説明

旋回式クランプ機構

【課題】少ないスペースに複数のクランプアームを旋回可能に配置できるようにする。
【解決手段】クランプ機構は、第1,第2のクランプアーム31,32を有する。このクランプ機構では、第1クランプアーム31を駆動する第1ロッド11の外周面上に第2クランプアーム32を駆動する第2ロッド12が位置するように両ロッド11,12が同心円状に相対回転可能に配置されている。そして、これらロッド11,12の内外の同一部分にガイド穴111,121が形成され、これらガイド穴111,121に対して共通のガイドピン24が第2ロッド12の外側から挿入されている。この構成により、両ロッド11,12がガイドピン24に対して相対的に軸方向に移動するとガイド穴111,121に沿って両ロッド11,12が回転し、この回転に伴い各クランプアーム31,32が旋回する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸等に組込まれる旋回式クランプ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、主軸先端に複数のクランプアーム(引き爪)を周方向に並べて配置し、これらクランプアームによりワークを主軸先端に固定する工作機械が記載されている。各クランプアームは、各々主軸に組込まれる複数の駆動軸(操作軸)の先端に固定されており、各駆動軸をその軸方向へ進退駆動することにより、主軸端面にワークを引込み固定するクランプ位置と、主軸端面から離間した位置であってかつワーク外側に旋回したアンクランプ位置とに各クランプアームを変位させるように構成されている。このようなクランプアームの旋回動作は、主軸に固定されるガイドピンを駆動軸外周面のガイド穴(案内溝)に挿入し、駆動軸の進退に伴い前記ガイド穴に沿った方向に駆動軸を回転させることにより達成されている。
【特許文献1】特開2001−62615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のクランプ機構では、複数のクランプアームによりワークをクランプする場合には、クランプ位置の周囲に複数の駆動軸を並べて配置する必要がある。そのため、十分なスペースが確保できない場合には、クランプアームの数を減らしたり、若しくはクランプアームの位置をずらす等して対応する必要があり、狭い範囲に複数のクランプアームを配置することが難しい。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、より狭いスペースに複数のクランプアームを旋回可能に配置できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、ワークをクランプするための第1、第2のクランプアームを含み、これらクランプアームを前記ワークに対向しかつ当該ワークを押圧するクランプ位置と当該ワークから押圧方向と逆方句に離間しかつその離間方向と平行な軸回りの回動によりワークの両外側にそれぞれ退避するアンクランプ位置とに変位させる旋回式クランプ機構であって、端部に前記第1クランプアームが固定され、第1ガイド穴を有する第1駆動軸と、端部に前記第2クランプアームが固定され、第2ガイド穴を有する第2駆動軸と、前記各駆動軸をその中心軸回りに回転可能にかつ軸方向に変位可能に保持する保持部材と、当該保持部材に固定され、前記各駆動軸に形成される前記ガイド穴に挿入可能な形状を有するガイドピンと、前記両駆動軸を前記保持部材に対して進退駆動する駆動手段とを備え、前記各駆動軸は、前記第1駆動軸の外周面上に第2駆動軸が位置するように同心円状に配置されると共に互いに中心軸回りの相対回転が可能な状態で前記保持部材により保持され、かつ内外の対応する位置にそれぞれ前記ガイド穴を有しており、
前記ガイドピンは、前記保持部材のうち前記ガイド穴に対向する箇所に設けられ、第2駆動軸の外側から当該第2駆動軸の第2ガイド穴に挿入されると共に当該第2ガイド穴を通じて前記第1駆動軸の第1ガイド穴に挿入されており、前記各駆動軸のガイド穴は、前記駆動手段による両駆動軸の前記ガイドピンに対する進退駆動に伴い各クランプアームを前記クランプ位置とアンクランプ位置とに亘って互いに異なる向きに変位させるように形成されているものである。
【0006】
