説明

方法

インク、又はインクに使用するための顔料配合物(例えばコンセントレート)の製造法であって、該方法は、粒状顔料と液状媒体を含む組成物を、10ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する無機フィルターを通してろ過することを含む。該方法によってインクジェットプリンタに問題を起こしかねない過大な大きさの粒子が、全く問題のない過小な大きさの顔料を無駄にすることなく、正確に除去される。低いトランスフィルター圧差でも高流量が達成される。一態様において、高流量はpH及び/又はイオン強度の選択によって維持される。該フィルターは従来の高分子フィルターよりも頑強で、積極的な洗浄剤による清掃に耐える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク及び顔料配合物の製造法、該方法によって製造されるインク及び顔料配合物(例えばコンセントレート)及びインクジェット印刷におけるそれらの使用に関する。
【0002】
インクジェット印刷は、インク滴が微細ノズルを通じて吐出され、紙のような記録媒体上に付着することによって印刷が行われる印刷法である。近年、インクジェットプリンタは、文章、画像などを印刷する迅速で効率的な手段として家庭及びスモールオフィスで当たり前になっている。
【0003】
家庭及びスモールオフィスで使用されているインクジェットプリンタは、一般的に、主成分として水、着色剤、及び微細ノズルの詰まりを防止するための湿潤剤、例えばグリセリンを含むインクを使用している。インク着色剤として多数の水溶性染料が提案されているが、その理由はそれらが高彩度であること、多様な色及び濃淡が入手可能であること、及びそれらの良好な水溶性のためである。
【0004】
近年、インクジェット印刷用インクの着色剤として顔料の人気が高まってきている。顔料系のインクは、染料ほどの彩度、色揃え又は溶解性は持たないかもしれず、沈殿による貯蔵安定性の問題も起こしがちであるが、一部のプリンタ製造業者は、得られる印刷物の耐光性及び耐水性が高いことから一定の用途に顔料系インクの方を好む。従来の顔料は一般に水に不溶性なので、例えば分散剤と緊密混合することによってインクビヒクル中に分散させる必要がある。インクは、顔料、分散剤、水及び所望により更なる成分を含有する顔料配合物から製造されることが多い。顔料を水性の液体に安定的に分散させるために、顔料の種類及び粒径、使用する分散剤の種類、分散手段などについて研究する必要がある。インクジェット印刷用の顔料インクのために多数の分散法及び製造法が当該技術分野で提案されている。
【0005】
インクジェットプリンタ用のインクは、印刷品質を低減しかねない又はさもなければインクジェットプリンタに使用されている微細ノズルを詰まらせかねない粗大粒子及び不要物を除去するためにろ過することができる。典型的には、これらのノズルは人毛の半分の直径しかないので容易に詰まりうる。
【0006】
米国特許第6,562,117号は、従来型と思しき不均一な細孔径の有機膜を用いるクロスフロー膜ろ過を含む方法による顔料系のインクジェット印刷用インクの製造法を記載している。これらの従来膜では引用されている孔径は平均値であって、実際の孔径には実際大きい変動がある。米国特許第6,562,117号に記載されているような従来膜を用いるろ過は、速度が遅く時間がかかることも多いはずである。その上、一部の過大な大きさの顔料も通してしまう。
【0007】
米国特許出願第2001/0050017号は、油をベースにした非水性静電インク用のインクジェット印刷装置を記載している。該印刷装置は、プリントヘッドの微細ノズルと接触する前にインクからゴミ及びその他の粒子を除去するための一連のフィルターを備えている。図10(a)及び(b)によると、装置に組み込まれているこれらのフィルターの一つは、均一又は不均一な大きさ及び形状の細孔を有しうる。実施例4には、装置からフィルターをどのように省くとわずか数時間から数日でインクの吐出が不安定になったかが記載されている。
【0008】
US2001/0050017の印刷装置に包含されているろ過装置は、ますます価格志向型の市場でプリンタのコストを増大させる欠点を持つ。さらに、時間が経つとそのようなプリンタのフィルターは結局目詰まりするので、代わりのプリンタを購入するか又はわざわざお金を費やしてフィルターを清掃もしくは交換するかをユーザーに強いることになる。そのような清掃は、高度に着色されたインクの性質のため厄介なものとなろう。
【0009】
本発明の第一の側面に従って、インクの製造法、又はインクの製造に使用するための顔料配合物の製造法を提供する。該方法は、粒状顔料と液状媒体を含む組成物を、10ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する無機フィルターを通してろ過することを含む。
【0010】
本発明の方法は、不均一な孔径を有する従来フィルターの使用と比較して必要とされるより低いろ過圧力を使うことが多く、時間的に効率よく費用効果の高い様式でインクを提供するという利点を有する。インクはUS2001/0050017に記載の特別なフィルターアレイを必要とすることなくプリンタで使用できるので、このますますコスト意識の強い市場にあってプリンタをより安価にすることができる。得られたインクは、従来のインクよりもフィルターの目詰まりを起こしにくいので、US2001/0050017に記載のフィルターアレイを有する既存のプリンタに組み込んでもよい。さらに、無機フィルターはインクの製造に使用される有機溶媒(有機フィルターだと溶解又は損傷しうる)に対して特に耐性があり、高温でのろ過も可能である。さらにその上、本方法に使用される無機フィルターが詰まったとしても、従来膜の場合よりもより積極的な清掃手段の使用が可能である。従来フィルターは溶媒の存在下で膨潤することもあるので、ろ過速度が一段と遅くなる。
【0011】
本発明の方法は、孔径が正確なため過大な大きさの粒子を通さないという点で従来フィルター(例えばデプス型フィルター)の使用に優る利点を有する。従来フィルターの場合、顔料インクの使用を意図している最終プリントヘッドノズルの大きさよりもずっと小さい孔径を使用する必要があることが実証されている。これは過大な大きさの粒子の全除去を確実にするためである。これは効果的であるかもしれないが、流量が減少する(フィルターの細孔が小さいため)という欠点や、インクジェットプリンタに実際は問題を起こさないような多数の小粒子も除外されるため、顔料の著しい無駄をもたらすという欠点にも苦しむことになる。
【0012】
好ましくは、無機フィルターはクロスフローフィルターである。“クロスフロー”とは、ろ過中、ろ過されるべき液体をフィルターの表面に沿って流れさせ、フィルターを通過した所望のろ過された液体をフィルターの反対側から回収する操作のことである。
【0013】
