説明

方位測定装置

【課題】高緯度における方位誤差を従来よりも低減する。
【解決手段】慣性センサの検出量に基づいて航走体の第1の方位角を測定するマスタコンパスと、一定間隔を隔てて配置された2つに受信アンテナを備え、各受信アンテナで間欠的に受信した測位用電波に基づいて各受信アンテナの位置を演算し、当該各受信アンテナの位置に基づいて航走体の基準方位角を測定する基準方位角測定手段と、該基準方位角測定手段から間欠的に入力される基準方位角に基づいて当該基準方位角よりも細かい間隔のバックアップ方位角を出力するバックアップ方位角演算部と、緯度が所定の基準緯度を超えない状態では第1の方位角を外部に出力し、緯度が所定の基準緯度を超えた状態ではバックアップ方位角を外部に出力する出力方位角切替部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航走体の方位角を測定する方位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば振り子式ジャイロコンパスをマスタコンパスとするような比較的安価なジャイロコンパスでは、例えば管制ユニットのような外部ユニットにおいて、マスタコンパスの方位出力(方位角)に速度誤差修正演算を施すことにより精度を補償している。例えば下記特許文献1には、GPS(Grobal Positioning System)受信機から得られる速度データに基づいて速度誤差修正演算を行うことが開示され、また下記特許文献2には、船舶の対水速度を検出する電磁ログの計測値(電磁ログ速度)や対地速度を検出する音波ログの計測値(音波ログ速度)等に基づいて速度誤差修正演算を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−176932号公報
【特許文献2】特開2000−142581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ジャイロコンパスには、上記振り子式ジャイロコンパスのような高速回転体に加えられた重力トルクによるプリセッションを利用した機械式ジャイロコンパスの他に、光のサニャック効果を利用した光学式ジャイロコンパス等、種々の方式のものがある。しかしながら、いずれの方式のジャイロコンパスも、一般に航走体が高緯度に行く程、方位誤差が大きくなることが知られており、このような方位誤差は上記速度誤差修正演算では補償し切れない。また、上記振り子式ジャイロコンパスにおいては、北緯あるいは南緯60度以上の高緯度において必要なトルキング量が大きくなるので、方位誤差が大きくなり過ぎて使用できないことが知られている。
【0005】
本発明は、高緯度における方位誤差を従来よりも低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、慣性センサの検出量に基づいて航走体の第1の方位角を測定するマスタコンパスと、一定間隔を隔てて配置された2つに受信アンテナを備え、各受信アンテナで間欠的に受信した測位用電波に基づいて各受信アンテナの位置を演算し、当該各受信アンテナの位置に基づいて航走体の基準方位角を測定する基準方位角測定手段と、該基準方位角測定手段から間欠的に入力される基準方位角に基づいて当該基準方位角よりも細かい間隔のバックアップ方位角を出力するバックアップ方位角演算部と、緯度が所定の基準緯度を超えない状態では第1の方位角を外部に出力し、緯度が所定の基準緯度を超えた状態ではバックアップ方位角を外部に出力する出力方位角切替部とを具備する、という手段を採用する。
【0007】
第2の解決手段として、上記第1の手段において、鉛直軸周りの角速度を検出するレートジャイロと、該レートジャイロから出力される角速度を積分して補間用角度を出力する積分器と、をさらに備え、バックアップ方位角演算部は、基準方位角測定手段から間欠的に入力される基準方位角を積分器から入力される補間用角度で補間することによりバックアップ方位角を出力する、という手段を採用する。
【0008】
第3の解決手段として、上記第1または第2の手段において、基準方位角測定手段は、位置が既知の基準局が発信する電波を利用することによりGPS(Grobal Positioning System)に基づいて測定した各受信アンテナの位置を補正し、当該補正位置に基づいて基準方位角を算出するDGPS(Differential Grobal Positioning System)受信機である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、緯度が所定の基準緯度を超えない状態では第1の方位角を外部に出力し、緯度が所定の基準緯度を超えた状態ではバックアップ方位角を外部に出力するので、高緯度における方位誤差を従来よりも低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る方位測定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る方位測定装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る方位測定装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る方位測定装置は、図1に示すように、マスタコンパス1、電磁ログ2、第1GPS受信機3、第2GPS受信機4及び演算装置5から構成されている。