この旋回式クランプ機構によれば、駆動手段により前記ガイドピンに対して各駆動軸を進退駆動させれば、各駆動軸がガイド穴に沿った方向に変位し、これによって各駆動軸に固定されたクランプアームがそれぞれクランプ位置とアンクランプ位置とに旋回変位する。しかも、この旋回式クランプ機構では、各クランプアームを駆動する駆動軸が同心円状に配置されて共通のガイドピンが両駆動軸のガイド穴に挿入された構成であるため、上記のように複数のクランプアームをクランプ位置とアンクランプ位置とに亘って変位させながらも各駆動軸を少ないスペースに集約して配置することができる。
【0007】
より具体的に、各駆動軸の前記ガイド穴は、前記進退駆動に伴い各駆動軸が互いに逆向きに同一角度だけ回転するように中心軸と平行な軸線に対して対称に形成されている。
【0008】
この構成によると、前記第1,第2クランプアームをクランプ位置とアンクランプ位置との間で変位させる際に、各クランプアームを互いに逆向きに同一角度だけ回転(旋回)させることができる。
【0009】
なお、前記各駆動軸のガイド穴は、中心軸と平行な部分とその後端から互いに逆方向の斜め向きに延びる部分とを有するものであるのが好適である。
【0010】
この構成によれば、クランプ時に、まず両クランプアームをアンクランプ位置からワーク対向位置に変位させてから押圧方向に変位させることができ、クランプ解除時には、まず両クランプアームを押圧方向と逆方句に変位させた後にアンクランプ位置に変位させることが可能となる。そのため、クランプ時及びアンクランプ時に両クランプアームとワークとが擦れるといった不都合を回避することができる。
【0011】
なお、上記の旋回式クランプ機構において、前記駆動手段は、前記ピストンロッドとこれを保持するシリンダチューブとを含み、前記シリンダチューブ内に形成される圧力室への流体圧の給排に応じて前記両駆動軸を進退駆動する流体圧シリンダであって、軸方向への相対変位が不能となるように前記両駆動軸が結合されかつ第2駆動軸の外周面上にピストンが形成されることにより当該両駆動軸を兼用して前記ピストンロッドが構成され、前記保持部材の内部に圧力室が形成されることにより当該保持部材を兼用して前記シリンダチューブが構成されているのが好適である。
【0012】
この構成によれば、両駆動軸や保持部材とは別に駆動手段を設ける場合に比べて旋回クランプ機構をコンパクトに構成することができる。
【0013】
また、上記の旋回式クランプ機構においては、第1駆動軸の端部が第2駆動軸の端部よりも軸方向に突出するように両駆動軸が設けられているのが好適である。
【0014】
この構成によれば、クランプアーム同士の干渉を回避しながら各駆動軸の端部に対してクランプアームを難なく固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、第1、第2の2つのクランプアームをクランプ位置とアンクランプ位置とに旋回可能に設ける一方で、各クランプアームを駆動する駆動軸を同心円状に配置するように構成したので、各クランプアームを上記の通り旋回可能に設けながらも各駆動軸を少ないスペースに集約して配置することができる。従って、より狭いスペースに複数のクランプアームを旋回可能に配置することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1及び図2は、本発明に係る旋回式クランプ機構の一例を示しており、図1は断面図で、図2は平面図でそれぞれ旋回式クランプ機構を概略的に示している。
【0018】
同図に示す旋回式クランプ機構は油圧シリンダをベースとして構成されている。すなわち、旋回式クランプ機構は、ピストンロッド10と、このピストンロッド10をその軸方向に進退可能に保持するシリンダチューブ20と、前記ロッド10の先端に固定されるクランプアーム31,32等とを備えており、前記シリンダチューブ20に対する圧油の給排に応じて前記クランプアーム31,32を後述するクランプ位置とアンクランプ位置とに変位させるように構成されている。以下、詳細に説明する。
【0019】
前記ピストンロッド10は、内側の第1ロッド11(本発明の第1駆動軸に相当する)とその外周面上に配置される第2ロッド12(本発明の第2駆動軸に相当する)とからなる二重軸構造を有しており、これらロッド11,12が各々中心軸回りの相対回転が可能でかつ軸方向の相対変位が不能となるように結合されている。
【0020】
