較した場合にヌクレオチド変化のある一定の整数個以下を含み得、この変化は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転位及びトランスバージョンを含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端の位置で、又は参照配列におけるヌクレオチド間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得、このヌクレオチド変化の数は、配列番号11のヌクレオチドの総数に、%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号11のヌクレオチド総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
nn≦xn−(xn・y)、
(式中、nnはヌクレオチド変化の数であり、xnは配列番号11のヌクレオチド総数であり、yは50%に対して0.50、60%に対して0.60、70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85、90%に対して0.90、95%に対して0.95、97%に対して0.97又は100%に対して1.00であり、・は掛け算に対する記号であり、xn及びyの非整数の積は何れも、xnからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。配列番号1−10のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変化は、このコード配列において、ナンセンス、ミスセンス又はフレームシフト突然変異を生じさせ得、それによってこのような変化の後、このポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが変化する。
【0213】
一例として、本発明のポリヌクレオチド配列は、配列番号11の参照配列と同一であり得、これは100%であり得るか、又は%同一性が100%の同一性未満であるように、参照配列と比較した場合に、核酸変化のある一定の整数以下を含み得る。このような変化は、少なくとも1つの核酸の欠失、置換(転位及びトランスバージョンを含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置で、又は参照配列における核酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得る。ある%同一性に対する核酸変化の数は、配列番号11の核酸の総数に、%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号11の核酸の総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
nn≦xn−(xn・y)、
(式中、nnは核酸変化の数であり、xnは配列番号11の核酸総数であり、yは例えば70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85などであり、・は掛け算に対する記号であり、xn及びyの非整数の積は何れも、xnからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0214】
(2)ポリペプチド実施形態は、配列番号1−10のポリペプチド参照配列に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97又は100%の同一性を有するポリペプチドを含む単離ポリペプチドをさらに含み、ここで、このポリペプチド配列は、配列番号1−10の参照配列と同一であり得るか、又は参照配列と比較した場合にアミノ酸変化のある一定の整数個以下を含み得、この変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端で、又は参照配列のアミノ酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得、このアミノ酸変化の数は、配列番号1−10のアミノ酸の総数に100で割った%同一性を定義する整数を掛け、次いで配列番号1−10のアミノ酸総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
na≦xa−(xa・y)、
(式中、naはアミノ酸変化の数であり、xaは配列番号1−10のアミノ酸総数であり、yは50%に対して0.50、60%に対して0.60、70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85、90%に対して0.90、95%に対して0.95、97%に対して0.97又は100%に対して1.00であり、・は掛け算に対する記号であり、xa及びyの非整数の積は何れも、xaからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0215】
一例として、本発明のポリペプチド配列は、配列番号1−10の参照配列と同一であり得、これは100%であり得るか、又は%同一性が100%の同一性未満であるように、参照配列と比較した場合に、アミノ酸変化のある一定の整数以下を含み得る。このような変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的及び非保存的置換を含む。)又は挿入からなる群から選択され、この変化は、参照ポリペプチド配列のアミノもしくはカルボキシ末端で、又は参照配列のアミノ酸間で個々にもしくは参照配列内の1つ以上の連続群においての何れかで散在するこれらの末端位置の間の何れかで起こり得る。ある%同一性に対するアミノ酸変化の数は、配列番号1−10のアミノ酸の総数に%同一性を定義する整数を100で割ったものを掛け、次いで配列番号1−10のアミノ酸総数からその積を差し引くことによって決定されるか、又は:
na≦xa−(xa・y)、
(式中、naはアミノ酸変化の数であり、xaは配列番号1−10のアミノ酸総数であり、yは70%に対して0.70、80%に対して0.80、85%に対して0.85などであり、・は掛け算に対する記号であり、xa及びyの非整数の積は何れも、xaからそれを差し引く前に小数点以下を切り捨てて整数にする。)により決定される。
【0216】
本明細書中で使用する場合、「個体」という用語は、生物に関して、多細胞真核生物を指し、これには、以下に限定されないが、後生動物、哺乳動物、ヒツジ科、ウシ科、類人猿、霊長類及びヒトが含まれる。
【0217】
「単離された」は、その天然の状態から「人の手によって」変化させられること、即ち、天然において生じる場合、その元来の環境から変化させられているか又は除去されていること又はその両方を意味する。例えば、生体中に天然に存在する生物ポリヌクレオチド又はポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然の状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、この用語を本明細書中で用いる場合、「単離されて」いる。さらに、形質転換、遺伝子操作又は何らかのその他の組み換え法により生物に導入されているポリヌクレオチド又はポリペプチドは、その生物中に存在し続けている場合でも「単離されて」おり、その生物が生きていても生きていなくてもよい。
【0218】
「ポリヌクレオチド」とは、通常、何らかのポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは、1本鎖及び2本鎖領域を含む、非修飾RNAもしくはDNA又は修飾RNAもしくはDNAであり得る。
【0219】
「変異体」とは、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるが、基本的な特性を保持するポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、別の参照ヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもよいし変化させなくてもよい。ヌクレオチド変化の結果、下記で考察するように、参照配列によりコードされるポリペプチドにおいて、アミノ酸置換、付加、欠失、融合及び短縮が起こり得る。ポリペプチドの典型的な変異体は、別の参照ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般に、相違は、参照ポリペプチド及び変異体の配列が全体的に非常に近く、多くの領域において同一であるように限定される。変異体及び参照ポリペプチドは、何れかの組み合わせでの1つ以上の置換、付加、欠失によりアミノ酸配列が異なり得る。置換された又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによりコードされるものであってもよいしそうでなくてもよい。ポリヌクレオチド又はポリペプチドの変異体は、対立遺伝子多形などの天然のものであり得るか又は天然に生じることが知られていない変異体であり得る。ポリヌクレオチド及びポリペプチドの非天然変異体は、突然変異誘発技術又は直接的合成により作製し得る。
【0220】
「疾患」は、細菌による感染により引き起こされるか又は細菌による感染に関連する何らかの疾患を意味し、例えば、乳児及び小児の中耳炎、高齢者の肺炎、副鼻腔炎、院内感染及び侵襲性疾患、聴力低下を伴う慢性中耳炎、中耳での液体貯留、聴覚神経損傷、言葉の発達の遅延、上気道の感染及び中耳の炎症が含まれる。
【0221】
実験パート
他に詳しく述べる場合を除き、当業者にとって周知であり通常のものである標準的技術を用いて下記の実施例を行う。実施例は例証であるが、本発明を限定しない。
【0222】
本研究は、H.インフルエンザのタンパク質E(pE)と名付けられた新規外膜タンパク質及び、ヒトIgD(λ)骨髄腫血清を用いて発見された短縮型組み換えpE(A)の、単離、精製、特性解析、クローニング及び発現を述べる。
