説明

日焼け止め化粧料

【課題】紫外線、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽機能に優れ、使用感も優れ、安全性も極めて高い日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛微粒子を含有してなる日焼け止め化粧料であり、この酸化亜鉛微粒子は、一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下、平均一次粒子径が0.2μm以上かつ0.3μm以下の酸化亜鉛微粒子を90%以上含有しており、この酸化亜鉛微粒子の一次粒子径は0.2μm以上かつ0.4μm以下がより好ましく、この酸化亜鉛微粒子の表面には疎水処理が施されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め化粧料に関し、紫外線遮蔽機能、特に、長波長紫外線(UVA)の遮蔽機能に優れるとともに、使用感等も優れ、安全性も極めて高い日焼け止め化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の変化によりオゾン層が破壊されつつあることから、低波長領域の紫外線が地表にまで到達することによる生体への影響が懸念されている。
紫外線は、一般に、波長が320〜400nmの長波長紫外線(UVA)、波長が290〜320nmの中波長紫外線(UVB)、波長が290nm以下の短波長紫外線(UVC)の3つに分類される。
これらの紫外線のうち、短波長紫外線(UVC)は、大気圏上空のオゾン層により吸収、散乱されて地上には到達しないので、人体に悪影響を及ぼす虞はないが、長波長紫外線(UVA)及び中波長紫外線(UVB)は、人体が直接被爆することにより障害を引き起こす虞があり、注意を要する。
【0003】
この長波長紫外線(UVA)及び中波長紫外線(UVB)のうち、早期から注目されていたのは中波長紫外線(UVB)であり、日焼けや炎症等の皮膚障害を引き起こすことが知られている。この日焼けや炎症等から皮膚を保護するために、既に各種の日焼け止め製品が提案され、実用化されている。この日焼け止め製品では、紫外線防御能の指標としてSPF(SUNPROTECT FACTOR)値が用いられている。
一方、長波長紫外線(UVA)は、中波長紫外線(UVB)と比べて皮膚への影響が穏やかであるものの、太陽光中に多く含まれており、しかも皮膚の深部まで届くために、皮膚の老化に繋がるとして注目を集めている。この長波長紫外線(UVA)についても、紫外線防御能を示すためにPA表示が用いられている。
【0004】
この長波長紫外線(UVA)から人体を防御する紫外線遮蔽剤としては、有機系紫外線遮蔽剤では、ジベンゾイルメタン誘導体、ベントリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アントラニル誘導体等が用いられており、無機系紫外線遮蔽剤では、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子が用いられている。
ところで、有機系紫外線遮蔽剤には、溶解性、安定性等での問題から配合量や配合の組み合わせに限界がある。そこで、近年、無機系紫外線遮蔽剤で且つ長波長紫外線(UVA)に対する遮蔽能の高い酸化亜鉛が使用されている。酸化亜鉛の紫外線遮蔽効果は、紫外線の吸収と散乱に基づくものである。
【0005】
(1)酸化亜鉛の紫外線吸収効果
酸化亜鉛は、n型の金属酸化物半導体であり、そのバンド構造におけるバンドギャップエネルギーEgは3.2eVである。この酸化亜鉛に、そのバンドギャップエネルギーEg以上のエネルギーを有する光が照射されると、電子はその光エネルギーを吸収して価電子帯から伝導帯へ励起される。この酸化亜鉛の吸収端は380nm付近であるから、長波長紫外線(UVA)から中波長紫外線(UVB)の波長領域を吸収することができる。
(2)酸化亜鉛の紫外線散乱効果
酸化亜鉛の光散乱は、粒子の大きさが光の波長に近い場合、ミー散乱(Mie scattering)がおこり、波長の1/2で最大となる。粒子径がさらに小さくなると、レイリー散乱(Rayleigh scattering)がおこり、粒子径が小さくなるほど、また、長波長側ほど小さくなる。したがって、散乱効果で紫外線(UV)の長波長側を遮蔽するには、酸化亜鉛の粒子径を大きくすることが有利である。
【0006】
ところで、この酸化亜鉛を日焼け止め化粧料に使用する場合には、可視光線領域の光透過性を維持しつつ、自然な色合いとする必要がある。そこで、一次粒子径が15〜55nmの酸化亜鉛微粒子を用いることで、この酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を可視光線の波長未満とすることにより、長波長紫外線(UVA)及び中波長紫外線(UVB)の両波長領域において紫外線防御効果を有し、透明感を持たせた化粧料が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−161648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の酸化亜鉛微粒子を用いた化粧料では、透明性を維持するために酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を15〜55nmの範囲としているが、一次粒子径を15〜55nmと微粒子化した場合、それより粒子径の大きい酸化亜鉛粒子と比べて、紫外線散乱効果が低下し、長波長側、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽能力が劣るという問題点があった。
