説明

新規複素環式芳香族ポリマー

【課題】優れた導電性、耐熱性、耐候性、溶媒溶解性、成形加工性、及び、透明性を有する導電性ポリマーを提供する。
【解決手段】式:A−Bで表される複素環含有芳香族化合物を単量体として酸化重合して得られる導電性ポリマー。式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。当該ポリマーは、単量体を、酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合することで製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2環式芳香族化合物を単量体として得られる複素環含有導電性ポリマーとその製造法に関する。さらに、該ポリマーを含有する導電性樹脂組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子と呼ばれる共役高分子が、従来の常識を超えた画期的な性能や機能を有する新素材として注目されている。これらは、例えば電界発光素子(EL)素子、二次電池、コンデンサをはじめとする各種新機能素子として開発されており、一部はすでに工業製品として利用されている。代表的なものとしては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリペリナフタレン、ポリアクリロニトリル等が知られている。これらは、例えば固体電解コンデンサなどの分野で使用されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、これらの材料は、導電性、耐熱性、耐候性、透明性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)など全ての面で優れた物性を有するわけではなく、高いレベルの物性がバランス良く要求される電子材料分野において利用するには不充分であった。
【0003】
上記の各種の導電性ポリマーの中でも、特にポリピロールやポリチオフェンは、その導電性や成形加工性の有利さから、固体電解コンデンサや有機太陽電池、有機発光素子、ITOに変わる導電性フィルムとして産業利用が検討されている導電性高分子である(特許文献1、2及び3を参照)。
【0004】
ポリピロールやポリチオフェンは、適当な置換基を導入することで、ある程度、導電性、耐熱性、耐侯性や成形加工性(なかでも、溶剤溶解性)を調整することが可能である。しかし、他の導電性高分子と同様、全ての面で優れた物性を有するわけではなく、複数の特性を同時に付与することは、極めて困難であり、近年のより高いレベルの要求に対しては不十分である。
【0005】
ポリピロールやポリチオフェンの製造方法としては、ピロールやチオフェンを電気化学的に酸化重合(電解重合)させる方法や、酸化剤を用いて化学的に酸化重合(化学重合)させる方法が知られている。電解重合により得られた膜状の導電性ポリマーは、量産性、経済性に劣り、それ自体の強度も弱く、また不溶不融のため成型加工が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−91358号公報
【特許文献2】特開2007−165093号公報
【特許文献3】特開2007−329454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、優れた導電性、耐熱性、耐候性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)、及び、透明性などの特性を複数有する導電性ポリマーを提供することにある。本発明の他の目的は、当該導電性ポリマーの簡便な製造方法、及び、当該導電性ポリマーを含む導電性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、少なくともチオフェン環又はピロール環のいずれか一方の複素環式骨格を有する非縮合系の2環式芳香族化合物を単量体として得たポリマーが、導電性、耐熱性、耐候性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)、及び、透明性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体として酸化重合して得られる導電性ポリマーに関する。
A−B (1)
(式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
さらに、本発明は、上記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体として、酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合することを特徴とする、導電性ポリマーの製造方法にも関する。
【0010】
さらに本発明は、前記導電性ポリマーを含有する導電性樹脂組成物にも関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性ポリマーは、導電性、耐熱性、耐候性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)、透明性等に関して優れた物性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複素環含有芳香族ポリマーは、下記一般式(1)で表される、少なくともチオフェン環又はピロール環のいずれか一方の複素環式骨格を有する非縮合系の2環式芳香族化合物を単量体として、酸化重合して得られる導電性ポリマーである。
A−B (1)
【0013】
式(1)中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。
【0014】
異種の複素環式芳香族化合物/炭化水素系芳香族化合物を組み合わせることで、導電性ポリマーに2つの構成要素由来の異なる性質を付与できることから、従来の単一の化合物を単量体としたポリマーでは得られない、高レベルの物性を達成することができる。また、異種の複素環式芳香族化合物/炭化水素系芳香族化合物の構造を適宜選択することで、利用目的に応じて、溶媒溶解性や透明性の調整が可能であるだけでなく、導電性のレベルも調整することが可能となり、導電性ポリマーの産業上の利用範囲を拡大することが可能となる。また、チオフェン構造とピロール構造を組み合わせることで、導電性のほか、耐熱性、耐候性、溶剤可溶性、成型加工性にも優れたポリマーとなる。
【0015】
また、本発明の導電性ポリマーは、非縮合系の2環式芳香族化合物を重合して得られるものであるので、Aから導かれたユニットと、Bから導かれたユニットが当該ポリマー中にほぼ1:1の割合で含まれる。よって2種類の単環式化合物をランダム重合する場合と異なって、両ユニットの割合を厳密に制御することが可能である。また、A−Bで示される化合物が単量体として使用されるので、Aから導かれた繰り返し単位と、Bから導かれた繰り返し単位が当該ポリマー中に、偏りなく、ほぼ均一に分布するので、当該ポリマーは均質な物性を示すことができる。
【0016】
本発明の複素環含有芳香族ポリマーについては、本明細書中で、「複素環含有芳香族ポリマー(1)」と記載する場合がある。
【0017】
チオフェン環基とは2−チエニル基のことをいい、炭素原子上に置換基を有してもよい。
【0018】
ピロール環基とは2−ピロリル基のことをいい、炭素原子上又は窒素原子上に置換基を有してもよい。
【0019】
式(1)におけるA又はBで表される置換チオフェン環基及び置換ピロール環基の例としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数)
【0022】
【化2】

