説明

日除けカーテン

【課題】脱臭や有害物質除去などの機能を追加・強化しても、製造コストの上昇を抑えることができる、紙製の日除けカーテンを提供する。
【解決手段】日除けカーテン10は、紙製のシート12と、シート12の少なくとも一辺に沿って設けられた取り付け部(例えば、吊りカン20)とを備える。シート12は、炭粉を含有する。好ましくは、シート12は、抄紙工程時に紙基材の中間層にのみ炭粉が配置され、接着剤を用いずに製造されたシート材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日除けカーテンに関し、詳しくは紙製の日除けカーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新築住宅や賃貸住宅では、入居までの間、日除けを目的として、カーテンレールに紙製のカーテンを取り付けていることが多い。
【0003】
このような日除けカーテンについて、住宅特有の有害物質を除去する目的で紙からなるカーテン地に脱臭剤兼有害物質除去剤を含浸させることや、脱臭剤を保持する袋部を設けることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−135159号公報
【特許文献2】特開2000−167033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日除けカーテンは、一時的に使用するものであるため低価格であることが要求される。しかし、カーテン地に脱臭剤兼有害物質除去剤を含浸させ、乾燥する工程を増やしたり、脱臭剤を保持する袋部を別に設けたりすると、製造コストが増大する。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、脱臭や有害物質除去などの機能を追加・強化しても、製造コストの上昇を抑えることができる、紙製の日除けカーテンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した日除けカーテンを提供する。
【0007】
日除けカーテンは、紙製のシートと、該シートの少なくとも一辺に沿って設けられた取り付け部とを備える。前記シートは、炭粉を含有する。
【0008】
上記構成において、取り付け部は、例えば、シートの一辺に沿って取り付けられた複数の吊りカンや、シートの辺に沿って設けられた粘着部などである。シートの内部や表面に含有される炭粉は、脱臭、消臭、調湿、有害物質除去、紫外線遮蔽などの機能を発揮する。
【0009】
上記構成によれば、炭粉を含有する紙のシートに、シート材として市販のものを用いるなどして、日除けカーテンを容易にかつ低コストで製造することができる。したがって、脱臭剤兼有害物質除去剤を含浸させ、乾燥する工程を追加する場合や、脱臭剤を保持する袋部を別に設ける場合よりも、製造コストを抑えることができる。
【0010】
好ましくは、前記シートは、紙基材の中間層にのみ前記炭粉を含有する。
【0011】
上記構成によれば、炭粉がシートの表面に露出しないので、シートが室内の壁等に擦れても炭粉で汚れることがない。
【0012】
より好ましくは、前記シートは、抄紙工程時に前記紙基材の前記中間層にのみ前記炭粉が配置され、接着剤を用いずに製造されたシート材である。
【0013】
この場合、シート材は、抄紙工程時に紙基材中に炭粉を配置することにより、接着剤を用いずに、パルプ、炭、水だけで製造することができる。そのため、接着剤によって炭粉の機能の一部を失うことがないので、炭粉の効果を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の日除けカーテンは、脱臭や有害物質除去などの機能を追加・強化しても、製造コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態として実施例について、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0016】
(実施例1) 実施例1の日除けカーテン10について、図1〜図3を参照しながら、説明する。
【0017】
図1に示すように、日除けカーテン10は、矩形の紙製のシート12と、シート12の一辺に沿って取り付けられた複数の吊りカン20とを備える。
【0018】
吊りカン20は、連結部24の両端に、略C字状の鉤部22と、略T字状の係止部26とを有し、係止部26によってシート12に係止されている。吊りカン20は、衣類等の商品に取り付けられる市販のフックピンであり、値付けタッチャーの針をシート12に貫通させ、吊りカン20の係止部26側を挿通することによって、シート12に取り付ける。
【0019】
吊りカン20を取り付ける部分には、シート12の片面又は両面に、クラフト粘着テープなどの補強部材14を予め貼り付けておき、吊りカン20が挿通される貫通孔付近を補強しておく。あるいは、シート12の端を折り曲げて重ね合わせ、その重ね合わせた部分に吊りカン20を取り付けるようにしてもよい。
【0020】
シート12は、多孔性炭化物である炭を粉末にした炭粉を含有する。シート12には、炭粉を含有する市販の紙のシート材を用いることができる。炭粉が表面に露出しているシート材であってもシート12に使用可能であるが、シート12が室内の壁などに擦れても炭粉で汚れることがないように、炭粉はシート12の紙基材の中間層にのみ含有され、シート12の表面には露出しないものであることが好ましい。
