説明

昇圧制御回路

【課題】電源に対して並列に接続された昇圧部およびスイッチ部から成る並列回路においてスイッチ部の故障の有無を的確に検知する。
【解決手段】制御ECU34は、直結スイッチ13のオン及び昇圧回路14の昇圧動作を指示する制御パルスを出力したときに、第1及び第2電圧センサ15,16により検出された入力側電圧および出力側電圧に基づき、出力側電圧が昇圧されている場合、直結スイッチ13はオープン故障であると判定するオープン故障検知モードを有する。制御ECU34は、直結スイッチ13のオフ及び昇圧回路14の昇圧動作を指示する制御パルスを出力したときに出力側電圧が昇圧されていない場合、直結スイッチ13はショート故障または昇圧回路14は故障であると判定するショート故障検知モードを有する。制御ECU34はショート故障検知モードをオープン故障検知モードの実行に先立って実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇圧制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電源と負荷(例えば、モータ)との間において、電源電圧を昇圧する昇圧部と、この昇圧部を迂回するようにして電源電圧を直接に負荷へ出力するバイパススイッチとを、電源および負荷に並列に接続し、通常時にはバイパススイッチをオフとし、昇圧部の故障時にはバイパススイッチをオンとする負荷駆動回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この負荷駆動回路においては、昇圧部を構成するスイッチング素子に入力される制御入力電圧およびスイッチング素子から出力される出力電圧などを監視することにより、スイッチング素子の故障および昇圧部のショート故障またはオープン故障を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−29126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る負荷駆動回路においては、昇圧部の故障の有無に加えて、他の部位としてバイパススイッチの異常の有無を的確に検知することが望まれている。
例えば、バイパススイッチがオープン故障している場合には、このバイパススイッチに並列に接続された昇圧部に常に電流が流れることになるが、昇圧部がバイパススイッチと同程度の小さな抵抗値を有する場合には、バイパススイッチが正常にオン動作している状態と同程度の電流が負荷側に流れるだけである。
しかも、この通電において電圧センサの検出誤差範囲内の降圧しか生じない虞があり、バイパススイッチが正常にオン動作している状態と、バイパススイッチがオープン故障している状態とを、適切に判別することができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電源に対して並列に接続された昇圧部およびスイッチ部から成る並列回路においてスイッチ部の故障の有無を的確に検知することが可能な昇圧制御回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る昇圧制御回路は、電源(例えば、実施の形態でのバッテリ11)に対してオン/オフ可能なスイッチ部(例えば、実施の形態での直結スイッチ13)と前記電源から出力される電圧を昇圧可能な昇圧部(例えば、実施の形態での昇圧回路14)とを並列に接続して成る並列回路(例えば、実施の形態での並列回路20)を備える昇圧制御回路であって、前記並列回路の入力側電圧および出力側電圧を検出する電圧検出手段(例えば、実施の形態での第1および第2電圧センサ15,16)と、前記スイッチ部のオン/オフを指示する制御信号を出力して前記スイッチ部を制御する第1制御手段(例えば、実施の形態での制御ECU34)と、前記スイッチ部のオフ時に前記電圧検出手段により検出される電圧よりも高く、かつ該電圧との判別を可能とした所定電圧を生じさせる前記昇圧部の昇圧動作を指示する制御信号を出力して前記昇圧部を制御する第2制御手段(例えば、実施の形態での制御ECU34)と、前記スイッチ部の故障の有無を判定する故障判定手段(例えば、実施の形態での制御ECU34)と、を備え、前記故障判定手段は、前記スイッチ部のオンを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記電圧検出手段により検出された前記入力側電圧および前記出力側電圧の何れか一方が昇圧されている場合、前記スイッチ部はオープン故障であると判定するオープン故障検知モードを有する。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係る昇圧制御回路では、前記昇圧部の抵抗値は、前記スイッチ部のオン時の抵抗値と所定範囲で同等である。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る昇圧制御回路では、前記故障判定手段は、前記スイッチ部のオフを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記電圧検出手段により検出された前記入力側電圧および前記出力側電圧が昇圧されていない場合、前記昇圧部は故障または前記スイッチ部はショート故障であると判定するショート故障検知モードを有し、前記ショート故障検知モードを前記オープン故障検知モードの実行に先立って実行する。