上記マスタコンパス1は、内部に付加的な構成要素としてレートジャイロ1aを備え、また上記演算装置5は、速度誤差修正部5a、積分器5b、基準方位角演算部5c、バックアップ方位角演算部5d及び出力方位角切替部5eから構成されている。なお、第1GPS受信機3及び第2GPS受信機4は、基準方位角演算部5cとともに基準方位角測定手段を構成する。
【0012】
このような方位測定装置は、航走体の一種である船舶、例えば艦艇程に高精度な測定精度が要求されない民間船舶に搭載されて方位角を測定するものである。なお、この図1では、本発明の本質に直接関係しないので省略しているが、上記マスタコンパス1、電磁ログ2、第1GPS受信機3及び第2GPS受信機4は、例えばRS-422等の汎用通信規格に準拠したインタフェース回路によって演算装置5と相互接続されている。
【0013】
マスタコンパス1は、例えば民間船舶用に用いられている振り子式ジャイロコンパスであり、自らが測定した船舶の方位角を第1の方位角として速度誤差修正部5aに出力する。すなわち、このマスタコンパス1は、重心が回転中心よりも下方にある高速回転体に加えられる重力トルクによるプリセッションにて北を検出する振り子式ジャイロを慣性センサとして備えるものであり、当該慣性センサの検出量(角速度)に基づいて船舶の進行方向を方位角として測定する。
【0014】
レートジャイロ1aは、鉛直軸周りにおける船舶の角速度、つまり水平方向における船舶の旋回速度を検出して積分器5bに出力する一種の角速度計である。このようなレートジャイロ1aは、角速度を検出量とするものであるが、振り子式ジャイロよりも低精度かつ安価なものである。電磁ログ2は、船舶の船底部に水中に露出する状態で設けられており、水に対する船舶の速度(対水速度)を検出し、当該対水速度を基準速度として速度誤差修正部5aに出力する。
【0015】
第1GPS受信機3は、図2に示すように、船舶の船尾中央に第1受信アンテナ3aが設置されたGPS(Grobal Positioning System)受信機である。この第1GPS受信機3は、第1受信アンテナ3aが受信した測位用電波に基づいて当該第1受信アンテナ3aの位置(緯度及び経度)を第1の位置として測定して基準方位角演算部5cに出力する。
【0016】
ここで、GPSは、位置(緯度及び経度)が既知の基準局が発信する電波(FM波)を測位用電波の1つとし、また複数のGPS(Grobal Positioning System)衛星が発信するGPS波を他の測位用電波として航走体の位置(緯度及び経度)を測定する測位システムとして広く知られている。すなわち、GPSは、複数のGPS波から得られた航走体の位置(緯度及び経度)を基準局の位置に基づいて補正することにより高精度化する測位システムである。
【0017】
第1GPS受信機3は、このようなGPSに基づいて得られた高精度な第1受信アンテナ3aの位置(緯度及び経度)を第1の位置として基準方位角演算部5cに出力する。また、第2GPS受信機4は、上記第1GPS受信機3と同様にGPSに準拠したものである。この第2GPS受信機4は、図2に示すように、船舶の船首中央に第2受信アンテナ4aが設置されたGPS受信機であり、上記第2受信アンテナ4aの位置(緯度及び経度)を第2の位置として測定して基準方位角演算部5cに出力する。
【0018】
また、上記GPS衛星は、1秒あるいは2秒間隔でGPS波を発信するので、第1GPS受信機3及び第2GPS受信機4は、第1の位置及び第2の位置を約1秒あるいは2秒間隔で間欠的に測定して基準方位角演算部5cに出力する。このような第1の位置及び第2の位置の測定間隔は、船舶用の方位測定装置の仕様として許容されるものではないので、出力方位角切替部5e等を介してそのまま外部に出力することができない。
【0019】
演算装置5は、所定の演算プログラムに基づいて動作するコンピュータであり、上記第1の方位角、角速度、基準速度、第1の位置及び第2の位置に上記演算プログラムに基づく演算処理(測位処理)を施すことにより、演算結果である出力方位角を外部に出力する。このような演算装置5において、速度誤差修正部5aは、基準速度と第1の方位角とに基づいて当該第1の方位角に船舶の速度(基準速度)に起因する速度誤差修正演算を施すものである。このような速度誤差修正部5aは、上記速度誤差修正演算によって得られた修正方位角を出力方位角切替部5eに出力する。
