説明

新規N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒和物



本発明は、nが0モル又は1モルを表し溶媒和物が水、C−Cアルコール、C−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル、又はジオクサンを表す上記式(I)の新規N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒和物、及び溶媒和体(n=1)と脱溶媒和体(n=0)との混合物に関する。更に、本発明は、これらの溶媒和物及び混合物を作製するプロセス、及び抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛を治療するためのこれらの溶媒和物及び混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、nが0モル又は1モルを表し溶媒和物(solvate)が水、C−Cアルコール、C−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル、又はジオクサンを表す下記式(I)の新規N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒和物、及び溶媒和体(n=1)と脱溶媒和体(n=0)との混合物に関する。更に、本発明は、これらの溶媒和物及び混合物を作製するプロセス、及び抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛を治療するためのこれらの溶媒和物及び混合物の使用に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
選択的シクロオキシゲナーゼ−2−阻害剤の副作用プロフィールは、非ステロイド系抗炎症薬の副作用プロフィールよりもはるかに良好であることが知られている。これは、第1に、胃腸への副作用に関して良好であるとされている。
【0004】
現在、2つの世代の選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤が知られている。最初に市販されたシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤の1つは、セレコキシブであった。セレコキシブは、選択性が高く、胃腸への副作用を大きく減少させるものの、かかる副作用が完全になくなるわけではない。
【0005】
COX−2酵素阻害剤の第2世代の1つであるバルデコキシブは、2002年に、変形性関節症、関節リウマチ、月経困難症による疼痛の治療用として発売された。調査報告書によればバルデコキシブの投与においても胃腸への副作用がみられることが知られている。
【0006】
選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤が心血管への副作用を有することも考慮すべきである。
【0007】
これらの事実は、別の第1世代COX−2阻害剤であるロフェコキシブに関する調査でもみられる(Vigor-study, Bombardier C, Laine L, Reicin A et al for the VIGOR Study Group. Comparison of upper gastrointestinal toxicity of rofecoxib and naproxen in patients with rheumatoid arthritis. N Engl J Med 343(21):1520-1528, Nov. 2000)。
【0008】
可能性のある原因については、D. Mukherjeeの調査で詳細に考察された(Mukherjee D, Nissen SE, Topol EJ. Risk of cardiovascur events associated with selective COX-2 inhibitors. JAMA 2001; 286: 954-959)。
【0009】
上記の問題を解決するため、より有効な選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤について研究を行った。
【0010】
驚くべきことに、我々は、式(I)のN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒和物(n=1)と脱溶媒和体(n=0)、又はそれらの混合物が、バルデコキシブよりも更に有利な効果プロフィールを有することを発見した。