また、酸化亜鉛の一次粒子径が非常に微細な場合、一般に、透明性には優れているが隠蔽性には劣る。日焼け止め化粧料の場合、適度な隠蔽性がないと、実際に使用した際に、どの範囲にどの程度の日焼け止め化粧料を塗ったか分からなくなり、塗りムラが生じ易いという問題点が生じ易くなる。
さらに、このような酸化亜鉛微粒子は、その比表面積が大きいために油成分の保持量が多く、したがって、得られた化粧料にべたつき感、きしみ感があり、使用感が悪くなるという問題点があった。
【0009】
また、酸化亜鉛は粒径が細かいと比表面積が大きくなり、吸湿が起こる。吸湿はその後の分散工程に影響を与えるため、粘度上昇や分散不良といった不具合が生じ易く、化粧料として製品にした時にばらつきが生じ易いという問題点があった。
さらに、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を15〜55nmと微粒子化した場合、この酸化亜鉛微粒子が皮膚の汗腺等から体内に吸収される虞があり、人体に対する安全性、及び、この化粧料の製造工程に係わる作業者に対する安全性の点で懸念が生じる虞がある。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽機能に優れ、使用感も優れ、安全性も極めて高い日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、日焼け止め化粧料について改良すべく鋭意検討を行った結果、日焼け止め化粧料の成分として酸化亜鉛微粒子を用い、この酸化亜鉛微粒子のうち90%以上の微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下とすれば、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽することができ、さらに、一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の酸化亜鉛微粒子は、一次粒子径が100nm未満の酸化亜鉛微粒子と比べて比表面積が小さいために油成分の保持量が少なく、したがって、べたつき感が無く、使用感も優れており、しかも、体内に吸収される虞が無く、安全性が極めて高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の日焼け止め化粧料は、酸化亜鉛微粒子を含有してなる日焼け止め化粧料であって、前記酸化亜鉛微粒子のうち90%以上の微粒子の一次粒子径は、0.1μm以上かつ0.4μm以下であることを特徴とする。
【0013】
前記酸化亜鉛微粒子の平均一次粒子径は0.2μm以上かつ0.3μm以下であることが好ましい。
前記酸化亜鉛微粒子の一次粒子径は0.2μm以上かつ0.4μm以下であることが好ましい。
前記酸化亜鉛微粒子は、その表面に疎水処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の日焼け止め化粧料によれば、前記酸化亜鉛微粒子のうち90%以上の微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下としたので、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽することができる。
また、この一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の酸化亜鉛微粒子は、一次粒子径が100nm未満の酸化亜鉛微粒子と比べて比表面積が小さく、したがって、べたつき感やざらつき感が無く、のりも良く、よって、透明性を維持しつつ使用感を向上させることができる。
【0015】
また、この一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の酸化亜鉛微粒子は、吸湿を抑制することができ、その後の分散工程における分散し難さ等の不具合を抑制することができる。したがって、製品としてばらつきの無い化粧料を提供することができる。
さらに、この一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の酸化亜鉛微粒子は、皮膚の汗腺等から体内に吸収される危険性が無く、人体に対する安全性に優れている。また、この化粧料の製造工程に係わる作業者に対しても危険性が無く、製造工程上の安全性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の日焼け止め化粧料を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
