説明

旋回用駆動装置

【課題】旋回系で発生した流体圧エネルギを旋回系外に直接供給できる旋回用駆動装置を提供する。
【解決手段】流体圧アクチュエータ制御回路25に対して旋回用制御回路91を分離設置する。この旋回用制御回路91は、旋回モータ4swhの閉回路92,93に方向制御弁としての電磁弁94を介して旋回用ポンプ・モータ95を接続する。旋回用ポンプ・モータ95に旋回用電動・発電機96を接続する。この旋回用電動・発電機96はハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に接続する。旋回用ポンプ・モータ95と電磁弁94との間の配管より、下部走行体および作業装置の流体圧アクチュエータに作動流体を供給する系外連絡通路97を引出し、この系外連絡通路97中に連絡通路電磁弁98を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の供給を受けて負荷を旋回駆動する旋回モータを備えた旋回用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械にハイブリッド式駆動装置を用いる場合、下部走行体に対し上部旋回体を旋回作動する旋回用アクチュエータは、電動機を用いることが一般的であり、この電動機により減速装置を介して上部旋回体を旋回作動している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−190845号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上部旋回体は慣性力が大きいため、その電動機は旋回制動時に発電機として機能するので、旋回エネルギを電力として蓄電器に蓄えておくこともできるが、旋回系以外のアクチュエータが作動流体の供給を受けて作動する流体圧アクチュエータである場合は、旋回系で発生した余剰エネルギを旋回系から旋回系以外の流体圧アクチュエータに直接供給することができない。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、旋回系で発生した流体圧エネルギを旋回系外に直接供給できる旋回用駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、作動流体の供給を受けて負荷を旋回駆動する旋回モータと、旋回モータに閉回路で接続され旋回モータに作動流体を供給するポンプとして機能するとともに旋回モータから吐出された作動流体により流体圧モータとして機能する旋回用ポンプ・モータと、旋回用ポンプ・モータと旋回モータとの間を閉じる中立位置と方向制御位置とを有する方向制御弁と、負荷の旋回制動時に流体圧モータとして機能する旋回用ポンプ・モータにより駆動されて発電機として機能するとともに電力の供給を受けて旋回用ポンプ・モータをポンプとして駆動する電動機として機能する旋回用電動・発電機と、この発電機として機能する旋回用電動・発電機から供給された電力を蓄えるとともに電動機として機能する旋回用電動・発電機に電力を供給する蓄電器と、旋回用ポンプ・モータと方向制御弁との間の閉回路から旋回系外に作動流体を供給する系外連絡通路と、系外連絡通路中に設けられ旋回系外への作動流体供給を可能とする位置と流れを遮断する位置との間で変位される連絡通路電磁弁と、旋回用ポンプ・モータと方向制御弁との間の閉回路に作動流体を補充する作動流体補充手段とを具備した旋回用駆動装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の旋回用駆動装置における作動流体補充手段を、作動流体補充ポンプとしたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、負荷を旋回駆動するときは、方向制御弁を方向制御位置に制御するとともに連絡通路電磁弁を遮断する位置に制御して旋回系を独立させた上で、蓄電器から供給された電力により旋回用電動・発電機を電動機として作動させて、旋回用ポンプ・モータをポンプとして駆動すると、発生した作動流体圧により旋回モータを作動して負荷を旋回系のみで独立して旋回駆動できるとともに、負荷を停止させるときは、負荷の慣性運動で回転する旋回モータがポンプとして吐出した作動流体により旋回用ポンプ・モータが流体圧モータとして作動し、旋回用電動・発電機を発電機として駆動するので、負荷の慣性運動エネルギを電気エネルギに変換して、負荷の旋回を制動しつつ蓄電器に電力を効率良く回収でき、また、旋回系で多量の作動流体を必要としない場合は、連絡通路電磁弁を旋回系外への作動流体供給を可能とする位置に制御した上で、蓄電器からの電力により電動機として作動する