説明

新規複素環式芳香族化合物

【課題】優れた導電性、耐熱性、耐候性、溶媒溶解性、成形加工性、及び、透明性を有する導電性高分子の前駆体となり得る複素環含有芳香族化合物を提供する。
【解決手段】式:A−Bで表される複素環含有芳香族化合物。式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。当該化合物は、超原子価ヨウ素反応剤を用いたカップリング反応で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマーの調製に有用な、複素環含有芳香族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子と呼ばれる共役高分子が、従来の常識を超えた画期的な性能や機能を有する新素材として注目されている。これらは、例えば電界発光素子(EL)素子、二次電池、コンデンサをはじめとする各種新機能素子として開発されており、一部はすでに工業製品として利用されている。代表的なものとしては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリペリナフタレン、ポリアクリロニトリル等が知られている。これらは、例えば固体電解コンデンサなどの分野で使用されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、これらの材料は、導電性、耐熱性、耐候性、透明性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)など全ての面で優れた物性を有するわけではなく、高いレベルの物性がバランス良く要求される電子材料分野において利用するには不充分であった。
【0003】
上記の各種の導電性ポリマーの中でも、特にポリピロールやポリチオフェンは、その導電性や成形加工性の有利さから、固体電解コンデンサや有機太陽電池、有機発光素子、ITOに変わる導電性フィルムとして産業利用が検討されている導電性高分子である(特許文献1、2及び3を参照)。
【0004】
ポリピロールやポリチオフェンは、適当な置換基を導入することで、ある程度、導電性、耐熱性、耐侯性や成形加工性(なかでも、溶剤溶解性)を調整することが可能である。しかし、他の導電性高分子と同様、全ての面で優れた物性を有するわけではなく、複数の特性を同時に付与することは、極めて困難であり、近年のより高いレベルの要求に対しては不十分である。また、置換基を導入したピロールやチオフェンは、置換基の種類によっては、重合性が低下し、導電性高分子を得ること自体が難しい場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−91358号公報
【特許文献2】特開2007−165093号公報
【特許文献3】特開2007−329454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、優れた導電性、耐熱性、耐候性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)、及び、透明性などの特性を複数有する導電性高分子の前駆体となり得る複素環含有芳香族化合物を提供することにある。本発明の他の目的は、当該複素環含有芳香族化合物の製造方法、及び、当該複素環含有芳香族化合物を含む重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくともチオフェン環又はピロール環のいずれか一方の複素環式骨格を有する非縮合系の2環式芳香族化合物が、優れた導電性、耐熱性、耐候性、溶媒溶解性、成形加工性、及び、透明性を有する導電性高分子又は硬化物の前駆体となり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物に関する。A−B (1)
(式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
【0009】
さらに本発明は、超原子価ヨウ素反応剤の存在下、A−Hで表される化合物と、B−Hで表される化合物をカップリングさせることを特徴とする、上記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物の製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、前記複素環含有芳香族化合物とドーパントとを含有する重合性組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複素環含有芳香族化合物は、導電性、耐熱性、耐候性、成形加工性(なかでも、溶媒溶解性)、透明性等に関して優れた物性を示す導電性ポリマー又は硬化物を調製するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複素環含有芳香族化合物は、下記(1)式で表される化合物である。この化合物については、本明細書中で、「複素環含有芳香族化合物(1)」と記載する場合がある。
A−B (1)
【0013】
ここで、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。
【0014】
チオフェン環基とは2−チエニル基のことをいい、炭素原子上に置換基を有してもよい。
【0015】
ピロール環基とは2−ピロリル基のことをいい、炭素原子上又は窒素原子上に置換基を有してもよい。
【0016】
式(1)におけるA又はBで表される置換チオフェン環基及び置換ピロール環基の例としては、例えば、以下のような構造が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数)
【0019】
【化2】

【0020】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数)
【0021】
【化3】

【0022】
(各式中、Xはハロゲン原子、nは1から10の整数、kは0から20の整数、Rは、置換基を有していてもよい芳香族基又は炭素数1から10のアルキル基を示す)
チオフェン環基の置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。また、ピロール環基の置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、炭素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましく、窒素原子上の置換基としては、炭素数1から10のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。これらチオフェン環基やピロール環基の置換基であるアルキル基又はアルコキシ基には、ハロゲン元素やカルボン酸基、スルホン酸基などの官能基が結合していても良い。
【0023】
前述の炭化水素系芳香族環基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基やナフチル基が挙げられる。好ましくはフェニル基である。これらの基は置換基を有してもよく、そのような置換基としては、後述の有機基が挙げられるが、なかでも炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。
【0024】
Aによって表される環とBによって表される環は、環構造に含まれない原子を介して結合することはなく、両環に含まれる原子間の結合によって、直接結合している。
【0025】
複素環含有芳香族化合物(1)としては、溶剤溶解性や耐熱性、耐候性の観点から、チオフェン環基又はピロール環基の3位又は4位に結合している置換基の数の合計が、2個以上である化合物が好ましい。また、3位又は4位に結合している置換基の数の合計が4個である場合(すなわち、すべての3位及び4位に置換基が結合している場合)、立体障害を避けるために、A又はBの少なくとも一方において、3位の置換基と4位の置換基が結合して環構造を形成していることが好ましい。
【0026】
複素環含有芳香族化合物(1)としては、下記式(2)〜(6)のいずれかによって表される複素環含有芳香族化合物が好ましく、なかでも、チオフェン環基とピロール環基を含む式(2)又は(3)で表される複素環含有芳香族化合物が特に好ましい。
【0027】
【化4】

【0028】
式(2)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表す。
【0029】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。
【0030】
好ましくは、式(2)中、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0031】
より好ましくは、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0032】
さらに好ましくは、優れた導電性を得る観点から、ケースiにおいて、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す。この場合、式(2)で表される化合物は、下記式(2′)で表される。
【0033】
【化5】

