説明

施錠装置用補助錠

【課題】施錠装置の解錠操作を楽にすること。
【解決手段】施錠装置を内蔵した錠ケースに取り付けられる施錠装置用補助錠であって、補助錠は、ベース板52と蓋板の間に係合回転体71と係合回転体71を所定の解錠位置で係止する係止手段81をそれぞれ回転自在に備え、また、係止手段81に形成した係合爪86が係合回転体71に設けた係合突起77に係合可能な方向へとバネ力が常に作用する解錠状態保持用バネ89と係合回転体71の解錠状態の保持を解消するカム部材91とをそれぞれ備え、合鍵Kの操作力により係合回転体71の係合突起77が施錠状態の位置から解錠状態の位置へと回転位置変位したときに、解錠状態保持用バネ89のバネ力に抗して、係合突起77が係止手段81の係合爪86を越えて係合爪86に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施錠装置用補助錠に関し、例えば車両用シャッターの施錠装置における補助錠に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャッターを閉鎖するだけでシャッター側のフックを車両の下枠側の係止手段(ストライカ)に対して自動的にロックすることができる車両用シャッターの施錠装置が記載されている。
【0003】
この施錠装置は、シャッターを閉鎖した時に荷室開口部の下枠に設けられたストライカに自動的に係合するフック機構と、係合を解除するフック解放機構と、係合を解除する動作をロックする施錠機構から成り、図9、図10で示すように、施錠機構は、一端部が施錠リトラクタ19に、一方、他端部は錠ケース10内に取り付けられた施錠スプリング30を備えていることを特徴とする(用語と符号は極力特許文献1に一致させている)。
【0004】
まず、図9は、特許文献1のポイントを示す概念図である。この図9に於いて、2はシャッターカーテン、10は施錠装置X用の錠ケース、19は水平方向にスライドする施錠リトラクタ、30は施錠リトラクタ19を施錠方向(矢印A)へ常時付勢する施錠スプリング、18は自動施錠位置(実線位置)にある施錠リトラクタ19を解錠位置(仮想線位置)へと戻すために連結アーム18aを介して該施錠リトラクタ19の一端部に連結されたシリンダー錠、15は第2操作手段としての開閉レバー14の操作力により、矢印B方向へ回転するカム板(レバーハブ)である。
【0005】
図9から明らかなように、特許文献1に記載の実施例は、錠ケース10内に施錠スプリング30を備えているので、施錠リトラクタ19は、実線で示すようにフック解放機構のカム板(レバーハブ、或いはカム部材)15の上方に常時位置し、カム板15のB方向への回転を邪魔している。
【0006】
次に、図10は錠ケースに内蔵された施錠装置Xの構成部材を示す。この図10に於いて、10は施錠装置Xの錠ケースで、この錠ケース10は、図示しない荷室開口部の下枠7のストライカ8にカマ状フック9が係脱するように、シャッターカーテン2の下方中央部の裏面に固定的に取り付けられる。
【0007】
図10では、車両の荷室内から見た手前側の錠ケースの側壁を取り外し、施錠装置Xの内部構造の主な部品を概略的に示している。この施錠装置Xの内部構造は、既に公知事項なので、以下、図10を基準にして主な構成部品を説明する。
【0008】
9はケース10の右側下部に軸支されたカマ状フックで、該フック9は左側に斜めの状態に配設されたフック用スプリング11のバネ力により、常時矢印E方向に付勢されている。このフック9は、シャッターカーテン2を引き下げると、下方中央部にガイド手段を介してスライド自在に設けられた作動ピース12が矢印Fで示すように上方へと移動することから、矢印Gで示すように係合方向(時計方向)へと回転してストライカ8に係合する。
【0009】
一方、図13で示すように、該フック9は、解錠時、フック用スプリング11のバネ力により、作動ピース12を押し下げるようにして矢印Hの係合解除の方向へと回転し、前記ストライカ8から外れる。したがって、シャッターカーテン2を持ち上げることができる。
【0010】