好ましくは、無機フィルターは、8ミクロン未満、さらに好ましくは6ミクロン未満、特に5ミクロン以下、さらに特に4.5ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する。一態様において、無機フィルターは0.1〜4.2ミクロン、特に0.3〜3ミクロンの孔径を有する。
【0014】
方法の好適な態様では、フィルターを定期的にバックフラッシュ(逆洗)することによってフィルターが目詰まりする可能性を低減する。従って、通常のろ過は、組成物をフィルターの未透過物側からフィルターの透過物側に通過させることを含むが、バックフラッシュは、ろ過された組成物をフィルターの透過側からフィルターの未透過側に戻すことを含み、それによってフィルターのいずれかの細孔を塞いでいる何らかの粒子又はその他の物質を取り除く。バックフラッシュを起こす適切な装置はオランダ特許出願NL1024292に記載されている。
【0015】
方法の好適な態様は、無機フィルターを通過する組成物の流量の低下を、組成物のpH及び/又はイオン強度を調整することによって軽減する追加工程を含む。組成物のpH及び/又はイオン強度は、必要に応じて酸、塩基又は塩の添加によって調整でき、好ましくは以下に示した好適なpHを達成する。pH及び/又はイオン強度は、ろ過の前、最中又は後に調整できる。
【0016】
所望であれば、方法は、所望値未満の粒径を有する何らかの粒状物質を、例えば所望値に対応する孔径を有するフィルターを使用して除去する更なる工程も含むことができる。
【0017】
フィルターを通過する顔料組成物の流量を増強するためにpH及び/又はイオン強度の調整を使用することは、本発明の更なる特徴を形成する。フィルターは、好ましくは10ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する無機フィルターであり、更なる好適性は本発明の第一の側面に関連して本明細書中に記載の通りである。顔料組成物は好ましくは水性顔料組成物である。
【0018】
好ましくは、方法は、インク又は顔料配合物を容器に、容器が少なくとも1リットルのインク又は顔料配合物を流体形で、さらに好ましくは少なくとも10リットルのインク又は顔料配合物を流体形で含有するように送る更なる工程を含む。
【0019】
好ましくは、無機フィルターは、無機マクロ多孔質担体と、前記マクロ多孔質担体の表面に固く結合された10ミクロン未満(好ましくは5ミクロン以下)の均一孔径の細孔を有する無機ふるい層とを含む。無機ふるいは、無機マクロ多孔質担体上に堆積法によって堆積させることができる。好ましくは、マクロ多孔質担体は、無機ふるい中の細孔の孔径の少なくとも2倍の細孔を有する。典型的には、0.25ミクロン〜25ミクロンの範囲の平均孔径の細孔である。一般的に、ふるい層の細孔は、ふるい層に対して直角の穿孔を含み、0.5〜5又は0.5〜10ミクロンの範囲の直径を有するように形成されている。細孔は任意の形状でよいが、好ましくは円形、矩形又は縁の丸い矩形である。孔径は細孔の最大内部寸法をいう。例えば、円形の細孔では孔径は直径であり、矩形の細孔では孔径は矩形の対角線の距離である。
【0020】
好ましくは、ふるい層の細孔はエッチングによって形成されている。
【0021】
好ましくは、ふるい層はふるい層中の細孔の直径の最大10倍の厚さを有する。
【0022】
好ましくは、フィルターの表面粗さは孔径よりもかなり小さい。
【0023】
一態様において、担体及び/又はふるい層はセラミック物質で構成される。
【0024】
好ましくは、ふるい層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、金、銀、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム合金、炭素及びケイ素からなる群から選ばれる物質を含む。
【0025】
好ましくは、担体は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、窒化チタン、チタン、炭素及びケイ素からなる群から選ばれる物質を含む。
【0026】
本方法に使用できるいくつかの無機フィルターがFluxxion B.V.から市販されており、これまで異なる種類の細胞の分離といった生物学的用途及びバイエルンビールのろ過に使用されている。
【0027】
典型的には、本方法に使用される無機フィルターは、以下のプロセスによって得ることができる。すなわち、
a.無機層を担体表面に化学蒸着又はスパッタリングによって堆積させる、
b.無機層上にフォトラッカー層を形成させる、
c.適切な光源を使用して、前記フォトラッカー層を規則的なマスクパターンに露光する、
d.前記ラッカー層を現像する、
e.その後無機層のマスクパターンをエッチング剤でエッチングし、無機層に対して直角にチャンネル形の穿孔を形成することによって、無機ふるい層を形成する。
【0028】
本方法に使用するための適切なフィルターの製造は、米国特許第5,543,046号のカラム2の20行〜カラム6の38行、及びその図1〜16に記載されている(引用によって本明細書に援用する)。本方法に使用するフィルターを製造するための更なる技術は、米国特許第5,753,014号に記載されている。
【0029】
好ましくは、無機フィルターは20〜2000ミクロンの厚さを有する。
【0030】
無機フィルターは任意の適切な形状であってよい。例えば、実質的に平面形、円筒形又は円錐形であり得る。
【0031】
好ましくは、ふるい層中の少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の細孔がふるい層の細孔の平均孔径の5%以内の孔径を有する。
【0032】
我々は、本方法に記載の無機フィルターを用いる顔料のろ過は、不均一な孔径の従来フィルター(例えばデプス型フィルター)を用いるよりもしばしばかなり迅速であることを見出した。何らかの特別な理論に限定するつもりはないが、この理由は、均一な孔径の無機フィルターでは、透過物の流れを制限する過小孔径の細孔がほとんどないし全くないためとみられる。
【0033】
さらに、本発明の無機フィルターは過大孔径の細孔がない又はその数が著しく少ないので、平均孔径を上回る粒子は単にふるいを通過できないことになる(一方、従来フィルターは平均値の周辺で比較的広範囲の孔径を有する)。
【0034】
無機顔料及び有機顔料を含む様々な顔料が本発明の方法に使用できる。適切な無機顔料は、酸化チタン及び酸化鉄のほかに、コンタクト法、ファーネス法、及びサーマル法などの従来法によって製造されたカーボンブラックを含む。適切な有機顔料は、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料及びキレートアゾ顔料)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、チオインジゴ、イソインドリノン及びキノフタロン顔料)、染料タイプのキレート顔料(例えば、塩基性染料タイプのキレート顔料及び酸性染料タイプのキレート顔料)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料及びアニリンブラック顔料などである。