本実施形態の日焼け止め化粧料は、酸化亜鉛微粒子を含有してなる日焼け止め化粧料であり、この酸化亜鉛微粒子の一次粒子径は0.1μm以上かつ0.4μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上かつ0.4μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上かつ0.3μm以下である。
この酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下と限定した理由は、上記の範囲が紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽することができ、透明感を維持しつつ使用感を向上させることができ、微粒子に係わる安全性を十分に確保することができる範囲だからである。
【0018】
ここで、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径が0.1μm未満の場合には、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を遮蔽することができず、長波長紫外線(UVA)に対する遮蔽能が不十分になり、皮膚の老化等を促進する虞があるからであり、一方、一次粒子径が0.4μmを超える場合には、酸化亜鉛微粒子が失透したり、あるいは透明性が低下することにより、化粧料とした際に通常の酸化亜鉛微粒子と同程度の透明性を維持することができなくなるからである。
【0019】
従来、化粧料以外の用途で用いられている酸化亜鉛粒子としては、一次粒子径が0.5μmを超えるものもあるが、この酸化亜鉛粒子は、平均粒径はさほど大きくなくとも、粒度分布が幅広く、例えば1μmを超えるような非常に大きな粒子も含むので、白色の度合いが強くなりすぎてしまい、化粧料として必要な透明性を十分に得ることができず、したがって、日焼け止め化粧料としての用途には適さない。
一方、本実施形態で用いられる酸化亜鉛微粒子は、全微粒子数のうち90%以上の酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下の範囲内としたので、化粧料として必要な透明性を十分に確保することができる。
【0020】
この酸化亜鉛微粒子の平均一次粒子径は、0.2μm以上かつ0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上かつ0.25μm以下である。
この酸化亜鉛微粒子では、粒子径の分布を可能な限り狭くすることで、透明性と隠蔽性(肌のカバー性のよさ)のバランスを向上させることができる。
ここで、この酸化亜鉛微粒子の平均一次粒子径を0.2μm以上かつ0.3μm以下とした理由は、平均一次粒子径が0.2μm未満では、粒子径が小さくなるに伴い、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)領域における遮蔽効果の低下、肌のシミ等のカバー力の低下、きしみ感が生じることによる使用感の低下等の不具合が生じるからであり、一方、平均一次粒子径が0.3μmを超えると、使用した場合に白色が強調されてしまい、その結果、透明感が失われるからである。
【0021】
このように、この酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下、平均一次粒子径を0.2μm以上かつ0.3μm以下としたことにより、上述した微粒子に係わる安全性の確保、通常の酸化亜鉛微粒子と同程度の透明性の維持、酸化亜鉛微粒子の化粧料中における分散及び透明性の維持、使用感の向上、製品としての化粧料の均質性の確保という効果をさらに高めることができる。
【0022】
この酸化亜鉛微粒子は、その粒度分布を一次粒子径に対する粒子数の百分率として表した場合に、一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の酸化亜鉛微粒子の粒子数が、この酸化亜鉛微粒子の全粒子数に対して90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上である。
ここで、一次粒子径が上記の範囲の酸化亜鉛微粒子の含有率を90%以上としたのは、この含有率の範囲が紫外線、特に長波長紫外線(UVA)の遮蔽効果、べたつき感やきしみ感の向上、のりの良さ等を発現することができ、さらには、適度な遮蔽性を有することにより、肌のしみ、しわ等をカバーすることが可能となり、したがって、透明性を維持しつつ使用感を向上させるという効果が得られる範囲だからである。なお、この酸化亜鉛微粒子の含有率が90%未満になると、これらの効果が期待できず、したがって、透明性を維持しつつ使用感及び肌のカバー性を向上させるという効果が得られない。
【0023】
この酸化亜鉛微粒子の比表面積は、3m/g以上かつ10m/g以下が好ましく、より好ましくは3m/g以上かつ5m/g以下、さらに好ましくは3.5m/g以上かつ4.5m/g以下である。
比表面積が上記の範囲であれば、酸化亜鉛微粒子の化粧料中における分散及び透明性の維持、使用感の向上、製品としての化粧料の均質性の確保という効果をさらに高めることができる。
【0024】