旋回用電動・発電機が旋回用ポンプ・モータをポンプとして駆動し、この旋回用ポンプ・モータは、作動流体補充手段により作動流体の補充を受けながら、連絡通路電磁弁および系外連絡通路を経て、作動流体を必要とする旋回系外に対して作動流体を直接供給でき、旋回用ポンプ・モータをポンプとして駆動する分、メインポンプの小型化を図れる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、作動流体補充ポンプによって、旋回用ポンプ・モータの吸込側に作動流体を強制的に補充でき、旋回用ポンプ・モータによる旋回系外への作動流体供給を効率良くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図1および図2に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。なお、流体および流体圧は、油および油圧を用いる。
【0010】
図2に示されるように、作業機械1は油圧ショベルであり、下部走行体2上に旋回軸受部3を介して上部旋回体4が回動自在に設けられ、この上部旋回体4に、エンジンおよび流体圧ポンプなどの動力装置5、オペレータを保護するキャブ6などが搭載されて、機体7を形成している。下部走行体2は、左右の履帯を駆動するための走行モータ2trL,2trRをそれぞれ備え、また、上部旋回体4は、旋回軸受部3に設けられた旋回減速機構を駆動するための旋回用電動・発電機(図2には示されず)を備えている。
【0011】
上部旋回体4には、作業装置8が装着されている。この作業装置8は、上部旋回体4のブラケット(図示せず)にブーム8bm、スティック8stおよびバケット8bkが順次回動自在にピン結合され、ブーム8bmはブームシリンダ8bmcにより回動され、スティック8stはスティックシリンダ8stcにより回動され、バケット8bkはバケットシリンダ8bkcにより回動される。
【0012】
図1に示されたハイブリッド式駆動装置10は、エンジン11に、このエンジン11から出力された回転動力を断続するクラッチ12が接続され、このクラッチ12に動力伝達装置14の入力軸13が接続され、動力伝達装置14の出力軸15に2つの可変容量型のメインポンプ17A,17Bが接続されている。
【0013】
これらのメインポンプ17A,17Bに対してエンジン11と並列的な関係で動力伝達装置14の入出力軸21に、エンジン11により駆動されて発電機として機能するとともに電力の供給を受けて電動機として機能する電動・発電機22が接続されている。この電動・発電機22の電動機動力は、エンジン動力より小さく設定する。この電動・発電機22には、インバータなどの電動・発電機制御器22cが接続されている。
【0014】
電動・発電機制御器22cは、コンバータなどの蓄電器制御器23cを介して、発電機として機能する電動・発電機22から供給された電力を蓄えるとともに電動機として機能する電動・発電機22に電力を供給する蓄電器23が接続されている。蓄電器23は、バッテリや、キャパシタなどである。
【0015】
ハイブリッド式駆動装置10における動力伝達装置14は、トロイダル式、遊星歯車式などの無段変速機構を内蔵し、外部からの制御信号により出力軸15に無段変速された回転を出力可能となっている。
【0016】
ハイブリッド式駆動装置10におけるメインポンプ17A,17Bは、タンク24内に収容された作動油などの作動流体を流体圧アクチュエータ制御回路25に供給する。この流体圧アクチュエータ制御回路25中にはエネルギ回生モータ26が設けられ、このエネルギ回生モータ26により駆動されたブーム用電動・発電機87からそのコンバータなどの発電機制御器27cを介して回収された電力は、蓄電器23に蓄えられる。
【0017】
エンジン11の速度、クラッチ12の断続、動力伝達装置14の変速などは、コントローラ(図示せず)から出力された信号により制御される。
【0018】
図1に示された流体圧アクチュエータ制御回路25において、メインポンプ17A,17Bの吐出口に接続されたポンプ通路31,32は、タンク24に戻されるバイパス通路中に設けられた電磁比例弁として作動する電磁弁33,34に接続されているとともに、走行直進弁として作動する電磁弁35に接続されている。
【0019】
電磁弁33,34は、バイパス弁として機能し、オペレータが流体圧アクチュエータ2trL,2trR,8bmc,8stc,8bkcを操作する操作信号がないときは、コントローラからの制御信号によりポンプ通路31,32をタンク24に連通する全開位置に制御され、オペレータが流体圧アクチュエータ2trL,2trR,8bmc,8stc,8bkcを操作する操作信号の大きさに比例して閉じ位置に変位する。