【0011】
ある論文(Josh J. Yuan, Dai-Chang Yang, Ji Y. Zjang, Roy Bible Jr., Aziz Karim es John W.A. Findlay: Drug Metabolism and Disposition Vol. 30 (No. 9), 1013-1021 (2002))には、脱溶媒和N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドが、バルデコキシブの代謝産物として尿中に排出されることが記載されている。この化合物は、質量分析によってバルデコキシブの下位代謝産物として識別されたが、かかる化合物の調製、生物学的特性、及び化学的特性については報告されていない。
【0012】
一般式(I)の化合物は、選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤の群に含めるべきである。理由は、これらの化合物は、表1に示したように、シクロオキシゲナーゼ−2酵素に対して大きな選択性を有するからである。一般式(I)の化合物の主効果(抗炎症性と鎮痛性)については、バルデコキシブよりも更に良好な特性がみられる。理由は、これらの化合物は、バルデコキシブよりも生体内テストにおいてはるかに良好な結果をあげるからである。
【0013】
一般式(I)の化合物の副作用は、バルデコキシブの副作用よりも更に有利なプロフィールを有する。これらの化合物は、血流の速度を増大させた。この効果は、臨床治療を実践する上で有利である。疼痛を伴う関節炎、変性関節、骨の変形は、老齢者によく発現するが、これら老齢者にはこれと同時に、心臓の血管基盤の異常を引き起こしうる脈管系の疾病もよくみられる。この場合、関節や骨の問題に使用される治療が、心臓の血管基盤も大きく向上させるならば、かかる治療は非常に有利となり得る。
【0014】
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの調製中、我々は、溶媒和体は結晶化しており容易に取扱い可能なので、溶媒和体の特性の方がアモルファス化合物の特性より良好であることを発見した。式(I)の溶媒和物は、包接化合物として、1モルの溶媒和物を含む(n=1)。溶媒和物は、1モルの水、1モルのC−Cアルコール、1モルのC−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル、又は1モルのジオクサンであってよい。一般式(I)の化合物の溶媒和物(n=1)は、調製又は分離の際に、かかる溶媒和物のうちの一部を脱離させることができる。一般式(I)の化合物の脱溶媒和体は、真空中で加熱することにより形成することができる。溶媒和体と脱溶媒和体との比率は、加熱時間を変化させることにより調整可能である。
【0015】
一般式(I)の化合物の出発原料は、3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール(II)であった。かかる出発原料は、クロロスルホン酸の反応によって3,4−ジフェニル−5−メチル−イソオキサゾール(III)から調製した。式(III)の化合物の調製は、以下の論文を参照して行うことができる:P. Bravo, G. Gaudiano, C. Ticozzi: Gazz. Chim. Ital. 102,395 (1972)
【0016】
スルホン化は、不活性有機溶媒中において、好ましくは非水ジコロメタン中において行った。すなわち、3,4−ジフェニル−5−メチル−イソオキサゾールは、その数倍量のクロロスルホン酸と、好ましくはその5倍量のクロロスルホン酸と、好ましくは反応混合物の沸点まで加熱して反応させた。
【0017】
式(II)の化合物は、2つの異なるプロセスにて、ヒドロキシスルホンアミドと結合させることができる。
【0018】
方法aの場合、クロロスルホニル誘導体を、水溶性溶媒と水との混合物において、ヒドロキシルアミンと反応させた。反応時間は15〜45分、好ましくは30分であった。反応温度は摂氏15〜25度であった。反応混合物を水に加えて、生成物を濾過して、水で洗浄した。粗生成物は、水とエタノールとの混合物から結晶化させた。最終生成物は一水和物(I、n:1、溶媒和物:HO)で、収率は70%、純度は99.8%(HPLC)であった。
【0019】