【0223】
材料及び方法
試薬
b型H.インフルエンザ株MinnA及びNTHi3655は、Robert S.Munson Jr.(Washington University School of Medicine(St.Louis、Mo))の好意により入手した。型別不能H.インフルエンザ株NTHi772は、発明者らの部署での鼻咽頭スワブ培養物からの臨床分離株であった(2)。一連の様々なHaemophilus(ヘモフィルス)種も分析し、表1で述べる。ヒトIgD骨髄腫全血清IgD(λ)をThe Binding Site(Birmigham、England)より購入した。特異的な抗−pE抗血清を作製するために、完全フロイントアジュバント(Difco、Becton Dickinson、Heidelberg、Germany)中で乳化した組み換えpE22−160[pE(A)]又はキーホールリンペットへモシアニン(KLH)に共役されたpE41−68ペプチド200μgを用いて筋肉内投与でウサギに免疫付与し、不完全フロイントアジュバント中のタンパク質の同用量で第18日及び36日に免疫促進した。2から3週間後に採血した。CnBr−セファロースに共役されたpE(A)又は特異的pEペプチド(pE41−68)を用いて、得られたポリクローナル抗体をアフィニティークロマトグラフィーにより単離した(11)。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗−ヒトIgDはBiosource(Camarillo、CA)から入手した。ウサギ抗−ヒトIgD pAbはDakopatts(Gentofte、Denmark)から入手した。
【0224】
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合マウス抗−ヒトIgD、HRP標識ウサギ抗−ヒト軽鎖(κ及びλ)及びFITC−結合ブタ抗ウサギポリクローナル免疫グロブリンはDakopattsから購入した。
【0225】
タンパク質Eの抽出及び精製
NAD及びヘミン(Sigma、St.Louis、MO)を各10μg/mLずつ添加したブレインハートインフュージョン(BHI)培地(Difco Laboratories、Detroit、Mich.)中でH.インフルエンザb型(MinnA)を一晩増殖させた。2回洗浄した後、0.5%Empigen(R)(Calbiochem Novabiochem、Bedford、MA)を含有する0.05M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)中で細菌を抽出した。磁気撹拌装置により37℃で2時間、細菌懸濁液を混合した。4℃にて8000xgで20分間遠心した後、上清を滅菌フィルター(0.45μm;Sterivex−HV、Millipore)でろ過した。0.5%Empigen(R)中のH.インフルエンザ抽出物を6M尿素含有0.05M Tris−HCl(pH8.8)で平衡化したQ−セファロースカラム(Amersham Pharmacia Biotech)にかけた。同じ緩衝液中の0から1M NaClの直線的勾配を用いてカラムを溶出した。IgD(λ)骨髄腫血清により検出された分画を集め、0.05M Tris−HCl(pH8.8)に対してSpectraphorメンブレンチューブ(分子量カットオフ6−8,000;Spectrum、Laguna hills、CA)中で透析し、YM100ディスクメンブレン(分子量カットオフ10,000;Amicon 、Beverly、MA)で濃縮した。
【0226】
SDS−PAGE及び膜でのタンパク質の検出(ウェスタンブロット)
ランニング(MES)、試料(LDS)及び転写緩衝液ならびにNovexからのブロッティング装置(San diego、CA)とともに10%Bis−Trisゲルを用いて150Vの一定電圧でSDS−PAGEを行った。試料を一様に100℃で10分間加熱した。クーマシーブリリアントブルーR−250(13;Bio−Rad、Sundbyberg、Sweden)によりゲルを染色した。ゲルからイモビロン−P膜(Millipore、Bedford、MA)へのタンパク質バンドの電気泳動的転写を30Vで2から3時間行った。転写後、5%粉乳を含有する0.05%Tween20を添加したPBS(PBS−Tween)中でイモビロン−P膜をブロッキング処理した。PBS−Tween中で数回洗浄した後、2%粉乳を含有するPBS−Tween中の精製IgD骨髄腫タンパク質(0.5μg/mL、hu IgD(λ)骨髄腫;The Bindingsite)とともにこの膜を室温で1時間温置した。PBS−Tween中で数回洗浄した後、1/1000希釈したHRP結合ヤギ抗−ヒトIgDを添加した。室温で40分間温置し、PBS−Tween中でさらに数回洗浄した後、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)を用いて発色を行った。
【0227】
2次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2−D PAGE)及びウエスタンブロット
イオン交換クロマトグラフィー後、IPGphor IEFシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて、H.インフルエンザ(MinnA)のEmpigen(R)抽出物を等電点電気泳動(IEF)に供した(5、12)。ゲルでの検定のために、標準物質を使用した(カタログ番号161−0320;Bio−Rad)。Immobilon−PVDFフィルター(0.45mm;Millipore、Bedford、US)へと、2−Dポリアクリルアミドゲルを120mAで一晩電気的ブロッティングにより転写した。飽和後、温置、ブロッキング処理及び洗浄段階を上述のように行った。
【0228】
アミノ酸配列分析
Applied Biosystems(Foster City、CA)470ガス液体固体相シークエネーターを用いて自動化アミノ酸配列分析を行った。
【0229】
H.インフルエンザゲノムライブラリの構築
Berns及びThomasの変法(2、13)を使用することにより、株772から染色体DNAを調製した。簡潔に述べると、Sau3Aで1時間、部分的に消化したDNA40μgからH.インフルエンザ772ゲノムライブラリを構築した。切断されたDNAをスクロース勾配上で分画した(14)。適切なサイズ(2から7kbp)のDNA断片を含有する分画を集め、DNAをBamHI消化したpUC18に連結し、次いでGene pulser(Bio−Rad、Richmond、CA)を用いてエレクトロポレーションにより大腸菌JM83に形質転換した。アンピシリン及びX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド)を添加したLB寒天上に細菌を播種した。
【0230】
コロニー免疫アッセイ、DNA単離及び配列決定
寒天表面を乾いたフィルターで覆うことによって、LB寒天上で一晩培養したE.コリ形質転換体をニトロセルロースフィルター(Sartorius、Gottingen、Germany)に転写した。このプレートを15分間放置し、飽和クロロホルム蒸気に20分間曝露することにより、細胞を溶解した。オボアルブミンを含有するTris平衡塩類溶液(50mM Tris−塩酸塩、154mM NaCl、1.5%オボアルブミン[pH7.4])中で30分間フィルターを温置することにより、フィルター上の残りのタンパク質−結合部位をブロッキング処理した。ブロッキング処理後、ヒトIgD(λ)とともにこのフィルターを30分間温置した。洗浄後にHRP結合抗−ヒトIgDポリクローナル抗体を添加し、フィルターを30分間温置した。温置は全て室温で行った。最後に、4−クロロ−1−ナフトール及びH2O2を用いてフィルターを発色させた。陽性のクローンを拾い、NTHi772ゲノムDNAを含有するpUC18プラスミドDNAを精製した。隣接プライマーM13+及びM13−及びBigDye Terminator Cycle Sequencing v.2.0 Ready Reaction配列決定キット(Perkin−Elmer、Foster City、Ca)を用いて、得られたNTHi772DNA挿入物の配列決定を行った。得られた挿入配列(3.55kbp)は、タンパク質HI0175、HI0176、HI0177及び最後にHI0178(15)をコードするDNAを含有するストレッチに対応した。
【0231】
DNAクローニング及びタンパク質発現
PCR増幅断片を用いて、全コンストラクトを作製した。NTHi772ゲノムDNA(HI0175からHI0178)を含有するpUC18を鋳型として使用した。TaqDNAポリメラーゼはRoche(Manheim、Germany)からのものであり、PCR条件は、製造者により推奨されるものであった。4種類の予想されるタンパク質、HI0175からHI0178のオープンリーディングフレームをクローニングしたが、ここでは、HID(HI0178)のクローニングを述べる手順のみを記載した。pE22−160[pE(A)と称する。]は、アミノ酸残基グルタミン21を含む内在性シグナルペプチドを欠き、制限酵素部位、BamRI及びHindIIIを導入するプライマー5’−ctcaggatccaaaggctgaacaaaatgatgtg−3’及び5’−ggtgcagattaagcttttttttatcaactg−3’を用いてPCRにより増幅した。発現ベクターによりコードされる6個のヒスチジン残基を融合させるために、pE22−160終止コドンを突然変異させた。pe遺伝子の得られた417bpオープンリーディングフレームをpET26(+)(Novagen、Darmstadt、Germany)に連結した。推定される毒性を避けるために、得られたプラスミドを最初に宿主E.コリDH5αに形質転換した。その後、pE及びpE(A)をコードするプラスミドを発現宿主BL21(DE3)に形質転換した。全長pE及びpE(A)に加えて、一連の短縮型pE変異体を製造した。概略を図8で示す。BamHI及びHindIIIを含有するプライマーを全コンストラクトに対して使用した。短縮型変異体に対する手順は上述のとおりであった。BigDye Terminator Cycle Sequencing v.2.0 Ready reaction配列決定キット(Perkin−Elmer、Foster City、Ca)を用いて、全コンストラクトの配列決定を行った。