【0023】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数)
【0024】
【化3】

【0025】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数1から10のアルキル基を示す)
チオフェン環基の置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。また、ピロール環基の置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、炭素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、窒素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。これらチオフェン環基やピロール環基の置換基であるアルキル基又はアルコキシ基には、ハロゲン元素やカルボン酸基、スルホン酸基などの官能基が結合していても良い。
【0026】
前述の炭化水素系芳香族環基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基やナフチル基が挙げられる。好ましくはフェニル基である。これらの基は置換基を有してもよく、そのような置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、なかでも炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。
【0027】
Aによって表される環とBによって表される環は、環構造に含まれない原子を介して結合することはなく、両環に含まれる原子間の結合によって、直接結合している。
【0028】
複素環含有芳香族ポリマー(1)の単量体としては、溶剤溶解性や耐熱性、耐候性の観点から、チオフェン環基又はピロール環基の3位又は4位に結合している置換基の数の合計が、2個以上である化合物が好ましい。また、3位又は4位に結合している置換基の数の合計が4個である場合(すなわち、すべての3位及び4位に置換基が結合している場合)、立体障害を避けるために、A又はBの少なくとも一方において、3位の置換基と4位の置換基が結合して環構造を形成していることが好ましい。
【0029】
複素環含有芳香族ポリマー(1)の単量体は、Aで示される環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換であり、かつ、Bで示される環上の炭素原子のうち少なくとも1つは無置換である。このような単量体を酸化重合すると、無置換の炭素原子間でカップリング反応が進行することで、複素環含有芳香族ポリマー(1)として、繰り返し単位が−A−B−で示される直鎖状重合体が得られる。A又はBによって表されるチオフェン環又はピロール環は、一方の2位の炭素原子間で互いに結合し、他方の2位の炭素原子が無置換であることが好ましい。
【0030】
複素環含有芳香族ポリマー(1)の単量体としては、下記式(2)〜(6)のいずれかによって表される複素環含有芳香族化合物が好ましく、なかでも、チオフェン環基とピロール環基を含む式(2)又は(3)で表される複素環含有芳香族化合物が特に好ましい。これらの単量体では、酸化重合は、チオフェン環上の2位の無置換の炭素原子や、ピロール環上の2位の無置換の炭素原子において進行する。
【0031】
【化4】

【0032】
式(2)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表す。
【0033】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。
【0034】
好ましくは、式(2)中、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又はケースiiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0035】
より好ましくは、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0036】
さらに好ましくは、優れた導電性を得る観点から、ケースiにおいて、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す。この場合、式(2)で表される化合物は、下記式(2′)で表される。
【0037】
【化5】

【0038】
特に、式(2′)中のR及びRが水素原子を表す下記式で示される化合物が好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
式(3)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基を表す。
【0042】
式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。Rnは有機基を表す。
【0043】
好ましくは、式(3)中、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0044】
より好ましくは、ケースiにおいて、式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0045】
さらに好ましくは、優れた導電性の観点から、ケースiにおいて、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す。この場合、式(3)で表される化合物は、下記式(3′)で表される。
【0046】
【化8】

【0047】
特に、式(3′)中のR及びRが水素原子を表し、Rnが置換基を有していてもよいフェニル基を表す下記式(3″)で示される化合物が好ましい。
【0048】
【化9】

【0049】
式(3″)中のRxは、水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。導電性や溶剤溶解性の観点から、特に、水素原子、フッ素原子、メトキシ基(−OCH3)、トリフルオロメチル基(−CF3)、メトキシカルボニル基(−COOCH3)が好ましい。
【0050】
【化10】

【0051】
式(4)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基を表す。
【0052】
式(4)中、RとR10は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとR10がともに水素原子を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとR10の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R11とR12の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。Rnは有機基を表す。
【0053】
好ましくは、式(4)中、ケースiにおいて、RとR10は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0054】
【化11】

【0055】
式(5)では、式(1)におけるA及びBが、それぞれ独立して、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表す。ただし、AとBは互いに異なる構造を表すことから、R13、R14及びRnの組合せと、R15、R16及びRnの組合せとが同一である場合は除く。
【0056】
式(5)中、R13とR14は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、R13とR14がともに水素原子を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。R13とR14の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R15とR16の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。RnとRnは、それぞれ独立して有機基を表す。
【0057】
好ましくは、式(5)中、ケースiにおいて、R13とR14は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0058】
【化12】

