説明

易剥離性塗料、その塗装方法及び塗装表面の更新方法

【課題】容易に剥がせる塗装表面を形成できる易剥離性塗料とその塗装方法、塗装面が汚れ、変色したとき、塗装表面を簡単に更新することができる方法。
【解決手段】水性樹脂エマルション100重量部(固形分換算)に対し、フィラー300〜700重量部、ワックス系エマルション50〜100重量部及びシリコン樹脂3〜20重量部を含有してなる下塗り塗料と、必須成分として水性樹脂エマルション100重量部に対し、フィラー50〜120重量部を含有し、ワックス系エマルション及びシリコン樹脂を実質的に含有しない上塗り塗料よりなる易剥離性塗料。基体に下塗り塗料を塗布した後、上塗り塗料を塗布して、容易に剥がせる表面を形成する塗装方法。易剥離性塗料で形成された塗装体の上塗り塗料成分皮膜を剥がして下塗り塗料成分皮膜を露出させ、これを表面とする塗装表面の更新方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易剥離性塗料、それを用いた容易に剥がせる塗装表面を形成することができる塗装方法及び塗装表面の更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物、家具、備品等の基体を塗装した表面に衝撃で傷がついたり凹みが生じたりしたときは、補修用塗料や補修用パテを用いて比較的簡単に補修できる。しかし、長年の使用により塗装表面の変色、汚れ、浮き上がりなどが生じて見苦しくなったときは、塗り替えるしかなかった。この塗り替えには、元の塗膜を剥がして下地を出すか、あるいは表面をサンダーなどで削って粗面化するなど大掛かりな養生が必要であった。
【0003】
そのため、建物、家具、備品等の基体を塗装する際に易剥離性塗料を用いて塗装しておけば、塗り替え時に塗装表面を簡単に剥がすことができ、大掛かりな養生は必要なくなると考えられる。
【0004】
従来の易剥離性塗料としては、水性樹脂エマルション型易剥離性塗料や有機溶剤型易剥離性塗料等が知られている。水性樹脂エマルション型易剥離性塗料としては、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂エマルション、アクリル系樹脂エマルション等の水性樹脂エマルションを造膜成分とし、炭酸カルシウム、二酸化チタン等のフィラー及びシリコンエマルション、パラフィンワックスエマルション等の剥離剤を配合したものがあげられる。また、有機溶剤型易剥離性塗料としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の熱可塑性樹脂を造膜成分とし、これにフィラー及び剥離剤等を配合し、ケトン系、テトラヒドロフラン系等の有機溶剤に溶解したものがあげられる(特許文献1)。さらに、ポリビニルブチラール樹脂を造膜成分とし、これに可塑剤、剥離剤などを配合し、低級アルコール等の有機溶剤に溶解したものがあげられる(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平5-171068号公報
【特許文献2】特開昭52−139146号公報
【0006】
しかしながら、従来の易剥離性塗料は、自動車、航空機等やそれらの部品である金属製品、塗装又は磨き金属板や、金属、ガラス、各種プラスチック等の成形物等の物体の取扱、輸送、保管、貯蔵等において、これらの基体表面を一時的に保護するために用いられるので、塗膜の耐久性や強度については考慮する必要がないものであった。また、有機溶剤型易剥離性塗料は、ケトン系、テトラヒドロフラン系、アルコール系等の有機溶剤を配合しているため、家庭内での使用は火災や健康被害のおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、剥離性が優れた塗膜を形成できる下塗り塗料と、強度が優れた塗膜を形成できる上塗り塗料よりなる易剥離性塗料を提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、上記易剥離性塗料を用い、容易に剥がせる塗装表面を形成することができる塗装方法を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の目的は、塗装面が汚れたり変色したりしたとき、簡単に塗装表面を更新することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、基体に塗布する下塗り塗料に剥離成分を含有させるとともに、上塗り塗料の皮膜強度を高めることにより、上記課題を解決できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、必須成分として水性樹脂エマルション100重量部(固形分換算。以下同じ)に対し、フィラー300〜700重量部、ワックス系エマルション50〜100重量部及びシリコン樹脂3〜20重量部を含有してなる下塗り塗料と、必須成分として水性樹脂エマルション100重量部に対し、フィラー50〜120重量部を含有し、ワックス系エマルション及びシリコン樹脂を実質的に含有しない上塗り塗料よりなることを特徴とする易剥離性塗料である。