方法bの場合、クロロスルホニル誘導体を、非水溶性溶媒の混合物中において、好ましくは相転換触媒であるテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩が存在するエチルアセテートと水との中において反応させた。反応は室温で行い、反応時間は5〜20時間であった。調製後に得た粗生成物は結晶化させてから、水とアルコールとの混合物、好ましくは水とエタノールとの混合物から再結晶させた。収率は60%であった。得た生成物の溶媒和物は水であった。
【0020】
脱溶媒和N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの調製は、一般式(I)の溶媒化合物を加熱することによって、好ましくはN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物を加熱することによって行った。加熱時間は、20〜40分、好ましくは25分であった。
【0021】
生体外調査
ヒトの組換えCOX−2とシープのCOX−1との活性度を分光学的TMPD分析によって測定した(K. Gierse, S.D. Hauser, D.P. Creely, C.M. Koboldt, S.H. Rangwala, P.C. Isakson and K. Seibert: Expression and selective inhibition of the constitutive and inducible forms of human cyclo-oxygenase Biochem. J. 305: 479-484 (1995))。
【0022】
測定の原理
ヒトの組換えCOX−2とシープのCOX−1との活性度を、N,N,N’,N’,−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMPD)の酸化に基づく分光学的分析によって測定した。プロスタグランジンG(PGG)がプロスタグランジンエンドピロキシドH(PGH)に還元される間に、TMPDは610nmにおいて分光光度計で測定可能な着色生成物に酸化された。
【0023】
方法
異なる濃度の阻害剤の溶液4μlを、反応混合物156μl(リン酸ナトリウム緩衝液100mM、pH:6.5、ヘマチン1μM、ゼラチン1mg/ml)に加えた。その後、50単位のヒトの組換えCOX−2酵素の溶液20μl、又は50単位のシープのCOX−1酵素の溶液20μl(米国アナーバーに在するCayman Chemical社製の品番60122/COX−2/と品番60100/COX−1/)を加えた。インキュベーション混合物は、分光学的96ウェルプレートリーダ(Labsystem社製のiEMS Reader MF)において摂氏25度で15分、前保温した。次に、アラキドン酸1mMとTMPD溶液1mMとの混合物20μlを加えて10秒振動させ、吸光度を610nmにおいて測定した。結果を表1にまとめた。
【0024】
【表1】

【0025】
生体内調査
1.カラゲナンに誘発されたラットの足の浮腫の分析
オスのウィスターラット(140〜150g)の右後足にカラゲナン(1%懸濁液50μl)を皮下注射して浮腫を誘発した。形成された炎症を体積記録器(Ugo Basile社製、型式:7150)で測定した。処置した足を(0.5%生理食塩水中に添加物を0.3%含有する溶液で充填された)体積記録器内に入れ、炎症のレベルを排出溶液の体積から割り出した。この体積を、最初の注射前の足の体積と比較した。
【0026】
炎症のレベル(ml)=CA処置後の体積(ml)−CA処置前の体積(ml)
【0027】
被処置群において誘発された炎症を、(基材のみ注射された)対照群と比較した。
【0028】
サンプル材と溶媒とを、CA処置の1時間前に胃腸用体内検査用消息子を介して経口にて投与した。処置された足の体積を、CA処置から3時間後と5時間後に測定した。炎症レベルの変化は、以下のように計算した。
【0029】
炎症阻害率(%)=対照群(ml)−被処置群(ml)/対照群(ml)
【0030】
広い投与範囲のバルデコキシブ(0.1mg/kg、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg)と、実施例1の化合物とを調べた(n=6〜12匹/群)。化合物の炎症阻害効果のレベルは、処置から4時間後と6時間後に百分率として測定し、炎症阻害の有効量ED30を計算した。
【0031】
結果:
バルデコキシブの浮腫阻害効果
処置から4時間後:ED30=0.2mg/kg