【0059】
式(6)では、式(1)におけるAが、チオフェン環上の3位の置換基と4位の置換基が結合してエチレンジオキシ基を形成している3,4−エチレンジオキシチオフェン環基を表し、Bが、オルト位及び/又はメタ位に置換基を有することがあるフェニル基を表す。
【0060】
式(6)中、R17とR18は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。R19とR20は、それぞれ独立して、有機基を表す。ベンゼン環のオルト位とメタ位は特に酸化されやすいため、これらの位置のうち少なくとも3つに置換基を結合させることによって、化合物の安定性を高めることができる。
【0061】
〜R20及びRn〜Rn、Rxが表すことのできる有機基としては、例えば、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、シクロヘキセニル基等)、炭素数1から5のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)が挙げられる。さらに、これらの有機機には、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基などの官能基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素が結合していても良い。また、R〜R20は、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基やハロゲン元素であっても良い。以上の有機基はそれぞれ独立して選択される。
【0062】
〜R20が表すことのできる有機基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。Rn〜Rnが表すことのできる有機基としては、炭素数1から10のアルキル基、又は、フェニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0063】
隣接するR〜R20(RとR、R3とR4、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18、R19とR20)の両方が有機基であり、これらが互いに結合して環構造を形成する場合、環構造としては、特に限定されないが、炭素数2から10の脂環式構造が好ましい。脂環式構造には酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、窒素原子などを含んでいても良く、なかでも、特に酸素原子を含んだアルキレンジオキシ基を有する環構造が好ましい。さらに、脂環式構造が芳香族性を有していても良く、この場合、複素環含有芳香族化合物(1)のA、Bは、縮環構造を有する(例えば、イソチアナフテン等)事を意味する。
【0064】
単量体である複素環含有芳香族化合物は、超原子価ヨウ素反応剤の存在下、2種類の複素環芳香族化合物、又は、複素環芳香族化合物と炭化水素系芳香族化合物をカップリングさせることで製造することができる。このようなカップリング反応が超原子価ヨウ素反応剤の存在下では、1:1の比率で効率よく進行する。超原子価ヨウ素反応剤としては後述と同様のものを使用することができる。
【0065】
前記カップリング反応において、超原子価ヨウ素反応剤の使用量は特に限定されず、1種類の原料1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、更に好ましくは0.2〜3モルの割合で用いられ、更に好ましくは0.3〜2モルの割合で用いられる。
【0066】
前記カップリング反応では、原料として、置換又は無置換のチオフェン化合物、及び、置換又は無置換のピロール化合物からなる群より選択される化合物A−H、及び、置換又は無置換の炭化水素系芳香族化合物、置換又は無置換のチオフェン化合物、及び、置換又は無置換のピロール化合物からなる群より選択される化合物B−Hを使用する。ここで、A及びBは上記と同様である。これら化合物は、所望の生成物を得るために適宜選択すればよい。
【0067】
前記カップリング反応は、通常、溶媒の存在下で実施される。本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、原料、複素環含有芳香族化合物、及び、超原子価ヨウ素反応剤を溶解または分散させる溶媒であればよい。このような溶媒としては、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0068】
カップリング反応の系中に添加剤を適宜添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤と添加剤とを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。添加剤としては、例えば、ブロモトリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフラート、三フッ化ホウ素、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などがあり、特にブロモトリメチルシランが好ましい。これらは単独で用いても良く、複数で用いても良い。添加剤の使用量は、複素環含有芳香族化合物1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、更に好ましくは0.2〜3モルの割合で用いられ、更に好ましくは0.5〜2モルの割合で用いられる。
【0069】
カップリング反応の系中に、フッ素系アルコールを添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤とフッ素系アルコールとを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。添加するフッ素系アルコールとしては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノールなどがあり、特に1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールが好ましい。フッ素系アルコールの使用量は、特に特定されないが、用いる溶剤100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、特に、10〜40重量部が好ましい。
【0070】
当該カップリング反応は、通常、各原料、超原子価ヨウ素反応剤、及び、溶剤や他の試薬等を混合して、−50℃〜100℃の温度範囲で、10分から48時間の間行うことによって、前記複素環含有芳香族化合物を製造することができる。好ましくは、0〜50℃の温度範囲で30分〜8時間行われる。さらに好ましくは、10〜40℃の温度範囲で1〜4時間行われる。加える試薬の順序は問わない。
【0071】
本発明の複素環含有芳香族ポリマー(1)の製造方法としては、前記単量体を、各種酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合することを特徴とする。化学重合法は、簡便で大量生産が可能なため、従来の電解重合法と比べ工業的製法に適した方法である。
【0072】
化学重合方法に用いる酸化剤は特に限定されない。好ましい酸化剤としては、スルホン酸化合物をアニオンとし、高価数の遷移金属をカチオンとする酸化剤が挙げられる。この酸化剤を構成する高価数の遷移金属イオンとして、Ag、Cu2+、Fe3+、Al3+、Ce4+、W6+、Mo6+、Cr6+、Mn7+、およびSn4+が挙げられる。特に、Fe3+およびCu2+が好ましい。具体的には、FeCl、Fe(ClO、KCrO、過硫酸アルカリまたはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム、四フッ化ホウ酸銅が挙げられる。また、金属イオンを含まない酸化剤として、Hおよび過硫酸アンモニウムが挙げられる。さらに、超原子価ヨウ素反応剤に代表される超原子価化合物が挙げられる。
【0073】
特に好ましい実施形態では、酸化剤が超原子価ヨウ素反応剤である。超原子価ヨウ素反応剤とは、3価または5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、より安定なオクテット状態(1価のヨウ素)に戻ろうとする性質を有しているため、鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)などの重金属酸化剤と類似の反応性を有する。さらに、超原子価ヨウ素反応剤は、このような重金属酸化剤に比べて低毒性であり、安全性に優れ、工業的な製法に適している。
【0074】
本発明の製造方法に用いられ得る超原子価ヨウ素反応剤は、特に限定されない。3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセタート)又は(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン(以下、PIFAという場合がある))、フェニルイオジンジアセタート(ヨードソベンゼンジアセタート(以下、PIDAという場合がある))、ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン、ヨードシルベンゼンなどが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0075】
【化13】



【0076】
5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、デスマーチンペルヨージナン(Dess-Martin periodinane(DMP))、o−ヨードキシ安息香酸(o-iodoxybenzoic acid(IBX))などが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0077】
【化14】