この酸化亜鉛微粒子の形状は、球状、塊状、紡錘状、薄片状等、特に限定されないが、紡錘状、薄片状のいずれかが好ましい。紡錘状は、二次凝集を抑制する効果が高く、実際の化粧料においても一次粒子に近い状態で配合が可能である。また、薄片状は、球状よりも密に詰まり易く、紫外線(UV)に対する遮蔽力が高く、二次凝集を抑制し、きしみ感を抑制し、使用感(のび)がよくなる。
【0025】
この酸化亜鉛微粒子は、その表面に疎水処理が施されていることが好ましい。
この疎水処理剤としては、特に限定されないが、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、有機チタネート化合物の群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
【0026】
シリコーン化合物としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等が挙げられる。
【0027】
また、脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。また、脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。また、脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
また、有機チタネート化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0029】
上記の疎水処理剤を用いて酸化亜鉛微粒子の表面を疎水処理する方法としては、湿式法、乾式法等が挙げられる。
湿式法とは、疎水処理剤と酸化亜鉛微粒子を溶媒に投入して攪拌混合し、次いで、溶媒を除去して疎水処理剤を酸化亜鉛微粒子に焼き付け、その後粉砕することにより、酸化亜鉛微粒子の表面を疎水処理する方法である。
乾式法とは、疎水処理剤と乾燥した酸化亜鉛微粒子をミキサー等の乾式混合機に投入して攪拌混合し、次いで、疎水処理剤を酸化亜鉛微粒子に焼き付け、その後粉砕することにより、酸化亜鉛微粒子の表面を疎水処理する方法である。
【0030】
この酸化亜鉛微粒子の日焼け止め化粧料における含有率は、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽するためには、1質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上かつ20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上かつ15質量%以下である。
【0031】
この日焼け止め化粧料は、酸化亜鉛微粒子の他に、必要に応じて、疎水性分散媒、無機微粒子、無機顔料、分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料等を含有してもよい。
疎水性分散媒としては、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等が挙げられる。
【0032】
無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ−酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0033】
この日焼け止め化粧料は、さらに有機系紫外線吸収剤を1種または2種以上含有してもよい。
この有機系紫外線吸収剤としては、具体的には、次のような各種の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、1−(4’−イソプロピルフェニル)−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等が挙げられる。
【0034】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸 ( PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等が挙げられる。
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−2−プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0035】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、オクチルメトキシシンナメート、ジ−パラメトキシケイ皮酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0036】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−1−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]−3,4,5−トリメトキシシンナメート、[3−トリス(トリメチルシロキシ)シリル−1−メチルプロピル]−3,4−ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0037】