【0021】
シート12中の炭粉は、粒径が小さいほど、紙基材から剥離しにくい上、比表面積が増えて炭粉の効果が高まるので、好ましい。シート12中の炭粉は、少なくとも、肉眼で見分けることが困難な粒径であることが好ましく、例えば100μm以下の粒径が好ましく、50μm以下の粒径がより好ましい。
【0022】
シート12中の炭粉は、室内の壁紙や壁紙を接着する接着剤、新建材等から発生するトルエン、ホルムアルデヒド等の有害物質や、臭いの原因となる酢酸、アンモニア等のガスを吸着する。したがって、日除けカーテン10は、シート12中の炭粉により、脱臭、消臭、環境ホルモン等の有害物質除去の機能を追加・強化することができる。また、シート12中の炭粉は、空気中の水分を吸着する一方、湿度が下がると吸着した水分を解放するので、日除けカーテン10による室内の調湿効果を強化することができる。また、シート12中の炭粉は、外光、特に紫外線を遮断するので、日除けカーテン10の遮光率を高め、室内の畳や壁紙の日焼け防止効果を高めることができる。さらに、日除けカーテンのシートにポリエチレン等を用いるとシートに結露して水滴が畳に落ち、畳にカビが発生することがあるが、炭粉を含有する紙製のシート12は結露が発生しないので、畳にカビが発生しにくくなる。
【0023】
日除けカーテン10のシート12には、図2に模式的に断面構成を示すシート材30,31が、特に好適である。このシート材30,31は、抄紙工程時に紙基材32の中間層にのみ炭粉38が配置され、接着剤を用いずに、パルプ、炭、水だけで製造できる。そのため、炭粉38の機能が接着剤で失われることがないようにすることができる。
【0024】
シート材30,31は、紙基材32に古紙(故紙)パルプ、木材パルプ、ケナフなどの非木材パルプ、化学パルプなどを用いる。日除けカーテン10のシート12には、シート材30,31の表裏面34,36に皺(図示せず)を形成したクレープ紙が好ましい。皺を形成すれば、柔らかく、緩衝性があり、取り扱いやすくなるため、日除けカーテン10のシート12に好適である。また、表面積が増えるので、紙基材32による脱臭、消臭、調湿などの効果を高めることができる。クレープ紙の場合、クレープ紙の皺の延在方向が、日除けカーテン10の使用時に上下方向となるようにすれば、日除けカーテン10の開閉の際にシート12が曲がりやすくなるため、好ましい。
【0025】
シート材30としては、例えば故紙と梅の種の炭を粉末にした炭粉とを用いた100%リサイクル商品が市販されている。
【0026】
シート材30,31は中間層にのみ炭粉38を含有しているので、外部からのガスは、シート材30の紙基材32を通って炭粉38に達する。そのため、紙基材32と炭粉38の両方に、脱臭、消臭、調湿、有害物質の吸着などの効果を発揮させることができる。
【0027】
シート材30,31は、通常の抄紙工程を若干変更することで製造することができるので、脱臭剤兼有害物質除去剤を含浸するために含浸や乾燥の工程を追加したり、脱臭剤を保持する袋部を別に追加したりするのと比べ、製造コストを抑えることができる。そのため、炭粉で機能を高めたにもかかわらず、単なる紙製の日除けカーテンとほとんど同程度の価格で、日除けカーテン10を提供することが可能となる。
【0028】
日除けカーテン10のシート12には、上記のシート材30,31に限らず、紙基材の表面にバインダーに混ぜて炭粉を塗布したものや、2枚の紙基材の間に炭粉を挟んで接着したものなど、バインダーや接着剤を用いて炭粉を紙基材に保持するものを使用することも可能である。しかし、接着剤を用いて炭粉を紙基材に保持すると、炭粉の機能の一部がバインダーや接着剤によって失われるため、同じ効果を発揮させるには炭粉の量を増やす必要があり、製造コストを抑えることが困難である。したがって、上記のシート材30,31は、製造コストを抑えつつ、脱臭、消臭、有害物質除去等の効果や、紫外線の遮光率の向上などの効果を得ることができるため、日除けカーテン10のシート12に好適である。
【0029】
また、シート材30,31は、抄紙工程時に光触媒や空気触媒などの触媒粒子を炭粉に混ぜておくことによって、紙基材32の中間層に炭粉38とともに触媒粒子を配置し、さらに機能を高めるようにしてもよい。例えば、触媒粒子によって、カビの発生を抑制したり、空気中に浮遊する雑菌の発生を防いだり、悪臭成分を分解して消臭したり、有害化学物質を分解したり、マイナスイオンで室内の空気を自然界のバランスに整えたりする触媒機能を追加することができる。特に空気触媒(例えば、商品名「セルフィール(登録商標)」)は、触媒粒子の定着のためのバインダーが不要であるので、炭粉に混ぜておくだけの簡単な工程追加によって、上記のような触媒機能を追加することができる上、光を必要としないので、光が届きにくい紙基材32の中間層に配置されても紙基材32の通気によって空気に触れることで十分に触媒機能を発揮する。したがって、紙基材の中間層に炭粉とともに空気触媒の触媒粒子が配置されたシート材は、日除けカーテン10に特に好適である。
【0030】