【0012】
また、本発明は、前記下塗り塗料を基体表面に塗布した後、前記上塗り塗料を塗布し、基体表面上に下塗り塗料成分皮膜と上塗り塗料成分皮膜を積層形成することを特徴とする塗装方法である。
【0013】
さらに、本発明は、前記の塗装方法で形成された塗装表面の更新方法であって、上塗り塗料成分皮膜を剥がして下塗り塗料成分皮膜を露出させることを特徴とする塗装表面の更新方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の易剥離性塗料は、容易に剥がせる塗装表面を形成するのに好適であり、有機溶剤を含有しないので安全性に優れしかも環境汚染を招くこともない。また、本発明の塗装方法は、基体上に下塗り塗料を塗装し、その上に上塗り塗料を塗装するだけで、容易に剥がせる塗装表面を形成することができる。そして、この塗装面が汚れたり変色したりしたとき、上塗り塗料成分皮膜を剥がして下塗り塗料成分皮膜を露出させるだけで、簡単に塗装表面を更新することができ、従来の大がかりな養生は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の易剥離性塗料は、剥離性を高めた下塗り塗料(以下、下塗り塗料という)と、皮膜強度を高めた上塗り塗料(以下、上塗り塗料という)をセットにしたものである。
【0016】
下塗り塗料には、必須成分として水性樹脂エマルション、フィラー、ワックス系エマルション及びシリコン樹脂を配合する。水性樹脂エマルションとしては、水性塗料の造膜成分として用いられるものであればよいが、(メタ)アクリル系、酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系の水性樹脂エマルション少なくとも1種を用いることがよい。(メタ)アクリル系としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類や、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸ブチル等のメタアクリル酸エステル類の1種又は2種以上の重合物があげられる。これらのアクリル系重合物は、必要に応じて、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の少なくとも1種との共重合物であってもよい。これらのうち、アクリル酸エステル重合物、スチレン−アクリル酸エステル共重合物、酢酸ビニル−エチレン共重合物が好ましい。
【0017】
また、下塗り塗料には、必須成分として水性樹脂エマルションに、フィラーを配合する。フィラーとしては、性能向上、コスト低減等の目的で添加される体質顔料であれば特に制限はなく、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、タルク、クレー、アルミナ、二酸化チタン等の1種又は2種以上があげられる。これらのフィラーのうち、安価な炭酸カルシウムをベースとし、自己消火性がある水酸化アルミニウムと、遮蔽性がよい二酸化チタンを組み合わせて用いることが好ましい。
【0018】
フィラーの配合量は、水性樹脂エマルション100重量部(固形分換算。以下同じ)に対し、300〜700重量部、好ましくは400〜600重量部である。フィラーの配合量が300重量部より少ないと、隠蔽が悪くなって下地の色が透けてくる不具合を生じる他、上塗り塗料との密着が悪くなる。一方、700重量部を超えると、上塗り塗料との密着がよくなりすぎて、上塗り塗料面を剥がして更新する際に下塗り塗料のフィラーが上塗り塗料に付着し、更新した下塗り塗料面が汚く不均一になる。
【0019】