【0078】
これらの超原子価ヨウ素反応剤の中でも、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、PIFAが、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する点で、より好ましい。
【0079】
また超原子価ヨウ素反応剤の中でも、アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を選択すると回収再利用できることから好ましい。より具体的には、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンなどの3価のアダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、または、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンなどの3価のテトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く回収再利用可能なので、さらに好ましい。5価の超原子価ヨウ素反応剤を用いる場合は、デスマーチンペルヨージナン(DMP)が好ましい。
【0080】
このような超原子価ヨウ素反応剤は、合成により得られたものを用いてもよく、あるいは市販品を用いてもよい。例えば、PIFAは、PIDAにトリフルオロ酢酸を加えて反応させ、その結果、PIFAを反応生成物として析出させることにより得られる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757を参照のこと)。PIDAは、ヨードベンゼンを酢酸中、ペルオキソほう酸ナトリウム(4水和物)(NaBO・4HO)を用い酸化することにより得られる(Tetrahedron, 1989, 45, 3299およびChem. Rev., 1996, 96, 1123を参照のこと)。さらに、PIDAは、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)を酸化剤としてヨードベンゼンから得られる(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595を参照のこと)。1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122に記載の方法で合成できる。
【0081】
本発明の製造方法における酸化剤の使用量は特に限定されないが、上記単量体1モルあたり1〜5モルの範囲が好ましく、より好ましくは2〜4モルの範囲である。特に酸化剤として超原子価ヨウ素反応剤を使用する場合、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル、更に好ましくは1.5〜4モルの割合で用いられ、より好ましくは2〜2.5モルの割合で用いられる。超原子価ヨウ素反応剤の量が少ない場合、酸化重合反応が進みにくくなることがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎる場合、過剰酸化が起こり溶媒に全く不溶な生成物が得られることがあり、所望のポリマーの収率が低下することがある。
【0082】
本発明の製造方法では、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用してもよい。超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用することで、超原子価ヨウ素反応剤の使用量を減らすことができる。金属を含まない酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、メタクロロ過安息香酸などが挙げられる。
【0083】
超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤は酸化触媒として作用し、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.001〜0.3モル、より好ましくは0.01〜0.1モルの割合で用いられる。一方、金属を含まない酸化剤は、上記単量体1モルに対して、好ましくは1〜4モル当量、より好ましくは1.5〜2.5モル当量の割合で用いられる。
【0084】
金属を含まない酸化剤と超原子価ヨウ素反応剤とを併用する場合、超原子価ヨウ素反応剤の量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、超原子価ヨウ素反応剤の量が多すぎても、重合度は、ある一定の重合度より大きくならず、超原子価ヨウ素反応剤が無駄になる。
【0085】
なお、超原子価ヨウ素反応剤と金属を含まない酸化剤とを併用する場合は、重合反応を始める際は、超原子価ヨウ素反応剤の前駆体を用いても良い。例えば、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンの前駆体である1,3,5,7−テトラキス−(4−ヨードフェニル)アダマンタンを触媒量と、化学量論量のメタクロロ過安息香酸を加えることで、反応系中で超原子価ヨウ素反応剤を発生させればよい。
【0086】
本発明の製造方法によって得られる複素環含有芳香族ポリマー(1)には、ドーパントがドープされていてもよい。ドーパントをドープすることによって、得られる複素環含有芳香族ポリマー(1)に導電性が付与され得る。ドーパントは、重合反応前に原料として仕込んでもよく、重合反応中に添加してもよく、あるいは重合反応後に得られる複素環含有芳香族ポリマーに添加してもよい。
【0087】
ドーパントとしては、特に限定されないが、Cl、Br、I、IClなどのハロゲン;PF、BF、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸;HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン酸;p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ビニルスルホン-スチレンコポリマー、スチレン−アクリルアミドスルホン酸コポリマーなどの有機酸などが挙げられる。
【0088】
導電性の付与を目的として用いられるドーパントは、上記単量体1モルに対して、好ましくは0.05〜6モルの割合で用いられ、より好ましくは0.2〜4モルの割合で用いられる。
【0089】
ドーパントの量が0.05モルよりも少ない場合、複素環含有芳香族ポリマー(1)に、十分な導電性を付与し得ないおそれがある。一方、ドーパントの量が6モルよりも多い場合、複素環含有芳香族ポリマー(1)に添加したすべてのドーパントがドープされず、添加量に比例した効果を望めない。また、余剰のドーパントも無駄になる。
【0090】
なお、ルイス酸は、ドーパントとして作用するだけではなく、酸化重合反応を促進させる作用も有する。酸化重合反応を促進させる目的でルイス酸を用いる場合、特に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルが好ましく用いられる。
【0091】
本発明の製造方法における酸化重合反応は、通常、溶媒の存在下で実施される。本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、上記単量体、酸化剤、及び、ドーパントを溶解または分散させる溶媒であればよい。このような溶媒としては、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、 テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0092】
本発明の酸化重合反応の温度は、−100℃〜100℃が好ましい。溶媒として有機溶媒を用いる場合および水を用いる場合のいずれの場合も、より好ましくは0℃〜40℃である。反応温度が−100℃よりも低い場合、反応速度が遅くなったり、溶媒によっては凍結したりし、複素環含有芳香族ポリマー(1)の収率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃よりも高い場合、副反応や過剰酸化が起こり、複素環含有芳香族ポリマー(1)の収率が低下するおそれがある。
【0093】
本発明の製造方法において、酸化重合反応の反応時間は、特に制限されない。酸化重合反応を促進させるためにルイス酸を用いた場合、12時間程度が好ましく、ルイス酸を用いない場合は、20時間程度が好ましい。
【0094】
このようにして得られた複素環含有芳香族ポリマー(1)は、精製することができる。精製方法(精製工程)は特に限定されないが、例えば、反応後、溶媒をグラスフィルターでろ過し、得られたポリマーを、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどで洗浄する方法が挙げられる。その他の精製方法としては、ソックスレー抽出などによる精製が挙げられる。
【0095】
洗浄後、得られた複素環含有芳香族ポリマー(1)は、必要に応じて、通常の手段により乾燥される(乾燥工程)。乾燥方法は、重合度、置換基、含まれるドーパントによって適宜決定可能であり、例えば、室温下(約25℃)での減圧(約0.5mmHg)乾燥、常圧下での加熱送風(約60℃)乾燥などが挙げられる。乾燥温度は、100℃以下が好ましく、200℃を超えると、複素環含有芳香族ポリマー(1)が分解する危険性が高くなる。
【0096】
アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を用いた場合、下記のような方法で回収される。例えば、反応を終えた溶液を減圧濃縮し、残渣(ポリマー、アダマンタン構造もしくはテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤、未反応の単量体)にメタノールを加えて混合し、グラスフィルターを用いてろ過することにより、金属を含まない酸化剤及び未反応の単量体はメタノール溶液として除去できる。残渣として残ったポリマー及びアダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤は、ジエチルエーテルを加えて混合しグラスフィルター用いてろ過することにより、残渣のポリマーと、ジエチルエーテル溶液のアダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤とに分離することができる。そのジエチルエーテルを濃縮することで、アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤を回収することができる。アダマンタン構造およびテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤の回収方法は、上記の例に限定されないが、ポリマー、アダマンタン構造又はテトラフェニルメタン構造の超原子価ヨウ素反応剤、金属を含まない酸化剤および未反応の単量体の、溶媒種による溶解性の違いを利用し、適当な溶媒を選択することで、各々の成分を分離することができる。
【0097】
本発明の導電性樹脂組成物は、樹脂成分として、複素環含有芳香族ポリマー(1)を含有する導電性樹脂材料である。複素環含有芳香族ポリマー(1)は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明の本発明の導電性樹脂組成物は、さらに、目的に応じて(i)バインダー、(ii)添加剤、(iii)溶剤等を含有することができる。
【0098】
上記(i)のバインダーとしては、特に限定されないが、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、並びに、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される2種以上のモノマーから構成された共重合体などが挙げられる。本発明の導電性樹脂組成物は、複素環含有芳香族ポリマー(1)100重量部に対してバインダーを、好ましくは1〜5000重量部、より好ましくは10〜3000重量部含有する。
【0099】
上記(ii)の添加剤としては、基板との密着性を向上させたり、塗膜の耐久性を向上させるためのシランカップリング剤、塗布性を向上させるためのレベリング剤や界面活性剤が挙げられる。シランカップリング剤の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は複数種類を使用することができる。本発明の導電性樹脂組成物に、シランカップリング剤を配合する場合、複素環含有芳香族ポリマー(1)100重量部に対してシランカップリング剤を、好ましくは0.1〜1000重量部、より好ましくは1〜500重量部含有する。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドなど)、フッ素系界面活性剤(例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)が挙げられる。本発明の導電性樹脂組成物は、導電性樹脂組成物100重量部に対して界面活性剤を、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.05〜10重量部含有する。
【0100】
上記(iii)の溶剤としては、特に限定されないが、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。本発明の導電性樹脂組成物は、複素環含有芳香族ポリマー(1)100重量部に対して溶剤を、好ましくは100〜5000重量部、より好ましくは500〜3000重量部含有する。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて含有させても良い。
【0101】
本発明の導電性樹脂組成物は、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等のプラスチック基板やガラス基板上に、種々のコーティング方法により0.1〜30μm程度の厚みに塗布し、必要により乾燥、硬化することで、導電性の薄膜、フィルムを得ることが出来、該基板に帯電防止や電極、電磁波シールド等機能を付与することが出来る。さらに、固体電解コンデンサの製造のために、酸化皮膜を有するアルミニウムや焼結タンタル等の金属表面などに塗布することで、固体電解コンデンサに必要な導電層を形成することも出来る。
【実施例】
【0102】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0103】
(製造例1)
窒素雰囲気下、室温で、ジクロロメタン(10ml)、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(7)(4mmol、0.43ml)、ブロモトリメチルシラン(4mmol、0.53ml)、ヨードベンゼンジアセタート(PIDA)(6mmol、1.93g)、N−フェニルピロール(8)(4mmol、572.7mg)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(1ml)、トリフルオロ酢酸(4mmol、0.3ml)を100mL三口フラスコに加え、4時間攪拌した。4時間後、飽和重曹水(約40ml)を加え、塩化メチレンを用い分液抽出を行い、有機層をNaSOを用い乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、EDOT−N−フェニルピロールカップリング体(9)788.4mgを得た。
1H NMR (CDCl3): 3.81-3.84 (2H, m), 3.99-4.01 (2H, m), 6.16 (1H, s), 6.33 (1H, dd, J = 3.2, 2.7 Hz), 6.50 (1H, dd, J = 3.2, 1.8 Hz), 6.90 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz). 7.20-7.36 (5H, m)
13C NMR (CDCl3): 64.20, 64.24, 98.21, 108.72, 109.21, 111.67, 123.47, 124.19, 125.66, 126.79, 128.56, 137.83, 140.33, 141.08.
EI-MS; 283.00 (100 %), 186.00 (76.0 %), 154.00 (35.0 %), 77.00 (26.1 %)
【0104】
【化15】

