説明

施療機

【課題】
不必要に前腕部施療部における拘束感や圧迫感をもたらしたり、椅子本来の肘掛部の機能が前腕部施療部によって妨げられたりすることがなく、しかも背凭れ部のリクライニングにより腕施療範囲が減少せずに被施療者の腕部に対する充実した施療を実施することが可能な施療機を提供する。
【解決手段】
座部11aとリクライニング可能な背凭れ部12aを座部11a両側に肘掛部14aを備えて椅子本体10aを形成すると共に、該肘掛部14aは前腕を狭持する前腕部狭持機構5を備え、該前腕部狭持機構5は前記肘掛部14aの長手方向に沿って壁面部145aを形成し、該壁面部145aの内部に、前腕部を施療する前腕部施療部5aと該前腕部施療部5aを移動させる施療部移動機構6aを設けた施療機1aとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被施療者の腕部、特に前腕部に対する充実した施療を実施することが可能な施療機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施療機において、被施療者の背中のみならず、腕部などの肢体に及んで施療する構成のものは既に存在し、市場では商品化されている。
【0003】
すなわち、図16に示すように、座部5とリクライニングが可能な背凭れ部6,及びフットレスト7から主として構成されるマッサージ機1として、被施療者の上腕部を保持する第1保持部分11と、被施療者の前腕部を保持する第2保持部分12とによって構成する保持部10を備えたものが開示されている。
【0004】
前記第1保持部分11は、前記背凭れ部6の側部に取り付けられ、前記第2保持部分12は、前記座部5の側方に設けられたガイドレール9に係合され、また、第1保持部分11と第2保持部分12とは枢着され、さらに、第1保持部分11及び第2保持部分12には、夫々空気袋を設けて構成している。
【0005】
被施療者は、座部5に着座し、背凭れ部6に上体を凭れかけた状態で、上腕部を第1保持部分11に、前腕部を第2保持部分12に夫々挿入するが、背凭れ部6が後方へ傾倒された時、第1保持部分11は、背凭れ部6とともに後方へ移動すると共に、これに引っ張られて第2保持部分12がガイドレール9に沿って略後方へ移動することになる。この時、第1保持部分11と第2保持部分12とがなす角度は、背凭れ部6の傾倒に伴って変化することとなる。
【0006】
そのため、背凭れ部の傾倒前後において、被施療者の腕部と保持部との相対的な位置が殆ど変わることがなく、背凭れ部を傾倒させた場合にも、施療部によって傾倒前の部位と殆ど同一の部位を施療するものとしている。(特許文献1)
【0007】
また、図17に示すように他の従来における椅子型マッサージ装置として、被施療者の前腕を支持するアームレスト5に、ガイドレール37に沿って移動することが可能な着脱部材38に前腕マッサージ機7を備えたものも存在している。(特許文献2)
【0008】
さらに、図18に示す従来のマッサージ機は、リクライニングさせて腕部の位置がリクライニングさせていない状態からずれても、エア給気量を補正して最適なマッサージを行うことを可能としたものであり、肘掛け部13に載置された被施療者Mの腕部をエア給気量に応じて圧迫するエアーバッグ(膨縮袋)93を腕部の異なる位置に対応するように複数配置しており、被施療者Mの身長を検出する手段を設けるとともに、前記検出した身長に応じて各エアーバッグ93へのエア給気量を変更したり、該エア給気量をもたれ部12の座部11に対するリクライニング角度に応じて変更したりするよう構成している。(特許文献3)
【特許文献1】第4056285号公報(第12頁、図1)
【特許文献2】特開2004−216120号公報(第15頁、図3)
【特許文献3】特開2007−29398号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記のような従来の施療機について、特許文献1のものは、背凭れ部の傾倒にかかわらず、被施療者の腕部と施療部である保持部との相対的な位置が常時殆ど変わることがないため、被施療者は拘束感を受けやすくなり、また、背凭れ部がリクライニングする場合、被施療者の上腕部を保持する前記第1保持部分と被施療者の前腕部を保持する第2保持部分との間隔に変化が生じて、被施療者の肘部周辺に圧迫感を与えたり、さらには挟み込みの危険が生じたりするものと予測される。
【0010】
また、特許文献2のものは、肘掛部上を前腕部施療部が移動するため、通常の肘掛けとして使用する場合は、前腕部施療部を脱着部材からわざわざ取り外さなければならず、被施療者に煩わしさをもたらしてリラックス感を損なってしまい、また、前腕部施療部を肘掛部に取り付けている場合は、椅子本来の肘掛部としての機能が妨げられてしまうと考えられる。
【0011】