【0009】
さらに、本発明の請求項4に係る昇圧制御回路では、前記昇圧部は、スイッチング素子を備え、該スイッチング素子を第1デューティ比にてオン動作させることで入力電圧を昇圧し、前記オープン故障検知モードにおいて、前記スイッチ部のオンを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記スイッチング素子を前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比でオン動作させる。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に係る昇圧制御回路は、走行駆動源である内燃機関と、該内燃機関の始動を指示するイグニッションスイッチと、車載機器と、該車載機器に電力を供給する前記電源を成すバッテリと、を備える車両に搭載された前記昇圧制御回路であって、前記昇圧部は、前記バッテリから出力される電圧を昇圧して前記車載機器に電力を供給し、前記故障判定手段は、前記イグニッションスイッチがオンからオフに変化したときに前記スイッチ部の故障判定を実行する。
【0011】
さらに、本発明の請求項6に係る昇圧制御回路では、前記車両は、停止条件が成立したことに応じて前記内燃機関を一時的に停止し、復帰条件が成立したことに応じて前記停止した内燃機関を始動するアイドリング停止手段を備え、前記故障判定手段は、前記スイッチ部が故障したと判定した場合には、前記アイドリング停止手段による前記内燃機関の停止を禁止する。
【0012】
さらに、本発明の請求項7に係る昇圧制御回路では、前記故障判定手段は、前記スイッチ部がオープン故障したと判定した場合には、前記アイドリング停止手段による前記内燃機関の停止を許可する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る昇圧制御回路によれば、第1制御手段から出力される制御信号に応じてスイッチ部が正常にオン動作している場合には、スイッチ部と昇圧部とによる閉回路が形成され、昇圧部の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能となる。
これに対して、電圧検出手段により検出された入力側電圧および出力側電圧の何れか一方が昇圧されている場合には、昇圧部により昇圧可能であって、昇圧部の出力側と入力側とが短絡されていない、つまりスイッチ部がオフ状態であると判断することができる。
これにより、第1制御手段から出力される制御信号に応じてスイッチ部が正常にオン動作している状態と、スイッチ部がオープン故障している状態とを、適切に判別することができる。
【0014】
さらに、本発明の請求項2に係る昇圧制御回路によれば、昇圧部の抵抗値をスイッチ部のオン時の抵抗値と同程度になるように低下させることにより、昇圧部に電流が流れる際の降圧を低減させ、必要とされる昇圧能力が増大することを防止し、装置構成に要する費用が増大することを防止することができる。
さらに、昇圧部の抵抗値とスイッチ部のオン時の抵抗値とが同程度であるために、スイッチ部のオン/オフを指示する制御信号の切り換え電圧を測定しただけでは故障がわからない状況であってもオープン故障を検知することができる。
つまり、電流がスイッチ部を通っているか昇圧部を通っているかわからない状況でもオープン故障を検知することができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項3に係る昇圧制御回路によれば、第1制御手段から出力される制御信号に応じてスイッチ部が正常にオフ動作している場合には、昇圧部のみに電流が流れて昇圧可能となる。
このため、電圧検出手段により検出された入力側電圧および出力側電圧が昇圧されていない場合には、昇圧部が故障している、または、スイッチ部がショート故障して昇圧部の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能になっていると判断することができる。