【0035】
適切なカーボンブラック顔料は、Mitsubishi Chemical Corporationによって製造されたカーボンブラック、例えば、No.2300、No.900、MCF 88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA 7、MA 8、MA 100及びNo.2200 B;Columbian Carbon Co.,Ltd.によって製造されたカーボンブラック、例えば、Raven(登録商標)5750、Raven(登録商標)5250、Raven(登録商標)5000、Raven(登録商標)3500、Raven(登録商標)1255及びRaven(登録商標)700;Cabot Corporationによって製造されたカーボンブラック、例えばRegal(登録商標)400 R、Regal(登録商標)330 R、Regal(登録商標)660 R、MogulL(登録商標)、Monarch(登録商標)700、Monarch(登録商標)800、Monarch(登録商標)880、Monarch(登録商標)900、Monarch(登録商標)1000、Monarch(登録商標)1100、Monarch(登録商標)1300及びMonarch(登録商標)1400;並びにDegussaによって製造されたカーボンブラック、例えば、Color Black FW 1、Color Black FW 2、Color Black FW 2 V、Color Black FW 18、Color Black FW 200、Color Black S 150、Color Black S 160、Color Black S 170、Printex(登録商標)35、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)V、Printex(登録商標)140 U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4 A及びSpecial Black 4などである。
【0036】
適切なイエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14 C、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 75、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 98、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 114、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 138、C.I.Pigment Yellow 150、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 185及びC.I.Pigment Yellow 213などである。
【0037】
適切なマゼンタ顔料は、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184及びC.I.Pigment Red 202などである。
【0038】
適切なシアン顔料は、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:34、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Vat Blue 4及びC.I.Vat Blue 60などである。
【0039】
顔料は、上記例のような従来顔料でも、表面処理顔料、例えば水可溶化基又は分散基をその表面に付けるように処理された顔料であってもよい。そのような表面処理顔料はいくつかの供給元から入手できる。例えば、Cabot CorporationによってCab−o−Jet(登録商標)の商標で販売されている顔料などである。
【0040】
我々の実験で、フィルターを通過する流量は時としてアルカリ性のpHよりも酸性のpHで遅くなりうることを見出した。このことを念頭に置くと、組成物のpHは好ましくは7〜14、さらに好ましくは8.5〜13.5、特に10〜13である。
【0041】
組成物は好ましくは、少なくとも0.1mmol/リットル、さらに好ましくは0.4〜1000mmol/リットル、さらに好ましくは1〜100mmol/リットル、特に5〜50mmol/リットルのイオン強度を有する。我々は、そのようなイオン強度の使用は、多くの場合、フィルターを通過する流量の改良をもたらすことを見出した。存在するイオンは、周期表の1及び2族金属の一つ又は複数のカチオンを含むのが好ましい。特に好適なそのようなカチオンの例はNa、K及びLiである。
mol/リットルで表されるイオン強度(I)は式:
I=0.5Σ{C
によって計算できる。式中、Cはi番目のイオンのmol/リットルで表した濃度、Zはその電荷である;組成物中の全イオンについて総和を行う。例えば、MgClの2モル溶液は、0.5Σ{(2×(2))+(4×(−1)}=0.5×12=6mol/リットルのイオン強度を有することになる。
【0042】
我々はまた、ろ過を行う温度も流量に影響を及ぼしうることを見出した。我々の実験で、0〜50℃、特に20〜30℃のろ過温度が好適であることが分かった。
【0043】
好ましくは、方法は、20,000パスカルまで、さらに好ましくは15,000パスカルまでのトランスフィルター圧降下で実施される。本発明の方法は、不均一な孔径を有するデプス型フィルターに優る著明な利点、すなわちデプス型フィルターは所定の流量を達成するために本発明のフィルターを使用する場合よりもずっと高いトランスフィルター圧を必要とするという点において利点を有する。
【0044】
液状媒体は好ましくは水と所望により一つ又は複数の有機溶媒を含む。適切な有機溶媒の例は、可能性あるインク成分との関連で以下により詳細に記載されている。典型的には、液状媒体は分散剤及び/又は界面活性剤をさらに含む。
【0045】
好ましくは、方法は、無機フィルターを通過する組成物の流量が少なくとも5,000リットル/m/時、さらに好ましくは少なくとも10,000リットル/m/時、特に20,000〜60,000リットル/m/時となるように実施される。
【0046】
好適な顔料配合物は顔料コンセントレートである。本方法からもたらされるのがインクであるか顔料コンセントレートであるかは、本方法の実施者の希望及び得られた液体中の顔料濃度に大きく依存する。典型的には、インクは顔料コンセントレートよりも顔料濃度が低い。例えば、前者は典型的には0.1〜10重量%の顔料を含みうるが、後者は典型的には5〜50重量%の顔料を含みうる(好ましくは10.1%〜30重量%)。本明細書において、“重量%”という用語は、関係組成物(例えばインク)の総重量に対してパーセントで表した関係成分の重量を意味する。