【0034】
特に、式(2′)中のR及びRが水素原子を表す下記式で示される化合物が好ましい。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
式(3)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるチオフェン環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基を表す。
【0038】
式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。Rnは有機基を表す。
【0039】
好ましくは、式(3)中、ケースiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0040】
より好ましくは、ケースiにおいて、式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0041】
さらに好ましくは、優れた導電性の観点から、ケースiにおいて、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す。この場合、式(3)で表される化合物は、下記式(3′)で表される。
【0042】
【化8】

【0043】
特に、式(3′)中のR及びRが水素原子を表し、Rnが置換基を有していてもよいフェニル基を表す下記式(3″)で示される化合物が好ましい。
【0044】
【化9】

【0045】
式(3″)中のRxは、水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。導電性や溶剤溶解性の観点から、特に、水素原子、フッ素原子、メトキシ基(−OCH3)、トリフルオロメチル基(−CF3)、メトキシカルボニル基(−COOCH3)が好ましい。
【0046】
【化10】

【0047】
式(4)では、式(1)におけるAが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表し、Bが、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるN−置換ピロール環基を表す。
【0048】
式(4)中、RとR10は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、RとR10がともに水素原子を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。RとR10の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R11とR12の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。Rnは有機基を表す。
【0049】
好ましくは、式(4)中、ケースiにおいて、RとR10は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0050】
【化11】

【0051】
式(5)では、式(1)におけるA及びBが、それぞれ独立して、3位及び/又は4位に置換基を有することがあるピロール環基を表す。ただし、AとBは互いに異なる構造を表すことから、R13、R14及びRnの組合せと、R15、R16及びRnの組合せとが同一である場合は除く。
【0052】
式(5)中、R13とR14は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す(ケースi)。あるいは、R13とR14がともに水素原子を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表す(ケースii)。R13とR14の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R15とR16の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。このような環構造としては、エチレンジオキシ基により形成される環構造が挙げられる。RnとRnは、それぞれ独立して有機基を表す。
【0053】
好ましくは、式(5)中、ケースiにおいて、R13とR14は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、ケースiiにおいて、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する。
【0054】
【化12】

【0055】
式(6)では、式(1)におけるAが、チオフェン環上の3位の置換基と4位の置換基が結合してエチレンジオキシ基を形成している3,4−エチレンジオキシチオフェン環基を表し、Bが、オルト位及び/又はメタ位に置換基を有することがあるフェニル基を表す。
【0056】
式(6)中、R17とR18は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。R19とR20は、それぞれ独立して、有機基を表す。ベンゼン環のオルト位とメタ位は特に酸化されやすいため、これらの位置のうち少なくとも3つに置換基を結合させることによって、化合物の安定性を高めることができる。
【0057】
〜R20及びRn〜Rn、Rxが表すことのできる有機基としては、例えば、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、シクロヘキセニル基等)、炭素数1から5のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等)、置換基を有していてもよいフェニル基(例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−カルボメトキシフェニル基等)、ナフチル基、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基等)が挙げられる。さらに、これらの有機機には、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基などの官能基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素が結合していても良い。また、R〜R20は、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、水酸基やハロゲン元素であっても良い。以上の有機基はそれぞれ独立して選択される。
【0058】
〜R20が表すことのできる有機基としては、炭素数1から10のアルキル基又は炭素数1から5のアルコキシ基が好ましい。Rn〜Rnが表すことのできる有機基としては、炭素数1から10のアルキル基、又は、フェニル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0059】
隣接するR〜R20(RとR、R3とR4、RとR、RとR、RとR10、R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18、R19とR20)の両方が有機基であり、これらが互いに結合して環構造を形成する場合、環構造としては、特に限定されないが、炭素数2から10の脂環式構造が好ましい。脂環式構造には酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、窒素原子などを含んでいても良く、なかでも、特に酸素原子を含んだアルキレンジオキシ基を有する環構造が好ましい。さらに、脂環式構造が芳香族性を有していても良く、この場合、複素環含有芳香族化合物(1)のA、Bは、縮環構造を有する(例えば、イソチアナフテン等)事を意味する。
【0060】
複素環含有芳香族化合物(1)は、超原子価ヨウ素反応剤の存在下、2種類の複素環芳香族化合物、又は、複素環芳香族化合物と炭化水素系芳香族化合物をカップリングさせることで製造することができる。本発明者らは、このようなカップリング反応が超原子価ヨウ素反応剤の存在下では、1:1の比率で効率よく進行することを見出した。
【0061】
超原子価ヨウ素反応剤とは、3価または5価の超原子価状態にあるヨウ素原子を含む反応剤のことをいう。超原子価ヨウ素反応剤は、より安定なオクテット状態(1価のヨウ素)に戻ろうとする性質を有しているため、鉛(IV)、タリウム(III)、水銀(II)などの重金属酸化剤と類似の反応性を有する。さらに、超原子価ヨウ素反応剤は、このような重金属酸化剤に比べて低毒性であり、安全性に優れている。
【0062】
本発明の製造方法に用いられ得る超原子価ヨウ素反応剤は、特に限定されない。3価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、フェニルイオジンビス(トリフルオロアセタート)又は(ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン(以下、PIFAという場合がある))、フェニルイオジンジアセタート(ヨードソベンゼンジアセタート(以下、PIDAという場合がある))、ヒドロキシ(トシロキシ)ヨードベンゼン、ヨードシルベンゼンなどが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0063】
【化13】



【0064】
5価の超原子価ヨウ素反応剤としては、例えば、デスマーチンペルヨージナン(Dess−Martin periodinane(DMP))、o−ヨードキシ安息香酸(o−iodoxybenzoic acid(IBX))などが挙げられる。これらの反応剤の構造式を以下に示す。
【0065】
【化14】