【0020】
周知のように、船舶が東西方向以外の方向に航行する場合に地球の自転速度に起因する方位誤差が発生する。すなわち、船舶の方位角は、船速(基準速度)と自転速度との合成速度となる。ジャイロコンパスは、このような合成速度に直角な水平方向を方位角として示すので、自転速度の影響によって真北に対して誤差(速度誤差)を含むものとなる。このような速度誤差は、船速の絶対値及びジャイロコンパスが示す方位角によって一義的に求められるものである。
【0021】
上記速度誤差修正部5aは、例えば船速の絶対値及びジャイロコンパスが示す方位角に応じて予め求められた速度誤差角の一覧表(速度誤差テーブル)を記憶しており、マスタコンパス1から入力される第1の方位角及び電磁ログ2から入力される基準速度に基づいて速度誤差テーブルを検索することにより速度誤差角を特定し、当該速度誤差角と第1の方位角との差分を修正方位角として求める。
【0022】
積分器5bは、レートジャイロ1aから入力される水平方向における船舶の旋回角速度を一定の積分区間毎に積分演算することにより所定時間間隔毎の旋回角を求める。このような積分器5bは、上記旋回角を補間用角度としてバックアップ方位角演算部5dに出力する。補間用角度の測定間隔は、上記積分区間に支配されるが、数〜数十マイクロ秒程度であり、上述した第1の位置及び第2の位置の測定間隔よりも格段に細かい。このような補間用角度の測定間隔は、船舶用の方位測定装置の仕様として許容されるものである。
【0023】
基準方位角演算部5cは、第1の位置及び第2の位置に基づいて基準方位角Ψを求め、この基準方位角Ψをバックアップ方位角演算部5dに出力する。このような基準方位角Ψは、以下に説明するように、船舶の緯度による誤差を含まない高精度な方位角である。すなわち、図2に示すように、地理座標系(局地水平座標系)における第1の位置P1の座標を(x1,y1)とし、同じく第2の位置P2の座標を(x2,y2)とすると、基準方位角Ψは緯度LATを変数として含む式(1)によって表わされる。また、各軸方向の距離Lx,Lyは式(2)、(3)によって表わされる。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

【0026】
【数3】

【0027】
そして、これら式(2)、(3)を式(1)に代入すると、基準方位角Ψは、式(4)のように表わされる。この式(4)は、緯度LATを変数として含むものではなく、各軸方向の距離Lx,Lyのみを変数とする形態の式なので、よって基準方位角Ψは船舶の緯度LATによる誤差を含まない高精度な方位角である。
【0028】
【数4】

【0029】
このような基準方位角Ψは、約1秒あるいは2秒間隔を測定間隔とする第1の位置及び第2の位置から演算されるものであり、よって約1秒あるいは2秒の間隔で生成されてバックアップ方位角演算部5dに出力される。また、基準方位角演算部5cは、第1の位置及び第2の位置に基づいて船舶の緯度を求め、この緯度を切替信号として出力方位角切替部5eに出力する。この基準方位角演算部5cは、例えば第1の位置及び第2の位置の中間位置を示す緯度を切替信号として求めて出力方位角切替部5eに出力する。
【0030】
バックアップ方位角演算部5dは、上記基準方位角及び補間用角度に基づいて船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔のバックアップ方位角を演算する。すなわち、バックアップ方位角演算部5dは、約1秒あるいは2秒の時間間隔で基準方位角演算部5cから入力される基準方位角Ψを、当該基準方位角Ψの測定間隔よりも細かい測定間隔の補間用角度を用いて補間することにより、船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔のバックアップ方位角を求める。
【0031】
出力方位角切替部5eは、上記基準方位角演算部5cから入力される切替信号に基づいて修正方位角あるいはバックアップ方位角の何れか一方を択一的に出力する。すなわち、出力方位角切替部5eは、図3に示すように、切替信号が示す船舶の緯度が所定の基準緯度、例えば60度を超えない状態では修正方位角を外部に出力し、一方、切替信号が示す船舶の緯度が60度以上になると、上記修正方位角に代えてバックアップ方位角を外部に出力する。
【0032】
続いて、このように構成された方位測定装置の時系列的な動作について詳しく説明する。
【0033】
本方位測定装置が稼動すると、電磁ログ2は基準速度を測定して速度誤差修正部5aに順次出力する。また、マスタコンパス1は、第1の方位角を測定して速度誤差修正部5aに順次出力する。また、レートジャイロ1aは、角速度を積分器5bに順次出力し、この結果、積分器5bは、補間用角度情報をバックアップ方位角演算部5dに順次出力する。一方、第1GPS受信機3及び第2GPS受信機4は、第1の位置及び第2の位置を基準方位角演算部5cに順次出力する。