【0047】
インクのpHは好ましくは4〜11である。インクは好ましくは25℃で50cP未満、さらに好ましくは25cP未満、特に15cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。顔料配合物の粘度はインクよりもずっと高くなるであろう。そのような配合物はさらに加工されるためである(例えば、水及び/又は有機溶媒による希釈及び/又は更なる分散剤、界面活性剤などの添加によって)。
【0048】
好ましくは、インク及び顔料配合物は水性である。例えば典型的にはそれらは50〜97重量%の水を含む。インク中の有機溶媒の量は典型的には2.9〜40重量%であり、顔料配合物では有機溶媒の量は例えば0〜50重量%となろう。
【0049】
有機溶媒は、インクジェット印刷用インクに使用されている任意の溶媒であってよい。
【0050】
インクは、好ましくは、本発明の方法によって得られた粒状顔料と、水及び有機溶媒を含む液状媒体とを含む。
【0051】
インクの液状媒体が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水対有機溶媒の重量比は好ましくは99:1〜1:99、さらに好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0052】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性の有機溶媒又はそのような溶媒の混合物であるのが好適である。好適な水混和性有機溶媒は、C1−6アルカノール類、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;直鎖アミド類、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン類及びケトンアルコール類、好ましくはアセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール;水混和性エーテル類、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール類、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール類、例えばペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチオジグリコール並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール類、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール類、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオール類のモノ−C1−4−アルキルエーテル類、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール類のモノ−C1−4−アルキルエーテル類、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノール及びエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド類、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エーテル類、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド類、好ましくはジメチルスルホキシド及びスルホランなどである。好ましくは、液状媒体は、水と2つ以上、特に2〜8種類の水混和性有機溶媒を含む。
【0053】
有機溶媒を含み水を含まないインク媒体は、速乾時間が要求される場合、そして特に疎水性及び非吸収性基材、例えばプラスチック、金属及びガラス上に印刷する場合、特に有用である。
【0054】
特に好適なインクは、
(i)0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%の、本発明の第一の側面の方法によって得られた粒状顔料;
(ii)3〜50重量%、さらに好ましくは5〜45重量%、特に10〜40重量%の有機溶媒;及び
(iii)49.9〜96.9重量%、さらに好ましくは60〜85重量%の水
を含む。
【0055】
インクは、当然のことながら、慣習的なインク添加剤、例えば高沸点有機溶媒、界面活性剤、分散剤、バインダ、サッカリド類及びサッカリド誘導体類、アルカリ水酸化物類、緩衝液、湿潤剤、保存剤、カビ防止剤、グリコール類、紙カール防止剤及びコゲ防止剤を含有してよい。
【0056】
本発明の方法は、15重量%の顔料含量で測定した場合、1ミクロンより大きいアキュサイザ数10粒子/cm未満(さらに好ましくは1ミクロンより大きいアキュサイザ数10粒子/cm未満、特に5×10粒子/cm未満、さらに特に10粒子/cm未満)を有するインク及び顔料配合物を製造するのに使用できる。
【0057】
アキュサイザ数に関して言うと、この数字は、一定重量%の顔料含量の液体中に、一定の大きさ以上を有する粒子の数(インク又は顔料配合物1cmあたり)の測定値である。
【0058】
アキュサイザ試験は以下のようにして実施できる。
AccuSizer Model 780(PSS NICOMP、カリフォルニア州サンタバーバラより入手可)、設定:
収集時間(Collection Time)60秒、
チャンネル数(Number Channels)128、
容器流体容積(Vessel Fluid Volume)60cm
流量(Flow Rate)60cm/分
最大一致(Max Coincidence)9000、
数(Number)1
サンプル調製:0.3cmのインク又は顔料配合物を100cmのDI水中に希釈した。次に0.2cmの希釈サンプルをアキュサイザの容器に注入する。1ミクロンより大きい1cmあたりの全粒子数を記録し、適当な固体濃度に補正された最初のインク又は顔料配合物1cmあたりの粒子濃度が反映されるように調整した。
【0059】
好適な高沸点有機溶媒の例は、多価アルコール類、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン;多価アルコール類のアルキルエーテル類、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル;2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;及びトリエタノールアミンなどである。