【0066】
これらの超原子価ヨウ素反応剤の中でも、3価の超原子価ヨウ素反応剤が好ましく、PIFAが、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する点で、より好ましい。
【0067】
また超原子価ヨウ素反応剤の中でも、アダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、テトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤を選択すると回収再利用できることから好ましい。より具体的には、1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタンなどの3価のアダマンタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤、または、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンなどの3価のテトラフェニルメタン構造を有する超原子価ヨウ素反応剤は、安定で取り扱いやすく、十分に高い酸化能を有する上に、脂溶性が高く回収再利用可能なので、さらに好ましい。5価の超原子価ヨウ素反応剤を用いる場合は、デスマーチンペルヨージナン(DMP)が好ましい。
【0068】
このような超原子価ヨウ素反応剤は、合成により得られたものを用いてもよく、あるいは市販品を用いてもよい。例えば、PIFAは、PIDAにトリフルオロ酢酸を加えて反応させ、その結果、PIFAを反応生成物として析出させることにより得られる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1985, 757を参照のこと)。PIDAは、ヨードベンゼンを酢酸中、ペルオキソほう酸ナトリウム(4水和物)(NaBO・4HO)を用い酸化することにより得られる(Tetrahedron, 1989, 45, 3299およびChem. Rev., 1996, 96, 1123を参照のこと)。さらに、PIDAは、m−クロロ過安息香酸(mCPBA)を酸化剤としてヨードベンゼンから得られる(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3595を参照のこと)。1,3,5,7−テトラキス−(4−(ジアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−((4−(ヒドロキシ)トシロキシヨード)フェニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス−(4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニル)アダマンタン、テトラキス−4−(ジアセトキシヨード)フェニルメタン、テトラキス−4−ビス(トリフルオロアセトキシヨード)フェニルメタンは、例えば特開2005−220122号公報に記載の方法で合成できる。
【0069】
本発明の製造方法において、超原子価ヨウ素反応剤の使用量は特に限定されず、1種類の原料1モルに対して、好ましくは0.1〜4モル、更に好ましくは0.2〜3モルの割合で用いられ、より好ましくは0.3〜2モルの割合で用いられる。
【0070】
本発明の製造方法では、原料として、置換又は無置換のチオフェン化合物、及び、置換又は無置換のピロール化合物からなる群より選択される化合物A−H、及び、置換又は無置換の炭化水素系芳香族化合物、置換又は無置換のチオフェン化合物、及び、置換又は無置換のピロール化合物からなる群より選択される化合物B−Hを使用する。ここで、A及びBは上記と同様である。これら化合物は、所望の生成物を得るために適宜選択すればよいが、具体的には下記の化合物を使用できる。
【0071】
本発明の製造方法で用いられ得るチオフェン化合物としては、例えば、チオフェン、3位置換チオフェン、3,4位置換チオフェンが挙げられる。具体的には、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェンなどが挙げられる。これらの中でも、置換チオフェン類を用いる場合、置換基の種類およびその置換位置は特に限定されないが、3位と4位にアルキル基またはアルコキシ基を有する置換チオフェン類を用いることが好ましい。
【0072】
本発明の製造方法で用いられ得るピロール化合物としては、例えば、ピロール、3位置換ピロール、3,4位置換ピロール、N−置換ピロールが挙げられる。具体的には、ピロール、3−メチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−フェニルピロール、N−フェニルピロール、N−エチルスルホン酸塩ピロール、3,4−シクロヘキシルピロールなどが挙げられる。これらの中でも、置換ピロール類を用いる場合、置換基の種類およびその置換位置は特に限定されないが、N位にアルキル基またはアリール基、特にN位に、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基を有する置換ピロール類を用いることが好ましい。このような、置換ピロールとしては、N−(4−フルオロフェニル)ピロール、N−(4−クロロフェニル)ピロール、N−(4−シアノフェニル)ピロール、N−(4−ニトロフェニル)ピロール、N−(4−アミノフェニル)ピロール、N−(4−メトキシフェニル)ピロール、N−(4−(1−オキソエチル)フェニル)ピロール、N−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピロール、N−(4−カルボメトキシフェニル)ピロール、N−(4−カルボキシフェニル)ピロール、N−(1−ナフチル)ピロール、N−(2−ナフチル)ピロールなどが挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法で用いられ得る炭化水素系芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、p−ジメトキシベンゼンおよびクレゾール等のベンゼン系芳香族化合物、ビフェニルおよびトリフェニルメタンなどの多環式芳香族化合物、ナフタレンおよびアントラセン等の芳香族縮合環化合物などを用いることができる。なかでも、ベンゼン系芳香族化合物が好ましく、特にベンゼンまたは1,4−置換ベンゼンが好ましい。
【0074】
本発明の製造方法におけるカップリング反応は、通常、溶媒の存在下で実施される。本発明の製造方法で用いられる溶媒としては、原料、及び、超原子価ヨウ素反応剤を溶解または分散させる溶媒であればよい。このような溶媒としては、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。
【0075】
本発明の製造方法においては、カップリング反応の系中に添加剤を適宜添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤と添加剤とを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。添加剤としては、例えば、ブロモトリメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリメチルシリルトリフラート、三フッ化ホウ素、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などがあり、特にブロモトリメチルシランが好ましい。これらは単独で用いても良く、複数で用いても良い。添加剤の使用量は、1種類の原料1モルに対して、好ましくは0.5〜4モル、更に好ましくは1〜4モルの割合で用いられ、より好ましくは1〜2モルの割合で用いられる。
【0076】
本発明の製造方法においては、カップリング反応の系中に、フッ素系アルコールを添加しても良い。超原子価ヨウ素反応剤とフッ素系アルコールとを併用することで、複素環含有芳香族化合物の収率を向上させることができ、また、超原子価ヨウ素反応剤の量を減らすことができる。添加するフッ素系アルコールとしては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロエタノールなどがあり、特に1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールが好ましい。フッ素系アルコールの使用量は、特に特定されないが、用いる溶剤100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、特に、10〜40重量部が好ましい。
【0077】
当該カップリング反応は、通常、各原料、超原子価ヨウ素反応剤、及び、溶剤や他の試薬等を混合して、−50℃〜100℃の温度範囲で、10分から48時間の間行うことによって、複素環含有芳香族化合物(1)を製造することができる。好ましくは、0〜50℃の温度範囲で30分〜8時間行われる。さらに好ましくは、10〜40℃の温度範囲で1〜4時間行われる。加える試薬の順序は問わない。
【0078】