さらに、下塗り塗料には、必須成分としてワックス系エマルションを配合する。このワックス系エマルションは、下記のシリコン樹脂とともに剥離性を付与するために配合する成分である。ワックス系エマルションとして、例えば石油系ワックスエマルション、ポリエチレン系ワックスエマルション及びポリプロピレン系ワックスエマルション等の1種又は2種以上があげられる。石油系ワックスエマルションとして、例えばパラフィンワックスエマルション、マイクロクリスタリンワックスエマルション及びペトロラタムワックスエマルションなどがあげられるが、特にパラフィンワックスエマルションが好ましい。なお、ワックス系エマルションを配合する代わりに、水性樹脂エマルションに微粒状ワックスを配合し、撹拌分散することでもよい。
【0020】
ワックス系エマルションの配合量は、水性樹脂エマルション100重量部に対し、50〜100重量部、好ましくは60〜90重量部である。ワックス系エマルションの配合量が50重量部より少ないと上塗り塗料の剥離性が低下し、100重量部を超えても剥離性に大差なく製造コストが高くなる。
【0021】
さらにまた、下塗り塗料には、必須成分としてシリコン樹脂を配合する。下塗り塗料に剥離性を付与するためには、ワックス系エマルションに加えてシリコン樹脂を配合することが必要である。シリコン樹脂としては、塗料中に乳化状態で存在できるものが好ましく、例えばジメチルシリコン、メチルフェニルシリコン、メチルハイドロジェンシリコン、アミノ変性シリコン、エポキシ変性シリコン、カルボキシル変性シリコン、カルビノール変性シリコン、メタクリル変性シリコン、メルカプト変性シリコン、環状ジメチルシリコン、ポリエーテル変性シリコン、メチルスチリル変性シリコン、アルキル変性シリコン、アルコキシ変性シリコン、フッ素変性シリコン、高級脂肪酸含有シリコン等の1種又は2種以上があげられる。
【0022】
シリコン樹脂の配合量は、水性樹脂エマルション100重量部に対し、3〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。シリコン樹脂の配合量が3重量部より少ないとワックス系エマルションを多量に配合しても剥離性は改善されず、更新の際に上塗り塗料層を剥がすことができなくなり、20重量部を超えると製造コストが高くなる。
【0023】
下塗り塗料には、必要に応じて、例えば顔料、防錆剤、殺菌剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤及びpH調整剤等の添加剤の1種又は2種以上を配合することができる。
【0024】
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれでもよい。有機顔料としては、例えばファストエロー、ジアゾエロー、ジアゾオレンジおよびナフトールレッド等の不溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、ファナールレーキ、タンニンレーキ、カタノール等の染色レーキ、イソインドリノエローグリーニッシュやイソインドリノエローレディシュ等のイソインドリノ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレンスーカットやペリレンマルーン等のペリレン系顔料等の1種又は2種以上があげられる。また、無機顔料としては、カーボンブラック、鉛白、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、酸化コバルト、二酸化チタン、チタニウムイエロー、ストロンチウムクロメート、モリブテン赤、モリブテンホワイト、鉄黒、リトボン、エメラルドグリーン、ギネー緑、コバルト青等の1種又は2種以上があげられる。
【0025】
防錆剤としては、基体の腐食を抑制するものであればよく、例えば鉛丹、白鉛、亜鉛化鉛、塩基性硫酸白鉛、塩基性クロム酸鉛、鉛酸カルシウム、クロム酸亜鉛、鉛酸シアナミド、亜粉末、ジクロロメート、バリウムクロメート、亜硝酸ソーダ、ジシクロヘキシルアンモニウムニトリル、シクロヘキシルアミンカーボネート、防錆油等の1種又は2種以上があげられる。
【0026】
下塗り塗料は、前記必須成分と必要に応じて配合される任意成分を、塗料製造に通常使用されている装置、例えばボールミキサー、ホモジナイザー又は羽付き攪拌機等の混合機を用いて、混合・分散することによって製造することができる。このようにして製造した下塗り塗料は、そのままあるいは適宜希釈して用いてもよい。製品の荷姿はペール缶詰めがよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
