説明

昇降止水装置

【課題】 本発明は緊急又は非常出水に際し、他所から止水板3を人力で搬入する必要がなく、その時間と労力を要せず、速やかに地下構造物の入口8を止水し、遠隔制御可能な非常用止水装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 1組の直立平行面1,1と対向方向直立突出部2,2とによって止水板3の入口両壁受部4,4を形成し、止水板3の両端部を該受部4,4に沿って昇降摺動自在に懸垂支持してなり、上記直立平行面1,1にそれぞれ、その上方から床面5に至る案内ガイド6,6を設け、上記両案内ガイド6,6の上部6aが太く下部が細く形成され、中間部にテーパガイド面6’,6’を介在し、止水板3の両端部に上記案内ガイド6,6の上下部に昇降摺動自在に係合する2股部7,7を設けてなり、上記下部6bにおいて止水板3を上記直立突出部2,2の正面及び床面5に圧接止水する装置24を備えてなる昇降止水装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下道、地下駐車場その他の地下設備の入口に洪水等に際し、水の浸入を防止する昇降形止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の入口両側に止水板の左右両端部の止水面を設け、該止水面に止水板の両端部背面又は両端部正面を圧着し、かつ止水板の下面を床面に圧着して地下入口を閉鎖し、水の流入を防止した(例えば特許文献1)。
【0003】
上記止水板による止水装置では金属製止水板を地下構造物の入口部に他所から搬入する必要があり、止水板を収納におく場所を要し、緊急に際し入口部に搬入するため緊急洪水対応する時間を要した。
【0004】
【特許文献1】特許第3458077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は緊急又は非常出水に際し、他所から止水板を人力で搬入する必要がなく、その時間と労力を要せず、速やかに地下構造物の入口を止水し、遠隔制御可能な非常用止水装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、
第1に1組の直立平行面と対向方向直立突出部とによって止水板の入口両壁受部を形成し、止水板の両端部を該受部に沿って昇降摺動自在に懸垂支持してなり、上記直立平行面にそれぞれ、その上方から床面に至る案内ガイドを設け、上記両案内ガイドの上部が太く下部が細く形成され、中間部にテーパガイド面を介在し、止水板の両端部に上記案内ガイドの上下部に昇降摺動自在に係合する2股部を設けてなり、上記下部において止水板を上記直立突出部の正面及び床面に圧接止水する装置を備えてなる昇降止水装置、
第2に止水板の上記下端面に代り下端部背面を、上記床面に代り横溝の内部正面に圧接止水する上記第1発明記載の昇降止水装置、
第3に止水板の左右両端部背面に代り左右両端部正面に、直立突出部の正面に代り直立突出部の背面とする上記第1又は第2発明記載の昇降止水装置、
第4に上記圧接止水する装置が止水板に枢支したハンドルの先端部で上記直立平行面側に突設又は凹設したテーパ面を押圧し、止水板の両端部背面又は正面を、上記直立突出部の正面又は背面に圧接止水するものである上記第1〜第3発明のいずれかに記載の昇降止水装置。
によって構成される。
【0007】
従って通常、止水板の2股部を案内ガイドに係合させて同ガイドの上部に引上げて、その状態を保持し、同ガイドの下部の入口を開いて人や自動車を出入させることができる。
【0008】
洪水による緊急出水に際して、上記止水板を下降させると、2股部も案内ガイドに沿って太い上部からテーパガイド面を経て細い下部に下降し、該2股部は細い下部の前後方向(入口の内外方向)に摺動可能となり、止水板の両端部正面又は背面は直立突出部の背面又は正面に圧接可能となる。そして止水板の下端面は床面に自重によって圧接し、又は床面に形成した横溝の内部正面又は内部背面に圧接させることができる。
【0009】
上記圧接はハンドルを把持して上又は下から横方向に回動させることによってハンドルの先端部で、上記直立突出部の内側又は外側の直立平行面側に突設又は凹設したテーパ面を押圧し、その押圧力又は押圧反力によって止水板の両端部又は下端部の背面又は正面を上記突出部の正面または背面を圧接止水することができる。
【0010】
又止水板の下端面はその自重によって上記入り口両壁受部間の床面または横溝の底面に圧接止水する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したので地下設備への入口両壁受部及び床面または横溝底面に、上方空間に常時支持している止水板を速やかに案内下降して上記受部及び床面側に圧接止水し、洪水による緊急出水に迅速に対応し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