加えて、図16乃至図17に示すように、特許文献1および特許文献2のものは、被施療者の腕部を施療する施療部を移動させるための機構(例えばガイドレールなど)が施療機に外付けされており、その機構の移動する動作が被施療者に視認されるため、視覚上雑然とし、リラックス効果が阻害されると考えられる。
【0012】
さらに、特許文献3のものは、背凭れ部のリクライニングにより腕部を施療する膨縮袋の位置からずれても、膨縮袋のエア給気量を変更して腕部に対する圧迫を最適に維持するように構成しているものの、膨縮袋における腕部のずれは、腕施療範囲の減少を招くものとなり、背凭れ部のリクライニングにかかわらず、満遍なく十分に腕部を施療する点では課題となると懸念される。
【0013】
そこで、本発明は、上記問題点を包括的に解消する為に成されたものであり、不必要に前腕部施療部における拘束感や圧迫感をもたらすことなく、また椅子本来の肘掛部の機能が前腕部施療部によって妨げられることなく、且つ背凭れ部のリクライニングにより腕施療範囲が減少することなく、被施療者の腕部、特に前腕部に対する充実した施療を実施することが可能な施療機を提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の施療機は、座部とリクライニング可能な背凭れ部と座部両側に肘掛部を備えて椅子本体を形成すると共に、該肘掛部は被施療者の前腕部を狭持する前腕部狭持機構を備え、該前腕部狭持機構は前記肘掛部の長手方向に沿って壁面部を形成し、該壁面部の内部に、被施療者の前腕部を施療する前腕部施療部と該前腕部施療部を移動させる施療部移動機構を設けたものとしている。
【0015】
さらに、本発明の施療機は、前記肘掛部の上面に、被施療者の前腕部を載置する前腕部載置面を設けたものとしている。
【0016】
また、本発明の施療機は、前記施療部移動機構として空気給排装置の空気の給気により膨張動作して前記前腕部施療部を押し出すための膨縮袋と、押し出された前腕部施療部を引き戻すためのバネとを並設したものとしている。
【0017】
さらに、本発明の施療機は、前記前腕部施療部に前記空気給排装置によって膨張及び収縮動作する膨縮袋を被施療者の腕部を介して対向状に配設したものとしている。
【0018】
また、本発明の施療機は、前記前腕部施療部を上部前腕施療体及び下部前腕施療体に分割形成すると共に、それらを前記施療部移動機構により同時にまたは各別に移動するようにしたものとしている。
【0019】
さらに、本発明の施療機は、前記前腕部施療部を前記背凭れ部のリクライニングと同じ方向に連動するようにしたものとしている。
【発明の効果】
【0020】
よって、本発明の施療機は、座部とリクライニング可能な背凭れ部と座部両側に肘掛部を備えて椅子本体を形成すると共に、該肘掛部は被施療者の前腕部を狭持する前腕部狭持機構を備え、該前腕部狭持機構は前記肘掛部の長手方向に沿って壁面部を形成し、該壁面部の内部に、被施療者の前腕部を施療する前腕部施療部と該前腕部施療部を移動させる施療部移動機構を設けたものとしているため、肘掛部における壁面部の内部において、被施療者の前腕部を安静載置した状態で、該前腕部に沿って前腕部施療部を自動的に移動させる独特な構成となっている。
【0021】
このように、前記前腕部施療部を被施療者の前腕部に沿って移動するようにしているため、これを前腕部の全施療範囲に対応した大きなものとする必要がなくなり、前腕部狭持機構全体を一層コンパクトにすることができる。
【0022】
その上、上記に示したように前記前腕部狭持機構を前記肘掛部における前記壁面部の内部に内蔵しているので、従来の外付型の前腕部狭持機構のように、その機構や移動動作が被施療者に視認されることはなく、被施療者はリラックスして安静のうちに椅子本体に着座して被施療者の前腕部に対する充実した施療を実施することができる。
【0023】
さらに、本発明の施療機は、前記肘掛部の上面に、被施療者の前腕部を載置する前腕部載置面を設けたものとしているため、椅子本来の肘掛部の機能が、従来のように前腕部施療部によって妨げられることがなくなる。
【0024】
また、本発明の施療機は、前記施療部移動機構として空気給排装置の空気の給気により膨張動作して前記前腕部施療部を押し出すための膨縮袋と、押し出された前腕部施療部を引き戻すためのバネとを並設したものとしているため、施療部移動機構を比較的簡易に構成できる。
【0025】
さらに、本発明の施療機は、前記前腕部施療部に前記空気給排装置によって膨張及び収縮動作する膨縮袋を被施療者の腕部を介して対向状に配設したものとしているため、腕部を挟持状に保持しながら空圧施療を実施することができる。
【0026】
また、本発明の施療機は、前記前腕部施療部を上部前腕施療体及び下部前腕施療体に分割形成すると共に、それらを前記施療部移動機構により同時にまたは各別に移動するようにしたものとしているため、多様な空圧施療を実施することが可能となる。特に、上部前腕施療体及び下部前腕施療体がそれぞれ前後方向において異なる位置で同期押圧施療を実施する場合、腕部に対するストレッチ効果をもたらすことが可能となる。