【0232】
組み換えタンパク質を作製するために、対数増殖期中期(OD600 0.6から0.8)まで細菌を増殖させ、次いで1mM イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)で誘導し、その結果、pE(A)の過剰発現が起こった。OD600が1.5から1.7に到達したときに細菌を回収し、標準的プロトコールに従い封入体を単離した。ニッケルカラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより組み換えタンパク質をさらに精製し得る。精製した組み換えタンパク質を続いてSDS−PAGEで分析した。
【0233】
H.インフルエンザDNA精製、PCR条件及び配列決定
DNeasy Tissue kit(Qiagen、Hilden、Germany)を用いてH.インフルエンザ臨床分離株からのゲノムDNAを単離した。TaqDNAポリメラーゼは、Roche(Mannheim、Germany)からのものであり、PCR条件は製造者により推奨されるものであった。pE遺伝子を単離するために、プライマーペア5’−gcatttattaggtcagtttattg−3’及び5’−gaaggattatttctgatgcag−3’(これらは、それぞれ、隣接遺伝子HI077、HI0179にアニーリングする。)を使用した。プライマー5’−cttgggttacttaccgcttg−3’及び5’−gtgttaaacttaacgtatg−3’に加えて上述のプライマーを用いて遺伝子歩行により、得られたPCR産物(948bp)の配列決定を行った。ダイターミネーターサイクル配列決定キット(CEQ DTCSキット、Beckman Coulter、Stockholm、Sweden)を用いてBeckman CEQ2000においてキャピラリー電気泳動を行った。PHRED(CodonCode、Deadham、USA)及びSEQUENCHER(MedProbe、Oslo、Norway)を用いて、得られたDNA配列の編集及びアラインメントを行った。
【0234】
pE欠失H.インフルエンザ(NTHi 3655 Δpe)の作製
NTHi 772から単離されたゲノムDNAを鋳型として使用した。2つのカセットにおいて特異的な取り込み配列に加えて、それぞれ制限酵素部位XhoIとEcoRI、及びEcoRIとSpEIを導入するDyNAzymeTMII DNAポリメラーゼ(Finnzymes、Espoo、Finland)を用いて、遺伝子HI0177及びHI0179の一部を含むpeの5’−及び3’−末端を2つのカセット(それぞれ815bp及び836bp)として増幅した(18)。得られたPCR断片を消化し、pBluescript SK(+/−)にクローニングした。EcoRIに対する制限酵素部位を用いてpUC4Kからカナマイシン耐性遺伝子カセット(1282bp)を得た。消化後、HI0177及びHI0179遺伝子の一部を含有する短縮型pe遺伝子断片にPCR産物を連結した。HeriottらのM−IV法(19)に従い、H.インフルエンザ株Eagan及びRM804を形質転換した。得られた突然変異体をPCRにより確認し、ウエスタンブロット及びフローサイトメトリーによりpE発現を分析した。
【0235】
分子生物学ソフトウェア
利用可能なH.インフルエンザKW20ゲノムと得られた配列を比較した(http://www.tigr.org)(15)。SignalP Vl.1 World Wide Web Prediction Server Center for Biological Sequence Analysis(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)(16)を用いてシグナルペプチドを推定した。Kyte及びDoolittleの方法(17)により、pEの疎水性プロファイルを分析した。
【0236】
動物、手術手順及びラット中耳炎モデル
体重200から250gの健常な雄Sprague−Dawleyラットを使用した。動物は全て、手術前に耳顕微鏡で観察したところ、中耳感染はなかった。診療において、ラットをメトヘキシタール(Brietal(R)、Elli Lilly and Company、Indianapolis、NI)で静脈内投与により、又は抱水クロラール(apoteksbolaget、Lund、Sweden)で腹腔内投与により麻酔した。動物実験のための細菌を上述のように培養した。遠心により回収した後、NTHi 3655及び対応するpE突然変異体の両方に対して、新鮮な培地中で2x1010コロニー形成単位(cfu)の濃度になるように細菌を懸濁した。調製物を使用まで氷上で保存した。急性中耳炎(AOM)を誘発するために、頸部を腹側正中切開して中耳に到達するようにし、細菌懸濁液およそ0.05mLを中耳腔に染み込ませた。術後第3日及び第5日に耳顕微鏡により観察を行った。第3日に化膿性滲出液、即ち不透明な滲出液、及びしばしば著しい器官の膨張がある中耳炎をAOMとした。
【0237】
結果
IgD(λ)骨髄腫血清により検出されるH.インフルエンザタンパク質(pE)の抽出及び分離
以前、型別不能 H.インフルエンザ(NTHi)はIgDに結合せず(19)、一方、莢膜性H.インフルエンザはIgDに強く結合すると考えられてきた。発明者らは、IgD(λ)骨髄腫血清がNTHiにも特異的に結合することを発見した。NTHi772の典型的なフローサイトメトリープロファイルを図1で示す。IgDなしの対照と比較して、IgD(λ)骨髄腫タンパク質存在下で強いシフト及び蛍光の増強が見られた。
【0238】
IgD(λ)骨髄腫により検出されたH.インフルエンザ外膜タンパク質を詳細に分析するために、外膜分画を界面活性剤Empigen(R)中で可溶化した。図1Bは、およそ16kDaの見かけの分子量を有するタンパク質に対するウエスタンブロットにおいて非常に強いIgD結合活性が得られたことを示す。しかし、IgD結合活性に対応する明瞭なタンパク質バンドをクーマシーブリリアントブルー染色SDS−PAGEで検出することはできなかった。Q−セファロースカラムでの分離後、同じ外膜抽出物を2次元ゲル電気泳動及び銀染色に供した(図1C)。平行して、ヒトIgD(λ)をプローブとして用いた対応するウエスタンブロットを行った。このように、pEが局在した部分を丸で囲むことができた。しかし、見えるタンパク質は観察されなかった(図1C)。
【0239】
タンパク質Eのクローニング及びpEを欠く型別不能H.インフルエンザ突然変異体の作製
分離後、2−D分析でタンパク質を全く検出することができなかったので、型別不能H.インフルエンザ(NTHi)株772を用いてH.インフルエンザDNAライブラリを構築した。2から7kbpの範囲の断片を含有するゲノムDNAをpUC18に連結し、続いてE.コリJM83へと形質転換した。ヒトIgD(λ)及びHRP結合抗−ヒトIgDポリクローナル抗体からなるコロニー免疫アッセイを用いて、IgD結合について形質転換体を分析した。試験した20,000個のコロニーから3個の陽性のコロニーを見出し、IgD(λ)を用いた第2回目のスクリーニングに供した。発明者らは、陽性コロニーのうち1個の配列決定を行い、H.インフルエンザKW20(15)の物理的地図に従う4個のタンパク質HI0175からHI0178をコードするDNAを含有する3.55kb挿入断片を見出した。IgD(λ)との特異的な相互作用をさらに確認するために、選択した形質転換体をフローサイトメトリーによっても分析した。図2Bで見ることができるように、空のベクターのみで形質転換した陰性対照E.コリと比較した際に、HI0175からHI0178をコードする配列に対応するH.インフルエンザ772ゲノムDNAを有するE.コリJM83をIgD(λ)により検出した(図2A)。
【0240】
E.コリJM83クローンの分析に加えて、4種類のH.インフルエンザタンパク質(HI0175からHI0178)を発現ベクターpET26(+)にクローニングし、E.コリBL21D3において産生させた。得られた組み換えタンパク質をウエスタンブロット上でIgD(λ)により分析し、HI0178がIgD(λ)により検出される唯一のタンパク質であることが分かった(データは示さない。)。
【0241】
pEをコードする遺伝子においてカナマイシン耐性遺伝子カセットを導入することにより、型別不能H.インフルエンザ(NTHi 3655)を突然変異させた。得られた突然変異体をPCRによって確認し、特異的抗−pE抗血清を用いたウエスタンブロットでの外膜タンパク質の分析によってpE発現がないことが証明された(データは示さない。)。NTHi 3655Δpe突然変異体もフローサイトメトリーよって試験し、ウサギ抗−pE一価抗血清及びFITC−結合ヤギ抗−ウサギ二次pAbで分析した際に、対応するNTHi 3655野生型と比較して、突然変異によって蛍光が明らかに低下していることが分かった(図2C及びD)。
【0242】
全H.インフルエンザでタンパク質Eを検出したが、一方、その他の種は陰性であった。
【0243】
NTHiの臨床単離株及び標準株のpE発現を分析するために、発明者らは、IgD(λ)血清及びヒトIgDに対するFITC−結合二次抗体からなる直接結合フローサイトメトリーアッセイを開発した。最初の実験において、様々な時点で回収した細菌をpE発現について分析した。対数増殖期又は静止期の細菌の間でpE発現について相違は観察されず、このことから、NTHi表面pEが増殖期には依存していないことが示唆された。従って、全てのさらなる分析において静止期の細菌を使用した。細菌細胞あたりの平均蛍光強度(mfi)を分析し、全部で22種類のNTHi株を発明者らの実験に取り入れた。検出抗体としてIgD(λ)骨髄腫血清を用いたこの特定のアッセイにおいて大部分のNTHiでpEが検出されたが、蛍光強度はNTHi株によって様々であった(図3)。