詳しくは、第2ロッド12の内側に第1ロッド11が相対的に回転可能に嵌入され、この第1ロッド11の後端(図1の右端)が第2ロッド12の内周面に沿って突設されたリブ12aに対してスラスト軸受け14aを介して突き当てられている。そして、前記リブ12aに対して前記第1ロッド11とは反対側から軸止め16がスラスト軸受け14bを介して突き当てられ、この軸止め18の外側(後側)から前記第1ロッド11の後端にボルト18が螺合挿入されている。この構成により、両ロッド11,12が各々中心軸回りの相対回転が可能でかつ軸方向の相対変位が不能となるように結合されている。
【0021】
第2ロッド12はその後端部の外径寸法がそれ以外の部分よりも大きく形成されており、これによってピストンロッド10の後端部にピストン13が一体に設けられている。そして、このピストンロッド10が前記シリンダチューブ20に収容されている。
【0022】
シリンダチューブ20は、前端面にピストンロッド10の収容凹部211を有するチューブ本体21とこれに固定される抜け止め部材22とから構成されている。そして、図1に示すように、ピストンロッド10がチューブ本体21の前記収容凹部211に嵌挿されると共にピストンロッド10のうちピストン13より先端側の部分と収容凹部211の内周面との間に前記抜け止め部材22が介設されることにより、ピストンロッド10がその軸方向に変位可能な状態でシリンダチューブ20に保持されている。具体的には、前記抜け止め部材22にピストン13が当接する前進位置と収容凹部211の奥端部にピストン13が当接する後退位置とに亘ってピストンロッド10が変位可能に保持されている。
【0023】
チューブ本体21の前記収容凹部211の内部において、前記ピストン13の前側には第1圧力室P1が、ピストン13の後側には第2圧力室P2がそれぞれ形成されると共に前記第1圧力室P1に通じる第1ポート212と第2圧力室P2に通じる第2ポート213とがそれぞれ前記シリンダチューブ20(チューブ本体21)に形成されている。
【0024】
つまり、第1ポート212を通じて第1圧力室P1に圧油を供給する一方で第2ポート213を通じて第2圧力室P2から圧油を排出することによりピストンロッド10が後退し(図1中右方に変位し)、逆に、第2ポート213を通じて第2圧力室P2に圧油を供給する一方で第1ポート212を通じて第1圧力室P1から圧油を排出することによりピストンロッド10が前進(図1中左方に変位)するようになっている。
【0025】
ピストンロッド10を構成する前記第1、第2の各ロッド11,12には、各々ガイド穴111,121が形成され、これらガイド穴111,121に対して前記シリンダチューブ20(チューブ本体21)に固定される一本(共通)のガイドピン24がピストンロッド10の外側から挿入されている。これによって前記ピストンロッド10が進退移動すると、これらガイド穴111,121に沿った方向に両ロッド11,12が各々中心軸回りに回動するようになっている。
【0026】
詳しく説明すると、各ロッド11,12には各々、図3(a)に示すように、ピストンロッド10の中心軸に沿って前後方向に延びる直線部111a,121aと、その後端から周方向に斜め後向きに延びる螺旋部111b,121bとを有するガイド穴111(第1ガイド穴),121(第2ガイド穴)が形成されている。これらのガイド穴111,121は、同図に示すように、直線部111a,121a同士が重複し得るように各ロッド11,12のうち内外に対応する部分に形成されている。
【0027】
なお、各ガイド穴111,121の螺旋部111b,121bは、ピストンロッド10の後側(同図中のA方向)から見て互いに逆方向に延びるように形成されている。具体的には、ガイド穴111の螺旋部111bは、ピストンロッド10の後側から見て反時計回りに延びるように形成されており、一方、ガイド穴121の螺旋部121bは、同方向から見て時計回りに延びるように形成されている。すなわち、各ガイド穴111,121はピストンロッド10の中心軸と平行な軸線に対して対称に形成されている。
【0028】
そして、図3(a)に示すように、ピストンロッド10が後退位置にセットされ、かつ両ガイド穴111,121の直線部111a,121aが内外に重複するように両ロッド11,12がセットされた状態で、前記シリンダチューブ20(チューブ本体21)に固定されたガイドピン24が、同図及び図1に示すように、両ガイド穴111,121に挿入されている。詳しくは直線部111a,121aの先端部分(図3(a)では左端)に挿入されている。この構成により、図3(a)に示す後退位置からピストンロッド10を前進させると、直線部111a,121aに沿って両ロッド11,12が案内され、これにより両ロッド11,12が中心軸に沿って真っ直ぐに前進し(図3(b)参照)、さらにピストンロッド10を前進させると、各螺旋部111b,121bに沿って両ロッド11,12が案内されることにより各ロッド11,12が互いに逆方向に回動しながら軸方向に前進し、最終的にピストンロッド10を上記前進位置まで変位させると、両ロッド11,12が、前記後退位置を基準として互いに逆向きに同角度だけ回転するようになっている。