【0027】
さらに、本発明の施療機は、前記前腕部施療部を前記背凭れ部のリクライニングと同じ方向に連動するようにしたものとしているため、背凭れ部がリクライニングしても、腕部における施療範囲が減少することなく、被施療者の腕部に対する十分な施療を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の施療機を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。
図1は本発明の施療機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の斜視図であり、図3は本発明の施療機に備えた背凭れ部及び足載部の回動の一実施形態を示す側面説明図であり、図4は本発明の施療機に備えた背凭れ部における側壁部に設けた膨縮袋の膨縮の一実施形態を示す説明図であり、図5は本発明の施療機に備えた前腕部施療部の一実施形態を示す斜視図であり、図6は本発明の施療機に備えた前腕部施療部の移動の一実施形態を示す側面説明図であり、図7及び図8は本発明の施療機に備えた前腕部施療部の移動の一実施形態を示す平面説明図であり、図9は本発明の施療機に備えた前腕部施療部を上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した一実施形態を示す側面説明図であり、図10及び図11は本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した前腕部施療部の移動の一実施形態を示す側面説明図であり、図12は本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した前腕部施療部におけるストレッチ施療の一実施形態を示す側面説明図であり、図13及び図14は本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体の移動の一実施形態を示す側面説明図であり、図15は本発明の施療機に備えた背凭れ部及び前腕部施療部の回動及び移動の一実施形態を示す側面説明図であり、図16乃至図18は従来技術を示す参考図である。
【0029】
すなわち、本発明の施療機は、図1及び図2の実施形態で示したように、被施療者の脚部または足先部が当接する足載部13aと、被施療者の臀部または大腿部が当接する座部11aと、被施療者の背部が当接する背凭れ部12a、また、座部11aの左右に立設して被施療者の手部または前腕部が当接する肘掛部14aとを備えて椅子本体10aを形成した施療機1aである。
【0030】
また、図3に示すように前記背凭れ部12aは、前記座部11aの後側にリクライニング可能に連結され、前記足載部13aは、座部11aの前側に上下方向へ揺動可能に連結している。
【0031】
さらに、前記背凭れ部12aの左右両側には、前方に向かって突出した側壁部2aを夫々配設している。
【0032】
図1に示すように、前記背凭れ部12aには、被施療者背面に多様な形態で施療を施し得る昇降自在な背部施療機構3aを設けている。該背部施療機構3aは、左右一対の施療子31aを備えており、背凭れ部12aの内部左右に設けた左右一対のガイドレール32aに沿って背凭れ部12aの上端から下端にかけて昇降するようにしている。
【0033】
前記背部施療機構3aは、モータ等を駆動源として前記左右一対の施療子31aを作動させる機械式の施療機構であり、前記背凭れ部12aに凭れた被施療者の首部、背部、腰部、臀部等の背面全域を、たたき、揉み、ローリング、振動、指圧などの多様な形態で施療するようにしたものである。
【0034】
また、前記施療機1aの各所定の位置には、空気給排装置42aにより膨縮動作を行う膨縮袋4aを配備している。
【0035】
すなわち、前記膨縮袋4aは、エアーコンプレッサー及び各膨縮袋4aに空気を分配するための分配器等からなる前記空気給排装置42aによる給排気によって膨縮動作を行うようにしており、該空気給排装置42aは前記座部11aの下部空間に配備している。
【0036】
前記空気給排装置42aによる前記各膨縮袋4aの膨縮動作によって、被施療者の所定の施療部位を押圧、指圧等を実施する事ができ、また複数の膨縮袋4aを対となるよう対設させた場合には、挟圧等の施療も行う事ができ、更に、各膨縮袋4aを膨張状態に保つようにした場合は、被施療者の所定の部位を一定の時間保持する事も可能としている。
【0037】
図1に示すように、前記背凭れ部12aの適位置に、前記膨縮袋4aを配備している。すなわち、該背凭れ部12aの前面側左右上部及び左右下部に各膨縮袋4aを設けて、被施療者の背中及び腰部を押圧、または左右両側から挟圧するような施療を行うよう構成している。
【0038】
また、前記座部11aの適位置にも、前記膨縮袋4aを配備する事ができる。図1に示すように、座部11aの前後に腿部用また臀下部用の各膨縮袋4aを夫々埋設して、主に下方から上方に押圧する施療を行うようにしている。