処置から6時間後:ED30=0.3mg/kg
【0032】
実施例1の化合物の浮腫阻害効果
処置から4時間後:ED30=1.8mg/kg
処置から6時間後:ED30=0.8mg/kg
【0033】
結果からわかるように、両化合物の浮腫阻害効果は有意であった。バルデコキシブの阻害効果は、処置から4時間後においては、実施例1の化合物より大きい。しかしながら、実施例1の化合物は処置から4時間後よりも6時間後においてより有効であるので、実施例1の化合物の効果プロフィールは良好であった。
【0034】
結果を表2にまとめた。
【0035】
【表2】

【0036】
動物の疼痛の閾値は、フォンフライ装置(IITC社製、型式:1601C)で測定した。刺激閾値は、足裏表面の中央部位に加える力を連続的に増大させて測定した。これらの値は、ピーク時に記録した。各測定中に、閾値を少なくとも3回測定し、ピーク値から平均値を計算した。
【0037】
オスのスプレーグドーリーラット(体重:250〜300g)を使用した(n=5〜6匹/群)。カラゲナン(CA)の生理食塩水溶液100μlを足の中央に注射した。その後、刺激閾値を測定し、胃腸用体内検査用消息子を用いて経口にて処置を完了した。処置から30分後、60分後、90分後、120分後において、マテリアルの効果を測定した。その効果を、基材(2%トウィーン80溶液)で処置した対照群と比較した。
【0038】
効果は以下のように計算した。
【0039】
鎮痛効果(%)=被処置群の閾値(t)−対照群の閾値(t)/CA注射後の被処置群の閾値(t)−対照群の閾値(t
=30分、60分、90分、120分
【0040】
急性疼痛モデルにおいて、バルデコキシブと実施例1の化合物の鎮痛効果については、1回当たり経口投与量30mg/kgを適量とした。
【0041】
バルデコキシブの阻害効果は、実施例1の化合物の阻害効果より若干高かった(5〜10%)が、この差異は統計的には有意ではなかった。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
3.ラットにおけるカラゲナンとカオリンに誘発された単関節炎モデル(活動不能化テスト)
活動不能化テスターは、疼痛から生じる機能パラメータの変化を測定するための装置である。この装置は、後足の挙動、移動量、及び重力中心の変化を記録することができる。
【0044】
後足の膝関節に対して、カラゲナン及びカオリンを2%含有する溶液100μlを処置した。処置後3〜4時間の間に、処置した足の関節包靭帯に関節炎が発現した。この炎症は、処置から24時間を経てもなお存在する。疼痛のため、動物は処置された足をかばってその足にあまり体重をかけない。重量負荷の変化は、活動不能化テスター装置でグラム単位で測定することができる。
【0045】
活動不能化は、以下のように計算した。
【0046】
活動不能化(IC%)={左足(g)−右足(g)/左足(g)+右足(g)}×100
【0047】
鎮痛抗炎症化合物は、膝関節の刺激閾値を増大することができたので、ひいては足の機能パラメータが向上した。この測定は、左脚の負荷の減少レベルによって、すなわち、リバーサル百分率として計算することができる。
【0048】
リバーサル率(%)=100×{処置後の左足の活動不能化率(%)/処置前の左足の活動不能化率(%)}×100
【0049】
左足への刺激剤投与によって誘発された活動不能化を、注射から4時間後に測定した。その後、動物(n=24〜32匹/群)に、バルデコキシブとテスト化合物とを投与量10mg/kgにて経口処置した。測定は、処置から1時間後と2時間後に行った。両化合物の鎮痛効果は、1時間後に有意であり、次の1時間後に増大した。実施例1の化合物の効果は、バルデコキシブの効果よりも両測定点において20%高かった。
【0050】
結果を表4にまとめた。
【0051】
【表4】

【0052】
4.ラットにおけるカラゲナンに誘発された炎症性痛覚過敏モデル(ランダル・セリット法)
右後足の足裏表面にカラゲナン(CA)を注射して浮腫を誘発した。オスのSPRDラット(体重140〜190g)を使用した(n=6〜8匹/群)。次に、炎症を有する後足の物理的疼痛閾値を無痛覚計(Ugo Basile社製、型式:37215)で測定した。
【0053】
この分析では、疼痛閾値の減少と、物理的疼痛刺激による疼痛の時間依存性の変化を監視する。鎮痛剤によって、炎症後足の疼痛閾値は増大し、この効果はリバーサル百分率として表される。
【0054】