マンション等の高層建築物の1階部分に駐車室の出入り口8を開口し、出入口8の高さは上段駐車台(図示していない)の上方から中段駐車台(出入口床水準駐車台、図示していない)即ち出入口8の床面5までで、横幅は上中下段駐車台の横幅が等しい。
【0013】
下段駐車台は出入口8の床面水準の下方(地下)に設けられ、各駐車台は上中下段に昇降するようになっている。
【0014】
上記出入口8には両側壁9,9間に金網製昇降ゲートが既に設けられ、その外側(手前)に止水板3を昇降摺動自在に懸垂支持するものである。
【0015】
両側壁9,9には1組の対向直立平行面1,1と対向方向直立突出部2,2とを一体に設け、これにより止水板3の入口両壁面受部4,4を形成する。
【0016】
止水板3はその両端部3’,3’を上記受部4,4に沿って、その上方から床面5までワイヤーロープ10,10によって牽引上昇及び弛緩下降させ、下降位置では止水板3の下端面3”に設けた止水ゴム11(図5)を床面5に自重によって圧接止水する。
【0017】
図6に示すように上記受部4,4間の床面5に凹設した横溝5aでは底面5’に上記止水ゴム11が止水板3の自重で圧接止水する。上記横溝5aはステンレス形鋼板レールによって形成され底面5’と内外床面5との間の正面及び背面を傾斜面5”とする。
【0018】
ワイヤーロープ10,10は止水板3の上端に接続し、上記建築物の出入口8の天井側の両側水平軸12,12に枢支した上方の滑車13,13を迂回して垂下し、垂下端に重錐14,14を懸垂する。重錐14,14の合計重量は止水板3の重量よりも小さい。
【0019】
上記水平軸12,12にはそれぞれ従動スプロケット15,15を設け、該水平軸12,12の中央部には上記建築物側に正逆駆動ブレーキモータ16を設け、その出力軸17に2個の駆動スプロケット18,18を設け、駆動及び従動スプロケット15,18間に無端チェン19,19を掛回し、
上記ブレーキモータ16の正転によって滑車13,13を同一方向に回動させてワイヤロープ10,10の弛緩によって止水板3を図1実線位置(自重による床面5又は底面5’への圧接止水位置)に下降させることができ、上記モータ16の逆転によってワイヤロープ10,10は滑車13,13の左方回動に伴い重錐14,14が下降して緊張上昇し、止水板を図1(イ)図実線位置から仮想線位置に上昇させることができる。
【0020】
出入口8の床面5又は上記底面5’から両側壁9,9に沿って互に対向する1組のステンレス鋼製の直立平行面1,1が設けられ、該平行面1,1は上記両側壁9,9そのものであり、又は両側壁9,9に凸設又は凹設されたものであっても差支えない。
【0021】
上記平行面1,1は上記床面5又は底面5’から天井5bへの中程付近まで延長され、これらの平行面1,1には対向方向に向かう直立突出部2,2を上記平行面1,1と一体的に設け、これによって上記止水板3の受部4,4とする。即ち該受部4,4は入口両側壁9,9設けられた止水板3の両端部3’,3’の止水用受部4,4である。
【0022】
上記直立平行面1,1にはそれぞれその上方天井5b付近から床面5又は底面5’に到る横断面半円弧形直立案内ガイド6をボルト等によって一体的に設け、
上記ガイド6の上記受部4,4より高い部分(上部6a)を太く(半径大に)、上記受部4,4の内部(下部6b)を細く(半径小に)形成し、上記受部4,4の上端を境に下部6bから上部6aに到る中間部にテーパガイド面6’を介在させる。
【0023】
そこで上記止水板3の左右両端部3’,3’に上記案内ガイド6,6の上部6a,6aに昇降摺動自在に係合又は嵌合する半円弧形2股部7,7を突設し、止水板3の上記昇降動作に際し、上記上部6a,6aからテーパガイド面6’,6’を経て下部6b,6bに又は下部6b,6bからテーパガイド面6’,6’を経て上部6a,6aに上記2股部7,7を拘束して昇降させるものである。
【0024】
上記止水板3及び2股部7,7が下部6b,6bに下降すると2股部7,7の凹部曲率が大で下部6b,6bの凸部曲率が小であるため2股部7,7は図4(ロ)図に示すように上記直立平行面1,1に沿って出入口8の内側又は外側に摺動する余裕ができ、該平行面1,1の内側又は外側に一体的に形成されている対向方向直立突出部2,2の正面2’又は背面2”に圧接させることができる。
【0025】