その他の有機系紫外線吸収剤としては、3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、5−(3,3’−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、 フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の日焼け止め化粧料によれば、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下の狭い範囲に分布しているので、一次粒子径を0.1μm以上としても日焼け止め化粧料として十分な透明性を得ることができ、肌を白くすることなく、逆に肌のシミ等を良好にカバーすることができる。
また、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下であるから、粒子間の凝集力が強くなく、したがって、酸化亜鉛微粒子の二次凝集を抑制することができる。これにより、酸化亜鉛微粒子を化粧料中に一次粒子に近い状態で分散させることができ、透明性を維持することができる。
【0039】
また、酸化亜鉛微粒子の吸油量を抑制することができるので、べたつき感が無く、使用感の良い化粧料が得られる。
さらに、酸化亜鉛微粒子の吸湿がほとんどなく、化粧料の分散工程においても粘度上昇や分散不良という不具合が生じず、したがって、製品としての化粧料のばらつきがほとんど生じず、均質性を確保することができる。
【0040】
ここで、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径の範囲を0.2μm以上かつ0.4μm以下、さらには0.2μm以上かつ0.3μm以下と狭くすることにより、安全性を確実に確保しつつ透明性も維持することができ、上述した種々の効果をさらに高めることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
デカメチルシクロペンタシロキサン35.0質量部、ポリオキシエチレン・ポリアルキルシロキサン3.0質量部、変性粘土鉱物1.0質量部を加熱式容器に入れた後、60度に加温し、ホモミキサーにて撹拌し分散させ、分散液Aを得た。
次いで、一次粒子径が0.10μm以上かつ0.40μm以下(平均一次粒子径:0.23μm)の酸化亜鉛微粒子Aをメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて湿式法にて表面処理を行い、疎水処理酸化亜鉛微粒子Aを得た。
この疎水処理酸化亜鉛微粒子Aの一次粒子径及び平均一次粒子径は、処理前と同一であった。
【0043】
次いで、上記の分散液Aに、疎水処理酸化亜鉛微粒子A12.0質量部及び疎水処理タルク2.0質量部を添加し、ホモミキサーにて十分に撹拌して混合し、混合物A1を得た。
一方、1,3ブチレングリコール5.0質量部とEDTA/2NA(ethylenediamine-tetraaceticacid/2naphtylamine)0.1質量部とパラベン(適量)と香料(適量)と精製水(残量)とを混合し、全体量が47.0質量部の混合物A2を得た。
次いで、混合物A1に混合物A2を徐々に添加し、その後、これを十分にホモミキサーにて混合し、実施例1の日焼け止めクリームを作製した。
【0044】
(実施例2)
酸化亜鉛微粒子Aの代わりに一次粒子径が0.1μm以上かつ0.4μm以下(平均一次粒子径:0.22μm)の酸化亜鉛微粒子Bを用いた以外は、実施例1に準じて、実施例2の日焼け止めクリームを作製した。
【0045】
(実施例3)
酸化亜鉛微粒子Aの代わりに一次粒子径が0.2μm以上かつ0.4μm以下(平均一次粒子径:0.3μm)の酸化亜鉛微粒子Cを用いた以外は、実施例1に準じて、実施例3の日焼け止めクリームを作製した。
【0046】
(実施例4)
酸化亜鉛微粒子Aの代わりに一次粒子径が0.2μm以上かつ0.3μm以下(平均一次粒子径:0.25μm)の酸化亜鉛微粒子Dを用いた以外は、実施例1に準じて、実施例4の日焼け止めクリームを作製した。
【0047】
(比較例1)
酸化亜鉛微粒子Aの代わりに一次粒子径が0.02μm以上かつ0.05μm以下(平均一次粒子径:0.035μm)の酸化亜鉛微粒子Eを用いた以外は、実施例1に準じて、比較例1の日焼け止めクリームを作製した。
【0048】
(比較例2)
酸化亜鉛微粒子Aの代わりに一次粒子径が0.3μm以上かつ0.6μm以下(平均一次粒子径:0.5μm)の酸化亜鉛微粒子Fを用いた以外は、実施例1に準じて、比較例2の日焼け止めクリームを作製した。
【0049】
(評価)
A.酸化亜鉛微粒子の一次粒子径
実施例1〜4及び比較例1、2それぞれの酸化亜鉛微粒子A〜Fの一次粒子径について、下記の方法により評価した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて視野中の酸化亜鉛微粒子を任意に120個選び、これらの微粒子の中心点を通る複数の直径のうち最大直径を一次粒子径とした。
その結果、実施例1で使用した酸化亜鉛微粒子Aは、91%の微粒子の一次粒子径が表1中の一次粒子径の範囲に、実施例2で使用した酸化亜鉛微粒子Bは、95%の微粒子の一次粒子径が表1中の一次粒子径の範囲に、実施例3で使用した酸化亜鉛微粒子Cは、91%の微粒子の一次粒子径が表1中の一次粒子径の範囲に、実施例4で使用した酸化亜鉛微粒子Dは、90%の微粒子の一次粒子径が表1中の一次粒子径の範囲に、それぞれあった。