未処置の右後足を、徐々に圧力を増大させて圧迫した。動物が最初に発声したとき又は足を大きく動かそうとしたときの圧力を記録した(単位:グラム)。未処置の足の基準閾値を測定した(平均:80〜110g)。その後、動物にカラゲナンを処置した。処置後、任意の時間において、浮腫と閾値をチェックした。CAに誘発された閾値の減少は、注射から3時間後に観察された(炎症に誘発された疼痛の閾値の平均は、20〜25gであった。これは、基準閾値に対して65〜80%減少したことを意味する)。
【0055】
急性モデル:
CA注射(2%溶液100μl)から1時間後に、動物に対してテスト化合物とバルデコキシブ(各10mg/kg経口投与)を処置した。閾値の変化を投与から2時間後に測定した。
【0056】
慢性モデル:
炎症の慢性相と閾値の減少を、更に多くの量のCAを投与することによって誘発した。炎症によって生じた閾値の減少は、CA注射(2%溶液150μl)から24時間後に測定された。その後、動物に対してテスト化合物とバルデコキシブ(各30mg/kg経口投与)を処置した。閾値の変化を薬剤投与から1時間後、2時間後、3時間後にチェックした。両モデルにおいて使用した対照群に対しては、処置時間に溶媒のみを経口処置した。両プロトコルにおいて、テスト化合物の効果を物理的過剰痛覚のリバーサル百分率として計算した。
【0057】
リバーサル率(%)={処置群の平均Txh(g)−対照群の平均T3h/T24h(g)/対照群の基準T0h(g)−対照群の平均T3h/T24h(g)}×100
3h:急性モデルにおける、CA注射から3時間後における対照群の閾値(単位:グラム)
24h:慢性モデルにおける、CA注射から24時間後における対照群の閾値(単位:グラム)
0h:CA注射前の閾値(単位:グラム)
xh:急性モデルにおいては、CA注射から3時間後
xh:慢性モデルにおいては、CA注射から25時間後、26時間後、27時間後
【0058】
バルデコキシブとテスト化合物は、急性モデルと慢性モデルにおいて有意な抗過剰痛覚性を示した。慢性モデルにおいては、3回の測定時間すべてにおいて、実施例1の化合物はバルデコキシブよりも効果が高かった。急性モデルと慢性モデルとの結果を、それぞれ表5、6にまとめた。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
5.分離したラビットの心臓に及ぼす心臓への影響
体重1.5〜2kgのニュージーランドホワイトラビットを使用した。動物は放血を行い、開胸術後に心臓を摘出してランゲンドルフ型灌流装置に設置した。心臓は、大動脈を介して、酸素処理し恒温(摂氏37度)に維持したクレブス溶液で灌流した。一定の灌流圧力の80cmHOを適用した。テスト化合物を灌流溶液に溶解して、要求される濃度にした。
【0062】
冠状動脈の流量の基準値を測定した。その後、少量の化合物を灌流液に加え、灌流を10分毎に30分間測定した。その後30分間、化合物なしで灌流を行い、溶剤と高量の化合物とを加えた状態で測定を繰り返した。
【0063】
同じ濃度のバルデコキシブと実施例1のテスト化合物の効果を、各4つの心臓において調査した(濃度は1、3、10μM)。バルデコキシブは、いずれの濃度においても効果を示さなかった。実施例1の化合物は、効能を示した。その結果は表7にまとめた。明らかに、冠状動脈流量が投与量に依存して増大していることがわかる。この効果は臨床治療において有利である。疼痛を伴う関節炎、変性関節、骨の変形は、老齢者によく発現するが、これらの高齢者においてはこれと同時に、心臓の血管基盤の異常を引き起こしうる脈管系の疾病もよくみられるからである。この場合、関節や骨の問題に使用される治療が、心臓の血管基盤も大きく向上させるならば、かかる治療は非常に有利となり得る。
【0064】
【表7】

【0065】
生物学的調査の結果から以下のことがわかった:
・生体外調査に基づくと、一般式(I)の化合物は、有意なCOX−2酵素に対する選択性を有する。
・生体内テスト結果からわかるように、一般式(I)の化合物の効果は、バルデコキシブの効果よりも高い。
・一般式(I)の化合物は、冠状動脈の流量を増大させる。
【0066】
本発明の実装を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
NMR調査は、バリアン分光形(300MHz)によって実施した。HPLC調査は、メルク・ヒタチ・ラクロム装置によって行った。
【0068】
実施例1
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物
A.