【0244】
その他の実験において、表面露出pEの検出のために特異的ウサギ抗−pE抗体を使用した。特異的抗−pE抗血清は、H.インフルエンザ、H.エジプチクス(H.aegypticus)及びH.ヘモリチクス(H.haemolyticus)の莢膜性株においてもpEを特異的に認識した(データは示さない。)。
【0245】
pE発現レベルをさらに分析するために、検出抗体としてIgD(λ)を用いてウエスタンブロットにおいて様々なヘモフィルス種のEmpigen(R)処理外膜抽出物を試験した(表1)。これらの実験において、高発現及び低発現ヘモフィルス株の間で差は見られず、即ち、ウエスタンブロットにおいて、全ての株が、同じ強度及び16kDaに相当する同じ位置で、pEを示した。ウエスタンブロットにより明らかなように、莢膜性H.インフルエンザ(a型からf型)もpEを発現した(表1)。例えば、4種類のH.インフルエンザ莢膜b型(Hib)におけるpE発現を図4でNTHiと比較する。H.エジプチクス及びH.ヘモリチクスはpEを発現したが(表1)、一方、その他の関連ヘモフィルス種については、フローサイトメトリーにおいて陰性であり(図3)、ウエスタンブロット分析においてpEは検出されなかった。特異的抗−pE抗血清は莢膜性株においてもpEを特異的に認識した(データは示さない。)。
【0246】
【表1】
【0247】
組み換え産生されたpE22−160[pE(A)]はIgD(λ)により検出される。
【0248】
最初の実験において、発明者らは、pEの組み換え産生を試みたが、低濃度しか得られなかった。タンパク質収率を最大にするために、アミノ酸残基リジン22からリジン160からなる短縮型pE断片を構築した。このように、アミノ酸グルタミン21を含むN−末端シグナルペプチドを除去し、ベクターpET26(+)由来の9個の残基に加えてリーダーペプチドで置換した(図5A)。短縮型pE22−160をpE(A)と名付けた(図5B)。組み換えタンパク質産物が「野生型」pEに対応することを確認するために、プローブとしてIgD(λ)を使用して、NTHi772から単離したpEとともに組み換え発現させたpE(A)をSDS−PAGE及びウエスタンブロットにより分析した。図5Dで示されるように、組み換えpE(A)はSDS−PAGEにおいて野生型pEにはっきりとに対応した。さらに、E.コリで産生されたpE(A)は、IgD(λ)抗血清によって0.01μg単位まで検出することができた(図5E)。
【0249】
ウサギの免疫付与のためにpE(A)を使用し、材料及び方法で詳述したような免疫付与計画を完遂後、計算した免疫優勢ペプチド(アミノ酸pE1−68)からなるカラムで抗−pE抗血清を精製した。得られた抗体は、細菌表面(図2C)及びウエスタンブロット(示さない。)の両方で、明らかにpEを検出した。
【0250】
タンパク質e遺伝子のDNA配列及びオープンリーディングフレーム
株NTHi 772からのpE1−160のDNA及びアミノ酸配列を図6で概説する。オープンリーディングフレーム(ORF)は160アミノ酸長であり、予想されるシグナルペプチドの長さは20アミノ酸である。コンピュータ分析から、シグナルペプチダーゼがアミノ酸残基アラニン18からリジン22を認識し、残基イソロイシン20とグルタミン21との間で切断することが示唆された(38)。平行して、HIDハイドロパシープロファイル(39)から、pEが疎水性シグナルペプチドを有し、一方、その分子の残りの部分は主に親水性であることが分かる(図7)。
【0251】
シグナルペプチダーゼ切断部位を詳しく調べるために、組み換え全長pEをエドマン分解に供した。しかし、おそらくpEポリペプチド鎖のアミノ末端が封鎖されていた。この失敗に対して考えられる説明は、タンパク質のM.カタラーリス UspAファミリーに対して以前記載されているように、第一のアミノ酸がピログルタミル残基であったことであろう(11)。しかし、ピログルタメートアミノぺプチダーゼによりこの推定残基を除去する試みは失敗した。全長pE1−160と対照的に、内在性H.インフルエンザシグナルペプチドを欠くpE(A)(pE22−160)に対するN−末端配列(図5)は、エドマン分解によりうまく特性が明らかになり、予想されるベクター配列を含有する、即ちE.コリのシグナルペプチダーゼが正しい位置で切断したことが分かった(図5A)。
【0252】
NTHi及び莢膜性H.インフルエンザを含む一連の様々なヘモフィルス種のタンパク質の配列を決定した(表1)。興味深いことに、pEは非常によく保存されていた。数個のアミノ酸のみが点突然変異を起こしており、特異的なパターンに従い、これらは殆どの株で突然変異していた(図6及び表2)。
【0253】
【表2】
【0254】
pEの様々な断片はE.コリにおいて容易に産生させることができる。
【0255】
全長pE由来の8個のcDNA配列をpET26b(+)にクローニングし、E.コリで発現させた。ヒスチジンタグに対する親和性があるニッケルレジンにおいて、得られたタンパク質を精製した(図8)。組み換えタンパク質は、成熟pEタンパク質産物全体を包含し、それらの個々の長さ及び位置は図8Aで示されるとおりであり、精製産物は図8Bで概説する。
【0256】
pEはラット急性中耳炎(AOM)において決定的な毒性因子である。
【0257】
NTHiに対する毒性因子としてのpEの役割を調べるために、ラットの中耳に105から109個のNTHi 3655 Δpe又は対応する野生型NTHi 3655を接種した(図9)。興味深いことに、野生型細菌と比較した場合、同様のAOMを誘発するためには、100から1,000倍を超えるNTHi 3655Δpeが必要であった。従って、pEはNTHi−誘発性AOMに対する決定的な毒性因子である。
【0258】
pEは規定の集団において免疫原性が高い。
【0259】
小児及び血液ドナーにおける抗体レベルを測定するために、E.コリから組み換えpE(A)を精製し(図5B)、ELISAで使用した。pE(A)に対する抗体のELISA分析の結果を図9で示す。6ヶ月齢未満の小児では、pE(A)に対してIgG及びIgAが検出可能であった。5歳から10歳までの小児でIgG抗体はピークレベルを示した。一方、IgA抗体は年齢が上がるとともに徐々に上昇し、最大値は70歳から80歳の群で検出された。
【0260】
有用なエピトープ
タンパク質のB−細胞エピトープは主にその表面に局在する。タンパク質EポリペプチドのB−細胞エピトープを予測するために、2D−構造予想及び抗原性指数予想の2種類の方法を組み合わせた。2D−構造予想は、PSIPREDプログラム(David Jones、Brunei Bioinformatics Group、Dept.Biological Sciences、Brunei University、Uxbridge UB8 3PH、UKより)を用いて行った。抗原性指数は、Jameson及びWolf(CABIOS 4:181−186[1988])によって述べられた方法に基づいて計算した。このプログラムで使用したパラメーターは抗原性指数及び抗原性ペプチドに対する最小限度の長さであった。最小で5個の連続アミノ酸に対する0.9という抗原性指数をプログラムにおいて閾値として使用した。良好で可能なB−細胞エピトープを含むペプチドを表3で挙げる。ntHi感染を予防するためのワクチン組成物において、これらは有用であり得(好ましくは、より大きいタンパク質に共役又は組み換え連結されている。)、保存的突然変異(表3の配列に対して好ましくは70、80、85、95、99又は100%同一)又はそれらからの5以上(例えば、6、7、8、9、10、11、12、15、20又は25)のアミノ酸を含む短縮型又は、タンパク質Eポリペプチドに対して宿主において免疫反応を誘発できる有効なエピトープが保存されている、タンパク質E(上記表2で示されるような配列番号1又はその天然の相同体)ポリペプチドの天然の状態からのペプチドのN及び/又はC末端に例えば、1、2、3、5、10個のさらなるアミノ酸を含む延長型を含む、類似のペプチドも同様である。
【0261】
【表3】
【0262】
結論
表面露出ヘモフィルス外膜タンパク質pEは、NTHi誘発性AOMに対する決定的な毒性因子であり、規定の集団において高い免疫原性があり、従って、様々なヒト疾患に対する非常に適切なワクチン候補である。
【0263】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】16.3kDaヘモフィルス・インフルエンザタンパク質EをIgD(λ)骨髄腫タンパク質により検出する。Aにおいて、H.インフルエンザ772におけるpE発現のフローサイトメトリー分析を示す。H.インフルエンザMinnAのEmpigen(R)処理外膜タンパク質のSDS−PAGE及びウエスタンブロット(B)及び二次元−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析(C)を示す。外膜タンパク質抽出物のQ−セファロースでの分離の前(B)及び後(C)を示す。パネルCの矢印は、対応するゲルのウエスタンブロット(プローブとしてIgD(λ)を使用。)に基づくpEに対する予想位置を示す。Aにおいて、IgD(λ)骨髄腫タンパク質とともに細菌を添加し、次いでウサギFITC−結合抗−IgD pAbとともに温置し、フローサイトメトリー分析を行った。Bにおいて、クーマシーブルー染色SDS−ゲル(染色)及び、ヒト骨髄腫IgD(λ)を用い、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗−ヒトIgDポリクローナル抗体とともに温置して行ったウエスタンブロットを示す。添加前に10分間、2−メルカプトエタノール存在下で試料を煮沸した。