【0105】
(製造例2)
製造例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにピロール(10)(4mmol、268.4mg)を用い、トリフルオロ酢酸を無添加としたこと以外は、製造例1と同様にしてEDOT−ピロールカップリング体(11)179.9mgを得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.21-4.25 (2H, m), 4.29-4.32 (2H, m), 6.11 (1H, s), 6.20-6.23(1H, m), 6.31 (1H, s), 6.79 (1H, s), 9.10 (1H, bs).
EI-MS; 207.00 (99.5 %), 151.00 (12.8 %), 110.00 (100 %)
【0106】
【化16】

【0107】



(製造例3)
製造例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−フェニルピロール(12)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてEDOT−3-フェニルピロールカップリング体(13)を得た。
1H-NMR (CDCl3) : 4.16-4.27 (4H, m), 6.04 (1H, s), 6.26 (1H, t, J = 2.7 Hz), 6.82 (1H, t, J = 2.7 Hz), 7.25-7.52 (5H, m), 9.15 (1H, brs).
IR (KBr) 3427 m, 2927 w, 1602 w, 1553 m, 1493 s, 1441 s, 1366 s, 1265 w, 1165 s, 910 m, 885 m, 737 m, 700 s, 569 w.
HRFABMS Calcd for C16H13NO2S (M):283.0667, Found 283.0668
【0108】
【化17】