ヒドロキシルアミン塩酸塩6.88g(0.099モル)をジオクサン50ml内で懸濁し、摂氏+10度まで冷却し、水25ml中に酢酸ナトリウム8.1g(0.099モル)を溶解した溶液を加えた。ジオクサン50ml中に3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール11g(0.033モル)を溶解した溶液を30分間加えた。混合物を30分間攪拌して水500mlに加え、懸濁液を2時間振動させた。粗生成物を酢酸エチル(200ml)に溶解して、溶液を、まずエチレンジアミン4酢酸ジナトリウム塩(40ml)の5%水溶液で、次に水(40ml)で、最後に塩水(20ml)で抽出した。溶液を真空中で蒸散した。残留物をエタノール(90ml)に溶解し、活性炭(1g)で脱色し、濾過し、アスコルビン酸(3g)を含む水(270ml)を摂氏60度にて溶液に加えた。溶液を冷却し(摂氏+5度)、沈降物を濾過して、水で洗浄し、乾燥させて、上記標題の化合物を得た(7.8g、68%、mp:摂氏95〜110度)。H NMR(DMSd、摂氏30度、δTMS:0.00ppm):2.49s(3H)、7.33〜7.52m(7H)、8.82〜7.88m(2H)、9.67s(2H)。純度はHPLCにより99.9%であった。
【0069】
B.
3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール5.4g(0.016モル)を酢酸エチル65mlに溶解した。ヒドロキシルアミンの50%水溶液2.3ml(0.035モル)と、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩0.3gを水(65ml)内で混合した。反応混合物を8〜20時間、室温で攪拌した。酢酸エチル(150ml)と水(150ml)とを反応混合物に加えた。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させてから、溶液を減圧下で蒸散させた。残留物(4.9g)をエタノール70mlに溶解し、活性炭で脱色した後、溶液を濾過した。水(210ml)を溶液に加え、結晶物を濾過して、水で洗浄して乾燥させた。収率は3.0g(54%)であった。
【0070】
実施例2
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドのモノ酢酸エチル溶媒和物
ヒドロキシルアミン塩酸塩6.88g(0.099モル)をジオクサン50ml内で懸濁し、摂氏+10度まで冷却し、水25ml中に酢酸ナトリウム8.1g(0.099モル)を溶解した溶液を加えた。ジオクサン50ml中に3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール11g(0.033モル)を溶解した溶液を30分間加えた。混合物を30分間攪拌して水600mlに加え、懸濁液を2時間攪拌した。懸濁液を濾過して水100mlで2回洗浄した。沈降物を、酢酸エチル300mlに溶解して、水50mlで3回抽出した。有機溶液を無水硫酸マグネシウム5gで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾過した後、溶液を減圧下(40mbar)で80mlになるまで蒸散し、生成物を結晶化させた。この懸濁液を摂氏−5度で2時間攪拌し、冷却した(摂氏−10度)酢酸エチル10mlで洗浄した。乾燥後、上記標題の化合物8.5g(60%)を得た(mp:摂氏96〜100度、摂氏108度で分解)。純度はHPLCにより99.9%であった。
【0071】
実施例3
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドのモノ−2−プロパノール溶媒和物
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドのモノ酢酸エチル溶媒和物4gを摂氏45度にて2−プロパノール20mlに溶解した。加熱を停止し、上記標題の化合物を沈降させた。懸濁液を摂氏0度で2時間攪拌し、濾過して、上記標題の化合物を得た(3.6g、96%、mp:摂氏100〜118度、摂氏123度で分解)。
【0072】
実施例4
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドのモノ−ジオクサン溶媒和物
実施例3の標題の化合物100mgをジオクサン10mlに溶解し、摂氏40度まで加熱し、水10mlを滴下して加えた。生成物を、摂氏20度で結晶形に沈降させた。懸濁液を2時間攪拌し、濾過してから、生成物を摂氏25度で乾燥させた。収率は100mg(83%)であった(mp:摂氏148〜153度)。
【0073】
実施例5
3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール(II)の調製
クロロスルホン酸6.65g(0.1モル)を無水ジクロロメタン50mlに溶解した。溶液を摂氏0度まで冷却し、無水ジクロロメタン20mlに3,4,ジフェニル−5−メチル−イソオキサゾール4.7g(0.02モル)を溶解した溶液を加えた。反応混合物を室温で2時間攪拌し、更に10時間沸点にて攪拌した。溶媒を蒸散し、残留物を氷50g上に注いだ。この懸濁液を酢酸エチル40mlで2回抽出した。合成有機相を水50mlで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過と蒸散を行った後、残留物を高温のシクロヘキサンに溶解し、摂氏+15度まで冷却して結晶化させた。沈降生成物(4g)を濾過して、シクロヘキサン50mlから再結晶させ、上記標題の化合物(II)を得た(3.7g、mp:摂氏106〜107度)。