【図2】pE−発現E.コリのフローサイトメトリープロファイルを、H.インフルエンザ3655野生型及びpE欠損突然変異体と比較した。空のpUC18ベクターを有するE.コリ(A)を、H.インフルエンザ772(遺伝子HI0175からH10178)由来のゲノムDNAを含有するpUC18で形質転換した細菌(B)と比較する。型別不能H.インフルエンザ3655野生型(C)及び対応する突然変異体(D)でのpE発現を示す。液体培養中で一晩、E.コリ株JM83及びH.インフルエンザを増殖させた。E.コリをヒト骨髄腫IgD(λ)とともに氷上で温置した。1時間及び洗浄後、FITC−結合ウサギ抗−ヒトIgD pAbをさらに30分間添加し、次いで、洗浄段階及び続くフローサイトメトリー分析を行った。特異的なウサギ抗−pEポリクローナル抗体及びFITC−結合ヤギ抗−ウサギpAbを使用して、H.インフルエンザ3655又は派生pE突然変異体を用いて同じ手順を行った。
【図3】フローサイトメトリー及びIgD(λ)骨髄腫血清により明らかにされる場合の、H.インフルエンザ及び関連種のpE発現。NTHiの22種の株及びヘモフィルス種の27種の株又は関連細菌を分析した。氷上でヒト骨髄腫IgD(λ)とともに静止期まで細菌を培養し、温置した。1時間及び洗浄後、FITC−結合ウサギ抗−ヒトIgDポリクローナル抗体(pAb)をさらに30分間添加し、次いで洗浄段階及び続くフローサイトメトリー分析を行った。
【図4】ウエスタンブロットにより明らかとなるように、NTHi及び莢膜性H.インフルエンザにおいてpEが発現される。Empigen(R)を用いて指定した株からの細菌性タンパク質を調製し、SDS−ゲルに供し、次いで、ウエスタンブロットを行い、ヒト骨髄腫IgD(λ)及び検出抗体としてホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗−ヒトIgDポリクローナルpAbを用いて調べた。
【図5】H.インフルエンザMinnA由来のネイティブpEと比較した場合の、NTHi772由来の配列に基づく組み換えpE22−160。Aにおいて、pE由来断片Aのアミノ末端配列をネイティブタンパク質pEの予想されるアミノ末端配列と比較した。Bにおいて、ヒスチジンタグ付きのpE(A)の概略図を示す。Cにおいて、クーマシー染色PAGEでの大きさ及び純度を示す。D及びEにおいて、クーマシー染色ゲル及びウエスタンブロットで、それぞれ、H.インフルエンザMinnAからの外膜タンパク質(OMP)抽出物を組み換え産生pE(A)と比較する。Aにおいて、アミノ酸残基グルタミン21に加えて、シグナルペプチド配列を除去した。9個のアミノ酸は、示されるように発現ベクターpET2β(+)由来であった。数は、pEの翻訳開始から始まるアミノ酸位置を表す。E.コリにおいて組み換えpE(A)を産生させ、精製し、シグナルペプチダーゼ切断部位を分析するためにエドマン分解に供した。D及びEにおいて、2つのゲルを同時に流し、一方はクーマシーブリリアントブルーで染色し、一方はImmobilon−P膜上にブロットし、ヒトIgD(λ)骨髄腫タンパク質を用い、次いで適切なホースラディッシュペルオキシダーゼ共役二次抗体とともに温置して調べた。材料及び方法に記載のようにEmpigen(R)を用いてOMP断片を精製した。
【図6】タンパク質Eは非常によく保存されている。莢膜性及び型別不能単離株の両方を含む13から31のヘモフィルス・インフルエンザ株における点突然変異の頻度(表2)を示す。隣接プライマーを用いた配列決定によって結果を得た。参照配列として使用するH.インフルエンザRdのpE配列と全配列を比較し、ここで示す。
【図7】pEのハイドロパシープロファイル。個々のアミノ酸残基の疎水性及び親水性部分を示す。予想されるシグナルペプチドも概説する。記載のような標準的方法(21)を使用することにより、データを得た。
【図8】組み換えpE22−160(断片A)及びBからHと称する一連の短縮型断片を示すSDS−PAGE。Aにおいて、様々な断片の概略を示し、一方、Bにおいて、SDS−PAGEを示す。様々なタンパク質をコードするDNAを発現ベクターpET26(+)に連結し、E.コリで組み換え発現させた。得られた過剰発現タンパク質をニッケルレジン上で精製し、SDS−PAGEでの分離に供し、次いでクーマシーブリリアントブルー染色を行った。
【図9】pE欠失突然変異株(NTHi 3655)のラットにおける急性中耳炎誘発能は100から1,000倍低い。頸部を腹側正中で切開し、次いで0.05mLの指示された数の細菌を中耳腔に注入することによって雄Sprague−Dawleyラットにおいて感染を誘発した。示されるデータは感染誘発第3日からのものであり、各群の5匹の動物の代表である。
【図10】様々な齢群からの血清における、pEに対するIgG及びIgA抗体の平均濃度。ベート(bate)として組み換えpE(A)を用いて、サンドイッチELISAにより、抗−pE抗体を分析した。pE(A)の純度は図5で示されるとおりであった。
【図11】様々なヘモフィルス株内でpEは非常によく保存されている。隣接プライマーを用いて、莢膜性H.インフルエンザ a型(n=2)、b型(n=2)、c型(n=2)、d型(n=1)、e型(n=2)及びf型(n=3)、NTHi(n=8)、H.インフルエンザ次亜種エジプチクス(aegypticus)(n=6)及びH.エジプチクス(n=5)において、pE遺伝子の配列決定を行った。RdはH.インフルエンザ株Rd(Hi0178)及び772と称し、772はNTHi株772である。番号65から577は表1で概説する株に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)中で検出され得、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する表面露出タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項2】
ヘモフィルス・インフルエンザ中で検出され得る、請求項1に記載の表面露出タンパク質の免疫原性断片又は天然に生じるかもしくは人工的に修飾したその変異体。
【請求項3】
配列番号1の位置1から21のアミノ酸が欠失しているか又は1つ以上のアミノ酸により置換されている、請求項1に記載のタンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク質。
【請求項4】
配列番号1の位置1から21のアミノ酸が0から21個の任意のアミノ酸の配列により置換されている、請求項3に記載の組み換え免疫原性タンパク質。
【請求項5】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項3又は請求項4に記載の組み換え免疫原性タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物もしくは、ヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項6】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項7】
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項8】
配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項9】
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項10】
配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項11】
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項12】
配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項13】
配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項14】
感染の予防又は治療用の薬剤の製造のための、請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドの使用。
【請求項15】
感染がヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)によって引き起こされる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)が莢膜性又は型別不能である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している小児及び成人における、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染の予防又は治療のための、請求項14から16の何れか一項に記載の使用。
【請求項18】
請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチド及び1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物と、を含む、薬剤。
【請求項19】
請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドを含む、ワクチン組成物。
【請求項20】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの、少なくとも1つの二量体、三量体又は多量体を含む、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物をさらに含む、請求項19又は20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのさらなるワクチンを含む、請求項19から21の何れか一項に記載のワクチン組成物