(12)
【0109】

(13)

【0110】
(製造例4)
製造例1においてEDOTの代わりにピロール(10)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてピロール-N−フェニルピロール(14)を得た。
1H-NMR (CDCl3):5.81-5.84 (1H, m), 6.07-6.11 (1H, m), 6.30-6.36 (2H, m), 6.63 (1H, m), 6.85 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz), 7.23-7.37 (5H, m), 7.83 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) :107.5, 108.4, 108.8, 109.0, 117.5, 123.2, 124.2, 125.9, 126.8, 127.2, 129.0, 140.3.
IR (KBr) :3389 m, 3103 w, 3001 w, 2926 w, 2853 w, 1597 m, 1499 s, 1400 m ,1219 m, 1034 m, 907, w, 772 s, 719 s, 667 m.
HRFABMS Calcd for C14H12N2 [M]+ 208.1000, Found 208.0995.
【0111】
【化18】

(14)


【0112】
(製造例5)
製造例1において、N−フェニルピロールの代わりに3−メチル‐4−メトキシカルボニルピロール(15)を用いたこと以外は、製造例1と同様にしてEDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロールカップリング体(16)を得た。
1H-NMR (CDCl3) : 2.50 (3H, s), 3.80 (3H, s), 4.23-4.26 (2H, m), 4.32-4.35 (2H, m), 6.28 (1H, s), 7.40 (1H, d, J = 3.6 Hz), 9.40 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) :11.02, 50.73, 64.47, 65.10, 96.78, 109.83, 115.10, 117.29, 123.27, 123.38, 136.16, 141.36, 165.72.
HRFABMS Calcd for C13H13NO4S [M]+ 279.0565, Found 279.0553.
【0113】
【化19】

(15)
【0114】

(16)