【0034】
ここで、速度誤差修正部5aが電磁ログ2から取得する基準速度の取得間隔は、上述したインタフェース回路のサンプリング間隔に支配されるものであり十分に高速である。また、速度誤差修正部5aがマスタコンパス1から取得する第1の方位角の取得間隔は、マスタコンパス1における第1の方位角の測定間隔に支配されるものであり、船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔である。また、バックアップ方位角演算部5dが積分器5bから取得する補間用角度の時間間隔は、レートジャイロ1aの測定間隔に支配されるものであり、船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔である。一方、基準方位角演算部5cが第1GPS受信機3から取得する第1の位置及び第2GPS受信機4から取得する第2の位置は、船舶用の方位測定装置の仕様として許容されない時間間隔(約1秒あるいは2秒間隔)である。
【0035】
速度誤差修正部5aは、このような基準速度と第1の方位角とに基づいて船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔の修正方位角を出力方位角切替部5eに順次出力する。一方、基準方位角演算部5cは、船舶用の方位測定装置の仕様として許容されない基準方位角Ψをバックアップ方位角演算部5dに順次出力するが、バックアップ方位角演算部5dは、このような基準方位角Ψを補間用角度で補間することにより、船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔のバックアップ方位角を出力方位角切替部5eに順次出力する。
【0036】
そして、出力方位角切替部5eは、修正方位角の測定精度が許容値を満足する基準緯度内、例えば図3に示すように60度を超えない緯度範囲においては、修正方位角を外部に出力し、一方、修正方位角の測定精度が許容値を満足しなくなる基準緯度以上、例えば60度以上の緯度範囲においては、上記修正方位角に代えてバックアップ方位角を外部に出力する。
【0037】
ここで、上記補間用角度は、レートジャイロ1aが測定する比較的低精度な角速度を積分器5bで積分することによって得られた角度情報である。また、基準方位角Ψは、船舶用の方位測定装置の仕様として許容される時間間隔を満足しないものの、GPSに基づいて測定されたものなので高精度な方位情報である。このような基準方位角Ψ及び角速度の積分値によって生成されるバックアップ方位角は、時系列的に先行する高精度な基準方位角Ψを初期値として時系列的に隣り合う2つの基準方位角Ψの間に角速度の積分値を内挿して生成されるので、船舶用の方位測定装置として十分な精度を有する方位情報である。
【0038】
また、このバックアップ方位角は、GPSに基づく第1の位置及び第2の位置から演算された基準方位角Ψを初期値として生成されたものなので、マスタコンパス1が測定する第1の方位角のように、緯度が高くなるに従って精度が低下するという欠点を有しないものである。すなわち、出力方位角切替部5eから外部に出力される出力方位角は、基準緯度以上において修正方位角からバックアップ方位角に切り替わるので、高緯度における方位誤差を従来よりも低減したものである。
【0039】
このような本実施形態によれば、従来技術の問題点を解決すること、つまり高緯度における方位誤差を従来よりも低減することが可能である。また、基準方位角Ψの補間に比較的安価なレートジャイロ1aを用いるので、高緯度における方位誤差を低減するために必要な装置コストの上昇を最小限に抑えることが可能である。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、基準方位角の補間に比較的安価なレートジャイロ1aを用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば時系列的に複数得られる基準方位角Ψに統計処理を施すことにより、基準方位角Ψよりも時間間隔の細かい方位角推定値を取得し、当該方位角推定値を用いて基準方位角Ψを補間しても良い。