図10に戻り、符号21はケース10の右側上部に軸支されたフック機構のレバー(カマストッパー)で、このレバー21は上方にハンドル式の操作部が、一方、下方にフック9の係合部分9aに係脱するストッパー13を有している。
【0011】
16はケースの中央部に水平状態に設けられたフック開放用のリトラクタで、このリトラクタ16は左側にやや斜めの状態に配設された復帰バネ17のバネ力により常時フック9から離れる方向に付勢されている。
【0012】
15はリトラクタ16の中央部寄りの付近に位置するようにケースの中央部に軸支されたカム板(カム部材)で、このカム板15は、シャッターカーテン2の外壁面側から手動で操作される開閉レバー14の操作力により、リトラクタ16をフック9に押し当てる方向(図9の矢印B方向)に回転する。
【0013】
18aはシリンダー錠18を構成する連結アームで、この連結アーム18aの上端部には施錠リトラクタ19が連結されている。施錠リトラクタ19は、前述したように施錠スプリング30により常時自動施錠位置で停止するように付勢されている。
【0014】
上記構成の実施例では、シャッターカーテン2を、図9の矢印Cで示す下方方向へ手動で降ろすと、該シャッターカーテン2は、図10で示す下枠7のストライカ8に自動的に係合するフック9によりロックされる。その時、前述したように、施錠リトラクタ19は施錠スプリング30のバネ力によりカム板15の上方に常時位置していることから、フック9が自動的にロック状態となると共に、カム板15も既に施錠状態となっている。したがって、該実施例では、シャッターカーテン2を閉めた後、カム板15乃至フック9は容易に解錠されないという利点を有している。
【0015】
しかしながら、該利点の反面、施錠装置Xを解錠状態にするには手間がかかり、いわゆる面倒であるという問題点があった。すなわち、図11で示すように、まず、シリンダー錠18に図示しない第1操作手段(例えば合鍵)を差し込んで、連結アーム(バブレバー)18aを矢印で示す反時計方向Iへと回し、施錠リトラクタ19を施錠スプリング30のバネ力に抗して引き戻す必要がある。つまり、施錠リトラクタ19を図9の仮想線位置へと後退させる必要がある(Step1)。
【0016】
次に、シリンダー錠18の解錠状態を手動で維持しながら、図12で示すように、第2操作手段(例えば開閉レバー)14を矢印で示す反時計方向へと回してフック開放用のリトラクタ16をレバー(カマストッパー)21の下端部に対して押圧させる必要がある。
【0017】
付言すると、第2操作手段14をシリンダー錠18に対する第1操作手段と同時に操作する理由は、レバー21を矢印Iで示す反時計方向へと回させ、矢印J方向へ位置変位するリトラクタ16を介してフック9の上方係合部分からレバー21のストッパー13を外す必要があるからである。このように、ハンドル式レバー21が第2操作手段14の操作力により、フック開放用のリトラクタ16を介して回転すると、カマ状フック9はフック用スプリング11のバネ力により、係合解除の方向へと自動的に回転する。そこで、シャッター2を持ち上げることができる。
【特許文献1】特開2001−311336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の初期の目的は、車両の荷室のシャッター、車庫のシャッター、倉庫の扉、コンテナーの扉等の用途の如何を問わず、錠ケースのシリンダー錠に対する第1操作手段による解錠操作並びにカム部材に対する第2操作手段による解錠操作を条件として解錠する施錠装置を内蔵している場合に於いて、該施錠装置の解錠操作を楽にすることである。
【0019】
特に、本発明は、まず、前記シリンダー錠に対して第1操作手段を操作して解錠状態にし、次に、この解錠状態を係止手段で保持しながら、カム部材を解錠方向に作動させて完全解錠状態にする施錠装置の錠ケースに後付けする場合に適合する。
【0020】