【0060】
その中でも、180℃以上の沸点を有する水溶性有機溶媒の使用が好適である。180℃以上の沸点を有する水溶性有機溶媒の使用は、インク組成物に保水性及び湿潤性を付与できる。その結果、優れた貯蔵安定性が実現できる。さらに、開放状態で放置された場合でも、すなわち室温で空気と接触した状態で放置された場合でも、長時間流動性及び再分散性を維持でき、加えて、インクジェット印刷に使用される場合、印刷中又は印刷中断後の再スタート時にノズルの詰まりを起こさないために高い吐出安定性を提供するインク組成物が実現できる。
【0061】
180℃以上の沸点を有する水溶性有機溶媒の例は、エチレングリコール(沸点:197℃、以後沸点をカッコ内に記載)、プロピレングリコール(187℃)、ジエチレングリコール(245℃)、ペンタメチレングリコール(242℃)、トリメチレングリコール(214℃)、2−ブテン−1,4−ジオール(235℃)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(243℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(197℃)、N−メチル−2−ピロリドン(202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(257−26℃)、2−ピロリドン(245℃)、グリセリン(290℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(243℃)、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール(198℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(190℃)、ジプロピレングリコール(232℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、テトラエチレングリコール(327℃)、トリエチレングリコール(288℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(230℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)及びジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)などである。これらの水溶性有機溶媒の中でも200℃以上の沸点を有するものが好適である。これらの水溶性有機溶媒は単独で又は二つ以上の混合物として使用できる。
【0062】
高沸点有機溶媒の含量は好ましくは約0.01〜10重量%、さらに好ましくは約0.1〜5重量%である。
【0063】
本発明で使用できる水溶性有機溶媒は第三級アミン類も含む。第三級アミン類の添加はインクに湿潤性を付与できる。第三級アミン類の具体例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン及びブチルジエタノールアミンなどである。それらは単独で又は二つ以上の混合物として使用できる。インクに添加される第三級アミンの量は、好ましくは約0.1〜10重量%、さらに好ましくは約0.5〜5重量%である。
【0064】
好適な分散剤の例は合成ポリマーなどで、その例としては、ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;アクリル樹脂、例えばポリアクリル酸、アクリル酸/アクリロニトリルコポリマー、アクリル酸カリウム/アクリロニトリルコポリマー、酢酸ビニル/アクリルエステルコポリマー及びアクリル酸/アクリルエステルコポリマー;スチレン/アクリル樹脂、例えばスチレン/アクリル酸コポリマー、スチレン/メタクリル酸コポリマー、スチレン/メタクリル酸/アクリルエステルコポリマー、スチレン/アルファ−メチルスチレン/アクリル酸コポリマー及びスチレン/アルファ−メチルスチレン/アクリル酸/アクリルエステルコポリマー;スチレン/マレイン酸コポリマー;スチレン/無水マレイン酸コポリマー;ビニルナフタレン/アクリル酸コポリマー;ビニルナフタレン/マレイン酸コポリマー;酢酸ビニルコポリマー類、例えば酢酸ビニル/エチレンコポリマー、酢酸ビニル/脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸エステルコポリマー、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー及び酢酸ビニル/アクリル酸コポリマー;及び上記ポリマーの塩などである。それらの中でも、その分子構造中に疎水基を有するモノマーとその分子構造中に親水基を有するモノマーとのコポリマー、及びその分子構造中に疎水基と親水基の両方を有するモノマーのポリマーが特に好適である。
【0065】
界面活性剤の具体例は、アニオン性界面活性剤、例えばアセチレングリコール類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム及びポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフェート類のアンモニウム塩;非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類及びポリオキシエチレンアルキルアミド類;及び両性界面活性剤、例えばN,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボキシレート、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウムスルホン酸エステルベタイン及び2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどである。それらは単独で又は二つ以上の組合せで使用できる。
【0066】
本発明では、好ましくは、アセチレングリコール界面活性剤をインク及び/又は顔料配合物に配合するのが好ましい。本発明に使用可能な好適なアセチレングリコール界面活性剤の具体例は、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどである。式(I)で表されるアセチレングリコール界面活性剤として市販品も使用できる。その具体例は、Surfynol(登録商標)104、Surfynol(登録商標)82、Surfynol(登録商標)465、Surfynol(登録商標)485及びSurfynol(登録商標)TG(Air Products and Chemicals Inc.より入手可)及びOLFINE(登録商標)STG及びOLFINE(登録商標)E 1010(Nissin Chemical Industry Co.,ltd.製)などである。
【0067】