次に、上塗り塗料は、必須成分として水性樹脂エマルション及びフィラーを配合するが、下塗り塗料とは異なり、ワックス系エマルション及びシリコン樹脂を配合しない。上塗り塗料にワックス系エマルション及びシリコン樹脂を配合すると、上塗り塗料の乗りが悪く、塗布後自然に剥がれてしまうからである。そして、上塗り塗料の膜強度が低いと、塗装表面を更新するためこれを剥がす際に切れてしまうことが判明した。
【0028】
上塗り塗料に用いる水性樹脂エマルションとしては、下塗り塗料と同様な水性樹脂エマルションでよく、これらのうち、アクリル酸エステル重合物、スチレン−アクリル酸エステル共重合物、酢酸ビニル−エチレン共重合物の1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
フィラーも下塗り塗料と同様なフィラーでよいが、フィラーの配合量は、水性樹脂エマルション100重量部(固形分換算)に対し、50〜120重量部、好ましくは60〜100重量部である。フィラーの配合量が60重量部より少ないと下塗り塗料面と接着が十分でなくなり、120重量部を超えると膜強度が低いため、剥がす際に切れるおそれがある。
【0030】
上塗り塗料は、下塗り塗料と同様に、必要に応じて、例えば顔料、防錆剤、殺菌剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤及びpH調整剤等の添加剤の1種又は2種以上を配合することができ、その製造方法も下塗り塗料と同様でよい。
【0031】
本発明の易剥離性塗料は、前記の下塗り塗料と上記の上塗り塗料をセットにしたものである。両者のうち一方が異なるものであると剥がすことができなくなったり、塗装後に簡単に剥がれてしまったりする。
【0032】
本発明の易剥離性塗料の塗装方法は、まず下塗り塗料をローラー、ハケ、スプレーなどを用いて1〜2回基体表面に塗布した後、その上に上塗り塗料を同様に塗布する。両者とも水性塗料であるので、塗布後十分乾燥硬化させる必要があり、夏季で1〜2日程度、冬季で2〜3日程度放置することがよい。
【0033】
本発明の塗装方法で塗装された基体は、その表面上に下塗り塗料成分皮膜が形成され、その上に上塗り塗料成分皮膜が積層形成されている。この上塗り塗料成分皮膜は、通常の使用では自然に剥がれることはないが、その端を持って引き上げると容易に剥がすことができる。また、上塗り塗料成分皮膜の耐久性も通常の水性塗料と同等程度である。
【0034】
本発明の易剥離性塗料を塗装した表面が長期間の使用により汚れたり変色したりしたとき、表面の上塗り塗料成分皮膜を人手やヘラで簡単に剥がすことができる。これによって、汚れたり変色したりした塗装表面を更新することができる。なお、下塗り塗料と上塗り塗料の着色顔料の色を変えておけば、塗装表面を更新したとき新鮮な雰囲気を出すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の易剥離性塗料は、家庭用塗料のみならず業務用塗料として有用である。また、本発明の塗装方法の対象となる基体としては、建物の壁、家具類、家電製品、玩具などがあげられるが、本発明はこれらに限られることなく、広く使用できるものである。
【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1
<下塗り塗料の調製>
水性樹脂エマルションとしてアクリル共重合体水性エマルション(サイデン化学製 サイビノールUC−203)100重量部(固形分換算。以下同じ)に、フィラー500重量部(水酸化アルミニウム(昭和電工製 ハイジライトH−32)235重量部、炭酸カルシウム(足立石灰工業製 カルフィン600)142重量部及び二酸化チタン分散液(大日精化工業製 EP−B553white)123重量部)と、シリコン樹脂としてジメチルポリシロキサン(信越化学製 信越シリコンKF−96)10重量部と、ワックス系エマルションとしてマイクロクリスタリンワックス水性エマルション(日本製?製 EMUSTAR−0001)75重量部と、分散剤、消泡剤、艶消し剤、増粘剤、乾燥遅延剤、防腐防黴剤の所定量をディスパーで撹拌混合して下塗り塗料を調製した。この下塗り塗料の固形分濃度は56.5重量%であった。
<上塗り塗料の調製>
水性樹脂エマルションとして、酢酸ビニル−エチレン共重合体水性エマルション(ニチゴー・モビニール製 モビニール109E)100重量部に、フィラー70重量部(水酸化アルミニウム(昭和電工製 ハイジライトH−32)30重量部、二酸化チタン分散液(大日精化工業製 EP−B553white)40重量部)と、下塗り塗料と同じ各種添加剤をディスパーで撹拌混合して上塗り塗料を調製した。この上塗り塗料の固形分濃度は51.2重量%であった。