【請求項23】
別の分子の免疫原性部分を含む、請求項19から22の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
別の分子の免疫原性部分が、H.インフルエンザのタンパク質D、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のMID、モラクセラ・カタラーリスのUspA1又はUspA2及び任意の気道病原体の外膜タンパク質を含む群から選択される、請求項23に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドをコードする核酸配列、ならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体。
【請求項26】
少なくとも1つの別の遺伝子に融合された、請求項25に記載の核酸配列を含む組み換え核酸配列。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の核酸配列を含む、プラスミド又はファージ。
【請求項28】
少なくとも1つの請求項27に記載のプラスミドを含み、請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドを産生することができる、非ヒト宿主(該宿主は、細菌、酵母及び植物の中から選択される。)。
【請求項29】
E.コリである、請求項28に記載の宿主。
【請求項30】
請求項26に記載の組み換え核酸配列を使用することによって、請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドが、少なくとも1つの別のタンパク質と組み合わされている、融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項31】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの、二量体、三量体又は多量体である、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドが、共有結合によって又は任意のその他の手段によって、タンパク質、炭水化物又はマトリクスに結合している、融合産物。
【請求項33】
請求項30に記載の融合タンパク質もしくはポリペプチド又は請求項31に記載の融合産物を含む、請求項18に記載の薬剤又は請求項19から24の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの単離の方法であり、
a)該タンパク質、断片又はペプチドをコードするDNAを含むヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)又はE.コリを増殖させ、細菌を回収し、及び外膜又は封入体を単離し;
b)強い可溶化剤で封入体を可溶化し;
c)再生剤を添加し;並びに
d)得られた懸濁液を8から10のpHの緩衝液に対して透析する
段階を含む、前記方法。
【請求項35】
可溶化剤がグアニジン塩酸塩である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
再生剤がアルギニンである、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
請求項18に記載の薬剤又は請求項19から23の何れか一項に記載のワクチン組成物の医薬的有効量を投与することを含む、個体において感染を予防又は治療する方法。
【請求項38】
配列番号1の全長にわたり配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項39】
アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項38に記載の単離ポリペプチド。
【請求項40】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項41】
配列番号1の単離ポリペプチド。
【請求項42】
配列番号1がシグナルペプチド(アミノ酸1−20)を欠く、請求項40又は41に記載のポリペプチド。
【請求項43】
配列番号1が位置20においてIleの代わりにThrを有する、請求項40又は41に記載のポリペプチド。
【請求項44】
配列番号1が位置23においてAlaの代わりにValを有する、請求項40から43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
配列番号1が位置24においてLysの代わりにGlnを有する、請求項40から44に記載のポリペプチド。
【請求項46】
配列番号1が位置28においてValの代わりにMetを有する、請求項40から45に記載のポリペプチド。
【請求項47】
配列番号1が位置31においてAlaの代わりにThrを有する、請求項40から46に記載のポリペプチド。
【請求項48】
配列番号1が位置41においてIleの代わりにValを有する、請求項40から47に記載のポリペプチド。
【請求項49】
配列番号1が位置47においてValの代わりにAlaを有する、請求項40から48に記載のポリペプチド。
【請求項50】
配列番号1が位置76においてArgの代わりにLysを有する、請求項40から49に記載のポリペプチド。
【請求項51】
配列番号1が位置107においてIleの代わりにValを有する、請求項40から50に記載のポリペプチド。
【請求項52】
配列番号1が位置152においてGlyの代わりにLysを有する、請求項40から51に記載のポリペプチド。
【請求項53】
配列番号1が位置154においてAlaの代わりにValを有する、請求項40から52に記載のポリペプチド。
【請求項54】
配列番号1がそのC末端においてさらなるアミノ酸配列、Ser Ala Proを有する、請求項40から53に記載のポリペプチド。
【請求項55】
配列番号1が位置32においてProの代わりにValを有する、請求項40から54に記載のポリペプチド。
【請求項56】
配列番号1が位置32においてProの代わりにAlaを有する、請求項40から55に記載のポリペプチド。
【請求項57】
配列番号1のアミノ酸配列からの又は請求項40から55のポリペプチドからの少なくとも15個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列を含む免疫原性断片(該断片は(必要に応じて担体に連結される場合)、配列番号1のポリペプチド(又はそれぞれ請求項40から55のポリペプチド)を認識する免疫反応を生じさせることができるか又はヒトIgDに結合することができる。)。
【請求項58】
請求項38から58の何れかに記載のポリペプチド又は免疫原性断片(該ポリペプチド又は該免疫原性断片は、より大きい融合タンパク質の一部である。)。
【請求項59】
請求項38から58の何れかに記載のポリペプチド又は免疫原性断片をコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項60】
配列番号1の全長にわたり配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項61】
コード領域全体にわたり配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項62】
配列番号11の全長にわたり配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。
【請求項63】
配列番号11に対して同一性が少なくとも95%である、請求項59から62の何れか一項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項64】
配列番号1のポリペプチド又は請求項57もしくは58の免疫原性断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項65】
配列番号11のポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項66】
配列番号11の配列又はその断片を有する標識プローブとのストリンジェントなハイブリッド形成条件下で適切なライブラリをスクリーニングすることにより得ることができる、配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項67】
請求項59から66の何れか一項に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、発現ベクター又は生きている組み換え微生物。
【請求項68】
請求項67に記載の発現ベクターを含む生きている組み換え微生物。
【請求項69】
請求項67の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項70】
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドを発現する、請求項66に記載の宿主細胞の膜。
【請求項71】
請求項38から58のポリペプチド又は免疫原性断片を産生させるための方法であり、該ポリペプチド又は免疫原性断片の産生に十分な条件下で請求項69の宿主細胞を培養すること、及び培地からポリペプチドを回収することを含む、前記方法。
【請求項72】
請求項59から66の何れか一項のポリヌクレオチドを発現させるための方法であり、該ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む発現ベクターにより宿主細胞を形質転換すること、及び該ポリヌクレオチドの何れか1つの発現に十分な条件下で該宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項73】