したがって、ショート故障検知モードの実行によって、電圧検出手段により検出された入力側電圧および出力側電圧の何れか一方が昇圧されていれば、昇圧部が正常であると判断することができ、この後にオープン故障検知モードを実行することで、スイッチ部のオープン故障を的確に判別することができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項4に係る昇圧制御回路によれば、例えば通常時において第1デューティ比にて昇圧動作を実行することに対して、オープン故障検知モードにおいて第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で昇圧動作を実行する。
これにより、例えば第1制御手段から出力される制御信号に応じてスイッチ部が正常にオン動作して昇圧部の出力側と入力側とが短絡されていることで昇圧不能となっている場合であっても、スイッチ部と昇圧部とによる閉回路に流れる還流電流に起因して昇圧部に過大な負荷が作用することを防止することができる。
【0017】
さらに、本発明の請求項5に係る昇圧制御回路によれば、車両の運転に要する電力を発電機もしくはバッテリから供給していない状態でスイッチ部の故障判定を実行することにより、判定精度を向上させることができる。
さらに、次回の車両起動に備えて、スイッチ部の故障の有無を的確に把握することができる。
【0018】
さらに、本発明の請求項6に係る昇圧制御回路によれば、例えばイグニッションスイッチのオンに伴い内燃機関を始動させる始動装置の駆動に起因した電装系での電圧低下を補うようにして昇圧部が昇圧動作を行なうように設定されている場合などであっても、アイドリング停止による内燃機関の停止後の再始動時に昇圧部の昇圧動作の実行が指示されることで昇圧部に過大な負荷が作用することを防止することができる。
【0019】
さらに、本発明の請求項7に係る昇圧制御回路によれば、スイッチ部がオープン故障しているだけであれば昇圧部の昇圧動作は実行可能であり、例えばイグニッションスイッチのオンに伴い内燃機関を始動させる始動装置の駆動に起因した電装系での電圧低下を補うようにして昇圧部が昇圧動作を行なうように設定されている場合などであっても、適正な動作が可能である。
これにより、車両の所望の商品性を確保し、燃料消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る昇圧制御回路の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る昇圧制御回路の並列回路の正常時における通電状態の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る昇圧制御回路の並列回路の正常時におけるショート故障検知モードおよびオープン故障検知モードの実行時の通電状態の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る昇圧制御回路の並列回路の故障時の通電状態の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る昇圧制御回路の動作を示すフローチャートである。
【図6】図5に示すショート故障検知の処理を示すフローチャートである。
【図7】図5に示すオープン故障検知の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る昇圧制御回路について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による昇圧制御回路10は、例えば車両1に搭載され、図1に示すように、電源とされるバッテリ11と、バッテリ11と車載機器12との間の接続を断接可能な直結スイッチ13と、バッテリ11から出力される電圧を昇圧可能な昇圧回路14と、2つの第1および第2電圧センサ15,16とを備えて構成されている。
そして、バッテリ11と車載機器12との間に接続された直結スイッチ13に対して昇圧回路14は並列に接続されており、直結スイッチ13および昇圧回路14により並列回路20が形成されている。
そして、第1および第2電圧センサ15,16は、並列回路20の入力側電圧および出力側電圧を検出して、検出結果の信号を出力する。
【0022】
車載機器12は、例えば、車両1の走行駆動源とされる内燃機関31と、イグニッションスイッチ32と、内燃機関始動装置33と、制御ECU34と、アクセサリー機器35と、ナビゲーション装置36と、音響装置37となどを備えて構成されている。
【0023】
直結スイッチ13は、例えば、制御ECU34から出力される制御パルスに応じてオン/オフ制御されるスイッチング素子あるいはFET(Field Effect Transistor)などにより構成されている。
昇圧回路14は、例えば、一端がバッテリ11の正極側端子11aおよび直結スイッチ13の入力側端子13aに接続されたリアクトル41と、このリアクトル41の他端に接続されたスイッチング素子42およびダイオード43と、直結スイッチ13の出力側端子13bに接続されると共に接地されたコンデンサ44とを備えて構成されている。
【0024】