【0115】
(実施例1)
200mLのナスフラスコに、25gのイオン交換水、2.6gの12.8質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、40mg(0.0932mmol)のPIFAを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(3ml)に溶解して加えた。次いで、275mg(0.932mmol)のEDOT−N−フェニルピロールのカップリング体(9)を3mlのアセトニトリルに溶解して加え、さらに1.8gの10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−N−フェニルピロールのカップリング体(9)の消失を確認した、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(EDOT−N−フェニルピロール)水分散体35g(固形分1.7%)を得た。
【0116】
本ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−N−フェニルピロールのカップリング体(9)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0117】
(実施例2)
2000mLの三口フラスコに、3.10g(10.9mmol)のEDOT−N−フェニルピロールのカップリング体(9)、410gのイオン交換水、253gの12.8質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、16.5g(0.41mmol)の1%硫酸鉄(III)水溶液を加えた。次いで、11.8g(5.7mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−N−フェニルピロールカップリング体(9)の消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(EDOT−N−フェニルピロール)水分散体を650g(固形分1.1%)得た。
【0118】
本ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−N−フェニルピロールのカップリング体(9)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−N−フェニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0119】
(実施例3)
30mLのナスフラスコに、100mg(0.48mmol)のEDOT−ピロールのカップリング体(11)および10mLの塩化メチレンを加えて、窒素雰囲気下、室温下(約25℃)で攪拌し、次いで、213.4mgのトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを加え、その後、15.4mgのフェニルイオジンジアセタート(PIDA)、メタクロロ過安息香酸(60%)を138mg(0.72mmol)、および酢酸27.3μl(0.72mmol)を加えた。その後、さらに12時間撹拌を行った。HPLCにてEDOT−ピロールのカップリング体(11)の消失を確認後、この反応溶液を減圧濃縮し、残渣に20mLのメタノールを加えた。次いで、グラスフィルターによって、黒色の不溶物をろ取し、メタノール30mlを用いて洗浄した。さらに30mlのヘキサンを用いて洗浄しポリ(EDOT−ピロール)85.4mgを得た。
【0120】
得られたポリ(EDOT−ピロール)の分子量を測定すると、重量平均分子量(Mw)は7137、数平均分子量(Mn)は7072、そして重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnは1.009であった。
【0121】
(実施例4)
300mLの三口フラスコに、0.6g(2.9mmol)のEDOT−ピロールのカップリング体(11)、140gのイオン交換水、65gの12.8質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、5.0g(0.13mmol)の1%硫酸鉄(III)水溶液を加えた。
【0122】
次いで、7.3g(3.3mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−ピロールのカップリング体(11)の消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(EDOT−ピロール)水分散体を200g(固形分0.9%)得た。
【0123】
本ポリ(EDOT−ピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−ピロール)そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−ピロールのカップリング体(11)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−ピロール)が生成していることが明らかである。
【0124】
(実施例5)
20mLのスクリュー管に、0.025g(0.088mmol)のEDOT−3-フェニルピロールカップリング体(13)、7.2gのイオン交換水、0.2gの30質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、0.12g(0.004mmol)の1.0質量%PIDAのメチルエチルケトン溶液を加えた。
【0125】
次いで、0.10g(0.056mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約15℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−3-フェニルピロールカップリング体(13)の消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(EDOT−3−フェニルピロール)水分散体を8.20g(固形分0.73%)得た。
【0126】
本ポリ(EDOT−3−フェニルピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−3−フェニルピロール)そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−3−フェニルピロールのカップリング体(13)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−3−フェニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0127】
(実施例6)
20mLのスクリュー管に、0.05g(0.24mmol)のピロール-N−フェニルピロール(14)、14.2gのイオン交換水、0.42gの30質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、0.29g(0.0072mmol)の1%硫酸鉄(III)水溶液を加えた。
【0128】
次いで、0.20g(0.11mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてピロール-N−フェニルピロール(14)の消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(ピロール-N−フェニルピロール)水分散体を14.78g(固形分0.78%)得た。
【0129】
本ポリ(ピロール-N−フェニルピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(ピロール-N−フェニルピロール)そのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、ピロール-N−フェニルピロールのカップリング体(14)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(ピロール-N−フェニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0130】
(実施例7)
20mLのスクリュー管に、0.025g(0.089mmol)のEDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロールカップリング体(16)、13.4gのトルエン、0.117gのスチレン−アクリルアミドスルホン酸コポリマー、0.29g(0.0072mmol)の1.0質量%硫酸鉄(III)水−メタノール溶液を加えた。
次いで0.536g(0.18mmol)の7.6質量%過硫酸アンモニウム水−メタノール溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−3-メチルー4−メトキシピロールカップリング体(16)の消失を確認し、スチレン−アクリルアミドスルホン酸コポリマードープのポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロール)トルエン分散体を12.31g(固形分0.79%)得た。
【0131】
本ポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロール)トルエン分散体については、ドーパントとしてスチレン−アクリルアミドスルホン酸コポリマーを使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロールそのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロールのカップリング体(16)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本トルエン分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0132】
(実施例8)
300mLの三口フラスコに、0.10g(0.36mmol)のEDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロールカップリング体(16)、48.8gのイオン交換水、0.87gの30質量%ポリスチレンスルホン酸水溶液、0.58g(0.01mmol)の1%硫酸鉄(III)水溶液を加えた。
【0133】
次いで、0.38g(0.21mmol)の10.9質量%ペルオキソ二硫酸水溶液を加えた。その後、室温下(約25℃)で24時間撹拌し、HPLCにてEDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロール(16)の消失を確認し、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロール)水分散体を40.11g(固形分0.48%)得た。
【0134】
本ポリ(EDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロール)水分散体については、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を使用しているため、GPC測定では、ポリ(EDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロールそのものの分子量を測定することは困難であった。しかし、上記重合反応において、EDOT−3-メチル−4−メトキシカルボニルピロールのカップリング体(16)が完全に消失していることと、以下に示す本発明の導電性樹脂組成物の試験結果により本水分散体が導電性を示す結果が得られたことから、ポリ(EDOT−3-メチルー4−メトキシカルボニルピロール)が生成していることが明らかである。
【0135】
(実施例9〜16)
まず、上記実施例1〜8で得られたポリマーの溶剤溶解性を調べた。水分散体である実施例1、2、4〜6、8、および、溶剤分散体である実施例7で得られたポリマーについては、No.4のワイヤーバーを使用してガラス基板上に塗布し、100℃で2分間送風乾燥させ、得られたポリマーの薄膜をカミソリで剥ぎ取り、ポリマーのサンプルを得た。実施例3のポリマーは、固形であるためそのまま評価に供した。これら実施例1〜8のポリマーのサンプル1mgを1mlのスクリュー瓶に計量し、100mgの溶媒(NMP(N−メチルピロリドン)、MEK(メチルエチルケトン)、又は、トルエン)を加えた。本サンプルを30分振盪し、よく混合した。得られた溶液を、40mm×50mmのカバーグラス上に数滴のせ、さらに、その上から40mm×50mmのカバーグラスを載せ、溶液を挟み込み、外観を目視観察し、下記の通り溶媒溶解性を判定した。
○:溶解:溶媒が着色し、透明感があり、且つ固形物(不溶物)が観測されない。
△:一部溶解:固形物(不溶物)が観測されるが、溶媒が着色している。
×:不溶:溶媒が着色せず、固形物(不溶物)が観測される。
【0136】
次に、実施例1〜8で得られたポリマーを用いて、表1に示した配合比率にて、各原料を混合した。完全に混和させた後、各配合物を0.5μmのメンブレンフィルターでろ過、不溶物を除去し、本発明の導電性樹脂組成物を調製し、以下の手順で薄膜を形成した。調製した導電性樹脂組成物を、No.4のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で9μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、100℃で2分間、送風乾燥して薄膜を得た。得られた薄膜の厚みは、表2にまとめたとおりであった。
【0137】
次いで、得られた薄膜の表面抵抗率を、ハイレスタ−UP(MCP−HT450)(三菱化学株式会社製)を用いて、JIS K6911に準じて測定した。
【0138】
得られた薄膜の全光線透過率を、JIS K7150に従い、スガ試験機(株)製ヘイズコンピュータHGM−2Bを用いて測定した。
【0139】
さらに、上記で得られた薄膜の耐候性を調べた。すなわち薄膜を、10分間紫外線露光した後、薄膜の表面抵抗率を測定した。
【0140】
さらに、上記で得られた薄膜の耐熱性を調べた。すなわち薄膜を、200℃で1時間加熱した後、薄膜の表面抵抗率を測定した。
【0141】
得られた薄膜の膜厚、表面抵抗率、全光線透過率、溶剤溶解性、耐候性、及び、耐熱性の結果を表2に示した。
【0142】
(比較製造例1)
50mLのナスフラスコに、67mg(1mmol)のピロール(10)および10mLのアセトニトリルを加えた。次いで、644mg(2mmol)のPIDAと392mg(2 mmol)のパラトルエンスルホン酸を加えて、室温で20時間撹拌した。
【0143】
HPLCにてピロール(10)の消失を確認後、この反応溶液の不溶物を、グラスフィルターによって、ろ取した。次いで、不溶物をメタノールで洗浄後、さらにn−ヘキサンで洗浄し、110mgの微粉末状のポリピロールを得た。得られたピロールは各種溶剤に不溶であったため、GPCによる分子量測定は不可能であった。
【0144】
【化20】

(10)
【0145】
(比較例1)
比較製造例1で得られたポリピロール34mgをクロロホルム2700mgに分散させ、ポリエステルバインダー150mg、界面活性剤32mgを添加し、更に、溶媒として、N−メチルピロリドン115mgを加え、導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物について、実施例5〜8と同様の手法で各種試験を行い、それらの結果を、表2に示した。
【0146】
【表1】