また、上記実施形態では、速度誤差修正部5aを設けることによって修正方位角を出力方位角切替部5eに入力するようにしたが、これに代えたより簡単な構成として、速度誤差修正部5aを削除して第1の方位角を出力方位角切替部5eに入力するようにしてもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、第1の位置が示す第1受信アンテナ3aの位置と第2の位置が示す第2受信アンテナ4aの位置とを結ぶ直線が船舶の基準方位角となるように、第1受信アンテナ3aを船舶の船首中央に、かつ、第2受信アンテナ4aを船舶の船尾中央に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、船舶の形状と第1受信アンテナ3aの位置及び第2受信アンテナ4aの位置との関係を示すアンテナ配置データを基準方位角演算部5cに記憶させ、このアンテナ配置データ、第1受信アンテナ3aの位置及び第2受信アンテナ4aの位置から基準方位角を求めるようにしてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、マスタコンパス1として振り子式ジャイロコンパスを採用したが、本発明はこれに限定されない。マスタコンパス1は、どのような方式のジャイロコンパスであってもよく、例えばスタビライズド方式あるいはストラップダウン方式であってもよい。方式の如何に関わらずジャイロコンパスは緯度が高くなるに従って精度が低下する。
【0043】
(4)上記実施形態では、基準方位角測定手段を第1GPS受信機3及び第2GPS受信機4を用いて構成したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、基準方位角測定手段は、GPSに基づく測位システムに限定されず、GRONASS(Global Navigation Satellite System)あるいはGalileo(Galileo Positioning System)等、他の測位システムであってもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では、緯度を示す切替信号を基準方位角演算部5cから出力方位角切替部5eに供給することにより修正方位角とバックアップ方位角とを自動切換えするように構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操船者による手動切替によって修正方位角とバックアップ方位角とを切り替えるように出力方位角切替部5eを構成してもよい。
【0045】
(6)上記実施形態では、船舶用の方位測定装置について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、船舶以外の航走体、例えば航空機や車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…マスタコンパス、1a…レートジャイロ、2…電磁ログ、3…第1GPS受信機、4…第2GPS受信機、5…演算装置、5a…速度誤差修正部、5b…積分器、5c…基準方位角演算部、5d…バックアップ方位角演算部、5e…出力方位角切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサの検出量に基づいて航走体の第1の方位角を測定するマスタコンパスと、
一定間隔を隔てて配置された2つに受信アンテナを備え、各受信アンテナで間欠的に受信した測位用電波に基づいて各受信アンテナの位置を演算し、当該各受信アンテナの位置に基づいて航走体の基準方位角を測定する基準方位角測定手段と、
該基準方位角測定手段から間欠的に入力される基準方位角に基づいて当該基準方位角よりも細かい間隔のバックアップ方位角を出力するバックアップ方位角演算部と、
緯度が所定の基準緯度を超えない状態では第1の方位角を外部に出力し、緯度が所定の基準緯度以上の状態ではバックアップ方位角を外部に出力する出力方位角切替部と
を具備することを特徴とする方位測定装置。
【請求項2】
鉛直軸周りの角速度を検出するレートジャイロと、
該レートジャイロから出力される角速度を積分して補間用角度を出力する積分器と、をさらに備え、
バックアップ方位角演算部は、基準方位角測定手段から間欠的に入力される基準方位角を積分器から入力される補間用角度で補間することによりバックアップ方位角を出力することを特徴とする請求項1記載の方位測定装置。
【請求項3】
基準方位角測定手段は、位置が既知の基準局が発信する電波を利用することによりGPS(Grobal Positioning System)に基づいて測定した各受信アンテナの位置を補正し、当該補正位置に基づいて基準方位角を算出するDGPS(Differential Grobal Positioning System)受信機であることを特徴とする請求項1または2記載の方位測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−198068(P2012−198068A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61397(P2011−61397)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】