スイッチング素子42は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)であって、ドレインはリアクトル41の他端およびダイオード43に接続され、ソースは接地されると共にコンデンサ44に接続され、制御ECU34からゲートに入力される制御パルスのデューティ比(例えば、オンおよびオフに対するオンの比率)に応じてオン/オフ駆動される。
ダイオード43は、リアクトル41の他端およびスイッチング素子42のドレインから直結スイッチ13の出力側端子13bに向けて順方向となるように接続されている。
【0025】
そして、昇圧回路14の抵抗値は、例えば、直結スイッチ13のオン(導通)時の抵抗値と所定範囲で同等あるいは僅かに大きくなっている。
例えば、昇圧回路14の抵抗値は、車載機器12に印加される電圧(つまり、並列回路20の出力側電圧)が14〜16Vとされている場合において、昇圧回路14の抵抗において0.1〜0.2V程度の降圧が生じる抵抗値などである。
また、直結スイッチ13のオン時の抵抗値は、車載機器12に印加される電圧(つまり並列回路20の出力側電圧)が14〜16Vとされている場合において、直結スイッチ13の抵抗において0.1V程度の降圧が生じる抵抗値などである。
つまり、昇圧信号のオフ(待機)時において、直結スイッチ13のオフ時と直結スイッチのオン時との出力側電圧(あるいは入力側電圧と出力側電圧との差)は略同等である。
【0026】
この昇圧回路14の昇圧時には、先ず、スイッチング素子42がオフ(遮断)状態に設定されることでバッテリ11からの通電によってリアクトル41が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、スイッチング素子42がオン(導通)状態に設定されると、リアクトル41に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてリアクトル41の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
これにより、リアクトル41に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧がバッテリ11の出力電圧に重畳されて、バッテリ11の出力電圧よりも高い昇圧電圧が直結スイッチ13の入力側端子13aと出力側端子13bとの間に印加される。
【0027】
車載機器12の制御ECU34は、他の車載機器12(つまり、内燃機関31、内燃機関始動装置33と、アクセサリー機器35、ナビゲーション装置36、音響装置37など)を制御する。
【0028】
例えば、車両1の運転者によるイグニッションスイッチ32の操作に応じてイグニッションスイッチ32から内燃機関31の始動を指示する信号が出力されると、この信号に応じて内燃機関始動装置33を駆動することによって内燃機関31を始動させたり、あるいは、内燃機関31の運転状態においてイグニッションスイッチ32から内燃機関31の停止を指示する信号が出力されると、この信号に応じて内燃機関31を停止させる。
また、イグニッションスイッチ32から内燃機関31以外の他の車載機器12の起動を指示する信号が出力されると、この信号に応じてアクセサリー機器35およびナビゲーション装置36および音響装置37などを起動させる。
【0029】
さらに、制御ECU34は、直結スイッチ13をオン/オフ制御する制御パルスを出力すると共に、昇圧回路14のスイッチング素子42のオン/オフ駆動を指示することによって昇圧動作の実行または待機を制御する制御パルスを出力する。
【0030】
例えば、制御ECU34は、車両1の通常走行時などにおいて、直結スイッチ13のオン(導通)を指示する制御パルスを出力し、昇圧回路14の待機を指示する制御パルスを出力することで、バッテリ11と車載機器12とを直結させて、バッテリ11の出力電圧を車載機器12に印加する。
このとき、例えば図2(A)に示すように、並列回路20の入力側と出力側との間において、昇圧回路14の抵抗値が直結スイッチ13のオン(導通)時の抵抗値よりも僅かに大きい場合には、直結スイッチ13に電流が流れる。
【0031】
また、例えば、制御ECU34は、車両1の始動時またはアイドリング停止からの復帰時(内燃機関31の再始動時)などにおいて、内燃機関始動装置33の駆動に伴う電圧低下を補うようにして、直結スイッチ13のオフ(遮断)を指示する制御パルスを出力し、昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する制御パルスを出力する。
この場合には、例えば図2(B)に示すように、内燃機関始動装置33の駆動に伴う突入電流による電圧低下が昇圧回路14の昇圧動作によって補われる。
【0032】
また、制御ECU34は、例えば、イグニッションスイッチ32がオンからオフに変化したとき(つまり、運転状態の内燃機関31の停止を指示する信号が出力されたとき)などにおいて、並列回路20の故障判定(例えば、直結スイッチ13のショート故障およびオープン故障の検知など)を実行する。