請求項38から58の何れか一項のポリペプチド又は免疫原性断片の有効量及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項74】
請求項59から66の何れか一項のポリヌクレオチドの有効量及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項75】
少なくとも1つの別のヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)抗原を含む、請求項73又は74の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項76】
請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片に対して生成された抗体。
【請求項77】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)感染を診断する方法であり、かかる感染を有する疑いのある動物由来の生体試料内に存在する、請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片又は該ポリペプチドに免疫特異的である抗体を同定することを含む、前記方法。
【請求項78】
動物において免疫反応を生じさせることにおける使用のための薬剤の調製における、請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片の免疫学的有効量を含む組成物の使用。
【請求項79】
動物において免疫反応を生じさせることにおける使用のための薬剤の調製における、請求項59から66の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの免疫学的有効量を含む組成物の使用。
【請求項80】
請求項38から58に記載のポリペプチド又は免疫原性断片に対する少なくとも1つの抗体及び適切な医薬賦形剤を含む、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)疾患を有するヒトを治療することに有用な治療用組成物。
【請求項1】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)中で検出され得、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する表面露出タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項2】
ヘモフィルス・インフルエンザ中で検出され得る、請求項1に記載の表面露出タンパク質の免疫原性断片又は天然に生じるかもしくは人工的に修飾したその変異体。
【請求項3】
配列番号1の位置1から21のアミノ酸が欠失しているか又は1つ以上のアミノ酸により置換されている、請求項1に記載のタンパク質に基づく組み換え免疫原性タンパク質。
【請求項4】
配列番号1の位置1から21のアミノ酸が0から21個の任意のアミノ酸の配列により置換されている、請求項3に記載の組み換え免疫原性タンパク質。
【請求項5】
配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項3又は請求項4に記載の組み換え免疫原性タンパク質又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物もしくは、ヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項6】
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項7】
配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項8】
配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項9】
配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項10】
配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項11】
配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項12】
配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項13】
配列番号10に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその、断片、相同体、機能的同等物、誘導体、変性物又はヒドロキシル化、スルホン化もしくはグリコシル化産物又はその他の二次的プロセシング産物。
【請求項14】
感染の予防又は治療用の薬剤の製造のための、請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドの使用。
【請求項15】
感染がヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)によって引き起こされる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)が莢膜性又は型別不能である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患している小児及び成人における、中耳炎、副鼻腔炎又は下気道感染の予防又は治療のための、請求項14から16の何れか一項に記載の使用。
【請求項18】
請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチド及び1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物と、を含む、薬剤。
【請求項19】
請求項1から13の何れか一項に記載の少なくとも1つのタンパク質、断片又はペプチドを含む、ワクチン組成物。
【請求項20】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの、少なくとも1つの二量体、三量体又は多量体を含む、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
1つ以上の医薬的に許容可能なアジュバント、ビヒクル、賦形剤、結合剤、担体、保存料、緩衝剤、乳化剤、湿潤剤又は形質移入促進化合物をさらに含む、請求項19又は20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
少なくとも1つのさらなるワクチンを含む、請求項19から21の何れか一項に記載のワクチン組成物
【請求項23】
別の分子の免疫原性部分を含む、請求項19から22の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
別の分子の免疫原性部分が、H.インフルエンザのタンパク質D、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)のMID、モラクセラ・カタラーリスのUspA1又はUspA2及び任意の気道病原体の外膜タンパク質を含む群から選択される、請求項23に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドをコードする核酸配列、ならびにその相同体、多形体、変性物及びスプライシング変異体。
【請求項26】
少なくとも1つの別の遺伝子に融合された、請求項25に記載の核酸配列を含む組み換え核酸配列。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の核酸配列を含む、プラスミド又はファージ。
【請求項28】
少なくとも1つの請求項27に記載のプラスミドを含み、請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドを産生することができる、非ヒト宿主(該宿主は、細菌、酵母及び植物の中から選択される。)。
【請求項29】
E.コリである、請求項28に記載の宿主。
【請求項30】
請求項26に記載の組み換え核酸配列を使用することによって、請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドが、少なくとも1つの別のタンパク質と組み合わされている、融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項31】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの、二量体、三量体又は多量体である、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドが、共有結合によって又は任意のその他の手段によって、タンパク質、炭水化物又はマトリクスに結合している、融合産物。
【請求項33】
請求項30に記載の融合タンパク質もしくはポリペプチド又は請求項31に記載の融合産物を含む、請求項18に記載の薬剤又は請求項19から24の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項34】
請求項1から13の何れか一項に記載のタンパク質、断片又はペプチドの単離の方法であり、
a)該タンパク質、断片又はペプチドをコードするDNAを含むヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)又はE.コリを増殖させ、細菌を回収し、及び外膜又は封入体を単離し;
b)強い可溶化剤で封入体を可溶化し;
c)再生剤を添加し;並びに
d)得られた懸濁液を8から10のpHの緩衝液に対して透析する
段階を含む、前記方法。
【請求項35】
可溶化剤がグアニジン塩酸塩である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