第2の目的は、公知の施錠装置の錠ケースの一側面に後付けすることができることである。つまり、公知の施錠装置の内部構造を改良しなくても済むことである。第3の目的は、後付けを容易に行うことができることである。第4の目的は、各構成部材をコンパクトに組み合わせることである。その他の目的(係合回転体を自動的に施錠位置へと戻すこと)は、発明の特定要件との関係で客観的に決定される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の施錠装置用補助錠は、シリンダー錠に対する第1操作部材の解錠操作並びにカム部材に対する第2操作部材の解錠操作を条件として解錠する施錠装置を内蔵した錠ケースに取り付けられる施錠装置用補助錠であって、該補助錠は、ベース板と蓋板の間に係合回転体と該係合回転体を所定の解錠位置で係止する係止手段をそれぞれ回転自在に備え、また、前記係止手段に形成した係合爪が前記係合回転体に設けた係合突起に係合可能な方向へとバネ力が常に作用する解錠状態保持用バネと係合回転体の解錠状態の保持を解消する解錠状態解消手段とをそれぞれ備え、前記第1操作手段の操作力により前記係合回転体の係合突起が施錠状態の位置から解錠状態の位置へと回転位置変位したときに、前記解錠状態保持用バネのバネ力に抗して、前記係合突起が係止手段の係合爪を越えて該係合爪に係止されることを特徴とする。
【0022】
上記構成に於いて、施錠装置の錠ケースは、車両用シャッターの裏側に固定され、操作手段の解錠操作は、まずシリンダー錠に対する第1操作手段の解錠操作がなされ、次に該シリンダー錠の解錠状態が係止手段で保持された状態で、係合回転体の解錠状態の保持を解消する手段(例えばカム部材)に対する第2操作手段による解錠操作がなされることを特徴とする。
【0023】
また、係止手段には、ベース板と蓋板の間に回転可能に設けたられたカム部材側へと延びるアームが設けられ、第2操作手段の操作力により前記カム部材が所定方向へと回転すると、係止手段は、その係合爪が係合回転体の係合突起から離れる方向へと回転することを特徴とする。
【0024】
また、ベース板と蓋板の間には、係止手段の係合爪が係合回転体の係合突起から離れた瞬間に、係合回転体を施錠位置へと戻す施錠位置復帰用バネが配設されていることを特徴とする。また、解錠状態保持用バネの一端部は、係止手段のアーム側に取り付けられ、一方、他端部はベース板或いは蓋板側に取り付けられていることを特徴とする。
【0025】
また、ベース板と蓋板にはそれぞれ軸孔が形成され、係止手段の中央部は、前記軸孔に差し込まれた固定柱に軸支されていることを特徴とする。
【0026】
この場合、望ましくは、固定柱はメネジを有し、このメネジに蓋板をベース板に固定する固定手段が螺着することを特徴とする。さらに、ベース板は、車両の荷室側から見えるケースの一側面に添設状態に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
(1)請求項1に記載の発明は、車両の荷物室のシャッター、車庫のシャッター、倉庫の扉、コンテナーの扉等の用途の如何を問わず、錠ケースにシリンダー錠に対する第1操作手段による解錠操作並びにカム部材に対する第2操作手段による解錠操作を条件として解錠する施錠装置を内蔵している場合に於いて、予めシリンダー錠を解錠状態に保持した上で第2操作手段のみを操作することができるので、施錠装置の解錠操作を楽にすることができる。
(2)また、請求項1に記載の発明は、まず、前記シリンダー錠に対して第1操作手段を操作して解錠状態にし、次に、この解錠状態を係止手段で保持しながら、係合回転体の解錠状態の保持を解消する手段(例えばカム部材)を解錠方向に作動させて完全解錠状態にする施錠装置に後付けする場合に適合する。
(3)請求項2乃至請求項8に記載の発明は、例えばベース板と、このベース板に固定手段を介して一体的に固定される蓋板とを備え、ベース板と蓋板の間には、係合回転体、係止手段、解錠状態保持用バネ等の発明の特定要件に必要な部材を配設したので、施錠装置の錠ケースの一側面に後付けすることができる、後付けを容易に行うことができる、構成部材をコンパクトに組み合わせることができる等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、例えば特許文献1に記載の実施例に適用するので、特許文献1の施錠装置Xを一例として説明する。図1乃至図8は、本発明を実施するための最良の形態である。
【0029】
(1)発明の実施の環境