【0020】
電磁弁35は、図1に示された左側の作業位置では、2つのメインポンプ17A,17Bから流体圧アクチュエータ2trL,2trR,8bmc,8stc,8bkcに作動流体を供給でき、右側の走行直進位置に切換わると、一方のメインポンプ17Bのみから2つの走行モータ2trL,2trRに等分された作動流体を供給して、直進走行が可能となる。
【0021】
流体圧アクチュエータ制御回路25は、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bから走行モータ2trL,2trRに供給される作動流体を制御する走行用制御回路36と、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bから、作業装置8を作動する作業用アクチュエータ8bmc,8stc,8bkcに供給される作動流体を制御する作業装置用制御回路37とを備えている。
【0022】
走行用制御回路36は、走行直進弁として作動する電磁弁35から引出された走行モータ用作動流体供給通路41,42を経て供給された作動流体を方向制御および流量制御する電磁弁43,44を備えている。
【0023】
作業装置用制御回路37は、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bからブームシリンダ8bmcに供給される作動流体を制御するブーム用制御回路45と、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bからスティックシリンダ8stcに供給される作動流体を制御するスティック用制御回路46と、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bからバケットシリンダ8bkcに供給される作動流体を制御するバケット用制御回路47とを備えている。
【0024】
ブーム用制御回路45は、走行直進弁として作動する電磁弁35から引出されたブームシリンダ用作動流体供給通路48を経て供給された作動流体を方向制御および流量制御する電磁弁49を備え、この電磁弁49の作動流体給排通路51,52がブームシリンダ8bmcのヘッド側室とロッド側室とに連通されている。
【0025】
ヘッド側の作動流体給排通路51には、落下防止弁として機能する電磁弁53が介在され、この電磁弁53をブーム停止時に左側の逆止弁位置に切換制御してブーム8bmの自重による下降を防止する。また、両方の作動流体給排通路51,52間には再生弁として機能する電磁弁54が設けられ、この電磁弁54をブーム下降時に逆止弁位置に切換制御して、ブームシリンダ8bmcのヘッド側室から排出された戻り流体の一部をロッド側室に再生する。
【0026】
電磁弁49のタンク通路側には、ブームシリンダ8bmcから排出される戻り流体を分流する戻り流体通路55が設けられ、この戻り流体通路55の一方の戻り通路56および他方の戻り通路57には、これらの戻り通路56,57に分流される流量比を制御する流量比制御弁58,59が設けられている。この流量比制御弁58,59は、前記エネルギ回生モータ26を有する一方の戻り通路56に設けられた流量制御用の一方の電磁弁58と、この一方の電磁弁58の上流側で分岐された他方の戻り通路57に設けられた流量制御用の他方の電磁弁59とによって形成されている。
【0027】
ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bからブームシリンダ8bmcに作動流体を供給するブームシリンダ用作動流体供給通路48には、作動流体の流量を援助するブームアシストポンプ84asが、ブームアシスト用作動流体供給通路85を介して接続されている。
【0028】
ブームシリンダ8bmcから排出される戻り流体が通る一方の戻り通路56中に設けられたエネルギ回生モータ26には、このエネルギ回生モータ26により駆動されてハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に電力を供給する発電機として機能するとともに蓄電器23から供給された電力により電動機として機能するブーム用電動・発電機87が接続され、このブーム用電動・発電機87はクラッチ88を介してブームアシストポンプ84asに接続されている。クラッチ88は、電動機として機能するブーム用電動・発電機87からブームアシストポンプ84asに動力を伝えるとともに、発電機として機能するブーム用電動・発電機87をブームアシストポンプ84asから切離す。
【0029】