再生剤がアルギニンである、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
請求項18に記載の薬剤又は請求項19から23の何れか一項に記載のワクチン組成物の医薬的有効量を投与することを含む、個体において感染を予防又は治療する方法。
【請求項38】
配列番号1の全長にわたり配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項39】
アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有する、請求項38に記載の単離ポリペプチド。
【請求項40】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項41】
配列番号1の単離ポリペプチド。
【請求項42】
配列番号1がシグナルペプチド(アミノ酸1−20)を欠く、請求項40又は41に記載のポリペプチド。
【請求項43】
配列番号1が位置20においてIleの代わりにThrを有する、請求項40又は41に記載のポリペプチド。
【請求項44】
配列番号1が位置23においてAlaの代わりにValを有する、請求項40から43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
配列番号1が位置24においてLysの代わりにGlnを有する、請求項40から44に記載のポリペプチド。
【請求項46】
配列番号1が位置28においてValの代わりにMetを有する、請求項40から45に記載のポリペプチド。
【請求項47】
配列番号1が位置31においてAlaの代わりにThrを有する、請求項40から46に記載のポリペプチド。
【請求項48】
配列番号1が位置41においてIleの代わりにValを有する、請求項40から47に記載のポリペプチド。
【請求項49】
配列番号1が位置47においてValの代わりにAlaを有する、請求項40から48に記載のポリペプチド。
【請求項50】
配列番号1が位置76においてArgの代わりにLysを有する、請求項40から49に記載のポリペプチド。
【請求項51】
配列番号1が位置107においてIleの代わりにValを有する、請求項40から50に記載のポリペプチド。
【請求項52】
配列番号1が位置152においてGlyの代わりにLysを有する、請求項40から51に記載のポリペプチド。
【請求項53】
配列番号1が位置154においてAlaの代わりにValを有する、請求項40から52に記載のポリペプチド。
【請求項54】
配列番号1がそのC末端においてさらなるアミノ酸配列、Ser Ala Proを有する、請求項40から53に記載のポリペプチド。
【請求項55】
配列番号1が位置32においてProの代わりにValを有する、請求項40から54に記載のポリペプチド。
【請求項56】
配列番号1が位置32においてProの代わりにAlaを有する、請求項40から55に記載のポリペプチド。
【請求項57】
配列番号1のアミノ酸配列からの又は請求項40から55のポリペプチドからの少なくとも15個の連続アミノ酸を有するアミノ酸配列を含む免疫原性断片(該断片は(必要に応じて担体に連結される場合)、配列番号1のポリペプチド(又はそれぞれ請求項40から55のポリペプチド)を認識する免疫反応を生じさせることができるか又はヒトIgDに結合することができる。)。
【請求項58】
請求項38から58の何れかに記載のポリペプチド又は免疫原性断片(該ポリペプチド又は該免疫原性断片は、より大きい融合タンパク質の一部である。)。
【請求項59】
請求項38から58の何れかに記載のポリペプチド又は免疫原性断片をコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項60】
配列番号1の全長にわたり配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項61】
コード領域全体にわたり配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチドに相補的なヌクレオチド配列。
【請求項62】
配列番号11の全長にわたり配列番号11のヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド;又は該単離ポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。
【請求項63】
配列番号11に対して同一性が少なくとも95%である、請求項59から62の何れか一項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項64】
配列番号1のポリペプチド又は請求項57もしくは58の免疫原性断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項65】
配列番号11のポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチド。
【請求項66】
配列番号11の配列又はその断片を有する標識プローブとのストリンジェントなハイブリッド形成条件下で適切なライブラリをスクリーニングすることにより得ることができる、配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項67】
請求項59から66の何れか一項に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、発現ベクター又は生きている組み換え微生物。
【請求項68】
請求項67に記載の発現ベクターを含む生きている組み換え微生物。
【請求項69】
請求項67の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項70】
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドを発現する、請求項66に記載の宿主細胞の膜。
【請求項71】
請求項38から58のポリペプチド又は免疫原性断片を産生させるための方法であり、該ポリペプチド又は免疫原性断片の産生に十分な条件下で請求項69の宿主細胞を培養すること、及び培地からポリペプチドを回収することを含む、前記方法。
【請求項72】
請求項59から66の何れか一項のポリヌクレオチドを発現させるための方法であり、該ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含む発現ベクターにより宿主細胞を形質転換すること、及び該ポリヌクレオチドの何れか1つの発現に十分な条件下で該宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項73】
請求項38から58の何れか一項のポリペプチド又は免疫原性断片の有効量及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項74】
請求項59から66の何れか一項のポリヌクレオチドの有効量及び医薬的に許容可能な賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項75】
少なくとも1つの別のヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)抗原を含む、請求項73又は74の何れか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項76】
請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片に対して生成された抗体。
【請求項77】
ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)感染を診断する方法であり、かかる感染を有する疑いのある動物由来の生体試料内に存在する、請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片又は該ポリペプチドに免疫特異的である抗体を同定することを含む、前記方法。
【請求項78】
動物において免疫反応を生じさせることにおける使用のための薬剤の調製における、請求項38から58の何れか一項に記載のポリペプチド又は免疫原性断片の免疫学的有効量を含む組成物の使用。
【請求項79】
動物において免疫反応を生じさせることにおける使用のための薬剤の調製における、請求項59から66の何れか一項に記載のポリヌクレオチドの免疫学的有効量を含む組成物の使用。
【請求項80】
請求項38から58に記載のポリペプチド又は免疫原性断片に対する少なくとも1つの抗体及び適切な医薬賦形剤を含む、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)疾患を有するヒトを治療することに有用な治療用組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−523790(P2009−523790A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551220(P2008−551220)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000034
【国際公開番号】WO2007/084053
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508215164)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000034
【国際公開番号】WO2007/084053
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508215164)
【Fターム(参考)】
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