【0074】
実施例6
脱溶媒和物N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの調製
実施例1で調製したN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物21.6mgを真空中(20mbar)で摂氏95度まで加熱して融解した。摂氏25度まで冷却した際に、ガラス状生成物が形成された。融解範囲は摂氏83〜95度、摂氏150度で分解、純度は99.8%(HPLC)であった。
【0075】
実施例7
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物を含む錠剤
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物10mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
クロスポビドン4mg
微結晶性セルロース184mg
合計:200mg
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物と各成分とを混合し圧縮して錠剤を作製した。
【0076】
実施例8
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの一水和物を含むカプセル
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホニル−アミドの一水和物10mg
アスコルビン酸10mg
化合物は均質化して、カプセルに充填した。
【0077】
X線回折調査
X線回折調査をエンラフノニアスCAD4回折計を用いて実施した。
【0078】
化学理論上の固相を形成することができるN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの能力は、様々な溶媒と関係している。この特性を最も良く示すのは、結晶データである。更に重要な特性は、すべての場合において、N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドは、ホスト分子として、溶媒のより小さい(ゲスト)分子を水素結合にて結合させる点である。例えば、これらの結合は、水素結合が破線グラフで表される水複合体の結晶構造であることを特徴とする。
【0079】
N−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの水和包接(図1)では、無色で柱状で単斜晶形の結晶が形成される(空間群:P2/c、絶対温度295(2)度のときのセル定数:a=7,659(1)Å、b=23.510(1)Å、c=9,148(1)Å、β=95.65(1)°、V=1639.2(3)Å。計算密度はD=1.412Mg/m。硫黄原子は、オリゴ依存相対原子座標(0.23117(9),0.27700(2),0.52759(6))(x,y,z)の特徴を有する。誤差σは統計的有意性3σの範囲内(ブラケット間)。
【0080】
比率2:2のイソプロパノールとともに形成された複合体(図2)は、以下のデータの特徴を有する。無色で柱状で単斜晶形の結晶。空間群:P、絶対温度295(2)度のときのセル定数:a=8.753(1)Å、b=10.858(1)Å、c=11.457(1)Å、α=70.47(1)°、β=79.83(1)°、γ=83.07(1)°、V=1007.9(2)Å。計算密度はD=1.287Mg/m。硫黄原子は、オリゴ依存相対原子座標(0.27950(4),0.38112(3),0.90833(3))(x,y,z)の特徴を有する。誤差σは統計的有意性3σの範囲内(ブラケット間)。
【0081】
ジオクサン包接(図3)は、以下のデータの特徴を有する。無色で柱状で単斜晶形の結晶。空間群:P2/c、絶対温度295(2)度のときのセル定数:a=11,732(4)Å、b=10.171(7)Å、c=15.383(13)Å、β=95.98(5)°、V=1826(2)Å。計算密度はD=1.362Mg/m。硫黄原子は、オリゴ依存相対原子座標(0.60293(4),0.31230(5),0.78848(3))(x,y,z)の特徴を有する。誤差σは統計的有意性3σの範囲内(ブラケット間)。
【0082】
上記の固体結晶複合体のセル定数と相対原子座標から計算された粉末の回折曲線は、測定値と一致する。これは、結晶と巨視的サンプルとが一致していることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】
【図2】
【図3】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nが0モル又は1モルを表し溶媒和物が水、C−Cアルコール、C−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル、又はジオクサンを表す下記式(I)
【化1】

のN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒和物。
【請求項2】
n=1であり溶媒和物が水を表す請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
n=1であり溶媒和物が酢酸エチルを表す請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
n=1であり溶媒和物が2−プロパノールを表す請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