【0147】
実施例9、10、12〜16の導電性ポリマーは、分散液の仕込み量を示す。溶媒において、80%エタノールとは、20%の水を含む含水エタノール、NMPとは、N−メチルピロリドン、MEKとはメチルエチルケトンの事を示す。ポリエステルバインダーは、ナガセケムテックス株式会社製 ガブセン ES−901A、ウレタンアクリレートバインダーは、新中村化学工業株式会社製 NKオリゴU−15HA、界面活性剤は、互応化学工業製 フッ素系界面活性剤 プラスコート RY−2、シランカップリング剤はモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製Silquest A−187、重合開始剤は、チバ・ジャパン株式会社製 ラジカル系光重合開始剤 イルガキュア(R)907を使用した。
【0148】
【表2】



【0149】
表2より、実施例1〜8で得られた導電性ポリマーを用いて配合した実施例9〜16の導電性組成物から得られた薄膜は、比較例1の導電性組成物から得られた薄膜より高い導電性と、透明性を持つことが分かる。
【0150】
比較例1のポリマーはNMP、MEK、トルエン等の有機溶剤に良好な溶解性を示さないのに対し、実施例9〜16に記載のポリマーはこれらの有機溶剤のいずれに対しても可溶性を有することが分かる。このように広範囲の溶剤に可溶性を示すため、導電性塗料として均一塗布が可能であり、成形加工性に優れることが分かる。
【0151】
比較例1の薄膜は、紫外線照射後又は200℃加熱後の表面抵抗率の上昇率が高く、厳しい環境で使用されるとその導電性を失うことが分かる。それに対して、実施例5〜8の薄膜は、紫外線照射後又は200℃加熱後も導電性を維持しており、環境に左右されない、安定した導電性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明によれば、新規の複素環含有導電性ポリマー、その簡便な製造方法、及び、同ポリマーを含む導電性樹脂組成物が提供される。従来の単一の複素環式芳香族化合物を単量体とした導電性ポリマーは、一般的に有機溶媒に対する溶解性が低く、また、透明性が低いために、工業的に利用できる分野が限られていた。本発明では、異なる2つの芳香族化合物の構造を適宜選択することで、安定性、溶剤溶解性、透明性、導電性などに優れる、様々な種類のポリマーを合成することができる。またその製造方法は、電解重合方法に比べ簡便で大量生産が可能であり、工業的製法として優れている。従って、本発明により提供される複素環含有芳香族ポリマー、及び、その導電性樹脂組成物は、各種電子部品(導電性フィルム、固体電解コンデンサ、液晶パネルやタッチパネル等に用いられる透明電極など)や太陽電池などの導電性材料、帯電防止剤等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体として酸化重合して得られる導電性ポリマー。
A−B (1)
(式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
【請求項2】
前記複素環含有芳香族化合物が、チオフェン環基とピロール環基が結合して構成される、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
【化1】



(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項3】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項2に記載の導電性ポリマー。
【請求項4】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項2又は3に記載の導電性ポリマー。
【請求項5】
式(2)中、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す請求項2〜4のいずれかに記載の導電性ポリマー。
【請求項6】
前記複素環含有芳香族化合物が、下記式で示される化合物である、請求項2〜5のいずれかに記載の導電性ポリマー。
【化2】

【請求項7】
前記複素環含有芳香族化合物が、チオフェン環基とN−置換ピロール環基が結合して構成される、下記一般式(3)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
【化3】



(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rnは有機基を表す。)
【請求項8】
式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項7に記載の導電性ポリマー。
【請求項9】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項7又は8に記載の導電性ポリマー。
【請求項10】
式(3)中、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す請求項7〜9のいずれかに記載の導電性ポリマー。
【請求項11】
前記複素環含有芳香族化合物が、下記式で示される化合物である、請求項7〜10のいずれかに記載の導電性ポリマー。
【化4】



(式中、Rx は、水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項12】
前記複素環含有芳香族化合物が、ピロール環基とN−置換ピロール環基が結合して構成される、下記一般式(4)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
【化5】



(式中、RとR10は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとR10がともに水素原子を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表す。RとR10の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R11とR12の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rnは有機基を表す。)
【請求項13】
式(4)中、RとR10は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項12に記載の導電性ポリマー。
【請求項14】
前記複素環含有芳香族化合物が、互いに異なる2つのN−置換ピロール環が結合して構成される、下記一般式(5)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
【化6】



(式中、R13とR14は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、R13とR14がともに水素原子を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表す。R13とR14の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R15とR16の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RnとRnは、それぞれ独立して有機基を表す。ただし、R13、R14及びRnの組合せと、R15、R16及びRnの組合せとが同一である場合を除く。)
【請求項15】
式(5)中、R13とR14は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項14に記載の導電性ポリマー。
【請求項16】
前記複素環含有芳香族化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェン環基とベンゼン環基が結合して構成される、下記一般式(6)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性ポリマー。
【化7】



(式中、R17とR18は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。R19とR20は、それぞれ独立して、有機基を表す。)
【請求項17】
前記複素環含有芳香族化合物を、酸化剤を用いた化学重合法で酸化重合して得られる請求項1〜16のいずれかに記載の導電性ポリマー。
【請求項18】
下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物を単量体として、酸化剤を用いた化学重合法により酸化重合することを特徴とする、導電性ポリマーの製造方法。
A−B (1)
(式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
【請求項19】
前記酸化剤が、超原子価ヨウ素反応剤である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載の導電性ポリマーを含有する導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−43249(P2010−43249A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165239(P2009−165239)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月15日 北泰行教授定年退任記念事業会発行の「北泰行教授定年退任記念誌−有機化学と共に歩んで−」に発表
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】