シート材30,31は、炭粉38が紙基材32の中間層にのみ含有されているので、炭粉38が紙基材32から剥離することがほとんどない。しかし、炭粉38の量が多い場合や、炭粉38の粒径が大きい場合のように、炭粉38の剥離が懸念されるときには、例えば図2(a)に示すように炭粉38が縁端35まで分布しているシート材30については、炭粉38が露出する縁端35を覆うようににテープを貼ったり、端部33を折り曲げ、ミシン糸やステープラー、接着剤等で固定したりして、縁端35が露出しないようにして、シート12に用いればよい。
【0031】
また、図2(b)に示すように、中央部分(大部分の図示を省略している)にのみ炭粉38が分布するシート材31を用いてもよい。この場合、端部33では、紙基材32の上下層間に炭粉38がないため、縁端35から炭粉38の剥離が生じない上、紙基材32の上下層間の接合力が強くなるので、中央部分により多くの炭粉38を含有させ、炭粉38の効果を高めることができる。
【0032】
例えば、図3(a)に模式的に示すように、両側縁部分を除く中央部分42にのみ炭粉を含有するように製造されたシート材40を、切断線44で切断してシート12に用いることにより、シート12の一対の辺の縁端に炭粉が露出しないようにすることができる。また、図3(b)に示すように、適宜な間隔45を設けて断続的に中央部分43に炭粉を含有するシート材41を、切断線44で切断してシート12に用いることにより、シート12の4辺の縁端に炭粉が露出しないようにすることができる。
【0033】
日除けカーテン10は、一般には、入居までの間に一時的に使用するため、入居後に不要になる。不要になった日除けカーテン10は、シート12を適宜サイズに切断し、脱臭、調湿等のためにタンス、押入れ、下駄箱、靴などの中に敷いたり、靴の中に丸めて詰めたり、畳の下に敷いたりして、再利用することができる。再利用に役立てるために、シート12に、予め、再利用方法についての説明書きを取り付けたり、貼り付けたり、印刷したりしておいてもよい。また、再利用時の切り取りが容易となるように、シート12に、予め、切り取り線や切抜き型を印刷したり、ミシン目を形成したりしておいてもよい。
【0034】
(実施例2) 図4を参照しながら、実施例2の日除けカーテン10aについて説明する。
【0035】
実施例2の日除けカーテン10aは、実施例1と略同様に構成される。以下では、実施例1との相違点を中心に説明し、同じ構成部分には同じ符号を用いる。
【0036】
図4の要部断面図に示すように、日除けカーテン10aは、シート12の少なくとも一辺に沿って、粘着部50が設けられている。すなわち、シート12の少なくとも一辺に沿って粘着剤52が塗布され、その上に剥離紙54が貼り付けられている。粘着部50は、シート12の辺に沿って連続的に設けても、適宜に間隔をあけて部分的に設けてもよい。
【0037】
日除けカーテン10aは、剥離紙54を剥がし、粘着部50を窓枠等に貼り付けることによって、取り付ける。
【0038】
このような日除けカーテン10aは、取り付けが容易であり、カーテンレールがない窓等にも取り付けることができる。また、シート12に粘着部50を設ける辺の数を増やせば、日除けカーテン10aによって窓等を隙間なく覆い、室内の日焼けをより確実に防止することができる。
【0039】
(まとめ) 以上に説明したように、日除けカーテン10,10aは、消臭、脱臭、調湿、環境ホルモン等の有害物質除去、紫外線遮蔽、防カビ等の機能を追加・強化しても、製造コストの上昇を抑えることができる。日除けカーテン10は、機能の追加・強化によって、空気の入れ換えなどの住宅管理の手間やコストが少なくなり、部屋見学時の臭いや湿気などの不快感を解消することができる。さらに、入居後に不要になった日除けカーテン10は、分別回収できるが、再利用することもできる。燃料として使用すれば、炭入りなので火力がある。
【0040】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】日除けカーテンの構成図である。(実施例1)
【図2】シート材の断面図である。(実施例1)
【図3】シート材の説明図である。(実施例1)
【図4】日除けカーテンの要部断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0042】
10 日除けカーテン
12 シート
14 補強部材
20 吊りカン(取り付け部)
30 シート材
32 紙基材
38 炭粉
40,41 シート材
50 粘着部(取り付け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のシートと、
該シートの少なくとも一辺に沿って設けられた取り付け部と、
を備え、
前記シートが炭粉を含有することを特徴とする、日除けカーテン。
【請求項2】
前記シートは、紙基材の中間層にのみ前記炭粉を含有することを特徴とする、請求項1に記載の日除けカーテン。
【請求項3】
前記シートは、抄紙工程時に前記紙基材の前記中間層にのみ前記炭粉が配置され、接着剤を用いずに製造されたシート材であることを特徴とする、請求項2に記載の日除けカーテン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−130279(P2007−130279A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326960(P2005−326960)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(505355243)山陽製紙株式会社 (6)
【Fターム(参考)】