n=1であり溶媒和物がジオクサンを表す請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
n=0である請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
n=1である請求項1記載の式(I)の化合物と、n=0である請求項1記載の式(I)の化合物との混合物。
【請求項8】
n=1であり溶媒和物がC−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル又はジオクサンである式(I)のN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒化合物を作製するプロセスにおいて、
下記式(III)の3,4−ジフェニル−5−メチル−イソオキサゾールがクロロスルホン酸と反応し、
【化2】

その生成物である下記式(II)の3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾールが
a)水と水混和性溶媒との混合物において、又は
b)相転換触媒が存在する非水混和性溶媒と水との混合物においてヒドロキシルアミンと反応し、
【化3】

その生成物がC−Cカルボン酸のC−Cアルキルエステル又はジオクサンから選択される溶媒から結晶化することを特徴とするプロセス。
【請求項9】
相転換触媒がテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩であることを特徴とする請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
再結晶が酢酸エチルから行われたことを特徴とする請求項8記載のプロセス。
【請求項11】
n=1であり溶媒和物が水である式(I)のN−ヒドロキシ−4−(3−フェニル−5−メチル−イソオキサゾール−4−yl)−ベンゼンスルホンアミドの溶媒化合物を作製するプロセスにおいて、
下記式(III)の3,4−ジフェニル−5−メチル−イソオキサゾールがクロロスルホン酸と反応し、
【化4】

その生成物である下記式(II)の3−フェニル−4−(4−クロロスルホニル−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾールが
a)水と水混和性溶媒との混合物において、又は
b)相転換触媒が存在する非水混和性溶媒と水との混合物においてヒドロキシルアミンと反応し、
【化5】

その生成物が水とエタノールと必要に応じてアスコルビン酸とを含む混合物から結晶化することを特徴とするプロセス。
【請求項12】
n=0である式(I)の化合物を調製するプロセスにおいて、溶媒和物が加熱によりn=1である式(I)の化合物から脱離することを特徴とするプロセス。
【請求項13】
n=1である式(I)の化合物とn=0である式(I)の化合物との任意の比率での混合物を作製するプロセスにおいて、溶媒和物が、加熱及び減圧によりn=1である式(I)の化合物から必要量分だけ脱離することが可能であることを特徴とするプロセス。
【請求項14】
抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛の治療用の医薬用組成物を作製するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項15】
抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛の治療用の医薬用組成物を作製するための請求項7記載の混合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物と、1つ以上の治療上許容可能な医薬用基材とを含む医薬用組成物。
【請求項17】
請求項7記載の混合物と、1つ以上の治療上許容可能な医薬用基材とを含む医薬用組成物。
【請求項18】
基材のうちの1つがアスコルビン酸であることを特徴とする請求項16記載の医薬用組成物。
【請求項19】
抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛の治療方法において、請求項1〜6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物を治療上有効な投与量にて必要とする患者を治療することを備えた治療方法。
【請求項20】
抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛の治療方法において、請求項7に記載の混合物を治療上有効な投与量にて必要とする患者を治療することを備えた治療方法。
【請求項21】
抗炎症性と鎮痛性に関する薬理モデル実験に基づく変形性関節症、関節リウマチ、外科手術、原発性月経困難症による疼痛の治療方法において、請求項16〜18のいずれか1項に記載の医薬用組成物を治療上有効な投与量にて必要とする患者を治療することを備えた治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−530424(P2007−530424A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520021(P2006−520021)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/HU2004/000077
【国際公開番号】WO2005/007620
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(591180314)リヒター ゲデオン ベジェセティ ジャール アール.テー. (33)
【Fターム(参考)】