本発明の重合性組成物は、複素環含有芳香族化合物(1)とドーパントを含有する。重合性組成物とは、複素環含有芳香族化合物(1)が空気中の酸素や酸化剤の作用により重合することで導電性ポリマーの薄膜やフィルム等を与え得る組成物のことをいう。この重合性組成物を各種の基材(プラスチック基板、ガラス基板、固体電解コンデンサの製造に使用される酸化皮膜を有するアルミニウムや焼結タンタル等の金属等)に塗布することで、簡便に導電性の薄膜やフィルムを形成することが出来る。複素環含有芳香族化合物(1)は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明の重合性組成物は、組成物総量のうち複素環含有芳香族化合物(1)を10〜90重量%含有することが好ましい。
【0079】
本発明の重合性組成物には、(i)ドーパントのほか、さらに必要に応じて、(ii)酸化剤、(iii)バインダー樹脂、(iv)添加剤、(v)溶剤などが含有され得る。
【0080】
上記(i)のドーパントは、複素環含有芳香族化合物(1)が空気中の酸素や酸化剤の作用により重合することで生成する導電性ポリマーに作用して、その導電性を飛躍的に高めることが出来る電子供与性あるいは受容性をもつ化学物質である。ドーパントは、特に限定されないが、導電性ポリマーに正孔を注入して酸化するアクセプター(p-ドーパント)として、Cl、Br、I、IClなどのハロゲン;PF、BF、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルなどのルイス酸;HF、HCl、HNO、HSOなどのプロトン酸;p−トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などの有機酸などが挙げられ、電子を注入して還元するドナー(n-ドーパント)として、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;銀、ユウロピウム、イッテルビウムなどが挙げられる。これらドーパントは、複素環含有芳香族化合物(1)1モルに対して、好ましくは0.01〜20モルの割合で用いられ、より好ましくは0.5〜10モルの割合で用いられる。
【0081】
上記(ii)の酸化剤は、複素環含有化合物(1)の重合を促進させるためのものであり、例えば、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、エタンスルホン酸鉄(III)、α−スルホ−ナフタレン鉄(III)、β−スルホ−ナフタレン鉄(III)、ナフタレンジスルホン酸鉄(III)、アルキルナフタレンスルホン酸鉄(III)(アルキル基としてはブチル、トリイソプロピル、ジ−t−ブチル等)等過塩素酸鉄(III)、塩化鉄(III)などの鉄(III)系化合物類、または無水塩化アルミニウム/塩化第一銅、アルカリ金属過硫酸塩類、過硫酸アンモニウム塩類、過酸化物類、過マンガン酸カリウム等のマンガン類、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、テトラシアノ−1,4−ベンゾキノン等のキノン類、よう素、臭素等のハロゲン類、過酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等のスルホン酸、オゾン等、およびこれら複数の酸化剤の組み合わせが挙げられる。これらのなかで、p−トルエンスルホン酸鉄(III)、ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)や塩化鉄(III)は、スルホン酸やハロゲンを含んでいることから上記(i)のドーパントとしての働きも有するため、特に好ましい。本発明の重合性組成物は、上記酸化剤を添加せずとも、空気中の酸素によっても重合を進行せしめることが可能であるが、必要に応じて、これらの酸化剤を添加することが出来る。これら酸化剤を添加する場合、複素環含有芳香族化合物(1)1モルに対して酸化剤を0.01〜10モル含むことが好ましく、さらに好ましくは0.1〜4モルである。
【0082】
上記(iii)のバインダー樹脂としては、特に限定されないが、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、並びに、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル及びアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される2種以上のモノマーから構成された共重合体などが挙げられる。本発明の重合性組成物は、複素環含有芳香族化合物(1)100重量部に対してバインダー樹脂を、好ましくは10〜5000重量部、より好ましくは20〜3000重量部含有する。
【0083】
上記(iv)の添加剤としては、基板との密着性を向上させたり、塗膜の耐久性を向上させるためのシランカップリング剤、塗布性を向上させるためのレベリング剤や界面活性剤が挙げられる。シランカップリング剤の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は複数種類を使用することができる。本発明の重合性組成物に、シランカップリング剤を配合する場合、複素環含有芳香族化合物(1)100重量部に対してシランカップリング剤を、好ましくは0.1〜1000重量部、より好ましくは1〜500重量部含有する。界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドなど)、フッ素系界面活性剤(例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなど)が挙げられる。本発明の重合性組成物は、重合性組成物100重量部に対して添加剤を、好ましくは0.01〜80重量部、より好ましくは0.05〜30重量部含有する。
【0084】
上記(v)の溶剤としては、特に限定されないが、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリル、およびトルエン、キシレン(o−、m−、あるいはp−キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、クロロメタン(塩化メチル)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)など)、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒(含水有機溶媒)、および2種以上の有機溶媒の混合溶媒が挙げられる。本発明の重合性組成物は、複素環含有芳香族化合物(1)100重量部に対して溶剤を、好ましくは100〜10000重量部、より好ましくは1000〜6000重量部含有する。
【0085】
本発明の重合性組成物は、例えば0.1〜30μm程度の厚みに薄膜状に展開した後、例えば50〜200℃程度に加熱すること、又は、光線等を照射することで硬化し、必要により乾燥を行うと、導電性薄膜またはフィルムを得ることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0087】
(実施例1)
窒素雰囲気下、室温で、ジクロロメタン(10ml)、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(7)(4mmol、0.43ml)、ブロモトリメチルシラン(4mmol、0.53ml)、ヨードベンゼンジアセタート(PIDA)(6mmol、1.93g)、N−フェニルピロール(8)(4mmol、572.7mg)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(1ml)、トリフルオロ酢酸(4mmol、0.3ml)を100mL三口フラスコに加え、4時間攪拌した。4時間後、飽和重曹水(約40ml)を加え、塩化メチレンを用い分液抽出を行い、有機層をNaSOを用い乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、N−フェニルピロール−EDOTカップリング体(9)788.4mgを得た。
1H NMR (CDCl3): 3.81-3.84 (2H, m), 3.99-4.01 (2H, m), 6.16 (1H, s), 6.33 (1H, dd, J = 3.2, 2.7 Hz), 6.50 (1H, dd, J = 3.2, 1.8 Hz), 6.90 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz). 7.20-7.36 (5H, m)
13C NMR (CDCl3): 64.20, 64.24, 98.21, 108.72, 109.21, 111.67, 123.47, 124.19, 125.66, 126.79, 128.56, 137.83, 140.33, 141.08.
HRFABMS Calcd for C16H13NO2S (M); 283.0667. Found 283.0675.
EI-MS; 283.00 (100 %), 186.00 (76.0 %), 154.00 (35.0 %), 77.00 (26.1 %)
【0088】
【化15】