顔料配合物(例えばコンセントレート)は、好ましくは、本発明の方法によって得られたろ過された粒状顔料と、水及び所望により有機溶媒を含む液状媒体とを含む。従って、顔料配合物は、有機溶媒が任意であるのと一般的に顔料含量がインクより高いこと以外は、ほぼインクに関する前記記載の通りである。顔料コンセントレートは、後でインクを製造するためのストック材料として保管でき、また、液状媒体の含量が少ないため比較的コンパクトで安く輸送できるために有用である。顔料コンセントレートをインクに変換するには、単に水及び/又は有機溶媒並びに何らかの所望のインク添加剤を加えさえすればよい。
【0068】
該インク組成物は好ましくはインクジェットプリンタ、さらに好ましくはサーマル又はピエゾ型インクジェットプリンタ用である。
【0069】
インク添加剤の具体例はアルカリ水酸化物などで、その例は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムなどである。添加されるアルカリ水酸化物の量は約0.01〜5重量%、さらに好ましくは約0.05〜3重量%である。
【0070】
インクに包含される界面活性剤の量は好ましくは0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0071】
インクは好ましくはグリコールエーテルを含有する。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル及びジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテルなどである。それらは単独で又は二つ以上の有機溶媒の混合物として使用できる。
【0072】
更なる有用な種類のインク添加剤はサッカリド類及びサッカリド誘導体類である。なぜならばこれらはインク組成物に保水性を付与するからである。特に、サッカリド類又はサッカリド誘導体類をヒアルロン酸の塩又は誘導体と組み合わせて使用すると、インクに著しい保水性を付与できる。
【0073】
サッカリド類の例は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類などで、その好適な例は、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース及びマルトトリオースなどである。多糖類は広い意味でサッカリド類のことを言い、アルギン酸、アルファ−シクロデキストリン及びセルロースなど、自然界に広く存在する物質を包含する。これらのサッカリド類の誘導体類は、上記サッカリド類の還元糖(例えば、一般式HOCH(CHOH)CHOH(式中nは2〜5の整数)で表される糖アルコール)、酸化糖(例えば、アルドン酸及びウロン酸)、アミノ酸及びチオ糖などである。糖アルコールが特に好適で、その具体例はマルチトール及びソルビトールなどである。サッカリド又はサッカリド誘導体の含量は好ましくは約0.1〜40重量%、さらに好ましくは約2.5〜20重量%である。
【0074】
なお更なるインク添加剤はグリセリンである。なぜならば、多くのインクでこれはインクが記録ヘッドのノズル前面で乾燥する可能性を低減し、それによってノズルの詰まりの予防に役立つからである。添加されるグリセリンの量は約5〜40重量%、好ましくは約10〜20重量%である。
【0075】
保存剤又はカビ防止剤の例は、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及び1,2−ジベンゾチアゾリン−3−オン(Arch Chemicals製Proxel(登録商標)CRL、Proxel(登録商標)BDN、Proxel(登録商標)GXL、Proxel(登録商標)XL−2及びProxel(登録商標)TN)などである。
【0076】
本発明の更なる特徴は、本発明の第一の側面による方法によって得られたインク又は顔料配合物を提供することである。
【0077】
本発明の更なる特徴は、チャンバ(室)とインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジを提供することである。前記インクは前記チャンバ内にあり、本発明の第一の側面による方法によって得られたものである。
【0078】
本発明は、そのようなカートリッジと印刷機構を含むインクジェットプリンタ及び基材の印刷法も提供する。前記印刷法は、本発明の第一の側面による方法によって得られたインク又は本明細書の上文に記載のインクをインクジェットプリンタによって基材に適用することを含む。
【0079】
次に本発明を以下の非制限的実施例によって説明する。実施例中、すべての部は特に明記しない限り重量による。
【0080】
米国特許第6,562,117号に記載の実施例を繰り返した。ただし、該特許で使用されたふるいの代わりにオランダのFluxxion B.V.の、5.0、3.5、2.0又は1.2ミクロンのフィルターを含有するfluXXbox、fluXXlab又はfluXXpilotろ過製品を使用する。
実施例1−均一な無機フィルターの効果
工程1−粒状顔料を含む組成物の製造
BYK 190(登録商標)(60g、BYK Chemieより入手)と脱イオン水(790g)をステンレススチール製ビーカーに入れ、Greaves Laboratoryミキサ135(Model A 高剪断ミキサ)を用いて低速で1分間撹拌し、ポリマーと脱イオン水との均質混合物を泡を立てることなく製造した。この混合物に、Pigment Red 122(150g、例えばCiba、Clariant、Sun Chemicalsなどから入手可)をゆっくり加え、Greavesミキサを用いて液中に混合した。全部の顔料が液中に入ったら、Greavesミキサを5000rpmで約15分間運転し、均一顔料分散液を製造した。
【0081】
上で製造された顔料分散液をNetzsch Mini−Zeta Laboratoryビーズミル(Netzsch−Feinmahltechnikより入手可)に移した。このビーズミルには予め200mlの0.5mmイットリウム安定化セラミック粉砕媒体(Netzsch−Feinmahltechnikより入手可)が装填されていた。顔料分散液をビーズミル中3000rpmで5時間粉砕した後、容器に取り出した。
【0082】
上記粉砕分散液を脱イオン水で希釈して2%の濃度の顔料分散液を製造した。これを以後未ろ過分散液と呼ぶ。この未ろ過分散液を、Pall SegmentフィルターModel SAH0101G04Jに接続された5リットルの圧力容器に移した。このフィルターには0.3ミクロンのデプス型フィルターカートリッジRef.AB01Y00318Jが取り付けられていた。圧力容器を150,000パスカル絶対圧に加圧し、顔料分散液をろ過した。このろ過の目的は、その後の粒径分析を妨害しかねない極めて過大孔径の粒状物質を除去することであった(本発明の日常的実施においては粒径を測定する必要がないので、このデプスろ過の実施は必要ないであろう)。