そして、流量比制御弁58,59により流量制御された一方の戻り通路56の戻り流体量により、作動されるエネルギ回生モータ26の回転速度を制御し、このエネルギ回生モータ26により駆動されるブーム用電動・発電機87により、ハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に電力を供給し蓄える。
【0030】
このエネルギ回生モータ26が作動するのは、方向制御および流量制御する電磁弁49が図1において右室にあるときが望ましい。すなわち、ブーム下降時に、ブームシリンダ8bmcのヘッド側の作動流体給排通路51が戻り流体通路55に連通して、ブームシリンダ8bmcのヘッド側から排出された戻り流体によりエネルギ回生モータ26がブーム自重により余裕を持って作動することが望ましい。
【0031】
スティック用制御回路46は、走行直進弁として作動する電磁弁35から引出されたスティックシリンダ用作動流体供給通路61を経て供給された作動流体を方向制御および流量制御する電磁弁62を備え、この電磁弁62の作動流体給排通路63,64がスティックシリンダ8stcのヘッド側室とロッド側室とに連通されている。また、両方の作動流体給排通路63,64間にはロッド側からヘッド側への再生弁として機能する電磁弁65が設けられ、この電磁弁65をスティック・イン下降時に逆止弁位置に切換制御して、スティックシリンダ8stcのロッド側室から排出された戻り流体をへッド側室に再生する。
【0032】
バケット用制御回路47は、走行直進弁として作動する電磁弁35から引出されたバケットシリンダ用作動流体供給通路66を経て供給された作動流体を方向制御および流量制御する電磁弁67を備え、この電磁弁67の作動流体給排通路68,69がバケットシリンダ8bkcのヘッド側室とロッド側室とに連通されている。
【0033】
スティックシリンダ用作動流体供給通路61とブームシリンダ8bmcのヘッド側との間には、これらを連通するスティック・ブーム間の回路間連通通路71が設けられ、このスティック・ブーム間の回路間連通通路71中には、スティックシリンダ用作動流体供給通路61からブームシリンダ8bmcのヘッド側への一方向流れを可能とする位置と流れを遮断する位置との間で変位されるスティック・ブーム間の電磁弁72が設けられている。
【0034】
ブームシリンダ用作動流体供給通路48とスティックシリンダ用作動流体供給通路61との間には、これらの間を連通するバケット・スティック間の回路間連通通路73が設けられ、このバケット・スティック間の回路間連通通路73中には、ブームシリンダ用作動流体供給通路48からスティックシリンダ8stcへの一方向流れを可能とする位置および遮断する位置をそれぞれ有するバケット・スティック間の電磁弁74が設けられている。
【0035】
ブームシリンダ用作動流体供給通路48中であって、バケットシリンダ用作動流体供給通路66の分岐部とブームアシストポンプ84asからの合流部との間には、バケットシリンダ8bkcへの作動流体をブームシリンダ8bmcへの一方向流れとして供給可能とする位置と流れを遮断する位置との間で変位されるバケット・ブーム間の電磁弁89が設けられている。
【0036】
流体圧アクチュエータ制御回路25に対して旋回用制御回路91が分離設置されている。この旋回用制御回路91は、上部旋回体4を旋回用減速機構4grを介して旋回駆動する旋回モータ4swhに供給される作動流体を制御する。
【0037】
この旋回用制御回路91は、旋回モータ4swhの閉回路92,93に流量制御機能も有する方向制御弁としての電磁弁94が設けられ、この電磁弁94を介して閉回路92,93に旋回用ポンプ・モータ95が接続されている。この旋回用ポンプ・モータ95は、旋回モータ4swhに作動流体を供給するポンプとして機能するとともに旋回モータ4swhから吐出された作動流体により流体圧モータとして機能する。
【0038】
電磁弁94は、旋回用ポンプ・モータ95と旋回モータ4swhとの間を閉じる中立位置と、右回転用および左回転用の全開位置との間で開度を調整する絞り切換弁機能を有する。
【0039】
旋回用ポンプ・モータ95には旋回用電動・発電機96が接続されている。この旋回用電動・発電機96にはインバータなどの旋回用電動・発電機制御器96cが接続され、この旋回用電動・発電機制御器96cはハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に接続されている。
【0040】
旋回用電動・発電機96は、上部旋回体4の旋回制動時に流体圧モータとして機能する旋回用ポンプ・モータ95により駆動されてハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に電力を供給する発電機として機能するとともに、蓄電器23から供給された電力により旋回用ポンプ・モータ95をポンプとして駆動する電動機として機能する。