【0029】
なお、第1ロッド11のガイド穴111が第1ロッド11の外周面に形成される溝状のガイド穴とされるのに対して、第2ロッド12のガイド穴121は第2ロッド12をその肉厚方向に貫通する貫通穴とされており、従って、前記ガイドピン24は、前記ガイド穴121を介して第2ロッド12をその肉厚方向に貫通した状態で第1ロッド11の前記ガイド穴111に挿入されている。
【0030】
図1に示すように、前記ピストンロッド10において、第1ロッド11はその先端が第2ロッド12の先端よりも突出して設けられており、この第1ロッド11の先端に第1クランプアーム31がボルト34により固定される一方、第2ロッド12の先端に第2クランプアーム32がボルト36により固定されている。これにより互いに干渉することなく各クランプアーム31,32が同心円状に設けられた各ロッド11,12の端部に固定されている。
【0031】
各クランプアーム31,32はピストンロッド10の中心から径方向外側に向かって延びるアーム部311,321と、その先端から後方(図1中右方)に向かって延びるクランプ部312,322とを有した断面L字型の形状を有しており、両ロッド11,12の進退及び回転に伴い所定のクランプ位置とアンクランプ位置とに変位する。
【0032】
具体的には、図1及び図2の二点鎖線に示すように、アーム先端がピストンロッド10の中心軸回り(つまり旋回方向)において互いに離間しかつ各クランプ部312,322がシリンダチューブ20から離間するアンクランプ位置と、同図中の実線に示すように、アーム先端がピストンロッド10の中心軸回りにおいて互いに接近しかつクランプ部312,322がシリンダチューブ20側に接近したクランプ位置とに亘って各クランプアーム31,32が変位するようになっている。なお、各クランプアーム31,32は、クランプ部312,322の回転半径、つまりピストンロッド10の中心から各クランプ部312,322先端までの直線距離は等しくなるように設けられている。
【0033】
次に、上述した旋回式クランプ機構の適用例について説明する。
【0034】
なお、ここでは、図2に示すようなワークWを図外の固定面に対してクランプする場合について説明する。従って、図示を省略するが、旋回式クランプ機構は、当該固定面の側方位置において当該固定面を有する部材に対して組付け固定されているものとする。
【0035】
ワークWをクランプする場合には、まず、シリンダチューブ20の前記第2圧力室P2に圧油を供給することによりピストンロッド10を前進位置に移動させ、これにより各クランプアーム31,32をアンクランプ位置にセットする(図1,図2の二点鎖線に示す位置)。すなわち、アーム先端が互いに旋回方向に離間しかつクランプ部312,322が固定面から離間する位置に各クランプアーム31,32をセットする。
【0036】
この状態で前記固定面にワークWをセットし、前記圧力室P1,P2に対する圧油の給排を切換えることによりピストンロッド10を後退位置に移動させ、各クランプアーム31,32をクランプ位置に切換える。ここで、ピストンロッド10が移動を開始すると、まず、各ガイド穴111,121の螺旋部111b,121bに沿って両ロッド11,12が案内されることにより各クランプアーム31,32が旋回し、これによってアーム先端がワークWの両外側からワークWに対向する位置に変位する。その後、各ガイド穴111,121の直線部111a,121aに沿って両ロッド11,12が案内されることにより、旋回方向における位置を保った状態で各クランプアーム31,32が固定面側に移動し、これによって各クランプ部312,322がワークWに押し付けられる。このように各クランプ部312,322がワークWに押し付けられることにより当該ワークWが両クランプアーム31,32により前記固定面に対して引き込み固定(クランプ)される(図1,図2の実線に示す位置)。
【0037】