【0033】
例えば、制御ECU34は、直結スイッチ13のショート故障の検知時(ショート故障検知モードの実行時)において、直結スイッチ13のオフ(遮断)を指示する制御パルスを出力し、昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する制御パルスを出力する。
そして、第1および第2電圧センサ15,16から出力される並列回路20の入力側電圧および出力側電圧の検出結果に基づき、出力側電圧が昇圧されているか否かを判定する。
【0034】
この判定結果において、出力側電圧が昇圧されていれば、昇圧回路14の昇圧動作が正常に実行されたと判断する。
この場合には、例えば図3(A)に示すように、出力側電圧(V2)が入力側電圧(V1)よりも高い所定電圧(例えば、14〜16Vなど)に昇圧される。
【0035】
一方、この判定結果において、出力側電圧が昇圧されていなければ、昇圧回路14が故障している、または、直結スイッチ13がショート故障して昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能になっていると判断する。
なお、この場合には、例えば図4(A)に示すように、少なくとも直結スイッチ13のショート故障または昇圧回路14の故障が発生している。
【0036】
例えば、直結スイッチ13のショート故障時に昇圧回路14が正常であれば、昇圧回路14の昇圧動作の実行が指示されているにもかかわらずに直結スイッチ13に電流が流れることから、並列回路20の出力側電圧として所望の昇圧電圧を確保するために、制御ECU34からスイッチング素子42に入力される制御パルスのデューティ比(例えば、スイッチング素子42のオンおよびオフに対するオンの比率)が制御ECU34により増大させられる虞がある。
【0037】
また、例えば、制御ECU34は、直結スイッチ13のオープン故障の検知時(オープン故障検知モードの実行時)において、直結スイッチ13のオン(導通)を指示する制御パルスを出力し、昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する制御パルスを出力する。
そして、第1および第2電圧センサ15,16から出力される並列回路20の入力側電圧および出力側電圧の検出結果に基づき、出力側電圧が昇圧されているか否かを判定する。
【0038】
この判定結果において、出力側電圧が昇圧されていなければ、直結スイッチ13が正常にオン(導通)して、昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能になっていると判断する。
この場合には、例えば図3(B)に示すように、並列回路20の入力側電圧(V1)および出力側電圧(V1)が同等となり、昇圧回路14に負荷がかかることになるため、低いデューティ比(例えば、スイッチング素子42のオンおよびオフに対するオンの比率)を有する制御パルスによって一定時間だけ昇圧動作の実行が指示されることが好ましい。
【0039】
一方、この判定結果において、出力側電圧が昇圧されていれば、昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されていない、つまり直結スイッチ13がオープン故障して昇圧回路14の昇圧動作が実行可能になっていると判断する。
なお、この場合には、例えば図4(B)に示すように、並列回路20の入力側と出力側との間において、常に昇圧回路14に電流が流れることから昇圧回路14に負荷がかかる虞がある。
また、昇圧回路14の抵抗値が直結スイッチ13のオン(導通)時の抵抗値と同等あるいは僅かに大きいだけであれば、第1および第2電圧センサ15,16の検出誤差範囲内の降圧しか生じない虞がある。
【0040】
なお、制御ECU34は、例えば、ショート故障検知モードをオープン故障検知モードの実行に先立って実行する。
これにより、ショート故障検知モードの実行によって、出力側電圧が昇圧されていれば、昇圧回路14が正常であると判断することができ、この後にオープン故障検知モードを実行することで、直結スイッチ13のオープン故障を的確に判別することができる。
【0041】
また、制御ECU34は、例えば、車両1の始動時またはアイドリング停止からの復帰時(内燃機関31の再始動時)などの通常時において昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する場合には、所定の第1デューティ比(例えば、スイッチング素子42のオンおよびオフに対するオンの比率)を有する制御パルスを出力する。