【0039】
前記足載部13aは、被施療者の脛部及び足先部を嵌入させる左右一対の凹部131aを備えたものとして形成する事ができ、各凹部131aの適位置に前記空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備している。図1に示すように、前記足載部13aの前記各凹部131aに、前記膨縮袋4aを左右一対として対設するよう配設させて、凹部内部で被施療者の脛部及び足先部に対する挟圧施療を実施するよう構成している。
【0040】
図2に示すように、前記背凭れ部12aに設けた左右の側壁部2aは、座部11aに着座した被施療者の肩部または上腕側方となる位置に配設しており、該各側壁部2aの適位置に、前記空気給排装置42aによる給排気により膨縮動作を行わせる膨縮袋4aを配備している。
【0041】
図4に示すように、前記左右の側壁部2aの内側面において、夫々左右方向に重合した膨縮袋4aを並列状態に埋設して構成している。これら重合した膨縮袋4aはその基端部のみを側壁部2aの基端部に取り付けているため、膨張時には重合した膨縮袋4aが扇状に広がって被施療者の肩部や上腕部の身体側部を挟圧しつつ、身体前方まで覆うようになる。
【0042】
よって、前記左右側壁部2aの前記膨縮袋4aは、上記したように膨縮動作により身体側部を施療する事ができるだけでなく、一定の時間において膨張状態を保ちながら、被施療者の身体が前記背凭れ部12aから離れないようにしっかりと保持する事ができ、図4に示すように被施療者の身体を固定したままの状態で前記背部施療機構3aの前記施療子31aによる背部からの施療を効果的に受ける事が可能となるのである。
【0043】
上記に示すように本発明の施療機1aは、前記座部11aとリクライニング可能な前記背凭れ部12aと前記肘掛部14aとを備えて前記椅子本体10aを形成したものであるが、さらに、図1に示すように、該被施療者の前腕部を載置する前腕部載置面141aを上面とする肘掛部14aに、被施療者の前腕を狭持する前腕部狭持機構5を備えたものとしている。
【0044】
前腕部狭持機構5は、前記肘掛部14aの長手方向に沿って壁面部145aを形成した内部に、
被施療者の前腕部を施療する前腕部施療部5aと、該前腕部施療部5aを移動させる施療部移動機構6aとを設けて構成している。
【0045】
すなわち、前記肘掛部14aの前記壁面部145aにおいて、被施療者の前腕部が挿入可能な腕部挿入溝142aを設け、該腕部挿入溝142aの内部において前記前腕部施療部5aを配設している。
【0046】
前記腕部挿入溝142aは、図6に示すように前記肘掛部14aにおいて前後に貫通形成したものであり、被施療者の指先から肩付近までの腕全体を挿入することができる。
【0047】
前記前腕部施療部5aは図5に示すように、被施療者の前腕部を挿入可能とする前方視コ字状凹部を形成したフレーム50aの適所において、前記空気給排装置42aによって膨張及び収縮動作する膨縮袋4aを配設している。
【0048】
前記膨縮袋4aは、被施療者の前腕部を介して対向状に配設したものとしているため、前記前腕部施療部5aにおいて挟持空圧施療が実施可能となっている。
【0049】
また、本発明の施療機1aは、図6に示すように前記腕部挿入溝142aの内部において前記前腕部施療部5aを施療部移動機構6aにより腕部挿入溝142aに挿入した被施療者の前腕部に沿って移動可能に設けたものとしている。
【0050】
すなわち、前記前腕部施療部5aは、該前腕部施療部5aに備えた回転輪501aと、該回転輪501aを案内転動するガイドレール143aとにより、被施療者の前腕部に沿って前記腕部挿入溝142aの内部において移動することが可能となっている。
【0051】
また、図7及び図8に示すように、前記施療部移動機構6aは、前記空気給排装置42aの空気の給気により膨張動作して前記前腕部施療部5aを押し出すための膨縮袋61aと、押し出された前腕部施療部5aを引き戻すためのバネ62aとを並設したものとしている。
【0052】
前記バネ62aは、前記前腕部施療部5aを前記腕部挿入溝142aの最前方位置に引き戻す引張力を有しているため、前記膨縮袋61aが収縮状態の時には、常にこのバネ62aにより前記前腕部施療部5aを前記腕部挿入溝142aの最前方位置に戻すことができる。
【0053】
前記腕部挿入溝142aの最前方位置にある前記前腕部施療部5aを後方へ移動させる場合は、前記バネ62aの引張力に抗して勝るよう前記膨縮袋61aへ給気して膨張力を高めていくことにより可能となる。
【0054】
また、後方へ移動する前記前腕部施療部5aを所定位置に静止させる場合は、前記バネ62aの引張力と前記膨縮袋61aの膨張力とが等しくなるよう前記空気給排装置42aにより膨縮袋61aへ給気すればよい。
【0055】