図1は発明の実施の環境を示す概略側面図である。Xは特許文献1に記載の施錠装置で、この施錠装置Xは、前述したように、シャッターカーテン(仮想線)2の裏側の下方中央部に固定される錠ケース(以下、「ケース」という。)10に内蔵されている。したがって、符号50は図示しないコンテナー型車両の外側、符号51はコンテナー(荷室)の内部である。本発明の施錠装置用補助錠Yは、荷室51側から見えるように前記ケース10の一側面10aに添設状態に装着されている。
【0030】
ところで、添設対象の施錠装置Xは、あくまでも一例であり、特許文献1に記載の実施例に限定されるものではない。本発明の添設対象の施錠装置Xは、シリンダー錠18用の第1操作手段(合鍵)と共に、シリンダー錠により直接又は間接的(特許文献1では施錠リトラクタ19)に規制されたり、規制を解かれたりするカム部材に対する第2操作手段(開閉レバー)14を同時に操作しなくても、まず、施錠装置X用の第1操作手段Kにより係合回転体71を解錠位置へと回転し、これにより施錠装置Xのシリンダー錠18の解錠状態を係止手段81により間接的に保持させ、次に、第2操作手段としての開閉レバー14を単独で操作して係合手段(例えば特許文献1のカマ状フック9)の係合状態を解消させる場合に適合する。付言すると、片手で第2操作手段を操作するだけで、ロック手段のロック状態を解き、シャッターカーテン2を持ち上げる場合に適合する。
【0031】
図2は、本発明の一実施例を荷室側から見た説明図である。本実施例の施錠装置用補助錠Yの主たる部材は、ケース10の一側面(荷室側から見える外面)10aの中央部ないし上部側に固定的に取り付けられたベース板52及び該ベース板52に固定される蓋板53に内装されている。付言すると、主たる部材はベース板52と蓋板53の狭い空間にサンドイッチ状態に内装されている。
【0032】
(2)ベース板52
図3は補助錠Yのベース板52、一方、図4は固定手段を介してベース板52と一体的になる蓋板53である。両板52、53には、必要に応じて、固着具用の孔、固着具用の固定片部分、切欠部分、軸孔、規制ピン用の案内長孔、回転体用嵌合穴等が適宜に設けられている。ここでは発明の特定要件との関係で、必要な部分を説明し、細部的事項の説明は割愛する。
【0033】
まず、ベース板52の構成から説明する。54は中央部(中央部寄りの部位も含む)に形成された固着具用の孔で、この孔54には不番の固着具が差し込まれる。不番の固着具は、ベース板52を予めケース10の一側面10aに位置決め固定する場合に利用される。
【0034】
この位置決め孔54を基準にすると、ベース板52の左右には、第1嵌合孔55と第2嵌合孔56がそれぞれ形成されている。57は前記第1嵌合孔55の同心円上に弧状に形成された規制ピン用の第1案内長孔、一方、58は前記第2嵌合孔56の同心円上に弧状に形成された規制ピン用の第2案内長孔である。第1案内長孔57及び第2案内長孔58は、本実施例ではそれぞれ弧状に形成されている。59は中央部の下部側に形成された軸孔で、この軸孔59には、後述の軸機能を有する筒状の固定柱82が差し込まれる。60は右側下部に設けられたバネ部材用の取り付け部である。なお、単数又は複数のベース板52固定用の孔61、蓋板53固定用の取り付け部分62等は適宜に形成されている。
【0035】
(3)蓋板53
次に、図4を参照にして蓋板53の構成を説明する。63は上端部に形成され、かつ、ベース板52側の取り付け部分62に対応する複数の取り付け部分、64は中央部(中央部寄りの部位も含む)に形成された貫通孔である。
【0036】
前記貫通孔64からは、図2で示すように不番の固着具が見える。蓋板53の貫通孔64に図示しないドライバーを差し込むと、ベース板52側の不番の固着具を締めたり、弛めたりすることができる。この貫通孔64を基準とする左右には、左右の支持孔65、66がそれぞれ形成されている。左の支持孔(第1支持孔)65はベース板52側の第1嵌合孔55に対応し、一方、右の支持孔(第2支持孔)66はベース板52側の第2嵌合孔56に対応する。
【0037】