そして、例えば、オープン故障検知モードの実行時において昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する場合には、所定の第1デューティ比よりも低い第2デューティ比(例えば、スイッチング素子42のオンおよびオフに対するオンの比率)を有する制御パルスを出力する。
【0042】
なお、昇圧回路14の昇圧動作の実行により出力される昇圧電圧(例えば、12Vなど)は、昇圧回路14の待機状態で直結スイッチ13のオフ時に第1および第2電圧センサ15,16により検出される電圧(入力側電圧および出力側電圧、例えば、内燃機関始動装置33の駆動時における7Vなど)よりも高く、かつ該電圧との判別が可能となるように設定されている。
【0043】
また、制御ECU34は、内燃機関31の運転時において所定の停止条件(例えば、運転者のブレーキ操作による所定時間に亘る車両1の停止など)が成立したことに応じて内燃機関31を一時的に停止し、この停止状態において所定の復帰条件(例えば、運転者のブレーキ操作の終了など)が成立したことに応じて停止中の内燃機関31を再始動するアイドリング停止の動作を制御する。
そして、制御ECU34は、例えば、並列回路20の直結スイッチ13が故障したと判定した場合には、アイドリング停止による内燃機関31の停止を禁止する。ただし、制御ECU34は、直結スイッチ13がオープン故障したと判定した場合には、アイドリング停止による内燃機関31の停止を許可する。
【0044】
本実施の形態による昇圧制御回路10は上記構成を備えており、次に、この昇圧制御回路10の動作について説明する。
【0045】
先ず、例えば図5に示すステップS01においては、イグニッションスイッチ32がオンからオフに切り替えられたか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、後述するショート故障検知の処理を実行する。
【0046】
次に、ステップS03においては、直結スイッチ13のショート故障または昇圧回路14の故障が生じているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、アイドリング停止による内燃機関31の停止を禁止して、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS05に進む。
そして、ステップS05においては、後述するオープン故障検知の処理を実行する。
【0047】
次に、ステップS06においては、直結スイッチ13のオープン故障が生じているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、アイドリング停止による内燃機関31の停止を許可して、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS08に進み、このステップS08においては、直結スイッチ13および昇圧回路14は正常であると判断して、エンドに進む。
【0048】
以下に、上述したステップS02でのショート故障検知の処理について説明する。
先ず、例えば図6に示すステップS11においては、直結スイッチ13のオフ(遮断)を指示する。
次に、ステップS12においては、昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する。
次に、ステップS13においては、第1および第2電圧センサ15,16から出力される並列回路20の入力側電圧および出力側電圧の検出結果を取得する。
【0049】
次に、ステップS14においては、出力側電圧が昇圧されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進み、このステップS15においては、直結スイッチ13のショート故障は無く、昇圧回路14は正常であると判断して、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS16に進み、このステップS16においては、直結スイッチ13はショート故障または昇圧回路14は故障していると判断して、リターンに進む。
【0050】
以下に、上述したステップS05でのオープン故障検知の処理について説明する。
先ず、例えば図7に示すステップS21においては、直結スイッチ13のオン(導通)を指示する。
次に、ステップS22においては、昇圧回路14の昇圧動作の実行を指示する。
次に、ステップS23においては、第1および第2電圧センサ15,16から出力される並列回路20の入力側電圧および出力側電圧の検出結果を取得する。
【0051】
次に、ステップS24においては、出力側電圧が昇圧されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS25に進み、このステップS25においては、直結スイッチ13はオープン故障していると判断して、リターンに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS26に進み、このステップS26においては、直結スイッチ13はオープン故障していないと判断して、リターンに進む。