【0089】
(実施例2)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにピロール(10)(4mmol、268.4mg)を用い、トリフルオロ酢酸を無添加としたこと以外は、実施例1と同様にしてピロール−EDOTカップリング体(11)179.9mgを得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.21-4.25 (2H, m), 4.29-4.32 (2H, m), 6.11 (1H, s), 6.20-6.23 (1H, m), 6.31 (1H, s), 6.79 (1H, s), 9.10 (1H, bs).
HRFABMS Calcd for C10H9NO2S (M); 207.0354. Found 207.0357.
EI-MS; 207.00 (99.5 %), 151.00 (12.8 %), 110.00 (100 %)
【0090】
【化16】

【0091】



【0092】
(実施例3)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにN−(4−フルオロフェニル)ピロール(12)(4mmol、644.7mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてN−(4−フルオロフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(13)940.0mgを得た。
1H NMR (CDCl3): 3.89-3.92 (2H, m), 4.04-4.06 (2H, m), 6.19 (1H, s), 6.33 (1H, dd, J = 3.5, 2.7 Hz), 6.50 (1H, dd, J = 3.5 1.8 Hz), 6.86 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz), 6.99-7.07 (2H, m), 7.18-7.24 (2H, m)
13C NMR (CDCl3): 64.31, 64.33, 98.41, 108.49, 109.35, 111.67, 115.28, 115.57, 123.58, 124.49, 127.45, 127.57, 136.44, 137.89, 141.15, 159.81, 163.07
HRFABMS Calcd for C16H12FNO2S (M); 301.0573. Found 301.0573.
EI-MS; 301.00 (100 %), 204.00 (88.1 %), 172.00 (39.5 %)
【0093】
【化17】

【0094】

【0095】
(実施例4)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにN−(4−メトキシフェニル)ピロール(14)(4mmol、692.8mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてN−(4−メトキシフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(15)639.3mgを得た。
1H-NMR (CDCl3): 3.82 (3H, s), 3.96-4.01 (2H, m), 4.07-4.10 (2H, m), 6.15 (1H, s), 6.31 (1H, dd, J = 3.6, 2.8 Hz), 6.53 (1H, dd, J = 3.6, 1.8 Hz), 6.83 (1H, dd, J = 2.8, 1.8 Hz), 6.86-6.90 (2H, m), 7.16-7.20 (2H, m).
HRFABMS Calcd for C17H15NO3S (M); 313.0773. Found 313.0782.
【0096】
【化18】

【0097】

【0098】
(実施例5)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにN−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピロール(16)(4mmol、844.7mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてN−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(17)744.8mgを得た。
1H-NMR (CDCl3): 3.77-3.79 (2H, m), 4.00-4.03 (2H, m), 6.26 (1H, s), 6.38 (1H, dd, J = 3.3, 2.7 Hz), 6.49 (1H, dd, J = 3.3, 1.8 Hz), 6.95 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.61 (2H, d, J = 8.4 Hz).
HRFABMS Calcd for C17H12F3NO2S (M); 351.0541. Found 351.0536.
EI-MS; 351.00 (77.4 %), 254.00 (100 %), 222.00 (41.1 %)
【0099】
【化19】

【0100】

【0101】
(実施例6)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにN−(4−カルボメトキシフェニル)ピロール(18)(4mmol、804.9mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてN−(4−カルボメトキシフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(19)764.7mgを得た。
1H NMR (CDCl3): 3.77-3.79 (2H, m), 3.84 (3H, s), 4.00-4.03 (2H, m), 6.25 (1H, s), 6.38 (1H, dd, J = 3.6, 2.8 Hz), 6.48 (1H, dd, J = 3.6, 1.8 Hz), 6.97 (1H, dd, J = 2.8, 1.8 Hz), 7.30 (2H, d, J = 6.0 Hz), 8.02 (2H, d, J = 6.0 Hz)
13C NMR (CDCl3): 52.17, 64.20, 64.26, 98.80, 108.19, 110.11, 112.90, 123.23, 123.94, 124.58, 127.91, 130.17, 137.98, 141.18, 144.36, 166.47.
HRFABMS Calcd for C18H15NO4S (M); 341.0722. Found 341.0739.
EI-MS; 341.00 (100 %), 244.00 (41.8 %), 212.00 (22.0 %), 153.00 (14.7 %)
【0102】
【化20】