【0083】
得られた顔料分散液(“分散液1”)はpH6であった。
【0084】
分散液1の一部を水酸化ナトリウム溶液(45%力価)を用いてpH12に調整し、分散液2を得た。
工程2−4.0ミクロンのポリスチレン微小球の添加
分散液2に4.0ミクロンのポリスチレン微小球を分散液1リットルに対して5mlの微小球レベルで添加した。これらの微小球は粒径標準に使用される種類のもの、例えばFluka Sigma−Aldrichから入手できる‘ポリスチレンを基にした微粒子粒径標準、単分散4.0ミクロン、製品番号81494’ であった。得られた分散液を添加分散液2とした。
工程3A−均一な孔径のフィルターによるろ過
3.5ミクロン又は5ミクロンの均一な孔径を有するフィルターを、オランダ・アイントホーフェンのfluXXion B.V.から得た(FluXXlab(登録商標)クロスフローろ過装置)。メーカーの使用説明書に従って各フィルターを活性化した(親水性にした)。
【0085】
添加分散液2を、3.5ミクロン又は5ミクロンの均一孔径の細孔を有するフィルターを含有するFluXXlab(登録商標)クロスフローろ過装置を用いてろ過した。装置の設定は次の通りであった。
【0086】
クロスフロー量 2.3リットル/分
クロスフロー圧力降下 20,000パスカル
トランス膜圧 最大10,000パスカル
バックパルス圧 最大
均一孔径3.5ミクロンのフィルターから得られた分散液を添加分散液3とする。
【0087】
均一孔径5ミクロンのフィルターから得られた分散液を添加分散液4とする。
工程3B−比較−デプス型フィルターによる添加分散液のろ過
添加分散液2を5ミクロンのデプス型フィルターを通してろ過した。得られた分散液を添加分散液5とする。
工程4−粒径分布の測定
工程2、工程3A及び3Bから得られた4種類の分散液(すなわち添加分散液2、3、4及び5)をNicomp Accusizer APS 780粒径分析器を用いて分析した。この装置は設定された閾値孔径を上回る粒子のみをカウントする。閾値未満の圧倒的多数の粒子を無視することにより、閾値を超える粒子の絶対数の変化を明白に区別でき、それらの大粒子の粒径分布を示すことができる。
結果
図1に添加分散液2の粒径分布を示す。これは、4.0ミクロンのポリスチレン微小球の添加後全くろ過していないので、これらの微小球に対応するピークをはっきり見ることができる。
【0088】
図2に添加分散液3(均一孔径3.5ミクロンのフィルターから得られた)の粒径分布を示す。3.5ミクロンの均一細孔が4.0ミクロンの全ポリスチレン微小球を除去したため約4ミクロンのところにピークがない。
【0089】
図3に添加分散液4(均一孔径5ミクロンのフィルターから得られた)の粒径分布を示す。約4ミクロンのところに明らかにピークが見られる。均一な5ミクロンの細孔がより小さい4.0ミクロンのポリスチレン微小球を除去しなかったために存在する。
【0090】
図4に添加分散液5(4.0ミクロンの微小球を含有する分散液を5ミクロンのデプス型フィルターでろ過して得られた)の粒径分布を示す。フィルターは名目上微小球より大きい孔径を有しているのに、4.0ミクロンの微小球は5ミクロンのデプス型フィルターによって除去された。これは、均一な5ミクロンフィルターが4ミクロンの微小球を除去しなかった図3とは著しい対照をなす。
実施例2−pHの影響
工程1−分散液6及び7の製造
pH6を有する分散液6を実施例1に記載の分散液1に関する方法によって製造した。ただし、粉砕は5時間ではなく3時間行った。
【0091】
分散液7は、分散液6のpHを水酸化ナトリウム溶液を用いて12に調整することによって製造した。
工程2−均一な孔径のフィルターによるろ過
分散液6及び7を、実施例1の工程3Aの方法によって3.5ミクロンの均一な孔径を有するフィルターを通してろ過し、透過物の流量を時間に対して記録した。分散液7(pH12)の場合、流量は30分間のろ過後も顕著に変化しなかった。しかしながら、分散液6(pH6)の場合、流量は7分後に50%落ちた。
【0092】
分散液6及び7を同様に2ミクロンの均一な孔径を有するフィルターを通してろ過した。分散液7(pH12)の場合、流量は30分間のろ過後も顕著に変化しなかった。しかしながら、分散液6(pH6)の場合、流量はわずか数分後に50%落ちた。
実施例3−維持された粒径分布
分散液8を実施例1に記載の未ろ過分散液に関する方法によって製造した。ただし、粉砕は5時間ではなく1時間行い、水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを12に調整した。
【0093】
分散液9は、分散液8の一部を実施例1の工程1に概説した一般法を用いて5ミクロンのデプス型フィルター(depth filter)を通してろ過することによって製造した。
【0094】
分散液10は、分散液8の一部を実施例1の工程3Aに概説した一般法を用いて5ミクロンの均一な孔径を有するフィルターを通してろ過することによって製造した。
【0095】
分散液8、9及び10の粒径分布を、Malvern Mastersizer 2000レーザ回折式粒径分析器を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0096】
図5から、分散液9(デプスろ過)及び分散液10(均一フィルター)の両方とも、インクジェットプリンタの微細ノズルを詰まらせかねない5ミクロン超の大きさの不要物質を除去したことが分かる。しかしながら、図5は同時に、デプス型フィルターは、5ミクロンを超える粒径の粒子を除去するために0.5〜5ミクロンの物質も相当割合除去してしまったということも示している。これは分散液8(未ろ過)と比較した分散液9(デプスろ過)のピーク特徴の変化から明らかである。これに対し、分散液10(5ミクロンの均一孔径の細孔を有するフィルターを用いて製造)の約0.1〜1ミクロンにおけるピークは未ろ過分散液8と極めて類似した特徴を有しており、0.1〜5ミクロンの孔径範囲の物質が失われなかったことを示している。従って、均一フィルターの使用はデプス型フィルターよりも無駄が少なかった。
実施例4
インクは以下のようにして製造できる。分散液2を、1000ダルトンの限外ろ過膜を用いて固形分15%に濃縮し、プロセスでの溶解塩も除去する。得られた顔料コンセントレート(33部)をグリセリン(10部)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(8部)、Surfynol(登録商標)465(1部、Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.)及び水(48部)を混合してインクを製造する(すべての部は重量部)。得られたインクは、Seiko Epson製ピエゾ型インクジェットプリンタEM−900Cを用いて紙に印刷できる。
実施例5