本実施例では、規制ピン用案内長孔はベース板52側に形成しているので、蓋板53には形成されていない。もちろん、設計如何によっては蓋板53に規制ピン用案内長孔を形成しても良い。69はベース板52側の軸孔59に対応する軸孔である。なお、軸孔59、69の周りには、不番の嵌合凹所がそれぞれ形成されている。
【0038】
(4)係合回転体
図7及び図8を参照にして、係合回転体71の構成を説明する。係合回転体71は、ベース板52側の第1嵌合孔55と蓋板53側の第1支持孔65に嵌合する。したがって、図7で示すように係合回転体71の一側面71aの中央部には、ベース板52側の第1嵌合孔55と嵌合する円盤状の第1嵌合部72が突出形成されている。第1嵌合部72は、その内周に合鍵Kの先端部分が選択的に係合する複数の係合面72aを有している。また、係合回転体71の一側面71aの外周端付近には、ベース板52側の第1案内長孔57に係合する規制ピン73が突出状態に設けられている。
【0039】
一方、図8で示すように係合回転体71の他側面71bの中央部には、蓋板53側の第1支持孔65に支持される円盤状の第2嵌合部74が突出形成されている。したがって、係合回転体71は前後(ベース板52側と蓋板53側)の嵌合部72、74を介してベース板52と蓋板53に回転自在に支持されている。
【0040】
また、係合回転体71の他側面71bの一部には、切欠部分75が形成され、該切欠部分75内の適宜箇所には、係合回転体71を施錠位置へと付勢するバネの一端部を取り付けるためのバネ端支持部76が設けられている。
【0041】
77は係合回転体71の外周面71cに半径外方向に突出形成された係合突起で、この係合突起77は、図5及び図6で示すように、「くの字状(図では逆向き)」に形成された係止手段81の係止爪と係脱する。
【0042】
(5)係止手段81
各図面を参照にして係止手段81の構成を説明する。係止手段81は、本実施例では複数本のアームを有する係止レバーである。図1、図5等で示すように、係止手段81の中央部は軸機能を有する筒状の固定柱82に軸支されている。筒状固定柱82は、前述したようにベース板52側と蓋板53側の各軸孔59、69に差し込まれ、かつ、カシメ固定される。また、固定柱82は内部に不番のメネジを有するので、図2で示すように、蓋板53は固定手段83、固定柱82等を介してベース板52に一体的に固定される。
【0043】
さて、係止手段81は、図5及び図6で示すように、係合回転体71の下方へと延びる第1アーム85の先端部に係合回転体71の係合突起77と係脱する係合爪86を有する。一方、第2操作手段14の操作力で回転する解錠状態解消手段(カム部材)91側へと延びる第2アーム87の中央部には、解錠状態保持用バネ89の一端部が取り付けられている。
【0044】
(6)解錠状態保持用バネ89
解錠状態保持用バネ89は、例えば引っ張りバネが採用され、その一端部は、係止手段81の第2アーム側87に取り付けられ、一方、他端部はベース板或いは蓋板側の取り付け部60に取り付けられている。本実施例では、引っ張りバネ89の他端部はベース板52の右下端部に設けられた取り付け部60に取り付けられている。この解錠状態保持用バネ89は、係止手段81に形成した係合爪86が係合回転体71に設けた係合突起77に係合可能な方向へとバネ力を常に作用させる部材である。したがって、バネ89の種類は適宜に採用し得る。
【0045】
(7)カム部材91と施錠位置復帰用バネ92
ベース板と蓋板の間には、例えば第2操作部材14の操作力により回転可能なカム部材91及び係合回転体71の施錠位置復帰用バネ92が配設されている。例えばカム部材91は、係合回転体71の解錠位置(シリンダー錠は解錠状態)の保持を解消する手段(解錠状態解消手段)の一例であり、本発明の特定要件である。
【0046】
しかし、カム部材91及び係合回転体71は、図6で示すように、係止手段81により解錠状態が保持されている場合に於いて、「係合回転体71を自動的に施錠位置へと戻すという発明の目的を加味する場合」に必要なサブ的構成である。
【0047】
したがって、このカム部材91を設けた場合には、望ましくは同時に係合回転体71を自動的に施錠位置へ戻すための施錠位置復帰用バネ92を配設する必要がある。