【0103】

【0104】
(実施例7)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりにN−1−ナフチルピロール(20)(4mmol、773.0mg)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてN−1−ナフチルピロール−EDOTカップリング体(21)613.5mgを得た。
1H-NMR (CDCl3) : 3.89-3.95 (2H, m), 4.00-4.04 (2H, m), 5.90 (1H, s), 6.45 (1H,dd, J = 3.6, 2.7 Hz), 6.76 (1H, dd, J =3.6, 1.8 Hz), 6.88 (1H, dd, J = 2.7, 1.8 Hz), 7.36-7.51 (5H, m), 7.87-7.94 (2H, m).
HRFABMS Calcd for C20H15NO2S (M); 333.0823. Found 333.0823.
EI-MS; 333.00 (100 %), 236.00 (55.4 %), 204.00 (45.8 %)
【0105】
【化21】

【0106】

【0107】
(実施例8)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−フェニルピロール(22)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3−フェニルピロール−EDOTカップリング体(23)を得た。
1H-NMR (CDCl3) : 4.16-4.27 (4H, m), 6.04 (1H, s), 6.26 (1H, t, J = 2.7 Hz), 6.82 (1H, t, J = 2.7 Hz), 7.25-7.52 (5H, m), 9.15 (1H, brs).
IR (KBr) 3427 m, 2927 w, 1602 w, 1553 m, 1493 s, 1441 s, 1366 s, 1265 w, 1165 s, 910 m, 885 m, 737 m, 700 s, 569 w.
HRFABMS Calcd for C16H13NO2S (M):283.0667, Found 283.0668.
【0108】
【化22】

(22)
【0109】

(23)

【0110】
(実施例9)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−(4−クロロフェニル)ピロール(24)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3−(4−クロロフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(25)を得た。
1H-NMR (CDCl3) : 4.19-4.28 (4H, m), 6.09 (1H, s), 6.24 (1H, t, J = 3.0 Hz ) 6.83 (1H, d, J = 3.0 Hz), 7.27-7.7.33 (2H, m), 7.37-7.41 (2H, m) 9.23 (1H, brs)
IR (KBr) 3437 m, 3113 w, 2928 m, 2872 m, 1720 m, 1553 m, 1493 s, 1441 m, 1366 s, 1165 m, 1069 s, 1015 m, 912 s, 831 m, 743 s, 648 m.
HRFABMS Calcd for C16H12ClNO2S [M] + 317.0277, Found 317.0277.
【0111】
【化23】

(24)
【0112】

(25)

【0113】
(実施例10)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−(4−ブロモフェニル)ピロール(26)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3−(4−ブロモフェニル)ピロール−EDOTカップリング体(27)を得た。
1H-NMR (CDCl3) : 4.18-4.25 (4H, m), 6.09 (1H, s), 6.23 (1H, t, J = 3.0 Hz ) 6.81 (1H, d, J = 3.0 Hz), 7.31-7.34 (2H, m), 7.38-7.44 (2H, m) 9.11 (1H, brs).
IR (KBr) :3435 w, 2926 w, 1551 w, 1493 m, 1439 m, 1366 m, 1219 m, 1186 w, 1165 w, 1069 s, 1011 w, 912 w, 885 m, 772 s, 698 w.
HRFABMS Calcd for C16H12BrNO2S [M] + 360.9772, Found 360.9778.
【0114】
【化24】

(26)
【0115】

(27)

【0116】
(実施例11)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに(4−(1H-ピロール-3-イル) 酪酸メチルエステル)(28)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEDOT−(4-(1H-ピロール-3-イル) 酪酸メチルエステル)カップリング体(29)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :1.89-2.02 (2H, m), 2.40 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.72 (2H, t, J = 7.5 Hz), 3.66 (3H, s), 4.22-4.52 (2H, m), 4.30-4.33 (2H, m), 6.09 (1H, t, J = 2.7 Hz ), 6.19 (1H, s), 6.74 (1H, t, J = 2.7 Hz), 9.14 (1H, brs).
IR (KBr) :3438 w, 2928 s, 2858 m, 1730 s, 1556 w, 1495 s, 1439 s, 1366 s, 1275 m, 1167 m, 1146 m, 1070 s, 907 w, 889 m, 706 w.
HRFABMS Calcd for C15H17NO4S [M] + 307.0878, Found 307.0871.
【0117】
【化25】

(28)
【0118】

(29)

【0119】
(実施例12)
実施例1において、EDOTの代わりに3−メトキシチオフェン(30)、N−フェニルピロール(8)の代わりに4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−イソインドール(31)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3−メトキシチオフェン−(4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−イソインドール)カップリング体(32)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :1.64-1.79 (4H, m), 2.52 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.63 (2H, t, J = 6.4 Hz), 3.73 (3H, s), 5.99 (1H, d, J = 2.0 Hz), 6.44 (1H, d, J = 2.8 Hz), 6.54 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.90 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) :22.15, 22.94, 23.58, 23.83, 57.14, 93.09, 112.41, 113.82, 118.34, 121.37, 121.73, 135.07, 158.37.
HRFABMS Calcd for C13H15NOS [M]+ 233.0874, Found 233.0875.
【0120】
【化26】

(30)
【0121】

(31)
【0122】

(32)
【0123】
(実施例13)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−イソインドール(31)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEDOT−(4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−イソインドール)カップリング体(33)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :1.69-1.75 (2H, m), 1.77-1.83 (2H, m), 2.58 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.68 (2H, t, J = 6.4 Hz), 4.21-4.24 (2H, m), 4.27-4.30 (2H, m), 6.15 (1H, s), 6.51 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.00 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) :22.18, 22.91, 23.69, 23.94, 64.63, 64.96, 94.97, 111.79, 112.82, 116.81, 120.26, 120.57, 134.60, 141.44.
HRFABMS Calcd for C14H15NO2S [M]+ 261.0823, Found 261.0809.
【0124】
【化27】