【0052】
上述したように、本実施の形態による昇圧制御回路10によれば、制御ECU34から出力される制御パルスに応じて直結スイッチ13が正常にオン動作している場合には、直結スイッチ13と昇圧回路14とによる閉回路が形成され、昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能となる。
これに対して、第1および第2電圧センサ15,16により検出された入力側電圧および出力側電圧に基づき、出力側電圧が昇圧されている場合には、昇圧回路14による昇圧動作の実行が可能であって、昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されていない、つまり直結スイッチ13がオフ状態であると判断することができる。
これにより、制御ECU34から出力される制御パルスに応じて直結スイッチ13が正常にオン動作している状態と、直結スイッチ13がオープン故障している状態とを、適切に判別することができる。
【0053】
さらに、昇圧回路14の抵抗値を直結スイッチ13のオン時の抵抗値と同程度になるように設定する(例えば、低下させる)ことにより、昇圧回路14に電流が流れる際の降圧を低減させ、所望の昇圧電圧を確保するために必要とされる昇圧能力が増大することを防止し、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
さらに、昇圧回路14の抵抗値と直結スイッチ13のオン時の抵抗値とが同程度であるために、直結スイッチ13のオン/オフを指示する制御信号の切り換え電圧を測定しただけでは故障がわからない状況であってもオープン故障を検知することができる。
つまり、電流が直結スイッチ13を通っているか昇圧回路14を通っているかわからない状況でもオープン故障を検知することができる。
【0054】
さらに、制御ECU34から出力される制御パルスに応じて直結スイッチ13が正常にオフ動作している場合には、昇圧回路14のみに電流が流れて昇圧可能となる。
このため、第1および第2電圧センサ15,16により検出された入力側電圧および出力側電圧に基づき、出力側電圧が昇圧されていない場合には、昇圧回路14が故障している、または、直結スイッチ13がショート故障して昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されることで昇圧不能になっていると判断することができる。
したがって、ショート故障検知モードの実行によって、出力側電圧が昇圧されていれば、昇圧回路14が正常であると判断することができ、この後にオープン故障検知モードを実行することで、直結スイッチ13のオープン故障を的確に判別することができる。
【0055】
さらに、昇圧回路14は、例えば通常時において第1デューティ比にて昇圧動作を実行することに対して、オープン故障検知モードにおいて第1デューティ比よりも低い第2デューティ比で昇圧動作を実行する。
これにより、例えば制御ECU34から出力される制御パルスに応じて直結スイッチ13が正常にオン動作して昇圧回路14の出力側と入力側とが短絡されていることで昇圧不能となっている場合であっても、直結スイッチ13と昇圧回路14とによる閉回路に流れる還流電流に起因して昇圧回路14に過大な負荷が作用することを防止することができる。
【0056】
さらに、イグニッションスイッチ32がオンからオフに切り替えられて車両1の運転に要する電力をバッテリ11から供給していない状態で直結スイッチ13の故障判定を実行することにより、判定精度を向上させることができる。
さらに、次回の車両1の起動に備えて、直結スイッチ13の故障の有無を的確に把握することができる。
【0057】
さらに、直結スイッチ13の故障時にアイドリング停止による内燃機関31の停止を禁止することにより、例えば内燃機関始動装置33の駆動に起因した電装系での電圧低下を補うようにして昇圧回路14が昇圧動作を行なうように設定されている場合などであっても、アイドリング停止による内燃機関31の停止後の再始動時に昇圧回路14に過大な負荷が作用することを防止することができる。
【0058】
さらに、直結スイッチ13がオープン故障しているだけであれば昇圧回路14の昇圧動作は実行可能であり、例えばイグニッションスイッチ32のオンに伴い内燃機関31を始動させる内燃機関始動装置33の駆動に起因した電装系での電圧低下を補うようにして昇圧回路14が昇圧動作を行なうように設定されている場合などであっても、適正な動作が可能である、