図4(ロ)図では止水板3の両端部3’,3’の正面側に枢支した直立ハンドル20を把持して横向に回動させることによって外側(手前)の直立突出部2の背面(内面2”)に設けたテーパ面21に沿って上記ハンドル20の他端を出入口8の内側に押圧し、それに伴って止水板3の両端部3’,3’の背面を直立突出部2の正面2’に圧接し、止水ゴム22を介在させて止水することができる。
【0026】
その止水状態では止水板3の下端面3”を床面5又は底面5’に止水ゴム11で圧接止水し、かつ図6に示すように該止水ゴム11を床面5と底面5”との間の傾斜面5”にも圧接止水することができ、圧接止水装置24とすることができる。
【実施例1】
【0027】
上記滑車13,13に代り図2に示すように巻取ドラム23,23を用い、ワイヤロープ10,10を該ドラム23,23に巻取って止水板3を上昇させ、巻戻して下降させ、止水板3の下降後ワイヤロープ10,10を弛めて床面5または底面5’に止水板3の自重を掛けることができる。
【0028】
案内ガイド6、及び2股部7は必ずしも横断面半円弧形ではなく、横断面方形、三角形等であれば足りる。
【0029】
又上記圧接止水装置24は必ずしも上記クレセントではなく手動によるコッター等であっても差支えない。
【0030】
止水板3の横幅が大である場合には図5、図6に示すように止水板3の中央部背面に支柱25を当接し、その下端を床面5に凹設した掛り穴26に挿入し、支柱25の上端に止水板3の上端に引掛ける係合金具27によって支柱25を支持し、かつ支柱25の背面に出入口8の内側床面5に支持されるステイ28を設けるものである。
又止水板3を上昇させた位置に留めるため、上記ブレーキモータ16のブレーキを動作し、かつ上昇止水板3をその位置に留める手動ストッパを設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明では高さの高い出入口を有する地上から地下に至る高層建築物等の既設の駐車場において既設の昇降開閉ゲートの正面側(外側)に並行に上記止水板を昇降自在に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(イ)図は本発明の昇降止水装置の正面、(ロ)図は昇降駆動部分の拡大平面図である。
【図2】図1(イ)図の他の実施例の正面図である。
【図3】(イ)図は案内ガイド部分の拡大正面図、(ロ)図は案内ガイドの拡大斜視図である。
【図4】(イ)図は案内ガイドの上部と2股部との関係平面図、(ロ)図は案内ガイドの下部と2股部と関係平面図である。
【図5】止水板の中央部に設けた支柱の側面図である。
【図6】図5の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 直立平行面
2 対向方向直立突出部
3 止水板
3’ 両端部
3” 下端面
4 入口両壁受部
5 床面
5’ 底面
6 案内ガイド
6a 上部
6b 下部
6’ テーパガイド面
7 2股部
24 圧接止水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の直立平行面と対向方向直立突出部とによって止水板の入口両壁受部を形成し、止水板の両端部を該受部に沿って昇降摺動自在に懸垂支持してなり、
上記直立平行面にそれぞれ、その上方から床面に至る案内ガイドを設け、
上記両案内ガイドの上部が太く下部が細く形成され、中間部にテーパガイド面を介在し、
止水板の両端部に上記案内ガイドの上下部に昇降摺動自在に係合する2股部を設けてなり、
上記下部において止水板を上記直立突出部の正面及び床面に圧接止水する装置を備えてなる昇降止水装置。
【請求項2】
止水板の上記下端面に代り下端部背面を、上記床面に代り横溝の内部正面に圧接止水する請求項1記載の昇降止水装置。
【請求項3】
止水板の左右両端部背面に代り左右両端部正面に、直立突出部の正面に代り直立突出部の背面とする請求項1又は2記載の昇降止水装置。
【請求項4】
上記圧接止水する装置が止水板に枢支したハンドルの先端部で上記直立平行面側に突設又は凹設したテーパ面を押圧し、止水板の両端部背面又は正面を、上記直立突出部の正面又は背面に圧接止水するものである請求項1〜3のいずれかに記載の昇降止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9305(P2006−9305A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184956(P2004−184956)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(599139062)グローバルアーク株式会社 (4)
【Fターム(参考)】