(33)
【0125】
(実施例14)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−メチルー4−メトキシカルボニルピロール(34)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEDOT−3−メチル−4−メトキシカルボニルピロール(35)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :2.50 (3H, s), 3.80 (3H, s), 4.23-4.26 (2H, m), 4.32-4.35 (2H, m), 6.28 (1H, s), 7.40 (1H, d, J = 3.6 Hz), 9.40 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) : 11.02, 50.73, 64.47, 65.10, 96.78, 109.83, 115.10, 117.29, 123.27, 123.38, 136.16, 141.36, 165.72.
HRFABMS Calcd for C13H13NO4S [M]+ 279.0565, Found 279.0553.
【0126】
【化28】

(34)
【0127】

(35)

【0128】
(実施例15)
実施例1において、EDOTの代わりに3,4−(2,2’−ジメチルプロピレン)−ジオキシチオフェン(36)、N−フェニルピロール(8)の代わりに3−メチル−4−メトキシカルボニルピロール(34)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして3,4−(2,2’−ジメチルプロピレン)−ジオキシチオフェン―3−メチル−4−メトキシカルボニルピロール(37)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :1.02 (6H, s), 2.24 (3H, s), 3.75 (2H, s), 3.82 (3H, s), 3.85 (2H, s), 6.46 (1H, s), 6.53-6.54 (1H, d, J = 2.0 Hz), 9.72 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) :12.74, 21.74, 38.80, 50.65, 79.86, 80.35, 105.07, 110.68, 113.68, 116.21, 121.85, 129.78, 146.48, 148.73, 166.11.
HRFABMS Calcd for C16H19NO4S [M]+ 321.103, Found 321.1035.
【0129】
【化29】

(36)
【0130】

(37)

【0131】
(実施例16)
実施例1において、N−フェニルピロール(8)の代わりに1,3−ジメトキシベンゼン(38)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEDOT−2,4−ジメトキシベンゼンのカップリング体(39)を得た。
1H-NMR (CDCl3) :3.76 (3H, s), 3.79 (3H, s), 4.14-4.19 (4H, m), 6.28 (1H, s), 6.44-6.49 (2H, m), 7.68 (1H, d, J = 8.4 Hz).
13C NMR (CDCl3) : 55.38, 55.59, 64.42, 64.69, 98.05, 98.92, 104.63, 113.19, 114.50, 130.52, 137.75, 141.16, 157.04, 159.73.
IR (KBr): 2930 m, 2837 w, 1609 m, 1580 m, 1514 s, 1435 s, 1416 m, 1366 s, 1304 m, 1277 m, 1209 s, 1128 m, 1072 s, 1030 m, 937 m, 912 w, 897 w, 772 s, 671cm-1.
HRFABMS Calcd for C14H14O4S [M] + 278.0613, Found 278.0613.
【0132】
【化30】

(38)
【0133】

(39)

【0134】
(実施例17〜32)
次に、表1に示した配合比率に従い、実施例1から16で得られたカップリング体をジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)に溶解した後、p−トルエンスルホン酸鉄(III)を加え1分間攪拌することにより、重合性組成物を得た。
【0135】
次いで、調製した重合性組成物を、No.4のワイヤーバー(塗布量:湿潤状態で約9μmの厚み)を用いてガラス板(JIS R3202)に塗布した。次いで、60℃で10分間、送風乾燥した。得られた薄膜を純水中に浸漬後、100℃で1分間乾燥することで薄膜を得た。
【0136】
次いで、得られた薄膜の表面抵抗率を、ハイレスタ−UP(MCP−HT450)(三菱化学株式会社製)を用いて、JIS K6911に準じて測定した。さらに、得られた薄膜の膜厚を、触針式表面形状測定器 Dektak 6M(株式会社 アルバック製)を用いて測定し、表面抵抗率と膜厚より導電率を算出した。
【0137】
得られた薄膜の全光線透過率を、JIS K7150に従い、スガ試験機(株)製ヘイズコンピュータHGM−2Bを用いて測定した。
【0138】
さらに、上記で得られた薄膜の溶剤溶解性を調べた。上記ガラス板から、薄膜をカミソリを使用してかきとったサンプル1mgを1mlのスクリュー瓶に計量し、100mgの溶媒(NMP(N−メチルピロリドン)、MEK(メチルエチルケトン)、又は、トルエン)を加え、30分振盪し、よく混合した。得られた溶液を、40mm×50mmのカバーグラス上に数滴のせ、さらに、その上から40mm×50mmのカバーグラスを載せ、溶液を挟み込み、外観を目視観察し、下記の通り溶媒溶解性を判定した。
○:溶解:溶媒が着色し、透明感があり、且つ固形物(不溶物)が観測されない。
△:一部溶解:固形物(不溶物)が観測されるが、溶媒が着色している。
×:不溶:溶媒が着色せず、固形物(不溶物)が観測される。
【0139】
さらに、上記で得られた薄膜の耐候性の指標として、耐紫外線性を調べた。すなわち薄膜を、10分間紫外線露光した後、薄膜の表面抵抗率を測定した。
【0140】
さらに、上記で得られた薄膜の耐熱性を調べた。すなわち薄膜を、200℃で1時間加熱した後、薄膜の表面抵抗率を測定した。
【0141】
表面抵抗率、全光線透過率、溶剤溶解性、耐紫外線性、及び、耐熱性の結果を表2に示した。
【0142】
(比較例1)
次に、ピロール(10)1.0gをジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)13gに溶解させたのち、p−トルエンスルホン酸鉄(III)2.0gを加え1分間攪拌することにより、重合性組成物を得た。
【0143】
【化31】

(10)
【0144】
得られた重合性組成物を用い、上記と同様にして薄膜を作成した後、表面抵抗率、全光線透過率、溶剤溶解性、耐紫外線性、及び、耐熱性の試験を実施し、それらの結果を表2に示した。
【0145】
(比較例2)
次に、N−フェニルピロール(8)1.7gをジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)13gに溶解させたのち、p−トルエンスルホン酸鉄(III)2.0gを加え1分間攪拌することにより、重合性組成物を得た。
【0146】
【化32】