逆に前方の所定位置まで前記前腕部施療部5aを移動させる場合は、前記膨縮袋61aの膨張力を弱め、所定位置において再び膨縮袋61aの膨張力がバネ62aの引張力と等しくなるよう前記空気給排装置42aにより膨縮袋61aから排気すればよい。
【0056】
前記前腕部施療部5aを前記腕部挿入溝142aの最前方位置に戻して収納する場合は、前記膨縮袋61aから排気すれば、前記バネ62aの引張力により最前方位置まで腕施療部が移動する。
【0057】
このように、前記前腕部施療部5aを被施療者の腕部に沿って移動可能に設けたので、被施療者の所望に応じて自在に位置調整が行え、前腕部施療部5aにおける施療を実施しながら、腕部における施療を所望する部位に位置変更することができる。
【0058】
尚、図7及び図8に示すように、移動する前記前腕部施療部5aに設けた前記膨縮袋4aと接続して空気を供給するエアホース41aがその移動に伴って閉塞されないよう、該エアホース41aを通行させる通行溝144aを前記腕部挿入溝142aに形成している。
【0059】
また、図15に示すように、前記前腕部施療部5aを前記背凭れ部12aのリクライニングと同じ方向に連動するよう、リンク機構7aを具備してもよい。これにより、背凭れ部12aがリクライニングしても、前腕部における施療範囲が減少することなく、被施療者の前腕部に対する十分な施療を実施することができる。尚、この連動の際、前腕部施療部5aを押し出すための前記膨縮袋61aへの給気は停止し、前記バネ62aの引張力に抗して前腕部施療部5aを移動させる。
【0060】
さらに、本発明の施療機1aは図9に示すように、前記前腕部施療部5aを上部前腕施療体51a及び下部前腕施療体52aに分割形成すると共に、それらを前記施療部移動機構6aにより同時にまたは各別に移動するようにしたものとしている。
【0061】
すなわち、前記上部前腕施療体51a及び前記下部前腕施療体52aのそれぞれ個別に、前述した施療部移動機構6aを設けてなり、図10に示す上部前腕施療体51a及び下部前腕施療体52aが同時に移動したり、図11に示すように各別に独立して移動したりするように構成して、多様な空圧施療を実施できる。
【0062】
特に、図12に示すように、前記上部前腕施療体51a及び前記下部前腕施療体52aがそれぞれ前後方向において異なる位置で同期押圧施療を実施する場合、前腕部に対するストレッチ効果をもたらすことが可能となる。
【0063】
さらに、図13及び図14に示すように、前記各膨縮袋4aを膨張させた状態で前記上部前腕施療体51a及び前記下部前腕施療体52aを相互に異なる方向へそれぞれ前記各施療部移動機構6aにて移動させることで、前腕部全体を摺擦しながらストレッチ効果をもたらすことができ、且つ、手部の付近においては、前腕部に対して手部を上下方向に動かすことになり、手首ストレッチを実施することができる。
【0064】
上記のように、本発明の施療機1aは独特な構成となっているため、被施療者がリラックスした状態で前腕部に対する施療を受けることができる。すなわち、
前記肘掛部14aにおける前記壁面部145aの内部において前記前腕部施療部5aを移動可能に設けた内蔵型の前腕部狭持機構5としたので、この前腕部狭持機構5全体がコンパクトになって、従来のように被施療者の身体的及び視覚的な圧迫感となっていた肘掛部の外部における前腕部狭持機構の露出が解消される。よって、被施療者はリラックスして安静のうちに椅子本体10aに着座して、被施療者の前腕部に対する充実した施療を実施することができる。
【0065】
また、前記肘掛部14aにおいて、被施療者の前腕部を載置する前記前腕部載置面141aと前記前腕部施療部5aを備えた前腕部狭持機構5とを個別に設けたため、被施療者は所望に応じてそれらを使い分けることができる。その結果、従来はそれらを兼用して椅子本来の肘掛部の機能が前腕部施療部によって妨げられ、且つそれによって不必要に前腕部周辺における拘束感や圧迫感を被施療者にもたらしていたが、その問題は解消されることになり、そのうえ、前記背凭れ部12a及び前腕部施療部5aの連動により、前腕部における施療範囲が減少する問題も阻止されて、前腕部に対する多様で充実した空圧施療が実施可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の施療機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の施療機の一実施形態を示す使用時の斜視図である。
【図3】本発明の施療機に備えた背凭れ部及び足載部の回動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図4】本発明の施療機に備えた背凭れ部における側壁部に設けた膨縮袋の膨縮の一実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の施療機に備えた前腕部施療部の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の施療機に備えた前腕部施療部の移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図7】本発明の施療機に備えた前腕部施療部の移動の一実施形態を示す平面説明図である。