一方、ワークWのクランプ状態を解除する場合には、前記圧力室P1,P2に対する圧油の給排を切換えることによりピストンロッド10を前進位置に移動させ、これにより各クランプアーム31,32をアンクランプ位置に切換える。この際、ピストンロッド10が移動を開始すると、まず、各ガイド穴111,121の直線部111a,121aに沿って両ロッド11,12が案内されることにより各クランプアーム31,32がワークWからピストンロッド10の軸方向に平行移動するように離間し、その後、各ガイド穴111,121の螺旋部111b,121bに沿って両ロッド11,12が案内されることにより当該ロッド11,12と一体にその中心軸回りに各クランプアーム31,32が旋回し、これによってワークWの両外側に各クランプアーム31,32が退避することとなる。これによりワークWのクランプ状態が解除される。
【0038】
以上のような本発明にかかる旋回式クランプ機構によれば、ワークWを第1クランプアーム31及び第2クランプアーム32の2つのクランプアームを用いてクランプするが、上記の通り、各クランプアーム31,32を駆動するロッド11,12が同心円状に設けられた構成となっているため、上記の通り複数のクランプアーム31,32をクランプ位置とアンクランプ位置とに旋回させながらも両ロッド11,12を少ないスペースに集約して配置することができる。従って、より少ないスペースに2つのクランプアーム31,32を難なく旋回可能に配置することが可能となる。
【0039】
また、この旋回式クランプ機構では、その全体が油圧シリンダの構造をベースとした構成となっており、つまり、各クランプアーム31,32を駆動するための駆動軸をピストンロッドとして兼用すると共に駆動軸を保持する保持部材をシリンダチューブとして兼用することにより旋回式クランプ機構に油圧シリンダを一体に組み込んだ構成となっているので、各クランプアーム31,32の駆動軸を進退駆動するためのアクチュエータ(駆動手段)を別途設ける場合に比べると、旋回式クランプ機構がコンパクトな構成になるという利点もある。
【0040】
また、この旋回式クランプ機構では、上記の通り、ワークWのクランプ時には、まず各クランプアーム31,32をアンクランプ位置からワークW対向位置に変位させてから押圧方向に変位させ、クランプ解除時には、まず各クランプアーム31,32を押圧方向と逆方句に変位させた後にアンクランプ位置に旋回変位させるため、クランプ時及びアンクランプ時に各クランプアーム31,32とワークWとが擦れ合うことがなく、当該擦れによりワークWを傷つけるといった不都合を回避できるという利点もある。
【0041】
なお、上述した旋回式クランプ機構は、本発明に係る旋回式クランプ機構の実施形態の一例であってその具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
例えば、上記の実施形態では、ロッド11,12の中心軸と平行な軸線に対して互いに対称となるようなガイド穴111,121を両ロッド11,12に形成し、ピストンロッド10(ロッド11,12)の進退移動に伴いクランプアーム31,32を互いに逆方向に同一角度だけ旋回させるように構成しているが、勿論、両クランプアーム31,32の旋回方向や旋回角度はこれに限定されるものではない。各クランプアーム31,32の旋回方向や旋回角度は、ワークWの形状、固定位置と旋回式クランプ機構との位置関係及び固定位置周辺の障害物の有無等、当該旋回式クランプ機構を適用する場合の具体的な構成との関係で適宜選定すればよく、両ロッド11,12のガイド穴111,121は、そのようなクランプアーム31,32の旋回動作を実現できるように適宜形成すればよい。
【0043】
また、この実施形態では、2つのクランプアーム31,32を有する旋回式クランプ機構について説明したが、3つ(又はそれ以上)のクランプアームを設けた構成としてもよい。この場合には、前記第2ロッド12の外周面上にさらに第3ロッドを設けた三重軸構造のピストンロッド10を構成し、当該第3ロッドの端部にクランプアームを固定するようにすればよい。なお、この構成の場合には、第3ロッドにピストン13を設けるようにすればよい。
【0044】
また、実施形態では、油圧でピストンロッド10を駆動しているが、勿論、空気圧でピストンロッド10を駆動するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る旋回式クランプ機構の一例を示す断面図である。
【図2】旋回式クランプ機構を示す平面図(図1の矢印II方向から見た平面図である)である。