(8)
【0147】
得られた重合性組成物を用い、上記と同様にして薄膜を作成した後、表面抵抗率、全光線透過率、溶剤溶解性、耐紫外線性、及び、耐熱性の試験を実施し、それらの結果を表2に示した。
【0148】
【表1】



【0149】
【表2】

【0150】
表1より、実施例17〜32の重合性組成物から得られた薄膜は、比較例1の重合性組成物から得られた薄膜と同程度以上の高い導電性と透明性を持つことが分かる。
【0151】
一方で、比較例1薄膜はNMP、MEK、トルエン等の有機溶剤に良好な溶解性を示さないため、均一な塗布、製膜が困難で、成形加工性に劣るのに対し、実施例8〜14の薄膜はこれらの有機溶剤に対する溶解性が向上していることが分かる。このように広範囲の有機溶剤に均一に溶解するので、導電性塗料として均一塗布が可能で、良好な成形加工性を有していることが分かる。
【0152】
比較例1の薄膜は、紫外線照射後又は200℃加熱後の表面抵抗率の上昇率が高く、厳しい環境で使用されるとその導電性が大きく低下してしまうことが分かる。それに対して、実施例17〜32の薄膜は表面抵抗率の上昇率が低いため、環境に左右されない、安定した導電性を示すことが分かる。
【0153】
このように、本発明の複素環含有芳香族化合物は、導電性、耐熱性、耐候性、透明性、成形加工性のバランスの良い導電性ポリマーを与えることが分かる。
【0154】
さらに、比較例2においては、重合反応が進行しにくく、製膜することが出来なかったのに対し、同様のN−フェニルピロール骨格を有する実施例1のカップリング体は、重合が容易に進行し、導電性の薄膜を与えることから、反応性の低いモノマーについても、本発明の複素環含有芳香族化合物へ変換することで、ポリマー骨格への導入が可能となり、導電性ポリマーの設計の幅が広がる事を示している。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明によれば、新規の複素環含有芳香族化合物、その簡便な製造方法、及び、同化合物を含む重合性組成物が提供される。本発明の複素環含有芳香族化合物又は組成物は、熱又は放射線により重合し、導電性の重合体又は硬化物を与えることができる。この重合体又は硬化物は透明性、導電性、耐熱性などを高いレベルで維持することが可能であるので、本発明は、各種電子部品(導電性フィルム、固体電解コンデンサ、液晶パネルやタッチパネル等に用いられる透明電極など)や太陽電池などの導電性材料、帯電防止剤などに使用可能な導電性高分子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物。
A−B (1)
(式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
【請求項2】
チオフェン環基とピロール環基が結合して構成される、下記一般式(2)で表される請求項1に記載の化合物。
【化1】



(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項3】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
式(2)中、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す請求項2〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
下記式で示される請求項2〜5のいずれかに記載の化合物。
【化2】

【請求項7】
チオフェン環基とN−置換ピロール環基が結合して構成される、下記一般式(3)で表される請求項1に記載の化合物。
【化3】



(式中、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとRがともに水素原子を表し、かつ、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表す。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RとRの双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rnは有機基を表す。)
【請求項8】
式(3)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(2)中、RとRは、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
式(3)中、RとRが、互いに結合して、エチレンジオキシ基を表す請求項7〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
下記式で示される請求項7〜10のいずれかに記載の化合物。
【化4】



(式中、Rx は、水素原子、有機基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項12】
下記式で示される請求項7〜10のいずれかに記載の化合物。
【化5】

【請求項13】
ピロール環基とN−置換ピロール環基が結合して構成される、下記一般式(4)で表される請求項1に記載の化合物。
【化6】



(式中、RとR10は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、RとR10がともに水素原子を表し、かつ、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表す。RとR10の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R11とR12の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rnは有機基を表す。)
【請求項14】
式(4)中、RとR10は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、R11とR12は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
互いに異なる2つのN−置換ピロール環が結合して構成される、下記一般式(5)で表される請求項1に記載の化合物。
【化7】



(式中、R13とR14は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。あるいは、R13とR14がともに水素原子を表し、かつ、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表す。R13とR14の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。R15とR16の双方が有機基を表す場合、これらは互いに結合して環構造を形成してもよい。RnとRnは、それぞれ独立して有機基を表す。ただし、R13、R14及びRnの組合せと、R15、R16及びRnの組合せとが同一である場合を除く。)
【請求項16】
式(5)中、R13とR14は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成し、及び/又は、R15とR16は、それぞれ独立して、有機基を表し、これらは互いに結合して環構造を形成する、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
3,4−エチレンジオキシチオフェン環基とベンゼン環基が結合して構成される、下記一般式(6)で表される請求項1に記載の化合物。
【化8】



(式中、R17とR18は、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表すが、少なくとも一方は有機基を表す。R19とR20は、それぞれ独立して、有機基を表す。)
【請求項18】
超原子価ヨウ素反応剤の存在下、A−Hで表される化合物と、B−Hで表される化合物をカップリングさせることを特徴とする、下記一般式(1)で表される複素環含有芳香族化合物の製造方法。
A−B (1)
(各式中、Aは、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表し、Bは、置換若しくは無置換の炭化水素系芳香族環基、置換若しくは無置換のチオフェン環基、又は、置換若しくは無置換のピロール環基を表す。Aによって表される環とBによって表される環は直接結合している。ただし、AとBは互いに異なる構造を表す。)
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載の複素環含有芳香族化合物とドーパントとを含有する重合性組成物。

【公開番号】特開2010−43071(P2010−43071A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165238(P2009−165238)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年3月15日 北泰行教授定年退任記念事業会発行の「北泰行教授定年退任記念誌−有機化学と共に歩んで−」に発表
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】