【図8】本発明の施療機に備えた前腕部施療部の移動の一実施形態を示す平面説明図である。
【図9】本発明の施療機に備えた前腕部施療部を上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した一実施形態を示す側面説明図である。
【図10】本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した前腕部施療部の移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図11】本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した前腕部施療部の移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図12】本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体で構成した前腕部施療部におけるストレッチ施療の一実施形態を示す側面説明図である。
【図13】本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体の移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図14】本発明の施療機に備えた上部前腕施療体及び下部前腕施療体の移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図15】本発明の施療機に備えた背凭れ部及び前腕部施療部の回動及び移動の一実施形態を示す側面説明図である。
【図16】従来技術を示す参考図である。
【図17】従来技術を示す参考図である。
【図18】従来技術を示す参考図である。
【符号の説明】
【0067】
1a 施療機
10a 椅子本体
11a 座部
12a 背凭れ部
13a 足載部
131a 凹部
14a 肘掛部
141a 前腕部載置面
142a 腕部挿入溝
143a ガイドレール
144a 通行溝
145a 壁面部
2a 側壁部
3a 背部施療機構
31a 施療子
32a ガイドレール
4a 膨縮袋
41a エアホース
42a 空気給排装置
5 前腕部狭持機構
5a 前腕部施療部
50a フレーム
501a 回転輪
51a 上部前腕施療体
52a 下部前腕施療体
6a 施療部移動機構
61a 膨縮袋
62a バネ
7a リンク機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部とリクライニング可能な背凭れ部を座部両側に肘掛部を備えて椅子本体を形成すると共に、該肘掛部は前腕を狭持する前腕部狭持機構を備え、該前腕部狭持機構は前記肘掛部の長手方向に沿って壁面部を形成し、該壁面部の内部に、前腕部を施療する前腕部施療部と該前腕部施療部を移動させる施療部移動機構を設けたことを特徴とする施療機。
【請求項2】
前記肘掛部の上面に、被施療者の前腕部を載置する前腕部載置面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の施療機。
【請求項3】
前記施療部移動機構として空気給排装置の空気の給気により膨張動作して前記前腕部施療部を押し出すための膨縮袋と、押し出された前腕部施療部を引き戻すためのバネとを並設したことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか記載の施療機。
【請求項4】
前記前腕部施療部に前記空気給排装置によって膨張及び収縮動作する膨縮袋を被施療者の腕部を介して対向状に配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の施療機。
【請求項5】
前記前腕部施療部を上部前腕部施療体及び下部前腕部施療体に分割形成すると共に、それらを前記施療部移動機構により同時にまたは各別に移動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の施療機。
【請求項6】
前記前腕部施療部を前記背凭れ部のリクライニングと同じ方向に連動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか記載の施療機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−11974(P2010−11974A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173754(P2008−173754)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】