【図3】旋回式クランプ機構の作動状態を示す概略であり、(a)はロッドが後退位置にある状態(クランプアームがクランプ位置にある状態)、(b)はロッドが後退位置と前進位置の略中間位置にある状態、(c)ロッドが前進位置にある状態(クランプアームがアンクランプ位置にある状態)を各々示している。
【符号の説明】
【0046】
10 ピストンロッド
11 第1ロッド
12 第2ロッド
20 シリンダチューブ
24 ガイドピン
31 第1クランプアーム
32 第2クランプアーム
111,121 ガイド穴
111a,121a 直線部
111b,121b 螺旋部
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをクランプするための第1、第2のクランプアームを含み、これらクランプアームを前記ワークに対向しかつ当該ワークを押圧するクランプ位置と当該ワークから押圧方向と逆方句に離間しかつその離間方向と平行な軸回りの回動によりワークの両外側にそれぞれ退避するアンクランプ位置とに変位させる旋回式クランプ機構であって、
端部に前記第1クランプアームが固定され、第1ガイド穴を有する第1駆動軸と、端部に前記第2クランプアームが固定され、第2ガイド穴を有する第2駆動軸と、前記各駆動軸をその中心軸回りに回転可能にかつ軸方向に変位可能に保持する保持部材と、当該保持部材に固定され、前記各駆動軸に形成される前記ガイド穴に挿入可能な形状を有するガイドピンと、前記両駆動軸を前記保持部材に対して進退駆動する駆動手段とを備え、
前記各駆動軸は、前記第1駆動軸の外周面上に第2駆動軸が位置するように同心円状に配置されると共に互いに中心軸回りの相対回転が可能な状態で前記保持部材により保持され、かつ内外の対応する位置にそれぞれ前記ガイド穴を有しており、
前記ガイドピンは、前記保持部材のうち前記ガイド穴に対向する箇所に設けられ、第2駆動軸の外側から当該第2駆動軸の第2ガイド穴に挿入されると共に当該第2ガイド穴を通じて前記第1駆動軸の第1ガイド穴に挿入されており、
前記各駆動軸のガイド穴は、前記駆動手段による両駆動軸の前記ガイドピンに対する進退駆動に伴い各クランプアームを前記クランプ位置とアンクランプ位置とに亘って互いに異なる向きに変位させるように形成されていることを特徴とする旋回式クランプ機構。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回式クランプ機構において、
前記進退駆動に伴い各駆動軸が互いに逆向きに同一角度だけ回転するように各駆動軸の前記ガイド穴が中心軸と平行な軸線に対して対称に形成されていることを特徴とする旋回式クランプ機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の旋回式クランプ機構において、
前記各駆動軸のガイド穴は、中心軸と平行な部分とその後端から互いに逆方向の斜め向きに延びる部分とを有することを特徴とする旋回式クランプ機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の旋回式クランプ機構において、
前記駆動手段は、前記ピストンロッドとこれを保持するシリンダチューブとを含み、前記シリンダチューブ内に形成される圧力室への流体圧の給排に応じて前記両駆動軸を進退駆動する流体圧シリンダであって、軸方向への相対変位が不能となるように前記両駆動軸が結合されかつ第2駆動軸の外周面上にピストンが形成されることにより当該両駆動軸を兼用して前記ピストンロッドが構成され、前記保持部材の内部に圧力室が形成されることにより当該保持部材を兼用して前記シリンダチューブが構成されていることを特徴とする旋回式クランプ機構。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の旋回式クランプ機構において、
第1駆動軸の端部が第2駆動軸の端部よりも軸方向に突出するように両駆動軸が設けられていることを特徴とする旋回式クランプ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−58200(P2010−58200A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224947(P2008−224947)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】