これにより、車両1の所望の商品性を確保し、燃料消費を削減することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態においては、図5に示すステップS01〜08のように、ショート故障検知モードの実行後にオープン故障検知モードを実行するとしたが、これに限定されず、例えば、ショート故障検知モードまたはオープン故障検知モードのみを実行してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 昇圧制御回路
11 バッテリ(電源)
13 直結スイッチ(スイッチ部)
14 昇圧回路(昇圧部)
15 第1電圧センサ(電圧検出手段)
16 第2電圧センサ(電圧検出手段)
20 並列回路
34 制御ECU(第1制御手段、第2制御手段、故障判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に対してオン/オフ可能なスイッチ部と前記電源から出力される電圧を昇圧可能な昇圧部とを並列に接続して成る並列回路を備える昇圧制御回路であって、
前記並列回路の入力側電圧および出力側電圧を検出する電圧検出手段と、
前記スイッチ部のオン/オフを指示する制御信号を出力して前記スイッチ部を制御する第1制御手段と、
前記スイッチ部のオフ時に前記電圧検出手段により検出される電圧よりも高く、かつ該電圧との判別を可能とした所定電圧を生じさせる前記昇圧部の昇圧動作を指示する制御信号を出力して前記昇圧部を制御する第2制御手段と、
前記スイッチ部の故障の有無を判定する故障判定手段と、を備え、
前記故障判定手段は、前記スイッチ部のオンを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記電圧検出手段により検出された前記入力側電圧および前記出力側電圧の何れか一方が昇圧されている場合、前記スイッチ部はオープン故障であると判定するオープン故障検知モードを有することを特徴とする昇圧制御回路。
【請求項2】
前記昇圧部の抵抗値は、前記スイッチ部のオン時の抵抗値と所定範囲で同等であることを特徴とする請求項1に記載の昇圧制御回路。
【請求項3】
前記故障判定手段は、前記スイッチ部のオフを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記電圧検出手段により検出された前記入力側電圧および前記出力側電圧が昇圧されていない場合、前記昇圧部は故障または前記スイッチ部はショート故障であると判定するショート故障検知モードを有し、
前記ショート故障検知モードを前記オープン故障検知モードの実行に先立って実行することを特徴とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇圧制御回路。
【請求項4】
前記昇圧部は、
スイッチング素子を備え、該スイッチング素子を第1デューティ比にてオン動作させることで入力電圧を昇圧し、
前記オープン故障検知モードにおいて、前記スイッチ部のオンを指示する前記制御信号が前記第1制御手段から出力され、かつ前記昇圧部の昇圧動作を指示する前記制御信号が前記第2制御手段から出力されたときに、前記スイッチング素子を前記第1デューティ比よりも低い第2デューティ比でオン動作させることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の昇圧制御回路。
【請求項5】
走行駆動源である内燃機関と、該内燃機関の始動を指示するイグニッションスイッチと、車載機器と、該車載機器に電力を供給する前記電源を成すバッテリと、を備える車両に搭載された前記昇圧制御回路であって、
前記昇圧部は、前記バッテリから出力される電圧を昇圧して前記車載機器に電力を供給し、
前記故障判定手段は、前記イグニッションスイッチがオンからオフに変化したときに前記スイッチ部の故障判定を実行することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の昇圧制御回路。
【請求項6】
前記車両は、停止条件が成立したことに応じて前記内燃機関を一時的に停止し、復帰条件が成立したことに応じて前記停止した内燃機関を始動するアイドリング停止手段を備え、
前記故障判定手段は、前記スイッチ部が故障したと判定した場合には、前記アイドリング停止手段による前記内燃機関の停止を禁止することを特徴とする請求項5に記載の昇圧制御回路。
【請求項7】
前記故障判定手段は、前記スイッチ部がオープン故障したと判定した場合には、前記アイドリング停止手段による前記内燃機関の停止を許可することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の昇圧制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38849(P2013−38849A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171002(P2011−171002)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】