【0041】
すなわち、蓄電器23は、この発電機として機能する旋回用電動・発電機96から供給された電力を蓄えるとともに電動機として機能する旋回用電動・発電機96に電力を供給する。
【0042】
旋回用ポンプ・モータ95と電磁弁94との間の配管より、下部走行体2および作業装置8の流体圧アクチュエータ2trL,2trR,8bmc,8stc,8bkcに作動流体を供給する系外連絡通路97が引出されている。
【0043】
この系外連絡通路97中には、下部走行体2および作業装置8の流体圧アクチュエータ2trL,2trR,8bmc,8stc,8bkcへの作動流体供給を可能とする一方向流れ位置と、流れを遮断する位置との間で開度調整される連絡通路電磁弁98が設けられている。
【0044】
旋回用ポンプ・モータ95と電磁弁94との間の配管に、作動流体を補充する作動流体補充手段としての作動流体補充ポンプ99が接続されている。
【0045】
ブームアシストポンプ84asのブームアシスト用作動流体供給通路85と一のメインポンプ17Aの吐出通路31との間には、これらの通路を連通するポンプ間連通通路101が設けられ、このポンプ間連通通路101中には、ブームアシストポンプ84asのブームアシスト用作動流体供給通路85からメインポンプ17Aの吐出通路31への一方向流れを可能とする位置および遮断する位置をそれぞれ有するポンプ間の電磁弁102が設けられている。
【0046】
電磁弁53,54,65,72,74,89,98,102は、逆止弁を内蔵した流量調整機能を有する切換弁である。
【0047】
各種電磁弁33,34,35,43,44,49,53,54,58,59,62,65,67,72,74,89,94,98,102は、図示されないコントローラにより比例制御されるソレノイドと、リターンスプリング(図示せず)とをそれぞれ備え、ソレノイド励磁力とスプリング復元力とがバランスした位置に変位制御される。
【0048】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0049】
作業機械1の下部走行体2に対し上部旋回体4を旋回駆動するときは、電磁弁94を右回転または左回転の方向制御位置に制御するとともに、ハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23からの電力により旋回用電動・発電機96を介し駆動される旋回用ポンプ・モータ95から発生した作動流体圧により旋回用ポンプ・モータ95を作動して、上部旋回体4を旋回系のみで独立して旋回駆動できるとともに、上部旋回体4を停止させる制動時は、連絡通路電磁弁98を閉じて、上部旋回体4の慣性運動で回転する旋回モータ4swhがポンプとして吐出した作動流体により旋回用ポンプ・モータ95を流体圧モータ負荷として作動させ、旋回用電動・発電機96を発電機として駆動するので、上部旋回体4の慣性運動エネルギを電気エネルギに変換して、上部旋回体4の旋回運動を制動しつつハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に電力を効率良く回収できる。
【0050】
一方、旋回モータ4swhが多量の作動流体を必要としない場合は、電磁弁94を中立位置に近付けるとともに、連絡通路電磁弁98を一方向流れ位置に近付け、電動機として作動する旋回用電動・発電機96により旋回用ポンプ・モータ95をポンプとして駆動し、この旋回用ポンプ・モータ95は、作動流体補充ポンプ99により作動流体の補充を受けながら、連絡通路電磁弁98を経て系外連絡通路97に作動流体を吐出し、作動流体を必要とする下部走行体2および作業装置8の流体圧アクチュエータ制御回路25に対して作動流体を直接供給できる。
【0051】
すなわち、系外連絡通路97は、ブームシリンダ8bmc、スティックシリンダ8stcおよび走行モータ2trL,2trRに作動流体を供給するメインポンプ17Bの吐出通路32に接続されたので、これらの流体圧アクチュエータに対して、メインポンプ17A,17Bと、ポンプとして機能する旋回用ポンプ・モータ95とから、十分な作動流体を供給できる。そして、旋回用ポンプ・モータ95をポンプとして駆動する分、メインポンプ17A,17Bの小型化を図れる。
【0052】