【0050】
B.酸化亜鉛微粒子の平均一次粒子径
実施例1〜4及び比較例1、2それぞれの酸化亜鉛微粒子A〜Fの平均一次粒子径について、下記の方法により評価した。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて視野中の酸化亜鉛微粒子を任意に120個選び、これらの微粒子の中心点を通る複数の直径のうち最大直径を一次粒子径とし、一次粒子径の個数平均を平均一次粒子径とした。
それぞれの平均一次粒子径を表1に示す。
【0051】
C.日焼け止めクリームの評価
実施例1〜4及び比較例1、2それぞれの日焼け止めクリームについて、使用感、肌のカバー性、長波長紫外線(UVA)遮蔽効果、透明感を下記の評価方法により調べた。評価結果を表1に示す。
(1)使用感
日焼け止めクリームを、30名のモニターに実際に使用してもらい、「のびの良さ」、「べたつきの無さ」、「きしみ感の無さ」それぞれの項目について得られた感触により評価してもらった。評価基準は次のとおりである。
◎:非常に良好な使用感である。
○:良好な使用感である。
△:通常の使用感である。
×:使用感が劣る。
【0052】
(2)肌のカバー性
日焼け止めクリームを、30名のモニターに実際に使用してもらい、「肌のカバー性」について評価してもらった。評価基準は次のとおりである。
◎:肌のカバー性が非常に良好である。
○:肌のカバー性が良好である。
△:肌のカバー性が通常のものと同じである。
×:肌のカバー性が劣る。
【0053】
(3)UVA遮蔽効果
日焼け止めクリームを不織布の看護用テープ上に2mg/cmの塗布量で塗布し、評価試料を作製した。次いで、この評価試料の塗膜のUVA遮蔽効果を紫外線遮蔽能評価装置UV−1000S(Labsphere社製)を用いて測定した。評価基準は次のとおりである。
◎:UVA−Ratioが0.8以上
UVA遮蔽能が非常に高い。
○:UVA−Ratioが0.6以上かつ0.8未満
UVA遮蔽能が高い。
△:UVA−Ratioが0.4以上かつ0.6未満
UVA遮蔽能がある。
×:UVA−Ratioが0.4未満
UVA遮蔽能が低い。
【0054】
(4)透明感
日焼け止めクリームを不織布の看護用テープ上に2mg/cmの塗布量で塗布したときの塗膜の透明感を目視にて調べた。評価基準は次のとおりである。
◎:透明感が非常に高い。
○:透明感が高い。
△:通常の透明感である。
×:透明感が低い。
【0055】
【表1】

【0056】
表1によれば、実施例1〜4の日焼け止めクリームは、使用感、UVA遮蔽効果、透明感ともに優れており、「UVA遮蔽効果」及び「肌のカバー性の良さ」が特に優れていた。
一方、比較例1の日焼け止めクリームは、一次粒子径が0.02μm以上かつ0.05μm以下の極めて微細な酸化亜鉛微粒子を用いたために、透明感は優れているものの隠蔽力が弱く、肌のカバー性は殆ど得られなかった。また、使用感は通常の日焼け止めクリームと何等変わりが無かった。
また、比較例2の日焼け止めクリームは、一次粒子径が0.30μm以上かつ0.60μm以下と大きすぎる酸化亜鉛粒子を用いたために、塗膜が白濁化してしまい、透明感が許容できない程度までに悪化した。また、塗膜の緻密性が低下し、UVA遮蔽効果も実施例1〜3と比べて低下した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の日焼け止め化粧料は、酸化亜鉛微粒子のうち90%以上の微粒子の一次粒子径を0.1μm以上かつ0.4μm以下としたことにより、紫外線、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽することができ、べたつき感やきしみ感が無く、のりも良く、よって、透明性を維持しつつ使用感を向上させることができるものであるから、上述した日焼け止めクリームはもちろんのこと、紫外線遮蔽効果を必要とする化粧料として広く利用が可能であり、その工業的価値は極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛微粒子を含有してなる日焼け止め化粧料であって、
前記酸化亜鉛微粒子のうち90%以上の微粒子の一次粒子径は、0.1μm以上かつ0.4μm以下であることを特徴とする日焼け止め化粧料。
【請求項2】
前記酸化亜鉛微粒子の平均一次粒子径は0.2μm以上かつ0.3μm以下であることを特徴とする請求項1記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
前記酸化亜鉛微粒子の一次粒子径は0.2μm以上かつ0.4μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の日焼け止め化粧料。
【請求項4】
前記酸化亜鉛微粒子は、その表面に疎水処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2010−275223(P2010−275223A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128734(P2009−128734)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】