【0048】
本実施例では、カム部材91は、係合回転体71の第2アーム87と係合できるようにベース板52の第2嵌合孔56と蓋板53の第2支持孔66に嵌合状態に支持される筒状嵌合部91aと、該筒状嵌合部91aから半径外方向に扇状に延びる係合部分91bと、該係合部分91bの一端部に突設され、かつ、ベース板52の第2案内長孔58に案内される不番の規制ピンとから成る。そして、前記筒状嵌合部91aには施錠装置Xのカム部材15を貫通する第2操作手段14の角軸部が嵌入される。
【0049】
また、施錠位置復帰用バネ92は、例えばメガネ状の付勢バネが採用され、その一端部は係合回転体71のバネ端支持部76に取り付けられ、一方、他端部はベース板52又は蓋板53に取り付けられる。
【0050】
(8)主な作用
施錠装置Xのシリンダー錠18に第1操作部材(合鍵)Kを差し込むと、第1操作部材Kの挿入先端部は係合回転体71の係合面72aに係合する。そこで、第1操作部材Kを解錠方向へ回転すると、係合回転体71は解錠位置へと回転する。係合回転体71が第1操作部材Kの操作力により完全解錠位置に至る寸前、図6で示すように、係合回転体71の係合突起77が係止手段81の係合爪86を押し下げる。この時係合回転体71は、解錠状態保持用バネ89のバネ力に抗して若干反時計方向へ回転する。
【0051】
しかして、係合突起77が係合爪86を通り過ぎる(係合爪を越える)と直ちに解錠状態保持用バネ89のバネ力が作用し、係合爪86が係合突起77を係止する。これにより、シリンダー錠18及び係合回転体71の解錠位置(解錠状態)が保持される(図6の状態)。
【0052】
ところで、係合回転体71の解錠位置(解錠状態)の保持を解消する場合には、第2操作手段14の操作力により、カム部材91を解錠状態保持用バネ89のバネ力に抗して所定方向(図6の矢印で示す反時計方向)へと回転させる。
【0053】
そうすると、カム部材91の係合部分91bが第2アーム87を押圧するので、レバー状の係止手段81は、その係合爪86が係合回転体71の係合突起77から離れる方向へと回転する。その結果、本実施例では、係合回転体71は施錠位置復帰用バネ92のバネ力により、図6の解錠位置から図5施錠位置へと自動的に戻る。
【実施例】
【0054】
発明の実施の形態で示した実施例に於いて、ベース板52の形態を特に限定するものではなく、例えばケース状に形成することもできる。また、カム部材91は、係合回転体71の解錠位置(解錠状態)の保持を解消する手段(解錠状態解消手段)の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、主に車両の荷物室のシャッター、車庫のシャッター、倉庫の扉、コンテナーの扉等の用途に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1乃至図8は本発明の最良の実施例を示す各説明図。図9乃至図13は本発明の適用例の施錠装置の一例を示す各説明図。
【図1】発明の実施の環境を示す概略側面図(側面視)。
【図2】発明の実施の環境を示す概略側面図(正面視)。
【図3】ベース板の正面図。
【図4】蓋板の正面図。
【図5】施錠位置(シリンダー錠は施錠状態)の概略説明図。
【図6】解錠位置(シリンダー錠は解錠状態)の概略説明図。
【図7】係合回転体の一側面からの説明図。
【図8】係合回転体の他側面からの説明図
【図9】特許文献1のポイントを示す概念図。
【図10】錠ケースに内蔵された施錠装置Xの構成部材の概略説明図。
【図11】施錠装置Xの第1操作手段(例えば合鍵)をシリンダー錠に差し込んで解錠操作した時の主な部材の概略説明図。
【図12】施錠装置Xのカム部材に第2操作手段(開閉レバー)を差し込んで解錠操作した時の主な部材の概略説明図。
【図13】施錠装置Xの完全解錠状態の場合のフックの位置等を示す説明図。
【符号の説明】
【0057】