流体圧アクチュエータ制御回路25は、ハイブリッド式駆動装置10のメインポンプ17A,17Bから走行モータ2trL,2trR、ブームシリンダ8bmc、スティックシリンダ8stcおよびバケットシリンダ8bkcに供給される作動流体を制御する際に、クラッチ88を切離すことにより、ブームシリンダ8bmcから排出される戻り流体により作動されるエネルギ回生モータ26より、無負荷状態のブーム用電動・発電機87に動力を効率良く入力して、発生した電力をハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に蓄えることができ、ブームシリンダ8bmcから排出された戻り流体が有するエネルギを有効に回生できる。
【0053】
特に、作業装置8のブーム8bmが自重落下する際に、ブームシリンダ8bmcのヘッド側から排出される戻り流体が有するエネルギを、エネルギ回生モータ26からブーム用電動・発電機87により吸収してハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に蓄えることができる。
【0054】
また、クラッチ88を接続したときは、ハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23からの電力により電動機として機能するブーム用電動・発電機87によりブームアシストポンプ84asを駆動して、このブームアシストポンプ84asからブームシリンダ8bmcに作動流体を供給できるので、メインポンプ17A,17Bと、ポンプとして機能する旋回用ポンプ・モータ95とに加えて、ブームアシストポンプ84asからもブームシリンダ8bmcに作動流体を供給でき、4つのポンプから多量の作動流体を供給でき、ブームアップ動作のさらなる高速化により、作業性のさらなる向上を図れる。
【0055】
また、ブームシリンダ8bmcから戻り流体通路55に排出される戻り流体を一方の戻り通路56と他方の戻り通路57とに分流し、その分流された流量比を流量比制御弁58,59により制御し、この流量比制御弁58,59により流量制御された一方の戻り流体によりエネルギ回生モータ26を作動し、このエネルギ回生モータ26によりブーム用電動・発電機87を駆動して、ハイブリッド式駆動装置10の蓄電器23に電力を供給するので、ブームシリンダ8bmcからの戻り流体が発生した時点からエネルギ回生モータ26側に分流される流量比を徐々に増加させることによってショックの発生を防止できるとともに、ブームシリンダ8bmcの急激な負荷変動を抑えることで、ブームシリンダ8bmcの安定した動作が得られる。
【0056】
すなわち、作業装置8のブーム8bmが自重落下する際に、ブームシリンダ8bmcのヘッド側から排出される戻り流体のエネルギ回生モータ26側への流量比を徐々に増加させることで、戻り流体が有するエネルギをエネルギ回生モータ26が円滑に吸収できるとともに、ブームシリンダ8bmcのヘッド側の急激な負荷変動を抑えることで、ブーム8bmの自重落下動作を安定させることができる。
【0057】
流量比制御弁58,59は、一方の電磁弁58と他方の電磁弁59とを、一方の戻り通路56および他方の戻り通路57の任意の場所にそれぞれ分離して設置できるとともに、一方の戻り通路56および他方の戻り通路57の開度を相互に関連することなく個別に制御して、エネルギ回生モータ26側に流される戻り流体の流量比および流量を自在に制御できる。
【0058】
また、ブームシリンダ用作動流体供給通路48中にバケット・ブーム間の電磁弁89を設けたので、この電磁弁89を開くことで、一のメインポンプ17Aからの作動流体供給量とブームアシストポンプ84asからの作動流体供給量とを合わせてブームシリンダ8bmcに供給でき、ブームシリンダ8bmcによるブームアップ動作の高速化を図れ、作業性を向上できるとともに、この電磁弁89を閉じることで、バケットシリンダ8bkcでの高圧を確保できる。
【0059】
さらに、スティックシリンダ用作動流体供給通路61とブームシリンダ8bmcのヘッド側とを連通するスティック・ブーム間の回路間連通通路71中にスティック・ブーム間の電磁弁72を設けたので、この電磁弁72を一方向流れ位置に制御することで、一のメインポンプ17Aおよびブームアシストポンプ84asから電磁弁49の左室を経てブームシリンダ8bmcのヘッド側へ供給される作動流体に加えて、他のメインポンプ17Bからの作動流体もこの電磁弁72を経てブームシリンダ8bmcのヘッド側に供給でき、ブームシリンダ8bmcによるブームアップ動作の高速化を図れるので、作業性を向上できる。一方、この電磁弁72を閉じることで、他のメインポンプ17Bからスティックシリンダ8stcへの作動流体供給量を確保できる。
【0060】