分散液2の代わりに実施例2の工程2から得られたろ過分散液7を用いて実施例4を繰り返す。
実施例6〜11
以下の表1に示すように、分散液2とろ過分散液7のコンセントレート(固形分15%)を用いて更なるインクを製造する。表中、数字は重量による関係成分の部数を表す。
【0097】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】添加分散液2の粒径分布を示す図である。
【図2】添加分散液3の粒径分布を示す図である。
【図3】添加分散液4の粒径分布を示す図である。
【図4】添加分散液5の粒径分布を示す図である。
【図5】分散液8、9及び10の粒径分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの製造法、又はインクの製造に使用するための顔料配合物の製造法であって、該方法は、粒状顔料と液状媒体を含む組成物を、10ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する無機フィルターを通してろ過することを含む方法。
【請求項2】
無機フィルターが5ミクロン以下の均一孔径の細孔を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無機フィルターを通過する組成物の流量の低下を、組成物のpH及び/又はイオン強度を調整することによって軽減する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ろ過が、少なくとも5000リットル/m/時の無機フィルター通過流量で実施される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ろ過から得られたろ液を一つ又は複数のインク添加剤と混合する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
フィルターがクロスフローフィルターである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
フィルターを定期的にバックフラッシュすることによってフィルターが目詰まりする可能性を低減する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
無機フィルターが、無機マクロ多孔質担体と、前記マクロ多孔質担体の表面に固く結合された10ミクロン未満の均一孔径の細孔を有する無機ふるい層とを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ふるい層の細孔がエッチングによって形成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ふるい層が、該孔径の大きさの最大10倍の厚さを有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
担体がセラミック物質で構成される、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
20,000パスカル未満のトランスフィルター圧で実施される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
無機フィルターが20〜2000ミクロンの厚さを有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ふるい層中の少なくとも95%の細孔が該平均孔径の5%以内の孔径を有する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
インクが水性インクである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
インクが25℃で50cP未満の粘度を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
インクが、0.1〜10重量%の顔料、50〜97重量%の水及び2.9〜40重量%の有機溶媒を含む(すべての部は重量部である)、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
インクがインクジェットプリンタに使用するためのインクである、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法によって得られたインク又は顔料配合物。
【請求項20】
15重量%の顔料含量で測定した場合、1ミクロンより大きいアキュサイザ(accusizer)数10粒子/cm未満を有するインク又は顔料配合物。
【請求項21】
15重量%の顔料含量で測定した場合、1ミクロンより大きいアキュサイザ数が10粒子/cm未満である、請求項20に記載のインク又は顔料配合物。
【請求項22】
(i)0.1〜10重量%のろ過された粒状顔料;
(ii)3〜50重量%の有機溶媒;及び
(iii)49.9〜96.9重量%の水
を含む、請求項19〜21のいずれか1項に記載のインク。
【請求項23】
チャンバとインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジであって、前記インクは前記チャンバ内にあり、そして請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法によって得られたものであるか又は請求項19〜22のいずれか1項に定義されている通りであるインクジェットプリンタ用カートリッジ。
【請求項24】
少なくとも1cmの前記インクを含有している請求項23に記載のカートリッジ。
【請求項25】
カートリッジが請求項24に定義の通りであることを特徴とする、カートリッジと印刷機構を含むインクジェットプリンタ。
【請求項26】
基材の印刷法であって、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法によって得られたインク又は請求項19〜22のいずれか1項に定義されている通りのインクをインクジェットプリンタによって該基材に適用することを含む方法。
【請求項27】
フィルターを通過する顔料組成物の流量を増強するためのpH及び/又はイオン強度の調整の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−500486(P2009−500486A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519990(P2008−519990)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002494
【国際公開番号】WO2007/007047
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】