X…施錠装置、Y…補助錠、2…シャッターカーテン、9…フック、10…ケース、10a…ケース10の一側面、14…第2操作手段(開閉レバー)、18…シリンダー錠、K…第1操作手段(合鍵)、52…ベース板、53…蓋板、54…固着具用の孔、55…第1嵌合孔、56…第2嵌合孔、57…第1案内長孔、58…第2案内長孔、59…ベース板の軸孔、64…貫通孔、65…第1支持孔、66…第2支持孔、71…係合回転体、71a…一側面、72…第1嵌合部、72a…係合面、73…規制ピン、71b…他側面、74…第2嵌合部、75…切欠部分、76…バネ端支持部、77…係合突起、81…係止手段、82…固定柱、83…固定手段、85…第1アーム、86…係合爪、87…第2アーム、89…解錠状態保持用バネ(引っ張りバネ)、91…解錠状態解消手段(カム部材)、91a…筒状嵌合部、91b…係合部分、92…施錠位置復帰用バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー錠に対する第1操作部材の解錠操作並びにカム部材に対する第2操作部材の解錠操作を条件として解錠する施錠装置を内蔵した錠ケースに取り付けられる施錠装置用補助錠であって、該補助錠は、ベース板と蓋板の間に係合回転体と該係合回転体を所定の解錠位置で係止する係止手段をそれぞれ回転自在に備え、また、前記係止手段に形成した係合爪が前記係合回転体に設けた係合突起に係合可能な方向へとバネ力が常に作用する解錠状態保持用バネと係合回転体の解錠状態の保持を解消する解錠状態解消手段とをそれぞれ備え、前記第1操作手段の操作力により前記係合回転体の係合突起が施錠状態の位置から解錠状態の位置へと回転位置変位したときに、前記解錠状態保持用バネのバネ力に抗して、前記係合突起が係止手段の係合爪を越えて該係合爪に係止されることを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項2】
請求項1に於いて、施錠装置の錠ケースは、車両用シャッターの裏側に固定され、操作手段の解錠操作は、まずシリンダー錠に対する第1操作手段の解錠操作がなされ、次に、該シリンダー錠の解錠状態が係止手段で保持された状態で、カム部材に対する第2操作手段による解錠操作がなされることを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項3】
請求項1に於いて、係止手段には、解錠状態解消手段側へと延びるアームが設けられ、第2操作手段の操作力により前記解錠状態解消手段が所定方向へと回転すると、係止手段は、その係合爪が係合回転体の係合突起から離れる方向へと回転することを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項4】
請求項3に於いて、ベース板と蓋板の間には、係止手段の係合爪が係合回転体の係合突起から離れた瞬間に、係合回転体を施錠位置へと自動的に戻す施錠位置復帰用バネが配設されていることを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項5】
請求項1に於いて、解錠状態保持用バネの一端部は、係止手段のアーム側に取り付けられ、一方、他端部はベース板或いは蓋板側に取り付けられていることを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項6】
請求項1に於いて、ベース板と蓋板にはそれぞれ軸孔が形成され、レバー状の係止手段の中央部は、前記軸孔に差し込まれた固定柱に軸支されていることを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項7】
請求項1に於いて、固定柱はメネジを有し、このメネジに蓋板をベース板に固定する固定手段が螺着することを特徴とする施錠装置用補助錠。
【請求項8】
請求項1に於いて、ベース板は、車両の荷室側から見える錠ケースの一側面に添設状態に取り付けられることを特徴とする施錠装置用補助錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−327272(P2007−327272A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159870(P2006−159870)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】