また、バケット・スティック間の回路間連通通路73中にバケット・スティック間の電磁弁74を設けたので、この電磁弁74を一方向流れ位置に開くとともに、電磁弁72,89を閉じることで、一のメインポンプ17Aからブームシリンダ8bmcに供給される作動流体を、他のメインポンプ17Bからスティックシリンダ8stcに供給される作動流体に合流させて、スティックシリンダ8stcの高速化を図れるとともに、バケット・スティック間の電磁弁74を閉じて電磁弁72,89を開くことで、他のメインポンプ17Bからスティックシリンダ8stcに供給される作動流体を、一のメインポンプ17Aからブームシリンダ用作動流体供給通路48、電磁弁89、電磁弁49の左室を経てブームシリンダ8bmcのヘッド側に供給される作動流体に合流させることで、ブームアップ動作の高速化を図れ、作業性を向上できる。
【0061】
さらに、バケット・スティック間の電磁弁74を遮断位置に制御して、ブーム用制御回路45とスティック用制御回路46とを分離独立させたときは、ブーム系と、スティック系とを切離して、圧力を別々に制御できる。特に、この電磁弁74とともに電磁弁89を閉じることで、バケットシリンダ8bkcでの高圧を確保できる。
【0062】
また、ポンプ間連通通路101中にポンプ間の電磁弁102を設けたので、ブームアップ流量を必要としないときは、この電磁弁102を開くことで、ブームアシストポンプ84asからの作動流体吐出量を一のメインポンプ14Aからの作動流体供給量に合流させることができ、作業性を向上できるとともに、この電磁弁102を閉じることで、ブームシリンダ8bmcへの作動流体供給量を確保できる。
【0063】
そして、これらのスティック・ブーム間の電磁弁72、バケット・スティック間の電磁弁74、バケット・ブーム間の電磁弁89、ポンプ間の電磁弁102に加えて、連絡通路電磁弁98を開閉することで、作動流体を補充し合う回路間の組合せの自由度が高くなり、種々の作動パターン要求に容易に対応できる。
【0064】
電磁弁72,89,102を遮断位置に閉じることで、ブーム用制御回路45をメインポンプ17A,17Bから完全に切離すこともできる。
【0065】
このように、電磁弁72,74,89,98,102の切換状態の組合せによって、組合せの自由度が高くなり、システム構成の変更がフレキシブルとなる。また、ハイブリッドシステムにより、エンジン11の燃費効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る旋回用駆動装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】同上旋回用駆動装置を装備した作業機械の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
4swh 旋回モータ
23 蓄電器
92,93 閉回路
94 方向制御弁としての電磁弁
95 旋回用ポンプ・モータ
96 旋回用電動・発電機
97 系外連絡通路
98 連絡通路電磁弁
99 作動流体補充手段としての作動流体補充ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の供給を受けて負荷を旋回駆動する旋回モータと、
旋回モータに閉回路で接続され旋回モータに作動流体を供給するポンプとして機能するとともに旋回モータから吐出された作動流体により流体圧モータとして機能する旋回用ポンプ・モータと、
旋回用ポンプ・モータと旋回モータとの間を閉じる中立位置と方向制御位置とを有する方向制御弁と、
負荷の旋回制動時に流体圧モータとして機能する旋回用ポンプ・モータにより駆動されて発電機として機能するとともに電力の供給を受けて旋回用ポンプ・モータをポンプとして駆動する電動機として機能する旋回用電動・発電機と、
この発電機として機能する旋回用電動・発電機から供給された電力を蓄えるとともに電動機として機能する旋回用電動・発電機に電力を供給する蓄電器と、
旋回用ポンプ・モータと方向制御弁との間の閉回路から旋回系外に作動流体を供給する系外連絡通路と、
系外連絡通路中に設けられ旋回系外への作動流体供給を可能とする位置と流れを遮断する位置との間で変位される連絡通路電磁弁と、
旋回用ポンプ・モータと方向制御弁との間の閉回路に作動流体を補充する作動流体補充手段と
を具備したことを特徴とする旋回用駆動装置。
【請求項2】
作動流体補充手段は、作動流体補充ポンプである
ことを特徴とする請求項1記載の旋回用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−336849(P2006−336849A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166181(P2005−166181)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】