<塗装試験>
基体として片面コート紙を用い、その裏面に下塗り塗料を2.5g/100cm2の膜厚にハケ塗りして3時間常温乾燥後、再度下塗り塗料を2.5g/100cm2の膜厚にハケ塗りして一晩放置した。ついで、その上に上塗り塗料を2.5g/100cm2の膜厚に塗装し、3時間常温乾燥後、再度上塗り塗料を2.5g/100cm2の膜厚にハケ塗りして一晩放置し、上塗り塗料を乾燥硬化させた。
<剥離試験>
得られた塗装試験体の表面(上塗り塗料成分皮膜)に布製ガムテープを貼りつけ、人手で思いきり引き剥がしたが、上塗り塗料成分皮膜は剥がれなかった。次に、上塗り塗料成分皮膜の端をヘラで剥がし、そこを持って人手で引き上げたら破れることなく剥がれ、下塗り塗料成分皮膜が露出した。その表面は付着物がなく平坦であった。
【0038】
実施例2
実施例1の下塗り塗料の調製において、ワックス系エマルションのマイクロクリスタリンワックス水性エマルション55重量部とした以外は、実施例1と同様にして固形分濃度57.1重量%の下塗り塗料を調製した。この下塗り塗料と実施例1の上塗り塗料の組み合わせで、実施例1と同様の塗装試験及び剥離試験を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。なお、実施例1に比べて、安価なワックス系エマルションに対する高価なシリコン樹脂の配合量が大きいので、製造コストが割高になった。
【0039】
実施例3
実施例1の上塗り塗料の調製において、フィラーの水酸化アルミニウムを60重量部とした以外は、実施例1と同様にして、水性樹脂エマルション100重量部に対しフィラー100重量部、固形分濃度55.4重量%の上塗り塗料を調製した。
この上塗り塗料と実施例1の下塗り塗料の組み合わせで、実施例1と同様の塗装試験及び剥離試験を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
【0040】
比較例1
実施例1の下塗り塗料の調製において、シリコン樹脂を配合しない以外は、実施例1と同様にして固形分濃度56.0重量%の下塗り塗料を調製した。この下塗り塗料と実施例1の上塗り塗料の組み合わせで、実施例1と同様の塗装試験及び剥離試験を行ったところ、剥離性が悪く上塗り塗料成分皮膜を剥がすことができなかった。
【0041】
比較例2
実施例1の上塗り塗料の調製において、水性樹脂エマルション100重量部に対しフィラー120重量部(水酸化アルミニウム73重量部、二酸化チタン分散液47重量部)のとした以外は、実施例1と同様にして、固形分濃度54.9重量%の上塗り塗料を調製した。この上塗り塗料と実施例1の下塗り塗料の組み合わせで、実施例1と同様の塗装試験及び剥離試験を行ったところ、剥がす際に上塗り塗料成分皮膜が切れてしまい、剥がすことができなかった。これは、フィラー量が多すぎて、上塗り塗料成分皮膜の強度が不足したためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須成分として水性樹脂エマルション100重量部(固形分換算。以下同じ)に対し、フィラー300〜700重量部、ワックス系エマルション50〜100重量部及びシリコン樹脂3〜20重量部を含有してなる下塗り塗料と、必須成分として水性樹脂エマルション100重量部に対し、フィラー50〜120重量部を含有し、ワックス系エマルション及びシリコン樹脂を実質的に含有しない上塗り塗料よりなることを特徴とする易剥離性塗料。
【請求項2】
請求項1記載の下塗り塗料を基体表面に塗布した後、請求項1記載の上塗り塗料を塗布し、基体表面上に下塗り塗料成分皮膜と上塗り塗料成分皮膜を積層形成することを特徴とする塗装方法。
【請求項3】
請求項2記載の塗装方法で形成された塗装表面の更新方法であって、上塗り塗料成分皮膜を剥がして下塗り塗料成分皮膜を露出させることを特徴とする塗装表面の更新方法。

【公開番号】特開2010−100713(P2010−100713A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272578(P2008−272578)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(599010141)関西パテ化工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】